説明

制御された配位構造を有する担持型触媒および該触媒の調製方法

制御された配位構造を有する担持型反応性触媒およびその製造方法が開示される。担持型触媒は、原子の最上位層すなわち外層を有する触媒粒子を含み、その中で原子の少なくとも一部分は制御された配位数2を示す。そのような触媒は、その中で分子の大半が枝分れ状よりはむしろ直鎖状である制御剤を含む中間前駆体組成物から製造することができる。担持型触媒(10)は、当初その表面にヒドロキシル基を含む担体(12)と、縮合反応によって担体(12)のヒドロキシル基に化学的に結合される固定剤(14)と、固定剤に何らかの方法(図示せず)で結合されまたは付着される触媒粒子(6)とを含む。本発明の担持型触媒は、高選択性での過酸化水素の調製および他の化学転化反応に対して有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな化学プロセスにおける使用のための触媒に関する。より詳細には本発明は、制御された配位構造を有する高選択性の担持型触媒(supported catalyst)および該触媒の製造方法に関する。また、本発明は、担持型触媒を製造するために使用される中間前駆体組成物(intermediate precursor composition)および中間前駆体組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒は、化学、石油、製薬、エネルギーおよび自動車を含む多くの産業で幅広く使用されている。これらの産業で使用される触媒の多くは、一般に金属または金属と他の元素の組合せである、特定の活性成分の分散粒子に基づく。このタイプの触媒では、物質の触媒的特性は、選択された活性成分のタイプ、すなわち触媒の元素組成、ならびに分散粒子の詳細な構造、すなわち分散粒子の原子スケールの構造および配向の両方によって決まる。
【0003】
歴史的に、触媒の開発および最適化の研究の多くは、好適な触媒成分の選択にその重点を置いてきた。従来の方法は、触媒開発者に、触媒成分の選択および相対量を制御することを可能にしている。しかしながら、触媒の詳細構造の制御は、特に原子スケールで、はるかに大きな困難を示してきた。原子スケールの構造の制御は、元素組成の選択と同じくらい、効果的な触媒の開発において重要である可能性がある。例えば、詳細な触媒結晶構造の制御は触媒の選択性に直接に関係する可能性がある。特定の触媒活性部位の制御された露出を可能にする方法は、さまざまなタイプの活性部位の混合物を含有する触媒を使用しては現在不可能な程度まで、特定の反応径路が優先されることを可能にするであろう。
【0004】
好ましい触媒構造を定義する1つの特に有用な方法は表面活性部位の幾何学的配置に基づく。熱力学的考慮から、通常、結晶性材料の粒子が、限定された数の低指数結晶面のうちの1つまたは複数を露出することは、事実である。金属粒子の一般的な低指数結晶面露出は、例えば、面心立方(FCC)、体心立方(BCC)、六方最密(HCP)を含む一般的な結晶格子の111、100および110結晶面を含む。例示的な結晶面を図1に概略的に示す。これらの結晶面のそれぞれは、異なる原子配置を有し、したがって特定の化学反応に関して異なる触媒特性を示す可能性がある。したがって、触媒粒子の原子スケールの構造に対する効果的な制御を発揮するための方法が得られるならば、理論的には、触媒機能の大幅な向上を達成することができるであろう。金属結晶表面構造のより詳細な説明は、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)のWWWホームページ、具体的には、表面構造データベース(Surface Structure Database:SSD)にアクセスすることによって見付けることができる。
【0005】
触媒開発の長い歴史にもかかわらず、触媒機能を向上させ最適化する手段として分散触媒粒子の詳細結晶構造を制御することを可能にする確実な方法は、たとえあったとしても、わずかである。一つには、これは、原子スケールで構造を制御することの本質的な困難さに起因する。また、これには、所望の原子スケール構造がうまく達成されたかどうかを正確に判定する方法の欠如が関係している。さらに、触媒結晶格子の形状を制御することは同じくらい難しいかもしれないが、当業者は、触媒結晶の結晶面露出を制御することはなおさら難しいと感じるであろう。
【0006】
活性触媒粒子の結晶格子構造を制御するための試みがなされている。非特許文献1は、成形材料の濃度とイオン性白金の濃度との比を制御することによる、形状制御された白金粒子の合成方法を説明する(非特許文献1参照)。「四面体、立方体、不規則な角柱、二十面体および立方八面体の粒子形状が観察され、それらの分布は、キャッピングポリマー材料と白金カチオンの濃度比に依存していた」(非特許文献1、1924ページ)。しかしながら、所与の結晶形状の結晶面露出を制御する方法に関して非特許文献1は何も言及していない。また、非特許文献1は、触媒結晶構造の1つの結晶面露出の別の結晶面露出に対する優位性をどのように選択しまたは増大させるかを教示していないだけでなく、別の結晶面露出に優先する任意の特定の結晶面露出の選択を動機付けるであろう教示または示唆を一切提供していない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,500,968号明細書
【非特許文献1】Termer S. Ahmadiら(ジョージア工業大学(Geogia Institute of Technology))、「Shape-Controlled Synthesis of Colloidal Platinum Nanoparticles」、Science、第272巻、1924〜26ページ
【非特許文献2】Hiemenz、Polymer Chemistry: The Basic Concepts (1984)、394ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定の反応に対して高い特異性を有する担持型反応性触媒および該担持型反応性触媒を製造するための方法を対象とする。該担持型反応性触媒は、制御された配位構造を有する触媒粒子を含み、その中で反応性触媒原子の最上位面すなわち外面の大半が最隣接原子配位数(nearest neighbor coordination number)2を有する。すなわち、担持型反応性触媒の中の触媒的に反応性の原子(触媒反応性原子)は、個々の触媒原子の大半が、触媒粒子の最上位層すなわち外層内で正確に2つの他の触媒原子と配位するように配置される。そのような反応性触媒は、特定の反応に対して高い特異性を有する。
【0009】
また、本発明は、制御された配位構造を有する担持型触媒を製造するために使用される前駆体組成物、および該前駆体組成物の製造方法を対象とする。本発明の前駆体組成物は、反応性触媒原子の最上位面すなわち外面の大半が最隣接原子配位数2を有する担持型触媒を生成するように設計される。
【0010】
配位数2を有する触媒反応性原子を担持型触媒の反応性の表面に提供することは、所与の化学反応の化学反応物が、その触媒化学反応中に触媒表面にどのように配置されおよび分布されるかを、大幅に限定する。化学反応物がどのように配置および分布されるかを触媒原子によって限定することは、化学反応物の濃度および同一性を前提として生成しうる可能な反応生成物の範囲およびタイプに直接に影響を与え、およびこれらを制御する。一例として、および限定目的ではなく、酸素および水は一緒に反応して水(HO)および過酸化水素(H)の両方を形成することができるが、水は、熱力学的に優勢であり、反応条件を変更する何らかの方法がない限り、通常は過酸化水素よりも多く形成される。また、このことは、酸素と水素との間の触媒反応の場合にも当てはまり、該反応において水の形成が自然に優勢である。最上位層すなわち外層に配位数2を有するように触媒反応性原子の大半が配置された触媒を提供することは、酸素および水素を含むフィードストリームを使用して水よりも過酸化水素の生成を優先する高い選択性を示すことが現在発見されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施形態では、本発明に従う担持型反応性触媒は、1つまたは複数の制御剤または鋳型剤(templating agent)と錯体化される1つまたは複数の触媒原子を含む中間前駆体組成物から製造されて、触媒反応性原子の大半が最上位層すなわち外層において配位数2を有する触媒粒子の形成を促進する中間触媒錯体を形成する。別の実施形態によれば、本発明に従う前駆体組成物は、1つまたは複数の液体溶媒、キャリアまたは分散剤をさらに含む。さらに別の実施形態によれば、本発明に従う前駆体組成物は、1つまたは複数の担体粒子または基体をさらに含む。
【0012】
本発明の前駆体組成物は、触媒反応性原子を担体に付着させる方法と相まって、触媒クリスタリットのどの面を主に露出させるかを制御する。配位数2を有する低指数結晶面の例は、最上位層すなわち外層に直線的な原子列を含む面心立方(FCC)または六方最密充填(HCP)結晶格子の(110)結晶面、HCP結晶格子の(101)、(122)または(120)結晶面、および体心立方(BCC)結晶格子の(112)、(122)または(123)結晶面を含む。触媒結晶またはクリスタリットの形成は、不可避的に起こる可能性があり、および触媒原子の最上位層すなわち外層が配位数2を有する触媒粒子を生成するための、現在暗黙の方法である。それにもかかわらず、少なくとも理論的には、触媒反応性原子が触媒結晶を形成すること自体は必須でなく、担体に付着する触媒粒子の最上位層すなわち外層の原子の大半が配位数2を有することのみが必須である。原子が、一直線の列として、ジクザグフォーメーションに、あるいは均一な形状を持たずあまり秩序のない列に並んでいるかどうかにかかわらず、触媒反応性原子の大半が配位数2を有する限り、高い反応特異性を得ることが可能であろう。
【0013】
1つの実施形態によれば、有利には、担持型触媒の触媒反応性原子の少なくとも約50%は、原子の最上位層すなわち外層において配位数2を有する。好ましくは触媒反応性原子の少なくとも約60%が原子の最上位層すなわち外層において配位数2を有し、より好ましくは触媒反応性原子の少なくとも約70%が最上位層すなわち外層において、なおとりわけ好ましくは触媒反応性原子の少なくとも約80%が最上位層すなわち外層において、最も好ましくは触媒反応性原子の少なくとも約90%が最上位層すなわち外層において、配位数2を有する。最上位層すなわち外層において触媒反応性原子の少なくとも約95%が配位数2を有する場合、反応選択性はよりいっそう高まると予想される。最上位層すなわち外層の触媒反応性原子の100%が配位数2を有する場合、反応選択性は最大となろう。
【0014】
本発明に従う担持型触媒は、最上位層すなわち外層の原子の大半が配位数2を有する反応性触媒原子を提供することに加えて、(a)サイズが小さく(例えば10ナノメートル以下)、(b)均一なサイズ、形状および分布を有し、(c)集塊化および/または結晶面再配向を阻止するように担体に確実に固定される、個々の触媒粒子を含んでもよい。
【0015】
さまざまな異なる元素を担持型触媒内の反応性触媒原子として使用することができる。例えば触媒原子は、1つまたは複数の貴金属、卑遷移金属(base transition metal)、希土類金属、および非金属さえをも含むことができる。上記の触媒原子の他に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属が存在してもよい。上記の触媒原子を、希望に応じて単独でまたは組み合わせて利用して、1つまたは複数の目標とされる化学反応に関連する所望の触媒反応性および/または選択性を有する担持型触媒を生成することができる。
【0016】
本発明は、1つまたは複数の触媒原子と錯体化させて中間触媒錯体を形成するときに、触媒反応性原子の最上位層すなわち外層が配位数2を有する担持型触媒の形成に使用することができる、さまざまな異なる制御剤または鋳型剤の使用を企図する。1つの態様では、制御剤または鋳型剤は、前駆体溶液中で所望の触媒原子と錯体を形成する能力がある。特異的な構造および化学特性のため、制御剤は、触媒粒子またはクリスタリットの形成に介在し、特異的かつ所望の構造の優先的な形成をもたらす。具体的には、中間触媒錯体は触媒粒子形成中に相互作用して、触媒反応性原子の最上位層すなわち外層が最隣接原子配位数2を有する制御された配位結晶面構造の優勢な露出を有する分散された粒子構造の形成を誘導する。
【0017】
本発明の範囲に含まれる制御剤は、さまざまな異なるポリマー、オリゴマーまたは有機分子を含む。それぞれの制御剤分子は、制御剤に対して触媒反応性原子を錯体化するための複数の官能基がそれに沿って配置される構造主鎖を有する。いくつかのケースでは、触媒原子は、2つ以上の異なる化合物またはポリマーによって提供される官能基によって錯体化されてもよい。例えば、原子価2の8つの触媒原子は、一方の側で第1のポリマー、オリゴマーまたは有機分子によって提供される8つの官能基によって、および反対側で第2のポリマー、オリゴマーまたは有機分子によって提供される8つの官能基によって、錯体化されてもよい。
【0018】
最上位層すなわち外層で配位数2を有するように担体上に配置される触媒反応性原子の傾向は、枝分れ状である分子ではなく、制御剤を構成する直鎖状分子のパーセンテージによって、少なくとも部分的に決定されることが現在見出されている。より具体的には、直鎖状分子のパーセンテージを増大させることが、配位数2を有する触媒反応性原子の傾向を高めることが見出されている。このことを考慮して、制御剤は、典型的には、少なくとも約50%が直鎖状であるポリマー、オリゴマーまたは有機分子を含む。好ましい実施形態では、制御剤のポリマー、オリゴマーまたは有機分子の少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約75%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%が直鎖状である。最上位層すなわち外層で配位数2を有するように配置される触媒反応性原子の傾向は、制御剤を構成するポリマー、オリゴマーまたは有機分子の100%が直鎖状である場合に最大となる。
【0019】
いくつかのケースでは、制御ポリマー、オリゴマーまたは有機分子が直鎖状である傾向は、分子量の低下とともに高まる。低分子量のより線状である制御ポリマーまたはオリゴマーの例はポリアクリル酸である。ポリアクリル酸の分子量を低下させることは、その長さを減少させ、このことは、言い換えると、特定のポリアクリル酸ポリマーまたはオリゴマーが枝分れ化される可能性を統計学的に低下させる。過剰の制御剤の使用は、サイズがより小さく、担体表面により均一に分散される触媒活性粒子をもたらすと考えられる。
【0020】
また、最終的な担持型触媒がどのように形成されるかに依存して、制御剤は、反応性触媒粒子を担体に化学的に固定する働きをする可能性がある。好ましくは、担体は、例えば縮合反応によって、制御剤の1つまたは複数の官能基に化学的に結合することができる複数のヒドロキシル基または他の官能基を、その表面に有する。また、制御剤の1つまたは複数のさらなる官能基は、触媒粒子内の1つまたは複数の原子に結合され、それによって触媒粒子を担体に固定する。触媒粒子を担体に確実に固定することは、触媒粒子の使用可能な表面積を低減させるであろう触媒粒子が集塊化される傾向を低減させることによって、時間が経過しても触媒を活性に保つのに役立つ。また、触媒粒子を担体に固定することは、担体から完全に分離される触媒粒子の傾向を低減または排除する。このような分離も触媒の効力を低減させる可能性がある。
【0021】
本発明に従う触媒粒子を任意の知られている担体上に配置することは本発明の範囲である。担体は2次元または3次元であってもよく、多孔質または非多孔質であってもよく、および有機材料または無機材料を含んでもよい。担体はそれ自体が触媒であってもよく、または不活性であってもよい。例示的な担体材料は、アルミナ、シリカ、チタニア、キースラガー(kieselguhr)、ケイ藻土、ベントナイト、クレー、ジルコニア、マグネシアはもちろん他のさまざまな金属酸化物の、単独または組合せを含み、これらに限定されない。例示的な担体材料は、秩序多孔質構造を有する天然または合成のゼオライトとして集合的に知られている多孔質固体のクラスを含む。いくつかの用途に好ましい担体の別の重要なクラスは、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、フッ素添加炭素(fluoridated carbon)などのような炭素ベースの材料である。また、担体材料は金属または金属合金で構成されてもよい。
【0022】
中間前駆体組成物において錯体化される触媒原子は、一般に、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、タングステン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩およびグリコール酸塩を含む金属塩溶液またはコロイド懸濁液の形態をとり、これらに限定されない。触媒成分または制御剤のビヒクルとして溶媒を使用することができる。好ましい溶媒は、水、希釈水性酸(dilute aqueous acids)、メタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、およびそれらの混合物などを含む。該前駆体溶液またはコロイド懸濁液は、有機酸および無機酸を含む任意の適当な酸で酸性化されてもよい。
【0023】
本発明に従う中間前駆体組成物および担持型触媒を製造する例示的な方法は、溶液中の触媒原子を(例えばイオン性塩の形態で)準備する工程、溶液中の制御剤を(例えばカルボン酸塩の形態で)準備する工程、および触媒原子を制御剤と反応させて、触媒原子と制御剤との触媒錯体を含む中間前駆体組成物を形成する工程を含む。本発明の1つの態様では「中間前駆体組成物」を、周囲の溶媒またはキャリアを除いて触媒原子および制御剤から形成される中間触媒錯体であると考えてもよい。実際、このような錯体を溶液中にまたはコロイド懸濁液として生成し、次いで、後に適当な溶媒またはキャリアに加えて触媒錯体を含む溶液またはコロイド懸濁液を再構成することができる固体前駆体触媒錯体をもたらすように、溶媒またはキャリアを除去することは本発明の範囲内である。したがって本発明の別の態様では、本発明に従う「中間前駆体組成物」は、その中に中間触媒錯体が分散した1つまたは複数のの異なる溶媒またはキャリアを含んでもよい。
【0024】
次に、担体に触媒錯体を付着または含浸させるために、典型的には適当な液体溶媒またはキャリアを用いて、中間触媒錯体を担体に付着させる。その後、任意選択で、制御剤を担体に結合させる反応ステップに関連して、溶媒またはキャリアを除去する。これは、その中で触媒原子が所望のやり方で配置されるが、しかしまだ露出または別な方法で活性化されない、担持型前駆体触媒をもたらす。以上のことを考慮して、用語「中間前駆体組成物」は、同様に、触媒錯体と、触媒錯体がその上に付着される担体とを含むことができる。
【0025】
触媒原子の少なくとも一部分を露出させ、活性な担持型触媒を生成するために、制御剤の一部分を、例えば還元(例えば水素化)または酸化によって除去する。本明細書で論じられるように、制御剤の一部分を除去することは、触媒原子を露出させるだけでなく、触媒原子を崩壊または合体させて、触媒原子を所望の配置(すなわち、その中で触媒原子の大半が最隣接原子配位数2を有する)を可能にするかまたは引き起こすと考えられる。好ましい実施形態では、制御剤を除去して触媒原子を露出させるプロセスを慎重に制御して、触媒粒子を担体に確実に固定するように制御剤の十分な量が残ることを保証する。したがって、少なくとも担体と該担体に面する触媒粒子の下面との間に間置される制御剤のその一部分は、好都合に、無傷のまま残される。制御剤の残存物は「固定剤」を構成すると考えられる可能性がある。(制御剤の残存する部分に加えて、「固定剤」は任意選択で、触媒粒子と担体との間に間置されて触媒粒子を担体に固定するのを助ける他のポリマー、オリゴマーまたは有機化合物を含んでもよい。)
【0026】
一方、触媒粒子を担体に固定するための制御剤がほとんどまたは全く残存しない程度にまで制御剤を除去することは、担持型触媒の長期安定性を低下させることが見出された。制御剤の全てを除去することは、担持型触媒の長期安定性を大幅に低下させる可能性がある。制御剤の全てを除去することは、当初は、所望の結晶面露出を有する触媒粒子をもたらすが、一方、不適当な制御剤を残し、および/または触媒粒子を担体に確実に結合するための別のポリマー、オリゴマーまたは有機化合物を提供しそこなうことは、より相当に移動性である触媒粒子をもたらす。このことは、言い換えると、熱に対して露出され(例えば、触媒使用時など)、および/または担体から完全に分離される場合に集塊化する触媒粒子のより大きな傾向をもたらす。
【0027】
結果として生じる担持型触媒を任意選択で熱処理して、触媒原子をさらに活性化させることができる。担持型触媒を熱処理することは、担持型触媒の触媒活性を増進させることが見出された。また、このことは、改良された活性および/または選択性を有する担持型触媒をもたらす可能性がある。
【0028】
一例として、本発明に従う担持型触媒は、以下の化学反応を触媒的に促進するのに有用である可能性がある。
【0029】
1.水の代わりに過酸化水素を選択的に形成するための、水素および酸素を伴う反応。そのように形成される過酸化水素を、製品として使用または販売し、あるいは統合された製造プロセスにおいて酸化剤として使用して、他の化学製品を生成してもよい;
2.化学製品を形成するための、水素、酸素および有機化合物を伴う反応、例えば、有機化合物と反応して他の化学製品を形成する中間酸化剤としての過酸化水素のインサイチュー形成;
3.酸化された化学製品を形成するための、酸素および有機化合物を伴う反応、すなわち中間体としての過酸化水素を使用しない直接酸化;
4.化学製品または燃料製品を形成するための、水素と有機化合物との間の反応、すなわち水素化、水素処理および水素化分解;
5.水素を遊離させるための化学製品の反応、すなわち脱水素および改質;および
6.燃料電池電極における水素および/または酸素の電気化学的反応。
【0030】
また、特定の溶媒溶解度パラメータ(Solvent Solubility Parameter:SSP)を有する有機溶媒中でプロセスを実施することによって、水素および酸素からの過酸化水素の製造に関してさらなる改良を行うことができることが発見された。本発明の特徴は、選択された有機溶媒を少なくとも部分的に含む液体媒質の中で過酸化水素の合成反応を実施することによって達成される重大な性能向上の発見である。さまざまな知られている有機溶媒を使用してもよいが、適当な溶媒の選択は、触媒性能の向上、再循環のために過酸化水素を含有する液体生成物から液体溶媒を分離することの容易さ、過酸化水素生成物の最終用途、および溶媒と過酸化水素との間に起こる副反応の可能性を含むさまざまな因子に左右される。
【0031】
有機溶媒を純粋な溶媒として、または水との混合物として使用してもよく、その選択は、固有の溶媒選択パラメータ(Solvent Selection Parameter:SSP)によって定義される同様の因子に関連する。溶媒選択パラメータは、溶媒中の水素の溶解度に基づいて定義され、具体的には以下のように定義される。
【0032】
溶媒選択パラメータ=Σ(w×S
式中、
は、液体反応混合物中の溶媒成分iの重量分率;
は、25℃、1気圧の標準状態におけるモル分率で表される純粋成分i中の水素の溶解度;および
記号「Σ」は、液体反応混合物を構成する成分の総和を示す。
【0033】
溶媒選択パラメータ(SSP)は、公開文献において入手可能である水素の溶解度データに基づいて簡単に計算できる。溶媒選択パラメータは、異なる液体を混合する際に起こる可能性がある水素溶解度の非線形変化を考慮しないが、しかしながら、溶媒選択パラメータは、本発明を実施するための液体媒質向けの好適な有機溶媒の選択において非常に有用であることが見出された。
【0034】
本発明のために有用な有機溶媒は、アルコール、ケトン、アルデヒド、フラン(例えばTHF)、エーテル、エステルのような酸素含有化合物、ニトリル、アミン、アミド(例えばDMF)のような窒素含有化合物、有機ホスフィンオキシドのようなリン含有化合物、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素のような炭化水素など、またはこれらの混合物を含む。好ましい溶媒は、水と混和性であり、過酸化水素に対して良好な溶解度を有する溶媒である。なぜならば、本発明の実施においては、一相の液体反応媒質が優れた収率の成果を提供することが見出されているためである。さらに、溶媒は、水または過酸化水素の沸点よりも低い沸点を有することが好ましい。こうすると、過酸化物を含有する生成物から蒸留ステップによってオーバーヘッドストリームとして溶媒を回収することができる。そのような、より低い沸騰温度の関係は、より重い溶媒から過酸化水素のオーバーヘッドを蒸留する危険な操作の必要性を回避する。好ましい溶媒の例は、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノールのような軽質アルコール、アセトンのような軽質ケトン、アセトニトリル、1−プロピルアミンのような窒素含有溶媒である。
【0035】
1つまたは複数の反応促進剤を含めることによって触媒活性をさらに高めることができる。過酸化水素の製造では、臭化ナトリウムのような金属ハロゲン化物が、過酸化水素を生成する酸素と水素の反応を促進することが示された。
【0036】
本発明のこれらの利点および特徴ならびにその他の利点および特徴は、以下の説明および添付の請求項からより明白となり、または以下に記載される本発明の実施によって知ることができる。
【0037】
次に、本発明の上記の利点および特徴ならびにその他の利点および特徴を明らかにするため、添付図面に示される本発明の具体的な実施形態を参照することによって本発明をより詳細に説明する。これらの図面は本発明の代表的な実施形態のみを示すものであり、したがってこれらの図面を本発明の範囲を限定するものとみなしてはならないことを理解されたい。添付の図面を使用することによって、本発明をさらに具体的および詳細に記載しおよび説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
I.緒言および定義
本発明は、制御された配位構造を有する担持型反応性触媒を対象とする。具体的には、担持型触媒の触媒粒子中の反応性触媒原子の最上位層すなわち外層の大半が最隣接原子配位数(nearest neighbor coordination number)2を有する。そのような担持型触媒は、さまざまな異なる化学反応に対して高い特異性を示す。また、本発明は、中間前駆体組成物、該前駆体組成物の製造方法、および該前駆体組成物から担持型反応性触媒を製造する方法に関する。
【0039】
用語「前駆体組成物(precursor composition)」は、制御された配位構造を有する反応性担持型触媒の製造に使用される一連の中間組成物を指す。前駆体組成物自体は、さらに処理されない限り、触媒的に活性でなくてもよい。本発明の前駆体組成物の例は、(1)制御剤と錯体化した触媒原子を含む中間触媒錯体、(2)中間触媒錯体と液体溶媒またはキャリアとを含む溶液またはコロイド懸濁液、(3)中間触媒錯体と、溶媒またはキャリアと、担体とを含む溶液またはコロイド懸濁液(触媒錯体が担体に実際に結合しているか否かは問わない)、ならびに(4)溶媒またはキャリアの非存在下で担体に結合した中間触媒錯体が含まれる。
【0040】
用語「中間触媒錯体(intermediate catalyst complex)」および「触媒錯体」は、その中で制御剤または鋳型剤と1つまたは複数の異なるタイプの触媒原子との間に結合または配位錯体が形成される、溶液、コロイドまたは懸濁液を指す。制御剤と触媒原子との間の「結合」はイオン性、共有結合性、静電性であってもよく、または、非結合電子との配位、ファンデルワールス力などの他の結合力を含んでもよい。
【0041】
用語「制御剤(control agent)」および「鋳型剤(templating agent)」は、本発明の制御された配位構造を有する担持型触媒粒子の形成を促進するポリマー、オリゴマーまたは有機化合物のクラスを指す。中間前駆体組成物の範囲では、触媒原子の溶液中またはコロイド縣濁液中の溶液または分散液を形成するために、制御剤または鋳型剤は、まず、触媒原子と中間触媒錯体を形成する。担体上に付着されると、中間触媒錯体は触媒原子の秩序配列を形成する。制御剤の一部を除去すると、露出される触媒原子の大半は最隣接原子配位数2を有するように配置される。
【0042】
用語「触媒原子」は、制御剤または鋳型剤と錯体化して中間触媒錯体を形成する金属または非金属原子を指す。制御剤の一部を除去した後に、触媒原子は、所望の化学反応を触媒的に促進することのできる「反応性触媒原子」となる。
【0043】
用語「触媒粒子」は担持型触媒の触媒的に活性な部分を指す。いくつかの(またはおそらく全ての)ケースで、触媒粒子は、その中で反応性触媒原子が秩序結晶構造に配置された「結晶粒子」である。とは言え、その中で活性な触媒粒子が秩序結晶構造に配置されていない担持型反応性触媒を形成することも本発明の範囲に含まれる。本発明に従う本発明の触媒粒子の顕著な特徴は、触媒粒子の最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の大半が最隣接原子配位数2を有することである。
【0044】
用語「結晶面」は、触媒結晶内の反応性触媒原子の最上位層すなわち外層を指す。用語「結晶面露出」および「結晶面曝露」は、特定の結晶面内の触媒原子の具体的な配置を指す(例えば、低指数結晶面露出(100)、(110)および(111))。
【0045】
本明細書では、用語「制御された相曝露」または「制御された面露出」は、触媒結晶または粒子が、所望の配位構造に触媒原子の最上位層すなわち外層を有する状況を指すために使用される。
【0046】
用語「配位数2」は、低指数であるかまたは高指数であるかにかかわらず、最上位層すなわち外層の反応性触媒原子が、所与の列の末端の原子を除いてそれぞれの原子が正確に2つの他の触媒原子と配位するように配置される結晶面露出を指す。それぞれの列の末端の原子は、もちろん他の1つの触媒原子としか配位しないが、最隣接原子配位数2を有する最上位層すなわち外層の触媒原子のパーセンテージを測定する目的のために、「配位数2」を有するとみなされる。実際には結晶でない触媒粒子の場合、最上位層すなわち外層の反応性触媒原子は、真の結晶面を実際に模倣してもしなくてもよい。
【0047】
用語「担持型反応性触媒(supported reactive catalyst)」は、担体に付着される1つまたは複数の触媒粒子を含有する組成物を指す。担体自体は、触媒的に活性であってもよく、または触媒的に不活性であってもよい。
【0048】
II.制御された配位構造を有する担持型反応性触媒の概要
本発明の担持型反応性触媒は、その中で最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の大半が最隣接原子配位数2を有する触媒粒子を含む。用語「配位数2」が意味すること、およびそのように配置された反応性触媒原子が特定の反応に対して高い選択性を示す理由をよりよく理解するため、図1および2を参照する。
【0049】
図1Aおよび1Bは、望ましい結晶面露出または望ましくない結晶面露出を概略的に説明する。望ましい体裁は、結晶面の触媒原子の最上位層すなわち外層が主として配位数2を示すことによって識別され、それに対して望ましくない結晶面露出はそれよりも大きな配位数を有する。図1AのFCC(110)面露出およびHCP(120)面露出は、最上位層すなわち外層の原子が配位数2を有する望ましい原子配置の例である。FCC(110)面露出の最上位層すなわち外層の原子は直線的型式に配置されており、一方、HCP(120)面露出の最上位層すなわち外層の原子はジクザグ型式に配置されている。いずれのケースでも、最上位層すなわち外層のそれぞれの触媒原子は正確に2つの他の触媒原子と配位する(1つの触媒原子と配位するそれぞれの列の末端の原子を除く)。以下により十分に論じるように、触媒原子のこの配置は、酸素および水素を含むフィードストリームを使用する反応を触媒するためにこの触媒が使用される場合、水の形成の代わりに過酸化水素の形成に有利に働く。
【0050】
この好ましい面露出とは対照的に、図1BのFCC(100)面露出およびFCC(111)面露出は、最上位層すなわち外層の触媒原子が3つ以上の他の触媒原子と配位しているため、あまり望ましくないまたは望ましくない配置の例である。FCC(100)面露出の場合、最上位層すなわち外層において、内部の触媒原子はそれぞれ4つの他の触媒原子と配位している。FCC(111)面露出では、最上位層すなわち外層の内部の触媒原子はそれぞれ6つの他の触媒原子と配位している。FCC(100)面露出およびFCC(111)面露出はともに、水よりも過酸化水素に対して非選択性である。水は熱力学的に優勢であるため(すなわち、水は過酸化水素よりもはるかに安定であるため)、FCC(100)面露出およびFCC(111)面露出はともに水の形成に有利に働く。
【0051】
その中で最上位層すなわち外層の反応性触媒原子が最隣接原子配位数2を有する触媒粒子が、熱力学的には水よりも劣勢な過酸化水素の形成に有利に働く理由をよりよく説明するために、図2Aおよび2Bを参照する。図2Aに見られるように、望ましい露出を有する触媒原子は、少なくとも理論的には過酸化水素の生成しか可能にしない体裁において、触媒粒子表面への水素および酸素の制御された表面吸着を可能にする。水素および酸素はともに、2つの水素原子(H−H、またはH)または2つの酸素原子(O=O、またはO)を含む2原子分子としてそれぞれ存在する(「−」は単結合を表し、「=」は2重結合を表す)。FCC(110)面露出およびHCP(120)面露出の触媒原子に吸着されるとき、またはこれらと配位するとき、酸素は通常2つの結合を形成するが、水素は1つの結合しか形成しないので、個々の水素原子と酸素原子との間の反応を促進する水素分子と酸素分子の唯一の配置は、図2Aに示されるように(H O O H)である。配位した水素原子と酸素原子との間の分子結合が形成されると、過酸化水素分子(H−O−O−H)が形成される。
【0052】
配位数2を有する4つの触媒原子の群毎に関連する、水素と分子との唯一の他の可能な配置、すなわち(H H H H)、(O O O O)および(H H O O)は、水素と酸素との間の反応を促進しない。水(H−O−H)を形成するためには2つの水素と配位する孤立した酸素原子(H O H)が必要となるため、H分子とO分子の配置は水の形成を促進しない。しかしながら、典型的な反応条件下の酸素ガスのフィードストリーム内には孤立した酸素原子は通常検出されない。したがって、過酸化水素の形成は、水の形成よりも優勢である。
【0053】
FCC(110)面露出およびHCP(120)面露出とは対照的に、最上位層の原子の望ましくない表面配位、例えばFCC(100)面露出およびFCC(111)面露出は、水を超える過酸化水素の生成に対する特異性を示さない。図2Bは、FCC(110)面露出およびHCP(120)面露出の両方の触媒原子に吸着されまたはこれらと配位する場合の酸素原子および水素原子の可能な配置を示す。酸素および水素がそのように配置される場合、水だけが形成される。明らかに、図2Bは過酸化水素の生成の最悪のケースのシナリオを示す。FCC(110)面露出およびHCP(120)面露出の触媒原子に吸着されまたはこれらと配位する水素分子と酸素分子のランダムな分布を前提とすると、過酸化水素と水の両方が生成されうる。しかしながら、水のほうがはるかに安定なので、水の生成は、過酸化水素よりも熱力学的に優勢である。
【0054】
過酸化水素の代わりに水を生成する慣用の触媒の傾向に打ち勝つためには、過酸化水素形成の商業的に実行可能な濃度を得るために、他の戦略をとらなければならない。例えば、水素よりも酸素に大幅に富んだフィードストリームは、酸素原子および水素原子が過酸化水素を形成するように触媒表面上に配置される可能性を高めることができる。しかしながら、酸素と水素との相対濃度をこのように大幅に変化させることは、反応を減速し、収率を低下させる可能性がある。対照的に、その中で触媒原子の大半が配位数2を有する触媒を使用することは、触媒だけに基づいて、水よりも過酸化水素の生成に有利に働く。これは慣用の触媒に勝る大きな利点である。
【0055】
図1および2に示される結晶相露出は、配位数2を有する最上位層すなわち外層の触媒原子の非限定的な例であることを理解されたい。本発明は、最隣接原子配位数2を示す任意の配置(すなわち、その中で全ての他の近隣の原子が、最も近い隣接原子との間隔(最隣接原子間隔)よりも大きな間隔を空け、最上位層もしくは外原子層に位置せず、あるいはその両方である)を企図する。本発明の目的上、上記の説明で述べた最隣接原子間隔は、結晶の最上位原子層内の実際の最隣接原子間隔である。この間隔は、触媒成分のバルク結晶格子の最隣接原子間隔と同様であることもあるが、結晶性物質の露出した表面で起こる可能性のある結晶構造の変形または緩和のため、このバルク間隔とはある程度異なることもある。
【0056】
好ましい配位構造は、最隣接配位部位に位置する吸着された成分間の反応を促進し、一方、最隣接原子間隔よりも広い間隔のある場所に位置する非配位部位間で起こる反応を妨げまたは実質的に防止するものであると考えられる。触媒表面の分子間または原子間の反応に使用可能な最隣接部位の数を制限することによって、制御された配位構造は、本発明の触媒を使用して達成することができる非常に高い選択性に対して責任を負うと考えられる。例えば、配位数2を有する最上位面すなわち外面原子を含む含パラジウム触媒を使用して水素および酸素ガスフィードストリームから過酸化水素を生成する本発明の1つの応用では、最大100%の選択性を達成することができる。
【0057】
先に論じたとおり、本発明に従う制御された配位構造は、図1Aに示されるFCC(110)面のような直線的配列、または図1Aに同様に示されるHCP(120)面のようなジグザグ配列を含むことができる。また、本発明の制御された配位構造は、適当な配位構造を有することが見出されていてかつ本発明の触媒のために有用な構造である、いくつかの低指数結晶面群を含む。その例は以下のものを含む。
【0058】
(a)FCC(面心立方)格子の(110)面
(b)FCC格子の(221)、(331)および(332)結晶面
(c)(220)、(330)などを含むHCP(六方最密)格子の(110)結晶面
(d)(202)、(303)などを含むHCP格子の(101)結晶面
(e)HCP格子の(122)結晶面
(f)HCP格子の(120)結晶面
(g)BCC(体心立方)格子の(122)結晶面
(h)BCC格子の(112)および(123)結晶面
上記の結晶面表示の全てにおいて、それぞれの名前を挙げた結晶面は、その各々が先に挙げたものと等価である多くの代替ミラー指数表示を有することを当業者は理解されたい。名前は挙げなかったが等価の結晶面表示は全て、本発明の範囲に含まれることを理解されたい。例えば、FCCおよびBCC結晶格子では、3つの座標の方向が全て等価である。この例では、(110)結晶面が(101)結晶面および(011)結晶面と同一である。HCP格子では最初の2つの座標だけが等価である。例えば、(101)結晶面と(011)結晶面は同一であり、一方、(110)結晶面は異なっている。
【0059】
最上位層すなわち外層の触媒原子が2つの触媒原子だけと最隣接配位している限り、理論的には、用語「配位数2」は、触媒的に反応性の原子(触媒反応性原子)を任意の配置で含む可能性がある。図3に示されるように、最隣接原子配位数2を示す最上位層すなわち外層原子の代替配置は、秩序結晶格子に通常は関連しないより秩序のない列を含む可能性がある。触媒原子の最上位層すなわち外層が最隣接原子配位数2を有する限り、そのタイプの触媒粒子も、水よりも過酸化水素の生成に対してやはり有利に働くはずである。
【0060】
1つの実施形態によれば、有利には、担持型反応性触媒の最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の少なくとも約50%が配位数2を有する。好ましくは、最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の少なくとも約60%が配位数2を有し、より好ましくは最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の少なくとも約70%が配位数2を有し、より特に好ましくは最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の少なくとも約80%が配位数2を有し、最も好ましくは最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の少なくとも約90%が配位数2を有する。最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の少なくとも約95%が配位数2を有する場合、反応選択性はなおさらに増大すると予想される。最上位層すなわち外層の反応性触媒原子の100%が配位数2を有する場合、反応選択性は最大になるであろう。
【0061】
本発明の触媒粒子は任意のサイズで存在することができるが、本発明の触媒粒子は1〜100nmのサイズ範囲における小さなサイズの粒子であることが好ましい。また、必須ではないが、触媒粒子が全体に均一なサイズの粒子であることも好ましい。例えば粒子の集塊化または焼結による活性の低下、選択性の低下のような望ましくない効果につながる可能性がある粒子間相互作用の効果を低減させるために、触媒粒子が担体上に均一に分散されているとさらに好ましい。
【0062】
2つ以上の異なるタイプの触媒原子が使用される場合、本明細書に記載の概念によれば、担持型触媒は、触媒原子の均一分布を含むことが可能である。これは、同種の原子を引きつけて集合する触媒原子の自然の傾向のために、その中で異なる触媒原子が典型的に一緒にクラスター化する担持型触媒を製造する慣用の方法から、著しく逸脱している。例えばパラジウムと白金との混合物を含む慣用の触媒では、パラジウム原子の大部分が、パラジウムが支配的である結晶に一緒にクラスター化し、白金原子の大部分が、白金が支配的である結晶に一緒にクラスター化する。対照的に、制御剤または鋳型剤を使用して個々の原子を錯体化する能力は、後により十分に論じるように、2つ以上の異なるタイプの触媒原子の密接な、高度にランダム化された混合を可能にする。
【0063】
制御された配位構造を有する担持型反応性触媒は、過酸化水素の形成、有機分子の酸化における中間反応物としての過酸化水素の形成および使用、有機分子の直接酸化、水素化、還元、脱水素、ならびに潜在的に燃料電池の製造を含む、さまざまな反応において有用である。
【0064】
次に、本発明に従う触媒粒子を形成するために選択することができる触媒材料、制御剤、担体材料および他の成分を、詳細に論じる。
【0065】
C.中間前駆体組成物および中間前駆体組成物から製造される担持型反応性触媒に中間前駆体組成物が及ぼす影響
一般に、望ましい制御された配位構造を生成するように設計される中間前駆体組成物から、本発明に従う本発明の担持型触媒を製造することができる。中間前駆体組成物は、望ましい制御された配位構造を有する任意の成分(触媒粒子が最上位層すなわち外層に触媒原子の大半を含む担持型触媒の形成を助ける)を含んでもよい。このような成分の例は、触媒原子、制御剤または鋳型剤、触媒原子と制御剤とから形成された中間触媒錯体、溶媒またはキャリア、および担体材料を含むが、これらに限定されるわけではない。前駆体組成物は、1つまたは複数の異なるタイプの触媒原子と1つまたは複数の制御剤または鋳型剤とから形成される中間触媒錯体を典型的に含む。
【0066】
A.中間触媒錯体
中間触媒錯体は、1つまたは複数の異なるタイプの制御剤または鋳型剤と錯体化される1つまたは複数の異なるタイプの触媒原子を含む。そのように錯体化されるときには、中間触媒錯体を使用して担持型反応性触媒を製造し、および制御剤の一部分を除去して触媒原子の一部分を望ましい形で露出させるときに、反応性触媒原子の大半が望ましい制御された配位構造を有するように触媒原子が配置される。
【0067】
1.触媒原子
触媒活性を示すことができる元素のうち任意の元素または元素群を使用して、本発明に従う触媒錯体および触媒を形成することができる。これらは、主触媒活性を示す元素または元素群、ならびに促進剤および改質剤を含む。主触媒活性成分としては金属が好ましい。例示的な金属は、貴金属、卑遷移金属および希土類金属を含むことができる。また、触媒粒子は、非金属原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を、典型的には改質剤または促進剤として含んでもよい。
【0068】
触媒活性を示すことができる卑遷移金属の例は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、モリブデン、バナジウムなどを含んでもよいが、これらに限定されるわけではない。これらを、単独で、または卑遷移金属どうしとのさまざまな組み合わせにおいて、あるいは貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、または非金属のような他の元素との組み合わせにおいて使用することができる。
【0069】
触媒活性を示す、白金族金属とも呼ばれる貴金属の例は、白金、パラジウム、イリジウム、金、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウムなどを含む。これらを、単独で、または貴金属どうしとのさまざまな組み合わせにおいて、あるいは卑遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、または非金属のような他の元素との組み合わせにおいて使用してもよい。
【0070】
さまざまな理由から貴金属は本発明で使用するのに特に適している。貴金属は、多数の化学変換において有用である高度に活性な触媒である。分散させると、貴金属は、望ましい制御された配位表面構造をその表面に形成することができる、貴金属結晶格子の知られている低指数結晶面のうちの1つまたは複数の結晶面を有する小さなクリスタリットを形成することができる。貴金属は非常に高価なので、最も望ましい活性部位の大半が露出されることを保証することによって、貴金属成分を可能な限り最も効率的に使用することが特に望ましい。
【0071】
触媒活性を示す希土類金属の例は、ランタンおよびセリウムを含むが、これらに限定されるわけではない。これらを、単独で、または希土類金属どうしとのさまざまな組み合わせにおいて、あるいは卑遷移金属、貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、非金属のような他の元素との組み合わせにおいて使用してもよい。
【0072】
非金属の例は、リン、酸素、イオウ、ならびに塩素、臭素およびフッ素のようなハライドを含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、典型的に、上記に挙げた金属のような1つまたは複数の金属の官能基化剤として含まれる。
【0073】
好ましい触媒活性成分は具体的な応用によって異なる。例えば、本発明の触媒の1つの有利な使用法は、製品としてまたは他の化学製品の合成における化学中間体としての、水素および酸素からの過酸化水素の直接合成である。この応用では、好ましい触媒活性成分は、単独でまたは他の金属(例えば白金)と組み合わせて使用されるパラジウムである。
【0074】
本発明の別の有用な応用は触媒的水素化であり、その好ましい主活性成分は、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅または鉄であり、これらを単独で、あるいは、互いに組み合わせて、かつ/または他の成分と組み合わせて使用される。
【0075】
本発明の別の有用な応用は触媒的改質であり、その好ましい触媒活性成分は白金であり、白金は単独で、または他の成分と組み合わせて使用することができる。また、白金は、対象触媒が、高分子電解質膜型(PEM)燃料電池、直接メタノール型燃料電池(DMFC)のような燃料電池のカソードおよび/またはアノード触媒として使用されるときの好ましい主活性成分である。
【0076】
好適な溶媒またはキャリアに加えて中間前駆体組成物を形成するとき、触媒原子は、典型的に、溶媒またはキャリアにより容易に溶解または分散するよう、イオンの形態である。金属触媒の場合には、触媒原子が、金属ハロゲン化物、硝酸塩、または溶媒またはキャリアに容易に溶解する他の好適な塩、例えば金属リン酸塩、硫酸塩、タングステン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩またはグリコール酸塩の形態であってもよい。
【0077】
2.制御剤
触媒形成の高度に制御された特異性を達成するため、制御剤または鋳型剤は、最上位層すなわち外層の原子の大半が配位数2を有する触媒結晶または粒子の形成を促進するように選択される。1つまたは複数の特定の制御剤の使用によって、本発明は、それによって触媒粒子が形成されるプロセスを制御してこれらの粒子が主として望ましい結晶面を露出することを保証する手段を提供する。
【0078】
本発明の範囲に含まれる制御剤または鋳型剤は、分散触媒粒子の形成に介在する個々の分子を構成するさまざまなポリマー、オリゴマーまたは有機化合物を含む。制御剤分子は、主鎖に沿って配置され、触媒原子と制御剤の間に錯体を形成することができる複数の官能基を含む。中間触媒錯体から触媒粒子が形成されるとき、触媒粒子の形成は、制御剤または鋳型剤の構造、コンフォメーションまたは他の特性によって、制御された配位構造の形成に有利に働く制御されたやり方で進行する。
【0079】
一般に、有用な制御剤は、制御剤、触媒原子、適当な溶媒またはキャリア、および任意選択の促進剤または担体材料を含む中間前駆体組成物の範囲内の触媒錯体を形成することができるポリマー、オリゴマーおよび有機化合物を含む。制御剤は、好適な溶媒またはキャリアに溶解または分散した触媒原子と、イオン結合、共有結合、ファンデルワールス相互作用または水素結合を含むさまざまな機構を介して相互作用し、錯体化することができる。このために、制御剤は1つまたは複数の好適な官能基を含む。
【0080】
1つの実施形態では、この官能基が、少なくとも1つの電子豊富原子に結合した炭素原子を含み、この電子豊富原子は、この炭素原子より電気的陰性が強く、触媒原子と結合または引力を形成するように1つまたは複数の電子を供与することができる。好ましい制御剤は、触媒原子の錯体化に使用することができる負電荷あるいは1つまたは複数の孤立電子対を有する官能基を含む。このことは、制御剤が、好ましくは溶液中で正に帯電したイオンの形態である溶解した触媒原子との間に強力な結合相互作用を有することを可能にする。
【0081】
1つの実施形態では、制御剤の官能基が、制御剤分子の主鎖に沿って、単独で、または他のタイプの官能基と組み合わせて、カルボキシル基を含む。他の実施形態では、官能基が、ヒドロキシル、エステル、ケトン、アルデヒド、アミンおよびアミド基のうちの1つまたは複数の官能基、あるいはこれらの組合せを含む。
【0082】
本発明に従う制御剤は有利には有機ポリマー、オリゴマーまたは化合物だが、制御剤は無機化合物(例えばケイ素ベースの無機化合物)であってもよい。制御剤は天然または合成化合物であってもよい。触媒原子が金属で、制御剤が有機化合物の場合、そのように形成される触媒錯体は有機金属錯体である。
【0083】
好ましい制御剤はさまざまなオリゴマーおよびポリマーを含む。制御剤がオリゴマーまたはポリマーである場合、数平均分子量は約300から約15,000ダルトンの範囲、より好ましくは約600から約6000ダルトンの範囲であることが好ましい。しかしながら、制御剤が、触媒原子と相溶性のある溶媒、キャリアまたはビヒクル中に易溶であり、有機金属錯体を形成することができる場合には、さらに高い分子量のポリマー、すなわち分子量が15,000を超えるポリマーを制御剤として使用することができることが理解される。
【0084】
分子量は、所望の数の官能基を有する制御剤ポリマー、オリゴマーまたは分子が得られるように選択することができる。一般に官能基の数は4から200まで変動してもよく、好ましくは約8から約80官能基、より好ましくは約10から約20官能基まで変動してもよい。多くの場合、ポリマーまたはオリゴマーの官能基の数は、反復単位の数に少なくともほぼ一致する。他の場所で述べるとおり、より少ない数の反復単位、例えば20未満の反復単位を有する制御ポリマーまたはオリゴマーを選択することによって、枝分れを減らしまたは最小化することができる可能性がある。
【0085】
本発明の範囲に含まれる適当なポリマーおよびオリゴマーは、ポリアクリレート、ポリ安息香酸ビニル、ポリビニルサルフェート、スルホン化スチレンを含むポリビニルスルホネート、ポリビスフェノールカーボネート、ポリベンゾイミジゾール、ポリピリジン、スルホン化ポリエチレンテレフタラートが含まれが、これらに限定されるわけではない。他の適当なポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを含む。
【0086】
中間触媒錯体では、触媒原子、より正確には触媒原子のイオンが、ポリマー、オリゴマーまたは分子主鎖上に位置する官能基に対応するフォーメーションで存在する。例えば触媒原子は、図4に示されるように、片側で、第1のポリマーまたはオリゴマー鎖に対して、より具体的には制御剤分子の全長に沿った官能基によって錯体化し、第2の側で、第2のポリマー鎖によって錯体化する。このように触媒原子は、担体に付着または結合される前の溶液またはコロイド懸濁液中にある間に、第1および第2の制御剤分子の主鎖に沿った官能基に対応する制御された配置に配置されると考えることができる。
【0087】
触媒原子の数に比べて過剰の官能基を提供するように過剰の制御剤を供給することは、有利である可能性がある。過剰の官能基を含めることは、全てまたは実質的に全ての触媒原子が制御剤によって錯体化されることを保証するのに役立ち、このことは、貴金属の場合のように触媒材料が高価である場合に特に有益である。また、過剰の制御剤を供給することは、触媒錯体を担体に結合する官能基の可用性を保証するのにも役立つ。過剰の官能基を使用することはさらに、触媒粒子がより均一に分散した担持型触媒を生成するのに役立つと考えられる。過剰な制御剤分子は、触媒錯体を形成する制御剤分子間に介在しおよびその間隔を維持して、個々の触媒錯体クラスターを凝集または集塊化させるよりもむしろ担体表面全体にわたってより良好に分布させると考えられる。
【0088】
現在では、表面に配位数2を有する触媒粒子を形成する傾向は、枝分れ分子に対する直鎖状制御剤分子のパーセンテージに関係することが分かっている。直鎖状分子の濃度を高めることは、触媒原子の最上位層すなわち外層に配位数2を有する触媒結晶または粒子の形成の尤度を高める。このことは、ひいては、所望の触媒反応の特異性を高める。
【0089】
用語「直鎖状」は、枝分れ点を持たない主鎖を含むポリマー、オリゴマーまたは有機化合物を表す。したがって、これは、特定の制御剤分子が直鎖状であるか否かを決定する主鎖に関連する。制御剤分子の主鎖が枝分れ点を持たない線状である場合、その分子は「直鎖状」分子である。主鎖が枝分れ点を含み、そのため主鎖が線状でなく枝分かれしている場合、その分子は「枝分れ」分子である。
【0090】
用語「主鎖」は、それに触媒原子の錯体化に役立つ官能基が付着する制御剤分子の部分を指す。したがって、それに錯体化官能基が付着していないはぐれた基または鎖を含む主鎖は、依然として直鎖状であるとみなしてもよい。したがって、主鎖が枝分れ点を含むかどうかを単に測定することよりはむしろ、主鎖に沿った官能基の配置を測定することによって、特定のポリマー、オリゴマーまたは有機化合物が直鎖状であるのかまたは枝分れ状であるのかを特定することの方がより正確なことがある。
【0091】
以上のことを考慮して、本発明に従う典型的な制御剤は、その中で制御剤分子の少なくとも約50%が直鎖状である制御剤である。好ましくは制御剤分子の少なくとも約60%が直鎖状であり、より好ましくは制御剤分子の少なくとも約75%が直鎖状であり、さらにより好ましくは制御剤分子の少なくとも約90%が直鎖状であり、および最も好ましくは制御剤分子の少なくとも約95%が直鎖状である。その中で触媒原子の最上位層すなわち外層が配位数2を有する触媒粒子を生成する制御剤の傾向は、制御剤分子の約100%が直鎖状である場合に最大化される。
【0092】
上記のことの必然的結果として、制御剤は一般に約50%未満の枝分れ分子、好ましくは約40%未満の枝分れ分子、より好ましくは約25%未満の枝分れ分子、さらにより好ましくは約10%未満の枝分れ分子、および最も好ましくは約5%未満の枝分れ分子を含む。その中で触媒原子の最上位層すなわち外層が配位数2を有する触媒粒子を生成する制御剤の傾向は、分子の約0%が枝分れ状である場合に最大化される。
【0093】
いくつかのケースでは、ポリマー、オリゴマーまたは有機分子が枝分れ状である傾向は、分子量の低下とともに、より具体的には反復単位数の減少とともに低下する。したがって、ポリマー、オリゴマーまたは有機分子の分子量、より正確にはポリマー、オリゴマーまたは有機分子の反復単位数を低減させることは、直鎖状であるそれらの傾向を高める。分子量の低下(すなわち、反復単位数の減少)につれて直鎖状である傾向が高まる制御ポリマーまたはオリゴマーの例はポリアクリル酸である。ポリアクリル酸の分子量を低下させることは、反復単位数を減少させ、このことは、ひいては、特定のポリアクリル酸ポリマーまたはオリゴマー分子が枝分れ状となる尤度を統計学的に低減させる。
【0094】
例えば、分子量1200を有するポリアクリル酸(反復単位を約16単位有し、約3〜5nmの表面直径を有する触媒粒子を生成する)は、枝分れを最小限しか持たないと考えられる。現時点のデータに基づくと、分子量1200を有するポリアクリル酸を含む分子の少なくとも約80〜90%は直鎖状であると考えられる。これは、非特許文献2に見出されるポリマーの枝分れに関連する教示と矛盾しない。この文献は、ポリエチレンの高転化に関して、「側鎖は、平均して15主鎖反複単位に1回の頻度で生じる可能性がある」と述べている。したがって、少なくともポリエチレンおよび同様のポリマーに関しては、15単位よりも少ない反復単位を有するオリゴマーは、枝分れ点を持たない完全な直鎖状であることが予想される。したがって、16単位のポリアクリル酸オリゴマーは、たとえあったとしても、特に、枝分れの発生を低減させるために反応条件がより慎重に制御されている場合には、枝分れの発生率がほんの僅かであると予想される。
【0095】
直鎖状制御剤分子の濃度を増大させることが、その中で最上位層すなわち外層の触媒原子が配位数2を有する触媒粒子を形成することの尤度を増大させることをいったん理解すると、当業者は、好適な濃度の直鎖状制御剤分子に対する枝分れ制御剤分子を有する好適な制御剤を選択することができる。したがって、より大きな分子量のポリマーでさえ、直鎖を有するように慎重に設計することができ、したがって本発明の組成物および方法において有用性を有する可能性がある。サイズ、形状、フォーメーション、分散のような触媒粒子の構造的な態様の大部分は、一直線の分子に対する枝分れ分子の特定のサイズおよび/またはパーセンテージを有する1つまたは複数の制御剤または鋳型剤の選択に基づいて設計することができる。
【0096】
制御剤の該特性に加えて、本発明の望ましい制御された配位構造の選択的な形成を制御することができる第2の因子は、中間前駆体組成物中の制御剤と触媒原子のモル比である。約1:0.1から約1:10までの範囲の制御剤分子と触媒原子のモル比を含むことは本発明の範囲内である。好ましくは、制御剤分子と触媒原子のモル比が約1:0.2から約1:5の範囲である。
【0097】
場合によっては、より有用な尺度は、制御剤官能基と触媒原子のモル比である。例えば、Pd+2などの2価の触媒金属イオンの場合、理論的な化学量論比を提供するためには、カルボン酸イオンのような1価の官能基の2モル当量が必要となろう。(1)全てまたは実質的に全ての触媒原子が錯体化されることを保証し、(2)触媒錯体を担体に結合し、(3)触媒粒子が一緒に凝集または集塊化しないように触媒粒子を分離された状態に保つのに資するためには、過剰の制御剤官能基を提供することが望ましいことがある。一般に、約0.5:1から約40:1、より好ましくは約1:1から約35:1、および最も好ましくは約3:1から約30:1の制御剤官能基と触媒原子のモル比を含むことが好ましい。
【0098】
上記の比は因子となると考えられる。なぜならば、それぞれの触媒原子を取り囲む制御剤分子の数は、触媒粒子が形成される速度および方向を決定するためである。制御剤と触媒原子の最も好ましい比は、使用される制御剤のタイプ、使用される触媒原子のタイプ、および制御剤の分子量に依存することに留意されたい。より大きい分子量を有する制御剤に関しては、一般に、より小さい分子量を有する制御剤の場合に比べて、制御剤と触媒成分の比がより小さいことが好ましい。このことは、制御剤がしばしば、溶解された触媒成分との相互作用および錯体形成の多数の点を有するという事実に由来すると考えられる。したがって、制御剤分子の主鎖に沿ってより多くの官能基を有するより高分子量の制御剤は、より多くの触媒原子と錯体化することができ、および制御剤と触媒成分のより小さいモル比が好ましい。より低分子量の制御剤に関してはこの逆のことが当てはまり、そこでは制御剤と触媒成分のより大きいモル比が好ましい。
【0099】
中間前駆体組成物に担体材料を加えるとき、制御剤は、錯体化された触媒原子を担体材料上へ均一に分散させる働きをする。触媒原子は分散されているため、触媒原子の合体によって生じる粒子も均一に分散する。熱力学的に最も安定なフォーメーションで粒子が形成するからである。触媒粒子を均一に分散させることがより多くの反応部位が露出されることを可能にするので、これによってより活性な触媒が得られる。
【0100】
最後に、担持型触媒が形成される方法にもよるが、制御剤または鋳型剤の他の態様は、制御剤または鋳型剤が、触媒粒子を担体に固定する働きをすることができることである。すなわち、触媒粒子の形成中および形成後に、制御剤は固定剤として働いて、粒子を基体材料に固定することができる。好ましくは、基体はその表面に、制御剤の1つまたは複数の官能基に例えば縮合反応によって化学結合することができる複数のヒドロキシル基または他の官能基を有する。また、制御剤の1つまたは複数の追加の官能基は、触媒粒子内の1つまたは複数の原子に結合され、それによって触媒粒子を基体に固定する。制御剤によって触媒粒子を基体表面に化学的に結合させることは、集塊化する触媒粒子の傾向を低減させることによって、長い間触媒を活性に保つのに役立つ。
【0101】
B.溶媒およびキャリア
溶媒またはキャリアは、触媒原子(典型的には、イオン性塩の形態をとる)および/または制御剤のビヒクルとして使用することができる。本発明の前駆体組成物を製造するために使用される溶媒は、有機溶媒、水またはそれらの組合せであってもよい。好ましい溶媒は金属塩を溶解するのに十分な極性を有する液体であり、これは、触媒成分を前駆体溶液に導入する好ましい手段である。これらの好ましい溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、これらの混合物などを含む。
【0102】
前駆体溶液の溶媒はニート(neat)な溶媒であってもよいが、酸は前駆体化合物の溶解に役立つので、酸性溶液を使用することが好ましい。溶液を、有機酸および無機酸を含む任意の適当な酸で酸性化してもよい。好ましい酸は、硫酸、リン酸、塩酸など、またはこれらの組み合わせのような鉱酸である。前駆体溶液中では広範囲の濃度の酸を使用することができるが、所望の溶解度の向上を達成するためには一般に、比較的に薄い溶液を使用すれば足りる。さらに、濃酸溶液は付加的な危険および出費を示す可能性がある。したがって希酸溶液が現在は好ましい。
【0103】
C.担体および担体材料
本発明の触媒粒子を、固体担体材料なしで分散させてもよい。例えば、それらを、溶液、懸濁液、スラリー、エマルションまたは他の液体媒質中に分散させてもよい。また、触媒粒子を、例えば微粉として分離させてもよい。しかしながら、担体上に触媒粒子を成長させることが、望ましい制御された配位構造を有する触媒粒子を得る能力を大幅に向上させると思われる。担体を用いないと、触媒粒子を形成し、そして所望の結晶面を露出させて所望の面露出をもたらすことができない可能性がある。
【0104】
したがって、本発明の好ましい形態は、固体担体材料上に触媒粒子を付着させ、この固体担体材料によって触媒粒子を担持することである。用語「中間前駆体組成物」は、最終的な担持型反応性触媒の形成の前に存在するいかなる成分を含んでもよいため、中間前駆体組成物は担体を同様に含んでもよい。触媒粒子を触媒的に活性にするように、制御剤の一部分を除去して触媒粒子の一部分を露出させると、担体は、その結果、最終的な担持型活性触媒の一部となる。
【0105】
固体担体材料は、好ましくは、それ自体が粒子であってもよく、または固体担体は、フィルム、繊維、あるいはロッドのような本質的に連続的な固体表面であってもよい。固体担体材料は有機材料または無機材料あってもよい。固体担体材料は、化学反応環境において化学的に不活性であってもよく、または固体担体自体は、本発明の触媒粒子の機能に相補的な触媒機能を果たしてもよい。また、担体材料は、例えば、分散触媒粒子の構造的、電子的または化学的特性を変更することによって、あるいは全体的な触媒プロセスに直接に参加する追加の触媒的に活性な部位に寄与することによって、触媒反応プロセスにおいて化学的役割を果たすことができる。
【0106】
より少量の分散触媒粒子の担体として役立つようにより大量の固体材料を使用することは、触媒反応においては普通の戦略であり、多くの知られている利点を提供する。これらの利点には、触媒活性成分のより効率的かつ経済的な使用、小さな触媒粒子のより高い安定性、ならびに粒子間効果を防止するための触媒粒子の分離および離隔を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0107】
有用な触媒担体として当業者に知られている任意の固体担体材料を、本発明の制御された配位構造の分散触媒粒子の担体として使用してもよい。これらの担体は、さまざまな物理的な形状であってもよい。それらは、多孔質または非多孔質のどちらであってもよい。それらは、粉末、顆粒、錠剤、押出物、あるいは他の3次元構造体のような3次元構造体であってもよい。他の3次元構造体は、構造化充填物のようないわゆる「構造化」材料を含み、これらは、リング、サドル、または他の形のような制御された形の多数の個別片の形状であってもよく、またはより大きな構造体の形状であってもよく、それらの例は、回旋状表面の規則的な幾何配置の使用を含む蒸留器および他の相接触器のために一般に使用される構造化充填物を含む。また、担体は、主として球形の粒子(すなわちビーズ)の形状であってもよい。また、担体は、フィルム、膜、コーティング、あるいは他の主として2次元の構造体のような2次元構造体の形状であってもよい。
【0108】
さまざまな材料成分が単独または組合せて担体を構成することができる。いくつかの応用に対して好ましい担体材料の1つの重要なクラスは多孔質無機材料である。多孔質無機材料は、アルミナ、シリカ、チタニア、キースラガー、ケイ藻土、ベントナイト、クレー、ジルコニア、マグネシア、およびさまざまな他の金属の酸化物を、単独であるいは組合せて含むが、これらに限定されるわけではない。また、これらは、集合的にゼオライトとして知られる、天然または合成の、秩序多孔質構造を有する多孔質固体のクラスを含む。
【0109】
いくつかの応用に対して好ましい担体の別の有用なクラスは、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、フッ素添加炭素のような炭素ベースの材料を含む。
【0110】
担体材料の別の有用なクラスは、ポリマーのような有機固体を含む。有機固体は、燃料電池の電極に使用されるもののような高分子膜を含む。また、それらは、イオン交換樹脂および高分子吸着剤として一般的に使用されるもののようなポリマービーズまたは樹脂ビーズを含むことができる。
【0111】
担体材料の別の有用なクラスは、金属および金属合金を含む。
【0112】
最終的な担持型反応性触媒の一部として本発明の触媒粒子を担体に付着させる場合には、担持型反応性触媒の全重量の0.01重量%から75重量%までに及ぶ、好ましくは担持型反応性触媒の全重量の0.1重量%から25重量%までの範囲の、広範囲の装填量で触媒粒子を担体材料に付着させてもよい。しかしながら、分散粒子の主触媒成分が1つまたは複数の貴金属を含むときには、高価な活性金属を節約し、および粒子間相互作用、集塊化、焼結および他の望ましくない現象を防止するように、貴金属の装填量が比較的に低いことが好ましい。これらのケースでは、好ましい触媒装填は、担持型反応性触媒の約0.01重量%から約10重量%、より好ましくは担持型反応性触媒の約0.1重量%から約5重量%の範囲内である。貴金属を使用するときでも、触媒粒子に他の成分を同様に加えてもよく、これらの他の成分は、触媒粒子の全重量が担持型反応性触媒の全重量の75%ほどを構成することができるように、より高い装填量で加えてもよいことに留意されたい。
【0113】
担体材料として多孔質固体を使用する場合には、担体の表面積が少なくとも20m/gであることが好ましく、50m/g超であるとより好ましい。
【0114】
IV.制御された配位構造を有する中間前駆体組成物および担持型反応性触媒の製造方法
制御された配位構造体を有する中間前駆体組成物および担持型反応性触媒の製造方法を、以下のように大まかに要約することができる。第1に、1つまたは複数のタイプの触媒原子および1つまたは複数のタイプの制御剤を選択する。第2に、触媒原子と制御剤とを反応させ、または一緒に結合させて、触媒錯体を形成する。これは一般に、最初に、触媒原子および制御剤を好適な溶媒またはキャリアにイオン性塩の形態で溶解させ、次いで、溶液またはコロイド懸濁液を形成するように、塩を触媒錯体として再結合させることによって実施される。第3に、触媒錯体を担体材料に付着させて、中間担持型触媒錯体を形成する。第4に、活性触媒粒子を形成するように、制御剤の一部を除去して、触媒原子の少なくとも最上位層すなわち外層を露出させる。この間、制御剤の一部は、担体と触媒粒子の間の界面にとどまって、触媒粒子を担体に固定するのを助ける。途中のある時点で、制御剤は担体と化学結合を形成してもよい。
【0115】
触媒金属(すなわちパラジウム)と制御剤との間の例示的な触媒錯体を図4に概略的に示す。制御剤の一部を除去することは、図5に概略的に示されるように、制御剤の残存する部分によって担体材料に化学的に固定される可能性のある触媒粒子をもたらす。図示のとおり、担持型触媒10は、当初その表面にヒドロキシル基を含む担体12と、縮合反応によって担体12のヒドロキシル基に化学的に結合される固定剤14と、固定剤に何らかの方法(図示せず)で結合または付着される触媒粒子16とを含む。水素化または後に開示する他のプロセスによって制御剤が除去されるとき、触媒原子は崩壊または一緒に合体して構造化結晶または粒子を形成することが理論上想定される。
【0116】
以上のことを考慮すれば、最終的な担持型反応性触媒が形成される前のあらゆるステップは、1つの形状または別の形状の中間前駆体組成物の形成または使用を伴うことが明らかである。本発明の1つの態様では、「中間前駆体組成物」を、周囲の溶媒またはキャリアを除いた、触媒原子と制御剤とを含む触媒錯体であると考えることができる。実際、溶液中、またはコロイドまたは懸濁液として触媒錯体を生成し、次いで、乾燥した触媒錯体を生成するように溶媒またはキャリアを除去することは本発明の範囲に含まれ、この乾燥した触媒錯体を後に好適な溶媒またはキャリアに加えて、触媒錯体を含有する溶液またはコロイド懸濁液を再構成することができる。したがって、本発明の別の態様では、本発明に従う「中間前駆体組成物」は、その中に触媒錯体を分散させることができる1つまたは複数の異なる溶媒またはキャリアを含んでもよい。制御剤の一部を除去し、触媒原子の一部を露出させて、望ましい制御された配位構造を露出させる前に、触媒錯体を担体に付着させまたは結合さえさせてもよい。したがって、本発明に従う「中間前駆体組成物」は、触媒錯体と担体とを含んでもよく、溶媒またはキャリアを含んでもまたは含まなくてもよい。したがって、秩序配列に制御剤と錯体化した触媒原子を含む触媒錯体を含む任意の組成物(図4に概略的に示されている)は、「中間前駆体組成物」を含むと考えることができる。
【0117】
本発明に従う触媒を製造するための例示的な方法は、溶液中の1つまたは複数のタイプの触媒原子を(例えばイオン性塩の形態で)準備すること、溶液中の制御剤を(例えばカルボン酸塩の形態で)準備すること、および触媒原子を制御剤と反応させて、触媒成分と制御剤との錯体を含む前駆体組成物を形成することを含む。好適な溶媒またはキャリア中の制御剤による触媒成分の良好な分散はコロイド分散とすることができる。
【0118】
触媒原子は、触媒錯体を形成するために使用される溶媒またはキャリアに可溶または分散可能となるような任意の形状で提供することができる。触媒原子が1つまたは複数の金属を含む場合、溶媒またはキャリアに易溶であるこれらの金属の塩を形成することができる。貴金属の塩化物および硝酸塩は他の塩よりも易溶であるので、触媒原子が貴金属を含む場合には、貴金属の塩化物および硝酸塩を使用すると有利である。塩化物および硝酸塩は典型的に他のタイプの塩よりも溶けやすいなので、卑遷移金属、希土類金属のような他の金属触媒原子の塩化物および硝酸塩を同様に使用してもよい。
【0119】
これらの触媒原子を、単独でまたは組み合わせて溶媒またはキャリアに加えて、さまざまなタイプの触媒原子の混合物を含む最終的な触媒粒子を提供することができる。例えば、2元金属パラジウム/白金触媒は、塩化パラジウムのようなパラジウム塩およびクロロ白金酸のような白金塩がその中に溶解する前駆体溶液を最初に形成することによって形成することができる。一般に、最終的な触媒の組成は、前駆体溶液に加えられる触媒原子のタイプによって決まる。したがって、溶液に加えられる前駆体塩の量の制御は、最終的な触媒粒子中の異なるタイプの触媒原子の相対濃度を制御する便利な方法を提供する。
【0120】
制御剤は、触媒錯体を形成するために、触媒原子との会合を容易にするような方法で溶媒またはキャリアに加えられる。いくつかの制御剤はそれ自体が溶媒またはキャリアに可溶である可能性がある。カルボン酸基を含む制御剤の場合、酸の金属塩(例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩)を形成すると有利である。例えば、ポリアクリル酸を、水性溶媒系に易溶でもありかつ触媒金属塩と反応することもできるポリアクリル酸ナトリウム塩として提供して、溶媒またはキャリア中で可溶であるかまたはコロイド懸濁液を形成することができる触媒金属−ポリアクリレート錯体を形成することができる。
【0121】
本発明の1つの態様は、非常に小さな触媒粒子(例えば、約100nm未満、好ましくは10nm未満、より好ましくは6nm未満、および最も好ましくは4nm未満)を制御可能に形成することができることである。本発明の発明者は、過剰量の制御剤の使用は、結果として生じる触媒粒子のサイズを決定する因子となると考えている。
【0122】
本発明の触媒粒子を固体担体材料上に形成する場合には、触媒原子と制御剤との間の触媒錯体を含む中間前駆体組成物を、固体担体と物理的に接触させる。触媒錯体を固体担体と接触させることは、典型的に、担体表面に触媒錯体を付着または含浸させるために、中間前駆体組成物中の好適な溶媒またはキャリアによって達成される。
【0123】
固体担体の物理的な形状に応じて、触媒錯体を担体に接触または付着させるプロセスを、さまざまな方法によって達成してもよい。例えば、溶媒またはキャリアと触媒錯体とを含む溶液または懸濁液に担体を沈めまたは浸してもよい。あるいはまた、溶液もしくは懸濁液を担体に吹き付け、注ぎ、塗り、または別の方法で付着させてもよい。その後、任意選択で、制御剤を担体に化学的に結合または付着させる反応ステップに関連して、溶媒またはキャリアを除去する。これによって、制御剤に由来するそれらの特別な配向と担体上の制御剤の配置との両方に関して活性触媒原子が望ましいふうに配置される担持型触媒錯体が得られる。
【0124】
触媒原子の少なくとも一部分を露出させ、活性な担持型触媒を生成するために、例えば還元(例えば水素化)または酸化によって、制御剤の一部を除去する。水素は好ましい還元剤である。水素を還元剤として使用することの代わりに、または水素を還元剤として使用することに加えて、水素化アルミニウムリチウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキノン、メタノール、アルデヒドなどを含むさまざまな他の還元剤を使用してもよい。この還元プロセスを、20℃と500℃との間の温度、好ましくは100℃と400℃との間で実施してもよい。触媒原子が貴金属を含まないときは、酸化はより適当であることを指摘しておく。貴金属触媒は、制御剤全体の酸化を触媒し、固定のための制御剤を残さない可能性があるためである。例えば、触媒原子が遷移金属を含みおよび担体が不燃性である場合(例えば、カーボンブラック、黒鉛、または高分子膜よりはむしろシリカまたはアルミナ)には、(例えば最高温度150℃の)酸化はより適当である。
【0125】
本発明の範囲を限定するものと解釈してはならないが、還元ステップの有用性について以下の説明を提示する。触媒粒子の形成中、触媒粒子の活性表面の多くは制御剤分子によって被覆されていると考えられる。還元ステップはこの表面構造を変更して、触媒粒子の望ましい制御された配位構造を露わにする役目を果たす。このステップは、制御剤分子を除去し、あるいは触媒表面上で制御剤分子を再配置または再配向し、あるいはこれらの組合せを実施する可能性がある。
【0126】
制御剤を除去して触媒原子を露出させるプロセスは、触媒粒子を担体に確実に固定するように十分な量の制御剤が残存することを保証するために慎重に制御される。したがって、少なくとも担体と担体に面する触媒粒子の下面との間に間置される制御剤の部分は手付かずのまま有利に残される。(水素化/還元、還流/沸騰または他のプロセスによる)制御剤の除去の間に、触媒粒子の外面の制御剤は、担体と触媒粒子との間に結合された制御剤よりも容易に除去されることが理論上想定される。したがって、担体と触媒粒子との間に残存する制御剤は触媒粒子を担体に固定する働きをする。この結果、表面移動、集塊化および焼結について強化された安定性を有する触媒粒子が得られる。一方、触媒粒子を担体に固定するための制御剤がほとんどまたは全く残存しない程度にまで制御剤を除去することは、担持型触媒の長期安定性を低下させることが分かった。
【0127】
結果として生じる担持型反応性触媒を、任意選択で熱処理して、触媒をさらに活性化させることができる。いくつかのケースでは、担持型触媒を最初に使用する前に、担持型反応性触媒を熱処理プロセスにかけると、触媒が当初、より活性になることが分かった。担持型触媒を熱処理するステップを、「か焼」と呼ぶことができる。なぜならば、それは担持型触媒の特定の成分を揮発させる作用を有するためである。しかしながら、この熱処理は、固定剤を炭化または破壊するほどの高温では実施されない。熱処理プロセスは、不活性、酸化または還元雰囲気中で実施してもよいが、不活性雰囲気中で実施することが好ましい。担持型触媒を熱処理プロセスにかける場合には、このプロセスを約50℃から約300℃の範囲の温度で、より好ましくは約100℃から約250℃の範囲で、および最も好ましくは約125℃から約200℃の範囲で実施することが好ましい。熱処理プロセスの持続時間は、好ましくは約30分から約12時間の範囲であり、より好ましくは約1時間から約5時間の範囲である。
【0128】
先に論じたとおり、反応性触媒原子の最上位層または外層の原子に、配位数が2に制御された触媒を提供することは、さまざまな化学プロセスに役立つ。これらの化学プロセスの1つは、過酸化水素を形成するための水素と酸素との直接反応を伴う。よって本発明のこの態様を、以下の実施例の助けを借りてさらに説明する。これらの実施例を本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
炭素担体上のPd/Ptの制御された配位触媒の調製
この実施例は、配位数が2に制御された貴金属原子の最上位層すなわち外層を有する炭素担体上の貴金属触媒の調製を説明する。活性貴金属成分はパラジウムと白金の混合物を含む。触媒担体はカーボンブラックである。
【0130】
塩酸0.15%を含む酸性水溶液1000mlに塩化パラジウム1.333gを溶解することによって第1の溶液を調製した。45%ポリアクリル酸ナトリウム溶液15gを水100mlに溶解することによって第2の溶液を調製した。ポリアクリル酸ナトリウムの分子量は1200であった。このポリアクリル酸ナトリウムのバッチは、直鎖状分子を約80〜90%含むと考えられた。次いで、塩化白金0.2614gを水1000mlに溶解することによって第3の溶液を調製した。その後、第1の溶液300ml、第2の溶液40mlおよび第3の溶液48mlを一緒に混合した。次いで組合せ溶液を、全容積が4000mlになるまで水で希釈した。
【0131】
次いで希釈された組合せ溶液を、連続窒素流で1時間パージし、次いで連続水素流によって20分間還元した。この組合せ溶液混合物を「触媒前駆体溶液」と称する。
【0132】
次いで触媒前駆体溶液を、表面積200m/gを有するカーボンブラック24gと混合した。前駆体溶液/カーボンブラック混合物を17時間混合して、触媒前駆体溶液による担体の完全な含浸を保証した。次いで、含浸カーボンブラックを一晩乾燥させて、カーボンブラック担体に付着されたパラジウム、白金およびポリアクリレートからなる触媒錯体を含む中間前駆体組成物を得た。
【0133】
乾燥後、この中間前駆体組成物を300℃の連続水素流下で17時間還元した。このプロセスを完了した後、本発明に従う反応性担持型触媒の一例である活性な制御された配位の触媒が得られた。この反応性担持型触媒の貴金属装填量は0.7重量%であった。
【0134】
図6に示されるように、高解像度透過型電子顕微鏡の使用によって、望ましい制御された配位構造の存在を立証した。この顕微鏡写真では、炭素担体材料がより明色のマトリックスとして見え、貴金属クリスタリットがより暗色の斑点として見える。低倍率パネルは、小さな(<5nm)貴金属クリスタリットの均一な分散を示す。担体と貴金属粒子との間のコントラストの欠如が画像の解釈をいくぶん妨げているが、図6の左上のパネルに示された単一の貴金属粒子の拡大像では、制御された配位構造が明らかである。この粒子の表面に見える一連の線は原子寸法のものであり、表面の原子構造の直接像を表している。この構造は、最隣接の最上位層すなわち外層の原子2つだけと配位する表面原子の直接の証拠である。全ての他の最上位層すなわち外層の原子は、より広い間隔で存在する。
【0135】
IR分光法を含む担持型触媒の試験は、制御剤のいくらかは還元ステップ後でさえ残存するようであることを示した。具体的には、IR分光法は、担体上にもともと存在するヒドロキシル基のかなりの部分がもはや存在しないことを示し、これらのヒドロキシル基が制御剤と反応したことを示唆した。また、IR分光法は、C−H基の存在を示し、水素化後も制御剤の一部が残存することを示唆した。制御剤をなんら含まない担持型触媒に比べて、触媒粒子は移動性がはるかに劣るという事実は、残存する制御剤が触媒粒子を担体に固定する働きをすることを示唆した。
【0136】
(実施例2)
TS−1担体上のPd/Ptの制御された配位触媒の調製
この実施例は、配位数が2に制御された貴金属原子の最上位層すなわち外層を有するゼオライト担体上の貴金属触媒の調製について説明する。活性貴金属成分はパラジウムと白金との混合物を含む。触媒担体はチタンシリカライト−1(TS−1)であった。
【0137】
塩酸0.15%を含む酸性水溶液1000mlに塩化パラジウム1.3339gを溶解することによって第1の溶液を調製した。45%ポリアクリル酸ナトリウム溶液15gを水100mlに溶解することによって第2の溶液を調製した。このポリアクリル酸ナトリウムの分子量は1200であった。次いで、塩化白金0.2614gを水1000mlに溶解することによって第3の溶液を調製した。その後、第1の溶液75ml、第2の溶液10mlおよび第3の溶液12mlを一緒に混合した。次いで、この混合溶液を、全容積が500mlになるまで水で希釈した。
【0138】
次いで希釈混合溶液を、連続窒素流で1時間パージし、次いで連続水素流によって20分間還元して、触媒前駆体溶液を形成した。
【0139】
次いで、触媒前駆体溶液を、表面積370m/gを有するチタンシリカライト−1(TS−1)6gと混合した。前駆体溶液/TS−1混合物を17時間混合して、前駆体溶液による担体の完全な含浸を保証した。次いで、含浸TS−1を一晩乾燥させた。乾燥後、この含浸TS−1を300℃の連続水素流下で17時間還元した。還元後、貴金属装填量0.8重量%の活性な制御された配位の触媒が得られた。
【0140】
ここでも、望ましい制御された配位の表面構造の存在を、高解像度透過型電子顕微鏡の使用によって確認した。図7に示されるTEM画像では、より明るい担体の背景に対して、貴金属粒子がより暗いパッチとして容易に見える。実施例1と比べるとやや良好な画像コントラストを達成し、そのため貴金属粒子中の制御された配位構造をより容易に見ることができる。粒子表面は原子スケールの線を示し、個々の表面原子が、最上位層すなわち外層の2つの近接する最隣接原子と配位結合しているのみであることを示している。
【0141】
V.制御された配位構造を有する担持型反応性触媒の使用方法
先に開示された担持型反応性触媒は、原料としてまたは有機分子の酸化の中間体としての過酸化水素の形成、有機分子の直接酸化、水素化、還元、脱水素および潜在的に燃料電池を製造することを含む、さまざまな反応において有用であり、その反応を以下に要約する。これらの反応を、溶媒、pHおよび他の反応条件を最適化することによってさらに最適化することができる。
【0142】
A.過酸化水素の生成
本発明の触媒を使用して製造される過酸化水素を、選択性95%から100%の生成物として回収することができる。あるいはまた、生成される過酸化水素を、他の化学製品の生成のための中間体として使用することができる。過酸化水素中間体を使用して実施することができる有用な化学反応の例は、プロピレンのようなオレフィンのプロピレンオキシドを含むエポキシドへの転化;ベンゼンのような芳香族化合物のフェノールを含むヒドロキシル化芳香族化合物への転化;および酢酸のような酸の過酢酸を含む過酸への転化である。
【0143】
過酸化水素中間体を、ex situまたはin situで使用してもよい。ex situは、過酸化水素中間体が過酸化水素合成反応器から中間生成物として取り出され、次いで下流の処理ステップに渡されて、そこで所望の化学製品を形成する際の反応剤として利用される場合を意味する。in situは、本発明の触媒によって形成された過酸化水素中間体が、形成後すぐに同じ化学反応器内で、第2の化学反応で転化されて、所望の生成物を形成することを意味する。第2ステップの反応のために、第2の物理的に別個の触媒を使用することによって、このin situ転化を達成してもよい。あるいは、第2ステップの触媒を、本発明の分散される制御された配位触媒粒子の付着のための基体として使用することにより、この第2ステップの触媒を本発明の触媒と物理的に一体化して、2元機能触媒としてもよい。さらに別の代替案では、第2ステップの反応は非触媒性であってもよい。
【0144】
(実施例3)
制御された配位触媒を使用する過酸化水素のバッチ合成
実施例1に従って調製された担持型触媒0.2gを、公称液体容積200mlの半バッチ撹拌槽型反応器に入れた。また、HSO1重量%およびNaBr5ppmwを含む水からなる溶液200mlを反応器に加えた。水素3体積%、酸素20体積%および窒素77体積%からなるガスフィードを反応器に1000sccmの速度で連続的に供給した。未反応のガスを反応器から連続的に抜き取った。反応器を、温度45℃、圧力1400psigに維持した。機械式撹拌機を使用して反応媒質を撹拌した。
【0145】
連続ガス流を3時間維持した。3時間の連続稼動の終わりに、ガスフィードを止め、最終的な液体を反応器から取り出した。ガス分析によれば、全体の平均水素転化率は33%であった。液体分析は、4.8重量%の最終過酸化水素濃度を示した。転化された水素に対する過酸化水素の選択性は100%であることがわかった。
【0146】
(実施例4)
制御された配位触媒を使用する過酸化水素の連続合成
実施例1に従って調製した担持型触媒0.837gを、公称液体容積200mlの連続式撹拌槽型反応器(CSTR)に入れた。HSO1重量%およびNaBr5ppmwを含むメタノールからなる溶液を反応器に100cc/時の速度で連続的に供給した。水素3体積%および酸素97体積%からなるガスフィードを反応器に5200sccmの速度で供給した。反応器を、温度35℃、圧力1400psigに維持した。機械式撹拌機を使用して反応媒質を撹拌した。反応器内に触媒を保持したまま気体および液体生成物を反応器から連続的に抜き取ることができるように、反応器の出口接続部に内部フィルタを取り付けた。
【0147】
反応器をこの連続操作の状態で150時間維持した。約30時間の初期ラインアウト期間を考慮した後、定常状態操作の期間を120時間維持した。この期間中、水素の平均転化率は42%であることがわかった。転化された水素に基づく過酸化水素形成の平均選択性は、95%であることがわかった。平均液体生成物過酸化水素濃度は6.8重量%であることがわかった。
【0148】
1.過酸化水素生成に対する担持型触媒の熱処理の効果
担持型反応性触媒を熱処理するプロセスは、担持型触媒の製造に関連する任意選択のプロセスであると考えられるであろうが、熱処理の結果として生じる改良を過酸化水素の生成と関連して測定したので、以下の実施例を、前のセクションではなくむしろこのセクションで論じる。
【0149】
(実施例5〜12)
触媒活性/選択性を増大させるための担持型触媒の熱処理
8つの触媒試料を調製した。以下の手順は8つの触媒全てに共通であった。PdCl1.3339gをHCl4mlおよび脱イオン水996mlと混合することによってパラジウム塩溶液を調製した。その結果生じる溶液は、パラジウム0.0799重量%(7.511×10−3M)を含有した。HPtCl0.2614gを脱イオン水1000mlと混合することによって白金塩溶液を調製した。その結果生じる溶液は、白金0.010重量%(5.126×10−4M)を含有した。45重量%ポリアクリル酸溶液(MW約1200ダルトン)16gを総重量が100gになるように脱イオン水で希釈することによって、鋳型剤溶液を調製した。その結果生じる溶液は、ポリアクリル酸6.75重量%を含有した。
【0150】
1%Pd+0.02%Pt/C触媒48グラムを調製するため、パラジウム塩溶液600mlを、白金塩溶液96mlおよびポリアクリル酸溶液80mlと混合した。得られた混合物を脱イオン水で8000mlに希釈した。希釈溶液を100ml/分のNで1時間パージした。次いで、Nを100ml/分のHで20分間置換した。希釈溶液にカーボンブラック(Cabot社のBP−700)48gを加えた。次いで、その結果生じた混合物を沸騰させて液体の大部分を除去し、続いて乾燥させて乾燥固体を得た。
【0151】
次いでこの乾燥固体を以下のように還元した。
1.100ml/分のNで30分間パージした。
2.100ml/分のHに切り換えた。
3.30分かけて温度を30℃から90℃まで傾斜させた。
4.2時間にわたって温度を90℃に保持した。
5.2時間かけて温度を90℃から300℃まで傾斜させた。
6.17時間にわたって温度を300℃に保持した。
【0152】
次いで、さまざまな触媒試料を、不活性N雰囲気下で、下表に従うさまざまな温度で3時間にわたり、熱処理プロセスにかけた。
【0153】
【表1】

【0154】
実施例5〜12に従って製造された担持型触媒を使用して、水素および酸素からの過酸化水素の半バッチ合成を撹拌反応器内で実施した。バッチごとに、HSO1%およびNaBr5ppを含む水からなるフィード混合物75gを使用した。下表に従って触媒0.25gを加えた。合成反応を、45℃および圧力1000psigにおいて、空気中に水素3.15%を含有するガスの1000sccmの連続フィードで実施した。排気をGCによって分析して水素転化の程度を求めた。反応を2時間行い、その時点でフィードガスを止め、液体生成物を取り出し、過酸化水素の含量を分析した。結果は下表のとおりであった。過酸化水素選択性を、消費された水素のモルあたりの生成された過酸化水素のモルとして計算する。
【0155】
【表2】

【0156】
上記のデータを、熱処理にかけていない本発明に従う担持型触媒が高い特異性を欠いていることを意味すると解釈してはならない。実際、熱処理されていない触媒の選択性は時間の経過ととともに増大し、初期ブレークイン期間後は高かった。熱処理プロセスは選択性を促進するようであり、また、おそらく時間とともにそれを増大させる。
【0157】
2.溶媒選択パラメータ
本発明の別の態様は特定の液体反応媒質の使用を伴い、この液体反応媒質は、好ましくは、少なくとも部分的に0.14×10−4と5.0×10−4との間の値を有する溶媒選択パラメータ(SSP)によって定義されるような有機溶媒を含む。より好ましい液体溶媒は、0.2×10−4と4.0×10−4との間のSSPを有する。本明細書に記載される本発明の担持型反応性触媒と組み合わせての、上記の範囲内のSSPを有する溶媒の使用は、水素および酸素含有フィードガスから過酸化水素(H)が生成されるときの速度および収率を、気相の水素濃度が約5.0体積%未満に維持されるときでさえも、さらに増大させる。
【0158】
本発明では、さまざまな知られている有機溶媒を使用してもよいが、好適な溶媒の選択は、触媒性能強化、再循環のために過酸化水素を含有する液体生成物から液体溶媒を分離することの容易さ、過酸化水素生成物の最終用途、および望ましくない非選択的な生成物を形成しまたは安全上の問題をもたらす可能性がある、溶媒と過酸化水素との間に生じる副反応の可能性を含むさまざまな因子に左右される。有機溶媒を、純粋な溶媒として、または水との混合物として使用してもよく、その選択は、好ましいSSPによって定義される同様の因子に関連する。SSPは、溶媒中の水素の溶解度に基づいて定義され、具体的には以下のように定義される。
【0159】
溶媒選択パラメータ=Σ(w×S
式中、
は、液体反応混合物中の溶媒成分iの重量分率;
は、25℃、1気圧の標準状態におけるモル分率で表される純粋成分i中の水素の溶解度;および
記号「Σ」は、液体反応混合物を構成する成分の総和を示す。
【0160】
SSPは、公開文献において入手可能な水素の溶解度データに基づいて簡単に計算できる。SSPは、異なる液体を混合する際に起こる可能性がある水素溶解度の非線形変化を考慮しないが、SSPは、本発明を実施するための液体媒質向けの好適な有機溶媒の選択において非常に有用であることが見出された。
【0161】
本発明のSSPは、プロセス性能の主要な尺度、すなわち触媒過酸化水素生産性(catalyst hydrogen peroxide productivity)に強く相関することが分かっている。触媒過酸化水素生産性は、時間あたり、活性貴金属の重量あたりに生産される過酸化水素の重量として定義される。実験室触媒性能試験において、水、純粋な有機溶媒、または水と溶媒との混合物を含む一連の液体反応混合物についてSSPを計算し、触媒過酸化水素生産性を測定した。これらのデータの結果を、図8のグラフに示す。
【0162】
図8において明らかなように、SSPと触媒過酸化水素生産性との間には強い線形相関があり、SSPが増大するにつれて高い生産性が達成される。比較標準は、液体反応媒質として水を単独で使用したものであり、これは、0.14×10−4のSSPを有し、性能試験において207gH/gPd/時の触媒過酸化水素生産性を与える。より高いSSPを有する異なる溶媒または溶媒/水混合物を使用することによって、最大約900gH/gPd/時のより高い生産性を達成することができる。これらの結果は、溶媒媒質中の高い水素溶解度が、過酸化水素濃度および収率を向上させる制御因子であることを立証する。
【0163】
図8は、SSPの増大に伴う触媒過酸化水素生産性の概ね線形の増大を示すが、そのような増大は無限に続くわけではない。本発明の実施のためのSSPの好適な値に関して、上限を発見した。この限界は、好ましい溶媒が水に可溶でなければならないこと、および液体反応混合物が単一の液相を構成しなければならない事実に由来する。
【0164】
最も高い水素溶解度を有する有機溶媒は、一般に、高度に疎水性のものであり、ヘキサンなどのパラフィン系炭化水素、およびベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素のような広く使用されている溶媒を含む。このタイプの溶媒の全部または一部を含む液体反応混合物は比較的に高いSSP値を有するが、本発明の実施に対しては好ましくない。なぜならば、それらは水との混和性が劣るからである。過酸化水素はこれらの溶媒に十分には溶解せず、それによって触媒表面から周囲の液体媒質への生成物の脱離の決定的に重要なステップが妨げられる。この脱離の問題は、過酸化水素生成物を触媒の表面またはその近く(そこで過酸化水素生成物はさらに化学反応を受けて望ましくない水副生物を形成する傾向がある)に残存させ、劣った触媒過酸化水素生産性をもたらす。したがって、本発明の実施のためには、液体反応媒質は、5.0×10−4未満、好ましくは4.0×10−4未満のSSP値を有さなければならない。
【0165】
本発明のために有用な有機溶媒は、アルコール、ケトン、アルデヒド、フラン(例えばTHF)、エーテルおよびエステルのような酸素含有化合物、ニトリル、アミンおよびアミド(例えばDMF)のような窒素含有化合物、有機ホスフィンオキシド(例えばCytec社によって生産されるCyanex製品)のようなリン含有化合物、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素のような炭化水素など、またはこれらの混合物を含む。本発明の実施においては一相液体反応媒質が優れた収率結果を提供することが分かっているので、好ましい溶媒は、水と混和性であり、および過酸化水素対して良好な溶解度を有する溶媒である。さらに、溶媒が、水または過酸化水素の沸点温度よりも低い沸点温度を有することが好ましい。こうすると、過酸化物を含有する生成物から蒸留ステップによってオーバーヘッドストリームとして溶媒を回収することができる。そのようなより低い沸騰温度の関係は、より重い溶媒から過酸化水素のオーバーヘッドを蒸留する危険な操作の必要性を回避する。好ましい溶媒の例は、エタノール、メタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールのような軽質アルコール、アセトンのような軽質ケトン、アセトニトリルおよび1−プロピルアミンのような窒素含有溶媒である。
【0166】
液体反応媒質は、水を含まない本質的に純粋な有機溶媒を含んでもよいが、少量の水を含有する反応媒質中で過酸化水素合成を行うことが好ましい。商業的な実施では、触媒過酸化物合成反応器に供給される溶媒は回収されてプロセスの下流のある点からもとの反応器へ再循環され、これはこの溶媒を高度に精製する必要性を回避するのに好ましく、その代わりに一部の水を溶媒とともに再循環させ、蒸留または他の分離のコストを低減させる。また、過酸化水素は、典型的には、水溶液として生産され販売される。このプロセスによって生産される過酸化水素の目的が商業販売である場合、有機溶媒の除去および再循環の際の反応混合物中の水の存在は、さらなる処理および商業的使用に適当である過酸化水素水溶液の形成をもたらす。
【0167】
3.促進剤
また、本発明の担持型触媒に基づく過酸化水素の収率を、反応媒質に対して適当な促進剤を添加することによって向上させてもよい。有効な促進剤の例は、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどのようなアルカリ金属のハロゲン化物塩である。液体反応媒質の重量の1ppmから500ppm、好ましくは3ppmから200ppmの範囲の量のハロゲン化物塩を加えることによって、過酸化水素の収率を大幅に向上させることができる。
【0168】
図8を参照すると、促進剤の添加は、所望の濃度の促進剤が液体混合物に十分に可溶であるときに、より有効であることが明らかである。図8の上側の曲線「A」に沿ったデータ点に関しては、5重量ppmの臭化ナトリウム(NaBr)を液体混合物に加えた。これらの液体混合物中のNaBrの溶解度は5ppmよりも大きく、そのため加えたNaBrは完全に溶解した。これらのケースでは、触媒過酸化水素生産性はSSPが増大するにつれて急速に上昇し、その結果、SSPを0.14×10−4から1.6×10−4に増大させることによって、液体反応溶媒として水だけを使用する比較例に比べて、4倍超の収率の増大が達成される。
【0169】
ハロゲン化物塩のような促進剤を使用しないか、または促進剤が液体溶媒混合物に不溶である場合には、図8の下側の曲線「B」によって示されるように、より劣った結果が得られる。これらのケースでは、SSPの増大は改善された触媒過酸化水素収率を同様にもたらすが、しかし、増大の割合はNaBr促進剤を使用するときよりも小さい。しかしながら、促進剤を使用しない場合でさえも、より高いSSP値に関して達成される触媒過酸化水素生産性は、促進剤を使用して低SSP値で達成されるそれよりも大幅に高い。NaBr可溶性促進剤とともに水を反応媒質として使用する比較のケースに比べて、促進剤を使用しない場合の触媒過酸化水素生産性は、SSP値を2.7×10−4まで増大させることによって、ほぼ4倍に増大する。
【0170】
(実施例13)
水50mlおよび表面配位数2を有する相制御されたパラジウム触媒0.5gを、1重量%硫酸(HSO)および5ppmNaBrととともに最大容積1リットルの撹拌オートクレーブユニットに導入した。これは液体SSP0.14×10−4を有する。温度45℃および圧力1400psigにおいて、空気中に3%の水素を含有するフィードガスのガスフィード流量1.0リットル/分で、反応条件を維持した。3時間の反応時間の後、水素転化率は24.3%に達した。過マンガン酸カリウムを用いた滴定によって液体生成物を分析し、過酸化水素生成物濃度2.9重量%を得た。収率は207g/gPd/時であった。これらの実施例および結果は図8にグラフとして示されている。
【0171】
(実施例14)
実施例13の水溶媒を、より高いSSP0.578×10−4を有する、メタノール30体積%および水70体積%の溶媒75mlで置換した。メタノールは水と完全に混和性であり、相制御されたパラジウム触媒0.25gを、1重量%のHSOおよび5ppmのNaBrとともに使用した。2時間の反応時間の後、水素転化率は22.0%であり、過酸化水素濃度2.1重量%が得られ、収率は450g/gPd/時まで増大した。
【0172】
(実施例15)
実施例14のメタノールを、SSP0.626×10−4を提供するアセトニトリルで置換した。アセトニトリルは水と混和性であった。2時間の反応の後、水素転化率は18.9%であり、過酸化水素濃度1.9重量%が収率407g/gPd/時で得られた。
【0173】
(実施例16)
実施例14のメタノールを2−プロパノールで置換し、これは、SSPを0.908×10−4まで増大させた。2−プロパノールは水と混和性であった。2時間の反応の後、水素転化率は19.8%であり、過酸化水素濃度2.3重量%が収率493g/gPd/時で得られた。
【0174】
(実施例17)
実施例14のメタノールを、水と完全に混和性であるアセトンで置換し、およびSSPを0.998×10−4まで増大させた。2時間の反応の後、水素転化率は61.1%まで増大し、過酸化水素濃度2.6重量%が、557g/gPd/時まで増大した収率で得られた。
【0175】
(実施例18)
実施例14のメタノールと水溶媒を、SSP1.6×10−4を有する純粋なメタノール75mlで置換した。2時間の反応の後、水素転化率は85.2%まで増大し、過酸化水素濃度4.1重量%が収率879g/gPd/時で得られた。
【0176】
(実施例19)
実施例18のメタノールを、SSP1.44×10−4を有するジメチルホルムアミド(DMF)で置換した。5ppmのNaBrはDMFには完全には溶解しなかった。2時間の反応の後、水素転化率は64.4%に達し、過酸化水素濃度1.8重量%が、収率385g/gPd/時で得られた。
【0177】
(実施例20)
実施例18のメタノールを、SSP2.7×10−4を提供する2−プロパノールで置換した。5ppmのNaBrは2−プロパノールには完全には溶解しなかった。2時間の反応の後、水素転化率は82.4%まで増大し、過酸化水素濃度3.5重量%が、収率750g/gPd/時で得られた。
【0178】
(実施例21)
実施例18のメタノールを、SSPを2.078×10−4まで増大させる、ヘキサン30%および水70%で置換した。5ppmのNaBrはヘキサンには溶解せず、水にだけ溶解した。ヘキサンは水と混和性でなかった。2時間の反応の後、水素転化率は79.0%に達したが、過酸化水素生成物は得られなかった。
【0179】
(実施例22)
実施例21のヘキサンを、ホルムアルデヒドで置換した。ホルムアルデヒドのSSP値は文献から得られなかった。ホルムアルデヒドは水と完全に混和性であった。2時間の反応の後、水素転化率は11.8%でしかなく、過酸化水素濃度0.3重量%が得られ、収率は65g/gPd/時にとどまった。
【0180】
B.酸化反応
本発明の担持型反応性触媒は、酸化された化学生成物を形成する酸素と有機化合物の反応(直接酸化)に対しても有用である。さまざまな化学的基質を酸化して有用な生成物を形成することができる。例のリストは、(a)プロピレンのアクリル酸への酸化、エチレンの酢酸への酸化のような、酸を生成するオレフィンの直接酸化、(b)エポキシドを形成するオレフィンの直接エポキシ化、例えばプロピレンのプロピレンオキシドへのエポキシ化またはエチレンのエチレンオキシドへのエポキシ化、(c)キシレンのフタル酸または関連化合物への酸化、例えばp−キシレンのテレフタル酸への酸化、o−キシレンの無水フタル酸への酸化、およびm−キシレンのイソフタル酸への酸化、(d)エチレンの酢酸ビニルへの酸化、(e)エチレンのアセトアルデヒドへの酸化、ならびに(f)イソブチレンのメタクリル酸への酸化を含む。ただしこれらを本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。これらの触媒のための活性成分の好ましい選択は、具体的な応用に依存する。例えば、オレフィンのカルボン酸への転化に対して好ましい主活性成分はパラジウムであり、一方、オレフィンのエポキシドへの転化に対して好ましい活性成分は銀である。上記の反応に関する追加の議論は、例えば、参照によって組み込まれる特許文献1中に見出すことができる。
【0181】
C.水素化反応
本発明の担持型反応性触媒は水素化反応に対しても有用である。この触媒は、選択性が決定的に重要な因子である場合、すなわち、供給原料が2種以上の還元可能な官能基を含み、これらのうちの特定ものだけを水素化しなければならない場合に、特に有利である。本発明の有用性を示すのに、本発明の範囲の限定を意味しない具体的例が役立つ。アセトフェノンのメチルベンジルアルコールへの選択的な水素化では、触媒は、アセトフェノン分子のカルボニル基を選択的に水素化し、一方、アセトフェノン分子のベンゼン環を無影響で残さなければならない。この応用のための好ましい触媒は、白金、パラジウムまたはルテニウムの主活性成分に基づく。本発明に基づく触媒粒子に、このカルボニル基の2重結合は容易に吸着することができ、この結合は、触媒表面の表面原子の最上位列と整列し、それによって隣接する表面部位由来の水素による攻撃対象となるように配置される。
【0182】
しかしながら、よりかさ高の芳香環は、この直線的な表面構造にフィットせず、容易には水素化されない。
【0183】
D.還元反応
本発明の触媒は、アンモニア合成、カルボニル化、ヒドロホルミル化、油脂の硬化、還元的アルキル化、還元的アミノ化およびヒドロシレーション(hydrosilation)を含む他の還元反応に対しても有用である。ただし還元反応はこれらに限定されるわけではない。
【0184】
E.脱水素反応
本発明の触媒は、脱水素および改質を含む、反応剤分子から水素を遊離させる反応に対しても有用である。芳香族化合物を形成する石油留分および他の炭化水素の触媒的改質に関しては、好ましい活性触媒成分は白金または白金とレニウムの組合せである。合成ガスを形成する炭化水素の改質に関しては、有用な触媒成分は、パラジウム、白金、イリジウム、金、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウムおよびそれらの組合せのような貴金属である。同じ貴金属が、単独であるいは組み合わせて、プロパンのプロピレンへの転化またはエタンのエチレンへの転化のような脱水素反応に対して有用である。
【0185】
F.燃料電池
本発明の触媒は、高分子電解質膜型燃料電池および直接メタノール型燃料電池のための燃料電池電極における触媒成分としても有用である。主活性成分として白金に基づく制御された配位触媒は、これらの燃料電池のアノードとカソードの両方に対して有用である。
【0186】
本発明は、本発明の趣旨または必須の特徴から逸脱することなく他の具体的な形態で具現化することができる。記載の実施形態は、あらゆる点で、単に例示のためのものであって、限定のためのものではではない。したがって本発明の範囲は、以上の説明よりはむしろ添付の請求項によって示される。請求項の等価の意味および範囲に含まれる全ての変更は、請求項の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1A】例示的な低指数結晶面を概略的に示す図である。
【図1B】例示的な低指数結晶面を概略的に示す図である。
【図2A】さまざまな低指数結晶面の触媒原子に対して水素および酸素がどのように配置されまたは配位するのかを概略的に比較する図である。
【図2B】さまざまな低指数結晶面の触媒原子に対して水素および酸素がどのように配置されまたは配位するのかを概略的に比較する図である。
【図3】配位数2を有し、不規則に配置された列に配置された反応性触媒原子の例示的な最上位層すなわち外層の概略的な上面図である。
【図4】本発明の例示的な中間触媒錯体の化学構造の概略図である。
【図5】固定剤によって担体に化学結合した触媒粒子を概略的に示す図である。
【図6】貴金属触媒原子の秩序配列を示す本発明に基づく担持型Pd−Pt/C触媒の高解像度TEMを示す図である。
【図7】TS1担体上の貴金属触媒原子の秩序配列を示す本発明に従う担持型Pd−Pt/TS1触媒の高解像度TEMを示す図である。
【図8】過酸化水素生成物の収率と溶液選択パラメータ(SSP)との間の相関を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体材料と、
該担体材料上に配置される複数の反応性触媒粒子であって、貴金属、卑遷移金属、希土類金属および固体非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む複数の触媒反応性原子を含む反応性触媒粒子と
を含み、
該触媒反応性原子は、該触媒反応性原子の最上位面層すなわち外面層の少なくとも約50%が最隣接原子配位数2を有するように配置されており、および、
固定材料は、該反応性触媒粒子の少なくとも一部分を該担体材料に化学的に結合するポリマー、オリゴマーまたは有機化合物のうちの少なくとも1つのタイプを含み、該固定材料の少なくとも一部分は、該触媒反応性原子の最下層と該担体材料との間に配置されている
ことを特徴とする制御された配位構造を有する担持型反応性触媒。
【請求項2】
該担体材料は、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物およびポリマーを含む群から選択された複数の粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項3】
該担体材料は、高分子シートまたは高分子膜のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項4】
該担体材料は、それ自体が触媒性であることを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項5】
該触媒性担体材料は、ケイ酸チタンを含むことを特徴とする請求項4に記載の担持型反応性触媒。
【請求項6】
該担体材料および該固定材料は、一緒に反応して該担体材料と該固定材料との間に化学結合を形成した対応する官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項7】
該担体材料と該固定材料との間の該化学結合は、該担体材料および該固定材料の該対応する官能基の縮合反応生成物であることを特徴とする請求項6に記載の担持型反応性触媒。
【請求項8】
該縮合反応生成物は、エステル、エーテルまたはアミドのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の担持型反応性触媒。
【請求項9】
該触媒反応性原子の最上位面層すなわち外面層の少なくとも約60%は、最隣接原子配位数2を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項10】
該触媒反応性原子の最上位面層すなわち外面層の少なくとも約70%は、最隣接原子配位数2を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項11】
該触媒反応性原子の最上位面層すなわち外面層の少なくとも約80%は、最隣接原子配位数2を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項12】
該触媒反応性原子の最上位面層すなわち外面層の少なくとも約90%は、最隣接原子配位数2を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項13】
該触媒反応性原子の最上位面層すなわち外面層の少なくとも約95%は、最隣接原子配位数2を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項14】
該触媒粒子は約10nm未満の表面直径を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項15】
該触媒粒子は約6nm未満の表面直径を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項16】
該触媒粒子は約4nm未満の表面直径を有することを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項17】
該触媒反応性原子の少なくとも一部分は、パラジウム、白金、イリジウム、金、オスミウム、ルテニウム、ロジウムおよびレニウムを含む群から選択される少なくとも1つの貴金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項18】
該触媒反応性原子は、卑遷移金属、希土類金属および固体非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項19】
該触媒反応性原子は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、モリブデンおよびバナジウムを含む群から選択される少なくとも1つの卑遷移金属を含むことを特徴とする請求項18に記載の担持型反応性触媒。
【請求項20】
該触媒反応性原子の少なくとも一部分は、ランタンおよびセリウムを含む群から選択される少なくとも1つの希土類金属を含むことを特徴とする請求項18に記載の担持型反応性触媒。
【請求項21】
該触媒粒子は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項22】
該固定剤は、少なくとも1つの電子豊富原子に結合される炭素原子を含む官能基を含み、該電子豊富原子は、該炭素原子より電気的陰性であり、および少なくとも1つの該触媒反応性原子と結合または引力を形成するように、1つまたは複数の電子を供与することができることを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項23】
該電子豊富原子は酸素または窒素のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項22に記載の担持型反応性触媒。
【請求項24】
該電子豊富原子は負電荷を有し、および該固定剤に結合される該触媒反応性原子の少なくとも一部分は正電荷を有することを特徴とする請求項22に記載の担持型反応性触媒。
【請求項25】
該反応性触媒粒子は、少なくとも2つの異なるタイプの反応性触媒原子のランダム分布を含むことを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項26】
該固定剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリ安息香酸ビニル、ポリビニルサルフェート、スルホン化スチレンを含むポリビニルスルホネート、ポリビスフェノールカーボネート、ポリベンゾイミジゾール、ポリピリジン、スルホン化ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む群から選択される少なくとも1つの制御剤に由来するものであることを特徴とする請求項1に記載の担持型反応性触媒。
【請求項27】
制御された配位構造を有する担持型触媒の製造方法であって、
(a)(i)貴金属、希土類金属、卑遷移金属および固体非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む複数の触媒原子と、
(ii)ポリマー、オリゴマーおよび有機化合物を含む群から選択される複数の錯体化分子を含み、その少なくとも約50%が直鎖状である制御剤と
を一緒に反応させることによって中間触媒錯体を調製すること、
(b)該中間触媒錯体を担体材料と接触させること、
(c)該制御剤の一部分を該担体材料と化学的に結合させること、および
(d)該制御剤の一部分を除去して該触媒原子の一部分を露出させ、それによって複数の反応性触媒粒子を含む担持型触媒を与えること
を含み、
該反応性触媒粒子は、(i)前記制御剤の残存する部分を含む固定剤によって該担体材料に化学的に固定され、および(ii)その中で該反応性触媒粒子の上面の該触媒原子のうち少なくとも約50%は最隣接原子配位数2を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
該触媒錯体は、縮合反応によって該担体材料に化学的に結合されることを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項29】
(a)は、該触媒原子および制御剤を液体の中で反応させることをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項30】
(c)は液体の中で実施されることを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項31】
(c)は、前記液体と前記担体材料に化学的に結合された前記触媒錯体とを含む中間組成物を与え、該方法は、前記中間組成物から前記液体のかなりの部分を除去することをさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項32】
(d)は、制御剤の該一部分を還元することを含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項33】
(d)は、制御剤の該一部分を水素化することを含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項34】
(d)は、該制御剤の該一部分を酸化することを含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項35】
(d)で得られる該担持型触媒を、約50℃から約300℃の範囲の温度で少なくとも約30分間熱処理することをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項36】
前記熱処理は不活性雰囲気中で実施されることを特徴とする請求項35に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項37】
前記熱処理は、約100℃から約250℃の範囲の温度で少なくとも約30分間実施されることを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項38】
前記熱処理は、約125℃から約200℃の範囲の温度で少なくとも約30分間実施されることを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒製造方法。
【請求項39】
該反応性触媒粒子は、少なくとも2つの異なるタイプの反応性触媒原子のランダム分布を含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項40】
該触媒原子は、希土類金属、卑遷移金属および非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含むことを特徴とする請求項27に記載の担持型触媒の製造方法。
【請求項41】
請求項1に記載の担持型反応性触媒の使用方法であって、1つまたは複数の所望の反応生成物を与えるように、1つまたは複数の反応剤を該担持型反応性触媒と接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
該1つまたは複数の反応剤は水素および酸素を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該1つまたは複数の反応生成物は過酸化水素を含むことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
該1つまたは複数の反応剤は少なくとも1つのタイプの有機化合物をさらに含み、および該1つまたは複数の反応生成物は、少なくとも1つのタイプの酸化された有機化合物を含むことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
該過酸化水素は、該少なくとも1つのタイプの有機化合物と反応して該少なくとも1つのタイプの酸化された有機化合物を与える中間反応生成物であることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
該1つまたは複数の反応剤は酸素および少なくともタイプの有機化合物を含み、および該1つまたは複数の反応生成物は少なくとも1つの酸化された有機化合物を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項47】
該1つまたは複数の反応剤は水素および少なくとも1つのタイプの有機化合物を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項48】
該1つまたは複数の反応生成物は、少なくとも1つのタイプの水素化された有機化合物を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
水素処理法および水素化分解法のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
該1つまたは複数の反応剤は少なくとも1つのタイプの有機化合物を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項51】
該1つまたは複数の反応生成物は、少なくとも1つの脱水素された有機化合物および遊離水素を含むことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
該1つまたは複数の反応生成物は、少なくとも1つの改質された有機化合物および遊離水素を含むことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項53】
該担持型反応性触媒は溶媒中に分散されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項54】
該溶媒は、約0.14×10−4から約5×10−4までの範囲の値を有する溶媒溶解度パラメータを有する少なくとも1つの液体を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
該溶媒は、約0.2×10−4から約4×10−4までの範囲の値を有する溶媒溶解度パラメータを有する少なくとも1つの液体を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
該溶媒は、酸素含有有機化合物、アルコール、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ケトン、アルデヒド、フラン、テトラヒドロフラン、エーテル、エステル、窒素含有有機化合物、ニトリル、アセトニトリル、アミン、1−プロピルアミン、アミド、ジメチルホルムアミド、リン含有有機化合物およびホスフィンオキシドを含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項57】
該溶媒は水を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項58】
該溶媒は、液体炭化水素、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項59】
制御された配位構造を有する担持型触媒を製造する際に使用される中間前駆体組成物であって、
貴金属、希土類金属、卑遷移金属および非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む複数の触媒原子と、
ポリマー、オリゴマーおよび有機化合物を含む群から選択される複数の錯体化分子を含む制御剤であって、それぞれの制御剤分子が、該反応性触媒原子を該制御剤分子に錯体化させるために主鎖に沿って配置される複数の官能基を有する制御剤と
を含み、
該制御剤分子の少なくとも約50%は直鎖状であり、および該制御剤分子の少なくとも一部分は、該触媒原子と該制御剤分子との間で触媒錯体を形成し、該触媒錯体は、担体および複数の反応性触媒粒子を含む担持型反応性触媒を形成する能力を有し、該反応性触媒粒子は、該反応性触媒粒子の上面の該触媒原子の大半が最隣接原子配位数2を有するように該担体上に分散される
ことを特徴とする中間前駆体組成物。
【請求項60】
該触媒原子の少なくとも一部分は、パラジウム、白金、イリジウム、金、オスミウム、ルテニウム、ロジウムおよびレニウムを含む群から選択される少なくとも1つの貴金属を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項61】
該触媒原子の少なくとも一部分は、卑遷移金属、希土類金属および非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項62】
該触媒原子は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、モリブデンおよびバナジウムを含むグループから選択される少なくとも1つの卑遷移金属を含むことを特徴とする請求項61に記載の中間前駆体組成物。
【請求項63】
該触媒原子の少なくとも一部分は、ランタンおよびセリウムを含む群から選択される少なくとも1つの希土類金属を含むことを特徴とする請求項61に記載の中間前駆体組成物。
【請求項64】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項65】
該官能基の少なくとも一部分は、少なくとも1つの電子豊富原子に結合される炭素原子を含み、該電子豊富原子は、前記炭素原子よりも電気的陰性であり、および少なくとも1つの該触媒原子との間に結合または引力を形成するように、1つまたは複数の電子を供与することができることを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項66】
該電子豊富原子は酸素または窒素のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項65に記載の中間前駆体組成物。
【請求項67】
該電子豊富原子は負電荷を有し、および該触媒原子は正電荷を有することを特徴とする請求項65に記載の中間前駆体組成物。
【請求項68】
該制御剤分子の少なくとも約60%は直鎖状であることを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項69】
該制御剤分子の少なくとも約75%は直鎖状であることを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項70】
該制御剤分子の少なくとも約90%は直鎖状であることを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項71】
該制御剤分子の少なくとも約95%は直鎖状であることを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項72】
該制御剤分子の約100%は直鎖状であることを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項73】
該触媒錯体ならびに任意の残存する触媒原子および制御剤がその中に混合される溶媒またはキャリアをさらに含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項74】
該溶媒またはキャリアは水を含むことを特徴とする請求項73に記載の中間前駆体組成物。
【請求項75】
該溶媒またはキャリアは少なくとも1つの水性酸を含むことを特徴とする請求項73に記載の中間前駆体組成物。
【請求項76】
該溶媒またはキャリアは少なくとも1つの有機溶媒を含むことを特徴とする請求項73に記載の中間前駆体組成物。
【請求項77】
少なくとも1種の担体材料をさらに含むことを特徴とする請求項73に記載の中間前駆体組成物。
【請求項78】
該触媒錯体は該担体材料内に含浸されているが、しかし該担体材料に化学的に結合されていないことを特徴とする請求項77に記載の中間前駆体組成物。
【請求項79】
該触媒錯体は該担体材料に化学的に結合されていることを特徴とする請求項77に記載の中間前駆体組成物。
【請求項80】
該触媒錯体が化学的に結合された少なくとも1つの担体材料をさらに含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項81】
該制御剤は、約300から約15,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有することを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項82】
該制御剤は、約600から約6,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有することを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項83】
該制御剤のかなりの部分は、制御剤1分子あたり約4から約200個の官能基を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項84】
該制御剤のかなりの部分は、制御剤1分子あたり約8から約80個の官能基を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項85】
該制御剤のかなりの部分は、制御剤1分子あたり約10から約20個の官能基を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項86】
約0.5:1から約40:1までの範囲の制御剤官能基と触媒原子のモル比を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項87】
約1:1から約35:1までの範囲の制御剤官能基と触媒原子のモル比を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項88】
約3:1から約30:1までの範囲の制御剤官能基と触媒原子のモル比を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項89】
該制御剤は、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項90】
該制御剤は、ポリ安息香酸ビニル、ポリビニルサルフェート、スルホン化スチレンを含むポリビニルスルホネート、ポリビスフェノールカーボネート、ポリベンゾイミジゾール、ポリピリジン、スルホン化ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項91】
該触媒錯体は、少なくとも2つの異なるタイプの触媒原子のランダム分布を含むことを特徴とする請求項59に記載の中間前駆体組成物。
【請求項92】
制御された配位構造を有する担持型触媒を製造する際に使用される中間前駆体組成物の調製方法であって、
貴金属、希土類金属、遷移金属および非金属を含む群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む複数の触媒原子を提供する工程と、
ポリマー、オリゴマーおよび有機化合物を含む群から選択される複数の錯体化分子を含む制御剤であって、それぞれの制御剤分子が、該反応性触媒原子を該制御剤分子に錯体化させるために主鎖に沿って配置される複数の官能基を有し、該制御剤分子の少なくとも約50%が直鎖状である制御剤を提供する工程と、
該触媒原子および制御剤を液体の中で一緒に混合して混合物を形成する工程と、
該触媒原子の少なくとも一部分を該制御剤の少なくとも一部分と反応させて、担体および複数の反応性触媒粒子を含む担持型反応性触媒を形成する能力を有する触媒錯体を与える工程と
を含み、
該反応性触媒粒子は、該反応性触媒粒子の上面の該触媒原子の大半が最隣接原子配位数2を有するように前記担体上に分散される
ことを特徴とする方法。
【請求項93】
該触媒錯体を担体と接触させることをさらに含むことを特徴とする請求項92に記載の中間前駆体組成物の調製方法。
【請求項94】
該触媒錯体は該担体に含浸されているが、しかし該担体に結合されていないことを特徴とする請求項93に記載の中間前駆体組成物の調製方法。
【請求項95】
該制御剤の一部分が該触媒錯体を該担体に化学的に結合させるように、該触媒錯体を該担体と反応させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項93に記載の中間前駆体組成物の調製方法。
【請求項96】
該触媒錯体を該担体に結合させる該制御剤の該一部分は、縮合反応によってこれを実行することを特徴とする請求項95に記載の中間前駆体組成物の調製方法。
【請求項97】
該担体に結合された該触媒錯体を含む担持型触媒前駆体組成物を与えるように、該液体を除去することをさらに含むことを特徴とする請求項93に記載の中間前駆体組成物の調製方法。
【請求項98】
該触媒錯体は、少なくとも異なるタイプの触媒原子のランダム分布を含むことを特徴とする請求項92に記載の中間前駆体組成物の調製方法。
【請求項99】
該触媒原子は、希土類金属、卑遷移金属および非金属を含む群から選択される少なくとも構成要素を含むことを特徴とする請求項92に記載の中間前駆体組成物の調製方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−530248(P2007−530248A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520177(P2006−520177)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/019439
【国際公開番号】WO2005/009611
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(507028251)ヘッドウォーターズ テクノロジー イノベーション リミテッド ライアビリティ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】