説明

制御装置及び撮像装置及びその制御方法

【課題】PWM駆動制御による出力不感帯においても、フィードバック制御を正確に行うことができ、手ぶれ補正処理の精度向上をより一層図ることのできる撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の撮像装置は、撮像素子101を有して撮影光軸に直交する方向にモータにより可動される可動部1251と、撮像素子の位置を検出値として検出する位置検出部1252と、手ぶれによる撮像装置本体の振れ量に対応する目標値を検出する目標値算出部1241と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差を演算してデューティ比を求める演算部1043と、モータ1255にデューティ比に応じた電流を流すことにより可動部1251を駆動する駆動部1254とを有する。演算部1043には、検出値と目標値との差により求められたデューティ比を補正することにより出力不感帯を除去する補正部1043Hが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM駆動制御を用いて可動部が目標位置に正確に移動されるように可動部をフィードバック制御することが可能な制御装置及び撮影時の手ぶれを補正する手ぶれ補正機能を有する撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置の自動化が進み、自動露出や自動焦点調節機構等を備えたものが広く実用化されている。
これらの多機能化の一環として、装置全体の振れに起因する像振れを補正する技術も実用化されている。
【0003】
この種の撮像装置として、撮像素子を有して撮影光軸に直交する方向に移動可能とされた可動部と、この可動部を撮影光軸に直交する方向に駆動する駆動部と、その撮像素子の位置を検出する位置検出部と、この位置検出部の出力に基づいて、その撮像素子が基準位置にあることを示す基準位置情報を記憶する記憶部とを備えた撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この種の撮像装置では、手ぶれによる撮像装置本体の振れ量を検出し、その振れ量に応じた像移動量としての目標値を設定すると共に、この可動部の変位中に撮像素子の位置を検出して、撮像素子の位置としての検出値と目標値との差がなくなるように、フィードバック制御を行って、可動部を目標値に近づける制御処理を行い、手振れ補正を行う構成となっている。
【0005】
その可動部には、永久磁石とコイルとからなるモータが設けられている。このモータは、例えば、駆動部によりPWM駆動制御される(例えば、特許文献2参照。)。このPWM駆動制御では、演算部により検出値と目標値との差を演算することによりデューティ比を設定し、このデューティ比を駆動部に設定値として設定する。
そして、この撮像装置では、この設定されたデューティ比に応じた電流をモータのコイルに流し、これにより、可動部を可動させてフィードバック制御を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PWM駆動制御では、そのデューティー比の値が小さいと、入力応答遅れにより、モータのコイルに流れる電流が矩形波にならずになまって、そのモータの出力が小さくなるという出力不感帯が存在する。この出力不感帯では、フィードバック制御を正確に行うことができないという不都合がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、PWM駆動制御の出力不感帯においても、フィードバック制御を正確に行うことができる制御装置を提供することにあり、ひいては、手ぶれ補正処理の精度向上をより一層図ることのできる撮像装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御装置は、モータにより可動される可動部と、この可動部の位置を検出値として検出する位置検出部と、この可動部の目標値を算出する目標値算出部と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差に基づいてデューティ比を求める演算部と、そのモータにデューティ比に応じた電流を流すことによりその可動部を駆動する駆動部とを有し、演算部には、そのデューティ比を補正することにより出力不感帯を除去する補正部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る撮像装置は、撮像素子を有して撮影光軸に直交する方向にモータにより可動される可動部と、この撮像素子の位置を検出値として検出する位置検出部と、手ぶれによる撮像装置本体の振れ量に対応する目標値を算出する目標値算出部と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差を演算してデューティ比を求める演算部と、そのモータにデューティ比に応じた電流を流すことによりその可動部を駆動する駆動部とを有し、演算部には、そのデューティ比を補正することにより出力不感帯を除去する補正部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る制御方法によれば、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差を演算してデューティ比を求めた後、このデューティ比を補正して補正されたデューティ比に対応する電流をモータに流すことにより出力不感帯を除去してフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PWM駆動制御の出力不感帯においても、フィードバック制御を正確に行うことができ、ひいては、手ぶれ補正処理の精度向上をより一層図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明に係る撮像装置の一つであるデジタルカメラを示しており、(a)はその上面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【図2】図2は図1に示すデジタルカメラ内部のシステム構成の概要を示すブロック回路図である。
【図3】図3は、デジタルカメラの2つのモードの動作概要を示すフローチャート図である。
【図4】図4は、タイマ機能の動作を示すフローチャート図である。
【図5】図5は、手ぶれ補正の原理を説明するための図である。
【図6】図6は、図1に示すデジタルカメラのレンズ鏡胴の固定筒の正面図である。
【図7】図7は、図6のA-A’線に沿った縦断面図である。
【図8】図8は、図6に示す固定筒を示しており、(a)はその背面図、(b)は図6に示すフレキシブルプリント基板を除いた背面図である。
【図9】図9は、図2に示すCCDステージの分解斜視図である。
【図10】図10は、図8(b)のB-B’線に沿った縦断面図である。
【図11】図11は、図10に示す強制保持機構の要部構成を示す斜視図であり、(a)はCCDステージとステッピングモータと変換機構との連結関係を示す斜視図、(b)は(a)に示す変換機構の部分を拡大して示す斜視図である。
【図12】図12は、図10に示す回転伝達ギヤのカム溝を示しており、(a)は回転伝達ギヤの底面図、(b)は(a)のC-C’に沿った断面図、(c)はカムピンが傾斜面部を摺動して回転伝達ギヤを押し上げた状態を示す図、(d)はカムピンが頂上平坦部に当接して回転伝達ギヤが最も押し上げられた状態を示す図、(e)はカムピンが絶壁を通過しかつ谷底平坦部に当接して回転伝達ギヤが最も押し下げられた状態を示す図である。
【図13】図13は、図10に示す押さえピンと凹所との嵌合状態を示しており、(a)は押さえピンと凹所周壁との密接状態を示す図、(b)は押さえピンと凹所周壁との離間状態を示す図である。
【図14】図14は、レンズの焦点距離と像移動量との関係を示す図である。
【図15】図15は、ぶれ角とCCD補正移動量との関係を示す図である。
【図16】図16は、CCDのサーボ制御の制御周期を示しており、制御周期が0.00025[s]のときのタイミングチャートである。
【図17】図17は、手ぶれ補正処理のフローチャート図である。
【図18】図18は、CCDが目標位置に移動する様子を示す図である。
【図19】図19は、従来のサーボ制御の概要を説明するためのブロック図である。
【図20】図20は、PWM駆動制御と出力不感帯の関係を説明するための波形図である。
【図21】図21は、この発明の撮像装置の実施例に係るサーボ制御の概要を説明するためのブロック図である。
【図22】図22は、PWM駆動制御による出力不感帯を除去するために、演算により求められたデューティ比の設定値の補正を説明するための一例を示すグラフである。
【図23】図23は、PWM駆動制御による出力不感帯を除去するために、演算により求められたデューティ比の設定値の補正を説明するための他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下に、本発明に係る制御装置及び制御方法を手ぶれ補正機能を有する撮像装置に適用した実施例を図面を参照しつつ説明する。
(デジタルカメラの全体的構成)
【0014】
は、本発明に係る撮像装置の一例としてのデジタルスチルカメラ(以下、デジタルカメラという)示している。この図1において、(a)はその上面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。 また、は、デジタルカメラ内部のシステム構成の概要を示すブロック回路図である。
【0015】
に示すように、デジタルカメラ本体(撮像装置本体)の上面には、レリーズスイッチ(レリーズシャッタ)SW1、モードダイヤルスイッチSW2、およびサブLCD(液晶ディスプレイ)1が配設されている。
また、デジタルカメラ本体の正面には、撮影レンズを含む鏡胴ユニット7、光学ファインダ4、ストロボ発光部3、測距ユニット5、リモートコントロール受光部6が設けられている。
【0016】
デジタルカメラの背面には、電源スイッチSW13、LCDモニタ1’、AFLED8、ストロボLED9、広角方向ズームスイッチSW3、望遠方向ズームスイッチSW4、セルフタイマの設定・削除するセルフタイマスイッチSW5、メニュースイッチSW6、上移動・ストロボセットスイッチSW7、右移動スイッチSW8、ディスプレイスイッチSW9、下移動・マクロスイッチSW10、左移動・画像確認スイッチSW11、OKスイッチSW12、手ぶれ補正スイッチSW14が設けられている。 カメラ本体の側面にはメモリカード/電池装填室の蓋2が設けられている。
【0017】
デジタルカメラの各構成要素の機能および作用は公知であるので、その説明は省略することにし、次に、カメラの内部のシステム構成を図1、図2を参照しながら説明する。
(カメラの内部システム構成)
【0018】
に示すように、104はデジタルスチルカメラプロセッサ(以下、プロセッサという)である。 このプロセッサ104は、A/D変換器10411、第1CCD信号処理ブロック1041、第2CCD信号処理ブロック1042、CPUブロック1043、ローカルSRAM1044、USBブロック1045、シリアルブロック1046、JPEG・CODECブロック(JPEG圧縮・伸長を行うブロック)1047、RESIZEブロック(画像データのサイズを補間処理により拡大・縮小するブロック)1048、TV信号表示ブロック(画像データを液晶モニタ・TVなどの外部表示機器に表示させるためのビデオ信号に変換するブロック)1049、メモリカードコントローラブロック(撮影画像データを記録するメモリカードの制御を行うブロック)10410を有している。 これらの各ブロックは相互にバスラインで接続されている。
【0019】
また、プロセッサ104の外部にはRAW-RGB画像データ(ホワイトバランス設定、γ設定が行われた状態の画像データ)、YUV画像データ(輝度データ、色差データ変換が行われた状態の画像データ)、JPEG画像データ(JPEG圧縮された状態の画像データ)を保存するSDRAM103が配置されている。このSDRAM103は、メモリコントローラ(図示せず)、バスラインを介してプロセッサ104に接続されている。
【0020】
プロセッサ104の外部には、さらに、RAM107、内蔵メモリ(メモリカードスロットにメモリカードが装着されていない場合でも撮影画像データを記憶するためのメモリ)120、制御プログラム、パラメータなどが格納されたROM108が設けられている。これらもバスラインによってプロセッサ104に接続されている。
【0021】
ROM108に格納する制御プログラムは、デジタルカメラの電源スイッチSW13をオンすると、プロセッサ104のメインメモリ(図示せず)にロードされる。プロセッサ104は、その制御プログラムに従って各部の動作制御を行うとともに、制御データ、パラメータ等をRAM107等に一時的に保存させる。
【0022】
鏡胴ユニット7は、ズームレンズ71aを有するズーム光学系71、フォーカスレンズ72aを有するフォーカス光学系72、絞り73aを有する絞りユニット73、メカニカルシャッタ74aを有するメカニカルシャッタユニット74からなるレンズ鏡筒を備えている。 なお、ズームレンズ71a、フォーカスレンズ72a及び絞り73aは撮影光学系を構成している。また、撮影光学系の光軸をZ軸とするとともに、このZ軸に直交する平面をX-Y平面とする。
【0023】
ズーム光学系71、フォーカス光学系72、絞りユニット73、メカニカルシャッタユニット74は、ズームモータ71b、フォーカスモータ72b、絞りモータ73b、メカニカルシャッタモータ74bによってそれぞれ駆動されるようになっている。
【0024】
この鏡胴ユニット7の各モータはモータドライバ75によって駆動される。モータドライバ75はプロセッサ104のCPUブロック1043によって制御される。
また、鏡胴ユニット7の各レンズ系によりCCD101に被写体像が結像される。CCD101は被写体像を画像信号に変換してF/E-IC102に画像信号を出力する。
【0025】
F/E-IC102は画像ノイズ除去用のため相関二重サンプリングを行うCDS1021、利得調整用のAGC1022、アナログデジタル変換を行うA/D変換部1023から構成されている。
すなわち、F/E-IC102はその画像信号に所定の処理を施し、アナログ画像信号をデジタル信号に変換してプロセッサ104の第1CCD信号処理ブロック1041に向けてこのデジタル信号を出力する。
【0026】
これらの信号制御処理は、プロセッサ104の第1CCD信号処理ブロック1041から出力されるVD(垂直同期)-HD(水平同期)信号によりTG1024を介して行われる。 そのTG1024はそのVD-HD信号に基づき駆動タイミング信号を生成する。
【0027】
プロセッサ104のCPUブロック1043は、音声記録回路1151による音声記録動作を制御するようになっている。
音声記録回路1151は、マイクAMP(アンプリファイア)1152に接続されている。マイクAMP1152にはマイクロフォン(以下、マイクという)1153が接続されている。
【0028】
マイクAMP1152はマイクロフォン1153により変換された音声信号を増幅し、音声記録回路1151は、その増幅信号をCPUブロック1043の指令に応じて記録する。
CPUブロック1043は、音声再生回路1161の動作も制御する。
音声再生回路1161は、指令により適宜メモリに記憶されている音声信号を再生してオーディオAMP1162に出力する。これにより、スピーカ1163から音声が発せられる。
【0029】
CPUブロック1043は、さらに、ストロボ回路114を制御する。これにより、ストロボ発光部3が発光制御される。これに加えて、CPUブロック1043は、測距ユニット5も制御する。
CPUブロック1043は、プロセッサ104のサブCPU109に接続されている。サブCPU109はLCDドライバ111を介してサブLCD1の表示制御を行う。
【0030】
サブCPU109は、さらに、AFLED8、ストロボLED9、リモートコントロール受光部6、操作スイッチSW1〜SW14からなる操作キーユニット、ブザー113に接続されている。
USBブロック1045はUSBコネクタ122に接続されている。シリアルブロック1046はシリアルドライバ回路1231を介してRS-232Cコネクタ1232に接続されている。
【0031】
TV信号表示ブロック1049は、LCDドライバ117を介してLCDモニタ1’に接続されると共に、ビデオAMP118を介してビデオジャック119に接続されている。メモリカードコントローラブロック10410はメモリカードスロット121のカード接点に接続されている。
【0032】
なお、ビデオAMP118 とは、TV信号表示ブロック1049から出力されたビデオ信号を75Ωインピーダンスに変換するためのAMP(アンプリファイア)をいう。また、ビデオジャック119とは、カメラをTVなどの外部表示機器に接続するためのジャックをいう。
【0033】
LCDドライバ117はLCDモニタ1’を駆動するとともに、TV信号表示ブロック1049から出力されたビデオ信号をLCDモニタ1’に表示させる信号に変換する役割を果たす。
LCDモニタ1’は、撮影前の被写体の状態監視するため、撮影画像を確認するため、メモリカードまたは内蔵メモリ120に記録された画像データを表示するために用いられる。
【0034】
デジタルカメラの本体には、鏡胴ユニット7の一部を構成する固定筒が設けられている。この固定筒にはCCDステージ1251がX-Y方向に移動可能に設けられている。CCD101は手ぶれ補正機構の一部を構成する可動部としてのCCDステージ1251に搭載されている。 この固定筒およびCCDステージ1251の詳細な構造については後述する。
【0035】
CCDステージ1251はアクチュエータ1255によって駆動される。アクチュエータ1255はドライバ1254によってPWM駆動制御される。
そのドライバ1254はコイルドライブ第1MDとコイルドライブ第2MDとから構成されている。
【0036】
固定筒には、電源スイッチSW13がオフのときに、CCDステージ1251を中央位置(原点位置)に強制保持する保持機構1263が設けられている。
この保持機構1263はアクチュエータとしてのステッピングモータSTMにより制御される。そのステッピングモータSTMはドライバ1261によって駆動される。 このドライバ1261にはROM108から制御データが入力される。
【0037】
CCDステージ1251には位置検出素子1252が取り付けられている。この位置検出素子1252は可動部の位置を検出する位置検出部としての機能を有する。
この位置検出素子1252の検出出力はアンプ1253に入力され、増幅されてA/D変換器10411に入力される。
【0038】
デジタルカメラ本体には、手ぶれを検出するためのジャイロセンサ1241がピッチ(Pitch)方向とヨー(Yaw)方向との回転を検出可能に設けられている。ジャイロセンサ1241は、可動部の目標位置を検出する目標値算出部として機能する。
【0039】
ジャイロセンサ1241の検出出力はローパスフィルタ兼用のLPF-アンプ1242を介してA/D変換器10411に入力される。
手ぶれ補正の原理を説明する前に、先に、本発明に係るデジタルカメラの一般的な動作概要を説明する。
【0040】
(カメラの一般的な動作概要)
このデジタルカメラは、に示す「モニタリング処理」モードと「再生処理」モードとの少なくとも2つのモードを有し、これら2つのモード間を遷移する。
「モニタリング処理」モードでは、メニュー呼び出しを行うことができ、各種設定を変更することができる。「再生処理」モードでは、撮影画像をLCDモニタ1’に表示させることができる。
【0041】
まず、のフローチャートに示すように、モードダイヤルスイッチSW2が撮影モードに設定されたか否かが判断される(ステップS1)。撮影モードに設定された場合(ステップS1においてYes)、モニタリング処理が実行される(ステップS2)。
【0042】
モニタリング処理実行後、撮影命令が入力されたか否か判断され(ステップS3)、入力された場合(ステップS3においてYes)、撮影処理が実行され(ステップS4)、その後、ステップS2に戻る。撮影命令が入力されない場合(ステップS2においてNo)、後述するステップS8に進む。
【0043】
また、ステップS1において、モードダイヤルスイッチSW2が撮影モードに設定されていない場合(ステップS1においてNo)、モードダイヤルスイッチSW2が再生モードに設定されたか否かが判断される(ステップS5)。
【0044】
そして、再生モードに設定された場合(ステップS5においてYes)、撮影画像をLCDモニタ1’に表示させる再生処理が実行され(ステップS6)、再生モードに設定されていない場合(ステップS5においてNo)、撮影・再生以外の処理が実行される(ステップS7)。
【0045】
処理S3,S6,S7の後、電源スイッチSW13が押下されたか否か判断され(S8)、押下された場合(処理S8のYes)は処理を終了し、押下されていない場合(処理S8のNo)は処理S1に戻り、処理が継続される。
【0046】
図2に示すプロセッサ104は、露光直前に手ぶれ補正処理を行うためのタイマ機能を有している。 図4はタイマ機能の動作を示しており、フリーランタイマについてのフローチャートである。
ここで、フリーランタイマとはリセットを実行しない限り、X秒間隔で割り込みを発生させるタイマである。セットした秒数がカウントダウンされ、秒数がゼロになることを契機にして割り込みを発生させる。なお、カウントダウン中の秒数はレジスタを用いて参照できる。
すなわち、図4に示すように、タイマにカウント値としてX秒をセットして(ステップS11’)、カウントをスタートし(ステップS12)、設定したX秒後に所定の割り込み処理を実行させる(ステップS13)。
【0047】
ついで、リセット命令の確認が行われ(ステップS14)、リセット命令がないとき(ステップS14においてNo)、処理S11’に戻り、リセット命令があるとき(ステップS14においてYes)、カウントダウンの処理を終了する。これにより、リセット命令が実行されない限り、X秒間隔の割り込みが繰り返し実行され、露光直前に手ぶれ補正処理が実行される(このフリーランタイマーの役割の詳細については、必要なら、例えば、特開2007-094320号公報参照。)
【0048】
(手ぶれ補正の原理)
図5は撮像素子としてのCCD101をスライド変位させて手ぶれ補正を行う原理を示している。
CCD101の撮像面(CCD面)がP1の位置にあるとき、被写体の像はOに投影される。
【0049】
これに対して、手ぶれにより、デジタルカメラ本体(撮像装置本体)がθx,θyだけ回転した場合、CCD101の撮像面はP2の位置に移動して、被写体が写る場所がO’に移動する。これにより、像がぶれることになる。そこで、撮像面がP1位置になるようにdx,dyだけ、CCD101を平行移動させる。これにより、被写体の撮像面上での投影位置を元に戻すことができる。
【0050】
(手ぶれ補正機構の構成)
次に、手ぶれ補正機構の構成について、図6ないし図8を参照しながら説明する。
図6ないし図8は複数のレンズが収納される固定筒を示している。その図6は固定筒の正面図であり、図7は図6に示すA-A’線に沿う縦断面図であり、図8(a)、(b)は固定筒の背面図である。
【0051】
〜において、10は固定筒である。固定筒10は箱形形状を呈し、その内側がレンズ鏡筒受入用の収納空間とされている。固定筒10の背面には図8に示すように全体的に略矩形状を呈する板状のベース部材11が取り付けられている。
【0052】
その固定筒10の内周壁には、ここでは、図7に示すように、レンズ鏡筒を繰り出し・繰り入れるためのヘリコイド12が形成されている。固定筒10は少なくとも2つの角部が切り欠かれている。一方の角部10aは後述するステッピングモータSTMの取り付け部とされている。他方の角部10bは後述するフレキシブルプリント基板20の折り曲げ箇所とされている。
【0053】
図2に示すCCDステージ1251は、そのベース部材11に設けられている。 このCCDステージ1251は、図9に分解して示すように環枠形状のX方向ステージ13と、矩形状のY方向ステージ14と、載置ステージ15とから大略構成されている。
【0054】
X方向ステージ13はベース部材11に固定されている。 このX方向ステージ13にはX方向に延びる一対のガイド軸13a,13bがY方向に間隔を開けて設けられている。X方向ステージ13には直方体形状の4個の永久磁石16a〜16dが配置されている。
【0055】
この4個の永久磁石16a〜16dは2個一対とされ、一対の永久磁石16a,16bはX-Y平面内でY方向に間隔を開けて平行に配置されている。
本実施例では、一対のガイド軸13a,13bが一対の永久磁石16a,16bを貫通する構成とされている。しかし、これに限るものではなく、一対のガイド軸13a,13bに併設して設けられていても良い。 一対の永久磁石16c,16dはX-Y平面内でX方向に間隔を開けて配置されている。
【0056】
Y方向ステージ14は、Y方向に延びる一対のガイド軸14c,14dがX方向に間隔を開けて設けられている。そのY方向ステージ14には、X方向に間隔を開けて対向する2個一対の被支承部17a,17a’,17b,17b’がY方向に間隔を開けて形成されている。
【0057】
各一対の被支承部(17a,17a’),(17b,17b’)はX方向ステージ13の一対のガイド軸13a,13bにそれぞれ可動可能に支承され、これによりY方向ステージ14がX方向に可動可能とされている。
CCD101は載置ステージ15に固定されている。載置ステージ15は、X方向に張り出した一対のコイル取付板部15c,15dと、Y方向に張り出した一対のコイル取付板部15a,15bとを有する。 CCD101はその載置ステージ15の中央に固定されている。
【0058】
載置ステージ15には、CCD101の撮像面と同じ側にY方向に間隔を開けて対向する2個一対の被支承部(符号を略す)がX方向に間隔を開けて形成されている。各一対の被支承部はY方向ステージ14の一対のガイド軸14c,14dに可動可能に支承されている。これにより、載置ステージ15は全体としてX-Y方向に可動可能とされている。
CCD101には撮像面と反対側の面に保護板19が貼り付けられている。保護板19には、その中央にテーパ形状の凹所19aが形成されている。この凹所19aの機能については後述する。
【0059】
一対のコイル取付板部15c,15dには、それぞれ偏平かつ渦巻き状のコイル体COL1,COL1’が貼り付けられている。コイル体COL1,COL1’は直列接続されている。
また、一対のコイル取付板部15a,15bには、それぞれ偏平かつ渦巻き状のコイル体COL2,COL2’が貼り付けられている。コイル体COL2,COL2’も同様に直列接続されている。
【0060】
各コイル体COL1,COL1’はそれぞれ各永久磁石16c,16dに臨まされている。各コイル体COL2,COL2’はそれぞれ永久磁石16a,16bに臨まされている。
一対のコイル体COL1,COL1’は、X方向にCCD101を可動させるのに用いられる。一対のコイル体COL2,COL2’はY方向にCCD101を可動させるのに用いられる。その永久磁石16a,16b(16c,16d)とコイル体COL1,COL1’(COL2,COL2’)は、CCD101を往復移動させるボイスコイルモータ(アクチュエータ1255)を構成している。
【0061】
また、コイル体COL1,COL1’には、図8(a)に示すように、各コイル体COL1,COL1’をX方向に横断する方向に磁性材料からなる吸着棒35が設けられている。この吸着棒35(鉄製棒)を取り付けることで磁力により磁石の着いたステージと棒の着いたステージとを引きつけて、ガタを抑えている。
【0062】
ここでは、位置検出素子1252にはホール素子が用いられている。一対のコイル取付板部15c,15dの一方のコイル取付板部15dに位置検出素子1252としてのホール素子1252aが設けられている。同様に一対のコイル取付板部15a,15bの一方のコイル取付板部15bにホール素子1252bが設けられている。
【0063】
CCD101はフレキシブルプリント基板20を介してF/E-IC102に電気的に接続されている(図2、図10参照)。そのホール素子1252a,1252bはフレキシブルプリント基板20を介してオペレーションアンプ1253に電気的に接続されている。各コイル体COL1,COL1’,COL2,COL2’はドライバ1254(図2参照)に電気的に接続されている。
【0064】
(保持機構1263のメカニカルな構成)
原点位置の保持機構1263(図2参照)は、図10、図11(a)に示すように、ステッピングモータSTMを有する。
【0065】
ステッピングモータSTMは、図6に示すように、固定筒10の角部10aに設けられている。そのステッピングモータSTMの出力軸20Aには、図10に示すように、出力ギヤ21が設けられている。また、固定筒10の角部10aには回転運動を直線運動に変換する変換機構22が設けられている。
【0066】
変換機構22は、回転伝達ギヤ23、往復動シャフト24、付勢コイルスプリング25、強制押さえ板26およびバネ受け部材27とから大略構成されている。
固定筒10の角部10aにはZ軸方向に間隔を開けて一対の支承部28,29が形成されている。支承部28はモータ取付板から構成されている。
【0067】
往復動シャフト24は支承部29と支承部28との間に掛け渡されて支承されている。
回転伝達ギヤ23は一対の支承部28,29の間に位置している。この回転伝達ギヤ23は、往復動シャフト24に回転可能に支承されるとともに、出力ギヤ21に噛合されている。
【0068】
往復動シャフト24の一端側の部分は、支承部29を貫通してベース部材11の背面側に臨んでいる。付勢コイルスプリング25はバネ受け部材27と支承部29との間に設けられている。往復動シャフト24はその付勢コイルスプリング25により支承部28に向けて付勢されている。往復動シャフト24には、回転伝達ギヤ23の軸穴端面と係合する段差部24aが形成されている。
【0069】
回転伝達ギヤ23には、図12(a)〜図12(e)に示すように、その一方の端面部にカム溝31が形成されている。このカム溝31は回転伝達ギヤ23の周回り方向に延び、谷底平坦部31a、頂上平坦部31b、および谷底平坦部31aから頂上平坦部31bに向かって連続的に傾斜する傾斜面部31cから構成されている。その谷底平坦部31aと頂上平坦部31bとの間は、後述するカムピンが回転方向から衝合する衝合壁としての絶壁31dとなっている。
【0070】
支承部28(図10参照)にはカムピン32が固定されている。そのカムピン32の先端はカム溝31に摺接されている。絶壁31dから傾斜面部31cの傾斜開始位置31eまでの谷底平坦部31aの回転方向の長さは、ステッピングモータSTMの回転制御信号に換算して2パルス分に相当する。
【0071】
傾斜面部31cの傾斜開始位置31eから頂上平坦部31bに通じる傾斜終端位置31fまでの傾斜面部31cの回転方向長さは、ステッピングモータSTMの回転制御信号に換算して30パルス分に相当する。
【0072】
傾斜終端位置31fから絶壁31dまでの間の頂上平坦部31bの回転方向長さは、ステッピングモータSTMの回転制御信号に換算して3パルス分に相当する。ステッピングモータSTMの35パルス分が回転伝達ギヤ23の1回転に対応する。回転伝達ギヤ23の1回転により往復動シャフト24がZ軸方向に1往復される。
【0073】
また、強制押さえ板26はベース部材11の背面側に設けられている。
強制押さえ板26は、図10および図11(a)に示すように、CCD101の中心に向かって長く延びる構成とされている。その強制押さえ板26の基端部26aは往復動シャフト24の一端部に固定されている。
【0074】
その強制押さえ板26の自由端部26bにはテーパ形状の押さえピン33が固定されている。その強制押さえ板26の延びる方向途中にはガイド軸26cが突出形成されている。
図8(a)および(b)に示すベース部材11には、位置決め突起11a,11b、コイル取り付け突起11c、および係合突起11dが形成されている。 コイル取り付け突起11cにはネジリコイルバネ34の巻回部34aが取り付けられている。
【0075】
ネジリコイルバネ34の一端部34bは係合突起11dに係合されている。ネジリコイルバネ34の他端部34cはガイド軸26cに係合されている。
ベース部材11にはガイド軸26cをガイドするガイド穴(図示を略す)が形成されている。
【0076】
強制押さえ板26は、そのネジリコイルバネ34によって位置決め突起11aに当接されつつ、往復動シャフト24の往復動に伴ってベース部材11に対して離反接近する方向(Z軸方向)に往復動される。ガイド軸26cは強制押さえ板26の往復動を安定した姿勢で行わせる役割を果たす。
【0077】
押さえピン(嵌合突起)33は凹所(嵌合穴)19aと嵌合することにより、載置ステージ15(図9参照)を機械的に原点位置に保持させる役割を果たす。図13(a)に拡大して示すように、押さえピン33の周壁33aと保護板19の凹所周壁19bとが密接に嵌合した状態がカムピン32のホールド待機位置(図12(d)参照)に相当する。
【0078】
図13(b)に拡大して示すように押さえピン33の周壁33aと保護板19の凹所周壁19bとが最大離間した状態がカムピン32のレリーズ待機位置(図12(e)参照)に対応する。カムピン32のホールド待機位置は載置ステージ15の強制原点位置でもある。
これらの詳細な構成については、例えば、特開2007-094320号公報を参照されたい。
次に、手ぶれ補正を行うためのフィードバック制御の概要を説明する。
【0079】
(手ぶれ補正を行うためのフィードバック制御)
手ぶれに起因してジャイロセンサ1241から角速度信号が出力される。この角速度信号は、ローパスフィルタアンプリファイア(LPFーアンプ)1242により増幅されて、A/D変換器10411に入力される。このA/D変換器10411はアナログ・デジタル変換により角速度信号を角速度データに変換する。
【0080】
すなわち、手ぶれによるCCD101の移動目標値はジャイロセンサ1241からの出力に基づき決定される。
そのジャイロセンサ1241は、デジタルカメラのPitch(ピッチ)方向の回転、およびYaw(ヨー)方向の回転を捉えるように配置されている。
A/D変換器10411は、ジャイロセンサ1241からの出力をT[s]間隔で取り込んでAD変換する。
【0081】
ここで、ωyaw(t):Yaw方向の瞬間角速度、
ωpitch(t):Pitch方向の瞬間角速度、
θyaw(t):Yaw方向の変化角度、
θpitch(t):Pitch方向の変化角度、
Dyaw(t):Yaw方向の回転に対応して移動する像移動量、
Dpitch(t):Pitch方向の回転に対応して移動する像移動量とし、
ジャイロセンサ1241のYaw方向の出力(角速度信号)のA/D変換値、Pitch方向の出力(角速度信号)のA/D変換値が、それぞれADyaw、ADpitchであるとすると、ωyaw(t)、ωpitch(t)は、
ωyaw(t)= C *(ADyaw − Offsetyaw)
ωpitch(t)= C *(ADpitch − Offsetpitch)
の式により求められる。
なお、Offsetyaw, Offsetpitchはそれぞれ静止時のyaw方向、pitch方向の出力のA/D変換値であり、Cは変換係数である。
【0082】
Yaw方向の変化角度は下記(1)式で求められる。
θyaw(t)=Σωyaw(i)×T(iは0からtまで)・・・・・・(1)
また、Pitch方向の変化角度は下記(2)式で求められる。
θpitch(t)=Σωpitch(i)×T(iは0からtまで)・・・・・・(2)
一方、ズームポイントzp、フォーカスポイントfpから焦点距離fが決定される。
【0083】
Yaw方向の回転に対応して移動する像移動量は下記(3)式で求められる。
Dyaw(t)=f×tan(θyaw(t))・・・・・・(3)
Pitch方向の回転に対応して移動する像移動量は下記(4)式で求められる。
Dpitch(t)=f×tan(θpitch(t))・・・・・・(4)
上記(3)式および(4)式で求めた結果がCCD101の移動すべき量、すなわち、目標値になる。
【0084】
CPUブロック1043は、上記式に基づいて目標値演算を行うと共に、位置検出素子1252により検出された検出値との差がなくなるように、載置ステージ15をフィードバック制御により駆動する。
【0085】
このフィードバック制御の詳細については後述することにし、次に、角度データ(ぶれ角)と像移動量との具体的関係について説明する。
角速度データは、CPUブロック1043に入力される。CPUブロック1043は、この角速度データを積分して角度データ(ぶれ角)に変換する。
CPUブロック1043は、表1の換算表を用いて、角度データ(ぶれ角)からCCD101の手ぶれによる像移動量(目標値)を求める。
【0086】
角度データからCCD101の手ぶれによる像移動量を求めるには、例えば、図14に示すように、角度θと実焦点距離と像移動量Δxとの間には、tanθ=Δx/実焦点距離という関係があることを用いる。
【0087】
図15は、下記の表1の角度データ(ぶれ角)に対するCCD101の手ぶれによる移動量の数値をズーム倍率とCCD補正移動量との関係としてグラフ化して示したものである。
【0088】
ズーム倍率が小さい場合に較べてズーム倍率が大きい場合、CCD101の手ぶれによるCCD補正移動量(目標値)が大きいのは、倍率が大きいほど、CCD101の像面上での像の移動量が大きくなるからである。
【0089】
【表1】

【0090】
図16は、CCD101を駆動するためのサーボ制御の制御周期を示すタイミングチャートである。この実施例では、周期T=0.00025[s]毎にに示すフローチャートが実行される。
すなわち、ヨー方向角速度、ヨー方向角度が検出され、ヨー方向の目標値が演算され(S.1”)、ピッチ方向角速度、ピッチ方向角度が検出され、ピッチ方向の目標値が演算される。
【0091】
その結果、CCD101は目標位置に対して図18に示すように可動されて目標値に接近する。なお、図17に示すフローチャートを実行するために要する時間は、0.0001[s]に設定されている(図16参照)。
【0092】
この実施例では、サーボ制御は、PID制御を用いて行われる。ここで、PID制御とは、目標値と検出値とを比例積分微分の3つの組み合わせにより行う制御をいう。このPID制御はサーボ制御において一般的に知られている制御方法である。
【0093】
(従来のサーボ制御の説明)
これまでのサーボ制御の説明を整理して述べると、図19に模式的に示すように、ジャイロセンサ1241からの角速度信号(アナログ信号)がA/D変換器10411に入力される。A/D変換器10411はアナログ信号を角速度データに変換する。
【0094】
この角速度データはCPUブロック1043に入力される。従って、ジャイロセンサ1241は、手ぶれによる撮像装置本体の振れ量に対応する目標値を検出する目標値算出部としての役割を果たす。
CPUブロック1043はこれを積分して角度データに換算し、この角度データを用いてCCD101の手ぶれによる像移動量を求め、位置検出素子1252により検出された検出値との差により比例積分微分(PID)制御計算を行う。
【0095】
ついで、CPUブロック1043はアクチュエータ1255のボイスコイルモータに通電すべきデューティー比デジタルデータを求める。この求められたデューティー比デジタルデータをドライバ1254のレジスタ1254Rに設定する。
【0096】
このレジスタ1254Rに設定されたデューティ比デジタルデータに基づいてそのボイスコイルモータ(アクチュエータ1255)のPWM駆動制御が行われる。例えば、PWM駆動制御のキャリア周波数は100kHzである。
【0097】
これにより、CCD101が移動され、移動後のCCD101の位置が位置検出素子1252により検出され、この位置検出素子1252により検出された検出値がA/D変換器10411に入力され、位置検出素子1252により検出された検出値と目標値との差によるフィードバック制御が繰り返される。
【0098】
従って、CPUブロック1043は、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差を演算してデューティ比を求める演算部として機能する。
また、ドライバ1254はボイスコイルモータ(アクチュエータ1255)にデューティ比に応じた電流を流すことにより可動部としてのCCDステージを駆動する駆動部としての役割を果たす。
【0099】
デューティ比デジタルデータは、例えば、「-1024」〜「+1024」の範囲内である。そのデューティ比デジタルデータ「+1024」は、ある方向に流す電流のデューティ比が100%であることを意味する。
【0100】
また、デューティ比デジタルデータ「-1024」は、そのある方向とは逆方向に流す電流が100%であることを意味する。デューティ比デジタルデータ「0」は、流す電流のデューティ比がゼロ%であることを意味する。
【0101】
レジスタ1254Rに設定されたデューティ比デジタルデータの設定値とボイスコイルモータに流す電流のデューティ比とには比例関係があり、例えば、デューティ比デジタルデータ「256」は256/1024×100=25%のデューティ比の電流を流すことを意味する。
【0102】
しかしながら、演算により求められたデューティー比の値が小さいと、図20に示すように、入力応答遅れにより、出力電流Iが矩形波にならずになまって、そのボイスコイルモータ(アクチュエータ1255)への出力が小さくなり、出力不感帯が生じる。
【0103】
この出力不感帯部分では、手ぶれ補正処理を正確に行うことができない。
(この実施例に係るサーボ制御の説明)
そこで、図21に模式的に示すように、角度データを用いてCCD101の手ぶれによる像移動量を求め、比例積分微分(PID)制御計算により得られたデューティ比デジタルデータを後述する式に基づく出力不感帯補正処理を行い、この出力不感帯補正処理後のデューティ比デジタルデータをドライバ1254のレジスタ1254Rに設定する。
【0104】
すなわち、演算部としてのCPUブロック1043には、検出値と目標値との差により求められたデューティ比を補正して出力不感帯を除去する補正部1043Hが設けられている。
図22は比例積分微分(PID)制御計算により得られたデューティ比デジタルデータに対して行う出力不感帯補正処理の一例を説明するためのグラフである。
【0105】
その図22において、横軸Xはレジスタ1254Rに設定されたデューティ比デジタルデータ(すなわち、レジスタ1254Rの設定値)を意味する。縦軸Yはそのデューティ比デジタルデータに基づきドライバ1254からボイスコイルモータ(アクチュエータ1255)に流される実際の出力電流Iの平均値である。
【0106】
破線で示す関数g(x)は、比例積分微分(PID)制御計算により得られたデューティ比デジタルデータであってかつドライバ1254のレジスタ1254Rに出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータが、設定値として設定されたときに、ドライバ1254から出力される出力電流Iの平均値との関係を一例として示す関数である。
【0107】
実線で示す関数f(x)は、比例積分微分(PID)制御計算により得られたデューティ比デジタルデータであってかつドライバ1254のレジスタ1254Rに出力不感帯補正処理後のデューティ比デジタルデータが、設定値として設定されたときに、ドライバ1254から出力される出力電流Iの平均値との関係を一例として示す関数である。
【0108】
ここで、演算により求められた出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータの設定値を「a」、出力不感帯補正処理後の設定値を「b」とするとき、f(a)=g(b)となるような出力不感帯補正処理後の設定値「b」を求め、補正処理前の設定値「a」に対する補正処理後の設定値「b」との補正式h(x)を求める。
【0109】
一例として、出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータを「A」、出力不感帯補正処理後のデューティ比デジタルデータを「B」とするとき、補正式h(x)は、下記の式により与えられる。
B= A + (32 − 32/1024×A) (A>0)
B= A (A=0)
B= A − (32 + 32/1024×A) (A<0)
【0110】
ここで、定数「32」は、出力不感帯限界値を意味しており、この実施例では、補正前のデューティ比とモータに対する実際の出力との関係を実験により求めたものを用いているが、出力不感帯は入力応答遅れによって発生するものであるので、定数を演算により求めることもできる。
【0111】
この補正式を用いると、例えば、出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータの設定値が「A=a’=16(A>0)」であるとき、
B=a’+(32−a’/32)=16+(32−0.5)=47.5
となり、
g(B)=f(a’)の出力電流Iが得られる。
【0112】
すなわち、上記の補正式を用いて、出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータに補正処理を行い、この出力不感帯補正処理後のデューティ比デジタルデータをドライバ1254のレジスタ1254Rにセットすることによって、実際のモータ出力は、実線で示す一次比例の関数f(x)によって与えられることになる。
【0113】
これにより、デューティ比が小さい場合に出力不感帯が生じるのを避けることができる。
また、CPUブロック1043による演算処理の量が少ないので、処理速度が過度に遅くなる不都合を回避できる。
【0114】
図23は比例積分微分(PID)制御計算により得られたデューティ比デジタルデータに対して行う出力不感帯補正処理の他の例を説明するためのグラフである。
ここでは、出力不感帯補正処理後の所定値は、可動部の動摩擦力を超えるか超えないかに対応する設定値に設定する。
【0115】
ここで、可動部の摩擦部分は、X方向ステージ13のガイド軸13a、13bに対するY方向ステージ14の摩擦部分及びY方向ステージ14のガイド軸14c、14dに対する載置ステージ15の摩擦部分である。
従って、可動部の動摩擦力とは、可動部が相対移動される部材に対して可動状態にあるときの動摩擦力をいう。
【0116】
図23において、実線で示す関数f’(x)は、比例積分微分(PID)制御計算により得られたデューティ比デジタルデータであってかつドライバ1254のレジスタ1254Rに出力不感帯補正処理後のデューティ比デジタルデータが、設定値として設定されたときに、ドライバ1254から出力される出力電流Iを可動部の動摩擦力を超えるか超えないかに対応する所定値「c」だけオフセットした関数を示している。
【0117】
この実施例では、出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータの設定値を「a’」、出力不感帯補正処理後の設定値を「b’」とするとき、f’(a’)=g(b’)となるような出力不感帯補正処理後の設定値「b’」を求め、補正処理前の設定値「a’」に対する補正処理後の設定値「b’」との補正式h’(x)を求める。
【0118】
一例として、出力不感帯補正処理前のデューティ比デジタルデータを「A’」、出力不感帯補正処理後のデューティ比デジタルデータを「B’」とするとき、補正式h’(x)は、下記の式により与えられる。この実施例では、C=50とする。
【0119】
B’= A’ + 50 (A’>0)
B’= A’ (A’=0)
B’= A’ − 50 (A’<0)
【0120】
このように、補正処理後のデューティ比デジタルデータを「B’」に設定すると、動摩擦力に対応する分だけ、補正処理前のデューティ比デジタルデータの設定値に動摩擦力に相当する分の所定値「C=50」又は「−50」を上載せして補正処理後のデューティ比デジタルデータの設定値を「B’」としたので、すなわち、可動部が相対移動される部材に対して可動状態にあるときの動摩擦力に対応するデューティ比に相当する分だけ、補正後のデューティ比がオフセットされるので、可動部の駆動力が動摩擦力よりも小さくて可動部の駆動が停止するという不都合を防止できる。
【0121】
なお、この実施例では、所定値「C」を可動部の動摩擦力に対応させて設定することにしたが、所定値「C」を可動部が相対移動される部材に対して静止状態から可動状態に移行する際の静止摩擦力に対応するデューティ比に相当する分だけ、補正後のデューティ比がオフセットされていても良い。
【0122】
(静止画撮影時の手ぶれ補正動作の概要説明)
補正後のデューティ比を用いて手ぶれ補正のサーボ制御を行う以外は、従来と同様であるが、以下に、撮影時の手ぶれ補正制御の概要を以下に説明する。
【0123】
手ぶれ補正スイッチSW14をオンし、レリーズスイッチSW1を押下して第1段押し下げが完了すると、合焦動作が開始される。これと同時に、載置ステージ15のメカニカルな強制固定が解除される。これにより、サーボ制御によるCCD中央保持制御が開始され、載置ステージ15が可動範囲の中央位置に保持される(以下、センタリング制御処理という)。
【0124】
ついで、レリーズスイッチSW1を押下して第1段押し下げが完了すると、載置ステージ15(CCD101)が像の移動方向に追従を開始し、手ぶれ補正が実行される。
この撮影時には、SDRAM103に記憶された目標値データに基づいて、CCDステージ1251の移動が制御される。
【0125】
すなわち、フィードバック制御においては、撮像素子の位置を検出する位置検出部により撮像素子の位置を検出値として検出する工程と、手ぶれによる撮像装置本体の振れ量を検出する目標値算出部により振れ量に対応する目標値を算出する工程と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差を演算してデューティ比を求める演算工程と、PWM駆動制御による出力不感帯を除去するために演算工程により求められたデューティ比を補正する工程と、補正されたデューティ比に対応する電流をモータに流すことによりフィードバック制御を行う工程とが実行される。そして、シャッターが閉じて、露光が終了すると、センタリング制御処理に戻る。
【0126】
以上、実施例においては、手ぶれ補正制御に本発明を適用したが、本発明はこれに限られるものではなく、モータにより可動される可動部と、可動部の位置を検出値として検出する位置検出部と、可動部の目標値を算出する目標値算出部と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために検出値と目標値との差に基づいてデューティ比を求める演算部と、モータにデューティ比に応じた電流を流すことにより可動部を駆動する駆動部とを有する構成の制御装置にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0127】
101…CCD(撮像素子)
1043…CPUブロック(演算部)
1043H…補正部
1241…ジャイロセンサ(目標値算出部)
1251…CCDステージ(可動部)
1252…位置検出素子(位置検出部)
1254…ドライバ(駆動部)
1255…アクチュエータ(モータ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】特開2007-094320号公報
【特許文献2】特開2007-114486号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより可動される可動部と、該可動部の位置を検出値として検出する位置検出部と、前記可動部の目標値を算出する目標値算出部と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために前記検出値と前記目標値との差に基づいてデューティ比を求める演算部と、前記モータに前記デューティ比に応じた電流を流すことにより前記可動部を駆動する駆動部とを有し、前記演算部には、前記デューティ比を補正することにより出力不感帯を除去する補正部が設けられていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
撮像素子を有して撮影光軸に直交する方向にモータにより可動される可動部と、該撮像素子の位置を検出値として検出する位置検出部と、手ぶれによる撮像装置本体の振れ量に対応する目標値を算出する目標値算出部と、PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために前記検出値と前記目標値との差に基づいてデューティ比を求める演算部と、前記モータに前記デューティ比に応じた電流を流すことにより前記可動部を駆動する駆動部とを有し、前記演算部には、前記デューティ比を補正することにより出力不感帯を除去する補正部が設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記モータに流す実際の出力電流の平均と補正後のデューティ比とが一次比例の関係であることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記補正後のデューティ比を、前記補正前のデューティ比と前記モータに流す実際の出力電流との関係から求めることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記可動部が相対移動される部材に対して可動状態にあるときの動摩擦力に対応するデューティ比に相当する分以上、前記補正後のデューティ比がオフセットされていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記可動部が相対移動される部材に対して静止状態から可動状態に移行する際の静止摩擦力に対応するデューティ比に相当する分だけ、前記補正後のデューティ比がオフセットされていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
補正前のデューティ比に一定値を加えた値が、前記補正後のデューティ比であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記モータが永久磁石とコイルとを有して前記可動部を往復移動させるボイスコイルモータからなることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記可動部は、前記撮像素子を有する載置ステージと、撮影光軸に直交するX−Y平面内で前記載置ステージをX方向に案内するX方向案内ステージと、前記載置ステージをY方向に案内するY方向案内ステージとを備え、前記目標値算出部にはジャイロセンサを含み、前記位置検出部にはホール素子を含むことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮像素子の位置を検出する位置検出部により前記撮像素子の位置を検出値として検出する工程と、
手ぶれによる撮像装置本体の振れ量を検出する目標値算出部により前記振れ量に対応する目標値を算出する工程と、
PWM駆動制御を用いてフィードバック制御を行うために前記検出値と前記目標値との差を演算してデューティ比を求める演算工程と、
PWM駆動制御による出力不感帯を除去するために前記演算工程により求められたデューティ比を補正する工程と、
補正されたデューティ比に対応する電流をモータに流すことによりフィードバック制御を行う工程と、
を備えていることを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−3403(P2013−3403A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135437(P2011−135437)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】