説明

分散組成物及び分散組成物の製造方法

【課題】難水溶性ポリフェノール化合物を含有する分散安定性に優れた分散組成物を提供する。
【解決手段】難水溶性ポリフェノール化合物と、ショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤と、水溶性高分子とを含むと共に、ポリグリセリン脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1以下であって、前記難水溶性ポリフェノールを含む分散粒子の粒子径が200nm以下である分散組成物と、前記難水溶性ポリフェノールを含む油相成分を該難水溶性ポリフェノールの良溶媒に溶解して油相を調製する油相調製工程と、得られた油相と難水溶性ポリフェノール化合物の貧溶媒相とを混合して、難水溶性ポリフェノール化合物を含有すると共に体積平均粒子径が200nm以下の分散粒子を含む前記分散組成物を得る混合工程とを含む当該分散組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散組成物及び分散組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カテキンや植物性色素のようなポリフェノール化合物の機能性に着目して、これらを含有する組成物が多く開発されている。ポリフェノール化合物含有組成物には、予めポリフェノール化合物を含む各成分を混合して得られるものの他、ポリフェノール化合物以外を予め調製した後に、ポリフェノール化合物を添加して得られるものもある。
【0003】
例えば特許文献1には、金属キレート剤、紫外線防御剤及び、活性酸素除去剤等を含む皮膚外用剤が開示されており、活性酸素除去剤としてカテキン類が例示されている。
また特許文献2には、多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中で微細化し、この油脂を、多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化することにより得られたポリフェノール製剤が開示されている。このポリフェノール製剤は、ポリフェノール類微細粒子の表面に均質な油脂被膜剤層が形成されたマイクロカプセル構造を有すると共に、優れた水系分散性を発揮すると記載されている。
【0004】
また、脂溶性物質を乳化物の形で、ポリフェノール化合物と共に使用する場合、乳化物とポリフェノール化合物が凝集を起こし易いという問題がある。これを解消するために、脂溶性物質の乳化安定性を更に向上させることが行われている。
例えば、特許文献3は乳化安定性に優れたエマルション組成物として、脂溶性物質と、リン脂質と、ショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤とを含み、ポリグリセリン脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1以下であるエマルション組成物を開示している。このエマルション組成物は、エマルション組成物としてポリフェノール化合物と接触させても凝集等を発生しないと記載されている。
【0005】
一方、特許文献4には、水溶性高分子にポリフェノール類を含有する外用ゲル基剤が開示されている。この外用ゲル基剤では、ゲル組成物のゲル強度を高めるために、水溶性高分子にポリフェノール類を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−136123号公報
【特許文献2】特開2001−316259号公報
【特許文献3】特開2008−280257号公報
【特許文献4】特開2005−320264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリフェノール類の中でも難水溶性ポリフェノール化合物は、非常に乳化・分散しにくく、分散後の安定性にも欠けることが知られている。このため、可溶性のポリフェノール化合物と同様の処方では、難水溶性ポリフェノール化合物を安定して分散させることが極めて困難であった。
本発明は、難水溶性ポリフェノール化合物を含有する分散安定性に優れた分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
[1] 難水溶性ポリフェノール化合物と、ショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤と、水溶性高分子とを含むと共に、ポリグリセリン脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1倍量以下であって、前記難水溶性ポリフェノールを含む分散粒子の粒子径が200nm以下である分散組成物。
[2] 前記難水溶性ポリフェノール化合物が、レスベラトロール、クルクミン、ルチン、エラグ酸及びケルセチンからなる群より選択された少なくとも1つである[1]に記載の分散組成物。
[3] 前記水溶性高分子が、分子量1000〜600,000である[1]又は[2]記載の分散組成物。
[4] 前記水溶性高分子が、タンパク質及び多糖類からなる群より選択された少なくとも1つである[1]〜[3]のいずれか1に記載の分散組成物。
[5] [1]〜[4]のいずれか1に記載の分散組成物を含む化粧品組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれか1に記載の分散組成物を含む食品組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれか1に記載の分散組成物を含む医薬品組成物。
[8] [1]〜[4]のいずれか1に記載の分散組成物の製造方法であって、前記難水溶性ポリフェノールを含む油相成分を該難水溶性ポリフェノールの良溶媒に溶解して油相を調製する油相調製工程と、得られた油相と難水溶性ポリフェノール化合物の貧溶媒相とを混合して、難水溶性ポリフェノール化合物を含有すると共に体積平均粒子径が200nm以下の分散粒子を含む前記分散組成物を得る混合工程とを含む分散組成物の製造方法。
[9] 前記難水溶性ポリフェノールの良溶媒が、水可溶性有機溶媒又はアルカリ水溶液である[8]に記載の分散組成物の製造方法。
[10] 前記油相と前記貧溶媒相との混合が、1μm〜1mmであるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合するものである[8]又は[9]に記載の分散組成物の製造方法。
[11] 前記混合が、対向衝突により行なわれる[8]〜[10]のいずれかに記載の分散組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、難水溶性ポリフェノール化合物を含有する分散安定性に優れた分散組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】マイクロミキサーの一例としてのマイクロデバイスの分解斜視図である。
【図2】T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概略断面図である。
【図3】T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の分散組成物は、難水溶性ポリフェノール化合物と、ショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤と、水溶性高分子とを含むと共に、ポリグリセリン脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1倍量以下であって、前記難水溶性ポリフェノールを含む分散粒子の粒子径が200nm以下である分散組成物である。
本発明の分散組成物では、ショ糖脂肪酸エステルを含むと共にショ糖脂肪酸エステルに対するポリグリセリン脂肪酸エステルの配合比を極端に少なくした乳化剤と、水溶性高分子とを含むことにより、難水溶性ポリフェノール化合物を微細な分散粒子として安定性よく分散させることができる。
本発明の分散組成物は、水相に、難水溶性ポリフェノール化合物を含有する分散粒子を分散させて油相として構成されたO/W型乳化物の形態を構成する。このとき、難水溶性ポリフェノール化合物が分散粒子の一部を構成していればよい。本発明における分散粒子の平均粒径とは、水相に分散する油滴様の分散粒子全体の平均粒径を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0012】
[難水溶性ポリフェノール化合物]
本発明における難水溶性ポリフェノール化合物とは、25℃において純水に対する溶解性が、0.1質量%以下のポリフェノール化合物を意味し、例えば0.001質量%以上0.1質量%以下のポリフェノール化合物が含まれる。
ポリフェノール化合物とは、同一分子内にフェノール性ヒドロキシ基2つ以上をもつ植物由来の化合物であり、例えば、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などが挙げられるが、本発明の難水溶性ポリフェノール化合物には、これらのうち、上記の水に対する溶解性を示すものが該当する。
【0013】
このような難水溶性ポリフェノール化合物の例としては、レスベラトロール、クルクミン、ルチン、エラグ酸、ケルセチン又はこれらの組み合わせが挙げられる。中でも、後述する水溶性有機溶媒に対しても溶解性を示すものであることが更に好ましい。この場合の水溶性有機溶媒に対する溶解性を示すとは、25℃における水溶性有機溶媒に対して0.1質量%以上、好ましくは1.0質量%以上可溶化することを意味する。水溶性有機溶媒に対する溶解性の観点から、好ましい難水溶性ポリフェノール化合物の例としては、レスベラトロール、クルクミン、ルチン、ケルセチン又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
難水溶性ポリフェノール化合物は、化合物として本発明に分散組成物に含まれていてもよく、以下のような天然物由来の抽出物という状態で利用してもよい。
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。
【0015】
本発明の分散組成物における難水溶性ポリフェノール化合物の含有量は、特に制限はないが、ポリフェノール化合物としての機能性発揮の観点から、分散組成物の全固形分の質量に対して15質量%〜50質量%であることが好ましく、20質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
【0016】
[水溶性高分子]
本発明の分散組成物における水溶性高分子は、少なくとも0.001質量%程度以上、水(25℃)に溶解する高分子であれば何を用いてもよい。本発明において水溶性高分子は、後述するショ糖脂肪酸エステルを含む特定の乳化剤と共に分散組成物に存在することによって、難水溶性ポリフェノール化合物に対する分散性を安定化させることができる。水溶性高分子の分子量としては、重量平均分子量として1000〜600,000であることが好ましく、分散安定性の観点から1000〜100,000であることが更に好ましい。
【0017】
本発明に用いうる水溶性高分子としては、ペクチン、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の多糖類;カゼイン、アルブミン、メチル化コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体等の合成高分子;ヒドロキシエチルセルロース・メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;など、又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。これらは、合成されたものであっても、天然物であってもよい。中でも、分散粒子の微細性及び分散組成物の経時安定性の観点から、多糖類及びタンパク質からなる群より選択された少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
上記タンパク質の中でも、ゼラチンなどのコラーゲン誘導体が好ましく、分散粒子の安定化及び工程適性の点で、コラーゲン誘導体としては、重量平均分子量200,000以下のものが好ましく、より好ましくは、1000〜100,000の範囲である。
上記多糖類としては、具体的には、カッパーカラギーナン、デキストラン、ヒアルロン酸類などが好ましく挙げられる。
カッパーカラギーナン、デキストランとしては、重量平均分子量60万以下のものが好ましく、より好ましい分子量としては、1万〜30万の範囲である。
ヒアルロン酸類としては、重量平均分子量が30万以下のものが好ましく用いられ、より好ましい分子量は5000〜20万の範囲である。なお、これらの高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した値を用いている。
本発明の水溶性高分子としては、分散粒子の微細化及び分散安定性の観点から、なかでもコラーゲン誘導体が特に好ましい。
【0019】
本発明の分散組成物における水溶性高分子の含有量は、0.001質量%〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.01質量%〜1質量%の範囲であることがより好ましい。
また、水溶性高分子は、難水溶性ポリフェノール化合物の質量に対して0.1倍量以上10倍量以下の範囲であることが分散安定性の観点から好ましく、0.5倍量以上5.0倍量以下の範囲であることが更に好ましい。
【0020】
[乳化剤]
本発明における乳化剤は、乳化力の観点から、HLBが10以上であることが好ましく、12以上が更に好ましい。HLBが低すぎると、乳化力が不十分となることがある。
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。川上式を次に示す。
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることができる。
【0021】
本発明の分散組成物は、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを含有する。
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が12〜20のものが好ましく、14〜16がより好ましく、14が最も好ましい。脂肪酸の炭素数が12以上とすることによって、後述するようにグリセリン脂肪酸エステルを含まないエマルション組成物においても充分な乳化安定性を確保しやすく、一方、脂肪酸の炭素数を18以下とすることにより、難水溶性ポリフェノール化合物の分散安定性を効果的に向上できることから、それぞれ好ましい。
【0022】
本発明におけるショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S-1170、S-1170F、S-1570、S-1670、P-1570、P-1670、M-1695、O-1570、OWA-1570、L-1695、LWA-1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、コスメライクS-110、S-160、S-190、P-160、M-160、L-160、L-150A、L-160A、O-150等が挙げられる。
【0023】
本発明における上記ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、分散組成物の全固形分の質量に対して、20〜85質量%が好ましく、25〜75質量%が更に好ましい。20質量%以上とすることによって、分散安定性を良好なものにすることができると共に微細な粒子径の分散組成物を効果的に得らえる。また、85質量%以下とすることによって、分散組成物の泡立ちを適切に抑制することができる。
【0024】
本発明の分散組成物においてショ糖脂肪酸エステルは、難水溶性ポリフェノール化合物の質量に対して0.1倍量以上10倍量以下が好ましく、更には0.5倍量以上5.0倍量以下がより好ましい。
【0025】
また、本発明の分散組成物においては、他の乳化剤を併用することもできる。本発明の分散組成物における乳化剤の含有量は、一般に分散組成物の油性成分の全質量に対して10質量%〜90質量%、分散安定性の観点から好ましくは25質量%〜50質量%とし得る。他の乳化剤を併用する場合には、ショ糖脂肪酸エステルとの合計量がこの範囲となればよいが、その場合には、他の乳化剤の含有比は、本発明による効果を確実に得るために、乳化剤合計量全体に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
併用することのできる乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば特に限定は無いが、低刺激性であること、また、環境への影響が少ないこと等から、非イオン性乳化剤が好ましい。非イオン性乳化剤の例としては、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0027】
本発明の分散組成物では、上記乳化剤のうち、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステル(これらを総称して本明細書では、「グリセリン脂肪酸エステル」と称する)が、ショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1倍量以下である。このようにグリセリン脂肪酸エステルの含有量を0.1倍量以下とすることによって、難水溶性ポリフェノール化合物を含有する分散組成物の分散安定性が良好なものになり得る。
ショ糖脂肪酸エステルに対するグリセリン脂肪酸エステルの質量比は、0.1倍量以下であればよいが、ポリフェノール化合物の凝集をより確実に防止できる観点から、好ましくは0.05倍量以下であり、0.001倍量以下であることがより好ましく、0、即ちグリセリン脂肪酸エステルを含有しないことが最も好ましい。
【0028】
また本発明において併用可能なソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0029】
ソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)社製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0030】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0031】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)社製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0032】
更に、本発明における乳化剤として、レシチンなどのリン脂質を含有してもよい。リン脂質を含有する場合、リン脂質は分散安定性の観点から、前記油相に含まれる油性成分の全質量に対して0.01倍量以上0.3倍量以下で含むことができる。
本発明に用いうるリン脂質は、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、レシチンとも称されるものである。リン脂質は、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0033】
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油性成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。
【0034】
リン脂質としては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
このようなリン脂質の具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。
このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0035】
[他の油性成分]
本発明の分散組成物を、食品用途、化粧品用途、医薬品用途に用いる場合は、各用途に応じた食品用機能性材料、化粧品用機能性材料や医薬品用機能性材料を他の油性成分として含んでいてもよい。
ここで、本発明における各用途用の「機能性成分」とは、生体へ適用した場合に、食品、化粧品又は医薬品の一部として生体へ適用された場合に、適用された生体において所定の生理学的効果の誘導が期待され得る油性成分を意味する。なお、前述した難水溶性ポリフェノール化合物は、これらの機能性材料に該当してもよい。
本発明における油性成分は、化粧品、医薬品、食品の分野において一般に油性成分として認識されている成分を意味する。これらの油性成分は、本発明の分散組成物において、分散粒子の一部を形成しうる。
【0036】
本発明で使用可能な他の油性成分としては、セラミド、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンなどのセラミド類;ステノン;β−シトステロール、スチグマステロール、ウルソル酸などのステロール類;カロテン、アスタキサンチンなどのカロテノイド類;ココナッツ油、ユビキノン類などの油脂類;トコフェノール、トコトリエノール、レチノイド類などの脂溶性ビタミン類、その他、目的とする用途に使用することが公知の各種化合物を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0037】
本発明の分散組成物において、このような他の油性成分を用いる場合の含有量としては、例えば、医薬品、化粧料への応用を考慮すれば、分散粒子径・乳化安定性の観点から、好ましくは分散物の全質量の0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.2質量%〜25質量%、更に好ましくは0.5質量%〜10質量%である。
油性成分の含有量を前記0.1質量%以上とすると、有効成分の効能を充分に発揮できることから、分散組成物を、医薬品、化粧品へ応用し易くなる。一方、50質量%以下であると、分散粒子径の増大や乳化安定性の悪化を抑制し、安定な組成物が得られる。
【0038】
多価アルコール
本発明の分散組成物は、更に多価アルコールを含有してもよい。例えば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、又は、多糖類、例えば、還元水あめ、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、グルコース、ガラクトース、ソルビトール、マルトトリオース、トレハロースなどを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0039】
多価アルコールの分散組成物全質量に対する含有量は、分散安定性及び保存安定性、分散物及び組成物の粘度の観点から、分散組成物全質量に対して5〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
多価アルコールの含有量が5質量%以上であると、油性成分の種類や含有量等によっても、充分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、分散組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0040】
[他の添加剤]
本発明の分散組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、本発明の分散組成物の用途に応じて、例えば、種々の薬効成分、防腐剤、着色剤など、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
例えば皮膚外用剤などの外用組成物に使用される場合には、その他の成分として、例えば、グリシンベタイン・キシリトール・トレハロース・尿素・中性アミノ酸・塩基性アミノ酸等の保湿剤、アラントイン等の薬効剤、セルロースパウダー・ナイロンパウダー・架橋型シリコーン末・架橋型メチルポリシロキサン・多孔質セルロースパウダー・多孔質ナイロンパウダー等の有機粉体、無水シリカ・酸化亜鉛・酸化チタン等の無機粉体、メントール・カンファー等の清涼剤などの他、植物エキス、pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素等が挙げられる。
【0041】
本発明の分散組成物のpHは6以上8以下であり、好ましくはpH6.5以上7.5以下である。分散組成物のpHはこの範囲内にすることにより、良好な分散安定性及び保存安定性を示す分散組成物となる。分散組成物のpHをこの範囲に調整するために、各種pH調整剤を用いてもよい。
pH調整剤は、分散組成物のpHを所定の範囲内となるように油相又は水相を調製する際に添加・配合してもよく、得られた分散組成物に対して直接添加してもよい。使用可能なpH調整剤としては、塩酸、リン酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ等、この分野で通常用いられる各種無機塩類や、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等を用いることができる。
【0042】
[水溶性有機溶媒]
本発明の分散組成物は、後述する製造工程で使用された水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。この水溶性有機溶媒は、本明細書における「油性成分」には包含されない。
本発明において水溶性有機溶媒は、後述する分散組成物の製造方法で、油相成分を混合して油相を調製するために好ましく用いられ、水相との混合後には除去されることが好ましい。
本発明に用いられる水溶性有機溶媒とは、水に対する25℃での溶解度が10質量%以上の有機溶媒を指す。水に対する溶解度はできあがった分散物の安定性の観点から30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよく、複数の水溶性有機溶媒の混合溶媒でもよい。また、水との混合物として用いてもよい。水との混合物を用いる場合には、上記水溶性有機溶媒は、少なくとも50容量%以上含まれていることが好ましく、70容量%以上であることがより好ましい。
【0043】
このような水溶性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、エチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品への用途に限定した場合、エタノール、プロピレングリコール、又はアセトンが好ましく、エタノール、又はエタノールと水との混合液が特に好ましい。
【0044】
−粒径−
本発明の分散組成物における分散粒子は、その体積平均粒径が1nm以上200nm以下であり、1nm以上75nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がより好ましく、1nm以上30nm以下が最も好ましい。
分散粒子の粒径を、1nm以上200nm以下とすることにより、分散組成物の透明を確保することができ、本発明の分散組成物を、例えば、化粧品、医薬品、食品等の組成物に用いた場合、該組成物の透明性が確保されると共に、皮膚吸収性などの所望とされる効果を良好に発揮することができる。
【0045】
分散粒子の粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。
粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における分散粒子の粒径測定では、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を適用すること好ましい。
動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0046】
本発明における分散粒子の粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値であり、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
即ち、粒径の測定方法は、本発明の分散組成物から分取した試料に含まれる油性成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0047】
本発明の分散組成物において、分散粒子を、油相に他の油性成分とともに用いる場合には、油相として含有される分散粒子の粒子径は、分散組成物に含有される成分による因子以外に、後述する分散組成物の製造方法における攪拌条件(剪断力・温度・圧力)やマイクロミキサーの使用条件、油相と水相比率、などの要因によって目的とする200nm以下の微細化された油相粒子を得ることができる。
【0048】
<分散組成物の製造方法>
本発明の分散組成物は、前記難水溶性ポリフェノールを含む油相成分を該難水溶性ポリフェノールの良溶媒に溶解して油相を調製すること(油相調製工程)と、得られた油相と難水溶性ポリフェノール化合物の貧溶媒相とを混合して、難水溶性ポリフェノール化合物を含有すると共に体積平均粒子径が200nm以下の分散粒子を含む前記分散組成物を得ること(混合工程)を含む製造方法により得られる。
【0049】
油相を調製する際に用いられる難水溶性ポリフェノール化合物の良溶媒とは、難水溶性ポリフェノール化合物を25℃において少なくとも0.1質量%以上溶解可能な常温で液状の溶媒であればよい。このような難水溶性ポリフェノール化合物の良溶媒の例としては、水可溶性有機溶媒又はアルカリ水溶液を挙げることができる。
【0050】
難水溶性ポリフェノール化合物の良溶媒としての水溶性有機溶媒には、前述したものをそのまま例示することができる。
難水溶性ポリフェノール化合物の良溶媒としてのアルカリ水溶液は、難水溶性ポリフェノール化合物の種類又は配合量等によって適宜選択することができるが、例えばNaOHなどの強塩基でpH10〜12を示す水溶液に調整することができる。pH10以上の水溶液であれば、後述する貧溶媒としての酸性溶液との間で充分な溶解度差が生じて、難水溶性ポリフェノール化合物を良好に分散することができ、pH12以下であれば、分散組成物中の他の成分の物性や機能を大きく損なうことがない。
【0051】
本発明における貧溶媒は、難水溶性ポリフェノール化合物が貧溶、すなわち、難水溶性ポリフェノール化合物が溶解しにくい、または溶解しない溶媒をいう。
なお、本発明における「水相」とは、貧溶媒の種類にかかわらず「油相」に対する語として使用する。また本発明の分散組成物における水相には、難水溶性ポリフェノール化合物の貧溶媒、例えば水に溶解する他の成分が水相成分として含有されていてもよく、このような水溶性の水相成分に、特定の機能を示しうる機能性成分が含まれていてもよい。
【0052】
このような貧溶媒としては、例えば、水性媒体、例えば良溶媒を水溶性有機溶媒とした場合には水を好ましく挙げることができ、良溶媒をアルカリ水溶液とした場合には酸性水溶液を好ましく挙げることができる。
貧溶媒として用いられる酸性水溶液としては、難水溶性ポリフェノール化合物の種類又は配合量等、及び使用される良溶媒としてのアルカリ水溶液のpH等によって適宜選択することができ、強酸や弱酸などを用いることもできる。例えば、リン酸二水素ナトリウムのようなpH3〜7を示す水溶液を用いれば、混合後のpHが6〜8付近となり好ましい。pH7以下の水溶液であれば、良溶媒としてのアルカリ性溶液との間で充分な溶解度差が生じて、難水溶性ポリフェノール化合物を良好に分散することができ、pH3以上であれば、分散組成物中の他の成分の物性や機能を大きく損なうことがない。より好ましいアルカリ水溶液は、pH4〜5とし得る。
【0053】
水相成分と油相成分との混合は、100MPa以上の剪断力を付加する高圧乳化法や、水相成分に油相成分を直接注入するジェット注入法などを公知の方法を用いてもよいが、油相成分及び水相成分を各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路に通過させた後に、各相を組み合わせて混合するマイクロミキサーを用いた方法を用いることが、分散粒子の粒子径、分散安定性、保存安定性の観点からこのましい。
このとき、水相の粘度は30mPa・s以下であることが、分散粒子の微粒子化の観点から好ましい。
【0054】
本発明において油相成分と水相成分との混合時の温度は40℃以下であることが好ましい。この混合時の40℃以下の温度は、油相成分と水相成分とを混合する際に達成できればよいが、適用される混合(乳化)方法によって設定される領域を適宜変更することができる。マイクロミキサーを用いた方法では、少なくとも混合直前から、分散直後までの領域における温度を40℃以下とすればよく、例えば混合直前の水相成分と油性成分のそれぞれの温度と分散直後の場所での温度を測定したときの温度と基準として判定することができる。また分散組成物の経時安定性の観点から混合時の温度は35℃以下であることが好ましい。
【0055】
本発明の分散組成物の製造方法としては、例えば、a)難水溶性ポリフェノール化合物の貧溶媒(水等)を用いて水相を調製し、b)少なくとも難水溶性ポリフェノール化合物を含む油相成分を用いて油相を調製し、c)前記油相と、前記水相とを、マイクロミキサーを用いて、後に詳述する方法にて混合して分散を行い、体積平均粒径が1nm以上100nm以下の分散粒子を含む分散組成物(エマルション)を得るステップが挙げられる。
【0056】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を上記範囲とすることにより、有効成分を充分に含み、実用上充分な乳化安定性が得られるため好ましい。
【0057】
本発明の分散組成物を用いて粉末状態の組成物を得たい場合は、上記により得られたエマルション状態の分散組成物を噴霧乾燥等により乾燥させるステップを追加することで、粉末状態の組成物を得ることができる。
分散組成物の製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明の分散組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0058】
[マイクロミキサー]
本発明の分散組成物の製造に適用される製造方法においては、1nm以上100nmの分散粒子を安定に形成するため、油相と、水相とを、各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路に通過させた後、各相を組み合わせて混合する製造方法をとることが好ましい。
油相と水相との前記混合は、より微小な分散粒子を得るとの観点から、対向衝突による混合であることが好ましい。
対向衝突により混合させる最も適切な装置は、対向衝突型マイクロミキサーである。マイクロミキサーは、主に2つの異なる液を微小空間中で混合するもので、一方の液が機能性油性成分を含有する有機溶媒相であり、もう一方が水性溶液とする水相である。
マイクロ化学プロセスの一つである粒径が小さなエマルション調製にマイクロミキサーを適用した場合、比較的低エネルギーで発熱が少なく、通常の攪拌乳化分散方式や高圧ホモジナイザー乳化分散に比べて、粒径が揃っていて、保存安定性にも優れる良好な分散物を得易い。
【0059】
マイクロミキサーを用いて分散する方法の概要は、水相と油相とをそれぞれ微小空間に分け、それぞれの微小空間同士を接触、あるいは衝突させることにある。これは、片方だけを微小空間に分け、もう一方がバルクであるような方法である、膜乳化法やマイクロチャネル乳化法とは明らかに異なるものであり、実際に片方だけを微小空間に分けても本発明のような効果は得られない。公知となっているマイクロミキサーとしては、種々の構造のものがある。マイクロ流路中の流れと混合に着目すると、層流を維持してミキシングする方法と、流れを乱して、すなわち乱流でミキシングする方法の2種を挙げることができる。層流を維持してミキシングする方法では、流路幅より流路深さの寸法を大きくとることで、2液の境界面積をなるべく大きくし、両層の厚さを薄くすることで混合の効率化を図っている。また、2液の入り口を多数に分割して交互に流す多層流にする方法も考案されている。
【0060】
一方、乱流でミキシングする方法では、それぞれの液を狭い流路に分けて比較的高速で流す方法が一般的である。アレイ化したマイクロノズルを用いて片方の液を、微小空間に導入されたもう一方の液中に噴出させる方法も考案されている。また、高速で流れる液同士を種々の手段を用いて強制的に接触させる方法は特に混合効果が良好である。前者の層流を用いた方法は一般に、できる粒子は大きいが比較的分布が揃ったものになるが、後者の乱流を用いた方法は、非常に微細なエマルションが得る可能性があり、安定性及び透明性の点では乱流を用いた方法が好ましい場合が多い。乱流を用いた方法としては、櫛歯型と衝突型が代表的なものである。前記櫛歯型マイクロミキサーとしては、IMM社製に代表されるように、2つの櫛歯状の流路が対面して交互に入り組むように配置された構造となっている。
【0061】
KMミキサーに代表される衝突型マイクロミキサーでは、運動エネルギーを利用して強制接触をはかる構造となっている。具体的には、長澤ら(「H.Nagasawa et al, Chem.Eng.Technol,28,No.3,324−330(2005)」、特開2005−288254号公報)によって開示された、中心衝突型マイクロミキサーが挙げられる。水相と有機溶媒相とを対向衝突させる方法は、混合時間が極めて短く、瞬時に油相滴が形成されるため、極めて微細な乳化物又は分散物を形成し易い。
【0062】
本発明において、衝突型マイクロミキサーでミクロ混合して乳化する場合、乳化時の温度(乳化温度)は、得られるエマルションの粒径均一性の観点からマイクロミキサーの前記別な微小空間の温度(マイクロミキサーのミクロ混合部の温度)を80℃以下としてミクロ混合することが好ましく、0℃〜80℃がより好ましく、5℃〜75℃が特に好ましい。前記乳化温度0℃以上とすることにより、分散媒の主体が水であるため、乳化温度管理でき好ましい。マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は100℃以下であることが好ましい。前記保温温度を100℃以下とすることにより、保温温度の管理が容易に制御でき、また、乳化性能に悪影響があるミクロな突沸現象を無くすことができる。前記保温温度は80℃以下の温度で制御することがさらに好ましい。
【0063】
マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相、貧溶媒相、及びマイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は、貧溶媒相及び油相に含まれる成分によっても異なるが、それぞれ独立に、0℃〜50℃が好ましく、5℃〜25℃が特に好ましい。マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度と、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相および貧溶媒相の保温温度と、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられる前の油相および貧溶媒相の保温温度(即ち、油相および貧溶媒相供給タンクの保温温度)がそれぞれ異なっていても良いが、同じ温度にすることが混合の安定性の点で好ましい。
【0064】
本発明において、マイクロミキサーの微小空間に分けられる前後の水相、油相、及びマイクロミキサーの前記微小空間及び前記別な微小空間の保温温度を室温より高くして、ミクロ混合して乳化した後は、マイクロミキサーにより得られた水中油滴型エマルションは採取後、冷却して常温にすることは特に好ましい。
【0065】
本発明におけるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、1μm〜1mmであり、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm〜50,000μmが好ましい。
本発明における水相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、混合安定性の観点から、1,000μm〜50,000μmが特に好ましい。
油相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm〜20,000μmが特に好ましい。
【0066】
また、マイクロミキサーで混合(乳化分散)する場合、乳化分散時の油相と水相の流量としては、用いるマイクロミキサーによっても異なるが、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープ化の観点から、水相の流量としては、10ml/min〜500ml/minが好ましく、20ml/min〜350ml/minがより好ましく、50ml/min〜200ml/minが特に好ましい。
油相の流量としては、エマルション粒子径の微細化及び粒子径分布のシャープ化の観点から、1ml/min〜100ml/minが好ましく、さらには3ml/min〜50ml/minがより好ましく、5ml/min〜50ml/minが特に好ましい。
【0067】
両相の流量をマイクロチャンネルの断面積で割った値、すなわち両相の流速比(Vo/Vw)は、粒子の微細化とマイクロミキサーの設計上、0.05以上5以下の範囲であることが好ましい。但し、Voは水不溶性天然成分を含む有機溶媒相の流速であり、Vwは水相の流速である。また、流速比(Vo/Vw)が0.1以上3以下であることが、さらなる粒子の微細化の観点から最も好ましい範囲である。
【0068】
また、水相及び油相の送液圧力としては、水相と油相は0.030MPa〜5MPaと0.010MPa〜1MPaが好ましく、さらには、0.1MPa〜2MPaと0.02MPa〜0.5MPaがより好ましく、0.2MPa〜1MPaと0.04MPa〜0.2MPaが特に好ましい。前記水相の送液圧力を0.030MPa〜5MPaとすることにより、安定な送液流量を維持できる傾向となり、油相の送液圧力を0.010MPa〜1MPaとすることにより、均一な混合性が得られる傾向となり好ましい。
本発明において、前記流量、送液圧力及び保温温度はそれぞれ好ましい例の組み合せがより好ましい。
【0069】
次に、前記水相、油相がマイクロミキサーに導入され、水中油滴型エマルションとして排出されるまでの経路について、本発明におけるマイクロミキサーの一例としてマイクロデバイスの例(図1)を用いて説明する。
図1に示されるようにマイクロデバイス100は、それぞれが円柱状の形態の供給要素102、合流要素104及び排出要素106により構成されている。
供給要素102の合流要素104に対向する面には、本発明における油相又は水相の流路としての断面が矩形の環状チャネル108及び110が同心状に形成されている。供給要素102にはその厚さ(又は高さ)方向に貫通してそれぞれの環状チャンネルに至るボア112及び114が形成されている。
合流要素104には、その厚さ方向に貫通するボア116が形成されている。このボア116は、マイクロデバイス100を構成するために要素を締結した場合、供給要素102に対向する合流要素104の面に位置するボア116の端部120が環状チャンネル108に開口するようになっている。図示した態様では、ボア116は4つ形成され、これらが環状チャンネル108の周方向で等間隔に配置されている。
【0070】
合流要素104には、ボア116と同様にボア118が貫通して形成されている。ボア118も、ボア116と同様に、環状チャンネル110に開口するように形成されている。ボア118も環状チャンネル110の周方向で等間隔に配置され、かつ、ボア116とボア118が交互に位置するように配置されている。
合流要素104の排出要素106に対向する面122には、マイクロチャンネル124及び126が形成されている。このマイクロチャンネル124又は126の一端はボア116又は118の開口部であり、他方の端部は、面122の中心128であり、全てのマイクロチャンネルはこの中心128に向かってボアから延在し、中心で合流している。マイクロチャンネルの断面は、例えば矩形であってよい。
【0071】
排出要素106は、その中心を通過して厚さ方向に貫通するボア130が形成されている。従って、このボアは、一端にて合流要素104の中心128に開口し、他端にてマイクロデバイスの外部に開口している。
本マイクロデバイス100では、ボア112及び114の端部にてマイクロデバイス100の外部から供給される流体A及びBは、それぞれボア112及び114を経由して環状チャンネル108及び110に流入する。
【0072】
環状チャンネル108とボア116が連通し、環状チャンネル108に流入した流体Aは、ボア116を経由してマイクロチャンネル124に入る。また、環状チャンネル110とボア118が連通し、環状チャンネル110に流入した流体Bは、ボア118を経由してマイクロチャンネル126に入る。流体A及びBは、それぞれマイクロチャンネル124及び126に流入した後、中心128に向かって流れて合流する。
前記合流した流体は、ボア130を経由してマイクロデバイスの外部にストリームCとして排出される。
【0073】
このようなマイクロデバイス100は、下記のような仕様とすることができる。
環状チャンネル108の断面形状、幅/深さ/直径:矩形、1.5/1.5/25mm
環状チャンネル110の断面形状、幅、深さ、直径:矩形、1.5/1.5/20mm
ボア112の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア114の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア116の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
ボア118の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
マイクロチャンネル124の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、断面積、
350μm/100μm/12.5mm/35000μm
マイクロチャンネル126の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、断面積、
50μm/100μm/10mm/5000μm
ボア130の直径、長さ:500μm、10mm(円形断面)
【0074】
水相と油相が衝突するマイクロチャンネル(図1中、124及び126)の寸法は、水相及び油相の流量との関係において好ましい範囲が規定される。
【0075】
本発明においては、特開2004−33901号公報に示されるマイクロミキサーも好ましく用いることができる。
図2は、T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概略断面図である。図3は、T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概念図である。
図2には、T字型マイクロリアクターのT字型流路200の断面が示されている。T字型流路200は、流入口202aから矢印Dの方向に流入した流体と、流入口202bから矢印Eの方向に流入した流体は、T字型流路200の流路内中央部で衝突し、混合して微細な流体粒子となる。微細な流体粒子は、流出口204から矢印Fの方向へ流出する。このT字型マイクロリアクターは、流路の容積が小さいときには混合するのに有用である。
【0076】
図3には、他のT字型マイクロリアクターの流体混合機構(概念)300が示されている。図3に示す流体混合機構は、2つの流路302aと302bから流出した流体が互いに衝突・混合して、微細な流体粒となるものである。すなわち、流体は、一方で、矢印Gの方向に流路302aに流入し、矢印Hの方向に流出する。他方で、矢印Iの方向に流路302bに流入し、矢印Jの方向に流出する。流路302aと302bからそれぞれ流出した流体は、衝突し、混合して、矢印G〜Jの方向とおよそ直交する方向に飛散する。このように図3に記載した流体混合機構は、霧化等の手法により拡散させた流体を衝突・混合させるものである。この衝突・混合により、流体はより微細となり、大きな接触面を得ることができる。
【0077】
本発明の分散組成物に適用しうる製造方法では、用いられた水溶性有機溶媒は、マイクロ流路を通して乳化又は分散後、除去することが好ましい。溶媒を除去する方法としては、ロータリーエバポレーター、フラッシュエバポレーター、超音波アトマイザー等を用いた蒸発法、限外濾過膜、逆浸透膜等の膜分離法が知られているが、特に限外濾過膜法が好ましい。
【0078】
限外濾過(Ultra Filter:略してUF)とは、原液(水、高分子物質、低分子物質、コロイド物質等の混合水溶液)を加圧し、UF装置に注水することにより、原液を透過液(低分子物質)と濃縮液(高分子物質、コロイド物質)2系統の溶液に分離し、取り出すことができる装置である。
【0079】
限外濾過膜は、ロブ−スリーラーヤン法により作製される典型的な非対称膜である。使用される高分子素材は、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ化ビニリデン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロースなどである。最近ではセラミックス膜も使われるようになってきた。限外濾過法では逆浸透法等と異なり、前処理をおこなわないので、膜面に高分子などが堆積するファウリングがおこる。そのため膜を薬品や温水で定期的に洗浄するのが普通である。このため膜素材は薬品に対する耐性や耐熱性が求められる。限外濾過膜の膜モジュールは平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型と各種ある。限外濾過膜の性能指標は分画分子量であり、これが1,000〜300,000まで各種の膜が市販されている。市販の膜モジュールとしては、マイクローザーUF(旭化成ケミカルズ(株))、キャピラリー型エレメントNTU−3306(日東電工(株))等があるがこれに限定されるものではない。
【0080】
得られた乳化物からの溶媒除去には、膜の材質は溶媒耐性の観点から、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミドが特に好ましい。膜モジュールの形態としては、実験室スケールでは平膜が主に用いられるが工業的には中空糸型、スパイラル型が用いられるが、中空糸型が特に好ましい。また、分画分子量は有効成分の種類によって異なるが、通常、5,000〜100,000の範囲のものが用いられる。
操作温度は0℃〜80℃まで可能であるが、有効成分の劣化を考慮すると10℃〜40℃の範囲が特に好ましい。
【0081】
ラボスケールの限外濾過装置としては、平膜型モジュールを用いる、ADVANTEC−UHP(アドバンテック(株))、フロータイプラボテストユニットRUM−2(日東電工(株))等がある。工業的にはそれぞれの膜モジュールを必要能力に応じた大きさと本数を任意に組み合わせてプラントを構成することができる。ベンチスケールのユニットとしては、RUW−5A(日東電工(株))等が市販されている。
【0082】
本発明の分散組成物に適用しうる製造方法では、溶媒除去に引き続き、得られた乳化物を濃縮化する工程を加えてもよい。濃縮方法としては、蒸発法、濾過膜法等溶媒除去と同じ方法、装置を用いることができる。濃縮の場合も限外濾過膜法が好ましい方法である。溶媒除去と同一膜を使うことができれば好ましいが、必要に応じて、分画分子量の異なる限外濾過膜を使用することもできる。また、溶媒除去とは異なる温度で運転し、濃縮効率を高めることも可能である。
【0083】
上記マイクロミキサーによる混合により得られた分散組成物(乳化物)は、水中油滴型エマルションである。本発明の分散組成物の製造方法では、分散粒子の体積平均粒径(メジアン径)を、1nm〜200nmとするものである。得られた分散組成物の透明性の観点から、より好ましくは1nm〜100nmである。
以上説明した製造方法により得られた分散粒子の粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができ、その詳細は、既述のとおりである。
【0084】
本発明の分散組成物は、難水溶性ポリフェノール化合物を含む分散安定性に優れた分散組成物であるので、本発明の分散組成物を化粧品組成物、食品組成物、医薬品組成物にそれぞれ好ましく含めることができる。これにより、難水溶性ポリフェノール化合物を含むと共に分散安定性に優れた各用途の組成物を提供することができる。
本発明における化粧品組成物、食品組成物、医薬品組成物は、本発明に従って、難水溶性ポリフェノール化合物を各組成物の材料として、各用途に特徴的な油溶性又は水溶性の機能性材料と共に含有するものである。当業者であれば、各用途に特徴的な油溶性又は水溶性の機能性材料の選択を公知の材料から適宜行うことができ、また、本発明における化粧品組成物、食品組成物又は医薬品組成物を、本明細書の記載に従って本発明の効果が得られるように製造することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0086】
<分散組成物の調製>
[実施例1]
下記表1記載の各成分を室温にて1時間攪拌し、油相液及び水相液をそれぞれ調製した。
得られた油相液(油相)と水相液(水相)をそれぞれ25℃に加温し、それぞれ衝突型であるKM型マイクロミキサ100/100を用いてミクロ混合(分散)して(油相:水相の容量比は1:7)、25℃の分散液(pH7.5)を得た。なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記のとおりである。
【0087】
−マイクロチャンネル−
油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
−流量−
外環に水相を56.0ml/min.の流量で導入し、内環に油相を8.0ml/min.の流量で導入してミクロ混合した。
【0088】
繰り返し調整して得られた分散液1を薄膜式フラッシュエバポレータ(大川原製作所製:エバポール(CEP−lab))を使用して、エタノール濃度が0.1質量%以下になるまで脱溶媒することで、難水溶性ポリフェノール化合物の濃度が0.5質量%になるように4倍濃縮し、pH=7.5の分散組成物を得た。なお分散組成物における難水溶性ポリフェノール化合物の濃度は、分散組成物全質量を基準としたときの難水溶性ポリフェノール化合物の濃度をいう。
【0089】
[実施例2〜7、比較例1〜7]
油相成分及び水相成分を表1又は表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして分散組成物を得た。
【0090】
なお表1及び表2中、レスベラトロールはLa Gardonnenque社製、クルクミンはライオンマコーミック(株)社製、ルチンはルチンは和光純薬工業販売品を使用した。これらの難水溶性ポリフェノール化合物はいずれも水に対する溶解性は0.1質量%以下である。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖ミリスチン酸エステルは三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルM−1695(HLB=16)モノオレイン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1−O(HLB=12)を使用した。
PSKゼラチン(ニッピ製)の分子量は100,000であり、SCP−5000(新田ゼラチン製ペプチドコラーゲン)の分子量は5,000であり、ヒアルロン酸(紀文製)の分子量はおよそ80,000であり、アラビアガムの分子量はおよそ300,000であった。
【0091】
<評価>
1.分散粒子の粒径
調製直後の実施例1〜7及び比較例1〜7の各分散組成物における分散粒子の粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した。該粒径の測定は、分散粒子の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて行った。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めた。結果を表1及び表2に示す。
【0092】
2.分散組成物の経時安定性の評価
経時安定性の評価は目視にて行い、透明か不透明かを判断した。
分散直後の各分散組成物に透明度を目視にて観察し、透明か不透明かを判断した。さらに、各分散組成物を40℃の恒温槽に1週間保管した後、25℃に戻して再度目視にて同様に判断した。結果を表1及び表2に示す。
3.安定性評価
調製直後と40℃1週間保管後における粒子径及び外観評価の変化の大きさに基づいて○、△、×と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1及び表2に明らかなように、難水溶性ポリフェノール化合物を含む本発明の実施例に係る分散組成物は、分散粒子の粒径が小さく、且つ分散安定性及び経時安定性にも優れたものであった。
【符号の説明】
【0096】
100 マイクロデバイス
102 供給要素
104 合流要素
106 排出要素
124 マイクロチャンネル
126 マイクロチャンネル
128 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難水溶性ポリフェノール化合物と、
ショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤と、
水溶性高分子と
を含むと共に、ポリグリセリン脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1倍量以下であって、前記難水溶性ポリフェノールを含む分散粒子の粒子径が200nm以下である分散組成物。
【請求項2】
前記難水溶性ポリフェノール化合物が、レスベラトロール、クルクミン、ルチン、エラグ酸及びケルセチンからなる群より選択された少なくとも1つである請求項1記載の分散組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、分子量1000〜600,000である請求項1又は請求項2記載の分散組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子が、タンパク質及び多糖類からなる群より選択された少なくとも1つである請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の分散組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分散組成物を含む化粧品組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分散組成物を含む食品組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分散組成物を含む医薬品組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分散組成物の製造方法であって、
前記難水溶性ポリフェノールを含む油相成分を該難水溶性ポリフェノールの良溶媒に溶解して油相を調製する油相調製工程と、
得られた油相と難水溶性ポリフェノール化合物の貧溶媒相とを混合して、難水溶性ポリフェノール化合物を含有すると共に体積平均粒子径が200nm以下の分散粒子を含む前記分散組成物を得る混合工程と
を含む分散組成物の製造方法。
【請求項9】
前記難水溶性ポリフェノールの良溶媒が、水可溶性有機溶媒又はアルカリ水溶液である請求項8記載の分散組成物の製造方法。
【請求項10】
前記油相と前記貧溶媒相との混合が、1μm〜1mmであるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合するものである請求項8又は請求項9に記載の分散組成物の製造方法。
【請求項11】
前記混合が、対向衝突により行なわれる請求項8〜請求項10のいずれか1項記載の分散組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−222293(P2010−222293A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70829(P2009−70829)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】