冷媒ガス圧縮機
【課題】 回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置とを備える冷媒ガス圧縮機であって、冷媒ガスのハウジング外への漏洩を従来に比べて、より効果的に阻止できる冷媒ガス圧縮機を提供する。
【解決手段】 回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置と、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体とを備え、回転体はハウジングボス部に挿入されると共に回転軸先端部が挿入されるボス部を有し、ハウジングボス部と回転体ボス部との間の環状隙間に第2軸封装置が配設されている。
【解決手段】 回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置と、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体とを備え、回転体はハウジングボス部に挿入されると共に回転軸先端部が挿入されるボス部を有し、ハウジングボス部と回転体ボス部との間の環状隙間に第2軸封装置が配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒ガス圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置とを備える冷媒ガス圧縮機が特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2003−246976
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回転軸のハウジング貫通部を介する冷媒ガスのハウジング外への漏洩は、当該貫通部に配設された軸封装置により阻止されているが、軸封装置は冷媒ガスのハウジング外への漏洩を完全に阻止できるものではない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置とを備える冷媒ガス圧縮機であって、冷媒ガスのハウジング外への漏洩を従来に比べて、より効果的に阻止できる冷媒ガス圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置と、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体とを備え、回転体はハウジングボス部に挿入されると共に回転軸先端部が挿入されるボス部を有し、ハウジングボス部と回転体ボス部との間の環状隙間に第2軸封装置が配設されていることを特徴とする冷媒ガス圧縮機を提供する。
本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置から僅かに漏れ出た冷媒ガスのハウジング外へ漏洩は、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体のボス部とハウジングボス部との間の環状隙間に配設された第2軸封装置により阻止される。従って本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が従来に比べてより効果的に阻止される。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転体先端部との間にシール部材が配設されている。
回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転体先端部との間に配設されたシール部材により、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置から僅かに漏れ出た冷媒ガスが、回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転体先端部との間の隙間を通ってハウジング外へ漏洩する事態の発生が阻止される。この結果、冷媒ガスのハウジング外への漏洩がより効果的に阻止される。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、軸封装置と第2軸封装置との間に潤滑剤が配設されている。
軸封装置と第2軸封装置との間に潤滑剤が配設されることにより、第2軸封装置が潤滑され、第2軸封装置のシール材の磨耗が抑制される。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、軸封装置と第2軸封装置との間に冷媒吸着剤が配設されている。
軸封装置と第2軸封装置との間に冷媒吸着剤が配設されることにより、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が更に効果的に阻止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置から僅かに漏れ出た冷媒ガスのハウジング外へ漏洩は、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体のボス部とハウジングボス部との間の環状隙間に配設された第2軸封装置により阻止される。従って本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が従来に比べてより効果的に阻止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例に係る斜板式冷媒ガス圧縮機を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に示すように、冷媒ガスを吸入圧縮する可変容量型斜板式圧縮機Aは、回転軸10と、回転軸10に固定されたローター11と、傾角可変に回転軸10に支持された斜板12とを備えている。斜板12は、斜板12の傾角変動を許容するリンク機構13を介してローター11に連結され、ローター11ひいては回転軸10に同期して回転する。
斜板12の周縁部に摺接する一対のシュー14を介してピストン15が斜板12に係留されている。
ピストン15は、シリンダブロック16に形成されたボア16aに挿入されている。
ローター11、斜板12、シュー14、ピストン15は、回転軸10により駆動される圧縮機構を構成している。
回転軸10、ローター11、斜板12を収容するクランク室17を形成する有底円筒状のフロントハウジング18が配設されている。回転軸10は、フロントハウジング18のボス部18aを貫通して外部へ延びている。
フロントハウジングのボス部18aと当該ボス部を貫通する回転軸10との間の環状隙間に回転軸貫通部を密封する軸封装置19が配設されている。
【0011】
フロントハウジング18に取りつけられた電磁クラッチ20のアーマチュア21にボス部21aが形成されている。ボス部21aはフロントハウジングのボス部18aに挿入されると共に、ボス部21aに回転軸10の先端部10aが挿入されている。フロントハウジングのボス部18aとアーマチュアのボス部21aとの間の環状隙間に、且つ軸封装置19よりもフロントハウジング外側に第2軸封装置22が配設されている。
第2軸封装置22は、図2に示すように、リップシール部材22aと、リップシール部材22aを保持固定する保持金具22b、22cとを有している。フロントハウジングのボス部18aに係止されたスナップリング23が、ボス部18aからの第2軸封装置22の脱落を防止している。リップシール部材22aの外周縁部はボス部18aの内周面に当接して、リップシール部材22aとボス部18aとの間の隙間からの冷媒ガスの漏洩を防止し、リップシール部材22aの内周縁部は回転軸10に当接して、リップシール部材22aと回転軸10との間の隙間からの冷媒ガスの漏洩を防止している。リップシール部材22aは耐冷媒ガス透過性と耐磨耗性とに優れる水素化二トリルゴム(HNBR)又はフッ素樹脂を主体に配合された素材により形成されている。
【0012】
アーマチュアのボス部21aと回転軸10の先端部10aとが、セレーション結合又はスプライン結合し、回転軸10の先端部10aから更に突出する先端小径部10bがアーマチュアのボス部21a貫通し、当該先端小径部10bにナット24が螺合して、ナット24の座面がアーマチュア21のボス部端面に押し付けられることにより、アーマチュア21は回転軸10先端部10aに固定されている。前記先端小径部10bとアーマチュアのボス部21aとの間の環状隙間にOリング25が配設されている。Oリング25は耐冷媒ガス透過性に優れる水素化二トリルゴム(HNBR)を主体に配合された素材により形成されている。
図示しない外部駆動源から電磁クラッチのアーマチュア21を介して回転軸10に回転動力が伝達される。
【0013】
図1に示すように、吸入室と吐出室とを形成するシリンダヘッド26が配設されている。
シリンダブロック16とシリンダヘッド26との間にボア16aに連通する吸入穴と吐出穴とが形成された弁板27が配設されている。
フロントハウジング18、シリンダブロック16、弁板27、シリンダヘッド26は、ボルト28により一体に組み付けられている。フロントハウジング18、シリンダブロック16、弁板27、シリンダヘッド26は回転軸10と回転軸10により駆動される圧縮機構とを収容するハウジングを形成している。
フロントハウジング18とシリンダブロック16との間、シリンダブロック16と弁板27との間、弁板27とシリンダヘッド26との間に、ガスケット29、30、31が配設されている。
回転軸10はフロントハウジング18、シリンダブロック16により回転可能に支持されている。
【0014】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、図示しない外部駆動源の回転動力が電磁クラッチ20のアーマチュア21に伝達されてアーマチュア21が回転し、アーマチュア21の回転がセレーション結合部又はスプライン結合部を介して回転軸10に伝達され、回転軸10の回転がローター11、リンク機構13を介して斜板12に伝達される。斜板12の回転に伴う斜板12周縁部の回転軸10延在方向の往復動が、シュー14を介してピストン15に伝達され、ピストン15がボア16a内で往復動する。外部冷凍回路から還流した冷媒が、シリンダヘッド26に形成された吸入ポートと吸入室と吸入穴と吸入弁とを介してボア16aへ吸入され、ボア16a内で圧縮され、吐出穴と吐出弁と吐出室とシリンダヘッド26に形成された吐出ポートとを介して外部冷凍回路へ流出する。
軸封装置19、22、Oリング25、ガスケット29〜31により、可変容量型斜板式圧縮機Aのハウジングからの冷媒ガスの漏洩が防止されている。
【0015】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、フロントハウジングのボス部18aとボス部18aを貫通する回転軸10との間の環状隙間に配設された軸封装置19から僅かに漏れ出た冷媒ガスのハウジング外へ漏洩は、回転軸先端部10aに固定され外部駆動源により回転駆動されるアーマチュア21のボス部21aとフロントハウジングのボス部18aとの間の環状隙間に配設された第2軸封装置22により阻止される。従って可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が、第2軸封装置22を有さない従来の冷媒ガス圧縮機に比べてより効果的に阻止される。
【0016】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、アーマチュア21のボス部21aとボス部21aに挿入された回転軸の小径先端部10bとの間の環状隙間に配設されたOリング25により、フロントハウジングのボス部18aとボス部18aを貫通する回転軸10との間の環状隙間に配設された軸封装置19から僅かに漏れ出た冷媒ガスが、回転軸の小径先端部10bとアーマチュア21のボス部21aとの間の環状隙間を通ってハウジング外へ漏洩する事態の発生が阻止される。この結果、冷媒ガスのハウジング外への漏洩がより効果的に阻止される。
【0017】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、回転軸10の先端部10aから更に突出する先端小径部10bがアーマチュアのボス部21aを貫通し、当該先端小径部10bにナット24が螺合して、ナット24の座面をアーマチュア21のボス部端面に押し付けることにより、アーマチュア21を回転軸10先端部10aに固定したが、アーマチュアのボス部21aに挿入した回転軸先端部10aの端面に、アーマチュアのボス部21aを貫通するボルトを螺入させ、ボルト頭部の座面をアーマチュア21のボス部端面に押し付けることにより、アーマチュア21を回転軸10先端部10aに固定しても良い。この場合には、Oリング25は回転軸先端部10aの先端近傍部とアーマチュアのボス部21aとの間の環状隙間に配設することになる。
【実施例2】
【0018】
図2に一点鎖線で示すように、軸封装置19と第2軸封装置22との間にオイル等の液体潤滑剤や二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を32を配設しても良い。潤滑剤32は、アーマチュアのボス部21aに塗布しても良く、或いは軸封装置19と第2軸封装置22の間に空間に封入しても良い。
軸封装置19と第2軸封装置22との間に潤滑剤32が配設されることにより、第2軸封装置22のリップシール部材22aが潤滑され、リップシール部材22aの磨耗が抑制される。
【実施例3】
【0019】
図2に二点鎖線で示すように、軸封装置19と第2軸封装置22との間に活性炭やゼオライト等の冷媒吸着剤33を配設しても良い。円筒状に形成した冷媒吸着剤33を、ボス部18aの回転軸貫通穴に嵌合固定する。
軸封装置19と第2軸封装置22との間に冷媒吸着剤33が配設されることにより、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が更に効果的に阻止される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は斜板式圧縮機のみならず、冷媒ガスを吸引圧縮する全ての形式の圧縮機に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る可変容量型斜板式圧縮機の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る可変容量型斜板式圧縮機の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
A 可変容量型斜板式圧縮機
10 回転軸
11 ローター
12 斜板
13 リンク機構
14 シュー
15 ピストン
18 フロントハウジング
19、22 軸封装置
21 アーマチュア
25 Oリング
32 潤滑剤
33 冷媒吸着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒ガス圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置とを備える冷媒ガス圧縮機が特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2003−246976
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回転軸のハウジング貫通部を介する冷媒ガスのハウジング外への漏洩は、当該貫通部に配設された軸封装置により阻止されているが、軸封装置は冷媒ガスのハウジング外への漏洩を完全に阻止できるものではない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置とを備える冷媒ガス圧縮機であって、冷媒ガスのハウジング外への漏洩を従来に比べて、より効果的に阻止できる冷媒ガス圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置と、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体とを備え、回転体はハウジングボス部に挿入されると共に回転軸先端部が挿入されるボス部を有し、ハウジングボス部と回転体ボス部との間の環状隙間に第2軸封装置が配設されていることを特徴とする冷媒ガス圧縮機を提供する。
本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置から僅かに漏れ出た冷媒ガスのハウジング外へ漏洩は、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体のボス部とハウジングボス部との間の環状隙間に配設された第2軸封装置により阻止される。従って本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が従来に比べてより効果的に阻止される。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転体先端部との間にシール部材が配設されている。
回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転体先端部との間に配設されたシール部材により、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置から僅かに漏れ出た冷媒ガスが、回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転体先端部との間の隙間を通ってハウジング外へ漏洩する事態の発生が阻止される。この結果、冷媒ガスのハウジング外への漏洩がより効果的に阻止される。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、軸封装置と第2軸封装置との間に潤滑剤が配設されている。
軸封装置と第2軸封装置との間に潤滑剤が配設されることにより、第2軸封装置が潤滑され、第2軸封装置のシール材の磨耗が抑制される。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、軸封装置と第2軸封装置との間に冷媒吸着剤が配設されている。
軸封装置と第2軸封装置との間に冷媒吸着剤が配設されることにより、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が更に効果的に阻止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置から僅かに漏れ出た冷媒ガスのハウジング外へ漏洩は、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体のボス部とハウジングボス部との間の環状隙間に配設された第2軸封装置により阻止される。従って本発明に係る冷媒ガス圧縮機においては、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が従来に比べてより効果的に阻止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例に係る斜板式冷媒ガス圧縮機を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に示すように、冷媒ガスを吸入圧縮する可変容量型斜板式圧縮機Aは、回転軸10と、回転軸10に固定されたローター11と、傾角可変に回転軸10に支持された斜板12とを備えている。斜板12は、斜板12の傾角変動を許容するリンク機構13を介してローター11に連結され、ローター11ひいては回転軸10に同期して回転する。
斜板12の周縁部に摺接する一対のシュー14を介してピストン15が斜板12に係留されている。
ピストン15は、シリンダブロック16に形成されたボア16aに挿入されている。
ローター11、斜板12、シュー14、ピストン15は、回転軸10により駆動される圧縮機構を構成している。
回転軸10、ローター11、斜板12を収容するクランク室17を形成する有底円筒状のフロントハウジング18が配設されている。回転軸10は、フロントハウジング18のボス部18aを貫通して外部へ延びている。
フロントハウジングのボス部18aと当該ボス部を貫通する回転軸10との間の環状隙間に回転軸貫通部を密封する軸封装置19が配設されている。
【0011】
フロントハウジング18に取りつけられた電磁クラッチ20のアーマチュア21にボス部21aが形成されている。ボス部21aはフロントハウジングのボス部18aに挿入されると共に、ボス部21aに回転軸10の先端部10aが挿入されている。フロントハウジングのボス部18aとアーマチュアのボス部21aとの間の環状隙間に、且つ軸封装置19よりもフロントハウジング外側に第2軸封装置22が配設されている。
第2軸封装置22は、図2に示すように、リップシール部材22aと、リップシール部材22aを保持固定する保持金具22b、22cとを有している。フロントハウジングのボス部18aに係止されたスナップリング23が、ボス部18aからの第2軸封装置22の脱落を防止している。リップシール部材22aの外周縁部はボス部18aの内周面に当接して、リップシール部材22aとボス部18aとの間の隙間からの冷媒ガスの漏洩を防止し、リップシール部材22aの内周縁部は回転軸10に当接して、リップシール部材22aと回転軸10との間の隙間からの冷媒ガスの漏洩を防止している。リップシール部材22aは耐冷媒ガス透過性と耐磨耗性とに優れる水素化二トリルゴム(HNBR)又はフッ素樹脂を主体に配合された素材により形成されている。
【0012】
アーマチュアのボス部21aと回転軸10の先端部10aとが、セレーション結合又はスプライン結合し、回転軸10の先端部10aから更に突出する先端小径部10bがアーマチュアのボス部21a貫通し、当該先端小径部10bにナット24が螺合して、ナット24の座面がアーマチュア21のボス部端面に押し付けられることにより、アーマチュア21は回転軸10先端部10aに固定されている。前記先端小径部10bとアーマチュアのボス部21aとの間の環状隙間にOリング25が配設されている。Oリング25は耐冷媒ガス透過性に優れる水素化二トリルゴム(HNBR)を主体に配合された素材により形成されている。
図示しない外部駆動源から電磁クラッチのアーマチュア21を介して回転軸10に回転動力が伝達される。
【0013】
図1に示すように、吸入室と吐出室とを形成するシリンダヘッド26が配設されている。
シリンダブロック16とシリンダヘッド26との間にボア16aに連通する吸入穴と吐出穴とが形成された弁板27が配設されている。
フロントハウジング18、シリンダブロック16、弁板27、シリンダヘッド26は、ボルト28により一体に組み付けられている。フロントハウジング18、シリンダブロック16、弁板27、シリンダヘッド26は回転軸10と回転軸10により駆動される圧縮機構とを収容するハウジングを形成している。
フロントハウジング18とシリンダブロック16との間、シリンダブロック16と弁板27との間、弁板27とシリンダヘッド26との間に、ガスケット29、30、31が配設されている。
回転軸10はフロントハウジング18、シリンダブロック16により回転可能に支持されている。
【0014】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、図示しない外部駆動源の回転動力が電磁クラッチ20のアーマチュア21に伝達されてアーマチュア21が回転し、アーマチュア21の回転がセレーション結合部又はスプライン結合部を介して回転軸10に伝達され、回転軸10の回転がローター11、リンク機構13を介して斜板12に伝達される。斜板12の回転に伴う斜板12周縁部の回転軸10延在方向の往復動が、シュー14を介してピストン15に伝達され、ピストン15がボア16a内で往復動する。外部冷凍回路から還流した冷媒が、シリンダヘッド26に形成された吸入ポートと吸入室と吸入穴と吸入弁とを介してボア16aへ吸入され、ボア16a内で圧縮され、吐出穴と吐出弁と吐出室とシリンダヘッド26に形成された吐出ポートとを介して外部冷凍回路へ流出する。
軸封装置19、22、Oリング25、ガスケット29〜31により、可変容量型斜板式圧縮機Aのハウジングからの冷媒ガスの漏洩が防止されている。
【0015】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、フロントハウジングのボス部18aとボス部18aを貫通する回転軸10との間の環状隙間に配設された軸封装置19から僅かに漏れ出た冷媒ガスのハウジング外へ漏洩は、回転軸先端部10aに固定され外部駆動源により回転駆動されるアーマチュア21のボス部21aとフロントハウジングのボス部18aとの間の環状隙間に配設された第2軸封装置22により阻止される。従って可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が、第2軸封装置22を有さない従来の冷媒ガス圧縮機に比べてより効果的に阻止される。
【0016】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、アーマチュア21のボス部21aとボス部21aに挿入された回転軸の小径先端部10bとの間の環状隙間に配設されたOリング25により、フロントハウジングのボス部18aとボス部18aを貫通する回転軸10との間の環状隙間に配設された軸封装置19から僅かに漏れ出た冷媒ガスが、回転軸の小径先端部10bとアーマチュア21のボス部21aとの間の環状隙間を通ってハウジング外へ漏洩する事態の発生が阻止される。この結果、冷媒ガスのハウジング外への漏洩がより効果的に阻止される。
【0017】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、回転軸10の先端部10aから更に突出する先端小径部10bがアーマチュアのボス部21aを貫通し、当該先端小径部10bにナット24が螺合して、ナット24の座面をアーマチュア21のボス部端面に押し付けることにより、アーマチュア21を回転軸10先端部10aに固定したが、アーマチュアのボス部21aに挿入した回転軸先端部10aの端面に、アーマチュアのボス部21aを貫通するボルトを螺入させ、ボルト頭部の座面をアーマチュア21のボス部端面に押し付けることにより、アーマチュア21を回転軸10先端部10aに固定しても良い。この場合には、Oリング25は回転軸先端部10aの先端近傍部とアーマチュアのボス部21aとの間の環状隙間に配設することになる。
【実施例2】
【0018】
図2に一点鎖線で示すように、軸封装置19と第2軸封装置22との間にオイル等の液体潤滑剤や二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を32を配設しても良い。潤滑剤32は、アーマチュアのボス部21aに塗布しても良く、或いは軸封装置19と第2軸封装置22の間に空間に封入しても良い。
軸封装置19と第2軸封装置22との間に潤滑剤32が配設されることにより、第2軸封装置22のリップシール部材22aが潤滑され、リップシール部材22aの磨耗が抑制される。
【実施例3】
【0019】
図2に二点鎖線で示すように、軸封装置19と第2軸封装置22との間に活性炭やゼオライト等の冷媒吸着剤33を配設しても良い。円筒状に形成した冷媒吸着剤33を、ボス部18aの回転軸貫通穴に嵌合固定する。
軸封装置19と第2軸封装置22との間に冷媒吸着剤33が配設されることにより、冷媒ガスのハウジング外への漏洩が更に効果的に阻止される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は斜板式圧縮機のみならず、冷媒ガスを吸引圧縮する全ての形式の圧縮機に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る可変容量型斜板式圧縮機の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る可変容量型斜板式圧縮機の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
A 可変容量型斜板式圧縮機
10 回転軸
11 ローター
12 斜板
13 リンク機構
14 シュー
15 ピストン
18 フロントハウジング
19、22 軸封装置
21 アーマチュア
25 Oリング
32 潤滑剤
33 冷媒吸着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置と、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体とを備え、回転体はハウジングボス部に挿入されると共に回転軸先端部が挿入されるボス部を有し、ハウジングボス部と回転体ボス部との間の環状隙間に第2軸封装置が配設されていることを特徴とする冷媒ガス圧縮機。
【請求項2】
回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転軸先端部との間にシール部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項3】
第2軸封装置は水素化二トリルゴム又はフッ素樹脂を主体に配合された素材により形成されたリップシール部材を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項4】
シール部材は水素化二トリルゴムを主体に配合された素材により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項5】
軸封装置と第2軸封装置との間に潤滑剤が配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項6】
軸封装置と第2軸封装置との間に冷媒吸着剤が配設されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項1】
回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングボス部と当該ボス部を貫通する回転軸との間に配設された軸封装置と、回転軸先端部に固定され外部駆動源により回転駆動される回転体とを備え、回転体はハウジングボス部に挿入されると共に回転軸先端部が挿入されるボス部を有し、ハウジングボス部と回転体ボス部との間の環状隙間に第2軸封装置が配設されていることを特徴とする冷媒ガス圧縮機。
【請求項2】
回転体ボス部と当該ボス部に挿入された回転軸先端部との間にシール部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項3】
第2軸封装置は水素化二トリルゴム又はフッ素樹脂を主体に配合された素材により形成されたリップシール部材を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項4】
シール部材は水素化二トリルゴムを主体に配合された素材により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項5】
軸封装置と第2軸封装置との間に潤滑剤が配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の冷媒ガス圧縮機。
【請求項6】
軸封装置と第2軸封装置との間に冷媒吸着剤が配設されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の冷媒ガス圧縮機。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2006−283747(P2006−283747A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170189(P2005−170189)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
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