説明

凸版印刷用感光性樹脂用保護膜

【課題】高湿度な条件でカバーフィルムを剥離しても吸湿皺が発生せず、水系処理液で洗浄・除去可能で、画像再現の解像度が高い凸版印刷用感光性樹脂用保護膜の提供。
【解決手段】水系現像液により除去され得る保護膜であって、水溶性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含有する凸版印刷用感光性樹脂用保護膜、それを含む感光性樹脂構成体及びそれを用いた印刷版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凸版印刷用感光性樹脂版用保護膜、それを含む凸版印刷用感光性樹脂構成体、その構成体を用いた凸版印刷版およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、凸版印刷版としては、ゴム鋳造版や感光性樹脂組成物を製版して得られる感光性樹脂版が汎用に用いられているが、近年、凸版印刷機やインキなどの進歩により、高印刷品質を実現することが可能となり、従来ではオフセット方式やグラビア方式で行われてきた印刷も凸版印刷方式での印刷が可能になりつつある。高印刷品質の凸版印刷に用いられる印刷版としては、細かな画像再現ができることから、感光性樹脂組成物を製版して得られる凸版印刷版が占める割合が多くなっている。
従来の凸版印刷用感光性樹脂版の現像に際しては、有機溶剤を用いる方法が一般的であるが、環境保護の観点から、水系の現像液が使用可能な版の開発が盛んに行われている。そのような水系の現像液を用いた技術が、例えば特許文献1〜4などに提案されている。水現像感光性樹脂版では水現像性を付与する為、液状樹脂としてオリゴマーやモノマーを極性の高いものを使用する。固体状の樹脂としては組成上の主体であるポリマーに極性基のものを導入するか、もしくは極性基含有ポリマーと疎水性ポリマーを混合・分散して使用するような手法がとられるのが一般的である。特に後者の方法の方が版の耐久性が良好である事や高精細な版面形成が可能なことから好ましく用いられる。
【0003】
このような感光性樹脂凸版印刷版の形成には、ポリエステルフィルムを支持体とし、オリゴマー、もしくはポリマー成分と重合性モノマー成分、活性光線に反応する開始剤、および安定剤からなる感光性樹脂組成物を用いるのが一般的である。
この場合、感光性樹脂組成物の表面は、通常粘着性を帯びている事が多い。この為、ネガフィルムを密着させると、剥離する際にその粘着性により剥離不良が生じ、版、ネガフィルム双方を損傷してしまうことがある。また、ネガフィルムとの密着時に気泡が混入するとその除去が困難となる為、ネガと樹脂が均一に密着せず、画像の再現性が悪くなる等の問題が生じることがある。このような問題を解決する方法としては、現像液で除去可能な薄い保護層で感光性樹脂組成物の表面を被覆する方法が挙げられる。具体的には、例えば、特許文献5(ケン化度90%以上のポリビニルアルコール)、特許文献6(水溶性ポリマー)、特許文献7(可溶性ポリアミド)等に記載されている。
【0004】
水系処理液で現像可能な感光性樹脂組成物の場合、この保護層も水系処理液で現像可能とするために、一般に水溶性のポリマー、例えばポリビニルアルコール、水溶性セルロース等を含有する保護層が用いられている。
しかしながら、これらの保護層を用いた場合、製版作業時に保護層を保護するカバーフィルム(通常ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)を剥離すると、保護層の吸湿が生じ、小皺(以下吸湿皺)が表面に発生してしまう。この小皺が入った版材をそのまま露光すると、皺がレリーフ面に転写してしまう問題が発生する。この際に生じる吸湿皺は、保護層の組成によって大きさが異なるが、おおよそ3〜20μmほどの高低差がみられるような皺である。
この様な吸湿皺を抑制する為に特許文献8では水溶性樹脂と疎水性樹脂微粒子を混合することで親水性を低下させ、シワ耐性をもたせた保護膜が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3508788号公報
【特許文献2】特公昭58−33884号公報
【特許文献3】特許第2940006号公報
【特許文献4】特許第2985655号公報
【特許文献5】特開昭51−49803号公報
【特許文献6】特開昭54−68224号公報
【特許文献7】特開昭56−110941号公報
【特許文献8】特許第3859849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献8に記載されている方法は吸湿シワを改善する効果はあるものの、疎水性樹脂微粒子を必須とするものであり、その効果の範囲は必ずしも十分ではなかった。また、樹脂組成によっては、膜の洗浄性が確保できない場合もあった。
本発明は、(1)高湿度な条件下でカバーフィルムを剥離しても、吸湿皺が発生しずらい、(2)水系処理液で洗浄・除去可能、(3)画像再現の解像度が優れている、を同時に満たす凸版印刷用感光性樹脂版用保護膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、該アニオン性ポリマーと該水溶性ポリマーを混合する事で、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.水系現像液により除去され得る保護膜であって、水溶性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含有する凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
2.水溶性ポリマーとアニオン性ポリマーの質量比が15/85〜75/25である上記1.の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
3.水溶性ポリマーがポリビニルアルコール(PVA)である上記1.又は2.の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
4.アニオン性ポリマーがカルボン酸基を有する上記1.〜3.いずれかの凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
5.アニオン性ポリマーが不飽和共役カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体である上記1.〜3.いずれかの凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
6.アニオン性ポリマーがエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体である上記1.〜3.いずれかの凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
7.膜ヘイズが10%より小さい上記1.〜6.いずれかの凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
8.更に紫外線吸収剤を含有する上記1.〜7.いずれかの凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
9.感光性樹脂層に接して、上記1.〜8.いずれかの保護膜を設けてなる凸版印刷用感光性樹脂構成体。
10.更に、1層以上の第2の保護膜を含む上記9.の凸版印刷用感光性樹脂構成体。
11.上記9.又は10.の凸版印刷用感光性樹脂構成体を露光した後、水系現像液により保護膜を除去する凸版印刷版の製造方法。
12.上記11.の方法により得られる凸版印刷版。
【発明の効果】
【0008】
本発明の保護膜は、高湿度な条件でカバーフィルムを剥離しても吸湿皺が発生せず、水系処理液で洗浄・除去可能で、画像再現の解像度が高いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、感光性樹脂層に接する保護膜として、水溶性ポリマー及びアニオン性ポリマーの混合物からなる層を用いることにより、該課題が解決されることを見出した。
本来、水溶性ポリマーと疎水性ポリマーは、溶解性に対する物性が大きく異なる。そのため混合しても十分に相溶することが難しく、また乾燥後に薄膜とした時にも分離せず相溶状態を維持していることは、非常に困難であると予測され、透明性が必要とされる保護膜としての使用は非常に困難と考えられた。しかしながら、本発明者等が検討したところ、本実施の形態における水溶性ポリマーと疎水性のアニオン性ポリマーが、意外にも極めて良好な相溶性を発現することを見出した。これにより、水溶性ポリマーの持つ水現像性と疎水性ポリマーの持つシワ耐性を両立させ、また、疎水性ポリマーのもつアニオン性官能基の効果により、効率的にアルカリ性の洗浄液で現像可能で、なおかつ保護膜に必要な高い解像度、良好なスリップ性などの多様な特徴を同時に有する保護膜をここに発明するに至った。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の保護膜は、凸版印刷用感光性樹脂の保護膜として用いられる。凸版印刷用感光性樹脂版は、通常、露光、現像および後露光工程を経て製造され、一般には、寸法安定性を維持する支持体であるベースフィルム(通常は、PETフィルムが用いられる)、接着層、感光性樹脂層、保護膜、カバーフィルム(通常は、PETフィルムが用いられる)がこの順に積層された構造を有している。保護膜は、通常カバーフィルムの裏面に形成され、この面を感光性樹脂層に密着させる事により積層される。
【0011】
[保護膜]
本発明の保護膜は、水溶性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含有する。これにより、シワ耐性と水現像性とを両立する。
水溶性ポリマーとしては、水に分散、溶解する樹脂であればよい。更には水系の洗浄液に分散溶解できる樹脂であればどのようなものでもよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ナイロン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、水溶性セルロース、水溶性セルロース誘導体などがあげられるが、これに限定されるものではない。水に溶解させたときの安定性、膜の機械的強度の面からは、ポリビニルアルコール(PVA)を用いる事が好ましい。中でも、ケン化度が75mol%以上のPVAが、吸湿シワに対する耐性の点から好ましい。さらに好ましくはケン化度が80mol%以上、最も好ましいのは85mol%以上の範囲である。ここで、ケン化度は日本工業規格JIS K6726(ポリビニルアルコール試験方法)に準じて測定される。
【0012】
アニオン性ポリマーとは、アニオン性極性官能基を有するポリマーをいう。特に、未溶解状態で中性の水に不溶であるか、吸水率が5%以下である樹脂が好ましい。アニオン性ポリマーの数平均分子量は特に限定はないが、3000〜10万であることが好ましく、より好ましくは5000〜8万、特に好ましくは5000〜3万である。
アニオン性ポリマーとしては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等、さらにはこれら樹脂の共重合体なども挙げられるが、これに限定されるものではない。上記ポリマーは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0013】
アニオン性極性官能基としては、リン酸基、スルフォン酸基、カルボン酸基、フェノール基などが挙げられるが、取扱・相溶性の観点から、カルボン酸基であることが好ましい。
アニオン性ポリマーの極性官能基の含有量は、PVAなどの水溶性ポリマーとの相溶性の点から1質量%以上が好ましく、吸湿シワの抑制の点から50質量%以下が好ましい。より好ましくは5質量%〜40質量%、さらに好ましくは7質量%〜30質量%の範囲である。
前述した保護膜に用いられる好ましい親水性ポリマーの一つであるPVAとの相溶性の観点から、保護膜に用いられるアニオン性ポリマーは、変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、更にはエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体が好ましい。最も好ましい形態は、エチレン−アクリル酸共重合体である。この場合、ポリマー中の極性官能基はカルボン酸基である。
【0014】
本実施の形態における水溶性ポリマーとアニオン性ポリマーの含有比率(質量比)は、水現像性の点から10/90以上が好ましく、吸湿によるシワ発生の抑制の点から99/1以下が好ましい。より好ましくは15/85〜75/25であり、さらに好ましくは、20/80〜70/30であり、もっとも好ましくは20/80〜60/40の範囲である。
保護膜の厚みは、感光性樹脂の粘着性の効果的に防止するために、0.1μm以上であることが好ましい。一方、保護膜の厚みが20μmを超えると粘着防止効果のさらなる向上はみられず、レリーフの解像度は低下する傾向にあるため、厚みは20μm以下であることが好ましい。より好ましくは1〜10μmの範囲で選択される。
保護膜は、画像再現性の点から、膜ヘイズが10%以下であることが好ましい。膜ヘイズは水溶性ポリマーとアニオン性ポリマーとの相溶性の指標であり、ヘイズが高いほど光の散乱が大きくなり、画像再現性は低下する傾向にある。膜ヘイズはより好ましくは7%以下である。
【0015】
保護膜に紫外線吸収剤を添加することにより解像度を大幅に向上できる。この紫外線吸収剤の添加量は、吸収剤の吸光係数により変動する。紫外線吸収剤の添加量は、解像度および感度の点から、膜の紫外線透過率が20%以上となるように、解像度の点から70%以下となるように調整することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば「Valiosol Yellow MYE」、「Valifast Yellow 4120」、「Valifast Yellow 4126」、「Water Yellow 6C」(以上、オリエント化学社製、商標)、「AizenSpilon Yellow GRH」(保土ヶ谷化学社製、商標)、「Diaresin Yellow A」(三菱化学社製、商標)、紫外線吸収剤「Tinuvin 1130」(日本チバガイギー社製、商標)などが挙げられるが、これに限定する物ではない。
【0016】
保護膜を赤外線感受性物質を含む紫外線遮蔽層とし、赤外線レーザーでの直接切除(以下、レーザー描画とする)することにより、この層そのものをネガチブとして用いてもよい。
本発明の保護膜は、水系現像液により除去され得る。水系現像液とは水溶性の洗浄液のことである。水系現像液は界面活性剤やアルカリビルダー(pH調整剤)を含むことが多い。例えば、界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられ、アルカリビルダーとしては有機材料、無機材料のいずれをも用いる事ができるが、pH9以上に調整できるものが好ましい。また版の洗浄性を向上させるためにアルキルグリコールエーテルのような水と混合可能な有機溶剤を浸透剤として添加することも有用な方法である。
【0017】
[保護膜の製造方法]
保護膜は、例えば、後述のカバーフィルム(通常50〜250μm厚み)の上に、水溶性ポリマーとアニオン性ポリマーを含む組成物(保護膜組成物)の溶液を、乾燥後の厚さが1〜10μmになるように順次塗布して乾燥する方法などにより製造できる。保護膜組成物の溶液の溶媒としては、例えば水、エタノール、イソプロパノ−ル、エトキシエタノールなどを用いることができる。保護膜溶液には、カバーフィルムとの塗工性を向上させるために、種々の界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、浸透剤などを配合してもよい。また、版として使用する時の剥離性を考慮して、保護膜溶液を塗工する前に予め被塗工面を離型処理することも可能である。
【0018】
[感光性樹脂構成体]
本発明は、感光性樹脂層に接して、上記保護膜を設けてなる感光性樹脂構成体を好ましい態様として包含する。
凸版印刷用感光性樹脂版を得るための感光性樹脂としては、公知の物を使用することができ、例えば特許第3508788号公報、特公昭58−33884号公報、特許第2940006号公報や特許第2985655号公報などに提案されている樹脂が挙げられる。そのような感光性樹脂は、一般に、オリゴマー、もしくはポリマー成分と重合性モノマー成分と光重合開始剤、および安定剤から構成される。
感光性樹脂を構成するオリゴマー又はポリマー成分は版の物性に最も大きな影響を与えるものであり、用いられる材料は多岐にわたり、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル樹脂系、あるいはナイロン系樹脂系から、極性基含有ポリマーと疎水性ポリマーを混合・分散させた樹脂系(バインダーポリマー)を用いる場合まで様々である。
特に極性基含有ポリマーと疎水性ポリマーを混合・分散させた樹脂系を用いるものは、版の耐久性や高精細な版面形成性に優れており、印刷における汎用性が高く有用な樹脂系である。このような樹脂系の例としては以下のようなものが例示できる。
【0019】
極性基含有ポリマーとしてはカルボキシル基、アミノ基、水酸基、リン酸基、スルフォン酸基等の親水性基又はそれらの塩を含有する水溶性や水分散性共重合体が挙げられる。さらに具体的には特許第2128098号公報に記載されているカルボキシル基含有NBR、カルボキシル基含有SBR、特開平5−7705号、特開昭61−128243号、特開平6−194837号及び特開平7−134411号の各公報等に記載されたカルボキシル基を含有する脂肪族共役ジエンの重合体、特開平9−15860号公報に記載されたリン酸基、又はカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、特開平3−206456号公報記載されているスルフォン酸基含有のポリウレタン、特開2002−162731号公報に記載されたカルボキシル基含有ブタジエンラテックスなどが例として挙げられる。これらの親水性重合体類は単独で用いても良いし2つ以上を併用してもよい。
【0020】
疎水性ポリマーとしは共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体、又は共役ジエン系炭化水素とモノオレフィン系不飽和化合物を重合して得られる共重合体があり、例えばブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン−スチレン共重合体等が挙げられる。これらの疎水性ポリマーは1つでも2つ以上を併用してもよい。
【0021】
感光性樹脂は重合性モノマーを含有することも可能である。このような重合性モノマーの種類は特に制限はない。例えばエチレン性不飽和酸とアルコール類のエステル化合物などがあり、文献「光硬化技術データブック(テクノネット社発行)」等に記載された化合物が利用できる。具体的にはヘキシル(メタ)アクリレート、ノナン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチル、2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ECH変性アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の単官能モノマー;又はヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル、2−ブチルプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の多官能モノマーなどが挙げられる。または、ジオクチルフマレート等のアルコールとフマル酸エステル、又はラウリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどN置換マレイミド誘導体などを挙げることができる。
【0022】
ところで、本発明者等が検討した結果、感光性樹脂が低分子モノマーを含む場合、モノマーが保護膜へ移行し、その結果光照射時に樹脂と共に保護膜が硬化し、洗浄性(水現像性)が低下する可能性があることが判明した。そして、従来の保護膜の中には、移行性の高いモノマーを含まない感光性樹脂用の保護膜としては適当であっても、移行性のモノマーを多く含む感光性樹脂の保護膜としては適当でない保護膜もあることがわかった。本発明の保護膜は低分子モノマーを含む感光性樹脂であっても、シワ耐性を維持しつつ、水現像性の低下が抑制できるという効果をも奏する点で、従来の保護膜に比べて応用範囲の広い保護膜であるといえる。
【0023】
感光性樹脂は光重合開始剤を含有することもある。光重合開始剤としては文献「光硬化技術データブック(テクノネット社発行)」、「紫外線硬化システム(総合技術センター発行)」等に記載されたものが例示できる。具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチロールベンゾイン、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビスアシルフォスフィンオキサイド、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−メチルチオ]フェニル、2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、ベンジル、アンスラキノンなどが挙げられる。これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
感光性樹脂には、その他必要に応じて重合禁止剤、可塑剤、染料、紫外線吸収剤、耐オゾン剤等の添加剤を配合することができる。可塑剤としては、液状1,2(又は1,4)−ポリブタジエン、1,2(または1,4)−ポリイソプレン、又はこれらの末端変性品、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油等が挙げられる。重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,4−ジ−t−ブチルクレゾール、カテコール、t−ブチルカテコール等のフェノール類などが挙げられる。
実施の形態において、感光性樹脂層に接した保護膜(以下、「第1の保護膜」と記すことがある)の上に、さらに第2の保護膜を設けてもよい。この第2の保護層に用いられる樹脂としては、例えば上記第1の保護膜と同様の樹脂が採用でき、吸水率が5%以下のポリマーであり、かつ、紫外線を透過するものが好ましい。また、第1の保護膜と併用して水現像性を維持できるものが好ましい。かかる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。特に、水現像性、吸水率の点から、第2の保護膜を構成する樹脂は、変性セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0025】
第2の保護膜の厚みは、粘着防止の点から0.1μm以上が好ましく、水現像性の点から10μm以下が好ましい。より好ましくは1〜5μmである。
感光性樹脂構成体は、第1の保護膜や第2の保護膜の上に、カバーフィルムを有することが好ましい。カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンその他の材料が使用できるが、寸法安定性や耐熱性、機械的性能の点からポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が最適である。
感光性樹脂構成体は、ベースフィルム、接着層、感光性樹脂層、保護膜、カバーフィルムからなる積層構造とすることも可能である。ベースフィルムとしては、たとえば寸法安定なポリエステルフィルムに接着剤が積層されたポリエステルフィルムを用いる事ができる。ポリエステルフィルムと接着剤層の間に、易接着性塗膜が積層されていてもよい。接着剤としては、例えば特開2001−264959号公報に記載されているようなポリエステル構造又は/及びポリウレタン構造を有する接着剤や、特許第3830959号明細書に記載されているような活性光線又は/及び熱硬化型接着剤などを使用することができる。
凸版印刷用の感光性樹脂構成体の厚みは特に制限はないが、例えば0.5〜10mmである。
【0026】
[感光性樹脂構成体の製造方法]
感光性樹脂構成体は、例えば、カバーフィルムの上に設けた保護膜などの薄膜面を感光性樹脂版の表面に密着させる方法などにより製造することができる。
固体状の感光性樹脂の場合、通常、ポリエチレンテレフタレート支持体(必要に応じてアンチハレーション効果を付与されたものを使用)と粘着防止層を有するフィルムを用いて板状に成形する。フレキソCTPといわれるデジタル版の場合には、上記支持体とレーザーアブレーション能を持つ層を有するフィルムを用いて板状に成形される。液状の感光性樹脂の場合、市販の液状感光性樹脂用の製版機上で支持体とフィルムの間に樹脂を投入して成形露光される。
感光性樹脂版は露光工程(活性光線露光工程)、現像工程(未露光部の洗浄除去工程)を行った後、必要に応じて後露光工程を経て製造される。
WO2005/064413のように、露光工程以降にシリコーン化合物および/またはフッ素化合物を含有する液と感光性樹脂版を接触させてもよい。ここでいうシリコーン化合物とはメチル基を代表とするアルキル基を有するアルキルシロキサンを主たる骨格とするオリゴマーもしくはポリマーをいい、一般的にシリコーンオイルなどと称される場合もある物質である。また、ここでいうフッ素化合物とは炭化水素化合物の水素基の一部もしくは全部をフッ素で置換した化合物をいう。
【0027】
現像方式は公知の方法でよい。具体的には、版を洗浄液に浸漬させた状態でブラシを用いて未露光部分を溶解又は掻き落とす現像方式、スプレーなどで版面に洗浄液を振りかけながらブラシで未露光部を溶解又は掻き落とす現像方式などが挙げられる。
水現像感光性樹脂版の現像液は公知のものを使用することができる。通常、有効成分として界面活性剤を含有している。界面活性剤とはアニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して使用しても良い。
アニオン系界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、α-オレフィンスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩、などが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤の例としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤やグリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエステル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤などが挙げられる。
【0028】
これらに加え、版の洗浄性の向上、及びシリコーン系化合物の版内への浸透性を向上させるためにアルキルグリコールエーテルのような水と混合可能な有機溶剤を浸透剤として添加することは有用な方法である。浸透剤は洗浄する樹脂の組成により選択する事ができる。例えば、ジブチルジグリコールエーテルなどのモノもしくはポリエチレングリコールエーテル型非イオン浸透剤等が挙げられる。
その他の成分としてアルカリビルダーと称されるPH調整剤を含有させても良く、アルカリビルダーとしては有機材料、無機材料のどちらも使用でき、pHを9以上に調整できるものが望ましい。例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウムなどが挙げられる。
現像液中の界面活性剤や浸透剤、ビルダーの量には特に制限はない。通常、界面活性剤の量としては現像液100質量部に対して、1質量部〜50質量部、より好ましくは3質量部〜20質量部である。浸透剤は通常、現像液の100質量部に対して、0.2質量部以上、20質量部以下の範囲で用いられる。より好ましくは0.2質量部以上、10質量部以下の範囲である。アルカリビルダーは通常、現像液の100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲で用いられる。これらの成分の量が上記の範囲より少ない場合には現像にかかる時間が長すぎるなどの不都合が起き、上記範囲より大きい場合にはコストの観点で好ましくない。
【0029】
以下、実施例、比較例により本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
本発明を実施例に基づいて説明する。
(1)実施例、比較例で用いた測定法及び評価方法は以下のとおりである。
(a)アニオン性ポリマーの吸水率
ポリマーを厚み100μm以下のフィルム状にして、40℃・湿度0.1%以下で7日以上乾燥させた重量を測定し(x)、40℃・湿度80%で7日以上経時させ、吸湿させた時の重量を測定する(y)。
吸水率A(%)は A=100×(y−x)/x により計算した。
(b)アニオン性ポリマーのアニオン性官能基含有量
アニオン性官能基含有量は、メーカー値の提示のないもののみ測定した。測定方法としは、Bruker Biospin株式会社製の核磁気共鳴装置「Avance600」(商標)を用い13C(150MHz、定量モード)を測定し、カルボニル基の炭素とエチレン鎖の炭素のモル比から計算によって求めた。
(c)耐吸湿シワ試験
シワ耐久性は耐久シワ試験による湿度により評価した。
10cm×15cmの大きさに切り出した凸版印刷用感光性樹脂版を50℃×湿度1%以下で24時間以上置いた。その後、乾燥状態のまま室温になるまで冷却した後に、25℃の環境下、湿度を50%から90%まで10%ずつ変化させ、3分を限度にシワが発生しない上限の湿度を求めた。シワが発生しない湿度が高いほど、シワ耐久性が高いといえる。
【0031】
(d)現像性
感光性樹脂版を紫外線露光機「JE−A2−SS」(日本電子精機社製、商標)を用いて、支持体側から60秒露光した。その後、カバーフィルムを剥離し、ネガを密着させ前記露光機で12分間露光した。次に界面活性剤として炭素数12〜14の第二級アルコールのエチレンオキシド5モル付加物である「レオコールSC−80」(ライオン株式会社、商標、HLB12.7)5質量部、浸透剤としてジブチルジエチレングリコール1質量部、および炭酸ナトリウム0.4質量部を含む水系現像液を用い、40℃で20分間、平型洗浄機(ロボ電子製)により洗浄をした。60℃で15分乾燥した後、ケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行った。この洗浄過程で膜を均一に除去できるものを○、ムラが残って均一に除去できないものを×とした。
(e)解像度
解像度試験用ネガフィルムにて150LPI 1%のハイライトドットが形成したときの500μm幅の白抜き線の深度を測定し、解像度を評価した。深度が深いものは解像度が優れている。
(f)膜ヘイズの測定方法
日本電色工業社製のヘイズメーター「NDH−1001DP」(商標)を用いて、PETフィルム上に保護膜を積層させた状態のヘイズ(%)を測定した。
【0032】
(2)感光性樹脂版の作製方法
〈感光性樹脂組成物の合成〉
攪拌装置と温度調整用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125質量部、及び乳化剤(α−スルフォ(1−ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩「アデカリアソープ」(旭電化工業製、商標)3質量部を初期仕込みとした。内温を重号温度80℃まで昇温後、アクリル酸2質量部、メタクリル酸5質量部、ブタジエン60質量部、スチレン10質量部、ブチルアクリレート23質量部、t−ドデシルメルカプタンの油性混合液と、水28質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、乳化剤アデカリアソープ1質量部からなる水溶液をそれぞれ一定流速で5時間、及び6時間かけて添加した。その後1時間保って重合を完了した後冷却した。生成したラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整した後、スチームストリッピングで未反応物を除去し最終的に固形分濃度40%で親水性重合体水溶液を得た。これを60℃で乾燥し、親水性共重合体Aを得た。
得られた親水性共重合体A30質量部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体「KX−405」(KRATON製、商標)25質量部、液状ポリブタジエン「LIR305」(株式会社クラレ、商標、ビニル含有量8mol%、30℃での粘度40Pa・s)30質量部、ヘキサメチレンジメタクリレート2.5質量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールジアクリレート8質量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン2質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部を130℃のニーダーを用いて均一に混練して感光性樹脂組成物を得た。
【0033】
〈支持体の調製方法〉
ネオペンチルグリコール624g、エチレングリコール93g、セバシン酸485g、イソフタル酸382gを空気雰囲気中、反応温度180℃、10mmHgの減圧下で6時間縮合反応させた後、87gのトリレンジイソシアネートを加えて、さらに80℃で5時間反応させた。得られたポリオールの数平均分子量をゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定した結果、ポリスチレン換算で約32000であった。
このポリオール100質量部と2−ヒドロキシプロピルメタクリレート2部の混合物に対し、トリメチロールプロパン(1モル)のトリレンジイソシアネート(3モル)付加物17質量部を「バリファストイエロー」(オリエンタル化成製、商標)5質量部とともに酢酸エチル300質量部に加えて均一な溶液とし、125μmの厚みを持つPETフィルム「A4100」(東洋紡績株式会社製、商標)上に、乾燥後の塗布量が10−14g/mとなるようにナイフコーターを用いて塗布した。これを80℃で2分間乾燥させ、次に40℃雰囲気で3日間放置してウレタン系接着剤層を有する支持体を得た。
【0034】
〈感光性樹脂版の作製〉
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物を120℃の熱プレス機を使用し、上記ウレタン系接着剤層を有する支持体と粘着防止フィルム(シリコン系剥離剤が塗布されたPETフィルム)との間に投入し、露光して1.14mmの厚みに成形し、本発明品評価用の感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版には濁りがほとんど認められず透明性は維持されていた。
【0035】
[実施例1]
アニオン性ポリマーであるエチレン−アクリル酸共重合体「SG−2000」(株式会社鉛市製、商標、20質量%水溶液、吸水率1.2%、カルボン酸含有量14wt%)20質量部、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))1質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.05質量部の固形分を水83質量部に溶かし、保護膜用塗工溶液を得た。これをカバーフィルム用の、約100μmの厚みのPETフィルム上に乾燥厚み3μmとなるようにコーティングして乾燥させ、保護膜付きカバーフィルムを作製した。
上記(2)で作製した感光性樹脂版の粘着防止フィルムを剥離した。その後、感光性樹脂版を、上記で得られた保護膜付きカバーフィルムに、保護膜が感光性樹脂層に接するようにしてラミネートし、評価用の感光性樹脂構成体を作製した。なお、対吸湿シワ評価用、画像再現性評価用には室温で、また洗浄性評価用には150℃にてラミネートした。
このようにして得られた凸版印刷用感光性樹脂構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は湿度90%でも吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の優れた保護膜であることが確認された。
【0036】
[実施例2]
アニオン性ポリマーであるエチレン−アクリル酸共重合体「SG−2000」(株式会社鉛市製、商標、20質量%水溶液)15質量部、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))2質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.05質量部の固形分を水83質量部に溶かして保護膜用塗工溶液を得た。これを厚さ約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み3μmとなるようにコーティングして乾燥させ、保護膜付きカバーフィルムを作製した。このようにして得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、評価用凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は湿度80%でも吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の優れた保護膜であることが確認された。
【0037】
[実施例3]
アニオン性ポリマーであるエチレン−アクリル酸共重合体「SG−2000」(株式会社鉛市製、商標、20質量%水溶液)10質量部、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))3質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.05質量部の固形分を水83質量部に溶かして保護膜用塗工溶液を得た。これを厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み3μmとなるようにコーティングして乾燥させ、保護膜付きカバーフィルムを作製した。このようにして得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、評価用凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は湿度70%まで吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の優れた保護膜であることが確認された。
【0038】
[実施例4]
アニオン性ポリマーであるエチレン-メタクリル酸共重合体「ニュクレルN2060」(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商標、カルボン酸含有量20wt%、吸水率1.7%、27質量%水溶液)11.1質量部、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))2質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.05質量部の固形分を水83質量部に溶かして保護膜用塗工溶液を得た。これを厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み3μmとなるようにコーティングして乾燥させ、保護膜付きカバーフィルムを作製した。このようにして得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、評価用凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は湿度80%でも吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の優れた保護膜であることが確認された。
【0039】
[実施例5]
セルロース・アセテート・ブチレート(以下CABと略す)「CAB553−0.4」(イーストマン・コダック社製、商標、水酸基含有率4.8%(メーカー値))5質量部、ジオクチルセバゲート(以下DOSと略す)0.75質量部、水添ロジンエステル 「エステルガムH」(荒川化学工業株式会社製、商標)0.5質量部の固形分をトルエン27質量部、THF27質量部、酢酸エチル27質量部、酢酸セロソルブ9質量部に溶かして、第2の保護膜用の塗工溶液を得た。これを厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み約1.5μmとなるようにコーティングして乾燥させ、第の保護膜付きカバーフィルムを得た。次に水溶性ポリマーであるエチレン−アクリル酸共重合体「SG−2000」(株式会社鉛市製、商標、20質量%水溶液)15質量部、ポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))2質量部、紫外線吸収剤「Valifast Yellow 5126」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.05質量部の固形分を水83質量部に溶かして第1の保護膜用塗工液を得た。これを、第2の保護膜付きカバーフィルム上に、乾燥厚みが約3μmとなるようにさらにコーティングして乾燥させ、第1、第2の保護膜付きカバーフィルムを得た。このようにして得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の極めて優れた保護膜であることが確認された。
【0040】
[実施例6]
CAB「CAB531−1」(イーストマン・コダック社製、商標、水酸基含有率1.7%(メーカー値))3質量部、セルロース・アセテート・プロピオネート(以下CAPと略す)「CAP482−20」(イーストマン・コダック社製、商標、水酸基含有率1.8%(メーカー値))2質量部、DOS0.75質量部、帯電防止剤「アンステックスC−200」(東邦化学工業株式会社製、商標)0.3質量部の固形分をトルエン27質量部、THF27質量部、酢酸エチル27質量部、酢酸セロソルブ9質量部に溶かして、第2の保護膜用塗工液を得た。これを厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み約1.5μmとなるようにコーティングして乾燥させ、第2の保護膜付きカバーフィルムを得た。得られた第2の保護膜付きカバーフィルム上に、実施例5で用いた第1の保護膜用の塗工溶液を乾燥厚みが約3μmとなるようにコーティングして乾燥させ、第1、2の保護膜付きカバーフィルムを得た。このようにして得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体の結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の極めて優れた保護膜であることが確認された。また、第2の保護膜に用いた変性セルロースの水酸基含有率が低いほど、吸湿シワの抑制効果が高くなることがわかった。
【0041】
[実施例7]
ポリアミド「マクロメルト6900」(ヘンケルジャパン製、商標)5質量部、シリコンオイル 「KF−351」(信越化学工業株式会社製、商標)0.1質量部、帯電防止剤「Hostastat HS1」(クラリアントジャパン株式会社製、商標、アルカンスルフォネート系)0.15質量部、ポリエチレンオキサイド「アルコックスL8」(明成化学工業株式会社製、商標、重量平均分子量80000)0.5質量部、水添ロジンエステル 「エステルガムH」0.5質量部の固形分を、トルエン45質量部、イソプロピルアルコール45質量部、水2質量部に溶解させて、第2の保護膜用塗工液を得た。この塗工液を、厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み約1.5μmとなるようにコーティングして乾燥させ、第2の保護膜付きカバーフィルムを得た。この第2の保護膜付きカバーフィルム上に、アニオン性ポリマーであるエチレン−アクリル酸共重合体の20質量%水溶液「SG−2000」(株式会社鉛市製、商標)12.5質量部、ポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))2.5質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.2質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.1質量部の固形分を、水77質量部、イソプロピルアルコール7質量部に溶かして得た第1の保護膜用塗工液を、乾燥厚みが約1.5μmとなるようにさらにコーティングして乾燥させ、第1、第2の保護膜付きカバーフィルムを得た。このようにして得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の優れた保護膜であることが確認された。
【0042】
[実施例8]
ポリ乳酸「バイロエコールBE−450E」(東洋紡績株式会社製、商標、固形分濃度50%酢酸エチル溶液)を10質量部、シリコンオイル 「KF−351」(信越化学工業株式会社製、商標)0.2質量部、帯電防止剤「アンステックスC−200」(東邦化学工業株式会社製、商標)0.5質量部の固形分をTHF90質量部、に溶かして、第2の保護膜用塗工液を得た。これを厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み約1.5μmとなるようにコーティングして乾燥させ、第2の保護膜付きカバーフィルムを得た。この第2の保護膜付きカバーフィルム上に、実施例7で用いた第1の保護膜用塗工液を、乾燥厚みが約1.5μmとなるようにコーティングし、乾燥させて、第1、第の保護膜付きカバーフィルムを得た。得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明の保護膜は吸湿によるシワの発生はなく、水系処理液で現像可能であり、解像度の優れた保護膜であることが確認された。
【0043】
[比較例1]
水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール「A−300」(日本合成化学株式会社製、商標、ケン化度97.0〜98.5mol%、粘度25〜30mPa・s(測定方法JIS K6726))2.56質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商品名)0.08質量部、界面活性剤「FT−251」(株式会社ネオス製、商標)0.03質量部、シリコンオイル「KF−351」(信越化学工業株式会社製、商標)0.74質量部の固形分を、水69質量部に溶かして保護膜用塗工液を得た。これを厚み約100μmのカバーフィルム用PETフィルム上に乾燥厚み約3μmとなるようにコーティングして乾燥させて保護膜付きカバーフィルムを得た。得られた保護膜付きカバーフィルムを実施例1と同様の方法で感光性樹脂版にラミネートし、凸版印刷用感光性構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。この保護膜は、吸湿シワ、水現像性、ネガ密着性には実用性があるものの、画像再現性には劣り、150LPI 1%は形成せず、2%形成時に500μmの白抜き深度が35μmと非常に浅く、印刷版としては精細さに欠けるものであった。
【0044】
[比較例2]
保護膜に用いられる塗工溶液として、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール「GL−05」(日本合成化学工業株式会社製、商標、ケン化度86.5〜89%、粘度4.8〜5.8mPa・s(測定方法JIS K6726))5質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、シリコンオイル「KF−351」(信越化学工業株式会社製、商標)0.2質量部の固形分を、水95質量部に溶かして得た液を用いた以外は実施例1と同様の方法により、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。この保護膜は、水現像性、ネガ密着性は実用レベルに達しているが、吸湿シワが低湿度条件下でも発生してしまった。また、解像度は満足のいくものではなかった。
【0045】
[比較例3]
保護膜に用いられる塗工溶液として、アニオン性ポリマーであるエチレン−アクリル酸共重合体「SG−2000」(株式会社鉛市製、商標、20質量%水溶液)25質量部、紫外線吸収剤「Water Yellow 6C」(オリエント化学工業株式会社製、商標)0.13質量部、シリコンオイル「KF−351」(信越化学工業株式会社製、商標)0.2質量部の固形分を、水75質量部に溶かして得た液を用いた以外は実施例1と同様の方法により、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。得られた構成体を評価した結果を表1に示した。この保護膜は、吸湿シワは発生しないものの、水現像性がなく、また、ネガ密着性が悪いため、保護膜としての機能を兼ね備えていなかった。そのため、解像度を評価する事はできなかった。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の保護膜は、水系処理液での現像が可能で、製版時の吸湿による小シワを高湿度条件下においても抑制することができ、且つ高い解像度を有するという効果を奏する。そのため、フィルム・ラベル・カートン等の一般商業印刷分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系現像液により除去され得る保護膜であって、水溶性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含有する凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項2】
水溶性ポリマーとアニオン性ポリマーの質量比が15/85〜75/25である請求項1記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項3】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコール(PVA)である請求項1又は2記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項4】
アニオン性ポリマーがカルボン酸基を有する請求項1〜3いずれか一項に記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項5】
アニオン性ポリマーが不飽和共役カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体である請求項1〜3いずれか一項に記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項6】
アニオン性ポリマーがエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体である請求項1〜3いずれか一項に記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項7】
膜ヘイズが10%より小さい請求項1〜6いずれか一項に記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項8】
更に紫外線吸収剤を含有する請求項1〜7いずれか一項に記載の凸版印刷用感光性樹脂用保護膜。
【請求項9】
感光性樹脂層に接して、請求項1〜8のいずれかの一項に記載の保護膜を設けてなる凸版印刷用感光性樹脂構成体。
【請求項10】
更に、1層以上の第2の保護膜を含む請求項9記載の凸版印刷用感光性樹脂構成体。
【請求項11】
請求項9又は10記載の凸版印刷用感光性樹脂構成体を露光した後、水系現像液により保護膜を除去する凸版印刷版の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法により得られる凸版印刷版。

【公開番号】特開2009−190275(P2009−190275A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33577(P2008−33577)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】