説明

冷却装置

【課題】フィンと天板や底板とのろう付け接合をより確実に行なえるようにする。
【解決手段】天板28には、ろう付け接合前において、フィン32と天板28との接合部の延在方向と同一方向に延在して底板26側に突出する突出部29が形成されている。これにより、冷却装置20の製造工程のうち底板26と天板28とによってフィン32を挟むときにフィン32と天板28との相対的な位置決めをより容易に行なうことができる。また、底板26と天板28とによってろう材34を介してフィン32を挟んだ状態で底板26の周縁部27と天板28の周縁部30とを固定して全体を加熱したときに、天板28とフィン32とが離れてしまうのを抑制してフィン32と天板28や底板26とのろう付け接合をより確実に行なえるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却装置としては、パワーデバイス用基板と、パワーデバイス用基板の底面に接合される冷却器天板と、冷却器天板に対してパワーデバイス用基板とは反対側に配置されて冷却器天板と周縁部同士で接合されることによって冷却器天板との間に冷媒流路を形成する冷却器底板と、冷媒流路内で冷却器天板と冷却器底板との間に差し渡される放熱フィンと、を同時にろう付け接合するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この冷却装置では、冷却器底板の底面に底面に対して直角方向の深さを有する複数の窪みを形成しておき、ろう付け工程において、ろう硬化が始まる前に、治具ベース台に支持された複数の係止治具を、複数の窪みに対して深さ方向に突入させることにより、冷却器底板の、底面と平行な方向の動き(熱収縮)を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−221250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした冷却装置では、ろう付け工程における加熱時に、天板と底板との変形しやすさ(残留応力)の違いによって、天板と底板とのうち残留応力が小さい側の部材が残留応力が大きい側の部材に引っ張られてフィンから離れる側に反ってしまい、フィンとの接合性が悪化することがあった。
【0005】
本発明の冷却装置は、フィンと天板や底板とのろう付け接合をより確実に行なえるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の冷却装置は、
波板状のフィンを底板と該底板より残留応力が小さい形状の天板とによってろう材を介して挟んだ状態で前記底板と前記天板とを周縁部同士で固定し更に全体を加熱することによって前記フィンと前記底板と前記天板とをろう付け接合し、前記フィンの隙間に冷却媒体を流すことによって前記天板に対して前記底板側とは反対側に取り付けられる発熱体を冷却する冷却装置において、
前記天板には、ろう付け接合前において、前記フィンと前記天板との接合部の延在方向と同一方向に延在して前記底板側に突出する突出部が形成されてなる、
ことを要旨とする。
【0008】
この冷却装置では、底板より残留応力が小さい形状の天板には、ろう付け接合前において、フィンと天板との接合部の延在方向と同一方向に延在して底板側に突出する突出部が形成されている。これにより、波板状のフィンを底板と天板とによってろう材を介して挟むときに、フィンと天板との相対的な位置決めをより容易に行なうことができる。そして、波板状のフィンを底板と天板とによってろう材を介して挟んだ状態で底板と天板とを周縁部同士で固定し更に全体を加熱したときに、底板の外側方向(天板の延長方向)への変形を、天板の突出部の突出量が小さくなる(平面に近くなる)ことによって吸収することができ、天板がフィンから離れる側に反るなどして天板とフィンとが離れてしまうのを抑制することができる。この結果、フィンと天板や底板とのろう付け接合をより確実に行なうことができる。
【0009】
上述の冷却装置では、前記天板には、ろう付け接合前において、前記フィンと前記天板との接合部の延在方向と同一方向に延在して前記底板側に突出する突出部が形成されてなる、ものとしたが、前記天板には、ろう付け接合前において、前記フィンと前記天板との接合部の延在方向と同一方向に延在して前記底板側とは反対側に突出する突出部が形成されてなる、ものとしてもよい。この場合も、波板状のフィンを底板と天板とによってろう材を介して挟んだ状態で底板と天板とを周縁部同士で固定し更に全体を加熱したときに、底板の外側方向(天板の延長方向)への変形を、天板の突出部の突出量が小さくなる(平面に近くなる)ことによって吸収することができ、天板がフィンから離れる側に反るなどして天板とフィンとが離れてしまうのを抑制することができる。この結果、フィンと天板や底板とのろう付け接合をより確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としての冷却装置20の構成の概略を模式的に示す模式図である。
【図2】冷却装置20を分解して示す分解斜視図である。
【図3】実施例の冷却装置20を製造する際の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての冷却装置20の構成の概略を模式的に示す模式図であり、図2は、冷却装置20を分解して示す分解斜視図である。なお、図2では、天板28についてはフィン32とのろう付け接合を行なう前の様子を示しており、ろう材34については図示を省略した。
【0013】
実施例の冷却装置20は、図1や図2に示すように、インバータのスイッチング素子などの発熱素子10(n)を基盤12(n)を介して間接的に冷却する装置として構成されており、熱伝導性に優れた材料(例えば、ステンレスやアルミなどの金属)によって形成された底板26と、同じく熱伝導性に優れた材料(例えば、ステンレスやアルミなどの金属)によって形成された天板28と、同じく熱伝導性に優れた材料(例えば、ステンレスやアルミなどの金属)によって波板状に形成されて底板26の図中上面と天板28の図中下面とにろう付け接合される(ろう材34を用いて接合される)フィン32と、水やオイルなどの冷却媒体を底板26と天板28とによって形成される箱体に供給したり排出したりするのに用いられる供給管22および排出管24と、によって構成されている。ここで、基盤12(n)は、冷却装置20側(天板28側)から順に、熱伝導性に優れた材料(例えば、アルミニウムなど)によって形成された第1層,絶縁材料(例えば、窒化アルミニウムなど)によって形成された第2層,熱伝導性が優れると共に導電性を有する材料(例えば、アルミニウムなど)によって形成された第3層からなる三層の積層体として構成されている。また、発熱素子10(n)は、供給管22から供給されてフィン32の隙間を通って排出管24から排出される冷却媒体によってフィン32,天板28,基盤12(n)を介して冷却される。
【0014】
底板26や天板28は、平板に対してプレス加工などを施すことによって形成されており、底板26は、天板28に比して厚みが大きく且つ平板に対して大きく変形されて形成されている。したがって、底板26は、天板28に比して残留応力が大きく、底板26とフィン32と天板28とのろう付け接合のために加熱されたときに天板28に比して外側方向(特に、図中長手方向)に変形しやすくなっている。また、天板28は、底板26とフィン32と天板28とのろう付け接合前において、フィン32との接合部の延在方向(図1中手前奥方向、図2中短手方向)と同一方向に延在して且つ図中下面(底板26側)に突出する突出部29が形成されている。なお、この突出部29は、1つだけ形成されるものとしてもよいし、複数形成されるものとしてもよい。
【0015】
図3は、実施例の冷却装置20を製造する際の様子を模式的に示す説明図である。冷却装置20を製造する際には、まず、底板26の上面(天板28側),天板28の下面(底板26側),基盤12(n)の下面(天板28側)にろう材34を塗って、底板26,フィン32,天板28,基盤12(n)の順に積層する(図3(a)参照)。即ち、フィン32を底板26と天板28とによってろう材34を介して挟むと共に基盤12(n)をろう材34を介して天板28に載置するのである。このとき、天板28の下面に突出部29が形成されていることにより、天板28とフィン32との相対的な位置決めをより容易に行なうことができる。そして、このように天板28とフィン32との相対的な位置決めをより適正に行なうことにより、冷却装置20の製造後において、底板26と天板28とによって形成される箱体に冷却媒体を流すときの天板28の各位置(フィン32との各接合位置)における熱抵抗のバラツキもより抑制できると考えられる。なお、ろう材34を塗るのに代えて、シート状のろう材を挟む(介装する)ものとしてもよい。
【0016】
そして、その状態で底板26の周縁部27と天板28の周縁部30とをファイバレーザや治具などによって複数箇所で固定し(図3(b)参照)、全体をろう材34が溶け始める温度(例えば、570度や580度など)より高い温度まで加熱する。このとき、底板26と天板28との残留応力の違いや他の要因(例えば膨張率の違いなど)によって底板26の方が天板28に比して外側方向(天板28の延長方向(図中左右方向))に変形しやすいが、実施例では、これを踏まえて、天板28に突出部29が形成されている(図3中点線で囲んだ領域参照)ものとしたから、温度上昇時の底板26と天板28との変形の程度の差を、突出部29の突出量が小さくなる(平面に近くなる)ことによって吸収することができる(図3(c)参照)。これにより、天板28の略中央が上側に反るなどしてフィン32と天板28とが離れてしまうのを抑制することができる。そして、その後に温度が低下してろう材34が硬化することにより、フィン32と底板26と天板28とがろう付け接合されると共に天板28と基盤12(n)とがろう付け接合される。このように、ろう付け接合前に天板28に突出部29が形成されているものとして、フィン32と底板26と天板28とをろう付け接合することにより、このろう付け接合をより確実に行なえるようにすることができる。なお、発熱素子10(n)は、このろう付け接合の後に、基盤12(n)に実装するものとした。
【0017】
以上説明した実施例の冷却装置20によれば、天板28には、ろう付け接合前において、フィン32と天板28との接合部の延在方向と同一方向に延在して底板26側に突出する突出部29が形成されているから、冷却装置20の製造工程のうちフィン32を底板26と天板28とによってろう材34を介して挟むときにフィン32と天板28との相対的な位置決めをより容易に行なうことができると共に、フィン32を底板26と天板28とによってろう材34を介して挟んだ状態で底板26の周縁部27と天板28の周縁部30とを固定して全体を加熱したときに天板28とフィン32とが離れてしまうのを抑制してフィン32と天板28や底板26とのろう付け接合をより確実に行なえるようにすることができる。
【0018】
実施例の冷却装置20では、天板28には、ろう付け接合前において、フィン32と天板28との接合部の延在方向と同一方向に延在して底板26側に突出する突出部29が形成されているものとしたが、これに代えてまたは加えて、フィン32と天板28との接合部の延在方向と同一方向に延在して底板26側と反対側(基盤12(n)側)に突出する突出部が形成されているものとしてもよい。天板28における底板26側とは反対側にだけ突出部が形成されている場合、突出部29をフィン32と天板28との相対的な位置決めに用いることはできないものの、実施例と同様に、フィン32を底板26と天板28とによってろう材34を介して挟んだ状態で底板26の周縁部27と天板28の周縁部30とを固定して全体を加熱したときに、天板28とフィン32とが離れてしまうのを抑制して、フィン32と天板28や底板26とのろう付け接合をより確実に行なえるようにすることができる。
【0019】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、フィン32が「フィン」に相当し、底板26が「底板」に相当し、天板28が「天板」に相当し、ろう材34が「ろう材」に相当し、発熱素子10(n)や基盤12(n)が「発熱体」に相当する。
【0020】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0021】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、冷却装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10(n) 発熱素子、12(n) 基盤、20 冷却装置、22 供給管、24 排出管、26 底板、27 周縁部、28 天板、29 突出部、30 周縁部、32 フィン、34 ろう材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波板状のフィンを底板と該底板より残留応力が小さい形状の天板とによってろう材を介して挟んだ状態で前記底板と前記天板とを周縁部同士で固定し更に全体を加熱することによって前記フィンと前記底板と前記天板とをろう付け接合し、前記フィンの隙間に冷却媒体を流すことによって前記天板に対して前記底板側とは反対側に取り付けられる発熱体を冷却する冷却装置において、
前記天板には、ろう付け接合前において、前記フィンと前記天板との接合部の延在方向と同一方向に延在して前記底板側に突出する突出部が形成されてなる、
冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115052(P2013−115052A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256698(P2011−256698)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】