説明

冷却装置

【課題】
小型機器中で性能向上または維持の核となる小型CPU,ASICなどの比較的駆動電力の高い半導体集積回路のコア又はパッケージに例えばアルミ板や銅板などの高い熱伝導率を有する伝熱用金属板を介して、赤外領域での高い放射率を有する固体アルミナ材料を接触させ、熱エネルギーを赤外光に変換して放出する放射冷却を利用した冷却装置を提供する。
【解決手段】
半導体集積回路のコア又はパッケージの表面に載置する伝熱用金属板と、前記伝熱用金属板に更に載置する放射冷却用の放射率0.8以上のアルミナ材を主成分とするアルミナ板とから構成される冷却装置であり、前記伝熱板の面積及び前記アルミナ板の面積が、前記コア又はパッケージの表面の面積よりも大きいことを特徴とする半導体集積回路の冷却装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ材料を用いた冷却板、及び冷却方法、特に効率の良い放射冷却の期待できる高効率の放射率を有するアルミナ材料を用いた冷却装置に関する。さらに詳しく言えば、本発明は近年、小型化、多機能、高速化の進歩と普及の著しい、ノートパソコン、ネットブック、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、高機能携帯電話(スマートフォン)などの個人向け携帯機器など、薄型の小型機器の本体内の密閉空間において高集積回路を駆動した時の発熱を好適に外部へ放出しえる冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外を含めた無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)を始めとする各種通信インフラの急激な普及が、ノートパソコンやネットブックなどの携帯型コンピュータ、PDA、スマートフォン等の個人向け携帯機器の需要を喚起しており、製品の差別化の要求から多機能型、高速型の小型電子機器の需要が増加している。これまで、これらの機器の多機能化、高速化は、半導体集積回路の微細加工技術の進展に合わせて実現されてきたが、近年、物理的限界により微細加工技術の発展が鈍化しており、これを解決するために集積化回路チップを積層化する技術の導入が検討されている。
【0003】
ところが積層構造のような高密度実装においては、微小面積に対して発熱が集中して、内部温度が上昇するため集積回路駆動時のエラーが発生しやすい。また、これとは別のアプローチとして、パーソナルコンピュータ用CPUを低消費電力化し、携帯端末へ適用する検討も進められているが、もともと発熱の多いCPUをベースとしているため、消費電力の制約から本来の機能を引き出せずにいるのが現状である。さらには、このCPUをベースに積層構造の集積回路を適用したCPUの開発も検討されている。このようななか、冷却効率のよい小型冷却装置の要求が強くなっているがこの要求を充分に満足するものがない。一般に、個人向け携帯機器の性能向上の核となる、CPUやASIC、FPGAなどの半導体集積回路においては、従来の比較的大型の据え置き型ノートパソコンの仕様から推測すると、高機能化・高速化が可能な小型CPUやASIC、FPGAの駆動電力は〜20W程度が予想される。ところが、現状の携帯機器の性能維持の核となる、小型CPUやASIC、FPGAなどの半導体集積回路の駆動電力は2W〜4W程度を用いているのが現状である。かかる現状の原因は携帯機器が内蔵する電池の容量が不足していることのみならず、発熱の問題も主な原因の1つと考えられる。なぜなら、一般に半導体集積回路の駆動時に、半導体集積回路の温度がおおよそ90℃以上に上昇すると、絶縁膜内にリーク電流が発生し、エラーを誘発するからである(下記引用文献参照)。
【0004】
Y. Kurita, et al. “A 3D Stacked Memory
Integrated on a Logic Device Using SMAFTI
Technology” Electronic Components and Technology
Conference, pp821-829, 2007.
【0005】
このような状況に至った理由としては、従来の冷却法が、原理的に大きな熱媒体を必要とするフィン型ヒートシンクや、基板を介した熱伝導に依存しており、個人向け携帯機器のサイズにかなう手法があまり検討されていなかったことによる。この問題を解決するために、半導体集積回路や端子ピッチが異なる集積回路チップとメイン基板の間で中継するためのインターポーザーに冷却機構としてマイクロ流路を設ける開発が進められているが(下記引用文献参照)、これらの流路形成には微細加工技術を用いており、製造工程増とコスト高を伴う可能性が高く、個人向け携帯端末よりもハイエンド品への適用が適した解と言える。
【0006】
J. U. Knickerbocker, et al. “System-on-Package
(SOP) Technology, Characterization and Applications”Electronic
Components and Technology Conference, pp415-421, 2006.

Calvin. R. King, Jr., et al. “3D Stacking of
Chips with Electrical and Microfluidic I/O Interconnects” Electronic Components and Technology Conference, pp1-7, 2008.

M. Yu, et al. “Fabrication of Silicon Carriers with TSV Electrical Interconnections
and Embedded Thermal Solutions for High Power 3-D Package” Electronic Components and Technology Conference, pp24-28, 2008.

M. Sunohara, et al. “Silicon Interposer with
TSVs(Through Silicon Vias) and Fine Multilayer Wireing”
Electronic Components and Technology Conference, pp847-852, 2008.
【0007】
特許文献1では、アルミナの含有率が95重量%以上で好ましくは97重量%乃至98重量パーセントであり、熱放射率が0.93乃至0.98で30〜60W/m・Kの熱伝導率を有する20(mm;幅)×40(mm;長さ)×6(mm;厚み)の形状の陶磁器熱放射性固体物を、表面(上面)温度を98〜100℃に設定した発熱体(20(mm;幅)×40(mm;長さ)×3(mm;厚み)の形状のマイカヒーター)の上面に密着させたところ、10分後には67℃に低下してその温度を維持した旨が開示されている(0016段落、0020段落及び表3)。
【0008】
又特許文献2では、ノート型パーソナルコンピュータやフラットパネルディスプレイなどの薄型又は小型の電子機器に好適であって放熱を効率よく行なえる熱放射膜、熱放射構造体、熱放射性部材、及び熱放射性機器を提供することを課題とし、電子機器の筐体(基材)20の表面上に、アルミニウム層21とSiO0.98層22a/SiO1.20層22b/SiO1.70層22cの4層の膜をコーティングして、光反射性のアルミニウム層21上に3層の積層膜からなる波長選択放射膜22を形成した熱放射構造体23、及びこの熱放射構造体23を外表面に設けた電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−298703号公報
【特許文献2】特開2005−144985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1では、アルミナの含有率が好ましくは97重量%乃至98重量パーセントの陶磁器熱放射性固体物が冷却用に好適であることは示されているが、どの位の発熱量の半導体に用いることができるかについては何ら示されていない。
【0011】
又、特許文献2(特開2005−144985号公報)では、酸化珪素、チッカ珪素とポリビニルクロライド又はポリビニルフルオライドによって構成される熱放射膜による放射冷却法を提案しているが、たとえ放射率が0.7〜0.9と高い値でも、熱放熱膜を用いているため、熱源との固定において空隙の発生による熱抵抗の増加や、接着材自身の熱抵抗追加が予想され、本件の課題である個人向け携帯機器への利用、性能向上にかなっているかは明確ではない。
【0012】
先に述べたように、個人向け携帯機器に利用される半導体集積回路の駆動電力は、いまのところ2〜4W程度であり、たとえこれ以上に駆動電力が高く動作するように設計されていても、駆動電力を下げ性能を制限する手法に依存しているのが現状である。一般に、半導体集積回路では、高速化は駆動電力に依存しており、最大20W程度の駆動電力を投入できれば概ね多機能高速化に対応できる。個人向け携帯機器に利用できる冷却装置の最大面積は概ね100mm×100mm程度であり平板であることが有利である。この平板で20W/10000mmの熱エネルギー放出能力を有する放熱機構を提供することにより、半導体集積回路のエラーを誘発する一般的温度である90℃よりも低い温度に保つ装置を提供することを課題とする。
【0013】
また、放射冷却は無電源の冷却機構であることから、従来20W程度の駆動電力の半導体集積には、この出力の1/10程度の空冷用ファンを搭載することが一般的であるので1/10程度の省電力を可能とする(インテル D945GCLF2基板搭載ファンを参考にした)。本発明では、小型機器中で性能向上または維持の核となる小型CPU,ASICなどの比較的駆動電力の高い半導体集積回路に例えばアルミ板や銅板などの高い熱伝導率を有する伝熱用金属板を介して、赤外領域での高い放射率を有する固体アルミナ材料を接触させ、熱エネルギーを赤外光に変換して放出する放射冷却を利用した冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者が鋭意検討した結果、個人携帯機器中の半導体集積回路の駆動によって発生した熱を効率よく外部へ放熱するには、小型携帯性と効率の良い放熱特性の両件を満たす手法が必要である。これには、平板構造でよりよく熱を放熱できる、高放射率を有するアルミナ材を直接半導体集積回路パッケージ表面に接触させて、熱をアルミナ材平板に熱伝導により移動させ、これらを赤外光に変換させて放射する放射冷却を用いればよいと考え本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するために本発明の冷却装置は、半導体集積回路のコア又はパッケージの表面に載置する伝熱用金属板と、前記伝熱用金属板に更に載置する放射冷却用の放射率0.8以上のアルミナ材を主成分とするアルミナ板とから構成される冷却装置であり、前記伝熱板の面積及び前記アルミナ板の面積が、前記コア又はパッケージの表面の面積よりも大きいことを特徴とする。好ましくは前記セラミック板を前記コア又はパッケージ表面に載置した状態で前記アルミナ板に85kgf/m以上の荷重を加えて使用する
【発明の効果】
【0015】
高さ方向に嵩張る冷却フィンや駆動電力を必要とする冷却ファンを必要とせず、CPU等の発熱量の多い半導体デバイスを熱放射により効率的に冷却可能な薄型で、小型高効率の冷却装置を提供することができる。特に樹脂や金属性の筺体に密閉されている小型電子機器の半導体デバイスの冷却に好適な小型高効率の冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の冷却装置の概念図である。
【図2】本発明実験に用いたアルミナ(西村陶業製N−9H)の放射率を求めた際のデータを示す図である。
【図3】本発明の冷却板の特性調査に用いた装置を示す概念図である。
【図4】アルミナ平板と銅平板の表面温度の時間変化を示す図である。
【図5】それぞれ寸法の異なるアルミナ平板A,B,Cにおける飽和温度80℃に至る温度特性を示す図である。
【図6】飽和温度80℃の場合における熱放射エネルギーとアルミナ平板ヒートシンク面積との関係を示す図である。
【図7】それぞれ面積の異なるアルミナヒートシンクにおける荷重と熱放射エネルギーとの関係(飽和温度80℃)を示す図である。
【図8】アルミナ板厚と放熱可能なエネルギーとの関係(飽和温度80℃)を示す図である。
【図9】図7におけるBのアルミナ平板ヒートシンクを用いた場合の表面温度の比較(飽和温度80℃)を示す図である。
【図10】図7におけるBのアルミナ平板ヒートシンクと同じサイズの金属板をヒータとの間に挟んだ場合の表面温度の比較(飽和温度80℃)を示す図である。
【図11】図10のアルミナ平板+金属板+ヒータと図9のアルミナ平板+ヒータの放熱エネルギーとアルミナ平板面積依存性の比較する図である。
【図12】実施例1〜4の実験に用いた実験装置の側面を示す断面図である。
【図13】実施例5〜7の実験に用いた実験装置の側面を示す断面図である。
【図14】実施例8〜10の実験に用いた実験装置の側面を示す断面図である。
【図15】実施例11〜13の実験に用いた実験装置の側面を示す断面図である。
【図16】実施例14の実験に用いた実験装置の側面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る冷却板、及び冷却方法の好適な実施形態について詳細に説明する。図1に、本発明の原理を示す簡単な構成図を示す。図1は半導体集積回路及びパッケージ12に冷却用のアルミナ材平板11とを重ねて載置したものであり、半導体集積回路のコア又はパッケージ12からアルミナ材平板11へは熱伝導で熱が移動し、アルミナ材平板11から外部空間へは赤外放射により放射冷却によって熱が移動する。一般にセラミックであるアルミナ、ジルコン、窒化アルミナ、などは放射率が高いことが知られているが、特にアルミナは、安価で且つ高純度化が容易で放射率を高くすることが容易であり、且つ他のセラミックに比べて強度があるため、厚みを薄くすることが可能であり、応用範囲が広いことから本発明の素材とした。
【0018】
従来、アルミナ材を用いたヒートシンクに所定の熱を加えて温度を計測した例はあるが、アルミナ材を利用した冷却装置について、具体的にどの程度の放熱が可能かについて調べた例はない。そこで、本発明者は、以下の手順で、放熱が放射冷却であることの証明と放熱能力について詳細に調べ、アルミナ平板(アルミナヒートシンク31)が、20W/10000mm程度の放出能力を有することを検証した。ここで用いたアルミナ平板の純度は約99%であり、放射率は約0.97(室温〜100℃)である。放射率は、財団法人ファインセラミックスセンターにおいてPerkin Elmer製 SYSTEM2000型 FTIR測定器を用い、放射体が理想物体(黒体)であるときの放射と、アルミナ平板の放射の比(全波長の比)から算出された。その際測定されたアルミナ平板の放射率の一例を図2に示す(30℃、80℃、100℃で0,97)。
【0019】
図3に本研究に用いた実験装置を示す。主な構成は、20mm(X)×40mm(Y)×2mm(Z)サイズの薄いレジスタンスヒータ(抵抗加熱ヒータ)32と、同じ形状の異なる放射率を有する平板のアルミナヒートシンク31である。アルミナヒートシンク31は比較的高い放射率値である0.97を有し, 比較のための銅製ヒートシンクは低い放射率値である0.1を有する。レジスタンスヒータ32のヒータ表面はステンレススチール(放射率は0.05と非常に低い)でカバーされておりヒータ自身の放射(冷却)の影響を少なくしている。平板のアルミナヒートシンク31は、複数のニードルによってZ軸方向に400Kgf/mの荷重とともに押し付けられる。
ニードルは有機材をベースとしており、熱伝導率は0.15〜0.25W/mKと非常に小さいので、ニードル固定により熱的に孤立しており熱エネルギーの熱伝導による移動は実験上無視し得る。
【0020】
本実験装置は、外気と風の影響を避けるために密閉したガラス製の容器(359mm(X)×220mm(Y)×262mm(Z))に収納さている。アルミナヒートシンク31からの赤外放射はガラス容器を通過し、その外周にある黒い布に吸収される。この実験を通して、容器内の温度は室温から変化せず、無風であることを確認している(風速はAnomoster Model AM−B11/11−2111 (日本化学工業製)の計測で検出下限以下の0.05m/secであった)。従って、この実験系では空冷効果ができる限り排除されていることが分かる(一般に,平板のヒートシンクでは、風速0〜3m/secではあまり空冷効果は、現れない。下記引用文献参照)。この条件下で、30〜120分間、ヒータに5W前後の範囲で一定電力を供給しレジスタンスヒータ32表面の温度を熱伝対で測定し、飽和温度を判定する。
【0021】
Y. Kurita, et al. “A 3D Stacked Memory
Integrated on a Logic Device Using SMAFTI
Technology” Electronic Components and Technology
Conference, pp821-829, 2007.
【0022】
また、後述の応用実験では、ヒータ表面が飽和温度80℃に達したときにおける供給電力(アルミナヒートシンク31からの熱放出エネルギー)のヒートシシンク面積依存性を調べる。その際、実験取り扱いを、容易にするために比較的大きなサイズ(24mm(X)×49mm(Y)×1.9mm(Z))の
ヒータと三種類のアルミナヒートシンクを組み合わせて実験する(アルミナヒートシンク31A.50mm(X) ×50mm(Y)×5mm(Z), アルミナヒートシンク31B.75mm(X)×75mm(Y)×5mm(Z) , アルミナヒートシンク31C.100mm(X)×100mm(Y)×5mm(Z))。
【0023】
図4に、異なる放射率を有するアルミナヒートシンク31の冷却効果を示す。図中、ヒータ表面温度を示すカーブは、アルミナヒートシンク31と銅製平板の結果である(ヒータサイズ、ヒートシンクの何れのサイズも20mm(X)×40mm(Y)×2mm(Z)である.)。30分間半導体集積回路に見立てたヒータに対して供給電力を5Wに固定して、ヒータ表面の温度上昇を測定した。ヒートシンクを用いない場合(コントロール)、ヒータ表面温度は室温から97℃まで急激に上昇し以後一定となる。なおこの温度は一般的な半導体集積回路の駆動においてエラーを発生する温度である。
【0024】
銅製ヒートシンクを用いた場合の温度カーブにおいても同様の結果が観察されており、温度は室温から88℃まで温度が上昇しその後飽和する。この温度は、通常の半導体集積回路駆動における許容温度に近い温度である。その一方で、アルミナヒートシンク31を用いた場合、飽和温度は66℃であり、この温度は銅製ヒートシンクに比べて優位性のある低い温度となっている(この温度は、 LSI駆動において充分許容できる低い温度である。)。一般に、銅材の熱伝導率はアルミナ材の約6倍程度高いことが知られているが、本実験の実験装置は熱的に孤立しており、飽和温が放射率の大きさに依存していることから、放射冷却に起因した効率の良い冷却効果を得るには高い放射率を有する平板材が非常に有効であることが分かる。
【0025】
次に、アルミナヒートシンク31の冷却特性を理解するために、飽和温度80℃におけるヒータへの供給電力(一般に、半導体集積回路の熱設計電力は、半導体集積回路への供給エネルギーで示される。また、放出必要なエネルギーの指標となっている。ここでのヒータへの供給エネルギーも熱設計電力に相当し、放出必要なエネルギーの指標となっている。)のヒートシンク面積依存性を調べた。なお、この温度は、通常の半導体集積回路駆動における許容範囲の温度である。図5の温度カーブはそれぞれ以下のヒートシンクサイズにおける結果である(アルミナヒートシンク31A.50mm(X) ×50mm(Y)×5mm(Z), アルミナヒートシンク31B.75mm(X)×75mm(Y)×5mm(Z)
, アルミナヒートシンク31C.100mm(X)×100mm(Y)×5mm(Z))。
【0026】
図5から分かるように、最もサイズの小さいアルミナヒートシンク31Aにおける、供給電力(放出エネルギー)は最も低い5.75Wである。次にサイズの順にアルミナヒートシンク31B、アルミナヒートシンク31Cはそれぞれ、7.63W、
10.61Wであった。これらの結果は、大きなサイズのヒートシンクは大きな供給電力(放出エネルギー)に対応していることがわかり、結果として5.75Wから 10.61Wのエネルギーの放出が可能であることを示唆している。
【0027】
この結果をより理解するために図6に図5の実験から得たヒートシンク面積と供給エネルギー(放出エネルギー)の関係を示す。図から分かるように、実験の範囲において供給エネルギー(放出エネルギー)はヒートシンク面積に対してほぼ正比例であり、この関係は[式1]のように示すことができる。
【0028】
E=AS [式1]
【0029】
ここで
Eは放出エネルギー、Sはヒートシンク面積、そしてAは比例定数である。ここで留意すべきは、前章で述べたように実験系が空冷効果と熱伝導にできるだけ影響されないように構成されていることであり、実験では放射エネルギーが面積に依存していることから、考えられる解釈は放射冷却の効果であり、その関係は良く知られている[式2]のステファンボルツマンの式で表される。
【0030】
E=εδT4S [式2]
【0031】
[式2]でEは放出エネルギー、εは補正係数(黒体では1)、δはステファン・ボルツマン定数(5.67×10-12[W m-2 K-4])、Tは絶対温度、Sはヒートシンク面積である。以上から、アルミナヒートシンク31による冷却効果は、放射冷却であり、その最大能力は10W/10000mm程度であることが分かった。当初の目的の20W/10000mmには至っていないが、簡単な構造でかつ無風相当の密閉空間でここまで放熱できることは、産業上非常に有効である(実施例に効果を述べる)。
【0032】
さらに放射能力を20W/10000mm程度まで上げるために、以下の調査を行った。これまで、アルミナヒートシンク31と半導体集積回路に見立てたヒータの固定を(Z)軸方向に400kgf/mの加重を与えることでデータを取得してきた。この加重が安定した結果を得るのに妥当な加重であるかを調べた。図7は、ヒータ温度が飽和温度80℃における熱放射エネルギーの加重依存をプロットした図である。
【0033】
図から分かるように、170kgf/m以上の加重を与えることで、熱放射エネルギーが一定になることが分かる。これはアルミナヒートシンク31とヒータ間熱抵抗の低減が熱放射エネルギー量に影響することを示す。概ね10%程度の放熱量低減を許容範囲とすると85kgf/m以上の加重が有効な加重といえる。なお、熱抵抗はアルミナヒートシンク31とレジスタンスヒータ32または半導体集積回路空隙により発生していると考えられる。このため、アルミナヒートシンク31と半導体集積回路またはレジスタンスヒータ32間に、空隙を埋める粘性物質(シリコングリス、導電性グリス等)を塗布することで、加重無しに85kgf/m程度の放熱量を得ることができる。改善にはこれらのノウハウを踏襲する必要がある。
【0034】
また、図5、図6で用いたアルミナヒートシンク31の厚み(5mm)が適当であるかについても検討した。ここでは、飽和温度80℃における、100mm×100mmのアルミナヒートシンク31Cと50mm×50mmのアルミナヒートシンク31Aについて、それぞれの厚みを変えた場合に熱放射が可能なエネルギーを調べた。実験方法は図6と同じである。結果を図8に示す。図からわかるように、どちらのアルミナ板も板厚3mm〜8mmにおいて熱放射の効率が良いことがわかる。従来、任意の飽和温度における、放射可能なエネルギーを検討する場合、ステファンボルツマンの式に従い、面積で検討することが常識であった。ところが、厚みの依存性があることが新たに分かった。
【0035】
このメカニズムの詳細は不明だが、以下のように推測する。まず、アルミナの主成分の分子の数が多いほど、放射可能な量が増えると推察する。これは放射可能なエネルギーが面積に依存性を示すことからも推測可能である。図8の傾向から、厚み方向に分子数が増えた場合は、熱源に近い部分から発生した赤外光が、遠い部分に向かって通過する際、なんらかの吸収、反射によって、通過量が抑制される。これにより、放射可能なエネルギー適した厚みが発生すると考える。従って、図5、6の実験において、放熱量を増やすのに適した厚みである5mmを用いるのことは、偶然であったが妥当と考える。なお、図4において、2mm厚のアルミナヒートシンクにおいて、レジスタンスヒータに5W印加時に66℃程度の飽和温度を得るという、高い熱の放射能力が示されているが、これは、レジスタンスヒータ自身が、図6,7と違うものであること、またレジスタンスヒータとアルミナヒートシンクが同じサイズであり、熱抵抗が小さいことによることと考える。厚みを5mm程度にすることでさらに良い結果が得られると考える。
【0036】
さらに放射能力を20W/10000mm程度まで上げるために、図6におけるBのアルミナヒートシンク31B(75mm(X)×75mm(Y)×5mm(Z))に関して、レジスタンスヒータ表面、アルミナヒートシンク31Bの中心、アルミナヒートシンク31Bのヒートシンク端の温度を調べた。結果を図9に示す。
【0037】
アルミナヒートシンク31Bの中心の温度は、レジスタンスヒータ表面と同じ80℃であるが、アルミナヒートシンク31Bのヒートシンク端の温度は7℃低い73℃であった。本発明者は、アルミナヒートシンク31Bの端における熱伝導を改善することで、さらなる放熱性能向上ができると考え、アルミナヒートシンク31BとCPUなどの半導体集積回路に見立てたヒータ間に熱伝導の良い伝熱用金属板(アルミ板)を挟むことを試みた。伝熱用金属板(アルミ板)の上面から見たサイズは、半導体集積回路に見立てたヒータよりも大きく、アルミナヒートシンク31Bと同じサイズである。結果を図10に示す。加重は、これまでと同じく400kgf/mの加重がかけられた。
【0038】
図9と同様に、ヒータ表面の温度と、アルミナヒートシンク31Bの中心の温度は80℃であった。また、図8と違う点は、アルミナヒートシンク31Bヒートシンク端の温度が80℃であることと、熱放出エネルギーが15.1Wまで上昇したことである。同等の結果が他の金属板(ステンレス鋼、銅材)でも確認された。
【0039】
図10に示す構造における飽和温度80℃における熱放出エネルギーの面積依存性を調べた。結果を図11に示す。
【0040】
図11のグラフから分かるように、図10に示すようにアルミナ平板とヒータの間に伝熱用金属板を入れることでアルミナヒートシンク31Bからの放熱エネルギーを約2倍程度増加させることができた。図9、図10のアルミナヒートシンク31Bのヒートシンク端における数度の温度差でこれだけの増加がある理由は不明だが、熱伝導性が良い金属板を挟むことによりヒータの熱が効率的に金属板の周辺部に伝わり、更にアルミナヒートシンク31Bの周辺部から効率的に熱放射することできるものと思われる。結果的に大きな放熱効果を得ることができた。以上から当初の目的である20W/10000mm程度の放出能力を有する平板ヒートシンクを実現できた。また、図9のような金属板を用いない構造でも、10W程度の放出能力が得られていることから、必要能力とコストによって使い分ける技術を確立できた。
【0041】
現在、熱設計出力10W程度の半導体集積回路を用いる場合、45mm(X)×45mm(Y)×45mm(Z)サイズの空冷フィン型ヒートシンクが用いられているが、図11から面積2000mm程度(45mm(X)×45mm(Y)×5mm(Z)程度の)アルミナヒートシンクと代替が可能であると予想できる。
【0042】
そこで、45mm×45mm×45mmサイズの空冷フィン型ヒートシンクと熱設計出力8WのCPU(コア部分が露出しており、コア部分の面積が50mm程度)とが用いられている小型デスクトップ型コンピュータにおいて、CPUに60分間100%の負荷をかけ、図10に示すように45mm×45mm×5mmのアルミナ平板ヒートシンク31Dとアルミ板とを重ねて載置して用いた(CPUに熱伝導用アルミ板を重ね更にその上にアルミナ平板ヒートシンク31Dを重ねて用いた。以下の各実施例でも同様の順序で載置した)場合と比較した。密閉容器内の風速は、0.05m/secである。密閉容器の樹脂壁面とアルミナ平板ヒートシンク31Dの表面との間隔を、10mmとした。その結果、ほぼ同等の性能(CPUの表面温度は50℃:許容温度である90℃以下)であることが分かった。これは、放射率0.97のアルミナ平板ヒートシンク31Dをもちいているが、放射率0.80のアルミナ平板ヒートシンクにおいてもCPU表面温度は60℃程度であり許容温度以下である。上記説明はCPUのコア部分が露出していることを前提としたが、コアが露出していないタイプのCPUではセラミック等のパッケージ(200mm乃至900mm程度の表面積、つまり15mm×15mm乃至30mm×30mm程度)に、このパッケージよりも熱伝導用アルミ板を重ね更にその上にアルミナ平板ヒートシンク31Dを重ねて用いる(以下の各実施例において、アルミナ平板ヒートシンク31Dの代わりにアルミナ平板ヒートシンク31A又はアルミナ平板ヒートシンク31Cを用いる場合がある点を除いて同じ)。
【0043】
また、アルミナ平板ヒートシンク31Dが露出する最も広い面と対向する密閉容器の樹脂壁面との間隔を、0mm、5mm、10mmとしているが、CPUの表面温度は50℃〜60℃であり動作に影響はなかった。この際の樹脂壁面の温度は、30〜35℃であった。この樹脂壁面の温度は樹脂壁面に人の皮膚が接触しても火傷などに至ることはない温度である。
【0044】
また、アルミナ平板ヒートシンク31Dが露出する最も広い面と対向する密閉容器の金属壁面(黒色塗装)との間隔を、1mm、5mm、10mmとしたが、CPUの表面温度は50℃〜60℃であり動作に影響はなかった。この際の樹脂温度は、35〜40℃であった。火傷などにいたることはなかった。
【0045】
なお、このCPUには、同系列に4Wのラインアップがありこちらは個人向け携帯機器であるネットブック(商標)に搭載されている。8W品も搭載要求があるが、放熱が難しく、小型デスクトップにしか適用されていない。本発明により、ヒートシンク容積を低減することが可能であり、個人向け携帯機器への適用が可能となった。以上で集積回路とアルミナヒートシンクとの組み合わせによる放射冷却性能についての説明を終わる。
【0046】
次に上記アルミナヒートシンクを取りつけたCPUを実際の実装形態に近い状況で稼働させた実施例について説明する。以下の実施例1乃至実施例16では、CPUのコア部分が露出しており、コア部分の面積がコア2つ(デュアルコア)で50mm(10mm×5mm)程度であり熱設計出力8WのCPUを用いる。実施例1乃至実施例4にかかる実験装置図を図12に示す。
【0047】
実施例1
45mm×45mm×45mmサイズの空冷フィン型ヒートシンクと熱設計出力8WのCPU125が搭載されているコンピュータにおいて、この空冷フィン型ヒートシンクをはずし、50mm×50mm×5mmのアルミナ平板ヒートシンク123(その材質及びサイズは上述したアルミナヒートシンク31Aと同様である)を、CPU基台126上のCPU125の上面に接触するように重り121と重り支え122により400kgf/mの荷重をアルミナ平板ヒートシンク123に加えて載置し、30分間CPU125に使用率100%の負荷を加えて稼働させた。密閉容器127内の風速は、0.05m/secである。アルミナ平板ヒートシンク123が露出する最も広い面と対向する樹脂板124の壁面との間隔が10mmとした。風速は0.05m/sec以下である。その際のアルミナヒートシンク平板123の温度を測定した。アルミナ平板ヒートシンク123の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。樹脂板124の壁面温度は30℃程度であった。なお、図12において樹脂板124には重り支え122の脚を通すための4つの穴があり、穴の2つが側面から見た断面図に書かれている。そのため図12では樹脂板124が3つの部分に分かれているように示されている。以下の他の図(図13の金属板134、図14の樹脂板145、図15の金属板155、図16の樹脂板165)でも同様である。
【0048】
実施例2
実施例1において、アルミナ平板ヒートシンク123が露出する最も広い面と対向する樹脂板124の壁面との間隔を5mmとした。アルミナ平板ヒートシンク123の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。樹脂板124の壁面温度は30℃程度であった。
【0049】
実施例3
実施例1において、アルミナ平板ヒートシンク123が露出する最も広い面と対向する樹脂板124の壁面との間隔を0mmとした。アルミナ平板ヒートシンク123の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。樹脂板124の壁面温度は35℃程度であった。
【0050】
実施例4
実施例1において、風速を0.05〜3.0m/secの範囲で実験したが、各温度は0〜3℃程度の変化しかなかった。
【0051】
次に実施例5〜7にかかる実験装置図を図13に示す。
実施例5
45mm×45mm×45mmサイズの空冷フィン型ヒートシンク熱設計出力8WのCPU135が搭載されているコンピュータにおいて、この空冷フィン型ヒートシンクをはずし、50mm×50mm×5mmのアルミナ平板ヒートシンク133(その材質及びサイズは上述したアルミナヒートシンク31Aと同様である)をCPU基台136上のCPU135に接触するように重り131と重り支え132により400kgf/mの荷重を加えて設置し、30分間CPU135の使用率100%の負荷を加えて稼働させた。アルミナ平板ヒートシンク133が露出する最も広い面と対向する金属板134の壁面との間隔を10mmとした。風速は0.05m/sec以下である。金属板134のアルミナ平板ヒートシンク133との対向面にはつや消し黒色の塗装を施した。その際のアルミナ平板ヒートシンク133の温度を測定した。アルミナ平板ヒートシンク133の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。金属板134の壁面温度は30℃程度であった。
【0052】
実施例6
実施例5において、アルミナ平板ヒートシンク133が露出する最も広い面と対向する金属板134の壁面との間隔を5mmとした。アルミナ平板ヒートシンク133の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。金属板134の壁面温度は35℃程度であった。
【0053】
実施例7
実施例5において、アルミナ平板ヒートシンク133が露出する最も広い面と対向する金属板134の壁面との間隔が0mmとした。アルミナ平板ヒートシンク133の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。金属板134の壁面温度は40℃程度であった。
【0054】
次に実施例8〜10にかかる実験装置図を図14に示す。
実施例8
45mm×45mm×45mmサイズの空冷フィン型ヒートシンク熱設計出力8WのCPU146が搭載されているコンピュータにおいて、この空冷フィン型ヒートシンクをはずし、45mm×45mm×5mmのアルミナ平板ヒートシンク143(その材質及びサイズは上述したアルミナヒートシンク31Dと同様である)とアルミナ平板ヒートシンク143と略同寸法(但し厚みは1mm乃至5mm)のアルミ板144とを図に示す順に重ね、CPU基台147上のCPU146の上面に接触するように重り141と重り支え142により400kgf/mの荷重を加えて設置し、30分間CPU146の使用率100%の負荷を加えて稼働させた。アルミナ平板ヒートシンク143が露出する最も広い面と対向する樹脂板145の壁面との間隔を10mmとした。図14においてアルミ板(伝熱用金属板)144の下面の面積はCPU146の上面のコア部分の面積よりも大きく、アルミ板144の上面の面積はアルミナ平板ヒートシンク143の下面の面積と略同一である。又CPU146の上面がアルミ板(伝熱用金属板)144の下面の中心部で接触している必要はなく、アルミ板(伝熱用金属板)144の片方に偏って接触しても良く、以下のアルミ板(伝熱用金属板)を用いる他の実施例でも同様である。風速は0.05m/sec以下である。その際のアルミナ平板ヒートシンク143の温度を測定した。アルミナ平板ヒートシンク143の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の50〜60℃であった。樹脂板145の壁面温度は30℃程度であった。
【0055】
実施例9
実施例7において、アルミナ平板ヒートシンク143が露出する最も広い面と対向する樹脂板145の壁面との間隔を5mmとした。アルミナ平板ヒートシンク143の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の50〜60℃であった。樹脂板145の壁面温度は35℃程度であった。
【0056】
実施例10
実施例7において、アルミナ平板ヒートシンク143が露出する最も広い面と対向する樹脂板145の壁面との間隔を0mmとした。アルミナ平板ヒートシンク143の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の50〜60℃であった。樹脂板145の壁面温度は40℃程度であった。
【0057】
次に実施例11〜13にかかる実験装置図を図15に示す。
実施例11
45mm×45mm×45mmサイズの空冷フィン型ヒートシンク熱設計出力8WのCPU156が搭載されているコンピュータにおいて、この空冷フィン型ヒートシンクをはずし、45mm×45mm×5mmのアルミナ平板ヒートシンク153(その材質及びサイズは上述したアルミナヒートシンク31Dと同様である)とアルミナ平板ヒートシンク153と略同寸法(但し厚みは1mm乃至5mm)のアルミ板(伝熱用金属板)154とを図に示す順に重ね、CPU基台157上のCPU156の上面に接触するように重り151と重り支え152により400kgf/mの荷重を加えて設置し、30分間CPU156の使用率100%の負荷を加えて稼働させた。アルミナ平板ヒートシンク153が露出する最も広い面と対向する金属板155の壁面との間隔を10mmとした。図15においてアルミ板154の下面の面積はCPU156のコア部分の面積よりも大きく、アルミ板154の上面の面積はアルミナ平板ヒートシンク153の下面の面積と略同一である。風速は0.05m/sec以下である。密閉容器内の風量は、0.05m/secである。金属板155のアルミナ平板ヒートシンク153との対向面にはつや消し黒色の塗装を施した。その際のアルミナ平板ヒートシンク153の温度を測定した。アルミナ平板ヒートシンク153の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の50〜60℃であった。金属板155の壁面温度は30℃程度であった。
【0058】
実施例12
実施例10において、アルミナ平板ヒートシンク153が露出する最も広い面と対向する金属板155の壁面との間隔を5mmとした。アルミナ平板ヒートシンク153の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の50〜60℃であった。金属板155の壁面温度は35℃程度であった。
【0059】
実施例13
実施例11において、アルミナ平板ヒートシンク153が露出する最も広い面と対向する金属板155の壁面との間隔を0mmとした。アルミナ平板ヒートシンク153の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の70〜80℃であった。金属板155の壁面温度は40℃程度であった。
【0060】
次に実施例14にかかる実験装置図を図16に示す。
【0061】
実施例14
45mm×45mm×45mmサイズの空冷フィン型ヒートシンク+電動ファンを積載する熱設計出力20WのCPU166が搭載されているコンピュータにおいて、この空冷フィン型ヒートシンク+電動ファンをはずし、100mm×100mm×5mmのアルミナ平板ヒートシンク163(その材質及びサイズは上述したアルミナヒートシンク31Cと同様である)とアルミナ平板ヒートシンク163と略同寸法(但し厚みは1mm乃至5mm)のアルミ板(伝熱用金属板)164とを図に示す順に重ね、CPU基台167上のCPU166の上面に接触するように重り161と重り支え162により400kgf/mの荷重を加えて設置し、30分間CPU166の使用率100%の負荷を加えて稼働させた。アルミナ平板ヒートシンク163が露出する最も広い面と対向する樹脂板165の壁面との間隔を10mmとした。図16においてアルミ板164の下面の面積はCPU166のコア部分の面積よりも大きく、アルミ板164の上面の面積はアルミナ平板ヒートシンク163の下面の面積と略同一である。風速は0.05m/sec以下である。その際のアルミナ平板ヒートシンク163の温度を測定した。アルミナ平板ヒートシンク163の飽和温度は許容限界温度の85℃以下の60〜70℃であった。樹脂板165の壁面温度は30℃程度であった。以上で各実施例の説明を終わる。
【0062】
以上説明したように、本発明の冷却装置によれば、高発熱の半導体デバイスに該半導体デバイスよりも面積の大きな導熱用金属板とアルミナヒートシンクとを密着させているので熱放射により高効率な冷却が可能であり、特に樹脂製筺体や金属製筺体に半導体デバイスを封入する小型電子機器に使用した場合にこれら樹脂製筺体や金属製筺体を通して効率的に放熱でき、かつ冷却ファンが不要で高さ方向の小さく、冷却フィンもなく冷却用の電力が不要な非常に好適な冷却装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
11 アルミナ材平板
12 半導体集積回路とパッケージ
31 アルミナヒートシンク
32 レジスタンスヒータ
121 重り
122 重り支え
123 アルミナ平板ヒートシンク
124 樹脂板
125 CPU
126 CPU基台
127 密閉容器
131 重り
132 重り支え
133 アルミナ平板ヒートシンク
134 金属板
135 CPU
136 CPU基台
137 密閉容器
141 重り
142 重り支え
143 アルミナ平板ヒートシンク
144 アルミ板(伝熱用金属板)
145 樹脂板
146 CPU
147 CPU基台
148 密閉容器
151 重り
152 重り支え
153 アルミナ平板ヒートシンク
154 アルミ板(伝熱用金属板)
155 金属板
156 CPU
157 CPU基台
158 密閉容器
161 重り
162 重り支え
163 アルミナ平板ヒートシンク
164 アルミ板(伝熱用金属板)
165 樹脂板
166 CPU
167 CPU基台
168 密閉容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路のコア又はパッケージの表面に載置する伝熱用金属板と、前記伝熱用金属板に更に載置する放射冷却用の放射率0.8以上のアルミナ材を主成分とするアルミナ板とから構成される冷却装置であり、
前記伝熱用金属板の面積及び前記アルミナ板の面積が、前記コア又はパッケージの表面の面積よりも大きいことを特徴とする半導体集積回路の冷却装置。
【請求項2】
前記アルミナ板をコア又はパッケージ表面に載置した状態で前記アルミナ板に85kgf/m以上の荷重を加えて使用することを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記半導体集積回路と前記伝熱用金属板と前記アルミナ板とは、複数の壁により構成された筺体に収容され、
前記筺体の壁面と前記アルミナ板の最も広い面である上面と対向する前記筺体の壁面との間隔が0mm乃至10mmであり、
前記アルミナ板は、前記対向する前記筺体の壁面を通して外部に熱放射することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記筺体の壁面は金属又は樹脂により構成されることを特徴とする請求項3記載の冷却装置。
【請求項5】
前記アルミナ板の厚さが3mm乃至8mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記半導体集積回路の熱設計電力が10W以下の場合に、前記アルミナ板の最も広い面の面積が10000mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−251432(P2010−251432A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97507(P2009−97507)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(390002761)キヤノンマーケティングジャパン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】