説明

切換可能なクラッチ装置、特に摩擦接続式の湿式クラッチ、ハイブリッドシステムに用いられるパワートレーン、このような形式のパワートレーンを運転するための方法およびこのような形式のパワートレーンを備えた車両

第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置であって、圧力媒体で操作可能な作動装置が設けられている形式のものは、本発明によれば、切換可能なクラッチ装置が、2つの部分クラッチ、つまり、メインクラッチを成す第1の部分クラッチと、ドラグクラッチを成す第2の部分クラッチとから成っており、両部分クラッチが、それぞれ作動装置の終端位置、つまり、前記メインクラッチの切断状態によって特徴付けられた第1の切断終端位置と、前記メインクラッチの接続状態によって特徴付けられた第2の接続終端位置とにおいて摩擦モーメントを発生させるために適しているように配置されていて、形成されていることによって特徴付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置、特に摩擦接続式の湿式クラッチであって、圧力媒体で操作可能な作動装置が設けられている形式のものに関する。
【0002】
さらに、本発明は、車両のハイブリッドシステムに用いられるパワートレーンであって、少なくとも1つの第1の原動機と第2の原動機とが設けられており、両原動機が、別個にまたは一緒に力伝達装置を介して伝達ユニット、特に伝動装置に接続可能であり、さらに、第1の原動機と力伝達装置との間に配置された、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置が設けられている形式のものに関する。
【0003】
さらに、本発明は、車両に関する。
【0004】
さらに、本発明は、ハイブリッドシステムに用いられる前述した形式のパワートレーンを運転するための方法に関する。
【0005】
車両に使用するためのハイブリッドシステムは、多数の構成で公知先行技術に基づき公知である。全てに共通して、パワートレーンに少なくとも2種類の原動機が設けられている。これらの原動機を介して駆動を選択的にまたは一緒に行うことができる。原動機の少なくとも1つは、第1の運転モードでは、原動機として機能するために適していて、第2の運転モードでは、制動エネルギを、一時的に蓄積するためのかつ/または別の消費器に対する駆動エネルギとしての別のエネルギ形態に変換するための機械として機能するために適している。車両に使用するためには、第1の原動機がしばしば内燃機関として形成されているのに対して、第2の原動機は電気機械として形成されている。この電気機械は、ジェネレータ運転において電気的なエネルギを蓄電池に供給するために適している。このような形式のハイブリッドシステムは、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第10310831号明細書の図30に示されている。このハイブリッドシステムは力伝達装置を有している。この力伝達装置は、2つの原動機と、伝動装置の形の後置された消費器との間に配置されている。第1の原動機をパワートレーンから完全に切り離すためには、第1の原動機と力伝達装置との間に、パワーフローを遮断/実現するための装置が設けられている。この装置は、切換可能なクラッチ装置の形で形成されている。この切換可能なクラッチ装置は、エンジンクラッチまたは分離クラッチとも呼ばれる。第2の原動機は電気機械として形成されている。この電気機械のロータは力伝達装置に相対回動不能に結合されている。この力伝達装置は、少なくとも1つの発進エレメント、有利にはハイドロダイナミック式の構成要素と、この例では、さらに、このハイドロダイナミック式の構成要素を介するパワーフローを少なくとも部分的に迂回するための装置とを有している。この装置は、有利には摩擦接続式の切換可能なクラッチ装置として形成されている。この摩擦接続式の切換可能なクラッチ装置はロックアップクラッチとも呼ばれ、パワーフローにおいて、ハイドロダイナミック式の構成要素の迂回を可能にする。一般的にシフト変速機として形成された後置された伝動装置は、圧力媒体操作される複数のシフトエレメントによって特徴付けられている。力伝達装置と伝動装置のシフトエレメントとに対する圧力媒体供給を保証するためには、相応の運転・制御媒体供給および/または案内システムが設けられている。この運転・制御媒体供給および/または案内システムは少なくとも1つのハイドロリック回路システムを有している。このハイドロリック回路システムには、相応の圧力を備えた所要の運転媒体が、いわゆる「伝動装置オイルポンプ」の形の圧送装置を介して圧送される。伝動装置ポンプの機能は、たとえばハイドロリック式の制御部材または分離クラッチおよび/または発進クラッチを運転するために必要となる。伝動装置オイルポンプは、確実な機能を保証するために、有利には直接的に力伝達装置の入力部材に相対回動不能に結合されている。この連結によって、パワートレーンの種々異なる運転モードでの駆動が可能となる。
【0006】
このような形式のパワートレーンの可能な基本運転モードとして、トラクション運転において、別の下位運転モードによって変更可能である以下の運転モード:すなわち、
−走行、特に第1の原動機、特に内燃機関と力伝達装置との間でパワーフローを遮断/実現するための装置の接続時に第1の原動機から、特に力伝達装置の第1の出力分岐路および/または第2の出力分岐路を介して伝動装置へのパワーフローを備えたエンジン走行、
−走行、特に第1の原動機と力伝達装置との間でパワーフローを遮断/実現するための装置の切断/分離時に第2の原動機、特に電気機械から力伝達装置の第1の出力分岐路および/または第2の出力分岐路を介したパワーフローを備えた電気走行:
が識別される。
【0007】
緊急運転は、固有のスタータを介して始動される第1の原動機を介した駆動によって特徴付けられている。
【0008】
しかし、このような形式のシステムの主要な欠点は、このために使用される公知のハイドロリックシステムが、車両の静止中、特に一方または両方の原動機の停止時、たとえば短時間の停止時にも、伝動装置オイルポンプの不十分な駆動に基づき空運転されることがあることにある。なぜならば、伝動装置オイルポンプを介した循環の維持が不十分な駆動に基づき行われず、システムに存在する運転媒体が各戻し通路を介して運転媒体ストックに戻されるからである。その後、たとえばアクセルペダルの操作時の再度の発進時に、まず、ハイドロリック供給部材ひいては伝動装置オイルポンプが駆動されなければならない。さらに、この伝動装置オイルポンプは、必要となる操作したい作動装置が負荷されてハイドロダイナミック式の構成要素が充填されるようにするために、十分な圧力と体積とを提供しなければならない。このことは、アクセルペダルの操作に対する著しい遅れに繋がり、事情により、多数の状況において著しい安全性リスクも成しているので、車両の静止中にも伝動装置のハイドロリックシステムが少ない圧力で充填されて維持されなければならない必要がある。使用される伝動装置オイルポンプは、静止中、特にハイドロリックシステムの漏れをカバーすることができなければならない。このことを保証するためには、公知先行技術において、しばしば電気的に駆動される付加的なオイルポンプが使用される。択一的には、ハイブリッドシステムの電気機械と、既存のメイン伝動装置オイルポンプとが使用されてよいものの、このことは技術的な欠点に結び付けられている。つまり、付加的に設けられた電気的に駆動されるオイルポンプが、かなりの多大な手間を招いてしまう。他方では、このような形式の付加ポンプを使用しないことも多数の欠点によって特徴付けられている。このような構成において、クラッチ装置が無圧状態で切断されている場合には、緊急運転特性がもはや保証されていない。内燃機関が付加的なスタータを介して始動される場合でさえ、オイル圧を伝動装置内に形成することができない。なぜならば、オイルポンプが駆動されるようにするために、「無圧で切断された」クラッチ装置を接続することができないからである。しかし、これと異なり、無圧状態で接続されるクラッチ装置が使用される場合には、伝動装置オイルポンプが緊急運転において即座に一緒に駆動され、システムが従来の自動変速機の様相を呈す。しかし、その際には、クラッチ装置を適合させるための高い手間に主要な欠点がある。
【0009】
公知のパワートレーンにおいて、エンジンクラッチの制御時には、伝動装置が、たとえば制御エラーに基づき妨害されていて、緊急運転モードで運転される場合に問題が生じることがある。このような妨害例の付与時には、場合により存在する電動式の付加ポンプが使用不能となる。なぜならば、この付加ポンプも同じく伝動装置制御装置に応答するからである。
【0010】
さらに、状態「電気走行」では、互いに相対的に回転する摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントによるドラグ損失(引きずり損失)を阻止するために、エンジン側のクラッチが完全に切断されていることが必要となる。しかし、この運転範囲内では、たいていの例において、クラッチを完全に切断するために必要となる最小圧が提供されない。しかし、無圧で接続されるクラッチの使用は、電気走行時に極めて高い圧力を招く。これによって、システム全体の効率が悪化させられる。
【0011】
湿式クラッチとトルクコンバータとが互いにハイドロリック的に相互作用する実際に技術的に得難い解決手段も可能であってよい。
【0012】
公知先行技術による別のパワートレーンが、たとえばドイツ連邦共和国特許出願第102006040117号明細書に基づき公知である。
【0013】
したがって、本発明の課題は、冒頭に記載した形式のハイブリッドシステムに用いられるパワートレーンを改良して、このパワートレーンが、いずれにせよ既存のかつ所要の伝動装置オイルポンプに対して付加的な付加ポンプを可能な限り備えることなく、前述した欠点を回避するために適しているようにすることにある。さらに、本発明の課題は、改善された緊急運転特性を備えた、ハイブリッドシステムに用いられるパワートレーンを提供することにある。その際には、種々異なる要求が可能な限り最小限の手間で満たされなければならない。したがって、つまるところ、切換可能なクラッチ装置、特にエンジンクラッチを電気走行時に可能な限り摩擦なしに切断することができなければならない。これに対して、クラッチは、伝動装置緊急運転中には、伝動装置ひいては伝動装置オイルポンプを駆動することができるようにするために接続されていることが望ましい。
【0014】
この課題を解決するために本発明に係る切換可能なクラッチ装置では、切換可能なクラッチ装置が、2つの部分クラッチ、つまり、メインクラッチを成す第1の部分クラッチと、ドラグクラッチを成す第2の部分クラッチとから成っており、両部分クラッチが、それぞれ作動装置の終端位置、つまり、前記メインクラッチの切断状態によって特徴付けられた第1の切断終端位置と、前記メインクラッチの接続状態によって特徴付けられた第2の接続終端位置とにおいて摩擦モーメントを発生させるために適しているように配置されていて、形成されているようにした。
【0015】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、両部分クラッチが、並列に切換可能である。
【0016】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、作動装置の前記切断終端位置において操作可能な部分クラッチが、該部分クラッチによって、作動装置の前記接続終端位置における操作された部分クラッチよりも少ないトルクを伝達することができるように形成されていて、設計されている。
【0017】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、前記切断終端位置において操作される部分クラッチの伝達可能な前記トルクが、3Nm〜80Nmの範囲内、有利には3Nm〜20Nm、特に有利には10Nmに設定されている。
【0018】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、作動装置が、少なくとも1つのピストンエレメントを有しており、該ピストンエレメントが、機械的なプリロード力、特にばね力によって前記切断終端位置に移動可能である。
【0019】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、作動装置が、少なくとも1つのピストンエレメントを有しており、該ピストンエレメントが、圧力媒体、特に流体での圧力負荷によって前記接続終端位置に移動可能である。
【0020】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、ピストンエレメントの前記圧力負荷によって、該ピストンエレメントに発生させられる押圧力が調整可能であり、該押圧力が、両部分クラッチの切断によって特徴付けられた、作動装置の両終端位置の間の中間位置において機械的なプリロード力、特にばね力によって平衡状態にあるように、部分クラッチが設計されていて、配置されている。
【0021】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、第1の部分クラッチが、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有する、一方の原動機に連結可能な第1のクラッチ部材と、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有する、被駆動装置に連結可能な第2のクラッチ部材とを有しており、両クラッチ部材が、作動装置を介して互いに少なくとも間接的に作用結合可能であり、該作動装置が、少なくとも1つのピストンエレメントを有しており、該ピストンエレメントが、前記圧力媒体で負荷可能な圧力室の形成のもと少なくとも間接的に両クラッチ部材の一方に相対回動不能に結合されていて、軸方向に移動可能にガイドされており、ピストンエレメントに、圧力室内に発生可能な前記押圧力と逆方向に向けられた機械的な操作力を発生させるための装置が対応配置されている。
【0022】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、機械的な操作力を発生させるための装置が、プリロードエレメントを有しており、該プリロードエレメントが、配置と、発生させたい力方向とに関連して以下のエレメント:すなわち、
−引張ばね装置
−圧縮ばね装置
−皿ばね装置:
の1つとして形成されていて、作動装置と、切換可能なクラッチ装置の両クラッチ部材の一方との間に配置されているかまたは作動装置と、両クラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントとの間に配置されている。
【0023】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、第2の部分クラッチが、別の作動装置を有しており、該作動装置が、第1の部分クラッチの作動装置に操作に関して強制連結されている。
【0024】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、第2の部分クラッチの作動装置が、第1の部分クラッチの作動装置によって形成されるようになっている。
【0025】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、第2の部分クラッチが、少なくとも部分的に第1の部分クラッチの前記摩擦面支持エレメントおよび/または前記摩擦面形成エレメントによって形成されるようになっている。
【0026】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、第2の部分クラッチが、第1のクラッチ部材または第2のクラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントまたは一方のクラッチ部材に相対回動不能に連結されたエレメントに相対回動不能に結合されたエレメントと、それぞれ他方のクラッチ部材または該クラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントとによって形成されるようになっている。
【0027】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、作動装置が、第1のクラッチ部材または第2のクラッチ部材に相対回動不能に結合されているかまたは両クラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントに相対回動不能に結合されており、第2の部分クラッチが、作動装置と、それぞれ他方のクラッチ部材または該クラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントとの間に形成されている。
【0028】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、前記圧力媒体で負荷可能な圧力室が、切換可能なクラッチ装置の、クラッチ周辺を成しかつハウジングによって取り囲まれた内室に流れ技術的に接続されており、圧力室内の圧力の増加につれて、流れ技術的な接続部を介して発生させられる冷媒流が減少するように、該冷媒流を制御するための手段が設けられている。
【0029】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、圧力室と前記クラッチ周辺との間の流れ技術的な接続部に、制御可能な弁装置が設けられている。
【0030】
本発明に係る切換可能なクラッチ装置の有利な態様によれば、圧力室と前記クラッチ周辺との間の接続部が、ピストンエレメントに配置された少なくとも1つの接続孔を有しており、該接続孔が、クラッチ周辺側で、クラッチ部材に対するピストンエレメントの有効な圧着面の領域に開口している。
【0031】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係るパワートレーンでは、切換可能なクラッチ装置の分離された切断時に、第1の原動機から力伝達装置の入力部材への、トルクを伝達する作用結合部が形成可能であるようにした。
【0032】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、伝動装置および/または力伝達装置および/または切換可能なクラッチ装置に運転媒体供給および/または案内システムが対応配置されており、該運転媒体供給および/または案内システムが、力伝達装置の入力部材に機械的に連結された少なくとも1つの圧送装置、特に伝動装置オイルポンプを備えている。
【0033】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、切換可能なクラッチ装置の分離された切断時に、伝動装置への、前記トルクを伝達する作用結合部が形成可能である。
【0034】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置の分離時に伝達可能な前記トルクが制限されている。
【0035】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置の切断時の伝達可能な前記トルクが、3Nm〜80Nmの範囲内、有利には20Nm、全く特に有利には10Nmに設定されている。
【0036】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置が、圧力媒体操作可能な湿式クラッチとして形成されている。
【0037】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置が、分離された切断状態において、少ない圧力と少ない体積流とで負荷可能である。
【0038】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置が、少なくとも分離された前記切断状態において、冷媒流によって冷却可能である。
【0039】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、切換可能なクラッチ装置に対して並列に切換可能なドラグクラッチを有する、予め規定された最小トルクを伝達するための手段が設けられている。
【0040】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、ドラグクラッチが、別個のクラッチによって形成されるようになっている。
【0041】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための前述した形式の切換可能なクラッチ装置が形成されている。
【0042】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、力伝達装置の、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置に結合された入力部材が、少なくとも力伝達装置を取り囲む釣鐘状ハウジング部材と、該釣鐘状ハウジング部材によって形成されたかまたは該釣鐘状ハウジング部材に相対回動不能に連結された、切換可能なクラッチ装置と力伝達装置との圧力室を仕切るために切換可能なクラッチ装置と力伝達装置との間に設けられた壁によって形成されるようになっている。
【0043】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、力伝達装置が、ハイドロダイナミック式の構成要素と、該ハイドロダイナミック式の構成要素を介するパワーフローを少なくとも部分的に迂回するための装置とを有しており、ハイドロダイナミック式の構成要素と装置とが、力伝達装置の入力部材と出力部材との間に配置されている。
【0044】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、ハイドロダイナミック式の構成要素が、ハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータまたはハイドロダイナミック式のクラッチとして形成されている。
【0045】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、力伝達装置が、二通路ユニットとして形成されている。
【0046】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、力伝達装置が、三通路ユニットとして形成されている。
【0047】
本発明に係るパワートレーンの有利な態様によれば、第1の原動機が、内燃機関によって形成されるようになっており、第2の原動機が、モータおよびジェネレータとして運転可能な電気機械によって形成されるようになっている。
【0048】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る車両では、前述した形式のパワートレーンが設けられているようにした。
【0049】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る方法では、運転モード「緊急運転」において、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置の作動装置が、操作力を発生させるための装置によって切断終端位置に移動させられており、第1の原動機を運転し、予め規定された最小トルクを、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置の第2の部分クラッチを介して圧送装置に伝達するようにした。
【0050】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、前記運転モード「緊急運転」において、パワーフローを力伝達装置でハイドロダイナミック式の構成要素を介して形成する。
【0051】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、運転モード「電気走行」において、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置の圧力室を、作動装置を両部分クラッチの切断下の中間位置に運動させる圧力で負荷する。
【0052】
本発明によれば、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置であって、圧力媒体で操作可能な作動装置が設けられている形式のものは、切換可能なクラッチ装置が、2つの部分クラッチ、つまり、メインクラッチを成す第1の部分クラッチと、ドラグクラッチを成す第2の部分クラッチとから成っており、両部分クラッチが、それぞれ作動装置の終端位置、つまり、メインクラッチの切断状態によって特徴付けられた第1の切断終端位置と、メインクラッチの接続状態によって特徴付けられた第2の接続終端位置とにおいて摩擦モーメントを発生させるために適しているように配置されていて、形成されていることによって特徴付けられている。
【0053】
切換可能なクラッチ装置は、特に有利な構成では、ハイドロリック的に操作可能な湿式クラッチである。この湿式クラッチは、本発明によれば、両側で有効であり、すなわち、両側からの圧力負荷時に有効であり、トルクを伝達することができる。このトルクを伝達する能力は操作方向に応じて著しく異なっていてよい。メインクラッチの形の第1の部分クラッチが、通常運転でトルクを伝達するために働くのに対して、ドラグクラッチとしての第2の部分クラッチは、メインクラッチの切断状態で規定の量の最小トルクしか伝達しない。このためには、切換可能なクラッチ装置に用いられる作動装置ひいてはメインクラッチの切断終端位置において操作可能な第2の部分クラッチが、この第2の部分クラッチによって、作動装置の接続終端位置における操作された第1の部分クラッチよりも少ないトルクを伝達することができるように形成されていて、設計されている。ハイブリッドシステムに用いられるパワートレーンへのこのような形式の切換可能なクラッチ装置の使用時には、力伝達装置の、切換可能なクラッチ装置に連結可能な入力部材が、第2の原動機と、運転媒体供給・案内システムの運転・制御媒体に対する圧送装置、特に伝動装置オイルポンプとに結合されているので、伝達可能な最小トルクの保証によって、切換可能なクラッチ装置の切断位置でも圧送装置を相変わらず駆動することができる。このためには、第2の部分クラッチが、少なくとも圧送装置と、場合により、力伝達装置に接続された第2の原動機とを駆動するために適しているように設計されていて、設定されている。このためには、第2の部分クラッチが、3〜80Nm、有利には3〜20Nm、全く特に有利には3〜10Nmの範囲内の伝達可能な最小トルクに対して設計される。
【0054】
少なくとも圧送装置、特に伝動装置オイルポンプの駆動を保証するために十分であるように設定された伝達可能な所要の最小トルクによって、付加的なポンプと、このポンプに対応配置される、運転媒体供給・案内システムにおける駆動システムとを省略することができる。全体的な運転・制御媒体供給は、有利には、ただ1つの圧送装置を介してしか行われない。これによって、付加ポンプの節約のほかに、管路接続も最適化可能となる。
【0055】
両部分クラッチは、有利には並列に切換可能である。すなわち、パワーフローを単に両部分クラッチの一方を介してしか形成することができない。したがって、誤操作が排除されている。
【0056】
構造的には、切換可能なクラッチ装置の作動装置が、少なくとも1つのピストンエレメントを有しており、このピストンエレメントが、機械的なプリロード力、特にばね力によって切断終端位置に移動可能であり、圧力媒体、特に流体での圧力負荷によって接続終端位置に移動可能である。したがって、作動装置に対して作用する、個々の部分クラッチを操作するための操作力が、互いに逆方向に方向付けられている。
【0057】
ハイブリッドシステムへの使用時に不利なドラグ損失を回避するために、切換可能なクラッチ装置ひいては両部分クラッチの完全な切断を保証することができるようにするためには、ピストンエレメントの圧力負荷によって、このピストンエレメントに発生させられる押圧力が調整可能であり、この押圧力が、機械的なプリロード力、特にばね力によって、両部分クラッチの切断によって特徴付けられた、作動装置の両終端位置の間の中間位置において平衡状態にあるように、個々の部分クラッチが設計されていて、配置されている。
【0058】
切換可能なクラッチ装置は、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有する、一方の原動機に連結可能な第1のクラッチ部材と、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有する、被駆動装置もしくは残りのパワートレーンに連結可能な第2のクラッチ部材とを有している。両クラッチ部材は、作動装置を介して互いに少なくとも間接的に作用結合可能である。第1のクラッチ部材と第2のクラッチ部材とは、メインクラッチを形成している。作動装置はピストンエレメントを有している。このピストンエレメントは、圧力媒体で負荷可能な室の形成のもと少なくとも間接的に両クラッチ部材の一方に相対回動不能に結合されていて、一方のクラッチ部材に対して軸方向に移動可能にガイドされている。さらに、ピストンエレメントには、圧力チャンバを介して発生させられた押圧力に対して逆方向に方向付けられた操作力を発生させるための装置が対応配置されている。この装置は、最も簡単な例では、プリロードエレメントを有している。このプリロードエレメントはピストンエレメントに対して有効であり、両クラッチ部材の一方に支持されているかまたは一方のクラッチ部材に相対回動不能に結合された接続エレメントに支持されている。プリロードエレメントは、作動装置と両クラッチ部材の一方または一方のクラッチ部材に相対回動不能に連結されたエレメントとに対する対応配置に応じて、皿ばね装置、圧縮ばね装置または引張ばね装置を有している。これらのばね装置は、有利には、切換可能なクラッチ装置の作動装置を直接負荷する。
【0059】
最小トルクを伝達するためのドラグクラッチとしての第2の部分クラッチの具体的な構成に関連して、プリロードエレメントは、第1の構成では、切換可能なクラッチ装置の作動装置と、第2のクラッチ部材、第2のクラッチ部材と力伝達装置の入力部材との結合部、力伝達装置の入力部材または入力部材に相対回動不能に結合されたエレメント、特にハウジング壁との間に配置されていてもよいし、第2の構成によれば、作動装置と、第1のクラッチ部材もしくは第1のクラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントとの間に配置されていてもよい。
【0060】
第2の部分クラッチの形成は、構成部材個数を減少させて個々の構成要素の機能集中を高めるために、特に有利には、第1の部分クラッチの構成部材および/または作動装置の使用下で行われる。第1の下位構成では、第2の部分クラッチが、第1の部分クラッチの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントの一部によって形成される。このために、有利には第2の部分クラッチに1つの固有の作動装置が対応配置されている。しかし、この作動装置は、操作ミスを回避するために、操作に関してメインクラッチの作動装置に強制連結されている。このためには、第2の部分クラッチの作動装置がピストンエレメントを有している。このピストンエレメントは、有利には、メインクラッチの作動装置のピストンエレメントに相対回動不能に結合されている。結合は、軸方向で定置に行われてもよいし、軸方向への相対運動の可能性を備えて行われてもよい。
【0061】
さらに、第2の部分クラッチは、第2の下位構成によれば、第1のクラッチ部材または第2のクラッチ部材に相対回動不能に結合されたかまたは一方のクラッチ部材に相対回動不能に連結されたエレメントに相対回動不能に結合されたエレメントと、それぞれ他方のクラッチ部材または他方のクラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントとによって形成されてよい。この例では、各構成部材が、第2の部分クラッチの入力部材と出力部材とを形成している。摩擦対を形成する面は、コーティングまたはフェーシングを備えてよい。メインクラッチの作動装置、特にピストンエレメントは、切断終端位置で第2の部分クラッチに対する作動装置として機能する。
【0062】
これに対して、1つの有利な改良態様では、構成部材個数と、必要となる構成スペースとを最小限に抑えて、作動装置を第1のクラッチ部材または第2のクラッチ部材に相対回動不能に結合するかまたは両クラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントに相対回動不能に結合し、第2の部分クラッチを作動装置と、それぞれ他方のクラッチ部材または他方のクラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントとの間に形成することが提案されている。この例では、いずれにせよ既存の作動装置が、同時に第2の部分クラッチの入力部材または出力部材および第2の部分クラッチに対する作動装置として機能する。この構成は、付加的な構成要素なしに、既存のクラッチ装置に簡単に後付けすることができる。
【0063】
クラッチ部材に相対回動不能に結合されたエレメントは、たとえばハブ、ハウジング部材、壁または別の回転可能な構成部材の形の接続エレメントである。
【0064】
運転モード「電気走行」において、切換可能なクラッチ装置ひいては両部分クラッチの完全な切断を保証するためには、メインクラッチの分離状態において、ドラグクラッチも切断されなければならない。このことは、互いに作用結合される個々のクラッチ部材、特にドラグクラッチの入力部材と出力部材との間の摩擦接続の消滅を可能にする圧力を加えることによって実現される。このことは、電動式の付加ポンプによって保証することができるかまたは電気走行モードでも駆動される伝動装置オイルポンプを介した負荷時の圧力室への圧力媒体流入の制御によって保証することができる。
【0065】
1つの特に有利な改良態様では、切換可能なクラッチ装置の、圧力媒体で負荷可能な圧力室と、切換可能なクラッチ装置の内室に相当するクラッチ周辺との間に、流れ技術的な接続部が設けられている。この接続部は、作動装置の圧着力の量に関連して制御可能である。自動的な制御を保証するために、1つの有利な態様では、圧力室と内室との間に作動装置、特にピストンエレメントを介して接続部が設けられている。この接続部は、接続したいクラッチ部材に対して有効なピストン面の領域に開口していて、したがって、メインクラッチの接続の方向ひいては作動装置の接続終端位置の方向への操作力の増加につれて重畳によって通流横断面の減少を自動的に招く。
【0066】
力伝達装置は種々異なる形式で形成されていてよい。この力伝達装置は、ハイドロダイナミック式の構成要素の形のコンバータと、ハイドロダイナミック式の構成要素を介するパワーフローを迂回するための別の切換可能なクラッチ装置とを有している。力伝達装置には、運転媒体供給・案内システムが対応配置されている。この運転媒体供給・案内システムは、圧送装置、特に伝動装置オイルポンプが組み込まれた少なくとも1つの流入通路と、戻し通路と、少なくとも2つの接続部の間で力伝達装置を介して運転媒体を案内するための管路および通路とを有している。少なくとも2つの接続部を介して、力伝達装置の内部の流れ方向が制御可能となる。1つの有利な改良態様によれば、少なくとも切換可能なクラッチ装置の作動装置の、圧力媒体で負荷可能な圧力チャンバへの接続部が、同じく圧力媒体供給システムに接続可能である。これによって、システムにおける圧力の増加につれて、この圧力が、切換可能なクラッチ装置にも加えられ、この切換可能なクラッチ装置が迅速に接続される。
【0067】
本発明によれば、車両のハイブリッドシステムに用いられるパワートレーンであって、少なくとも1つの第1の原動機と第2の原動機とが設けられており、両原動機が、別個にまたは一緒に力伝達装置を介して伝動装置に接続可能であり、さらに、第1の原動機と力伝達装置との間に配置された、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置が設けられている形式のものは、切換可能なクラッチ装置の分離された切断時に、第1の原動機から力伝達装置の入力部材への、トルクを伝達する作用結合部が形成可能であることによって特徴付けられている。
【0068】
特に有利には、伝動装置および/または力伝達装置および/または切換可能なクラッチ装置に運転媒体供給および/または案内システムが対応配置されている。この運転媒体供給および/または案内システムは少なくとも1つの圧送装置、特に伝動装置オイルポンプを有している。この圧送装置は力伝達装置の入力部材に機械的に連結されている。力伝達装置の入力部材でのトルクの伝達によって、力伝達装置が一緒に駆動され、切換可能なクラッチ装置の分離時にも、必要となる圧力を比較的迅速に付加ポンプなしに形成することができる。
【0069】
1つの改良態様では、切換可能なクラッチ装置の分離された切断時に、伝動装置への、トルクを伝達する作用結合部が形成可能である。これによって、規定された機能に対して最小トルクを伝達することができる。また、伝動装置オイルポンプを力伝達装置の入力部材だけでなく、出力部材もしくは伝動装置入力軸に連結することも可能である。これによって、配置が可変となる。
【0070】
有利には、第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置の分離時に伝達可能なトルクが、切換可能なクラッチ装置を介して通常運転において伝達可能なトルクよりも小さい最小トルクに制限されている。この最小トルクは、有利には3Nm〜80Nm、有利には3Nm〜20Nm、特に有利には3Nm〜10Nmの範囲内で選択され、全く特に有利には10Nmに選択される。
【0071】
切換可能なクラッチ装置は、大きなトルクの伝達を最小限の構成スペース要求で保証するために、有利には圧力媒体操作可能な湿式クラッチとして形成される。この湿式クラッチは冷媒流によって個々の運転モードにおいて冷却可能である。力伝達装置の構成に関連して、冷媒流を力伝達装置の運転媒体供給および/または案内システムから取り出すこともできる。
【0072】
第1の原動機をパワートレーンから分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置は、有利には、分離された切断状態において、少ない圧力と少ない体積流とで負荷可能であるように形成されていて、配置されている。これによって、1つには、力伝達装置の供給システムに依存することなく、切換可能なクラッチ装置の圧力室からの冷媒流を保証することができる。さらに、圧力によって、運転モード「電気走行」において、切換可能なクラッチ装置を介するパワーフローが完全に遮断されていることが確保される。
【0073】
力伝達装置と原動機との間の作用結合は、予め規定された最小トルクを伝達するための手段を介して行われる。この手段は、切換可能なクラッチ装置に対して並列に切換可能なドラグクラッチを有している。このドラグクラッチは、第1の構成では、別個のクラッチによって形成されてよい。しかし、別の第2の特に有利な構成では、ドラグクラッチが、切換可能なクラッチ装置の構成部材および/または作動装置と、切換可能なクラッチ装置の構成部材および/または作動装置に結合された接続エレメントとによって形成される。このためには、切換可能なクラッチ装置が、請求項1〜17までのいずれか1項記載の構成により形成されている。これに対して前述した利点が類似して当てはまる。
【0074】
本発明によれば、パワートレーンは、このパワートレーンが、ハイドロリック的に操作される湿式クラッチを有しており、この湿式クラッチが、両側で有効である、すなわち、両側からの圧力負荷時に有効である点で優れている。トルクを伝達する能力は操作方向に応じて著しく異なっている。したがって、たとえば主伝達方向においてクラッチを切断するためのばねエレメントが設けられている。メインクラッチのこの切断位置では、付加的なドラグクラッチが操作される。このドラグクラッチは、分離されたクラッチにもかかわらず、十分なトルクを、回転する内燃機関から伝達することができ、これによって、伝動装置緊急運転においてコンバータと伝動装置オイルポンプとが引きずられる。すなわち、緊急運転では、伝動装置オイルポンプが、コンバータと、クラッチと、伝動装置とに圧力オイルを供給することができる。伝動装置制御の妨害が付与されていない場合の通常の運転状態では、場合により存在する電動式の付加ポンプによって小さな操作圧でドラグクラッチを切断することができる。制御された圧力と、切断のために働くばねエレメントとは、力平衡状態にある。運転モード「電気走行」に対して提案されたこの制御時には、場合により、湿式クラッチが、たとえばピストンに設けられた絞りによって冷却されてもよいし、付与された圧力レベルに関連して冷却されてもよい。運転モード「内燃機関による走行」に切り換えるためには、湿式クラッチの操作圧がさらに増加させられ、これによって、湿式クラッチが接続され、十分なトルクを伝達することができる。この点以降、もはや冷却が不要となり、この冷却を中断することができる。
【0075】
すなわち、本発明は、パワートレーンであって、湿式クラッチが設けられており、この湿式クラッチが、プッシュピストンの両終端位置において摩擦モーメントを発生させる形式のものに関する。所定のばね力によって、ピストンが切断終端位置にもたらされる。この位置では、駆動装置と被駆動装置との間で少ないトルクしか伝達することができない。接続終端位置はピストンの圧力負荷によって達成される。この位置では、より大きなトルクを伝達することができる。少ない中間圧の場合には、押圧力とばね力とが平衡状態にあり、両部分クラッチが切断されている。
【0076】
ドラグクラッチの伝達可能なトルクは、メインクラッチの切断時には、約3Nm〜80Nmに設定されている。従来のオイルポンプは約10Nmの駆動トルクを必要とし、このトルクに対して、ドラグクラッチが有利に設計されている。
【0077】
ハイブリッドシステムに用いられる本発明に係るパワートレーンは、特に有利な構成では、車両、特に陸上車両に設けられたパワートレーンとして、エネルギ最適化された運転モードのために適している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明により形成されたパワートレーンの基本構造および基本機能を概略的に簡単に示す図である。
【図2】本発明により形成された切換可能なクラッチ装置の基本構成を概略的に簡単に示す図であり、図2aには、切換可能なクラッチ装置の第1の実施の形態が示してあり、図2bには、切換可能なクラッチ装置の第2の実施の形態が示してあり、図2cには、切換可能なクラッチ装置の第3の実施の形態が示してあり、図2dには、切換可能なクラッチ装置の第4の実施の形態が示してある。
【図3】パワートレーンの軸方向断面図から抜粋して、たとえば図2aに示した切換可能なクラッチ装置を備えた構成上の構造を示す図である。
【図4】パワートレーンの軸方向断面図から抜粋して、たとえば図2bに示した切換可能なクラッチ装置を備えた構成上の構造を示す図である。
【図5】パワートレーンの軸方向断面図から抜粋して、たとえば図2cに示した切換可能なクラッチ装置を備えた構成上の構造を示す図である。
【図6】パワートレーンの軸方向断面図から抜粋して、たとえば図2dに示した切換可能なクラッチ装置を備えた構成上の構造を示す図である。
【0079】
本発明における解決手段を以下に図面につき説明する。
【0080】
図1には、車両に使用するためのハイブリッドシステム12に用いられる本発明により形成されたパワートレーン11の基本構造が概略的に著しく簡単に示してある。このパワートレーン11は、少なくとも1つの第1の原動機13と、別の第2の原動機15とを有している。第1の原動機13は、有利には内燃機関14、特にディーゼルエンジンの形で形成されている。第2の原動機15は、少なくともモータ運転可能なかつ/またはジェネレータ運転可能な電気機械16として形成されている。個々の原動機13,15と、パワートレーン11に設けられた、特に伝動装置18の形の別の伝達ユニット17およびパワートレーン11の、伝動装置18に連結される残りの構成部材との連結は、力伝達装置19を介して行われる。この力伝達装置19は、各原動機13,15に連結可能な入力部材Eと、伝動装置18に結合された少なくとも1つの出力部材Aと、少なくとも1つの発進エレメント9とを有している。力伝達装置19の出力部材Aは、伝動装置入力軸21によって直接形成されるかまたは伝動装置入力軸21に相対回動不能に結合されている。発進エレメント9は、図示の例において、有利な構成では、ハイドロダイナミック式の構成要素20として形成されている。このハイドロダイナミック式の構成要素20は、両原動機13,15の一方から伝動装置18へのパワーフローにおいてポンプホイールPとして機能する少なくとも1つの一次ホイールPと、タービンホイールTとして機能する二次ホイールとを有している。このためには、ポンプホイールPが力伝達装置19の入力部材Eに機械的に連結されているかまたは入力部材Eと共に1つの構成ユニットを形成している。タービンホイールTは少なくとも間接的に、すなわち、直接的にまたは別の伝達エレメント、ここでは、たとえば振動を減衰するための装置T2を介して力伝達装置19の出力部材Aに結合されている。さらに、力伝達装置19は、パワーフロー内に設けられたハイドロダイナミック式の構成要素20を迂回するための切換可能なクラッチ装置22を有しており、これによって、ハイドロダイナミック式の構成要素20の使用が、高い効率の範囲内でのみ可能となり、非経済的な範囲内では、ハイドロダイナミック式の構成要素20が迂回される。通常、このような形式の切換可能なクラッチ装置22は、摩擦接続式のクラッチ、有利には多板クラッチの形で形成されている。この摩擦接続式のクラッチは、少なくとも間接的に力伝達装置19の入力部材Eに結合された第1のクラッチ部材22Eと、少なくとも間接的に、ここでは、振動を減衰するための装置T2を介して出力部材Aに結合された第2のクラッチ部材22Aとを有している。
【0081】
パワーフローは、それぞれ両原動機13,15の一方から力伝達装置19を介して伝動装置18に案内されてもよいし、両原動機13,15がパラレル式に運転されることによって、両原動機13,15から一緒に案内されてもよい。第2の原動機15から伝動装置18への単独の力伝達を可能にするかまたはアクセルオフ運転中に高い割合の電気的なエネルギを蓄積のために発生させることができるようにするためには、第1の原動機13、特に内燃機関14と、力伝達装置19との間に、この原動機13と力伝達装置19との間のパワーフローを選択的に遮断/実現するための装置が設けられている。この装置は、有利には切換可能なクラッチ装置1として形成されていて、特に有利な形式では、湿式クラッチの形の摩擦接続式のクラッチ装置として形成されている。クラッチ装置1はエンジンクラッチとも呼ばれる。このエンジンクラッチは、少なくとも1つの第1のクラッチ部材1Eと第2のクラッチ部材1Aとを有している。両クラッチ部材1E,1Aは、ここには図示していない作動装置24によって少なくとも間接的に互いに作用結合可能である。第1のクラッチ部材1Eは、少なくとも間接的に第1の原動機13、特に内燃機関14に相対回動不能に結合されており、第2のクラッチ部材1Aは、少なくとも間接的に力伝達装置19の入力部材Eに相対回動不能に結合されている。この関係における「少なくとも間接的に」とは、連結が直接的に行われてもよいし、別の伝達エレメント、ここでは、たとえば振動を減衰するための装置T1を介して行われてもよいことを意味している。個々のクラッチ部材1E,1Aは、多板構造での摩擦接続式のクラッチとしての構成の場合、それぞれ少なくとも1つの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有している。多板クラッチとしての構成では、摩擦面が、個々の摩擦板に直接形成された面領域によって形成されるかまたは面領域に設けられた付加的なフェーシングまたはコーティングによって形成される。作用結合は作動装置24を介して形成される。この作動装置24は、有利には少なくとも1つのピストンエレメント3を有している。作動装置24はクラッチ装置1を操作するために働き、切断終端位置および接続終端位置の少なくとも2つの基本機能位置によって特徴付けられている。これらの基本機能位置は、それぞれ切換可能なクラッチ装置1の機能状態「切断(開放)」と機能状態「接続(閉鎖)」に相当している。
【0082】
伝動装置18は、ギヤシフト変速機としての構成では、それぞれ異なる変換範囲をカバーする個々のギヤ段を入れる/外すためのシフトエレメントを有している。このシフトエレメントおよびハイドロダイナミック式の構成要素20には、ここには詳しく図示していない運転媒体供給および/または案内システム25を介して相応の媒体が供給される。このためには、個々のチャンバおよび圧力室への圧送のために、圧送装置、特に伝動装置オイルポンプ26が設けられている。この圧送装置は力伝達装置19の入力部材Eに連結されている。切換可能なクラッチ装置1の、パワートレーン11が第1の原動機13から分離されている基本機能位置「切断」では、切換可能なクラッチ装置1は操作されていない。したがって、車両および切り離された原動機13の停止時には、ハイドロリックシステムが空運転されることさえある。発進時に、ハイドロダイナミック式の構成要素20と、伝動装置18のシフトエレメントと、接続のために、切換可能なクラッチ装置1の作動装置24とに、必要となる圧力を即座に提供するためには、伝動装置オイルポンプ26が即座に駆動されなければならない。このことは、本発明によれば、少なくとも切換可能なクラッチ装置1の作動装置24の所要の操作圧の形成前に原動機13と力伝達装置19の入力部材Eとの間で最小トルクを伝達するための手段27によって実現される。ただし、この手段27は、この手段27を介して伝達可能なトルクが制限されているように設計されている。このためには、手段27が少なくとも1つの引きずりクラッチ、つまり、ドラグクラッチ28を有している。このドラグクラッチ28は、予め規定された最小トルクよりも大きいかまたは予め規定された最小トルクに等しいトルクしか伝達することができない。最小トルクは、伝動装置オイルポンプ26と、力伝達装置19の入力部材Eと、電気機械16の、入力部材Eに連結されたロータ16.1と、ハイドロダイナミック式の構成要素20のポンプホイールPとを駆動するために適していて、切換可能なクラッチ装置1を介して伝達可能なトルクよりも小さく設定されている。
【0083】
ドラグクラッチ28と切換可能なクラッチ装置1とは並列に切り換えられている。すなわち、パワーフローが、それぞれ切換可能なクラッチ装置1またはドラグクラッチ28を介してしか力伝達装置19の入力部材Eに形成されない。このためには、切換可能なクラッチ装置1が第1のクラッチ部材1Eと第2のクラッチ部材1Aとを互いに結合するかまたは少なくとも両クラッチ部材1E,1Aに相対回動不能に結合されたエレメントを互いに結合することによって、ドラグクラッチ28が、切換可能なクラッチ装置1の第1のクラッチ部材1Eと第2のクラッチ部材1Aとを迂回するための別個のクラッチとして機能することができる。ドラグクラッチ28によって、力伝達装置19の入力部材Eと、この入力部材Eに結合された伝動装置オイルポンプ26との駆動と、特にハイドロダイナミック式の構成要素20における発進エレメント9での増圧後、第1の原動機13から伝動装置入力軸21へのパワーフローとが可能となる。このためには、ドラグクラッチ28が、少なくとも圧送装置と、場合により、第2の原動機15のロータ16.1とを駆動するために適しているように設計されていて、設定されている。設計は、3〜80Nm、有利には3〜30Nm、さらに特に有利には3〜20Nmの範囲内の伝達可能な最小トルクに対して行われ、切換可能なクラッチ装置1によって伝達可能なトルクよりも小さいトルクに制限されている。
【0084】
少なくとも伝動装置オイルポンプ26の駆動を保証するために十分であるように設定された伝達可能な所要の最小トルクによって、付加的なポンプと、このポンプに対応配置される、運転媒体供給・案内システムに設けられた駆動システムとを省略することができる。全体的な運転・制御媒体提供は、ただ1つの圧送装置を介して行われる。これによって、付加ポンプの節約のほかに、管路接続も最適化可能となる。
【0085】
切換可能なクラッチ装置1とドラグクラッチ28との操作は、有利には強制連結されて行われる。すなわち、切換可能なクラッチ装置1の切断時には、ドラグクラッチ28が接続され、逆に、切換可能なクラッチ装置1の接続時には、ドラグクラッチ28が切断される。有利には、このために、切換可能なクラッチ装置1の作動装置24とドラグクラッチ28の作動装置29とが強制連結され、特に有利な構成では、同じエレメントによって形成される。
【0086】
特に有利な構成では、ドラグクラッチ28の形成が、切換可能なクラッチ装置1の構成要素と、切換可能なクラッチ装置1に含まれた作動装置24と、切換可能なクラッチ装置1の構成要素に相対回動不能に結合されたエレメントとの使用下で行われる。このためには、切換可能なクラッチ装置1が2つの部分クラッチ40.1,40.2、つまり、メインクラッチとして機能する第1の部分クラッチ40.1と、ドラグクラッチ28を成す第2の部分クラッチ40.2とを有している。詳細には、第1のクラッチ部材1Eと第2のクラッチ部材1Aとの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントが、メインクラッチ40.1として機能する。
【0087】
このためには、種々異なる構成が可能である。図2a〜図2dには、切換可能なクラッチ装置1の部分クラッチ40.2としてのドラグクラッチ28の配置および構成の基本的な可能性が概略的に著しく簡単に示してある。図3〜図6には、ハイブリッドシステムからの抜粋につき、図2a〜図2dに示した原理の、それぞれ可能な構成上の2つの構造が示してある。組み合わされた力伝達・発進ユニット30の残りの構造は例示的なものである。図面には、特に有利な構成が示してある。
【0088】
図2aには、切換可能なクラッチ装置1の部分クラッチ40.2としてのドラグクラッチ28の本発明におけるアッセンブリの第1の構成が示してある。第1のクラッチ部材1Eと第2のクラッチ部材1Aとが図示してある。この第1のクラッチ部材1Eと第2のクラッチ部材1Aとは、それぞれ摩擦板支持体と、この摩擦板支持体に対して軸方向に移動可能にガイドされているものの相対回動不能に結合された摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントの形の摩擦板とを有している。たとえば、ここでは、第1の原動機13に結合された第1のクラッチ部材1Eが、内側摩擦板を備えた内側摩擦板支持体として形成されているのに対して、第2のクラッチ部材1Aは外側摩擦板支持体と外側摩擦板とによって形成される。第2のクラッチ部材1Aは、同時に、切換可能なクラッチ装置1のハウジング36の構成部材である。第2のクラッチ部材1Aは、図示していない力伝達装置19の入力部材Eに相対回動不能に結合されているかまたは入力部材Eを形成している。ドラグクラッチ28は、メインクラッチの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントの一部、特に第1のクラッチ部材1Eおよび第2のクラッチ部材1Aの一部によって形成される。切換可能なクラッチ装置1、特に第1の部分クラッチ40.1の、ピストンエレメント3の形の作動装置24は、メインクラッチの第2のクラッチ部材1Aに対して相対回動不能に結合されているもののもしくは第2のクラッチ部材1Aに対して相対回動不能に結合されたエレメントに対して相対回動不能に結合されているものの軸方向には移動可能に、圧力媒体で負荷可能な圧力室38の形成下でガイドされている。切断終端位置に運動させるためにピストンエレメント3を負荷するためには、操作力を加える操作装置が設けられている。切断終端位置の方向へのピストンエレメント3に加えられる操作力と、反対の側に位置する圧力室38内のピストン端面に発生させられる力とから得られる合成力FBresによって、ピストンエレメント3がこの機能位置に移動させられる。ドラグクラッチ28の操作のためには、同じく作動装置29が設けられている。この作動装置29はピストンエレメント31を有している。このピストンエレメント31は、有利にはピストンエレメント3に結合されていて、同じく第2のクラッチ部材1Aに軸方向に移動可能にガイドされているかまたは第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能に結合されたエレメントに軸方向に移動可能にガイドされていて、力FBresによってドラグクラッチ28の接続のために負荷される。作動装置29と、メインクラッチの、第1の原動機13の回転数で回転する第1のクラッチ部材1Eのエレメントによって形成されたドラグクラッチ28の入力部材28Eとは、互いに異なる回転数で回転するので、作動装置29、特にピストンエレメント31と、第1のクラッチ部材1Eの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントとの間に摩擦対が形成される。
【0089】
これに対して、図2b〜図2dには、それぞれメインクラッチとして機能する部分クラッチ40.1の摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを使用しないドラグクラッチ28の構成が示してある。
【0090】
図2bには、第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能にかつ軸方向に移動可能に結合されたかまたは第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能に結合されたエレメントに相対回動不能にかつ軸方向に移動可能に結合された作動装置24、特に切換可能なクラッチ装置1のピストンエレメント3と、第1のクラッチ部材1Eもしくは第1のクラッチ部材1Eに相対回動不能に結合されたエレメントとの間のドラグクラッチ28の構成の可能性が示してある。作動装置24、特にメインクラッチのピストンエレメント3は、同時にドラグクラッチ28の作動装置29として機能し、有利には同時にドラグクラッチ28の出力部材28Aとして機能する。第1の部分クラッチ40.1の操作と第2の部分クラッチ40.2の操作との強制連結は、ここでは、ピストンエレメント3への前述した高い機能集中によって実現される。
【0091】
図2cには、図2bの改良形態が示してある。ここでは、ドラグクラッチ28が、メインクラッチとして機能する部分クラッチ40.1の第2のクラッチ部材1Aまたは第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能に結合されたエレメントと、第1のクラッチ部材1Eもしくは第1のクラッチ部材1Eに相対回動不能に結合されて軸方向に移動可能にガイドされたエレメントとの間に形成される。作動装置24、特にメインクラッチのピストンエレメント3は、同時にドラグクラッチ28の作動装置29として機能し、有利には相対回動不能であるものの、軸方向に相対的に移動可能にメインクラッチの第2のクラッチ部材1Aに結合されている。
【0092】
図2dには、図2bに対する択一的な構成が示してある。この構成では、ドラグクラッチ28が、メインクラッチの作動装置24、特にピストンエレメント3と、メインクラッチの第2のクラッチ部材1Aまたは第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能に結合されたエレメントとの間に形成されている。このためには、作動装置24が、第1のクラッチ部材1Eに軸方向に移動可能にかつ相対回動不能に連結されているかまたは第1のクラッチ部材1Eに相対回動不能に結合されたエレメントに軸方向に移動可能にかつ相対回動不能に連結されている。作動装置24、特にメインクラッチのピストンエレメント3は、ドラグクラッチ28の作動装置29として機能し、有利には同時にドラグクラッチ28の入力部材28Eとして機能する。第1の部分クラッチ40.1の操作と第2の部分クラッチ40.2の操作との強制連結は、ここでは、前述した高い機能集中によって実現される。
【0093】
図3〜図6には、図2a〜図2dに示した可能形態の可能な構成上の構造が示してある。図面における同じ構成部材または同様の構成部材は同じ符号を有している。
【0094】
図3〜図6には、第1の原動機13の駆動軸、特にエンジン駆動軸と、伝動装置入力軸21と、両軸の間に配置された、切換可能なクラッチ装置1と力伝達装置19とから成る組み合わされた力伝達・駆動ユニット30とを認めることができる。さらに、モータおよび/またはジェネレータとして運転可能な電気機械16の形の第2の原動機15が図示してある。図示の例では、電気機械16のロータ16.1が、力伝達装置19の入力部材Eに相対回動不能に結合されているのに対して、すでに記載したように、第1の原動機13は、切換可能なクラッチ装置1を介して力伝達装置19に相対回動不能に結合可能であってもよいし、力伝達装置19から分離されてもよい。駆動は、それぞれ単に両原動機13,15の一方を介して選択的に行われるかまたは両原動機13,15を介してパラレル式に行われる。このためには、電気機械16が少なくともモータとして、有利にはジェネレータとしても運転可能である。電気機械16の運転モードに応じて、種々異なる機能が得られる。モータ運転では、スタータジェネレータとしての機能または第1の原動機13に対して付加的に出力節約の機能が付与されているのに対して、制動運転またはアクセルオフ運転では、電気機械16は、有利にはジェネレータとして運転され、エネルギアキュムレータまたは消費網への、電気的なエネルギに変換された機械的なエネルギの供給を行うことができる。
【0095】
力伝達装置19は、すでに記載したように、ハイドロダイナミック式の構成要素20と切換可能なクラッチ装置22とを有している。ハイドロダイナミック式の構成要素20を介して、切換可能なクラッチ装置22の切断状態において、第1の出力分岐を実現することができるのに対して、切換可能なクラッチ装置22の接続時には、出力伝達が、第2の、有利には機械的な出力分岐を介して実現される。切換可能なクラッチ装置22は、有利には摩擦接続式のクラッチとして形成されている。この例では、さらに、切換可能なクラッチ装置22とハイドロダイナミック式の構成要素20とを介したパラレル式の出力伝達が可能となる。択一的な構成では、切換可能なクラッチ装置22が、同期的に切換可能なクラッチとして形成可能である。
【0096】
ハイドロダイナミック式の構成要素20は、特に有利にはハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータとして形成されている。このハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータは、回転数とトルクとを互いに予め規定可能な比に同時に変換するために働く。ハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータは、両原動機13,15の一方から伝動装置18へのパワーフローにおいてポンプホイールPとして機能する少なくとも1つの一次ホイールと、タービンホイールTとして機能する少なくとも1つの二次ホイールと、定置にまたは相対回動可能に支承されていてよいステータ(図示せず)の形の少なくとも1つの反応部材とを有している。さらに、ハイドロダイナミック式の構成要素20をハイドロダイナミック式のクラッチとして形成することも可能である。この例では、このハイドロダイナミック式のクラッチが、ポンプホイールPとして機能する少なくとも1つの一次ホイールと、タービンホイールTとして機能する少なくとも1つの二次ホイールとを有している。ハイドロダイナミック式のクラッチはステータを備えておらず、単に回転数変換のために働き、トルクを不変に伝達する。ポンプホイールPと、切換可能なクラッチ装置22の第1のクラッチ部材22Eとは、力伝達装置19の入力部材Eに相対回動不能に結合されているかまたは一体のユニットを形成している。第2のクラッチ部材22AとタービンホイールTとは、少なくとも間接的に、ここでは、たとえば振動を減衰するための装置T2を介して力伝達装置19の出力部材Aもしくは伝動装置入力軸21に結合されている。
【0097】
図示の構成では、個々の構成要素を、予め組み付けられたユニットの形で形成することが可能である。この構成では、電気機械16と、力伝達装置19と、クラッチ装置1とを、組み合わされた発進・力伝達装置30として形成することができる。この発進・力伝達装置30は、第1の原動機13と伝動装置18との間でパワーフローに組込み可能である。力伝達装置19はその機能、特にハイドロダイナミック式の構成要素20に基づき、湿式に運転される装置として形成されている。切換可能なクラッチ装置1の形の装置は、有利には同じく湿式に運転される装置として形成されている。すなわち、出力伝達に関与する構成要素が、少なくとも運転の間に運転流体、特にオイルによって取り囲まれている。この運転流体は運転休止時に少なくとも部分的にこれらの構成要素内に残されていてもよい。
【0098】
力伝達装置19の構成上の構造は、通常、この力伝達装置19が固有のハウジングを有しておらず、ポンプホイールPに形成されたポンプホイールシェルPSが釣鐘状ハウジング部材34に相対回動不能に結合されるように行われる。この釣鐘状ハウジング部材34は、切換可能なクラッチ装置22を収容するための中間室35の形成下で軸方向に延びている。実施の形態に応じて、釣鐘状ハウジング部材34は、切換可能なクラッチ装置1が湿式クラッチとして形成されている場合、この切換可能なクラッチ装置1のハウジング36を一緒に形成するように構成されていてよい。この例では、釣鐘状ハウジング部材34の内部で力伝達装置19と切換可能なクラッチ装置1との間に、個々の圧力室を分割するための中間壁が設けられさえすればよい。この中間壁は圧力室分離部材6とも呼ばれる。別の例では、釣鐘状ハウジング部材34を別個に力伝達装置19に対してのみ形成することが可能である。ただし、釣鐘状ハウジング部材34は、切換可能なクラッチ装置1に対する、第2のクラッチ部材1Aを形成するかまたは支持するハウジング36に相対回動不能に結合されている。
【0099】
本発明における解決手段は、特に有利には、力伝達装置19を備えたハイブリッドシステム12の形のパワートレーン11の構成において二通路構造で使用可能である。これは、この二通路構造が少なくとも2つの接続部A1,A2を有しており、切換可能なクラッチ装置22の操作が両接続部A1,A2における圧力状況を介して制御可能であるように、個々の運転モードでの運転媒体案内が行われることを意味している。第1の接続部A1が、ハイドロダイナミック式の構成要素20によって形成された作業室に接続されているのに対して、第2の接続部A2は、ハイドロダイナミック式の構成要素20の外周面と、力伝達装置19の入力部材Eに結合された釣鐘状ハウジング部材34へのポンプホイールPの連結部との間に形成された中間室35に接続されている。力伝達装置19の運転モードに応じて、ハイドロダイナミック式の構成要素20は向心的にまたは遠心的に通流される。第1の例では、運転媒体案内が、いわば第2の接続部A2を介して、切換可能なクラッチ装置22の個々のクラッチ部材22A,22Eの間に切換可能なクラッチ装置22に対する相応の切断圧を発生させて、ハイドロダイナミック式の構成要素20の外周面に向かって、ハイドロダイナミック式の構成要素20の充填下でかつ作業室内への流れ回路の形成下で行われる。力伝達装置19の第2の運転モードでは、ハイドロダイナミック式の構成要素20が遠心的に通流される。この運転モードでは、切換可能なクラッチ装置22の作動装置に加えられる圧力が高められ、切換可能なクラッチ装置22が接続される。両運転モードは、第1の原動機13によって運転することができるだけでなく、第2の原動機15によっても運転することができる。1つの改良形態(図示せず)では、力伝達装置19が三通路構造で形成されていてもよい。この例では、切換可能なクラッチ装置22の作動装置を、この作動装置に対応配置された、任意の圧力で負荷可能な圧力室を介して操作することができる。
【0100】
図3に示した、図2aに相当する構成によれば、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメント、特に個々のクラッチ部材1E,1Aの摩擦板の少なくとも一部が、予め規定された最小トルクを伝達するために使用される。このためには、エレメントが、メインクラッチとして機能する部分クラッチ40.1の作動装置24、特にピストンエレメント3の切断終端位置の方向ひいてはクラッチ装置1のメインクラッチの接続時の操作方向と逆方向に機械的に押圧される。ドラグクラッチ28の形の第2の部分クラッチ40.2の作動装置29は、ピストンエレメント31と、このピストンエレメント31に操作力を加えるための装置39とを有している。操作のための力は、最も簡単な例では、ばねユニット2の形の装置によって加えられる。本実施の形態では、切換可能なクラッチ装置1のハウジング36と、ピストンエレメント3と、ばねユニット2とが、パワーフローにおいてコンバータ側に形成されている、すなわち、力伝達装置19の入力部材Eに連結されて形成されている。ピストンエレメント3を切断するためのばねユニット2は、メインクラッチのピストンエレメント3を直接押圧せず、第2の部分クラッチ40.2に対するピストンエレメント31として機能する中間片7を押圧する。ドラグクラッチ28の入力部材28Eは、半径方向で回転軸線Rに向かって延長されて形成された摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメント、特にメインクラッチの第1のクラッチ部材1Eの摩擦板によって形成される。ドラグクラッチ28の出力部材28Aは、メインクラッチの第2のクラッチ部材1Aの少なくとも1つの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメント、ここでは、少なくとも切換可能なクラッチ装置1の縁摩擦板8と、エレメントに相対回動不能に結合されたエレメント、特にハウジング36とによって形成される。縁摩擦板8は、ここでは、ハウジング36に相対回動不能に結合された壁、特にピストンエレメント3を接続のために少なくとも1つの接続部A3を介して圧力媒体で負荷することができる圧力室38と、力伝達装置19の圧力室との間の圧力室分離部材6に支持されている。
【0101】
有利には皿ばねの形で形成されたばねユニット2の軸方向力によって、図示の例では、ドラグトルクが、少なくとも切換可能なクラッチ装置1の、互いに作用結合可能なクラッチ部材1E,1Aの、互いに作用結合可能な2つの摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントに発生させられる。両エレメントによって、力伝達装置19の入力部材Eひいてはハイドロダイナミック式の構成要素20の、入力部材Eに連結されたポンプホイールPと、このポンプホイールPに直接接続された圧送装置、特に伝動装置オイルポンプ26とへの伝達が可能となる。
【0102】
ピストンエレメント31を成す中間片7は、軸方向に移動可能に作動装置24のピストンエレメント3にガイドされている。中間片7とピストンエレメント3との間のストッパ10は、ピストンエレメント3がばねユニット2によって移動させられ、中間片7と第1のクラッチ部材1Eの摩擦面支持エレメントとの間に摩擦対を形成するために中間片7によって形成された摩擦板4がピストンエレメント3に向かって押圧されないことを確保している。さらに、回動防止部材(図示せず)は、ピストンエレメント3と、中間片7と、ばねユニット2とが、力伝達装置19の入力部材Eひいてはハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータ、特にポンプホイールPの回転数で回転することを確保している。
【0103】
通常運転状態、すなわち、作動装置24、特にピストンエレメント3と、切換可能なクラッチ1、特に個々の摩擦板と反対の側のピストン面との圧力負荷時には、圧力室38内の圧力が、操作時のばねユニット2の力を上回るように形成されることが必要となる。
【0104】
1つの改良形態では、図2bによる構成につき図4に示したように、切換可能なクラッチ装置1を、奇数個の摩擦面支持エレメントまたは摩擦面形成エレメントを備えて形成することが提案されている。ここでも、ばねユニット2が装置39として設けられている。ただし、この装置39は、切換可能なクラッチ装置1の摩擦面支持エレメントおよび摩擦面形成エレメントと反対の側のピストン端面と、このピストン端面に設けられたかまたは形成された摩擦面4とが、第1の原動機13の回転数、特にエンジン回転数で回転する構成部材5に向かって移動させられる切断終端位置にピストンエレメント3を引っ張るように配置されていて、形成されている。ドラグクラッチ28は、ピストンエレメント3と、第1のクラッチ部材1Eに相対回動不能に結合されたエレメント、特にハブとの間に形成され、緊急運転のために必要となる摩擦モーメントを発生させる。構成部材5は入力部材28Eを形成しており、作動装置24、特にピストンエレメント3は出力部材28Aと同時にドラグクラッチ28に対する作動装置29も形成している。本例では、力伝達が、切換可能なクラッチ装置1の入力部材1Eの側から作動装置24の使用下で力伝達装置19の入力部材Eに向かって行われる。
【0105】
圧力室38が低い圧力で負荷されると、ピストンエレメント3が切断終端位置から中間位置に運動させられる。この中間位置では、摩擦なしの運転が可能となる。圧力がより高くなると、ピストンエレメント3が接続終端位置に移動させられることによって、部分クラッチ40.1が接続される。
【0106】
これに対して、図5には、図2cに示した構成に相当する、図4に示した構成の1つの改良形態が示してある。しかし、この実施の形態では、本来のドラグクラッチ28の摩擦対がピストン裏面に形成されず、第1のクラッチ部材1Eに相対回動不能に結合されたエレメント、特にエンジン側に相対回動不能に結合された、2つの摩擦フェーシング4を備えた摩擦板と、第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能に結合されたエレメント、特にハウジング36または圧力室分離部材6とによって形成される。ここでも、ドラグクラッチ28は作動装置24と力伝達装置19との間に形成される。この例では、ピストンエレメント3が、第2のクラッチ部材1Aに相対回動不能に結合されてよく、この第2のクラッチ部材1Aに軸方向に移動可能にガイドされてよい。内周面の領域でのガイドは、第1のクラッチ部材1Eに連結されたエレメントで相対回動不能な結合なしに軸方向に移動可能に行われる。ピストンエレメント3は作動装置24,29を形成している。ドラグクラッチ28の入力部材28Eは、クラッチ部材1Eに相対回動不能に結合されたエレメント、特にハブと、このハブに相対回動不能に結合された摩擦面形成板との形の構成部材5によって形成される。出力部材28Aは、ハウジング36、特に圧力室分離部材6を形成する壁によって形成される。
【0107】
ピストンエレメント3が、切換可能なクラッチ装置1の出力部材1Aに相対回動不能に結合されていて、特に外側摩擦板支持体にガイドされている構成が図5に示してあるのに対して、図6には、力伝達装置19の入力部材Eを形成する壁、特に圧力室分離部材6と、切換可能なクラッチ装置1の第1のクラッチ部材1Eとの間に摩擦接続が形成される改良形態が示してある。ここでは、ピストンエレメント3の形の作動装置24が、主として、摩擦接続を得るために、ドラグクラッチ28の作動装置29および入力部材28Eとして使用される。たとえばクラッチ装置1が奇数個の摩擦フェーシングを備えて形成されており、ピストンエレメント3が、原動機側の構成エレメント、特に内燃機関14に相対回動不能に連結されたエレメント5に相対回動不能に結合されており、摩擦板も、有利にはピストンエレメント3に直接形成されている。装置39を成すばねユニット2は、ピストンエレメント3を切断終端位置に押圧する。この切断終端位置では、個々の摩擦板と反対の側のピストン裏面に取り付けられた摩擦フェーシング4が、コンバータ回転数で回転する構成部材、特にハウジング壁もしくは圧力室分離部材6を摩擦する。したがって、緊急運転のために必要となる摩擦モーメントが発生させられる。ピストン室38ひいてはピストンエレメント3が低い圧力で負荷されると、摩擦対が解消され、これによって、摩擦なしの運転が可能となる。圧力がより高くなると、エンジン側のクラッチ1が接続される。
【0108】
全ての構成において、本発明における解決手段は、緊急運転のために必要となる伝達可能な少ない最小トルクを実現するために、切換可能なクラッチ装置1が接続されておらず、位置「切断」に位置していることによって特徴付けられている。しかし、この位置では、切換可能なクラッチ装置1の構成部材、特に個々のクラッチ部材1E,1Aの、互いに作用結合可能な個々の摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントと、クラッチ部材1E,1Aに相対回動不能に結合されたエレメントと、作動装置24との使用下で形成される別の部分クラッチ40.2が作動させられる。いわゆる「ドラグクラッチ28」の形の別の第2のクラッチ装置を形成するための手間を最小限に保つことができる。一般的には、この機能を実現するために働く幾つかの付加エレメントしか必要とならない。
【0109】
さらに、全ての図面では、冷却オイル流を提供するための特に有利な構成が設けられている。切換可能なクラッチ装置1の作動装置24の、圧力媒体で負荷可能な圧力室38と、切換可能なクラッチ装置1の内室33に相当するクラッチ周辺との間には、流れ技術的な接続部37が設けられている。この接続部37の通流横断面は、作動装置24の圧着力の量に関連して制御可能である。自動的な制御を保証するために、有利な実施の形態では、圧力室38と内室33との間に作動装置24、特にピストンエレメント3を介して接続部が設けられている。この接続部は、結合したいクラッチ部材に対して有効なピストン面32の領域に開口し、したがって、通流横断面が、メインクラッチの接続の方向ひいては作動装置24の接続終端位置の方向への操作力の増加につれて重畳によって自動的に減少させられる。このような構成は、たとえば図3および図6に示してある。
【符号の説明】
【0110】
1 切換可能なクラッチ装置、特に湿式クラッチ
1E 第1のクラッチ部材
1A 第2のクラッチ部材
2 ばねユニット
3 ピストンエレメント
4 摩擦板
5 構成部材
6 圧力室分離部材
7 中間片
8 縁摩擦板
9 発進エレメント
10 ストッパ
11 パワートレーン
12 ハイブリッドシステム
13 第1の原動機
14 内燃機関
15 第2の原動機
16 電気機械
16.1 電気機械のロータ
17 伝達ユニット
18 伝動装置
19 力伝達装置
20 ハイドロダイナミック式の構成要素
21 伝動装置入力軸
22 切換可能なクラッチ装置
22A 第2のクラッチ部材
22E 第1のクラッチ部材
24 作動装置
25 運転媒体供給および/または案内システム
26 圧送装置、特に伝動装置オイルポンプ
27 最小トルクを伝達するための手段
28 ドラグクラッチ
28E ドラグクラッチの入力部材
28A ドラグクラッチの出力部材
29 作動装置
30 組み合わされた力伝達・発進ユニット
31 ピストンエレメント
32 有効なピストン面
33 内室
34 釣鐘状ハウジング部材
35 内室
36 ハウジング
37 流れ技術的な接続部
38 圧力室
39 クラッチ装置を切断するための操作力を発生させるための装置
40.1 部分クラッチ
40.2 部分クラッチ
E 入力部材
A 出力部材
R 回転軸線
P ポンプホイール
T タービンホイール
L ステータ
A1 接続部
A2 接続部
A3 接続部
T1 振動を減衰するための装置
T2 振動を減衰するための装置
FBres 合成力
PS ポンプホイールシェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)、特に摩擦接続式の湿式クラッチであって、圧力媒体で操作可能な作動装置(24)が設けられている形式のものにおいて、切換可能なクラッチ装置(1)が、2つの部分クラッチ(40.1,40.2)、つまり、メインクラッチを成す第1の部分クラッチ(40.1)と、ドラグクラッチ(28)を成す第2の部分クラッチ(40.2)とから成っており、両部分クラッチ(40.1,40.2)が、それぞれ作動装置(24)の終端位置、つまり、前記メインクラッチの切断状態によって特徴付けられた第1の切断終端位置と、前記メインクラッチの接続状態によって特徴付けられた第2の接続終端位置とにおいて摩擦モーメントを発生させるために適しているように配置されていて、形成されていることを特徴とする、切換可能なクラッチ装置。
【請求項2】
両部分クラッチ(40.1,40.2)が、並列に切換可能である、請求項1記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項3】
作動装置(24)の前記切断終端位置において操作可能な部分クラッチ(40.2)が、該部分クラッチ(40.2)によって、作動装置(24)の前記接続終端位置における操作された部分クラッチ(40.1)よりも少ないトルクを伝達することができるように形成されていて、設計されている、請求項1または2記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項4】
前記切断終端位置において操作される部分クラッチ(40.2)の伝達可能な前記トルクが、3Nm〜80Nmの範囲内、有利には3Nm〜20Nm、特に有利には10Nmに設定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項5】
作動装置(24)が、少なくとも1つのピストンエレメント(3)を有しており、該ピストンエレメント(3)が、機械的なプリロード力、特にばね力によって前記切断終端位置に移動可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項6】
作動装置(24)が、少なくとも1つのピストンエレメント(3)を有しており、該ピストンエレメント(3)が、圧力媒体、特に流体での圧力負荷によって前記接続終端位置に移動可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項7】
ピストンエレメント(3)の前記圧力負荷によって、該ピストンエレメント(3)に発生させられる押圧力が調整可能であり、該押圧力が、両部分クラッチ(40.1,40.2)の切断によって特徴付けられた、作動装置(24)の両終端位置の間の中間位置において機械的なプリロード力、特にばね力によって平衡状態にあるように、部分クラッチ(40.1,40.2)が設計されていて、配置されている、請求項5または6記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項8】
第1の部分クラッチ(40.1)が、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有する、一方の原動機(13)に連結可能な第1のクラッチ部材(1E)と、摩擦面支持エレメントおよび/または摩擦面形成エレメントを有する、被駆動装置に連結可能な第2のクラッチ部材(1A)とを有しており、両クラッチ部材(1E,1A)が、作動装置(24)を介して互いに少なくとも間接的に作用結合可能であり、該作動装置(24)が、少なくとも1つのピストンエレメント(3)を有しており、該ピストンエレメント(3)が、前記圧力媒体で負荷可能な圧力室(38)の形成のもと少なくとも間接的に両クラッチ部材(1E,1A)の一方に相対回動不能に結合されていて、軸方向に移動可能にガイドされており、ピストンエレメント(3)に、圧力室(38)内に発生可能な前記押圧力と逆方向に向けられた機械的な操作力を発生させるための装置(39)が対応配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項9】
機械的な操作力を発生させるための装置(39)が、プリロードエレメントを有しており、該プリロードエレメントが、配置と、発生させたい力方向とに関連して以下のエレメント:すなわち、
−引張ばね装置
−圧縮ばね装置
−皿ばね装置:
の1つとして形成されていて、作動装置(24)と、切換可能なクラッチ装置(1)の両クラッチ部材(1E,1A)の一方との間に配置されているかまたは作動装置(24)と、両クラッチ部材(1E,1A)に相対回動不能に結合されたエレメントとの間に配置されている、請求項8記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項10】
第2の部分クラッチ(40.2)が、別の作動装置(29)を有しており、該作動装置(29)が、第1の部分クラッチ(40.1)の作動装置(24)に操作に関して強制連結されている、請求項8または9記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項11】
第2の部分クラッチ(40.2)の作動装置(29)が、第1の部分クラッチ(40.1)の作動装置(24)によって形成されるようになっている、請求項8または9記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項12】
第2の部分クラッチ(40.2)が、少なくとも部分的に第1の部分クラッチ(40.1)の前記摩擦面支持エレメントおよび/または前記摩擦面形成エレメントによって形成されるようになっている、請求項8から11までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項13】
第2の部分クラッチ(40.2)が、第1のクラッチ部材(1E)または第2のクラッチ部材(1A)に相対回動不能に結合されたエレメント(5,6)または一方のクラッチ部材(1E,1A)に相対回動不能に連結されたエレメントに相対回動不能に結合されたエレメント(5,6)と、それぞれ他方のクラッチ部材(1A,1E)または該クラッチ部材(1A,1E)に相対回動不能に結合されたエレメント(6,5)とによって形成されるようになっている、請求項8から11までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項14】
作動装置(24)が、第1のクラッチ部材(1E)または第2のクラッチ部材(1A)に相対回動不能に結合されているかまたは両クラッチ部材(1E,1A)に相対回動不能に結合されたエレメント(5,6)に相対回動不能に結合されており、第2の部分クラッチ(40.2)が、作動装置(24)と、それぞれ他方のクラッチ部材(1A,1E)または該クラッチ部材(1A,1E)に相対回動不能に結合されたエレメント(6,5)との間に形成されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項15】
前記圧力媒体で負荷可能な圧力室(38)が、切換可能なクラッチ装置(1)の、クラッチ周辺を成しかつハウジング(36)によって取り囲まれた内室(33)に流れ技術的に接続されており、圧力室(38)内の圧力の増加につれて、流れ技術的な接続部(37)を介して発生させられる冷媒流が減少するように、該冷媒流を制御するための手段が設けられている、請求項8から14までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項16】
圧力室(38)と前記クラッチ周辺との間の流れ技術的な接続部(37)に、制御可能な弁装置が設けられている、請求項15記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項17】
圧力室(38)と前記クラッチ周辺との間の接続部(37)が、ピストンエレメント(3)に配置された少なくとも1つの接続孔を有しており、該接続孔が、クラッチ周辺側で、クラッチ部材(1E,1A)に対するピストンエレメント(3)の有効な圧着面(32)の領域に開口している、請求項15記載の切換可能なクラッチ装置。
【請求項18】
車両のハイブリッドシステム(12)に用いられるパワートレーン(11)であって、少なくとも1つの第1の原動機(13)と第2の原動機(15)とが設けられており、両原動機(13,15)が、別個にまたは一緒に力伝達装置(19)を介して伝達ユニット(17)、特に伝動装置(18)に接続可能であり、さらに、第1の原動機(13)と力伝達装置(19)との間に配置された、第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)が設けられている形式のものにおいて、切換可能なクラッチ装置(1)の分離された切断時に、第1の原動機(13)から力伝達装置(19)の入力部材(E)への、トルクを伝達する作用結合部が形成可能であることを特徴とする、車両のハイブリッドシステムに用いられるパワートレーン。
【請求項19】
伝動装置(18)および/または力伝達装置(19)および/または切換可能なクラッチ装置(1)に運転媒体供給および/または案内システム(25)が対応配置されており、該運転媒体供給および/または案内システム(25)が、力伝達装置(19)の入力部材(E)に機械的に連結された少なくとも1つの圧送装置、特に伝動装置オイルポンプ(26)を備えている、請求項18記載のパワートレーン。
【請求項20】
切換可能なクラッチ装置(1)の分離された切断時に、伝動装置(18)への、前記トルクを伝達する作用結合部が形成可能である、請求項18または19記載のパワートレーン。
【請求項21】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)の分離時に伝達可能な前記トルクが制限されている、請求項18から20までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項22】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)の切断時の伝達可能な前記トルクが、3Nm〜80Nmの範囲内、有利には20Nm、全く特に有利には10Nmに設定されている、請求項21記載のパワートレーン。
【請求項23】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)が、圧力媒体操作可能な湿式クラッチとして形成されている、請求項18から22までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項24】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)が、分離された切断状態において、少ない圧力と少ない体積流とで負荷可能である、請求項18から23までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項25】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)が、少なくとも分離された前記切断状態において、冷媒流によって冷却可能である、請求項18から24までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項26】
切換可能なクラッチ装置(1)に対して並列に切換可能なドラグクラッチ(28)を有する、予め規定された最小トルクを伝達するための手段(27)が設けられている、請求項18から25までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項27】
ドラグクラッチ(28)が、別個のクラッチによって形成されるようになっている、請求項26記載のパワートレーン。
【請求項28】
第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための請求項1から17までのいずれか1項記載の切換可能なクラッチ装置(1)が形成されている、請求項26記載のパワートレーン。
【請求項29】
力伝達装置(19)の、第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)に結合された入力部材(E)が、少なくとも力伝達装置(19)を取り囲む釣鐘状ハウジング部材(34)と、該釣鐘状ハウジング部材(34)によって形成されたかまたは該釣鐘状ハウジング部材(34)に相対回動不能に連結された、切換可能なクラッチ装置(1)と力伝達装置(19)との圧力室を仕切るために切換可能なクラッチ装置(1)と力伝達装置(19)との間に設けられた壁(6)によって形成されるようになっている、請求項18から28までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項30】
力伝達装置(19)が、ハイドロダイナミック式の構成要素(20)と、該ハイドロダイナミック式の構成要素(20)を介するパワーフローを少なくとも部分的に迂回するための装置(22)とを有しており、ハイドロダイナミック式の構成要素(20)と装置(22)とが、力伝達装置(19)の入力部材(E)と出力部材(A)との間に配置されている、請求項18から29までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項31】
ハイドロダイナミック式の構成要素(20)が、ハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータまたはハイドロダイナミック式のクラッチとして形成されている、請求項30記載のパワートレーン。
【請求項32】
力伝達装置(19)が、二通路ユニットとして形成されている、請求項18から31までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項33】
力伝達装置(19)が、三通路ユニットとして形成されている、請求項18から31までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項34】
第1の原動機(13)が、内燃機関(14)によって形成されるようになっており、第2の原動機(15)が、モータおよびジェネレータとして運転可能な電気機械(16)によって形成されるようになっている、請求項18から33までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項35】
車両において、請求項18から34までのいずれか1項記載のパワートレーンが設けられていることを特徴とする、車両。
【請求項36】
ハイブリッドシステム(12)に用いられる請求項18から34までのいずれか1項記載のパワートレーン(11)を運転するための方法において、運転モード「緊急運転」において、第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)の作動装置(24)が、操作力を発生させるための装置(39)によって切断終端位置に移動させられており、第1の原動機(13)を運転し、予め規定された最小トルクを、第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)の第2の部分クラッチ(40.2)を介して圧送装置(26)に伝達することを特徴とする、ハイブリッドシステムに用いられるパワートレーンを運転するための方法。
【請求項37】
前記運転モード「緊急運転」において、パワーフローを力伝達装置(19)でハイドロダイナミック式の構成要素(20)を介して形成する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
運転モード「電気走行」において、第1の原動機(13)をパワートレーン(11)から分離しかつ接続するための切換可能なクラッチ装置(1)の圧力室(38)を、作動装置(24)を両部分クラッチ(40.1,40.2)の切断下の中間位置に運動させる圧力で負荷する、請求項35または36記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−524499(P2011−524499A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513860(P2011−513860)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000732
【国際公開番号】WO2009/152793
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510068035)シェフラー テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】