処理液中不純物の検出方法
【課題】 シリコン基板表面にマイクロラフネスを生じる処理液中不純物の高感度検出方法を提供する。
【解決手段】 薬液もしくは純水で所定時間処理することにより、シリコン基板表面にマイクロラフネスを生じさせた後、シリコン基板のマイクロラフネスの状態を全反射赤外吸光度法で測定する。さらに、得られた吸収スペクトルのうち、特定の吸収波数によって規定される吸収ピークを基準ピークと定め、さらに他の特定の吸収波数によって規定される吸収ピークを対照ピークと定め、基準ピークと対照ピークとのピーク強度比を取ることによってシリコン基板表面のマイクロラフネス発生状態の検出や、数値化による定量評価を可能にする。
【解決手段】 薬液もしくは純水で所定時間処理することにより、シリコン基板表面にマイクロラフネスを生じさせた後、シリコン基板のマイクロラフネスの状態を全反射赤外吸光度法で測定する。さらに、得られた吸収スペクトルのうち、特定の吸収波数によって規定される吸収ピークを基準ピークと定め、さらに他の特定の吸収波数によって規定される吸収ピークを対照ピークと定め、基準ピークと対照ピークとのピーク強度比を取ることによってシリコン基板表面のマイクロラフネス発生状態の検出や、数値化による定量評価を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や液晶などの電子部品の液処理に使用される薬液や純水などの処理液に含まれる不純物を検出する技術に関わり、特に、シリコン基板表面の原子レベルの平坦性を悪化させるような不純物を感度よく検出することのできる薬液中不純物の検出方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討したところによれば、洗浄液などの薬液や純水などの処理液に含まれる不純物を測定する方法として、たとえば特許文献1に記載のように、シリコンウェハが入れられた槽に、評価対象の純水あるいは薬液をオーバフローさせながら所定の時間供給し続けて、評価対象の純水あるいは薬液中に含まれる不純物をシリコンウェハに付着させた後、シリコンウェハに付着した不純物量を測定する方法が提案されている。特に、薬液や純水などの処理液中に含まれるFe不純物をシリコンウェハに付着させた後、熱処理によってシリコンウェハ中に拡散させ、表面高電圧法により高感度にFe汚染を検出する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−368053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1の方法では、薬液もしくは純水中に含まれる不純物のうち、シリコンウェハに付着するもの、特にFe不純物を感度よく測定することは可能であるが、シリコンウェハ表面の平坦性の悪化、特に原子レベルの平坦性(以下、マイクロラフネスと称する)の悪化を生じさせるような不純物の測定に関しては考慮されていない。
【0004】
上記のFe不純物は、洗浄などの薬液処理プロセスでシリコンウェハに付着すると素子の特性劣化の原因になるとされており、これら不純物を高感度に検出する技術は特に高集積度素子の形成においては重要である。
【0005】
しかし、上記Fe不純物に加えて、近年、シリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させるような不純物の評価が重要になってきている。半導体素子の高集積化に伴って各種積層膜の膜厚は薄膜化する傾向にあり、その結果、膜と膜の界面の状態が、積層された薄膜の膜質に与える影響も大きくなっている。従って、シリコン基板とその上に積層された薄膜の膜質向上のためには、シリコン基板表面のマイクロラフネスのコントロールが重要となってきている。
【0006】
半導体の製造プロセスにおいては、洗浄、ウェットエッチングなど、薬液や純水などの処理液を用いて処理する工程が多数存在する。ここで、本発明者が検討した技術として、本発明が適用される一例のLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法を引用して、図13に基づいて薬液処理工程の一例を説明する。
【0007】
初めに、図13(a)に示すように、P型半導体基板21上に酸化膜22およびSi3N4膜23を被着させた後、フォトエッチング工程により活性領域となる部分にSi3N4膜のパターンを形成する。
【0008】
次に、図13(b)に示すように、Si3N4膜のパターンを形成した半導体基板21中にボロンを注入し、チャネルストッパ層のP型不純物領域24を形成し、その後、1000℃蒸気中で500nmの熱酸化膜25を形成する。この際、熱酸化膜25はSi3N4膜23の下部までもぐり込み、いわゆるLOCOSバーズビーク26が生じる。
【0009】
その後、活性領域となる部分のSi3N4膜23および酸化膜27を除去し、犠牲酸化を行った後、図13(c)に示すゲート酸化膜28を形成する。ここで、ゲート酸化膜28を形成する前工程として、犠牲酸化膜の除去工程がある。
【0010】
一般的に、犠牲酸化膜の除去にはフッ化水素酸溶液が用いられる。フッ化水素酸溶液によって犠牲酸化膜が除去されて、ベアシリコン面が露出する。このときに用いられるフッ化水素酸溶液中や、フッ化水素酸溶液処理後に引き続いて行なわれるリンス処理に使用される純水中に、シリコン基板表面をエッチングするような不純物が含まれていた場合には、ベアシリコン表面のマイクロラフネスが悪化する。そのため、これらフッ化水素酸溶液などの薬液やリンス用純水中に含まれるところのシリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させる不純物の管理が必要になるが、これまでは薬品や純水中に含まれるシリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させる不純物を評価する方法については考慮されていなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、前記問題点を解決すべくなされたものであり、被処理対象物の液処理に使用される純水や薬液などの処理液中に含まれる不純物のうち、シリコン基板表面に対して、面荒れ、特に、原子レベルのラフネスを生じるような不純物を感度よく検出することのできる処理液中不純物の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、測定しようとする薬液や純水などの処理液でシリコン基板を所定時間液処理する。このとき、純水や薬液などの処理液中にシリコン基板表面に対して原子レベルのラフネスを生じるような不純物が含まれていた場合には、シリコン基板表面に原子レベルのラフネスを生じる。このシリコン基板表面の原子レベルのラフネスを測定することによって、処理液中にシリコン基板表面に対して原子レベルのラフネスを生じるような不純物が含まれているかを評価しようとするものである。このとき、純水中の不純物を評価する場合には、あらかじめシリコン基板表面のシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜を除去して、ベアシリコン面を露出させておくことが好ましい。
【0013】
一方、フッ化水素酸系薬液やフッ化アンモニウム系薬液およびフッ酸溶液とフッ化アンモニウム溶液との混合物であるバッファードフッ酸系溶液のように、シリコン表面のシリコン酸化膜もしくはシリコン窒化膜をエッチング除去する薬液中に含まれる不純物を評価する場合には、シリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜が付着したままでも評価は可能である。但し、正確な評価のためには、あらかじめシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜は除去しておくことがより好ましい。
【0014】
シリコン基板表面の面荒れ、特に原子レベルのラフネス測定には赤外光を用いた全反射分析(以下、ATR法と称する)が好適に使用できる。さらに、シリコン基板表面の原子レベルのラフネスを評価する方法として、ATR法でシリコン基板表面を測定して得られた吸収スペクトルのうち、目的とする吸収ピークのピーク強度を比較する方法が好適に使用できる。
【0015】
より詳細に評価するためには、目的とする吸収ピークのベースライン変動をキャンセルするために、ベースラインの補正を行なった後、目的とする吸収ピークのピーク強度を比較する方法が好適に使用できる。ここで、目的とする吸収ピークとは、特定の吸収波数によって規定されるピークを指す。
【0016】
さらに、より詳細に評価するためには、目的とする2本乃至はそれ以上の吸収ピークのピーク強度比を取ることを提案する。ここで、目的とする2本乃至はそれ以上の吸収ピークとは、特定の吸収波数によって規定される基準ピークと、さらに他の特定の吸収波数によって規定される対照ピークとを指す。さらに、測定された吸収ピークのベースラインを補正することを提案する。
【0017】
なお、基準ピークは必ずしも1本のピークに限定する必要はなく、複数のピークを基準ピークとすることも可能である。その場合には、複数のピークのピーク強度を合計したものを基準ピークのピーク強度として扱う。対照ピークに関しても同様である。
【0018】
基準ピークと対照ピークのピーク強度比を取ることにより、吸収ピークの強度を規格化することができ、評価結果の定量的な比較が可能となる。特に、ATR法の場合には、全反射測定用クリスタルとシリコン基板表面の密着度合いの変動によって、赤外吸収スペクトルのベースラインや吸収ピーク強度が変動し、その結果、吸光度による定量評価が困難になるという問題があった。しかし、本発明に基いて吸収ピークの強度比を取ることにより、ベースラインの変動や、吸収ピーク強度の変動の影響をキャンセルでき、定量的な評価を行なうことが可能となる。
【0019】
目的とする吸収ピークならびに基準ピークおよび対照ピークのピーク強度の求め方は、特に規定されるものではなく、たとえば、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークを含む波数範囲(この範囲は任意に規定できる)でのピーク面積や、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークの最大吸光度、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークの最大吸光度を示す波数近傍で固定した波数での吸光度など、いずれの方法も好適に適用できる。さらに、下記に示すベースライン補正を行なった場合には、ベースラインから吸収ピークまでの範囲に関して、同様の方法でピーク強度を求めることができる。
【0020】
ベースラインの補正方法は、特に規定されるものではなく、たとえば、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークを含む範囲に対して、範囲よりも大きい波数と小さい波数での吸収強度を繋いでベースラインとする方法、目的とする吸収ピークを含む範囲に対して、範囲よりも大きい波数側のある波数範囲(この範囲は任意に規定できる)での吸収強度の平均と、範囲よりも小さい波数側のある波数範囲(この範囲は任意に規定できる)での吸収強度の平均とを繋いでベースラインとする方法、ベースラインが安定している(何も吸収がない)領域での吸収強度をベースラインとする方法など、いずれの方法も好適に適用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被処理対象物の液処理に使用される薬液や純水などの処理液に含まれる不純物のうち、シリコン基板表面に原子レベルでラフネスを生じさせる不純物を高感度に検出することが可能となる。さらに、測定された吸収スペクトルのうち、目的とする2本以上の吸収ピークのピーク強度比を取ることにより、シリコン基板表面の原子レベルのラフネス変化を数値化して定量的に評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1により、本発明の実施の形態1である処理液中不純物の検出方法を実現するための処理フローの一例を説明する。図1は処理液中不純物の検出方法の処理フローを示す図である。
【0024】
本実施の形態の処理液中不純物の検出方法は、特に純水中に含まれる不純物を検出するための処理フローである。また、被処理対象物としてはパターンなどが形成されていない面方位(100)のp型シリコン基板を使用した。
【0025】
ステップS1は、シリコン基板表面の自然酸化膜を除去し、ベアシリコン表面を露出させるためのフッ化水素酸(以下フッ酸と称する)溶液処理工程である。フッ酸濃度は0.5重量%、処理時間は1分間である。
【0026】
ステップS2は、ステップS1でシリコン基板に付着したフッ酸を除去するためのリンス処理である。リンス処理には、溶存酸素濃度1ppm以下の純水が5リットル/分で供給されているオーバフロー槽を使用した。このリンス時間は、純水中に含まれる純水の電離によって生じたOHイオンにより、シリコン基板表面が原子レベルにエッチングされるのを防止するために1分間とした。
【0027】
ステップS3は、ステップS1およびS2で表面の自然酸化膜を除去してベアシリコン面を露出させたシリコン基板を、不純物を含有する純水(以下、評価対象純水と称する)で所定時間処理する工程である。なお、所定時間処理中に評価対象純水中の溶存酸素濃度が上昇して、ベアシリコン基板表面に自然酸化膜が形成されるのを防止するために、評価対象純水にはシリコン基板を処理する1時間前から所定時間処理中まで継続して常時窒素バブリングを行なった。
【0028】
ここで、シリコン基板の処理中は、窒素バブリング時の気泡はシリコン基板の評価面(ATR−FTIRで測定する面)側には触れないように注意して行なった。本実施の形態では、評価対象純水として、水酸化カリウムを5×10-7mol/リットル、1×10-6mol/リットル、2×10-6mol/リットル含む純水を用いた。また、ブランクとして、水酸化カリウムを含まない純水を用いた。
【0029】
ステップS4は、ステップS3で処理したシリコン基板に付着した純水を除去するための乾燥工程である。シリコン基板の乾燥には、回転によって付着水滴を振り切るスピン乾燥を行なった。
【0030】
ステップS5は、シリコン基板表面の測定工程である。シリコン基板表面の測定には、フーリエ変換赤外分光光度計に全反射アタッチメントを取り付けてシリコン基板表面の全反射赤外吸収スペクトルを測定した。以下、この測定方法をATR−FTIR法と称する。全反射用クリスタルには入射角60度のゲルマニウム製クリスタルを使用した。1回の測定に際しての積算回数は100回、波数分解能は0.5cm-1とした。
【0031】
以下、図2〜図6により、図1の処理フローにおいて、シリコン基板表面を測定して得られた赤外吸収スペクトルについて詳細に説明する。
【0032】
図2は、ブランクとして、水酸化カリウムを含まない純水を用いて処理されたシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。図3は、水酸化カリウムを(a)5×10-7mol/リットル、(b)1×10-6mol/リットル、(c)2×10-6mol/リットル含む純水を用いて処理されたシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。
【0033】
図2と図3を比較すると、矢印で示した基準ピークの吸光度、すなわちピーク強度が大きく変わっていることが分かる。すなわち、水酸化カリウムを含まない純水を用いて処理したときの赤外吸収スペクトルと比較して、水酸化カリウムを含有する純水で処理した方が、基準ピークの強度が強くなっている。上記基準ピークは赤外波数2092cm-1付近に最大吸収を持つ吸収ピークで、シリコンと水素の結合構造として、Si−H結合に帰属される吸収である。シリコン面方位(100)基板においては、Si−H結合の存在は基板表面での原子レベルのステップなどが存在することを表わしていると考えられるため、Si−H結合が増加することは基板表面での原子レベルのステップが増加していることを意味する。従って、Si−H結合の増加を評価することは基板表面での原子レベルの面荒れを評価することとなる。
【0034】
図2および図3から得られた基準ピークの強度をプロットした結果を図4に示す。基準ピークの強度は2092cm-1における吸光度(縦軸)とした。また、図4の横軸は、評価した純水中に含まれる水酸基イオン濃度を表わし、純水の場合には理論電離平衡にあると仮定して、1×10-7mol/リットルとした。水酸化カリウム含有の場合は、含有濃度が薄いために、全解離したと仮定して算出した値である。図4から、ブランクの純水の場合に比較して、水酸化カリウムを含有する純水の場合には基準ピークの吸光度が大きくなっているのが分かる。
【0035】
しかし、水酸化カリウムを含有した純水同士で比較した場合には、基準ピークの吸光度の差は明確ではない。
【0036】
そこで、次に、図2および図3に示した赤外吸収スペクトルの基準ピークおよび対照ピーク1および対照ピーク2に対してベースラインの補正を行い、さらに基準ピークと対照ピーク1のピーク強度比(縦軸)を取った結果を図5に、基準ピークと対照ピーク2のピーク強度比を取った結果を図6に示す。ここで、対照ピーク1として2109cm-1近傍に最大値を持つピークを、対照ピーク2として2139cm-1近傍に最大値を持つピークを用いた。ベースラインの補正は、2000cm-1における吸収強度をベースラインと規定した。また、ピークの吸収強度は、ベースラインからピークの最大値までの吸光度とした。図5および図6の横軸は、図4と同様の方法で求めたところの評価した純水中に含まれる水酸基イオン濃度である。
【0037】
図5および図6から、水酸化カリウム濃度の増加に伴って、ピーク強度比が増加することが分かる。ここでは、基準ピークとして、赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークを使用している。上記したように、赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークはSi−H結合に帰属される吸収ピークであり、他の対照ピークに対して基準ピークの比を取った値が増加するということは、シリコン基板表面の面荒れが増加することを意味する。
【0038】
以上のことから、本実施の形態によれば、純水中に含まれる不純物の中で、シリコン基板に対して表面荒れを生じる、特に原子レベルのラフネスを生じるような不純物を感度よく検出することが可能である。さらに、基準ピークに対する対照ピークのピーク強度比を取ることによって、不純物によるマイクロラフネスの悪化を数値化して定量的に比較することが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、純水中の極微量アミン不純物の検出に本発明を適用した例を説明する。
【0040】
評価対象純水として、ドデシルアミンを4×10-11mol/リットル、4×10-10mol/リットル含む純水を用いた。また、ブランクとして、ドデシルアミンを含まない純水を用いた。評価の手順は、前記実施の形態1において図1に示した処理フローの通りである。また、被処理対象物としては、パターンなどが形成されていない面方位(100)のp型シリコン基板を使用した。
【0041】
以下、前記実施の形態1に示した図1の処理フローを用いて、本実施の形態における評価手順を説明する。
【0042】
ステップS1で、0.5重量%フッ酸溶液で1分間処理してシリコン基板表面の自然酸化膜を除去し、ベアシリコン表面を露出させた。
【0043】
ステップS2で、溶存酸素濃度100ppb以下の純水が5リットル/分で供給されているオーバフロー槽を使用して1分間リンスした。
【0044】
ステップS3で、ベアシリコン面を露出させたシリコン基板を、ドデシルアミンを4×10-11mol/リットル、4×10-10mol/リットル含む純水を用いて、120分間処理した。また、ブランクとして、ドデシルアミンを含まない純水で120分間処理した。なお、各評価用純水は、120分間処理の2時間前から120分間処理終了まで継続して常時窒素バブリングを行なった。
【0045】
ステップS4で、スピン乾燥を行なった。
【0046】
ステップS5で、上記処理を行なったシリコン基板表面をATR−FTIR測定した。全反射用クリスタルには入射角60度のゲルマニウム製クリスタルを使用した。1回の測定に際しての積算回数は200回、波数分解能は1cm-1とした。
【0047】
図7は、上記の処理フローにおいて、ブランクとしてドデシルアミンを含まない純水を用いて処理したシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。図8は、上記の処理フローにおいて、ドデシルアミンを(a)4×10-11mol/リットル、(b)4×10-10mol/リットル含む純水を用いて処理したシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。図7と図8を比較しても、矢印で示した基準ピークの吸光度の変化は明瞭には分からない。
【0048】
次に、図7および図8から得られた基準ピークの強度をプロットした結果を図9に示す。基準ピークは、2092cm-1近傍に最大値を持つ吸収ピークとした。基準ピークの強度は、2092cm-1における吸光度とした。また、図9の横軸は、評価した純水中に含まれるドデシルアミン濃度である。図9から、ブランクの純水の場合に比較して、ドデシルアミンを含有する純水の場合には基準ピークの強度が大きくなっているのが分かる。しかし、ドデシルアミンを含有した純水同士で比較した場合には、基準ピークの強度差は明確ではない。
【0049】
そこで、次に、図7および図8に示した赤外吸収スペクトルの基準ピークおよび対照ピーク1および対照ピーク2に対してベースラインの補正を行い、さらに基準ピークと対照ピーク1のピーク強度比を取った結果を図10に、基準ピークと対照ピーク2のピーク強度比を取った結果を図11に示す。
【0050】
ここで、対照ピーク1には2109cm-1近傍に最大値を持つピークを、対照ピーク2には2139cm-1近傍に最大値を持つピークを用いた。基準ピークのピーク強度は、2092cm-1におけるベースラインからピークまでの吸光度、対照ピーク1のピーク強度は2109cm-1におけるベースラインからピークまでの吸光度、対照ピーク2のピーク強度は2139cm-1におけるベースラインからピークまでの吸光度とした。ベースラインの補正は、2000cm-1における吸収強度をベースラインと規定した。図10および図11の横軸は、評価した純水中に含まれるドデシルアミン濃度である。
【0051】
図10および図11から、ドデシルアミン濃度の増加に伴って、ピーク強度比が増加することが分かる。ここでは、基準ピークとして赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークを使用している。上記したように、赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークはSi−H結合に帰属される吸収ピークであり、他の対照ピークに対して基準ピークの比を取った値が増加するということは、シリコン基板表面の面荒れが増加することを意味する。
【0052】
以上のことから、本実施の形態によれば、純水中に含まれる不純物の中で、シリコン基板に対して表面荒れを生じる、特に原子レベルのラフネスを生じるような不純物を感度よく検出することが可能である。さらに、基準ピークに対する対照ピークのピーク強度比を取ることによって、不純物によるマイクロラフネスの悪化を数値化して定量的に比較することが可能となる。さらに、基準ピークに対する対照ピークのピーク強度比を取ることによって、4×10-11mol/リットル、換算すると約10ppt濃度のドデシルアミンを検出することが可能である。
【0053】
上記実施の形態1,2では、本発明の効果を明らかにするために水酸化カリウムおよびドデシルアミンで強制汚染した純水の評価事例を示したが、実際の製造ラインで使用されている純水を評価するためには、製造ラインで使用されている、たとえばオーバーフロー槽中に所定時間浸漬して処理する方法や、枚葉洗浄設備で所定時間リンス処理を行う方法でも好適に評価を行うことができる。
【0054】
また、評価する純水中の溶存酸素濃度が高いと、処理中にベアシリコン基板表面に自然酸化膜が形成されるため、処理後のATR−FTIR評価において2075cm-1から2150cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークが微弱になったり、まったく観察されなくなるという不具合を生じる恐れがある。そのため、評価純水中の溶存酸素は低くすることが好ましい。好ましくは5ppm以下、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは100ppb以下とすると、所定時間処理中の自然酸化膜の生成抑制に効果的である。
【0055】
評価する純水中の溶存酸素濃度を低下させる方法としては、窒素ガスバブリング、膜脱気、窒素脱気、真空脱気などの方法があり、いずれの方法も好適に使用することができる。さらに加えて、評価する純水での処理を窒素などの不活性ガス雰囲気中で行なうことも、溶存酸素濃度を低下させる好適な手法である。
【0056】
評価対象である純水での処理時間は、特に規定されるものではなく、短時間処理でも不純物の検出は可能である。しかし、長時間処理したほうがシリコン基板表面でのマイクロラフネスの悪化が進行するため、不純物が存在した場合にはより顕著に検出することが可能となる。特に、検出すべき不純物濃度がppbオーダー以下で極めて薄いと予想される場合には30分から60分以上、より好ましくは100分から200分間の長時間処理を行うことが好ましい。
【0057】
上記実施の形態では、純水中不純物の評価を例に示したが、薬液中不純物の評価に対しても同様の手順で評価可能である。但し、フッ酸のようにシリコン基板表面のシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜をエッチングする作用を持つ薬液中の不純物を評価する場合には、前記図1のステップS1およびS2を省略し、ステップS3で評価すべき薬液を用いてシリコン基板を所定時間処理する方法でも評価可能である。但し、ベアシリコン基板と評価すべき薬液とが接触する時間を一定にするためには、あらかじめシリコン基板表面のシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜を除去しておく方がより好ましい。なお、薬液中の不純物を評価する場合には、ステップS3とステップS4の間に評価薬液を除去するためのリンス工程を設けることが好ましい。
【0058】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、フッ酸処理液中の極微量アミン不純物の検出に本発明を適用した例を説明する。
【0059】
以下、前記実施の形態1に示した図1の処理フローを用いて、本実施の形態における評価手順を説明する。なお、被処理対象物としては、パターンなどが形成されていない面方位(100)のp型シリコン基板を使用した。
【0060】
ステップS1で、0.5重量%のフッ酸溶液にドデシルアミンを0.5ppb、5ppb、50ppb添加し、シリコン基板を各5分間浸漬処理した。また、ブランクとして、ドデシルアミンを含まない0.5重量%のフッ酸溶液でも同じく5分間浸漬処理した。
【0061】
ステップS2で、15分間オーバフロー槽でリンスした。
【0062】
ステップS4で、スピン乾燥を行った。
【0063】
ステップS5で、上記処理を行なったシリコン基板表面をATR−FTIR測定した。全反射用クリスタルには入射角60度のゲルマニウム製クリスタルを使用した。1回の測定に際しての積算回数は100回、波数分解能は0.5cm-1とした。
【0064】
本実施の形態では、自然酸化膜の除去と評価対象処理液での処理を兼ねているため、ステップS3の評価対象処理液での処理は行なっていない。
【0065】
ステップS5で得られた赤外吸収スペクトルに関し、波数2092cm-1での吸収ピークの吸収強度を基準ピークとし、波数2136cm-1での吸収ピークの吸収強度を対照ピークとして、基準ピーク/対照ピークのピーク比を求めた結果を図12に示す。図12で、横軸はフッ酸溶液中のドデシルアミン濃度、縦軸はピーク強度比である。また、ピークの吸収強度を求めるのに際しては、波数2000cm-1での吸収強度をベースラインとして、ベースラインから各吸収ピークの最大吸光度までを各吸収ピークの吸収強度とした。
【0066】
図12から、フッ酸処理液中のドデシルアミン濃度の増加に伴って、ピーク強度比も増加していることが分かる。したがって、本発明を用いれば、フッ酸処理液のような薬液中に含まれるシリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させるような不純物を感度よく検出することが可能になる。
【0067】
また、本発明によれば、フッ酸処理液以外にも、フッ化アンモニウム系薬液、およびフッ酸溶液とフッ化アンモニウム溶液との混合物であるバッファードフッ酸系溶液中の不純物も同様に検出可能である。さらに、バッファードフッ酸系溶液に含まれるアミン系界面活性剤の濃度測定などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1である処理液中不純物の検出方法の処理フローを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1において、不純物を含まない純水で処理したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1において、水酸化カリウムを含む純水を用いて処理したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1において、水酸化カリウム濃度とピーク強度の関係をプロットした結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、水酸化カリウム濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク1)を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、水酸化カリウム濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク2)を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2において、不純物を含まない純水で処理・測定したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図8】(a),(b)は本発明の実施の形態2において、ドデシルアミンを含む純水を用いて処理・測定したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2において、ドデシルアミン濃度とピーク強度の関係をプロットした結果を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2において、ドデシルアミン濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク1)を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2において、ドデシルアミン濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク2)を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3において、フッ酸処理液中ドデシルアミン濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果を示す図である。
【図13】(a)〜(c)は本発明が適用される一例のLOCOS法によるゲート酸化膜形成工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
21…半導体基板、22…酸化膜、23…Si3N4膜、24…P型不純物領域、25…熱酸化膜、26…バーズビーク、27…酸化膜、28…ゲート酸化膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や液晶などの電子部品の液処理に使用される薬液や純水などの処理液に含まれる不純物を検出する技術に関わり、特に、シリコン基板表面の原子レベルの平坦性を悪化させるような不純物を感度よく検出することのできる薬液中不純物の検出方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討したところによれば、洗浄液などの薬液や純水などの処理液に含まれる不純物を測定する方法として、たとえば特許文献1に記載のように、シリコンウェハが入れられた槽に、評価対象の純水あるいは薬液をオーバフローさせながら所定の時間供給し続けて、評価対象の純水あるいは薬液中に含まれる不純物をシリコンウェハに付着させた後、シリコンウェハに付着した不純物量を測定する方法が提案されている。特に、薬液や純水などの処理液中に含まれるFe不純物をシリコンウェハに付着させた後、熱処理によってシリコンウェハ中に拡散させ、表面高電圧法により高感度にFe汚染を検出する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−368053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1の方法では、薬液もしくは純水中に含まれる不純物のうち、シリコンウェハに付着するもの、特にFe不純物を感度よく測定することは可能であるが、シリコンウェハ表面の平坦性の悪化、特に原子レベルの平坦性(以下、マイクロラフネスと称する)の悪化を生じさせるような不純物の測定に関しては考慮されていない。
【0004】
上記のFe不純物は、洗浄などの薬液処理プロセスでシリコンウェハに付着すると素子の特性劣化の原因になるとされており、これら不純物を高感度に検出する技術は特に高集積度素子の形成においては重要である。
【0005】
しかし、上記Fe不純物に加えて、近年、シリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させるような不純物の評価が重要になってきている。半導体素子の高集積化に伴って各種積層膜の膜厚は薄膜化する傾向にあり、その結果、膜と膜の界面の状態が、積層された薄膜の膜質に与える影響も大きくなっている。従って、シリコン基板とその上に積層された薄膜の膜質向上のためには、シリコン基板表面のマイクロラフネスのコントロールが重要となってきている。
【0006】
半導体の製造プロセスにおいては、洗浄、ウェットエッチングなど、薬液や純水などの処理液を用いて処理する工程が多数存在する。ここで、本発明者が検討した技術として、本発明が適用される一例のLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法を引用して、図13に基づいて薬液処理工程の一例を説明する。
【0007】
初めに、図13(a)に示すように、P型半導体基板21上に酸化膜22およびSi3N4膜23を被着させた後、フォトエッチング工程により活性領域となる部分にSi3N4膜のパターンを形成する。
【0008】
次に、図13(b)に示すように、Si3N4膜のパターンを形成した半導体基板21中にボロンを注入し、チャネルストッパ層のP型不純物領域24を形成し、その後、1000℃蒸気中で500nmの熱酸化膜25を形成する。この際、熱酸化膜25はSi3N4膜23の下部までもぐり込み、いわゆるLOCOSバーズビーク26が生じる。
【0009】
その後、活性領域となる部分のSi3N4膜23および酸化膜27を除去し、犠牲酸化を行った後、図13(c)に示すゲート酸化膜28を形成する。ここで、ゲート酸化膜28を形成する前工程として、犠牲酸化膜の除去工程がある。
【0010】
一般的に、犠牲酸化膜の除去にはフッ化水素酸溶液が用いられる。フッ化水素酸溶液によって犠牲酸化膜が除去されて、ベアシリコン面が露出する。このときに用いられるフッ化水素酸溶液中や、フッ化水素酸溶液処理後に引き続いて行なわれるリンス処理に使用される純水中に、シリコン基板表面をエッチングするような不純物が含まれていた場合には、ベアシリコン表面のマイクロラフネスが悪化する。そのため、これらフッ化水素酸溶液などの薬液やリンス用純水中に含まれるところのシリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させる不純物の管理が必要になるが、これまでは薬品や純水中に含まれるシリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させる不純物を評価する方法については考慮されていなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、前記問題点を解決すべくなされたものであり、被処理対象物の液処理に使用される純水や薬液などの処理液中に含まれる不純物のうち、シリコン基板表面に対して、面荒れ、特に、原子レベルのラフネスを生じるような不純物を感度よく検出することのできる処理液中不純物の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、測定しようとする薬液や純水などの処理液でシリコン基板を所定時間液処理する。このとき、純水や薬液などの処理液中にシリコン基板表面に対して原子レベルのラフネスを生じるような不純物が含まれていた場合には、シリコン基板表面に原子レベルのラフネスを生じる。このシリコン基板表面の原子レベルのラフネスを測定することによって、処理液中にシリコン基板表面に対して原子レベルのラフネスを生じるような不純物が含まれているかを評価しようとするものである。このとき、純水中の不純物を評価する場合には、あらかじめシリコン基板表面のシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜を除去して、ベアシリコン面を露出させておくことが好ましい。
【0013】
一方、フッ化水素酸系薬液やフッ化アンモニウム系薬液およびフッ酸溶液とフッ化アンモニウム溶液との混合物であるバッファードフッ酸系溶液のように、シリコン表面のシリコン酸化膜もしくはシリコン窒化膜をエッチング除去する薬液中に含まれる不純物を評価する場合には、シリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜が付着したままでも評価は可能である。但し、正確な評価のためには、あらかじめシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜は除去しておくことがより好ましい。
【0014】
シリコン基板表面の面荒れ、特に原子レベルのラフネス測定には赤外光を用いた全反射分析(以下、ATR法と称する)が好適に使用できる。さらに、シリコン基板表面の原子レベルのラフネスを評価する方法として、ATR法でシリコン基板表面を測定して得られた吸収スペクトルのうち、目的とする吸収ピークのピーク強度を比較する方法が好適に使用できる。
【0015】
より詳細に評価するためには、目的とする吸収ピークのベースライン変動をキャンセルするために、ベースラインの補正を行なった後、目的とする吸収ピークのピーク強度を比較する方法が好適に使用できる。ここで、目的とする吸収ピークとは、特定の吸収波数によって規定されるピークを指す。
【0016】
さらに、より詳細に評価するためには、目的とする2本乃至はそれ以上の吸収ピークのピーク強度比を取ることを提案する。ここで、目的とする2本乃至はそれ以上の吸収ピークとは、特定の吸収波数によって規定される基準ピークと、さらに他の特定の吸収波数によって規定される対照ピークとを指す。さらに、測定された吸収ピークのベースラインを補正することを提案する。
【0017】
なお、基準ピークは必ずしも1本のピークに限定する必要はなく、複数のピークを基準ピークとすることも可能である。その場合には、複数のピークのピーク強度を合計したものを基準ピークのピーク強度として扱う。対照ピークに関しても同様である。
【0018】
基準ピークと対照ピークのピーク強度比を取ることにより、吸収ピークの強度を規格化することができ、評価結果の定量的な比較が可能となる。特に、ATR法の場合には、全反射測定用クリスタルとシリコン基板表面の密着度合いの変動によって、赤外吸収スペクトルのベースラインや吸収ピーク強度が変動し、その結果、吸光度による定量評価が困難になるという問題があった。しかし、本発明に基いて吸収ピークの強度比を取ることにより、ベースラインの変動や、吸収ピーク強度の変動の影響をキャンセルでき、定量的な評価を行なうことが可能となる。
【0019】
目的とする吸収ピークならびに基準ピークおよび対照ピークのピーク強度の求め方は、特に規定されるものではなく、たとえば、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークを含む波数範囲(この範囲は任意に規定できる)でのピーク面積や、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークの最大吸光度、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークの最大吸光度を示す波数近傍で固定した波数での吸光度など、いずれの方法も好適に適用できる。さらに、下記に示すベースライン補正を行なった場合には、ベースラインから吸収ピークまでの範囲に関して、同様の方法でピーク強度を求めることができる。
【0020】
ベースラインの補正方法は、特に規定されるものではなく、たとえば、目的とする吸収ピークもしくは目的とする基準ピークもしくは対照ピークを含む範囲に対して、範囲よりも大きい波数と小さい波数での吸収強度を繋いでベースラインとする方法、目的とする吸収ピークを含む範囲に対して、範囲よりも大きい波数側のある波数範囲(この範囲は任意に規定できる)での吸収強度の平均と、範囲よりも小さい波数側のある波数範囲(この範囲は任意に規定できる)での吸収強度の平均とを繋いでベースラインとする方法、ベースラインが安定している(何も吸収がない)領域での吸収強度をベースラインとする方法など、いずれの方法も好適に適用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被処理対象物の液処理に使用される薬液や純水などの処理液に含まれる不純物のうち、シリコン基板表面に原子レベルでラフネスを生じさせる不純物を高感度に検出することが可能となる。さらに、測定された吸収スペクトルのうち、目的とする2本以上の吸収ピークのピーク強度比を取ることにより、シリコン基板表面の原子レベルのラフネス変化を数値化して定量的に評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1により、本発明の実施の形態1である処理液中不純物の検出方法を実現するための処理フローの一例を説明する。図1は処理液中不純物の検出方法の処理フローを示す図である。
【0024】
本実施の形態の処理液中不純物の検出方法は、特に純水中に含まれる不純物を検出するための処理フローである。また、被処理対象物としてはパターンなどが形成されていない面方位(100)のp型シリコン基板を使用した。
【0025】
ステップS1は、シリコン基板表面の自然酸化膜を除去し、ベアシリコン表面を露出させるためのフッ化水素酸(以下フッ酸と称する)溶液処理工程である。フッ酸濃度は0.5重量%、処理時間は1分間である。
【0026】
ステップS2は、ステップS1でシリコン基板に付着したフッ酸を除去するためのリンス処理である。リンス処理には、溶存酸素濃度1ppm以下の純水が5リットル/分で供給されているオーバフロー槽を使用した。このリンス時間は、純水中に含まれる純水の電離によって生じたOHイオンにより、シリコン基板表面が原子レベルにエッチングされるのを防止するために1分間とした。
【0027】
ステップS3は、ステップS1およびS2で表面の自然酸化膜を除去してベアシリコン面を露出させたシリコン基板を、不純物を含有する純水(以下、評価対象純水と称する)で所定時間処理する工程である。なお、所定時間処理中に評価対象純水中の溶存酸素濃度が上昇して、ベアシリコン基板表面に自然酸化膜が形成されるのを防止するために、評価対象純水にはシリコン基板を処理する1時間前から所定時間処理中まで継続して常時窒素バブリングを行なった。
【0028】
ここで、シリコン基板の処理中は、窒素バブリング時の気泡はシリコン基板の評価面(ATR−FTIRで測定する面)側には触れないように注意して行なった。本実施の形態では、評価対象純水として、水酸化カリウムを5×10-7mol/リットル、1×10-6mol/リットル、2×10-6mol/リットル含む純水を用いた。また、ブランクとして、水酸化カリウムを含まない純水を用いた。
【0029】
ステップS4は、ステップS3で処理したシリコン基板に付着した純水を除去するための乾燥工程である。シリコン基板の乾燥には、回転によって付着水滴を振り切るスピン乾燥を行なった。
【0030】
ステップS5は、シリコン基板表面の測定工程である。シリコン基板表面の測定には、フーリエ変換赤外分光光度計に全反射アタッチメントを取り付けてシリコン基板表面の全反射赤外吸収スペクトルを測定した。以下、この測定方法をATR−FTIR法と称する。全反射用クリスタルには入射角60度のゲルマニウム製クリスタルを使用した。1回の測定に際しての積算回数は100回、波数分解能は0.5cm-1とした。
【0031】
以下、図2〜図6により、図1の処理フローにおいて、シリコン基板表面を測定して得られた赤外吸収スペクトルについて詳細に説明する。
【0032】
図2は、ブランクとして、水酸化カリウムを含まない純水を用いて処理されたシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。図3は、水酸化カリウムを(a)5×10-7mol/リットル、(b)1×10-6mol/リットル、(c)2×10-6mol/リットル含む純水を用いて処理されたシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。
【0033】
図2と図3を比較すると、矢印で示した基準ピークの吸光度、すなわちピーク強度が大きく変わっていることが分かる。すなわち、水酸化カリウムを含まない純水を用いて処理したときの赤外吸収スペクトルと比較して、水酸化カリウムを含有する純水で処理した方が、基準ピークの強度が強くなっている。上記基準ピークは赤外波数2092cm-1付近に最大吸収を持つ吸収ピークで、シリコンと水素の結合構造として、Si−H結合に帰属される吸収である。シリコン面方位(100)基板においては、Si−H結合の存在は基板表面での原子レベルのステップなどが存在することを表わしていると考えられるため、Si−H結合が増加することは基板表面での原子レベルのステップが増加していることを意味する。従って、Si−H結合の増加を評価することは基板表面での原子レベルの面荒れを評価することとなる。
【0034】
図2および図3から得られた基準ピークの強度をプロットした結果を図4に示す。基準ピークの強度は2092cm-1における吸光度(縦軸)とした。また、図4の横軸は、評価した純水中に含まれる水酸基イオン濃度を表わし、純水の場合には理論電離平衡にあると仮定して、1×10-7mol/リットルとした。水酸化カリウム含有の場合は、含有濃度が薄いために、全解離したと仮定して算出した値である。図4から、ブランクの純水の場合に比較して、水酸化カリウムを含有する純水の場合には基準ピークの吸光度が大きくなっているのが分かる。
【0035】
しかし、水酸化カリウムを含有した純水同士で比較した場合には、基準ピークの吸光度の差は明確ではない。
【0036】
そこで、次に、図2および図3に示した赤外吸収スペクトルの基準ピークおよび対照ピーク1および対照ピーク2に対してベースラインの補正を行い、さらに基準ピークと対照ピーク1のピーク強度比(縦軸)を取った結果を図5に、基準ピークと対照ピーク2のピーク強度比を取った結果を図6に示す。ここで、対照ピーク1として2109cm-1近傍に最大値を持つピークを、対照ピーク2として2139cm-1近傍に最大値を持つピークを用いた。ベースラインの補正は、2000cm-1における吸収強度をベースラインと規定した。また、ピークの吸収強度は、ベースラインからピークの最大値までの吸光度とした。図5および図6の横軸は、図4と同様の方法で求めたところの評価した純水中に含まれる水酸基イオン濃度である。
【0037】
図5および図6から、水酸化カリウム濃度の増加に伴って、ピーク強度比が増加することが分かる。ここでは、基準ピークとして、赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークを使用している。上記したように、赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークはSi−H結合に帰属される吸収ピークであり、他の対照ピークに対して基準ピークの比を取った値が増加するということは、シリコン基板表面の面荒れが増加することを意味する。
【0038】
以上のことから、本実施の形態によれば、純水中に含まれる不純物の中で、シリコン基板に対して表面荒れを生じる、特に原子レベルのラフネスを生じるような不純物を感度よく検出することが可能である。さらに、基準ピークに対する対照ピークのピーク強度比を取ることによって、不純物によるマイクロラフネスの悪化を数値化して定量的に比較することが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、純水中の極微量アミン不純物の検出に本発明を適用した例を説明する。
【0040】
評価対象純水として、ドデシルアミンを4×10-11mol/リットル、4×10-10mol/リットル含む純水を用いた。また、ブランクとして、ドデシルアミンを含まない純水を用いた。評価の手順は、前記実施の形態1において図1に示した処理フローの通りである。また、被処理対象物としては、パターンなどが形成されていない面方位(100)のp型シリコン基板を使用した。
【0041】
以下、前記実施の形態1に示した図1の処理フローを用いて、本実施の形態における評価手順を説明する。
【0042】
ステップS1で、0.5重量%フッ酸溶液で1分間処理してシリコン基板表面の自然酸化膜を除去し、ベアシリコン表面を露出させた。
【0043】
ステップS2で、溶存酸素濃度100ppb以下の純水が5リットル/分で供給されているオーバフロー槽を使用して1分間リンスした。
【0044】
ステップS3で、ベアシリコン面を露出させたシリコン基板を、ドデシルアミンを4×10-11mol/リットル、4×10-10mol/リットル含む純水を用いて、120分間処理した。また、ブランクとして、ドデシルアミンを含まない純水で120分間処理した。なお、各評価用純水は、120分間処理の2時間前から120分間処理終了まで継続して常時窒素バブリングを行なった。
【0045】
ステップS4で、スピン乾燥を行なった。
【0046】
ステップS5で、上記処理を行なったシリコン基板表面をATR−FTIR測定した。全反射用クリスタルには入射角60度のゲルマニウム製クリスタルを使用した。1回の測定に際しての積算回数は200回、波数分解能は1cm-1とした。
【0047】
図7は、上記の処理フローにおいて、ブランクとしてドデシルアミンを含まない純水を用いて処理したシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。図8は、上記の処理フローにおいて、ドデシルアミンを(a)4×10-11mol/リットル、(b)4×10-10mol/リットル含む純水を用いて処理したシリコン基板表面をATR−FTIR測定して得られた赤外吸収スペクトルである。図7と図8を比較しても、矢印で示した基準ピークの吸光度の変化は明瞭には分からない。
【0048】
次に、図7および図8から得られた基準ピークの強度をプロットした結果を図9に示す。基準ピークは、2092cm-1近傍に最大値を持つ吸収ピークとした。基準ピークの強度は、2092cm-1における吸光度とした。また、図9の横軸は、評価した純水中に含まれるドデシルアミン濃度である。図9から、ブランクの純水の場合に比較して、ドデシルアミンを含有する純水の場合には基準ピークの強度が大きくなっているのが分かる。しかし、ドデシルアミンを含有した純水同士で比較した場合には、基準ピークの強度差は明確ではない。
【0049】
そこで、次に、図7および図8に示した赤外吸収スペクトルの基準ピークおよび対照ピーク1および対照ピーク2に対してベースラインの補正を行い、さらに基準ピークと対照ピーク1のピーク強度比を取った結果を図10に、基準ピークと対照ピーク2のピーク強度比を取った結果を図11に示す。
【0050】
ここで、対照ピーク1には2109cm-1近傍に最大値を持つピークを、対照ピーク2には2139cm-1近傍に最大値を持つピークを用いた。基準ピークのピーク強度は、2092cm-1におけるベースラインからピークまでの吸光度、対照ピーク1のピーク強度は2109cm-1におけるベースラインからピークまでの吸光度、対照ピーク2のピーク強度は2139cm-1におけるベースラインからピークまでの吸光度とした。ベースラインの補正は、2000cm-1における吸収強度をベースラインと規定した。図10および図11の横軸は、評価した純水中に含まれるドデシルアミン濃度である。
【0051】
図10および図11から、ドデシルアミン濃度の増加に伴って、ピーク強度比が増加することが分かる。ここでは、基準ピークとして赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークを使用している。上記したように、赤外波数2092cm-1付近に最大ピークを持つ吸収ピークはSi−H結合に帰属される吸収ピークであり、他の対照ピークに対して基準ピークの比を取った値が増加するということは、シリコン基板表面の面荒れが増加することを意味する。
【0052】
以上のことから、本実施の形態によれば、純水中に含まれる不純物の中で、シリコン基板に対して表面荒れを生じる、特に原子レベルのラフネスを生じるような不純物を感度よく検出することが可能である。さらに、基準ピークに対する対照ピークのピーク強度比を取ることによって、不純物によるマイクロラフネスの悪化を数値化して定量的に比較することが可能となる。さらに、基準ピークに対する対照ピークのピーク強度比を取ることによって、4×10-11mol/リットル、換算すると約10ppt濃度のドデシルアミンを検出することが可能である。
【0053】
上記実施の形態1,2では、本発明の効果を明らかにするために水酸化カリウムおよびドデシルアミンで強制汚染した純水の評価事例を示したが、実際の製造ラインで使用されている純水を評価するためには、製造ラインで使用されている、たとえばオーバーフロー槽中に所定時間浸漬して処理する方法や、枚葉洗浄設備で所定時間リンス処理を行う方法でも好適に評価を行うことができる。
【0054】
また、評価する純水中の溶存酸素濃度が高いと、処理中にベアシリコン基板表面に自然酸化膜が形成されるため、処理後のATR−FTIR評価において2075cm-1から2150cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークが微弱になったり、まったく観察されなくなるという不具合を生じる恐れがある。そのため、評価純水中の溶存酸素は低くすることが好ましい。好ましくは5ppm以下、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは100ppb以下とすると、所定時間処理中の自然酸化膜の生成抑制に効果的である。
【0055】
評価する純水中の溶存酸素濃度を低下させる方法としては、窒素ガスバブリング、膜脱気、窒素脱気、真空脱気などの方法があり、いずれの方法も好適に使用することができる。さらに加えて、評価する純水での処理を窒素などの不活性ガス雰囲気中で行なうことも、溶存酸素濃度を低下させる好適な手法である。
【0056】
評価対象である純水での処理時間は、特に規定されるものではなく、短時間処理でも不純物の検出は可能である。しかし、長時間処理したほうがシリコン基板表面でのマイクロラフネスの悪化が進行するため、不純物が存在した場合にはより顕著に検出することが可能となる。特に、検出すべき不純物濃度がppbオーダー以下で極めて薄いと予想される場合には30分から60分以上、より好ましくは100分から200分間の長時間処理を行うことが好ましい。
【0057】
上記実施の形態では、純水中不純物の評価を例に示したが、薬液中不純物の評価に対しても同様の手順で評価可能である。但し、フッ酸のようにシリコン基板表面のシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜をエッチングする作用を持つ薬液中の不純物を評価する場合には、前記図1のステップS1およびS2を省略し、ステップS3で評価すべき薬液を用いてシリコン基板を所定時間処理する方法でも評価可能である。但し、ベアシリコン基板と評価すべき薬液とが接触する時間を一定にするためには、あらかじめシリコン基板表面のシリコン窒化膜や自然酸化膜などのシリコン酸化膜を除去しておく方がより好ましい。なお、薬液中の不純物を評価する場合には、ステップS3とステップS4の間に評価薬液を除去するためのリンス工程を設けることが好ましい。
【0058】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、フッ酸処理液中の極微量アミン不純物の検出に本発明を適用した例を説明する。
【0059】
以下、前記実施の形態1に示した図1の処理フローを用いて、本実施の形態における評価手順を説明する。なお、被処理対象物としては、パターンなどが形成されていない面方位(100)のp型シリコン基板を使用した。
【0060】
ステップS1で、0.5重量%のフッ酸溶液にドデシルアミンを0.5ppb、5ppb、50ppb添加し、シリコン基板を各5分間浸漬処理した。また、ブランクとして、ドデシルアミンを含まない0.5重量%のフッ酸溶液でも同じく5分間浸漬処理した。
【0061】
ステップS2で、15分間オーバフロー槽でリンスした。
【0062】
ステップS4で、スピン乾燥を行った。
【0063】
ステップS5で、上記処理を行なったシリコン基板表面をATR−FTIR測定した。全反射用クリスタルには入射角60度のゲルマニウム製クリスタルを使用した。1回の測定に際しての積算回数は100回、波数分解能は0.5cm-1とした。
【0064】
本実施の形態では、自然酸化膜の除去と評価対象処理液での処理を兼ねているため、ステップS3の評価対象処理液での処理は行なっていない。
【0065】
ステップS5で得られた赤外吸収スペクトルに関し、波数2092cm-1での吸収ピークの吸収強度を基準ピークとし、波数2136cm-1での吸収ピークの吸収強度を対照ピークとして、基準ピーク/対照ピークのピーク比を求めた結果を図12に示す。図12で、横軸はフッ酸溶液中のドデシルアミン濃度、縦軸はピーク強度比である。また、ピークの吸収強度を求めるのに際しては、波数2000cm-1での吸収強度をベースラインとして、ベースラインから各吸収ピークの最大吸光度までを各吸収ピークの吸収強度とした。
【0066】
図12から、フッ酸処理液中のドデシルアミン濃度の増加に伴って、ピーク強度比も増加していることが分かる。したがって、本発明を用いれば、フッ酸処理液のような薬液中に含まれるシリコン基板表面のマイクロラフネスを悪化させるような不純物を感度よく検出することが可能になる。
【0067】
また、本発明によれば、フッ酸処理液以外にも、フッ化アンモニウム系薬液、およびフッ酸溶液とフッ化アンモニウム溶液との混合物であるバッファードフッ酸系溶液中の不純物も同様に検出可能である。さらに、バッファードフッ酸系溶液に含まれるアミン系界面活性剤の濃度測定などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1である処理液中不純物の検出方法の処理フローを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1において、不純物を含まない純水で処理したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1において、水酸化カリウムを含む純水を用いて処理したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1において、水酸化カリウム濃度とピーク強度の関係をプロットした結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、水酸化カリウム濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク1)を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、水酸化カリウム濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク2)を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2において、不純物を含まない純水で処理・測定したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図8】(a),(b)は本発明の実施の形態2において、ドデシルアミンを含む純水を用いて処理・測定したシリコン基板の表面状態を測定した赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2において、ドデシルアミン濃度とピーク強度の関係をプロットした結果を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2において、ドデシルアミン濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク1)を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2において、ドデシルアミン濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果(対照ピーク2)を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3において、フッ酸処理液中ドデシルアミン濃度とピーク強度比の関係をプロットした結果を示す図である。
【図13】(a)〜(c)は本発明が適用される一例のLOCOS法によるゲート酸化膜形成工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
21…半導体基板、22…酸化膜、23…Si3N4膜、24…P型不純物領域、25…熱酸化膜、26…バーズビーク、27…酸化膜、28…ゲート酸化膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理対象物を液処理するための処理液に含まれる不純物を検出する方法であって、
不純物評価を行う処理液で前記被処理対象物を所定時間液処理する工程と、所定時間液処理した後の前記被処理対象物の表面状態を評価する工程とを有し、
前記評価する工程は、前記被処理対象物の表面状態を測定することによって、前記被処理対象物の表面状態に影響を及ぼす不純物を検出することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物を所定時間液処理する工程の前に、前記被処理対象物の表面に付着している酸化膜もしくは窒化膜を除去する工程を有することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項3】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物の表面状態を測定する方法として、前記被処理対象物の表面に前記被処理対象物の屈折率よりも大きい屈折率を有するクリスタルを密着させ、前記被処理対象物の表面に存在する化学物質や化学結合状態によって吸収される波長範囲を有する測定光を前記クリスタルから前記被処理対象物の表面に対して臨界角以上の角度で入射させ、前記クリスタルと前記被処理対象物の表面との界面で測定光を全反射させることによって前記被処理対象物の表面に存在する化学物質や化学結合状態に起因した吸収を測定し、前記被処理対象物の表面に存在する化学物質や化学結合状態を評価する方法を用いることを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項4】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物の表面状態を測定する方法として、前記被処理対象物の表面の原子レベルでの平坦性を悪化させる不純物を検出するために、前記処理液で所定の時間前記被処理対象物を液処理することによって前記被処理対象物の表面に原子レベルでの平坦性の悪化を生じさせた後、前記被処理対象物の表面の原子レベルでの平坦性の悪化状態を測定することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項5】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物の表面状態を測定する方法として、2075cm-1から2150cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークのうち、2075cm-1から2084cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2084cm-1から2090cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2090cm-1から2096cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2096cm-1から2106cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2106cm-1から2111cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2111cm-1から2120cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2120cm-1から2130cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2130cm-1から2150cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークとのうち、特定される1本の基準ピークのピーク強度、または特定される2本以上の基準ピークの吸収ピークのピーク強度の合計と、他の特定される1本の対照ピークのピーク強度、または他の特定される2本以上の対照ピークのピーク強度の合計との比を取ることによって前記被処理対象物の表面状態を評価することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項6】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物を液処理するための処理液中に含まれる無機アルカリ、有機アルカリ、アミンおよびその化合物のいずれかを少なくとも1種類以上を含む不純物を検出することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項1】
被処理対象物を液処理するための処理液に含まれる不純物を検出する方法であって、
不純物評価を行う処理液で前記被処理対象物を所定時間液処理する工程と、所定時間液処理した後の前記被処理対象物の表面状態を評価する工程とを有し、
前記評価する工程は、前記被処理対象物の表面状態を測定することによって、前記被処理対象物の表面状態に影響を及ぼす不純物を検出することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物を所定時間液処理する工程の前に、前記被処理対象物の表面に付着している酸化膜もしくは窒化膜を除去する工程を有することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項3】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物の表面状態を測定する方法として、前記被処理対象物の表面に前記被処理対象物の屈折率よりも大きい屈折率を有するクリスタルを密着させ、前記被処理対象物の表面に存在する化学物質や化学結合状態によって吸収される波長範囲を有する測定光を前記クリスタルから前記被処理対象物の表面に対して臨界角以上の角度で入射させ、前記クリスタルと前記被処理対象物の表面との界面で測定光を全反射させることによって前記被処理対象物の表面に存在する化学物質や化学結合状態に起因した吸収を測定し、前記被処理対象物の表面に存在する化学物質や化学結合状態を評価する方法を用いることを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項4】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物の表面状態を測定する方法として、前記被処理対象物の表面の原子レベルでの平坦性を悪化させる不純物を検出するために、前記処理液で所定の時間前記被処理対象物を液処理することによって前記被処理対象物の表面に原子レベルでの平坦性の悪化を生じさせた後、前記被処理対象物の表面の原子レベルでの平坦性の悪化状態を測定することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項5】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物の表面状態を測定する方法として、2075cm-1から2150cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークのうち、2075cm-1から2084cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2084cm-1から2090cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2090cm-1から2096cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2096cm-1から2106cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2106cm-1から2111cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2111cm-1から2120cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2120cm-1から2130cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークと、2130cm-1から2150cm-1の間に生じるシリコンと水素の結合に起因する吸収ピークとのうち、特定される1本の基準ピークのピーク強度、または特定される2本以上の基準ピークの吸収ピークのピーク強度の合計と、他の特定される1本の対照ピークのピーク強度、または他の特定される2本以上の対照ピークのピーク強度の合計との比を取ることによって前記被処理対象物の表面状態を評価することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【請求項6】
請求項1記載の処理液中不純物の検出方法において、
前記被処理対象物を液処理するための処理液中に含まれる無機アルカリ、有機アルカリ、アミンおよびその化合物のいずれかを少なくとも1種類以上を含む不純物を検出することを特徴とする処理液中不純物の検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−5261(P2006−5261A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181963(P2004−181963)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]