説明

分流式流量計及び流量制御装置

【課題】適切な測定範囲を選択可能な分流式流量計を提供する。
【解決手段】主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔4a,4bが設けられた主流路保持体10と、一対の分流孔4a,4bを介して主流路11と連通する分流路25が設けられた、主流路保持体10に着脱可能な分流路保持体30と、分流路25を流れる流体の流量を検出するための流れセンサ8と、流れセンサ8によって検出される流体の流量と主流路11を流れる流体の流量との分流比を設定するために、分流路25に配置される分流比設定部材と、流れセンサ8によって検出された流量、及び分流比に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する算出回路301と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測技術に関し、特に分流式流量計及び流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業炉、ボイラ、及び空調熱源機器等においては、適切な流量の流体が供給されることが求められている。そのため、流量を正確に計測するための流量計が種々開発されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。ここで、流量計が測定可能な流体の流速又は流量の範囲は限られている。したがって、配管等に流量計を設置する場合、配管に流れる流体の予測される流速又は流量に対応する測定範囲を有する流量計をあらかじめ選定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−173896号公報
【特許文献2】特開2005−300365号公報
【特許文献3】特開2007−3387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、配管に流量計を設置した後に、配管を流れる流体の流速又は流量が、予測よりも少なくなったり、あるいは多くなったりし、流量計の測定範囲を超えてしまう場合がある。この場合、流量計を交換する工事をする必要があり、コストがかかるという問題がある。予測される流速又は流量に対して十分に測定範囲の広い流量計を設置しておけば、この問題は生じないが、その反面、フルスケールに対して低い流速、あるいは小流量の領域で測定が行われる機会が多くなるので、測定精度が悪化しがちになる。そこで本発明は、流速又は流量の適切な測定範囲を選択可能な分流式流量計及び流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、(イ)主流路、及び主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、(ロ)一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた、主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、(ハ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ニ)流れセンサによって検出される流体の流量と主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、分流孔又は分流路に配置される分流比設定部材と、(ホ)流れセンサによって検出された流量、及び分流比に基づいて、主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、を備える分流式流量計であることを要旨とする。
【0006】
本発明に係る分流式流量計によれば、分流路保持体が主流路保持体に着脱可能であり、分流路に分流比設定部材を配置するによって、分流比を容易に設定可能である。そのため、主流路保持体を配管等に固定したまま、分流路を流れる流体の流量を、流れセンサの測定範囲内にすることが可能となる。
【0007】
本発明の他の特徴は、(イ)主流路、主流路に通じる一対の分流孔、及び一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた流路保持体と、(ロ)分流路を覆う、主流路保持体に着脱可能なカバーと、(ハ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ニ)流れセンサによって検出される流体の流量と主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、分流孔又は分流路に配置される分流比設定部材と、(ホ)流れセンサによって検出された流量、及び分流比に基づいて、主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、を備える分流式流量計であることを要旨とする。
【0008】
本発明に係る分流式流量計によれば、分流路を覆うカバーが流路保持体に着脱可能であり、分流路に分流比設定部材を配置するによって、分流比を容易に設定可能である。そのため、流路保持体を配管等に固定したまま、分流路を流れる流体の流量を、流れセンサの測定範囲内にすることが可能となる。
【0009】
さらに、本発明の他の特徴は、(イ)主流路、及び主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、(ロ)一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた、主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、(ハ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ニ)流れセンサによって検出される流体の流量と主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、分流孔又は分流路に配置される分流比設定部材と、(ホ)流れセンサによって検出された流量、及び分流比に基づいて、主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、(ヘ)主流路を流れる流体の流量を制御するための制御弁と、(ト)算出された流量に基づき、制御弁を駆動し、主流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、を備える流量制御装置であることを要旨とする。
【0010】
本発明に係る流量制御装置によれば、分流路保持体が主流路保持体に着脱可能であり、分流路に分流比設定部材を配置するによって、分流比を容易に設定可能である。そのため、主流路保持体を配管等に固定したまま、分流路を流れる流体の流量を、流れセンサの測定範囲内にすることが可能となる。したがって、主流路を流れる流体の流量を正確に計算することが可能となり、また、主流路を流れる流体の流量を正確に調節することも可能となる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、(イ)主流路、主流路に通じる一対の分流孔、及び一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた流路保持体と、(ロ)分流路を覆う、流路保持体に着脱可能なカバーと、(ハ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ニ)流れセンサによって検出される流体の流量と主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、分流孔又は分流路に配置される分流比設定部材と、(ホ)流れセンサによって検出された流量、及び分流比に基づいて、主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、(ヘ)主流路を流れる流体の流量を制御するための制御弁と、(ト)算出された流量に基づき、制御弁を駆動し、主流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、を備える流量制御装置であることを要旨とする。
【0012】
本発明に係る流量制御装置によれば、分流路を覆うカバーが流路保持体に着脱可能であり、分流路に分流比設定部材を配置するによって、分流比を容易に設定可能である。そのため、流路保持体を配管等に固定したまま、分流路を流れる流体の流量を、流れセンサの測定範囲内にすることが可能となる。したがって、主流路を流れる流体の流量を正確に計算することが可能となり、また、主流路を流れる流体の流量を正確に調節することも可能となる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、(イ)主流路、及び主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、(ロ)一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた、主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、(ハ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ニ)流れセンサによって検出される流体の流速を調整するために、分流路に配置される調整部材と、を備える分流式流量計であることを要旨とする。
【0014】
本発明に係る分流式流量計によれば、分流路保持体が主流路保持体に着脱可能であり、分流路に調整部材を配置するによって、流れセンサによって検出される流体の流速を容易に調整可能である。そのため、主流路保持体を配管等に固定したまま、流れセンサによって検出される流体の流速を、流れセンサの測定範囲内にすることが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、(イ)主流路、主流路に通じる一対の分流孔、及び一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた流路保持体と、(ロ)分流路を覆う、流路保持体に着脱可能なカバーと、(ハ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ニ)流れセンサによって検出される流体の流速を調整するために、分流路に配置される調整部材と、を備える分流式流量計であることを要旨とする。
【0016】
本発明に係る分流式流量計によれば、分流路を覆うカバーが流路保持体に着脱可能であり、分流路に調整部材を配置するによって、流れセンサによって検出される流体の流速を容易に調整可能である。そのため、流路保持体を配管等に固定したまま、流れセンサによって検出される流体の流速を、流れセンサの測定範囲内にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、適切な測定範囲を選択可能な分流式流量計及び流量制御装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の図2のIII−III方向から見た断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の図2のIV−IV方向から見た断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る分流路保持体の下面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの図6のVII−VII方向から見た断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材の第1の斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材の第2の斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第1の斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第2の斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第3の斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第4の斜視図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材の下面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材の第1の上面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第1の下面図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材の第2の上面図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第2の下面図である。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第3の下面図である。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第4の下面図である。
【図21】本発明の第1の実施の形態に係る分流路整流部材の第3の上面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る分流路整流部材と分流比設定部材の斜視図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態に係る主流路保持体とシール部材の上面図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態に係る主流路保持体の図24のXXV−XXV方向から見た断面図である。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係る主流路保持体の図24のXXVI−XXVI方向から見た断面図である。
【図27】本発明の第2の実施の形態に係るシール部材と分流比設定部材の第1の上面図である。
【図28】本発明の第2の実施の形態に係るシール部材と分流比設定部材の第2の上面図である。
【図29】本発明の第2の実施の形態に係るシール部材と分流比設定部材の第3の上面図である。
【図30】本発明の第3の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図31】本発明の第4の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図32】本発明の第5の実施の形態に係る流量制御装置の断面図である。
【図33】本発明の第6の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図34】本発明の第6の実施の形態に係る流路保持体の断面図である。
【図35】本発明の第6の実施の形態に係る流路保持体と分流路整流部材の断面図である。
【図36】本発明の第7の実施の形態に係る流量制御装置の断面図である。
【図37】本発明の第8の実施の形態に係る分流式流量計の斜視図である。
【図38】本発明の第8の実施の形態に係る分流式流量計の第1の断面図である。
【図39】本発明の第8の実施の形態に係る分流式流量計の第2の断面図である。
【図40】本発明の第8の実施の形態に係る分流路保持体の拡大下面図である。
【図41】本発明の第8の実施の形態に係る分流比設定部材の拡大下面図である。
【図42】本発明の第8の実施の形態に係る分流路保持体及び分流比設定部材の第1の拡大下面図である。
【図43】本発明の第8の実施の形態に係る分流路保持体及び分流比設定部材の第2の拡大下面図である。
【図44】本発明の第8の実施の形態に係る分流路保持体及び分流比設定部材の第3の拡大下面図である。
【図45】本発明の第8の実施の形態に係る分流式流量計に含まれるCPUの模式図である。
【図46】本発明の第9の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図47】本発明の第9の実施の形態に係る分流比設定部材の斜視図である。
【図48】本発明の第10の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図49】本発明の第10の実施の形態に係る主流路保持体の上面図である。
【図50】本発明の第10の実施の形態に係る主流路保持体の図49のL−L方向から見た断面図である。
【図51】本発明の第10の実施の形態に係る主流路保持体の図49のLI−LI方向から見た断面図である。
【図52】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第1の斜視図である。
【図53】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第2の斜視図である。
【図54】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第3の斜視図である。
【図55】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第4の斜視図である。
【図56】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第1の下面図である。
【図57】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第2の下面図である。
【図58】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第3の下面図である。
【図59】本発明の第10の実施の形態に係る分流路整流部材と分流比設定部材の第4の下面図である。
【図60】本発明の第10の実施の形態の変形例に係る分流路整流部材と分流比設定部材の斜視図である。
【図61】本発明の第11の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図62】本発明の第11の実施の形態に係る主流路保持体とシール部材の上面図である。
【図63】本発明の第11の実施の形態に係る主流路保持体の図62のLXIII−LXIII方向から見た断面図である。
【図64】本発明の第11の実施の形態に係る主流路保持体の図62のLXIV−LXIV方向から見た断面図である。
【図65】本発明の第11の実施の形態に係るシール部材と分流比設定部材の第1の上面図である。
【図66】本発明の第11の実施の形態に係るシール部材と分流比設定部材の第2の上面図である。
【図67】本発明の第11の実施の形態に係るシール部材と分流比設定部材の第3の上面図である。
【図68】本発明の第12の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図69】本発明の第12の実施の形態に係る流路保持体の断面図である。
【図70】本発明の第12の実施の形態に係る流路保持体と分流路整流部材の断面図である。
【図71】本発明の第13の実施の形態に係る分流式流量計の斜視図である。
【図72】本発明の第13の実施の形態に係る分流式流量計の第1の断面図である。
【図73】本発明の第13の実施の形態に係る分流式流量計の第2の断面図である。
【図74】本発明の第13の実施の形態に係る分流比設定部材の拡大下面図である。
【図75】本発明の第13の実施の形態に係る分流路保持体及び分流比設定部材の第1の拡大下面図である。
【図76】本発明の第13の実施の形態に係る分流路保持体及び分流比設定部材の第2の拡大下面図である。
【図77】本発明の第13の実施の形態に係る分流路保持体及び分流比設定部材の第3の拡大下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る分流式流量計は、断面図である図1に示すように、主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔4a,4bが設けられた主流路保持体10と、一対の分流孔4a,4bを介して主流路11と連通する分流路25が設けられた、主流路保持体10に着脱可能な分流路保持体30と、分流路25を流れる流体の流量を検出するための流れセンサ8と、流れセンサ8によって検出される流体の流量と主流路11を流れる流体の流量との分流比を設定するために、分流路25に配置される分流比設定部材49Aとを備える。
【0021】
さらに分流式流量計は、流れセンサ8に電気的に接続され、分流路保持体30に配置された中央演算処理装置(CPU)300を備える。CPU300は、流れセンサ8によって検出された流量、及び分流比設定部材49Aによって設定された分流比に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する算出回路301を備える。なお、図1は断面図であるが、CPU300及び分流比記憶装置400は模式的に描かれており、実際には、マイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、I/O回路等により構成される。
【0022】
上面図である図2、III−III方向から見た断面図である図3、及びIV−IV方向から見た断面図である図4に示すように、六面体の主流路保持体10の対向する二面に、注入口13及び排出口14が設けられている。注入口13及び排出口14のそれぞれには、ガスや液体等の流体を通す配管が挿入される。主流路保持体10の内部に設けられた主流路11は、注入口13から排出口14に貫通している。主流路11の一部に、主流路11の内径を狭める差圧発生構造12が設けられている。差圧発生構造12によって、主流路11の注入口13側と排出口14側の間で、流体の流速に応じた差圧が発生する。差圧発生構造12は、例えばオリフィス又はベンチュリーである。以下、主流路11の差圧発生構造12より注入口13側を上流と呼び、主流路11の差圧発生構造12より排出口14側を下流と呼ぶ。
【0023】
主流路保持体10の主流路11と平行な面には、上方から見て楕円状の凹部16が設けられている。凹部16から主流路11の上流に分流孔4aが貫通し、凹部16から主流路11の下流に分流孔4bが貫通している。主流路保持体10の材料には、金属又は樹脂等が使用可能である。
【0024】
図1に示すように、主流路保持体10の凹部16を覆うように、分流路保持体30は着脱自在に配置される。分流路保持体30の形状は、例えば板状、あるいはブロック状である。分流路保持体30の主流路保持体10に対向する面に、下面図である図5に示すように分流路25が設けられている。分流路25は、下方から見て、図2に示す主流路保持体10の楕円状の凹部16と同様の輪郭を有する凹部である。なお、図1に示すように、主流路保持体10上に分流路保持体30が配置されたときに、分流路保持体30で覆われた凹部16が、分流孔4a,4bを接続する分流路25の一部をなしてもよい。
【0025】
図5に示すように、分流路25中に、流れセンサ8が設けられている。流れセンサ8は、斜視図である図6、及びVII−VII方向から見た断面図である図7に示すように、キャビティ66が設けられた基板60、基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65、及び絶縁膜65に設けられたヒータ61を備える。また、流れセンサ8は、図1に示すように分流路保持体30が主流路保持体10上に配置された場合に、ヒータ61より分流路25の上流側に位置する図6及び図7に示す上流側測温抵抗素子62、ヒータ61より下流側に位置する下流側測温抵抗素子63、及び上流側測温抵抗素子62より上流側に設けられた周囲温度センサ64を備える。
【0026】
絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。周囲温度センサ64は、図1に示す分流路25に流入してきた流体の温度を測定する。図6及び図7に示すヒータ61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65の中心に配置されており、分流路25に流れる流体を、周囲温度センサ64が計測した温度よりも一定温度、例えば10℃高くなるよう、加熱する。上流側測温抵抗素子62はヒータ61より上流側の温度を検出するために用いられ、下流側測温抵抗素子63はヒータ61より下流側の温度を検出するために用いられる。
【0027】
ここで、図1に示す分流路25中の流体が静止している場合、図6及び図7に示すヒータ61で加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に拡散する。したがって、上流側測温抵抗素子62及び下流側測温抵抗素子63の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子62及び下流側測温抵抗素子63の電気抵抗は等しくなる。これに対し、図1に示す分流路25中の流体が上流から下流に流れている場合、図6及び図7に示すヒータ61で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側測温抵抗素子62の温度よりも、下流側測温抵抗素子63の温度が高くなる。そのため、上流側測温抵抗素子62の電気抵抗と、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗に差が生じる。下流側測温抵抗素子63の電気抵抗と上流側測温抵抗素子62の電気抵抗の差は、図1に示す分流路25中の流体の速度と相関関係がある。そのため、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗と上流側測温抵抗素子62の電気抵抗の差から、分流路25を流れる流体の流量が求められる。
【0028】
図6及び図7に示す基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。またヒータ61、上流側測温抵抗素子62、下流側測温抵抗素子63、及び周囲温度センサ64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0029】
図5に示す分流路保持体30の分流路25には、流れセンサ8を覆うように、図8及び図9に示す分流路整流部材620Aがはめ込まれる。図5に示す分流路保持体30の分流路25の内周と図8及び図9に示す分流路整流部材620Aの楕円状の外周は略同一である。分流路整流部材620Aが分流路25にはめ込まれた後、図1に示すように分流路保持体30は主流路保持体10上に配置される。なお、図8は、分流路整流部材620Aを主流路保持体10に対向する面611Aの方から見た斜視図であり、図9は、分流路整流部材620Aを分流路保持体30に対向する面611Bの方から見た斜視図である。
【0030】
図8に示す分流路整流部材620Aの面611Aの外周近傍には、囲壁635が配置されている。囲壁635の内部は、略S字状に配置された仕切り壁630で、上流側と下流側に二分されている。仕切り壁630で二分された囲壁635の内部の上流側において、楕円状の分流路整流部材620Aの長軸と外周の接点近傍に凹部33が設けられている。また、楕円状の分流路整流部材620Aの短軸と平行に、3本の敷居壁131A,131B,131Cが面611A上に配置されている。敷居壁131Aが最も凹部33の近傍に配置されている。敷居壁131Aの長さが最も短く、敷居壁131Aの高さが最も高い。
【0031】
さらに、仕切り壁630で二分された囲壁635の内部の上流側において、楕円状の分流路整流部材620Aの短軸と外周の接点近傍に、第1の連通孔231が設けられている。第1の連通孔231は、敷居壁131A及び敷居壁131Bの間と、敷居壁131B及び敷居壁131Cの間と、敷居壁131C及び仕切り壁630の間とを流れた流体を、面611Aの裏側の図9に示す面611Bの方に通すために設けられている。
【0032】
ここで、図1に示す分流路25の流路抵抗を調節することによって、分流式流量計の分流比を調節するために、図10に示すように、敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を埋めるように分流比設定部材49Aが分流路整流部材620Aの面611A上に配置されるか、図11に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を埋めるように分流比設定部材49Bが配置されるか、図12に示すように、敷居壁131Cと仕切り壁630の間を埋めるように分流比設定部材49Cが配置される。あるいは、図13に示すように、敷居壁131A及び敷居壁131Bの間と、敷居壁131C及び仕切り壁630の間の両方に、分流比設定部材49A及び分流比設定部材49Cが配置される場合もある。
【0033】
分流比設定部材49A,49B,49Cのそれぞれは、板状の部材であり、接着剤等で分流路整流部材620Aの面611A上に固定される。ただし、分流比設定部材49A,49B,49Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを有する複数の分流路整流部材620Aを予め用意しておいてもよい。
【0034】
図8に示す仕切り壁630で二分された囲壁635の内部の下流側においても、楕円状の分流路整流部材620Aの長軸と外周の接点近傍に凹部34が設けられている。また、楕円状の分流路整流部材620Aの短軸と平行に、3本の敷居壁132A,132B,132Cが配置されている。
【0035】
第1の連通孔231及び第2の連通孔232は、図9に示す面611B側に連通している。分流路整流部材620Aの面611Bには、楕円状の分流路整流部材620Aの短軸と平行に、敷居片38A,38Bが設けられている。敷居片38A,38Bの間に、図5に示す流れセンサ8が格納される。面611A,611Bと平行な水平方向において、図8に示す敷居壁131Bと敷居壁131Cの中心線の位置と、図9に示す敷居片38Aと敷居片38Bの中心線の位置は、ほぼ一致する。そのため、図8に示す敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を流れた流体は、第1の連通孔231を通って、図9に示す敷居片38Aと敷居片38Bの間を主に流れる。敷居片38A,38Bの外側には、壁部37A,37Bが平行に設けられている。また、分流路整流部材620Aの面611Bには、金網固定部36が配置されている。金網固定部36によって、金網が適宜固定される。
【0036】
ここで、図1に示す分流路25中における流体の流れについて、図14乃至図21を参照しながら説明する。まず、主流路11の上流から流れてきた流体は、差圧発生構造12によって一部が分流孔4aに流入する。主流路11から分流孔4aに流入した流体は、分流孔4aを通り抜け、分流路整流部材620Aの面611A上を流れる。
【0037】
流体は仕切り壁630によって進行方向を変えられ、分流比設定部材が分流路整流部材620Aに配置されていない場合、敷居壁131A,131B,131C及び仕切り壁630の間を通過する。ここで、各敷居壁間をほぼ均等な量の流体が流れる。流体は、第1の連通孔231を通って、面611Aの裏側の図15に示す面611B側に向かう。
【0038】
第1の連通孔231を通った流体は、金網固定部36に固定された金網636によって整流される。流体は、図5に示した流れセンサ8の下方を通過し、図15に示す第2の連通孔232に向かって進行する。その後、流体は、第2の連通孔232を通って、図14に示す面611A側に戻る。
【0039】
面611A側に戻った流体は、敷居壁132A,132B,132Cの間を通り、仕切り壁630に向かって進行する。さらに流体は、仕切り壁630によって進行方向を変えられ、凹部34を通流し、図1に示す分流孔4bを経て、主流路11に流出する。
【0040】
これに対し、図16に示すように、分流比設定部材49Aが分流路整流部材620Aの敷居壁131Aと敷居壁131Bの間に配置されている場合、流体は敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を流れることができない。そのため、分流比設定部材49Aが配置されていない場合と比べて、より多くの流体が敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を高速に流れる。敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を流れた流体は、第1の連通孔231を通って、流れセンサ8が位置する図17に示す敷居片38A,38Bの間を主に流れる。したがって、図16に示すように、分流比設定部材49Aを敷居壁131Aと敷居壁131Bの間に配置することによって、流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。
【0041】
また、図18に示すように、分流比設定部材49Cを敷居壁131Cと仕切り壁630の間に配置することによっても、流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。さらに、図19に示すように、分流比設定部材49Aを敷居壁131Aと敷居壁131Bの間に配置し、分流比設定部材49Cを敷居壁131Cと仕切り壁630の間に配置することによって、流れセンサ8によって検出される流体の流速をさらに速くすることも可能となる。
【0042】
また、図20に示すように、分流比設定部材49Bが分流路整流部材620Aの敷居壁131Bと敷居壁131Cの間に配置されている場合、流体は敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を流れることができない。そのため、分流比設定部材49Bが配置されていない場合と比べて、図21に示すように、敷居片38A,38Bの間を流れる流体の流量が減少し、流速も低下する。したがって、図20に示すように、分流比設定部材49Bを敷居壁131Bと敷居壁131Cの間に配置することによって、流れセンサ8によって検出される流体の流速を遅くすることも可能になる。
【0043】
図1に示すように、流れセンサ8は、分流路保持体30内部に配置されたCPU300に接続されている。また、分流路保持体30内部には、CPU300に接続された入力装置251と、CPU300に接続された第1の分流比記憶装置400が配置されている。ここで、図10に示すように、敷居壁131Aと敷居壁131Bの間に分流比設定部材49Aを配置したときの分流比の値、図11に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間に分流比設定部材49Bを配置したときの分流比の値、図12に示すように、敷居壁131Cと仕切り壁630の間に分流比設定部材49Cを配置したときの分流比の値、及び図13に示すように、分流比設定部材49Aと分流比設定部材49Cの両方を配置したときの分流比の値は、それぞれ予め取得可能である。したがって、分流比設定部材49A,49B,49Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを配置したユーザ又はエンジニアによって、配置された分流比設定部材に対応する分流比の値が、分流比に関する情報として、図1に示す入力装置251を介して、第1の分流比記憶装置400に入力される。
【0044】
なお、第1の分流比記憶装置400への分流比に関する情報の入力は、パーソナルコンピュータ等を介して行ってもよい。第1の分流比記憶装置400にはRAM等の揮発性メモリ等が使用可能である。CPU300の算出回路301は、分流比に関する情報を、第1の分流比記憶装置400から読み出す。さらに算出回路301は、流れセンサ8で検出した分流路25を流れる流体の流量、及び第1の分流比記憶装置400から読み出した分流比に関する情報に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する。
【0045】
分流路保持体30の上には、液晶ディスプレイ等の表示装置35が配置される。表示装置35は、算出回路301が第1の分流比記憶装置400から読み出した分流比に関する情報、及び算出回路301が算出した主流路11を流れる流体の流量を表示する。表示装置35により、ユーザ又はエンジニアが分流比に関する情報を確認することが可能となる。なお、表示装置35は、分流路保持体30から離れた位置に配置されてもよい。
【0046】
以上示した第1の実施の形態に係る分流式流量計によれば、配管等に設置した後に、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速が遅すぎて、流れセンサ8で流体の流量を適切に測定できないことが判明した場合でも、図10、図12、及び図13に示すように、分流比設定部材49A及び分流比設定部材49Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを配置することにより分流路25の流れセンサ8近傍を流れる流体の流速に対する、主流路11を流れる流体の流速の分流比を容易に下げることが可能となる。また反対に、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速が速すぎて、流れセンサ8で流体の流量を適切に測定できないことが判明した場合でも、図11に示すように、分流比設定部材49Bを配置することにより、容易に分流比を上げることが可能となる。
【0047】
よって、図1に示す流れセンサ8によって測定可能な流速又は流量の範囲が一定であっても、分流比を変更することにより、分流式流量計の測定範囲を実質的に広げることが可能となる。さらに、分流路保持体30が主流路保持体10から分離された場合に、分流路25の内部が露出するため、容易に分流比設定部材49A,49B,49Cを配置又は除去することが可能である。このように、分流路保持体30が主流路保持体10に着脱可能であるため、分流比の変更に際して、主流路保持体10を配管から取り外す必要がない。したがって、従来の分流比を変更できない分流式流量計で必要だった配管からの取り外し工事が不要となり、コストを下げることも可能となる。なお、図10乃至図12に示した分流比設定部材49A,49B,49Cのそれぞれの断面積又は断面形状を変化させることによっても、図1に示す分流路25の流路抵抗を変化させ、結果として分流比を変化させることが可能である。
【0048】
(第1の実施の形態の変形例)
図11においては、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を隙間なく埋めるように、分流比設定部材49Bが配置される例を示した。これに対し、図22に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間に、間隔をおいて分流比設定部材149Bと分流比設定部材249Bを配置してもよい。図11に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を隙間なく埋めると、敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を通った流体と、敷居壁131Cと仕切り壁630の間を通った流体が合流する際に、条件によっては乱流が生じうる場合もある。これに対し、図22に示すように、間隔をおいて分流比設定部材149Bと分流比設定部材249Bを配置することにより、敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を通った流体と、敷居壁131Cと仕切り壁630の間を通った流体が合流する際に生じうる乱流を抑制することが可能となる。
【0049】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る分流式流量計は、断面図である図23に示すように、主流路保持体10と分流路整流部材620Aの間に配置されるシール部材520を備える。板状のシール部材520はゴム等からなり、分流路25から流体が漏れるのを防止する。上面図である図24、XXV−XXV方向から見た断面図である図25、及びXXVI−XXVI方向から見た断面図である図26に示すように、シール部材520は、主流路保持体10の凹部16の底面に配置される。シール部材520には、分流孔4a,4bにそれぞれ連通する貫通孔504a,504bが設けられている。
【0050】
第1の実施の形態においては、図10乃至図12に示したように、分流路整流部材620Aに分流比設定部材49A,49B,49Cを配置する例を示した。これに対し、図27乃至図29に示すように、シール部材520上に分流比設定部材49A,49B,49Cを配置してもよい。なお、図27に示す分流比設定部材49Aは、シール部材520上に図8に示す分流路整流部材620Aが配置される場合に、敷居壁131A及び敷居壁131Bの間に嵌合されるよう配置されている。また、図28に示す分流比設定部材49Bは、シール部材520上に図8に示す分流路整流部材620Aが配置される場合に、敷居壁131B及び敷居壁131Cの間に嵌合されるよう配置されている。また、図29に示す分流比設定部材49Cは、シール部材520上に図8に示す分流路整流部材620Aが配置される場合に、敷居壁131C及び仕切り壁630の間に嵌合されるよう配置されている。
【0051】
図27乃至図29に示す分流比設定部材49A,49B,49Cのそれぞれは、接着剤等でシール部材520上に固定される。ただし、分流比設定部材49A,49B,49Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを有する複数のシール部材520を予め用意しておいてもよい。以上示した第2の実施の形態に係る分流式流量計においても、適切な分流比を容易に設定することが可能となる。
【0052】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る分流式流量計は、図30に示すように、揮発性の第1の分流比記憶装置400に加えて、不揮発性の第2の分流比記憶装置401をさらに備える。不揮発性の第2の分流比記憶装置401にも、分流比に関する情報が、入力装置251を介して、入力される。不揮発性の第2の分流比記憶装置401には、EEPROM等が使用可能である。第3の実施の形態に係る分流式流量計のその他の構成要素は、第1の実施の形態に係る分流式流量計と同様であるので、説明は省略する。
【0053】
ここで、分流式流量計への電力供給が停止した場合、揮発性の第1の分流比記憶装置400に保存されていた分流比に関する情報は消去される。しかし、不揮発性の第2の分流比記憶装置401に保存されていた分流比に関する情報は消去されない。そのため、電力供給が再開された後、第2の分流比記憶装置401に保存されていた分流比に関する情報を、CPU300が第1の分流比記憶装置401に保存しなおすことにより、流量の算出を速やかに再開することが可能となる。
【0054】
あるいは、分流式流量計が電池で駆動されている場合、電池が消耗して必要な電圧が供給不可能になった場合にも、揮発性の第1の分流比記憶装置400に保存されていた分流比に関する情報が消去されうる。この場合も、電池を交換した後、第2の分流比記憶装置401に保存されていた分流比に関する情報を、CPU300が第1の分流比記憶装置401に保存しなおすことにより、流量の算出を速やかに再開することが可能となる。
【0055】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態においては、図1に示すCPU300に、分流比に関する情報として、分流比の値そのものが入力される場合を説明した。これに対し、図31に示す第4の実施の形態に係る分流式流量計のCPU300には、分流比に関する情報として、分流比設定部材49Aの配置位置、断面積、又は断面形状等が入力される。ここで、第4の実施の形態に係る分流式流量計は、CPU300が照合部303をさらに備え、CPU300に照合情報記憶装置403が接続されている。
【0056】
ここで、照合情報記憶装置403は、分流比設定部材49Aの配置位置、断面積、又は断面形状等に対応する分流比の値の対照表等を保存している。照合部303は、照合情報記憶装置403に保存されている対照表を参照して、CPU300が受信した分流比設定部材49Aの配置位置、断面積、又は断面形状等に対応する分流比の値を抽出し、抽出した分流比の値を第1の分流比記憶装置400に保存する。第4の実施の形態に係る分流式流量計のその他の構成要素は、第1の実施の形態に係る分流式流量計と同様であるので、説明は省略する。第4の実施の形態に係る分流式流量計においては、分流比の値そのものをユーザ又はエンジニアが知らなくとも、分流比設定部材49Aの配置位置、断面積、又は断面形状等を入力することにより、正確な分流比の設定が可能となる。
【0057】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る流量制御装置は、図32に示すように、分流式流量計50、分流式流量計50の排出口14に接続された流路99、及び流路99に接続され、流体の流量を制御する制御弁41を備える。制御弁41は、例えばソレノイド弁である。制御弁41は、流路43及び流路44と、流路43及び流路44を連通する弁室45が設けられた弁座42、弁室45に収納され、流路44を開閉する弁体46、弁体46に連結された磁性体のプランジャ47、及び通電されてプランジャ47を上下させるソレノイドコイル48を備える。
【0058】
分流式流量計50は、第1の実施の形態に係る分流式流量計の構成要素に加えて、算出回路301で算出された流量に基づき、制御弁41を駆動し、主流路11及び流路99を流れる流体の流量を調節するコントローラ305をさらに備える。コントローラ305は、算出回路301及び制御弁41のソレノイドコイル48に電気的に接続されている。コントローラ305は算出回路301から流量の信号を受信し、流量が設定値よりも多い場合は、ソレノイドコイル48に通電して、流量を減少させる。また流量が設定値よりも少ない場合は、ソレノイドコイル48に通電して、流量を増加させる。
【0059】
第5の実施の形態に係る流量制御装置は、第1の実施の形態で説明した分流式流量計を採用しているため、分流比を容易に設定し、流量を制御することが可能となる。また、分流式流量計50と制御弁41は一体化してもよい。なお、第2乃至第4の実施の形態で説明した分流式流量計を採用してもよいことはもちろんである。さらに、第5の実施の形態に係る流量制御装置の制御弁は、ソレノイド弁に限定されない。例えば、特開2007−71330号公報に説明されているような、ボール弁を、制御弁として使用してもよい。
【0060】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る分流式流量計は、図33に示すように、主流路11、主流路11に通じる一対の分流孔4a,4b、及び一対の分流孔4a,4bを介して主流路11と連通する分流路125が設けられた流路保持体110と、分流路125を覆う、流路保持体110に着脱可能なカバー39を備える。図34に示すように、分流路125は、流路保持体110の外面に設けられた凹部である。第6の実施の形態においては、図35に示すように、分流比設定部材49Aが固定された分流路整流部材620Aは、流路保持体110の分流路125にはめ込まれる。なお、図11及び図12で説明した分流比設定部材49B,49Cが分流路整流部材620Aに固定された場合も同様である。
【0061】
流路保持体110の形状は、例えば板状、あるいはブロック状である。図35に示すように、分流路整流部材620Aが流路保持体110の分流路125にはめ込まれた後、図33に示すように、分流路125は、流れセンサ8が設けられたカバー39で覆われる。カバー39上には、CPU300、入力装置251、及び第1の分流比記憶装置400を含む計測ユニット130が配置される。第6の実施の形態に係る分流式流量計においては、流路保持体110に設けられた凹部である分流路125が着脱可能なカバー39で覆われているため、分流比の変更が必要な場合は、カバー39を流路保持体110から外すことによって、分流路125の内部が露出する。そのため、図10乃至図13で説明した分流比設定部材49A,49B,49Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを容易に分流路125内に配置して、分流比を変更することが可能である。
【0062】
(第7の実施の形態)
図36に示す第7の実施の形態に係る流量制御装置は、第6の実施の形態で説明した分流式流量計51を用いている他は、第5の実施の形態に係る流量制御装置と同様である。第7の実施の形態に係る流量制御装置においても、分流比を容易に設定し、流量を制御することが可能となる。
【0063】
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態に係る分流式流量計は、斜視図である図37、及び断面図である図38に示すように、注入口13から排出口14に貫通する主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔4a,4bが設けられた主流路保持体210を備える。さらに第8の実施の形態に係る分流式流量計は、分流路25a,25b,25cが設けられた分流路保持体230を備える。分流路25a,25b,25cのそれぞれは、分流路保持体230が主流路保持体210上に配置された場合に、一対の分流孔4a,4bを介して主流路11と連通する。分流路25a,25b,25cは平行に設けられており、また分流路25aを挟むように、分流路25b,25cが設けられている。
【0064】
分流路25a,25b,25cのそれぞれの幅は、例えば同じである。分流路25aの一部を覆うように、分流路保持体230上に、分流路25aを流れる流体の流速又は流量を計測するための流れセンサ8が配置されている。図37、及び主流路11に対して垂直方向の断面図である図39に示すように、主流路保持体210には、分流路保持体230が配置された場合に、流れセンサ8を格納するための凹部225が設けられている。
【0065】
分流路保持体230の主流路保持体210に対向する面の拡大図である図40に示すように、分流路25aと分流路25cのピッチL1は、分流路25aと分流路25bのピッチL2の2倍である。また、分流路保持体230には、分流路25a,25b,25cと垂直に交差する溝525が設けられている。溝525には、図41に示す板状の分流比設定部材425が配置される。分流比設定部材425には、選択用流路421,422,423,424が平行に設けられている。選択用流路421,422,423,424のそれぞれの幅は、例えば分流路25a,25b,25cのそれぞれの幅と同じである。また、選択用流路421と選択用流路422のピッチL2、選択用流路422と選択用流路423のピッチL2、並びに選択用流路423と選択用流路424のピッチL2のそれぞれは、図40に示す分流路25aと分流路25bのピッチL2と同じである。
【0066】
図41に示す分流比設定部材425は、図40に示す溝525にはめ込まれ、分流路25a,25b,25cに垂直な方向にスライド可能である。ここで、分流路25a,25b,25cに均等に流体を流す場合、図42に示すように、選択用流路421で分流路25cを連通させ、選択用流路423で分流路25aを連通させ、選択用流路424で分流路25bを連通させるように、分流比設定部材425が配置される。この場合、分流路25aと分流路25cのピッチL1が、選択用流路421と選択用流路422のピッチL2の2倍であるため、選択用流路422は孤立し、流体を通さない。
【0067】
これに対し、分流路25a,25bに流体を流し、分流路25cに流体を流さない場合、図43に示すように、選択用流路422で分流路25aを連通させ、選択用流路423で分流路25bを連通させるように、分流比設定部材425が配置される。この場合、分流路25aと分流路25cのピッチL1が、選択用流路421と選択用流路422のピッチL2の2倍であるため、選択用流路421は孤立し、流体を通さない。また、選択用流路424も孤立し、流体を通さない。したがって、分流路25cは連通されず、分流比設定部材425で遮断される。また、分流路25cが遮断されるため、より多くの流体が分流路25a,25bを流れる。そのため、図38に示す流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。
【0068】
また、分流路25a,25cに流体を流し、分流路25bに流体を流さない場合、図44に示すように、選択用流路422で分流路25cを連通させ、選択用流路424で分流路25aを連通させるように、分流比設定部材425が配置される。この場合、分流路25aと分流路25cのピッチL1が、選択用流路422と選択用流路423のピッチL2の2倍であるため、選択用流路423は孤立し、流体を通さない。また、選択用流路421も孤立し、流体を通さない。したがって、分流路25bは連通されず、分流比設定部材425で遮断される。また、分流路25bが遮断されるため、より多くの流体が分流路25a,25cを流れる。そのため、図38に示す流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。
【0069】
図37に示すように、分流路保持体230には、分流比検出手段290がさらに設けられている。分流比検出手段290は、分流比設定部材425の配置を検出する。分流比検出手段290には、スライドスイッチ等が使用可能である。図45に模式的に示すように、流れセンサ8及び分流比検出手段290はCPU300に接続されている。CPU300に接続されている照合情報記憶装置413は、図42に示すように分流路25a,25b,25cが連通するように分流比設定部材425が配置された場合の分流比の値、図43に示すように分流路25a,25bが連通するように分流比設定部材425が配置された場合の分流比の値、及び図44に示すように分流路25a,25cが連通するように分流比設定部材425が配置された場合の分流比の値を保存する。
【0070】
図37に示す分流比検出手段290が分流比設定部材425の配置を検出すると、図45に示す照合部323は、分流比設定部材425の配置に対応する分流比の値を照合情報記憶装置413から読み出し、第1の分流比記憶装置400に保存する。その後、算出回路301が、主流路11を流れる流量を算出する方法は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。第8の実施の形態に係る分流式流量計によれば、分流比設定部材425の配置を自動的に検出し、主流路11を流れる流量を算出することが可能になる。ただし、ユーザ又はエンジニアが分流路の値を第1の分流比記憶装置400に保存してもよいことはもちろんである。
【0071】
(第9の実施の形態)
第9の実施の形態に係る分流式流量計においては、断面図である図46に示すように、分流孔4a,4bに、分流比設定部材349A,349Bがそれぞれ配置される。分流比設定部材349A,349Bは、図47に示すように、筒状である。図3に示したように、分流孔4a,4bのそれぞれの内部には段が設けられており、分流孔4a,4bのそれぞれの内径は、主流路11に接続する側の方が、凹部16に接続する側よりも狭くなっている。図46に示す分流比設定部材349A,349Bは、凹部16側から、分流孔4a,4bの内部の段上に挿入される。筒状の分流比設定部材349Aの内径は、例えば、分流孔4aの主流路11に接続する側の内径以上である。これにより、主流路11から分流孔4aに流入する流体に乱流が生じることを防止し、かつ、流体によって分流比設定部材349Aが押し流されることを防止する。第9の実施の形態に係る分流式流量計によれば、分流路保持体30を主流路保持体10から分離された場合に、図3に示すように分流孔4a,4bが外部に露出する。そのため、図46に示す分流比設定部材349A,349Bを容易に配置又は除去し、分流比を変更することが可能となる。
【0072】
(第10の実施の形態)
第10の実施の形態に係る分流式流量計は、断面図である図48に示すように、主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔604a,604bが設けられた主流路保持体10と、一対の分流孔604a,604bを介して主流路11と連通する分流路25が設けられた、主流路保持体10に着脱可能な分流路保持体30と、を備える。さらに、分流式流量計は、流れセンサ8によって検出される流体の流速を調整するために、分流路25に配置される調整部材549Aを備える。また、分流式流量計は、分流路25を流れる流体の流量を検出するための流れセンサ8と、流れセンサ8によって検出された流量に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する算出回路301と、を備える。
【0073】
上面図である図49、L−L方向から見た断面図である図50、及びLI−LI方向から見た断面図である図51に示すように、主流路11の一部に、主流路11の内径を狭める差圧発生構造112が設けられている。例えばオリフィス又はベンチュリー等の差圧発生構造112によって、主流路11の注入口13側と排出口14側の間で、流体の流速に応じた差圧が発生する。主流路保持体10の主流路11と平行な面には、上方から見て楕円状の凹部16が設けられている。凹部16から主流路11の上流に分流孔604aが貫通し、凹部16から主流路11の下流に分流孔604bが貫通している。差圧発生構造112によって、主流路11の上流から流れてきた流体の一部が、分流孔604aに流入する。
【0074】
図48に示す流れセンサ8によって検出される流体の流速を調節するために、図52に示すように、分流路整流部材620Aの敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を埋めるように、調整部材549Aが分流路整流部材620Aの面611A上に配置される。あるいは、図53に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を埋めるように、調整部材549Bが分流路整流部材620Aに配置される。あるいは、図54に示すように、敷居壁131Cと仕切り壁630の間を埋めるように、調整部材549Cが分流路整流部材620Aに配置される。あるいは、図55に示すように、敷居壁131A及び敷居壁131Bの間と、敷居壁131C及び仕切り壁630の間の両方に、調整部材549A及び調整部材549Cが配置される。
【0075】
図52乃至図55に示す調整部材549A,549B,549Cのそれぞれは、板状の部材であり、接着剤等で分流路整流部材620Aの面611A上に固定される。ただし、調整部材549A,549B,549Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを有する複数の分流路整流部材620Aを予め用意しておいてもよい。
【0076】
第10の実施の形態においては、例えば、調整部材549A,549B,549Cを分流路整流部材620Aに配置しても、分流式流量計の分流比がほぼ同じとなるよう、図48に示す差圧発生構造112及び分流孔604a,604bの大きさが設定されている。したがって、第10の実施の形態に係る分流式流量計は、ほぼ固有の分流比を有する。
【0077】
ここで、図56に示すように、調整部材549Aが分流路整流部材620Aの敷居壁131Aと敷居壁131Bの間に配置されている場合、流体は敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を流れることができない。そのため、調整部材549Aが配置されていない場合と比べて、流体が、敷居壁131Bと敷居壁131Cとの間を高速に流れる。したがって、流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。
【0078】
また、図57に示すように、調整部材549Cを敷居壁131Cと仕切り壁630の間に配置することによっても、流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。さらに、図58に示すように、調整部材549Aを敷居壁131Aと敷居壁131Bの間に配置し、調整部材549Cを敷居壁131Cと仕切り壁630の間に配置することによって、流れセンサ8によって検出される流体の流速をさらに速くすることも可能となる。
【0079】
また、図59に示すように、調整部材549Bが分流路整流部材620Aの敷居壁131Bと敷居壁131Cとの間に配置されている場合、流体は敷居壁131Bと敷居壁131Cとの間を流れることができない。そのため、流れセンサ8によって検出される流体の流速を遅くすることも可能になる。
【0080】
CPU300の算出回路301は、流れセンサ8で検出した分流路25を流れる流体の流量、及び分流式流量計の固有の分流比に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する。
【0081】
以上示した第10の実施の形態に係る分流式流量計によれば、流体の流速が流れセンサ8の測定レンジ以下となり、流体の流量を適切に測定できない場合でも、図52、図54、及び図55に示すように、調整部材549A及び調整部材549Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを配置し、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速を容易に上昇させることが可能となる。また反対に、流体の流速が流れセンサ8の測定レンジ以上となり、流体の流量を適切に測定できない場合でも、図53に示すように、調整部材549Bを配置し、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速を容易に低下させることが可能となる。
【0082】
よって、図48に示す流れセンサ8によって測定可能な流速の範囲が一定であっても、流れセンサ8近傍の流体の流速を調節することにより、分流式流量計の測定範囲を実質的に広げることが可能となる。さらに、分流路保持体30を主流路保持体10から分離させると、分流路25の内部が露出するため、容易に調整部材549A,549B,549Cを配置又は除去することが可能である。このように、分流路保持体30が主流路保持体10に着脱可能であるため、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速を調節する際に、主流路保持体10を配管から取り外す必要がない。したがって、配管からの取り外し工事が不要となり、コストを下げることも可能となる。なお、図52乃至図54に示した調整部材549A,549B,549Cのそれぞれの断面積又は断面形状を変化させることによっても、流れセンサ8近傍の流体の流速を調節することが可能である。
【0083】
(第10の実施の形態の変形例)
図53においては、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を隙間なく埋めるように、調整部材549Bが配置される例を示した。これに対し、図60に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間に、間隔をおいて調整部材649Bと調整部材749Bを配置してもよい。図53に示すように、敷居壁131Bと敷居壁131Cの間を隙間なく埋めると、敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を通った流体と、敷居壁131Cと仕切り壁630の間を通った流体が合流する際に、条件によっては乱流が生じうる場合もある。これに対し、図60に示すように、間隔をおいて調整部材649Bと調整部材749Bを配置することにより、敷居壁131Aと敷居壁131Bの間を通った流体と、敷居壁131Cと仕切り壁630の間を通った流体が合流する際に生じうる乱流を抑制することが可能となる。
【0084】
(第11の実施の形態)
第11の実施の形態に係る分流式流量計は、断面図である図61に示すように、主流路保持体10と分流路整流部材620Aの間に配置されるシール部材520を備える。上面図である図62、LXIII−LXIII方向から見た断面図である図63、及びLXIV−LXIV方向から見た断面図である図64に示すように、シール部材520は、分流孔604a,604bにそれぞれ連通する貫通孔704a,704bが設けられている。第11の実施の形態においても、分流式流量計の分流比がほぼ分流比がほぼ同じとなるよう、差圧発生構造112、及び分流孔604a,604bの大きさが設定されている。
【0085】
第10の実施の形態においては、図52乃至図54に示したように、分流路整流部材620Aに調整部材549A,549B,549Cを配置する例を示した。これに対し、図65乃至図67に示すように、シール部材520上に調整部材549A,549B,549Cを配置してもよい。なお、図65に示す調整部材549Aは、シール部材520上に図8に示す分流路整流部材620Aが配置される場合に、敷居壁131A及び敷居壁131Bの間に嵌合されるよう配置されている。また、図66に示す調整部材549Bは、シール部材520上に図8に示す分流路整流部材620Aが配置される場合に、敷居壁131B及び敷居壁131Cの間に嵌合されるよう配置されている。また、図67に示す調整部材549Cは、シール部材520上に図8に示す分流路整流部材620Aが配置される場合に、敷居壁131C及び仕切り壁630の間に嵌合されるよう配置されている。
【0086】
図65乃至図67に示す調整部材549A,549B,549Cのそれぞれは、接着剤等でシール部材520上に固定される。ただし、調整部材549A,549B,549Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを有する複数のシール部材520を予め用意しておいてもよい。以上示した第11の実施の形態に係る分流式流量計においても、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速を容易に調整することが可能となる。
【0087】
(第12の実施の形態)
第12の実施の形態に係る分流式流量計は、図68に示すように、主流路11、主流路11に通じる一対の分流孔604a,604b、及び一対の分流孔604a,604bを介して主流路11と連通する分流路125が設けられた流路保持体110と、分流路125を覆う、流路保持体110に着脱可能なカバー39を備える。第12の実施の形態においても、分流比がほぼ同じとなるよう、差圧発生構造112及び分流孔604a,604bの大きさが設定されている。
【0088】
図69に示すように、分流路125は、流路保持体110の外面に設けられた凹部である。第12の実施の形態においては、図70に示すように、調整部材549Aが固定された分流路整流部材620Aは、流路保持体110の分流路125にはめ込まれる。なお、図53及び図54で説明した調整部材549B,549Cが分流路整流部材620Aに固定された場合も同様である。
【0089】
第12の実施の形態に係る分流式流量計においては、流路保持体110に設けられた凹部である分流路125が着脱可能なカバー39で覆われている。流れセンサ8近傍を流れる流体の流速の調整が必要な場合、カバー39を流路保持体110から外せば、分流路125の内部が露出する。そのため、図52乃至図55で説明した調整部材549A,549B,549Cのいずれか、又はこれらの組み合わせを容易に分流路125内に配置して、流れセンサ8近傍を流れる流体の流速を調節することが可能である。
【0090】
(第13の実施の形態)
第13の実施の形態に係る分流式流量計は、斜視図である図71、断面図である図72、及び図73に示すように、差圧発生構造112が設けられた主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔604a,604bが設けられた主流路保持体210を備える。第13の実施の形態においても、分流比がほぼ同じとなるよう、差圧発生構造112及び分流孔604a,604bの大きさが設定されている。
【0091】
分流路25a,25b,25cのそれぞれは、分流路保持体230が主流路保持体210上に配置された場合に、一対の分流孔604a,604bを介して主流路11と連通する。また、分流路25aの一部を覆うように、分流路保持体230上に、分流路25aを流れる流体の流速又は流量を計測するための流れセンサ8が配置されている。
【0092】
図71に示す溝525には、図74に示す、板状の調整部材925が配置される。調整部材925には、選択用流路921,922,923,924が平行に設けられている。選択用流路921,922,923,924のそれぞれの幅は、例えば分流路25a,25b,25cのそれぞれの幅と同じである。また、選択用流路921と選択用流路922のピッチL2、選択用流路922と選択用流路923のピッチL2、並びに選択用流路923と選択用流路924のピッチL2のそれぞれは、図71に示す分流路25aと分流路25bのピッチと同じである。
【0093】
図74に示す調整部材925は、図71に示す溝525にはめ込まれ、分流路25a,25b,25cに垂直な方向にスライド可能である。ここで、分流路25a,25b,25cに均等に流体を流す場合、図75に示すように、選択用流路921で分流路25cを連通させ、選択用流路923で分流路25aを連通させ、選択用流路924で分流路25bを連通させるように、調整部材925が配置される。この場合、分流路25aと分流路25cのピッチL1が、選択用流路921と選択用流路922のピッチL2の2倍であるため、選択用流路922は孤立し、流体を通さない。
【0094】
これに対し、分流路25a,25bに流体を流し、分流路25cに流体を流さない場合、図76に示すように、選択用流路922で分流路25aを連通させ、選択用流路923で分流路25bを連通させるように、調整部材925が配置される。この場合、分流路25aと分流路25cのピッチL1が、選択用流路921と選択用流路922のピッチL2の2倍であるため、選択用流路921は孤立し、流体を通さない。また、選択用流路924も孤立し、流体を通さない。したがって、分流路25cは連通されず、調整部材925で遮断される。また、分流路25cが遮断されるため、より多くの流体が分流路25a,25bを流れる。そのため、図72に示す流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。
【0095】
また、分流路25a,25cに流体を流し、分流路25bに流体を流さない場合、図77に示すように、選択用流路922で分流路25cを連通させ、選択用流路924で分流路25aを連通させるように、調整部材925が配置される。この場合、分流路25aと分流路25cのピッチL1が、選択用流路922と選択用流路923のピッチL2の2倍であるため、選択用流路923は孤立し、流体を通さない。また、選択用流路921も孤立し、流体を通さない。したがって、分流路25bは連通されず、調整部材925で遮断される。また、分流路25bが遮断されるため、より多くの流体が分流路25a,25cを流れる。そのため、図72に示す流れセンサ8によって検出される流体の流速を速くすることが可能になる。
【0096】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、分流式流量計は、図1に示す算出回路301が第1の分流比記憶装置400から読み出した分流比に関する情報、及び算出回路301が算出した主流路11を流れる流体の流量を、外部のパーソナルコンピュータ等に送信する送信装置を備えていてもよい。また、図30に示す第2の分流比記憶装置401は、分流路保持体30から着脱可能であってもよい。着脱可能にすることにより、第2の分流比記憶装置401に保持されている情報を、外部の機器で読み出すことが可能となる。また、第10乃至第13に係る分流式流量計を用いて、流量制御装置を構成してもよい。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0097】
4a,4b,604a,604b 分流孔
8 流れセンサ
10,210 主流路保持体
11 主流路
12 差圧発生構造
13 注入口
14 排出口
16,33,34 凹部
25,25a,25b,25c,125 分流路
30,230 分流路保持体
35 表示装置
36 金網固定部
37A,37B 壁部
38A,38B 敷居片
39 カバー
41 制御弁
42 弁座
43,44,99 流路
45 弁室
46 弁体
47 プランジャ
48 ソレノイドコイル
49A,49B,49C,149B,249B,349A,349B,425 分流比設定部材
50,51 分流式流量計
60 基板
61 ヒータ
62 上流側測温抵抗素子
63 下流側測温抵抗素子
64 周囲温度センサ
65 絶縁膜
66 キャビティ
110 流路保持体
112 差圧発生構造
130 計測ユニット
131A,131B,131C,132A,132B,132C 敷居壁
225 凹部
231,232 連通孔
251 入力装置
290 分流比検出手段
301 算出回路
303,323 照合部
305 コントローラ
400 第1の分流比記憶装置
401 第2の分流比記憶装置
403,413 照合情報記憶装置
421,422,423,424,921,922,923,924 選択用流路
504a,504b,704a,704b 貫通孔
520 シール部材
525 溝
549A,549B,549C,649B,749B,925 調整部材
611A,611B 面
620A 分流路整流部材
630 壁
635 囲壁
636 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路、及び前記主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、
前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた、前記主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記流れセンサによって検出される流体の流量と前記主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、前記分流孔又は前記分流路に配置される分流比設定部材と、
前記流れセンサによって検出された流量、及び前記分流比に基づいて、前記主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、
を備えることを特徴とする分流式流量計。
【請求項2】
前記分流路の少なくとも一部が、前記分流路保持体の前記主流路保持体に対向する面に凹部として設けられており、前記分流路保持体が前記主流路保持体から分離された場合に、前記分流路の内部が露出することを特徴とする請求項1に記載の分流式流量計。
【請求項3】
主流路、前記主流路に通じる一対の分流孔、及び前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた流路保持体と、
前記分流路を覆う、前記流路保持体に着脱可能なカバーと、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記流れセンサによって検出される流体の流量と前記主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、前記分流孔又は前記分流路に配置される分流比設定部材と、
前記流れセンサによって検出された流量、及び前記分流比に基づいて、前記主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、
を備えることを特徴とする分流式流量計。
【請求項4】
前記分流路の少なくとも一部が、前記流路保持体の外面に凹部として設けられており、前記カバーが分離された場合に、前記分流路の内部が露出することを特徴とする請求項3に記載の分流式流量計。
【請求項5】
前記分流比設定部材で設定される前記分流路の流路抵抗によって前記分流比が設定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項6】
前記分流路における前記分流比設定部材の位置によって前記分流比が設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項7】
前記分流比設定部材で設定される前記分流路の断面積によって前記分流比が設定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項8】
前記分流比設定部材で設定される前記分流路の断面形状によって前記分流比が設定されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項9】
前記分流比設定部材が、前記流れセンサに対して、前記流体の上流側に配置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項10】
前記分流比に関する情報を保存するための分流比記憶装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項11】
前記分流比に関する情報が、分流比の値であることを特徴とする請求項10に記載の分流式流量計。
【請求項12】
前記分流比設定部材を検出する分流比設定部材検出部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項13】
前記分流比設定部材検出部で検出された前記分流比設定部材で決定される分流比の値を照合する照合部を更に備えることを特徴とする請求項12に記載の分流式流量計。
【請求項14】
主流路、及び前記主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、
前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた、前記主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記流れセンサによって検出される流体の流量と前記主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、前記分流孔又は前記分流路に配置される分流比設定部材と、
前記流れセンサによって検出された流量、及び前記分流比に基づいて、前記主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、
前記主流路を流れる流体の流量を制御するための制御弁と、
前記算出された流量に基づき、前記制御弁を駆動し、前記主流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、
を備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項15】
前記分流路の少なくとも一部が、前記分流路保持体の前記主流路保持体に対向する面に凹部として設けられており、前記分流路保持体が前記主流路保持体から分離された場合に、前記分流路の内部が露出することを特徴とする請求項14に記載の流量制御装置。
【請求項16】
主流路、前記主流路に通じる一対の分流孔、及び前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた流路保持体と、
前記分流路を覆う、前記流路保持体に着脱可能なカバーと、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記流れセンサによって検出される流体の流量と前記主流路を流れる流体の流量との分流比を設定するために、前記分流孔又は前記分流路に配置される分流比設定部材と、
前記流れセンサによって検出された流量、及び前記分流比に基づいて、前記主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、
前記主流路を流れる流体の流量を制御するための制御弁と、
前記算出された流量に基づき、前記制御弁を駆動し、前記主流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、
を備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項17】
前記分流路の少なくとも一部が、前記流路保持体の外面に凹部として設けられており、前記カバーが分離された場合に、前記分流路の内部が露出することを特徴とする請求項16に記載の流量制御装置。
【請求項18】
主流路、及び前記主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、
前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた、前記主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記流れセンサによって検出される流体の流速を調整するために、前記分流路に配置される調整部材と、
を備えることを特徴とする分流式流量計。
【請求項19】
前記分流路の少なくとも一部が、前記分流路保持体の前記主流路保持体に対向する面に凹部として設けられており、前記分流路保持体が前記主流路保持体から分離された場合に、前記分流路の内部が露出することを特徴とする請求項18に記載の分流式流量計。
【請求項20】
主流路、前記主流路に通じる一対の分流孔、及び前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた流路保持体と、
前記分流路を覆う、前記流路保持体に着脱可能なカバーと、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記流れセンサによって検出される流体の流速を調整するために、前記分流路に配置される調整部材と、
を備えることを特徴とする分流式流量計。
【請求項21】
前記分流路の少なくとも一部が、前記流路保持体の外面に凹部として設けられており、前記カバーが分離された場合に、前記分流路の内部が露出することを特徴とする請求項20に記載の分流式流量計。
【請求項22】
前記分流路における前記調整部材の位置によって、前記流速が調整されることを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項23】
前記分流路を流れる流体の流量と前記主流路を流れる流体の流量との分流比が一定である、請求項18乃至22のいずれか1項に記載の分流式流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【公開番号】特開2010−151785(P2010−151785A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79673(P2009−79673)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】