説明

加水分解可能なプロドラッグのためのアリールカルバメートオリゴマーおよびこれを含むプロドラッグ

【課題】 タンパク質−オリゴマープロドラッグを消化管を介して血流中に送達し、オリゴマー部分が放出されて活性が充分なタンパク質を生ずるプロドラッグ方法に関するさらなる発展を提供する。
【解決手段】
式:(I)
(式中、R1は、アルキル、−CH2(OC24)OCH3および−(OC24)OCH3からなる群から選択され;nは0〜4であり;Oligは式(I)(式中、Lは、CH2O、CH2OX、OX、C(O),C(O)X、NH、NHC(O)、XNHC(O)、NHC(O)X、C(O)NH、C(ONHXおよび(I)(式中、Xはアルキル16であるかまたは存在せず、YはNもしくはOまたは存在せず、およびR3はアルキル16である)からなる群から選択される必要に応じたリンカーである)を有するオリゴマーであり;PAGは鎖状または分岐鎖状ポリアルキレングリコール部分であり;R2は、Xが存在する場合はアルキル122キャッピング部分であるかまたはXが存在しない場合はアルキル222であり;qは1〜分岐の最大数までの数であり;mは1〜5である)を含む化合物である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解可能なプロドラッグを製造するためのアリールカルバメートオリゴマー、このようなオリゴマーを含むオリゴマー形成したプロドラッグ、アリールカルバメートオリゴマーおよびオリゴマー形成したプロドラッグを合成する方法ならびにこのようなポリマープロドラッグを使用して治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のペプチドおよびタンパク質(本明細書において集合的に「ポリペプチド」と呼ぶ)は、治療薬として有用となる可能性があるが、適当な投与手段がない。治療薬としてのポリペプチドの有用性は、ポリペプチドが特定のインビボ標的に到達することが可能になる前に、生物学的障壁を通過しなければならいことによって制限されている。非経口的に投与されるポリペプチドは血漿プロテアーゼによって容易に代謝される。おそらく最も興味深い投与経路である経口投与はさらに問題がある。胃では、酸がタンパク質を分解し、酵素が解体する。分解されないで無傷で胃に流入するポリペプチドは、胃の酵素および膵臓の酵素、エキソ−およびエンドペプチダーゼならびに刷子縁ペプチダーゼを含む種々の酵素で連続的に集中攻撃されるので、さらにタンパク質分解を受ける。結果として、腸内腔から血流へのポリペプチドの通過はかなり制限される。従って、治療用ポリペプチドの非経口および経口投与を可能にする手段の必要性が当技術分野において存在する。
【0003】
ポリペプチドの経口および非経口送達を改善する試みにおいて種々の方法が使用されている。使用される方法には、消化管におけるタンパク質およびペプチドの分解速度を遅くする酵素阻害物質の使用;局所的な消化酵素を不活性化するためのpHの操作;傍細胞および経細胞輸送を増加することによってタンパク質およびペプチドの吸収を改善するための浸透増強物質の使用;腸上皮、特にパイエル板による無傷の吸収を促進し、酵素分解に対する抵抗性を増加するための粒状担体としてのナノ粒子の使用;腸内腔における化学的および酵素的分解から薬物を保護する乳濁液;ならびに水溶性が悪い薬物のためのミセル形成が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0004】
ポリペプチドの投与を改善するための重要な方法のいくつかは、ポリマー部分などの種々の部分にポリペプチドを結合して、ポリペプチド薬物の物理化学的特性を改良し、酸および酵素分解に対する抵抗性を増加し、粘膜を通過するこのような薬物の透過性を増大することであった。例えば、AbuchowskiおよびDavisは、酵素を誘導体化して、水溶性で、非−免疫原性で、インビボにおいて安定な産物を提供する種々の方法を記載している(「溶解性ポリマー−酵素付加物」、薬物としての酵素(「Soluble polymers− Enzyme adducts」, Enzymes as Drugs)、HolcenbergおよびRoberts編、J. WileyおよびSons、New York、N. Y.、1981))。AbuchowskiおよびDavisは、酵素に、デキストラン、ポリビニルピロリドン、グリコペプチド、ポリエチレングリコールおよびポリアミノ酸などのポリマー物質を結合する種々の方法を論じている。得られた結合ポリペプチドは、生物学的活性および非経口適用のための水溶性を保持することが報告されている。さらに、米国特許第4,179,337号において、Davisらは、酵素およびインスリンなどのポリペプチドを、分子量500〜20,000ダルトンのポリエチレングリコールまたはポリプロプロピレングリコールに結合して、生理学的に活性で、非−免疫原性で水溶性のポリペプチド組成物を提供することができることを報告している。ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールはポリペプチドを活性の損失から保護することが報告されており、この組成物は、免疫原性応答を実質的に生じないで哺乳類の循環系に注射することができる。しかし、この方法はポリペプチドの非経口投与を改善する方向のもので、経口送達に対するものではない。
【0005】
タンパク質に結合したポリエチレングリコールは変性および酵素消化に対する
安定性を改善することを他の研究者は示している。(Boccu et al. Pharmacological Research Communication 14,11−120(1982))。しかし、これらのポリマーは、膜相互作用を増大する成分を含有していない。従って、得られた結合物には上記と同じ問題があり、経口投与に好適でない。
【0006】
ポリペプチドを両親媒性オリゴマー、すなわち親水性および親油性を有するオリゴマーに結合することに関係する本発明者らの以前の研究は、ポリペプチドの経口送達分野の大きな進歩であった。例えば、Ekwuribeらに付与された米国特許第5,681,811号ならびに関連の米国特許第5,438,040号および同第5,359,030号は、治療薬を含む安定化された結合ポリペプチド複合体であって、親油性部分および親水性部分を含むオリゴマーに結合したものを記載している。’811号特許に記載されている好ましい一群のポリペプチド−オリゴマー結合物には、直鎖状ポリアルキレングリコール部分および直鎖状アルキル部分を有するポリマーが挙げられる。
【0007】
Ekwuribeらに付与された米国特許第6,309,633号は、親水性成分および親油性成分を有するオリゴマーにポリペプチドを結合し、親油性成分が生理学的条件下において加水分解可能である「部分プロドラッグ」方法を記載している。オリゴマーを使用してポリペプチドを結合することにより、完全なオリゴマーの存在が、経口投与された結合物を消化管を介して血流中に送達する助けとなり、親油性成分は加水分解されて親水性成分(例えば、ポリエチレングリコールポリマー)を放出する「部分プロドラッグ」が得られる。血流中での親油性成分の加水分解は結合物を生物活性にする(または生物活性を改善する)および/または循環半減期を改善することができる。しかし、親ポリペプチドの有用な生物活性をなくさない方法で経口投与のためにポリペプチドを両親媒的に結合する手段の大きな必要性が当技術分野において存在する。
【0008】
プロドラッグ方法は、通常、小型分子治療薬に使用される。例えば、特許を取得している6−MNAおよびパクリタキセルプロドラッグはカルボキシレートおよびアルコールのエステルプロドラッグを使用することが知られているが、APAZA(商標)化合物(Nobex Corporation, Research Triangle Park, NC)は、独立に活性のある2つの小型分子薬物が、インビボにおいて還元的に切断されるアゾ結合によって互いに結合されているプロドラッグである(米国特許第6,552,078号、同第6,541,508号、同第6,525,098号、同第6,436,990号および 同第6,380,405号参照)。
【0009】
Garmenらはタンパク質−PEGプロドラッグを記載している(Garman, A. J.およびKalindjian, S. B., FEBS Lett., 1987,223, 361−365)。この著者らは、多分散MPEG5000から無水マレイン酸試薬を調製し、組織プラスミノーゲンアクチベーターおよびウロキナーゼに結合することを報告している。アミノ酸と無水マレイン酸の反応は、通常、ペプチドシークエンシング化学に使用される。マレイル−アミド結合を加水分解して、アミン含有薬剤を再形成することは、隣接遊離カルボキシル基の存在および二重結合によって作られる攻撃の幾何学によって助けられている。無水マレイン酸結合物の未変性のタンパク質が生理学的条件下において放出され、プロドラッグを介する投与はタンパク質の除去速度を5〜10倍延長したことをGarmanは記載している。
【0010】
さらに最近では、ペグ化インターフェロンの開発において、Robertらは、多分散PEGとインターフェロンα−2bの間に分解可能な結合を使用することを記載している(Roberts, M. J. et al. , Adv. Drug DeliveryRev., 2002, 54, 459−476)。低pH(〜5)においてインターフェロンにPEGを結合すると、ヒスチジンのイミダゾール環の窒素の1つにカルバメートを介して結合している結合物が得られたことをこの著者らは報告した。PEGは経時的にタンパク質から放出された。これらのPEG−インターフェロンα−2b結合物はPEG−Intron(登録商標)の商品名で知られている(Schering Corporation)。インビトロにおけるPEG−Intron(登録商標)はPEGASYS(登録商標)(非−加水分解性分岐鎖状PEGを有するペグ化インターフェロン、Hoffmann−La Roche)より活性が強いことが報告されているが、PEGASYS(登録商標)はインビボにおいて有効であることが報告されている。
【0011】
放出可能なPEG化学分野における他の努力は、1,6または1,4ベンジル脱離(BE)方法の使用(Lee, S., et al., Bioconjugate Chem., 2001,12,163−169;Greenwald, R. B. et al., 米国特許第6,180,095号,2001;Greenwald, R. B.,et al.,J. Med.Chem.,1999,42,3657−3667.);トリメチルロックラクトン化(TML)の使用(Greenwald, R. B.et al.,J. Med. Chem.,2000,43,475−487);PEGカルボン酸のヒドロキシ−末端カルボン酸リンカーへのカップリング(Roberts, M. J.,J. Pharm. Sci.,1998,87(11),1440−1445)ならびにカルバメートとPEGアミドまたはカルバメートとエーテルの間のメタ関係に関係するプロドラッグ構造(Bentlyらに付与された米国特許第6,413,507号)を含む、アリールカルバメートを介してアミン−含有薬物に結合しているMPEGフェニルエーテルおよびMPEGベンザミドのファミリーに関係するPEGプロドラッグ(Roberts, M. J.,et al.,Adv. Drug Delivery Rev.,2002,54,459−476);ならびに加水分解機序と対照的にジスルフィド還元機序に関係するプロドラッグ(Zalipsky, S.,et al., Bioconjugate Chem., 1999,10(5),703−707)に焦点が絞られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、タンパク質−オリゴマープロドラッグを消化管を介して血流中に送達し、オリゴマー部分が放出されて活性が充分なタンパク質を生ずるプロドラッグ方法に関するさらなる発展を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施態様によると、式:
【化1】

(式1)
(式中、
1は、アルキル、−CH2(OC24)OCH3、および−(OC24)OCH3から選択され;
nは0〜4であり;
mは1〜5であり;
Oligは、式:
−L−O−PAG−[−R2]q
を有するオリゴマーであり;
(式中、Lは、−CH2O−、−CH2OX−、−OX−、−C(O)−、−C(O)X、−NH−、−NHC(O)−、−XNHC(O)−、−NHC(O)X、−C(O)NH−、−C(O)NHX−、および、
【化2】

(式中、
Xはアルキル1-6であるかまたは存在せず、
YはNもしくはOであるかまたは存在せず、および
3はアルキル1-6である)からなる群から選択される任意のリンカー部分であり;
PAGは直鎖状または分岐鎖状ポリアルキレングリコール部分であり;
2は、Xが存在する場合にはアルキル1-22キャッピング部分であるか、またはXが存在しない場合にはアルキル2-22であり;
qは1〜PAGの分岐の最大数までの数字である)
)を有する化合物が提供される。
【0014】
他の実施態様において、本発明は、式Iの化合物を含む純プロドラッグおよび部分プロドラッグ、本発明の化合物を含む医薬組成物、このような化合物を合成する方法、このような化合物を使用する治療を必要としている被験者を治療する方法ならびに医薬品を製造するための本発明の化合物の使用を提供する。
【0015】
本発明は、経口投与されたプロドラッグの少なくとも一部が、(i)消化管を通過するポリペプチドを保護するプロドラッグ形態で存在する(すなわち、オリゴマーが結合したままである);(ii)消化管壁を通過して血流に流入する;および/または(iii)系(例えば、血流および/または肝臓)において変換されて、治療的に有効な量の生物活性が充分な親ポリペプチドを生ずる「純プロドラッグ」ポリペプチド結合方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の説明に使用する用語は特定の実施態様を説明する目的のためだけであって、本発明を限定する意図のものではない。本発明および特許請求の範囲の説明に使用する単数形「ある1つのもの」および「その1つもの」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0017】
本明細書において使用する以下の用語は以下に示す意味を有する:
【0018】
「プロドラッグ」または「純プロドラッグ」は、(i)親薬物化合物の生物活性の一部、全てを保持するまたは全く保持せず、(ii)被験者において代謝されて親薬物化合物を生ずるように化学的に誘導体化されている生物学的に活性な薬剤を意味する。オリゴマー形成されたポリペプチドプロドラッグまたは純プロドラッグに関連して、全てのオリゴマーがインビボにおいて脱離されて、生物学的に活性な非結合ポリペプチドを生じてもよい。
【0019】
「部分プロドラッグ」は、(i)親薬物化合物の生物活性の一部、全てを保持するまたは全く保持せず、(ii)被験者において代謝されて、生物学的に活性な薬剤の生物学的に活性な誘導体を生ずるように化学的に誘導体化されている生物学的に活性な薬剤を意味する。オリゴマー形成されたポリペプチド部分プロドラッグに関連して、1つ以上のオリゴマーの一部を切断することによっておよび/または1つ以上の完全なオリゴマーを切断することによって生物学的に活性なペプチド誘導体(例えば、ポリマー−結合および/またはオリゴマー−結合ポリペプチド)をインビボにおいて産生することができる。
【0020】
「生物学的に活性な薬剤」は、本発明の方法で結合されうる治療剤または薬剤を意味する。生物学的に活性な薬剤は小型分子、ペプチドまたはタンパク質であってもよい。生物学的に活性な薬剤の例には、以下の治療カテゴリーに入るものが挙げられるが、それに限定されるわけではない:ACE阻害剤;抗狭心症薬;抗不整脈薬;抗喘息薬;抗コレステロール血症薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗下痢製剤;抗ヒスタミン剤;抗高血圧薬;抗感染症薬;抗炎症薬;抗脂肪薬;抗躁剤;抗嘔吐剤;抗卒中剤;抗甲状腺製剤;抗腫瘍薬;鎮咳剤;抗尿酸血症薬;抗ウイルス薬;座瘡薬;アルカロイド;アミノ酸製剤;同化剤;鎮痛剤;麻酔薬;血管形成阻害剤;制酸剤;抗関節炎剤;抗生物質;抗凝固剤;制吐剤;抗肥満薬;抗寄生虫薬;抗精神病薬;解熱剤;鎮痙薬;抗血栓薬;抗不安薬;食欲刺激剤;食欲抑制剤;β遮断剤;気管支拡張剤;心血管作動薬;脳血管拡張薬(cerebral dilator);キレート剤;コレシストキニンアンタゴニスト;化学療法剤;認知活性化剤;避妊薬;冠動脈拡張薬;鎮咳剤;充血除去剤;消臭剤;外皮用剤;糖尿病剤;利尿剤;皮膚軟化剤;酵素;赤血球生成剤;去痰剤;排卵促進剤;防かび剤;消化管剤;成長調節剤;ホルモン補充療法剤;血糖上昇剤;催眠剤;血糖降下剤;下剤;片頭痛治療剤;ミネラル補給剤;粘液溶解剤;麻薬;神経遮断薬;神経筋作用薬;NSAID;栄養補給剤(nutritional additives);抹消血管拡張剤;プロスタグランジン;向精神薬;レニン阻害剤;呼吸刺激剤;ステロイド;覚醒剤;交感神経遮断薬;甲状腺製剤;トランキライザー;子宮弛緩薬;膣製剤;血管収縮薬;血管拡張薬;眩暈薬;ビタミン;および創傷治癒剤。生物剤の限定するものではない他の例には、クマリン、インスリン、カルシトニン、ロイ−エンケファリンおよびmet−エンケファリンが挙げられる。
【0021】
「加水分解可能な」は、生理学的条件下において加水分解されうる結合を意味する。
「溶解性」は、ある物質が別の物質と均一に混合する傾向を意味する。
【0022】
「親水性」は水に溶解する能力を意味し、「親水性部分」または「親水性基」は、親水性であるおよび/または別の化学物質に結合されると、このような化学物質の親水性を増加する部分をいう。
【0023】
「親油性」は脂質に溶解する能力および/または生体膜を透過する、相互作用するおよび/または通過する能力を意味し、「親油性部分」または「親油性基」は親油性である部分、および/または、別の化学物質に結合されると、このような化学物質の親油性を増加する部分を意味する。
【0024】
「両親媒性」は、水溶性および脂溶性の両方を示す特性を意味する。
【0025】
「ポリアルキレングリコール」は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコールを含むが、それに限定されるわけではない直鎖状または分岐鎖状ポリアルキレングリコールポリマーを意味し、ポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルを含む。一実施態様において、ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコールまたは「PEG」である。「PEGサブユニット」という用語は、1つのポリエチレングリコール単位、すなわち、−(CH2CH2O)−をいう。さらに、「オリゴマー」という用語はポリマーをいうために使用することができる。
【0026】
「単分散の」は、混合物中の化合物の約100パーセントが同じ分子量を有する化合物の混合物を記載するために使用される。
【0027】
「実質的に単分散の」は、混合物中の化合物の少なくとも約95パーセントが同じ分子量を有する化合物の混合物を記載するために使用される。
【0028】
「純粋に単分散の」は、混合物中の化合物の約100パーセントが同じ分子量を有し、同じ分子構造を有する化合物の混合物を記載するために使用される。従って、純粋に単分散の混合物は単分散の混合物であるが、単分散の混合物は必ずしも純粋に単分散の混合物ではない。
【0029】
「実質的に純粋に単分散の」は、混合物中の化合物の少なくとも約95パーセントが同じ分子量を有し、同じ分子構造を有する化合物の混合物を記載するために使用される。従って、実質的に純粋に単分散の混合物は実質的に単分散の混合物であるが、実質的に単分散の混合物は必ずしも実質的に純粋に単分散の混合物ではない。
【0030】
「重量平均分子量」は、混合物中の所定の分子の重量分率×混合物中の各分子の分子質量の積の合計と規定される。「重量平均分子量」は記号MWによって表される。
【0031】
「数平均分子量」は、混合物の総重量を混合物中の分子の数で割ったものと規定され、記号Mnによって表される。
【0032】
「分散係数」(DC)は、式:
【0033】
【数1】

【0034】
式中:
nは試料中の異なる分子の数であり;
iは試料中のi番目の分子の数であり;
Mはi番目の分子の質量である)によって規定される。
【0035】
「化学的安定性」は生理的環境または疑似−生理的環境における所定の化合物の安定性をいう。例えば、化学的安定性は、血漿の存在、プロテアーゼの存在、肝ホモジネートの存在、酸性条件の存在および塩基性条件の存在などであるが、それに限定されるわけではない条件によって特徴づけられる環境における生物学的に活性な薬剤またはプロドラッグの安定性をいう。
【0036】
「有効量」は、治療効果となりうる望ましい効果を生ずるのに充分な化合物または組成物の量をいう。有効量は、年齢、被験者の全身状態、治療対象の状態の重症度、投与される特定の生物学的に活性のある薬剤、治療期間、任意の併用治療の性質、使用する製薬学的に許容されうる担体ならびに当業者の知識および専門知識内の同様の要因によって変わってもよい。任意の個々の症例の「有効量」は、関連のあるテキストおよび文献を参照することによっておよび/または通常の経験を使用することによって当業者が決定することができる。(例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(第20版、2000年)参照)。
【0037】
本発明による組成物の塩、担体、賦形剤または希釈剤などの「製薬学的に許容されうる」成分は、(i)プロドラッグを意図された目的に不適当にすることなく、本発明のプロドラッグと併用することができるという点において組成物の他の成分と適合性であるおよび/または(ii)(毒性、刺激およびアレルギー反応などの)不当な有害な副作用を生じないで本明細書に提供する被験者に使用するのに好適である成分である。副作用は、それらのリスクが本発明の製薬学的組成物によって提供される利益を超える場合には「不当」である。製薬学的に許容されうる成分の限定するものではない例には、リン酸緩衝生理食塩液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、マイクロエマルジョンおよび種々の種類の湿潤剤などの標準的な製薬学的担体のいずれかが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0038】
「治療する」または「治療」は、被験者の状態(例えば、1つ以上の症状)の改善、状態の進行の遅延および/または疾患の発症の予防または遅延、臨床パラメーター、疾病または病気の変化等を含む、例えば、疾患、疾病または病気に罹患している被験者に対する有用な影響となりうる調節効果を与える任意の種類の治療をいう。
【0039】
6. 本発明の詳細な説明
本発明は、薬物部分、特にタンパク質薬物部分などの生物学的に活性な薬剤に結合するためのアリールカルバメートクラスのオリゴマーを提供する。オリゴマーは、結合すると、インビボにおいて加水分解して生物学的に活性な親化合物を生ずる経口投与により生物的に利用できる純プロドラッグを生ずる。
【0040】
6.1 本発明のオリゴマー
一般に、本発明のオリゴマーは、以下の式:
【0041】
【化3】

(式1)
【0042】
(式中、
1は、アルキル、−CH2(OC24)OCH3、および−(OC24)OCH3から選択され;
nは0〜4であり;
mは1〜5であり;
Oligは、式:
−L−O−PAG−[−R2]q
(式中、
Lは、−CH2O−、−CH2OX−、−OX−、−C(O)−、−C(O)X、−NH−、−NHC(O)−、−XNHC(O)−、−NHC(O)X、−C(O)NH−、−C(O)NHX−、および、
【0043】
【化4】

【0044】
(式中、
Xはアルキル1-6であるかまたは存在せず、
YはNもしくはOであるかまたは存在せず、ならびに、
3はアルキル1-6である)からなる群から選択される任意のリンカー部分であり;
PAGは直鎖状または分岐鎖状ポリアルキレングリコール部分であり;
2は、Xが存在する場合にはアルキル1-22キャッピング部分であるか、またはXが存在しない場合にはアルキル2-22であり;および
qは1〜PAGの分岐の最大数までの数字である。)を有するオリゴマー
である。)を有する。
【0045】
式1において、1つ以上のOligが存在してもよい。各Oligは、式1のフェノール部分の炭素2〜5のいずれかにカップリングする。例えば、一実施態様において、Oligはフェノール部分の炭素4にカップリングする。別の実施態様において、Oligはフェノール部分の炭素4にカップリングし、1つ以上のOligは、炭素4以下の他の炭素にカップリングする。いくつかの実施態様において、1つのOlig(すなわち、m=1)がフェノール部分の炭素4にカップリングする。他の例示的な実施態様において、Oligはフェノール部分の炭素3にカップリングするおよび/またはOligはフェノール部分の炭素5にカップリングする。さらに別の実施態様において、2つのOlig(すなわち、m=2)がフェノール部分の炭素3および5にカップリングする。
【0046】
いくつかの実施態様において、Lは存在し、Xは存在しない。他の実施態様において、LおよびXは共に存在する。
【0047】
PAGは直鎖状または分岐鎖状ポリアルキレングリコール部分であってもよい。好ましいポリアルキレングリコール部分には、直鎖状または分岐鎖状ポリエチレングリコールおよび直鎖状または分岐鎖状ポリプロピレングリコールが挙げられる。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールは非−多分散型、単分散型、実質的に単分散型、純粋に単分散型または実質的に純粋に単分散型であり、これらの用語は、開示内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2001年6月4日提出の米国特許出願第09/873,797号に記載されている。
【0048】
一実施態様において、R2は、Xが存在する場合には、アルキル1-22キャッピング部分であり、Xが存在しない場合には、アルキル1-22である。R2は、好適にはアルキル1-22であり、好ましくは、アルキル1-12であり、さらに好ましくは、アルキル1-6である。R2は、好適には、下限は上限より小さい(下限<上限)という条件を満足する範囲の任意の組み合わせにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21の下限から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22の上限までの範囲の炭素原子数を有するアルキル部分である。具体的な実施態様において、Xが存在するとき、R2はメチルである。
【0049】
PAGが分岐鎖である場合には、オリゴマーに存在するR2部分の数qは、分岐鎖状PAGの分岐の数に制限される。例えば、qは、好適には、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であってもよい。いくつかの実施態様において、PAGは2、3、4または5つの分岐を有し、qは、それぞれ、2、3、4または5である。別の実施態様において、PAGは2つの分岐を有し、qは2である。qが1より大きい場合には、R2は各々同じであってもまたは異なってもよい。例えば、qが3である場合には、R2の2つはC2であってもよく、1つはC7であってもよい。
【0050】
一実施態様において、R1はメチルである。別の実施態様において、R1はメチルであり、LはアミドまたはOではない。
【0051】
本発明はまた、上記オリゴマーのいずれかの活性化型、例えば、クロロホルメート、NHSカルボネートまたは上記オリゴマーのいずれかのパラニトロフェニルカルボネートも提供する。一般に、当業者に理解されるように、反応性部分を有する化合物は、好適な溶媒中で、好適な時間にわたって、好適な温度において活性化剤に接触される。例えば、オリゴマーをDSCパラ−ニトロクロロホルメートまたはホスゲンと反応させて活性化することができる。
【0052】
本発明はまた、カルバメート結合によって上記オリゴマーの1つ以上に共有結合している親化合物を含むプロドラッグも提供する。一実施態様において、親化合物はポリペプチド薬物である。
【0053】
本発明の他のオリゴマーには、以下に示す式2〜10のオリゴマーが挙げられる。これらのオリゴマーでは、Xは、示すように、アルキルであってもよい。アルキルは直鎖状または分岐鎖状であってもよく、例えば、炭素原子数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22であってもよい。式2〜10のいずれかのPEGは直鎖状または分岐鎖状ポリエチレングリコール部分であってもよく、例えば、1〜50のPEG単位、2〜25のPEG単位、2〜12のPEG単位を含んでもよい。PEGは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のPEG単位を有してもよい。式2〜10のいずれかのRは好適にはアルキル1-22であり、好ましくは、アルキル1-12であり、さらに好ましくは、アルキル1-6である。Rは、好適には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22の炭素単位を有するアルキル部分である。式2〜10のPEGはPPGなどのPAGと容易に交換することができることが理解される。
【0054】
式2のオリゴマーはヒドロキノンに基づいており、以下の式:
【0055】
【化5】

(式2)
【0056】
(式中
Xはアルキルであり;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)
を有する。
【0057】
式3のオリゴマーはp−ヒドロキシベンジルアルコール:
【0058】
【化6】

(式3)
【0059】
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)
に基づいている。
【0060】
式1および2の化合物の広大な数の市販の好適な出発物質(例えば、ヒドロキノンおよびp−ヒドロキシベンジルアルコール)を考えると、これらの方法は、芳香環に存在する多種多様の他の置換基から利益を得ることができる。電子供与基(例えば、エーテル、アミノまたはアルキル基)もしくは電子吸引基(例えば、ニトロまたはカルボキシル基)の付加またはヒドロキシル部分の酸素のオルト位への立体障害部分(例えば、アルキル基)の付加(最終的なカルバメート部分)は薬物放出を微調整する際の助けとなりうる。
【0061】
式4のカルバメートオリゴマーは、ベンジルエーテルが、プロドラッグのカルバメートでは酸素になるフェノールのオルト基に付加された方法を例示する:
【0062】
【化7】

(式4)
【0063】
(式中、
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
R’はアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)。
【0064】
R’置換基に使用されるメチル基は、エステラーゼ活性を部分的に遮断し、プロドラッグ加水分解を遅くするために使用することができる。t−ブチル基などのかさ高い基は加水分解をさらに遅くするために使用することができる。
【0065】
式5および6のカルバメートオリゴマーは、式2および3に使用する方法が分岐鎖状の加水分解可能なオリゴマーを提供するためにどのように変更することができるかを例示する。従って、本発明は:
【0066】
【化8】

(式5)
【0067】
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)を提供する。
【0068】
本発明はまた、式:
【0069】
【化9】

(式6)
【0070】
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)を有するオリゴマーも提供する。
【0071】
式7、8および9は、アリール環へのPEGの結合が電子吸引アミド(式7および8)またはケトン(式9)基の使用に関係する方法を例示する。従って、本発明は:
【0072】
【化10】

(式7)
【0073】
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)を提供する。
【0074】
本発明はまた、
【0075】
【化11】

(式8)
【0076】
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
nは1〜22であり;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
mは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)も提供する。
【0077】
本発明はまた、式:
【0078】
【化12】

(式9)
【0079】
(式中、
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1または2または3であり;
mは1〜PEG分岐の最大数までの数字である)を有するオリゴマーも提供する。
【0080】
式9のオリゴマーの実施態様において、nは2であり、
【0081】
【化13】

【0082】
はフェノール部分の3位および4位に結合している。
【0083】
本発明はまた、式:
【0084】
【化14】

(式10)
【0085】
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルである;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数字であり;
1はアルキルである)を有するオリゴマーを提供する。
【0086】
式10のカルバメートオリゴマーは、数多くの部分保護型で容易に入手可能な分子である、アミノ酸チロシンの構造に基づいている。式10のオリゴマーは、インビボにおいて加水分解可能であると思われる3つの結合を有し、アミノ酸を再生すると思われる。
【0087】
任意の置換基が特定の化合物から排除されることがあることもさらに注目されるべきである。
【0088】
6.2 オリゴマー合成
本発明の種々の合成経路は本明細書に記載する実施例に例示されている。当業者はこれらの実施例から推定して、本発明による多種多様のオリゴマーを容易に製造することができることが理解される。
【0089】
6.3 本発明のプロドラッグ
生物学的に活性な薬剤と本発明の加水分解可能なオリゴマー部分の結合により、親の生物学的に活性な部分より化学的安定性が改善された、例えば、親の生物学的に活性な部分と比較してプロテアーゼまたは他の酵素の存在下における安定性が改善された純プロドラッグを得ることができる。化学的安定性の種々の寄与は、血漿の存在、プロテアーゼの存在、肝ホモジネートの存在、酸性条件の存在および塩基性条件の存在などの種々のアッセイ条件にプロドラッグを接触させることによって評価することができる。これらのアッセイ条件の任意の1つ以上におけるプロドラッグの安定性が同じ条件における親化合物の安定性より大きい場合には、安定性は親化合物と比較して改善されている。酸性環境において化学的安定性を判定するアッセイは、pH2の溶液に少なくとも2時間プロドラッグおよび親薬物化合物を接触させることに関係し、親薬物化合物と比較してプロドラッグの分解の少ないことが化学的安定性の改善を示す。
【0090】
インビボにおけるアッセイも化学的安定性を試験するために使用することができる。例えば、生物学的に活性な薬剤またはプロドラッグの化学的安定性は、被験者の消化管に接触させることによって試験することができる。
【0091】
生物学的に活性な薬剤と本発明のオリゴマーの結合は、生物学的に活性な薬剤の溶解度を改善して、親薬剤と比較して水溶性が改善されたプロドラッグを生じる場合もある。他の場合では、生物学的に活性な薬剤と本発明のオリゴマーの結合は、親薬剤と比較して薬剤を親油性にし、生体膜をより通過しやすくする。
【0092】
6.4 プロドラッグ合成
本発明の実施態様によると、加水分解可能な部分を有するプロドラッグを合成する方法は、生物学的に活性な薬剤と本発明のオリゴマー部分を有する化合物を接触させるステップを含む。生物学的に活性な薬剤がポリマー部分を含む化合物と反応して加水分解可能な結合を形成し、加水分解可能な部分を有するプロドラッグを提供するように、当技術分野において公知の種々の反応を使用して生物学的に活性な薬剤またはポリマー部分を含む化合物のどちらかを活性することができる。プロドラッグが、非結合の生物学的に活性な薬剤の化学的安定性より大きいまたはそれに等しいレベルの化学的安定性、例えば、親化合物の生物学的に活性な部分と比較してプロテアーゼまたは他の酵素の存在下において改善された安定性を示すように、ポリマー部分は生物学的に活性な薬剤の化学的安定性に影響を与えることができる。上記に考察するように、化合物の特定の必要性に応じて、得られる結合物の溶解性を大きくまたは小さくすることによって、ポリマー部分は溶解性および吸収性に積極的に影響することもできる。
【0093】
当業者は、活性化された化合物を提供するのに充分な条件を容易に理解する。一般に、当業者に理解されているように、反応性部分を有する化合物を好適な溶媒中で、好適な時間にわたって、好適な温度において活性化剤と接触させる。例えば、化合物をDSCまたはパラ−ニトロクロロホルメートまたはホスゲンと反応させて活性化することができる。
【0094】
当業者は、生物学的に活性な薬剤にポリマー部分を含む活性化された化合物をカップリングして、加水分解可能な部分を有するプロドラッグを提供するのに充分な条件を理解している。一般に、好適な溶媒の存在下において生物学的に活性な薬剤をポリマー部分を含む活性化された化合物と接触させる。好適な溶媒は、化合物を互いに反応させることができる程度に生物学的に活性な薬剤およびポリマー部分を含む化合物を溶解することができるものである。好適な溶媒には、緩衝水溶液および有機溶媒が挙げられるが、それに限定されるわけではない。このような有機溶媒の限定するものではない例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびブタノールなどのC1〜C4アルコールならびにアセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどの溶媒が挙げられる。
【0095】
生物学的に活性な薬剤およびポリマー部分を含む活性化された化合物は、好ましくは、望ましい収率のプロドラッグを提供するのに充分な時間および条件下において接触させられる。
【0096】
開示されている一般的な合成方法の変形は当業者に容易に明らかになり、本発明の範囲内であると思われる。
【0097】
本発明のいくつかの実施態様において、プロドラッグは製薬学的に許容されうる塩として提供される。製薬学的に許容されうる塩は、親化合物の望ましい生物学的活性を保持することができ、一般に望ましくない毒性作用を示さない塩である。このような塩の例は、無機塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等で形成された酸添加塩;および、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等などの有機酸で形成された塩である。いくつかの実施態様において、製薬学的に許容されうる塩は塩酸(または酢酸)で形成される。
【0098】
6.5. 製薬学的組成物
本発明のさらに他の実施態様によると、上記のプロドラッグを含む製薬学的組成物が提供される。本発明の実施態様による製薬学的組成物を製造する際には、プロドラッグは、典型的には、特に製薬学的に許容されうる担体と混合される。担体は、当然のことながら、製薬学的組成物の任意の他の成分と適合性であるという意味において許容可能であるべきであり、患者に有害であってはならない。担体は、固体もしくは液体またはその両方であってもよく、単位−用量製剤、例えば、約0.01または0.5重量%〜約95重量%または99重量%のプロドラッグを含有してもよい錠剤としてプロドラッグと共に製剤化することができる。製薬学的組成物は、必要に応じて1種以上の補助成分を含む成分を混合するステップを含むが、それに限定されるわけではない周知の薬学技法のいずれかによって製剤化することができる。
【0099】
本発明による製薬学的組成物は、経口、直腸、局所、吸入(例えば、エアゾールによる)、口腔内(例えば、舌下)、膣、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、関節内、胸膜内、腹腔内、脳内、動脈内または静脈内)、局所(すなわち、皮膚表面、および、気道表面を含む粘膜表面)および経皮投与に好適なものを含むが、任意の所定の場合における最も好適な経路は治療対象の状態の性質および重症度ならびに使用される特定のプロドラッグの性質に依存する。
【0100】
経口投与に好適な製薬学的組成物は、各々所定量のプロドラッグを含有するカプセル、カシェ剤、トローチもしくは錠剤などの別個の単位で;粉末もしくは顆粒として;水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油型もしくは油中水型エマルジョンとして提供されてもよい。このような製剤は、プロドラッグと(上記のように1種以上の補助成分を含有してもよい)好適な担体を関連させるステップを含む任意の好適な薬学方法によって製剤化することができる。一般に、本発明の実施態様による製薬学的組成物は、プロドラッグを液体または微粉化した固体担体を均一によく混合し、次いで適宜得られた混合物を形づくることによって製剤化することができる。例えば、錠剤は、プロドラッグを含有する粉末または顆粒と、必要に応じて1種以上の補助成分を圧縮または成型することによって製剤化することができる。圧縮錠は、必要に応じて結合剤、潤滑剤、不活性な希釈剤および/または界面活性/分散剤と混合した粉末または顆粒などの自由−流動形態の混合物を好適な機械で圧縮することによって製剤化することができる。成型錠は、不活性な液体結合剤で湿潤化した粉末状化合物を好適な機械で成型することによって製造することができる。
【0101】
口腔(舌下)投与に好適な製薬学的組成物には、矯味矯臭剤を添加した基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントにプロドラッグを含むトローチ;ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤中にプロドラッグを含む芳香錠が挙げられる。
【0102】
非経口投与に好適な本発明の実施態様による製薬学的組成物は、プロドラッグの滅菌水性および非水性注射液を含み、その製剤は、好ましくは、目的のレシピエントの血液と等張である。これらの製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および組成物を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有してもよい。水性および非水性滅菌懸濁剤は懸濁剤および増粘剤を含んでもよい。組成物は、単位用量または多数回投与の容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルで提供されてもよく、使用時に滅菌液体担体、例えば、生理食塩液または注射用水を添加するだけでよいフリーズ−ドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射液および懸濁液は、上記の種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から製剤化することができる。例えば、密封容器に単位用量形態のプロドラッグを含む注射用の安定した滅菌組成物を提供することができる。プロドラッグは、好適な製薬学的に許容されうる担体で再構成して、被験者への注射に好適な液体組成物を形成することができる凍結乾燥物の形態で提供される。単位用量形態は、典型的には、約10mg〜約10グラムのプロドラッグを含む。プロドラッグが実質的に水−不溶性である場合には、水性担体にプロドラッグを乳化するのに充分な量の製薬学的に許容されうる乳化剤を使用することができる。このような有用な乳化剤のひとつはホスファチジルコリンである。
【0103】
直腸投与に好適な製薬学的組成物は、好ましくは、単位用量坐剤として提供される。これらは、プロドラッグを1種以上の従来の固体担体、例えば、カカオ脂と混合し、次いで得られた混合物を形づくることによって製剤化することができる。
【0104】
皮膚への局所適用に好適な製薬学的組成物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたはオイルの形態を取る。使用することができる担体には、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮増強剤およびこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0105】
経皮投与に好適な製薬学的組成物は、長期間にわたってレシピエントの表皮にしっかりと接触し続けるように適合された別個のパッチとして提供することができる。経皮投与に好適な組成物はイオン泳動によって送達することもでき(例えば、Pharmaceutical Research 3(6):318(1986)参照)、典型的には必要に応じて緩衝液を添加したプロドラッグの水溶液の形態ととってもよい。好適な製剤はクエン酸塩またはTRIS緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含み、0.1〜0.2Mの作用成分を含有する。
【0106】
6.6 治療方法
本発明の他の実施態様によると、このような治療を必要としている被験者を治療する方法は、被験者に本発明の組成物の有効量を投与するステップを含む。有効量は、組成物および被験者によって幾分異なってもよく、被験者の年齢、種、性別および/または状態ならびに送達経路および様式に依存する。このような用量は当業者に公知の通常の薬理学的手法により設定することができる。一般的な提案として、約100μg/kg〜約100mg/kgの用量が有効性を有し、全ての重量は組成物および/または作用成分(例えば、プロドラッグ)の重量に基づいて算出されている。約10mg/kg〜約50mg/kgの用量を経口投与に使用することができる。典型的には、約0.5mg/kg〜5mg/kgの用量を筋肉内注射に使用することができる。投与頻度は、状態を治療するために1日/1週間/1ヶ月/1年あたり1、2もしくは3回または適宜であってもよい。治療期間は治療対象の状態の種類に依存し、患者の寿命ほど長くてもよい。
【0107】
本発明による治療対象として好適な被験体には、トリおよび哺乳類被験体が挙げられるが、それに限定されるわけではなく、好ましくは、哺乳類である。本発明の哺乳類には、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯類(例えば、ラットおよびマウス)、ウサギ、霊長類、ヒト等ならびに子宮内の哺乳類が挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明による治療を必要としている任意の哺乳類被験体が好適である。ヒト被験者が好ましい。性別を問わず、任意の発育段階(すなわち、新生児、乳幼児、年少者、青年、成人)のヒト被験者を本発明により治療することができる。
【0108】
本発明による例示的なトリには、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ガン、ウズラ、キジ、走鳥類(例えば、ダチョウ)およびコンパニオン(またはペット)鳥(例えば、オウムおよびカナリア)ならびに卵内のトリが挙げられる。
【0109】
本発明は、主に、ヒト被験者の治療に関するが、本発明はまた、獣医学的な目的のためならびに薬物スクリーニングおよび薬物開発目的のために動物被験者、特にマウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜およびウマなどの特に哺乳類被験者にも実施することができる。
【0110】
本発明の化合物および組成物は、親化合物によって治療可能な疾病、疾患または状態を治療するために使用することができる。限定するものではない例として、本発明の化合物および組成物は、糖尿病、癌、感染症、循環器系疾病、呼吸疾患、睡眠障害、神経障害、神経変性性疾病、消化管疾患、脱毛症、筋骨格疾患、泌尿生殖器疾患、アレルギー、炎症および疼痛を治療するために使用することができる。
【0111】
本発明の特定の態様は、ここで、以下の実施例を参照して記載される。これらの実施例は本発明の態様を例示する目的のためであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0112】
7.実施例
以下の限定するものではない実施例は本発明を例示する:
【0113】
7.1. 4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェノール(オリゴマーII)の合成
【0114】
【化15】

【0115】
褐色フラスコ中で、4−ベンジルオキシフェノール(2.0 g,10.0 mmol)を15 mLの乾燥THFに溶解した。カリウムtert−ブトキシド(0.446 g,4.0 mmol)を添加し、得られた混合物を室温において撹拌した。1時間後、MPEG4メシレート(0.945 g,3. 33 mmol)の8 ml乾燥THF溶液を添加した。混合物全体を終夜撹拌した。10 mL MeOHで反応を停止し、Celiteの小さいパッドでろ過した。ろ過後の反応液を粘稠な褐色のオイル状になるまで濃縮した。粗生成物を、溶離液としてEtOAcを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、0.897 mg(23 %)のMPEG4エーテルIを得た。
【0116】
次いで、化合物I(0.797 g,2.04 mmol)を50 mL EtOAcに溶解した。0.081 gの10%Pd/Cを含有するEtOAcスラリーを添加し、混合物全体をH2雰囲気下におき、室温および1気圧において終夜撹拌させた。反応が終了したことをTLC(EtOAc)が示すまで追加の触媒を添加した。次いで、混合物をCeliteの(or)小さいパッドでろ過し、ろ液を濃縮して、0.483 g(79 %)の脱保護したペグ化フェノール、IIを得た。 ESI MS:m/e 323.2(M+Na)+
【0117】
7.2. 4−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ドデシルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノール(オリゴマーV)の合成
【0118】
【化16】

【0119】
10.0 g(18.6 mmol)Cl2PEG8OHを60 mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、得られた溶液をN2雰囲気下で0℃に冷却することによってCl2PEG8OHのメシレートを調製した。冷却した溶液に3.1 mL(22.3 mmol)TEAおよび1.72 mL(22.3 mmol)塩化メタンスルホニルを添加した。反応を0℃において30分進行させ、次いで室温に加温させて、終夜撹拌した。次いで、反応混合物をさらに50 mLのジクロロメタンで希釈し、次いで飽和NaHCO3(2 x 20 mL)および水(3 x 20 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過して、蒸発乾固してメシレート、IIIを得た。ESI MS:m/e617.5(M+H)+,639.4(M+Na)+
【0120】
12PEG8メシレート,III,8.97 g(16.65 mmol)の 60 mLの乾燥DMFを、80 mLの乾燥DMF中で1時間撹拌しておいた10.0 gの(49.9 mmol)の4−ベンジルオキシフェノールおよび2.24 g(20.0 mmol)のカリウムtert−ブトキシドの混合物に添加した。反応を室温において3日間撹拌し、次いで50 mL MeOHで停止した。反応を停止した反応液をCeliteの小さいパッドでろ過し、ろ液を真空下濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(濃度勾配溶出:5/1 EtOAc/ヘキサン〜EtOAc)で精製して、4.59 g(38%)のIVをオレンジ色の油状物質として得た。ESI MS:m/e721.6(M+H)+,743.6(M+Na)+
【0121】
ベンジルエーテルIV(1.00 g,1.39 mmol)を30 mLのEtOAcに溶解し、100 mgの10%Pd/CのEtOAcスラリーを添加した。混合物全体をH2雰囲気下におき、室温において撹拌させた。全てのベンジルエーテルがフェノールに変換したことをTLCが示すまで、追加の触媒を添加した;次いで、反応混合物をCeliteでろ過し、ろ液を蒸発乾固して、0.854 g(98 %)のVを提供した。ESI MS:m/e653.5(M+Na)+
【0122】
7.3. 4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシメチル)−フェノール(オリゴマーX)の合成
【0123】
【化17】

【0124】
500 mLの丸底フラスコに、5.00 g(40.9mmol)の4−ヒドロキシベンズ−アルデヒド、200 mLの乾燥CH2C12、5.57 mL(61.4 mmol)のジヒドロピランおよび1.03 g(4.09 mmol)のPPTSを入れた。混合物を室温において16時間撹拌し、次いで100 mL以上のCH2Cl2で希釈し、水(2 x 100 mL)および食塩水(1 x 100 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:CHC13/5%MeOH)によって精製して7.78 g(92 %)のTHP保護したフェノール,VIを得た。
【0125】
フェノールVI(7.5 g,36.4 mmol)を85 mLの乾燥THFに溶解し、0℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(1.37 g,36.4 mmol)を添加した。0℃において2時間撹拌後、反応を室温まで加温し、終夜撹拌させた。THFを除去し、残渣を95 mLのEtOAcに取り、水(2 x 45 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発乾固した。フラッシュクロマトグラフィー(溶離液(elutant):CHC13/4%MeOH)によって精製して、6.4 g(85%)のベンジルアルコール,VIIを透明な油状物質として得た。
【0126】
6.00 g(28.8mmol)のベンジルアルコールを36 mLの乾燥CH2Cl2に溶解することによって対応するメシレート,VIIIを調製した。溶液を氷浴で冷却し、次いで4.82 mL(34.6 mmol)のTEAおよび2.68 mL(34.6 mmol)の塩化メタンスルホニルを添加した。反応を0℃において30分撹拌し、次いで室温においてさらに4時間撹拌した。反応混合物を20 mLのCH2Cl2で希釈し、飽和NaHCO3(2 x 20 mL)および水(3 x 20 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過して、真空下濃縮して、5.77 g(70 %)のVIIIをオレンジ色の油状物質として生じた。
【0127】
MPEG4OH(1.78 mL,9.14 mmol)を50 mLの乾燥THFに溶解し、カリウムtert−ブトキシド(2.16 g,19.21 mmol)を添加した。混合物を室温において1時間撹拌し、次いでVIII(5.38 g,19.2 mmol)の20 mL THF溶液を添加し、混合物全体を室温において終夜撹拌した。反応を50 mLのMeOHで停止し、Celiteの小さいパッドでろ過した。ろ液を真空下濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)によって精製して、1.28 g(17 %)のペグ化ベンジルアルコール,IXを得た。ESI MS:m/e 421.1(M+Na)+
【0128】
20 mL酢酸を含有する溶液に、10 mLのTHFおよび5 mLの水、1.0 g(2.51 mmol)のIXを溶解した。混合物を45℃に加温し、終夜撹拌した。反応を30 mLの水、20 mLの飽和NaHCO3および20 mLのEtOAcで希釈した。有機層を回収し、水層を20 mLのEtOAcで再度抽出した。有機層を合わせてMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発乾固して、611 mg(77 %)のオリゴマーXを淡黄色の油状物質として得た。ESI MS:m/e 337.0(M+Na)+
【0129】
7.4. 3,4−ビス−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェノール(オリゴマーXII)の合成
【0130】
【化18】

【0131】
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2.5 g,18.1 mmol)およびK2CO3(5.25 g,38.0 mmol)の混合物を40 mLのアセトンに懸濁させた。混合物を56℃に加熱し、MPEG4メシレート(10.6 g,37.1 mmol)を添加した。次の3時間の経過中に大量の沈殿が形成し、さらに20 mLのアセトンを添加した。56℃において3時間後、反応を37℃に冷却して15時間おいた。TLC(EtOAc/10 %MeOH)はこの時、実質的に未反応で、モノ−PEGエーテル物質が残存していることを示した。さらに5.0 g(18.0 mmol)のメシレートの20 mLアセトン溶液を添加した。反応混合物を56℃に加熱してさらに2日おいた。次いで、アセトンを除去し、固体残渣をCH2Cl2と水の混合物に取った。有機層を有機層より多い量の水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(濃度勾配溶出:EtOAc−−−EtOAc/10 %MeOH)によって精製して、2.78g(30 %)のジ−PEGエーテルベンズアルデヒド,XIを得た。
【0132】
ベンズアルデヒドXI(1.41 g,2.72 mmol)を、室温においてmCPBA(0.73 g,3.3 mmol)のジクロロメタン(30 mL)溶液中で終夜酸化した。反応混合物をさらに80 mLのジクロロメタンで希釈し、飽和NaHCO3、水および食塩水で逐次的に洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮して、黄色の油状物質とし、8 mLのMeOHと1.0 mLの6N NaOHの混合物に取った。混合物は即座に紫になった。5分後、混合物を50 mLのCH2Cl2で希釈し、1N HClで1回洗浄し、次いで水および食塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(濃度勾配溶出:CHC13/2 %MeOH−−−−CHCl3/5% MeOH)によって精製して、0.624 gの(45 %)のXIIを暗い紫色の油状物質として得た。ESI MS:m/e 507(M + H)+、529(M + Na)+、545(M + K)+
【0133】
7.5. 4−ヒドロキシ−N−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチル)− ベンザミド(オリゴマー XV)の合成
【0134】
【化19】

【0135】
3.0 g(13.1 mmol)の4−ベンジルオキシ安息香酸と50 mLのCH2Cl2を混合することによって化合物XIIIを調製した。この混合物に、1.81 g(15.7 mmol)のNHSおよび3.01 g(15.7 mmol)のEDCを添加した。反応を室温において終夜撹拌し、次いでさらに100 mlのCH2Cl2で希釈し、水および食塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮した。粗生成物を、溶離液としてCH2Cl2を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、1.91 g(64 %)の安息香酸のNHSエステルを得た。
【0136】
このNHSエステル,XIII(0.78 g,2.4 mmol)を20 mLのCH2C12に溶解した。TEA(0.354 mL,0.257 g,2.54 mmol)およびMPEG4アミン(0.403 g,1.95 mmol)を添加した。反応を室温において終夜撹拌した。次いで、粗反応混合物をさらに20 mLのCH2Cl2で希釈し、0.5 N HCl(2 x 150 mL)、水(2 x 150 mL)および食塩水(2 x 150 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮してオフホワイトの固体を得、フラッシュクロマトグラフィー(CHCl3/5%MeOH)によって精製して、0.524 g(64 %)の目的とするアミド,XIVを得た。
【0137】
アミド(0.524 g,1.26 mmol)を40 mLのMeOHに溶解し、60 mLのEtOAcに懸濁させておいた0.18 gの5 % Pd/Cに添加した。混合物をH2雰囲気下におき、室温および1 atmにおいて終夜撹拌した。TLC(CHC13/15 %MeOH)は、全ての出発物質が消費されたことを示した。反応をCeliteでろ過し、触媒を除去した。Celiteをさらに150 mLのEtOAcで洗浄した。ろ液を合わせて真空下濃縮して、0.386 g(94 %)のXVを褐色の油状物質として得た。FAB MS:m/e 328(M+H)+、350(M+Na)+
【0138】
7.6. 5−ヒドロキシ−N,N’−ビス−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチル)−イソフタルアミド(オリゴマーXX)の合成
塩化ベンジル(5.20 ml,45.0 mmol)および炭酸カリウム(6.21 g,45.0 mmol)を、ジメチル−5−ヒドロキシイソフタレート (7.0 g,33 mmol)の100 mLアセトン溶液に添加した。反応を加熱還流し、終夜撹拌させた。TLCで確認後、反応を室温に冷却し、真空下濃縮して、オフホワイトの固体生成物を得た。沸騰シクロヘキサンで再結晶して、6.8 g(68%)の白色結晶XVIを得た。ESI MS:m/e 301. 1 (M+H)+
【0139】
40 gのKOHを400 mLのメタノールに含む攪拌溶液中に、化合物XVI(6.7 g,22 mmol)を分割して添加した。反応を2時間還流した。室温に冷却後、混合物を2N HClでpH 2〜3に酸性化して、生成物を沈殿させた。ろ過後、XVIIの白色固体を86%の収率(5.15 g)で得た。ESI MS:m/e 271.0 (M−H)-
【0140】
化合物XVII(2.00 g,7.35 mmol)を80 mLの乾燥CH2Cl2に溶解させ、これにNHS(1.86 g,16.2 mmol)およびEDC(3.10 g,16.2 mmol)を添加した。終夜撹拌後、反応混合物を40 mLのCH2Cl2で希釈し、水(2 x 70 mL)および食塩水(2 x 70 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮して、3.05 g(90 %)の白色の固体XVIIIを得た。
【0141】
MPEG4アミン(910 mg,4.39 mmol)およびTEA(0.611 mL,4.39 mmol)を30 mLのCH2C12に溶解し、撹拌させた。化合物XVIII(682 mg,1.46 mmol)を10 mLのCH2C12に溶解し、反応に添加した。終夜撹拌後、反応混合物をCH2Cl2で希釈し、1N HCl、水および食塩水(各々2 x 50 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮して黄色のスラリーを得た。フラッシュクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 10/1)によって精製して、488 mg(51 %)のXIXを粘稠な黄色の油状物質として得た。ESI MS:m/e 651.3(M+H)+
【0142】
化合物XIX(930 mg,1.43 mmol)を80 mLのEtOAcに溶解した。次いで、パラジウム−活性炭(10%)を添加し(約100 mg)、溶液をH2雰囲気下で終夜撹拌した。Celiteでろ過して触媒を除去し、ろ液を留去して630 mg(80%)の白色固体XXを得た。ESI MS: m/e 561.3(M+H)+
【0143】
7.7. 3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシカルボニルアミノ)−プロピオン酸メチルエステル(オリゴマーXXII)の合成
【0144】
【化20】

【0145】
テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG4OH 4.00 g,19.2 mmol)をアセトニトリル(40 mL)に溶解し、ジスクシンイミジルカルボネート(DSC,5.44 g,21.2 mmol)を添加した。次いで、トリエチルアミン(4.00 mL,28.8 mmol)を滴下し、10分後、反応混合物は透明になった。反応を室温において終夜撹拌した。〜16時間撹拌後、粗反応を蒸発乾固し、飽和NaHCO3(150 mL)に溶解し、酢酸エチル(2 x 150 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc/MeOH,10: 1)により油状のXXI(4.04 g,収率60%)を得た。ESI MS :m/e 372.1(M+Na)+
【0146】
チロシンメチルエステル(2.26 g,12.5 mmol)およびXXIをCH2C12(40 mL)に溶解し、トリエチルアミンを添加した(3.8 mL,27 mmol)。反応を室温において終夜撹拌した。18時間撹拌後、粗反応液をCH2Cl2で150 mLに希釈し、H2O(150 mL)、飽和NaHCO3(150 mL)、1 NHCl(150 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc/MeOH,25:1)により、油状物質XXII(3.51 g,72%)を得た。ESI MS: m/e 430.1(M+H)+、452.2(M+Na)+
【0147】
【化21】

【0148】
7.8. 2−[2−(2−ドデシルオキシ−エトキシ)−エトキシカルボニルアミノ]−3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオン酸メチルエステル(オリゴマーXXIV)の合成
【0149】
【化22】

【0150】
オリゴマーXXIVは、オリゴマーXXIIについて上記した方法と同様の方法で製造した。ジエチレングリコールモノドデシルエーテル(2.712 g,9.88 mmol)を100 mLの乾燥アセトニトリルに溶解した。トリエチルアミン(2.06 mL,14.8 mmol)およびDSC(3.80 g,14.8 mmol)を添加した。不活性雰囲気下で室温において18時間撹拌後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣の油状物質を濃炭酸水素ナトリウムに取り、EtOAc(2 x 200 mL)で抽出した。EtOAc層を合わせて水(2 x 100 mL)および食塩水(2 x 100 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過して、蒸発乾固して3.58 g(87 %)のXXIIIを得た。
【0151】
チロシンメチルエステル(1.23 g,5.30 mmol)を60 mLの乾燥CH2Cl2に溶解した。この溶液に0.738 mL(5.30 mmol)のトリエチルアミンを添加した。化合物XXIII(2.00 g,4.80mmol)を35 mLのCH2Cl2に溶解し、チロシンメチルエステル溶液に添加した。
【0152】
室温において17時間後、反応混合物を、上記の化合物XXIIについて記載するようにワークアップした。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,EtOAc/ヘキサン1: 1)によって精製して、1.529 g(65 %)のオリゴマーXXIVを透明な油状物質として得た。ESI MS:m/e 495.4 (M+H)+、518.3(M+Na)+
【0153】
7.9. 4−(ヒドロキシ−フェニル)−カルバミン酸2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルエステル(オリゴマーXXV)の合成
4−アミノフェノール(250 mg,2.29 mmol)を20 mLのTHFに溶解した。TEA(0.479 mL,3.43 mmol)を添加し、次に XXI(960 mg,2.75 mmol)の5 mL THF溶液を添加した。反応を室温において終夜撹拌させた。反応混合物を粘稠な黄色の粗油状物質になるまで真空下濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ,EtOAc)による精製後、692 mg(88%)のXXVを黄色の油状物質として得た。ESI MS: m/e 344.2(M+H)+
【0154】
【化23】

【0155】
7.10. 4−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−フェノール(オリゴマーXXX)
1−ヘキサノールのメシレート、XXVIは、80 mLの乾燥ジクロロメタンに溶解した24.57 mL(195.8 mmol)アルコールから製造した。この溶液を0℃に冷却し、N2雰囲気下においた。この溶液に32.74 mL(234.9 mmol)TEAを添加した。塩化メタンスルホニル(18.18 mL,234.9 mmol)を滴下した。0℃において30分後、溶液を室温に加温し、3日間撹拌させた。混合物を40 mLのジクロロメタンで希釈し、飽和NaHCO3(2 x 30 mL)および水(2 x 30 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮して34.0 g(96 %)XXVIを得た。
【0156】
180 mLの乾燥THFに、31.32 g(110.9 mmol)のPEG6ジオールを溶解した。溶液を0℃に冷却した。カリウムtert−ブトキシド(12.45 g,110.9 mmol)を少量ずつ添加し、混合物全体を1時間撹拌した。XXVI(10.0 g,55.5 mmol)を30 mLのTHFに溶解し、PEG溶液に添加した。メシレートの添加後、反応を0℃において30分維持し、次いで室温に加温し、終夜撹拌した。反応をMeOHで停止し、Celiteでろ過した。Celiteをジクロロメタンで洗浄し、ろ液を合わせて真空下濃縮した。濃縮した残渣をジクロロメタンに取り、水で数回洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過して、留去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,EtOAc)によって精製し、4.66 g(23 %)のモノ−ヘキシルPEG6、XXVIIを得た。ESI MS:m/e 367.14(M+H)+,389.08(M+Na)+,405.06(M+K)+
【0157】
【化24】

【0158】
ヘキシルPEGアルコールのメシレートを製造するためには、17.00 g(46.5 mmol)のXXVIIを70 mLの乾燥CH2Cl2に溶解し、0℃に溶解し、N2雰囲気下においた。トリエチルアミン(7.78 mL,55.8 mmol)を添加し、次いで塩化メタンスルホニル(4.32 mL,55.8 mmol)を滴下した。0℃において30分後、混合物を室温にし、次いで終夜撹拌した。反応混合物を多量のCH2Cl2で希釈し、飽和NaHCO3および水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮して18.7 g(90 %)のXXVIIIを得た。ESI MS: m/e 467.0(M+Na)+
【0159】
50 mLのTHFに5.00 g(25.0 mmol)の4−ベンジルオキシフェノールをN2雰囲気下で溶解した。カリウムtert−ブトキシド(1.12 g,9.98 mmol)を添加し、得られた混合物を室温において1時間撹拌した。1.12 g(9.98 mmol)のXXVIIIの20 mL THF溶液をベンジルオキシフェノール混合物に添加し、溶液全体を室温において終夜撹拌した。反応をメタノールで停止し、Celiteでろ過した。ろ液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ,EtOAc/ヘキサン5:2)によって精製して、3.37 g(25 %)のXXIXを得た。ESI MS: m/e 571.05(M+Na)+
【0160】
XXIX(3.37 g,6.14 mmol)を90 mLのMeOHに溶解した。0.34 gの10 %Pd/CのMeOHスラリーを添加し、反応をH2雰囲気下においた。室温において終夜撹拌後、TLC(EtOAc)は全ての出発物質が消費されたことを示した。反応混合物をCeliteでろ過し、ろ液を真空下濃縮して、2.54 g(90 %)のオリゴマーXXXを得た。ESI MS: m/e 459.19(M+H)+,480.98(M+Na)+
【0161】
7.11. 4−(6−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−ヘキシルオキシ)−フェノール(オリゴマー XXXV)の合成
【0162】
【化25】

【0163】
MPEG6アルコール(10.0 g,33.7 mmol)を40 mLの乾燥CH2C12に溶解し、得られた溶液を氷浴で0℃に冷却した。TEA(5.64 mL,40.5 mmol)を添加し、次いで3.13 mL(40.5 mmol)の塩化メタンスルホニルを滴下した。反応を0℃において30分撹拌し、次いで氷浴をはずし、室温にし、終夜撹拌した。反応混合物を大量のCH2Cl2で希釈し、飽和NaHCO3および水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮して、12.4 g(98 %)のMPEG6メシレート,XXXIを得た。
【0164】
6.311 gのジオール(53.41 mmol)および180 mLの乾燥THFから1,6−ヘキサンジオール溶液を製造した。溶液を0℃に冷却し、N2雰囲気下においた。カリウムtert−ブトキシド(5.996 g,53.41 mmol)を溶液に添加し、得られた混合物を1時間撹拌した。XXXI(10.0 g,26.7 mmol)の30 mL THF溶液を混合物に添加した。全てを0℃においてさらに30分撹拌し、次いで室温に加温させ、終夜撹拌した。反応混合物をCeliteでろ過した。CeliteをCH2Cl2ですすぎ、ろ液を合わせて真空下濃縮した。残渣をCH2Cl2に再度溶解し、水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、蒸発乾固した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ,CHC13/10%MeOH)による精製。一部の物質は分取TLC(EtOAc/10 %MeOH)でさらに精製した。合わせた収率は3.923 g(37 %)のXXXIIであった。
【0165】
XXXII(3.923 g,9.89 mmol)を16 mLの乾燥CH2C12に溶解し、得られた溶液を0℃においてN2雰囲気下においた。トリエチルアミン(1.65 mL,11.9 mmol)を添加し、次いで0.92 mL(11.9 mmol)の塩化メタンスルホニルを滴下した。反応を0℃においてさらに30分撹拌し、次いで室温にさせ、終夜撹拌した。反応混合物を大量のCH2Cl2で希釈し、飽和NaHCO3および水で洗浄した。有機層をMg2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮して、4.25 g(91 %)のメシレートXXXIIIを提供した。
【0166】
50 mLの乾燥THFを含有するフラスコに、5.001g(24.97 mmol)の4−ベンジルオキシフェノールを溶解した。カリウムtert−ブトキシド(1.202 g,9.989 mmol)を添加し、得られた混合物を室温で、不活性雰囲気下において1時間撹拌した。3.950 g(8.324 mmol)のXXXIIIの20 mL THF溶液を添加した。さらに18時間後、混合物全体を10 mLのMeOHで停止し、Celiteの小さいパッドでろ過した。ろ液を真空下濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,EtOAc/MeOH 20: 1)によって精製して、1.584 g (33 %)の化合物XXXIVを提供した。ESI MS:m/e 579.16 (M+H)+,601.14(M+Na)+
【0167】
化合物XXXIV(0.683 g,1.18 mmol)を20 mLのMeOHに溶解した。この溶液に、136 mgの5 % Pd/CのMeOHスラリーを添加した。混合物全体をH2雰囲気下におき、全ての出発物質が消費されたことをTLCが確認するまで撹拌した。次いで、混合物をCeliteでろ過し、ろ液を蒸発乾固して412 mg(71 %)のXXXVを得た。ESI MS: m/e 511.09 (M+Na)+
【0168】
7.12. 1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エタノン(オリゴマーXXXIX)の合成
【0169】
【化26】

【0170】
化合物XXXIXは、4−ヒドロキシアセトフェノンのフェノール部分をtert−ブチルジフェニルシリルエーテル(TBDPS)などの求核的に安定な保護基で保護することによって合成することができた。次いで、保護した化合物,XXXVIを、2,2−ジブロモ−2−シアノ−N,N−ジメチルアセトアミドまたはNBSなどのブロム化試薬を使用してモノ−ブロム化して、化合物XXXVIIを製造することができる。次いで、臭化物を、MPEG4OHなどのPEG化合物のオキシアニオンと置換することができる。次いで、フェノール基の脱保護(この場合には、テトラ−ブチルアンモニウムフルオリドがTBDPSエーテルを脱離すると思われる)により望ましいオリゴマー,XXXIXを生じる。
【0171】
7.13. l−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ブタン−1−オン(オリゴマーXXXXIV)の合成
【0172】
【化27】

【0173】
(4−ヒドロキシフェニル)−4’−クロロブタン−1−オンのフェノール基は、PPTSおよびジヒドロピランでTHPエーテルとして保護することができる。次いで、炭酸水素ナトリウムを使用し、水とアセトニトリルの混合物中で加熱して塩化物をアルコールに変換することができる。アルコールをメシル化し、次いでメシレートを、MPEG4OHなどのPEGオリゴマーのオキシアニオンで置換することができる。THP基の最後の脱保護により表題の化合物XXXXIVが得られる。
【0174】
7.14. オリゴマーXVの活性化
オリゴマーXV(0.158 g,0.482 mmol)を10 mLの乾燥CH2C12に溶解した。TEA(101 μL,0.724 mmol)およびp−ニトロクロロホルメート(0.146 g,0.724 mmol)を添加した。4時間後、TLC(CHCl3/15 %MeOH)は、全ての出発物質が消費されたことを示した。反応混合物をさらに15 mLのCH2Cl2で希釈し、冷水および冷却した食塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下濃縮した。粗生成物を、溶離液としてEtOAcを用いた分取TLCで精製して、85 mg(36%)の活性化オリゴマーを得た。ESI MS : m/e 493.2(M+H)+,515.2(M+Na)+
【0175】
7.15. オリゴマーXXXの活性化
オリゴマーXXX(0.503 g,1.09 mmol)を15 mLの乾燥CH2C12に溶解した。この溶液に0.23 mL(1.64 mmol)のTEAおよび0.329 g(1.64 mmol)のp−ニトロ−フェニルクロロホルメートを添加した。反応を室温において終夜撹拌した。次いで、混合物をさらに15 mLのCH2Cl2で希釈し、15 mLの1N HCl、次に15 mLの水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して乾燥した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,濃度勾配溶出:3/1 EtOAc/ヘキサン−EtOAc)で精製して、510 mg(75 %)の活性化オリゴマーを得た。ESI MS:m/e 624.13(M+H)+, 646.93(M+Na)+
【0176】
7.16. プロドラッグ
Leu−Enk(Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu)を結合のモデルペプチドとして選択した。Leu Enkは、結合に利用可能な唯一の1級アミンを有する。インスリンが生物学的に活性な薬剤であるプロドラッグを製造した。使用した他の例はヒトインスリンが挙げられる。インスリンプロドラッグは、インスリンが2つ以上の1級アミンを持つので、2つ以上のオリゴマーを有すると思われる。
【0177】
7.17. Leu−Enkプロドラッグの結合
上記のオリゴマーのポリペプチド結合物を以下のように合成した。LeuEnk(American Peptide Company)を、2当量のTEAを添加した乾燥DMSOに溶解した。活性化オリゴマーの溶液を乾燥THFで調製した。オリゴマー溶液をペプチド溶液に添加し、混合物を室温においてゆっくり撹拌した。少量を取り出し、反応を逆相HPLCでモニターした。結合物を、分取HPLC(例えば、A C18 Vydacカラム、水(0.1% TFA)/アセトニトリル(0.1% TFA)濃度勾配を使用する、280 nmのUVでモニターする)によって精製した。有機溶媒を真空下除去し、残存する水溶液を凍結乾燥した。インスリンプロドラッグ結合物は同様の手法によって合成した。
【0178】
7.18. カルボキシルエステラーゼ加水分解
加水分解検討は、市販の精製カルボキシルエステラーゼ(この場合には、SN−38の小型分子プロドラッグであり、芳香族ヒドロキシル基を含有する抗−癌剤である、イリノテカンのアリールカルバメートの加水分解を検討するために使用されたエステラーゼであるウサギ肝臓カルボキシルエステラーゼ)を用いてPBS緩衝液中で37℃において実施した。表1参照。
【0179】
【表1】

【0180】
7.19. エステラーゼ加水分解
最初に、DMSOで〜2 mg/mLの加水分解可能な結合物のストックまたは基準溶液を調製した。次いで、加水分解可能な結合物のワーキング溶液をトリプリケートで調製した(ワーキング溶液A)。50マイクロリッターのストック結合物を5.0 mLの50 mM PBS緩衝液に添加した。
【0181】
〜2 mgのエステラーゼを2.0 mLの50 mM PBS緩衝液に添加することによって、カルボキシルエステラーゼのストック溶液を調製した。50 uLのストック溶液を5.0 mLの50 mM PBS緩衝液で希釈することによってカルボキシルエステラーゼのワーキング溶液を調製した(ワーキング溶液B)。
【0182】
次いで、500マイクロリッターのワーキング溶液Bを各ワーキング溶液Aに添加した(0.5単位の酵素および10〜20μMの結合物)。反応混合物を速やかにボルテックスし、経過時間=0分析のサンプリングした。反応溶液を往復水浴振とう機で37℃においてインキュベーションした。インキュベーション中の適当な時間間隔において、75μLの量を取り、HPLCに直接注入して加水分解速度データを得た。各実験を用いて、特定の結合物の新たな検量線を作製した。
【0183】
結合物1〜7のデータを図1A〜1Gに示す。擬一次速度定数または「k」を、結合物の濃度の自然対数対時間曲線の傾斜から得る。次いで、半減期をkから算出する。
【0184】
7.20. 血漿による加水分解
ラット血漿を使用する実験を、エステラーゼ加水分解実験と同様の方法で実施した。〜15 mg/mLのDMSO溶液である各結合物のストックまたは基準溶液を作製した。200マイクロリッターのストックを800 μLの50 mM PBS緩衝液に添加した。この後者の溶液の50マイクロリッターを950 μLのラット血漿に添加し、37℃の往復水浴振とう機に入れた。適当な時間間隔において、50 μLの量を取り、100 μLのACNに添加し、1分激しくボルテックした。試料を10,000 rpmで5分遠心分離し、次いで50 μLの上清をHPLC分析に注入した。各結合物の濃度を測定するための検量線を作製した。結合物1の検量線を図2Aに示す。37℃におけるラット血漿における結合物1の加水分解曲線を図2Bに示す。
【0185】
【表2】

【0186】
【表3】

【0187】
8. 結論
本発明は、本明細書に記載する種々の実施態様に関して記載されている。本発明は異なる形態で実現することができ、本明細書に記載する特定の実施態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、本発明の開示が完全で完璧であり、本発明の範囲が当業者に充分に伝達するように提供されている。特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当分野の当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において本発明を記載する際に使用する用語は特定の実施態様を記載する目的のためだけであり、本発明を限定する意図のものではない。
【0188】
本明細書に引用する全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は、言及されている文章および/またはパラグラフに関連する教示内容について全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0189】
関連出願のデータ
本願は、米国特許法119条(e)に準じ、開示内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、2003年8月1日提出の米国特許仮出願第60/491,751号の利益を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1A−G】本発明のLeu−Enk結合プロドラッグのエステラーゼ加水分解を図示するグラフを例示する。各結合物のln結合物濃度(μM)対時間(分)曲線の傾斜から擬一次速度定数が得られた。結合物の半減期も得られた。
【図2A−B】生体外におけるラット血漿検討の結合物1濃度(μM)を求める標準曲線を図示するグラフ(図2A)および37℃においてラット血漿におけるln結合物1濃度(μM)対時間(分)を示すグラフ(図2B)を例示する。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式1)
(式中、
1は、アルキル、−CH2(OC24)OCH3、および−(OC24)OCH3からなる群から選択され;
nは0〜4であり;
mは1〜5であり;
Oligは、式:
−L−O−PAG−[−R2]q
を有するオリゴマーである
(式中、Lは、−CH2O−、−CH2OX−、−OX−、−C(O)−、−C(O)X、−NH−、−NHC(O)−、−XNHC(O)−、−NHC(O)X、−C(O)NH−、−C(O)NHX−、および、
【化2】

(式中、
Xはアルキル1-6であるかまたは存在せず、
YはNもしくはOであるかまたは存在せず、ならびに、
3はアルキル1-6である)からなる群から選択される任意のリンカー部分であり;
PAGは直鎖状または分岐鎖状ポリアルキレングリコール部分であり;
2は、Xが存在する場合にはアルキル1-22キャッピング部分であるか、または、Xが存在しない場合にはアルキル2-22であり;および
qは1〜PAGの分岐の最大数までの数字である)化合物。
【請求項2】
フェノール部分の炭素4にカップリングしているOligを含む請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
フェノール部分の炭素3にカップリングしているOligおよびフェノール部分の炭素5にカップリングしているOligを含む請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
mが1であり、Oligがフェノール部分の炭素4にカップリングしている請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
mが1であり、Oligがフェノール部分の炭素3または炭素5にカップリングしている請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
(a)mが2であり、
(b)第1のOligがフェノール部分の炭素3にカップリングしており、
(c)第2のOligがフェノール部分の炭素5にカップリングしている
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Lが存在し、Xが存在しない請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
LおよびXが共に存在する請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
PAGが直鎖状ポリアルキレングリコール部分である請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
PAGが直鎖状ポリエチレングリコール部分である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
PAGが分岐鎖状ポリアルキレングリコール部分である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
PAGが分岐鎖状ポリエチレングリコール部分である請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
qが1〜5である請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
qが2である請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
2がアルキル5-12である請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
2がアルキル1-4である請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
Xが存在し、R2がメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
1がアルキル1-22である請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
1がアルキル1-12である請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
1がアルキル1-6である請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
1がメチルであり、LがアミドでもOでもない請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
1がメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物の活性化型。
【請求項24】
クロロホルメート、NHSカルボネートおよびパラニトロフェニルカルボネートからなる群から選択される活性部分を含む請求項23に記載の活性化型。
【請求項25】
カルバメート結合によって共有結合によりカップリングされ、生物学的に活性な薬剤の生物学的活性を保持するまたは保持しないプロドラッグを形成する請求項1に記載の化合物を含む生物学的に活性な薬剤。
【請求項26】
請求項1に記載の1つ以上の化合物に共有結合によりカップリングしているペプチドまたはタンパク質。
【請求項27】
式:
【化3】

(式2)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
式:
【化4】

(式3)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
式:
【化5】

(式4)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
R’はアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
式:
【化6】

(式5)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
式:
【化7】

(式6)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
式:
【化8】

(式7)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
式:
【化9】

(式8)
(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
nは1〜22であり;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
mは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
式:
【化10】

(式9)
(式中
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2−50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1または2であり;
mは1〜PEG分岐の最大数までの数である)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
nが2であり;
【化11】

がフェノール部分の3位および4位に結合している
請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
式:
【化12】

(式中
Xはアルキルであるかまたは存在せず;
PEGは直鎖状または分岐鎖状PEG2-50であり;
RはHまたはアルキルであり;
nは1〜PEG分岐の最大数までの数であり;
1はアルキルである)を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項37】
式:
【化13】

(化合物1)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項38】
式:
【化14】

(化合物2)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項39】
式:
【化15】

(化合物3)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項40】
式:
【化16】

(化合物4)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項41】
式:
【化17】

(化合物5)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
式:
【化18】

(化合物6)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項43】
式:
【化19】

(化合物7)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項44】
純プロドラッグまたは部分プロドラッグである、請求項1に記載の化合物。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物を製薬学的に許容されうる担体中に含む製薬学的組成物。
【請求項46】
本明細書に記載するステップにより請求項1に記載の化合物を合成する方法。
【請求項47】
請求項1に記載の化合物の有効量を被験者に投与するステップを含む、このような治療を必要としている被験者を治療する方法。

【公表番号】特表2007−508244(P2007−508244A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522542(P2006−522542)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/015004
【国際公開番号】WO2005/016240
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506292941)バイオコン・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】