説明

加工機械の縦方向軸の制御方法

【課題】 縦方向駆動軸がハイリードボールネジ、リニアモータにより駆動されるので駆動トルクや加工推力を大きくすることは出来ないという欠点を取り除き、縦駆動軸の推力増加方法を提供すること。
【解決手段】 カウンターバランスの調節機構により制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、縦方向主軸本体の駆動方向や目標位置との偏差または軸駆動モータの駆動電流の変化を測定し、カウンターバランスの調節機構を制御し、前記縦方向主軸本体の重力を駆動トルクや加工推力に利用する、ことを特徴とする縦方向軸制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や切削機械等の加工機械に関し、より一層詳細には、これら加工機械の垂直方向(重力方向)に存在する軸、すなわち縦方向軸の制御方法に係り、特にこの縦方向軸を構成する本体の重力を利用した推力増加方法に関する。

【背景技術】
【0002】
従来から、この種の加工機械の縦方向軸においては、図2に示すように、縦方向軸を構成する本体1は、重力対応する力として、バランスウエイト2やバランスシリンダ3の両装置により、あるいは両装置の内の何れか一側により、相殺され、いわゆるカウンターバランス力が働くように構成されている。これらの技術は、次に示す特許文献1および特許文献2においても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007‐216319号公報
【特許文献2】特開平11‐320333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように縦方向に存在し駆動される軸、すなわち縦方向駆動軸は、近年において、軸送りの高速化のためハイリードボールネジ、リニアモータにより駆動されることが多い反面、駆動トルクや加工用の推力を低下させ、従ってこの推力を大きくすることは困難という欠点の指摘があった。
【0005】
本発明の目的は、前述のように縦方向駆動軸がハイリードボールネジ、リニアモータ等により駆動されるので、駆動トルクや加工用の推力の低下を招き、従ってこの推力を大きくすることは困難という欠点を取り除き、縦方向駆動軸の推力増加方法を提供することにある。
【0006】
そのためには、従来除去すべき力として排除していた縦駆動軸本体それ自身の重力を、縦方向の駆動トルクや推力として利用すれば良い、という結論に達し、本発明に至った。

【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため本発明は、カウンターバランスの調節機構により制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、縦方向主軸本体の駆動方向や目標位置との偏差または軸駆動モータの駆動電流の変化を測定し、カウンターバランスの調節機構を制御し、縦方向主軸本体の重力を駆動トルクや加工推力に利用する、ことを特徴とする縦方向軸制御方法とした。
【0008】
あるいは、カウンターバランスにより制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、縦方向の加工用主軸の位置を測定し、駆動方向又は位置の偏差を検出し、その測定値が変化したときには、バランス制御用油圧回路中の電磁リリーフ弁あるいは電磁流量弁を選択的に制御し、縦方向の加工用主軸自身の重量を駆動トルクや加工推力に作用させること、を特徴とする縦方向軸制御方法とした。

【0009】
さらに、カウンターバランスにより制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、ワーク加工中の主軸回転の駆動用モータの負荷電流を測定し、その負荷電流の測定値が変化したときには、バランス制御用油圧回路中の電磁リリーフ弁あるいは電磁流量弁を選択的に制御し、縦方向の加工用主軸自身の重量を駆動トルクや加工推力に作用させること、を特徴とする縦方向軸制御方法とした。


【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、縦方向駆動軸に下方向の加工推力が必要な場合、縦方向駆動を支える縦方向駆動軸本体それ自身の重量を加えることが可能である。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明が適用される縦方向駆動軸の制御方法の概略図である。
【図2】従来の縦方向軸の制御方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の一実施形態例を図1を使用して説明する。 図1において符号10は、縦方向軸本体11を有する、工作機械を一例とした金属加工機械を示している。この加工機械10においては、縦方向軸本体11の縦方向の移動を、リニアモータ12により行い、位置の測定装置としての位置検出装置33を設けるとともに、縦方向軸本体11自身の重量をバランスシリンダ13により相殺するように構成している。このバランスシリンダ13は、油圧源14による油圧回路により制御され、電磁リリーフ弁15、および電磁流量弁16により駆動トルクや加工推力の変化に対応させるようにしている。
【0013】
この加工機械10は、制御装置17により制御されており、縦方向軸本体11に有る主軸モータ18の駆動を歯車箱19などのモータ出力の結合・伝達手段を介して、工具20に伝えるようにしている。前述の位置検出装置33は、入出力モジュール23に接続されており、ワーク加工中の縦方向主軸の移動位置を測定し、その検出値を制御装置17内の入出力モジュール23に導き、位置情報をバス24を介して鎖線で囲まれた検出部25のデータ変換手段26に取り込むとともに、記憶部27に記憶される。
【0014】
この記憶部27には、図示してないデータ設定部が有り、前述の主軸モータの負荷電流とモータ出力、あるいは縦方向軸本体11の位置のデータ、位置の偏差、および軸方向のモータ出力の関係等が表示操作パネルからの操作により設定されている。主軸モータ18の電流値、およびリニアモータ12の可動部の位置、すなわちこの場合主軸の位置等の検出値と、データ設定部に設定したデータとを、比較演算装置28が比較演算し、その結果を出力手段29、表示手段30よりバス24を介して表示・操作パネル31に表示するとともに、切換部32内の圧力制御部あるいは流量制御部を介して電磁リリーフ弁15、電磁流量弁16に作用するようにしてある。
【0015】
このような構成をとることにより、ワーク加工中の主軸の加工方向が上向きから下向きに変化して、主軸モータ18の負荷電流が仮に減少した場合、縦方向軸本体11の縦方向の移動を行っていたリニアモータ12の出力の推力不足から縦方向軸本体11は、図中上方向に押上げられるような作用を受けて加工推力が不足する。これを補うため、今まで縦方向軸本体11自身の重量を相殺するためバランスシリンダ13の図中下側油室に掛けていた油圧力を抜く、あるいは図中、上側油室に油圧を加えることにより縦方向軸本体11自身の重量Wが、推力に加わるようにしている。
【0016】
以上説明したように、この実施形態例では、バランスシリンダ13の油室に作用する油圧力、油量の調整を行うことにより、縦方向軸本体11自身の重量が推力に作用し、つまり加工推力が補充され、したがって加工速さ等が制御され、駆動トルクや加工推力を大きくすることは困難という欠点を取り除くことが可能となった。
また前述の方法は、リニアモータ12の位置検出装置33による位置検知で行った例を説明したが、これに限らず、主軸モータ18の負荷電流の増減によっても、同様なカウンタバランスの制御が可能である。
【0017】
また、この実施形態例では、制御装置を縦方向軸の本体の重力を利用するための手段を専用の装置として構成して説明したが、無論この実施の形態に限定されない。このような例としては、例えば、数値制御装置に内装されているシーケンス制御装置と、数値制御装置の軸制御機能とを併せて利用するような構成とすることも可能である。このような場合は、いわゆるマクロプログラムを利用して、NC装置の加工プログラムなど共に、このマクロプログラムを組み合わせ、この発明のための油圧制御回路を制御する構成としても良く、この場合は、NC制御系の特性や機能を利用して制御系を構成できる。
【0018】
さらにまた、この実施形態例として、カウンターバランスの調節回路を油圧回路で、構成したが、別の実施形態例として、電磁力を利用する構成としてもかまわない。例えば電磁力の利用では、電磁石を用いて構成し、電磁石に使用する電流の多少をもって、カウンターバランスの力を制御してもかまわない。
さらに、無論上述の実施形態においては、縦方向軸本体自体の駆動方向の変更や相違、位置偏差の変化、主軸モータの駆動電流等を測定し、データ処理し、たて方向軸本体の重量(質量)を軸モータ駆動用推力の補助用の制御に利用したが、これだけでなく、主軸モータの回転トルク制御の補助用や主軸モータ回転速度の適応のために利用して、これらトルクや回転速度を制御してもかまわない。主軸モータのトルク制御への適用には、主軸モータ用の制御電圧や制御電流を変化させて行えば良く、回転速度の変化への適用も、同様に主軸モータ用の制御電圧や制御電流を変化させて行えば良い。主軸運動方向の変化を測定するために、位置や電流の測定を行なう例を記載したが、このほか、縦方向主軸の重力変化の測定を行っても良い。この場合ストレインゲージを用いたセンサによるセンサ、バネを使用した重量センサ等を用いればよい。

【符号の説明】
【0019】
10 加工機械
11 縦方向軸本体
12 リニアモータ
13 バランスシリンダ
14 油圧源
15 電磁リリーフ弁
16 電磁流量弁
17 制御装置
18 モータ
19 歯車箱
20 工具
21 モータドライバ
22 モータ制御部
23 出力モジュール
24 バス
25 検出部
26 データ変換手段
27 記憶部
28 比較演算装置
29 出力手段
30 表示手段
31 表示・操作パネル
32 切換部
33 位置測定装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターバランスの調節機構により制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、
前記縦方向主軸本体の駆動方向や目標位置との偏差または軸駆動モータの駆動電流の変化を測定し、
前記カウンターバランスの調節機構を制御し、
前記縦方向主軸本体の重力を駆動トルクや加工推力に利用する、
ことを特徴とする縦方向軸制御方法。

【請求項2】
カウンターバランスにより制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、
縦方向の加工用主軸の位置を測定し、
駆動方向又は位置の偏差を検出し、
その測定値が変化したときには、バランス制御用油圧回路中の電磁リリーフ弁あるいは電磁流量弁を選択的に制御し、
縦方向の加工用主軸自身の重量を駆動トルクや加工推力に作用させること、
を特徴とする縦方向軸制御方法。

【請求項3】
カウンターバランスにより制御される縦方向駆動軸を支えた縦方向軸本体を有する加工装置の縦方向軸制御方法において、
ワーク加工中の主軸回転の駆動用モータの負荷電流を測定し、
その負荷電流の測定値が変化したときには、バランス制御用油圧回路中の電磁リリーフ弁あるいは電磁流量弁を選択的に制御し、
縦方向の加工用主軸自身の重量を駆動トルクや加工推力に作用させること、
を特徴とする縦方向軸制御方法。






【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−251359(P2011−251359A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125550(P2010−125550)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】