説明

加工装置

【課題】加工装置自体のさらなる小型化の要求に応えるための新規な構造の加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された該被加工物を加工する加工手段と、該保持手段を支持し内部に空洞部を備えたフレーム、又は、該加工手段を支持し内部に空洞部を備えたフレームと、を備えた加工装置において、該フレームの空洞部に、流体又は電流を該加工装置の必要箇所に供給する配管又は配線が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工装置であって、例えば半導体ウェーハ等を切削、研磨するための加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスが表面に複数形成された半導体ウェーハのような被加工物をチャックテーブルで保持して加工する装置は多種ある。例えば、ホイールと呼ばれる研削砥石を高速回転して研削するための研削装置、研削装置によって薄く研削された半導体ウェーハを切削ブレードやレーザー光線によって個々の小さなチップに分割するための加工を行う切削装置が知られている。分割されたチップは、各種電子機器や各種光部品の飛躍的な小型化に寄与している。
【0003】
そして、このような加工装置自体の小型化の要望が強くあり、加工装置を設置するための専有床面積の省スペース化(縮小)を実現するため開発が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−162665号公報
【特許文献2】特開2010−287764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工装置自体の小型化が要求される状況ではあるが、装置のフレーム(外枠の骨組み)の内側のスペースは、各種装置の機能部分の専有スペースとして必要とされるため、装置内部の各所に多く配された各種配管を通すためのスペースは、非常に狭く、もしくは、スペースを確保するのが難しいといった状況があった。
【0006】
そこで、本発明は、加工装置自体のさらなる小型化の要求に応えるための新規な構造の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を加工する加工手段と、保持手段を支持し内部に空洞部を備えたフレーム、又は、加工手段を支持し内部に空洞部を備えたフレームと、を備えた加工装置において、フレームの空洞部に、流体又は電流を加工装置の必要箇所に供給する配管又は配線が配設されていることを特徴とする加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加工装置では、加工装置が元々備えているフレームに設けられた空洞部が利用され、内部に各種配線や配管を配設することで、加工装置を設置するための専有床面積の省スペース化が実現可能となる。また、フレームの空洞部は、軽量化に寄与する目的で当初から備えられているものであるため、この空洞部を有効活用できる。さらに、電流を流す配線をフレームの空洞部に通すことで、電流に対する各種ノイズの影響を遮蔽するシールド効果や、配線や配管の損傷が防がれるという効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】研削装置の斜視図である。
【図2】研削装置のハウジング内の構成について示す斜視図である。
【図3】切削装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の加工装置の一実施形態としての研削装置2の外観斜視図を示している。4は研削装置2のハウジング(ベース)であり、ハウジング4の後部となる位置には二つのコラム6a,6bが垂直に立設されている。
【0011】
コラム6aには、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)が固定されている。この一対のガイドレールに沿って粗研削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。粗研削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレールに沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0012】
粗研削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ22と、スピンドルの先端に固定された複数の粗研削用の研削砥石26を有する研削ホイール24を含んでいる。粗研削ユニット10は、図示せぬパルスモータにより、上下方向に移動される。
【0013】
他方のコラム6bにも、上下方向に伸びる一対のガイドレールが固定されている。この一対のガイドレールに沿って仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
仕上げ研削ユニット28も同様に上下方向に移動する図示せぬ移動基台に取り付けられている。仕上げ研削ユニット28は、ハウジング36と、ハウジング36中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ38と、スピンドルの先端に固定された仕上げ研削用の研削砥石42を有する研削ホイール40を含んでいる。仕上げ研削ユニット28は、図示せぬパルスモータ32により、上下方向に移動される。
【0015】
研削装置2は、コラム6a,6bの前側においてハウジング4の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル44を具備している。ターンテーブル44は比較的大径の円盤状に形成されており、図2に示すように、ターンテーブル44の下方に配置される回転駆動機構47によって矢印45で示す方向に回転される。
【0016】
図1に示されるように、ターンテーブル44には、互いに円周方向に120°離間して3個のチャックテーブル46が水平面内で回転可能に配置されている。チャックテーブル46は、被加工物であるウェーハを保持するための保持手段として機能するものであり、具体的には、チャックテーブル46は、ポーラスセラミック材によって円盤状に形成された吸着チャックを有しており、吸着チャックの保持面上に載置されたウェーハを真空吸引手段を作動することにより吸引保持する。
【0017】
ターンテーブル44に配設された3個のチャックテーブル46は、ターンテーブル44が適宜回転することにより、ウェーハ搬入・搬出領域A、粗研削加工領域B、仕上げ研削加工領域C、及びウェーハ搬入・搬出領域Aに順次移動される。
【0018】
ハウジング4の前側部分には、ウエーハカセット50と、リンク51及びハンド52を有するウェーハ搬送ロボット54と、複数の位置決めピン58を有する位置決めテーブル56と、ウェーハ搬入機構(ローディングアーム)60と、ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)62と、研削されたウェーハを洗浄及びスピン乾燥するスピンナ洗浄装置64と、スピンナ洗浄装置64で洗浄及びスピン乾燥された研削後のウェーハを収容する収容カセット66が配設されている。
【0019】
図1に示したスピンナ洗浄装置64には、研削された半導体ウェーハ11を吸引保持して回転する半導体ウェーハ11より小径のスピンナテーブル68が装着されている。70はスピンナ洗浄装置64のカバーである。
【0020】
次に、本発明の特徴的な構成について、図2を用いて説明する。図2は図1に示されるハウジング4の内部の構造について示す図である。80は、研削装置2の全体を支えるベースフレームであり、縦方向のフレーム81,81と、横方向のフレーム82,82を有して構成される。フレーム82,82は、保持手段であるチャックテーブル46(図1)を支持し内部に空洞部81a,82aを備えている。
【0021】
各フレーム81,82は、空洞の領域を形成する空洞部81a,82aが長手方向に形成される角管状の部材にて構成される。空洞部81a,82aが構成されることで、各フレーム81,82の軽量化が図られる。そして、フレーム81の空洞部81a内には配線71が通されている。
【0022】
フレーム81内に通される配線71の一端側は、フレーム81(空洞部81a)一端側の開口部81bから引き出されて電力供給源85に接続される。一方、配線71の他端側は、フレーム81(空洞部81a)の他端側の開口部81cから引き出されてフレーム81の上面に沿わせつつ、ケーシング48内に配置される回転駆動機構47の電力入力部へと接続される。
【0023】
以上のようにフレーム81の空洞部81a内に配線71を通すことにより、空洞部81aのスペースを有効に活用できる。そして、配線71の配置のためのスペースを削減でき、ひいては、研削装置2全体の小型化を図ることが可能となる。
【0024】
ベースフレーム80には、二つのコラム6a,6bが垂直に立設されている。各コラム6a,6bを構成するコラムフレーム83,84は、それぞれ加工手段である粗研削ユニット10,仕上げ研削ユニット28を支持し内部に空洞部83a,84aを備えている。
【0025】
コラムフレーム83,84は、空洞の領域を形成する空洞部83a,84aが長手方向(図2において高さ方向)に形成される角管状の部材にて構成される。空洞部83a,84aが構成されることで、各コラムフレーム83,84の軽量化が図られる。そして、コラムフレーム83,84の空洞部83a,84a内には、それぞれ配線73,74が通されている。
【0026】
コラムフレーム83内に通される配線73の一端側は、コラムフレーム83(空洞部83a)の一端側(下端側)の開口部から引き出されるとともに、フレーム82,さらにはフレーム81(開口部81b)を通過して電力供給源85に接続される。一方、配線73の他端側は、コラムフレーム83(空洞部83a)の他端側(上端側)の開口部83cから引き出されて粗研削ユニット10の電力入力部へと接続される。
【0027】
同様に、コラムフレーム84内に通される配線74の一端側は、コラムフレーム84(空洞部84a)の一端側(下端側)の開口部から引き出されるとともに、フレーム82,さらにはフレーム81(開口部81b)を通過して電力供給源85に接続される。配線74の他端側は、コラムフレーム84(空洞部84a)の他端側(上端側)の開口部84cから引き出されて仕上げ研削ユニット28の電力入力部へと接続される。
【0028】
以上のようにコラムフレーム83,84の空洞部83a,84a内にそれぞれ配線73,74を通すことにより、空洞部83a,84aのスペースを有効に活用できる。そして、配線73,74の配置のためのスペースを削減でき、ひいては、研削装置2全体の小型化を図ることが可能となる。
【0029】
以上のように、本実施形態では、図1に示すように、被加工物を保持する保持手段(チャックテーブル46)と、保持手段に保持された被加工物(ウェーハ)を加工する加工手段(粗研削ユニット10,仕上げ研削ユニット28)と、保持手段を支持し内部に空洞部を備えたフレーム81,82、又は、加工手段を支持し内部に空洞部を備えたフレーム(コラムフレーム83,84)と、を備えた加工装置(研削装置2)において、フレームの空洞部に、電流を加工装置の必要箇所に供給する配線71,73,74が配設される構成とするものである。
【0030】
これにより、加工装置(研削装置2)が元々備えているフレームに設けられた空洞部が利用され、内部に各種配線や配管を配設することで、加工装置を設置するための専有床面積の省スペース化が実現可能となる。また、フレームの空洞部は、軽量化に寄与する目的で当初から備えられているものであるため、この空洞部を有効活用できる。
【0031】
さらに、電流を流す配線をフレームの空洞部に通すことで、電流に対する各種ノイズの影響を遮蔽するシールド効果が期待できる。フレームの空洞部には、電流を流す配線の他にも、流体を流すための配管など、各種の配管や配線を配設することが考えられる。そして、空洞部の内部に配線や配管が配設されることにより、配線や配管の損傷が防がれるという効果も期待できる。
【0032】
図3は、加工装置が切削装置90である場合の本発明の実施形態について示すものである。切削装置90では、加工手段として切削ユニット91、保持手段としてチャックテーブル92が備えられ、これら切削ユニット91、チャックテーブル92を含む装置全体が下部のベースフレーム93にて支持される。
【0033】
ベースフレーム93を構成する高さ方向のフレーム94、横方向のフレーム95は、それぞれ、空洞の領域を形成する空洞部94a,95aが長手方向に形成される角管状の部材にて構成される。空洞部94a,95aが構成されることで、各フレーム94,95の軽量化が図られる。そして、空洞部94a,95a内には配線96,97を適宜通すことが可能となっている。
【0034】
図3の例では、フレーム95の空洞部95a内に通される配線96が開口部95cから引き出されるとともに、配線96を高さ方向のフレーム94の外側に沿わせて電力供給源98に接続されることとしている。
【0035】
そして、以上のようにフレーム94,95の空洞部94a,95a内に配線96,97を通すことにより、空洞部94a,95aのスペースを有効に活用できる。そして、配線96,97の配置のためのスペースを削減でき、ひいては、切削装置90全体の小型化を図ることが可能となる。
【0036】
以上のように、本発明は、研削装置や切削装置など、さまざまな加工装置において、適用可能なものであり、加工装置自体のさらなる小型化の要求に応えることが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
2 研削装置
4 ハウジング
8 ガイドレール
10 粗研削ユニット
28 仕上げ研削ユニット
44 ターンテーブル
46 チャックテーブル
47 回転駆動機構
71 配線
80 ベースフレーム
81 フレーム
81a 空洞部
85 電力供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、
該保持手段に保持された該被加工物を加工する加工手段と、
該保持手段を支持し内部に空洞部を備えたフレーム、又は、該加工手段を支持し内部に空洞部を備えたフレームと、
を備えた加工装置において、
該フレームの空洞部に、流体又は電流を該加工装置の必要箇所に供給する配管又は配線が配設されていることを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−78816(P2013−78816A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219373(P2011−219373)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】