説明

凝縮器

【課題】 コンパクトな水冷凝縮器であって、その冷却水パイプ14の取付け位置を任意にすることができる自由度の高いものの提供。
【解決手段】 ケーシング本体4のコア収納部4bの両端に一対づつの水タンク部3を予め突設形成しておく。そして、一対の水タンク部3のうち任意の一方を選択して、そこに冷却水パイプ14を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池等から排出される水蒸気等を凝縮して回収するものに最適な凝縮器に関する。
【背景技術】
【0002】
空調用熱交換器等に用いられる凝縮器は、被凝縮ガスを空気により冷却するものが一般的である。また、よりコンパクトにするために、水冷の凝縮器も知られている。コンパクト化を必要とする凝縮器は狭小の場所に配置され、凝縮器回りの各種機器の存在を考慮し、それらと干渉しないように被凝縮ガスの取付パイプや冷却水パイプの取り付け位置をその都度考慮する必要がある。
そのため各種仕様に応じ、その都度冷却水タンクの配置位置を設計し、それに応じた金型を製作していた。
【0003】
【特許文献1】特開2008−4324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水冷型凝縮器は、その取付位置周囲の各種機器の配置に応じて冷却水タンクの位置を設計し、各仕様毎に金型を製作する必要があり、特に少量生産の場合にコスト高になる欠点があった。また、コンパクトに形成された凝縮器は被凝縮ガスの流通路にインナーフィンを設けるため、そこに凝縮水が付着し被凝縮ガスの流通を阻害して、ガスの圧力低下が起こり、結果として凝縮性能が低下する欠点があった。
そこで本発明はこれらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、底部のみ開放の細長い箱状に形成され、その箱状の長手方向の両端部に一対のガスタンク部(1) が一体に設けられると共に、その一対のガスタンク部(1) を除いた前記箱状の中間部分にコア収納部(4b) が形成され、そのコア収納部(4b)の両端部に一対づつの冷却水タンク部(3)が一体に突設形成されたケーシング本体(4)と、
前記一対のガスタンク部(1) および冷却水タンク部(3)を含んで、そのケーシング本体(4)の底部の開口の外周に整合する内周を有する立ち上げ縁部(5)が環状に形成された細長いケーシング蓋(6)と、
前記冷却水タンク部(3)を除く、ケーシング本体(4)の前記コア収納部(4b)の平面に整合する平面形状を有して、それぞれ浅い溝状に形成された一対のプレート(9a)をその溝側を対向させて内部に偏平なガス流路(2)が形成されると共に、その外面側に冷却水流路(10)が形成され、両端縁部を除き、その溝底の両面にケーシング本体(4)の中心線に対して傾斜して配置された多数の凸条(7a)と凹溝(7b)により波形に一体に曲折形成された波形部(7)を有し、前記両端開口(8) が矩形に形成されたエレメント(9) と、
複数の前記エレメント(9) の積層体からなり、隣合うエレメント(9) の両端は、その全幅で接触して、前記コア収納部(4b)に収納されるコア(11)と、
を具備し、一方の前記ガスタンク部(1) から各エレメント(9) のガス流路(2)を介して他方の前記ガスタンク部(1) に被凝縮ガス(17)が流通すると共に、コア収納部(4b)の一方の端部に形成された一対の冷却水タンク部(3)の内の一方と、他方の端部に形成された冷却水タンク部(3)の内の一方との間に、各エレメント(9) の外周間の隙間を介して冷却水(18)を流通させるように構成したことを特徴とする凝縮器である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記エレメント(9) を構成する一対のプレート(9a)は、その内面でそれぞれの波形部(7)の各凸状(7a)が平面的に交差し且つ、互いに接触せず、両プレート(9a)間に空間(12)が形成され、隣合うエレメント(9) の各プレート(9a)は、その外面でそれぞれの波形部(7)に形成された凸条(7a)が、互いに交差して接触するように形成され、各エレメント(9) の長手方向が重力方向に配置され、被凝縮ガス(17)が各エレメント(9) 内を上方から下方に導かれる凝縮器である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記ケーシング本体(4)およびケーシング蓋(6)に、前記波形部(7)が形成され、その内面の各凸条(7a)が隣接エレメント(9) の外面の凸条(7a)と交差して互いに接触される凝縮器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の凝縮器は、ケーシング本体4のコア収納部4bの側壁4aの両端部に一対づつの水タンク部3が一体に突設形成されている。そのため、冷却水パイプ14の取付け位置の自由度が増し、冷却水パイプ14の異なる各種仕様の凝縮器に対応できる。すなわち、冷却水の入口はコア収納部4bの一方の端部に形成された一対の水タンク部3のうちいずれか一方を選択することができる。
また、冷却水の出口はコア収納部4bの他方の端部に形成された一対の水タンク部3のうちいずれか一方を選択できる。これは一例として図2のように一対の冷却水パイプ14を設ける場合と、図10のように一対の冷却水パイプ14を設ける場合、その他の場合が自在である。
【0009】
上記構成において、請求項2に記載のように、エレメント9を構成する一対のプレート9aを、その対向する内面側の波形部7の各凸条7aが平面的に交差し且つ、それらが互いに接触せず、両プレート9a間に空間12(ガス流路2)を形成し、各エレメント9の長手方向を重力方向に位置して、被凝縮ガス17をその上方から下方に導くようにした場合には、エレメント9の各プレート9aに付着した凝縮水16は内部の凹溝7bに沿って流通し、各エレメント9の両側部を円滑に流下する。
それによって、エレメント9内に被凝縮ガス17の流通路を広く確保し、被凝縮ガス17の流通にともなう圧力損失を減少させ、結果として被凝縮ガス17の凝縮を円滑に行うことができる。
【0010】
上記構成において、請求項3に記載のように、ケーシング本体4およびケーシング蓋6に波形部7を形成し、その内面の各凸条7aを隣接するエレメント9の外面の凸条7aに交差して接触させた場合には、ケーシング本体4の強度を高くし且つ、そこに設けた波形部7の放熱効果を有効に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の分解斜視図であり、図2はその組立状態を示す正面図、図3は図2のIII-III矢視断面略図、図4は図3のIV-IV矢視断面略図、図5は図3のV-V矢視断面略図、図6は本凝縮器のエレメント9の分解斜視図である。
【0012】
この凝縮器は、ケーシング本体4およびケーシング蓋6からなるケーシングと、そのコア収納部4b内に収納されるコア11並びに、一対づつの冷却水パイプ14、ガスパイプ13を有する。
ケーシング本体4は、底部のみ開放の細長い箱状に形成され、その箱状の長手方向の両端部に一対のガスタンク部1が一体に設けられている。そして、その一対のガスタンク部1を除いた中間部分にコア収納部4bが形成され、そのコア収納部4bの両端部であって且つ、その側壁4aに一対づつの水タンク部3が一体に突設形成されている。ケーシング蓋6の内周縁は、そのケーシング本体4の底部開口の外周に整合して、その周縁部に立ち上げ縁部5が環状に形成されている。即ち、ケーシング蓋6にはケーシング本体4のガスタンク部1および水タンク部3に対応する突設部が形成されている。
【0013】
この例では、ケーシング本体4の一方の側壁4aの両端部に冷却水パイプ14取付け用の孔が形成されていると共に、ケーシング本体4の長手方向両端面にガスパイプ13取付け用の孔が夫々形成されている。これらの孔は、ケーシング本体4をプレス成形により箱状に形成した後に、穿設される。
そこで、一対のケーシング本体4の取り付け孔は、4つの水タンク部3のうち任意の2つを選ぶことが可能である。同様にガスパイプ13取付け用の孔は、ガスタンク部1の上面、裏面(ケーシング蓋6)あるいは両側面のいずれかに穿設することも可能である。
【0014】
つぎに、エレメント9は、図6に示すごとく、一対のプレート9aからなる。エレメント9の平面形状はガスタンク部1のコア収納部4bに整合する。各プレート9aは、夫々浅い溝状に形成されている。それら一対のプレート9aを、その溝側を対向させて嵌着してエレメント9を構成する。この例では下側のプレート9aの内幅が、上側のプレート9aの外幅に整合する。各プレート9aは、その溝底の表面に多数の凸条7aと凹溝7bとを交互に曲折した波形部7を一体に有する。その凸条7aおよび凹溝7bはエレメント9の中心線に対して傾斜すると共に、上側の凸条7aと下側の凸条7aとでは平面的に交差する。また各プレート9aにはその内面側に突出するようにディンプル15が適宜間隔で形成されている。一対のプレート9aの各ディンプル15は整合する位置に配置されて、一対のプレート9aを嵌着したとき、ディンプル15どうしは図9のごとく接触するが、ディンプル15の存在しない位置では、図3および図4に示すごとく、エレメント9の内部は接触せず、エレメント9の全幅にわたって空間を有するガス流路2(空間12)が形成される。
【0015】
各プレート9aの両端縁部は平坦に形成され且つ、わずかに厚み方向に拡開された開口8が形成されている。そして、両プレート9aを嵌着したとき、開口8は図5に示すごとく矩形に形成される。開口8の中央には一方側に爪部が他方側に欠切部が形成され、エレメント9を積層したとき、隣接するエレメント9どうしを互いに位置決めして一体化している。
このようなエレメント9が積層されると、図3および図4に示すごとく、各エレメント9の外面どうしはその凸条7aが互いに平面的に交差すると共に接触する。同様にケーシング本体4およびケーシング蓋6の凸条7aと、積層方向の最外側のエレメント9の凸条7aとの間でも互いに交差すると共に接触する。このようにしてなる各部品の表面にはろう材が塗布または被覆され、それらを組立てた状態で高温の炉内で一体的にろう付け固定され、凝縮器を完成する。
【0016】
(作用)
本発明の凝縮器は、図2に示すごとく、その長手方向が上下方向に平行に位置される。そして上側のガスパイプ13およびガスタンク部1から各エレメント9内に被凝縮ガス17が供給され、下側のガスタンク部1、ガスパイプ13を介してそれが流出する。
また、下側に位置する冷却水パイプ14および水タンク部3からは、冷却水18がエレメント9外面側の冷却水流路10を流通し、上側に位置する水タンク部3および冷却水パイプ14からそれが流出する。そして、冷却水18と被凝縮ガス17との間に熱交換が行われ、被凝縮ガス17中の水蒸気が凝縮され、その凝縮液がガスパイプ13から流出する。
【0017】
このときエレメント9内では、図7に示すごとく、被凝縮ガス17中の水蒸気は凝縮水16となりエレメント9内面に付着するが、被凝縮ガス17の流れに押されて、各プレートの凹溝7bに移動し、その凹溝7bを図8(A)、(B)のごとく下方に流下する。この(B)は図6の上側に位置するプレート9aを示し、(A)は下側のプレート9aを示す。そして、各プレート9aの両側に集められた凝縮水16は、その両側から下方に流下する。
このように、エレメント9のガス流路2を全幅にわたって空間を形成すると、凝縮水16の排出が円滑に行われ、被凝縮ガス17の流通抵抗を小さくして、小さなポンプ動力で大きな凝縮性能を得ることができる。
【0018】
次に、図10は本発明の他の凝縮器であって、ガスパイプ13および冷却水パイプ14の位置が、図2のそれと異なるものである。この例では一対の冷却水パイプ14がケーシング本体4の対角位置に配置されると共に、下側のガスパイプ13がケーシング本体4の厚さ方向の一端面に配置されている。また、これに替えてガスパイプ13をガスタンク部1の一方の側面に配置することも可能である。
さらには、上側の冷却水パイプ14を左側の水タンク部3に取付けることも可能である。このとき下側の冷却水パイプ14を右側の水タンク部3に取付けることも可能である。さらには、上側のガスパイプ13をガスタンク部1の図において平面または裏面あるいは一方側の側面に配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の凝縮器の分解斜視図。
【図2】同凝縮器の正面図。
【図3】図2のIII−III矢視断面略図。
【図4】図3のIV−IV矢視断面略図。
【図5】図3のV−V矢視断面略図。
【0020】
【図6】同凝縮器に用いられるエレメント9の分解斜視図。
【図7】同凝縮器の作用を示す説明図。
【図8】同凝縮器の作用を示す説明図。
【図9】同凝縮期においてディンプル15を有する位置の横断面図。
【図10】本凝縮器の他の例を示す正面図。
【符号の説明】
【0021】
1 ガスタンク部
2 ガス流路
3 水タンク部
4 ケーシング本体
4a 側壁
4b コア収納部
5 立ち上げ縁部
【0022】
6 ケーシング蓋
7 波形部
7a 凸条
7b 凹溝
8 開口
9 エレメント
9a プレート
10 冷却水流路
【0023】
11 コア
12 空間
13 ガスパイプ
14 冷却水パイプ
15 ディンプル
16 凝縮水
17 被凝縮ガス
18 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部のみ開放の細長い箱状に形成され、その箱状の長手方向の両端部に一対のガスタンク部(1) が一体に設けられると共に、その一対のガスタンク部(1) を除いた前記箱状の中間部分にコア収納部(4b) が形成され、前記コア収納部(4b)の両端部に一対づつの冷却水タンク部(3)が一体に突設形成されたケーシング本体(4)と、
前記一対のガスタンク部(1) および冷却水タンク部(3)を含んで、そのケーシング本体(4)の底部の開口の外周に整合する内周を有する立ち上げ縁部(5)が環状に形成された細長いケーシング蓋(6)と、
前記冷却水タンク部(3)を除くケーシング本体(4)の前記コア収納部(4b)の平面に整合する平面形状を有して、それぞれ浅い溝状に形成された一対のプレート(9a)をその溝側を対向させて内部に偏平なガス流路(2)が形成されると共に、その外面側に冷却水流路(10)が形成され、両端縁部を除き、その溝底の両面にケーシング本体(4)の中心線に対して傾斜して配置された多数の凸条(7a)と凹溝(7b)により波形に一体に曲折形成された波形部(7)を有し、前記両端開口(8) が矩形に形成されたエレメント(9) と、
複数の前記エレメント(9) の積層体からなり、隣合うエレメント(9) の両端は、その全幅で接触して、前記コア収納部(4b)に収納されるコア(11)と、
を具備し、一方の前記ガスタンク部(1) から各エレメント(9) のガス流路(2)を介して他方の前記ガスタンク部(1) に被凝縮ガス(17)が流通すると共に、コア収納部(4b)の一方の端部に形成された一対の冷却水タンク部(3)の内の一方と、他方の端部に形成された冷却水タンク部(3)の内の一方との間に、各エレメント(9) の外周間の隙間を介して冷却水(18)を流通させるように構成したことを特徴とする凝縮器。
【請求項2】
請求項1において、
前記エレメント(9) を構成する一対のプレート(9a)は、その内面でそれぞれの波形部(7)の各凸状(7a)が平面的に交差し且つ、互いに接触せず、両プレート(9a)間に空間(12)が形成され、隣合うエレメント(9) の各プレート(9a)は、その外面でそれぞれの波形部(7)に形成された凸条(7a)が、互いに交差して接触するように形成され、各エレメント(9) の長手方向が重力方向に配置され、被凝縮ガス(17)が各エレメント(9) 内を上方から下方に導かれる凝縮器。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ケーシング本体(4)およびケーシング蓋(6)に、前記波形部(7)が形成され、その内面の各凸条(7a)が隣接エレメント(9) の外面の凸条(7a)と交差して互いに接触される凝縮器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−281696(P2009−281696A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136538(P2008−136538)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】