説明

分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】遮熱粒子の分散性を高めることができる分散液及び合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有する分散液、並びにケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜2。上記分散液及び合わせガラス用中間膜2に含まれている上記分散剤は一分子中に、カルボキシル基とアミノ基とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱粒子と分散剤と可塑剤とを含有する分散液、熱可塑性樹脂と遮熱粒子と分散剤と可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。
【0004】
従って、例えば、自動車のフロントガラス又はサイドガラスから入射する光線のうち、熱的作用が大きい赤外線(熱線)を遮断すれば、遮熱性を高めることができ、自動車の内部の温度上昇を抑えることができる。近年、自動車のガラス開口部の面積が増大している。このため、合わせガラスの遮熱性を高くして、ガラス開口部に熱線カット機能を付与する必要が高まっている。
【0005】
合わせガラスの遮熱性を高めるために、遮熱粒子を含有する合わせガラス用中間膜が用いられている。
【0006】
遮熱粒子を含有する合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、遮熱性能を有する錫ドープ酸化インジウム粒子又はアンチモンドープ酸化錫粒子等の遮熱粒子をポリビニルアセタール樹脂に分散させた合わせガラス用中間膜が開示されている。
【0007】
また、近年、錫ドープ酸化インジウム粒子又はアンチモンドープ酸化錫粒子の価格が高くなってきている。このため、遮熱粒子として、酸化亜鉛粒子を用いることが検討されている。しかしながら、酸化亜鉛粒子は、合わせガラス用中間膜における分散性が特に低いという問題がある。
【0008】
上記酸化亜鉛粒子の分散性を高めるために、下記の特許文献2では、分散剤としてリン酸エステルを用いた合わせガラス用中間膜が開示されている。しかしながら、酸化亜鉛粒子とリン酸エステルとを併用しても、合わせガラス用中間膜における酸化亜鉛粒子の分散性が充分に高くならないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO01/25162号公報
【特許文献2】特開2001−302288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、遮熱粒子の分散性を高めることができる分散液及び合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有し、上記分散剤が一分子中に、カルボキシル基とアミノ基とを有する、分散液が提供される。
【0012】
本発明の他の広い局面によれば、熱可塑性樹脂と、ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有し、上記分散剤が一分子中に、カルボキシル基とアミノ基とを有する、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0013】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記分散剤は、ポリエステル酸のアマイドアミン分散剤である。
【0014】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記遮熱粒子は酸化亜鉛粒子である。
【0015】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記遮熱粒子は、ガリウム又はアルミニウムを含む。
【0016】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子とは異なる第2の遮熱粒子、及び赤外線吸収性有機色素の内の少なくとも一種がさらに含有される。
【0017】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記第2の遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子及びアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子からなる群から選択された少なくとも一種である。
【0018】
本発明に係る合わせガラスは、第1,第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、該中間膜が、本発明に従って構成された合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る分散液は、ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有し、かつ上記分散剤が一分子中にカルボキシル基とアミノ基とを有するので、分散液中での上記遮熱粒子の分散性を高めることができる。従って、本発明に係る分散液の使用により、遮熱粒子の分散性に優れた合わせガラス用中間膜を提供できる。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と、ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有し、かつ上記分散剤が一分子中にカルボキシル基とアミノ基とを有するので、合わせガラス用中間膜中での遮熱粒子の分散性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
本発明に係る分散液は、ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子(以下、第1の遮熱粒子ともいう)と、一分子中にカルボキシル基とアミノ基とを有する分散剤(以下、分散剤Aともいう)と、可塑剤とを含有する。
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と、上記第1の遮熱粒子と、上記分散剤Aと、可塑剤とを含有する。
【0025】
先ず、本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0026】
[熱可塑性樹脂]
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている上記熱可塑性樹脂は特に限定されない。該熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス構成部材に対する中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
【0029】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は、一般に80〜99.8モル%の範囲内である。
【0030】
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、より好ましい下限は500、好ましい上限は3,000、より好ましい上限は2,000である。上記重合度が低すぎると、合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向がある。上記重合度が高すぎると、合わせガラス用中間膜の成形が困難となることがある。
【0031】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、15〜40モル%の範囲内であることが好ましい。上記水酸基の含有率のより好ましい下限は18モル%、より好ましい上限は35モル%である。上記水酸基の含有率が低すぎると、中間膜の接着性が低くなることがある。また、上記水酸基の含有率が高すぎると、中間膜の柔軟性が低くなり、中間膜の取扱いに問題が生じやすい。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、原料となるポリビニルアルコールの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0034】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.3モル%、さらに好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は30モル%、より好ましい上限は25モル%、さらに好ましい上限は20モル%である。上記アセチル化度が低すぎると、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤の相溶性が低下することがある。上記アセチル化度が高すぎると、中間膜の耐湿性が低くなることがある。
【0035】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(%)で表した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0036】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は60モル%、より好ましい下限は63モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は75モル%、さらに好ましい上限は70モル%である。上記アセタール化度が低すぎると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が低いことがある。上記アセタール化度が高すぎると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が長くなることがある。
【0037】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(%)で表した値である。
【0038】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル基量とビニルアルコール量とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、ついで、100モル%からアセチル基量とビニルアルコール量とを差し引くことにより算出され得る。
【0039】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0040】
[第1の遮熱粒子]
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜に含まれている上記第1の遮熱粒子は、ケイ素化合物が表面に付着していれば特に限定されない。上記第1の遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記第1の遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることが好ましい。該金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン及び酸化インジウム等が挙げられる。
【0042】
上記第1の遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子及び珪素ドープ酸化亜鉛粒子等が挙げられる。
【0043】
上記第1の遮熱粒子は、酸化亜鉛粒子であることが好ましい。上記酸化亜鉛粒子は、錫ドープ酸化インジウム粒子又はアンチモンドープ酸化錫粒子に比べて、価格が低い。しかしながら、上記酸化亜鉛粒子は、合わせガラス用中間膜中における分散性が低いという問題がある。しかしながら、上記酸化亜鉛粒子と上記分散剤Aとの併用により、上記酸化亜鉛粒子の分散性を高めることができる。
【0044】
上記第1の遮熱粒子の遮熱性をより一層高める観点からは、上記第1の遮熱粒子は、3価の金属元素を含むことが好ましい。該3価の金属元素は特に限定されない。上記第1の遮熱粒子の遮熱性をより一層高める観点からは、3価の金属元素は、ガリウム又はアルミニウムであることが好ましい。上記第1の遮熱粒子は、ガリウム又はアルミニウムを含むことが好ましい。
【0045】
上記3価の金属元素を含む第1の遮熱粒子の製造方法は、従来公知の製造方法を用いることができ特に限定されない。この製造方法としては、例えば、共沈法、焼結法、アーク式放電気相法及び噴霧熱分解法等が挙げられる。
【0046】
上記共沈法により、3価の金属元素を含む酸化亜鉛粒子を製造する方法としては、例えば、水溶性の亜鉛化合物と、3価の金属元素を含む水溶性の塩とを含有する水溶液を、アルカリ又は炭酸アルカリで中和することで共沈殿物を生成させ、その後還元雰囲気にて焼成する方法が挙げられる。上記水溶性の亜鉛化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛及び酢酸亜鉛等が挙げられる。
【0047】
上記アーク式放電気相法により、3価の金属元素を含む酸化亜鉛粒子を製造する方法としては、例えば、亜鉛蒸気と、3価の金属元素の蒸気とを酸化性ガスで反応させる方法が挙げられる。
【0048】
上記噴霧熱分解法により、3価の金属元素を含む酸化亜鉛粒子を製造する方法としては、例えば、水溶性亜鉛化合物と、3価の金属元素を含む水溶性の塩とを含む水溶液を、火炎、高温燃焼ガス又はプラズマ中にノズルを用いて微細に噴霧し、次に塩を熱分解するか、又は金属イオンを酸化性ガスにより酸化させる方法が挙げられる。
【0049】
上記3価の金属元素を含む水溶性の塩は特に限定されず、3価の金属元素の無機塩であってもよく、3価の金属元素の有機塩であってもよい。このような塩としては、例えば、3価の金属元素のハロゲン化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩又はホウ酸塩などの無機塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、グリコール酸塩又はクエン酸塩等の有機酸塩、並びにこれらの複塩等が挙げられる。
【0050】
上記3価の金属元素を含む第1の遮熱粒子を、還元性ガス雰囲気で焼成することにより、酸素欠損量を増加させることができる。酸素欠損量の増加により、第1の遮熱粒子の遮熱性をより一層高めることができる。ただし、酸素欠損量を過度に増加させると、時間の経過に伴って酸化反応が進行し、物性が変化することがある。このため、物性が変化しない程度に、酸素欠損量を増加させることが好ましい。
【0051】
上記第1の遮熱粒子の体積平均粒子径は特に限定されない。合わせガラス用中間膜の可視光透過率を充分に高める観点からは、上記第1の遮熱粒子の体積平均粒子径の好ましい下限は1nm、好ましい上限は50nm、より好ましい上限は40nm、更に好ましい上限は30nmである。
【0052】
上記第1の遮熱粒子は、光触媒活性により、合わせガラス用中間膜に用いられる熱可塑性樹脂及び他の有機物系添加剤の劣化を引き起こすことがある。また、上記酸化亜鉛粒子が酸、アルカリ又は他の薬品と反応し、上記酸化亜鉛粒子の状態が変化することがある。さらに、還元処理により酸化亜鉛粒子の遮熱性が高められている場合、時間の経過と共に酸化反応が進行し、酸化亜鉛粒子の性質が変化することがある。これらの問題を生じ難くするために、上記第1の遮熱粒子の表面には、ケイ素化合物が付着されている。
【0053】
上記付着の態様は特に限定されない。上記付着の態様は、第1の遮熱粒子の表面全体を被覆する態様であってもよく、縞状等に被覆されて部分的に被覆されていない部分がある態様であってもよい。また、上記第1の遮熱粒子の表面に上記ケイ素化合物が吸着、担持又は堆積されていてもよい。上記第1の遮熱粒子の表面の少なくとも一部の領域に、上記ケイ素化合物が付着していればよい。
【0054】
上記第1の遮熱粒子の表面に付着している上記ケイ素化合物の層の厚みは特に限定されない。上記ケイ素化合物の付着による効果を充分に得る観点からは、上記ケイ素化合物の層の厚みの好ましい下限は1nm、好ましい上限は50nm、より好ましい上限は20nm、更に好ましい上限は10nmである。上記ケイ素化合物の層の厚みが1nm以上であると、ケイ素化合物の付着による効果を充分に得ることができる。上記ケイ素化合物の層の厚みが50nm以下であると、合わせガラス用中間膜の可視光透過率が低くなる傾向がある。
【0055】
上記第1の遮熱粒子の表面に上記ケイ素化合物を均質に付着させる観点からは、上記ケイ素化合物は、酸化ケイ素であることが好ましい。上記ケイ素化合物を表面に付着させる試薬としては、例えば、有機ケイ素及び塩化ケイ素等が挙げられる。上記有機ケイ素としては、トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
上記ケイ素化合物を付着させても、付着前の粒子の粒子径よりもさほど大きくなることがなく、粒子径が小さい第1の遮熱粒子を得ることができる。
【0057】
本発明に係る分散液に含まれている上記第1の遮熱粒子の含有量は特に限定されない。上記分散液100重量%中、上記第1の遮熱粒子の含有量の好ましい下限は1重量%、より好ましい下限は5重量%、好ましい上限は80重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0058】
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている上記第1の遮熱粒子の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記第1の遮熱粒子の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.03重量部、好ましい上限は5重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0059】
上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記第1の遮熱粒子の含有量がそれぞれ上記好ましい下限を満たすと、合わせガラス用中間膜の遮熱性をより一層高めることができる。上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記第1の遮熱粒子の含有量がそれぞれ上記好ましい上限を満たすと、合わせガラス用中間膜の可視光透過率をより一層高めることができる。
【0060】
[分散剤]
本発明に係る分散液に含まれている上記分散剤Aは、一分子中にカルボキシル基とアミノ基とを有するものであれば特に限定されない。上記分散剤Aは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
本発明の主な特徴は、ケイ素化合物が表面に付着している上記第1の遮熱粒子とともに、一分子中にカルボキシル基とアミノ基とを有する上記分散剤Aを用いていることにある。上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aとの併用により、分散液における上記第1の遮熱粒子の分散性、及び合わせガラス用中間膜における上記第1の遮熱粒子の分散性を高めることができる。合わせガラス用中間膜における第1の遮熱粒子の分散性を高めることができるので、合わせガラス用中間膜の遮熱性を効果的に高めることができる。
【0062】
遮熱粒子の表面にケイ素化合物を付着させる際には、遮熱粒子の表面がケイ素化合物により完全に被覆されないことが多い。上記第1の遮熱粒子の表面には、一般に、ケイ素化合物が付着している領域と、ケイ素化合物が付着していない領域とが存在することが多い。上記カルボキシル基は、ケイ素化合物が付着していない領域と相互作用する傾向がある。例えば、上記第1の遮熱粒子が酸化亜鉛粒子の場合には、ケイ素化合物が付着していない領域に、カルボキシル基と結びつく水酸基が多く存在する。また、上記アミノ基は、ケイ素化合物が付着している領域と相互作用する傾向がある。例えば、ケイ素化合物が付着している領域に、アミノ基と結びつくシラノール基(Si−OH基)が多く存在する。このため、上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aとの相互作用が大きいため、上記第1の遮熱粒子の分散性を高めることができると考えられる。
【0063】
上記分散剤Aは、ポリエステル酸のアマイドアミン分散剤であることが好ましい。ポリエステル酸のアマイドアミン分散剤の使用により、分散液及び合わせガラス用中間膜における上記第1の遮熱粒子の分散性をより一層高めることができる。このため、合わせガラス用中間膜の遮熱性をより一層高めることができる。
【0064】
上記分散剤Aは、複数のカルボキシル基を有することが好ましい。また、上記分散剤Aは、複数のアミノ基を有することが好ましい。この場合には、上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aとの相互作用がより一層大きくなるため、上記第1の遮熱粒子の分散性をより一層高めることができる。
【0065】
上記分散剤Aの重量平均分子量は、1,000〜50,000の範囲内であることが好ましい。上記分散剤Aの重量平均分子量のより好ましい下限は2000、より好ましい上限は20,000である。上記分散剤Aの重量平均分子量が上記好ましい範囲内である場合には、上記第1の遮熱粒子の表面の多くの領域に、上記分散剤Aが近接又は橋かけした構造をとりやすくなる。このため、上記第1の遮熱粒子の分散性をより一層高めることができる。上記重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0066】
本発明に係る分散液に含まれている上記分散剤Aの含有量は特に限定されない。上記第1の遮熱粒子100重量部に対して、上記分散剤Aの含有量の好ましい下限は1重量部、より好ましい下限は3重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0067】
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている上記分散剤Aの含有量は特に限定されない。上記第1の遮熱粒子100重量部に対して、上記分散剤Aの含有量の好ましい下限は1重量部、より好ましい下限は3重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0068】
上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記分散剤Aの含有量がそれぞれ上記好ましい下限を満たすと、上記第1の遮熱粒子の分散性をより一層高めることができる。上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記分散剤Aの含有量がそれぞれ上記好ましい上限を満たす合わせガラス用中間膜は、透明性により一層優れている。
【0069】
[可塑剤]
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜に含まれている上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等などの有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0071】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0072】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0073】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0074】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0075】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも一種であることが好ましい。
【0076】
本発明に係る分散液における上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記分散液100重量%中、上記可塑剤の含有量の好ましい下限は15重量%、より好ましい下限は50重量%、好ましい上限は97重量%、より好ましい上限は90重量%である。
【0077】
本発明に係る合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量の好ましい下限は25重量部、より好ましい下限は30重量部、好ましい上限は70重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0078】
上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量がそれぞれ上記好ましい下限を満たすと、合わせガラス用中間膜における上記分散液の分散性をより一層高めることができ、更に合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量がそれぞれ上記好ましい上限を満たすと、中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0079】
[他の成分]
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜は、上記第1の遮熱粒子とは異なる第2の遮熱粒子、及び赤外線吸収性有機色素の内の少なくとも一種を含有することが好ましい。上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の内の一方のみが用いられてもよく、双方が用いられてもよい。上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記第2の遮熱粒子としては、ケイ素化合物が表面に付着していない遮熱粒子が挙げられる。
【0080】
上記第2の遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子及び珪素ドープ酸化亜鉛粒子等が挙げられる。
【0081】
中間膜の遮熱性をより一層高める観点からは、上記第2の遮熱粒子は、錫ドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子及びアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。中間膜の遮熱性をより一層高めることができるので、上記第2の遮熱粒子は、錫ドープ酸化インジウム粒子であることが好ましい。
【0082】
上記赤外線吸収性有機色素としては、特に限定されず、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノン化合物、アゾ化合物、ペンタジエン合物、アゾメチン化合物、スクアリリウム化合物、有機金属錯体及びシアニン化合物等が挙げられる。なかでも、赤外線吸収性が高いため、上記赤外線吸収性有機色素は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物及びジイモニウム化合物からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましく、イモニウム化合物及びジイモニウム化合物の内の少なくとも一種であることがより好ましい。
【0083】
本発明に係る分散液が、上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の内の少なくとも一種を含有する場合には、上記分散液100重量%中、上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の合計の含有量の好ましい下限は0.0001重量%、より好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は40重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0084】
本発明に係る合わせガラス用中間膜が、上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の内の少なくとも一種を含有する場合には、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の合計の含有量の好ましい下限は0.0001重量部、より好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は5重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0085】
上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の合計の含有量がそれぞれ上記好ましい下限を満たすと、合わせガラス用中間膜の遮熱性をより一層高めることができる。上記分散液及び上記合わせガラス用中間膜における上記第2の遮熱粒子及び上記赤外線吸収性有機色素の合計の含有量がそれぞれ上記好ましい上限を満たすと、合わせガラス用中間膜の可視光透過率をより一層高めることができる。
【0086】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜は、必要に応じて分散助剤を含有していてもよい。該分散助剤としては、アルコール等が挙げられる。該アルコールとしては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及び高級アルコール等が挙げられる。
【0087】
本発明に係る分散液及び合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、蛍光増白剤又は青色顔料等の添加剤を含有していてもよい。
【0088】
(分散液)
本発明に係る分散液を製造する方法は特に限定されない。例えば、上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aと上記可塑剤とを混合することにより、分散液を得ることができる。上記混合の際に、サンドミル、ボールミル、ホモジナイザー、アトライター、高速回転撹拌装置及び超音波分散装置等を用いることができる。
【0089】
(合わせガラス用中間膜)
本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aと上記可塑剤と必要に応じて配合する添加剤とを、上記熱可塑性樹脂に添加して混練し、成形する方法、並びに上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aと上記可塑剤とを含有する分散液を用意し、該分散液を上記熱可塑性樹脂に添加して混練し、成形する方法等が挙げられる。なかでも、上記合わせガラス用中間膜における上記第1の遮熱粒子の分散性をより一層高める観点からは、上記第1の遮熱粒子と上記分散剤Aと上記可塑剤とを含有する分散液を用意し、該分散液を上記熱可塑性樹脂に添加して混練し、成形する方法が好ましい。
【0090】
上記混練の方法としては、特に限定されず、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー及びカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。上記成形の方法としては、特に限定されず、例えば、押し出し法、カレンダー法及びプレス法等が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。
【0091】
合わせガラス用中間膜の耐貫通性をより一層高める観点からは、上記合わせガラス用中間膜の厚みの好ましい下限は0.1mm、より好ましい下限は0.25mm、好ましい上限は3mm、より好ましい上限は1.5mmである。上記合わせガラス用中間膜の厚みが上記好ましい下限及び上記好ましい上限をそれぞれ満たすと、合わせガラスの耐貫通性及び合わせガラス用中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0092】
(合わせガラス)
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を断面図で示す。
【0093】
図1に示す合わせガラス1は、中間膜2と、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4とを備える。中間膜2は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜2は、合わせガラス用中間膜である。中間膜2は、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の間に挟み込まれている。従って、合わせガラス1は、第1の合わせガラス構成部材3と、中間膜2と、第2の合わせガラス構成部材4とがこの順で積層されて構成されている。
【0094】
中間膜2は、上記熱可塑性樹脂と、上記第1の遮熱粒子と、上記分散剤Aと、上記可塑剤とを含有する。
【0095】
第1,第2の合わせガラス構成部材3,4としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラス1には、2枚のガラス板の間に中間膜又は多層中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜又は多層中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラス1は、ガラス板含有積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0096】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0097】
第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、合わせガラス構成部材3,4がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。合わせガラス構成部材3,4がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0098】
合わせガラス1の製造方法は特に限定されない。例えば、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の間に、中間膜2を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4と中間膜2との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラス1を得ることができる。
【0099】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0100】
(実施例1)
(1)分散液の作製
3価の金属元素としてガリウムを含有し、かつ表面にシリカが付着している酸化亜鉛粒子A(体積平均粒子径28nm)を用意した。この酸化亜鉛粒子AのZn原子数に対するシリカのSi原子数の割合は0.7%であった。
【0101】
上記酸化亜鉛粒子A30重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)264重量部と、分散剤としてポリエステル酸のアマイドアミン系高分子分散剤(楠本化成社製「ディスパロンDA703−50」、有効成分50重量%、一分子中に複数のカルボキシル基と複数のアミノ基とを有する、重量平均分子量9700)から分取された有効成分6重量部と、ジルコニア製ビーズ1125重量部とを混合し、AIMEX社製のバッチ式ビーズミルで4時間分散させることにより、分散液を得た。
【0102】
(2)合わせガラス用中間膜の作製
熱可塑性樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、エスレックBH8)100重量部に、上記分散液中の酸化亜鉛粒子Aの含有量が0.7重量部となるように上記分散液を添加し、可塑剤として上記3GOとを添加し、混合することにより、熱可塑性樹脂組成物を調製した。可塑剤として上記3GOは、熱可塑性樹脂100重量部に対して可塑剤の合計の含有量が40重量部となるように添加した。
【0103】
得られた熱可塑性樹脂組成物を二軸異方押出機を用いて製膜することにより、厚み760μmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0104】
(3)合わせガラスの作製
得られた合わせガラス用中間膜(5cm×5cm)を、2枚のフロートガラス(5cm×5cm)の間に挟んで、ゴムバックに入れて減圧吸引し、フロートガラスと合わせガラス用中間膜との間に残留する空気を脱気した。その後、90℃で予備接着して積層体を得た。次に、積層体をオートクレーブに入れ、140℃及び1.5MPaの圧力で圧着し、合わせガラスを得た。
【0105】
(実施例2)
分散液の作製の際に、上記酸化亜鉛粒子Aの添加量を60重量部、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)の添加量を228重量部、ポリエステル酸のアマイドアミン系高分子分散剤(楠本化成社製「ディスパロンDA703−50」、有効成分50重量%、一分子中に複数のカルボキシル基と複数のアミノ基とを有する、重量平均分子量9700)から分取された有効成分の添加量を12重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0106】
(実施例3)
分散液の作製の際に、上記酸化亜鉛粒子Aの添加量を120重量部、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)の添加量を156重量部、ポリエステル酸のアマイドアミン系高分子分散剤(楠本化成社製「ディスパロンDA703−50」、有効成分50重量%、一分子中に複数のカルボキシル基と複数のアミノ基とを有する、重量平均分子量9700)から分取された有効成分の添加量を24重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0107】
(実施例4)
分散液の作製の際に、分散剤の種類を、ポリエステル酸のアマイドアミン系分散剤(楠本化成社製「ディスパロンDA7301」、有効成分75重量%、一分子中に複数のカルボキシル基と複数のアミノ基とを有する、重量平均分子量9500)から分取された有効成分6重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0108】
(実施例5)
分散液の作製の際に、上記酸化亜鉛粒子Aの添加量を60重量部、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)の添加量を228重量部、ポリエステル酸のアマイドアミン系高分子分散剤(楠本化成社製「ディスパロンDA7301」、有効成分75重量%、一分子中に複数のカルボキシル基と複数のアミノ基とを有する、重量平均分子量9500)から分取された有効成分の添加量を12重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0109】
(実施例6)
分散液の作製の際に、上記酸化亜鉛粒子Aの添加量を120重量部、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)の添加量を156重量部、ポリエステル酸のアマイドアミン系高分子分散剤(楠本化成社製「ディスパロンDA7301」、有効成分75重量%、一分子中に複数のカルボキシル基と複数のアミノ基とを有する、重量平均分子量9500)から分取された有効成分の添加量を24重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0110】
(実施例7)
分散液の作製の際、及び合わせガラス用中間膜の作製の際に、可塑剤の種類を、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0111】
(実施例8)
分散液の作製の際に、上記第2の遮熱粒子としてITO粉末(三菱マテリアル社製、錫ドープ酸化インジウム粒子)8.6重量部をさらに添加したことと、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)の添加量を255.4重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0112】
(実施例9)
分散液の作製の際に、上記赤外線吸収性有機色素としてフタロシアニン系色素(フジフイルム社製、IR−SORB−203)0.14重量部をさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0113】
(比較例1)
分散液の作製の際に、分散剤の種類を、ポリアクリル酸(ビックケミー社製「BYK355」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0114】
(比較例2)
分散液の作製の際に、分散剤の種類を、ポリカルボン酸(日油社製「マリアリムAKM0531」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0115】
(比較例3)
分散液の作製の際に、分散剤の種類を、ポリアミン(第一工業製薬社製「ディスコールN−509」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0116】
(比較例4)
分散液の作製の際に、分散剤の種類を、ポリオキシエチレンアルキルエーテルラウリルアミン(日油社製「ナイミーンL202」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0117】
(参考例1)
第1の遮熱粒子として、3価の金属元素としてガリウムを含有し、かつケイ素化合物が表面に付着していない酸化亜鉛粒子C(体積平均粒子径21nm)を用意した。
【0118】
分散液の作製の際に、上記酸化亜鉛粒子Aを上記酸化亜鉛粒子Cに変更したこと以外は実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0119】
(評価)
(1)分散液の評価
得られた分散液に、用いた可塑剤を添加することにより、分散液中の酸化亜鉛粒子の含有量を0.7重量%に調整し、測定サンプルを用意した。光路長1mmの石英セル及び分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、可視光透過率(Tv)と、日射透過率(Ts)とを求めた。
【0120】
上記可視光透過率(Tv)は、JIS R3106に準拠して測定された、波長380〜780nmの光線に対する透過率を示す。上記日射透過率(Ts)は、JIS R3106に準拠して測定された、波長300〜2500nmの光線に対する透過率を示す。
【0121】
(2)合わせガラスの評価
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、得られた合わせガラスの上記可視光透過率(Tv)、上記日射透過率(Ts)を測定した。
【0122】
結果を下記の表1に示す。
【0123】
【表1】

【符号の説明】
【0124】
1…合わせガラス
2…中間膜
3…第1の合わせガラス構成部材
4…第2の合わせガラス構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有し、
前記分散剤が一分子中に、カルボキシル基とアミノ基とを有する、分散液。
【請求項2】
前記分散剤が、ポリエステル酸のアマイドアミン分散剤である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記遮熱粒子が酸化亜鉛粒子である、請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記遮熱粒子が、ガリウム又はアルミニウムを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項5】
前記ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子とは異なる第2の遮熱粒子、及び赤外線吸収性有機色素の内の少なくとも一種をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項6】
前記第2の遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子及びアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項5に記載の分散液。
【請求項7】
熱可塑性樹脂と、ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有し、
前記分散剤が一分子中に、カルボキシル基とアミノ基とを有する、合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記分散剤が、ポリエステル酸のアマイドアミン分散剤である、請求項7に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記遮熱粒子が酸化亜鉛粒子である、請求項7又は8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記遮熱粒子が、ガリウム又はアルミニウムを含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記ケイ素化合物が表面に付着している遮熱粒子とは異なる第2の遮熱粒子、及び赤外線吸収性有機色素の内の少なくとも一種をさらに含有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記第2の遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子及びアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項11に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項7〜12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−62230(P2012−62230A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208840(P2010−208840)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】