説明

分断されたインライン油圧ブースタ

【課題】油圧ブースタを備えたインラインブレーキシステムを提供すること。
【解決手段】マスタシリンダピストン108の後方でシリンダボア107内に配置された伝達ピストン110と、第1の座部を有する伝達ピストンアクチュエータと、第1の座部と位置合わせされるシール部材132と、シール部材及び伝達ピストンに動作可能に接続されるシール部材バネと、第1の座部と位置合わせされる入力ロッドと、入力ロッド112及び伝達ピストンアクチュエータに動作可能に接続される戻しバネ136と、マスタシリンダ106の後方でシリンダボア内に配置されたスリーブアクチュエータと、スリーブアクチュエータをマスタシリンダピストンから離れる方向に付勢するように構成されたスリーブバネ130とを含み、スリーブアクチュエータは、加えられたブースト圧に応じて、伝達ピストンをマスタシリンダピストンに向かって付勢するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明はブレーキシステムに関し、特に、ペダル感覚シミュレータ(pedal feel simulator)を有するブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]近年、自動車ブレーキシステムは著しく進歩している。これらの発展の中には、アンチロックブレーキシステム(ABS)及び回生ブレーキシステムなどの様々なブレーキ方法がある。後者は電気自動車及びハイブリッド電気自動車に使用される。自動車にブレーキを掛けるため、これらのブレーキ方法は交換可能に融合される。一般的には、自動車のブレーキペダルは、下流側のブレーキ回路から機械的に分断される。制御バルブは、一般的に、アキュムレータからのブースト圧を調整して、下流側のブレーキ回路に調整ブースト圧を供給する。ブレーキペダルが機械的に分断されるので、自動車の操作者に対してフィードバックを提供するために、ブレーキペダル感覚シミュレータが一般的にブレーキシステムに含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]油圧システム及び/または電気回生システムが故障した場合、ブレーキシステムが操作モードを切り替えて、ブレーキペダルが下流側のブレーキ回路に機械的に連結されるようにする必要がある。そのような故障モードでは、ブレーキペダルに加えられる力が下流側のブレーキ回路に伝達されて、自動車を停止させるのに必要なブレーキ力が発生する。
【0004】
[0004]ブレーキペダルが下流側のブレーキ回路から機械的に分断される通常モードで動作可能であり、かつブレーキペダルが1つの下流側のブレーキ回路に少なくとも機械的に連結される故障モードで動作可能である、改善されたブレーキシステムを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本開示の一実施形態によれば、油圧ブースタを備えたインラインブレーキシステムが提供される。油圧ブースタを備えたインラインブレーキシステムは、シリンダボアを画定するマスタシリンダと、シリンダボア内に配置されたマスタシリンダピストンと、マスタシリンダピストンの後方でシリンダボア内に配置された伝達ピストン(transfer piston)と、第1の座部を有する伝達ピストンアクチュエータと、第1の座部と位置合わせされるシール部材と、シール部材及び伝達ピストンに動作可能に接続されたシール部材バネと、第1の座部と位置合わせされる入力ロッドと、入力ロッド及び伝達ピストンアクチュエータに動作可能に接続された戻しバネと、マスタシリンダの後方でシリンダボア内に配置されたスリーブアクチュエータと、スリーブアクチュエータをマスタシリンダピストンから離れる方向に付勢するように構成されたスリーブバネとを含み、スリーブアクチュエータは、加えられたブースト圧に応じて、伝達ピストンをマスタシリンダピストンに向かって付勢するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】[0006]伝達ピストンアセンブリ、入力ロッドアセンブリ、及びスリーブアセンブリを有するブースタ部分と、マスタシリンダピストンアセンブリを有するマスタシリンダ部分とを含むブレーキシステムを示す部分断面図である。
【図2】[0007]図1のマスタシリンダピストンアセンブリを示す部分断面図である。
【図3】[0008]仮想線で示されるアクチュエータを含む、図1の伝達ピストンアセンブリを示す部分断面図である。
【図4】[0009]シール部材アクチュエータを含む、図1の入力ロッドアセンブリを示す部分断面図である。
【図5】[0010]図1のスリーブアセンブリを示す部分断面図である。
【図6】[0011]シール部材アクチュエータが左側に移動しており、シール部材を第1の座部から離して左側へ移動させ、それによって調整高圧流体をスリーブアセンブリに供給している、通常動作モードの初期作動位置にある図1のブレーキシステムを示す図である。
【図7】[0012]シール部材アクチュエータが図6よりもさらに左側に移動しており、それによってスリーブアセンブリ内の調整高圧流体の圧力を増加させている、通常モードの作動位置にある図1のブレーキシステムを示す図である。
【図8】[0013]高圧流体が動作不能であり、シール部材がスリーブアセンブリ内の圧力を調整することができない、故障動作モードの初期作動位置にある図1のブレーキシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0014]本発明の原理についての理解を促進するため、以下、図面に示され、以下の明細書に記載される実施形態を参照する。本発明の範囲はそれによって限定されないものとすることが理解される。さらに、本発明は、示される実施形態に対するあらゆる変更及び修正を含み、また、本発明が関係する分野の当業者には通常想起されるような本発明の原理のさらなる応用を含むことが理解される。
【0008】
[0015]図1を参照すると、ブレーキシステム100の部分断面図が示される。ブレーキシステム100は、ブースタ部分102及びマスタシリンダ部分104を含む。ブースタ部分102及びマスタシリンダ部分104は、ブースタ部分102及びマスタシリンダ部分104の上に延在するマスタシリンダ106に囲まれる。マスタシリンダ106は、マスタシリンダ106のほぼ全長にわたって延在するボア107を有する。
【0009】
[0016]ボア107内にて、ブレーキシステム100は、マスタシリンダピストンアセンブリ108、伝達ピストンアセンブリ110、及び入力ロッドアセンブリ112を含む。入力シャフト114は、一端ではブレーキペダル(図示なし)に連結され、他端では入力ロッドアセンブリ112に固定的に連結される。入力シャフト114は、プレス嵌め方式で、または入力シャフト114が入力ロッドアセンブリ112に対して旋回できる他の既知の方式で、入力ロッドアセンブリ112とインターフェース接続する。入力シャフト114は、ブレーキペダル(図示なし)に加えられる力を入力ロッドアセンブリ112に伝達するように構成される。入力ロッドアセンブリ112は、入力ロッドバネ136によって伝達ピストンアセンブリ110から離れる方向に付勢される。入力ロッドバネは戻しバネ136と呼ばれることもある。図1にはスリーブアセンブリ116も示される。
【0010】
[0017]マスタシリンダピストンアセンブリ108は、マスタシリンダ106のボア107の内にシール可能に位置付けられ、ボア107とマスタシリンダピストンアセンブリ108との間にマスタシリンダチャンバ109を画定する。マスタシリンダチャンバ109は、第1の下流側のブレーキ回路(図示なし)と流体連通している。マスタシリンダチャンバ109はまた、より詳細に後述するように、リザーバ(図示なし)と選択的に連通している。
【0011】
[0018]スリーブアセンブリ116及びボア107は、流体チャネル121と流体連通している第1のスリーブチャンバ118を画定する。流体チャネル121は、出口122を通して第2の下流側のブレーキ回路(図示なし)とも流体連通している。具体的には、より詳細に後述するように、アキュムレータ(すなわち、図示されない高圧流体源)が流体チャネル121と選択的に流体連通している。流体チャネル121は、出口125と流体連通しているチャンバ123と流体連通している。出口125は、軸線方向流体チャネル129に流体連結された放射方向流体チャネル127’と流体連通している。軸線方向流体チャネル129は、第1のスリーブチャンバ118と流体連通している放射方向流体チャネル127’’に連結される。第1のスリーブチャンバ118は、上述したように第2のブレーキ回路(図示なし)と流体連通している出口122と流体連通している。
【0012】
[0019]入口124は、リザーバ(図示なし)と、スリーブアセンブリ116及びボア107によって画定される第2のスリーブチャンバ126との間の流体連通を提供する。したがって、第2のスリーブチャンバ126は、リザーバ(図示なし)と連続的に流体連通している。
【0013】
[0020]ボア107、マスタシリンダピストンアセンブリ108、及び伝達ピストンアセンブリ110は、放射方向流体経路127’’’を通して、かつ別の流体経路131を介して軸線方向流体チャネル129と流体連通しているブーストチャンバ128を画定する。内部流体チャンバが第1のスリーブチャンバ118及びブーストチャンバ128と流体連通しているので、ブーストチャンバ128も第1のスリーブチャンバ118と流体連通している。伝達ピストンアセンブリ110はまた、より詳細に後述するように、スリーブアセンブリ116にシール可能に連結される。
【0014】
[0021]マスタシリンダピストンアセンブリ108及びスリーブアセンブリ116は、スリーブバネ130によって互いから離れる方向に付勢される。スリーブバネ130は、ブーストチャンバ128内に位置付けられ、マスタシリンダピストンアセンブリ108とスリーブアセンブリ116との間の距離が減少するにつれて圧縮するように構成される。
【0015】
[0022]シール部材132は、伝達ピストンアセンブリ110と入力ロッドアセンブリ112との間に配置される。シール部材132はほぼボールの形態である。より詳細に後述するように、シール部材132は、ブレーキペダル(図示なし)が解除位置(すなわち、非作動位置)にあるとき、流体チャネル121をアキュムレータ(図示なし)からシールするように構成される。さらに、後述するように、シール部材132は、ブレーキペダル(図示なし)に加えられる力に応じて、流体チャネル121内の液圧を調節するように構成される。
【0016】
[0023]図1に示されるように、マスタシリンダピストンアセンブリ108と伝達ピストンアセンブリ110との間にはギャップ134がある。マスタシリンダピストンアセンブリ108と伝達ピストンアセンブリ110との間に配置されるバネ135は、マスタシリンダピストンアセンブリ108及び伝達ピストンアセンブリ110を互いから離れる方向に付勢するように構成される。
【0017】
[0024]図2を参照すると、マスタシリンダピストンアセンブリ108の部分断面図が示される。マスタシリンダピストンアセンブリ108は、本体部分152、マスタシリンダピストンブラケット154、マスタシリンダピストンバネ156、及びマスタシリンダエンドブラケット158を含む。本体部分152は、例えばプレス嵌め方式で、マスタシリンダピストンブラケット154に固定的に連結される。
【0018】
[0025]マスタシリンダピストンバネ156は、マスタシリンダピストンブラケット154をマスタシリンダエンドブラケット158から離れる方向に付勢する。本体部分152は、マスタシリンダピストンブラケット154の中心を通って延在するピストンロッド159を通して、マスタシリンダ弁アセンブリ、例えばポペット弁(図示なし)に連結される。ピストンロッド159は、本体部分152の中央キャビティ160内に滑動可能に配置される。
【0019】
[0026]本体部分152は後方部分162をさらに含む。後方部分162は、さらに後述するように、伝達ピストンアセンブリ110に対するシール面を提供する、伝達ピストンインターフェース164を含む。伝達ピストンインターフェース164は、伝達ピストンアセンブリ110とインターフェース接続するようにも構成される端面166で終わる。それに加えて、シール168は、本体部分152とマスタシリンダ106のボア107との間のシールされたインターフェースを提供する。
【0020】
[0027]図3を参照すると、伝達ピストンアセンブリ110の部分断面図が示される。伝達ピストンアセンブリ110は、本体部分201及びノーズ部分202を含む。ノーズ部分202は、本体部分201の延長部であり、マスタシリンダピストンアセンブリ108の後方部分162内に位置するように構成される。具体的には、伝達ピストンインターフェース164はノーズ202の一部分を囲む(図1及び2も参照)。
【0021】
[0028]伝達ピストンアセンブリ110はまた、アキュムレータ(図示なし)に流体連結された入口206を含む。入口206は、アキュムレータ(図示なし)とシール部材132(仮想線で示される)との間に流体チャネル207を提供する。
【0022】
[0029]伝達ピストンアセンブリ110はまた、制御弁バネ208、入口部分209、及び入口部材210を含む。制御弁バネ208は、以下、シール部材バネとも呼ばれる。制御弁バネ208は、入口部材210を入口部分209から離れる方向に付勢する。図3に示されるように、入口部材210は、流体チャネル207内に滑動可能に配置され、その中で移動するように構成される。制御弁バネ208により、入口部材210はシール部材132(図3を参照すると仮想線で示される)と接触するように位置付けられる。入口部材210は、シール部材132とインターフェース接続するように構成された接触リング214のところで終わる。接触リング214は、入口部材210と一体的に形成されてもよく、または摩耗した場合に分離し交換することができる部材であってもよい。
【0023】
[0030]図3に示されるように、シール部材132(仮想線で示される)は伝達ピストンアクチュエータ232に接触する。伝達ピストンアクチュエータ232は本体部分201と一体的に形成される。伝達ピストンアクチュエータは第1の座部236及び第2の座部238を含む。第1の座部236は、さらに後述するように、シール部材132に接してシールし、それによって流体チャネル121をシールするように構成される。第1の座部236は、本体部分232の一体的に形成された一部であってもよく、または、本体部分232上に組み立てられ、かつ摩耗した場合に修理のために取り外されるように構成された別個の部材であってもよい。第2の座部238は、さらに後述するように、入力ロッドアセンブリ112の座部261に接触するように構成される。伝達ピストンアクチュエータ232はまた、後方部分220を含む。後方部分220は、バネ136(仮想線で示される)に対する座部を提供するように構成された座部234を含む。バネ136は、座部234と入力ロッドアセンブリ112との間に位置付けられる。バネ136は、図4を参照して後述するようなブレーキシステム100の作動中、伝達ピストンアセンブリ110及び入力ロッドアセンブリ112を互いから離れる方向に付勢するように構成される。
【0024】
[0031]図4を参照すると、入力ロッドアセンブリ112の部分断面図が示される。入力ロッドアセンブリ112は、ピン252、カラー254、入力ロッド256、及び本体部分258を含む。ピン252は、流体チャネル121と位置合わせされるボア253を含む。ピン252は、さらに後述するように、シール部材132と接触するように構成された端部257を画定し、その際に、アキュムレータ(図示なし)、シール部材132の周囲、ボア253、及び流体チャネル121(図1を参照)の間の流体連通を確立する。端部257は、ボア253に至る妨げられない流体経路を提供する一方で端部257がシール部材132に接触できるようにする、溝付きの形状(castelating feature)を含んでもよい。
【0025】
[0032]カラー254は、さらに後述するように、特定の動作条件下で伝達ピストンアクチュエータ232(図3を参照)の第2の座部238と接触するように構成された座部261を含む。
【0026】
[0033]カラー254は入力ロッド256と一体的に形成されてもよい。入力ロッド256は、流体チャネル121を画定するボアを含む。入力ロッド256はまた、ステップ264を画定する。ステップ264は、入力ロッドバネ136の一端を受け入れるように構成され、一方、上述したように、伝達ピストンアクチュエータ232の後方部分220の座部234は、他端を受け入れるように構成される(図3を参照)。入力ロッド256は本体部分258に滑動可能に連結される(すなわち、入力ロッド256は本体部分258に対して滑動することができる)。
【0027】
[0034]本体部分258は、シール266及び268を受け入れるシールハウジングを含む。シール266及び268は、マスタシリンダ106のボア107に対して入力ロッドアセンブリ112をシールする。本体部分258はまた、シール270を受け入れるシールハウジングを含む。入力ロッド256はまた、シール272を受け入れるシールハウジングを含む。シール270及び272は、本体部分258に対して入力ロッドをシールする。
【0028】
[0035]入力ロッド256と本体部分258との間のインターフェースは、上述したように流体チャネル121及び出口125と流体連通している、チャンバ123を画定する。
【0029】
[0036]入力ロッド245は、キャビティ262を画定する後方部分260をさらに含む。キャビティ262は、入力シャフト114がキャビティ262内部に入ると入力ロッド256に対して旋回できるようになるプレス嵌め方式で、上述したように入力シャフト114を受け入れるように構成される。
【0030】
[0037]図5を参照すると、スリーブアセンブリ116の部分断面図が提供される。スリーブアセンブリ116は、スリーブ302、ならびにシール304及び305を受け入れるシールハウジングを含む。スリーブ302は、保持リング306を受け入れる放射方向の切欠き308を含む。保持リング306は、入力ロッドバネ136の外径及び入力ロッド256の外径よりも大きい内径を画定する(図3及び4を参照)。したがって、保持リング306の内径と干渉することなく入力ロッドバネ136を圧縮しながら、入力ロッド256が保持リング306を通って滑動することができる。シール306のためのシールハウジングは、第1のスリーブチャンバ118内の流体と連通する能動面310を画定する。
【0031】
[0038]ブレーキシステム100の動作について、最初に図1を参照してここに記載する。2つの動作モードについて記載する。一般に、通常動作モードの間、当該分野において知られている油圧ブースト機能を提供するため、アキュムレータ(図示なし)は高圧流体をブレーキシステム100に供給する。しかし、故障モードでは、アキュムレータは高圧流体を供給することができず、そのため、ブースト機能は提供されない。
【0032】
[0039]図1を再び参照して、通常モード及び故障モード両方に関する全体的な動作条件について記載する。入力シャフト114はブレーキペダル(図示なし)に連結される。解除位置にあるブレーキペダル(図示なし)によって、図1に示されるブレーキシステム100の位置が得られ、以下、これは「休止」位置と呼ばれる。
【0033】
[0040]マスタシリンダピストンアセンブリ108、及び第1の下流側のブレーキ回路(図示なし)及びリザーバ(図示なし)に対するその流体連結を始めとして、本体部分152は右側に付勢される。これは、本体部分152がマスタシリンダピストンブラケット154に固定的に連結され、マスタシリンダピストンバネ156がマスタシリンダピストンブラケット154をマスタシリンダエンドブラケット158から離れる方向に付勢するためである(図2を参照)。
【0034】
[0041]ピストンロッド159は、ピストンロッドの左側でマスタシリンダ弁アセンブリ(図示なし)に連結され、右側でマスタシリンダピストンブラケット154に連結される。マスタシリンダピストンブラケット154は、ピストンロッド159が図1に示される位置を越えて左側に動くのを制限する。
【0035】
[0042]伝達ピストンアセンブリ110は、マスタシリンダピストンアセンブリ108の右側(後方)に配置される。制御弁バネ208は、入口部材210を入口部分209から離れる方向に付勢して、シール部材132と接触させる(図3を参照)。したがって、シール部材132は右側に付勢され、それによって伝達ピストンアクチュエータ232の第1の座部236上にしっかりと定置される。
【0036】
[0043]第1の座部236がシール部材132上にしっかりと定置されると、流体チャネル121はアキュムレータ(図示なし)との流体接続から隔離される。
【0037】
[0044]図1では、ピン252の端部257はシール部材132に近接して位置付けられる。端部257は、単に、休止位置ではピン252がシール部材132に掛ける力が最小限またはゼロであることを読者に対して明示するため、シール部材132と実質的に接触していないように示される。また、休止位置では、入力ロッド256のステップ264と伝達ピストンアクチュエータ232の座部234との間に配置される入力ロッドバネ136の圧縮は最小限であるか、または単に全く圧縮されない。
【0038】
[0045]スリーブアセンブリ116は、スリーブバネ130によってマスタシリンダピストンアセンブリ108から離れる方向に付勢される。その結果、スリーブアセンブリ116は、入力ロッドアセンブリ112の本体部分258と接触している。
【0039】
[0046]休止位置では、マスタシリンダチャンバ109は、マスタシリンダ弁アセンブリ(図示なし)を通してリザーバ(図示なし)と流体連通している。マスタシリンダチャンバ109は、第1の下流側の回路(図示なし)とも流体連通している。したがって、マスタシリンダチャンバ109及び第1の下流側のブレーキ回路(図示なし)内の圧力は無視できる(すなわち、図示されないリザーバ(図示なし)の液圧と同じである)。
【0040】
[0047]アキュムレータ(図示なし)は、入口206で伝達ピストンアセンブリ110に高圧流体を供給する(図3を参照)。シール部材132の入口部材210側では、圧力はアキュムレータ圧力と同じである。しかし、シール部材132は第1の座部236(図3を参照)上にしっかりと定置されているので、ボア253及び流体チャネル121はアキュムレータ(図示なし)から流体的に隔離される。したがって、休止位置では、ボア253、流体チャネル121、チャンバ123、出口125、放射方向流体チャネル127’、127’’、及び127’’’、ならびに第2の下流側のブレーキ回路(図示なし)内の圧力は無視できる。また、ブーストチャンバ128は流体チャネル121と流体連通しているので、ブーストチャンバ内の液圧も無視できる。
【0041】
[0048]図6を参照すると、通常モードのブレーキシステム100の初期作動位置が示される。自動車の操作者がブレーキペダル(図示なし)に力を加えると、入力シャフト114は左側に移動する。入力シャフト114が左側に移動することで、入力ロッドアセンブリ112の入力ロッド256は矢印300の方向で左側に移動する。入力ロッドバネ136は入力ロッド256のステップ264(図4を参照)と伝達ピストンアクチュエータ232の座部234(図3及び4を参照)との間に配置されるので、入力ロッド256が左側に移動することで、入力ロッドバネ136の力によって伝達ピストンアクチュエータ232が左側に付勢される。カラー254とシール部材132との間に配置されるピン252は、シール部材132と接触するようになる。ピン252は、左向きの力をシール部材132に加え、それが制御弁バネ208に伝達される。制御弁バネ208、バネ135、及びマスタシリンダピストンバネ156のバネ定数は、制御弁バネ208が圧縮し始めるように選択される。制御弁バネ208の圧縮によって、ピン252の端部257がシール部材132を第1の座部236から外れさせることが可能になる。
【0042】
[0049]シール部材132が第1の座部236から外れることで、流体が第1の座部236の傍を勢いよく流れることが可能になることによって、ボア253を通してアキュムレータ(図示なし)と流体チャネル121との間が流体連通する(図4も参照)。流体チャネル121内の圧力は、操作者によってブレーキペダル(図示なし)に加えられる力に比例する。したがって、シール部材132及び第1の座部236は、流体チャネル121内の圧力を調整する。
【0043】
[0050]第1の座部236の周りの流れが速い流体は、流体チャネル121内へと移動する。流体チャネル121は第1のスリーブチャンバ118と流体連通しているので、その中の圧力は上昇する。第2のスリーブチャンバはリザーバ(図示なし)に連結されているので、第1のスリーブチャンバ118内の圧力は第2のスリーブチャンバ126内の圧力を上回る。これらのチャンバ118及び126の間の圧力差によって、スリーブアセンブリ116が、スリーブ302とマスタシリンダピストンアセンブリ108との間に位置付けられたスリーブバネ130によって供給される付勢力に対抗して、矢印300の方向で左側に移動する。スリーブアセンブリ106が左側に移動するのに応じて、保持リング306も左側に移動し、それによって、図6に示されるように、伝達ピストンアセンブリ110の後方部分220に接触する。
【0044】
[0051]さらに、流体チャネル121はブーストチャンバ128にも流体連結されているので、その中の圧力は同様に上昇する。ブーストチャンバ128内の液圧は、マスタシリンダピストンアセンブリ108を作動させ、それを左側に移動させる。マスタシリンダピストンアセンブリ108が左側に移動することによって、マスタシリンダ弁アセンブリ(図示なし)が閉じ、それによってマスタシリンダチャンバ109がリザーバ(図示なし)から隔離される。したがって、マスタシリンダピストンアセンブリ108が左側に移動するにつれて、マスタシリンダチャンバ109内の液圧は上昇し始める。
【0045】
[0052]第1及び第2の下流側のブレーキ回路はマスタシリンダチャンバ109及び流体チャネル121にそれぞれ連結されているので、それら回路内の圧力は上昇し始め、それによって所望のブレーキ機能が提供される。バネ135のバネ定数(K135)は、入力ロッドバネ136のバネ定数(K136)よりも高く、それは制御弁バネ208のバネ定数(K208)よりも高いことを読者は認識するはずである。つまり、K135>K136>K208である。
【0046】
[0053]操作者によってブレーキペダル(図示なし)に加えられる力の増加は、入力シャフト114のさらなる左側への移動を発生させる。図7を参照すると、通常動作モードのブレーキシステム100の次の作動位置が示される。次の作動位置では、入力ロッド256は矢印300の方向でさらに左側に移動しており、それによってピン252がさらに左側に移動している。ピン252が左側に移動することによってシール部材132がさらに移動しており、それによって、図6のシール部材132の位置と比べて、シール部材132は第1の座部236からさらに外れている。その結果、流体チャネル121内の圧力は増加し、それによって第1のスリーブチャンバ118及びブーストチャンバ128内の圧力が増加する。第1の座部236及びシール部材132の相対位置は、明瞭にするため強調して示されていることを読者は認識するはずである。実際には、シール部材132と第1の座部236との間には非常に小さい空間が提供される。
【0047】
[0054]ブーストチャンバ128内の圧力が増加しているので、マスタシリンダピストンアセンブリ108はさらに左側に移動し、それによってマスタシリンダチャンバ109内の圧力はさらに増加する。特に、ピストンロッド159は中央キャビティ160内に移動する。
【0048】
[0055]マスタシリンダピストンアセンブリ108のさらなる左側への移動は、第1の下流側のブレーキ回路(図示なし)内の圧力の増加を発生させる。同様に、流体チャネル121内の圧力の増加により、第2の下流側のブレーキ回路(図示なし)内の圧力が増加する。
【0049】
[0056]マスタシリンダピストンアセンブリ108の左側への移動はギャップ134を増加させる可能性を有するが、後述するように、ブレーキシステム100はギャップ134を維持するように構成される。
【0050】
[0057]流体チャネル121内の圧力の増加によって、第1のスリーブチャンバ118内の圧力が増加する。上述したように、第2のスリーブチャンバ126内の圧力はリザーバ(図示なし)の圧力に留まる。したがって、第1及び第2スリーブチャンバ118及び126の間の圧力差は増加する。圧力差が増加するため、スリーブアセンブリ116はさらに左側に移動し、それによって保持リング306がさらに左側に移動する。図6に示されるように、保持リング306は伝達ピストンアセンブリ110の後方部分220と既に接触しているので、保持リング306がさらに左側に移動することによって、伝達ピストンアセンブリ110はさらに左側に移動する。
【0051】
[0058]スリーブアセンブリ116の能動面310は、そこに作用する流体チャネル121内(及び結果として第1のスリーブチャンバ118内)の流体の調整圧力が、スリーブバネ130の付勢力を克服するのに十分な左向きの力(及び結果として左側への移動)をもたらすようにして寸法決めされる。適切なバネ130のバネ定数及び能動面310の寸法を選択することによって、スリーブアセンブリ116の、したがって伝達ピストンアセンブリ110の左側への移動を、マスタシリンダアセンブリ108の左側への移動と整合させ、それによってギャップ134を維持することができる。
【0052】
[0059]ブレーキペダル(図示なし)は下流側のブレーキ回路(図示なし)から機械的に分離されるので、入力ロッドバネ136及び制御弁バネ208は、通常モードにおいて、シール部材132、ピン252、入力ロッド256、及び入力シャフト114を介して操作者にフィードバックを提供する。
【0053】
[0060]故障モードでは、アキュムレータ(図示なし)は、ブースト機能を提供するのに必要な圧力で流体を供給することができない。図8を参照すると、故障モードのブレーキアセンブリ100の初期作動位置が示される。故障モードでは、ブレーキシステム100は通常モードとほぼ同様に動作する。アキュムレータ(図示なし)は動作不能なので、流体チャネル121内の圧力は低いままである。その結果、第2の下流側のブレーキ回路(図示なし)でブレーキングは発生しない。ブーストチャンバ128及び第1のスリーブチャンバ118内の圧力は低いままであり、それによって、マスタシリンダピストンアセンブリ108及びスリーブアセンブリ116を移動させる左向きの力に影響しない。
【0054】
[0061]しかし、故障モードでは、後述するように、第1の下流側のブレーキ回路(図示なし)でブレーキングが発生する。入力ロッド256が左側に移動することで、入力ロッドバネ136を圧縮し、ピン252がシール部材132としっかりと接触するようになる。シール部材132は制御弁バネ208を圧縮し、それによって入口部材210が流体チャネル207内に移動するので、入口部材210が流体チャネル207によって画定されるキャビティの端部に接近する。一方、入力ロッドバネ126は圧縮し、カラー254の座部261は第2の座部238に接近する。
【0055】
[0062]入口部材210、流体チャネル207によって画定されるキャビティ、及びカラー254と第2の座部238との間の距離は、図1に示されるように、入口部材210が流体チャネル207によって画定されるキャビティの底に達すると、座部261が伝達ピストンアクチュエータ232の第2の座部238と接触するようにして寸法決めされる。
【0056】
[0063]座部261が第2の座部238と接触すると、ブレーキペダル(図示なし)と伝達ピストンアクチュエータ110との間の直接的なリンケージが確立される。このリンケージは、入力シャフト140、入力ロッド256、カラー254、座部261、第2の座部238、及び本体部分201を含む。
【0057】
[0064]直接的なリンケージが確立されるので、入力ロッド256がさらに移動することによって伝達ピストンアセンブリ110が左側に移動する。マスタシリンダピストンアセンブリ108は移動していない(ブーストチャンバ128内の圧力が不足し、バネ135のバネ定数が入力ロッドバネ136よりも高いことによる)ので、ノーズ202の前方部分が端面166と接触すると、伝達ピストンアセンブリ110の移動によってギャップ134がなくなって、バネ136が圧縮する。入力ロッド256がさらに左側に移動することによって、マスタシリンダピストンアセンブリ108が左側に移動し、それによって所望のブレーキ機能が発生する。
【0058】
[0065]代替実施形態では、タンデムマスタシリンダアセンブリにおいて知られているように、第2のブレーキ回路(図示なし)は第2のマスタシリンダチャンバ(図示なし)と流体連通していてもよい。この実施形態では、第2のマスタシリンダチャンバ(図示なし)内の流体は、マスタシリンダピストンアセンブリ108に(バネを通して)機械的に連結される、または流体連結される第2のマスタシリンダピストン(図示なし)が左側に移動することによって加圧されてもよい。この実施形態では、第2の下流側のブレーキ回路(図示なし)も、故障モードにおいて所望のブレーキ機能を提供してもよい。
【0059】
[0066]図面及び上述の説明において本発明を示し、詳細に記載してきたが、それらは例示的なものであって特徴を限定するものではないものと見なすべきである。好ましい実施形態のみが提示されており、本発明の趣旨に含まれるすべての変更、修正、及びさらなる応用は保護されることが望ましいことが理解される。
【符号の説明】
【0060】
100 ブレーキシステム
102 ブースタ部分
104 マスタシリンダ部分
106 マスタシリンダ
107 ボア
108 マスタシリンダピストンアセンブリ
109 マスタシリンダチャンバ
110 伝達ピストンアセンブリ
112 入力ロッドアセンブリ
114 入力シャフト
116 スリーブアセンブリ
118 第1のスリーブチャンバ
121 流体チャネル
122 出口
123 チャンバ
124 入口
125 出口
126 第2のスリーブチャンバ
127’ 放射方向流体チャネル
127’’ 放射方向流体チャネル
127’’’ 放射方向流体経路
128 ブーストチャンバ
129 軸線方向流体チャネル
130 スリーブバネ
131 流体経路
132 シール部材
134 ギャップ
135 バネ
136 入力ロッドバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ブースタを備えたインラインブレーキシステムにおいて、
シリンダボアを画定するマスタシリンダと、
前記シリンダボア内に配置されたマスタシリンダピストンと、
前記マスタシリンダピストンの後方で前記シリンダボア内に配置された伝達ピストンと、
第1の座部を有する伝達ピストンアクチュエータと、
前記第1の座部と位置合わせされたシール部材と、
前記シール部材及び前記伝達ピストンに動作可能に接続されたシール部材バネと、
前記第1の座部と位置合わせされた入力ロッドと、
前記入力ロッド及び前記伝達ピストンアクチュエータに動作可能に接続された戻しバネと、
前記マスタシリンダの後方で前記シリンダボア内に配置されたスリーブアクチュエータと、
前記スリーブアクチュエータを前記マスタシリンダピストンから離れるように付勢するように構成されたスリーブバネとを備え、前記スリーブアクチュエータは、加えられたブースト圧に応じて、前記伝達ピストンを前記マスタシリンダピストンに向けて付勢するように構成された、インラインブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記マスタシリンダピストンが後方部分を含み、
前記伝達ピストンが前方部分を含み、
解除状態では前記後方部分が前記前方部分から離隔され、第1の作動状態では前記後方部分が前記前方部分と係合されるように構成された、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
第2の作動状態では前記後方部分が前記前方部分から離隔されるように構成された、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記第2の作動状態ではブースト圧が加えられ、
前記解除状態における前記後方部分と前記前方部分との間の距離が、前記第2の作動状態における前記後方部分と前記前方部分との間の距離とほぼ同じになるように、前記スリーブバネ及び前記ブースト圧が選択される、システム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記後方部分はキャビティを備え、
前記前方部分は、前記キャビティと配列されたノーズを備えた、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記スリーブアクチュエータに取り付けられ、加えられたブースト圧に応じて前記伝達ピストンを前記マスタシリンダピストンに向けて押しつけるように構成された保持リングをさらに備えた、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記伝達ピストンは後面を含み、
前記保持リングは、前記スリーブアクチュエータから前記後面と軸線方向に隣接する位置まで内向きに延在する、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記スリーブアクチュエータは前記伝達ピストンの一部分を包囲する、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記伝達ピストンアクチュエータは内部キャビティを含み、
前記入力ロッドは、前記内部キャビティ内に配置されたシールリングを含む、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記内部キャビティは円筒部分及び先細部分を含み、
前記先細部分は前記円筒部分から内向きかつ前方へと先細りになっており、
第2の座部は前記先細部分の後方部分に配置され、
前記第1の座部は前記先細部分の前方部分に配置された、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記シール部材は球状のシール部材である、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記伝達ピストンは後方に面するキャビティを備え、
前記シール部材、前記シール部材バネ、前記伝達ピストンアクチュエータ、及び前記シールリングは前記後方に面するキャビティ内に配置された、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記スリーブアクチュエータは前記伝達ピストンの一部分を包囲する、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、
前記戻しバネの少なくとも一部分は前記後方に面するキャビティ内に配置された、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−35832(P2012−35832A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−155830(P2011−155830)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】