説明

制御装置、制御プログラム、ミシン、及び、ミシン制御プログラム

【課題】複数台のミシンに対応する縫製模様データの内容を同時に表示するのみならず、これら表示した縫製模様データを移動又は複写するように変更する。
【解決手段】複数台のミシンM1,M2と通信可能に接続する制御装置であって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示装置52を備えた制御装置1は、複数台のミシンM1,M2毎に割当てられたキューを有し、キューに格納された縫製模様データをミシンM1,M2毎に複数並べて表示装置52に表示する表示制御手段と、表示装置52に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定手段と、指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更手段と、データ変更手段により変更された各キュー内の縫製模様データを、各ミシンM1,M2に送信するデータ送信手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置、当該制御装置のコンピュータに使用される制御プログラム、少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続するミシン、及び、当該ミシンのコンピュータに使用されるミシン制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置を備え、当該制御装置から複数台のミシンに刺繍データを配信する技術が公知である。この種の技術として、例えば特許文献1には、1台のコンピュータから複数台のミシンに刺繍データを与え、それぞれのミシンで、その与えられた刺繍データに対応する縫製パターンを縫製するように構成されたシステムが開示されている。
【0003】
この特許文献1のシステムでは、複数台のミシンで縫製する複数個の縫製パターンを、1台のコンピュータのディスプレイ上に同時に表示するように構成されている。従って、ユーザは、複数台のミシンがそれぞれ縫製する縫製パターンの内容を同時に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−76670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数台のミシンで縫製を行う構成においては、例えば、それぞれのミシンにおける縫製作業の進捗状況などに応じて、それぞれのミシンで縫製を行う予定の刺繍データを変更したい場合がある。つまり、一のミシンで縫製を行う予定の刺繍データを、他のミシンで縫製を行うように移動又は複写したい場合である。しかしながら、特許文献1の技術では、それぞれのミシンに対応するデータの内容を確認できたとしても、それら刺繍データを変更できるようには構成されておらず、更なる改良が求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数台のミシンに対応する縫製模様データの内容を同時に表示するのみならず、これら表示した縫製模様データを移動又は複写して変更することができる制御装置、当該制御装置のコンピュータに使用される制御プログラム、当該制御装置と同様の効果を奏するミシン、及び、当該ミシンのコンピュータに使用されるミシン制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置であって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えた制御装置において、前記複数台のミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御手段と、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定手段と、前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更手段と、前記データ変更手段により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記制御装置は、ポインティングデバイスを備え、前記ポインティングデバイスのユーザ操作に応答して、前記指定手段は、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから1又は複数の縫製模様データを指定し、前記データ変更手段は、前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを他のミシンに対応するキューに移動又は複写することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の制御プログラムは、複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置であって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えた制御装置のコンピュータに、前記複数台のミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御処理と、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定処理と、前記指定処理で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更処理と、前記データ変更処理により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信処理と、を実行させることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続するミシンであって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えたミシンにおいて、自身を含む複数台の前記ミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御手段と、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定手段と、前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更手段と、前記データ変更手段により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記ミシンは、ポインティングデバイスを備え、前記ポインティングデバイスのユーザ操作に応答して、前記指定手段は、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから1又は複数の縫製模様データを指定し、前記データ変更手段は、前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを他のミシンに対応するキューに移動又は複写することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載のミシン制御プログラムは、少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続するミシンであって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えたミシンのコンピュータに、自身を含む複数台の前記ミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御処理と、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定処理と、前記指定処理で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更処理と、前記データ変更処理により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信処理と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の制御装置によれば、表示制御手段は、複数台のミシン毎に割当てられたキューに格納された縫製模様データを、ミシン毎に複数並べて表示手段に表示する。これにより、ユーザは、複数台のミシンにそれぞれ対応するキューの内容(キューに格納されている縫製模様データ)を、同時に把握することができる。
【0014】
さらに、指定手段で指定された一のミシンに対応するキュー内の1又は複数の縫製模様データを、データ変更手段によって他のミシンに対応するキューに移動又は複写することができる。そして、このようにデータ変更手段によって変更された各キュー内の縫製模様データは、データ送信手段によって各ミシンに送信され、各ミシンは、変更後のキュー内の縫製模様データに基づいて縫製を実行する。これにより、一のミシンに対応するキュー内に一旦格納された縫製模様データを、他のミシンに対応するキュー内に移動又は複写して縫製を実行することができる。従って、複数台のミシンにより行う縫製作業の進捗状況などに応じて、一のミシンから他のミシンに縫製模様データを移動又は複写できるので、全体の作業効率を向上させることができる。
【0015】
請求項2記載の制御装置によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、ユーザは、ポインティングデバイスを操作することによって、縫製模様データの移動又は複写を容易に行うことができる。
【0016】
請求項3記載の制御プログラムによれば、複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置において使用することで、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0017】
請求項4記載のミシンによれば、当該ミシンを少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続することで、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。即ち、請求項4記載のミシンは、縫製模様データに基づいて縫製を実行するミシンとしての機能に加え、本発明の制御装置としての機能を備えている。
【0018】
請求項5記載のミシンによれば、請求項4記載の発明の効果に加え、ユーザは、ポインティングデバイスを操作することによって、縫製模様データの移動又は複写を容易に行うことができる。
【0019】
請求項6記載のミシン制御プログラムによれば、少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続するミシンにおいて使用することで、請求項4記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、複数台のミシン及び当該ミシンに通信可能に接続された制御装置を示す図
【図2】電気的構成を示すブロック図
【図3】データ選択/入力画面を示す図
【図4】データ転送画面を示す図
【図5】キューを表示する処理の制御内容を示すフローチャート
【図6】データ変更処理の制御内容を示すフローチャート
【図7】データ変更処理の制御内容を説明するための図4相当図(その1)
【図8】図4相当図(その2)
【図9】図4相当図(その3)
【図10】図4相当図(その4)
【図11】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図12】図2相当図
【図13】本発明の第3の実施形態を示すものであり、データ作成画面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図10を参照しながら説明する。図1は、制御装置1と複数台(この場合、2台)の多針式刺繍ミシンM(以下、多針ミシンM1及び多針ミシンM2と称する)とからなる刺繍処理システムSを概略的に示す図である。
【0022】
図1に示すように、多針ミシンM1及び多針ミシンM2は、基本的に同様に構成されているので、以下、多針ミシンM1の構成要素の符号に「A」を、多針ミシンM2の構成要素の符号に「B」をそれぞれ付して一括して説明する。
【0023】
多針ミシンM1,M2は、このミシン全体を支持する左右1対の脚部1A,1Bと、その脚部1A,1Bの後端部から立設された脚柱部2A,2Bと、その脚柱部2A,2Bの上部から前方に延びるアーム部3A,3Bと、脚柱部2A,2Bの下端部から前方に延びるシリンダベッド4A,4Bと、アーム部3A,3Bの前端部に装着された針棒ケース5A,5Bとを備える。また、多針ミシンM1,M2は、当該多針ミシンM1,M2の制御全般を司る制御ユニット6A,6B(図2参照)や、操作パネル7A,7Bなどを具備して構成されている。
【0024】
脚部1A,1Bの上側には、左右方向向きのキャリッジ8A,8Bが配置されており、このキャリッジ8A,8Bの内部には、当該キャリッジ8A,8Bの前側に設けられた枠取付台(図示せず)をX方向(左右方向)に駆動させるためのX方向駆動機構9xA,9xB(図2参照)が設けられている。左右の脚部1A,1B内には、キャリッジ8A,8BをY方向(前後方向)に駆動させるY方向駆動機構9yA,9yB(図2参照)が設けられている。刺繍縫製に供する加工布(図示せず)は、例えば矩形枠状の刺繍枠(図示せず)に保持され、この刺繍枠が、枠取付台に取付けられる。刺繍枠は、X方向駆動機構9xA,9xBの駆動モータ(X軸モータ30A,30B、図2参照)の駆動により、枠取付台と共にX方向に移動する。また、刺繍枠は、Y方向駆動機構9yA,9yBの駆動モータ(Y軸モータ31A,31B、図2参照)の駆動により、キャリッジ8A,8Bと同期してY方向に移動する。これにより、刺繍枠に保持された加工布が布送りされる。
【0025】
針棒ケース5A,5Bには、左右に配列された上下方向に延びる6本の針棒10A,10B(図1では1本のみ図示)が上下動可能に支持されており、各針棒10A,10Bの下端部には、縫針11A,11Bがそれぞれ装着されている。針棒ケース5A,5Bには、各針棒10A,10Bに対応する6つの天秤12A,12Bが上下動可能に装着されている。
【0026】
針棒ケース5A,5Bの上端部には、傾斜状の糸調子台13A,13Bが固定されており、この糸調子台13A,13Bには、糸張力を調整するための6つの糸調子器14A,14Bが配設されている。この糸調子台13A,13Bの後方には、アーム部3A,3B上面の背面側に位置して、左右1対の糸駒台15A,15Bと、糸絡みを防ぐための糸案内機構16A,16Bとが設けられている。詳しい図示は省略するが、糸駒台15A,15B及び糸案内機構16A,16Bは、何れも前後方向に平行に延びるように畳まれた収納位置(図示せず)と、背面側が拡開する使用位置(図1参照)とに切り替え可能に構成されている。この糸駒台15A,15Bには、糸駒17A,17Bが嵌入される3個の糸立棒17がそれぞれ設けられており、左右1対の糸駒台15A,15Bで、縫針11A,11Bの数と同じ6個の糸駒17A,17Bを載置することができる。この糸駒台15A,15Bにおいて、各糸駒17A,17Bから延びる上糸18A,18Bは、上記した糸案内機構16A,16B,糸調子器14A,14B,天秤12A,12Bなどをそれぞれ経由して、各縫針11A,11Bの目孔(図示せず)にそれぞれ供給される。なお、シリンダベッド4A,4Bの前端部には、上糸18A,18Bと下糸(図示せず)とを切断するための切断機構19A,19B(図2参照)が設けられている。
【0027】
アーム部3A,3Bの内部には、糸替えに際して針棒ケース5A,5BをX方向へ移動させる針棒選択機構20A,20B(図2参照)が設けられており、6組の針棒10A,10B及び天秤12A,12Bのうち、1組の針棒10A,10B及び天秤12A,12Bだけが択一的に駆動位置に移動される。この針棒10A,10B及び天秤12A,12Bは、脚柱部2A,2Bに設けられたミシンモータ21A,21B(図2参照)の駆動により、針棒駆動機構22A,22B(図2参照)を介して駆動位置で同期して上下動される。この針棒10A,10B及び天秤12A,12Bとシリンダベッド4A,4Bの前端部に設けられた回転釜(図示せず)との協働によって、刺繍枠に保持された加工布に刺繍縫目が形成される。
【0028】
また、アーム部3A,3Bの右側面には、横長な液晶ディスプレイ7aを備えた操作パネル7A,7Bが折り畳み可能に設けられている。この操作パネル7A,7Bの前面下部には、起動停止スイッチ7bなどの複数のスイッチが設けられ、側面部には、メモリカード(図示せず)が挿入されるカードコネクタ7c、USBメモリ(図示せず)が着脱可能に装着されるUSBコネクタ7dが設けられている。
【0029】
液晶ディスプレイ7aには、種々の刺繍模様、針棒10A,10Bに設定されている上糸18A,18Bの糸情報、糸調子や縫製速度などの縫製条件、縫製作業に必要な各種の機能を実行させる機能名、各種の縫製関連情報などが表示される。また、液晶ディスプレイ7aの前面には、透明電極からなる複数のタッチキーを有するタッチパネル7eが設けられており、このタッチキーがタッチ操作されることで、各種の機能の指示、各種の縫製パラメータの数値設定、後述する糸替えの設定などが可能となっている。
【0030】
続いて、多針ミシンM1,M2の制御系の構成について、図2のブロック図を参照しながら説明する。制御ユニット6A,6Bは、マイクロコンピュータを主体に構成されており、内部にCPU24A,24B、ROM25A,25B、RAM26A,26B、EEPROM27A,27B、入出力インターフェース28A,28B(I/O)、それらを結ぶバス29A,29Bなどを有する。また、制御ユニット6A,6Bは、通信ケーブル42A,42Bを介して制御装置1と通信可能に接続するための通信接続部43A,43Bを備えている。
【0031】
入出力インターフェース28A,28Bには、ミシンモータ21A,21B、針棒選択機構20A,20B、切断機構19A,19B、X軸モータ30A,30B、Y軸モータ31A,31Bをそれぞれ駆動する駆動回路32A,32B、駆動回路33A,33B、駆動回路34A,34B、駆動回路35A,35B、駆動回路36A,36Bが接続されている。また、入出力インターフェース28A,28Bには、操作パネル7A,7Bにおける液晶ディスプレイ7a、起動停止スイッチ7b、カードコネクタ7c、USBコネクタ7d、タッチパネル7eが接続されている。
【0032】
上記針棒10A,10B、縫針11A,11B、回転釜、ミシンモータ21A,21B、針棒駆動機構22A,22B、針棒選択機構20A,20B、切断機構19A,19B、駆動回路32A,32B、駆動回路33A,33B、駆動回路34A,34Bなどは、縫製手段40A,40Bに相当する。また、加工布を保持する刺繍枠を移送するためのY方向駆動機構9yA,9yB、X方向駆動機構9xA,9xB、X軸モータ30A,30B、Y軸モータ31A,31B、駆動回路35A,35B、駆動回路36A,36Bなどは、移送手段41A,41Bに相当する。制御ユニット6A,6Bは、縫製制御プログラムや、後述するようにして制御装置1から転送される刺繍模様データ(縫製模様データに相当)などに従って、上記した各種のアクチュエータを駆動制御することで、縫製手段40A,40Bと移送手段41A,41Bとの協働による加工布に対する一連の縫製動作を実行する。
【0033】
ROM25A,25Bには、縫製制御プログラム、刺繍に用いられる複数種の糸に関する全ての情報であって糸色データを含む全糸情報テーブル、糸駒17A,17Bから供給される上糸18A,18Bの糸色データと針棒10A,10Bとをユーザが関連付けるための糸指定制御プログラム、操作パネル7A,7Bの液晶ディスプレイ7a,7aを制御する表示制御プログラムなどが記憶されている。
【0034】
一方、制御装置1は、図1に示すように、例えば汎用のパーソナルコンピュータからなり、多針刺繍ミシンM1,M2とは独立した装置として構成されている。この制御装置1は、コンピュータ本体51に、表示装置52(表示手段に相当)、マウス53、キーボード54などを接続して構成されている。表示装置52は、例えばカラーCRTディスプレイからなるものであり、少なくとも縫製に関わる情報(刺繍模様データなど)を表示する機能を担う。マウス53は、ユーザによって操作されるポインティングデバイスであり、周知のようにボタン53aなどを有している。
【0035】
コンピュータ本体51は、詳しく図示はしないが、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース、例えばハードディスクドライブからなる内部記憶装置、例えばCDやDVDなどの記録媒体(光ディスク)に対するデータの読込み及び書込みを行う光ディスクドライブ装置55などを備えている。
【0036】
また、コンピュータ本体51は、通信ケーブル42A,42Bを介して多針ミシンM1,M2と通信可能に接続するための通信接続部(図示せず)を備えている。制御装置1は、この通信接続部を介して多針ミシンM1,M2が接続されていることを検知すると、これら多針ミシンM1,M2に対応するフォルダF(M1),F(M2)をそれぞれ作成するようになっている。
【0037】
この制御装置1には、刺繍模様データを管理するためのデータ管理ソフトウェア、刺繍模様データを多針ミシンM1,M2に転送するためのデータ転送ソフトウェア、刺繍模様データを作成するためのデータ作成ソフトウェア、多針ミシンM1,M2との通信を行うための通信ソフトウェアなどの各種のソフトウェア(制御プログラム)が格納されている。ここで、これらソフトウェアのうちデータ管理ソフトウェア及びデータ転送ソフトウェアについて、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0038】
まず、データ管理ソフトウェアについて図3を参照しながら説明する。
データ管理ソフトウェアは、図3に示すデータ選択/入力画面101を有している。このデータ選択/入力画面101には、フォルダ表示部102、コンボボックス103、刺繍模様データ表示部104、入力ボタン105などが設けられている。
【0039】
制御装置1は、刺繍模様データを格納した複数のフォルダを階層構造で管理しており、フォルダ表示部102には、各フォルダが階層構造に基づいてツリー状に表示される。ユーザは、マウス53を用いて、フォルダ表示部102に表示された各フォルダから任意のフォルダを選択することができる。
【0040】
コンボボックス103は、制御装置1に通信可能に接続された多針ミシンM1,M2のうち刺繍模様データを入力するミシンを選択するためのものである。この場合、コンボボックス103には、選択可能なミシンとして多針ミシンM1と多針ミシンM2が一覧表示される。ユーザは、マウス53を用いて、これら多針ミシンM1,M2のうち何れか1つのミシンを選択できるようになっている。
【0041】
刺繍模様データ表示部104には、フォルダ表示部102にて選択されたフォルダに格納されている刺繍模様データが表示される。ユーザは、マウス53を用いて、刺繍模様データ表示部104に表示された刺繍模様データから1又は複数の刺繍模様データを選択することができる。なお、制御装置1は、コンボボックス103にて選択された多針ミシンM1,M2に対応するフォルダF(M1),F(M2)に、それぞれテキストファイル形式の順序ファイルを作成する。そして、この順序ファイルに、各刺繍模様データが選択された順を、各刺繍模様データに対応付けて一行毎に記載するようになっている。
【0042】
入力ボタン105は、刺繍模様データ表示部104にて選択された1又は複数の刺繍模様データ、及び、各刺繍模様データの選択順を記載した順序ファイルを、コンボボックス103にて選択された多針ミシンM1,M2に対応するフォルダF(M1),F(M2)に入力するためのボタンである。
【0043】
次に、データ転送ソフトウェアについて図4を参照しながら説明する。
データ転送ソフトウェアは、図4に示すデータ転送画面201を有している。このデータ転送画面201には、制御装置1に通信可能に接続された多針ミシンM1,M2毎に、キュー表示部202(M1),202(M2)、転送済データ表示部203(M1),203(M2)、順序入れ替えボタン204(M1),204(M2)、削除ボタン205(M1),205(M2)が設けられている。
【0044】
キュー表示部202(M1),202(M2)には、それぞれ多針ミシンM1,M2に対応するフォルダF(M1),F(M2)に入力された刺繍模様データが、当該フォルダF(M1),F(M2)内の順序ファイルの記載順に従ってキュー(待ち行列)として表示される。この場合、キュー表示部202(M1)には多針ミシンM1に対応するキューQ(M1)が表示され、キュー表示部202(M2)には多針ミシンM2に対応するキューQ(M2)が表示されている。このように、制御装置1は、複数台の多針ミシンM1,M2毎に割当てられたキューQ(M1),Q(M2)を有し、これらキューQ(M1),Q(M2)に格納された刺繍模様データを多針ミシンM1,M2毎に複数並べて表示装置52に表示する(表示制御手段、表示制御処理に相当)。なお、この場合、図4における左側がキューQ(M1),Q(M2)の先頭側であり、右側が後尾側である。
【0045】
制御装置1は、通信可能に接続された多針ミシンM1,M2の起動停止スイッチ7bが操作され、これら多針ミシンM1,M2が起動されると、その起動された多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)内の刺繍模様データを当該多針ミシンM1,M2に順次転送するようになっている。転送済データ表示部203(M1),203(M2)には、多針ミシンM1,M2に転送された刺繍模様データ、つまり、多針ミシンM1,M2によって縫製が実行される刺繍模様データが表示される。
【0046】
順序入れ替えボタン204(M1),204(M2)は、同一キュー内にて刺繍模様データの順序を入れ替えるためのボタンである。順序入れ替えボタン204(M1),204(M2)には、キュー表示部202(M1),202(M2)にてユーザが選択した刺繍模様データをキューQ(M1),Q(M2)の先頭に移動させるためのボタン204a、選択した刺繍模様データを1つだけ前に移動させるためのボタン204b、選択した刺繍模様データを1つだけ後に移動させるためのボタン204c、選択した刺繍模様データをキューQ(M1),Q(M2)の最後尾に移動させるためのボタン204dが設けられている。
【0047】
削除ボタン205(M1),205(M2)は、キュー表示部202(M1),202(M2)にてユーザが選択した刺繍模様データを削除するためのボタンである。
【0048】
次に、上記したキュー表示部202(M1),202(M2)にキューQ(M1),Q(M2)を表示する処理における制御装置1の制御内容について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
まず、制御装置1は、多針ミシンM1に対応するフォルダF(M1)に格納されている順序ファイルを開き、当該順序ファイルの先頭行に対応する刺繍模様データを読み出す(ステップS1)。次に、制御装置1は、フォルダF(M1)内のデータを最後まで読み出したか否か、つまり、表示していな刺繍模様データがフォルダF(M1)内に存在するか否かを判断する(ステップS2)。最後まで読み出していない場合(ステップS2にてNO)、制御装置1は、ステップS3に移行して、読み出した刺繍模様データを、データ転送画面201におけるキューQ(M1)に対応するエリア、つまり、キュー表示部202(M1)に表示する。次に、制御装置1は、順序ファイルの次の行に対応する刺繍模様データを読み出し(ステップS4)、ステップS2に移行する。
【0050】
制御装置1は、ステップS2において、フォルダF(M1)内のデータを最後まで読み出していないと判断した場合は、読み出した刺繍模様データの表示(ステップS3)と、次の行に対応する刺繍模様データの読み出し(ステップS4)とを繰り返す。これにより、フォルダF(M1)内の刺繍模様データが、当該フォルダF(M1)内の順序ファイルの記載順に従ってキュー表示部202(M1)に順次表示される。
【0051】
そして、制御装置1は、ステップS2において、フォルダF(M1)内のデータを最後まで読み出したと判断すると(ステップS2にてYES)、次に、多針ミシンM2に対応するキューQ(M2)の表示を行う。
【0052】
即ち、制御装置1は、多針ミシンM2に対応するフォルダF(M2)に格納されている順序ファイルを開き、当該順序ファイルの先頭行に対応する刺繍模様データを読み出す(ステップS5)。次に、制御装置1は、フォルダF(M2)内のデータを最後まで読み出したか否か、つまり、表示していな刺繍模様データがフォルダF(M2)内に存在するか否かを判断する(ステップS6)。最後まで読み出していない場合(ステップS6にてNO)、制御装置1は、ステップS7に移行して、読み出した刺繍模様データを、データ転送画面201におけるキューQ(M2)に対応するエリア、つまり、キュー表示部202(M2)に表示する。次に、制御装置1は、順序ファイルの次の行に対応する刺繍模様データを読み出し(ステップS8)、ステップS6に移行する。
【0053】
制御装置1は、ステップS6において、フォルダF(M2)内のデータを最後まで読み出していないと判断した場合は、読み出した刺繍模様データの表示(ステップS7)と、次の行に対応する刺繍模様データの読み出し(ステップS8)とを繰り返す。これにより、フォルダF(M2)内の刺繍模様データが、当該フォルダF(M2)内の順序ファイルの記載順に従ってキュー表示部202(M2)に順次表示される。そして、制御装置1は、ステップS6において、フォルダF(M2)内のデータを最後まで読み出したと判断すると(ステップS6にてYES)、この制御を終了する。なお、制御装置1は、キューQ(M1),Q(M2)に対応するフォルダF(M1),F(M2)と、画面上におけるキュー表示部202(M1),202(M2)のY方向位置(上下方向位置)とを対応付けて記憶するようになっている。また、制御装置1は、フォルダF(M1),F(M2)に格納されている刺繍模様データと、画面上における当該刺繍模様データのX方向位置(左右方向位置)とを対応付けて記憶するようになっている。
【0054】
このように構成された制御装置1によれば、ユーザは、データ管理ソフトウェアのデータ選択/入力画面101において、フォルダ表示部102に表示されているフォルダから任意のフォルダをマウス53によって選択し、これに応じて刺繍模様データ表示部104に表示された刺繍模様データから1又は複数の任意の刺繍模様データをマウス53によって選択する。そして、コンボボックス103にてマウス53によって任意の多針ミシンM1,M2を選択し、マウス53によって入力ボタン105を操作する。これにより、ユーザは、選択した刺繍模様データを、選択した多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)に入力することができる。そして、ユーザは、データ転送ソフトウェアのデータ転送画面201において、キュー表示部202(M1),202(M2)の表示により、キューQ(M1),Q(M2)の内容(キューQ(M1),Q(M2)に格納されている刺繍模様データ)を同時に把握することができる。また、ユーザは、転送済データ表示部203(M1),203(M2)の表示により、多針ミシンM1,M2に転送され縫製が行われている刺繍模様データを同時に把握することができる。
【0055】
本実施形態の制御装置1は、さらにデータ変更処理を実行可能に構成されている。このデータ変更処理は、ユーザによるマウス53のドラッグアンドドロップ操作に応じて、表示装置52に表示された一の多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)から1又は複数の刺繍模様データを指定し、その指定した1又は複数の刺繍模様データを、他の多針ミシンM2,M1に対応するキューQ(M2),Q(M1)に移動する処理である。次に、このデータ変更処理における制御装置1の制御内容について、図6に示すフローチャート及び図7〜図10を参照しながら説明する。
【0056】
制御装置1は、データ転送画面201(図4参照)のキュー表示部202(M1),202(M2)にキューQ(M1),Q(M2)を表示すると、マウス53のボタン53aが押圧操作されたか否かを判断する(ステップS11)。そして、マウス53が押圧操作されたと判断すると(ステップS11にてYES)、制御装置1は、ステップS12に移行して、マウス53が押圧操作された位置(Y座標位置)に基づいて、指定された刺繍模様データが格納されているキューQ(M1),Q(M2)に対応するフォルダF(M1),F(M2)、つまり、移動基のフォルダF(M1),F(M2)を特定する。また、マウス53が操作された位置(X座標位置)に基づいて、そのフォルダF(M1),F(M2)に格納されている刺繍模様データのうち何れの刺繍模様データが指定されたかを特定する(指定手段、指定処理に相当)。
【0057】
図7に示すように、制御装置1は、特定した刺繍模様データを、例えば実線枠W1で強調表示する。この場合、移動基のフォルダF(M1),F(M2)として多針ミシンM1(一のミシン)に対応するフォルダF(M1)が指定され、このフォルダF(M1)内の刺繍模様データのうち刺繍模様データaが指定されている。なお、ここでは、1つの刺繍模様データaを指定する場合を示したが、複数の刺繍模様データを指定するようにしてもよい。
【0058】
次に、制御装置1は、ボタン53aを押圧されたままの状態で、マウス53が移動されたか否かを判断する(ステップS13)。この場合、制御装置1は、マウス53から入力される当該マウス53の位置(X座標位置及びY座標位置)が、ボタン53aが押圧操作された位置から変動したか否かに基づいて、マウス53が移動されたか否かを判断する。
【0059】
マウス53が移動されたと判断すると(ステップS13にてYES)、制御装置1は、ステップS14に移行して、図8に示すように、その移動位置に破線枠W2を描画する。この破線枠W2は、選択された刺繍模様データaがマウス53の移動に伴って移動していることを示すものである。制御装置1は、マウス53が移動している間は(ステップS13にてYES)、この破線枠W2の描画を繰り返す。これにより、データ転送画面201には、マウス53の移動に伴って破線枠W2が移動するように表示される。
【0060】
制御装置1は、マウス53が移動されていないと判断すると(ステップS13にてNO)、当該マウス53のボタン53aが離されたか否かを判断する(ステップS15)。制御装置1は、ボタン53aが離されていないと判断すると(ステップS15にてNO)、ステップS13に移行する。一方、制御装置1は、ボタン53aが離されたと判断すると(ステップS15にてYES)、ステップS16に移行して、マウス53のボタン53aが離された位置(Y座標位置)に基づいて、選択された刺繍模様データaの移動先となるキューQ(M1),Q(M2)に対応するフォルダF(M1),F(M2)を特定する。また、マウス53のボタン53aが離された位置(X座標位置)に基づいて、その移動先のキューQ(M1),Q(M2)において刺繍模様データaを挿入する位置を特定する。なお、図9に示すように、制御装置1は、特定した挿入位置をカーソルCによって強調表示する。この場合、移動先のフォルダF(M1),F(M2)として多針ミシンM2(他のミシン)に対応するフォルダF(M2)が指定され、このフォルダF(M2)内の刺繍模様データのうち刺繍模様データbの表示位置と刺繍模様データcの表示位置との間の位置が刺繍模様データaの挿入位置として指定されている。
【0061】
次に、制御装置1は、移動基のフォルダF(M1)から移動先のフォルダF(M2)に、選択した刺繍模様データaを移動させる(ステップS17)。また、制御装置1は、フォルダF(M1),F(M2)内の順序ファイルの内容をそれぞれ書き直すとともに、表示されるキューQ(M1),Q(M2)の内容を書き直す(ステップS18)。
【0062】
即ち、制御装置1は、フォルダF(M1)内の順序ファイルでは、刺繍模様データaの順番を削除するとともに、刺繍模様データaの後続のデータの順番を繰り上げるように書き直す。また、制御装置1は、フォルダF(M2)内の順序ファイルでは、刺繍模様データbの順番と刺繍模様データcの順番との間に刺繍模様データaの順番を挿入するとともに、刺繍模様データc以降のデータの順番を繰り下げるように書き直す。そして、制御装置1は、データ移動後のフォルダF(M1),F(M2)の内容及び順序ファイルの内容に基づき、キュー表示部202(M1),202(M2)に表示されるキューQ(M1),Q(M2)の内容を書き直す。これにより、制御装置1は、図10に示すように、キュー表示部202(M1)に表示されるキューQ(M1)から刺繍模様データaを削除し、キュー表示部202(M2)に表示されるキューQ(M2)の刺繍模様データbと刺繍模様データcとの間に刺繍模様データaを挿入する。
【0063】
このようなデータ変更処理により変更された各キューQ(M1),Q(M2)内の刺繍模様データは、データ変更処理により変更されていない各キューQ(M1),Q(M2)内の刺繍模様データと同様に、多針ミシンM1,M2の起動に応じて、これら多針ミシンM1,M2に順次転送される(データ送信手段、データ送信処理に相当)。
【0064】
また、本実施形態の制御装置1では、上記したステップS17,S18において、移動した刺繍模様データを削除するのではなく、当該刺繍模様データを移動基のフォルダF(M1),F(M2)に残すとともに、当該刺繍模様データの順番を順序ファイルから削除しないようにすることで、刺繍模様データの移動のみならず複写を行うことも可能である。
【0065】
以上に説明したように本実施形態によれば、制御装置1は、複数台の多針ミシンM1,M2毎に割当てられたキューQ(M1),Q(M2)に格納された刺繍模様データを、多針ミシンM1,M2毎に複数並べて表示装置52に表示する。これにより、ユーザは、複数台の多針ミシンM1,M2にそれぞれ対応するキューQ(M1),Q(M2)の内容(各キューQ(M1),Q(M2)に格納されている刺繍模様データ)を、同時に把握することができる。
【0066】
さらに、制御装置1は、データ変更処理によって、指定された一のミシン(この場合、多針ミシンM1)に対応するキューQ(M1)内の1又は複数の刺繍模様データを、他のミシン(この場合、多針ミシンM2)に対応するキューQ(M2)に移動又は複写することができる。そして、制御装置1は、このようにデータ変更処理によって変更された各キューQ(M1),Q(M2)内の刺繍模様データを各多針ミシンM1,M2に送信し、各多針ミシンM1,M2は、変更後のキューQ(M1),Q(M2)内の刺繍模様データに基づいて縫製を実行する。これにより、一のミシン(多針ミシンM1)に対応するキューQ(M1)内に一旦格納された刺繍模様データを、他のミシン(多針ミシンM2)に対応するキューQ(M2)内に移動又は複写して縫製を実行することができる。
【0067】
従って、例えば、制御装置1に接続されている複数台の多針ミシンM1,M2のうち何れかで、上糸又は下糸の糸切れの発生や、予期しない不具合等の発生により、縫製作業を一時停止又は中止しなければならない場合であっても、そのミシンに対応するキュー内の刺繍模様データを、他のミシンに対応するキューに移動して縫製を行うことができる。また、一のミシンに対応するキュー内に多量の刺繍模様データが格納された場合であっても、その過剰な刺繍模様データをキュー内の刺繍模様データが少ないミシンに移動することで、刺繍処理システムS全体としての縫製処理を分散することができる。また、一のミシンに対応するキュー内に一旦格納した刺繍模様データであっても、糸駒の交換を少なくできる他のミシンに刺繍模様データを移動して縫製を実行することができる。このように、本実施形態によれば、複数台の多針ミシンM1,M2により行う縫製の全体の作業効率を向上させることができる。
【0068】
また、制御装置1は、マウス53(ポインティングデバイス)を備え、当該マウス53のユーザ操作に応答して、表示装置52に表示された一の多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)から1又は複数の刺繍模様データを指定し、指定された1又は複数の刺繍模様データを他の多針ミシンM2,M1に対応するキューQ(M2),Q(M1)に移動又は複写するように構成されている。これにより、ユーザは、マウス53を操作することによって、刺繍模様データの移動又は複写を容易に行うことができる。
【0069】
また、上記したデータ管理ソフトウェアやデータ転送ソフトウェアを、複数台の多針ミシンM1,M2と通信可能に接続する制御装置1において使用することで、同様の効果を得ることができる。
【0070】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図11,図12を参照しながら説明する。本実施形態は、刺繍処理システムの構成が上述の第1の実施形態と異なる。即ち、本実施形態の刺繍処理システムS´は、少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続する多針ミシンM1,M2から構成されたものである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0071】
図11及び図12に示すように、多針ミシンM1と多針ミシンM2は、それぞれの制御ユニット6A,6Bが有する通信接続部43A,43B(図12参照)が通信ケーブル42を介して接続されている。即ち、多針ミシンM1は、多針ミシンM2と通信可能に接続され、多針ミシンM2は、多針ミシンM1と通信可能に接続されている。これにより、多針ミシンM1と多針ミシンM2は、相互に通信可能となっている。
【0072】
そして、本実施形態では、これら複数台(この場合、2台)の多針ミシンM1,M2のうち多針ミシンM1が、上述した制御装置1としての機能を担うようになっている。また、多針ミシンM1が備える液晶ディスプレイ7aが、上述した表示装置52(表示手段)としての機能を担うようになっている。つまり、多針ミシンM1は、刺繍模様データに基づいて縫製を実行するミシンとしての機能に加え、上述した制御装置1と同様の機能を備えている。
【0073】
このような多針ミシンM1の制御ユニット6Aは、上述したデータ管理ソフトウェアやデータ転送ソフトウェアなどの各種のソフトウェア(制御プログラム)をミシン制御プログラムとして備えている。そして、制御ユニット6Aは、このミシン制御プログラムに基づいて、表示制御処理、指定処理、データ変更処理、データ送信処理を実行可能に構成されている。
【0074】
表示制御処理は、多針ミシンM1を含む複数台の多針ミシンM1,M2毎に割当てられたキューQ(M1),Q(M2)を有し、キューQ(M1),Q(M2)に格納された縫製模様データを多針ミシンM1,M2毎に複数並べて液晶ディスプレイ7aに表示する処理である。
【0075】
指定処理は、液晶ディスプレイ7aに表示された一の多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)から、1又は複数の縫製模様データを指定する処理である。
【0076】
データ変更処理は、指定処理で指定された1又は複数の縫製模様データを、他の多針ミシンM2,M1に対応するキューQ(M2),Q(M1)に移動又は複写する処理である。
【0077】
データ送信処理は、データ変更処理により変更された各キューQ(M1),Q(M2)内の縫製模様データを、各多針ミシンM1,M2に送信する処理である。
【0078】
このような本実施形態によれば、多針ミシンM1を多針ミシンM2と通信可能に接続することで、複数台の多針ミシンM1,M2に対応する刺繍模様データの内容を多針ミシンM1の液晶ディスプレイ7aに同時に表示するのみならず、これら表示した刺繍模様データを、移動又は複写によって変更することができ、上述の第1の実施形態と同様に、複数台の多針ミシンM1,M2により行う縫製の全体の作業効率を向上させることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、多針ミシンM1に、ポインティングデバイスとしてマウス53を接続し、制御ユニット6Aは、マウス53のユーザ操作に応答して、液晶ディスプレイ7aに表示された一の多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)から1又は複数の縫製模様データを指定し、指定された1又は複数の縫製模様データを他の多針ミシンM2,M1に対応するキューQ(M2),Q(M1)に移動又は複写するように構成してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、多針ミシンM1に制御装置1としての機能を備える場合を示したが、多針ミシンM2に制御装置1としての機能を備えるように構成してもよい。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図13を参照しながら説明する。本実施形態は、データ作成ソフトウェアにより作成/編集した刺繍模様データを、キューQ(M1),Q(M2)に入力可能に構成した点が上述の第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0082】
データ作成ソフトウェアは、図13に示すデータ作成画面301を有している。このデータ作成画面301には、作成データ表示部302、作成ツール部303、コンボボックス304、入力ボタン305などが設けられている。
【0083】
作成データ表示部302には、作成、或いは、編集された刺繍模様データが表示される。作成ツール部303には、刺繍模様データを作成/編集するための各種のツールボタンが設けられている。ユーザは、マウス53を用いて、任意のツールボタンを選択し、作成データ表示部302に刺繍模様データを作成したり編集したりすることができる。
【0084】
コンボボックス304は、上述したコンボボックス103と同様に、制御装置1に通信可能に接続された多針ミシンM1,M2のうち刺繍模様データを入力するミシンを選択するためのものである。ユーザは、マウス53を用いて、これら多針ミシンM1,M2のうち何れか1つのミシンを選択できるようになっている。
【0085】
入力ボタン305は、作成、或いは、編集した刺繍模様データを、コンボボックス304にて選択された多針ミシンM1,M2に対応するフォルダF(M1),F(M2)、ひいては、キューQ(M1),Q(M2)に入力するためのボタンである。
【0086】
本実施形態によれば、データ管理ソフトウェアによって管理されている刺繍模様データのみならず、ユーザが新たに作成/編集した刺繍模様データも、多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)に入力することができる。そして、このように新たに作成/編集した刺繍模様データも、データ転送ソフトウェアにおいて、一の多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)から他の多針ミシンM2,M1に対応するキューQ(M2),Q(M1)に移動又は複写することができる。そして、多針ミシンM1,M2に送信して縫製を行うことができる。
【0087】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な拡張、変更が可能である。
【0088】
刺繍処理システムSにおいて制御装置1に通信可能に接続されるミシンは、2台に限られるものではなく、例えば3台以上のミシンを接続してもよい。また、刺繍処理システムS´において通信可能に接続されるミシンは、2台に限られるものではなく、例えば3台以上のミシンを接続してもよい。
【0089】
刺繍処理システムSにおける制御装置1と多針ミシンM1,M2との接続、或いは、刺繍処理システムS´における多針ミシンM1と多針ミシンM2との接続は、通信ケーブル42A,42B、或いは、通信ケーブル42を介した直接的な接続に限られるものではなく、例えば、USBハブなどを介して間接的に接続するように構成してもよい。また、無線LANによって接続するように構成してもよい。
【0090】
刺繍処理システムSにおいて制御装置1に通信可能に接続されるミシン、或いは、刺繍処理システムS´において通信可能に接続されるミシンとしては、多針ミシンM1,M2に限られるものではなく、例えば、縫い針(針棒)を1本のみ備えた刺繍ミシンであってもよい。また、多針ミシンや刺繍ミシンに限られるものではなく、例えば、刺繍枠を使用せずに、針棒の左右方向の揺動と加工布の前後方向の送りとの組み合わせによって形成する飾り模様を縫製するためのミシンであってもよい。
【0091】
例えばデータ転送画面に、複数台のミシンに対応するキュー内のデータを相互に入れ替えるための入れ替えボタンを設けてもよい。このような構成によれば、例えば、キュー表示部202(M1)に表示されている1又は複数の刺繍模様データを指定するとともに、キュー表示部202(M2)に表示されている1又は複数の刺繍模様データを指定し、入れ替えボタンを操作することで、一の多針ミシンM1,M2に対応するキューQ(M1),Q(M2)内の刺繍模様データと、他の多針ミシンM2,M1に対応するキューQ(M2),Q(M1)内の刺繍模様データとを、容易に入れ替えることができる。
【0092】
刺繍模様データの移動又は複写は、ユーザによるマウス53のドラッグアンドドロップ操作に限られるものではなく、例えば、データ転送画面201に移動ボタン、或いは、複写ボタンを設け、これら移動ボタンや複写ボタンをマウス53でクリックすることにより行うようにしてもよい。
【0093】
また、刺繍模様データの移動又は複写は、ユーザによるキーボード54の操作により行うようにしてもよい。
【0094】
ポインティングデバイスは、マウス53に限られるものではなく、例えばトラックパッドやトラックボールで構成してもよい。
【0095】
表示装置52に、透明電極からなる複数のタッチキーを有するタッチパネルを設け、ユーザによるタッチキーのタッチ操作に応じて、刺繍模様データの指定や変更などを行うように構成してもよい。
【0096】
縫製模様データとしては、刺繍模様を縫製するための刺繍模様データに限らず、例えば飾り模様を縫製するための飾り模様データであってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 制御装置(表示制御手段、指定手段、データ変更手段、データ送信手段)
M1 多針ミシン
M2 多針ミシン
52 表示装置(表示手段)
53 マウス(ポインティングデバイス)
51 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置であって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えた制御装置において、
前記複数台のミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御手段と、
前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定手段と、
前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更手段と、
前記データ変更手段により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、ポインティングデバイスを備え、
前記ポインティングデバイスのユーザ操作に応答して、
前記指定手段は、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから1又は複数の縫製模様データを指定し、
前記データ変更手段は、前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを他のミシンに対応するキューに移動又は複写することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
複数台のミシンと通信可能に接続する制御装置であって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えた制御装置のコンピュータに、
前記複数台のミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御処理と、
前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定処理と、
前記指定処理で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更処理と、
前記データ変更処理により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信処理と、
を実行させるための制御プログラム。
【請求項4】
少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続するミシンであって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えたミシンにおいて、
自身を含む複数台の前記ミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御手段と、
前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定手段と、
前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更手段と、
前記データ変更手段により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信手段と、
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項5】
前記ミシンは、ポインティングデバイスを備え、
前記ポインティングデバイスのユーザ操作に応答して、
前記指定手段は、前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから1又は複数の縫製模様データを指定し、
前記データ変更手段は、前記指定手段で指定された1又は複数の縫製模様データを他のミシンに対応するキューに移動又は複写することを特徴とする請求項4記載のミシン。
【請求項6】
少なくとも1台以上のミシンと通信可能に接続するミシンであって、少なくとも縫製に関わる情報を表示する表示手段を備えたミシンのコンピュータに、
自身を含む複数台の前記ミシン毎に割当てられたキューを有し、前記キューに格納された縫製模様データを前記ミシン毎に複数並べて前記表示手段に表示する表示制御処理と、
前記表示手段に表示された一のミシンに対応するキューから、1又は複数の縫製模様データを指定する指定処理と、
前記指定処理で指定された1又は複数の縫製模様データを、他のミシンに対応するキューに移動又は複写するデータ変更処理と、
前記データ変更処理により変更された前記各キュー内の縫製模様データを、各ミシンに送信するデータ送信処理と、
を実行させるためのミシン制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−110141(P2011−110141A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267460(P2009−267460)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】