説明

加工システム及び加工方法

【課題】加工装置による加工動作の最中やその直前においても、加工装置の位置決め制御の精度を向上させ、ひいては加工装置による加工精度も向上させること。
【解決手段】加工機12が取り付けられたロボット11は、ワーク2の加工対象の目標位置41までの移動動作と、加工対象に対する加工動作とを行う。ロボット移動機構14は、ロボット11を、搬送台車18により搬送されているワーク2と並走するように移動させる。ロボット制御装置17は、同期センサ15の検出結果を用いてロボット移動機構14の移動を制御し、視覚センサ13又は同期センサ15の検出結果を用いてロボット11の位置決め制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるワークを加工する加工システム及び加工方法に関する。詳しくは、加工装置による加工動作の最中やその直前においても、加工装置の位置決め制御の精度を向上させ、ひいては加工装置による加工精度も向上させることが可能な加工システム及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディ等をワークとして加工する加工ラインには、ワークを搬送する搬送台車と、ワークに対する加工動作を行う加工装置(ロボット等)と、が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような加工装置には、多関節マニュピュレータ等で構成されるアームと、その先端に取り付けられる加工機と、が設けられている。
加工装置のアームは、移動動作をすることによって、ワーク内の加工対象に加工機の先端を近接させる。すると、加工装置の加工機は、加工対象に対して、ボルト締めや溶接等の加工動作をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−203106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加工機による加工動作の最中にもワークは自動搬送されているため、ワークの揺れ等により、相対的な加工対象の位置ずれが発生する場合がある。従って、加工機による加工動作の最中にも、加工装置のアームの移動動作を継続して、加工対象の位置ずれを補正する必要がある。
ところが、アームを移動させて加工機の先端位置を目標位置に近接させる制御(以下、「位置決め制御」と称する)では、アームの先端又は加工機に取り付けられたカメラ等が視覚センサとして用いられ、当該視覚センサにより検出された加工対象の情報が、フィードバック情報として用いられている。
このため、加工機による加工動作の最中やその直前においては、視覚センサが加工対象を検出できない場合がある。
このような場合には、有効なフィードバック情報が得られず、位置決め制御の精度が悪化する。位置決め制御の精度の悪化は、加工機の先端の位置と加工対象の位置との誤差が大きくなることを意味するため、加工機による加工精度の悪化も招く。
【0006】
本発明は、搬送されるワークを加工する加工システム及び加工方法であって、加工装置の加工動作の最中やその直前においても、加工装置の位置決め制御の精度を向上させ、ひいては加工装置の加工精度も向上させることが可能な加工システム及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工システムは、
搬送されるワーク(例えば実施形態におけるワーク2)の加工対象(例えば実施形態における目標位置41の加工対象)に対して所定の加工を行う加工システム(例えば実施形態における加工システム1)において、
前記ワークを搬送する搬送手段(例えば実施形態における搬送台車18)と、
前記ワークの前記加工対象までの移動動作と、前記加工対象に対する加工動作とを行う加工手段(例えば実施形態における加工機12が取り付けられたロボット11)と、
前記加工手段を、前記搬送手段により搬送されている前記ワークと並走するように移動させる移動手段(例えば実施形態におけるロボット移動機構14)と、
前記加工手段に取り付けられて、前記加工対象の位置を検出する加工対象検出手段(例えば実施形態における視覚センサ13)と、
前記移動手段に取り付けられて、前記搬送手段の特定位置を検出する搬送検出手段(例えば実施形態における同期センサ15)と、
前記搬送検出手段の検出結果を用いて前記移動手段の移動を制御し、前記加工対象検出手段又は前記搬送検出手段の検出結果を用いて前記加工手段の移動動作を制御する制御手段(例えば実施形態におけるロボット制御装置17)と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、加工手段に取り付けられて加工対象の位置を検出する加工対象検出手段の検出結果のみならず、移動手段に取り付けられて搬送手段の特定位置を検出する搬送検出手段の検出結果を用いて、加工手段の移動動作の制御(実施形態でいう位置決め制御)を実行することができる。
即ち、例えば加工手段による加工動作の最中やその直前において、加工対象検出手段の検出結果が得られない場合や、得られたとしても精度の悪い検出結果である場合、加工対象検出手段に代えて、搬送検出手段の検出結果を用いて、加工手段の位置決め制御を実行することができる。
これにより、加工手段による加工動作の最中やその直前においても、加工手段の位置決め制御の精度が向上し、ひいては加工手段の加工精度も向上する。
【0009】
この場合、
前記制御手段は、所定の条件が満たされた場合、前記加工手段の移動動作の制御に用いる情報を、前記加工対象検出手段と前記搬送検出手段とのうちの一方の検出結果から他方の検出結果に切り替える切替手段(例えば実施形態におけるフィードバック切替部64)を有する、
ようにすることができる。
【0010】
さらに、この場合、
前記切替手段は、前記加工手段の移動動作の制御に前記加工対象検出手段の検出結果が用いられている状態で、前記所定の条件として、前記加工対象検出手段が検出不能であるという条件が満たされた場合、前記加工手段の移動動作の制御に用いる情報を、前記搬送検出手段の検出結果に切り替える、
ようにすることができる。
【0011】
本発明の加工方法は、上述の本発明の加工システムに対応する方法である。従って、上述の本発明の加工システムと同様の各種効果を奏することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工手段に取り付けられて加工対象の位置を検出する加工対象検出手段の検出結果のみならず、移動手段に取り付けられて搬送手段の特定位置を検出する搬送検出手段の検出結果を用いて、加工手段の移動動作の制御(実施形態でいう位置決め制御)をすることができる。
即ち、例えば加工手段による加工動作の最中やその直前において、加工対象検出手段の検出結果が得られない場合や、得られたとしても精度の悪い検出結果である場合、加工対象検出手段に代えて、搬送検出手段の検出結果を用いて、加工手段の位置決め制御を実行することができる。
これにより、加工手段による加工動作の最中やその直前においても、加工手段の位置決め制御の精度が向上し、ひいては加工手段の加工精度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る加工システムの概略外観構成を示す側面図である。
【図2】図1の加工システムのロボット制御装置の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】図2のロボット制御装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【図4】図2のロボット制御装置によるロボット移動処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】図4のロボット移動処理の結果の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加工システム1の概略外観構成を示す側面図である。
例えば、加工システム1は、自動車の生産ラインのうち連続搬送ラインに配設され、連続搬送されている自動車のボディ等をワーク2として、ワーク2に対して、溶接やボルト締め等の各種加工を行う。
【0015】
加工システム1は、ロボット11と、加工機12と、視覚センサ13と、ロボット移動機構14と、同期センサ15と、ロボット駆動装置16と、ロボット制御装置17と、搬送台車18と、を備える。
【0016】
ロボット11は、ロボット移動機構14に取り付けられる基台21(以下、「ロボットベース21」と称する)と、そのロボットベース21に旋回可能に取り付けられるアーム22と、を備える。
アーム22は、多関節マニュピュレータとして構成されている。即ち、アーム22は、関節31a乃至31dと、連結部材32a乃至32eと、各関節31a乃至31dを回転させるサーボモータ(図示せず)と、サーボモータの位置、速度、電流等の各種状態を検出する検出器(図示せず)と、を備える。
各サーボモータによる各関節31a乃至31dの回転動作と、それらの回転動作に連動する各連結部材32a乃至32eの移動動作との組み合わせにより、アーム22の全体の動作、即ちロボット11の全体の動作が実現される。
【0017】
加工機12は、アーム22の連結部材32eの先端にエンドエフェクトとして取り付けられ、アーム22の移動動作に伴い、ワーク2の加工対象の存在位置(以下、「目標位置」と称する)、例えば図1中の目標位置41まで先端が移動する。すると、加工機12は、ロボット制御装置17の制御に従って、目標位置41における加工対象に対して、溶接やボルト締め等の各種加工動作を行う。
【0018】
このように、本実施形態では、アーム22に加工機12が取り付けられた状態のロボット11が、加工装置である。即ち、本実施形態の加工装置は、ロボット11と、加工機12と、を備えている。
【0019】
視覚センサ13は、カメラ等で構成されており、加工機12の先端を画角の中心として撮影できるように、アーム22の連結部材32eの外周部に固定して取り付けられている。
視覚センサ13は、加工機12の先端の方向に対して、画角の範囲内にある被写体を撮影する。以下、視覚センサ13により撮影された被写体の画像を、「撮影画像」と称する。
後述するロボット制御装置17は、撮影画像の画像データに対して画像処理を施すことで、視覚センサ13の位置を原点とする座標系(以下、「カメラ座標系」と称する)における目標位置41の座標を容易に求めることができる。なお、以下、カメラ座標系における目標位置41の座標を、「視覚センサ位置」と称する。
【0020】
ロボット移動機構14は、後述するロボット制御装置17の制御の下、ロボットベース21を、例えばワーク2の搬送方向と略平行に(図1中白抜き矢印の方向に)、搬送台車18によるワーク2の連続搬送と同期して移動させる。
【0021】
以下、説明の都合上、搬送台車18によるワーク2の連続搬送の方向を、図1の記載にあわせて「T方向」と称する。T方向と直角の方向であって、ロボット移動機構14から搬送台車18に向かう水平方向を、図1の記載にあわせて「B方向」と称する。T方向及びB方向と直角の方向であって、垂直上向き方向を、図1の記載にあわせて「H方向」と称する。
【0022】
同期センサ15は、ロボット移動機構14に固定されており、搬送台車18の特定位置に設けられたシールや穴を検出対象物51として、当該検出対象物51の位置を検出する。
同期センサ15による検出位置の座標は、特に限定されないが、本実施形態では、ロボット移動機構14の所定位置を原点とする座標系、例えばロボットベース21の中心位置を原点とする座標系(以下、「ロボット座標系」と称する)が採用されている。
換言すると、本実施形態では、同期センサ15は、ロボット移動機構14(ロボットベース21)からみた搬送台車18(検出対象物51)の相対位置の座標(以下、「同期センサ位置」と称する)を検出する。
同期センサ15により検出された同期センサ位置は、後述するロボット制御装置17に供給され、ロボット移動機構14を搬送台車18と同期して移動させる制御(以下、「搬送台車18との同期制御」と称する)において、フィードバック情報として用いられる。
さらに、同期センサ位置は、必要に応じて、ロボット11の位置決め制御のフィードバック情報として用いられる。位置決め制御の詳細については、図2以降の図面を参照して後述する。
【0023】
ロボット駆動装置16には、ロボット11のアーム22に接続された加工機12の先端の位置を目標位置41まで移動させる指令(以下、「移動指令」と称する)が、後述するロボット制御装置17から供給される。そこで、ロボット駆動装置16は、移動指令に従って、アーム22に内蔵された各検出器の検出値をフィードバック値として用いて、アーム22に内蔵された各サーボモータに対するトルク(電流)制御を行う。これにより、アーム22の全体の動作、即ちロボット11の全体の動作が制御される。
【0024】
ロボット制御装置17は、ロボット11の位置決め制御及びロボット移動機構14の移動の制御を実行する。
ロボット制御装置17はまた、加工機12に対する加工条件を変更する制御や、加工機12の加工動作の制御を実行する。加工条件とは、例えば、加工機12が溶接機である場合には溶接に必要な電流等の条件をいう。
【0025】
搬送台車18は、ワーク2を一定方向に、本実施形態ではT方向に連続搬送させる。
【0026】
次に、図2及び図3を参照して、ロボット制御装置17についてさらに詳しく説明する。
図2は、ロボット制御装置17の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【0027】
ロボット制御装置17は、同期センサ位置取得部61と、ロボット移動機構制御部62と、視覚センサ位置取得部63と、フィードバック切替部64と、ロボット位置制御部65と、加工制御部66と、を備える。
【0028】
同期センサ位置取得部61は、同期センサ15により検出された同期センサ位置、即ち、ロボット移動機構14(ロボットベース21)からみた搬送台車18(検出対象物51)の相対位置を取得し、ロボット移動機構制御部62とフィードバック切替部64とに供給する。
【0029】
ロボット移動機構制御部62は、同期センサ位置取得部61から供給された同期センサ位置に基づいて、ロボット移動機構14(ロボットベース21)に対する、搬送台車18との同期制御を実行する。
即ち、ロボット移動機構制御部62は、同期センサ位置が一定となるように、ロボット移動機構14のT方向の移動動作を制御する。
【0030】
視覚センサ位置取得部63は、視覚センサ13から出力された撮影画像の画像データに基づいて、カメラ座標系における加工対象の目標位置41の位置の座標、即ち視覚センサ位置を取得し、フィードバック切替部64に供給する。
【0031】
フィードバック切替部64は、ロボット11の位置決め制御のフィードバック情報として入力する位置情報を切り替える。
例えば、フィードバック切替部64は、デフォルトとして、視覚センサ位置取得部63から視覚センサ位置を入力し、フィードバック情報としてロボット位置制御部65に供給する。
その後、所定の切替条件が満たされた場合、例えば加工機12による加工動作の直前等において、視覚センサ13の撮影画像内に目標位置41の加工対象が含まれなくなった場合、フィードバック切替部64は、入力を視覚センサ位置取得部63側から同期センサ位置取得部61側に切り替える。
そして、フィードバック切替部64は、同期センサ位置取得部61から同期センサ位置を入力し、フィードバック情報としてロボット位置制御部65に供給する。
【0032】
ロボット位置制御部65は、フィードバック切替部64から供給されたフィードバック情報を用いて、ロボット11の位置決め制御を実行する。
即ち、ロボット位置制御部65は、フィードバック情報から、加工機12の先端の位置と目標位置41との偏差を求め、この偏差を無くすように、ロボット11(より正確にはアーム22)の移動動作を制御する。
【0033】
本実施形態では、ワーク2によって目標位置41が異なるため、デフォルトの場合、即ちフィードバック情報として視覚センサ位置が供給されている場合、ロボット位置制御部65は、T方向、B方向、及びH方向の全ての方向のロボット11の移動動作を制御する。
即ち、ロボット位置制御部65は、視覚センサ位置に基づいて、T方向、B方向、及びH方向の全ての方向の偏差を求める。そして、ロボット位置制御部65は、当該偏差に基づいて、T方向、B方向、及びH方向の全ての方向の移動指令を生成し、ロボット駆動装置16に供給する制御を、ロボット11の位置決め制御として実行する。
移動指令が供給されたロボット駆動装置16は、上述したように、この移動指令に従って、ロボット11を移動させることによって、加工機12の先端を目標位置41に近接させる。
即ち、本実施形態では、デフォルトのロボット11の位置決め制御として、視覚センサ13の撮影画像から得られる視覚センサ位置をフィードバック情報として用いる制御(以下、「視覚サーボ制御」と称する)が採用されている。
このような視覚サーボ制御の結果、上述の偏差が無くなると、ロボット位置制御部65による視覚サーボ制御は停止し、ロボット11の移動動作が一旦停止する。
【0034】
すると、加工制御部66は、加工機12の加工動作を制御する。即ち、加工機12は、目標位置41における加工対象に対して、ボルト締めや溶接等の加工動作をする。
【0035】
このような加工機12の加工動作の最中やその直前においては、視覚センサ13の撮影画像には目標位置41の加工対象が含まれずに、視覚センサ位置を求めることができない場合がある。このような場合には、視覚サーボ制御が実行できなくなるので、フィードバック情報が視覚センサ位置から同期センサ位置に切り替わる。
この場合、ロボット11からみてワーク2が相対的に静止しているならば、視覚サーボ制御の結果として、加工機12の先端の位置と目標位置41とは略一致している。ロボット移動機構14に対する、搬送台車18との同期制御は継続しているため、ロボット11からみてT方向についてのワーク2の相対的な動きは無いとみなしてよい。しかしながら、搬送台車18により搬送されているワーク2は、ロボット11からみてB方向又はY方向に揺れる場合がある
そこで、フィードバック情報として同期センサ位置が供給されている場合、ロボット位置制御部65は、B方向及びH方向のロボット11の位置決め制御を実行することによって、B方向又はY方向のワーク2の揺れに起因する誤差を補正する。
即ち、ロボット位置制御部65は、同期センサ位置に基づいて、B方向及びH方向の偏差を求める。そして、ロボット位置制御部65は、当該偏差に基づいて、B方向及びH方向の移動指令を生成し、ロボット駆動装置16に供給する制御を、ロボット11の位置決め制御として実行する。
移動指令が供給されたロボット駆動装置16は、上述したように、この移動指令に従って、ロボット11を移動させることによって、加工機12の先端を目標位置41に近接させる。
【0036】
以上、ロボット制御装置17の機能的構成例について説明した。次に、このような機能的構成を有するロボット制御装置17のハードウェア構成例について説明する。
図3は、ロボット制御装置17のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0037】
ロボット制御装置17は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、バス104と、入出力インターフェース105と、入力部106と、出力部107と、記憶部108と、通信部109と、ドライブ110と、を備えている。
【0038】
CPU101は、ROM102に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。又は、CPU101は、記憶部108からRAM103にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM103にはまた、CPU101が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0039】
例えば本実施形態では、上述した図2の同期センサ位置取得部61乃至加工制御部66の各機能を実行するプログラムが、ROM102や記憶部108に記憶されている。従って、CPU101が、このプログラムに従った処理を実行することで、同期センサ位置取得部61乃至加工制御部66の各機能を実現することができる。なお、このようなプログラムに従った処理の一例については、図4のフローチャートを参照して後述する。
【0040】
CPU101と、ROM102と、RAM103とは、バス104を介して相互に接続されている。このバス104にはまた、入出力インターフェース105も接続されている。
【0041】
入出力インターフェース105には、キーボード等で構成される入力部106と、表示デバイスやスピーカ等で構成される出力部107と、ハードディスク等より構成される記憶部108と、通信部109と、が接続されている。
通信部109は、視覚センサ13との間で行う通信と、ロボット移動機構14との間で行う通信と、同期センサ15との間で行う通信と、ロボット駆動装置16との間で行う通信と、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信と、をそれぞれ制御する。なお、これらの通信は、図1の例では有線通信とされているが、無線通信であってもよい。
【0042】
入出力インターフェース105にはまた、必要に応じてドライブ110が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなるリムーバブルメディア111が適宜装着される。そして、それらから読み出されたプログラムが、必要に応じて記憶部108にインストールされる。
【0043】
図4は、このような構成を有するロボット制御装置17により実行される、ロボット移動機構14(ロボットベース21)の移動の制御及びロボット11(アーム22)の位置決め制御を実現する処理(以下、「ロボット移動処理」と称する)の流れの一例を示すフローチャートである。
【0044】
図5は、ロボット移動処理の結果の一例を示すタイミングチャートである。
詳細には、図5において、上から順に、搬送台車18の動作期間、ロボット移動機構14の動作期間、ロボット移動機構14の移動の制御に同期センサ15の同期センサ位置が用いられる期間、加工機12が取り付けられたロボット11の動作期間、ロボット11の位置決め制御に同期センサ15の同期センサ位置が用いられる期間、及び、ロボット11の位置決め制御に視覚センサ13の視覚センサ位置が用いられる期間のそれぞれを示すタイミングチャートが図示されている。
【0045】
図4及び図5の説明では、ロボット制御装置17が担当する処理の動作主体は、図3のCPU101であるとする。
【0046】
搬送台車18によるワーク2の自動搬送が開始し、搬送台車18に設けられた検出対象物51の位置が、デフォルト位置に存在するロボット移動機構14に固定された同期センサ15により検出されるようになり、その結果、同期センサ15から同期センサ位置の出力が開始すると、ロボット移動処理が開始する。
例えば図5の例では、時刻t1にロボット移動処理が開始する。
【0047】
ステップS1において、CPU101は、ロボット移動機構14による搬送台車18の追跡を制御する。
即ち、CPU101は、同期センサ位置が予め設定された規定位置となるように、ロボット移動機構14のT方向の移動動作の制御を実行する。
【0048】
ステップS2において、CPU101は、追跡完了したか否かを判定する。
ステップS2の判定手法は、特に限定されないが、本実施形態では、同期センサ位置が規定位置を維持するようになったとき、追跡が完了したと判定する手法が採用されている。
【0049】
従って、同期センサ位置が規定位置とは異なる場合、又は同期センサ位置が規定位置になっても直ぐに別の位置に変化して安定しない場合、ステップS2においてNOであると判定されて、処理はステップS1に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
即ち、ステップS1,S2NOのループ処理が繰り返されることで、CPU101の制御の下、ロボット移動機構14による搬送台車18の追跡が行われる。
【0050】
その後、同期センサ位置が規定位置を維持するようになったとき、例えば図5の例では時刻t2になったととき、追跡が完了したとして、ステップS2においてYESであると判定されて、処理はステップS3に進む。
【0051】
ステップS3において、CPU101は、ロボット移動機構14に対する、搬送台車18との同期制御を開始する。
即ち、CPU101は、同期センサ位置が規定位置を維持するように、ロボット移動機構14のT方向の移動動作の制御を開始する。
【0052】
ステップS4において、CPU101は、ロボット11の位置決め制御に用いるフィードバック情報として、視覚センサ位置を設定する。
【0053】
ステップS5において、CPU101は、ロボット11の位置決め制御を実行する。
【0054】
ステップS6において、CPU101は、切替条件を満たすか否かを判定する。
切替条件は特に限定されないが、本実施形態では、視覚センサ位置から同期センサ位置への切替条件として、上述の如く、視覚センサ13の撮影画像に目標位置41の加工対象が含まれなくなったこと、即ち視覚センサ位置を求めることができなくなったこと、という条件が採用されている。
従って、視覚センサ13の撮影画像に目標位置41の加工対象が含まれており、視覚センサ位置を求めることができる間は、ステップS6においてNOであると判定されて、処理はステップS7に進む。
【0055】
ステップS7において、CPU101は、ロボット11の位置決め制御を終了したか否かを判定する。
ステップS7の判定条件は特に限定されないが、本実施形態では、ワーク2の加工対象に対する加工機12の加工動作が終了して、加工機12の先端の位置がデフォルトの位置に戻ったとき、ロボット11の位置決め制御も終了したと判定される。
従って、加工機12の加工動作が開始する前又は加工動作が継続中の場合には、ステップS7においてNOであると判定されて、処理はステップS5に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
即ち、加工機12の加工動作が開始する前であって、視覚センサ13の撮影画像に目標位置41の加工対象が含まれており、視覚センサ位置を求めることができる間は、ステップS5,S6NO,S7NOのループ処理が繰り返されて、ロボット11の位置決め制御として、T方向、B方向、及びH方向の全方向についての視覚センサ位置を用いた視覚サーボ制御が実行される。
例えば図5の例では、ロボット11についてのタイミングチャートのうち、「移動」と記述されている時刻t2乃至t3の期間において、ロボット11の位置決め制御として、T方向、B方向、及びH方向の全方向についての視覚センサ位置を用いた視覚サーボ制御が実行される。
このような視覚サーボ制御の結果、上述の偏差が無くなると、視覚サーボ制御は停止し、ロボット11の移動動作が一旦停止する。
【0056】
すると、CPU101は、加工機12の加工動作を制御する。即ち、加工機12は、目標位置41における加工対象に対して、ボルト締めや溶接等の加工動作をする。
例えば図5の例では、ロボット11についてのタイミングチャートのうち、「加工」と記述されている時刻t3乃至t4の期間において、加工機12の加工動作が行われる。
【0057】
従って、図5の例では時刻t3になると、視覚センサ13の撮影画像には目標位置41の加工対象が含まれずに、視覚センサ位置を求めることができなくなる。即ち、時刻t3に切替条件が満たされ、ステップS6においてYESであると判定されて、処理はステップS8に進む。
ステップS8において、CPU101は、フィードバック情報を、視覚センサ位置から同期センサ位置に切り替える。
そして、処理はステップS5に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
【0058】
ここで、本実施形態では、ステップS6の切替条件のうち、同期センサ位置から視覚センサ位置への切替条件として、視覚センサ13の撮影画像に目標位置41の加工対象が含まれるようになったこと、即ち視覚センサ位置を求めることができるようになったこと、という条件が採用されている。
従って、視覚センサ13の撮影画像に目標位置41の加工対象が含まれておらず、視覚センサ位置を求めることができない間は、ステップS5,S6NO,S7NOのループ処理が繰り返されて、B方向及びH方向についての同期センサ位置を用いたロボット11の位置決め制御が実行される。
【0059】
例えば図5の例では、時刻t3乃至時刻t4までの加工動作の最中においては、ワーク2のB方向又はH方向の揺れ分を補正するために、B方向及びH方向についての同期センサ位置を用いたロボット11の位置決め制御が実行される。
ここで、図5の例では、ワーク2には2つの加工対象が存在するものとされている。このため、時刻t4において、1つ目の加工対象に対する加工機12の加工動作が終了すると、ロボット11についてのタイミングチャートのうち、「移動」と記述されている時刻t4乃至t6の期間において、ロボット11は、加工機12の先端を2つ目の加工対象の目標位置41に近接させるように、移動動作をする。
ただし、時刻t5までの間は、加工機12の先端の位置は、2つ目の加工対象の目標位置41から大きくずれているため、視覚センサ13の撮影画像には2つ目の加工対象は含まれておらず、視覚センサ位置を求めることができない。
従って、時刻t5までの間は、ステップS5,S6NO,S7NOのループ処理が繰り返されて、B方向及びH方向についての同期センサ位置を用いたロボット11の位置決め制御が実行される。
【0060】
その後、時刻t5になると、加工機12の先端の位置は、2つ目の加工対象の目標位置41にある程度近づき、視覚センサ13の撮影画像には2つ目の加工対象が含まれるようになり、視覚センサ位置を求めることができるようになる。即ち、時刻t5に切替条件が満たされ、ステップS6においてYESであると判定されて、処理はステップS8に進む。
ステップS8において、CPU101は、フィードバック情報を、同期センサ位置から視覚センサ位置に再度切り替える。
そして、処理はステップS5に戻され、それ以降の処理が繰り返される。即ち、ステップS5,S6NO,S7NOのループ処理が繰り返されて、ロボット11の位置決め制御として、T方向、B方向、及びH方向の全方向についての視覚センサ位置を用いた視覚サーボ制御が実行される。
このような視覚サーボ制御の結果、図5の例では時刻t6に、上述の偏差が無くなり、視覚サーボ制御は停止し、ロボット11の移動動作が一旦停止する。
【0061】
すると、CPU101は、2つ目の加工対象に対する加工機12の加工動作を制御する。例えば図5の例では、ロボット11についてのタイミングチャートのうち、「加工」と記述されている時刻t6乃至t7の期間において、加工機12の加工動作が行われる。
【0062】
従って、図5の例では時刻t6になると、視覚センサ13の撮影画像には目標位置41の加工対象が含まれずに、視覚センサ位置を求めることができなくなる。即ち、時刻t6に切替条件が満たされ、ステップS6においてYESであると判定されて、処理はステップS8に進む。
ステップS8において、CPU101は、フィードバック情報を、視覚センサ位置から同期センサ位置に切り替える。
そして、処理はステップS5に戻され、それ以降の処理が繰り返される。即ち、時刻t6乃至時刻t7までの加工動作の最中においては、ワーク2のB方向又はH方向の揺れ分を補正するために、B方向及びH方向についての同期センサ位置を用いたロボット11の位置決め制御が実行される。
上述したように、図5の例では、ワーク2には2つの加工対象が存在するものとされている。このため、時刻t7において、2つ目の加工対象に対する加工機12の加工動作が終了すると、ワーク2全体に対する加工動作も終了することになる。
そこで、ロボット11についてのタイミングチャートのうち、「移動」と記述されている時刻t7乃至t8の期間において、ロボット11は、加工機12の先端をデフォルトの位置に戻すように、移動動作をする。
従って、時刻t8までの間は、当然ながら、視覚センサ13の撮影画像には加工対象は含まれておらず、視覚センサ位置を求めることができない。このため、時刻t8までの間も、ステップS5,S6NO,S7NOのループ処理が繰り返されて、B方向及びH方向についての同期センサ位置を用いたロボット11の位置決め制御が実行される。
【0063】
時刻t8に、加工機12の先端がデフォルトの位置に戻ると、ロボット11の位置決め制御は終了する。従って、ステップS7においてYESであると判定されて、処理はステップS9に進む。
ステップS9において、CPU101は、ロボット移動機構14に対する、搬送台車18との同期制御を終了させる。
ステップS10において、CPU101は、ロボット移動機構14をデフォルト位置に移動させる制御を実行する。
これにより、ロボット移動処理は終了となる。
【0064】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
ロボット制御装置17は、視覚センサ13の検出結果のみならず、同期センサ15の検出結果も用いて、ロボット11の位置決め制御を実行することができる。
即ち、例えば加工機12による加工動作の最中やその直前において、視覚センサ13の検出結果が得られない場合や、得られたとしても精度の悪い検出結果である場合、ロボット制御装置17は、視覚センサ13に代えて、同期センサ15の検出結果を用いて、ロボット11の位置決め制御を実行することができる。
これにより、加工機12による加工動作の最中やその直前においても、ロボット11の位置決め制御の精度が向上し、ひいては加工機12の加工精度も向上する。
【0065】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0066】
例えば、ロボット11の位置決め制御として、本実施形態では、視覚センサ13の撮影画像から得られる視覚センサ位置が、フィードバック情報として用いられた。しかしながら、フィードバック情報は、本実施形態に特に限定されず、任意の検出手法で検出された加工対象の目標位置41の位置を採用することができる。換言すると、目標位置41の位置を検出するセンサは、本実施形態の視覚センサ13に特に限定されず、任意の検出センサを採用することができる。
【0067】
同様に、ロボット11の位置決め制御として、本実施形態では、同期センサ15の同期センサ位置が、フィードバック情報として用いられた。しかしながら、フィードバック情報は、本実施形態に特に限定されず、任意の検出手法で検出された搬送台車18の特定位置を採用することができる。換言すると、搬送台車18の特定位置を検出するセンサは、本実施形態の同期センサ15に特に限定されず、任意の検出センサを採用することができる。
【0068】
また例えば、本実施形態では、図2の同期センサ位置取得部61乃至加工制御部66をソフトウェアとハードウェア(CPU101を含む関連部分)の組み合わせにより構成するものとして説明したが、かかる構成は当然ながら例示であり、本発明はこれに限定されない。例えば、同期センサ位置取得部61乃至加工制御部66の少なくとも一部を、専用のハードウェアで構成してもよし、ソフトウェアで構成してもよい。
【0069】
このように、本発明に係る一連の処理は、ソフトウェアにより実行させることも、ハードウェアにより実行させることもできる。
【0070】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムを、コンピュータ等にネットワークを介して、或いは、記録媒体からインストールすることができる。コンピュータは、専用のハードウェアを組み込んだコンピュータであってもよいし、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0071】
本発明に係る一連の処理を実行するための各種プログラムを含む記録媒体は、情報処理装置(例えば本実施形態ではロボット制御装置17)本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布されるリムーバブルメディアでもよく、或いは、情報処理装置本体に予め組み込まれた記録媒体等でもよい。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記録媒体としては、例えば、プログラムが記録されている、図3のROM102や、図3の記憶部108に含まれるハードディスク等でもよい。
【0072】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0073】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置や処理部により構成される装置全体を表すものである。
【符号の説明】
【0074】
1 加工システム
2 ワーク
11 ロボット
12 加工機
13 視覚センサ
14 ロボット移動機構
15 同期センサ
16 ロボット駆動装置
17 ロボット制御装置
18 搬送台車
21 ロボットベース
22 アーム
41 目標位置
61 同期センサ位置取得部
62 ロボット移動機構制御部
63 視覚センサ位置取得部
64 フィードバック切替部
65 ロボット位置制御部
66 加工制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるワークの加工対象に対して所定の加工を行う加工システムにおいて、
前記ワークを搬送する搬送手段と、
前記ワークの前記加工対象までの移動動作と、前記加工対象に対する加工動作とを行う加工手段と、
前記加工手段を、前記搬送手段により搬送されている前記ワークと並走するように移動させる移動手段と、
前記加工手段に取り付けられて、前記加工対象の位置を検出する加工対象検出手段と、
前記移動手段に取り付けられて、前記搬送手段の特定位置を検出する搬送検出手段と、
前記搬送検出手段の検出結果を用いて前記移動手段の移動を制御し、前記加工対象検出手段又は前記搬送検出手段の検出結果を用いて前記加工手段の移動動作を制御する制御手段と、
を備える加工システム。
【請求項2】
前記制御手段は、所定の条件が満たされた場合、前記加工手段の移動動作の制御に用いる情報を、前記加工対象検出手段と前記搬送検出手段とのうちの一方の検出結果から他方の検出結果に切り替える切替手段を有する、
請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記切替手段は、前記加工手段の移動動作の制御に前記加工対象検出手段の検出結果が用いられている状態で、前記所定の条件として、前記加工対象検出手段が検出不能であるという条件が満たされた場合、前記加工手段の移動動作の制御に用いる情報を、前記搬送検出手段の検出結果に切り替える、
請求項2に記載の加工システム。
【請求項4】
搬送されるワークの加工対象に対して所定の加工を行う加工システムの加工方法において、
前記ワークを搬送する搬送手段と、
前記ワークの前記加工対象までの移動動作と、前記加工対象に対する加工動作とを行う加工手段と、
前記加工手段を、前記搬送手段により搬送されている前記ワークと並走するように移動させる移動手段と、
前記加工手段に取り付けられて、前記加工対象の位置を検出する加工対象検出手段と、
前記移動手段に取り付けられて、前記搬送手段の特定位置を検出する搬送検出手段と、
を備える前記加工システムが、
前記搬送検出手段の検出結果を用いて前記移動手段の移動を制御するステップと、
前記加工対象検出手段又は前記搬送検出手段の検出結果を用いて前記加工手段の移動動作を制御するステップと、
を含む加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−167831(P2011−167831A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36203(P2010−36203)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】