説明

凹凸補正用組成物、並びに該凹凸補正用組成物を含有する皮膚化粧料、及び皮膚外用剤

【課題】使用感及び皮膚密着効果が向上し、皮膚の凹凸補正効果が長時間持続し得る凹凸補正用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明では、0℃以上37℃以下にLCST(Lower Critical Solution Temperature:下限臨界共溶温度)を有する高分子と、親水性高分子と、が少なくとも結合した共重合体からなり、該共重合体の水溶液が0℃以上37℃以下にゾル−ゲル転移温度を有する水溶性高分子(a)と、アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子(b)と、水と、を少なくとも含有する凹凸補正用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上の凹凸を補正するための凹凸補正用組成物に関する。より詳細には、特定の水溶性高分子を配合することにより皮膚密着効果を向上させた凹凸補正用組成物、並びに該凹凸補正用組成物を含有する皮膚化粧料、及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚化粧料分野において、老化等に伴なうしわの発生や毛穴の開きを防止するためのスキンケア技術が開発されつつある一方で、しわ、毛穴、にきび跡、傷跡等を、外観上、目立たなくするための皮膚の凹凸補正技術の開発も進んでいる。
【0003】
皮膚の凹凸補正技術としては、油性の原料を用いて、皮膚の凹部を埋めることにより物理的に補正する方法や、光の散乱を利用して、皮膚の凹凸を視覚的に補正する方法など、様々な方法がある。
【0004】
具体的な例として、例えば、特許文献1には、特定の粘度のシリコーン油と、このシリコーン油のニュートン流体的性質に基づく皮膚上におけるたれ落ちを補正するために、粉体成分を配合した凹凸補正用組成物が提案されている。しかし、この組成物を用いた皮膚化粧料は、肌への密着性が良好でなく、経時的に肌から分泌される皮脂により、化粧等が崩れる場合があった。
【0005】
特許文献2には、脂肪相と組み合わせて用いられる少なくとも一の部分的に架橋したエラストマーである固体有機ポリシロキサンを含有する皮膚の手入れ用もしくは皮膚のツヤ消しのためのメイクアップ用組成物が提案されている。しかし、この組成物を用いた皮膚化粧料は、凹凸補正効果やその持続性が十分なものではなかった。
【0006】
特許文献3には、平均粒径3μm以上の球状粉体、被膜形成剤及び油剤を含有させることにより、肌の凹凸を見えにくくすることができる皮膚化粧料が提案されている。しかし、この皮膚化粧料は、べたつきを生じ、伸び広がりの滑らかさが劣るという問題があった。
【0007】
これらの凹凸補正効果の持続性や使用感に関する問題点を解決するために、特許文献4では、部分架橋型フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンと、非架橋型フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンと、を配合した凹凸補正用皮膚化粧料が、特許文献5では、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と、部分架橋型ポリエ−テル変性オルガノポリシロキサン重合物と、屈折率1.3〜1.5の粉体と、を配合した凹凸補正皮膚化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−60445号公報
【特許文献2】特開平09−227332号公報
【特許文献3】特開2001−2530号公報
【特許文献4】特開2005−336161号公報
【特許文献5】特開2002−322030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように、皮膚の凹凸補正技術に関する研究開発は進みつつあるが、メイクアップ技術等の進化に伴い、更なる改善が期待されているのが現状である。
【0010】
そこで、本発明では、使用感及び皮膚密着効果が向上し、皮膚の凹凸補正効果が長時間持続し得る凹凸補正用組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、凹凸補正効果を発揮すべく皮膚本来の皮膚の表面温度、性質等に着目して鋭意研究を行った結果、皮膚の表面温度や皮膚の性質に応じて変化し得る特定の水溶性高分子を用いた新規な凹凸補正技術を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明では、まず、0℃以上37℃以下にLCST(Lower Critical Solution Temperature:下限臨界共溶温度)を有する高分子と、親水性高分子と、が少なくとも結合した共重合体からなり、該共重合体の水溶液が0℃以上37℃以下にゾル−ゲル転移温度を有する水溶性高分子(a)と、
アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子(b)と、
水と、
を少なくとも含有する凹凸補正用組成物を提供する。
前記水溶性高分子(b)は、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮するものであれば、特に限定されないが、本発明においては、前記水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が40000mPa・s以上であり、該中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、0.8以上1.2以下であり、前記中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、該水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム0.5質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、0.7以上1.2以下であるものを好適に用いることが可能である。
また、前記水溶性高分子(b)の構成成分も前記特性を発揮できれば特に限定されないが、前記アクリル酸アルキルエステル又は前記メタアクリル酸アルキルエステルとして、アルキル基の炭素数が18以上24以下である前記アクリル酸アルキルエステル又は前記メタアクリル酸アルキルエステル2.43質量%以上4.3質量%以下と、前記化合物0.08質量%以上0.29質量%以下と、を少なくとも含むものを好適に用いることができる。
この場合の前記メタアクリル酸アルキルエステルの種類は、前記水溶性高分子(b)の前記特性を発揮できれば特に限定されないが、例えば、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸テトラコサニル、からなる群より選ばれた少なくとも1種のメタアクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
また、エチレン性不飽和基を2個以上有する前記化合物の種類も、前記水溶性高分子(b)の前記特性を発揮できれば特に限定されないが、例えば、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリアリルサッカロース、からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。
本発明に係る凹凸補正用組成物中の前記水溶性高分子(a)及び前記水溶性高分子(b)の含有量は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、前記水溶性高分子(a)は、組成物中に0.01質量%以上5.0質量%以下、含有することが好ましく、前記水溶性高分子(b)も、組成物中に0.01質量%以上5.0質量%以下含有することが好ましい。
本発明に係る凹凸補正用組成物には、前記水溶性高分子(b)の中和剤となり得る塩基性物質を更に含有させることも可能である。
また、本発明に係る凹凸補正用組成物には、前記水溶性高分子(b)の粘度を増加させ得る電解質を含有させることも可能である。
更に、本発明に係る凹凸補正用組成物は、水を含有するものも包含する。
【0013】
以上説明した凹凸補正用組成物は、皮膚化粧料や皮膚外用剤に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る凹凸補正用組成物は、その構成成分が、皮膚の表面温度、皮膚の表面に存在する電解質等に対応してその性質が変化するため、該凹凸補正用組成物を皮膚化粧料や皮膚外用剤に用いれば、皮膚化粧料や皮膚外用剤の使用感及び皮膚密着効果が向上し、皮膚の凹凸補正効果を長時間持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例における毛穴カウント変化率を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
<凹凸補正用組成物>
本発明に係る凹凸補正用組成物は、大別して、(1)水溶性高分子(a)と、(2)水溶性高分子(b)と、水と、を少なくとも含有する。また、必要に応じて、(3)塩基性物質、(4)電解質、(5)粉体成分、(6)極性油分、(7)糖類、をそれぞれ含有させても良い。以下、それぞれの構成成分について、詳細に説明する。
【0018】
(1)水溶性高分子(a)
本発明に係る凹凸補正用組成物に用いることができる水溶性高分子(a)は、0℃以上37℃以下にLCST(Lower Critical Solution Temperature:下限臨界共溶温度)を有する高分子(1−1)(以下、「LCST高分子」と称する。)と、親水性高分子(1−2)と、が少なくとも結合した共重合体からなり、該共重合体の水溶液が0℃以上37℃以下にゾル−ゲル転移温度を有する水溶性高分子である。
【0019】
(1−1)LCST高分子
まず、本発明において、「LCST(Lower Critical Solution Temperature:下限臨界共溶温度、以下「LCST」と称する。)」とは、この温度より低い温度では、高分子が水に溶解して透明の液体となるが、この温度より高い温度では、不溶化して白濁または沈殿が生じ、相分離する温度をいう。また、本発明において、「LCST挙動」とは、所定の温度より低い温度では、高分子が水に溶解して透明の液体となるが、所定の温度より高い温度では、不溶化して白濁または沈殿が生じ、相分離することをいう。
【0020】
LCST高分子には、LCST挙動を示す温度応答性高分子が含まれる。LCST挙動を示す温度応答性高分子としては、ポリN−置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタクリルアミド誘導体、及びこれらの共重合体、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
【0021】
これらの高分子は、本発明の目的が損なわれなければ、その具体的化合物は特に限定されないが、例えば、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド等を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。この中でも特に、本発明においては、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが好適である。
【0022】
前記LCST高分子は、LCST挙動を示す前記温度応答性高分子の中から、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドやポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド等のような、0℃以上37℃以下にLCST挙動を示す温度応答性高分子を適宜選択して、この高分子のみから構成されるホモポリマーであっても良い。
【0023】
また、LCST挙動を示す前記温度応答性高分子に、他のモノマーを共重合させたコポリマーであっても良い。この場合、コポリマーを構成する他のモノマーの種類は、本発明の目的が損なわれなければ、特に限定されず、親水性モノマー及び疎水性モノマーのいずれも用いることができる。この場合、LCST挙動を示す前記温度応答性高分子のLCSTが目的の温度より低い場合には、親水性モノマーを共重合させることによりLCSTを上昇させることができ、逆に、LCST挙動を示す前記温度応答性高分子のLCSTが目的の温度より高い場合には、疎水性モノマーを共重合させることによりLCSTを下降させることができるため、LCST挙動を示す前記温度応答性高分子と共重合させるモノマーの組み合わせを適宜選択し、その組成比等を調整することで、0℃以上37℃以下において、LCSTを適宜調整することが可能である。
【0024】
親水性モノマーの具体的な例としては、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドリキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、塩基性基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの塩が挙げられる。
【0025】
疎水性モノマーの具体的な例としては、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアクリレート誘導体、及びメタクリレート誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミド等のN−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0026】
(1−2)親水性高分子
前記水溶性高分子(a)に含有する親水性高分子は、前記水溶性高分子(a)の特性を損なわなければ、その種類は特に限定されず、公知の水溶性高分子を自由に選択して用いることができる。例えば、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、及びそれらの塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及びそれらの塩、等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る凹凸補正用組成物に含有する水溶性高分子(a)は、以上説明した(1−1)LCST高分子と、(1−2)親水性高分子と、が少なくとも結合した共重合体からなる。該共重合体は、ブロック共重合体であってもグラフト共重合体であっても良い。グラフト共重合体の場合、主鎖である(1−1)LCST高分子に、(1−2)親水性高分子が側鎖として結合したものであっても、主鎖である(1−2)親水性高分子に、(1−1)LCST高分子が側鎖として結合したものであっても良い。
【0028】
(1−1)LCST高分子と、(1−2)親水性高分子と、の重合方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法から自由に選択して用いることができる。例えば、ブロック共重合の場合、予め両者若しくは一方に、反応活性を示す官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等)を複数導入し、両者を化学反応により結合させることで、水溶性高分子(a)を得ることができる。具体的な一例としては、(1−2)親水性高分子であるポリエチレンオキサイドの両末端に重合性官能基であるメタクリロイル基を導入し、(1−1)LCST高分子を構成するモノマーであるN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることにより、N−イソプロピルアクリルアミドから構成される(1−1)LCST高分子と、ポリエチレンオキサイドからなる(1−2)親水性高分子と、がブロック共重合した水溶性高分子(a)を得ることができる。
【0029】
また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−アクリロキシスクシンイミドを共重合させて1級アミンと反応する基を導入した高分子を合成し、末端に1級アミノ基を導入したポリエチレンオキサイドと反応させることにより、N−イソプロピルアクリルアミドから構成される(1−1)LCST高分子と、ポリエチレンオキサイドからなる(1−2)親水性高分子と、がブロック共重合した水溶性高分子(a)を得ることができる。
【0030】
グラフト共重合の場合も、その重合方法は特に限定されないが、例えば、重合体の連鎖移動反応を利用する方法、幹重合体に、遊離基に分裂し得る官能基を導入し、該官能基から重合を開始する方法、幹重合体からイオン重合せしめる方法等、公知のあらゆる方法を自由に選択して用いることができる。この中でも特に本発明においては、側鎖の重合度を制御する観点から、LCST高分子中に1個の重合性官能基を導入し、親水性高分子部分を与えるモノマーと共重合させる方法や、親水性高分子中に1個の重合性官能基を導入し、LCST高分子を構成するモノマーと共重合させる方法などを、好適に用いることができる。
【0031】
本発明に係る凹凸補正用組成物に含有する水溶性高分子(a)の分子量は、特に限定されないが、分散系の皮膚化粧料又は皮膚外用剤に用いた場合の分散の安定性の点からは、分子量が大きい方が好ましい。より具体的には、その分子量が10万以上のものを少なくとも含むものが好ましい。
【0032】
ここで、「分子量10万以上の高分子化合物」とは、ゾル−ゲル転移温度より低い温度においてその水溶液(濃度:約1%)を分画分子量10万の限外濾過膜(アミコン社製、商品名:H1P100−43)を用いて限外濾過した際に、実質的に濾過されないものをいう。この「実質的に濾過されない」とは、原液の容量を1/3まで限外濾過濃縮した時、濾液中に検出される該高分子化合物の濃度が原液(濃縮前)中の該高分子化合物の濃度の1/10以下であることをいう。濾過の有無は、例えば、原液と濾液中の高分子化合物の濃度比をUV測定等により確認することが可能である。
【0033】
本発明に係る凹凸補正用組成物に含有する水溶性高分子(a)は、その水溶液が0℃以上37℃以下にゾル−ゲル転移温度を有する水溶性高分子である。ゾル−ゲル転移温度の具体的な測定は、観測周波数1Hzにおける試料の動的弾性率を低温側から高温側へ徐々に温度を変化(1℃/1分)させて測定し、該試料の貯蔵弾性率(G´、弾性項)が損失弾性率(G″、粘性項)を上回る点の温度をゾル−ゲル転移温度とする方法によって測定できる。一般に、G″>G´の状態がゾルであり、G″<G´の状態がゲルである。
【0034】
水溶性高分子(a)の水溶液のゾル−ゲル転移温度は、LCST高分子と親水性高分子との組成、両高分子の疎水性度、親水性度、及び/又はそれらの分子量を調整することによって、0℃以上37℃以下に制御することができる。また、高分子化合物(a)の水溶液に、例えば、尿素、グアニジン、チオグリコール酸塩、pH調製剤などの他の成分を含有させることにより、水溶性高分子(a)の水溶液のゾル−ゲル転移温度を0℃以上37℃以下に制御することもできる。
【0035】
水溶性高分子(a)の水溶液のゾル−ゲル転移温度は、0℃以上37℃以下であれば、本発明の目的を達成することができるが、平均的な皮膚の表面温度を考慮すると、20℃以上37℃以下であることがより好ましい。
【0036】
以上説明した水溶性高分子(a)を含有することにより、本発明に係る凹凸補正用組成物を含む皮膚化粧料及び皮膚外用剤は、皮膚への塗布時には、みずみずしい使用感を有すると共に、皮膚に対して素早く、手軽に、滑らかに伸び広げることができ、皮膚上の凹凸部に流れ込ませることができる。そして、塗布後には、凹凸部に流れ込んだ水溶性高分子(a)が、皮膚の表面温度によって凹凸部の形状に合わせてゲル化することにより皮膚へ密着することで、皮膚表面が平滑化され、優れた凹凸補正効果を発揮する。
【0037】
水溶性高分子(a)の凹凸補正用組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、より優れた凹凸補正効果を発揮するためには、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0038】
(2)水溶性高分子(b)
本発明に係る凹凸補正用組成物に用いることができる水溶性高分子(b)は、(2−1)アクリル酸又はメタアクリル酸と、(2−2)アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、(2−3)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子である。
【0039】
(2−1)アクリル酸、メタアクリル酸
アクリル酸又はメタアクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」と称する。)の水溶性高分子(b)における構成比は、水溶性高分子(b)の特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、95.42質量%以上97.48質量%以下が好ましく、95.47質量%以上97.46質量%以下がより好ましく、95.97質量%以上96.94質量%以下が更に好ましい。(メタ)アクリル酸の水溶性高分子(b)における構成比が95.42質量%未満の場合、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際に、低濃度の電解質存在下における粘度が著しく高くなり、所定の電解質濃度における粘度変化率が大きくなってしまい、使用しづらくなる場合がある。逆に、(メタ)アクリル酸の水溶性高分子(b)における構成比が97.48質量%を超える場合、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際に、電解質存在下で充分な粘度が得られず、温度及び電解質濃度による粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合があるからである。
【0040】
(2−2)アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル
アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステル(以下「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する。)の種類は、水溶性高分子(b)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、アルキル基の炭素数が、18以上24以下であることが好ましい。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステル及び(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
この中でも、本発明においては特に、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液、及び電解質存在下における該中和粘稠水溶液の粘度特性や質感を考慮すると、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、及びメタクリル酸テトラコサニルが好ましく、少なくともメタクリル酸ベヘニルを50質量%以上含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(b)における構成比は、水溶性高分子(b)の特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、2.43質量%以上4.3質量%以下が好ましく、2.91質量%以上3.84質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(b)における構成比が2.43質量%未満の場合、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、電解質存在下で充分な粘度が得られず、温度及び電解質濃度による粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合がある。逆に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(b)における構成比が4.3質量%を超える場合、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、低濃度の電解質存在下の粘度が著しく高くなり、所定の電解質濃度における粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合があるからである。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(b)におけるより詳しい構成比としては、アルキル基の炭素数が18以上24以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43質量%以上4.3質量%以下含有させることが好ましい。より具体的には、例えば、アルキル基の炭素数が18以上24以下の1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43質量%以上4.3質量%以下含有させてもよく、アルキル基の炭素数が18以上24以下の2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合体を2.43質量%以上4.3質量%以下含有させてもよい。
【0044】
(2−3)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の種類は、水溶性高分子(b)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、例えば、エチレン性不飽和基がアリル基である化合物を好適に用いることができる。具体的には、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル並びにポリアリルサッカロースが特に好ましい。なお、これらエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0045】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の水溶性高分子(b)における構成比は、水溶性高分子(b)の特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、0.08質量%以上0.29質量%以下が好ましく、0.11質量%以上0.24質量%以下がより好ましく、0.15質量%以上0.19質量%以下が更に好ましい。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の水溶性高分子(b)における構成比が0.08質量%未満の場合、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、電解質存在下で充分な粘度が得られず、温度及び電解質濃度による粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合がある。逆に、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の水溶性高分子(b)における構成比が0.29質量%を超える場合、水溶性高分子(b)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、低濃度の電解質存在下の粘度が高くなり、所定の電解質濃度における粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合があるからである。
【0046】
本発明に係る凹凸補正用組成物に含有する水溶性高分子(b)は、以上説明した(2−1)アクリル酸又はメタアクリル酸と、(2−2)アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、(2−3)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなる。重合方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法から自由に選択して用いることができる。例えば、これらの構成成分を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で攪拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0047】
重合に用いる不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。
【0048】
重合に用いる溶媒も特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られる水溶性高分子(b)を溶解しないものであって、当該重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサン等の炭化水素溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも特に、n−ヘキサン、及びn−へプタンを好適に用いることができる。また、これら炭化水素溶媒は、ケトン、エステル、エーテル、及び飽和アルコール等の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。好ましい有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、プロピオン酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0049】
重合に用いる前記溶媒の量は、攪拌操作性を向上させる観点及び経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、300〜5000質量部であることが好ましい。
【0050】
重合に用いる重合開始剤も特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも特に、高分子量の水溶性高分子(b)を得るためには、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートを用いることが好ましい。
【0051】
重合に用いる前記重合開始剤の量は、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モルであることが好ましい。重合開始剤の使用量が0.00003モル未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。逆に、重合開始剤の使用量が0.002モルを超える場合、重合が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。
【0052】
重合における反応温度は、目的の水溶性高分子(b)が得られれば、特に限定されないが、50℃以上90℃以下で行うのが好ましく、55℃以上75℃以下で行うのがより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応溶液の粘度が上昇し、均一に攪拌することが困難になるおそれがある。逆に、反応温度が90℃を超える場合、反応が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。反応時間は、反応温度によって適宜設定することができるが、通常、0.5〜5時間で行うことが好ましい。
【0053】
反応終了後、反応溶液を例えば80℃以上130℃以下で加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、本発明に係る凹凸補正用組成物に含有する水溶性高分子(b)を得ることができる。加熱温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる水溶性高分子(b)の水への溶解性を損なうおそれがあるからである。
【0054】
本発明に係る凹凸補正用組成物に含有する水溶性高分子(b)は、本発明に係る凹凸補正用組成物を皮膚化粧料及び皮膚外用剤に用いる場合、通常、中和剤を用いて1質量%程度でのpHが6.5以上7.5以下になるような中和粘稠水溶液として用いる。この中和粘稠水溶液は、本発明の目的を達成するために、以下の性質を有することが好ましい。
【0055】
水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度は、皮膚化粧料及び皮膚外用剤等に用いた際に、べたつきのないみずみずしい質感を得るために、少ない添加量で増粘できるという観点から、40000mPa・s以上であることが好ましく、42000mPa・s以上であることがより好ましい。
【0056】
水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、皮膚化粧料及び皮膚外用剤等に用いた際に、気温変動の影響を受けにくいという観点から、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。
【0057】
水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム0.5質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、皮膚化粧料及び皮膚外用剤等に用いた際に、電解質濃度の異なる種々の配合処方に活用しやすいという観点から、0.7以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.0以下であることがより好ましい。
【0058】
以上説明した水溶性高分子(b)を含有することにより、本発明に係る凹凸補正用組成物を含む皮膚化粧料及び皮膚外用剤は、比較的高濃度の電解質の存在下であっても、その濃度や温度に依存せず、安定で適度な粘度を有して皮膚に密着すると共に、べたつきのないみずみずしい質感を有するため、優れた凹凸補正効果を発揮する。
【0059】
これは、水溶性高分子(b)に導入されたアルキル基が、水溶液中で疎水性相互作用により会合体を形成することにより増粘性が増し、電解質の影響を低減させているものと推察される。また、水溶性高分子(b)に導入されたエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、架橋剤として作用して粘度を増加させると共に、疎水性相互作用の自由度が低下して温度の影響を低減させているものとも推察される。
【0060】
水溶性高分子(b)の凹凸補正用組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、より優れた凹凸補正効果を発揮するためには、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
(3)塩基性物質
本発明に係る凹凸補正用組成物には、前記水溶性高分子(b)を含む前記中和粘稠水溶液を調製するための中和剤となり得る塩基性物質を含有させることができる。塩基性物質の種類は、水溶性高分子(b)1質量%程度でのpHが6.5以上7.5以下になるように調製できれば特に限定されず、公知の塩基性物質を自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物や、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類等を挙げることができ、この中でも本発明においては特に、水酸化ナトリウムを好適に用いることができる。
【0062】
(4)電解質
本発明に係る凹凸補正用組成物には、前記水溶性高分子(b)の粘度を増加させるための電解質(前記塩基性物質は除く)を含有させることができる。電界質を含有させることで、肌への密着性が向上し、凹凸補正効果をより向上させることができ、また、化粧持ち効果を持続させることにも貢献する。
【0063】
電解質の種類は、通常皮膚化粧料に用いられる電解質であれば特に制限はない。具体的には、保湿効果のある電解質としては、アミノ酸、乳酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機化合物と、それらのカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の無機塩やL−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−アスパラギン一水和物、L−アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−システイン塩酸塩一水和物、L−シスチン、L−ドーパ、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸塩酸塩、L−グルタミン、ポリグルタミン酸、グリシン、トリメチルグリシン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−リジン塩酸塩、L−メチオニン、L−オルニチン塩酸塩、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン等のアミノ酸及びその誘導体や塩類が挙げられる。また、美白効果のある電解質としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド等とそれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等の水溶性アスコルビン酸類が挙げられる。さらに、グリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸塩、サリチル酸塩、トラネキサム酸塩、尿素、ミョウバンや海洋深層水、温泉水等、これら電解質を含む天然由来の水溶液も挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いる事が出来る。これらの電解質の中でも、アルカリ金属塩あるいはアミン類を含む電解質が好ましく、特に好ましくは、塩化ナトリウム、アスコルビン酸、乳酸、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、グリチルリチン酸、及びこれらの水溶性誘導体、並びにこれらの塩類が挙げられる。
【0064】
なお、本発明に係る凹凸補正用組成物には、前記電解質を含有させることもできるが、予め含有させない場合であっても、皮膚から分泌される汗や皮脂に含有される電解質により、前記水溶性高分子(b)の粘度を増加させることも可能である。
【0065】
(5)粉体成分
本発明に係る凹凸補正用組成物には、更に優れた凹凸補正効果を発揮するために、粉体成分を含有させることができる。本発明に係る凹凸補正用組成物に用いることができる粉体成分は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、例えば、スネルの法則による屈折率が1.3以上1.5以下である粉体成分を好適に用いることができる。屈折率が1.3未満の粉体であると、化粧膜の透明性が高くなりすぎ、しわや毛穴をぼかす効果が得にくくなるおそれがあり、逆に、屈折率が1.5を超える粉体であると、化粧膜が不透明になり、不自然な仕上がりになるおそれがあるからである。
【0066】
粉体成分の具体的な種類としては、無水ケイ酸、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリアクリル酸アルキルパウダー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等を、1種若しくは2種以上自由に選択して用いることができる。このような粉体成分を本発明に係る凹凸補正用組成物に含有させれば、しわや毛穴をぼかすことにより、皮膚の凹凸を目立たなくする効果を付与することができる。なお、粉体の粒径も特に限定されないが、皮膚の凹凸を目立たなくするためには、1μm以上30μm以下が好ましい。
【0067】
粉体成分の凹凸補正用組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、より優れた凹凸補正効果を発揮するためには、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。配合量が20.0質量%を超えると、伸び広がりが悪くなる場合があるからである。
【0068】
(6)極性油分
本発明に係る凹凸補正用組成物には、更に優れた凹凸補正効果を発揮するために、極性油分を含有させることができる。極性油分を含有させることで、皮膚への親和性が増し、皮膚への適度な油分を補い皮脂の分泌を抑制し、経時的な化粧崩れ等を防止することができる。本発明に係る凹凸補正用組成物に用いることができる極性油分は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、例えば、通常、皮膚化粧料や皮膚外用剤に用いられる、融点が20℃以上40℃以下のペースト状の油分を好適に用いることができる。
【0069】
極性油分の具体的な種類としては、ラノリン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルアジピン酸縮合物、トリ(カプリル酸・カプリン酸・ミリスチン酸・ステアリン酸)グリセリド、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、炭素数16以上18以下の長鎖アルキル変性アクリル−シリコーングラフト共重合体等を、1種若しくは2種以上自由に選択して用いることができる。特に好ましくは、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルである。
【0070】
極性油分の凹凸補正用組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、より優れた凹凸補正効果を発揮するためには、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。皮膚への密着性、エモリエント性を高めるためである。
【0071】
(7)糖類
本発明に係る凹凸補正用組成物には、更に優れた凹凸補正効果を発揮するために、糖類を含有させることができる。糖類を含有させることで、凹凸補正効果の持続性を高めることができる。本発明に係る凹凸補正用組成物に用いることができる糖類は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、果糖、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロースが好ましく、特に好ましくはトレハロースである。
【0072】
以上説明した本発明に係る凹凸補正用組成物は、通常、その必須構成成分である水溶性高分子(a)及び水溶性高分子(b)を、水により膨潤させた状態で、皮膚化粧料や皮膚外用剤に用いる。本発明に係る凹凸補正用組成は、必須構成成分である水溶性高分子(a)及び水溶性高分子(b)が含有されていれば、水による膨潤の有無に関わらず、本発明の範囲に包含される。
【0073】
また、別の方法として、その必須構成成分である水溶性高分子(a)及び/又は水溶性高分子(b)を用いて、前記粉体成分への表面被覆処理を施しておくことも有効である。表面被覆の方法としては、粉体成分に、水溶性高分子(a)及び/又は水溶性高分子(b)を添加混合して複合化する方法や、水溶性高分子(a)及び/又は水溶性高分子(b)を水に分散した溶液を粉体に噴霧して乾燥させるなど特に限定されない。このように表面被覆した粉体を用いることで、粉体成分の効果と本発明の凹凸補正効果を相乗的に発現させることができる。このような粉体への表面処理量としては、特に限定されないが、粉体1に対して水溶性高分子(a)、水溶性高分子(b)は、それぞれ0.0001〜0.2、より好ましくは0.01〜0.1の範囲にて処理することができる。
【0074】
<皮膚化粧料>
本発明に係る凹凸補正用組成物は、優れた凹凸補正効果を有するため、皮膚化粧料に好適に用いることができる。用いることができる皮膚化粧料の種類は特に限定されず、あらゆる種類の皮膚化粧料を自由に選択して、含有させることができる。例えば、ローション、乳液、クリーム、美容液、洗浄料、クレンジング料などのスキンケア化粧料、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料などに含有させることができる。またこれら皮膚化粧料の剤型は、水性型、多層型、水中油型、油中水型、油性型、水中油中水型、油中水中油型など特に限定されるものではない。
【0075】
本発明に係る皮膚化粧料は、これに配合する凹凸補正用組成物の前記水溶性高分子(a)が、皮膚への塗布時にはゾル状を呈するため、ローション状、乳液状、クリーム状の剤型に加え、ミスト状に噴霧することも可能である。
【0076】
本発明に係る皮膚化粧料は、これに配合する凹凸補正用組成物の前記水溶性高分子(a)が、皮膚への塗布後、皮膚の表面温度に応じて、ゾル状からゲル状へとその性状を変化する。この性状の変化に伴い、凹凸部に流れ込んだ皮膚化粧料中の水溶性成分(a)が、凹凸部の形状に合わせて皮膚へ密着することで、皮膚表面が平滑化され、優れた凹凸補正効果を発揮する。
【0077】
また、本発明に係る皮膚化粧料は、これに配合する凹凸補正用組成物の前記水溶性高分子(b)の特性により、皮膚への塗布時には、塗布に適した粘度に設定し、皮膚への塗布後に、皮膚上の電解質により粘度を増加させることができる。そのため、皮膚への塗布時には、皮膚に対して素早く、手軽に、滑らかに伸び広げることができ、皮膚上の凹凸部に流れ込ませることができる。そして、塗布後には、増粘化することにより皮膚へ密着するため、皮膚表面が平滑化され、優れた凹凸補正効果を発揮する。
【0078】
また、電解質の存在しない状態では比較的低粘度であることから、皮膚化粧料の製造効率を向上させることができる。すなわち、電解質を添加する工程をより後段の工程とすることにより、電解質添加前の反応工程、移送工程、加熱工程、調合工程等の作業効率を格段に向上させることができる。
【0079】
本発明に係る皮膚化粧料には、本発明に係る凹凸補正用組成物に加え、通常皮膚化粧料に用いることができる成分を、必要に応じて適宜選択して配合することが可能である。例えば、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、水等、1種若しくは2種以上自由に選択して配合することができる。
【0080】
本発明に係る皮膚化粧料には、本発明に係る凹凸補正用組成物により、必要に応じて適宜粉体の表面処理を行うことが可能である。これら表面処理粉体を配合することで、凹凸補正組成物の特性を反映した、化粧料の提供が可能になる。
【0081】
<皮膚外用剤>
本発明に係る凹凸補正用組成物は、その優れた凹凸補正効果を利用して、皮膚外用剤の基剤として好適に用いることができる。用いることができる皮膚外用剤の種類は特に限定されず、あらゆる種類の皮膚外用剤に、基剤として含有させることができる。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等の基剤として用いることができる。
【0082】
本発明に係る皮膚外用剤は、これに配合する凹凸補正用組成物の前記水溶性高分子(a)が、皮膚への塗布時にはゾル状を呈するため、皮膚に対して素早く、手軽に、滑らかに均一に伸び広げることができる。そして、皮膚への塗布後、皮膚の表面温度に応じて、ゾル状からゲル状へとその性状が変化するため、皮膚へ密着性が高まり、皮膚外用剤中の有効成分を効率的に皮膚へ供給することができる。
【0083】
また、本発明に係る皮膚外用剤は、これに配合する凹凸補正用組成物の前記水溶性高分子(b)の特性により、皮膚への塗布時には、塗布に適した粘度に設定し、皮膚への塗布後に、皮膚上の電解質により粘度を増加させることがでる。そのため、皮膚への塗布時には、程よい粘度によって、皮膚に対して素早く、手軽に、滑らかに伸び広げることができる。そして、塗布後には、増粘化することにより皮膚へ密着するため、皮膚外用剤中の有効成分を効率的に皮膚へ供給することができる。
【0084】
本発明に係る皮膚外用剤の有効成分となり得る薬剤は特に限定されず、あらゆる薬剤を自由に選択して用いることができる。例えば、生理活性剤、抗菌剤、消炎鎮痛剤、ステロイド剤、麻酔剤、抗真菌剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、冠血管拡張剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、ビタミン剤、性ホルモン剤、抗うつ剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤など、あらゆる薬剤を配合することができる。これらの薬剤は、経皮吸収により全身又は局所においてその効果を発揮したり、あるいは貼付された部位において、局所的に効果を発揮する。
【0085】
本発明に係る皮膚外用剤には、本発明に係る凹凸補正用組成物に加え、薬理学的に許容される添加剤を必要に応じて適宜選択して配合することが可能である。例えば、基剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、着色剤、矯臭剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、潤沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0087】
<水溶性高分子(a)と水溶性高分子(b)との併用効果の検討>
本発明に係る凹凸補正用組成物の必須成分である水溶性高分子(a)と、水溶性高分子(b)と、をそれぞれ単独で皮膚化粧料に用いた場合と、併用して皮膚化粧料に用いた場合とで、凹凸補正効果を比較した。
【0088】
(1)皮膚化粧料の調製
水溶性高分子(a)の15%水溶液からなる皮膚化粧料(I)と、水溶性高分子(b)の1%水溶液と0.5%塩化ナトリウム溶液からなる皮膚化粧料(II)と、前記皮膚化粧料(I)及び前記皮膚化粧料(II)を1:1で混合してなる皮膚化粧料(III)と、を調製した。なお、本実施例では、水溶性高分子(a)の一例として、N−イソプロピルアクリルアミドとメタアクリル酸n-ブチルとの共重合体(ゾル−ゲル転移温度:32℃)を、水溶性高分子(b)の一例として、アクリル酸と、C18−24アクリル酸アルキルエステルと、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテルとの共重合体を用いた。
【0089】
(2)凹凸補正効果の測定
凹凸補正効果の比較は、フェイスアナライザーを用いて毛穴数をカウントし、未塗布における毛穴カウント数100%に対し、各皮膚化粧料を塗布後の毛穴カウントの変化率を求めることにより行った。より具体的には、25〜35才の皮膚化粧料評価専門パネル20名に、前記で調整した皮膚化粧料(I)〜(III)2gを全顔に塗布し、塗布前後と経時(7時間後)において撮影されたデジタル写真を画像解析することで、開きの目立つ毛穴数をカウントした。なお、測定にはSkinAnalyzer Clinical Suite RSA100(インフォワード社製)を用いて行った。
【0090】
(3)結果
結果を図1に示す。図1に示す通り、水溶性高分子(a)と、水溶性高分子(b)と、をそれぞれ単独で皮膚化粧料に用いた場合(皮膚化粧料(I)、皮膚化粧料(II))の毛穴カウント率に比べ、水溶性高分子(a)及び水溶性高分子(b)を併用して皮膚化粧料に用いた場合(皮膚化粧料(III))の毛穴カウント率は大幅に減少していた。
【0091】
<各構成成分の含有量の検討>
本発明に係る凹凸補正用組成物の各成分について、凹凸補正用組成物中の好適な含有量を検討した。
【0092】
(1)皮膚化粧料の調製
表1に示す組成の実施例1〜9、比較例1〜3に係る凹凸補正用組成物を含有する皮膚化粧料の調製を行った。なお、本実施例では、水溶性高分子(a)の一例として、N−イソプロピルアクリルアミドとメタアクリル酸n-ブチルとの共重合体を、水溶性高分子(b)の一例として、アクリル酸と、C18−24アクリル酸アルキルエステルと、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテルとの共重合体を用いた。
【0093】
[実施例1〜9]
まず、水溶性高分子(b)と、塩基性物質としてトリエタノールアミンと、精製水と、を80℃にて均一に混合溶解した。次に、1,3−ブチレンゴリコール、グリセリン、及び顔料と、を加えて、均一に混合分散させ、15℃まで冷却した。その後、水溶性高分子(a)を加え、均一に混合分散させて、凹凸補正用組成物を含有した実施例1〜9に係る皮膚化粧料を調製した。
【0094】
[比較例1〜3]
まず、水溶性高分子(b)の代わりに、比較例1についてはカルビキシビニルポリマー、比較例2についてはアクリル酸アクリル酸アルキル共重合体、比較例3についてはキサンタンガムと、塩基性物質としてトリエタノールアミンと、精製水と、を80℃にて均一に混合溶解した。次に、1,3−ブチレンゴリコール、グリセリン、及び顔料と、を加えて均一に混合分散させ、15℃まで冷却した。その後、水溶性高分子(a)を加え、均一に混合分散させて、凹凸補正用組成物を含有した比較例1〜3に係る皮膚化粧料を調製した。
【0095】
なお、表1中、塩基性物質の適量は、25℃における皮膚化粧料のpHが7となるように適宜設定した。
【0096】
【表1】

【0097】
(2)各品質特性の評価
前記で調製した実施例1〜9、比較例1〜3に係る皮膚化粧料について、専門パネル20名の官能評価試験により、i)塗布時の滑らかな伸び広がり、ii)塗布時の皮膚へのなじみ、iii)塗布時の皮膚のべたつき、iv)凹凸補正効果、v)塗布後の皮膚の柔らかさ、vi)凹凸補正効果の持続性、の6項目に関し、以下の表2〜7に示す評価基準に従って比較評価を行った。
【0098】
i)塗布時の滑らかな伸び広がり
【表2】

【0099】
ii)塗布時の皮膚へのなじみ
【表3】

【0100】
iii)塗布時の皮膚のべたつき
【表4】

【0101】
iv)凹凸補正効果
【表5】

【0102】
v)塗布後の皮膚の柔らかさ
【表6】

【0103】
vi)凹凸補正効果の持続性
【表7】

【0104】
各項目の評価結果の点数をそれぞれ合計し、下記の表8に示す評価基準に従って評価した。なお、本発明では、B以上の評価が、本発明において好適であると考えられる。
【0105】
【表8】

【0106】
(3)結果
結果を表9に示す。表9に示す通り、実施例1〜8に係る皮膚化粧料については、塗布時の評価も塗布後の評価も全て、B評価以上の結果を示した。また、凹凸補正に用いることを考慮すると、特に、皮膚への塗布時におけるなめらかな伸び広がり、肌へのなじみに関する効果が必要であると考えられるが、水溶性高分子(a)の含有量が0.01質量%以上5.0質量%以下であり、且つ、水溶性高分子(b)の含有量が0.01質量%以上5.0質量%以下である実施例1〜3、6、7に係る皮膚化粧料に関しては、これらの項目でA評価以上の結果を示していた。この結果から、本発明に係る凹凸補正用組成物中の水溶性構文視(a)の好適な含有量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であり、また、水溶性高分子(b)の好適な含有量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが分かった。
【0107】
一方、比較例1〜3に係る皮膚化粧料については、i)塗布時の滑らかな伸び広がり、v)塗布後の皮膚の柔らかさ、については、ほぼ良好であったが、ii)塗布時の皮膚へのなじみ、iii)塗布時の皮膚のべたつき、iv)凹凸補正効果、vi)凹凸補正効果の持続性、については、不良な結果が見受けられた。特に、iv)凹凸補正効果、vi)凹凸補正効果の持続性、については、全ての比較例に係る皮膚化粧料が不良であった。
【0108】
【表9】

【0109】
<水溶性高分子(b)の構成成分比および水溶性高分子(b)を含む中和粘稠水溶液の粘度に関する検討>
本発明に係る凹凸補正用組成物の水溶性高分子(b)の構成成分について、好適な構成成分比および水溶性高分子(b)を含む中和粘稠水溶液の粘度を検討した。
【0110】
(1)皮膚化粧料の調製
前記<各構成成分の含有量の検討>にて調整した実施例7に係る皮膚化粧料について、水溶性高分子(b)の構成成分比および水溶性高分子(b)を含む中和粘稠水溶液の粘度を表10の記載に従って調製したものを、実施例10〜22に係る皮膚化粧料とした。表10中の温度依存性、イオン強度依存性については、小数点2位以下を四捨五入した値を示す。なお、調製方法は、前記<各構成成分の含有量の検討>と同一であるため、ここでは説明を割愛する。本実施例では、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物として、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテルを用いた。
【0111】
【表10】

【0112】
(2)各品質特性の評価
前記で調製した実施例10〜22に係る皮膚化粧料について、専門パネル20名の官能評価試験により、i)塗布時の滑らかな伸び広がり、ii)塗布時の皮膚へのなじみ、iii)塗布時の皮膚のべたつき、iv)凹凸補正効果、v)塗布後の皮膚の柔らかさ、vi)凹凸補正効果の持続性、の6項目に関し、前記表2〜8に示す評価基準に従って比較評価を行った。
【0113】
(3)結果
結果を表11に示す。表11に示す通り、実施例10〜22に係る皮膚化粧料については、塗布時の評価も塗布後の評価も全て、B評価以上の結果を示した。特に、アルキル基の炭素数が18以上24以下である前記アクリル酸アルキルエステル又は前記メタアクリル酸アルキルエステルが2.43〜4.30質量%、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%、を水溶性高分子(b)の構成成分として少なくとも含有する実施例10〜12、15、16、19、20に係る皮膚化粧料に関しては、全ての項目でA評価以上の結果を示した。
【0114】
また、同様に、水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が40000mPa・s以上であり、中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、0.8以上1.2以下であり、中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム0.5質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、0.7以上1.2以下である実施例10〜12、15、16、19、20に係る皮膚化粧料に関しては、全ての項目でA評価以上の結果を示した。
【0115】
【表11】

【0116】
以上の結果から、本発明に係る凹凸補正用組成物中の水溶性高分子(b)の構成成分としては、アルキル基の炭素数が18以上24以下である前記アクリル酸アルキルエステル又は前記メタアクリル酸アルキルエステルが2.43〜4.30質量%、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が0.08〜0.29質量%、含有させることが好適であることが分かった。
【0117】
また、水溶性高分子(b)を含む中和粘稠水溶液の粘度に関しては、水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が40000mPa・s以上、中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、0.8以上1.2以下、中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム0.5質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、0.7以上1.2以下、に調整することが本発明に係る凹凸補正用組成物には好適であることが分かった。
【0118】
<各種皮膚化粧料の作製>
以下の表12〜25の処方に従って、実施例23〜36の各種皮膚化粧料を作製し、各品質特性の評価を行った。
【0119】
[実施例23] 化粧水
【表12】

【0120】
(化粧水の調整)
(1)〜(7)に(8)〜(11)を加え、均一に攪拌し、可溶化することで化粧水を得た。
【0121】
(化粧水の品質評価)
実施例23の化粧水は、まろやかな使用感を有し、肌になじみが良く、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0122】
[実施例24] 水中油型乳液
【表13】

【0123】
(水中油型乳液の調整)
(1)〜(8)、(9)〜(19)を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型乳液を得た。
【0124】
(水中油型乳液の品質評価)
実施例24の水中油型乳液は、まろやかな使用感を有し、肌になじみが良く、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0125】
[実施例25] 美容液
【表14】

【0126】
(美容液の調整)
(1)〜(13)を25℃にて混合溶解し、攪拌し、美容液を得た。
【0127】
(美容液の品質評価)
実施例25の美容液は、まろやかな使用感を有し、肌になじみが良く、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0128】
[実施例26] 水中油型クリーム
【表15】

【0129】
(水中油型クリームの調整)
(1)〜(6)、(7)〜(16)を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型クリームを得た。
【0130】
(水中油型クリームの品質評価)
実施例26の水中油型クリームは、まろやかな使用感を有し、肌になじみが良く、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0131】
[実施例27] 水中油型クリームパック
【表16】

【0132】
(水中油型クリームパックの調整)
(1)〜(4)、(5)〜(13)を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型クリームパックを得た。
【0133】
(水中油型クリームパックの品質評価)
実施例27の水中油型クリームパックは、まろやかな使用感を有し、肌になじみが良く、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0134】
[実施例28] 水中油型マッサージクリーム
【表17】

【0135】
(水中油型マッサージクリームの調整)
(1)〜(7)、(8)〜(14)を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型マッサージクリームを得た。
【0136】
(水中油型マッサージクリームの品質評価)
実施例28の水中油型マッサージクリームは、まろやかな使用感を有し、肌に対する密着感が高いため効果的なマッサージを可能にし、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0137】
[実施例29] 水中油型日焼け止め
【表18】

【0138】
(水中油型日焼け止めの調整)
(1)〜(9)、(10)〜(15)を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型日焼け止めを得た。
【0139】
(水中油型日焼け止めの品質評価)
実施例29の水中油型日焼け止めは、まろやかな使用感を有し、肌馴染みが良く、肌に密着し、皮膚の凹凸補正効果に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0140】
[実施例30] スタイリングジェル
【表19】

【0141】
(スタイリングジェルの調整)
(1)〜(6)を、常温にて溶解させ、攪拌しながら均一混合し、スタイリングジェルを得た。
【0142】
(スタイリングジェルの品質評価)
実施例30のスタイリングジェルは、まろやかな使用感を有し、馴染み、密着感及び、皮膚の凹凸補正効果に優れ、尚且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0143】
[実施例31] アイライナー
【表20】

【0144】
(アイライナーの調整)
(1)〜(9)を、常温にて溶解させ、攪拌しながら均一混合することでアイライナーを得た。
【0145】
(アイライナーの品質評価)
実施例31のアイライナーは、なめらかな使用感を有し、目元の凹凸補正効果に優れ、均一なアイラインを可能にし、尚且つ経時安定性に優れるものであった。
【0146】
[実施例32] マスカラ
【表21】

【0147】
(マスカラの調整)
(1)〜(10)、(11)〜(16)を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、マスカラを得た。
【0148】
(マスカラの品質評価)
実施例32のマスカラは、なめらかな使用感を有し、睫の凹凸補正効果に優れ、均一な化粧膜を可能にし、尚且つ経時安定性に優れるものであった。
【0149】
[実施例33] 水中油型ファンデーション
【表22】

【0150】
(水中油型ファンデーションの調整)
(1)〜(11)、(12)〜(19)を共に80℃に加温し、混合した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型ファンデーションを得た。
【0151】
(水中油型ファンデーションの品質評価)
実施例33の水中油型ファンデーションは、なめらかな使用感を有し、肌なじみが良く、凹凸補正効果に優れ、均一な化粧膜を可能にし、尚且つ経時安定性に優れるものであった。
【0152】
[実施例34] 固形状油中水型ファンデーション
【表23】

【0153】
(固形状油中水型ファンデーションの調整)
(1)〜(11)、(12)〜(24)を共に80℃に加温し、混合した。続いて、攪拌しながら冷却し、固形状油中水型ファンデーションを得た。
【0154】
(固形状油中水型ファンデーションの品質評価)
実施例34の固形状油中水型ファンデーションは、なめらかな使用感を有し、肌なじみが良く、凹凸補正効果に優れ、均一な化粧膜を可能にし、尚且つ経時安定性に優れるものであった。
【0155】
[実施例35] リップクリーム
【表24】

【0156】
(リップクリームの調整)
(5)および(6)をあらかじめ混合膨潤した後、(1)〜(4)、(7)〜(13)と80℃に加温、混合溶解し、溶融充填を行い、リップクリームを得た。
【0157】
(リップクリームの品質評価)
実施例35のリップクリームは、なめらかな使用感を有し、肌なじみが良く、凹凸補正効果に優れ、均一な化粧膜を可能にし、尚且つ経時安定性に優れるものであった。
【0158】
[実施例36] 水中油型下地化粧料
【表25】

【0159】
(水中油型下地化粧料の調整)
(1)〜(4)を均一に混合溶解し、(15)〜(17)と80℃に加熱した(5)〜(8)を添加し、ゲルを生成した。続いて(9)〜(14)を均一溶解し、(18)、(19)を加えて中和したものを、前記ゲルに攪拌混合して乳化した。続いて、攪拌しながら冷却し、水中油型下地化粧料を得た。
【0160】
(水中油型下地化粧料の品質評価)
実施例36の水中油型下地化粧料は、なめらかな使用感を有し、肌の凹凸補正効果に優れ、尚且つ、経時安定性に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃以上37℃以下にLCST(Lower Critical Solution Temperature:下限臨界共溶温度)を有する高分子と、親水性高分子と、が少なくとも結合した共重合体からなり、該共重合体の水溶液が0℃以上37℃以下にゾル−ゲル転移温度を有する水溶性高分子(a)と、
アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子(b)と、
水と、
を少なくとも含有する凹凸補正用組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子(b)は、該水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム1質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が40000mPa・s以上であり、
該中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、0.8以上1.2以下であり、
前記中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、該水溶性高分子(b)1質量%及び塩化ナトリウム0.5質量%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、0.7以上1.2以下である請求項1記載の凹凸補正用組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子(b)には、
前記アクリル酸アルキルエステル又は前記メタアクリル酸アルキルエステルとして、アルキル基の炭素数が18以上24以下である前記アクリル酸アルキルエステル又は前記メタアクリル酸アルキルエステル2.43質量%以上4.3質量%以下と、
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08質量%以上0.29質量%以下と、
を少なくとも含む請求項1または2に記載の凹凸補正用組成物。
【請求項4】
前記メタアクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸テトラコサニル、からなる群より選ばれた少なくとも1種のメタアクリル酸アルキルエステルである請求項1から3のいずれか一項に記載の凹凸補正用組成物。
【請求項5】
前記化合物は、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリアリルサッカロース、からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項3または4に記載の凹凸補正用組成物。
【請求項6】
前記水溶性高分子(a)を、組成物中に0.01質量%以上5.0質量%以下含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の凹凸補正用組成物。
【請求項7】
前記水溶性高分子(b)を、組成物中に0.01質量%以上5.0質量%以下含有する請求項1から6のいずれか一項に記載の凹凸組成用組成物。
【請求項8】
前記水溶性高分子(b)の中和剤となり得る塩基性物質を更に含有する請求項1から7のいずれか一項に記載の凹凸補正用組成物。
【請求項9】
電解質を更に含有する請求項1から8のいずれか一項に記載の凹凸補正用組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の凹凸補正用組成物を少なくとも含む皮膚化粧料。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の凹凸補正用組成物を少なくとも含む皮膚外用剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−180205(P2010−180205A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2571(P2010−2571)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】