説明

加熱ロール装置

【課題】加熱効率を向上する。
【解決手段】回転支持具2により回転するように支持された円筒状の加熱ロール1と、加熱ロール1の内部に挿入され加熱ロール1と同心の円周面を有し且つ固定支持具4により回転しないように支持されたボビン3と、ボビン3の円周面に均等な密度で固定され且つ加熱ロール1の長手方向にのびる複数の内側導線5aおよび加熱ロール1の外側空間に配置され且つ複数の内側導線5aのリターン路となる外側導線5bからなる励磁コイル5とを具備する。
【効果】最も磁束密度が高くなる励磁コイル5の内部に加熱ロール1が存在するため、加熱効率を向上することが出来る。また、複数の内側導体5aをボビン3の円周面に均等な密度で固定しているため、局所的な磁束飽和が起こらず、加熱ロール1の広い範囲で好適に発熱させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ロール装置に関し、さらに詳しくは、加熱ロールを均一な温度分布で加熱可能であり且つ漏れ磁束が少なく加熱効率に優れた加熱ロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状の加熱ロールの内部空間に励磁コイルを設置し、励磁コイルにより加熱ロールに誘導電流を流して、加熱ロールを高温にする加熱ロール装置が知られている。その励磁コイルの形式には、加熱ロールの軸方向に直交するコイル軸を持つループコイル(例えば、特許文献1,2参照。)や、加熱ロールの軸方向に旋回軸を持つスパイラルコイル(例えば、特許文献3参照。)がある。
【特許文献1】特開2000−150131号公報
【特許文献2】特開2003−215954号公報
【特許文献3】特開2003−330291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の電磁誘導加熱方式の加熱ロール装置では、円筒状の加熱ロールの内部空間に励磁コイル全体を収容する構成になっている。
しかし、この構成では、加熱ロールの円周方向,長さ方向に対する温度分布が偏る問題点と漏れ磁束が大きい問題点があった。
そこで、本発明の目的は、加熱ロールを均一な温度分布で加熱可能であり且つ漏れ磁束が少なく加熱効率に優れた加熱ロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、円筒状の回転する加熱ロールと、前記加熱ロールの内部に挿入され前記加熱ロールと同心の円周面を有し且つ回転しないボビンと、前記ボビンの円周面に均等な密度で固定され且つ前記加熱ロールの軸方向にのびる複数の内側導体および前記加熱ロールの外側空間に配置され且つ前記複数の内側導体のリターン路となる外側導体からなる励磁コイルとを具備したことを特徴とする加熱ロール装置を提供する。
上記第1の観点による加熱ロール装置では、ボビンの円周面に均等な密度で複数の内側導体を固定しているため、局所的な磁束飽和が起こらず、均一な温度分布で加熱ロールを加熱することが出来る。また、コイル内部に加熱ロールが存在するため、漏れ磁束が少なくなり、最も磁束密度が高くなる空間であるため、加熱効率を向上することが出来る。
【発明の効果】
【0005】
本発明の加熱ロール装置によれば、加熱ロールを均一な温度分布で加熱可能であり且つ漏れ磁束が少なく加熱効率を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0007】
図1は、実施例1にかかる加熱ロール装置10を示す平面図である。
この加熱ロール装置10は、回転支持具2により回転するように支持された円筒状の加熱ロール1と、加熱ロール1の内部に挿入され加熱ロール1と同心の円周面を有し且つ固定支持具4により回転しないように支持されたボビン3と、ボビン3の円周面に均等な密度で固定され且つ加熱ロール1の軸方向(長手方向)にのびる複数の内側導線5aおよび加熱ロール1の外側空間に配置され且つ複数の内側導線5aのリターン路となる外側導線5bからなる励磁コイル5とを具備している。
【0008】
図2は、加熱ロール装置10を示す側面図である。
加熱ロール1とボビン3の間には、空隙7がある。
【0009】
励磁コイル5は、加熱ロール1の軸方向に直交するコイル軸を持つループコイルになっている。この励磁コイル5に高周波(例えば20kHz〜50kHz)電流を流すことにより、加熱ロール1に誘導電流が流れて発熱し、高温(例えば200℃)になる。
【0010】
伝熱ベルト6は、高温になった加熱ロール1の熱を、例えばプリンタや複写機の如き画像形成装置の定着装置の定着ロールに伝える無端ベルトである。
【0011】
加熱ロール1は、電磁誘導加熱しやすい強磁性材(例えば鉄)製である。
ボビン3は、耐熱材(例えば耐熱性を有するセラミック,ガラスの焼き物,耐熱性樹脂である液晶ポリマー,フェノール樹脂)製である。
内側導線5aおよび外側導線5bは、高周波電流を流しやすい導線(例えばマグネットワイヤ)である。
【0012】
図3は、内側導線3aを固定したボビン3の平面図である。
このボビン3を加熱ロール1に挿通した後、内側導線3aを外側導線5bに接続することにより、励磁コイル5を構成できる。
【0013】
上記加熱ロール装置1では、複数の内側導体5aをボビン3の円周面に均等な密度で固定しているため、局所的な磁束飽和が起こらず、加熱ロール1の広い範囲で均一な温度分布で発熱させることが出来る。また、励磁コイル5の内部に加熱ロール1が存在するため、漏れ磁束を少なくでき、加熱効率を向上することが出来る。また、漏れ磁束を少なくできることで、磁気シールド用のコアを削減でき、構成とコストの削減が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の加熱ロール装置は、プリンタや複写機の如き画像形成装置の定着装置の熱源として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1にかかる加熱ロール装置を示す平面図である。
【図2】実施例1にかかる加熱ロール装置を示す側面図である。
【図3】内側導線3aを固定したボビン3の平面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 加熱ロール
2 回転支持具
3 ボビン
4 固定支持具
5 励磁コイル
5a 内側導線
5b 外側導線
6 伝熱ベルト
7 空隙
10 加熱ロール装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の回転する加熱ロールと、前記加熱ロールの内部に挿入され前記加熱ロールと同心の円周面を有し且つ回転しないボビンと、前記ボビンの円周面に均等な密度で固定され且つ前記加熱ロールの軸方向にのびる複数の内側導体および前記加熱ロールの外側空間に配置され且つ前記複数の内側導体のリターン路となる外側導体からなる励磁コイルとを具備したことを特徴とする加熱ロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−184120(P2007−184120A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305(P2006−305)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】