説明

制御装置及び洗濯機

【課題】所定時間内に一の制御対象への制御指令を生成した後に、他の制御対象への制御指令を生成し、複数の制御対象を並列制御して、各制御対象のプログラムタスクを確実に処理する制御装置及び該制御装置を有する洗濯機を提供する。
【解決手段】タスク1は処理の開始時点から所定期間t1の間、MPUを獲得し、処理を完了する。またタスク1の処理の開始時点からT/2経過した時点で、タスク2の割込が発生し、タスク2は、割込時点から所定期間t2の間、MPUを獲得し、処理を完了する。MPUは、三角波Q1、Q2が極小値時点に位置する毎に、タスク1及び2の処理を開始する。三角波Q1と三角波Q2との位相は180度相違している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の駆動源の駆動を制御する制御装置と、洗濯物を投入されて回転する回転ドラムの駆動源及び回転ドラムへ送風するファンの駆動源を前記制御装置によって制御する洗濯機とに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯物の乾燥は天日干しによって行われることが多いが、乾燥に要する労力を軽減すべく、洗濯物の乾燥に乾燥機の使用を希望するユーザが増えている。しかし洗濯機に加え、乾燥機を設置する空間を家庭内に確保することは難しい。近年、ユーザの要望に応えるべく、回転ドラムへ送風するファン及び該ファンによって送風される空気を加熱するヒータを搭載した洗濯機が提案されている。該洗濯機によればユーザは乾燥機を設置する空間を確保する必要がない(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−54088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に洗濯機は、MPU(Micro processing Unit)を有する制御装置を一つ備え、該制御装置によって回転ドラム及びファンを駆動する各駆動源(例えばモータ)を制御する。制御装置は、位置センサからの入力に基づくロータの位置の算出またはモータ電流に基づいてロータの位置を推定する演算などを実行する。
【0005】
これらの演算を行うプログラムタスクは、より精度の高い制御を実現すべく、近年増大している。また回転ドラム及びファンを同時に駆動させる必要がある場合、例えば乾燥工程において、制御装置は各モータの制御を並列に実行しなければならない。そのため制御装置への負荷が増大し、モータの制御が遅延する場合がある。
【0006】
図9は従来の制御装置によるモータ制御を説明する説明図である。図9Aは、遅延を生じていない場合に、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってモータに供給される電流波形を概念的に示し、図9Bは、遅延を生じた場合に、PWM制御によってモータに供給される電流波形を概念的に示す。遅延を生じた場合に、制御装置の制御周期は、遅延を生じていない場合に比べて長くなる。そのため図9Aの電流波形が図9Bの電流波形のようになり、波形が乱れる。その結果、モータの動作が滑らかにならなかったり、高調波ノイズの発生を招いたりして、騒音が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、複数の駆動源のプログラムタスクを所定時間内に、確実に並列処理することができる制御装置及び該制御装置を使用する洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御装置は、複数の制御対象それぞれに対する制御指令を生成する生成手段を備え、該生成手段にて生成した制御指令に基づいて前記制御対象の動作を制御する制御装置において、前記生成手段は、一の制御対象への制御指令を生成する処理を所定時間内に完了した後、他の制御対象への制御指令を生成する処理を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、一の制御対象への制御指令を所定時間内に生成した後、他の制御対象への制御指令の生成を開始して、複数の制御対象を並列制御する。
【0010】
本発明に係る制御装置は、前記生成手段は、前記他の制御対象への制御指令の生成を禁止することができるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、例えば一の制御対象の制御指令の生成に長時間を要する場合に、他の制御対象への制御指令の生成を禁止し、制御装置への負荷を軽減する。
【0012】
本発明に係る制御装置は、複数の制御対象それぞれに対応した、位相の異なる波形信号を生成する波形信号生成手段を備え、前記生成手段は、対応する波形信号のピーク時点で、各制御対象への制御指令を生成する処理を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、位相が相違する各タイマ波に基づいて、各制御対象への制御指令を生成し、各制御指令を生成するタイミングを分散する。
【0014】
本発明に係る制御装置は、波形信号を生成する波形信号生成手段を備え、前記生成手段は、前記波形信号生成手段にて生成された波形信号の極大値時点又は極小値時点のいずれか一方で、一の制御対象への制御指令を生成する処理を開始し、他方で他の制御対象への制御指令を生成する処理を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、タイマ波の極大値時点又は極小値時点のいずれか一方で一の制御対象への制御指令の生成を開始し、他方で他の制御対象への制御指令の生成を開始して、各制御指令を生成するタイミングを分散する。
【0016】
本発明に係る制御装置は、前記制御対象はモータであることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、複数のモータの並列制御を実現する。
【0018】
本発明に係る洗濯機は、前述した制御装置と、洗濯物を投入されて回転する回転ドラムと、該回転ドラムへ送風するファンと、該ファンに駆動力を供給するファン駆動源と、前記回転ドラムに駆動力を供給するドラム駆動源とを備え、前記ファン駆動源及びドラム駆動源を前記制御装置によって制御するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、洗濯機に搭載したドラム駆動源及びファン駆動源を並列制御する。
【0020】
本発明に係る制御装置は、前記生成手段における前記制御指令を生成する処理を開始するタイミングを変更することができるようにしてあることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、前記制御指令を生成する処理を条件に応じた最適なタイミングで開始する。
【0022】
本発明に係る洗濯機は、前述した制御装置と、洗濯物を投入されて回転する回転ドラムと、該回転ドラムへ送風するファンと、該ファンに駆動力を供給するファン駆動源と、前記回転ドラムに駆動力を供給するドラム駆動源とを備え、前記制御装置は、前記ファン駆動源及びドラム駆動源を駆動させている場合といずれか一方のみを駆動させている場合とで、前記制御指令を生成する処理を開始するタイミングを変更するようにしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、ファン駆動源及びドラム駆動源の両者を駆動させている場合といずれか一方のみを駆動させている場合とで、前記制御指令を生成する処理を開始するタイミングを変更し、必要に応じていずれか一方を優先的に制御する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る制御装置及び洗濯機にあっては、一の制御対象への制御指令を生成した後に、他の制御対象への制御指令を生成し、複数の制御対象を並列制御するので、各制御対象のプログラムタスクを確実に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1に係る洗濯機に設けた制御装置付近の構成を示すブロック図である。
【図2】ドラムインバータ及びファンインバータの構成を示す回路図である。
【図3】制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】タスクがMPUを獲得するタイミングを説明するタイミング図である。
【図5】実施の形態2に係る洗濯機に設けた制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図6】タスクがMPUを獲得するタイミングを説明するタイミング図である。
【図7】実施の形態3に係る洗濯機に設けた制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図8】実施の形態4に係る洗濯機に設けた制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図9】従来の制御装置によるモータ制御を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る洗濯機を示す図面に基づいて詳述する。図1は洗濯機に設けた制御装置7付近の構成を示すブロック図である。
図において1は、洗濯物を投入されて回転する有底円筒形の回転ドラム1である。該回転ドラム1は、有底円筒形の洗濯槽(図示せず)内に配置してある。該回転ドラム1の周囲には多数の孔が設けてある。回転ドラム1は、洗濯槽の底部中央に固設されたドラムモータ2の出力軸の端部に連結してある。ドラムモータ(制御対象、ドラム駆動源)2は、三相ブラシレスモータからなる。該三相ブラシレスモータは、永久磁石からなるロータを有し、U相、V相及びW相への電流を制御することで駆動される。
【0027】
ドラムモータ2には、ロータの位置を検出する位置検出部3が設けてある。位置検出部3は、ロータの磁極位置に対応して、所定角度(例えば60度)毎の位置信号を、モータの駆動を制御する制御装置7に出力する。前記洗濯槽の内側に、乾燥風が通流するダクト(図示せず)が設けてある。ダクト内には、ファン4及びヒータ(図示せず)が配置してある。前記ダクトは送風口を有し、該送風口は回転ドラム1に向けてある。ヒータによって加熱された空気は、ファン4の駆動によってダクトを通流し、送風口から回転ドラム1へ送られる。加熱された空気は、孔を通流し、回転ドラム1内の洗濯物に当接する。洗濯物に含まれる水分は、当接した空気によって蒸発する。
【0028】
ファン4の中心部分は、ファンモータ(制御対象、ファン駆動源)5の出力軸に連結している。ファンモータ5は、三相ブラシレスモータからなる。該三相ブラシレスモータは、永久磁石からなるロータを有し、U相、V相及びW相への電流を制御することで駆動される。ファンモータ5には、ファンモータ5に供給される電流を検出する電流検出部6が設けてある。該電流検出部6は、ファンモータ5のU相及びV相の電流を検出し、検出値を制御装置7に出力する。
【0029】
前記制御装置7には、整流回路8を介して交流電源9が接続してある。整流回路8は、全波整流回路81と、電解コンデンサ82とを有している。整流回路8は、入力された電流を交流から直流に変換して出力する。出力された直流の電圧を検出する電圧検出部10が整流回路8に接続してある。電圧検出部10は、検出値を制御装置7に出力する。
【0030】
制御装置7は、直流を交流に変換して出力するドラムインバータ75及びファンインバータ76を備える。ドラムインバータ75及びファンインバータ76には、整流回路8から直流電流が入力される。ドラムインバータ75は、入力された直流を三相交流に変換して、ドラムモータ2に出力する。ファンインバータ76は、入力された直流を三相交流に変換して、ファンモータ5に出力する。
【0031】
制御装置7は、ドラムインバータ75及びファンインバータ76の動作を制御するインバータ制御部70を備える。該インバータ制御部70は、MPU71、制御プログラムを記憶したROM (Read only Memory) 72、情報を一時的に記憶するRAM (Random Access Memory) 73及び搬送波を生成する搬送波生成部74を備える。MPU71は、RAM73を作業領域として、ROM72からRAM73に制御プログラムを読み出し、ドラムインバータ75及びファンインバータ76の動作を制御する。
【0032】
MPU71は、搬送波生成部74にて三角波を生成し、また電流検出部6、位置検出部3及び電圧検出部10から入力された検出値に基づいて、ドラムインバータ75及びファンインバータ76の動作を制御する制御指令を生成する。MPU71は、三角波と制御指令とを比較し、比較結果に基づいてドラムモータ2及びファンモータ5へ供給する電流を制御する。
【0033】
図2はドラムインバータ75及びファンインバータ76の構成を示す回路図である。
ドラムインバータ75及びファンインバータ76は、整流回路8に接続された電源線100と、接地された接地線101とを備える。電源線100と接地線101との間に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなるスイッチング素子Up、Unが直列に接続してある。スイッチング素子Upのコレクタは電源線100に接続してあり、エミッタはスイッチング素子Unのコレクタに接続してある。スイッチング素子Unのエミッタは、接地線101に接続してある。スイッチング素子Upのエミッタとスイッチング素子Unのコレクタとの間は、ドラムモータ2又はファンモータ5のU相に接続してある。なおスイッチング素子はIGBTに限定されない。
【0034】
電源線100と接地線101との間に、IGBTからなるスイッチング素子Vp、Vnが直列に接続してあり、またIGBTからなるスイッチング素子Wp、Wnが直列に接続してある。スイッチング素子Vp、Vn及びスイッチング素子Wp、Wnは、前記スイッチング素子Up、Unと同様な態様で電源線100と接地線101とに接続してある。スイッチング素子Vpのエミッタとスイッチング素子Vnのコレクタとの間は、ドラムモータ2又はファンモータ5のV相に接続してあり、スイッチング素子Wpのエミッタとスイッチング素子Wnのコレクタとの間は、ドラムモータ2又はファンモータ5のW相に接続してある。
【0035】
スイッチング素子Up〜Wnには、エミッタからコレクタに電流を流すダイオードDu1〜Dw2がそれぞれ並列に接続してある。ダイオードDu1〜Dw2は、スイッチング素子Up〜Wnに逆起電力が発生した場合に、スイッチング素子Up〜Wnに電流が流れることを防止する。
【0036】
インバータ制御部70は、ゲート信号(オン信号)Gp1を生成し、ドラムインバータ75のスイッチング素子Up〜Wpのゲートに入力する。またゲート信号Gn1を生成し、ドラムインバータ75のスイッチング素子Un〜Wnのゲートに入力する。インバータ制御部70は、ゲート信号Gp2を生成し、ファンインバータ76のスイッチング素子Up〜Wpのゲートに入力する。またゲート信号Gn2を生成し、ファンインバータ76のスイッチング素子Un〜Wnのゲートに入力する。
【0037】
例えば、スイッチング素子Up、Vpにゲート信号Gp1を入力し、スイッチング素子Wnにゲート信号Gn1を入力した場合、図2において矢印で示すように、整流回路8からドラムモータ2のU相及びV相に電流が流れ、ドラムモータ2のW相から接地線101に電流が流れる。インバータ制御部70は、各スイッチング素子のオン/オフ時間を制御し、PWM制御を行う。PWM制御によって、ドラムインバータ75及びファンインバータ76は直流を三相交流に変換する。
【0038】
図3は制御装置7の動作を説明するタイムチャートである。図3Aはドラムインバータ75に対する制御装置7の動作を示し、図3Bはファンインバータ76に対する制御装置7の動作を示す。図3においてデッドタイムは省略してある。
搬送波生成部74は、ドラムモータ2及びファンモータ5に対応する周期Tの三角波(搬送波)Q1、Q2をそれぞれ生成する。各三角波Q1、Q2の位相は180度(T/2)相違している。
【0039】
図3Aに示すように、MPU71は、三角波Q1の極小値時点(ピーク時点)において、ドラムインバータ75の動作を制御する制御指令P1を生成するタスクを開始し、所定時間t1経過後にタスクを完了する。MPU71は生成した制御指令P1をRAM73に記憶する。そして三角波Q1の極大値時点において、RAM73を参照し、RAM73に記憶された制御指令P1を新たな制御指令に決定する。なおt1はT/2よりも小さい。またタスクは割込処理として実行される。MPU71は、三角波Q1が極小値時点に位置する毎に、換言すれば周期Tが経過する毎に、前記割込処理を開始する。
【0040】
そしてMPU71は、決定した制御指令P1が示す値と、三角波Q1のレベル値とを比較し、制御指令P1が示す値が三角波Q1のレベル値よりも大きい時間をドラムインバータ75のスイッチング素子をオン/オフにする時間に決定する。例えば図3Aに示すように、スイッチング素子Upをオンにし、スイッチング素子Unをオフにする時間S1に決定する。該S1は、PWM制御のパルス幅に相当する。同様にスイッチング素子Vp、Wp、Vn、Wnをオン/オフにする時間を決定する。
【0041】
図3Bに示すように、MPU71は、三角波Q2の極小値時点(ピーク時点)において、ファンインバータ76の動作を制御する制御指令P2を生成するタスクを開始し、所定時間t2経過後にタスクを完了する。MPU71は生成した制御指令P2をRAM73に記憶する。そして三角波Q2の極大値時点において、RAM73を参照し、RAM73に記憶された制御指令P2を新たな制御指令に決定する。なおt2はT/2よりも小さい。またタスクは割込処理として実行される。MPU71は、三角波Q2が極小値時点に位置する毎に、換言すれば周期Tが経過する毎に、前記割込処理を開始する。
【0042】
そしてMPU71は、決定した制御指令P2が示す値と、三角波Q2のレベル値とを比較し、制御指令P2が示す値が三角波Q2のレベル値よりも大きい時間をファンインバータ76のスイッチング素子をオン/オフにする時間に決定する。例えば図3Bに示すように、スイッチング素子Upをオンにし、スイッチング素子Unをオフにする時間S2に決定する。該S2は、PWM制御のパルス幅に相当する。同様にスイッチング素子Vp、Wp、Vn、Wnをオン/オフにする時間を決定する。
【0043】
図4はタスクがMPU71を獲得するタイミングを説明するタイミング図である。図4において、タスク1は、ドラムインバータ75の動作を制御する制御指令P1を生成するタスクを示し、タスク2は、ファンインバータ76の動作を制御する制御指令P2を生成するタスクを示す。図4に示すように、タスク1は処理の開始時点から所定期間t1の間、MPU71を獲得し、処理を完了する。またタスク1の処理の開始時点からT/2経過した時点で、タスク2の割込が発生し、タスク2は、割込時点から所定期間t2の間MPU71を獲得し、処理を完了する。
【0044】
タスク2の割込は、タスク1の処理が開始してからT/2経過した時点で発生し、t1はT/2よりも小さいので、タスク1の処理が完了する前にタスク2の割込が発生することはない。またタスク1の割込は、タスク1の処理が開始してからT経過した時点で発生し、t2はT/2よりも小さいので、タスク2の処理が完了する前にタスク1の割込が発生することはない。
【0045】
従ってMPU71の獲得のために、排他制御又はプリエンプションなどを行う必要がなく、タスク1、2の処理に遅延は生じない。そのためMPU71は、ドラムモータ2及びファンモータ5を同時的に動作させる場合に、遅延を生じさせることなく、ドラムモータ2及びファンモータ5を制御するタスクを並列に処理することができる。またドラムモータ2及びファンモータ5を円滑に駆動させて、静音化を実現することができる。
【0046】
また位相が相違する各三角波(搬送波)Q1、Q2をタイマとしても使用することで、確実に制御指令P1、P2の生成タイミングを分散させることができ、別途タイマを設定する必要もない。なお実施の形態1にあっては、三角波Q1、Q2の極小値時点にてタスクの処理を開始しているが、三角波の極大値時点にてタスクの処理を開始する構成でもよい。
【0047】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る洗濯機に基づいて詳述する。図5は制御装置7の動作を説明するタイムチャートである。図5Aはドラムインバータ75に対する制御装置7の動作を示し、図5Bはファンインバータ76に対する制御装置7の動作を示す。図5においてデッドタイムは省略してある。
搬送波生成部74は、ドラムモータ2及びファンモータ5に対応する周期Tの三角波(搬送波)Q1、Q2をそれぞれ生成する。各三角波Q1、Q2の位相は180度(T/2)相違している。
【0048】
図5Aに示すように、MPU71は、三角波Q1の極小値時点において、ドラムインバータ75の動作を制御する制御指令P1を生成するタスクを開始し、所定時間t1経過後にタスクを完了する。MPU71は生成した制御指令P1をRAM73に記憶する。そして三角波Q1の極大値時点において、RAM73を参照し、RAM73に記憶された制御指令P1を新たな制御指令に決定する。なおt1はT/2よりも小さい。またタスクは割込処理として実行される。MPU71は、三角波Q1が極小値時点に位置する毎に、換言すれば周期Tが経過する毎に、前記割込処理を開始する。
【0049】
そしてMPU71は、決定した制御指令P1が示す値と、三角波Q1のレベル値とを比較し、制御指令P1が示す値が三角波Q1のレベル値よりも大きい時間をドラムインバータ75のスイッチング素子をオン/オフにする時間に決定する。例えば図5Aに示すように、スイッチング素子Upをオンにし、スイッチング素子Unをオフにする時間S1に決定する。該S1は、PWM制御のパルス幅に相当する。同様にスイッチング素子Vp、Wp、Vn、Wnをオン/オフにする時間を決定する。
【0050】
図5Bに示すように、MPU71は、三角波Q2の極小値時点において、ファンインバータ76の動作を制御する制御指令P2を生成するタスクを開始し、所定時間t2経過後にタスクを完了する。MPU71は生成した制御指令P2をRAM73に記憶する。そして三角波Q2の極大値時点において、RAM73を参照し、RAM73に記憶された制御指令P2を新たな制御指令に決定する。なおt2はT/2よりも小さい。またタスクは割込処理として実行される。
【0051】
MPU71は、周期2Tが経過する毎に、前記割込処理を開始する。換言すれば、MPU71は、前記割込処理を開始してから周期Tが経過した時点で、前記割込処理の開始を禁止し、前記割込処理を開始してから周期2Tが経過した時点で、前記割込処理の再開を許可する。ドラムモータ2及びファンモータ5を長時間連続して駆動させる必要がある場合、例えば乾燥工程において、MPU71は、ファンインバータ76に対する割込処理の回数をドラムインバータ75よりも減らす。
【0052】
なおMPU71が前記割込処理の再開を許可する間隔は、周期2Tに限定されない。また前記割込処理の禁止は、乾燥工程において常時実行されるようにしてもよいし、ドラムモータ2を駆動制御するタスクの処理量が大きい場合に、実行されるようにしてもよい。
【0053】
そしてMPU71は、決定した制御指令P2が示す値と、三角波Q2のレベル値とを比較し、制御指令P2が示す値が三角波Q2のレベル値よりも大きい時間をファンインバータ76のスイッチング素子をオン/オフにする時間に決定する。例えば図5Bに示すように、スイッチング素子Upをオンにし、スイッチング素子Unをオフにする時間S2に決定する。該S2は、PWM制御のパルス幅に相当する。同様にスイッチング素子Vp、Wp、Vn、Wnをオン/オフにする時間を決定する。なおMPU71は、前記割込処理の開始を禁止した場合、その後に実行される比較処理において、前記時間S2を、ファンインバータ76のスイッチング素子をオン/オフにする時間に再度決定する。
【0054】
図6はタスクがMPU71を獲得するタイミングを説明するタイミング図である。図6において、タスク1は、ドラムインバータ75の動作を制御する制御指令P1を生成するタスクを示し、タスク2は、ファンインバータ76の動作を制御する制御指令P2を生成するタスクを示す。またタスク3は、前記二つのタスク以外のタスクを示す。タスク3はタスク2よりもMPU71を獲得する時間が短い。図6に示すように、タスク1は処理の開始時点から所定期間t1の間、MPU71を獲得し、処理を完了する。またタスク1の処理の開始時点からT/2経過した時点で、タスク2の割込が発生し、タスク2は、割込時点から所定期間t2の間MPU71を獲得し、処理を完了する。
【0055】
タスク2の次の割込は、タスク2の処理が開始してから2T経過した時点で発生する。そのため、タスク1の処理の開始時点から3T/2〜2Tの間、タスク1及びタスク2は、MPU71を獲得しない。そのためMPU71への負担を軽減することができる。またタスク3がMPU71を獲得することができる。
【0056】
またタスク3は、タスク2よりもMPU71を獲得する時間が短いので、タスク1に遅延が生じた場合でも、遅延した時間をタスク1に割り当てやすくなる。そのため、タスク1〜3全体を一つの処理として見た場合に、遅延が発生し難くなる。なおタスク3の実行を省略することもできる。タスク3の実行を省略した場合、タスク1の遅延に対してより確実に対処することができる。ドラムモータ2は大型の回転ドラム1を回転させるため、ファンモータ5に比べると、制御が不十分な場合に騒音を発生しやすい。そのためタスク1の処理を優先して行うことによって、洗濯機の機能を維持しつつ、洗濯機の騒音を効率的に防ぐことができる。タスク1の処理を優先しても、タスク2の処理は実行されるので、ファン4の駆動による洗濯機の機能は維持される。
【0057】
実施の形態2に係る洗濯機の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る洗濯機に基づいて詳述する。図7は制御装置7の動作を説明するタイムチャートである。図7Aはドラムインバータ75に対する制御装置7の動作を示し、図7Bはファンインバータ76に対する制御装置7の動作を示す。図7においてデッドタイムは省略してある。
【0059】
実施の形態1及び2において、搬送波生成部74は、位相の異なる三角波Q1、Q2を生成していたが、実施の形態3においては、ドラムモータ2及びファンモータ5に共通する周期Tの三角波(搬送波)Qを生成する。
【0060】
図7Aに示すように、MPU71は、三角波の極小値時点において、ドラムインバータ75の動作を制御する制御指令P1を生成するタスクを開始し、所定時間t1経過後にタスクを完了する。MPU71は生成した制御指令P1をRAM73に記憶する。そして三角波Qの極大値時点において、RAM73を参照し、RAM73に記憶された制御指令P1を新たな制御指令に決定する。なおt1はT/2よりも小さい。またタスクは割込処理として実行される。MPU71は、三角波Qが極小値時点に位置する毎に、換言すれば周期Tが経過する毎に、前記割込処理を開始する。
【0061】
そしてMPU71は、決定した制御指令P1が示す値と、三角波Qのレベル値とを比較し、制御指令P1が示す値が三角波Qのレベル値よりも大きい時間をドラムインバータ75のスイッチング素子をオン/オフにする時間に決定する。例えば図7Aに示すように、スイッチング素子Upをオンにし、スイッチング素子Unをオフにする時間S1に決定する。該S1は、PWM制御のパルス幅に相当する。同様にスイッチング素子Vp、Wp、Vn、Wnをオン/オフにする時間を決定する。
【0062】
図7Bに示すように、MPU71は、三角波Qの極大値時点において、ファンインバータ76の動作を制御する制御指令P2を生成するタスクを開始し、所定時間t2経過後にタスクを完了する。MPU71は生成した制御指令P2をRAM73に記憶する。そして三角波Qの極小値時点において、RAM73を参照し、RAM73に記憶された制御指令P2を新たな制御指令に決定する。なおt2はT/2よりも小さい。またタスクは割込処理として実行される。MPU71は、三角波Qが極大値時点に位置する毎に、換言すれば周期Tが経過する毎に、前記割込処理を開始する。
【0063】
そしてMPU71は、決定した制御指令P2が示す値と、三角波Qのレベル値とを比較し、制御指令P2が示す値が三角波Qのレベル値よりも小さい時間をファンインバータ76のスイッチング素子をオン/オフにする時間に決定する。例えば図7Bに示すように、スイッチング素子Upをオンにし、スイッチング素子Unをオフにする時間S2に決定する。該S2は、PWM制御のパルス幅に相当する。同様にスイッチング素子Vp、Wp、Vn、Wnをオン/オフにする時間を決定する。
【0064】
MPU71は、共通の三角波Qを用いて、ドラムインバータ75及びファンインバータ76の動作を制御することができる。また三角波Qの極小値時点において、ドラムインバータ75の制御指令P1の生成を開始し、三角波Qの極大値時点において、ファンインバータ76の制御指令P2の生成を開始するので、各処理の開始タイミングを分散させることができる。なお実施の形態2と同様に、ファンインバータ76の生成処理を禁止してもよい。
【0065】
実施の形態3に係る洗濯機の構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係る洗濯機を示す図面に基づいて詳述する。図8は、制御装置7の動作を説明するタイムチャートである。図8Aはドラムモータ2が停止し、ファンモータ5が駆動している場合におけるファンインバータ76に対する制御装置7の動作を示し、図8Bはドラムモータ2及びファンモータ5が駆動している場合におけるファンインバータ76に対する制御装置7の動作を示す。図8においてデッドタイムは省略してある。
【0067】
図8Aに示すように、ドラムモータ2が停止し、ファンモータ5のみが駆動している場合、MPU71は、三角波Q2が極大値時点に位置する毎に、換言すれば周期Tが経過する毎に、制御指令P2を生成するタスクを開始する。一方図8Bに示すように、ドラムモータ2及びファンモータ5の両者が駆動している場合、MPU71は、周期2Tが経過する毎に、制御指令P2を生成するタスクを開始する。換言すれば、MPU71は、前記タスクを開始してから周期Tが経過した時点では、前記前記タスクの開始を禁止し、前記タスクを開始してから周期2Tが経過した時点で、前記タスクの再開を許可する。なおドラムインバータ75に対する制御指令P1を生成するタスクは、周期Tが経過する毎に、開始される(前記図5A参照)。
【0068】
MPU71は、ドラムモータ2及びファンモータ5の両者を駆動させる場合に、ファンモータ5のみを駆動させる場合に比べて、ファンインバータ76に対する前記タスクの処理回数を減らす。換言すれば、ドラムモータ2の駆動の有無に応じて、ファンインバータ76に対する前記タスクを開始するタイミングを変更する。
【0069】
ドラムモータ2は大型の回転ドラム1を回転させるため、ファンモータ5に比べると、制御が不十分な場合に騒音を発生しやすい。そのためドラムモータ2が駆動している場合に、ファンインバータ76に対する前記タスクの処理回数を減らすことによって、ドラムモータ2の駆動を精度良く制御し、洗濯機の機能を維持しつつ、洗濯機の騒音を効率的に防ぐことができる。ドラムモータ2の駆動制御を優先しても、ファンモータ5の駆動制御は実行されるので、ファン4の駆動による洗濯機の機能は維持される。またドラムモータ2が停止している場合に、ファンモータ5を精度良く制御することができる。
【0070】
なおドラムモータ2よりもファンモータ5の駆動を精度良く制御する必要がある場合には、ファンモータ5が駆動している場合に、ドラムインバータ75に対するタスクの処理回数を減らしてもよい。
【0071】
実施の形態4に係る洗濯機の構成の内、実施の形態1〜3と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0072】
実施の形態1〜4に係る洗濯機は、搬送波として三角波を使用しているが、これに限定されない。極大値時点又は極小値時点を有する波形であればよい。例えばノコギリ波でもよい。また三つ以上のモータを制御する構成でもよい。例えばヒータにヒートポンプを使用する場合には、ヒートポンプのモータ、ドラムモータ2及びファンモータ5を制御しても良い。また制御装置7は、洗濯機以外の複数の駆動源を使用する機器に適用することができる。また制御装置7は、モータ以外のアクチュエータの動作を制御することができる。
【0073】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲に記載された事項及び特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 回転ドラム
2 ドラムモータ(制御対象、ドラム駆動源)
4 ファン
5 ファンモータ(制御対象、ファン駆動源)
7 制御装置
8 整流回路
9 交流電源
70 インバータ制御部
71 MPU
72 ROM
73 RAM
74 搬送波生成部(波形信号生成手段)
75 ドラムインバータ
76 ファンインバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御対象それぞれに対する制御指令を生成する生成手段を備え、該生成手段にて生成した制御指令に基づいて前記制御対象の動作を制御する制御装置において、
前記生成手段は、
一の制御対象への制御指令を生成する処理を所定時間内に完了した後、他の制御対象への制御指令を生成する処理を開始するようにしてあること
を特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記生成手段は、
前記他の制御対象への制御指令の生成を禁止することができるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
複数の制御対象それぞれに対応した、位相の異なる波形信号を生成する波形信号生成手段を備え、
前記生成手段は、
対応する波形信号のピーク時点で、各制御対象への制御指令を生成する処理を開始するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
波形信号を生成する波形信号生成手段を備え、
前記生成手段は、
前記波形信号生成手段にて生成された波形信号の極大値時点又は極小値時点のいずれか一方で、一の制御対象への制御指令を生成する処理を開始し、他方で他の制御対象への制御指令を生成する処理を開始するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御対象はモータであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の制御装置と、
洗濯物を投入されて回転する回転ドラムと、
該回転ドラムへ送風するファンと、
該ファンに駆動力を供給するファン駆動源と、
前記回転ドラムに駆動力を供給するドラム駆動源とを備え、
前記ファン駆動源及びドラム駆動源を前記制御装置によって制御するようにしてあること
を特徴とする洗濯機。
【請求項7】
前記生成手段における前記制御指令を生成する処理を開始するタイミングを変更することができるようにしてあること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の制御装置と、
洗濯物を投入されて回転する回転ドラムと、
該回転ドラムへ送風するファンと、
該ファンに駆動力を供給するファン駆動源と、
前記回転ドラムに駆動力を供給するドラム駆動源とを備え、
前記制御装置は、
前記ファン駆動源及びドラム駆動源を駆動させている場合といずれか一方のみを駆動させている場合とで、前記制御指令を生成する処理を開始するタイミングを変更するようにしてあること
を特徴とする洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−143514(P2012−143514A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6322(P2011−6322)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】