説明

剥離剤組成物および剥離材

【課題】電子部品などへの悪影響を与えることなく、耐溶剤性、耐熱性および基材密着性に優れるとともに、剥離力の調整が可能な長鎖アルキル基を含有するアクリル樹脂系剥離剤組成物、および該組成物からなる剥離層を有する剥離材を提供すること。
【解決手段】本発明に係る剥離剤組成物は、下記一般式(1)で表わされる構成単位を含有する(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)と、アミノ樹脂からなる架橋剤(B)とを含み、該ポリマー(A)と架橋剤(B)との重量比(A)/(B)が、99.9/0.1〜30/70であることを特徴とする。
【化1】


(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離剤組成物および剥離材に関する。より詳しくは、主剤としてポリ(メタ)アクリル酸エステルと、架橋剤としてアミノ樹脂とを含有する剥離剤組成物、および基材上に該組成物からなる剥離層を有する剥離材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスなどの製造工程において粘着シートが用いられているが、通常、このような粘着シートの粘着層には、粘着層を保護するために、基材上にシリコーン化合物を含む剥離剤組成物からなる剥離層を有する剥離材が積層されている。
【0003】
しかしながら、シリコーン化合物は一般的に転移しやすい性質を有しているため、半導体分野において、このような粘着シートを用いた場合、剥離層を構成するシリコーン化合物が粘着層に転移して、半導体デバイスなどの回路の不具合を招く原因になっていると考えられている。そのため、シリコーン化合物を含まない剥離剤からなる剥離層を有する剥離材が求められている。
【0004】
このようなシリコーン化合物を含まない剥離剤として、アルキッド樹脂系剥離剤、オレフィン樹脂系剥離剤、長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤(以下「長鎖アルキル系剥離剤」ともいう。)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、アルキッド樹脂系剥離剤は、剥離力が高いことから用途が限定されるという問題点があり、オレフィン樹脂系剥離剤は、耐熱性に劣ることから剥離材に粘着層を形成することができないという問題点があり、長鎖アルキル系剥離剤は、耐溶剤性に劣ることから剥離材に粘着剤を塗布することができないという問題点、またフィルムなどの基材への密着性が悪いという問題点があった。
【0006】
こうした中、長鎖アルキル系剥離剤の上記問題点を解決するために、長鎖アルキル系樹脂に紫外線硬化性官能基を導入した剥離剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような剥離剤組成物を用いた場合、半導体デバイス製造装置に紫外線硬化のための測定器や乾燥機などが必要になるという問題が生じる。
【0007】
また、長鎖アルキル系樹脂に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を導入した剥離剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。しかしながら、このように主剤となる長鎖アルキル系樹脂に官能基を導入して架橋構造を形成すると、長鎖アルキル基の自由度が減少するため、剥離層の表面エネルギーが低くなりにくく、剥離力を制御することが難しいという問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−183619号公報
【特許文献2】特開2003−147327号公報
【特許文献3】特開2000−290610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、電子部品などへの悪影響を与えることなく、耐溶剤性、耐熱性および基材密着性に優れるとともに、剥離力の調整が可能な長鎖アルキル基を含有するアクリル樹脂系剥離剤組成物、および該組成物からなる剥離層を有する剥離材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、架橋反応に対する活性点を有しないポリ(メタ)アクリル酸エステル(エステル部分が長鎖アルキル基)と、特定の架橋剤とを用いてsemi−IPN(相互侵入高分子網目)構造を形成することにより、耐溶剤性、耐熱性および基材密着性を向上させることができるとともに、剥離力を調整することが可能な剥離剤組成物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る剥離剤組成物は、下記一般式(1)で表わされる構成単位(1)を含有する(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)と、アミノ樹脂からなる架橋剤(B)とを含み、該ポリマー(A)と架橋剤(B)との重量比(A)/(B)が、99.99/0.01〜30/70であることを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を示す。)
また、前記剥離剤組成物は、酸性触媒を、前記架橋剤(B)100重量部に対して0.01〜10重量部含むことが好ましい。前記酸性触媒としては、無機酸または有機酸であることが好ましい。
【0013】
前記ポリマー(A)は、前記構成単位(1)以外の構成単位(2)を0〜50重量%含有していてもよい。
前記構成単位(2)としては、炭素数1〜11のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたは酢酸ビニルから導かれる構成単位などが挙げられる。
【0014】
本発明に係る剥離材は、基材の少なくとも片面に、上記剥離剤組成物からなる剥離層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の剥離剤組成物は、耐溶剤性および耐熱性に優れることから、該組成物からなる剥離層を有する剥離材に溶剤系粘着剤を塗布して粘着層を形成することができるとともに、フィルムなどの基材に対する密着性に優れた剥離層を形成することができる。
【0016】
また、本発明の剥離剤組成物は、官能基を導入して長鎖アルキル系樹脂の架橋構造を形成した従来の剥離剤組成物とは異なり、長鎖アルキル系樹脂とアミノ樹脂とがsemi−IPN構造を形成していることから、該剥離剤組成物からなる剥離層の表面エネルギーを低くし、基材側との接着力を高く設計することが可能となり、剥離層として好ましい傾斜膜を形成することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、主剤の長鎖アルキル系樹脂に共重合させるモノマーを選択することにより、剥離力を調整することができるため、各種用途に応じた剥離材を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、シリコーン化合物を用いないことから、本発明の剥離材が積層された粘着シート等を、半導体デバイスなどの電子部品の製造工程において用いても、シリコーン化合物の転移による電子部品への悪影響を与えるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る剥離剤組成物および該組成物からなる剥離層を有する剥離材について、詳細に説明する。
[剥離剤組成物]
本発明に係る剥離剤組成物は、主剤として(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)と、アミノ樹脂からなる架橋剤(B)とを含有している。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両者を意味する。
【0020】
(A)(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー
本発明の剥離剤組成物において、主剤として用いられる(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(以下「ポリマー(A)」ともいう。)は、下記一般式(1)で表わされる構成単位(以下「構成単位(1)」ともいう。)を主構成単位として含有する。
【0021】
【化2】

【0022】
式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を示す。
上記アルキル基R2の炭素数が12未満であると剥離性能が低下する傾向にあり、一方
、炭素数が28を超えると取り扱いの際に支障が生じることがある。したがって、ポリマー(A)が炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有することにより、剥離性能に優れた剥離層が得られるとともに、取り扱い性などの面において有利である。
【0023】
上記構成単位(1)となりうる単量体(以下「単量体(1)」ともいう。)としては、エステル部分が炭素数12〜28の長鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、たとえば、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、ヘキサコシル(メタ)アクリレート、オクタコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸エステルの中では、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
また、上記ポリマー(A)は、上記構成単位(1)以外の構成単位(以下「構成単位(2)」ともいう。)を含有していてもよい。構成単位(2)となりうる単量体(以下「単量体(2)」ともいう。)としては、エステル部分が炭素数1〜11のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルや、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0026】
炭素数1〜11のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロ−n−オクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)ア
クリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
前記構成単位(2)となりうる単量体(2)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリマー(A)中における構成単位(2)の含有量は、通常、0〜50重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%である。ポリマー(A)中に構成単位(2)を上記範囲内の量で含有させることにより、ポリマー(A)を含む剥離剤組成物からなる剥離層の剥離力を調整することができる。
【0028】
上記ポリマー(A)は、単量体(1)および必要に応じて単量体(2)を用いて、乳化重合や溶液重合などの公知の重合法により製造することができる。ポリマー(A)として、上記単量体(1)と単量体(2)との共重合体を用いる場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0029】
本発明で用いられるポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常30,000〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,000,000である。ポリマー(A)のMwが上記範囲内であることにより、剥離剤組成物を良好に塗布することができ、剥離層の剥離性能も良好となる。
【0030】
(B)アミノ樹脂からなる架橋剤
本発明の剥離剤組成物は、アミノ樹脂からなる架橋剤(B)を含有する。アミノ樹脂により架橋構造を形成することにより、剥離層の耐溶剤性、耐熱性および基材密着性が向上する。
【0031】
また、上記ポリマー(A)は、架橋剤(B)との架橋点を有していないことから、ポリマー(A)と架橋剤(B)とが共有結合して架橋構造を形成するのではなく、ポリマー(A)および架橋剤(B)によるsemi−IPN構造が形成される。これにより、ポリマー(A)の長鎖アルキル基の自由度が確保されるため、剥離層の表面エネルギーを低く設計することが可能となり、剥離層として好ましい傾斜膜を形成することができる。
【0032】
本発明で用いられるアミノ樹脂としては、架橋構造を形成することができるアミノ樹脂であれば特に限定されず、たとえばメラミン化合物、グアナミン化合物、尿素化合物などを用いることができる。より具体的には、メラミン、グアナミンまたは尿素に塩基性下でホルムアルデヒドを付加反応させて得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化グアナミン誘導体またはメチロール化尿素誘導体に、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコールを反応させて、部分的または完全にエーテル化した化合物などが挙げられる。このような化合物の例を下記
化学式に示す。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
上記化学式中のR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、たとえば、メチル基、
エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基などが挙げられる。
本発明の剥離剤組成物において、上記アミノ樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明の剥離剤組成物において、上記ポリマー(A)と架橋剤(B)との重量比(A)/(B)は、通常99.99/0.01〜30/70、好ましくは99/1〜60/40である。成分(A)と成分(B)との比が上記範囲内であることにより、成分(A)および(B)によるsemi−IPN構造が良好に形成されるため、耐溶剤性、耐熱性および基材密着性に優れた剥離層を形成することができる。
【0038】
本発明の剥離剤組成物は、上記アミノ樹脂による架橋構造の形成を促進させるために、酸性触媒を含有していてもよい。ここで酸性触媒とは、触媒作用を果たす化合物のうち酸の性質を有するものをいう。このような酸性触媒としては、無機酸または有機酸が挙げられる。無機酸としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、ジメチル硫酸などが挙げられ、有機酸としては、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の飽和モノカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。これらの中では、塩酸、p‐トルエンスルホン酸が好ましい。
【0039】
上記無機酸および有機酸などの酸性触媒は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよく、上記架橋剤(B)100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の量で含まれている。酸性触媒の量が上記範囲内であることにより、アミノ樹脂の架橋反応が充分に進行し、良好な架橋構造を形成することができる。
【0040】
本発明の剥離剤組成物は、上記成分を混合または反応させることにより得ることができる。また、剥離剤組成物は、塗工性や取り扱い性などの観点から、通常、有機溶剤を含有している。このような有機溶剤としては、各成分の溶解性が良好であり、かつ各成分と反応しない溶剤であれば、特に制限されずに用いることができる。例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記有機溶剤は、剥離剤組成物の樹脂固形分が1〜60重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲となるように用いられる。
本発明の剥離剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤、たとえば、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤、耐光安定剤、耐熱安定剤などを含有していてもよい。
【0042】
[剥離材]
本発明に係る剥離材は、基材上に上記剥離材組成物からなる剥離層を有している。基材
としては、通常用いられている基材であれば、特に制限されることなく用いることができ、たとえば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリノルボルネンなどの樹脂からなる樹脂フィルム;
上質紙、無塵紙、グラシン紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、ラミネート紙(ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等)などの紙;
不織布、金属箔などが挙げられる。
【0043】
基材の厚みは、各種用途や基材などに応じて異なるが、たとえば樹脂フィルムを基材として用いた場合、通常、5〜300μm、好ましくは20〜200μm程度であり、紙基材を用いた場合、通常、坪量として20〜450g/m2、好ましくは40〜220g/
2程度である。
【0044】
剥離層は、上記剥離剤組成物を、たとえば、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、バーコート法、スプレーコート法などの公知の方法により、上記基材上に塗布して乾燥することにより形成することができる。剥離層の厚さは、通常、0.01〜15μm、好ましくは0.05〜10μmである。
【0045】
上記のようにして形成された剥離層は、耐溶剤性、耐熱性および基材密着性などに優れている。また、剥離層に求められている剥離力は、剥離材に積層させる相手部材の種類や各種用途によって異なるが、たとえば、剥離剤組成物を構成するポリマー(A)における構成単位(2)の種類および含有量などを調整することにより、所望の剥離力とすることができる。
【0046】
本発明の剥離材は、耐溶剤性、耐熱性、基材密着性および剥離性などに優れた剥離層を有することから、様々な用途に用いることができ、たとえば、粘着シート、テープ、ラベル等の粘着製品における剥離紙として、また合成皮革の製造の際に用いられる工程剥離紙として利用することができる。特に、本発明の剥離材は、剥離層にシリコーン化合物が含まれていないことから、半導体デバイス等を製造する際に用いられる粘着シートの剥離材として好適に用いることができる。
【0047】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されることはない。
【0048】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
GPC測定装置:東ソー(株)社製HLC−8020
GPCカラム(以下の順に通過):東ソー(株)社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
測定溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
<合成例1> ポリマー(A)の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1Lのフラスコに、ステアリルアクリレート100g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5g、トルエン200mLを添加し、窒素気流下、70℃で12時間重合反応を行うことにより、ポリステアリルアクリレート(以下「PSA」ともいう。)を得た。得られたPSAの重量平均分子量は59,000であった。
【0049】
<合成例2> ポリマー(A)の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1Lのフラスコに、ステアリルアクリレート90g、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート10g、AIBN 0.45g、トルエン200mLを添加し、窒素気流下、70℃で12時間重合反応を行うことにより、ステアリルアクリレートと2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートとの共重合体(以下「PF8SA」ともいう。)を得た。得られたPF8SAの重量平均分子量は53,000であった。
【0050】
<合成例3> ポリマー(A)の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた1Lのフラスコに、イソオクチルアクリレート100g、AIBN0.45g、酢酸エチル200mLを添加し、窒素気流下、70℃で12時間重合反応を行うことにより、ポリイソオクチルアクリレート(以下「POA」ともいう。)を得た。得られたPOAの重量平均分子量は86,000であった。
【0051】
[実施例1]
合成例1で得られたPSA100gに、市販のアミノ樹脂(日立化成ポリマー(株)製「テスファイン303」、以下「アミノ樹脂(I)」ともいう。)1gおよびパラトルエンスルホン酸0.03gを添加し、固形分が10重量%となるようにトルエンで希釈して剥離剤組成物1を得た。
【0052】
得られた剥離剤組成物1を、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した後、140℃で1分間乾燥させて剥離フィルム(剥離材)を得た。
【0053】
[実施例2]
合成例2で得られたPF8SA100gに、アミノ樹脂(I)1gおよびパラトルエンスルホン酸0.03gを添加し、固形分が10重量%となるようにトルエンで希釈して剥離剤組成物2を得た。
【0054】
得られた剥離剤組成物2を、厚み38μmのPETフィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した後、140℃で1分間乾燥させて剥離フィルムを得た。
【0055】
[実施例3]
合成例1で得られたPSA100gに、市販のアミノ樹脂(日立化成ポリマー(株)製「テスアジン3103−60」、以下「アミノ樹脂(II)」ともいう。)1gおよびパラトルエンスルホン酸0.03gを添加し、固形分が10重量%となるようにトルエンで希釈して剥離剤組成物3を得た。
【0056】
得られた剥離剤組成物3を、厚み38μmのPETフィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した後、140℃で1分間乾燥させて剥離フィルムを得た。
【0057】
[実施例4]
合成例2で得られたPF8SA100gに、アミノ樹脂(II)1gおよびパラトルエンスルホン酸0.03gを添加し、固形分が10重量%となるようにトルエンで希釈して剥離剤組成物4を得た。
【0058】
得られた剥離剤組成物4を、厚み38μmのPETフィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した後、140℃で1分間乾燥させて剥離フィルムを得た。
【0059】
[比較例1]
合成例1で得られたPSAを固形分が10重量%となるようにトルエンで希釈して剥離剤組成物5を得た。
【0060】
得られた剥離剤組成物5を、厚み38μmのPETフィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した後、100℃で1分間乾燥させて剥離フィルムを得た。
【0061】
[比較例2]
合成例3で得られたPOAを固形分が10重量%となるように酢酸エチルで希釈して剥離剤組成物6を得た。
【0062】
得られた剥離剤組成物6を、厚み38μmのPETフィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した後、100℃で1分間乾燥させて剥離フィルムを得た。
【0063】
<評価>
上記実施例1〜4および比較例1〜2で得られた剥離フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(耐溶剤性)
得られた剥離フィルムの剥離剤組成物からなる層(剥離層)上に、粘着剤(東洋インキ製造(株)製「BPS−5127」)を、テストコーターを用いて厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後の表面状態を目視にて観察した。特に変化が認められなかったものを「○」とし、剥離層が膨潤していたものを「×」とした。
【0065】
(基材密着性)
碁盤目試験(JIS K−5400)に従って、得られた剥離フィルムの剥離層に碁盤目状の切れ目を入れて、シリコーン粘着テープ(リンテック(株)製「C−206」)を貼付して剥離した時に基材上に残った目の数を評価した。
【0066】
(剥離性)
得られた剥離フィルムの剥離層上に、粘着剤(東洋インキ製造(株)製「BPS−5127」)を、テストコーターを用いて厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、厚み50μmのPETフィルムを張り合わせて、JIS Z0237に準じて剥離力を測定した。
【0067】
(耐熱性)
得られた剥離フィルムの剥離層上に、粘着剤(東洋インキ製造(株)製BPS−5127)を、テストコーターを用いて厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、厚み50μmのPETフィルムを張り合わせた。この積層フィルムを70℃、100g/cm2の加圧下の条件で3日間放置した後、JIS Z0237に準じて剥
離力を測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示すように、アミノ樹脂を含む剥離剤組成物(実施例1〜4)からなる剥離層は、耐溶剤性および基材密着性に優れており、また耐熱試験前後において剥離力の変化がほとんど見られなかったことから、耐熱性にも優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる構成単位(1)を含有する(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)と、アミノ樹脂からなる架橋剤(B)とを含み、
該ポリマー(A)と架橋剤(B)との重量比(A)/(B)が、99.99/0.01〜30/70であることを特徴とする剥離剤組成物;
【化1】

(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を示す。)。
【請求項2】
前記剥離剤組成物が、前記架橋剤(B)100重量部に対して、酸性触媒を0.01〜10重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項3】
前記酸性触媒が、無機酸または有機酸であることを特徴とする請求項2に記載の剥離剤組成物。
【請求項4】
前記ポリマー(A)が、前記構成単位(1)以外の構成単位(2)を0〜50重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【請求項5】
前記構成単位(2)が、炭素数1〜11のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたは酢酸ビニルから導かれる構成単位であることを特徴とする請求項4に記載の剥離剤組成物。
【請求項6】
基材の少なくとも片面に、請求項1〜5のいずれかに記載の剥離剤組成物からなる剥離層を有することを特徴とする剥離材。

【公開番号】特開2006−8981(P2006−8981A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67421(P2005−67421)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】