説明

制御弁

【課題】パイロット作動式の主弁とそれとは別の副弁とを一体に組み付けて構成される制御弁において、各弁の設計自由度を向上させる。
【解決手段】ある態様では、樹脂製の第2ボディ14に主弁6の少なくとも一部と副弁8を組み付けてユニット化した弁ユニットが構成され、その弁ユニットを第1ボディ12に組み込んで制御弁1を構成するようにしている。このため、外部配管等との接続構造に制約がある第1ボディ12とは別に、弁ユニット側で独立して主弁6や副弁8の形状、寸法、位置などを比較的自由に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルにおける冷媒循環通路の分岐点に設けられ、上流側通路から下流側の各分岐通路へ流れる冷媒流量の割合を変化させることが可能な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、蒸発器等を冷媒循環通路に配置して構成される(例えば特許文献1参照)。例えば、圧縮機と凝縮器との間には、冷媒を凝縮器を通過させる通路と迂回させる通路との分岐点が設けられる。そして、冷房運転時には主として凝縮器を通過させる通路を形成し、暖房運転時には主として凝縮器を迂回させる通路を形成するなどして蒸発器に送り込む冷媒の状態(温度)を変化させ、空調制御を行っている。このような制御を行うために、その分岐点には冷房運転時と暖房運転時とで冷媒の流れを切り替える切替弁が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載の空調装置においては、このような切替弁を1つの弁本体に電磁弁部と差圧弁部とを一体的に設けた複合弁として構成することにより、その加工コストの低減などを実現している。また、電磁弁部により開閉される主弁をパイロット作動式とすることで、複合弁全体のコンパクト化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−340560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような複合弁を構成する場合、一つの弁本体のボディに主弁を構成する主弁体、パイロット弁を構成するパイロット弁体、および差圧弁を構成する差圧弁体を組み込まなければならず、各弁体が着脱する弁座を設けなければならない。このため、ボディを切削加工する場合に各弁体を組み込めるよう内部通路の形状や寸法に制約がかかることになる。すなわち、ボディには、冷媒循環通路につながる複数のポートやそれをつなぐ複数の内部通路が設けられることになるが、内部に弁体を収容するために、それを収容可能な大きさを確保しなければならない。言い換えれば、ボディの形状や大きさ、あるいはポートの位置によっては、逆に弁体の大きさや配置などに制約が加わるといった問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、パイロット作動式の主弁とそれとは別の副弁とを一体に組み付けて構成される制御弁において、各弁の設計自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、上流側通路と第1下流側通路と第2下流側通路との間に設けられ、上流側通路から各下流側通路に流れる冷媒流量の割合を制御可能なパイロット作動式の制御弁である。この制御弁は、上流側通路につながる導入ポートと、第1下流側通路につながる第1導出ポートと、第2下流側通路につながる第2導出ポートとを有し、導入ポートと第1導出ポートとをつなぐ第1通路と、導入ポートと第2導出ポートとをつなぐ第2通路とが形成されるボディと、第1通路に設けられた主弁孔に接離することにより第1通路を開閉する主弁体を有し、その主弁体が第1通路と背圧室とを区画する主弁と、第2通路に設けられた副弁孔に接離することにより第2通路を開閉する副弁体を有する副弁と、背圧室と第1下流側通路とを連通するパイロット弁孔を有し、上流側通路と第1下流側通路とを背圧室を介してつなぐ第3通路を、パイロット弁孔に接離することにより開閉するパイロット弁体を有する電磁駆動のパイロット弁と、を備える。また、ボディが、各ポートが形成された金属製の第1ボディに、各ポートへの連通孔が設けられた樹脂製の第2ボディを内挿嵌合して構成される。そして、主弁の少なくとも一部と副弁を第2ボディに組み付けて構成された弁ユニットを、第1ボディに設けられた嵌合孔の一端から挿入するように組み付けて構成されている。ここでいう「冷媒流量の割合を制御」は、冷媒流量の比率を変化させるものでもよいし、冷媒の流れそのものを切り替えるものでもよい。
【0008】
この態様によると、ボディが第1ボディと第2ボディとの2重構造を有しており、外側に金属製の第1ボディが配置され、上流側通路および下流側通路との接続ポートが形成されている。このため、上流側通路および下流側通路を形成する配管等との接続部をはじめ、制御弁全体として十分な剛性が担保される。一方、樹脂製の第2ボディに主弁の少なくとも一部と副弁を組み付けてユニット化した弁ユニットが構成され、その弁ユニットを第1ボディに組み込んで制御弁を構成する態様となっている。このため、外部配管等との接続構造に制約がある第1ボディとは別に、弁ユニット側で独立して主弁や副弁の形状、寸法、位置などを比較的自由に設定することができ、各弁の設計自由度が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パイロット作動式の主弁とそれとは別の副弁とを一体に組み付けて構成される制御弁において、各弁の設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の制御弁の構成を表す断面図である。
【図2】制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図3】制御弁の製造工程の概略を表す説明図である。
【図4】制御弁の製造工程の概略を表す説明図である。
【図5】制御弁の製造工程の概略を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に位置関係を表現することがある。
図1は、実施形態の制御弁の構成を表す断面図である。
本実施形態の制御弁1は、自動車用空調装置の冷媒循環通路の分岐点に設けられ、上流側通路から下流側の各分岐通路へ流れる冷媒流量の割合を変化させる切替弁として構成されている。この自動車用空調装置は、圧縮機、凝縮器、蒸発器のほか、受液器やアキュムレータなどが配管により接続されて構成されている。
【0012】
冷媒循環通路は、冷媒が圧縮機→凝縮器→受液器→蒸発器→アキュムレータ→圧縮機と循環する第1循環通路のほか、圧縮機と凝縮器との間の分岐点と、受液器と蒸発器との間の合流点とを接続するバイパス通路を有する。このバイパス通路により、圧縮機→蒸発器→アキュムレータ→圧縮機と循環する第2循環通路が構成される。制御弁1は、その圧縮機と凝縮器との間の分岐点に設けられ、冷房運転時と暖房運転時とで冷媒の流れを切り替える。すなわち、制御弁1は、圧縮機につながる上流側通路から導入された冷媒を、凝縮器につながる第1下流側通路または凝縮器を迂回する第2下流側通路のいずれかに導くとともに、その上流側通路から各下流側通路に流れる冷媒流量の割合を制御可能なものである。なお、このような冷凍サイクルそのものについては特許文献1にも開示されているように公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0013】
図1に示すように、制御弁1は、内部に弁機構を収容した弁本体2と、その弁機構を駆動するソレノイド4とを組み付けて構成される。弁本体2のボディ5には、上流側通路から第1下流側通路へ流れる冷媒の流れを制御する主弁6と、上流側通路から第2下流側通路へ流れる冷媒の流れを制御する副弁8と、主弁6の開閉状態を制御するパイロット弁10が組み込まれている。
【0014】
ボディ5は、金属製の第1ボディ12に樹脂製の第2ボディ14を同軸状に内挿するように嵌合して構成されている。第1ボディ12は、直方体状の本体を上下に貫通する嵌合孔16を有し、その嵌合孔16が第2ボディ14の取付孔を形成している。第1ボディ12の一方の側面には、その上部に内外を連通させるとともに上流側通路につながる導入ポート20が設けられ、下部に内外を連通させるとともに第2下流側通路につながる導出ポート22(「第2導出ポート」に該当する)が設けられている。第1ボディ12の反対側の側面には、その下部に内外を連通させるとともに第1下流側通路につながる導出ポート24(「第1導出ポート」に該当する)が設けられている。
【0015】
第2ボディ14は、第1ボディ12に内挿される本体を形成する第1弁形成部26と、その第1弁形成部26に組み込まれる第2弁形成部28とを嵌合して構成される。第1弁形成部26は、その上半部に第1ボディ12と同軸状の二重管構造を有し、下半部が第2弁形成部28の収容部となっている。その二重管構造の内管部30は、その内方に主弁孔32を形成し、その開口端部により主弁座34が形成されている。また、その二重管構造の外管部35の導入ポート20との対向面には、内外を連通させる連通孔36が形成されている。内管部30と外管部35との間には、上流側の圧力室38が形成されている。圧力室38には有底円筒状の主弁体40が配設されている。主弁体40は、主弁座34に着脱して主弁6を開閉する。
【0016】
主弁体40は、第1弁形成部26とソレノイド4との間に挟持された可撓性を有するダイヤフラム42に支持されている。主弁体40の下面から下方に複数の脚部44(同図にはその1つが表示)が延設されている。その脚部44が内管部30に摺動可能に内挿されることで、主弁体40の軸線方向への安定した開閉動作が担保されている。ダイヤフラム42は、その中央部が主弁体40の底部と脚部44との間に挟まれるように装着されており、その底部に沿った厚肉部分が主弁座34に着脱する主弁体40の一部を構成している。主弁体40は、圧力室38を高圧室46と背圧室48とに区画する。また、主弁体40には、高圧室46と背圧室48とを連通するオリフィス50が設けられている。主弁体40の上端開口縁には、内外を連通させる複数のスリット51が設けられ、図示のように主弁体40が全開状態となる上死点に位置しても、背圧室48の圧力がダイヤフラム42の背部に作用するように構成されている。
【0017】
主弁体40の底部中央には背圧室48側に突出するボス部52が設けられ、そのボス部52の上端面によりパイロット弁座54が形成されている。また、そのボス部52を軸線方向に貫通するようにパイロット弁孔56が形成されている。また、背圧室48には、ソレノイド4により駆動されるパイロット弁体60が配設されている。パイロット弁体60は、パイロット弁座54に着脱してパイロット弁10を開閉する。パイロット弁体60は、長尺状の本体の下端部に弾性体(本実施例ではゴム)からなる着脱部62を嵌着し、その着脱部62とは反対側に延びるロッド部64がソレノイド4に連結されている。
【0018】
第1弁形成部26の下半部における導出ポート22との対向面には、内外を連通させる連通孔70が形成されている。連通孔70の内方には、円筒状に突出する弁座形成部72が設けられている。弁座形成部72の内方に副弁孔74が形成され、その開口端部により副弁座76が形成されている。そして、副弁座76に対向配置されるように、有底円筒状の副弁体78が設けられている。副弁体78は、その底部が副弁座76に着脱して副弁8を開閉する。
【0019】
副弁体78は、第1弁形成部26と第2弁形成部28との間に挟持された可撓性を有するダイヤフラム80に支持されている。副弁体78が、第2弁形成部28の右端開口部に沿って摺動可能に支持されることで、副弁体78の軸線方向への安定した開閉動作が担保されている。なお、図示のように、副弁体78の軸線は主弁体40の軸線と90度の角度をなしている。つまり、副弁体78は、主弁体40の開閉方向に対して直角方向に開閉する。ダイヤフラム80は、その中央部が副弁体78の底部に嵌着されており、その底部に沿った厚肉部分が副弁座76に着脱する副弁体78の一部を構成している。副弁体78は、ボディ5の内部を、導入ポート20に連通する高圧室46と、導出ポート22に連通する低圧室82と、導出ポート24に連通する低圧室84とに区画する。
【0020】
また、連通孔70と導出ポート22との接続部を跨ぐように円筒状のシール部材92が嵌着されている。第1弁形成部26の中央部には、第1ボディ12との接合面にシール用のOリング94が外嵌され、シール部材92の外周面には、第1弁形成部26との接合面にシール用のOリング96が外嵌されている。これにより、高圧室46の冷媒が、第1ボディ12と第1弁形成部26との間隙を介して導出ポート22側へ漏洩することが防止されている。また、第1弁形成部26の下端部にも、第1ボディ12との接合面にシール用のOリング98が外嵌されている。さらに、第1ボディ12の下端開口部を封止するように円板状の封止部材100が設けられている。
【0021】
第2弁形成部28は、円筒状の本体を有し、第1弁形成部26の下半部における連通孔70と反対側に設けられた嵌合孔102から挿通されるようにして嵌合されている。第2弁形成部28の側部には、主弁孔32と低圧室84とを連通させる連通孔104が設けられている。第2弁形成部28の軸線方向中央部には、内方に延出したばね受け部106が設けられている。ばね受け部106と副弁体78との間には、副弁体78を閉弁方向に付勢するスプリング108が介装されている。
【0022】
一方、ソレノイド4は、ボディ5の上端開口部を封止するように取り付けられている。ソレノイド4は、ボディ5に連設されたコア120と、コア120の上半部を固定するように収容する有底円筒状のスリーブ122と、スリーブ122内でコア120に軸線方向に対向配置されたプランジャ124と、スリーブ122に外挿嵌合されたボビン126と、ボビン126に巻回された電磁コイル128と、電磁コイル128を外部から覆うようにコア120に組み付けられたケース130とを含んで構成されている。
【0023】
パイロット弁体60は、そのロッド部64がコア120を貫通してプランジャ124に嵌合され、プランジャ124と一体的に動作する。コア120とプランジャ124との間には、プランジャ124を介してパイロット弁体60を開弁方向に付勢するスプリング132(「付勢部材」に該当する)が介装されている。ケース130とボディ5との間には、シール用のOリング134が介装されている。電磁コイル128からは通電用のハーネス138がゴムブッシュ140を介して引き出されている。プランジャ124は、円筒状をなし、その軸線方向に沿って連通路142が形成されている。連通路142は、スリーブ122内の底部側に形成される背圧室144と連通する。
【0024】
このような構成において、ボディ5において、高圧室46と低圧室84とを主弁6を介してつなぐ通路が「第1通路」を構成し、高圧室46と低圧室82とを副弁8を介してつなぐ通路が「第2通路」を構成し、高圧室46、背圧室48および低圧室84をパイロット弁10を介してつなぐ通路が「第3通路」を構成する。高圧室46の圧力P1(「上流側圧力P1」という)は、オリフィス50を通過することで背圧室48にて中間圧力Ppとなる一方、主弁6を経て減圧されて圧力P2(「下流側圧力P2」という)となる。中間圧力Ppは、パイロット弁10の開閉状態によって変化する。また、上流側圧力P1は、副弁8を経て減圧されて圧力P3(「下流側圧力P3」という)となる。
【0025】
次に、本実施形態の制御弁の動作について説明する。
図2は、制御弁の動作状態を表す説明図である。図2は、ソレノイド4がオンにされた差圧制御状態を表している。なお、既に説明した図1は、ソレノイド4がオフにされた状態を表している。
【0026】
図1に示すように、ソレノイド4がオフにされた状態(非通電状態)では、制御弁1において、主弁6が開弁して第1通路を開放する一方、副弁8が閉弁して第2通路を閉じるように動作する。すなわち、ソレノイド力が作用しないため、スプリング132によってパイロット弁体60が開弁方向に付勢され、パイロット弁10が開弁状態となる。このとき、背圧室48の中間圧力Ppと低圧室84の下流側圧力P2とがほぼ等しくなる一方、上流側圧力P1と中間圧力Ppとの間に所定の差圧(P1−Pp)が発生するため、主弁体40が図示のように全開位置に押し上げられる。ただし、主弁体40の上端部がコア120に係止されることによりその主弁体40の上死点が規制されるため、パイロット弁10は開弁状態に維持される。
【0027】
一方、主弁6が全開状態であるため、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が小さく、副弁体78がスプリング108の付勢力により副弁座76に押し付けられ、副弁8は閉弁状態となる。つまり、ソレノイド4がオフの状態では、導入ポート20と導出ポート24とをつなぐ第1通路が開放される一方、導入ポート20と導出ポート22とをつなぐ第2通路は閉じられる。
【0028】
一方、図2に示すように、ソレノイド4がオンにされた状態(通電状態)では、制御弁1において、主弁6が閉弁して第1通路を閉じる一方、副弁8が開弁して第2通路を開放するように動作する。すなわち、ソレノイド力が作用するため、スプリング132の付勢力に抗してパイロット弁体60が閉弁方向に駆動され、パイロット弁10が閉弁状態となる。このとき、背圧室48の中間圧力Ppと高圧室46の上流側圧力P1とがほぼ等しくなる一方、中間圧力Ppとの間に所定の差圧(Pp−P2)が発生するため、主弁体40が図示のように閉弁位置に押し下げられる。このとき、パイロット弁10の閉弁状態も維持される。
【0029】
その結果、高圧室46の上流側圧力P1が上昇し、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が大きくなり、スプリング108の付勢力に抗して副弁体78が開弁方向に駆動され、副弁8が開弁状態となる。つまり、ソレノイド4がオンされると、導入ポート20と導出ポート24とをつなぐ第1通路が閉じられる一方、導入ポート20と導出ポート22とをつなぐ第2通路が開放される。
【0030】
冷房運転時においては、図1に示すようにソレノイド4がオフにされる。このため、圧縮機からの冷媒が導入ポート20を介して導入されると、第1通路を介して導出ポート24から導出され、凝縮器へ導かれる。すなわち、冷凍サイクルの冷媒循環通路として凝縮器を経由する第1循環通路が構成されるようになる。一方、暖房運転時においては、図2に示すようにソレノイド4がオンにされる。このため、圧縮機からの冷媒が導入ポート20を介して導入されると、第2通路を介して導出ポート22から導出され、バイパス通路へ導かれる。すなわち、冷凍サイクルの冷媒循環通路として凝縮器を迂回する第2循環通路が構成されるようになる。
【0031】
次に、制御弁1の製造方法について説明する。
上述のように構成された制御弁1は、第1ボディ12と第2ボディ14とを個別に成形し、後に両者を組み付けるようにして製造される。第2ボディ14は、主弁6および副弁8を組み込んだ弁ユニットとして予め構成され、第1ボディ12に組み付けられる。以下、そのような制御弁の製造方法について説明する。
【0032】
図3〜5は、制御弁の製造工程の概略を表す説明図である。図3は第1ボディ12の製造工程を表し、(A)は中空押出工程後の状態を示し、(B)は孔あけ加工後の状態を示している。各図の上段はボディの正面図を示し、下段はそのA−A矢視断面図を示している。また、図4は第2ボディ14を含む弁ユニットの製造工程を表し、(A)は弁ユニットの組み付け前の状態を示し、(B)は弁ユニットの組み付け後の状態を示している。さらに、図5は制御弁全体の組み付け工程を表している。
【0033】
第1ボディ12の製造工程においては、図示しない中空押出加工装置が用いられる。そして、まず、図3(A)に示すベース部材150を成形する。すなわち、図示しない所定の金型およびマンドレルが配置された中空押出加工装置を用いて金属ビレットを押し出すことにより、第1ボディ12の外形を成形する。このとき、第1ボディ12においてその押出し方向に延びる嵌合孔16の下孔152を、その嵌合孔16よりも所定量小さな断面にて成形する。この押出工程を経て得られた長尺状の部材を、その長手方向に直交する方向に切断して図示のベース部材150を得る(押出工程)。
【0034】
その後、下孔152の中心軸が回転中心となるようにして回転切削ツールの工具刃先をベース部材150における下孔152に挿入し、その刃先にて下孔152の内周面を切削することにより嵌合孔16を成形する。また、ベース部材150の側面の所定位置にも所定形状の孔を切削加工することにより導入ポート20,導出ポート22および導出ポート24を成形する(切削工程)。このようにして図3(B)に示す第1ボディ12が得られる。
【0035】
その一方で、図4(A)に示すように、第1弁形成部26および第2弁形成部28をそれぞれ成形する。これらの弁形成部の成形には、図示しない射出成形装置が用いられる。すなわち、図示しない所定の金型が配置された射出成形装置を用いて樹脂材を押し出すことにより、第1弁形成部26および第2弁形成部28のそれぞれを成形する。このように成形された第2弁形成部28にスプリング108、副弁体78およびダイヤフラム80を組み付け、それをさらに第1弁形成部26の嵌合孔102に挿通嵌合することにより、図4(B)に示す弁ユニット160が構成される。なお、第1弁形成部26の外周面にはOリング94が嵌着される。
【0036】
そして、図5に示すように、封止部材100および弁ユニット160を嵌合孔16の一端側から挿入するようにして第1ボディ12に組み付け、封止部材100を嵌合孔16の他端側から挿入するようにして第1ボディ12に組み付け組み付ける。一方、ソレノイド4にはパイロット弁体60、主弁体40およびダイヤフラム42を組み付けておく。その後、第1ボディ12との間にOリング134を介装させるようにしてソレノイド4を組み付け、導出ポート22にシール部材92を挿入して組み付ける。このようにして制御弁1の組み付けが完了する。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態においては、樹脂製の第2ボディ14に主弁6の少なくとも一部と副弁8を組み付けてユニット化した弁ユニット160が構成され、その弁ユニット160を第1ボディ12に組み込んで制御弁1を構成するようにしている。このため、外部配管等との接続構造に制約がある第1ボディ12とは別に、弁ユニット160側で独立して主弁6や副弁8の形状、寸法、位置などを比較的自由に設定することができる。具体的には図1に示したように、副弁体78およびその作動機構を導出ポート22や24よりも大きく構成できるなど、各弁の設計自由度が向上する。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0039】
上記実施形態においては、主弁体40およびダイヤフラム42を予めソレノイド4側に組み付け、これを第1ボディ12に組み付けるようにしたが、主弁体40およびダイヤフラム42を予めソレノイド4ではなく第2ボディ14に組み付け、それにソレノイド4を組み付けるようにしてもよい。あるいは、ソレノイド4、主弁体40、ダイヤフラム42および第2ボディ14を予め組み付けた電磁弁ユニットを、第1ボディ12に組み付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 制御弁、 2 弁本体、 4 ソレノイド、 5 ボディ、 6 主弁、 8 副弁、 10 パイロット弁、 12 第1ボディ、 14 第2ボディ、 16 嵌合孔、 20 導入ポート、 22,24 導出ポート、 26 第1弁形成部、 28 第2弁形成部、 32 主弁孔、 34 主弁座、 40 主弁体、 42 ダイヤフラム、 46 高圧室、 48 背圧室、 50 オリフィス、 54 パイロット弁座、 56 パイロット弁孔、 60 パイロット弁体、 74 副弁孔、 76 副弁座、 78 副弁体、 80 ダイヤフラム、 82,84 低圧室、 92 シール部材、 102 嵌合孔、 150 ベース部材、 152 下孔、 160 弁ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側通路と第1下流側通路と第2下流側通路との間に設けられ、前記上流側通路から各下流側通路に流れる冷媒流量の割合を制御可能なパイロット作動式の制御弁において、
前記上流側通路につながる導入ポートと、前記第1下流側通路につながる第1導出ポートと、前記第2下流側通路につながる第2導出ポートとを有し、前記導入ポートと前記第1導出ポートとをつなぐ第1通路と、前記導入ポートと前記第2導出ポートとをつなぐ第2通路とが形成されるボディと、
前記第1通路に設けられた主弁孔に接離することにより前記第1通路を開閉する主弁体を有し、その主弁体が前記第1通路と背圧室とを区画する主弁と、
前記第2通路に設けられた副弁孔に接離することにより前記第2通路を開閉する副弁体を有する副弁と、
前記背圧室と前記第1下流側通路とを連通するパイロット弁孔を有し、前記上流側通路と前記第1下流側通路とを前記背圧室を介してつなぐ第3通路を、前記パイロット弁孔に接離することにより開閉するパイロット弁体を有する電磁駆動のパイロット弁と、
を備え、
前記ボディが、各ポートが形成された金属製の第1ボディに、各ポートへの連通孔が設けられた樹脂製の第2ボディを内挿嵌合して構成され、
前記主弁の少なくとも一部と前記副弁を前記第2ボディに組み付けて構成された弁ユニットを、前記第1ボディに設けられた嵌合孔の一端から挿入するように組み付けて構成されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記第1ボディが、中空押出加工により得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記第2ボディは、前記主弁を形成する部分を有する主弁形成部と、前記副弁を形成する部分を有する副弁形成部とが個別に形成され、前記主弁形成部と前記副弁形成部とを嵌合して得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記第2ボディは、前記副弁形成部を、前記主弁形成部の側部に形成された嵌合孔から挿入するように組み付けて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−214596(P2011−214596A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80564(P2010−80564)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】