加工パスの生成方法及び加工方法
【課題】製品設計の3次元CADモデル(以下3D−CADと称する)から,割り落とすことが可能な形状を自動判断し,その割り落とす加工方法の加工パスを自動生成し,製品の加工時間を短縮し,工具摩耗を低減できるようにする。
【解決手段】素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する加工パス生成方法を、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有して構成した。
【解決手段】素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する加工パス生成方法を、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有して構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御工作機械による素材加工において、割り落とす加工方法を実行可能な加工パスを生成する加工パスの生成方法及び割り落とし加工を行う加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御工作機械により素材を加工するには、予め加工動作をコントロールする数値制御命令をプログラムしておく必要がある。数値制御工作機械発展の初期からコンピュータによる数値制御のプログラミングの研究がはじめられ、それがAPT(Automatic Programming Tool,以下APTと称する)システム、EXAPT(Extended subset of APT,以下EXAPTと称する)システムへ発展した。
【0003】
APTとEXAPTシステムでは、加工部分の形状を記述した幾何ステートと加工面の状態、加工位置精度、材料、加工方法などを記述した技術ステートメントを定義したパートプログラムから、自動的に加工パスが生成できる。しかし、パートプログラムの入力作業は人が図面を見ながらAPT言語、EXAPT言語を使って行うため、大変な手間と時間がかかっていた。コンピュータの中で実体モデルの取扱が可能になってからは、この形状モデルに基づく加工パス生成装置では、APTやEXAPTのようにパートプログラムで形状を定義した加工パスを指示することなく、コンピュータの内部モデルとして蓄えられた形状モデルをもとに、オペレーターからの指定した加工形状と加工方法、工具情報などの情報に基づいて加工パスを生成している。
【0004】
従来の数値制御工作機械の加工方法として、等高線切削、突き切削などがある。等高線切削は加工面の高さを少しずつ変えながら掘り進む方法であり、突き切削は仕上げ面の手前までエンドミルやドリルで蜂の巣状に穴をあけていく方法である。生成する加工パスのパターンとしては、ジグ、トロコイドなどがある。これらの加工方法は、いずれも被削体の全てを切削除去していく方法であり、これら加工方法を実行する加工パスは、指定した被削体の全部を切削する目的で生成する。
【0005】
これら、等高線切削法や突き切削法は、加工作業に長時間を要し、また工具の先端部分でのみで加工が行われるため、切削効率が悪いとともに、工具の寿命も短いといった欠点があった。このような欠点を克服した加工法として、特許文献1、特許文献2に記載されているような方法がある。
【0006】
特許文献1に記載されている加工方法は、製品形状を基準に素材を切削加工して段部を順次形成する荒取加工法である。この荒取加工法は、深切り込み大荒加工工程とカケ上がり加工工程の2種類の加工工程からなる。深切り込み大荒加工工程とは、1回の切削量(切削深さ)を工具の全長分とし、上段から下段へ順次切削する加工工程である。カケ上がり加工工程は、前記深切り込み大荒加工工程で形成された各段部を、更に小ピッチで下段から上段へ順次切削し製品形状へ仕上げて行く加工工程である。この加工方法の場合、加工時に工具の切れ歯全長あるいは切れ歯の広範囲の部分を有効に使用するため、等高線加工法より切削効率が向上し、且つ工具の摩耗が少なく、工具寿命が向上する。
【0007】
特許文献2に記載されている加工方法は、入力された加工形状を所定量オフセットして作成される加工経路により加工する加工経路生成方法についての内容で、加工経路に沿って工具を移動させたときのトロコイド加工により削り残しが発生しない範囲、もしくは、凹屈曲部の少なくともいずれか一方の加工範囲をトロコイド加工経路とし、前記範囲以外の加工経路を側面加工経路とすることを特徴とした加工経路生成方法である。すなわち、特許文献2に記載されている加工方法は、所望の加工形状を加工するために、前記加工形状内部にトロコイド加工経路と側面加工経路とを合成した加工経路を形成することを特徴とする。これにより、切削効率を維持しつつ工具負荷の低い加工経路を生成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3,545,070号公報
【特許文献2】特許第3,870,021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載されているいずれの加工法も被削体の全体を切削して除去する方法であり、これら加工方法を実行する加工パスは指定した被削体の全部を切削する目的で生成されることになる。従って、特許文献1及び特許文献2に記載されているような従来の数値制御工作機械の加工方法では、被削体の一部を割り落とす加工を行う加工パスを自動生成できないため、割り落とす加工を行う場合、オペレーターが形状を定義したパートプログラムを入力する必要があり、工数と手間を要している問題がある。
【0010】
従来の数値制御工作機械にて被削体の一部を割り落とす加工を行う場合、その加工パスをユーザが作るか、またはシステムとの対話により作成する必要があるため、下記の課題があった。
(1)割り落とし加工が可能な領域を、ユーザが加工する各面ごとに判断する必要があり、人依存性が高い。
(2)従来の加工パス生成システムでは、割り落とし加工方法に対応したパスの演算技術がないため、割り落とされる非加工領域を予め3D−CADにて定義する必要があり、工数と手間を要している。
【0011】
本発明は、従来技術の課題を解決するために、製品設計の3次元CADモデル(以下3D−CADと称する)から、割り落とすことが可能な形状を自動判断し、その割り落とす加工方法の加工パスを自動生成し、製品の加工時間を短縮し、工具摩耗を低減するものである。
【0012】
即ち、本発明は、製品設計の3D−CADモデルからの割り落とし可能な領域を自動判断し、その割り落とし加工法の加工パスを自動生成できるようにするものである。また、割り落とす加工パスを生成する際に、割り落とされる部分と残りの切削部分の間に連携橋を残すことにより、加工時のびびり振動を抑制し、割り落とされる被削体の割り落とす方向と時間をコントロールするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、製品設計の3D−CADモデルから被削体を切削加工するのでは無く、割り落とすことが可能な領域を自動判断し、その割り落とし加工の加工パスを自動生成する。具体的には、(1)部品のCAD設計図面と素材情報から被削体の形状情報を取得し、工具の切削深さ、工具径を考慮したブロックに分割する。(2)被削体の少なくとても2面から加工経路を作成し、一部のブロックを割り落とす方法で、切削量を削減する。(3)また、加工経路を生成する時に、連携橋を残して、ビビリ振動の低減とブロックの割り落とす方向を制御する。
【0014】
即ち本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する加工パス生成方法を、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有して構成した。
【0015】
また本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する加工パス生成方法を、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の加工パス生成工程で生成した加工パスで切削加工する所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有して構成した。
【0016】
更に本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工方法を、素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から切削加工する第1の切削加工工程と、素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の切削加工工程とを有して行うようにした。
【0017】
更にまた本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工方法を、素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の切削加工工程と、素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の切削加工工程で切削加工した所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の切削加工工程とを有して行うようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、素材の一部の被削体を切削することなく割り落とすことで、切削量を削減できるため、切削時間を短縮すると共に、工具の摩耗を低減し、工具寿命を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例による加工パスの自動生成システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】割り落とす加工パスの自動生成システム100の生成処理の流れを示すフロー図である。
【図3】CAD設計図面の一例を示す加工品の斜視図である。
【図4】図3に示す部品Sampleを加工する素材の斜視図である
【図5A】図4に示す素材mBoxから、図3に示す部品Sampleのかけ口Box1を加工するために切削する被削体CutBox1の外形を示す斜視図である。
【図5B】図4に示す素材mBoxから、図3に示す製品Sampleの円筒穴Hole1を加工するために切削する被削体CutHole1の外形を示す斜視図である。
【図6A】工具情報を設定する製造条件設定画面の正面図である。
【図6B】図6Aに示す製造条件設定画面にて設定した工具情報の読み込み結果を説明する表である。
【図7】工具と部品干渉の一例を示す部品の断面図である。
【図8】割り落とす加工パスを生成する処理フローを示すフロー図である。
【図9】Z軸方向のパス生成の詳細処理フローを示すフロー図である。
【図10A】図9に示す加工パス生成処理フローに基づいて算出した被削体CutBox1の加工パスを示す被削体CutBox1の斜視図である。
【図10B】図10Aに示す加工パスに沿って加工した結果を示す素材の斜視図である。
【図11】Y軸方向のパス生成の詳細処理フローを示すフロー図である。
【図12A】図11にて生成した被削体CutBox1を割り落とす加工パスを示す被削体CutBox1の斜視図である。
【図12B】図12Aに示す加工パスに沿って加工した結果を示す素材の斜視図である。
【図13】割り落とす加工パスの計算結果の一例を表形式に示した図である。
【図14A】割り落とされる部分と素材の間に連携橋を残した被削体CutBox1の加工パスを示す被削体CutBox1の斜視図である。
【図14B】図14Aに示す加工パスに沿って加工した結果を示す素材の斜視図である。
【図15A】図5Bに示すCutHole1の干渉領域の算出方法を説明するSampleの側面図である。
【図15B】図5Bに示すCutHole1の割り落とす加工パスを示すCutHole1の斜視図である。
【図15C】図15Aに示すCutHole1の割り落とす加工パスを示すCutHole1の正面図である。
【図16A】被削体の表面が曲面となるCAD設計図面の一例を示す部品の斜視図である。
【図16B】図16Aに示す部品の加工パスの生成一例を示す部品の断面図である。
【図16C】図16Aに示す部品の加工パスの生成一例を示す部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
図1に、本発明による割り落とす加工パスの自動生成システム100の機能構成図を示す。自動生成システム100は、部品と素材の形状情報を含むCAD設計図面101と素材の形状情報を含む素材情報102を入力する入力部110と、CAD設計図面101と素材情報102から部品形状情報と素材形状情報を取得する形状情報取得部120と、部品形状情報取得部120にて取得した部品形状情報と素材形状情報から被削体の形状情報を算出する被削体算出部130と、工具情報設定画面103と、工具情報設定画面103にて設定した工具情報を読み込む工具情報取得部141と、工具情報取得部141にて取得した工具情報と部品形状情報取得部120にて取得した部品形状情報と被削体算出部130にて算出した被削体の形状情報を用いて工具の干渉領域を算出する工具の干渉領域算出部140と、加工パスの計算式記憶部151に記憶されている割り落とす加工パスの計算式を読み込む加工パスの計算式読込部150と、被削体算出部130にて算出した被削体の形状情報と工具の干渉領域算出部140にて算出した工具の干渉領域情報とを用いて加工パスの計算式読込部150にて読み込んだ割り落とす加工パスの計算式により割り落とす加工パスとその加工領域を自動生成する加工パス自動生成部160と、生成した割り落とす加工パスの結果105をプリント・出力させる出力部170を備えて構成されている。
【0021】
図2に、割り落とす加工パスの自動生成システム100の加工パス生成処理の流れを示す。加工パスは、CAD設計図面101から部品モデルの形状情報を取得し、製造条件設定画面にて設定した素材と工具情報などの製造条件を読み込み、被削体の形状と工具の干渉領域を算出した後、割り落とすための加工が可能な加工領域とその加工パスの計算を行う流れとなる。このフローはユーザから入力装置を介して、割り落とす加工パスの計算処理を行うように要求された時に開始される。
【0022】
以下に加工パス自動算出処理の詳細について、図2を用いて説明する。
まず、CAD設計図面から部品形状情報を、素材情報102から素材形状情報を取得する(S100)。一般的に、CAD設計図面101は、ユーザにより部品各部の幾何情報とそれに付随する非幾何情報が与えられることにより、3次元空間内にモデリングされる。また素材情報102は、素材のブロック形状の数値入力により定義される。
【0023】
次に、S100にて取得した部品形状情報と素材形状情報から、被削体の形状情報を算出する(S200)。
【0024】
次に、工具情報設定画面103にて設定した工具情報の読み込みを行い、この読み込んだ工具情報と、S100にて取得した部品Sampleの形状情報と、S200にて算出した被削体の形状情報から工具の干渉領域を算出する(S300)。
【0025】
切削体の形状と工具の干渉領域を算出(S300)した後、割り落とす加工パスの計算式を加工パスの計算式記憶部151から読み込み(S400)、加工パスの自動生成部160にて割り落とす加工パスを自動生成する(S500)。
【0026】
最後に、出力部170は、加工パスの自動生成部160で計算し生成し加工パスを出力する(S600)。加工パスは、ファイル、ディスプレイ、紙などに出力する。
【0027】
以下に、直方体のかけ口Box1と、円筒穴Hole1により構成された直方体Sampleの加工パス生成方法を図3〜図12を用いて説明する。
【0028】
(1)CAD設計図面からモデルの形状情報を取得:S100
図3に、CAD設計図面の一例を示す。図3に示す部品Sample;300は、直方体Box;301から、直方体Box1;302と、円筒穴Hole1;303との部分が削除された形状をしており、部品Sample;300は、直方体Box;301と、直方体Box1;302と、円筒穴Hole1;303の集合演算から構成されている。CAD設計図には部品Sample;300を構成する基本立体のBox;301とBox1;302、及びHole1;303の情報と形状表現の直線、平面及び曲線などの情報が含まれており、これら各形状の表現式を部品形状情報取得部120にて取得する。図3に示す部品Sample;300のCAD設計図101から取得したCAD情報は以下の情報から構成される。
(a)上を向く水平面は3個ある。f6はBox;301の表面であり、f15は垂直方向の直方形穴Box1;302の底であり、f21は垂直方向の円形の穴Hole1;303の底である。
(b)基本立体Box;301は、q1、q7を頂点とした、3対の互いに直交する並行な平面f1〜f6からで限られた空間である。
(c)基本立体Box1;302は、q11、q17を頂点とした、3対の互いに直交する並行な平面f11〜f16からで限られた空間である。
(d)基本立体Hole1;303は、q21(x0 ,y0 ,z01)、q22(x0 ,y0 ,z02)を軸とする半径r0の円柱である。
f(x、y)= r02 - (x−x0)2 - (y−y0)2 >= 0
z02 <= z <= z01
(2)素材と工具情報の読み込み;S200
図4に、図3に示す部品Sample;300を加工する素材mBox;400の一例を示す。
図4に定義されている素材mBox;400は、基本立体Box;301から構成されている。素材情報には、加工用素材を構成する基本立体Box;301の情報と形状表現の直線、平面及び曲線など情報が含まれており、これら各形状の表現式を部品形状情報取得部120にて取得する。図4に示す部品Sample;300を加工する素材情報102から取得した素材情報は以下の情報から構成される。
・上を向く水平面は1個あり、基本立体Box;301の表面である。
・基本立体Box;301は、q1,q7を頂点とした、3対の互いに直交する並行な平面f1〜f6からで限られた空間である。図6Aに工具情報を設定する工具情報設定画面103の一例を示す。
【0029】
図6Aに示す工具情報設定画面103は、工具の形状寸法を定義する工具寸法定義領域611と、この工具寸法定義領域611で定義された工具の各部の寸法を設定する工具寸法設定部612及び製造条件を入力する製造条件入力領域613を備えて構成されている。工具情報設定領域612にて、工具ツールの切削直径D1と切削有効刃長FLと、工具長さL1などを設定し、工具ツールを支持する工具ホルダの直径D2と、ホルダ長さL2と、ホルダのテーパ角度など情報を設定し、製造条件設定領域620で工具のY軸方向の切削深さdyと、Z軸方向の切削深さdzを設定できる。これら工具情報設定画面103にて設定した工具情報を図1に示した工具情報取得部141にて取得する。図6Bに図6Aの工具情報設定画面103にて設定した工具情報の読み込み結果の一例を示す。
(3)切削体の形状と工具の干渉領域の算出;S300
切削体と工具の干渉領域算出処理の具体例を図7を用い説明する。
図7に、工具710と部品701と干渉の一例を示す。一般的には、工具710のホルダ部分711はツール部分712より大きいため、工具710が傾いた時、ホルダ部分711が部品701の表面に当たって工具710と部品701とが干渉を起こす。工具710のツール部分の表面7121と部品701の表面7011の傾き角度をaとし、CutHole1;702の部分に示したように工具710のホルダ部分711が部品701の表面702と一致した時(干渉をし始めたとき)の角度をAとすると、三角法則により、工具710のツール部分の表面7121と部品701の表面7011の最少角度Aを下記の(数1)で算出できる。
tan A = (D2/2 - D1/2) / (L1-FL) ・・・(数1)
また、工具710のツール部分の表面7121と部品701の表面7011の傾き角度aが90°を過ぎるとCutBox1;703の部分に示すように、工具710のツール部分712の先端が部品701と干渉する。工具710と部品701との距離d1で、工具710の切削深さがd2の場合、図7に示すように三角法則により、工具710と部品701とが干渉しない最大角度をA1を下記の(数2)より算出できる。
Cos(180-A1)= d1/d2 ・・・(数2)
【0030】
各加工点にての上記計算により各加工点にて干渉領域を自動計算できる。例えば、点Point1;720において、(数1)を用いて角度Aを下記に算出する。
tan A = (D2/2 -D1/2) / (L1-FL)
A = tan-1[(D2/2 -D1/2) / (L1-FL)] ・・・(数3)
すなわち、(数3)から、工具が部品と干渉しない干渉領域は工具が条件A< a < 90°を満たす角度で加工出来る領域となる。
【0031】
同じ原理で、図3に示す部品Sample;300における工具710の干渉領域を自動算出できる。
【0032】
(4)割り落とす加工領域と加工パス自動算出;S400、S500
図8を用い、割り落とす加工パスを生成する処理フローの一例を示す。図8に示す処理フローは、図5Aに示すような対角頂点がt1(x1,y1,z1)とt2(x2,y2,z2)となる長方形の切削体であるCutBox1;500を対象とした、工具710の先端点Sn(x,y,z)の経路を作成する処理フローである。ここで、工具710のY軸方向の切削深さをdy,Z軸方向の切削深さをdzとし、この両者の関係をz2 > z1とする。加工パス自動算出処理の具体例を、図5Aに示す被削体Cutbox1;500を用いて説明する。
【0033】
まず、ステップS410で、前記S200にて算出した図5Aに示すCutBox1の形状情報を取得する。
頂点t1 = q11
頂点t2 = q17
次に、ステップS415で、S300にて算出した工具の干渉情報と製造条件を取得する。図6Bに工具情報の一例を示す。
D1 = ツール直径
dy = Y軸方向の切削深さ
dz = Z軸方向の切削深さ
次にステップS420で、工具軸を被削体のXY面と垂直とするように設置する。
次にステップS425で、切削可能な溝数:JとZ方向の溝数:Kを算出する。切削可能な溝数:JとZ方向の溝数:Kは、S300にて取得した製造条件のY軸方向の切削深さdyと、 Z軸方向の切削深さdzを用いて算出する。ステップS435で、Z方向の溝数をカウント変数kの初期値を1と設定する。
J = Y / (|dy|+D1) = |y2 -y1|/(|dy|+D1)
K = Z / |dz| = |z2 -z1| / |dz| ・・・(数4)
ステップS435で、Z方向の溝数をカウント変数kの初期値を1と設定する。
k = 1 ;
【0034】
ステップS440で、切削スタート点なる工具先端点のz軸の値z= z1 + k * dzを算出する。
z= z1 + k * dz = z1 + dz ・・・(数5)
【0035】
ステップS460で、ステップS440にて算出したz平面での加工パスを生成する。加工パス生成の詳細手順は、(4-1)で述べる。
【0036】
ステップS460にて、Z方向の加工パスを生成した後、ステップS465にて、工作台を時計回りに90°回転し、XZ面を工具と垂直状態に設置する。
【0037】
次に、ステップS470にて、z平面にて生成したZ方向加工パスに垂直するY方向の加工パスを生成する。具体的なY方向の加工パス生成処理手順は(4-2)で述べる。
【0038】
次にステップS475にて、z軸方向の溝数の確認を行い、加工パスが生成されていない溝がある場合、k=k+1とし、z=z1 + k * dzとなる面にて、ステップS440からステップS477を繰り返し行い、面z=z1 + k * dzにての加工パスを生成する。
【0039】
(4-1)Z方向の加工パス生成
次に、S460におけるz平面の加工パス生成フロー(図9)を図10Aを用いて説明する。
ステップS4610からステップS4645にて、被削体1002と部品1001の境界となる外延の加工点列S1(x1+D1/2, y1-D1/2, z1)と、S2(x1+D1/2, y2-D1/2, z1)と、S3(x2-D1/2, y2-D1/2, z1)と、S4(x2-D1/2, y1-D1/2, z1)を生成する。
【0040】
先ず、ステップS4610にて、S1(x, y, z)のx,y値を計算し、ステップS4615にてS1を出力する。次に、ステップS4620にて、S2(x, y, z)のy値を計算し、ステップS4625にてS2を出力する。次に、ステップS4630にて、S3(x, y, z)のx値を計算し、ステップS4635にてS3を出力する。次に、ステップS4640にて、S4(x, y, z)のy値を計算し、ステップS4645にてS4を出力する。更に、ステップS4650にて、生成したS1,S2,S3,S4を順番に繋げて加工パスCL1を生成する。
【0041】
次に、ステップS4655、ステップS4660、ステップS4665、ステップS4670と、ステップS4675にて、被削体1002のf11面1011から、工具710のy軸方向切削深さdy離れた位置にx軸と並行した溝を加工する加工パスを生成する。
【0042】
具体的には、まずステップS4655にてY方向の溝数をカウント変数jの初期値を1と設定する。次に、ステップS4660にて、S5(x, y, z)のx,yを値を計算し、ステップS4665にてS5を出力する。
j = 1;
n = 生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x1 + D1 / 2
y = (y1 - D1 / 2) + j * (dy + D1 )
z = z1 ・・・(数6)
次に、ステップS4670にて、S6(x, y, z)のx、y値を計算し、ステップS4675にてS6を出力し、S5とS6を繋げて加工パスCL2を生成する。
n =生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x2 - D1 / 2
上記ステップS4660と、ステップS4665と、ステップS4670と、ステップS4675を被削体1002のf11面1011の対面となるf13面1013を超えるまで繰り返す。具体的に、ステップS4680にてj+ 1とJを比較し、j+1 がJより小さい場合、ステップS4681にてj= j + 1とし、ステップS4660と、ステップS4665と、ステップS4670と、ステップS4675を行い、j+1がJより小さいではなくなるまで繰り返し、S7とS8から構成するCL3と、S9とS10から構成するCL4を生成する。
【0043】
図10Bに、図4に示した素材mBox;400を、図10Aに示す加工パスCL1,CL2,CL3,CL4に従って加工した結果を示す。図10Bで、溝1021,1022,1023は、工具710を加工パスCL1に沿って移動させて加工した溝である。溝1024乃至1026はそれぞれ工具710を加工パスCL2、CL3及びCL4に沿って移動させて加工した溝である。このように加工した結果、溝1021,1022,1023で囲まれる領域の内側にはブロック1031乃至1034が残される。
【0044】
(4-2)Y方向の加工パス生成
Y方向の加工パス生成フロー(図11)を図12Aを用いて説明する。
ステップS4710と、ステップS4715と、ステップS4720と、ステップS4735にて、被削体のf16面1016から工具のz軸方向切削深さdz離れた位置にx軸と並行した溝を加工する加工パスを生成する。
【0045】
まずステップS4710にY方向の溝数をカウント変数jを 0 とし、S11(x, y, z)のz値を計算し、ステップS4715にて、(数7)を用いてS11(x, y, z)のx、y値を計算し、ステップS4720にてS11を出力する。
j = 0;
z = (z1 - D1 /2) - k * (|dz| +D1)
n = 生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x1 + D1 / 2
y = (y1 + dy) + j * (dy + D1) ・・・(数7)
次に、ステップS4730にて、(数8)を用いてS12(x、 y、 z)のxを値を計算し、ステップS4735にて、S12を出力する。
n = 生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x2 - D1 / 2 ・・・(数8)
次に、ステップS4740にて、出力したS11とS12を順番に繋げて加工パスCL5を生成する。
【0046】
次に、ステップS4745にて、y軸方向の溝数を確認を行い、加工パスが生成されていない溝がある場合、ステップS4746に進んでj=j+1として、ステップS4715からステップS4740を実行することで、平面にての加工パスの点列を生成し、j+1>Jとなるまで繰り返し、S13とS14から構成するCL6と、S15とS16から構成するCL7と、S17とS18から構成するCL8を生成する。
【0047】
図12Bに、図4に示した素材mBox;400を、f1の面を上にした状態でf1の面の側から、図11のフローに基づいて生成した図12Aに示す加工パスCL5を加工している例を示す。
【0048】
実際の加工においては、先ず、工具710をz方向の位置が(数7)で規定される位置に固定された状態でx方向にS11からS12まで加工パスCL5に沿って移動させる。このとき、工具710のz方向の位置が(数7)で規定される一定の位置であるため、工具710はブロック1031の根本の側を加工する。これにより、ブロック1031のf6面の側は加工されずに残っている。工具710を加工パスCL5に沿ってS12まで移動させると、ブロック1031のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0049】
次に(数7)に基づいて工具710をy方向に(dy + D1)移動させてS14へ移動させ、S14からS13へ加工パスCL6に沿って移動させてブロック1032を加工する。工具710を加工パスCL6に沿ってS13まで移動を完了させることにより、ブロック1032のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0050】
次に、S13に到達した工具710を(数7)に基づいてy方向に(dy + D1)移動させてS15へ移動させ、S15からS16へ加工パスCL7に沿って移動させてブロック1033を加工する。工具710を加工パスCL7に沿ってS16まで移動を完了させることにより、ブロック1033のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0051】
更に、S16に到達した工具710を(数7)に基づいてy方向に(dy + D1)移動させてS18へ移動させ、S18からS17へ加工パスCL8に沿って移動させてブロック1034を加工する。工具710を加工パスCL8に沿ってS17まで移動を完了させることにより、ブロック1034のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0052】
この一連の動作を実行することにより、図3に示したSample;300のBox1;302の部分の切削加工が完了する。
【0053】
図13に、図8と、図9と図11に示す計算処理の結果の一例を示す。
【0054】
最後に、出力部170は、加工パスの自動生成部160で計算し生成した加工パスを出力する(S600)具体的には、S600で生成した加工パスを、ファイル、ディスプレイ、紙などに出力する。
【0055】
割り落とす加工パスを生成する際に、割り落とされる部分と素材の間に連携橋を残し、割り落とす部分の割り落とす方向をコントロールすることも可能である。連携橋を残す加工パスを連携橋の段点で分解し、連携橋の段点の座標値を用いて加工パスを修正する。図14Aに、図10Aと図10Bにて生成した加工パスCL2と、CL3と、CL4における、割り落とされる部分と素材の間に連携橋を被削体1003に残す方法の一例を示す。図10Aにて生成したS5とS6とを繋げる加工パスCL2の途中において、XPの位置に幅がLの連携橋を設定する例を説明する。
【0056】
まず、連携橋段点と工具先端の関係を下記定義し、工具直径と対象となる加工パスCL2を用いて新しい加工パスの分解点P1とP2を算出する。
x1 = 連携橋の設定位置XP - 工具直径D1/2
x2 = 連携橋の設定位置XP + 連携橋の幅L - 工具直径D1/2
次に、加工パスCL2の始点S5とP1繋げて新しい加工パスCL21と、P2と加工パスCL2の終点S6を繋げて新しい加工パスCL22を生成する。
【0057】
同じように加工パスCL3,CL4においても、加工パスCL31,CL32およびCL41,CL42,CL43を生成する。
【0058】
図14Aに示す加工パスに従って加工した結果のイメージ図を図14Bに示す。図10Bで説明したのと同様に、ブロック1031乃至1034が形成されている。そして、ブロック1031と1032とは連携橋1401で接続されており、ブロック1032と1033とは連携橋1402で接続されており、ブロック1033と1034とは連携橋1403及び1404で接続されている。
図15Aに、図3に示す部品Sample;300の被削体となる図5Bに示すCutHole1;550に対する割り落とし加工パスの生成の一例を示す。
【0059】
図7に示す工具710と部品701との干渉の一例から、図15Aに示した点Point1(xp1,yp1,zp1)とPoint2(xp2,yp2,zp2)において、工具710が部品(Sample)300と干渉しない領域は工具710が図7で説明した角度Aに対して条件A< a < 90°を満たす角度aが加工出来る領域となる。前記干渉条件を参照して、割り落とす被削体の部分1501の体積が最大となるように、工具710と素材300の向きを調整し、加工パス1510を生成する。ここで、干渉角度A<45°の場合、素材300もしくは工具710の向きを調整し、工具710と加工面1511の角度Bを45°に調整し、干渉角度A>45°の場合、素材もしくは工具の向きを調整し、工具と加工面の角度Bを(180°-A)に調整する。
次に、図8に示す処理フローと同じ方法で、Point2(xp2,yp2,zp2)の座標値から、工具先端点S1(x,y,z)値を算出し、CutHole1;550の被削体の輪郭に沿った加工パスを生成する。ここで、
Z軸方向の切削深さ dz1 =工具dz * sinB
Y軸方向の切削深さdy1 = 工具dy * conB
となり、下記の(数9)にて、工具先端点S1(x,y,z)のx、y、z値を算出し、
x = xp2;
y = yp2 + dz * cosB ;
z = zp2 - dz * sinB; ・・・(数9)
y軸方向へ(dz+dy)*cosBの間隔で加工パスを生成する。
【0060】
また、被削体CutHole1;550の形状式は下記の(数10)であり、
f(x、y):r02 -(x−x0)2 -(y−y0)2 >= 0
z02 <=z<=z01 ・・・(数10)
Point2を通過する輪郭曲面の表現式が下記の(数11)で表せ
f(x、y):r02 -(xp2−x0)2 -(yp2−y0)2 = 0
z02 <=z<= z01 ・・・(数11)
S1を始点とした加工パスCL101は下記の(数12)で表される。
f(x、y):r02 -(xp2−x0)2 -(yp2 + dz * cosB −y0)2 = 0
z = zp2 - dz * sinB; ・・・(数12)
同様に、平面にz = zp2 - dz * sinBにおける S2,S3の加工パスCL102・・・を生成し、次の平面z = zp2 - 2*(dz * sinB)における加工パスを生成する。
【0061】
図16Aに、 被削体の表面が曲面となる部品の一例を示す。
図16Aに示すように被削体1600の表面が曲面の場合、まず、図16Bに示すBox1; 1610の部分を割り落とす加工パスを、図8乃至12Bを用いて説明したCutBox1;500の割り落とす加工パスを生成した方法で生成し、次に図16Cに示す面Face1;1601と面Face2;1602対して、前記CutHole1;550の割り落とす加工パスを生成した方法で割り落とす加工パスを生成する。
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
101…部品のCAD設計図面 102…素材情報 103…工具情報設定画面
110…データ入力部 120…形状情報取得部 130…被削体算出部 140…工具の
干渉領域算出部 141…工具情報取得部 150…加工パスの計算式読込部
151…加工パスの計算式記憶部 160…加工パスの自動生成部 170…出力部
105…割り落とす加工パスの結果 100…割り落とす加工パスの自動生成システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御工作機械による素材加工において、割り落とす加工方法を実行可能な加工パスを生成する加工パスの生成方法及び割り落とし加工を行う加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御工作機械により素材を加工するには、予め加工動作をコントロールする数値制御命令をプログラムしておく必要がある。数値制御工作機械発展の初期からコンピュータによる数値制御のプログラミングの研究がはじめられ、それがAPT(Automatic Programming Tool,以下APTと称する)システム、EXAPT(Extended subset of APT,以下EXAPTと称する)システムへ発展した。
【0003】
APTとEXAPTシステムでは、加工部分の形状を記述した幾何ステートと加工面の状態、加工位置精度、材料、加工方法などを記述した技術ステートメントを定義したパートプログラムから、自動的に加工パスが生成できる。しかし、パートプログラムの入力作業は人が図面を見ながらAPT言語、EXAPT言語を使って行うため、大変な手間と時間がかかっていた。コンピュータの中で実体モデルの取扱が可能になってからは、この形状モデルに基づく加工パス生成装置では、APTやEXAPTのようにパートプログラムで形状を定義した加工パスを指示することなく、コンピュータの内部モデルとして蓄えられた形状モデルをもとに、オペレーターからの指定した加工形状と加工方法、工具情報などの情報に基づいて加工パスを生成している。
【0004】
従来の数値制御工作機械の加工方法として、等高線切削、突き切削などがある。等高線切削は加工面の高さを少しずつ変えながら掘り進む方法であり、突き切削は仕上げ面の手前までエンドミルやドリルで蜂の巣状に穴をあけていく方法である。生成する加工パスのパターンとしては、ジグ、トロコイドなどがある。これらの加工方法は、いずれも被削体の全てを切削除去していく方法であり、これら加工方法を実行する加工パスは、指定した被削体の全部を切削する目的で生成する。
【0005】
これら、等高線切削法や突き切削法は、加工作業に長時間を要し、また工具の先端部分でのみで加工が行われるため、切削効率が悪いとともに、工具の寿命も短いといった欠点があった。このような欠点を克服した加工法として、特許文献1、特許文献2に記載されているような方法がある。
【0006】
特許文献1に記載されている加工方法は、製品形状を基準に素材を切削加工して段部を順次形成する荒取加工法である。この荒取加工法は、深切り込み大荒加工工程とカケ上がり加工工程の2種類の加工工程からなる。深切り込み大荒加工工程とは、1回の切削量(切削深さ)を工具の全長分とし、上段から下段へ順次切削する加工工程である。カケ上がり加工工程は、前記深切り込み大荒加工工程で形成された各段部を、更に小ピッチで下段から上段へ順次切削し製品形状へ仕上げて行く加工工程である。この加工方法の場合、加工時に工具の切れ歯全長あるいは切れ歯の広範囲の部分を有効に使用するため、等高線加工法より切削効率が向上し、且つ工具の摩耗が少なく、工具寿命が向上する。
【0007】
特許文献2に記載されている加工方法は、入力された加工形状を所定量オフセットして作成される加工経路により加工する加工経路生成方法についての内容で、加工経路に沿って工具を移動させたときのトロコイド加工により削り残しが発生しない範囲、もしくは、凹屈曲部の少なくともいずれか一方の加工範囲をトロコイド加工経路とし、前記範囲以外の加工経路を側面加工経路とすることを特徴とした加工経路生成方法である。すなわち、特許文献2に記載されている加工方法は、所望の加工形状を加工するために、前記加工形状内部にトロコイド加工経路と側面加工経路とを合成した加工経路を形成することを特徴とする。これにより、切削効率を維持しつつ工具負荷の低い加工経路を生成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3,545,070号公報
【特許文献2】特許第3,870,021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載されているいずれの加工法も被削体の全体を切削して除去する方法であり、これら加工方法を実行する加工パスは指定した被削体の全部を切削する目的で生成されることになる。従って、特許文献1及び特許文献2に記載されているような従来の数値制御工作機械の加工方法では、被削体の一部を割り落とす加工を行う加工パスを自動生成できないため、割り落とす加工を行う場合、オペレーターが形状を定義したパートプログラムを入力する必要があり、工数と手間を要している問題がある。
【0010】
従来の数値制御工作機械にて被削体の一部を割り落とす加工を行う場合、その加工パスをユーザが作るか、またはシステムとの対話により作成する必要があるため、下記の課題があった。
(1)割り落とし加工が可能な領域を、ユーザが加工する各面ごとに判断する必要があり、人依存性が高い。
(2)従来の加工パス生成システムでは、割り落とし加工方法に対応したパスの演算技術がないため、割り落とされる非加工領域を予め3D−CADにて定義する必要があり、工数と手間を要している。
【0011】
本発明は、従来技術の課題を解決するために、製品設計の3次元CADモデル(以下3D−CADと称する)から、割り落とすことが可能な形状を自動判断し、その割り落とす加工方法の加工パスを自動生成し、製品の加工時間を短縮し、工具摩耗を低減するものである。
【0012】
即ち、本発明は、製品設計の3D−CADモデルからの割り落とし可能な領域を自動判断し、その割り落とし加工法の加工パスを自動生成できるようにするものである。また、割り落とす加工パスを生成する際に、割り落とされる部分と残りの切削部分の間に連携橋を残すことにより、加工時のびびり振動を抑制し、割り落とされる被削体の割り落とす方向と時間をコントロールするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、製品設計の3D−CADモデルから被削体を切削加工するのでは無く、割り落とすことが可能な領域を自動判断し、その割り落とし加工の加工パスを自動生成する。具体的には、(1)部品のCAD設計図面と素材情報から被削体の形状情報を取得し、工具の切削深さ、工具径を考慮したブロックに分割する。(2)被削体の少なくとても2面から加工経路を作成し、一部のブロックを割り落とす方法で、切削量を削減する。(3)また、加工経路を生成する時に、連携橋を残して、ビビリ振動の低減とブロックの割り落とす方向を制御する。
【0014】
即ち本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する加工パス生成方法を、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有して構成した。
【0015】
また本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する加工パス生成方法を、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、設計情報を用いて素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の加工パス生成工程で生成した加工パスで切削加工する所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有して構成した。
【0016】
更に本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工方法を、素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から切削加工する第1の切削加工工程と、素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の切削加工工程とを有して行うようにした。
【0017】
更にまた本発明は、上記課題を解決するために、素材の一部を切削により削除する加工方法を、素材の削除する領域を素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の切削加工工程と、素材の削除する領域を素材に対して第2の方向から第1の切削加工工程で切削加工した所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の切削加工工程とを有して行うようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、素材の一部の被削体を切削することなく割り落とすことで、切削量を削減できるため、切削時間を短縮すると共に、工具の摩耗を低減し、工具寿命を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例による加工パスの自動生成システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】割り落とす加工パスの自動生成システム100の生成処理の流れを示すフロー図である。
【図3】CAD設計図面の一例を示す加工品の斜視図である。
【図4】図3に示す部品Sampleを加工する素材の斜視図である
【図5A】図4に示す素材mBoxから、図3に示す部品Sampleのかけ口Box1を加工するために切削する被削体CutBox1の外形を示す斜視図である。
【図5B】図4に示す素材mBoxから、図3に示す製品Sampleの円筒穴Hole1を加工するために切削する被削体CutHole1の外形を示す斜視図である。
【図6A】工具情報を設定する製造条件設定画面の正面図である。
【図6B】図6Aに示す製造条件設定画面にて設定した工具情報の読み込み結果を説明する表である。
【図7】工具と部品干渉の一例を示す部品の断面図である。
【図8】割り落とす加工パスを生成する処理フローを示すフロー図である。
【図9】Z軸方向のパス生成の詳細処理フローを示すフロー図である。
【図10A】図9に示す加工パス生成処理フローに基づいて算出した被削体CutBox1の加工パスを示す被削体CutBox1の斜視図である。
【図10B】図10Aに示す加工パスに沿って加工した結果を示す素材の斜視図である。
【図11】Y軸方向のパス生成の詳細処理フローを示すフロー図である。
【図12A】図11にて生成した被削体CutBox1を割り落とす加工パスを示す被削体CutBox1の斜視図である。
【図12B】図12Aに示す加工パスに沿って加工した結果を示す素材の斜視図である。
【図13】割り落とす加工パスの計算結果の一例を表形式に示した図である。
【図14A】割り落とされる部分と素材の間に連携橋を残した被削体CutBox1の加工パスを示す被削体CutBox1の斜視図である。
【図14B】図14Aに示す加工パスに沿って加工した結果を示す素材の斜視図である。
【図15A】図5Bに示すCutHole1の干渉領域の算出方法を説明するSampleの側面図である。
【図15B】図5Bに示すCutHole1の割り落とす加工パスを示すCutHole1の斜視図である。
【図15C】図15Aに示すCutHole1の割り落とす加工パスを示すCutHole1の正面図である。
【図16A】被削体の表面が曲面となるCAD設計図面の一例を示す部品の斜視図である。
【図16B】図16Aに示す部品の加工パスの生成一例を示す部品の断面図である。
【図16C】図16Aに示す部品の加工パスの生成一例を示す部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
図1に、本発明による割り落とす加工パスの自動生成システム100の機能構成図を示す。自動生成システム100は、部品と素材の形状情報を含むCAD設計図面101と素材の形状情報を含む素材情報102を入力する入力部110と、CAD設計図面101と素材情報102から部品形状情報と素材形状情報を取得する形状情報取得部120と、部品形状情報取得部120にて取得した部品形状情報と素材形状情報から被削体の形状情報を算出する被削体算出部130と、工具情報設定画面103と、工具情報設定画面103にて設定した工具情報を読み込む工具情報取得部141と、工具情報取得部141にて取得した工具情報と部品形状情報取得部120にて取得した部品形状情報と被削体算出部130にて算出した被削体の形状情報を用いて工具の干渉領域を算出する工具の干渉領域算出部140と、加工パスの計算式記憶部151に記憶されている割り落とす加工パスの計算式を読み込む加工パスの計算式読込部150と、被削体算出部130にて算出した被削体の形状情報と工具の干渉領域算出部140にて算出した工具の干渉領域情報とを用いて加工パスの計算式読込部150にて読み込んだ割り落とす加工パスの計算式により割り落とす加工パスとその加工領域を自動生成する加工パス自動生成部160と、生成した割り落とす加工パスの結果105をプリント・出力させる出力部170を備えて構成されている。
【0021】
図2に、割り落とす加工パスの自動生成システム100の加工パス生成処理の流れを示す。加工パスは、CAD設計図面101から部品モデルの形状情報を取得し、製造条件設定画面にて設定した素材と工具情報などの製造条件を読み込み、被削体の形状と工具の干渉領域を算出した後、割り落とすための加工が可能な加工領域とその加工パスの計算を行う流れとなる。このフローはユーザから入力装置を介して、割り落とす加工パスの計算処理を行うように要求された時に開始される。
【0022】
以下に加工パス自動算出処理の詳細について、図2を用いて説明する。
まず、CAD設計図面から部品形状情報を、素材情報102から素材形状情報を取得する(S100)。一般的に、CAD設計図面101は、ユーザにより部品各部の幾何情報とそれに付随する非幾何情報が与えられることにより、3次元空間内にモデリングされる。また素材情報102は、素材のブロック形状の数値入力により定義される。
【0023】
次に、S100にて取得した部品形状情報と素材形状情報から、被削体の形状情報を算出する(S200)。
【0024】
次に、工具情報設定画面103にて設定した工具情報の読み込みを行い、この読み込んだ工具情報と、S100にて取得した部品Sampleの形状情報と、S200にて算出した被削体の形状情報から工具の干渉領域を算出する(S300)。
【0025】
切削体の形状と工具の干渉領域を算出(S300)した後、割り落とす加工パスの計算式を加工パスの計算式記憶部151から読み込み(S400)、加工パスの自動生成部160にて割り落とす加工パスを自動生成する(S500)。
【0026】
最後に、出力部170は、加工パスの自動生成部160で計算し生成し加工パスを出力する(S600)。加工パスは、ファイル、ディスプレイ、紙などに出力する。
【0027】
以下に、直方体のかけ口Box1と、円筒穴Hole1により構成された直方体Sampleの加工パス生成方法を図3〜図12を用いて説明する。
【0028】
(1)CAD設計図面からモデルの形状情報を取得:S100
図3に、CAD設計図面の一例を示す。図3に示す部品Sample;300は、直方体Box;301から、直方体Box1;302と、円筒穴Hole1;303との部分が削除された形状をしており、部品Sample;300は、直方体Box;301と、直方体Box1;302と、円筒穴Hole1;303の集合演算から構成されている。CAD設計図には部品Sample;300を構成する基本立体のBox;301とBox1;302、及びHole1;303の情報と形状表現の直線、平面及び曲線などの情報が含まれており、これら各形状の表現式を部品形状情報取得部120にて取得する。図3に示す部品Sample;300のCAD設計図101から取得したCAD情報は以下の情報から構成される。
(a)上を向く水平面は3個ある。f6はBox;301の表面であり、f15は垂直方向の直方形穴Box1;302の底であり、f21は垂直方向の円形の穴Hole1;303の底である。
(b)基本立体Box;301は、q1、q7を頂点とした、3対の互いに直交する並行な平面f1〜f6からで限られた空間である。
(c)基本立体Box1;302は、q11、q17を頂点とした、3対の互いに直交する並行な平面f11〜f16からで限られた空間である。
(d)基本立体Hole1;303は、q21(x0 ,y0 ,z01)、q22(x0 ,y0 ,z02)を軸とする半径r0の円柱である。
f(x、y)= r02 - (x−x0)2 - (y−y0)2 >= 0
z02 <= z <= z01
(2)素材と工具情報の読み込み;S200
図4に、図3に示す部品Sample;300を加工する素材mBox;400の一例を示す。
図4に定義されている素材mBox;400は、基本立体Box;301から構成されている。素材情報には、加工用素材を構成する基本立体Box;301の情報と形状表現の直線、平面及び曲線など情報が含まれており、これら各形状の表現式を部品形状情報取得部120にて取得する。図4に示す部品Sample;300を加工する素材情報102から取得した素材情報は以下の情報から構成される。
・上を向く水平面は1個あり、基本立体Box;301の表面である。
・基本立体Box;301は、q1,q7を頂点とした、3対の互いに直交する並行な平面f1〜f6からで限られた空間である。図6Aに工具情報を設定する工具情報設定画面103の一例を示す。
【0029】
図6Aに示す工具情報設定画面103は、工具の形状寸法を定義する工具寸法定義領域611と、この工具寸法定義領域611で定義された工具の各部の寸法を設定する工具寸法設定部612及び製造条件を入力する製造条件入力領域613を備えて構成されている。工具情報設定領域612にて、工具ツールの切削直径D1と切削有効刃長FLと、工具長さL1などを設定し、工具ツールを支持する工具ホルダの直径D2と、ホルダ長さL2と、ホルダのテーパ角度など情報を設定し、製造条件設定領域620で工具のY軸方向の切削深さdyと、Z軸方向の切削深さdzを設定できる。これら工具情報設定画面103にて設定した工具情報を図1に示した工具情報取得部141にて取得する。図6Bに図6Aの工具情報設定画面103にて設定した工具情報の読み込み結果の一例を示す。
(3)切削体の形状と工具の干渉領域の算出;S300
切削体と工具の干渉領域算出処理の具体例を図7を用い説明する。
図7に、工具710と部品701と干渉の一例を示す。一般的には、工具710のホルダ部分711はツール部分712より大きいため、工具710が傾いた時、ホルダ部分711が部品701の表面に当たって工具710と部品701とが干渉を起こす。工具710のツール部分の表面7121と部品701の表面7011の傾き角度をaとし、CutHole1;702の部分に示したように工具710のホルダ部分711が部品701の表面702と一致した時(干渉をし始めたとき)の角度をAとすると、三角法則により、工具710のツール部分の表面7121と部品701の表面7011の最少角度Aを下記の(数1)で算出できる。
tan A = (D2/2 - D1/2) / (L1-FL) ・・・(数1)
また、工具710のツール部分の表面7121と部品701の表面7011の傾き角度aが90°を過ぎるとCutBox1;703の部分に示すように、工具710のツール部分712の先端が部品701と干渉する。工具710と部品701との距離d1で、工具710の切削深さがd2の場合、図7に示すように三角法則により、工具710と部品701とが干渉しない最大角度をA1を下記の(数2)より算出できる。
Cos(180-A1)= d1/d2 ・・・(数2)
【0030】
各加工点にての上記計算により各加工点にて干渉領域を自動計算できる。例えば、点Point1;720において、(数1)を用いて角度Aを下記に算出する。
tan A = (D2/2 -D1/2) / (L1-FL)
A = tan-1[(D2/2 -D1/2) / (L1-FL)] ・・・(数3)
すなわち、(数3)から、工具が部品と干渉しない干渉領域は工具が条件A< a < 90°を満たす角度で加工出来る領域となる。
【0031】
同じ原理で、図3に示す部品Sample;300における工具710の干渉領域を自動算出できる。
【0032】
(4)割り落とす加工領域と加工パス自動算出;S400、S500
図8を用い、割り落とす加工パスを生成する処理フローの一例を示す。図8に示す処理フローは、図5Aに示すような対角頂点がt1(x1,y1,z1)とt2(x2,y2,z2)となる長方形の切削体であるCutBox1;500を対象とした、工具710の先端点Sn(x,y,z)の経路を作成する処理フローである。ここで、工具710のY軸方向の切削深さをdy,Z軸方向の切削深さをdzとし、この両者の関係をz2 > z1とする。加工パス自動算出処理の具体例を、図5Aに示す被削体Cutbox1;500を用いて説明する。
【0033】
まず、ステップS410で、前記S200にて算出した図5Aに示すCutBox1の形状情報を取得する。
頂点t1 = q11
頂点t2 = q17
次に、ステップS415で、S300にて算出した工具の干渉情報と製造条件を取得する。図6Bに工具情報の一例を示す。
D1 = ツール直径
dy = Y軸方向の切削深さ
dz = Z軸方向の切削深さ
次にステップS420で、工具軸を被削体のXY面と垂直とするように設置する。
次にステップS425で、切削可能な溝数:JとZ方向の溝数:Kを算出する。切削可能な溝数:JとZ方向の溝数:Kは、S300にて取得した製造条件のY軸方向の切削深さdyと、 Z軸方向の切削深さdzを用いて算出する。ステップS435で、Z方向の溝数をカウント変数kの初期値を1と設定する。
J = Y / (|dy|+D1) = |y2 -y1|/(|dy|+D1)
K = Z / |dz| = |z2 -z1| / |dz| ・・・(数4)
ステップS435で、Z方向の溝数をカウント変数kの初期値を1と設定する。
k = 1 ;
【0034】
ステップS440で、切削スタート点なる工具先端点のz軸の値z= z1 + k * dzを算出する。
z= z1 + k * dz = z1 + dz ・・・(数5)
【0035】
ステップS460で、ステップS440にて算出したz平面での加工パスを生成する。加工パス生成の詳細手順は、(4-1)で述べる。
【0036】
ステップS460にて、Z方向の加工パスを生成した後、ステップS465にて、工作台を時計回りに90°回転し、XZ面を工具と垂直状態に設置する。
【0037】
次に、ステップS470にて、z平面にて生成したZ方向加工パスに垂直するY方向の加工パスを生成する。具体的なY方向の加工パス生成処理手順は(4-2)で述べる。
【0038】
次にステップS475にて、z軸方向の溝数の確認を行い、加工パスが生成されていない溝がある場合、k=k+1とし、z=z1 + k * dzとなる面にて、ステップS440からステップS477を繰り返し行い、面z=z1 + k * dzにての加工パスを生成する。
【0039】
(4-1)Z方向の加工パス生成
次に、S460におけるz平面の加工パス生成フロー(図9)を図10Aを用いて説明する。
ステップS4610からステップS4645にて、被削体1002と部品1001の境界となる外延の加工点列S1(x1+D1/2, y1-D1/2, z1)と、S2(x1+D1/2, y2-D1/2, z1)と、S3(x2-D1/2, y2-D1/2, z1)と、S4(x2-D1/2, y1-D1/2, z1)を生成する。
【0040】
先ず、ステップS4610にて、S1(x, y, z)のx,y値を計算し、ステップS4615にてS1を出力する。次に、ステップS4620にて、S2(x, y, z)のy値を計算し、ステップS4625にてS2を出力する。次に、ステップS4630にて、S3(x, y, z)のx値を計算し、ステップS4635にてS3を出力する。次に、ステップS4640にて、S4(x, y, z)のy値を計算し、ステップS4645にてS4を出力する。更に、ステップS4650にて、生成したS1,S2,S3,S4を順番に繋げて加工パスCL1を生成する。
【0041】
次に、ステップS4655、ステップS4660、ステップS4665、ステップS4670と、ステップS4675にて、被削体1002のf11面1011から、工具710のy軸方向切削深さdy離れた位置にx軸と並行した溝を加工する加工パスを生成する。
【0042】
具体的には、まずステップS4655にてY方向の溝数をカウント変数jの初期値を1と設定する。次に、ステップS4660にて、S5(x, y, z)のx,yを値を計算し、ステップS4665にてS5を出力する。
j = 1;
n = 生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x1 + D1 / 2
y = (y1 - D1 / 2) + j * (dy + D1 )
z = z1 ・・・(数6)
次に、ステップS4670にて、S6(x, y, z)のx、y値を計算し、ステップS4675にてS6を出力し、S5とS6を繋げて加工パスCL2を生成する。
n =生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x2 - D1 / 2
上記ステップS4660と、ステップS4665と、ステップS4670と、ステップS4675を被削体1002のf11面1011の対面となるf13面1013を超えるまで繰り返す。具体的に、ステップS4680にてj+ 1とJを比較し、j+1 がJより小さい場合、ステップS4681にてj= j + 1とし、ステップS4660と、ステップS4665と、ステップS4670と、ステップS4675を行い、j+1がJより小さいではなくなるまで繰り返し、S7とS8から構成するCL3と、S9とS10から構成するCL4を生成する。
【0043】
図10Bに、図4に示した素材mBox;400を、図10Aに示す加工パスCL1,CL2,CL3,CL4に従って加工した結果を示す。図10Bで、溝1021,1022,1023は、工具710を加工パスCL1に沿って移動させて加工した溝である。溝1024乃至1026はそれぞれ工具710を加工パスCL2、CL3及びCL4に沿って移動させて加工した溝である。このように加工した結果、溝1021,1022,1023で囲まれる領域の内側にはブロック1031乃至1034が残される。
【0044】
(4-2)Y方向の加工パス生成
Y方向の加工パス生成フロー(図11)を図12Aを用いて説明する。
ステップS4710と、ステップS4715と、ステップS4720と、ステップS4735にて、被削体のf16面1016から工具のz軸方向切削深さdz離れた位置にx軸と並行した溝を加工する加工パスを生成する。
【0045】
まずステップS4710にY方向の溝数をカウント変数jを 0 とし、S11(x, y, z)のz値を計算し、ステップS4715にて、(数7)を用いてS11(x, y, z)のx、y値を計算し、ステップS4720にてS11を出力する。
j = 0;
z = (z1 - D1 /2) - k * (|dz| +D1)
n = 生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x1 + D1 / 2
y = (y1 + dy) + j * (dy + D1) ・・・(数7)
次に、ステップS4730にて、(数8)を用いてS12(x、 y、 z)のxを値を計算し、ステップS4735にて、S12を出力する。
n = 生成した加工点Snの個数 + 1;
x = x2 - D1 / 2 ・・・(数8)
次に、ステップS4740にて、出力したS11とS12を順番に繋げて加工パスCL5を生成する。
【0046】
次に、ステップS4745にて、y軸方向の溝数を確認を行い、加工パスが生成されていない溝がある場合、ステップS4746に進んでj=j+1として、ステップS4715からステップS4740を実行することで、平面にての加工パスの点列を生成し、j+1>Jとなるまで繰り返し、S13とS14から構成するCL6と、S15とS16から構成するCL7と、S17とS18から構成するCL8を生成する。
【0047】
図12Bに、図4に示した素材mBox;400を、f1の面を上にした状態でf1の面の側から、図11のフローに基づいて生成した図12Aに示す加工パスCL5を加工している例を示す。
【0048】
実際の加工においては、先ず、工具710をz方向の位置が(数7)で規定される位置に固定された状態でx方向にS11からS12まで加工パスCL5に沿って移動させる。このとき、工具710のz方向の位置が(数7)で規定される一定の位置であるため、工具710はブロック1031の根本の側を加工する。これにより、ブロック1031のf6面の側は加工されずに残っている。工具710を加工パスCL5に沿ってS12まで移動させると、ブロック1031のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0049】
次に(数7)に基づいて工具710をy方向に(dy + D1)移動させてS14へ移動させ、S14からS13へ加工パスCL6に沿って移動させてブロック1032を加工する。工具710を加工パスCL6に沿ってS13まで移動を完了させることにより、ブロック1032のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0050】
次に、S13に到達した工具710を(数7)に基づいてy方向に(dy + D1)移動させてS15へ移動させ、S15からS16へ加工パスCL7に沿って移動させてブロック1033を加工する。工具710を加工パスCL7に沿ってS16まで移動を完了させることにより、ブロック1033のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0051】
更に、S16に到達した工具710を(数7)に基づいてy方向に(dy + D1)移動させてS18へ移動させ、S18からS17へ加工パスCL8に沿って移動させてブロック1034を加工する。工具710を加工パスCL8に沿ってS17まで移動を完了させることにより、ブロック1034のf6面の側の加工されずに残っていた部分が切り落とされる。
【0052】
この一連の動作を実行することにより、図3に示したSample;300のBox1;302の部分の切削加工が完了する。
【0053】
図13に、図8と、図9と図11に示す計算処理の結果の一例を示す。
【0054】
最後に、出力部170は、加工パスの自動生成部160で計算し生成した加工パスを出力する(S600)具体的には、S600で生成した加工パスを、ファイル、ディスプレイ、紙などに出力する。
【0055】
割り落とす加工パスを生成する際に、割り落とされる部分と素材の間に連携橋を残し、割り落とす部分の割り落とす方向をコントロールすることも可能である。連携橋を残す加工パスを連携橋の段点で分解し、連携橋の段点の座標値を用いて加工パスを修正する。図14Aに、図10Aと図10Bにて生成した加工パスCL2と、CL3と、CL4における、割り落とされる部分と素材の間に連携橋を被削体1003に残す方法の一例を示す。図10Aにて生成したS5とS6とを繋げる加工パスCL2の途中において、XPの位置に幅がLの連携橋を設定する例を説明する。
【0056】
まず、連携橋段点と工具先端の関係を下記定義し、工具直径と対象となる加工パスCL2を用いて新しい加工パスの分解点P1とP2を算出する。
x1 = 連携橋の設定位置XP - 工具直径D1/2
x2 = 連携橋の設定位置XP + 連携橋の幅L - 工具直径D1/2
次に、加工パスCL2の始点S5とP1繋げて新しい加工パスCL21と、P2と加工パスCL2の終点S6を繋げて新しい加工パスCL22を生成する。
【0057】
同じように加工パスCL3,CL4においても、加工パスCL31,CL32およびCL41,CL42,CL43を生成する。
【0058】
図14Aに示す加工パスに従って加工した結果のイメージ図を図14Bに示す。図10Bで説明したのと同様に、ブロック1031乃至1034が形成されている。そして、ブロック1031と1032とは連携橋1401で接続されており、ブロック1032と1033とは連携橋1402で接続されており、ブロック1033と1034とは連携橋1403及び1404で接続されている。
図15Aに、図3に示す部品Sample;300の被削体となる図5Bに示すCutHole1;550に対する割り落とし加工パスの生成の一例を示す。
【0059】
図7に示す工具710と部品701との干渉の一例から、図15Aに示した点Point1(xp1,yp1,zp1)とPoint2(xp2,yp2,zp2)において、工具710が部品(Sample)300と干渉しない領域は工具710が図7で説明した角度Aに対して条件A< a < 90°を満たす角度aが加工出来る領域となる。前記干渉条件を参照して、割り落とす被削体の部分1501の体積が最大となるように、工具710と素材300の向きを調整し、加工パス1510を生成する。ここで、干渉角度A<45°の場合、素材300もしくは工具710の向きを調整し、工具710と加工面1511の角度Bを45°に調整し、干渉角度A>45°の場合、素材もしくは工具の向きを調整し、工具と加工面の角度Bを(180°-A)に調整する。
次に、図8に示す処理フローと同じ方法で、Point2(xp2,yp2,zp2)の座標値から、工具先端点S1(x,y,z)値を算出し、CutHole1;550の被削体の輪郭に沿った加工パスを生成する。ここで、
Z軸方向の切削深さ dz1 =工具dz * sinB
Y軸方向の切削深さdy1 = 工具dy * conB
となり、下記の(数9)にて、工具先端点S1(x,y,z)のx、y、z値を算出し、
x = xp2;
y = yp2 + dz * cosB ;
z = zp2 - dz * sinB; ・・・(数9)
y軸方向へ(dz+dy)*cosBの間隔で加工パスを生成する。
【0060】
また、被削体CutHole1;550の形状式は下記の(数10)であり、
f(x、y):r02 -(x−x0)2 -(y−y0)2 >= 0
z02 <=z<=z01 ・・・(数10)
Point2を通過する輪郭曲面の表現式が下記の(数11)で表せ
f(x、y):r02 -(xp2−x0)2 -(yp2−y0)2 = 0
z02 <=z<= z01 ・・・(数11)
S1を始点とした加工パスCL101は下記の(数12)で表される。
f(x、y):r02 -(xp2−x0)2 -(yp2 + dz * cosB −y0)2 = 0
z = zp2 - dz * sinB; ・・・(数12)
同様に、平面にz = zp2 - dz * sinBにおける S2,S3の加工パスCL102・・・を生成し、次の平面z = zp2 - 2*(dz * sinB)における加工パスを生成する。
【0061】
図16Aに、 被削体の表面が曲面となる部品の一例を示す。
図16Aに示すように被削体1600の表面が曲面の場合、まず、図16Bに示すBox1; 1610の部分を割り落とす加工パスを、図8乃至12Bを用いて説明したCutBox1;500の割り落とす加工パスを生成した方法で生成し、次に図16Cに示す面Face1;1601と面Face2;1602対して、前記CutHole1;550の割り落とす加工パスを生成した方法で割り落とす加工パスを生成する。
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
101…部品のCAD設計図面 102…素材情報 103…工具情報設定画面
110…データ入力部 120…形状情報取得部 130…被削体算出部 140…工具の
干渉領域算出部 141…工具情報取得部 150…加工パスの計算式読込部
151…加工パスの計算式記憶部 160…加工パスの自動生成部 170…出力部
105…割り落とす加工パスの結果 100…割り落とす加工パスの自動生成システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する方法であって、設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、前記設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有することを特徴とする加工パス生成方法。
【請求項2】
素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する方法であって、設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、前記設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の加工パス生成工程で生成した加工パスで切削加工する前記所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有することを特徴とする加工パス生成方法。
【請求項3】
前記第1の加工パス生成工程が、前記素材の削除する領域の外周部を削除する加工パスを形成するための外周部削除パス形成ステップと、該外周部削除パス形成ステップで形成された加工パスの内部の未加工領域を複数に分割する分割パスを形成するための分割パス形成ステップとを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工パス生成方法。
【請求項4】
前記分割パス形成ステップにおいて、前記外周部削除パス形成ステップで形成された加工パスの内部の未加工領域を複数に分割する分割パスを、該複数に分割する未加工領域を接続する接続部を残すようにして形成することを特徴とする請求項3記載の加工パス生成方法。
【請求項5】
素材の一部を切削により削除する加工する方法であって、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から切削加工する第1の切削加工工程と、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の切削加工工程とを有することを特徴とする加工方法。
【請求項6】
素材の一部を切削により削除する加工する方法であって、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の切削加工工程と、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の切削加工工程で切削加工した前記所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の切削加工工程とを有することを特徴とする加工方法。
【請求項7】
前記第1の切削加工工程が、前記素材の削除する領域の外周部を削除する外周部切削加工ステップと、該外周部切削加工ステップで切削加工された領域の内部の未加工領域を切削加工して複数の領域に分割する分割加工ステップとを備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の加工方法。
【請求項8】
前記分割加工ステップにおいて、前記外周部切削加工ステップで切削加工された領域の内部の未加工領域を複数に分割するときに、該複数に分割する未加工領域を接続する接続ぶを残すようにして前記未加工領域を切削加工することを特徴とする請求項7記載の加工方法。
【請求項1】
素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する方法であって、設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、前記設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有することを特徴とする加工パス生成方法。
【請求項2】
素材の一部を切削により削除する加工パスを生成する方法であって、設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の加工パスを作成する第1の加工パス生成工程と、前記設計情報を用いて前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の加工パス生成工程で生成した加工パスで切削加工する前記所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の加工パスを作成する第2の加工パス生成工程とを有することを特徴とする加工パス生成方法。
【請求項3】
前記第1の加工パス生成工程が、前記素材の削除する領域の外周部を削除する加工パスを形成するための外周部削除パス形成ステップと、該外周部削除パス形成ステップで形成された加工パスの内部の未加工領域を複数に分割する分割パスを形成するための分割パス形成ステップとを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工パス生成方法。
【請求項4】
前記分割パス形成ステップにおいて、前記外周部削除パス形成ステップで形成された加工パスの内部の未加工領域を複数に分割する分割パスを、該複数に分割する未加工領域を接続する接続部を残すようにして形成することを特徴とする請求項3記載の加工パス生成方法。
【請求項5】
素材の一部を切削により削除する加工する方法であって、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から切削加工する第1の切削加工工程と、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の方向の側の面よりも下の部分を切削加工する第2の切削加工工程とを有することを特徴とする加工方法。
【請求項6】
素材の一部を切削により削除する加工する方法であって、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第1の方向から所定の深さで切削加工する第1の切削加工工程と、前記素材の削除する領域を前記素材に対して第2の方向から前記第1の切削加工工程で切削加工した前記所定の深さの面に合わせて切削加工する第2の切削加工工程とを有することを特徴とする加工方法。
【請求項7】
前記第1の切削加工工程が、前記素材の削除する領域の外周部を削除する外周部切削加工ステップと、該外周部切削加工ステップで切削加工された領域の内部の未加工領域を切削加工して複数の領域に分割する分割加工ステップとを備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の加工方法。
【請求項8】
前記分割加工ステップにおいて、前記外周部切削加工ステップで切削加工された領域の内部の未加工領域を複数に分割するときに、該複数に分割する未加工領域を接続する接続ぶを残すようにして前記未加工領域を切削加工することを特徴とする請求項7記載の加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【公開番号】特開2012−164269(P2012−164269A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26061(P2011−26061)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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