説明

加熱処理装置

【課題】加熱室内に収納されたさまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を高効率で、加熱処理すること。
【解決手段】被加熱物4を収容する加熱室3と、マイクロ波を加熱室3内に供給する誘電加熱手段1と、高周波磁界を加熱室金属壁面の磁界透過部7を通して加熱室3内に供給する電磁誘導加熱手段5とを備え、電磁誘導加熱手段5より供給される高周波磁界は、加熱コイル6で発生させる構成において、加熱室3金属壁面の磁界透過部7に加熱コイル6の中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部12を設け、高周波電流11の発生を最小限としてエネルギー損失を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電加熱と電磁誘導加熱が行なえる加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘電加熱と電磁誘導加熱が行なえる加熱調理器は、加熱庫の底面を、10から25までのメツシュでかつ非磁性体から成る金属網を2層の絶縁材料間に固着して構成した電磁誘導加熱器付高周波加熱調理器がある(特許文献1)。この構成により、被調理物を移動させることなく、電磁誘導加熱による焦げ目付けと、誘電加熱による内部加熱をすることができ、かつ調理時間の短縮ができる。
【特許文献1】特開平4−65097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電磁誘導加熱器付高周波加熱調理器における非磁性体のステンレス細線を平織りした網を使用した構成では、下記説明のように、加熱室内に収納されたさまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を効率よく加熱処理することは難しいという課題を有していた。
【0004】
平織りされて接触する細線同士の接触抵抗はばらつき、電気的接続が不安定なため、少量の被加熱物などを誘電加熱する場合、網部分を流れる高周波電流による発熱が多くなり加熱効率を低下させる。
【0005】
また、発熱による線材の膨張で網が変形し、接触抵抗が高くなってゆくと放電が発生する可能性もある。
【0006】
加熱コイルにて発生し、透過する高周波磁界により、網部分を加熱コイルと同心円方向に高周波電流が流れ発熱する。低抵抗な金属材を使用することにより、発熱量を抑え、高周波磁界の透過効率を高められるが、前述のように網の接触抵抗分の抵抗増加し加熱効率を低下させる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、加熱室への磁界透過部分を最適化することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を効率よく加熱処理する加熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱処理装置は、被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波を前記加熱室内に供給する誘電加熱手段と、高周波磁界を前記加熱室金属壁面の磁界透過部を通して前記加熱室内に供給する電磁誘導加熱手段とを備え、前記電磁誘導加熱手段より供給される高周波磁界は、加熱コイルで発生させる構成において、前記加熱室金属壁面の磁界透過部に加熱コイルの中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部を設ける。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱処理装置は、磁界透過部でのエネルギー損失を最小限に抑え、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を高効率に加熱処理する加熱処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波を加熱室内に供給する誘電加熱手段と、高周波磁界を加熱室金属壁面の磁界透過部を通して加熱室内に供給する電磁誘導加熱手段とを備え、電磁誘導加熱手段より供給される高周波磁界は、加熱コイルで発生させる構成において、加熱室金属壁面の磁界透過部に加熱コイルの中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部を設けることにより、磁界透過部を透過する高周波磁界にて加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流をさえぎることができ、高周波電流量を減らすことにより磁界透過部でのエネルギー損失を抑えられる。
【0011】
第2の発明は、加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、金属部分を貫通する穴で構成したことで磁界透過部を透過する高周波磁界にて加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流をさえぎることができ、高周波電流量を減らすことにより磁界透過部でのエネルギー損失を抑えられる。
【0012】
第3の発明は、加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、複数設けられたことで磁界透過部を透過する高周波磁界にて加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流を更に広範囲にさえぎることができ、高周波電流量を減らすことにより磁界透過部でのエネルギー損失を抑えられる。
【0013】
第4の発明は、加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、加熱コイルの中心から半径方向に連続する隣接巻線領域の略中央に相対する位置を含んだ範囲に設けられたものを少なくとも1ヶ所設けたことで磁界透過部を透過する高周波磁界にて加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流の最も電流密度の高い範囲をさえぎることができ、高周波電流量を減らすことにより磁界透過部でのエネルギー損失を抑えられる。
【0014】
第5の発明は、加熱室金属壁面の磁界透過部に複数設けた非導電部は、加熱コイルの中心から半径方向に連続する隣接巻線の半径方向に部分的に重なる範囲を有しながらずらせて配置されるとともに、加熱コイルの周方向に角度をずらして配置されることで磁界透過部を透過する高周波磁界にて加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流を更に広範囲にさえぎることができ、高周波電流量を減らすことにより磁界透過部でのエネルギー損失を抑えられる。
【0015】
第6の発明は、加熱コイルを中心から半径方向に隣接巻線領域を複数段に、同一平面状の同心円状に所定距離離して配置し、加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、加熱コイルの中心から半径方向に連続する隣接巻線領域の略中央に相対する位置を含んだ範囲に設けられたものを巻線段毎に少なくとも1ヶ所設けたことで磁界透過部を透過する高周波磁界にて加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流の電流密度の高い範囲が分散して個々の範囲を狭くでき、より確実にさえぎることができ、高周波電流量を減らすことにより磁界透過部でのエネルギー損失を抑えられる。
【0016】
第7の発明は、前記加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた加熱コイルの中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部と結合しない略円形状の非導電部を設けたことで磁界透過部を透過する高周波磁界が、加熱コイルと同心円方向に流れようとする高周波電流に作用する量を減らせる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱処理装置の構成図である。
【0019】
図1において、誘電加熱手段1により発生したマイクロ波は、放射部2を介して加熱室3に供給され、収納されている被加熱物4を誘電加熱する。また加熱室3の底面側に設けられた電磁誘導加熱手段5の加熱コイル6により発生した高周波磁界は、磁界透過部7を透過し、被加熱物4を載せた金属容器8に高周波電流を発生させ加熱する。誘電加熱手段1と電磁誘導加熱手段5は制御部9により動作制御される。
【0020】
図2は磁界透過部に生じる高周波電流の密度分布説明図である。
【0021】
図2において磁界透過部7は、加熱コイル6で発生した高周波磁界により高周波電流を生じる。磁界透過部7は非磁性の導電抵抗の低い金属材料で構成されるが、加熱コイル6近傍の強い高周波磁界中に設置されるため、高周波電流による発熱があり、透過する高周波磁界のエネルギーを吸収する。高周波電流分布は断面図上のグラフイメージのように加熱コイルの連続した隣接巻線10a,10bの中央あたりの電流分布が最も大きくなる。図3は磁界透過部の上面図である。
【0022】
図3において加熱コイル6で発生した高周波磁界により、磁界透過部7の加熱コイル6の連続した隣接巻線10a,10bの中央あたり上を最大とした高周波電流11が流れようとする。この高周波電流11の直角方向(加熱コイルの中心から外周へ向かう方向)に穴で構成した非導電部12を設けることにより、電流流路が寸断されて電流が流れにくくなる。非導電部12の長さが長いほど高周波電流11を阻止できるが、マイクロ波のコイル側への漏洩が増えるので、限度がある。このため、非導電部12を複数設けて、分担して電流流路を遮り、高周波電流を最大限少なくする。
【0023】
図4は本発明の第2の実施の形態における加熱コイルを2段に分けた場合の磁界透過部の上面図である。
【0024】
図4において加熱コイル6は内外2段の連続した隣接巻線10c,10dで構成され、磁界透過部7に高周波電流11a,11bが発生する。高周波電流が分かれその範囲が狭くなった為、長さに限りがある非導電部12でもより電流流路を遮りやすくなる。
【0025】
また磁界透過部7は加熱コイル6の中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部12以外に略円形状の非導電部を設けることにより、加熱コイル6からの高周波磁界に曝される金属部分が減り、高周波電流の誘起を減らせる。
【0026】
以上のように高周波電流の流路を遮り、電流量を少なくすることにより、磁界透過部でのエネルギー損失を最小限に抑えられ、磁界透過部自体も低抵抗の一体物で構成されるため、マイクロ波の損失も少なくでき、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を高効率に加熱処理する加熱処理装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明にかかる加熱処理装置は誘電加熱手段と電磁誘導加熱手段を同じ加熱室内に有し、両加熱手段の加熱室壁面でのエネルギー損失を最小限に抑えられるので、調理など代表されるような加熱処理装置や生ゴミ処理などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱処理装置の構成図
【図2】磁界透過部に生じる高周波電流の密度分布説明図
【図3】本発明の実施の形態1における磁界透過部の上面図
【図4】本発明の実施の形態2における磁界透過部の上面図
【符号の説明】
【0029】
1 誘電加熱手段
2 放射部
3 加熱室
4 被加熱物
5 電磁誘導加熱手段
6 加熱コイル
7 磁界透過部
8 金属容器
9 制御部
10a〜10d 加熱コイルの連続した隣接巻線
11,11a,11b 高周波電流
12 非導電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波を前記加熱室内に供給する誘電加熱手段と、高周波磁界を前記加熱室金属壁面の磁界透過部を通して前記加熱室内に供給する電磁誘導加熱手段とを備え、前記電磁誘導加熱手段より供給される高周波磁界は、加熱コイルで発生させる構成において、前記加熱室金属壁面の磁界透過部に加熱コイルの中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部を設けた加熱処理装置。
【請求項2】
前記加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、金属部分を貫通する穴で構成した請求項1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、複数設けられたことを特徴とした請求項1から2のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、加熱コイルの中心から半径方向に連続する隣接巻線領域の略中央に相対する位置を含んだ範囲に設けられたものを少なくとも1ヶ所設けたことを特徴とした請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記加熱室金属壁面の磁界透過部に複数設けた非導電部は、加熱コイルの中心から半径方向に連続する隣接巻線の半径方向に部分的に重なる範囲を有しながらずらせて配置されるとともに、加熱コイルの周方向に角度をずらして配置されることを特徴とした請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記加熱コイルを中心から半径方向に隣接巻線領域を複数段に、同一平面状の同心円状に所定距離離して配置し、前記加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた非導電部は、加熱コイルの中心から半径方向に連続する隣接巻線領域の略中央に相対する位置を含んだ範囲に設けられたものを巻線段毎に少なくとも1ヶ所設けたことを特徴とした請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項7】
前記加熱室金属壁面の磁界透過部に設けた加熱コイルの中心から円周に向かう放射状方向に長い非導電部と結合しない略円形状の非導電部を設けたことを特徴とした請求項1から7のいずれか1項に記載の加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−230965(P2009−230965A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73277(P2008−73277)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】