説明

制御装置

【課題】スイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響が適切に考慮された制御装置を実現する。
【解決手段】レゾルバ44の検出角度を取得する検出角度取得部27と、交流電動機4の回転速度に関連付けられた第一補正情報M1及び変調率に関連付けられた第二補正情報M2の双方を、検出角度を補正するための補正情報Mとして記憶する補正情報記憶部25と、検出角度取得部27が検出角度を取得した角度取得時点における回転速度が回転速度閾値以上である場合に、当該回転速度に基づき第一補正情報M1を取得し、角度取得時点における回転速度が回転速度閾値未満である場合に、当該角度取得時点における変調率に基づき第二補正情報M2を取得する補正情報取得部26と、補正情報取得部26が取得した補正情報Mに基づき検出角度を補正する検出角度補正部28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電動機に備えられたレゾルバの検出角度を用いて、直流電圧を交流電圧に変換して交流電動機に供給する直流交流変換部を備えた電動機駆動装置の制御を行う制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電動機の正確な制御を行うため、交流電動機にレゾルバを備え、当該レゾルバの検出角度を用いて交流電動機を駆動する電動機駆動装置の制御を行うことがある。このような場合、レゾルバの検出角度が誤差を有していると、交流電動機に入力される或いは交流電動機から出力される交流電圧が過大或いは過小になることで、交流電動機の出力トルクの低下やリプルが発生したり、電源から引き出される或いは電源に供給される電力にリプルが発生したりするおそれがある。
【0003】
このようなレゾルバの検出誤差の問題に関して、下記の特許文献1には、予め測定して得た誤差情報に基づき、レゾルバの検出位置(検出角度)を補正する検出位置補正装置(制御装置)が記載されている。特許文献1に記載の制御装置では、静的誤差に加えて動的誤差も補正する構成とすることで、レゾルバの回転子の回転速度が高くなった場合においても、レゾルバの位置検出精度を高めることができると記載されている(段落0009)。
【0004】
ところで、交流電動機に備えられたレゾルバの検出角度を用いて、直流交流変換部を備えた電動機駆動装置の制御を行う構成では、直流交流変換部が備えるスイッチング素子から発生する電気的又は磁気的なノイズ(以下、単に「スイッチングノイズ」という。)が、レゾルバの検出角度に影響を与えるおそれがある。しかしながら、上記特許文献1には、このようなスイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響に言及した記載はなく、当然ながら、スイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響が適切に考慮された制御装置の構成について、何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−37305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、スイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響が適切に考慮された制御装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、交流電動機に備えられたレゾルバの検出角度を用いて、直流電圧を交流電圧に変換して前記交流電動機に供給する直流交流変換部を備えた電動機駆動装置の制御を行う制御装置の特徴構成は、前記レゾルバの検出角度を取得する検出角度取得部と、前記交流電動機の回転速度に関連付けられた第一補正情報、及び前記直流電圧に対する前記交流電圧の基本波成分の実効値の比率である変調率に関連付けられた第二補正情報の双方を、前記検出角度を補正するための補正情報として記憶する補正情報記憶部と、前記検出角度取得部が前記検出角度を取得した角度取得時点における前記回転速度が予め定められた回転速度閾値以上である場合に、当該回転速度に基づき前記第一補正情報を取得し、前記角度取得時点における前記回転速度が前記回転速度閾値未満である場合に、当該角度取得時点における前記変調率に基づき前記第二補正情報を取得する補正情報取得部と、前記補正情報取得部が取得した補正情報に基づき前記検出角度を補正する検出角度補正部と、を備える点にある。
【0008】
一般に、交流電動機は、その回転速度と出力トルクとにより定められる様々な動作点を取り得るが、交流電動機に供給される交流電圧の変調率が同じであれば、回転速度や出力トルクによらず、基本的に、直流交流変換部が備えるスイッチング素子の、レゾルバの回転位置に対するオンオフタイミングは、類似する傾向がある。また、直流交流変換部をパルス幅変調に基づき制御する場合には、一般に、一定の周波数に設定されたキャリアに基づきスイッチング素子のオンオフタイミングが設定されるため、回転速度が高くなるにつれて、レゾルバの電気角1周当たりのスイッチング回数は減少することになる。
本願発明者らは、上記のようなスイッチング素子のオンオフタイミングと変調率との関係や、スイッチング回数と回転速度との関係に着目し、以下のような知見を得た。すなわち、回転速度が低い領域では、変調率が同じであれば、スイッチングノイズによるレゾルバの検出誤差は、類似する傾向がある。一方、回転速度が高い領域では、レゾルバの電気角1周当たりのスイッチング回数が減少するために、スイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響が小さくなり、回転速度が同じであれば、レゾルバの検出誤差は、類似する傾向がある。
本発明は、スイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響に関する上記の知見に基づきなされたものであり、上記の特徴構成によれば、補正情報を、回転速度が回転速度閾値以上の動作点に対しては回転速度に関連付けて備え、回転速度が回転速度閾値未満の動作点に対しては変調率に関連付けて備えることで、レゾルバの検出角度を補正するための補正情報のデータ量を少なく抑えつつ、レゾルバの検出角度を多くの運転状態(動作点)で適切に補正することができる。
【0009】
ここで、前記検出角度に含まれる前記レゾルバの電気角1周のN分の1(Nは正数)を周期とするN次の誤差成分に起因する、前記検出角度の誤差を低減するための補正量を規定する情報がN次誤差低減情報であり、前記第一補正情報及び前記第二補正情報の双方は、単数のN次誤差低減情報又は複数のN次誤差低減情報の重畳により構成され、前記第一補正情報及び前記第二補正情報の一方が、1次以上の特定次数のN次誤差低減情報に基づき構成され、前記第一補正情報及び前記第二補正情報の他方が、前記特定次数とは異なる次数のN次誤差低減情報を含んで構成されていると好適である。
【0010】
この構成によれば、第一補正情報及び第二補正情報の双方ついて、各補正情報に含まれる誤差の成分に着目して適切に補正情報を設定することができる。また、各補正情報が、単数のN次誤差低減情報又は複数のN次誤差低減情報の重畳により構成されるため、補正情報、ひいては補正情報記憶部の構成の簡素化を図ることもできる。
【0011】
上記のように、前記第一補正情報及び前記第二補正情報の双方が、単数のN次誤差低減情報又は複数のN次誤差低減情報の重畳により構成されている構成において、前記第一補正情報は、1次誤差低減情報で構成されているとともに、当該1次誤差低減情報に規定される前記補正量が前記回転速度に応じて設定されており、前記第二補正情報は、1次誤差低減情報に少なくとも1つの2次以上のN次誤差低減情報が重畳されて構成されているとともに、1次誤差低減情報を含むN次誤差低減情報のそれぞれに規定される前記補正量が前記変調率に応じて設定されていると好適である。
【0012】
この構成によれば、回転速度が回転速度閾値以上の領域では、スイッチングノイズの影響が小さくなるために1次の誤差成分が支配的となることを適切に考慮して、このような領域での検出角度の補正に用いられる第一補正情報を回転速度に応じて適切に設定することができる。また、回転速度が回転速度閾値未満の領域では、スイッチングノイズの影響が大きくなるために2次以上の誤差成分がレゾルバの検出角度に含まれやすくなることを適切に考慮して、このような領域での検出角度の補正に用いられる第二補正情報を変調率に応じて適切に設定することができる。
【0013】
また、前記直流交流変換部に備えられたスイッチング素子を制御するスイッチング制御部を更に備え、離散系において正弦波の形状を再現するために必要な正弦波1周期当たりのサンプリング回数が正弦波再現閾値であり、前記レゾルバの電気角1周当たりの前記スイッチング素子のスイッチング回数が前記正弦波再現閾値以上であって前記正弦波再現閾値の2倍の値以下となる回転速度に、前記回転速度閾値が設定されていると好適である。
【0014】
この構成によれば、レゾルバの電気角1周当たりのスイッチング回数が正弦波再現閾値未満となる回転速度域では、電気角に対して離散的に現れるスイッチングノイズがレゾルバの検出角度に対して2次以上の誤差成分を有意に生じさせることは起こり難いという、本願発明者らが実験結果から得た知見に鑑み、スイッチングノイズがレゾルバの検出角度に与える影響が大きい領域と小さい領域との境界となる回転速度閾値を適切に設定することができる。
【0015】
以上の各構成を備えた本発明に係る電動機駆動装置の制御を行う制御装置の技術的特徴は、電動機駆動装置の制御を行う制御装置用の検出角度補正方法や検出角度補正プログラムにも適用可能であり、そのため、本発明は、そのような方法やプログラムも権利の対象とすることができる。
【0016】
当然ながら、このような電動機駆動装置の制御を行う制御装置用の検出角度補正方法や検出角度補正プログラムも上述した制御装置に係る作用効果を得ることができ、更に、その好適な構成の例として挙げたいくつかの付加的技術を組み込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【図2】レゾルバの検出角度及び検出角度が有する誤差に関する説明図である。
【図3】1次誤差低減情報を概念的に示す図である。
【図4】2次誤差低減情報を概念的に示す図である。
【図5】3次誤差低減情報を概念的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る補正情報記憶部が備える補正情報マップを概念的に示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る回転速度閾値の設定に関する説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る補正情報記憶部が備える第一補正情報マップを概念的に示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る補正情報記憶部が備える第二補正情報マップを概念的に示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る検出角度補正処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態では、制御装置2の制御対象となる電動機駆動装置1が、三相交流により動作する交流電動機としての埋込磁石構造の同期電動機4(IPMSM、以下単に「電動機4」という。)を駆動する装置として構成されている。電動機4にはレゾルバ44が備えられ、制御装置2は、レゾルバ44の検出角度θを用いて、電動機4を所望の運転状態(動作点)とすべく電動機駆動装置1を制御する。この際、レゾルバ44の検出角度θは、補正情報記憶部25に備えられた補正情報Mに基づき補正される。
【0019】
このような構成において、本実施形態では、補正情報Mとして、電動機4の回転速度ωに関連付けられた第一補正情報M1(図8参照)と、変調率Rに関連付けられた第二補正情報M2(図9参照)とを備えている。そして、本実施形態に係る制御装置2は、回転速度ωが回転速度閾値ω0(図7参照)以上である場合には、第一補正情報M1を用いて検出角度θの補正を行い、回転速度ωが回転速度閾値ω0未満である場合には、第二補正情報M2を用いて検出角度θの補正を行う点に特徴を有している。これにより、検出角度θを補正するための補正情報Mのデータ量を少なく抑えつつ、検出角度θを電動機4の運転状態(動作点)に応じて適切に補正することが可能となっている。以下、本実施形態に係る制御装置2の構成について詳細に説明する。
【0020】
1.電動機駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係る制御装置2の制御対象である電動機駆動装置1の全体構成について、図1に基づいて説明する。電動機駆動装置1は、インバータ6、直流電源3、及び平滑コンデンサCを備えている。インバータ6は、直流電源3から供給される直流電圧であるシステム電圧Vdcを、交流電圧に変換して電動機4に供給する装置である。なお、直流電源3から供給されるシステム電圧Vdcは、平滑コンデンサCにより平滑化される。直流電源3としては、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の各種二次電池、キャパシタ、或いはこれらの組合せ等が用いられる。本実施形態では、直流電源3の電源電圧は、昇圧や降圧をされることなくそのままシステム電圧Vdcとして供給され、システム電圧Vdcはシステム電圧センサ42により検出されて制御装置2へ出力される。本実施形態では、インバータ6が本発明における「直流交流変換部」に相当する。
【0021】
インバータ6は、複数組のスイッチング素子EとダイオードDとを備えている。本実施形態では、インバータ6は、電動機4の各相(U相、V相、W相の3相)のそれぞれについて一対のスイッチング素子E、すなわち、6個のスイッチング素子Eを備えている。具体的には、スイッチング素子Eとして、U相用上アーム素子E1及びU相用下アーム素子E2、V相用上アーム素子E3及びV相用下アーム素子E4、並びにW相用上アーム素子E5及びW相用下アーム素子E6を備えている。そして、各スイッチング素子E1〜E6には、それぞれフリーホイールダイオードとして機能するダイオードD1〜D6が並列接続されている。
【0022】
図1に示すように、各相用の上アーム素子E1、E3、E5のエミッタと下アーム素子E2、E4、E6のコレクタとが、電動機4の各相のコイルにそれぞれ接続されている。また、各相用の上アーム素子E1、E3、E5のコレクタはシステム電圧線51に接続され、各相用の下アーム素子E2、E4、E6のエミッタは負極線52に接続されている。なお、本実施形態では、スイッチング素子Eは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とされている。スイッチング素子Eとして、IGBTの他に、バイポーラ型、電界効果型、MOS型など種々の構造のパワートランジスタを採用することもできる。
【0023】
スイッチング素子Eのそれぞれは、制御装置2から出力されるスイッチング制御信号Sに従ってオンオフ動作を行う。スイッチング制御信号Sは、各スイッチング素子E1〜E6に対応する6つのスイッチング制御信号S1〜S6からなり、各スイッチング制御信号Sは、ゲートを駆動するゲート駆動信号とされている。インバータ6は、システム電圧Vdcをスイッチング制御信号Sに応じた交流電圧に変換して電動機4に供給し、目標トルクに応じたトルクTMを電動機4に出力させる。なお、本実施形態では、電動機4は必要に応じて発電機としても動作するように構成されており、このような電動機4は、例えば、電動車両やハイブリッド車両等の駆動力源として用いられる。なお、電動機4が発電機として機能する際には、発電された交流電圧はインバータ6により直流電圧に変換されてシステム電圧線51に供給される。
【0024】
本実施形態では、各スイッチング素子Eは、スイッチング制御信号Sに従って、PWM(パルス幅変調)制御や矩形波制御に従ったスイッチング動作を行う。PWM制御では、U相、V相、W相の各相のインバータ6の出力電圧波形であるPWM波形が、上アーム素子E1、E3、E5がオン状態となるハイレベル期間と、下アーム素子E2、E4、E6がオン状態となるローレベル期間とにより構成されるパルスの集合で構成されると共に、その基本波成分が一定期間で略正弦波状となるように、各パルスのデューティ比が制御される。なお、詳細は省略するが、制御装置2は、電動機4に供給する交流電圧の指令値である交流電圧指令値に基づき交流電圧波形を生成し、当該交流電圧波形に基づいて、上記のPWM波形を生成するためのスイッチング制御信号Sを導出する。PWM制御では、変調率Rを「0〜0.78」の範囲で変化させることができる。ここで、変調率Rとは、直流電圧(システム電圧Vdc)に対する線間での交流電圧の基本波成分(上記交流電圧波形の基本波成分)の実効値の比率である。
【0025】
一方、矩形波制御では、各スイッチング素子Eのオン及びオフが電動機4の電気角1周期につき1回ずつ行われ、各相について電気角半周期につき1回のパルスが出力される回転同期制御が行われる。ここで、回転同期制御とは、電動機4の電気角の周期とインバータ6のスイッチング周期とを同期させる制御である。矩形波制御では、変調率Rは最大変調率である「0.78」に固定される。言い換えれば、変調率Rが最大変調率に到達すると矩形波制御モードが実行される。
【0026】
なお、本実施形態では、PWM制御の制御方式として、交流電圧波形の振幅とキャリア波形の振幅との大小関係に関して通常PWM制御と過変調PWM制御との2つの制御方式を切替可能に備えるとともに、各相の通電状態に関して三相変調制御と二相変調制御との2つの制御方式を切替可能に備えている。なお、キャリアは、例えば三角波や鋸波等とされ、本実施形態では、電動機4の動作点によらず一定の周波数とされる。
【0027】
通常PWM制御は、交流電圧波形の振幅がキャリア波形の振幅以下であるPWM制御である。このような通常PWM制御としては、正弦波PWM制御が代表的であるが、本実施形態では、正弦波PWM制御の各相の基本波に対して中性点バイアス電圧を印加する空間ベクトルPWM(SVPWM)制御を用いる。なお、SVPWM制御では、キャリアとの比較によらずにデジタル演算により直接PWM波形を生成するが、その場合でも、通常PWM制御の実行時では、交流電圧波形は仮想的なキャリア波形の振幅以下である。本発明においては、このようにキャリアを用いずにPWM波形を生成する方式も、仮想的なキャリア波形の振幅との比較で通常PWM制御又は過変調PWM制御に含めることとする。通常PWM制御としてのSVPWM制御では、変調率Rは「0〜0.707」の範囲で変化させることができる。
【0028】
過変調PWM制御は、交流電圧波形の振幅がキャリア波形の振幅を超えるPWM制御である。過変調PWM制御では、通常PWM制御に比べて、各パルスのデューティ比を基本波成分の山側で大きく谷側で小さくすることにより、インバータ6の出力電圧波形の基本波成分の波形を歪ませ、振幅が通常PWM制御よりも大きくなるように制御する。過変調PWM制御では、変調率Rは「0.707〜0.78」の範囲で変化させることができる。
【0029】
三相変調制御では、U相、V相、W相の3相のそれぞれにPWM信号を入力して制御する。一方、二相変調制御では、U相、V相、W相の3相の内の2相にそれぞれPWM信号を入力するとともに、残りの1相はオン又はオフ(定電圧)信号を入力して制御する。スイッチング素子Eから発生するスイッチングノイズ(電気的又は磁気的なノイズ)は、スイッチング回数の影響が大きいため、二相変調制御の実行時には、三相変調制御の実行時に比べてスイッチングノイズを抑制することができる。本実施形態では、変調率Rが「0.6」(より厳密には「0.61」、以下同様)未満の動作点で三相変調制御が実行され、変調率Rが0.6以上の動作点で二相変調制御が実行されるように構成されている。
【0030】
このように、本実施形態では、三相変調制御と二相変調制御とが切り替わる変調率R(本例では「0.6」)が、通常PWM制御と過変調PWM制御とが切り替わる変調率R(本例では「0.707」)よりも小さく設定されているが、前者の変調率Rを後者の変調率Rと同じ値としたり、前者の変調率Rを後者の変調率Rよりも大きい値に設定したりすることも可能である。また、通常PWM制御と過変調PWM制御とが切り替わる変調率Rは、通常PWM制御の制御方式に応じて変化し、例えばSVPRM制御にかえて正弦波PWM制御を採用する場合には、当該変調率Rは「0.6」とされる。この場合においても、三相変調制御と二相変調制御とが切り替わる変調率Rとの大小関係は、任意に設定することができる。
【0031】
2.制御装置の構成
次に、本実施形態に係る制御装置2の構成について詳細に説明する。図1に示すように、制御装置2は、検出角度取得部27と、補正情報取得部26と、検出角度補正部28と、スイッチング制御部29とを備え、電動機4に備えられたレゾルバ44の検出角度θを用いて電動機駆動装置1の制御を行う。これらの制御装置2の各機能部は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うためのハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により構成される。また、制御装置2は、補正情報記憶部25を備えている。この補正情報記憶部25は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等のように、情報の記憶が可能な、或いは情報の記憶及び書き換えが可能な記録媒体をハードウェア構成として備えて構成される。以下、制御装置2が備える各機能部について詳細に説明する。
【0032】
2−1.検出角度取得部
検出角度取得部27は、レゾルバ44の検出角度θを取得する機能部である。レゾルバ44は、電動機4のロータに隣接して配置されており、電動機4のステータに対するロータの回転位置(電気角)や回転速度ωを検出するために設けられている。なお、ロータの回転位置とは、電気角上でのロータの回転角度を表す。
【0033】
レゾルバ44は、センサロータ(図示せず)とセンサステータ(図示せず)とを備えており、センサロータが電動機4のロータと一体回転するように配置されている。これにより、レゾルバ44の検出信号を処理することで、電動機4のロータの回転位置(電気角)を検出することが可能となっている。なお、本実施形態では、レゾルバ44は、軸倍角が「4」(4Xタイプ)のレゾルバとされ、センサロータの1周が電気角1周の4倍とされている。すなわち、センサロータの1回転で4周期分の角度信号が出力される。なお、レゾルバ44として、軸倍角が「4」以外のものを採用することもでき、例えば、軸倍角が「1」、「2」、「8」等のものを採用することができる。
【0034】
レゾルバ44からの出力信号は、R/Dコンバータ(レゾルバ・ディジタル変換器)30により3相の出力信号、具体的には、A相信号、B相信号及びZ相信号に変換されて、制御装置2へ出力される。すなわち、制御装置2には、R/Dコンバータ30より3相の出力信号(A相信号、B相信号、及びZ相信号)が入力される。そして、検出角度取得部27は、これらの出力信号に基づいてレゾルバ44の検出角度θを導出することで、検出角度θを取得する。そして、検出角度取得部27が取得した検出角度θは、検出角度補正部28に出力される。
【0035】
ここで、図2を参照して、検出角度取得部27にて実行されるレゾルバ44の検出角度θの導出手順について説明する。図2は、電動機4のロータが等速で回転している状況を模式的に表したものである。図2に示すように、Z相信号は、基準角度毎にR/Dコンバータ30から出力されるパルス(矩形波状パルス)を含んだ信号(以下、「Z相パルス信号」という。)であり、本例では、Z相パルス信号は、電気角1周の長さに設定された制御周期T毎に発生するパルスを含んだ信号とされている。上記のように、本実施形態では、レゾルバ44は軸倍角が「4」のものとされているため、電動機4のロータの1周(センサロータの1周)は、制御周期Tの4倍に相当する。そして、Z相パルス信号におけるパルスの立ち上がり点を基準点(ゼロ点)としてレゾルバ44の電気角が設定されている。具体的には、Z相パルス信号における一のパルスの立ち上がり点を「0°」、当該一のパルスの次のパルスの立ち上がり点を「360°」として電気角が設定されている。
【0036】
なお、パルスの立ち下がり点に基づき電気角が設定される構成とすることもできる。また、Z相パルス信号が、センサロータが1周する毎、すなわち、機械角1周毎に発生するパルスを含んだ信号である構成とすることもでき、このような構成においても、当該パルスの立ち上がり点或いは立ち下がり点と軸倍角とに基づき電気角の「0°」を上記と同様に設定することができる。
【0037】
図示は省略するが、A相信号及びB相信号は、極めて短い所定の周期で発生するパルスを含む矩形波状の信号である。そして、A相信号及びB相信号は、互いに所定の位相差(例えば、90°の位相差)を有している。Z相パルス信号の一周期(制御周期T)中において、A相信号及びB相信号には所定数のパルスが含まれるように設定されている。そのため、Z相パルス信号の上記の基準点(ゼロ点)から各時点までにA相信号やB相信号に現れたパルスを計数することにより、その時点での回転位置(電気角)を求めることができる。例えば、制御周期T中にA相信号及びB相信号のそれぞれに1024個のパルスが含まれている場合を想定すると、Z相パルス信号の基準点(ゼロ点)からある時点までにA相信号やB相信号にn個のパルスが現れた場合には、その時点における回転位置(回転位相)は、「(360°/1024)×n」の値の電気角に相当する。なお、A相信号及びB相信号は所定の位相差を有することから、これらの出力順序に基づいて電動機4のロータの回転方向を判別することができる。
【0038】
検出角度取得部27は上記のようにA相信号やB相信号に含まれるパルスを計数することにより、レゾルバ44のセンサロータの電気角を導出する。そして、本例では、レゾルバ44の電気角のゼロ点と、電動機4の電気角のゼロ点とが互いに等しくなるように設定されている。そのため、レゾルバ44のセンサロータの電気角が、そのまま電動機4のロータの電気角となる。
【0039】
図2には、検出角度取得部27が上記のように導出したレゾルバ44の検出角度θの一例を示している。なお、図2中の破線は、この場合における、レゾルバ44のセンサロータの真の電気角θrを示している。上記のように、ここでは、電動機4のロータが等速で回転している状況を想定しているため、真の電気角θrは時間の増加とともに一様に増加し、図2に示すような直線で表される。一方、検出角度θは一般に誤差を有し、真の電気角θrからのずれが生じる。図2に示す例では、制御周期T内におけるある時刻(具体的には、制御周期T内の中央点)までは、検出角度θが真の電気角θrよりも大きくなり、当該時刻以降は、検出角度θが真の電気角θrよりも小さくなっている。
【0040】
このような検出角度θが有する誤差には、レゾルバ44の構造や特性に起因する誤差と、レゾルバ44の周囲の環境に起因する誤差とが含まれる。レゾルバ44の構造や特性に起因する誤差には、例えば、レゾルバ44が備えるコイルの巻きむらや組み付け誤差等に起因する誤差があり、このような誤差は一般的に、1次の誤差成分(詳細は後述する)として検出角度θに含まれる。
【0041】
また、レゾルバ44の周囲の環境に起因する誤差には、例えば、インバータ6が備えるスイッチング素子E(E1〜E6)から発生するスイッチングノイズに起因する誤差や、電動機4からの漏洩磁束に起因する誤差等がある。スイッチングノイズに起因する誤差は、例えば、スイッチング素子Eから発生した高周波ノイズがレゾルバ44に到達し、レゾルバ44から出力される出力信号に影響を与えることにより生じ得る。また、スイッチング素子E(E1〜E6)から発生した高周波ノイズが、レゾルバ44からR/Dコンバータ30を経て制御装置2に至る信号の経路中のいずれかの場所に到達し、当該場所に配置された素子や配線中を流れる信号に影響を与えることにより、スイッチングノイズに起因する誤差が生じ得る。
【0042】
そして、このような検出角度θに含まれる誤差は、一般的に、レゾルバ44の電気角1周(制御周期T)のN分の1(Nは正数であり、以下「次数」という場合がある。)を周期とする正弦波、或いは次数の異なる複数の正弦波の足し合わせにより表すことができる。例えば、図2に示す例では、検出角度θに含まれる誤差は、1次(すなわち次数が「1」、以下同様)の正弦波により表すことができる。以下では、N次の正弦波により表される誤差成分を、「N次の誤差成分」という。そして、N次の誤差成分を補正するための補正情報Mも、同様にN次の正弦波により表される。以下では、N次の誤差成分に起因する検出角度θの誤差を低減するための補正情報Mを、「N次誤差低減情報L〔N〕」という。なお、補正情報M(第一補正情報M1や第二補正情報M2)を構成するN次誤差低減情報L〔N〕として、次数Nが自然数以外の小数(例えば、「0.5」のような純小数や、「1.5」のような帯小数等)のN次誤差低減情報L〔N〕も含まれる構成とすることができ、また、補正情報M(第一補正情報M1や第二補正情報M2)を構成するN次誤差低減情報L〔N〕として、次数Nが自然数のN次誤差低減情報L〔N〕のみが含まれる構成とすることもできる。
【0043】
図3、図4、図5は、それぞれ、1次誤差低減情報L〔1〕、2次誤差低減情報L〔2〕、3次誤差低減情報L〔3〕を模式的に表したものである。なお、図中の横軸は検出角度θであり、縦軸は補正値Δθである。本例では、補正値Δθは、検出角度θが真の電気角θrより大きい場合に負の値となるように規定されており、検出角度θに補正値Δθを加算することで検出角度θを補正する。なお、N次誤差低減情報L〔N〕による補正の程度は、当該N次誤差低減情報L〔N〕がN次の誤差成分に起因する誤差を低減するために規定する正弦波の振幅A〔N〕に応じたものとなる。すなわち、本実施形態では、振幅A〔N〕が本発明における「補正量」に相当する。なお、この振幅A〔N〕は負の値をとり得るものである。例えば、図3に示す1次誤差低減情報L〔1〕において振幅A〔N〕が負の値とされる場合には、図3に示す正弦波を上下に反転させたような補正情報Mとなる。他の次数のN次誤差低減情報L〔N〕についても同様である。
【0044】
なお、ここでは、R/Dコンバータ30から入力される3相の出力信号(A相信号、B相信号、及びZ相信号)に基づき、検出角度取得部27がレゾルバ44の検出角度θを導出して取得する構成を例として示したが、例えば、R/Dコンバータ30やそれに付随して設けられた装置がレゾルバ44の検出角度θを導出し、その検出角度θを検出角度取得部27が取得する構成とすることもできる。
【0045】
2−2.補正情報記憶部
補正情報記憶部25は、レゾルバ44の検出角度θを補正するための補正情報Mを記憶している。具体的には、補正情報記憶部25は、電動機4の回転速度ωに関連付けられた第一補正情報M1、及び変調率Rに関連付けられた第二補正情報M2の双方を、補正情報Mとして記憶している。本実施形態では、補正情報Mは、検出角度θに対する補正値Δθを規定した情報とされている。そして、後述するように、検出角度取得部27が検出角度θを取得した時点(以下、「角度取得時点」という。)における電動機4の回転速度ωが予め定められた回転速度閾値ω0以上である場合には、第一補正情報M1に基づき検出角度θの補正が行われ、角度取得時点における電動機4の回転速度ωが回転速度閾値ω0未満である場合には、第二補正情報M2に基づき検出角度θの補正が行われる。
【0046】
本実施形態では、図6に概念的に示すように、補正情報Mはマップ(以下、「補正情報マップ」という。)の形態で補正情報記憶部25に記憶されている。図6に示す例では、上記の回転速度閾値ω0がω4に設定されており(図7参照)、当該回転速度閾値ω0以上の動作点域には第一補正情報M1(M1a〜M1f)が割り当てられ、当該回転速度閾値ω0未満の動作点域には第二補正情報M2(M2a〜M2f)が割り当てられている。このように、補正情報マップは、回転速度ωに関連付けて第一補正情報M1を規定する第一補正情報マップと、変調率Rに関連付けて第二補正情報M2を規定する第二補正情報マップとを備えている。
【0047】
2−2−1.第一補正情報マップ
図8に示すように、第一補正情報マップは、回転速度ωがとり得る値の範囲を複数領域に区分して設定される複数の回転速度域毎に第一補正情報M1を規定している。そして、本実施形態では、第一補正情報M1は、図3に示すような1次誤差低減情報L〔1〕で構成されているとともに、当該1次誤差低減情報L〔1〕に規定される補正量(本例では振幅A〔1〕)が回転速度ωに応じて設定されている。すなわち、第一補正情報M1は、1次のN次誤差低減情報(1次誤差低減情報L〔1〕)に基づき構成されており、本実施形態では、本発明における「特定次数」が「1」とされている。図8に示す例では、1次誤差低減情報L〔1〕が規定する振幅A〔1〕は、回転速度ωが増加するに従って減少する。具体的には、回転速度ωが低い側から高い側に向かって、M1a,M1b,M1c,M1d,M1e,M1fの第一補正情報M1が割り当てられており、これらの第一補正情報M1を構成する1次誤差低減情報L〔1〕に規定される振幅A〔1〕が、M1a,M1b,M1c,M1d,M2e,M1fの順に減少するように設定されている。
【0048】
1次誤差低減情報L〔1〕が規定する振幅A〔1〕と回転速度ωとの関係は、レゾルバ44やR/Dコンバータ30の構造や特性に応じて適宜変更可能である。例えば、1次誤差低減情報L〔1〕が規定する振幅A〔1〕を、回転速度ωが増加するに従って増加するように設定することもできる。また、1次誤差低減情報L〔1〕が規定する振幅A〔1〕を、回転速度ωが増加するに従って所定の回転速度ωまでは増加し、当該所定の回転速度ωを超えると回転速度ωが増加するに従って減少するように設定することもできる。また、1次誤差低減情報L〔1〕が規定する振幅A〔1〕を、少なくとも一部の回転速度域において、回転速度ωによらず一定値に設定することも可能である。
【0049】
なお、このように回転速度ωに関連付けて第一補正情報M1を備えるのは、本願発明者らの鋭意研究により見出された知見により、第一補正情報M1が検出角度θの補正に用いられる回転速度域(回転速度閾値ω0以上の領域)では、回転速度ωが同じであれば、トルクTMが異なっていても検出角度θに含まれる誤差が、類似する傾向があるからである。すなわち、この回転速度域では、回転速度ωが低い領域に比べてレゾルバ44の電気角1周(制御周期T)とレゾルバ44を励磁するための励磁信号(例えば、10[kHz]や20[kHz]の信号)の周期との差が小さくなるために、検出角度θに含まれる誤差に対する影響は、トルクTMに比べて回転速度ωが支配的になる。
【0050】
2−2−2.第二補正情報マップ
図9に示すように、第二補正情報マップは、変調率Rがとり得る値の範囲を複数領域に区分して設定される複数の変調率域毎に第二補正情報M2を規定している。本実施形態では、図9に示すように、変調率Rがとり得る値の範囲を6つの領域に区分して6つの変調率域が設定されている。具体的には、変調率Rが0.1未満の領域(以下、「第一変調率域」という。)、変調率Rが0.1以上0.2未満の領域(以下、「第二変調率域」という。)、変調率Rが0.2以上0.3未満の領域(以下、「第三変調率域」という。)、変調率Rが0.3以上0.4未満の領域(以下、「第四変調率域」という。)、変調率Rが0.4以上0.6未満の領域(以下、「第五変調率域」という。)、変調率Rが0.6以上の領域(以下、「第六変調率域」という。)の6つの変調率域が設定されている。そして、このように設定された各変調率域に対して、変調率Rが小さい側から大きい側に向かって、M2a,M2b,M2c,M2d,M2e,M2fの第二補正情報M2が割り当てられている。
【0051】
そして、本実施形態では、第二補正情報M2は、1次誤差低減情報L〔1〕に少なくとも1つの2次以上のN次誤差低減情報L〔N〕が重畳されて構成されているとともに、1次誤差低減情報L〔1〕を含むN次誤差低減情報L〔N〕のそれぞれに規定される補正量(本例では振幅A〔N〕)が変調率Rに応じて設定されている。なお、補正量(A〔N〕)を零に設定することも可能である。すなわち、本実施形態では、第二補正情報M2は、特定次数(本例では「1」)とは異なる次数のN次誤差低減情報L〔N〕を含んで構成されている。
【0052】
図9に示すように、本実施形態では、第一変調率域、第二変調率域、及び第六変調率域に割り当てられた第二補正情報M2は、1次誤差低減情報L〔1〕が支配的であり、1次誤差低減情報L〔1〕が規定する振幅A〔1〕が2次以上のN次誤差低減情報L〔N〕が規定する振幅A〔N〕に対して大きく設定されている。一方、第三変調率域、第四変調率域、及び第五変調率域に割り当てられた第二補正情報M2は、1次誤差低減情報L〔1〕に加えて2次以上のN次誤差低減情報L〔N〕に対しても補正量(A〔N〕)が有意な値となるように設定されている。
【0053】
具体的には、第二補正情報M2を表す波形は、変調率Rが0から0.6に向かうに従って歪みが大きくなる。これは、変調率Rが0から0.6に向かうに従ってスイッチング素子Eのレゾルバ44の回転位置に対するオンオフタイミングが変化し、スイッチングノイズがレゾルバ44の検出値に与える影響が大きくなることを意味する。一方、変調率Rが0.6以上になると、波形の歪みは小さくなる。これは、変調率Rが0.6以上の領域では、上記のように二相変調制御方式によるPWM制御や矩形波制御が行われるため、スイッチング素子Eのオンオフ回数が抑制され、スイッチングノイズがレゾルバ44の検出値に与える影響が小さくなるからである。
【0054】
なお、このように変調率Rに関連付けて第二補正情報M2を備えるのは、本願発明者らの鋭意研究により見出された知見により、第二補正情報M2が検出角度θの補正に用いられる回転速度域(回転速度閾値ω0未満の領域)では、変調率Rが同じであれば、スイッチング素子Eのレゾルバ44の回転位置に対するオンオフタイミングが、類似する傾向があるため、トルクTMや回転速度ωが異なっていても検出角度θに含まれる誤差が、類似する傾向があるからである。
【0055】
第一補正情報マップや第二補正情報マップは、試験やシミュレーション等により作成することができ、例えば、制御装置2の製造時に、補正情報記憶部25に記憶させることができる。また、制御装置2による電動機駆動装置1の制御時に補正情報を学習し、予め補正情報記憶部25に記憶されている補正値マップを更新したり、補正値マップを新たに作成する構成とすることもできる。このように制御装置2による電動機駆動装置1の制御時に補正情報を学習する構成は、例えば、レゾルバ44、R/Dコンバータ30、制御装置2等を構成する部品に経年劣化等が生じる場合に、特に有効である。
【0056】
2−2−3.回転速度閾値の設定
ここで、回転速度閾値ω0の設定について、図7に基づいて説明する。図7は、PWM制御の実行時における、レゾルバ44の電気角1周当たりのスイッチング素子Eのスイッチング回数K(以下、本節において、単に「スイッチング回数K」という。)の回転速度ωに対する変化を表したグラフである。この図に示すように、スイッチング回数Kは、回転速度ωが増加するに従って2次曲線的に減少し、回転速度ωに対する変化率は、回転速度ωが低い領域では大きく、回転速度ωが高い領域では小さくなる。PWM制御の実行時におけるスイッチング素子Eのスイッチング周波数は、キャリア周波数の2倍となる。そして、ここで対象とするスイッチング回数Kは、スイッチング周波数に応じたスイッチング回数に基づき定まる。なお、ここで対象とするスイッチング回数Kは、検出角度θに対して誤差を与えるスイッチングのみを考慮した回数であり、一般的には、スイッチング周波数に応じたスイッチング回数と一致する。
【0057】
ところで、検出角度θの誤差に含まれる2次以上の誤差成分は、主にスイッチングノイズによるものである。そして、本願発明者らは、鋭意研究の結果、スイッチング回数Kが所定値以下となる回転速度域では、スイッチング回数Kが少なくなることにより、検出角度θに含まれる誤差成分が実質的に1次の誤差成分のみとなることを見出した。この知見に鑑み、本実施形態では、スイッチング回数Kがそのような所定値となる回転速度ω(本例ではω4)を回転速度閾値ω0として設定し、回転速度ωが回転速度閾値ω0以上となる領域で用いられる第一補正情報M1を、1次誤差低減情報L〔1〕で構成している。なお、図7に示すように、回転速度閾値ω0は、概ね、スイッチング回数Kの回転速度ωに対する変化率が高い回転速度域と当該変化率が低い回転速度域との境界付近に位置する。
【0058】
より具体的には、回転速度閾値ω0は、本実施形態では図7に示すように、スイッチング回数Kが正弦波再現閾値NL以上であって正弦波再現閾値NLの2倍の値(NH)以下となる回転速度ωに設定されている。ここで、正弦波再現閾値NLは、離散系において正弦波の形状を再現するために必要な正弦波1周期当たりのサンプリング回数である。言い換えれば、正弦波再現閾値NLは、離散系において正弦波の形状を十分に再現するための正弦波1周期当たりのサンプリング回数である。正弦波再現閾値NLは、例えば、「10」や「12」とすることができる。なお、正弦波再現閾値NLに対応する回転速度ωは、電動機4についての磁極対数、レゾルバ44の軸倍角、スイッチング周波数(キャリア周波数)等に応じて定まる。
【0059】
なお、このように正弦波再現閾値NLに基づき回転速度閾値ω0を設定するのは、本願発明者らが行った実験結果に鑑みて、スイッチング回数Kが正弦波再現閾値NL未満となる回転速度域では、電気角に対して離散的に現れるスイッチングノイズが検出角度θに対して2次以上の誤差成分を有意に生じさせることは起こり難いからである。
【0060】
なお、本実施形態では図7に示すように、回転速度閾値ω0が、スイッチング回数Kが正弦波再現閾値NLと正弦波再現閾値NLの2倍の値(NH)との中間の値となる回転速度ω(本例ではω4)に設定されているが、回転速度閾値ω0を、スイッチング回数Kが正弦波再現閾値NLや正弦波再現閾値NLの2倍の値(NH)と等しくなる回転速度ωに設定することも可能である。
【0061】
2−3.補正情報取得部
補正情報取得部26は、電動機4の動作点に応じて、補正情報記憶部25から補正情報Mを取得する機能部である。具体的には、補正情報取得部26は、検出角度取得部27が検出角度θを取得した時点(角度取得時点)における回転速度ωが予め定められた回転速度閾値ω0以上であるか否かを判定する。そして、補正情報取得部26は、角度取得時点における回転速度ωが回転速度閾値ω0以上である場合には、当該回転速度ωに基づき第一補正情報M1を取得し、角度取得時点における回転速度ωが回転速度閾値ω0未満である場合には、当該角度取得時点における変調率Rに基づき第二補正情報M2を取得する。そして、補正情報取得部26が取得した補正情報Mは、検出角度補正部28に出力される。
【0062】
本実施形態では、上記のように、補正情報記憶部25には補正情報Mがマップの形態で記憶されている。そして、補正情報取得部26は、角度取得時点における回転速度ωが回転速度閾値ω0以上である場合には、補正情報記憶部25が備える第一補正情報マップ(図8)を参照して、当該回転速度ωが含まれる回転速度域に関連付けられた第一補正情報M1を取得する。
【0063】
一方、補正情報取得部26は、角度取得時点における回転速度ωが回転速度閾値ω0未満である場合には、補正情報記憶部25が備える第二補正情報マップ(図9)を参照して、角度取得時点における変調率Rが含まれる変調率域に関連付けられた第二補正情報M2を取得する。なお、詳細な説明は省略するが、制御装置2は変調率Rを導出する機能部(変調率導出部)を備え、補正情報取得部26が第二補正情報M2を取得する際には、当該変調率導出部が導出した変調率Rが補正情報取得部26へ出力される。
【0064】
本実施形態では、検出角度取得部27が、レゾルバ44の検出角度θとともに電動機4の回転速度ωを取得し、検出角度取得部27が取得した回転速度ωが補正情報取得部26へ出力されることで、補正情報取得部26が角度取得時点における回転速度ωを取得するように構成されている。なお、検出角度取得部27は、例えば、取得した検出角度θの時間的変化(すなわち、検出角度θの微分値)や、Z相パルス間の時間間隔等に基づき、電動機4の回転速度ωを導出して取得する。
【0065】
2−4.検出角度補正部
検出角度補正部28は、補正情報取得部26が取得した補正情報Mに基づき検出角度θを補正する機能部である。上記のように、本実施形態では、補正情報Mは、検出角度θに対する補正値Δθを規定した情報とされており、補正値Δθは、検出角度θが真の電気角θrより大きい場合に負の値となるように規定されている。よって、検出角度補正部28は、検出角度取得部27から入力される検出角度θと、補正情報取得部26から入力される補正情報Mに規定された補正値Δθとに基づき、θにΔθを加算することで、検出角度θの補正を行う。そして、補正後の検出角度θは、スイッチング制御部29に出力される。
【0066】
2−5.スイッチング制御部
スイッチング制御部29は、インバータ6に備えられたスイッチング素子Eを制御する機能部である。具体的には、スイッチング制御部29は、スイッチング素子Eをスイッチングさせるためのスイッチング制御信号S(S1〜S6)を生成する。この際、スイッチング制御部29は、検出角度補正部28から入力される補正後の検出角度θ、3相(U相、V相、W相)の電流値、要求されるトルクTM等に基づきスイッチング制御信号Sを生成する。
【0067】
なお、インバータ6と電動機4の各相のコイルとの間を流れる各相の電流値は、図1に示すように、電流センサ43により検出されて制御装置2へ入力される。なお、ここでは、U相、V相、W相の各相の電流値を電流センサ43により検出する場合を例として示しているが、3相の電流は平衡状態にあり、それらの総和は零である。よって、3相のうちの2相の電流値を電流センサ43により検出し、残りの1相の電流値は演算によって求める構成としても良い。
【0068】
3.検出角度補正処理の手順
次に、図10を参照して、本実施形態に係る制御装置2において実行される検出角度補正処理の手順(検出角度補正方法)について説明する。以下に説明する検出角度補正処理の手順は、制御装置2が備える上記の各機能部(検出角度取得部27、補正情報取得部26、検出角度補正部28)を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。これらの各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御装置2が有する演算処理装置が、各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0069】
まず、検出角度取得部27が、レゾルバ44の検出角度θを取得するとともに(ステップ#01)、検出角度θの取得時点(角度取得時点)における電動機4の回転速度ωを取得する(ステップ#02)。そして、当該回転速度ωが回転速度閾値ω0以上である場合には(ステップ#03:Yes)、補正情報取得部26は、当該回転速度ωに基づき、補正情報記憶部25より第一補正情報M1を取得する(ステップ#04)。そして、検出角度補正部28は、補正情報取得部26が取得した第一補正情報Mに基づき、検出角度取得部27が取得した検出角度θを補正する(ステップ#05)。
【0070】
一方、検出角度θの取得時点(角度取得時点)における回転速度ωが回転速度閾値ω0未満である場合には(ステップ#03:No)、補正情報取得部26は、変調率Rを取得し(ステップ#06)、当該変調率Rに基づき、補正情報記憶部25より第二補正情報M2を取得する(ステップ#07)。そして、検出角度補正部28は、補正情報取得部26が取得した第二補正情報Mに基づき、検出角度取得部27が取得した検出角度θを補正する(ステップ#05)。
【0071】
なお、ステップ#04やステップ#07の処理においては、回転速度ωや変調率Rの値によっては、同じ補正情報Mを再度取得する場合がある。このような場合には、再度補正情報Mを取得せずに前回取得した補正情報Mをそのまま利用する構成としても良く、或いは、再度同じ補正情報Mを取得する構成とすることもできる。
【0072】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態を説明する。なお、以下の各々の実施形態で開示される特徴は、その実施形態でのみ利用できるものではなく、矛盾が生じない限り、別の実施形態にも適用可能である。
【0073】
(1)上記の実施形態では、キャリア周波数が電動機4の動作点によらず一定とされる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、トルクTMや回転速度ω等で定まる電動機4の動作点等に応じて、キャリア周波数が切り替えられる構成とすることもできる。このような構成では、正弦波再現閾値NLがキャリア周波数とともに変化することに鑑みて、複数のキャリア周波数に対して異なる回転速度閾値ω0を設定し、キャリア周波数に応じた複数の補正情報マップ(第一補正情報マップ及び第二補正情報マップ)が備えられた構成とすることができる。すなわち、回転速度閾値ω0や補正情報マップが複数設定された構成となる。このような構成では、角度取得時点におけるキャリア周波数が補正情報取得部26に入力され、補正情報取得部26が、当該キャリア周波数に対応する回転速度閾値ω0や補正情報マップに基づき上記実施形態と同様に処理を行う構成とすることができる。
【0074】
(2)上記の実施形態では、レゾルバ44の電気角1周当たりのスイッチング素子Eのスイッチング回数Kが正弦波再現閾値NL以上であって正弦波再現閾値NLの2倍の値NH以下となる回転速度ωに、回転速度閾値ω0が設定されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、回転速度閾値ω0を、正弦波再現閾値NLとは無関係に、或いは正弦波再現閾値NLに加えて、R/Dコンバータ30が備える制御器の特性(クロック周波数や角度演算ループに係る伝達関数の係数)等に応じて設定する構成とすることもできる。
【0075】
(3)上記の実施形態では、第一補正情報M1が、1次誤差低減情報L〔1〕で構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一補正情報M1を、第二補正情報M2と同様に、1次誤差低減情報L〔1〕に少なくとも1つの2次以上のN次誤差低減情報L〔N〕を重畳して構成し、1次誤差低減情報L〔1〕を含むN次誤差低減情報L〔N〕のそれぞれに規定される補正量が回転速度ωに応じて設定された構成とすることができる。この場合において、第二補正情報M2を、1次誤差低減情報L〔1〕で構成し、当該1次誤差低減情報L〔1〕に規定される補正量が変調率Rに応じて設定された構成とすることも可能である。
【0076】
(4)上記の実施形態では、第一補正情報M1及び第二補正情報M2の双方が、1次誤差低減情報L〔1〕を含んで構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一補正情報M1及び第二補正情報M2の少なくとも一方を、1次誤差低減情報L〔1〕を含まずに構成、すなわち、1次以外の単数又は複数のN次誤差低減情報L〔N〕に基づき構成することもできる。例えば、第一補正情報M1を1次誤差低減情報L〔1〕で構成し、第二補正情報M2を高次(例えば、2次や3次等)のN次誤差低減情報L〔N〕で構成することができる。
また、このような場合において、第一補正情報M1と第二補正情報M2との一方(例えば第一補正情報M1)を、1より大きい次数のN次誤差低減情報L〔N〕に基づき構成し、他方(例えば第二補正情報M2)を、当該N次誤差低減情報L〔N〕とは異なる次数のN次誤差低減情報L〔N〕を含んで構成することができる。例えば、第一補正情報M1を2次誤差低減情報L〔2〕で構成し、第二補正情報M2を2次誤差低減情報L〔2〕と3次誤差低減情報L〔3〕との重畳により構成することができる。
なお、いずれの場合でも、第一補正情報M1を構成する単数又は複数のN次誤差低減情報L〔N〕のそれぞれに規定される補正量が回転速度ωに応じて設定され、第二補正情報M2を構成する単数又は複数のN次誤差低減情報L〔N〕のそれぞれに規定される補正量が変調率Rに応じて設定された構成とすることができる。
【0077】
(5)上記の実施形態では、補正情報マップが、変調率Rや回転速度ωに応じて電動機4の動作点範囲を互いに重複しない複数の領域に区分し、各領域に対して補正情報Mを規定している構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、補正情報マップに規定される各領域が、互いに重複する構成とすることもできる。このような構成では、角度取得時点における変調率Rや回転速度ωが重複する領域にある場合には、他の指標(電動機4が電動機として機能しているか発電機として機能しているか否かや、インバータ6の制御方式、或いはシステム電圧Vdc等)に基づき何れの領域に割り当てられた補正情報Mを用いるかを決定する構成とすることができる。また、変調率Rや回転速度ωの変化の方向を考慮して、何れの領域に割り当てられた補正情報Mを用いるかを決定する構成とすることもできる。
【0078】
(6)上記の実施形態では、補正情報Mが、検出角度θに対する補正値Δθを規定している構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、補正情報Mが、検出角度θに対する補正値Δθを直接的に備えるのではなく、構成要素である単数又は複数のN次誤差低減情報L〔N〕の種類、及び当該単数又は複数のN次誤差低減情報L〔N〕の補正量(振幅A〔N〕)のみを備え、補正情報取得部26が、これらに基づき検出角度θに対する補正値Δθを導出する構成とすることもできる。また、補正情報Mが、R/Dコンバータ30から出力されるA相信号やB相信号に含まれるパルスの計数値に対する補正値を規定している構成とすることもできる。このような構成では、検出角度取得部27が取得したパルスの計数値で表された検出角度が検出角度補正部28へ出力され、検出角度補正部28がパルスの計数値を補正して、補正後のパルスの計数値に基づき検出角度を電気角に換算する構成とすることができる。
【0079】
(7)上記の実施形態では、補正情報Mが、変調率Rや回転速度ωの領域に対して規定された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、補正情報Mが、離散的に設定された変調率Rや回転速度ωに対して規定されたものであり、線形補間等により必要な補正情報Mが取得される構成とすることもできる。
【0080】
(8)上記の実施形態では、第一補正情報M1が電動機4の回転速度ωに関連付けて記憶され、第二補正情報M2が変調率Rに関連付けて記憶された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一補正情報M1及び第二補正情報M2の少なくとも一方が、システム電圧Vdcやインバータ6の制御方式にも更に関連付けて記憶された構成とすることもできる。
【0081】
(9)上記の実施形態では、直流電源3の電源電圧がそのままシステム電圧Vdcとして供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、電動機駆動装置1が、直流電源3の電源電圧を昇圧或いは降圧するコンバータを備え、コンバータの出力がシステム電圧Vdcとして供給される構成とすることもできる。
【0082】
(10)上記の実施形態では、交流電動機(電動機4)が三相交流により動作する埋込磁石構造の同期電動機(IPMSM)である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、交流電動機として、表面磁石構造の同期電動機(SPMSM)を用いることができ、或いは、同期電動機以外にも、例えば、誘導電動機等を用いることもできる。また、このような交流電動機に供給する交流として、三相以外の単相、二相、或いは四相以上の多相交流を用いることができる。
【0083】
(11)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、交流電動機に備えられたレゾルバの検出角度を用いて、直流電圧を交流電圧に変換して交流電動機に供給する直流交流変換部を備えた電動機駆動装置の制御を行う制御装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1:電動機駆動装置
2:制御装置
4:電動機(交流電動機)
6:インバータ(直流交流変換部)
25:補正情報記憶部
26:補正情報取得部
27:検出角度取得部
28:検出角度補正部
29:スイッチング制御部
44:レゾルバ
A〔N〕:振幅(補正量)
E,E1〜E6:スイッチング素子
K:スイッチング回数
L〔N〕:N次誤差低減情報
M:補正情報
M1:第一補正情報
M2:第二補正情報
NL:正弦波再現閾値
R:変調率
θ:検出角度
ω:回転速度
ω0:回転速度閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電動機に備えられたレゾルバの検出角度を用いて、直流電圧を交流電圧に変換して前記交流電動機に供給する直流交流変換部を備えた電動機駆動装置の制御を行う制御装置であって、
前記レゾルバの検出角度を取得する検出角度取得部と、
前記交流電動機の回転速度に関連付けられた第一補正情報、及び前記直流電圧に対する前記交流電圧の基本波成分の実効値の比率である変調率に関連付けられた第二補正情報の双方を、前記検出角度を補正するための補正情報として記憶する補正情報記憶部と、
前記検出角度取得部が前記検出角度を取得した角度取得時点における前記回転速度が予め定められた回転速度閾値以上である場合に、当該回転速度に基づき前記第一補正情報を取得し、前記角度取得時点における前記回転速度が前記回転速度閾値未満である場合に、当該角度取得時点における前記変調率に基づき前記第二補正情報を取得する補正情報取得部と、
前記補正情報取得部が取得した補正情報に基づき前記検出角度を補正する検出角度補正部と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記検出角度に含まれる前記レゾルバの電気角1周のN分の1(Nは正数)を周期とするN次の誤差成分に起因する、前記検出角度の誤差を低減するための補正量を規定する情報がN次誤差低減情報であり、
前記第一補正情報及び前記第二補正情報の双方は、単数のN次誤差低減情報又は複数のN次誤差低減情報の重畳により構成され、
前記第一補正情報及び前記第二補正情報の一方が、1次以上の特定次数のN次誤差低減情報に基づき構成され、
前記第一補正情報及び前記第二補正情報の他方が、前記特定次数とは異なる次数のN次誤差低減情報を含んで構成されている請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第一補正情報は、1次誤差低減情報で構成されているとともに、当該1次誤差低減情報に規定される前記補正量が前記回転速度に応じて設定されており、
前記第二補正情報は、1次誤差低減情報に少なくとも1つの2次以上のN次誤差低減情報が重畳されて構成されているとともに、1次誤差低減情報を含むN次誤差低減情報のそれぞれに規定される前記補正量が前記変調率に応じて設定されている請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記直流交流変換部に備えられたスイッチング素子を制御するスイッチング制御部を更に備え、
離散系において正弦波の形状を再現するために必要な正弦波1周期当たりのサンプリング回数が正弦波再現閾値であり、
前記レゾルバの電気角1周当たりの前記スイッチング素子のスイッチング回数が前記正弦波再現閾値以上であって前記正弦波再現閾値の2倍の値以下となる回転速度に、前記回転速度閾値が設定されている請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−125106(P2012−125106A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275966(P2010−275966)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】