説明

分散型電源設備

【課題】コンバータの利用効率を向上させる
【解決手段】分散型電源設備4の双方向電力変換装置10は、昇降圧型コンバータ装置11,21を並列に接続して構成されるとともに、電力を入出力可能な第1電力入出力部(接続点Pc1)と、電力を入出力可能な複数の第2電力入出力部(接続点Pc2,3)とを備え、第1電力入出力部または第2電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、それぞれ第2電力入出力部または第1電力入出力部に出力する。選択スイッチSW1は、第1電力入出力部が、直流発電装置2および蓄電池3の何れか一方に接続されるように切り替えるとともに、選択スイッチSW2,SW3は、第2電力入出力部が、交流電力系統6および蓄電池3の何れか一方に接続されるように電力伝送経路を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力系統が連結される分散型電源設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電および風力発電などによる直流発電装置と、蓄電池と、交流電力系統とを連結する分散型電源設備として、双方向DC/ACコンバータを用いて、交流電力系統から蓄電池への充電と、直流発電装置または蓄電池から交流電力系統への給電とを行うものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。これにより、上記充電と上記給電のそれぞれのために別々の電力変換装置を設けることなく、一つの電力変換装置(すなわち、双方向DC/ACコンバータ)に統合することができ、電源システムの小型化と低価格化を図ることができる。
【0003】
また、直流発電装置と双方向DC/ACコンバータとの接続点と、蓄電池との間の電流経路上に充電用コンバータ(DC/DCコンバータ)が設置されているため、直流発電装置の出力電圧と蓄電池の電圧を別々の値に設定することができる。このため、直流発電装置の出力電圧を、直流発電装置から最大電力を取り出すことができる電圧に設定することができる。これにより、直流発電装置の発電効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−41336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の分散型電源設備は、(1)直流発電装置で発電された電力を双方向DC/ACコンバータを介して交流電力系統へ給電する機能と、(2)交流電力系統から双方向DC/ACコンバータを介して蓄電池の充電を行う機能と、(3)直流発電装置から充電用コンバータ(DC/DCコンバータ)を介して蓄電池の充電を行う機能を有する。
【0006】
これらの機能のうち、上記(1),(3)の機能では、1つのコンバータのみ(すなわち、双方向DC/ACコンバータおよび充電用コンバータの何れか一つ)を使用する。つまり、双方向DC/ACコンバータおよび充電用コンバータのうち何れか一方が使用されない。このため、上記(1),(3)の機能では、コンバータの利用効率が低くなり、システムが冗長となる。つまり、コンバータの要素部品である半導体スイッチ素子、リアクトル、及び平滑コンデンサの数が余分に必要となり、分散型電源設備の低価格化の阻害要因となる。
【0007】
また、上記(2)の機能では、交流電力系統から蓄電池に到る電流経路上において2つのコンバータが直列に接続されているために、電力変換効率が低くなり、放熱設備の大型化を招いてしまう。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、コンバータの利用効率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の分散型電源設備は、直流電力を発電する直流発電装置と、直流電力を蓄電する蓄電池と、交流電力系統とに接続され、直流発電装置から交流電力系統へ給電する第1機能と、交流電力系統から蓄電池に充電する第2機能と、直流発電装置から蓄電池に充電する第3機能とを有する。
【0010】
そして双方向電力変換装置は、複数の双方向性を有するDC/DCコンバータにより構成されるとともに、電力を入出力可能な第1電力入出力部と、電力を入出力可能な複数の第2電力入出力部とを備え、第1電力入出力部または第2電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、それぞれ第2電力入出力部または第1電力入出力部に出力する。
【0011】
また第1切替手段は、第1電力入出力部が、直流発電装置および蓄電池の何れか一方に接続されるように、第1電力入出力部と直流発電装置および蓄電池との間の電力伝送経路を切り替えるとともに、第2切替手段は、第2電力入出力部が、交流電力系統および蓄電池の何れか一方に接続されるように、第2電力入出力部と交流電力系統および蓄電池との間の電力伝送経路を切り替える。
【0012】
なお、複数の第2電力入出力部の個数は、交流電力系統の相数に等しいかそれ以上である。交流電力系統に接続される複数の第2電力入出力部のそれぞれは、交流電力系統の交流電力を構成する複数の相のうちの1つに接続されるように予め設定され、第2切替手段は、第2電力入出力部と交流電力系統とが接続されるように電力伝送経路を切り替える場合には、複数の第2電力入出力部のそれぞれを、予め設定された相に接続する。
【0013】
また、第1機能を実行する場合には、第1切替手段は、第1電力入出力部が直流発電装置に接続されるように、電力伝送経路を切り替え、第2切替手段は、第2電力入出力部が交流電力系統に接続されるように、電力伝送経路を切り替える。これにより、直流発電装置と交流電力系統とが双方向電力変換装置を介して電力入出力可能に接続される。
【0014】
そして双方向電力変換装置は、第1電力入出力部に入力した直流電力を、所定の電圧振幅および所定の周波数を有する交流電力に変換するように、DC/DCコンバータを制御してDC/AC変換動作を行う。ここで、双方向電力変換装置は、第1電力入出力部に入力した直流電力を、第2電力入出力部において出力電圧の交流成分と出力電流の交流成分とが同相の交流電力となるように時間変化する電流・電圧に制御することで、DC/AC変換動作を行う。これにより、双方向電力変換装置の第2電力入出力部において1周期にわたる平均出力電力が正となり、第1電力入出力部の電力を吸収して第2電力入出力部に出力するように動作する。したがって、双方向電力変換装置から交流電力系統に電力を供給することができる。なお双方向電力変換装置は、交流電力系統の交流電力を構成する複数の相が、相数に応じた位相差を有して振動するように上記動作を行うことで、DC/AC変換動作を行う。
【0015】
次に、第2機能を実行する場合には、第1切替手段は、第1電力入出力部が蓄電池に接続されるように、電力伝送経路を切り替え、第2切替手段は、第2電力入出力部が交流電力系統に接続されるように、電力伝送経路を切り替える。これにより、蓄電池と交流電力系統とが双方向電力変換装置を介して電力入出力可能に接続される。
【0016】
そして双方向電力変換装置は、第2電力入出力部に入力した交流電力を、所定の電圧値を有する直流電力に変換するようにDC/DCコンバータを制御してAC/DC変換動作を行う。ここで、双方向電力変換装置は、第2電力入出力部における出力電圧の交流成分と出力電流の交流成分とが逆相の交流電力となるように時間変化する電流・電圧に制御することで、DC/AC変換動作を行う。これにより、双方向電力変換装置の第2電力入出力部における1周期にわたる平均出力電力が負となり、第2電力入出力部の電力を吸収して第1電力入出力部に電力を出力するように動作する。したがって、双方向電力変換装置から蓄電池に電力を供給することができる。なお双方向電力変換装置は、交流電力系統の交流電力を構成する複数の相が、相数に応じた位相差を有して振動するように上記動作を行うことで、DC/AC変換動作を行う。
【0017】
さらに、第3機能を実行する場合には、第1切替手段は、第1電力入出力部が直流発電装置に接続されるように、電力伝送経路を切り替え、第2切替手段は、第2電力入出力部が蓄電池に接続されるように、電力伝送経路を切り替える。これにより、直流発電装置と蓄電池とが双方向電力変換装置を介して電力入出力可能に接続される。
【0018】
そして双方向電力変換装置は、第1電力入出力部に入力した直流電力を、所定の電圧値を有する直流電力に変換するように双方向性を有するDC/DCコンバータを制御してDC/DC変換動作を行う。これにより、双方向電力変換装置から蓄電池に電力を供給することができる。
【0019】
このように構成された分散型電源設備によれば、上記第1機能、第2機能、及び第3機能の何れを実行する場合でも、双方向電力変換装置を構成する複数の双方向性を有するDC/DCコンバータが電力変換動作を行う。つまり、上記複数の双方向性を有するDC/DCコンバータは、上記第1,2,3機能の全てで稼動させることとなるため、上記特許文献1に記載の分散型電源設備よりも、分散型電源設備が備える電力変換装置の利用効率を向上させることができる。
【0020】
また、上記第2機能を実行する場合に、交流電力系統から蓄電池に到る電流経路上において2つの電力変換装置が直列に接続されていないため、上記特許文献1に記載の分散型電源設備よりも、電力変換効率が高くなり、放熱設備の大型化を抑制することができる。
【0021】
また、請求項1に記載の分散型電源設備において、請求項2に記載のように、電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第3電力入出力部および第4電力入出力部を備え、第3電力入出力部または第4電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、対となる他方の電力入出力部に出力する複数の双方向DC/DCコンバータを双方向電力変換装置は備え、複数の双方向DC/DCコンバータの個数は、複数の第2電力入出力部の個数に一致しており、複数の双方向DC/DCコンバータは、互いに電気的に並列接続され、複数の双方向DC/DCコンバータにおける第3電力入出力部は、第1電力入出力部に接続され、複数の双方向DC/DCコンバータにおける第4電力入出力部のそれぞれは、互いに異なる第2電力入出力部に接続されるようにしてもよい。
【0022】
このように構成された分散型電源設備では、DC/DCコンバータの個数が、第2電力入出力部の個数に一致しており、必要最低限の個数である。これにより、1つのDC/DCコンバータについて少なくとも1つ必要であるリアクトルの数を必要最低限に抑えることができる。従って、リアクトルの価格が分散型電源設備全体にとって無視できないコスト要因である場合に、分散型電源設備の低コスト化への寄与を高めることができる。
【0023】
また、請求項1に記載の分散型電源設備において、請求項3に記載のように、双方向電力変換装置は、電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第5電力入出力部および第6電力入出力部を備える複数の降圧型DC/DCコンバータと、電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第7電力入出力部および第8電力入出力部を備える昇圧型DC/DCコンバータとを備え、複数の降圧型DC/DCコンバータの個数は、第2電力入出力部の個数に一致しており、複数の降圧型DC/DCコンバータは、互いに電気的に並列接続され、複数の降圧型DC/DCコンバータにおける第5電力入出力部は、昇圧型DC/DCコンバータの第8電力入出力部に接続され、複数の降圧型DC/DCコンバータにおける第6電力入出力部のそれぞれは、互いに異なる第2電力入出力部に接続され、昇圧型DC/DCコンバータにおける第7電力入出力部は、第1電力入出力部に接続されるようにしてもよい。
【0024】
このように構成された分散型電源設備によれば、直流発電装置の出力電圧が交流電力系統の電圧振幅に比べて非常に低い場合(すなわち、高い昇圧比で電力変換動作を行う場合)において直流発電装置から交流電力系統へ電力を供給する際に、以下に示すように、電力変換効率を向上させることができる。
【0025】
まず、上記の昇圧型DC/DCコンバータに流れる電力は、複数の降圧型DC/DCコンバータに流れる電力の加算値に等しい。そして、複数の降圧型DC/DCコンバータは、交流電力系統の各相に接続されているため、複数の降圧型DC/DCコンバータに流れる電力の加算値の瞬時値は、交流出力のどの位相の時点においても交流出力電力に等しい準定常値である。このため、上記昇圧型DC/DCコンバータはどのような時点においても交流出力電力分のみを電力変換すればよい。
【0026】
一方、電力変換効率が悪化し易い高い昇圧比での電力変換動作において、交流電力系統の各相について高い昇圧比で電力変換動作を行う場合(例えば、請求項2に記載の構成)は、各相の出力電力が最大となる位相において、各相の出力電力波高値を変換する必要があり、このような時点で上記交流出力電力より大きな電力を昇圧することになるため、昇圧動作に伴い大きな電流が流れる。このような時点では著しく電力変換損失が増加しがちである。このため、請求項3に記載の構成は、請求項2に記載の構成と比較して、電力変換する際に上記双方向DC/DCコンバータに瞬時的に流れる最大電流が少なくなるため、電力変換における損失を小さくすることができ、電力変換効率を向上させることができる。
【0027】
また、請求項2に記載の分散型電源設備において、請求項4に記載のように、双方向DC/DCコンバータは、反転昇降圧型DC/DCコンバータであり、第1切替手段は、第1電力入出力部と蓄電池とを接続する場合には、蓄電池を構成する一対の電極のうち一方の第1電極と、第1電力入出力部とを接続するように構成され、第2切替手段は、第2電力入出力部と蓄電池とを接続する場合には、蓄電池を構成する一対の電極のうち他方の第2電極と、第2電力入出力部とを接続するように構成され、第1電極および第2電極の何れか一方が双方向性電力変換装置のコモンに接続されるように、電力伝送経路を切り替える第3切替手段を備え、第2機能を実行する場合には、第3切替手段は、第2電極がコモンに接続されるように、電力伝送経路を切り替え、第3機能を実行する場合には、第3切替手段は、第1電極がコモンに接続されるように、電力伝送経路を切り替えるようにしてもよい。
【0028】
このように構成された分散型電源設備によれば、双方向DC/DCコンバータとして反転昇降圧型DC/DCコンバータを用いているため、非反転昇降圧型DC/DCコンバータと比較して、リアクトルの数を増加させることなくスイッチ素子の数を低減することができ、分散型電源設備の小型化または低コスト化を図ることができる。反転昇降圧型DC/DCコンバータを構成するためには1個のリアクトルと2個のスイッチ素子が必要であるのに対し、非反転昇降圧型DC/DCコンバータを構成するためには1個のリアクトルと4個のスイッチ素子が必要であるからである。
【0029】
なお、双方向DC/DCコンバータとして反転昇降圧型DC/DCコンバータを用いているため、双方向電力変換装置において入力電圧と出力電圧の極性が反転する。このため、第2機能を実行する場合と第3機能を実行する場合とで、蓄電池にかかる電圧の極性が反転する。この反転に対応するために、蓄電池を構成する一対の電極の何れかがコモンに接続されるように第3切替手段が切り替わる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】分散型電源システム1の構成を示す回路図である。
【図2】昇降圧型コンバータ装置11,21による交流出力を説明する図である。
【図3】昇降圧型コンバータ装置11,21の力行動作および回生動作を説明する図である。
【図4】分散型電源システム31の構成を示す回路図である。
【図5】分散型電源システム71の構成を示す回路図である。
【図6】他の実施形態の双方向電力変換装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本実施形態の分散型電源システム1の構成を示す回路図である。図2は、昇降圧型コンバータ装置11,21による交流出力を説明する図である。図3は、昇降圧型コンバータ装置11,21の力行動作および回生動作を説明する図である。
【0032】
分散型電源システム1は、図1に示すように、直流発電装置2、蓄電池3、分散型電源設備4、及びフィルタ5を備えており、フィルタ5を介して交流電力系統6に接続されている。
【0033】
これらのうち直流発電装置2は、例えば太陽光、風力などの自然エネルギーを利用して直流電力の発電を行う。
また蓄電池3は、直流発電装置2で発電した電力、または交流電力系統6から供給される電力を蓄電する。
【0034】
またフィルタ5は、分散型電源設備4から出力される交流電力から高周波成分を除去し、交流電力系統6へ出力するためのものである。
また分散型電源設備4は、双方向電力変換装置10と選択スイッチSW1,SW2,SW3を備える。
【0035】
双方向電力変換装置10は、昇降圧型コンバータ装置11,21と、平滑コンデンサC1を備え、昇降圧型コンバータ装置11,21を並列接続することにより構成されている。
【0036】
そして昇降圧型コンバータ装置11(21)は、リアクトルL11(L21)、コンデンサC11(C21)、およびスイッチ素子S11(S21),S12(S22),S13(S23),S14(S24)を備えている。なお、コンデンサC11(C21)は平滑コンデンサであり、スイッチ素子S11(S21),S12(S22),S13(S23),S14(S24)はNチャネル型の電界効果トランジスタである。
【0037】
スイッチ素子S11(S21)は、ドレインTd11(Td21)が選択スイッチSW1を介して直流発電装置2または蓄電池3に接続されるとともに、ソースTs11(Ts21)がスイッチ素子S12(S22)のドレインTd12(Td22)に接続されている。またスイッチ素子S12(S22)は、ドレインTd12(Td22)がスイッチ素子S11(S21)のソースTs11(Ts21)に接続されるとともに、ソースTs12(Ts22)がコモンに接続されている。なお、ここでのコモンは大地に接地されてはおらず、したがって、交流電力系統の中点電位とは一般に異なる電位である。
【0038】
またスイッチ素子S13(S23)は、ドレインTd13(Td23)が選択スイッチSW2(SW3)を介して交流電力系統6に接続されるとともに、ソースTs13(Ts23)がスイッチ素子S14(S24)のドレインTd14(Td24)に接続されている。またスイッチ素子S14(S24)は、ドレインTd14(Td24)がスイッチ素子S13(S23)のソースTs13(Ts23)に接続されるとともに、ソースTs14(Ts24)がコモンに接続されている。
【0039】
またリアクトルL11(L21)は、一端がスイッチ素子S11(S21)とスイッチ素子S12(S22)との接続点に接続されるとともに、他端がスイッチ素子S13(S23)とスイッチ素子S14(S24)との接続点に接続されている。
【0040】
またコンデンサC11(C21)は、一端が選択スイッチSW2(SW3)とスイッチ素子S13(S23)との接続点に接続されるとともに、他端がコモンに接続されている。
【0041】
このように構成された昇降圧型コンバータ装置11(21)では、スイッチ素子S11(S21)をオンするとともにスイッチ素子S12(S22)をオフし、スイッチ素子S13(S23)とスイッチ素子S14(S24)とを交互にオン/オフさせることにより、スイッチ素子S13(S23)のドレインTd13(Td23)に、スイッチ素子S11(S21)のドレインTd11(Td21)より高い電圧を発生させることができる。また、スイッチ素子S13(S23)をオンするとともにスイッチ素子S14(S24)をオフし、スイッチ素子S11(S21)とスイッチ素子S12(S22)とを交互にオン/オフさせて、スイッチ素子S13(S23)のドレインTd13(Td23)に、スイッチ素子S11(S21)のドレインTd11(Td21)より低い電圧を発生させることができる。
【0042】
さらに選択スイッチSW1は、スイッチ素子S11のドレインTd11およびスイッチ素子S21のドレインTd21を、直流発電装置2および蓄電池3の何れか一方に接続する。
【0043】
また選択スイッチSW2は、スイッチ素子S13のドレインTd13を、蓄電池3および交流電力系統6の何れかに接続する。また選択スイッチSW3は、スイッチ素子S23のドレインTd23を、蓄電池3および交流電力系統6の何れか一方に接続する。
【0044】
また平滑コンデンサC1は、一端がスイッチ素子S11のドレインTd11およびスイッチ素子S21のドレインTd21と選択スイッチSW1との接続点に接続されるとともに、他端がコモンに接続されている。
【0045】
ところで、昇降圧型コンバータ装置11,21は、その出力電圧を、予め設定された基準電圧を中心として振動するように制御することで、図2に示すように、基準電圧を中心とした交流を出力させることができる。そして、上述のように構成された双方向電力変換装置10において、入力を共有する2つの昇降圧型コンバータ装置11,21を、基準電圧を中心として互いに逆位相の振動電圧を出力するように制御すると、両出力の電位差は、0Vを中心とする振動電圧となる。この振動電圧の電圧振幅を交流電力系統6の電圧振幅と等しくすることで、交流電源を得ることができる。
【0046】
また、交流電力系統6に双方向電力変換装置10を接続する際には、昇降圧型コンバータ装置11,21の各出力電流が、0Aを中心とする互いに逆相の正弦波電流となるように、制御されなくてはならない。なぜなら、昇降圧型コンバータ装置11,21の各出力電流の中心電流が0Aでない場合、または昇降圧型コンバータ装置11,21の各出力電流が互いに逆相の正弦波電流でない場合には、交流電力系統6に直流電流が生じたり、接地に対する電流が生じたりするからである。
【0047】
また、昇降圧型コンバータ装置11,21の各出力電流の位相は、出力電圧の位相に一致するか逆でなくてはならない。なぜなら、それ以外の場合では交流電力系統6に無効な電力が供給されるといった問題が生じるからである。
【0048】
そして、昇降圧型コンバータ装置11,21は、以下に示す第1の動作状態および第2の動作状態のときにのみ、上記の条件を満たす。
まず、第1の動作状態は、図3(a)に示すように、昇降圧型コンバータ装置11,21のそれぞれにおいて、出力電圧と出力電流とが同相となる状態である。この動作状態では、昇降圧型コンバータ装置11,21の平均出力電力が正である。このため、昇降圧型コンバータ装置11,21から交流電力系統6に電力が供給される。以降、この動作を力行動作という。
【0049】
次に、第2の動作状態は、図3(b)に示すように、昇降圧型コンバータ装置11,21のそれぞれにおいて、出力電圧と出力電流とが逆相となる状態である。この動作状態では、昇降圧型コンバータ装置11,21の平均出力電力が負である。このため、交流電力系統6から昇降圧型コンバータ装置11,21に電力が供給される。以降、この動作を回生動作という。
【0050】
以上より、双方向電力変換装置10は、通常のDC/DC変換装置として機能するだけではなく、双方向のDC/AC変換装置として機能させることができる。
そして、分散型電源設備4において、(1)直流発電装置2で発電された電力を双方向電力変換装置10を介して交流電力系統6へ給電する機能と、(2)交流電力系統6から双方向電力変換装置10を介して蓄電池3の充電を行う機能と、(3)直流発電装置2から双方向電力変換装置10を介して蓄電池3の充電を行う機能を実現するには、分散型電源設備4を以下のように動作させる。
【0051】
まず、(1)直流発電装置2から交流電力系統6へ給電する機能(以下、第1機能ともいう)を実現するには、双方向電力変換装置10と直流発電装置2とが接続されるように選択スイッチSW1を切り替えるとともに、双方向電力変換装置10と交流電力系統6とが接続されるように選択スイッチSW2,SW3を切り替え、さらに、双方向電力変換装置10に力行動作を実行させる。
【0052】
また、(2)交流電力系統6から蓄電池3の充電を行う機能(以下、第2機能ともいう)を実現するには、双方向電力変換装置10と蓄電池3とが接続されるように選択スイッチSW1を切り替えるとともに、双方向電力変換装置10と交流電力系統6とが接続されるように選択スイッチSW2,SW3を切り替え、さらに、双方向電力変換装置10に回生動作を実行させる。
【0053】
また、(3)直流発電装置2から蓄電池3の充電を行う機能(以下、第3機能ともいう)を実現するには、双方向電力変換装置10と直流発電装置2とが接続されるように選択スイッチSW1を切り替えるとともに、双方向電力変換装置10と蓄電池3とが接続されるように選択スイッチSW2,SW3を切り替え、さらに、双方向電力変換装置10をDC/DCコンバータとして動作させる。
【0054】
このように構成された分散型電源設備4では、双方向電力変換装置10は、複数(本実施形態では2個)の昇降圧型コンバータ装置11,21(DC/DCコンバータ)により構成されるとともに、電力を入出力可能な第1電力入出力部(図1の接続点Pc1を参照)と、電力を入出力可能な複数の第2電力入出力部(図1の接続点Pc2,Pc3を参照)とを備え、第1電力入出力部または第2電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、それぞれ第2電力入出力部または第1電力入出力部に出力する。
【0055】
また選択スイッチSW1は、第1電力入出力部が、直流発電装置2および蓄電池3の何れか一方に接続されるように、第1電力入出力部と直流発電装置2および蓄電池3との間の電力伝送経路を切り替えるとともに、選択スイッチSW2,SW3は、第2電力入出力部が、交流電力系統6および蓄電池3の何れか一方に接続されるように、第2電力入出力部と交流電力系統6および蓄電池3との間の電力伝送経路を切り替える。
【0056】
なお、第2電力入出力部の個数(本実施形態では2個)は、交流電力系統6の相数(本実施形態では2相)に等しいかそれ以上であり、交流電力系統6に選択スイッチSW2,SW3を介して接続される複数の第2電力入出力部のそれぞれは、交流電力系統の交流電力を構成する複数の相のうちの1つに接続されるように予め設定され、選択スイッチSW2,SW3は、第2電力入出力部と交流電力系統6とが接続されるように電力伝送経路を切り替える場合には、複数の第2電力入出力部のそれぞれを、予め設定された相に接続する。
【0057】
また、第1機能を実行する場合には、選択スイッチSW1は、第1電力入出力部が直流発電装置2に接続されるように、電力伝送経路を切り替え、選択スイッチSW2,SW3は、第2電力入出力部が交流電力系統6に接続されるように、電力伝送経路を切り替える。これにより、直流発電装置2と交流電力系統6とが双方向電力変換装置10を介して電力入出力可能に接続される。
【0058】
そして双方向電力変換装置10は、第1電力入出力部に入力した直流電力を、所定の電圧振幅および所定の周波数を有する交流電力に変換するように、昇降圧型コンバータ装置11,21を制御してDC/AC変換動作を行う。ここで、双方向電力変換装置10は、第1電力入出力部に入力した直流電力を、第2電力入出力部において出力電圧の交流成分と出力電流の交流成分とが同相の交流電力となるように時間変化する電流・電圧に制御することで、DC/AC変換動作を行う。これにより、双方向電力変換装置10の第2電力入出力部において1周期にわたる平均出力電力が正となり、第1電力入出力部の電力を吸収して第2電力入出力部に出力するように動作する。したがって、双方向電力変換装置10から交流電力系統6に電力を供給することができる。
【0059】
次に、第2機能を実行する場合には、選択スイッチSW1は、第1電力入出力部が蓄電池3に接続されるように、電力伝送経路を切り替え、選択スイッチSW2,SW3は、第2電力入出力部が交流電力系統6に接続されるように、電力伝送経路を切り替える。これにより、蓄電池3と交流電力系統6とが双方向電力変換装置10を介して電力入出力可能に接続される。
【0060】
そして双方向電力変換装置10は、第2電力入出力部に入力した交流電力を、所定の電圧値を有する直流電力に変換するように昇降圧型コンバータ装置11,21を制御してAC/DC変換動作を行う。ここで、双方向電力変換装置10は、第2電力入出力部における出力電圧の交流成分と出力電流の交流成分とが逆相の交流電力となるように時間変化する電流・電圧に制御することで、DC/AC変換動作を行う。これにより、双方向電力変換装置10の第2電力入出力部における1周期にわたる平均出力電力が負となり、第2電力入出力部の電力を吸収して第1電力入出力部に電力を出力するように動作する。したがって、双方向電力変換装置10から蓄電池3に電力を供給することができる。
【0061】
さらに、第3機能を実行する場合には、選択スイッチSW1は、第1電力入出力部が直流発電装置2に接続されるように、電力伝送経路を切り替え、選択スイッチSW2,SW3は、第2電力入出力部が蓄電池3に接続されるように、電力伝送経路を切り替える。これにより、直流発電装置2と蓄電池3とが双方向電力変換装置10を介して電力入出力可能に接続される。
【0062】
そして双方向電力変換装置10は、第1電力入出力部に入力した直流電力を、所定の電圧値を有する直流電力に変換するように昇降圧型コンバータ装置11,21を制御してDC/DC変換動作を行う。これにより、双方向電力変換装置10から蓄電池3に電力を供給することができる。
【0063】
このように構成された分散型電源設備4によれば、上記第1機能、第2機能、及び第3機能の何れを実行する場合でも、双方向電力変換装置10を構成する複数の昇降圧型コンバータ装置11,21が電力変換動作を行う。つまり、上記複数の双方向DC/DCコンバータは、上記第1,2,3機能の全てで稼動させることとなるため、上記特許文献1に記載の分散型電源設備よりも、分散型電源設備4が備える電力変換装置の利用効率を向上させることができる。
【0064】
また、上記第2機能を実行する場合に、交流電力系統6から蓄電池3に到る電流経路上において2つのコンバータが直列に接続されていないため、上記特許文献1に記載の分散型電源設備よりも、電力変換効率が高くなり、放熱設備の大型化を抑制することができる。
【0065】
また双方向電力変換装置10は、電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第3電力入出力部(図1の接続点Pc11,Pc21を参照)および第4電力入出力部(図1の接続点Pc12,Pc22を参照)を備え、第3電力入出力部または第4電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、対となる他方の電力入出力部に出力する複数の昇降圧型コンバータ装置11,21を備え、複数の昇降圧型コンバータ装置11,21の個数は、第2電力入出力部の個数に一致しており、複数の昇降圧型コンバータ装置11,21は、互いに電気的に並列接続され、複数の昇降圧型コンバータ装置11,21における第3電力入出力部は、第1電力入出力部に接続され、第4電力入出力部のそれぞれは、互いに異なる第2電力入出力部に接続される。
【0066】
このように構成された分散型電源設備4では、昇降圧型コンバータ装置の個数(本実施形態では2個)が、第2電力入出力部の個数(本実施形態では2個)に一致しており、必要最低限の個数である。これにより、1つの昇降圧型コンバータ装置について少なくとも1つ必要であるリアクトルの数を必要最低限に抑えることができる。従って、リアクトルの価格が分散型電源設備全体にとって無視できないコスト要因である場合に、分散型電源設備4の低コスト化への寄与を高めることができる。
【0067】
以上説明した実施形態において、昇降圧型コンバータ装置11,21は本発明における双方向DC/DCコンバータ、選択スイッチSW1は本発明における第1切替手段、選択スイッチSW2,SW3は本発明における第2切替手段である。
【0068】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を図面とともに説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0069】
図4は、本実施形態の分散型電源システム31の構成を示す回路図である。
第2実施形態の分散型電源システム31は、分散型電源設備4の代わりに分散型電源設備34を備える点以外は第1実施形態と同じである。
【0070】
そして分散型電源設備34は、双方向電力変換装置10の代わりに双方向電力変換装置40を備える点以外は第1実施形態の分散型電源設備4と同じである。
双方向電力変換装置40は、図4に示すように、降圧型コンバータ装置41,51と、昇圧型コンバータ装置61と、平滑コンデンサC31を備え、降圧型コンバータ装置41,51を並列接続するとともに、昇圧型コンバータ装置61を降圧型コンバータ装置41,51に対して直列接続することにより構成されている。
【0071】
まず、降圧型コンバータ装置41(51)は、リアクトルL41(L51)、コンデンサC41(C51)、およびスイッチ素子S41(S51),S42(S52)を備えている。なおコンデンサC41(C51)は平滑コンデンサである。またスイッチ素子S41(S51),S42(S52)は、Nチャネル型の電界効果トランジスタである。
【0072】
これらのうちリアクトルL41(L51)は、一端が選択スイッチSW2(SW3)を介して交流電力系統6に接続されるとともに、他端がスイッチ素子S41(S51)とスイッチ素子S42(S52)との接続点に接続されている。
【0073】
またコンデンサC41(C51)は、一端がリアクトルL41(L51)と選択スイッチSW2(SW3)との接続点に接続されるとともに、他端がコモンに接続されている。
またスイッチ素子S41(S51)は、ドレインTd41(Td51)が昇圧型コンバータ装置61に接続されるとともに、ソースTs41(Ts51)がスイッチ素子S42(S52)のドレインTd42(Td52)に接続されている。またスイッチ素子S42(S52)は、ドレインTd42(Td52)がスイッチ素子S41(S51)のソースTs41(Ts51)に接続されるとともに、ソースTs42(Ts52)がコモンに接続されている。
【0074】
このように構成された降圧型コンバータ装置41(51)においては、スイッチ素子S41(S51)とスイッチ素子S42(S52)とを交互にオン/オフさせることにより、コンデンサC41(C51)とリアクトルL41(L51)との接続点において、スイッチ素子S41(S51)のドレインTd41(Td51)より低い電圧を発生させることができる。すなわち、スイッチ素子S41(S51)がオフからオンに変化してから次にオフからオンに変化するまでの期間(以下、スイッチング周期という)に対する、スイッチ素子S41(S51)がオン状態である期間(以下、スイッチオン時間という)の比率を変化させ、スイッチング周期に対してスイッチオン時間を短くするほど、コンデンサC41(C51)とリアクトルL41(51)との接続点での電圧を低下させることができる。なお、リアクトルL41(51)およびコンデンサC41(C51)は、コンデンサC41(C51)とリアクトルL41(51)との接続点での電圧を平滑化するための平滑回路を構成する。
【0075】
次に、昇圧型コンバータ装置61は、リアクトルL61、およびスイッチ素子S61,S62を備えている。なお、スイッチ素子S61,S62は、Nチャネル型の電界効果トランジスタである。
【0076】
これらのうちスイッチ素子S61は、ドレインTd61が降圧型コンバータ装置41,51に接続されるとともに、ソースTs61がスイッチ素子S62のドレインTd62に接続されている。またスイッチ素子S62は、ドレインTd62がスイッチ素子S61のソースTs61に接続されるとともに、ソースTs62がコモンに接続されている。
【0077】
またリアクトルL61は、一端が選択スイッチSW1を介して直流発電装置2または蓄電池3に接続されるとともに、他端がスイッチ素子S61とスイッチ素子S62との接続点に接続されている。
【0078】
また平滑コンデンサC31は、一端がスイッチ素子S61のドレインTd61と降圧型コンバータ装置41,51との接続点に接続されるとともに、他端がコモンに接続されている。
【0079】
このように構成された昇圧型コンバータ装置61においては、スイッチ素子S61とスイッチ素子S62とを交互にオン/オフさせて、スイッチ素子S61のドレインTd61に直流発電装置2または蓄電池3より高い電圧を発生させることができる。すなわち、まずスイッチ素子S62をオンすると、リアクトルL61に磁気エネルギーが蓄積される。その後にスイッチ素子S62をオフすると、リアクトルL61に蓄積された磁気エネルギーにより、リアクトルL61とスイッチ素子S62との接続点での電圧が上昇し、コンデンサC31に電荷が蓄積される。この動作を繰り返すことにより、スイッチ素子S61のドレインTd61の電圧が上昇する。
【0080】
このように構成された分散型電源設備34では、双方向電力変換装置40は、電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第5電力入出力部(図4の接続点Pc41,Pc51を参照)および第6電力入出力部(図4の接続点Pc42,Pc52を参照)を備える複数の降圧型コンバータ装置41,51と、電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第7電力入出力部(図4のリアクトルL61の左端部Pc61を参照)および第8電力入出力部(図4の接続点Pc51を参照)を備える昇圧型コンバータ装置61とを備え、複数の降圧型コンバータ装置41,51の個数(本実施形態では2個)は、第2電力入出力部の個数(本実施形態では2個)に一致しており、複数の降圧型コンバータ装置41,51は、互いに電気的に並列接続され、複数の降圧型コンバータ装置41,51における第5電力入出力部は、昇圧型コンバータ装置61の第8電力入出力部に接続され、複数の降圧型コンバータ装置41,51における第6電力入出力部のそれぞれは、互いに異なる第2電力入出力部(図4の接続点Pc2,Pc3を参照)に接続され、昇圧型コンバータ装置61における第7電力入出力部は、第1電力入出力部(図4の接続点Pc1を参照)に接続される。
【0081】
このように構成された分散型電源設備34によれば、直流発電装置2の出力電圧が交流電力系統6の電圧振幅に比べて非常に低い場合(すなわち、高い昇圧比で電力変換動作を行う場合)において直流発電装置2から交流電力系統6へ電力を供給する際に、以下に示すように、電力変換効率を向上させることができる。
【0082】
まず、上記の昇圧型コンバータ装置61に流れる電力は、複数の降圧型コンバータ装置41,51に流れる電力の加算値に等しい。そして、複数の降圧型コンバータ装置41,51に流れる電力の加算値の瞬時値は、交流出力のどの位相の時点においても交流出力電力に等しい準定常値である。このため、昇圧型DC/DCコンバータ61はどのような時点においても交流出力電力分のみを電力変換すればよい。
【0083】
一方、電力変換効率が悪化し易い高い昇圧比での電力変換動作において、交流電力系統6の各相について高い昇圧比で電力変換動作を行う場合(例えば、第1実施形態)は、各相の出力電力が最大となる位相において、各相の出力電力波高値を変換する必要があり、このような時点で上記交流出力電力より大きな電力を昇圧することになるため、昇圧動作に伴い大きな電流が流れる。このような時点では著しく電力変換損失が増加しがちである。このため、本実施形態では、第1実施形態と比較して、電力変換する際の電流が少なくなるため、電力変換における損失を小さくすることができ、電力変換効率を向上させることができる。
【0084】
以上説明した実施形態において、降圧型コンバータ装置41,51は本発明における降圧型DC/DCコンバータ、昇圧型コンバータ装置61は本発明における昇圧型DC/DCコンバータである。
【0085】
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を図面とともに説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0086】
図5は、本実施形態の分散型電源システム71の構成を示す回路図である。
第2実施形態の分散型電源システム71は、分散型電源設備4の代わりに分散型電源設備74を備える点以外は第1実施形態と同じである。
【0087】
そして分散型電源設備74は、双方向電力変換装置80と、選択スイッチSW71,SW72,SW73,SW74を備える。
双方向電力変換装置80は、図5に示すように、反転昇降圧型コンバータ装置81,91と、平滑コンデンサC71と、選択スイッチSW71,SW72,SW73,SW74を備え、反転昇降圧型コンバータ装置81,91を並列接続することにより構成されている。
【0088】
そして反転昇降圧型コンバータ装置81(91)は、リアクトルL81(L91)、コンデンサC81(C91)、およびスイッチ素子S81(S91),S82(S92)を備えている。なお、コンデンサC81(C91)は平滑コンデンサであり、スイッチ素子S81(S91),S82(S92)はNチャネル型の電界効果トランジスタである。
【0089】
スイッチ素子S81(S91)は、ドレインTd81(Td91)が選択スイッチSW71を介して直流発電装置2または蓄電池3に接続されるとともに、ソースTs81(Ts91)がスイッチ素子S82(S92)のドレインTd82(Td92)に接続されている。またスイッチ素子S82(S92)は、ドレインTd82(Td92)がスイッチ素子S81(S91)のソースTs81(Ts91)に接続されるとともに、ソースTs82(Ts92)が選択スイッチSW72(SW73)を介して交流電力系統6に接続されている。
【0090】
またリアクトルL81(L91)は、一端がスイッチ素子S81(S91)とスイッチ素子S82(S92)との接続点に接続されるとともに、他端がコモンに接続されている。
【0091】
またコンデンサC81(C91)は、一端がスイッチ素子S82(S92)と選択スイッチSW2(SW3)との接続点に接続されるとともに、他端がコモンに接続されている。
【0092】
このように構成された反転昇降圧型コンバータ装置81(91)では、スイッチ素子S82(S92)をオフし、スイッチ素子S81(S91)のオン/オフを繰り返すことにより、スイッチ素子S82(S92)のソースTs82(Ts92)に、直流発電装置2または蓄電池3の電圧に対して極性が反転した電圧を発生させることができる。なお、スイッチ素子S82(S92)のソースTs82(Ts92)に発生する電圧の大きさは、スイッチ素子S81(S91)がオン状態である期間(スイッチオン時間)と、スイッチ素子S81(S91)がオフ状態である期間(スイッチオフ時間)との比率により制御される。
【0093】
一方、スイッチ素子S81(S91)をオフし、スイッチ素子S82(S92)のオン/オフを繰り返すことにより、スイッチ素子S81(S91)のドレインTd81(Td91)に、交流電力系統6の電圧に対して極性が反転した電圧を発生させることができる。なお、スイッチ素子S81(S91)のドレインTd81(Td91)に発生する電圧の大きさは、スイッチ素子S82(S92)がオン状態である期間(スイッチオン時間)と、スイッチ素子S82(S92)がオフ状態である期間(スイッチオフ時間)との比率により制御される。
【0094】
さらに選択スイッチSW71は、スイッチ素子S81のドレインTd81およびスイッチ素子S91のドレインTd91を、直流発電装置2および蓄電池3の一端電極3aの何れか一方に接続する。
【0095】
また選択スイッチSW72は、スイッチ素子S82のソースTs82を、交流電力系統6および蓄電池3の他端電極3bの何れか一方に接続する。また選択スイッチSW73は、スイッチ素子S92のソースTs92を、交流電力系統6および蓄電池3の他端電極3bの何れか一方に接続する。
【0096】
また選択スイッチSW74は、蓄電池3の一端電極3aおよび他端電極3bの何れか一方をコモンに接続する。
そして、分散型電源設備74において、(1)直流発電装置2で発電された電力を双方向電力変換装置80を介して交流電力系統6へ給電する機能と、(2)交流電力系統6から双方向電力変換装置80を介して蓄電池3の充電を行う機能と、(3)直流発電装置2から双方向電力変換装置80を介して蓄電池3の充電を行う機能を実現するには、分散型電源設備74を以下のように動作させる。
【0097】
まず、(1)直流発電装置2から交流電力系統6へ給電する機能(第1機能)を実現するには、双方向電力変換装置80と直流発電装置2とが接続されるように選択スイッチSW71を切り替え、双方向電力変換装置80と交流電力系統6とが接続されるように選択スイッチSW72,SW73を切り替え、さらに、双方向電力変換装置80に力行動作を実行させる。なお、選択スイッチSW74の切替状態は任意である。
【0098】
また、(2)交流電力系統6から蓄電池3の充電を行う機能(第2機能)を実現するには、双方向電力変換装置80と蓄電池3とが接続されるように選択スイッチSW71を切り替え、双方向電力変換装置80と交流電力系統6とが接続されるように選択スイッチSW72,73を切り替え、蓄電池3の他端電極3bがコモンに接続されるように選択スイッチSW74を切り替え、さらに、双方向電力変換装置80に回生動作を実行させる。
【0099】
また、(3)直流発電装置2から蓄電池3の充電を行う機能(第3機能)を実現するには、双方向電力変換装置80と直流発電装置2とが接続されるように選択スイッチSW71を切り替え、双方向電力変換装置80と蓄電池3とが接続されるように選択スイッチSW72,SW73を切り替え、蓄電池3の一端電極3aがコモンに接続されるように選択スイッチSW74を切り替え、さらに、双方向電力変換装置80をDC/DCコンバータとして動作させる。
【0100】
このように構成された分散型電源設備74によれば、双方向DC/DCコンバータとして反転昇降圧型コンバータ装置81,91を用いているため、非反転昇降圧型DC/DCコンバータと比較して、リアクトルの数を増加させることなくスイッチ素子の数を低減することができ、分散型電源設備74の小型化または低コスト化を図ることができる。反転昇降圧型DC/DCコンバータを構成するためには1個のリアクトルと2個のスイッチ素子が必要であるのに対し、非反転昇降圧型DC/DCコンバータを構成するためには1個のリアクトルと4個のスイッチ素子が必要であるからである。
【0101】
なお、双方向DC/DCコンバータとして反転昇降圧型コンバータ装置81,91を用いているため、双方向電力変換装置80において入力電圧と出力電圧の極性が反転する。このため、第2機能を実行する場合と第3機能を実行する場合とで、蓄電池3にかかる電圧の極性が反転する。この反転に対応するために、蓄電池3を構成する一対の電極3a,3bの何れかがコモンに接続されるように選択スイッチSW74が切り替わる。
【0102】
以上説明した実施形態において、反転昇降圧型コンバータ装置81,91は本発明における反転昇降圧型DC/DCコンバータ、電極3aは本発明における第1電極、電極3bは本発明における第2電極、選択スイッチSW71は本発明における第1切替手段、選択スイッチSW72,SW73は本発明における第2切替手段、選択スイッチSW74は本発明における第3切替手段である。
【0103】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、交流電力系統6が2相であるものを示したが、3相以上の交流電力系統であってもよい。例えば、図6に示すように、交流電力系統が3相である場合には、交流電力系統の相数に等しいかそれ以上の個数(すなわち、3個以上)の双方向DC/DCコンバータ装置を並列に接続した双方向電力変換装置を備えるようにするとよい。
【符号の説明】
【0104】
1…分散型電源システム、2…直流発電装置、3…蓄電池、3a…一端電極、3b…他端電極、4…分散型電源設備、5…フィルタ、6…交流電力系統、10…双方向電力変換装置、11,21…昇降圧型コンバータ装置、31…分散型電源システム、34…分散型電源設備、40…双方向電力変換装置、41,51…降圧型コンバータ装置、61…昇圧型コンバータ装置、71…分散型電源システム、74…分散型電源設備、80…双方向電力変換装置、81,91…反転昇降圧型コンバータ装置、SW1,SW2,SW3,SW71,SW72,SW73,SW74…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を発電する直流発電装置と、直流電力を蓄電する蓄電池と、交流電力系統とに接続され、前記直流発電装置から前記交流電力系統へ給電する第1機能と、前記交流電力系統から前記蓄電池に充電する第2機能と、前記直流発電装置から前記蓄電池に充電する第3機能とを有する分散型電源設備であって、
複数の双方向性を有するDC/DCコンバータにより構成されるとともに、電力を入出力可能な第1電力入出力部と、電力を入出力可能な複数の第2電力入出力部とを備え、前記第1電力入出力部または前記第2電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、それぞれ前記第2電力入出力部または前記第1電力入出力部に出力する双方向電力変換装置と、
前記第1電力入出力部が、前記直流発電装置および前記蓄電池の何れか一方に接続されるように、前記第1電力入出力部と前記直流発電装置および前記蓄電池との間の電力伝送経路を切り替える第1切替手段と、
前記第2電力入出力部が、前記交流電力系統および前記蓄電池の何れか一方に接続されるように、前記第2電力入出力部と前記交流電力系統および前記蓄電池との間の電力伝送経路を切り替える第2切替手段とを備え、
前記複数の第2電力入出力部の個数は、前記交流電力系統の相数に等しいもしくはそれ以上の個数であり、
前記交流電力系統に前記第2切替手段を介して接続される複数の第2電力入出力部のそれぞれは、前記交流電力系統の交流電力を構成する複数の相のうちの1つに接続されるように予め設定され、
前記第2切替手段は、前記第2電力入出力部と前記交流電力系統とが接続されるように前記電力伝送経路を切り替える場合には、前記複数の第2電力入出力部のそれぞれを、予め設定された前記相に接続し、
前記第1機能を実行する場合には、
前記第1切替手段は、前記第1電力入出力部が前記直流発電装置に接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記第2切替手段は、前記第2電力入出力部が前記交流電力系統に接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記双方向電力変換装置は、前記第1電力入出力部に入力した直流電力を、所定の電圧振幅および所定の周波数を有する交流電力に変換するように前記DC/DCコンバータを制御してDC/AC変換動作を行い、
前記第2機能を実行する場合には、
前記第1切替手段は、前記第1電力入出力部が前記蓄電池に接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記第2切替手段は、前記第2電力入出力部が前記交流電力系統に接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記双方向電力変換装置は、前記第2電力入出力部に入力した交流電力を、所定の電圧値を有する直流電力に変換するように前記DC/DCコンバータを制御してAC/DC変換動作を行い、
前記第3機能を実行する場合には、
前記第1切替手段は、前記第1電力入出力部が前記直流発電装置に接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記第2切替手段は、前記第2電力入出力部が前記蓄電池に接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記双方向電力変換装置は、前記第1電力入出力部に入力した直流電力を、所定の電圧値を有する直流電力に変換するように前記DC/DCコンバータを制御してDC/DC変換動作を行う
ことを特徴とする分散型電源設備。
【請求項2】
前記双方向電力変換装置は、
電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第3電力入出力部および第4電力入出力部を備え、前記第3電力入出力部または前記第4電力入出力部から入力した電力を予め設定された電圧値に変換して、対となる他方の前記電力入出力部に出力する複数の双方向DC/DCコンバータを備え、
前記複数の双方向DC/DCコンバータの個数は、前記複数の第2電力入出力部の個数に一致しており、
前記複数の双方向DC/DCコンバータは、互いに電気的に並列接続され、
前記複数の双方向DC/DCコンバータにおける前記第3電力入出力部は、前記第1電力入出力部に接続され、
前記複数の双方向DC/DCコンバータにおける前記第4電力入出力部のそれぞれは、互いに異なる前記第2電力入出力部に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の分散型電源設備。
【請求項3】
前記双方向電力変換装置は、
電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第5電力入出力部および第6電力入出力部を備える複数の双方向性を有する降圧型DC/DCコンバータと、
電力を入出力可能な1対の電力入出力部である第7電力入出力部および第8電力入出力部を備える双方向性を有する昇圧型DC/DCコンバータとを備え、
前記複数の降圧型DC/DCコンバータの個数は、前記複数の第2電力入出力部の個数に一致しており、
前記複数の降圧型DC/DCコンバータは、互いに電気的に並列接続され、
前記複数の降圧型DC/DCコンバータにおける前記第5電力入出力部は、前記昇圧型DC/DCコンバータの前記第8電力入出力部に接続され、
前記複数の降圧型DC/DCコンバータにおける前記第6電力入出力部のそれぞれは、互いに異なる前記第2電力入出力部に接続され、
前記昇圧型DC/DCコンバータにおける前記第7電力入出力部は、前記第1電力入出力部に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の分散型電源設備。
【請求項4】
前記双方向DC/DCコンバータは、反転昇降圧型DC/DCコンバータであり、
前記第1切替手段は、前記第1電力入出力部と前記蓄電池とを接続する場合には、前記蓄電池を構成する一対の電極のうち一方の第1電極と、前記第1電力入出力部とを接続するように構成され、
前記第2切替手段は、前記第2電力入出力部と前記蓄電池とを接続する場合には、前記蓄電池を構成する一対の電極のうち他方の第2電極と、前記第2電力入出力部とを接続するように構成され、
前記第1電極および前記第2電極の何れか一方が前記双方向性電力変換装置のコモンに接続されるように、電力伝送経路を切り替える第3切替手段を備え、
前記第2機能を実行する場合には、
前記第3切替手段は、前記第2電極が前記コモンに接続されるように、前記電力伝送経路を切り替え、
前記第3機能を実行する場合には、
前記第3切替手段は、前記第1電極が前記コモンに接続されるように、前記電力伝送経路を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の分散型電源設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157166(P2012−157166A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14237(P2011−14237)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】