説明

分光器

【課題】真空紫外線領域で利用する分光器を提供する。
【解決手段】スリット40、第1色消しレンズ20、グリズム10、第2色消しレンズ30、検出器50を備える分光器で、第1色消しレンズ20と、グリズム10と、第2色消しレンズ30は、LiF、MgF2から選ばれて形成される。第1色消しレンズ20は、第1屈折レンズ21と複数のバイナリ型回折格子を有する第1回折レンズ22とを有する。第2色消しレンズ30は、第2屈折レンズ32と複数のバイナリ型回折格子を有する第2回折レンズ32とを有する。グリズム10は、第1色消しレンズ20と第2色消しレンズ30との間に設置され、プリズム11と、複数のバイナリ型回折格子を有する回折格子12とを有する。第1回折レンズ22のバイナリ型回折格子と、第2回折レンズ32のバイナリ型回折格子と、グリズム10の回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さの平均二乗偏差値は5nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線領域で利用可能な分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
光線の進路に沿って、スリット、コリメータレンズ、透過型回折格子またはプリズム、結像(カメラ)レンズ、検出器を備えている分光器が知られている。また、コリメータレンズやカメラレンズとして、色消しレンズを用いることや、透過型回折格子やプリズムに代えて、プリズムと回折格子とを組み合わせたグリズムを用いることが、知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。このような分光器は、天体観測装置や大気モニタ(環境計測)装置等の各種分光計測装置に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−230206号公報
【特許文献2】国際公開第93/21548号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空紫外線領域(10〜200nm)には多くの中性原子の主量子数n=1(基底準位)とn≧2の間の電子遷移が存在し、プラズマ物理学、高層大気科学、星間物理等の分野において中性原子(多くはラジカル)の存在量を正確に計測するために、重要な波長領域である。特に120nm〜165.7nmの波長帯には、窒素ラジカル、水素ラジカル、酸素ラジカル、炭素ラジカルの基底状態の電子遷移吸収線が観測可能な波長が存在する。
【0005】
しかしながら、真空紫外線領域(10〜200nm)では、好適に利用可能な分光器を実現することが困難である。例えば、真空紫外吸収分光法(Vacuum ultraviolet absorption spectroscopy:VUV−AS)のように、反射型回折格子と反射鏡とを備えた分光器では、大きい分散と高い効率を両立するためには回折格子の口径を大きくする必要がある。しかし、回折格子と反射鏡を近接することができないために、光学系の体積が大きくなって、分光器が大型化せざるを得なかった。
【0006】
波長が120〜200nmの真空紫外線領域において分散が大きくて効率が高い小型の分光器が求められている。レンズとグリズムを組み合わせた分光器はレンズとグリズムを近接することができるために小型でも大きな分散と高い効率を得ることができる。しかし、120nmより長波長側の真空紫外線領域において利用できる光学材料は無機系の材料であるフッ化リチウム(LiF)とフッ化マグネシウム(MgF)に限られる。また、多くの光学材料は吸収が大きくなり、光が完全に透過しなくなる波長(吸収端)近傍において屈折率が大きく変化する。このため、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムの屈折レンズを単体で使用すると焦点距離が波長によって大きく異なってしまうために、色消しレンズを使用する必要がある。しかし、フッ化リチウムの屈折レンズとフッ化マグネシウムの屈折レンズを複数枚組み合わせた色消しレンズは、厚さが厚くなってしまうために、吸収短波長近傍では光をほとんど透過しなくなってしまう。フッ化リチウムやフッ化マグネシウムの屈折レンズとフッ化リチウムやフッ化マグネシウムの回折レンズを組み合わせた色消しレンズは単体の屈折レンズよりも厚さを薄くすることができる。
【0007】
一方で、吸収端近傍において屈折率が大きく変化するためにフッ化リチウムやフッ化マグネシウムのプリズムが有効な分散素子として機能する。このためにプリズムとフッ化リチウムやフッ化マグネシウムの透過型回折格子を組み合わせたグリズムは入射光と回折光をほぼ直進させることができるばかりでなく、プリズムと回折格子の両方の分散を利用することができるために口径が小さくても高い分散を得ることができるようになる。
【0008】
しかしながら、波長が短くなるほど、表面の粗さに起因する散乱によって光の損失が大きくなる。このため、波長の短い真空紫外線領域で高い効率を確保するためには、分光器を構成する光学素子に含まれる回折レンズや回折格子の表面を滑らかにして表面散乱を抑制する必要がある。従来、無機系の光学材料を用いた回折レンズや回折格子は、光学材料を機械的に切削や研削する方法、あるいは特許文献1に記載されているようにエッチング処理により光学材料を削り取る方法によって加工されていた。これらの方法によって真空紫外線を透過する光学材料を加工する場合には、回折レンズや回折格子の効率を確保するために必要な表面粗さを得ることが困難であった。
【0009】
一方、回折レンズや回折格子の材料として、樹脂等の有機系の光学材料を用いれば、回折レンズや回折格子の表面の滑らかさや加工精度を確保することが比較的容易であるが、樹脂材料は、280nm以下の紫外線を透過することはできない。このため、樹脂の回折格子や回折レンズを有する光学素子は、真空紫外線領域での光学系に利用することはできない。
【0010】
上記の課題に鑑み、本願では、真空紫外線領域において吸収損失および散乱損失が少なく、小型で分散が大きく、明るい(入射光束の利用効率が高い)分光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、スリットと、第1色消しレンズと、グリズムと、第2色消しレンズと、検出器とを備えている分光器を提供する。前記第1色消しレンズと、前記グリズムと、前記第2色消しレンズは、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種によって形成されている。前記第1色消しレンズは、第1屈折レンズと、複数のバイナリ型回折格子(2のベキ乗(Binary)の段数を有する階段形状の回折格子を意味する。)を有する第1回折レンズとを有しており、前記スリットと前記グリズムとの間に設置されている。前記第2色消しレンズは、第2屈折レンズと、複数のバイナリ型回折格子を有する第2回折レンズとを有しており、前記グリズムと前記検出器との間に設置されている。前記グリズムは、前記第1色消しレンズと前記第2色消しレンズとの間に設置されており、プリズムと、複数のバイナリ型回折格子を有する回折格子とを有している。前記第1回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記第2回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さの平均二乗偏差値(rms値)は、5nm以下である。
【0012】
本発明に係る分光器では、第1色消しレンズと、グリズムと、第2色消しレンズは、真空紫外線波長領域において光を透過するフッ化リチウム、フッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種によって形成されている。さらに、第1色消しレンズの第1回折レンズのバイナリ型回折格子、第2色消しレンズの第2回折レンズのバイナリ型回折格子、グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さの平均二乗偏差値(rms値)が5nm以下であるため、フッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの屈折率が大きく変化する短波長側の吸収端(フッ化リチウムが105nm付近、フッ化マグネシウムが110nm付近)より長い波長の真空紫外線領域での光の吸収損失および散乱損失が少なく、真空紫外線領域で好適に利用できる。本発明に係る分光器は、真空紫外線領域、特に波長が120〜200nmの真空紫外線領域で用いる場合にも、光の吸収損失および散乱損失を少なくすることができる。
【0013】
前記第1色消しレンズの回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記第2色消しレンズの回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の少なくともいずれか1つは、第1光学材料によって形成された屈折レンズ、第1光学材料によって形成されたプリズム、もしくは前記第1光学材料または第2光学材料によって形成された平行平板、のいずれか1つである部材の表面に、樹脂を主成分とする有機系の材料の鋳型を形成し、前記鋳型を用いて前記部材を常温あるいは300℃以下で加熱しながら前記部材の表面に前記第2光学材料を積層し、前記鋳型を除去することによって形成されることが好ましい。回折レンズのバイナリ型回折格子または回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さのrms値を3nm以下にすることができ、フッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの屈折率が大きく変化する波長領域を含む真空紫外線領域で、表面散乱損失が少ない回折レンズを備えた色消しレンズまたは回折格子を備えたグリズムを提供することができる。ここで、第1光学材料と第2光学材料は、異なる材料であってもよいし、同一の材料であってもよい。
【0014】
前記第1色消しレンズの回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記第2色消しレンズの回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の少なくともいずれか1つは、第1光学材料によって形成された屈折レンズ、第1光学材料によって形成されたプリズム、もしくは前記第1光学材料または第2光学材料によって形成された平行平板、のいずれか1つである部材の表面にシリコンまたはシリカ(シリコン酸化物)を主成分とする無機系の材料の鋳型としての犠牲層を形成し、前記鋳型を用いて前記部材を200℃以上1200℃以下で加熱しながら前記部材の表面に前記第2光学材料を積層し、前記犠牲層を除去することによって形成されることが好ましい。回折レンズのバイナリ型回折格子または回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さのrms値を3nm以下にすることができ、表面や内部散乱損失および、吸収損失が少ない回折レンズを備えた色消しレンズまたは回折格子を備えたグリズムを提供することができる。これによって、フッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの屈折率が大きく変化する波長領域を含む真空紫外線領域での損失がより少ない色消しレンズ、グリズムを備えた分光器を提供することができる。ここで、第1光学材料と第2光学材料は、異なる材料であってもよいし、同一の材料であってもよい。
【0015】
本発明に係る分光器は、真空紫外線領域を計測範囲に含むラジカル計測装置に好適に用いることができる。これによって、光学装置の真空紫外線領域での吸収損失及び散乱損失を軽減することによる効率の向上、計測装置等の光学装置の小型化を両立することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸収損失および散乱損失が少なく、真空紫外線領域で分散が大きく、小型で明るい、好適な分光器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る分光器を示す図である。
【図2】実施形態に係るグリズムを示す図である。
【図3】実施形態に係るグリズムの回折格子を拡大して示す図である。
【図4】実施形態に係る色消しレンズを示す図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】実施例1のグリズムの光学特性を示す図である。
【図7】実施例1のグリズムの光学特性を示す図である。
【図8】変形例に係るグリズムを示す図である。
【図9】実施形態に係る分光器を備えたラジカル計測装置を示す図である。
【図10】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図11】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図12】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図13】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図14】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図15】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図16】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図17】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第1の製造方法を説明する図である。
【図18】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図19】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図20】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図21】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図22】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図23】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図24】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図25】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図26】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図27】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図28】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【図29】実施形態に係る回折レンズ、回折格子を形成する第2の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(分光器)
図1は、本発明の一実施形態に係る分光器1を示す図である。分光器1は、光線(光軸Z)の進路に沿って、スリット40、第1色消しレンズ20、グリズム10、第2色消しレンズ30、検出器50をこの順序で備えている。光源(図示しない)からの光は、スリット40の開口41を通過して、第1色消しレンズ20に入射し、平行光線として出射され、グリズム10に入射する。グリズム10によって光は波長によって分散され、第3色消しレンズ30に入射する。第3色消しレンズ30に入射した分散光は、検出器50に集光される。検出器50は、MCP(Multi-Channel Plate)やCCD(Charge Coupled Device)等のアレイ(マルチチャンネル)検出器である。すなわち、分光器1は、マルチチャンネル分光器である。
【0019】
(グリズム)
図2は、実施形態に係る分光器1が備えているグリズム10を示す図である。
図2に示すように、グリズム10は、プリズム11と回折格子12とを有している。プリズム11は、直角プリズムであり、光学平面111,回折側平面112,底面113を有している。光学平面111は、直角プリズムの頂角を形成する面であるとともに、直角を形成する面である。回折側平面112は、光学平面111と頂角を成す面である。底面113は、光学平面111と直角を成す面である。回折側平面112には、回折格子12が形成されている。回折格子12は、表面側は平面上に形成されたバイナリ型回折格子であり、裏面側は平面である回折格子である。グリズム10は、光学平面111が光軸Zに概ね垂直になるように、分光器1の光学系に設置されている。(光束が入射する面や出射する面を光軸と垂直に配置するとゴーストが生じやすくなるために、実用上は3〜10°程度傾けるか、直角から3〜10°程度鋭角なプリズムを使用する。)
【0020】
グリズム10では、回折格子12とプリズム11とは、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)からなる群から選ばれる少なくとも一種である光学材料によって形成されている。本実施形態では、回折格子12は、プリズム11と同一の光学材料によって回折側平面112に直接形成されており、回折側平面112において、プリズム11と回折格子12は一体化されている。回折側平面112は回折格子12の裏面側(バイナリ型回折格子が形成されていない側)と一体化されているが、本明細書では、プリズム11と回折格子12との境界として、便宜的に、回折側平面112の用語を用い、図1等の図面に図示する。フッ化リチウム、フッ化マグネシウムは、120nmより長波長の真空紫外線透過率に優れた材料であるため、グリズム10は、120nmより長波長の真空紫外線透過率に優れている。光学材料としてフッ化リチウムを用いる場合、吸収端波長は105nm近傍であり、屈折率が大きく変化する屈折率変化領域(短波長側の吸収端波長から吸収端波長の2倍近傍における屈折率が急激に変化する波長領域)は110〜200nmである。光学材料としてフッ化マグネシウムを用いる場合、吸収端波長は110nm近傍であり、屈折率が大きく変化する屈折率変化領域は115〜200nmである。ただし、どちらの物質も吸収端の波長から120nm未満までは吸収が大きく、実用性が低い。
【0021】
図3は、グリズム10の回折格子12の形状を説明するために、回折格子12を拡大して示す図である。図3、図4に示すように、回折格子12は、バイナリ型回折格子(2のベキ乗(Binary)の段数を有する階段形状の回折格子を意味する。)が形成されている回折格子である。格子間隔は等間隔であり、隣り合う格子の同一形状部分同士の距離(図3に図示する距離D)であり、全て同じである。回折格子12のそれぞれは、回折側平面112に垂直な平面と回折側平面112に平行な平面によって区画される2段の階段形状を有している。各格子の格子高さ(階段形状の最も高い段の上面から、最も低い段までの距離)はHであり、全て同じである。格子高さHは、波長の整数倍となるように設計されている。各格子の階段形状の幅は、グリズム10の頂角に近い側の幅d11が狭く、頂角に遠い側の幅d12が広くなっている。図1に示す幅d11の階段形状の角部に接する面を接触面123とし、幅d12の階段形状の角部に接する面を接触面121とすると、プリズム11の材質と回折格子12の材質が同一であり、設計波長の回折光を入射光に対して直進させる場合に、回折効率の向上のためには接触面121と光学平面111が平行であり、接触面123と底面113が平行であることが望ましく、接触面121と接触面123が直交するように、幅d11と幅d12の値が設計されている。各格子において、段の高さhは同じである。すなわち、図3に示すように4段のバイナリ型回折格子では、d11+d12=D/4、h=H/3である。
【0022】
図3では、各格子の段数が4段であるバイナリ型回折格子の場合を図示しているが、これに限定されない。段数は、2のx乗(2、但しx≧1)であればよく、例えば、2段、4段、8段、16段としてもよい。各格子の段数が多いほど回折効率が高くなるが、段数が16段以上となると、滑らかな斜面のノコギリ歯(Saw tooth)形状の格子の回折効率に漸近する。ノコギリ歯形状の格子の回折効率を100%とした場合、段数が2段の場合の回折効率の最大値は41%であり、4段の場合には81%、8段の場合には95%、16段の場合には99%である(Scientific American, May 1992, 50-55, “Binary Optics”を参照)。また、ノコギリ歯形状の格子において、格子間隔が波長の10倍である場合には回折効率の最大値は85%程度となり、格子間隔が波長の5倍である場合には回折効率の最大値は80%程度となり、格子間隔が波長の3倍である場合には、回折効率の最大値は60%程度となり、格子間隔が波長の2倍である場合には、回折効率の最大値は10%程度となる(Proc. SPIE 5005, 8-19, (2003), “Optimization of a Volume Phase Holographic Grism for Astronomical Observation using the Photopolymer” を参照)。バイナリ型回折格子を有する回折格子12の回折効率は、上記に説明したノコギリ歯形状の格子の回折効率に、ノコギリ歯形状の格子を100%とした場合のバイナリ型回折格子の段数による回折効率の割合を乗じることによって求めることができる。例えば、格子間隔が波長の5倍であり、バイナリ型回折格子の段数が8段の場合には、80%と95%とを乗じた76%程度の回折効率を得ることができる。尚、全ての格子の段数を同じにする必要は無い。
【0023】
(色消しレンズ)
第1色消しレンズ20は、屈折レンズ21と、複数のバイナリ型回折格子を有する回折レンズ22とを有しており、第2色消しレンズ30は、屈折レンズ31と、複数のバイナリ型回折格子を有する回折レンズ32とを有している。屈折レンズ21,31、回折レンズ22,32は、いずれもフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)からなる群から選ばれる少なくとも一種である光学材料によって形成されている。このため、第1色消しレンズ20,第2色消しレンズ30は、120nmより長波長の真空紫外線透過率に優れている。
【0024】
真空紫外線領域において多くの光学材料は吸収が大きくなり、光が完全に透過しなくなる波長(吸収端)近傍において屈折率が急激に増大する。また、一般に吸収端の波長が近い光学材料は、屈折率の波長分散特性が類似してしまう。このため、吸収端の波長が近い光学材料同士の屈折率の差は波長に対して変化が少なく、アクロマートレンズのように正の屈折力(Optical power:焦点距離の逆数)を有する屈折レンズと負の屈折力を有する屈折レンズとを組み合わせた色消しレンズを用いる場合には、それぞれの屈折レンズの曲率を大きくする必要があり、色消しレンズの厚さが厚くなる。
【0025】
一方、回折レンズは、屈折レンズとは波長分散特性が逆であり、真空紫外線を透過する光学材料を用いた回折レンズを、同様に真空紫外線を透過する光学材料を用いた屈折レンズと組み合わせば、厚さが薄い色消しレンズを実現することができる。
【0026】
第1色消しレンズ20と第2色消しレンズ30とは、屈折レンズと、複数のバイナリ型回折格子を有する回折レンズとを有している点において同様であるので、以下、図4および図5を用いて、第1色消しレンズ20のより具体的な形態について説明する。
【0027】
図4は、実施形態に係る色消しレンズ20を回折レンズ21側から見た図であり、図5は、図4のV−V線断面図である。図4、図5に示すように、色消しレンズ20は、回折レンズ21と屈折レンズ22とを有している。回折レンズ21の表面側は、平面上に形成されたバイナリ型回折格子であり、裏面側は平面である。屈折レンズ22は、表面側は凸レンズ形状であり、裏面側は平面である。回折レンズ21の裏面と屈折レンズ22の裏面は、接触面23において接するように配置されている。
【0028】
色消しレンズ20を構成する回折レンズ21と屈折レンズ22は、図4および図5に示す軸Zを中心とする円形状のレンズであり、図5に斜線で示す断面図の図形を、軸Zを中心に回転させた形状を有している。回折レンズ21は、バイナリ型回折格子が軸Zを中心に同心円状に形成されている回折レンズである。図4に示す1つの同心円が1つの格子を示しており、格子間隔は、軸Zから遠ざかるにつれて狭くなっている。この格子間隔は、隣り合う格子の相似形状部分同士の距離(例えば、図5に図示する距離D)である。回折光学素子では、格子間隔が大きいほど、回折角度が小さくなることから、回折レンズ21に入射する光線は、軸Zに近い側(格子間隔が大きい側)ほど回折角度が小さくなり、軸Zに遠い側(格子間隔が小さい側)ほど回折角度が大きくなる。その結果、回折レンズ21は、軸Zを光軸とするレンズとして機能する。回折レンズ21では、複数の格子のそれぞれにおいて、色消しレンズ20の光軸(軸Z)から周縁部に向けて下降しており、光軸に垂直な平面と光軸に平行な曲面によって区画される2段のバイナリ型回折格子を有している。このように、バイナリ型回折格子の階段形状が光軸から周縁部に向かって下降している場合、回折レンズは、正の屈折力を有する回折次数に入射光の振幅が集中する。各格子の格子高さ(階段形状の最も高い段の上面から、最も低い段までの距離)はHであり、全て同じである。格子高さHは、波長の整数倍となるように設計されている。各格子において、複数の段の幅は同じであり、段数が同じである場合に隣接する段の高低差は同じである。
【0029】
色消しレンズ20は、正の屈折力を有する回折レンズ21と、正の屈折力を有する屈折レンズ22とを組み合わせた、正の屈折力を有する色消しレンズである。
【0030】
図5では、各格子の段数が4段である場合を図示しているが、これに限定されない。段数は、2のx乗(2、但しx≧1)であればよく、例えば、2段、4段、8段、16段としてもよい。各格子の段数が多いほど回折効率が高くなるが、段数が16段以上となると、滑らかな斜面のノコギリ歯形状の格子の回折効率に漸近する。バイナリ型回折格子を有する回折レンズ21の回折効率は、上記に説明したノコギリ歯形状の格子の回折効率に、ノコギリ歯形状の格子を100%とした場合のバイナリ型回折格子の段数による回折効率の割合を乗じることによって求めることができる。例えば、格子間隔が波長の5倍であり、バイナリ型回折格子の段数が8段の場合には、80%と95%とを乗じた76%程度の回折効率を得ることができる。尚、全ての格子の段数を同じにする必要は無い。回折レンズ21は、例えば、4段、8段、16段の段数を有する格子を少なくとも1つずつ備えていてもよい(実際には、いずれか1種類以上の段数の格子を数十から数十万備えていることが好ましい)。この場合、軸Zに近い格子(格子間隔の大きい格子)ほど段数が多くなるように設計することが好ましい。例えば、軸Zに最も近い側に位置する複数の格子を16段とし、これよりも外側に位置する複数の格子を8段とし、最も軸Zから遠い側(最外周)に位置する複数の格子を4段とすることができる。
【0031】
グリズム10、第1色消しレンズ20、第2色消しレンズ30の効率について、以下に説明する。散乱は光学系の効率を低下させるばかりではなく、迷光の一因にもなるため、散乱損失が少ないほど望ましい。散乱が大きくなると測定値に誤差が生じてしまうことがあり、実用的には目的に応じて光学素子の散乱損失が1%以下から24%以下であることが求められる場合が多い。特に強い背景光がある場合の分光計測等においては、より散乱損失が少ないグリズムおよび色消しレンズが求められる。一方、単色光源を用いた吸光度測定等においては散乱損失が50%以上のグリズムおよび色消しレンズであっても実用的に使用できる。
【0032】
グリズム10の回折格子12のバイナリ型回折格子、第1色消しレンズ20の回折レンズ21のバイナリ型回折格子、および第2色消しレンズ30の回折レンズ32のバイナリ型回折格子における散乱損失Lsは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)によって1nm間隔で測定した場合に表面粗さの平均二乗偏差の値(rms値)が大きくなるほど大きくなる。表面粗さのrms値をσとし、波長λを与えると、散乱損失Ls(%)は、下記の式(1)によって求めることができる。
Ls=[1−exp{−(4πnσcosθ/λ)}]×100 …… (1)
ここでθは光束の出入射角であり、nは媒質の屈折率である(J.M. Bennet and L. Mattson著 “Introduction to surface roughness and scattering”, Optical Society of America, Washington D.C., 1989. 参照)。
【0033】
式(1)を用いてバイナリ型回折格子の散乱損失Lsを計算すると、波長120nmにおいて、垂直入射(θ=0)、屈折率n=1、表面粗さのrms値σが1nmである場合の散乱損失Lsは1%、表面粗さのrms値σが3nmである場合の散乱損失Lsは10%、表面粗さのrms値σが5nmである場合の散乱損失Lsは24%、表面粗さのrms値σが10nmである場合の散乱損失Lsは67%である。波長が短い真空紫外線領域でグリズムを用いる場合には、表面粗さが大きくなるほど、散乱の影響によって真空紫外線の透過率が低減する割合が多くなる。グリズム10、第1色消しレンズ20、第2色消しレンズ30においては、回折レンズのバイナリ型回折格子または回折格子のバイナリ型回折格子をAFMによって1nm間隔で測定した場合に表面粗さのrms値は3nm以下であるため、波長120nmにおける散乱損失が10%以下である。波長が短いほど、散乱損失は大きくなることから、バイナリ型回折格子は、波長120nm以上200nm以下の真空紫外線において散乱損失が10%以下であるといえる。バイナリ型回折格子の表面粗さのrms値は、1nm以下であればより好ましい。バイナリ型回折格子の表面粗さのrms値を1nm以下とすれば、そのバイナリ型回折格子を有する光学素子の波長120nm以上200nm以下の真空紫外線における散乱損失は1%以下に低減させることができる。例えば、第1色消しレンズ20、グリズム10、第2色消しレンズ30のそれぞれの散乱損失が24%であり、効率が76%である場合には、第1色消しレンズ20、グリズム10、第2色消しレンズ30からなる光学系の効率は、それらの効率の積、すなわち、76%×76%×76%=43.9%と算出され、波長120nm以上200nm以下の真空紫外線において、反射鏡や反射型回折格子の分光器とほぼ同等の総合効率になり、多くの場合に実用的に使用することができる。
【0034】
尚、上記では、分光器1のグリズム10は、プリズム11の回折側平面112と回折格子12の裏面側が一体化されている場合を例示して説明したが、プリズムと回折格子が別になっており、プリズムの回折側平面と回折格子の裏面側あるいは表面(格子面)側が対峙するように配置されているグリズムを分光器1に用いることもできる。また、上記では、分光器1の第1色消しレンズ20と第2色消しレンズ30は、別々に形成された屈折レンズと回折レンズが接して設置されることによって1つの色消しレンズとなっている場合を例示して説明したが、屈折レンズと回折レンズが一体に形成された色消しレンズであってもよい。
【0035】
図6は、第1色消しレンズ20,30として利用可能な色消しレンズの一実施例について、シミュレーションを行い、その光学特性を調べた結果を示している。横軸は色消しレンズ等に透過させる光線の波長を示しており、縦軸は、焦点距離を示している。シミュレーションを行った色消しレンズ10は、材質がフッ化マグネシウムであり、屈折レンズ12の曲率半径が28mmであり、回折レンズ11の半径6.25mmにおける格子間隔が696nmであり、図3に参照番号101として示している。また、比較のため、回折レンズを用いた場合のシミュレーション結果を参照番号151として示しており、屈折レンズを用いた場合のシミュレーション結果を参照番号152として示している。比較例として用いた回折レンズは、半径6.25mmにおける格子間隔が420nmの回折レンズであり、屈折レンズは、曲率半径が11.6mmの平凸レンズであり、いずれのレンズも125nmにおける焦点距離が20mmになるように設計されている
【0036】
尚、回折レンズまたは回折格子は、隣り合う格子に入射した光束と出射した光束が波長の整数倍の行路差を持つように設計されている。すなわち、回折次数m、波長をλ、媒質の屈折率をn、格子間隔をd、入射角をθ1、回折角をθ2とすると、下記の式(2)によって表される回折格子の式を満たしている。
mλ=nd(sinθ1+sinθ2) …… (2)
ここでm=1、n=1、θ1=0(垂直入射)とすると、
λ=dsinθ2 …… (3)
になる。一方、回折レンズの半径rの格子による回折角θ2は焦点距離fから
r/f=tanθ2 …… (4)
によって与えられる。波長λ、回折レンズの半径rの格子による回折角θ2が与えられると式(3)と式(4)より、格子間隔dは
d=λ/sin{tan−1(r/f)} ……(5)
より求めることができる。すなわち、式(5)を用いれば、回折レンズの特定の半径における格子間隔から、波長と焦点距離との関係を求めることができる。
【0037】
尚、屈折レンズの焦点距離をf、回折レンズの焦点距離をfとすると屈折レンズの厚さが焦点距離より十分薄く、屈折レンズと回折レンズを密着させた場合の色消しレンズの焦点距離fは下記の式(6)によって求めることができる。
1/f=1/f+1/f ……(6)
【0038】
また、最外周の半径をrとすると平行光束が入射した場合に結像側の開口数N.A.は、下記の式(7)によって求めることができる。
N.A.=sin {tan−1 (r/f)} ……(7)
【0039】
図6に示すように、比較例(151,152)では、いずれも焦点距離の波長依存性が大きくなっている。屈折レンズ(151)を用いた場合には、波長が短いほど焦点距離が短くなっており、回折レンズ(152)を用いた場合には、波長が短いほど焦点距離が長くなっている。これに対して、実施例に係る色消しレンズを用いた場合には、焦点距離の波長依存性が小さくなっており、色収差が補正されている。
【0040】
上記のとおり、第1色消しレンズ20、第2色消しレンズ30は、真空紫外線の透過率に優れており、真空紫外線領域での色収差を補正可能な色消しレンズとして好適に利用することができる。
【0041】
図7は、分光器1に用いるグリズム10として利用可能なグリズムの一実施例について、シミュレーションを行い、その光学特性を調べた結果を示している。横軸はグリズム等に透過させる光線の波長を示しており、縦軸は、グリズム等を透過した光の屈折角もしくは回折角を示している。シミュレーションを行ったグリズム10は、材質がフッ化マグネシウムであり、プリズム11は頂角30°の直角プリズムであり、回折格子12の格子間隔は1155本/mmであり、2次回折光のシミュレーション結果を図5に参照番号210として示している。また、比較のため、プリズムを用いた場合のシミュレーション結果を参照番号211とし、回折格子を用いた場合のシミュレーション結果を参照番号212として示している。比較例として用いた回折格子は、3600本/mmの回折格子であり、2次回折光についてのシミュレーション結果を示している。比較例として用いたプリズムは、は頂角30°の直角プリズムである。グリズムは125nmの光が直進するように設計されており、プリズム、回折格子のいずれも125nmの光の屈折角もしくは回折角が0°になるように角度が加減されている。尚、回折格子は、上記の式(2)によって表される回折格子の式を満たしている。
【0042】
図7に示すように、実施例に係るグリズム(210)は、プリズムの分散角と回折格子の分散角が加算されるため、120nmより長波長において、比較例に係るプリズム(211)を用いた場合や、142nmより短波長において、回折格子(212)を用いた場合と比較して、大きな分散を得ることができる(図7において傾きが大きいほど分散が大きい)。
【0043】
上記のとおり、本実施形態に係るグリズム10は、120〜200nmの真空紫外線において効率が高く、真空紫外線領域の分散光学素子として好適に利用することができる。本実施形態に係るグリズムは、例えば、真空紫外線を用いた光学装置に利用可能であり、真空紫外線を用いて測定を行う分光計測装置に好適に用いることができる。
【0044】
尚、本実施形態に係る分光器1には、複数個のグリズム10からなるグリズムアレイを利用することもできる。例えば、図8に示すように、複数個のグリズム10が光軸Zに垂直な面に沿って同じ向きに配置されており、回折格子12が同じ向きとなるように配置されているグリズムアレイ100を利用することもできる。グリズムアレイ100では、光軸Zの方向にグリズムの厚さを小さくすることができるため、光学材料を通過する光の吸収をさらに小さくすることができる。
【0045】
本実施形態に係る分光器1は、特に、プラズマ中に存在する水素ラジカル(H),窒素ラジカル(N)、酸素ラジカル(O)、炭素ラジカル(C)等の絶対数を計測するラジカル計測装置に好適に用いることができる。これらのラジカルの基底状態の電子遷移吸収線が観測可能な波長は、窒素ラジカルが120nm、水素ラジカルが121.6nm、酸素ラジカルが130.4nm、炭素ラジカルが165.7nmである。かかるラジカル計測装置では、窒素ラジカル、水素ラジカル、酸素ラジカルを測定する場合には120nm〜130.4nmの真空紫外線領域における電子遷移吸収線を測定する。さらに、炭素ラジカルも測定したい場合には、120nm〜165.7nmの真空紫外線波長領域における電子遷移吸収線を測定する。このような波長領域の真空紫外線を透過する材料としては、フッ化マグネシウムとフッ化リチウムが挙げられるが、従来、これらの材料を用いて、回折格子をその一部に含むグリズムや色消しレンズを形成し、これによって真空紫外線領域で好適に用いることができるグリズムや色消しレンズを提供することはできなかった。これは、従来提案されていた光学材料を切削や研削する方法や、エッチング加工する方法によって製作された格子の表面粗さでは真空紫外線の散乱損失が大きくて実用的ではなく、良好な表面粗さが得られる回折格子または回折レンズの実現方法が提案されていなかったことが一因であると考えられる。
【0046】
グリズム10の回折格子12、第1色消しレンズ20の第1回折レンズ21、第2色消しレンズ30の第2回折レンズ31のように、複数のバイナリ型回折格子を有していれば、プリズムの回折側または屈折レンズの平面部分、あるいは回折レンズまたは回折格子に用いられる光学材料からなる平行平板等の表面に鋳型を形成し、この鋳型を用いて、プリズムの回折側等の表面に回折レンズまたは回折格子の階段形状として用いられる光学材料を積層し、鋳型を取り除くリフトオフ工程を行うことによって、容易に精度よく加工することができる。この鋳型を用いて回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子を成形し、その後、鋳型を除去すれば、バイナリ型回折格子の形状を十分に確保し、バイナリ型回折格子の表面粗さを小さくすることができる。
【0047】
AFMによって1nm間隔で測定した場合に回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さのrms値が5nm以下であるグリズム10、第1色消しレンズ20、第2色消しレンズ30を実現することができるため、光の散乱損失を小さくすることができ、真空紫外線の透過率を向上させることができる。また、回折レンズまたは回折格子を熱処理してもよい。熱処理は、色消しレンズまたはグリズムとなる部材の温度が200℃以上1200℃以下となる条件で行うことが好ましく、これによって、真空紫外線の透過率をさらに向上させることが可能となる。
【0048】
図9は、本実施形態に係る分光器1を設置したラジカル計測装置6を模式的に示す図である。ラジカル計測装置6は、真空紫外線光源610と、真空紫外線分光器620と、真空チャンバ630とを備えている。真空紫外線光源610のレンズ612と真空紫外線分光器620のレンズ622とは、真空チャンバ630内に発生するプラズマ640の内部に設置されている。
【0049】
図9に示すように、本実施形態に係る分光器1は、真空紫外線分光器620として好適に用いることができ、小型かつ高効率な真空紫外線分光器620を提供することができる。さらに、第1色消しレンズ20等と同様に、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種によって形成されており、屈折レンズと、複数のバイナリ型回折格子を有する回折レンズとを有する色消しレンズをレンズ612とレンズ622として用いれば、測定する波長ごとにレンズの焦点位置を調整する必要が無くなり、真空紫外線光源610と真空紫外線分光器620とを手の平サイズに納めて小型化することができる。このように、本実施形態に係る分光器1によれば、ラジカル計測装置6を小型化することが可能となり、波長を変えても計測を速やかに能率よく行うことができるようになる。
【0050】
上記のとおり、本実施形態に係る分光器は、真空紫外線を用いる光学装置に好適に用いることができる。特に、真空紫外線を含む波長領域において測定を行う分光計測装置に用いれば、これらの装置を小型化することが可能となる。さらに、MCPやCCD等のアレイ検出器と組み合わせることによって、任意の波長帯域を同時に能率よく計測することができるようになる。例えば、上記において説明したラジカル計測装置に適用すれば、真空紫外線の分光計測装置部を手の平サイズに納めて小型化されたラジカル計測装置を実現することも可能である。また、分光器の検出器にMCPやCCD等を使用することによって、波長が異なる窒素ラジカル(120nm)、水素ラジカル(121.6nm)、酸素ラジカル(130.4nm)等を同時に能率よく計測することができるようになる。このように小型化されたラジカル計測装置は、様々な製造装置に組み込むことができる。例えば、半導体製造装置にラジカル計測装置を組み込んで、製造プロセスを実行しながら、実行中の製造プロセスで現に発生しているラジカル計測を行うことができる。ラジカルの計測値に基づいて半導体装置の製造プロセスの条件を制御できるため、製造における歩留まりを向上させることができる。
【0051】
(回折レンズ、回折格子の第1の製造方法)
次に、実施形態に係る分光器1に使用するグリズム10の回折格子12、第1色消しレンズ20の第1回折レンズ21、第2色消しレンズ30の第2回折レンズ32を好適に形成することが可能な第1の製造方法について、図10〜図17を参照しながら説明する。
【0052】
第1の製造方法では、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である光学材料を用いて、部材の表面に回折レンズまたは回折格子を形成する。部材は、第1光学材料によって形成されたプリズムまたは屈折レンズ、もしくは第1光学材料または第2光学材料によって形成された平行平板、のいずれか1つである。
【0053】
尚、本明細書では、グリズムのプリズムまたは色消しレンズの屈折レンズの材料として用いた光学材料を特に第1光学材料と呼び、回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子の材料として用いた光学材料を特に第2光学材料と呼ぶ。
【0054】
第1の製造方法では、第1のリフトオフ工程をx回繰返す。x回行われるそれぞれの第1のリフトオフ工程を「i回目のリフトオフ工程」(i=1,2,…,x)と呼ぶ。i回目の第1のリフトオフ工程は、鋳型形成工程と、積層工程と、鋳型除去工程とを含んでいる。必要に応じて、鋳型除去工程の後あるいは最終工程において熱処理工程を追加することもできる。
【0055】
i回目の第1のリフトオフ工程において、鋳型形成工程では、レジストとして一般に用いられている、樹脂を主成分とする有機系の材料を用いて鋳型を部材の表面(屈折レンズの平面側またはプリズムの回折側、あるいは平行平板の表面)に形成する。この鋳型形成工程では、バイナリ型回折格子の格子間隔D/2(i-1)と、バイナリ型回折格子の段数2に応じてパターニングされた鋳型が配置される。積層工程では、樹脂の鋳型を用いて部材(屈折レンズ、プリズム、または平行平板)の表面に第2光学材料をスパッタリング法等によって積層する。積層工程では、部材温度は常温であってもよく、部材温度が300℃以下となるように部材を加熱してもよい。鋳型除去工程では、有機溶剤やアッシング(Ashing:酸素ラジカル照射)等によって有機系の材料の鋳型を取り除く。必要に応じて、熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程では、第2光学材料を積層した後の部材を、200℃以上1200℃以下の部材温度で焼結する。200℃以上1200℃以下で熱処理を施すことにより、空隙が消滅するために緻密化して内部散乱が軽減し、着色中心(Color center:格子欠陥に電子や正孔が捕らえられて光を吸収する部分)が消滅して透過率を向上することができる。熱処理工程は、リフトオフ工程中に行ってもよいし、x回のリフトオフ工程が全て完了した後に行ってもよい。鋳型形成工程、積層工程、鋳型除去工程、(熱処理工程)は、同様の手順によって繰返して実行してもよい。
【0056】
以下、色消しレンズ20の第1回折レンズ21が4段のバイナリ型回折格子を有している場合(すなわち、x=2の場合)に、屈折レンズの平面側に回折レンズを形状する方法を例示して、回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子を製造する第1の製造方法について具体的に説明する。
【0057】
(1回目の第1のリフトオフ工程)
(1回目の鋳型形成工程)
以下、第1光学材料によって形成された屈折レンズの平面側となる面を部材800の表面として、説明する。まず、図10に示すように、部材800(例えばMgF部材)の表面に、樹脂を主成分とする有機系の材料であるレジスト820を形成し、マスク830を介して、レジスト820に露光を行う。マスク830は、開口部831と遮光部832とを有しているため、レジスト820の開口部831の下方に位置する部分にのみ光が照射される。マスク830を平面視すると、遮光部832は同心円状に形成されており、遮光部832の同心軸が回折レンズ22の格子の同心軸である軸Zに一致するように、マスク830は配置される。バイナリ型回折格子の格子間隔をDとした場合に、開口部831と遮光部832を加算したピッチは、Dとなっている。
【0058】
露光を行った後、現像すると、図11に示すように、レジスト820をパターニングすることができる。レジスト820は、回折レンズ22の軸Zを同心軸とする環状にパターニングされている。
【0059】
(1回目の積層工程)
図11の状態の部材に対して、回折レンズ22の材料となる第2光学材料を積層すると、図12に示すように、部材800の表面に第2光学材料層802が積層され、レジスト820の表面に第2光学材料層803が積層される。積層工程では、回折レンズが有する階段形状の2段分の高さまで、第2光学材料層が積層される。尚、1回目の積層工程において、レジスト820の表面に形成された第2光学材料層803が、部材800の表面に積層された第2光学材料層802と接触しないように、上述の1回目のレジスト形成工程で形成するレジスト820の厚さが調整されている。第2光学材料は、例えば、スパッタリング法によって積層することができる。スパッタリング法による光学材料の積層に際しては、部材800の温度は常温であってもよく、300℃以下となるように部材800を加熱してもよい。
【0060】
(1回目の鋳型除去工程)
次に、第2光学材料層803をレジスト820とともに有機溶剤やアッシングによって除去すると、図8に示す状態となる。
【0061】
必要に応じて図13の状態の部材の熱処理を行う。熱処理は、部材800の温度が200℃以上1200℃以下となる条件で行うことが好ましい。200℃以上1200℃以下の部材温度で光学材料の熱処理を行うことにより、光学材料の真空紫外線透過率をより高くすることが可能となる場合がある。
【0062】
以上で、1回目の第1のリフトオフ工程を終了し、次に、2回目の第1のリフトオフ工程を実施する。
【0063】
(2回目の第1のリフトオフ工程)
(2回目の鋳型形成工程)
次に、2回目の鋳型形成工程を行う。図13に示す状態の部材800および第2光学材料層802の表面に、図14に示すように、樹脂を主成分とする有機系の材料であるレジスト822を形成し、マスク840を介して、レジスト822に露光を行う。マスク840は、開口部841と遮光部842とを有しているため、レジスト820の開口部841の下方に位置する部分にのみ光が照射される。マスク840を平面視すると、遮光部842は同心円状に形成されており、遮光部842の同心軸が回折レンズ12の格子の同心軸である軸Zに一致するように、マスク840は配置される。バイナリ型回折格子の格子間隔をDとした場合に、開口部841と遮光部842を加算したピッチは、D/2となっている。開口部841の幅は開口部831の半分であり、遮光部842の幅は遮光部832の幅の半分である。
【0064】
露光を行った後、現像すると、図15に示すように、レジスト822をパターニングすることができる。レジスト822は、回折レンズ12の軸Zを同心軸とする環状にパターニングされている。
【0065】
(2回目の積層工程)
図15の状態の部材800に対して、回折レンズの材料となる第2光学材料を積層すると、図16に示すように、部材800と第2光学材料層802の表面に第2光学材料層804が積層され、レジスト822の表面に第2光学材料層805が積層される。積層工程では、回折レンズが有する階段形状の1段分の高さまで、第2光学材料がスパッタリング法等により積層される。尚、2回目の積層工程において、レジスト822の表面に形成された第2光学材料層805が、第2光学材料層802の表面に積層された第2光学材料層804と接触しないように、上述の2回目のレジスト形成工程で形成するレジスト822の厚さが調整されている。
【0066】
(2回目の鋳型除去工程)
1回目の鋳型除去工程と同様に、2回目の鋳型除去工程を行って、第2光学材料層805をレジスト822とともに有機溶剤やアッシングによって除去すると、図17に示す状態となる。必要に応じて図17の状態の部材800の熱処理を行ってもよい。
【0067】
以上で、2回目の第1のリフトオフ工程を終了し、回折レンズのバイナリ型回折格子を形成する第2工程が完了する。図17に示すように、4段のバイナリ型回折格子を有する回折レンズを形成することができる。
【0068】
上記のとおり、回折レンズの2段の階段形状を有するバイナリ型回折格子は、部材の表面に、樹脂を主成分とする有機系の材料の鋳型を形成し、この鋳型を用いて、部材を常温あるいは300℃以下で加熱しながら部材の表面に第2光学材料をスパッタリング法等により積層し、第2光学材料を積層した後の部材から鋳型を取り除き、必要に応じて、鋳型を取り除いた後の部材を200℃以上1200℃以下の部材温度で熱処理する、第1のリフトオフ工程をx回繰返すことによって形成することができる。x回繰返される第1のリフトオフ工程のうち、i回目の第1のリフトオフ工程では、バイナリ型回折格子の格子間隔をDとした場合に、D/2(i−1)の間隔で鋳型が配置される。必要に応じて、第1のリフトオフ工程をx回繰返した後の部材を熱処理してもよい。
【0069】
上記に説明した手順の第1の製造方法により、回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子を形成することができ、さらに、バイナリ型回折格子を原子間力顕微鏡(AFM)によって1nm間隔で測定した場合に、表面粗さのrms値を3nm以下とすることができる。従来提案されていた、無機系の光学材料を切削や研削する方法や、エッチング加工する方法を用いた場合には、原子間力顕微鏡によって1nm間隔で測定した場合の表面粗さのrms値が5nm以下(真空紫外線領域で実用的に利用可能なrms値)であるバイナリ型回折格子を製造することは非常に困難であり、実質不可能であったが、上記の第1の製造方法によれば、rms値が3nm以下であるバイナリ型回折格子を、簡易な製造方法によって製造することができる。さらに、200℃以上1200℃以下の部材温度での熱処理によってバイナリ型回折格子の材料となる材質が緻密化し、内部散乱がより少なく、着色中心が消滅して透過率が高くなるため、より散乱損失や吸収損失が少ない色消しレンズまたはグリズムを製造することができる。
【0070】
(回折レンズ、回折格子の第2の製造方法)
次に、実施形態に係る分光器1に使用するグリズム10、第1色消しレンズ20、第2色消しレンズ30の回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子は、以下に説明する第2の製造方法によっても好適に形成することができる。
【0071】
第2の製造方法では、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である第2光学材料を用いて、第2のリフトオフ工程をx回繰返すことによって、回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子を形成する。x回行われるそれぞれの第2のリフトオフ工程を「i回目の第2のリフトオフ工程」(i=1,2,…,x)と呼ぶ。i回目の第2のリフトオフ工程は、有機系の材料の鋳型を形成する鋳型形成工程と、無機系の材料の鋳型としての犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、有機系の材料の鋳型を除去する鋳型除去工程と、積層工程と、犠牲層除去工程とを含んでいる。有機系の材料の鋳型形成工程では、部材(屈折レンズ、プリズム、平行平板)の表面に有機系の材料であるレジストの鋳型を形成する。
【0072】
第2の製造方法では、第1の製造方法と異なり、有機系の材料の鋳型を用いて、リフトオフ法によってシリコンまたはシリカ(シリコン酸化物)を主成分とする犠牲層を形成し、この犠牲層を第2光学材料を積層するための鋳型として用いる。この犠牲層を形成する犠牲層形成工程においては、バイナリ型回折格子の格子間隔Dと、バイナリ型回折格子の段数2に応じてパターニングされた犠牲層が配置される。犠牲層形成工程の後で、有機系の材料の鋳型を除去する鋳型除去工程を実施する。その後、積層工程を行う。積層工程では、この犠牲層を用いて前記部材を200℃から1200℃で加熱しながら表面に第2光学材料を抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法等により積層する。犠牲層除去工程では、第2光学材料を積層した後の前記部材から等方性エッチングにより余分に積層した第2光学材料を犠牲層とともに取り除く。
以下、色消しレンズ20の第1回折レンズ21が4段のバイナリ型回折格子を有している場合(すなわち、x=2の場合)に、屈折レンズの平面側に回折レンズを形状する方法を例示して、回折レンズまたは回折格子のバイナリ型回折格子を製造する第2の製造方法について具体的に説明する。
【0073】
例えば、図18、図19に示すように、部材900の表面(屈折レンズの平面側)に有機系の材料の鋳型としてレジスト920を形成し、開口部931と遮光部932とを有するマスク930を用いて間隔Dでレジスト920をパターニングする(1回目の有機系の材料の鋳型形成工程)。その後、図20に示すように、スパッタリング法等によってシリコンあるいはシリカを積層して、犠牲層950,951を形成する(1回目の犠牲層形成工程)。これによって、部材900の表面に犠牲層950が積層され、レジスト920の表面に犠牲層951が積層される。その後、犠牲層951をレジスト920とともに有機溶剤やアッシングによって除去すると、図21に示す状態となる(1回目の有機系の材料の鋳型除去工程)。
【0074】
図21に示すように、部材900の表面に形成された犠牲層950を鋳型にして、図22に示すように、回折レンズが有する階段形状の2段分の高さまで、第2光学材料層902および903を積層する。これによって、部材900の表面に第2光学材料層902が積層され、犠牲層950の表面に第2光学材料層903が積層される。等方性エッチングにより犠牲層950を除去すると、図23に示すように、犠牲層950とともにその表面に形成された第2光学材料層903が除去される(1回目の犠牲層除去工程)。
【0075】
次に、図24,図25に示すように、部材900の表面にレジスト922を形成し、開口部941と遮光部942とを有するマスク940を用いて間隔D/2でレジスト922をパターニングする(2回目の有機系の材料の鋳型形成工程)。その後、2回目の犠牲層形成工程によって、図26に示すように、第2光学材料層902の表面に犠牲層952が積層され、レジスト922の表面に犠牲層953を積層する(2回目の犠牲層形成工程)。その後、レジスト922を除去すると、図27に示すように、レジスト922とともにその表面に形成された犠牲層953が除去される(2回目の有機系の材料の鋳型除去工程)。その後、犠牲層952を鋳型にして2回目の第2光学材料の積層工程によって第2光学材料を積層すると、部材900および第2光学材料層902の表面に第2光学材料層904が積層され、犠牲層952の表面に第2光学材料層905が積層される。その後、犠牲層952を除去すると、図28,図29に示すように、犠牲層952とその表面に形成された第2光学材料層905が除去される(2回目の犠牲層除去工程)。上記の第2の製造方法によっても、回折レンズ11を原子間力顕微鏡(AFM)によって1nm間隔で測定した場合に、表面粗さのrms値を3nm以下とすることができる。表面粗さのrms値が、真空紫外線領域で実用的に利用可能なrms値(5nm以下)よりもさらに小さい回折レンズを実現することができる。
【0076】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0077】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0078】
1 分光器
6 ラジカル計測装置
10 グリズム
11 プリズム
12 回折格子
20,30 色消しレンズ
21,31 回折レンズ
22,32 屈折レンズ
23 接合面
40 スリット
41 開口
50 検出器
100 グリズムアレイ
111 光学平面
112 回折側平面
113 底面
610 真空紫外線光源
612,622 色消しレンズ
620 真空紫外線分光器
630 真空チャンバ
640 プラズマ
800,900 部材
802,803,804,805,902,903,904,905 光学材料層
820,822,920,922 レジスト
830,840,930,940 マスク
831,841,931,941 開口部
832,842,932,942 遮光部
950,952,953 シリコン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットと、第1色消しレンズと、グリズムと、第2色消しレンズと、検出器とを備えている分光器であって、
前記第1色消しレンズと、前記グリズムと、前記第2色消しレンズは、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種によって形成されており、
前記第1色消しレンズは、第1屈折レンズと、複数のバイナリ型回折格子を有する第1回折レンズとを有しており、前記スリットと前記グリズムとの間に設置されており、
前記第2色消しレンズは、第2屈折レンズと、複数のバイナリ型回折格子を有する第2回折レンズとを有しており、前記グリズムと前記検出器との間に設置されており、
前記グリズムは、前記第1色消しレンズと前記第2色消しレンズとの間に設置されており、プリズムと、複数のバイナリ型回折格子を有する回折格子とを有しており、
前記第1回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記第2回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の表面粗さの平均二乗偏差値(rms値)は、5nm以下である、分光器。
【請求項2】
前記第1色消しレンズの第1回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記第2色消しレンズの第2回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の少なくともいずれか1つは、
第1光学材料によって形成された屈折レンズ、第1光学材料によって形成されたプリズム、もしくは前記第1光学材料または第2光学材料によって形成された平行平板、のいずれか1つである部材の表面に、樹脂を主成分とする有機系の材料の鋳型を形成し、
前記鋳型を用いて前記部材を常温あるいは300℃以下で加熱しながら前記部材の表面に前記第2光学材料を積層し、
前記鋳型を除去することによって形成される、請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
前記第1色消しレンズの第1回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記第2色消しレンズの第2回折レンズのバイナリ型回折格子と、前記グリズムの回折格子のバイナリ型回折格子の少なくともいずれか1つは、
第1光学材料によって形成された屈折レンズ、第1光学材料によって形成されたプリズム、もしくは前記第1光学材料または第2光学材料によって形成された平行平板、のいずれか1つである部材の表面に、シリコンまたはシリカ(シリコン酸化物)を主成分とする無機系の材料の鋳型としての犠牲層を形成し、
前記鋳型を用いて前記部材を200℃以上1200℃以下で加熱しながら前記部材の表面に前記第2光学材料を積層し、
前記犠牲層を除去することによって形成される、請求項1または2に記載の分光器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の分光器を備えている、真空紫外線領域を計測範囲に含むラジカル計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−13526(P2012−13526A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150029(P2010−150029)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】