説明

加熱平面要素

【課題】自己加熱可能であり、特に多次元で湾曲した表面に固定するのに適した平面要素を提供すること。
【解決手段】このために、平面要素は、特に高い変形可能性を有し、これは、本発明によれば、加熱層と接触層からなる層構造を有する平面要素によって達成され、これら両層がそれぞれ、特別な破断伸びと、同時に特別な引張弾性率とを有するエラストマーおよび/またはプラスチックポリマーをベースとするポリマー材料からなる。さらに、本発明は、接着基板とこの種の平面要素とからなる接着複合体と、この種の平面要素を製造するための方法、ならびに接着複合体を加熱するためのそのような平面要素の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱層と接触層とを含む自己接着性平面要素であって、加熱層が、接触層の2つの面の一方と接触し、接触層と導電接続する自己接着性平面要素に関する。加熱層は、電流が導通するときに加熱される導体として構成された自己加熱可能な第1のポリマー材料からなる。本発明は、さらに、接着基板と、上述した平面要素とからなる接着複合体、および接着複合体を加熱するためのそのような平面要素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野で、物体または空間を加熱するために電気加熱器が使用される。電気加熱器では、熱エネルギーとしての熱が、電気エネルギー(磁気エネルギーを含む)からの変換によって得られる。基本的には、電気加熱器は、様々な技術原理に基づくことができる。
【0003】
容量効果または誘導効果に基づく、あるいは電磁放射に基づく発熱に加えて、抵抗加熱要素(いわゆる抵抗加熱器)を含む加熱器システムが普及している。この種のシステムでは、抵抗加熱要素を通って電流が導通するときに生じる熱エネルギー(ジュール熱)が利用される。基本的には、ここで、抵抗加熱要素として、ゼロではない有限の抵抗値を有する任意の導体を使用することができる。
【0004】
抵抗加熱要素の選択は、実現すべき熱出力によって決まり、この熱出力は、抵抗加熱要素の抵抗値と、抵抗加熱要素を通って流れる電流とに依存し、したがって、オームの法則に従い、印加電圧に依存する。したがって、抵抗加熱要素の選択は、内部に存在する導電経路の性質、例えばその断面積、長さ、比抵抗、および熱的負荷耐性に応じて行われる。
【0005】
特に自動車産業で、例えば自動車座席、窓、および自動車サイドミラーを加熱するために、抵抗加熱器の使用が増大している。そのような用途で所望の加熱を実現するために、最も簡単な場合には、抵抗ワイヤが平坦に布設される。他のシステムは、抵抗加熱要素として、層状導体、例えば導電性ポリマー層からなるものを有する。つまり、例えば平面要素の形態で層状の抵抗加熱要素を、自動車サイドミラーのミラー・ガラスの裏面に接着することができ、これらの抵抗加熱要素は、ミラー・ガラスを自動車サイドミラーのホルダ内の支持体プレートと結合させ、アルミニウムからなる導体面を介して大面積で接触される。ここで抵抗加熱要素に電圧が印加されると、抵抗加熱要素は、電流により加熱される。このとき発生した熱は、両面感圧接着テープを介して、ミラーのガラス表面に伝達されて、ミラーを加熱する。このようにして、ミラーのガラス表面上で45℃〜80℃の温度を達成することができる。
【0006】
しかし、現代の自動車サイドミラー構成では、接着可能な加熱要素に加えて、自動車サイドミラーでさらなる機能(例えば、ミラーのエレクトロクロミック調光)の実現が求められており、その実施がまた、構成要素の取付深さまたは全体の厚さに影響を及ぼすという問題が生じる。本来ミラー・ガラス自体と支持体プレートとの間のそのような機能/接着構成が、それぞれの機能構造によってますます厚くなるため、車ミラーの設計時の設計者の自由度がかなり制限され、さらに、自動車サイドミラーの重量が全体として増加する。
【0007】
単一のの平面要素内で、接着テープに加えて加熱要素の導電構造も実現することによって、改良が達成された。自己加熱可能であり、加熱機能を感圧接着性と併せ有するこの種の感圧接着性平面要素が、独国特許独国特許出願公開第103 10 722号A1明細書(特許文献1)に記載されている。さらに、独国特許出願公開第10 2007 007 617号明細書(特許文献2)から、加熱層が同時にホットメルト接着性に構成されている自己加熱可能な自己接着性平面構造が知られている。
【0008】
接着テープと加熱要素とからなるこの種の複合型の平面要素は、加熱要素の個々の構成要素を、ミラーのガラスとだけでなく、多くの場合にはアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)プラスチックからなるミラーの支持体プレートとも接着させなければならないので、比較的複雑な構成を必要とする。その場合、これら様々な材料の接着は、接着テープに特別な要件を課す。
【0009】
当該の取付基盤の材料に起因する側面に加えて、加熱要素をミラー・プレートに固定するために使用され、加熱要素からミラー表面に熱を伝導するそのような感圧接着テープでは、できるだけ高い熱伝導性に加えて、高温での熱せん断強度と、低温での耐候性および感圧接着性に関しても特に適合していなければならない。このことは、複合型の平面要素において複合体をミラー・ホルダの支持体プレートに固定するために設けられる別個の接着層にも当てはまる。
【0010】
しかし、概して、そのような接着可能な加熱要素は、せいぜい小さい可撓性しか有さず、比較的剛性有する。したがって、加熱要素の強度により、変形に対して高い機械的抵抗が生じるので、加熱要素は、湾曲した取付基盤にはあまり良好に接着させることができない。これにより、接着基板(取付基盤)からの加熱要素の局所的または全面的な剥離が生じることがあり、これは、電気的に発生した熱エネルギーの接着基板への伝達を低減し、それどころか妨げさえする。
【0011】
基板と共に加熱要素の接着剤も加熱され、したがって軟化するので、さらに、湾曲した表面を有する接着基板に接着された加熱要素は、基板の加熱時に、基板から剥離することが生じえる。従来の接着可能な加熱要素の高い固有剛性により、これは、軟化された接着剤の分断をもたらすことがあり、それにより接着剤が接着基板から剥離する。さらに、従来の接着可能な加熱要素の構成の剛性は、例えばミラーとミラー・ホルダなど、異なる接着基板の接着の機械的な低温衝撃強さを低下させる。
【0012】
特に、大型で湾曲した基板平面の場合、(例えば、ミラー・ガラスと支持体プレートとの)製造公差により、表面にわたって不均一な間隙が生じ、これが、しばしば全面的な接着結合を妨げるという問題が生じる。さらに、これらの領域に、液体状または気体状の媒体(流体)、例えば雨水や結露が浸入し得、接着結合の強度をさらに低下させる得る。
【0013】
湾曲した基板との接着特性は、一つには、支持体フィルムによって制限される。この種の支持体フィルムは、通常、75μm〜250μmの厚さを有し、平面要素の機械的安定性を高める働きをする(例えば、ミラーが万一割れた場合の飛散防止として、破片の飛散を効果的に阻止するために)。しかし、そのような支持体フィルムにより、平面要素の可撓性、特に2次元での可撓性が全体として大きく低下する。
【0014】
支持体フィルムに加えて導体面自体も、湾曲した基板との接着を困難にする。導体面は通常、比較的剛性を有する金属層、または導電性のインク、塗料もしくは印刷インクからなり、それらは、大きい曲げまたは伸びの際に破断することがあり、したがってこれらのシステムにおける電気接触が確実には保証されないからである。
【0015】
最後に、従来の接着可能な平面要素のそのような構成の剛性は、それにより達成することができる、例えばミラーのガラス表面とプラスチック製ミラー・ホルダなど、異なる材料からなる接着基板の接着の機械的な低温衝撃強さをも低下させる。
【0016】
したがって、少なくとも実質的に平面状に広がる穿孔接触要素からなる接触層を有する平面要素を使用することが提案された。この接触要素は、その平面状に穿孔された形態により、可撓性を、したがって高い破壊強度を有する。このとき、接触要素は、平面要素の主延在域(平面延在域、主延在面)に対して垂直に可撓性を有し、したがって、主延在域を横切って作用する力(曲げ応力)を受けたときに移動可撓性があり、そのとき発生する機械的応力によって破断することがない。同時に、接触要素が少なくとも実質的に平面状の延在域に広がることにより、電流を伝導する接触要素と加熱層との間の接触面が十分に大きいことが保証され、それにより広い平面の加熱を保証し、したがって主要機能を保証する。この特別な構成により、そのような平面要素は、その可撓性を低下させる安定支持体フィルムを必要としない。したがって、接着基板の表面の1次元湾曲の場合には、この種の平面要素によって所望の可撓性を実現することができる。
【0017】
しかし、この種の高い可撓性の平面要素を使用する場合でさえ、2つ以上の空間方向で湾曲した表面での全面的な接着は、実現することができない。そのために平面要素の多次元の変形特性が必要だからである。しかし、高い可撓性の平面要素でさえ、皺を伴わずに多次元の変形を達成することはできず、したがって3次元輪郭を有する表面の加熱には適していない。
【0018】
2方向以上で湾曲した表面の場合にも、低い接着特性が特に問題となることが判明している。例えば、広角ミラーまたは直近ミラーの場合など、ミラーが2つの空間方向で湾曲した表面を有する、広い視野をもつ一枚ミラーを備える自動車バックミラーの場合がそうである。この種のミラーは、自動車バックミラーの視野の広さについて厳しくなっている法的要求に鑑みて意義のあるものである。なぜなら、2方向で湾曲したミラーの使用により、他の場合には必要なミラー面の拡大を回避することができ、かつそれに伴う空気力学的欠点および設計上の制約を避けることができるからである。この場合も、局所的または完全な剥離、および皺発生が生じるので、高い可撓性の平面要素を使用しても、2次元での湾曲を有するそのようなミラーを十分に安定に接着することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許出願公開第103 10 722号A1明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2007 007 617号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第29 48 350号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 307 205号A1明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 512 703号A1明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0 852 801号A1明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0 435 923号A1明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0 311 142号A1明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第4 775 778号A明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第04 712 016号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Donatas Satas「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand, New York 1989)
【非特許文献2】T. G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1 (1956) 123
【非特許文献3】J.Meyer::「Polymer Engineering and Science」13(1973), p.462-468
【非特許文献4】「Chemistry and Technology of UV and EB Formulation for Coatings, Inks and Paints」Vol.1, 1991, SITA, LondonにおけるSkelhorne「Electron Beam Processing」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点を解消し、2次元または3次元で湾曲した表面を有する取付基盤に対しても良好な熱的接触を可能にし、同時に、取付基盤において高い接着強度を示し、さらに、単純な構成を有し、経済面および環境面で有利に製造することができるように構成された平面要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、驚くべきことに、かつ当業者に予想されていなかったことに、冒頭に挙げたタイプの平面要素であって、接触層が、導電性の第2のポリマー材料からなり、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料とが、それぞれ、エラストマーおよび/またはプラスチックポリマーをベースとするポリマー材料であり、それぞれ、300mm/分の伸長速度で、20%よりも大きい、特に50%よりも大きい、さらに100%よりも大きい破断伸びを有し、さらに、1000MPa未満、さらに最大で100MPaの引張弾性係数を有する平面要素によって解決される。
【0023】
このように構成された平面要素は、高い変形特性を有し、したがって不規則な表面にさえ接着させることができる。これは、第一に、本発明によればどちらもエラストマーおよび/またはプラスチックポリマーをベースとして生成されたポリマー材料からなる、加熱層と接触層の特別な構成に基づく。
【0024】
さらに、どちらのポリマー材料も、特に高い破断伸びを有し、同時に、特に低い引張弾性係数を有さなければならない。低い引張弾性係数により、ポリマー材料は、十分に柔軟である。しかし、同時に、全体として非破壊で変形できるように、高い破断伸びも有さなければならない。本発明による両方の特徴が同時に実現されるポリマー材料のみが、十分に変形可能であり、機能に制限を加えずに接着基板の輪郭に適合することができ、したがって、表面が平坦な形状でない基板への接着も可能にする。これにより、さらに、平面要素が、取付基盤の表面でのわずかな非平坦性を補償することもできる。
【0025】
この構成により、平面要素は、その主延在域(主延在面)に対して平行に弾性を有し、したがって、主延在域に平行に作用する力を受けたときに移動弾性があり、そのとき発生する機械的応力によって引き裂けることがない。低い引張弾性係数がより高くなると、平面要素は、逆に剛性が高くなりすぎ、一方、破断伸びがより低くなると、全体として変形特性が小さくなりすぎる。
【0026】
上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が自己接着剤であると有利である。このようにすると、平面要素において追加の自己接着剤層をなくすことができ、それにより、取付高さが低く、同時に特に良好な熱輸送を可能にする、特に簡単な構成の平面要素を製造することができる。
【0027】
ここで、さらに、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が感圧接着剤であると好都合であることが判明している。この種のシステムは、例えば平面要素の加熱などさらなる工程ステップを必要とせずに特に簡単な接着を可能にし、したがって、この種の自己接着剤は、非常に不規則な幾何形状を有する、または感熱性である取付基盤にも使用することができる。
【0028】
感圧接着剤として、特に、アクリレートおよび/またはメタクリレート、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、および/またはシリコーンをベースとするものが有利であることが判明している。この種の感圧接着剤は、平面要素の接着技術的特性を広範囲で制御することができ、それにより、例えば当該の取付基盤または周囲条件に関して、達成すべき接着の具体的な状況に合わせて所望の通りに調整することができるという利点を提供する。
【0029】
その代わりに、好都合には、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料がホットメルト接着剤であってもよい。この種のホットメルト接着剤により、特に高い接着強度を達成することができ、したがって、そのような系は、特に、接着が高い機械的負荷を受ける場合に利用される。当然、これは、2つのポリマー材料(第1のポリマー材料および第2のポリマー材料)の一方が感圧接着剤であり、2つのポリマー材料の他方がホットメルト接着剤であることを除外しない。
【0030】
ホットメルト接着剤として、特に、ポリオレフィンおよびポリオレフィンのコポリマー、ならびにそれらの酸修飾誘導体、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミドおよびそれらのコポリマー、ならびにスチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマーをベースとするものが有利であることが判明している。これらの接着剤系により、平面要素の接着技術的特性を特に広範囲で、同時に高い接着力において制御することができ、それにより、達成すべき接着の具体的な状況に合わせて所望の通りに調整することができる。このようにして、特に高い接着力を有する平面要素が得られ、この平面要素はまた、重い、または機械的に強い負荷を受ける要素の接着にも適しており、平面要素の接着技術的特性を広い範囲にわたって変えることもできる。
【0031】
平面要素は、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、さらに、接触層の2つの面の他方と接触する自己接着剤からなる接着剤層を含むことができる。このようにして、平面要素の接着技術的特性を、全体として接触層のポリマー材料の特性から切り離すことができる。したがって、別途、平面要素の自己接着性の面における接着剤を当該の接着基盤に合わせて調整することができ、同時に、特に良好な固定のために接触層を加熱層に適合させることができるので、全体として特に高い接着安定性を達成することができ、これは特に、接触層の表面の材料が接着基盤の表面の材料と大きく異なるときに重要である。
【0032】
本発明を実現するために、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、第1のポリマー材料が低温導体であると特に好都合である。低温導体(PTC抵抗体)は、電流を伝導する領域が、電気抵抗に関して正の温度係数(positive temperature coefficient、PTC)を有する材料からなる抵抗加熱要素である。したがって、低温導体は、温度と共に抵抗が増加し、したがって高温よりも低温で電流を良く伝導する導電材料である。低温導体挙動を示すこの種の材料(PTC要素)を抵抗加熱要素として使用することと、そのような加熱要素に一定の電圧が印加されたときに加熱要素の過熱が回避されるという実用的な利点を提供する。なぜなら、動作温度が高まると加熱要素の抵抗が増加し、それにより、オームの法則に従って抵抗増加に比例して電流が低下し、全体として達成される加熱出力が低下し、加熱要素が再び冷却されるからである。低温導体具体的な使用目的に応じて、この種の固有の温度制限を、外部制御の代わりに、または外部制御に加えて利用することができる。
【0033】
さらに、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、第2のポリマー材料が低温導体としないと有利であることが判明している。これにより、接触層の平面全体にわたって一様な電圧分布を達成することができ、これが平面要素での均一な温度分布をもたらす。
【0034】
さらに、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、接触層の電気抵抗が、加熱層の電気抵抗の10分の1未満、好ましくはまた100分の1未満、それどころかさらに小さいと有利である。この構成により、加熱要素に印加される電圧は、大部分が加熱層にかかり、接触層にはかからず、したがって発熱は、少なくとも実質的に加熱要素の領域内で生じる。これにより、平面要素の平面延在域全体にわたって一様な発熱が達成され、接触層自体で発生される熱量は小さく保たれる。
【0035】
さらに、平面要素は、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、20%よりも大きく、特に50%よりも大きく、それどころか100%よりも大きく接触層が伸長する際に、接触層の電気抵抗が、最大でも3倍にしか、特に、全く増加しないように構成することができる。接触層が高い質量分率で導電性フィラーを含有する場合(すなわち、第2のポリマー材料が高充填される場合)、適切な材料選択の下で、伸長時に接触層の導電率が増加することがあり、したがって全抵抗が低下する。対応する材料および材料の組合せは、当業者に知られている。この実施形態により、平面要素が局所的に伸長する場合でさえ、大きな局所的抵抗増加が生じないことが保証される。このようにして、伸長された領域内で局所的に高い電圧降下によってわずかな電流しか流れず、その結果、発熱する伸長領域の部分が小さくなることが回避される。したがって、この実施形態により、平面要素での発熱が実際に広い範囲で、それどころか理想的には全面にわたって生じることが保証される。
【0036】
さらに、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、接触層が、分岐した櫛型構造または指型構造を有すると有利であることがある。この種の形態は、小さな空間しかない場合に、機械的特性が顕著には損われず、または層全体にわたって大きな電圧降下が生じることなく、平面要素のほぼ全面を発熱のために最適に利用できるようにする。櫛型構造の場合、また指型構造(交差指型構造)の場合、個々の歯または指が、主ストランドから分岐する。この場合、主ストランドは、歯または指よりも大きな断面積を有していてもよく、また同じ断面積を有してもよい。櫛型構造と指型構造の相違は、櫛型構造では、分岐する要素が、主ストランドの同じ側に配置され、一方、指型構造では、それらが異なる側に分岐することである。どちらの構造も、単一または複数の分岐を有することができ、かつその際に規則的なまたは不規則的な配置をもつことができ、接触層が単一の電極として構成されるときにも、接触層が複数の電極として構成されるときにも使用することができる。
【0037】
さらに、上述の構成のうち1つまたは複数の構成の特徴に加えて、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が、少なくとも1種の導電性フィラーを含むと有用である。このようにすると、特に容易に、高い費用対効果で、多くの用途で十分に高い加熱出力を提供する導電性ポリマー材料を得ることができる。その際、導電性フィラーが、グラファイト、カーボンナノ粒子、およびカーボンブラックからなる群から、特に導電性カーボンブラックから選択されると特に有利である。そのような組成物の利点は、これらのフィラーが、ポリマー・マトリックスと特に良好な結合を示し、それにより、この種のポリマー材料が、全体として高い凝集性を有し、したがって高い機械的負荷耐性を有することである。ここで、自立的なネットワーク形成(凝集体形成)の傾向を有する粒子、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または他のナノ粒子系を利用することが好ましい。この種の自己形成されるネットワークは、導電性フィラーがポリマー材料中で隔離された状態で存在する場合に比べ、伸長時にその導電率があまり損われない。
【0038】
さらに、平面要素が、上述の特徴に加えて、支持体なしで構成される、すなわち永久支持体を有さないと有利である。これにより、特に高い可撓性および弾性を有する平面要素が得られ、それにより平面要素の特に小さい取付深さを実現することができる。そうではなく、平面要素は、永久支持体を備えてもよく、この永久支持体は、300mm/分の伸長速度で、20%よりも大きい、特に50%よりも大きい、それどころか100%よりも大きい破断伸びを有し、さらに、1000MPa未満、それどころか最大でも100MPaの引張弾性係数を有する。高い弾性を有するこの種の永久支持体の使用により、安定性の高い平面要素が得られ、これは、非平坦な表面、および2つ以上の空間方向で曲がった(多次元で湾曲した)表面に接着させるのに非常に適している。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、接着基板と、上述の平面要素の1つとを含む接着複合体が提案される。従来知られている接着複合体は、多次元で湾曲した表面に高い信頼性で長期的に接着させることができないという欠点を有する。湾曲した表面に片面で接着される自己接着性平面要素の固有剛性により、湾曲した表面からの剥離が生じ得るからである。、この欠点は、本発明による平面要素の使用によって回避される。これは、接着複合体が、少なくとも1つの両面自己接着性平面要素と、接着基板としての透明板またはミラー板との複合体であるときに特に好都合である。なぜなら、この種の系では、接着基板の自重が大きいため、ホルダからの接着基板の剥離およびそこから生じ得る接着基板の破壊が特に問題となるからである。
【0040】
さらに、本発明は、自動車産業において接着基板を接着するために、特に、上述の接着複合体を加熱するために上述の平面要素を使用することを提案する。既知のタイプの接着複合体が、不規則な形状のまたは多次元で湾曲した表面を有する接着基板に接着され、その後、特定の様式で自己加熱される場合、ポリマー材料の加熱に伴って、ポリマー材料が軟化し、したがってポリマー材料の凝集性も低下し、それが、軟化したポリマー材料の分断をもたらすことがあり、それにより、接着複合体が接着基板から少なくとも部分的に剥離する。この欠点は、接着複合体を加熱するための本発明の平面要素の使用によって回避される。
【0041】
別段の記載がない限り、個々の有利な実施形態を、任意に互いに組み合わせることができ、それにより、上述の有利な効果およびさらなる有利な効果を達成することができる。したがって、これらの特徴は、独立請求項の特徴と組み合わせて、またそれ自体、保護対象とみなされる。
【0042】
本発明を例示するために、以下、本発明について一般的に述べ、それに加えて本発明の部分態様の個々の構成要素のいくつかの代表的な例を説明する。それらは、それぞれの所望の特性に応じてほぼ任意に互いに組み合わせることができる。
【0043】
本発明は、基本的には、自己接着性平面要素に関する。特に、少なくとも実質的に平面状の延在域を有する全ての一般的な適切な構造が、本出願において平面要素とみなされる。これらは、平面的な接着を可能にし、様々に、特に可撓性を有して、接着フィルム、接着テープ、接着ラベル、または形抜きとして構成することができる。「少なくとも実質的に平面状の延在域」とは、平面要素を構成する部分領域が平面形状で存在し、個々の部分領域が、この平面形状から突出してもよいことを意味する。
【0044】
さらに、この平面要素は、自己接着性平面要素である。これは、その主延在域に平行に配置された平面要素の面の少なくとも一方、さらには両面が、自己接着性に構成され、したがって少なくとも部分的に自己接着剤を有することを意味する。
【0045】
本発明では、自己接着剤とは、例外なく、感圧接着剤および/またはホットメルト接着剤をベースとする全ての接着剤、すなわち、基板(底面基盤、取付基盤、または接着基盤)との永久的接着を自ら可能にする接着剤を意味する。「〜をベースとする」または「〜を基礎とする」とは、本発明では、その接着剤系の接着技術的特性が、その接着剤またはそれらの接着剤成分(いわゆるベース・ポリマー)の基本的な特性によって少なくとも強く規定されることを意味し、特に、そのポリマー相が、その接着剤またはその接着剤成分を少なくとも40重量%の含有量で有する接着剤系を表す。当然、これは、改質補助剤もしくは改質添加剤またはさらなるポリマー接着剤を接着系中で使用することによって、接着剤または接着剤成分の基本的特性にさらに影響を及ぼすことを除外しない。
【0046】
本発明によれば、平面要素は、少なくとも2つの異なる層、すなわち加熱層と接触層とを含む。層とは、特に、一貫した機能をもつシステムの平面状配置を表し、その寸法が、1つの空間方向で、主延在域を定義する他の2つの空間方向よりもかなり小さい。この種の層は、コンパクトな、または穿孔のある構成をすることができ、単一の材料からなるものでも様々な材料からなるものでもよく、特にそれらの材料がこの層の一貫した機能に寄与する場合に後者の構成をとることがある。層は、その平面延在域全体にわたって一定の厚さを有してもよく、または異なる厚さを有してもよい。さらに、層は、当然、複数の機能を有することもできる。
【0047】
本発明による平面要素では、特定の層順序が企図される。層順序とは、特に、層の主延在域に対して垂直に互いに重ねて(積層して)配置され、間に別の層を有さずにそれぞれ互いに直接接触する、個々の層の空間的配置を表す。本発明による層順序において、接触層は、加熱層に直接配設される。
【0048】
加熱層とは、平面要素の加熱のために設置されるいかなる層をも表す。接触層とは、電流を良好に伝導するいかなる層をも表し、その層により、加熱層に電圧を印加することができ、かつ/または少なくとも加熱層の部分領域を通して電流を伝導させることができる。したがって、接触層は、外部供給電源線を平面要素に接続する働きをする(接触電極機能)。
【0049】
したがって、加熱層は、接触層の両面(すなわち、接触層の上面および下面)の一方と接触し、それにより、これら2つの層が、直接にすなわち直に触れ合う。さらに、加熱層は、接触層のこの1つの面と導電接続される。接続が導電性であると表現されるのは、特に、接続すべき部分区域の抵抗と接続の接触抵抗とからなる接続の総電気抵抗が、残りの導電領域および接点の総抵抗より最大で3桁大きいときである。
【0050】
接触層は、加熱層と電流源または電圧源(通常、50Vまでの電圧を用意し、また、特別な用途ではより高い動作電圧を選択することができる)との間の導電性接続である。ここで、接触層を、加熱層の2つの電極接続(極)の一方として構成してもよく、また両方の電極接続となってもよい。接触層が、加熱層の2つの電極接続の一方のみである場合、加熱層を通して電流を流すことができて加熱層が加熱されるようにするためには、第2の電極接続が必要である。その場合、この第2の電極接続は、本発明による平面要素内部に、例えば、追加の第2の可撓性接触層の形態で、形成することができ、また2つの接着基板の一方に、例えばガラスの表面上の金属層として(例えば、ミラーの銀層として)設けることもできる。この場合、加熱層を通る電流は、主に、主延在域に対して垂直な方向で生じる。
【0051】
他方、接触層が、加熱層の両方の電極接続である場合、接触層は、このとき互いに導電接続されない少なくとも2つの領域を含み、これらの領域が、加熱層の2つの電極リード線(極)として構成される。この構成では、垂直な電流に加えて、またはその代わりに、主延在域中で横方向の電流が生じることがある。接触層は、典型的には、100μm未満、好ましくは20μm未満、特に好ましくは10μm未満の厚さを有することができる。
【0052】
本発明によれば、加熱層は、自己加熱可能な第1のポリマー材料からなり、接触層は、導電性の第2のポリマー材料からなる。ポリマー材料とは、少なくとも1種のベース・ポリマーを含有するあらゆる組成物を意味する。ポリマー材料は、このベース・ポリマーに加えて、任意選択で、さらなるポリマーまたは添加剤などさらなる成分を含有することもできる。ここで、加熱層およびまた接触層は、それぞれ、任意の適切な構成において、例えば完全に平面状の全面に及ぶ層として、または特別な形状の構造として、例えば櫛型構造または指型構造として存在することができる。
【0053】
ポリマー材料のベース・ポリマーとは、その特性が、ポリマー組成物全体の個々の特性さらには全ての特性を支配するポリマーを表し、当然、改質補助剤または添加剤あるいはさらなるポリマーを組成物中で使用することによって、ポリマー材料の特性にさらに影響を及ぼすことは除外されない。特に、これは、ポリマー材料のポリマー相(したがって、場合によっては接着剤のポリマー相も)の全質量に対するベース・ポリマーの分率が、50重量%よりも大きく、かつ/またはポリマー材料の全質量に対するベース・ポリマーの分率が、20重量%よりも大きいことを意味することがある。ポリマー材料がただ1種のポリマーしか含有しない場合は、当然、そのポリマーがベース・ポリマーである。
【0054】
自己加熱可能なポリマー材料とは、自ら加熱可能であるあらゆるポリマー材料をも表し、すなわち、このポリマー材料は、さらなる部材または成分を必要とせずに、ポリマー材料を通る電流の導通時またはポリマー材料への電圧の印加時に自ら発熱することができ、電流または電圧が、交流電流または交流電圧であるか、それとも直流電流または直流電圧であるかは重要ではない。発熱のために行われるプロセスは、通常、反復可能なプロセス、例えばポリマー材料の電気抵抗による加熱である。しかし、本発明によれば、発熱はまた、別の様式で、例えば1度だけ行われるプロセス、例えば電気的に開始することができる不可逆性発熱化学反応として実現することもできる。
【0055】
しかし、本発明を実現するには、平面要素が全体として変形可能であることが必須である。これは、平面要素が特に変形可能な層を有することによって達成される。加熱層および接触層が変形特性は、加熱層または接触層を各々形成する特定のポリマー材料の使用によって決まる。したがって、一方では、両方のポリマー材料、すなわち第1のポリマー材料と第2のポリマー材料が、エラストマーおよび/またはプラスチックポリマーをベースとするポリマー材料であることが必要である。
【0056】
エラストマーとは、室温未満のガラス遷移温度を有する、弾性変形可能であり、かつその際に形状を保持するポリマーである。エラストマーからなる物体は、作用する変形力を受けて弾性変形するが、変形力がなくなったとき元の非変形形状に戻る。本願の目的においては、これは、粘弾性ポリマーも含む。粘弾性ポリマーは、一部には弾性で一部には粘性である挙動を示し、したがって、物体は、変形力がなくなった後、一部だけ(不完全に)その元の形状に再び戻り、その場合、残りの変形エネルギーは、粘性流動プロセス中で解消される。
【0057】
可塑性ポリマーとは、作用する変形力を受けて塑性変形するポリマーを表し、変形は、変形力がなくなった後でも完全に、または少なくとも一部、残ったままである。
【0058】
さらに、ポリマー材料は、それぞれの場合に、300mm/分の伸長速度で、20%よりも大きい、特に50%よりも大きい、さらには100%よりも大きい破断伸びを有し、さらに、1000MPa未満、さらには最大で100MPaの引張弾性係数を有さなければならない。
【0059】
破断伸び(破断点伸び)は、材料の機械的負荷耐性および変形能力に関する特性値である。この材料特性値は、試験片が機械的過負荷によって破断されたときに有する試験片の(その初期長さに対する)残留長さ変化をパーセントで示したものである。
【0060】
引張弾性率(弾性率、引張弾性係数、弾性率、ヤング率)は、線形の弾性挙動を有する材料の変形時の応力と伸びの関係を記述する材料特性値である。非線形の弾性挙動を有する材料については、引張弾性率とは、本発明では、引張応力が加えられる際の初期引張弾性率を意味する。材料のその変形に対する抵抗が大きいほど、弾性率の値は大きくなる。この材料からなる具体的な物体の剛性は、さらに、物体の加工および幾何形状にも依存する。
【0061】
破断伸びおよび引張弾性率は、DIN EN ISO527−3に従って、規定の試験片(タイプ5)を用いて、300mm/分の伸長速度で室温で決定する。
【0062】
本発明を実現するために必須のこれらの特性から、加熱層も接触層も、全面に及ぶ金属構造(例えば、導線、電極、または加熱ワイヤ)を有してはならないことは明らかである。なぜなら、これらの構造の固有剛性により、層がその伸長性を非常に強く制限され、それにより所望の変形特性がなくなるからである。
【0063】
抵抗加熱層として使用される層の好ましい事例では、この層は、一方では、層の加熱を可能にするのに十分なほど高く、しかし他方では、層を通る電流を最低限確立するのに十分なほど低い電気抵抗を有することができる。
【0064】
本発明を実現するために、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料として、基本的に、十分な導電率を有し、このポリマー材料を通って流れる電流を実質的に減衰させずに伝導し、さらに、特に破断伸びおよび引張弾性率に関して本発明による所要の特徴を有する全てのポリマー材料を利用することができる。それに相応する破断伸びおよび相応する引張弾性率を有するポリマー材料は、当業者によく知られており、それらは、やはり当業者によく知られている措置によって、さらなる所要の特性(例えば導電率)に関して適合させることができる。
【0065】
したがって、それらの機械的および熱的特性に基づいて、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料として、例えば、ベース・ポリマーが、フルオロポリマー、クロロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ポリオレフィンおよびそれらのコポリマー、ポリアリーレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマーゴム(EPDM)、ニトリルゴム、ならびにこれらの混合物またはコポリマーであるポリマー材料が特に適している。上記のタイプのポリマーをベースとするエラストマーが特に適しているが、ワックスを使用することもできる。ここで、例えば、溶媒、軟化剤(可塑剤)、樹脂、架橋剤、促進剤、および/またはフィラーなどの添加剤によって、弾性特性および可塑特性を所望の通りに調整することができる。
【0066】
特に、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料は、少なくとも1種の接着剤を含むことができ、したがって、ポリマー材料は、接着性ポリマー材料(接着剤)である。これらのうち、特に、自己接着剤、すなわち感圧接着剤およびホットメルト接着剤が挙げられる。
【0067】
感圧接着剤とは、比較的低い圧力でも室温で基板の永久的接着を可能にする接着剤を表す。対照的に、ホットメルト接着剤とは、高温の場合にのみ基板との永久的接着をもたらす接着剤を表し、そのようにして得られる接着は、その後、接着を室温に冷却しても保たれる。感圧接着剤およびまたホットメルト接着剤の接着性は、それらの付着特性に起因する。
【0068】
付着性とは、通常、互いに接触する2つの相を、それらの界面で、そこで生じる分子間相互作用によって一体に保持する物理的効果を表す。したがって、付着性は、基板表面の接着剤の貼着を規定し、接触接着性(いわゆるタック)および接着力として規定される。所望の通りに接着剤の付着性に影響を及ぼすために、しばしば接着剤に軟化剤および/または接着力向上樹脂(いわゆる粘着付与剤)が添加される。
【0069】
凝集性とは、通常、分子間および/または分子内相互作用によって物質または物質混合物を内部で一体に保持する物理的効果を表す。したがって、凝集力は、接着剤の粘稠性および流動性を規定し、これらは、例えば、粘度およびせん断耐性として規定することができる。所望の通りに接着剤の凝集性を高めるために、しばしば、追加の架橋が施され、そのために、反応性の(したがって架橋可能な)成分または他の化学架橋剤が接着剤に添加され、かつ/または後処理中に接着剤が化学線(高エネルギー)放射にさらされる。
【0070】
感圧接着剤の接着技術的特性は、第一に、付着特性と凝集特性の間の関係によって規定される。したがって、例えば、いくつかの用途では、使用される接着剤が、高い凝集性を有する、すなわち特に強い内部一体保持が可能であることが重要であり、他の用途では、特に高い付着性が必要である。
【0071】
任意に、2つのポリマー材料の一方または両方のポリマー材料を、感圧接着剤とすることができる。そうではなく、2つのポリマー材料の一方または両方のポリマー材料が、ホットメルト接着剤とすることもできる。その際、当然、2つの接着剤の一方が感圧接着剤であり、他方がホットメルト接着剤である、すなわち、第1のポリマー材料が感圧接着剤であり、第2のポリマー材料がホットメルト接着剤である、または第1のポリマー材料がホットメルト接着剤であり、第2のポリマー材料が感圧接着剤であることも可能である。
【0072】
感圧接着剤として、基本的には、適切な感圧接着特性を有する全ての感圧接着剤系、すなわち感圧接着系が対象となる。感圧接着剤を生成するためのモノマーは、特に、得られるポリマーが室温またはより高い温度で感圧接着剤として使用できるように選択される。
【0073】
本発明においては、接着剤は、Donatas Satas(van Nostrand, New York 1989)の「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(非特許文献1)に対応する感圧接着特性を有するとき、感圧接着性である。
【0074】
感圧接着剤に好ましいT≦25℃のポリマーのガラス遷移温度Tを実現するために、Foxによって提起された式(T. G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1 (1956) 123(非特許文献2)参照)と同様に、得られるポリマーのガラス遷移温度Tの所望の値が
【0075】
【数1】

に従って得られるような挙動を示すようにモノマーが通常は選定され、モノマー混合物の定量的組成が選択される。上式で、nは、使用されるモノマーの通し番号を表し、wは、それぞれのモノマーnの質量分率を重量%で表し、TG,nは、それぞれのモノマーnからなるホモポリマーのガラス遷移温度を単位Kで表す。
【0076】
したがって、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料のための感圧接着剤として、例えば、アクリレートおよび/またはメタクリレート、天然ゴムおよび/または合成ゴムをベースとする感圧接着剤が対象となる。
【0077】
したがって、アクリル酸および/またはメタクリル酸をベースとする、かつ/または上述した化合物のエステルをベースとする感圧接着剤、あるいは水素化天然または合成ゴムをベースとする感圧接着剤を使用することができる。これらは、特別な経時安定性を有し、したがって長期にわたって本発明による平面要素の反復加熱プロセスに耐えることができるからである。
【0078】
特に、例えば、ラジカル重合によって得ることができ、少なくとも部分的に、一般式CH=C(R)(COOR)(式中、Rは、HまたはCH基であり、Rは、H、または飽和、非分岐もしくは分岐の、置換もしくは非置換C〜C30アルキル基からなる群から選択される)の少なくとも1種のアクリルモノマーをベースとするアクリレート感圧接着剤が適切である。この少なくとも1種のアクリルモノマーは、感圧接着剤のポリマー相中で少なくとも50重量%の質量分率を有するべきである。
【0079】
特に有利な一実施形態によれば、さらに、以下のポリマーを使用することができる。
(a1)少なくとも部分的に、一般式CH=C(R)(COOR2’)(式中、Rは、HまたはCH基であり、R2’は、飽和、非分岐または分岐の、置換または非置換C〜C20アルキル基からなる群から選択される)の少なくとも1種のアクリルモノマーをベースとするポリマー、および
(a2)少なくとも部分的に、特に、官能基を有するビニル化合物、無水マレイン酸、スチレン、スチレン化合物、酢酸ビニル、アクリルアミド、および二重結合によって官能化された光開始剤から選択することができる、少なくとも1種のアクリルモノマーと重合可能なコモノマーをベースとするポリマー。
【0080】
ここで、好ましくは、少なくとも1種のアクリルモノマー(a1)は、65重量%〜100重量%の質量分率を有し、少なくとも1種のコモノマー(a2)は、自己接着剤のポリマー相中で0重量%〜35重量%の質量分率を有する。
【0081】
さらに、自己接着剤の平均分子量M(重量平均)が最大800000g/molであるのが、特に、感圧接着剤の所望の機械的特性に関して有利であることが判明している。
【0082】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1種の自己接着剤はまた、天然または合成ゴム材料を含む、またはそれをベースとすることができる。天然ゴムからなる自己接着剤では、天然ゴムは、自由に選択可能な分子量まで粉砕され、接着力向上フィラー(例えば接着樹脂)および導電性フィラーを添加される。また、特別な一実施形態では、EVA(エチレン酢酸ビニル)など部分結晶性ポリマーを自己接着剤として使用し、または自己接着剤に加えることができる。
【0083】
好ましくは、アクリルおよびメタクリル酸エステルを含む一般式CH=C(R)(COOR2’’)(式中、基Rは、既に上述した化合物から選択され、基R2’’は、飽和、非分岐または分岐の、置換または非置換C〜C14アルキル基、特にC〜Cアルキル基からなる群から選択される)のアクリルまたはメタクリルモノマーが使用される。具体的な例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、およびそれらの分岐異性体、例えば、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、またはイソオクチルメタクリレートであり、この列挙は限定する意図のものではない。
【0084】
さらなる使用可能な化合物クラスは、一般式CH=C(R)(COOR2’’’)(式中、基Rは、既に上述した化合物から選択され、基R2’’’は、少なくとも6個のC原子を有する架橋または非架橋シクロアルキル基の群から選択される)の単官能性アクリレートまたはメタクリレートである。また、シクロアルキル基は、例えばC〜Cアルキル基、ハロゲン原子、またはシアノ基で置換されてもよい。具体的な例は、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、および3,5−ジメチルアダマンチルアクリレートである。
【0085】
好ましい一実施方式では、1つまたは複数の置換基、特に極性置換基、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基、ラクタム基、ラクトン基、N−置換アミド基、N−置換アミン基、カルバメート基、エポキシ基、チオール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン基、およびエーテル基を有するアクリルモノマーおよび/またはコモノマーが使用される。
【0086】
アクリルモノマー(a1)については、以下の群から選択されるモノマーが非常に有利に適している。メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、および3,5−ジメチルアダマンチルアクリレートを含む置換または非置換化合物。
【0087】
同様に、穏やかな塩基性のコモノマー(a2)特にアクリルアミドが適しており、例えば、一置換または二置換のN−アルキル置換アミドである。具体的な例は、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドであり、この列挙も包括的なものではない。
【0088】
コモノマー(a2)のさらなる好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、無水マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、グリセリジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、グリセリルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、酢酸ビニル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸であり、この列挙は包括的なものでない。
【0089】
さらなる好ましい実施形態では、コモノマー(a2)として、ビニル化合物、特に、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、α位置に芳香環および複素環を有するビニル化合物が使用され、排他的でない例として、例えば、酢酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルピリジン、エチルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、およびアクリロニトリルが挙げられる。
【0090】
特に有利には、少なくとも1種のコモノマー(a2)は、共重合可能な二重結合を有する光開始剤とすることができ、特に、ノリッシュ(Norrish)I型の光開始剤またはノリッシュII型の光開始剤、ベンゾインアクリレート、またはアクリル化ベンゾフェノンを含む群から選択される。
【0091】
さらなる好ましい実施形態では、上述のコモノマー(a2)に、高い静的ガラス遷移温度を有する追加のモノマーが添加される。この種の追加のモノマーとして、例えばスチレンなどの芳香族ビニル化合物が適しており、その際、好ましくは芳香環がC〜C18単位から構成され、またヘテロ原子を含むこともできる。特に好ましい例は、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、t−ブチルフェニルメタクリレート、4−ビフェニルアクリレート、および4−ビフェニルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、および2−ナフチルメタクリレート、ならびにこれらのモノマーの混合物であり、この列挙もやはり包括的なものではない。
【0092】
感圧接着剤の代わりに、またはそれに加えて、本発明による平面要素は、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料に関してホットメルト接着剤を含んでもよい。ホットメルト接着剤として、基本的には、適切なホットメルト接着剤特性を有する全てのホットメルト接着剤系、すなわちホットメルト接着系が対象となる。取付基盤への溶融形態での塗布およびそれに続く冷却の後に、ASTM D 3330−04(接着すべき取付基盤上で300mm/分の除去速度を有する)に従って接着力が室温で1N/cmよりも大きい、特に3N/cmよりも大きい、さらには5N/cmよりも大きいとき、本発明による平面要素は本発明においてホットメルト接着性である。
【0093】
ホットメルト接着剤として、一般的であり適切な全てのホットメルト接着剤、例えば、ポリオレフィンおよびポリオレフィンのコポリマー、ならびにそれらの酸修飾誘導体、アイオノマー、ポリアミドおよびそれらのコポリマー、ならびにスチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマーをベースとするものを利用することができる。
【0094】
ポリマー材料、特に自己接着剤は、当然、さらなる配合成分および/または添加剤を含むことができ、例えば、補助剤、顔料、レオロジー添加剤、付着性改善添加剤、軟化剤(可塑剤)、樹脂、エラストマー、老化防止剤(酸化防止剤)、光安定剤、UV吸収剤、ならびに他の補助剤および添加剤、例えば、乾燥剤(例えば、分子ふるいゼオライトまたは酸化カルシウム)、流動剤および流動性改善剤、界面活性剤などの湿潤剤、または触媒、ならびに熱伝導性フィラー、蓄熱性フィラー、あるいは熱によって放出される、またはその放出が熱によって支援される添加剤である。
【0095】
補助剤として、微細に粉砕された全ての固体添加剤、例えば、チョーク、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、カオリン、硫酸バリウム、二酸化チタン、または酸化カルシウムなどを利用することができる。さらなる例は、タルク、マイカ、ケイ酸、ケイ酸塩、または酸化亜鉛である。当然、上記の物質の混合物を利用することもできる。
【0096】
使用される顔料は、有機性のものでも無機性のものでもよい。全ての種類の有機または無機着色顔料が対象となり、例えば、光安定性およびUV安定性を改善するための二酸化チタンなどの白色顔料、または金属顔料である。
【0097】
レオロジー添加剤の例は、発熱性ケイ酸、層状ケイ酸塩(例えば、ベントナイト)、高分子量ポリアミド粉末、またはひまし油誘導体をベースとする粉末である。
【0098】
付着性改善添加剤は、例えば、ポリアミド、エポキシド、またはシランの群からの物質でよい。
【0099】
接着能力を向上させるための軟化剤の例は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、ならびに他の非環式ジカルボン酸のエステル、脂肪酸エステル、ヒドロキシカルボン酸エステル、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、脂肪族、脂環族、および芳香族鉱油、炭化水素、液体または半固体ゴム(例えば、ニトリルゴムまたはポリイソプレンゴム)、ブテンおよび/またはイソブテンからなる液体または半固体ポリマー、アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、接着性付与樹脂のベースにもなる原料をベースとする液状および軟化樹脂、羊毛脂および他のワックス、シリコーン、ならびにポリエステルやポリウレタンなどのポリマー軟化剤である。
【0100】
熱によって放出される、またはその放出が熱によって支援される添加剤は、活性物質を含有し、熱の作用により活性物質が放出または活性化され、それによりこの活性物質の制御された放出が可能になる系である。活性物質として、ここでは、熱の解放または活性化の際に特別な作用を生じる任意の物質が対象となり、例えば、色素、医療または化粧用活性物質、または雷管(起爆剤)である。この作用は、例えば、物質の解放により生じ(例えば、局所的に使用可能な活性物質の場合)、あるいは熱的活性化、例えば、熱的に開始される化学反応(例えば、分子転位、架橋反応、または分解)または熱的に開始される物理プロセス(例えば、吸着/脱着、または相転移)において生じることができる。例えば、熱によって解放することができる添加剤は、溶融可能マトリックス中にカプセル化された、局所的に使用可能な医療用活性物質であってよい。
【0101】
例えば、補助剤および軟化剤などさらなる成分を有するポリマー材料の配合も、同様に従来技術である。
【0102】
接着技術的特性を最適化するために、本発明によれば、自己接着剤に樹脂を混和することができる。添加することができる接着性付与樹脂(接着力向上樹脂)として、文献に記載されている全ての既知の接着樹脂を例外なく利用することができる。その代表として、ピネン樹脂、インデン樹脂、およびロジン、それらの不均化、水素化、重合化、エステル化誘導体および塩、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、およびテルペンフェノール樹脂、ならびにC〜Cおよび他の炭化水素樹脂が挙げられる。得られる接着剤の特性を所望通りに調整するために、これらおよびさらなる樹脂の任意の組合せを利用することができる。一般に、対応するベース・ポリマーと適合する(可溶である)全ての樹脂を利用することができる。特に、全ての脂肪族、芳香族、アルキル芳香族炭化水素樹脂、純粋なモノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、官能性炭化水素樹脂、および天然樹脂を挙げることができる。好ましい一実施形態では、長期間にわたってさえ導電率および加熱性が低下しない樹脂が使用される。
【0103】
平面要素のさらなる有利な実施形態は、少なくとも1相に蓄熱性フィラーを添加することによって達成することができる。蓄熱性フィラーとは、本発明では、高い熱容量、特に0.7J/gKよりも大きい熱容量を有する任意のフィラーを表す。したがって、これらの物質の熱緩衝作用により、加熱層(およびそれと熱的に接触する接触層)の加熱時の均一なプロファイル、および能動発熱プロセスの終了後の長期にわたる均一な放熱を達成することができる。有利に利用することができる高い熱容量を有するフィラーは、例えば、アルミニウム、ベリリウム、ホウ素、カルシウム、鉄、グラファイト、カリウム、銅、マグネシウム、リン、または上記の物質の化合物、特に酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫化銅、磁鉄鉱、赤鉄鋼、炭酸マグネシウム、および塩化マグネシウム、塩化リン、または酸化リンである(さらに、雷管の場合のカリウムまたはリンなど、これらの物質は平面要素内部でさらなる機能を実現することもできる)。
【0104】
また、ポリマー材料の少なくとも1種が、特に、少なくとも0.5W/m・K、特に好ましくは1W/m・Kよりも大きい高い熱伝導率を有すると有利である。これは、例えば、熱伝導性フィラー、特に、電気的特性に影響を及ぼさないので、例えば窒化ホウ素または酸化アルミニウムなど、電気絶縁性であるが高い熱伝導性のフィラーを添加することによって達成される。しかしまた、高い熱伝導性を有する導電性フィラー、例えば、銀、アルミニウム、または銅を利用することもできる。特に熱伝導性の高いポリマー材料によって、ホットメルト接着性ポリマー材料を溶融するのに必要なエネルギーをより良く導入することができ、これは、例えば、本発明による平面要素を接着基板上に取り付けるときにサイクル時間を短縮する。さらに、その種のポリマー材料が使用されるとき、加熱要素の全面にわたる一様な温度分布を速やかに達成することができる。
【0105】
本発明において、第1のポリマー材料の組成は、第2のポリマー材料の組成と同じであっても異なっていてもよい。
【0106】
本発明によれば、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料は、十分に低い抵抗を有し、少なくとも実質的に劣化せずに、電流を伝導しなければならない。これは、このために一般的な全ての手段によって達成することができる。したがって、例えば、ポリマー材料は、自己導電性ポリマー(ベース・ポリマーとしてまたは追加の配合成分として)を含有することがある。しかし、ポリマー材料が導電性フィラーを含有すると特に好都合である。導電性(電気伝導性)フィラーは、既に単独で(すなわち、ポリマー材料なしで)、またはポリマー材料と混合されて初めて電流を伝導するポリマー材料への混和物である。
【0107】
導電性フィラーとして、基本的には、当該のポリマー材料と適合する全ての適切な導電性フィラーを利用することができる。特に、このために、グラファイト、およびカーボンブラック、特に導電性カーボンブラック(例えば、Degussa社製のPrintex(登録商標)XE)、ならびにそれらの任意の組合せを含む群から選択されるフィラーが利用される。それに加えて、またはその代わりに、好ましくは、炭素ベースの別のフィラー、特に、ナノスケールである、すなわち少なくとも1つの空間次元で500nm以下、好ましくは200nm未満、またはさらには50nm未満の広がりを有するもの、例えば、カーボンナノチューブ(例えば、Ahwahnee社製のカーボンナノチューブ、またはHyperion Catalysis社製のカーボンナノチューブマスターバッチ)、カーボンナノファイバ(carbon nanofibres)、フラレーンなどのカーボンナノ粒子を利用することができる。
【0108】
有利には、フィラーは、当該のポリマー材料中のフィラーの分率が、ポリマー材料の十分に高いまたは低い抵抗を保証するのに十分なほど大きく、他方では、第1のポリマー材料の機械的特性にわずかしか悪影響を及ぼさないのに十分なほど小さくなるような量で使用される。さらに、フィラーは、表面修飾して使用することもできる。これにより、第1のポリマー材料の個々の特性に対して所望の通りに影響を及ぼし、例えば、ポリマー材料中のカーボンナノチューブまたはカーボンブラックの分散性を改善することができる。
【0109】
ポリマー材料の伝導率は、とりわけ、導電性フィラーの充填度、すなわち、ポリマー材料中でのフィラーの質量分率に依存する。これは、第2のポリマー材料の伝導率と、加熱層の達成可能な温度および加熱速度に影響を及ぼす。充填度を上げることによって、より高い伝導率、また場合によってはより高い温度を実現することができる。さらに、ポリマー材料の導電率は、そのベース・ポリマーにも依存する。したがって、第1のポリマー材料の電気加熱可能性の効果の発生は、充填度によって決定されることがある。ここで、充填度は、有利には、1重量%〜60重量%の間である。非常に好ましくは、5重量%〜30重量%の間のフィラーが使用される。
【0110】
導電性ポリマー材料を得るために、導電性フィラーを、重合の前および/または重合中にポリマー材料のモノマーと混和することができ、かつ/または重合の終了後に初めてポリマーと混合することもできる。好ましくは、導電性フィラーは、重合の後に、ポリマー材料のベース・ポリマーの溶融液に添加される。
【0111】
本発明によれば、第1のポリマー材料が加熱層を形成し、第2のポリマー材料が接触層を形成する。好ましい一実施形態では、加熱層が、PTC特性を有し、つまり正の温度係数を有し、したがってPTC効果を示す。さらに、好ましくは、接触層は、PTC特性を有さない。
【0112】
PTC挙動は、適切な第1のポリマー材料の選択によって得られる。この場合、第1のポリマー材料は、その正の温度係数および抵抗に関して、加熱層での発熱が当該の動作電圧および当該の動作電流でPTC効果によって制限されるように設計することができ、それにより、層が、発熱に関して自己調整式に挙動し、特に規定の最高温度値を超えず。したがって、平面要素の過熱を回避することができる。
【0113】
また、この種の低温導体材料は、自動車製造で既に利用されている。すなわち、自動車サイドミラーに関して、例えば、アルミニウム導体面と接触されたPTC要素が接着され、PTC要素は、ミラー・ガラスの裏面を、自動車サイドミラーのホルダにある支持体プレートと結合させる。ここでPTC要素に電圧が印加されるとき、PTC要素は、電流によって加熱される。従来技術から知られている接着可能な加熱要素では、低温導体として、通常、カーボンブラックを含有する部分結晶性の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、またはテトラフルオロエチレンなどが使用される。従来技術は、独国特許出願公開第29 48 350号(特許文献3)、欧州特許出願公開第0 307 205号(特許文献4)、欧州特許出願公開第0 512 703号(特許文献5)、および欧州特許出願公開第0 852 801号(特許文献6)に詳細に記載されている。ミラー加熱器として使用するとき、これらの低温導体は、全面に及ぶ導体面にインクの形態で塗布され、この導体面は、接触電極として働き、通常は75μm〜250μmの厚さを有する別個の支持体フィルム上に配置されている。インク中に含有された溶媒は、最終の乾燥ステップで除去される。この種のインクは、欧州特許出願公開第0 435 923号(特許文献7)に詳細に記載されている。
【0114】
当然、加熱層に関して、第1のポリマー材料について、基本的には、適切な機械的特性を有する全てのポリマーを利用することができ、これらのポリマーは、PTC効果を有し、すなわちPTC挙動を示す。このとき、PTC効果の発生および大きさは、ネットワーク形成に依存し、例えば、導電性フィラー自体が凝集しているか否かに依存する。その際、とりわけ、製造プロセス中に第1のポリマー材料のポリマー成分に導入される向きによって、例えば、物理的特性および/または高分子の向きに関して所望の通りに異方性を導入することによってPTC効果をサポートすることができる。
【0115】
導電性フィラーを有するポリマー材料をPTC系として利用する場合、多相系、特に、PTC効果が生じる温度範囲内で少なくとも1つの相が加熱により体積膨張する系を使用するのが有利なことが判明しており、これは、一般に認められている科学的な説明によれば、少なくともある程度はPTC挙動に寄与する(J. Meyer:「Polymer Engineering and Science」13(1973), p.462-468(非特許文献3)参照)。ポリマーまたはポリマー混合物(いわゆるポリマーブレンド)をベースとするポリマー材料も、本発明においては多相と理解され、これらのポリマー材料は、導電性フィラーに加えて1種または複数種のさらなるフィラーを有する。
【0116】
ここで、部分結晶性ポリマーを有するポリマー材料の使用が、PTC挙動に関して特に有利であることが判明している。部分結晶性ポリマー系として、単相および多相系を利用することができ、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、特に部分結晶性ブロックコポリマーである。このとき、部分結晶性ポリマーは、ベース・ポリマー自体の一部であってよく、また付加剤であってもよい。この種の部分結晶性ポリマーの結晶性部分領域は、ポリマー・マトリックスが軟化するとき、その非晶質領域よりも大きな熱膨張を示す。
【0117】
好ましくは、加熱層における第1のポリマー材料は、少なくとも30重量%の部分結晶性ポリマーを含有し、第1のポリマー材料中の部分結晶性ポリマーの分率は少なくとも50重量%であるとより良好である。特に、第1のポリマー材料として非接着性ポリマー材料およびホットメルト接着剤を用いるとき、部分結晶性ポリマーの分率が増加すると共に、PTC効果を得るための適性が驚くほど急激に上がることが分かっている。対照的に、感圧接着剤は、部分結晶の分率が増加するにつれて感圧接着特性を失い、したがって、感圧接着剤を使用するとき、依然として十分に高い感圧接着性を保証するために、ホットメルト接着剤の場合よりも部分結晶性ポリマーの分率を低く保つべきである。
【0118】
したがって、非接着性ポリマー材料およびホットメルト接着剤は、PTC効果を利用するのに予想以上に良く適している。その際、ポリマー材料のベース・ポリマー中に100重量%含有された、またはポリマー材料のベース・ポリマー中に少なくともほぼ100重量%含有された部分結晶性ポリマーからなるポリマー材料が、本発明において第1のポリマー材料として特に有利であることが判明している。
【0119】
第1のポリマー材料としてのポリマー材料中で、特に、結晶度が20%超さらには40%超である部分結晶性ポリマーが有利である。結晶度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry;DSC)を用いて計測することができる。
【0120】
したがって、第1のポリマー材料として、部分結晶性の熱可塑性樹脂の範囲内では、ポリオレフィン(例えば、低密度ポリエチレン)、またはポリオレフィンのコポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、エチレン−アクリル酸(EAA)、エチレン−メタクリル酸(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート、またはエチレン−ブチルアクリレート)、アイオノマー、ポリアミド、および/またはそれらのコポリマーを利用することができる。これらは、十分に顕著なPTC効果に加えて、特に有利なホットメルト接着特性も有し、したがって、ホットメルト接着剤をベースとする第1のポリマー材料中でこれらをベース・ポリマーとして利用することができる。
【0121】
さらに、部分結晶性の熱可塑性樹脂の範囲内で、酸で修飾された(例えば、マレイン酸または無水マレイン酸で修飾された)ポリオレフィンまたはそれらのコポリマーが好ましい。なぜなら、これらは、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブなどの導電性フィラーと特に良く適合し、これらのポリマーを使用するとき、ポリマー・マトリックス中でフィラーを特に簡単に均質に分散させることができるからである。
【0122】
特に好ましくは、ブロックコポリマーとして、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー)、またはSEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー)などのスチレンブロックコポリマーが利用される。
【0123】
また、加熱中に溶融することでPTC効果をサポートするポリマーまたは無機フィラーの添加も有利である。これは、例えば、高結晶性のポリオレフィンワックスまたはイオン性液体(低融点金属塩)であってよい。さらに、フィラーの融点の選択により、PTC挙動(PTC効果)が生じる温度を調整することができる。
【0124】
さらに、PTC挙動を実現するために、多様な導電性フィラーの組合せも有利であることがある。なぜなら、これにより、特にカーボンナノチューブとカーボンブラックまたはグラファイトとの組合せの場合に、できるだけ低い充填度で十分なPTC特性を達成することができるからである。
【0125】
PTC効果を高めるために、カーボンブラック粒子など導電性フィラーの表面を、ニッケル、銀、または金などの金属によって、シランによって、またはホルムアミドによって完全にまたは部分的に覆うことができる。
【0126】
ポリマー材料のポリマー相と導電性フィラーとの混和は、全ての一般的な混合法によって行うことができる。例えば、ポリマー材料を、本発明による平面要素に溶融液から塗布する場合、好ましくは、導電性フィラーを溶融液中に直接導入することができる。この場合、本発明においては、均質な導入が望ましい。また、好ましくは、ポリマー材料中のフィラーの均質な分散が、2軸スクリュー押出機、連続混練機(例えば、Buss混練機)、または遊星ローラ押出機内で混和することによって実現される。この方法の1つの利点は、個々のフィラーによって製造工程がごく短時間しか汚染されないこと、および溶媒を回避できることである。
【0127】
本発明による平面要素に利用されるポリマー材料がさらに架橋されていることが好ましい。ここで、特に第1のポリマー材料に関して、しばしば高い架橋度が目指され、これは、PTC効果を強め(欧州特許出願公開第0 311 142号A1明細書(特許文献8)および米国特許出願公開第4 775 778号A明細書(特許文献9)、比較例)、したがって特に適切である。また、架橋は、時としてポリマー材料の融点よりも高い温度で時に観察されるNTC(負の温度係数;英語:negative temperature coefficient)効果の作用をなくしまたは低減する。
【0128】
したがって、第1のポリマー材料のベース・ポリマーは、好ましくは、少なくとも35%、特に60%よりも高いゲル値に相当する架橋度を有することができる。ゲル値とは、本発明においては、ベース・ポリマーの可溶部分と不溶部分の和に対する、適切な溶媒(例えば、トルエンまたはキシレン)中で不溶であるベース・ポリマー部分の割合を表す。
【0129】
高い架橋度は、例えば、電子線を用いた架橋ステップで得ることができる。使用することができる典型的な照射装置は、電子線加速器に関する限りは、リニアカソード・システム、走査システム(スキャナ・システム)、またはセグメントカソード・システムである。従来技術の詳細な説明および最も重要な方法パラメータは、「Chemistry and Technology of UV and EB Formulation for Coatings, Inks and Paints」Vol.1, 1991, SITA, LondonにおけるSkelhorne「Electron Beam Processing」(非特許文献4)に記載されている。典型的な加速電圧は、50kV〜500kVの範囲内、好ましくは80kV〜300kVの範囲内にある。使用される散乱線量は、5kGy〜150kGy、特に20kGy〜100kGyの範囲内で変動する。また、高エネルギー照射を可能にする他の方法を利用することもできる。
【0130】
さらに、架橋度により、第1のポリマー材料の導電率、したがって熱的加熱の変化をもたらすことができる。一般に、架橋反応時に作用する電子線照射量を増加させることによって(およびそれにより架橋度を増加させることによって)、導電率を高めることができ、したがって、平面要素の加熱層を通る電流を一定とすると、ポリマー材料の達成可能な温度が上昇する。同様に、架橋度により、第1のポリマー材料のPTC挙動を制御することができる。
【0131】
架橋反応に必要なビーム照射量を低減するために、ポリマー材料に、さらに、架橋剤および/または架橋促進剤、特に、熱的に励起可能または電子線によって励起可能なものを混和することができる。熱的に活性化可能な架橋剤として、好ましくは、二官能または多官能性エポキシド、水酸化物、イソシアネート、またはシランが混和される。電子線架橋に適した架橋剤は、例えば、二官能または多官能性のアクリレートもしくはメタクリレート、またはトリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートである。
【0132】
したがって、平面要素は、内部で発熱することができる少なくとも1つの層と、接触層の少なくとも1つの電極(1つの極)となる導電層とを含む。ここで、加熱層ならびに接触層が変形可能であることが重要である。構造上最も簡単な実施形態では、平面要素は、2つの層、すなわち自己接着剤からなる加熱層と接触層とだけからなり、接触層は、構造上最も簡単なこの実施形態では、非接着性でよく(片面で接着可能な平面要素の場合)、また同様に自己接着剤として構成してもよい(両面で接着可能な平面要素の場合)。
【0133】
材料技術上最も単純な実施形態では、加熱層および接触層がポリマー材料からなり、それらのポリマー材料は、導電性フィラーの含有量のみが異なり、他の点では同一の組成を有する。
【0134】
より複雑な構造では、本発明による平面要素は、加熱層および接触層に加えて、さらなる層を有することができる。すなわち、例えば、平面要素が、1つまたは複数の接着剤層を含むことができ、その際、例えば、接触層の2つの面のうち、加熱層と直接接触しない面が、それ自体は自己接着性には構成されず、自己接着剤からなる追加の接着剤層と接触する。接着剤層とは、接着剤を含み、平面要素と取付基盤との接着結合に適合されたいかなる層をも表す。その代わりに、またはそれに加えて、加熱層の接触層とは反対の面に自己接着剤を設けることもできる。この種の自己接着剤として、基本的には、全ての一般的な適切な感圧接着剤またはホットメルト接着剤、特に、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料に関して上述した自己接着剤が対象となるが、その場合、これらは、必ずしも導電性に構成する必要はない。したがって、本発明による平面要素は、例えば、加熱層と接触層とからなる構成であって、どちらの層も自己接着性に構成されておらず、その一面(加熱層および/または接触層)に接着剤層を塗布して、そこで自己接着性を達成することができる構成も含むことができる。
【0135】
さらなる有利な実施形態では、加熱可能な平面要素の少なくとも1つの層が、平面要素が最初に加熱されるときに、第1のポリマー材料中、第2のポリマー材料中、および/または場合によってはさらなる自己接着剤中での凝集性を増加させる機構を備える。これは、例えば、熱的に開始されるポスト架橋によって架橋密度を増加させることによって実現することができ、このポスト架橋は、特に、平面要素自体の(自己)加熱によって開始させることができる。したがって、有利には、この種の平面要素は、初めに少なくとも1つの接着基板との接着が形成され、続いて最初の加熱が行われ、加熱中に接着の硬化が生じるように使用される。
【0136】
通常、平面要素は、平面要素の最大変形特性が全体として保証されるように支持体なしに形成される。しかし、さらに、変形可能な永久支持体を平面要素内に設けることもできる。この永久支持体は、例えば、平面要素の穿刺抵抗などの機械的特性を全体として改善するために利用することができる。その場合、永久支持体は、全面にわたって閉じた構成にすることも、穿孔された構成にすることもできる。この種の永久支持体として、弾性または熱可塑性プラスチックからなるフィルム、ポリマー織物平面要素(例えば、織布、レイドファブリック、編地、および不織布)、またはそのような材料の組合せなど、全ての適切な支持体材料を使用することができる。
【0137】
本発明により達成することができる平面要素の顕著な変形特性を全体として保証するために、支持体は、300mm/分の伸長速度で、20%よりも大きい、特に50%よりも大きい、さらには100%よりも大きい破断伸びを有さなければならず、さらに、1,000MPa未満、さらには最大で100MPaの引張弾性率を有さなければならない。
【0138】
さらに、ポリマー織物支持体システムに関して、これらが、実際に、当該の織物組織に対応して、良好なさらには優良な3次元変形特性を有することに留意しなければならない(したがって、例えば、織物よりもはるかに伸びるニットである)。しかしまた、変形特性が良好になることで、これらのシステムはかなり厚くなる。なぜなら、この場合、伸長性は、繊維材料自体によって生み出されるだけでなく、実質的に厚さ方向で生じるポリマー織物複合体の横方向収縮のみによっても実現されるからである。これらのポリマー織物支持体材料は、厚く、また、大きな横方向収縮のため寸法保持性が低いので、通例、好ましくはフィルム状の材料が使用される。
【0139】
また、このとき、永久支持体が、その高い可撓性に加えて、高い熱伝導率、特に少なくとも0.5W/m・K、さらには1W/m・Kの熱伝導率を有すると有利である。特に好ましい材料は、例えば窒化ホウ素または酸化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーで充填されたポリマーである。この種の永久支持体は、典型的には、全体としての構成の可撓性に悪影響を及ぼさないように、50μm未満、好ましくは25μm未満の厚さを有する。特に熱伝導性の高い永久支持体によって、ホットメルト接着剤を溶融するのに必要なエネルギーをより良く導入することができ、これは、例えば、本発明による平面要素を接着基板上に取り付ける際に、サイクル時間を短縮する。特に有利な一実施形態では、永久支持体は、ポリマー発泡体として構成され、それにより、平面要素全体の変形特性は、、実質的に悪影響を受けない。
【0140】
さらに、永久支持体は、例えば平面要素の使用者が平面要素の導電部分に触れるのを防止するために、電気絶縁性に構成することもできる。
【0141】
さらに、平面要素は、一方の自己接着面で、かつ/または場合によっては他方の自己接着面でも、仮の支持体を有することができる。この種の仮の支持体として、剥離紙またはインプロセス・ライナ(in-process liner)などいかなる剥離可能な被覆材料を使用することもでき、これが、外側自己接着剤の一方を少なくとも部分的に覆う。被覆材料として、例えば、残渣なく再び剥がすことができる剥離効果を有する全てのシリコーン化またはフッ素化されたフィルムが適する。ここで、フィルム材料としては、単に例として、PP(ポリプロピレン)、BOPP(二軸延伸ポリプロピレン)、MOPP(一軸延伸ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PUR(ポリウレタン)、PE(ポリエチレン)、PE/EVA(ポリエチレン−エチレン−酢酸ビニルコポリマー)、およびEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー)が挙げられる。さらに、剥離紙、例えば、グラシン紙、クラフト紙、またはポリオレフィン被覆紙を利用することもできる。また、ここで、特に有利には、高い熱伝導率、特に、少なくとも0.5W/m・K、さらには1W/m・Kよりも高い熱伝導率をそれ自体有する被覆材料を使用することができる。特に好ましい材料は、例えば窒化ホウ素または酸化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーで充填されたポリマーである。特に熱伝導性の高い被覆材料によって、ホットメルト接着剤を溶融するのに必要なエネルギーをより良く導入することができ、これは、例えば、本発明による平面要素を接着基板上に取り付ける際に、サイクル時間を短縮する。
【0142】
本発明による平面要素を製造するために、既知の適切な全ての方法を例外なく利用することができる。したがって、従来技術によるポリマー平面要素を製造するためのよく知られている方法を用いて、本発明による平面要素のポリマー材料を製造することができる。これらの方法には、例えば、フラットフィルム押出、ブローフィルム押出、カレンダー法、溶液から、分散液から、またはポリマーのモノマーもしくはポリマー前駆体からのコーティングが含まれる。そのようにして得られた平面要素は、全体で、典型的には、最大で1000μm、特に10μm〜400μm、さらには30μm〜200μmの厚さを有する。
【0143】
平面要素を製造するには、通常、初めに、2つのポリマー材料の一方を、例えば永久支持体または製造支持体(いわゆるインプロセス・ライナ)上に層状に広げ、支持体を、プロセス中にまたは遅くともこのプロセスの終了までに再び平面要素から切り離す。このポリマー材料層の上に、他のポリマー材料を塗布する。最後に、場合によっては、接触層および/または加熱層の露出面上にさらなる自己接着剤を塗布することができ、そのために、(必要であれば)製造支持体をポリマー材料から事前に取り外すことができる。
【0144】
当然、これとは異なる任意の他の製造法で、例えば、2つのポリマー材料の一方を支持体(製造用支持体または永久支持体)上に塗布し、2つのポリマー材料の他方を別の支持体上に塗布し、続いて、2つのポリマー材料を例えば積層ステップ中に互いに結合させることによって本発明による平面要素を得ることも可能である。その後、場合によっては、永久支持体上に、または2つのポリマー材料の一方の上にさらなる自己接着剤を塗布することができ、これは、仮の支持体を取り外した後に初めて行われる。
【0145】
第1のポリマー材料上に、または場合によっては支持体上に接触層の第2のポリマー材料を塗布するために、既知の全ての方法を利用することができ、例えば、分散液、溶液、または溶融液中にポリマーが存在する、導電性インク(導電性インク)および印刷インク、導電性塗料、または導電性ペーストを(例えば、スクリーン印刷などの印刷法で)塗布することができ、ならびにポリマーと導電性フィラーの混合物(例えば、ポリマー・カーボンブラック化合物)を、ホットスタンピング、熱シーリング、積層または層化、あるいは断続的に塗布することによって、個別に成形されたポリマー層またはポリマー・フィルムを転写することができ、最後の場合、接触層の第2のポリマーが、自己加熱可能な第1のポリマー材料の伝導率の少なくとも10倍の伝導率を有するべきである。
【0146】
第1のポリマー材料および第2のポリマー材料が熱可塑性ポリマーである場合、3次元形態を有するように平面要素を製造することもでき、これは、2つの層の熱成形性によって実現される。3次元で成形されるこの種の平面要素は、対応して成形された接着基板表面に接着する際に利点を提供することができる。
【0147】
本発明によれば、このようにして得られた平面要素は、2つの接着基板を互いに結合するため、または単一の接着基板の2つの異なる部分領域を結合するためにも使用される。平面要素が両面自己接着性に構成される場合、2つの接着基板の表面が互いに接着結合されるように適合される。特に、平面要素は、輸送手段製造業界で接着基板を接着させるために使用され、例えば、自動車、バス、鉄道、船舶、または航空機で使用される。
【0148】
ここで、本発明による平面要素は、接着複合体の構成要素として存在することができる。接着複合体は、本発明においては、平面要素と少なくとも1つの接着基板とからなる、接着によって得られる任意の複合体であり、接着基板が、平面要素の一面に直接にまたはさらなる構成要素を介して接着されている。有利には、接着基板として、ミラー板、特にミラー板のミラー面の裏面、あるいは透明平面要素の場合には、透明板、例えばディスプレイウィンドウまたはウィンドスクリーンが使用される。したがって、本発明による平面要素は、この種の接着複合体を加熱するために使用される。
【0149】
したがって、本発明による平面要素は、例えば、ミラー加熱器(屋外および室内ミラー)としての使用、加熱可能なライニングでの使用(固定、防音、加熱)、ウォッシャー液の加熱または凍結防止のための使用、タンク加熱のための使用(特にディーゼル車用)、燃料ラインを加熱するため(同時に固定として)の使用、除氷システム用加熱器での使用(エーロフォイル除氷、場合によっては固定機能を含む)、ハンドル加熱器での使用、加熱空気を温めるための使用(モータが低温であるときの追加の加熱)、または吸気(燃焼空気)を予熱するための使用が可能である。この列挙は、単に例示的なものにすぎず、本発明による平面要素の使用は、これらの具体的な例のみには限定されない。
【0150】
さらに、(ここでの選択によって限定されることなく)例えば以下のような多くのさらなる用途を見い出すことができる。表面上の結露または雨水を除去する用途(例えば、浴室ミラーで;固定および加熱のため;例えば浴室での用途に関して曇り止め積層として;加熱可能なタイル接着フィルムとして;矯正眼鏡またはサングラスで;または眼鏡ケースで)、座席加熱器としての用途(例えば、自動車で;座席加熱とエアバッグ用の座席占有センサとの一体型の用途を含む)、バス停での着座の際の用途、スポーツ・スタジアムでの用途、屋外ケータリングでの用途、または便座のための用途、電気毛布または電気マットでの用途、保温プレートでの用途(例えば、食品および料理用;ただし、特に太陽電池の使用の下での、登山用調理器具または登山用オーブンでも)、シューズ・ウォーマでの用途(例えば、中敷きとして)、バンド・ヒータでの用途(例えば、パイプライン用、ボイラー用など)、室内暖房のための用途(例えば、壁暖房で;床暖房で;または折畳み可能なテント暖房としても)、ウォーターベッド暖房器での用途、加熱可能な筐体での用途(例えば、筐体の内容物の温度調整用のいわゆるサーモボックスとして;または、例えばハイファイ機器においてペルチェ素子と協働して一定の温度を保証するために、電子回路範囲内で)、オートバイのための用途(例えば、操縦管加熱器またはサドル加熱器として)、温室暖房器としての用途(例えば、大面積の照射暖房器もしくは対流暖房器として;または植物に直接当てる小面積の局所暖房器として、例えば根の暖房器として)、機能的に加熱可能な衣服のための用途(例えば、オートバイ・ライダーの衣服、自動車運転者の衣服、または冬服で)、表示システムの加熱、および場合によっては固定のための用途(例えば、LCD、OLED、および電気泳動ディスプレイの加熱および固定;カメラのディスプレイ、屋外ディスプレイ、または教会の時計塔の凍結防止用、およびまたそれらの除氷用)、加熱式外部スイッチの加熱のための用途、屋根加熱のための用途(例えば、屋根または雨樋用の解氷ユニットとして)、インキュベータ(例えば、動物の子供用の保育器、孵卵器、またはヒトの乳児用の保育器)での用途、医療用途(例えば、温熱療法で;温湿布として;経皮的治療システムのため;および経皮的な医薬品供給、いわゆる経皮的薬物送達のため)、または雷管としての用途などである。
【0151】
ここで、利用される当該の自己接着剤に対応して、平面要素は、圧力を受けるだけで接着基板に固定される(感圧接着剤の場合)、または圧力下で熱を導入したときに接着基板に固定される(ホットメルト接着剤の場合)。この熱の導入は、ここでは外部から行われる。しかし、別法として、安定な接着を達成するために必要な熱を、加熱層内で内部的に発生させることもできる。
【0152】
さらなる利点および適用可能性は、添付図面を参照して以下に詳細に説明する実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】従来技術で知られている両面接着可能な平面要素を通る長手方向断面の概略図である。
【図2】接触層と加熱層からなる本発明による両面接着可能な平面要素を通る長手方向断面の概略図であって、図a)が、接着されていない平面要素を示し、図b)が、ミラー・ガラスに片面で接着された平面要素を示す概略図である。
【図3】加熱層と、二重櫛型構造を有する穿孔接触層と、接着剤層とからなる本発明による両面接着可能な平面要素の概略図であって、上の図に、平面要素を通る長手方向断面が示され、下の図に、平面要素を通る水平断面が示された概略図である。
【図4】支持体と、接触層と、加熱層とからなる本発明による片面接着可能な平面要素の長手方向断面概略図である。
【図5】接着剤層と、接触層と、加熱層とからなる本発明による両面接着可能な平面要素の長手方向断面概略図である。
【図6】接着剤層と、接触層と、加熱層と、仮の支持体とからなる本発明による両面接着可能な平面要素の長手方向断面概略図である。
【図7】様々な温度について計測された本発明による平面要素(実施例1)のオーム抵抗を表す測定データ曲線を示す図である。
【図8】様々な温度について計測された本発明による平面要素(実施例2)のオーム抵抗を表す測定データ曲線を示す図である。
【図9】様々な温度について計測された従来の平面要素(比較例1)のオーム抵抗を表す測定データ曲線を示す図である。
【図10】様々な強さの伸びについて計測された本発明による平面要素の加熱層のオーム抵抗を対数表示で表す2つの測定データ曲線を示す図である。
【図11】様々な強さの伸びについて計測された、本発明による平面要素の接触層と、従来の接触層とのオーム抵抗を表す2つの測定データ曲線を示す図である。
【図12】様々な強さの伸びについて計測された、図10および11に示される層のオーム抵抗の相対変化を表す4つの測定データ曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0154】
以下では、初めに図1〜6を説明するが、これらの図は、一般に、加熱平面要素の様々な構造を示す。その後、本発明による平面要素の具体的な例、およびこれらの平面要素の特性を計測するための実験を例として説明する。これらの実験測定の結果が、図7〜12に示されている。
【0155】
図1に、第1の加熱層50と接触層20とを有する、従来技術から知られている平面要素が示されており、接触層20は、積層接着剤層60を介して永久支持体16に結合される。平面要素は、2つの感圧接着剤層22により、両面接着性に構成される。この種の平面要素は、比較的複雑な多層構成を有し、変形特性も可撓性も有さない。
【0156】
図2a)に、接触層20と加熱層10とからなる本発明による両面接着可能な平面要素が示されている。図2b)には、平面要素が、片面で接着された状態で、ミラー・ガラスとの接着複合体として示されており、ミラー・ガラスは、片面に金属ミラー層21を有するガラス板40からなる。本発明においては、接触層20および加熱層10は、高い弾性を有し、したがって変形可能である導電性ポリマー材料から形成される。さらに、加熱層10のポリマー材料は、自己接着剤として構成される。平面要素がミラー・ガラスと接着するとき、自己接着性(すなわち、感圧接着性またはホットメルト接着性)の加熱層10が、金属ミラー層21の裏面と結合される。ここで、接触層20は、連続するポリマー材料層であり、加熱層の1つの電極となり、他方の電極は金属ミラー層21によって形成される。
【0157】
図3に、接触層20および加熱層10を備える本発明による両面接着可能な平面要素が示されており、接触層20自体は、非接着性に構成され、その代わりに、追加の自己接着剤層30が接触層20に固定されている。ここで、接触層20は、一様な断面の櫛型構造を有し、上側部分領域にある指と、下側部分領域にある指とが、主ストランドの同じ側に分岐する。図3の上図に示すように、接触層20は、互いに結合されない2つの部分領域を有し、したがって、これらの領域は、加熱層の2つの接触電極(極)として働くことができる(任意に選択された異なる符号「+」と「−」とで表される)。したがって、接着基板との結合時、外部対向電極としてさらなる接触電極は必要でない。
【0158】
図4に、接触層20と、加熱層10と、変形可能な永久支持体16とを備える本発明による片面接着可能な平面要素が示されており、接触層20および加熱層10はそれぞれ、感圧接着性またはホットメルト接着性に構成されている。この場合も、接触層20は、2部分櫛型構造を有し、したがって接着基板との結合時、外部対向電極としてさらなる接触電極は必要でない。全体としての構成の弾性にあまり大きな悪影響を及ぼさないように、永久支持体16は、50μm未満、好ましくは25μm未満の厚さを有する。
【0159】
図5に、接触層20と加熱層9/11とを有する本発明による両面接着可能な平面要素が示されており、接触層20は、自己接着性に構成されず、追加として、さらなる自己接着剤層22/23が接触層20に固定されている。図3に示される構成とは異なり、加熱層と、さらなる自己接着剤層は、異なる種類の自己接着剤であり、その際、さらなる自己接着剤層22が感圧接着性に構成されるときには加熱層9はホットメルト接着性に構成され、あるいは、さらなる自己接着剤層23がホットメルト接着性に構成されるときには加熱層11は感圧接着性に構成される。
【0160】
図6に、接触層20と感圧接着性の加熱層11とを備える本発明による両面接着可能な平面要素が示されており、接触層20自体は、非接着性に構成され、その代わりに、追加の自己接着剤層30が接触層20に固定されている。図3に示される構成とは異なり、この平面要素は、加熱層11と接触した仮の支持体24を有する。
【実施例】
【0161】
以下、本発明を、実施例として選択された個々の実験によって説明するが、被験試料の選択によって不必要に限定を加えることを望むものではない。
【0162】
以下に記載する試験方法を、本発明による平面要素を特徴付けるために使用した。
【0163】
自己加熱可能な感圧接着剤の接着力の決定(試験A)は、ASTM D 3330−04に従って、180°の角度で、300mm/分の除去速度で、鋼板上での剥離試験で行った。全ての測定を、室温(23℃)で、空気調和条件(50%の相対大気湿度)下で行った。
【0164】
自己加熱可能なホットメルト接着剤の接着力の決定(試験B)は、T剥離力試験で行った。このために、厚さ200μmの検査対象のホットメルト接着剤を含むストリップを、真空下で140℃の温度で、加熱プレスによって、未処理のポリエステル・フィルム(Mitsubishi H)に貼着した。そのようにして得られた結合システムから、幅20mmのストリップを切断し、これを、24時間にわたって室温条件でコンディショニングした。その後、加熱フィルムを、室温で、空気調和条件下でポリエステル支持体から再び剥がし、これに必要な力を測定した。このとき、ホットメルト接着剤もポリエステル・フィルムも支持または固定されず、したがってT形状の剥離が生じた。測定結果は、N/cm単位で示され、3つの測定から平均を出した。
【0165】
電気加熱特性の測定(試験C)は、平面要素に関して、電圧の印加後に温度上昇を測定することによって行った。温度の測定は、Pt100温度センサによって行った。本発明による平面要素および比較例を、自己接着性の面をガラス・プレート上に向けて貼り付けた。変圧器を用いて、12.8ボルトの直流電圧を可撓性加熱要素に印加した。600秒の時間経過後、ガラス・プレートの表面で直接、温度を測定した。結果は、℃単位で示される。
【0166】
同じ試験の枠内で、PTC効果の大きさの決定、同じ試験サンプルにおいて行った。そのために、電流印加後に、生じた温度の時間プロファイルを記録した。上述したのと同様に、温度の測定を行った。さらに、電流および電圧を、経時的に記録し、それにより、オームの法則に従って、そこから抵抗の変化を計算することができた。
【0167】

平面要素の可撓性を測定(試験D)するために、片側で懸架された長さ10cmおよび幅2cmの平面要素ストリップのその自重の下の撓みを、水平姿勢で測定した。そのために、図3に概略的に示す構成を使用した。図3には、自己接着剤層30と、接触層20と、加熱層10とからなる自己加熱可能な平面要素が示されており、接触層20は、二重櫛型構造を有する。試験は、感圧接着剤平面に被覆材料を設けずに行った。この場合、ストリップは、ストリップの長手方向に対して実質的に横方向に導電路が延びるように切断した。全ての測定を、室温で、空気調和条件下で行った。
【0168】
平面要素の弾性を測定(試験E)するために、引張弾性率および破断伸びを、DIN EN ISO 527−3に従って、タイプ5の試験片を用いて、300mm/分の伸張速度で室温で求めた。同時に、試料の電気抵抗を、実験室用マルチメータを用いて、少なくとも実質的に無電流で測定した。測定の開始時、測定電極を、測定体の細い平行部分の内部に、互いに25mmの距離に配置した。伸長挙動のより詳細な特徴付けのために、引張弾性率および破断伸びの測定中に、それぞれ試験片の電気抵抗を記録した。
【0169】
本発明による平面要素の例として、第1のポリマー材料として感圧接着剤またはホットメルト接着剤を有する平面要素を製造した。
【0170】
自己加熱可能な感圧接着剤について、初めに、欧州特許出願公開第04 712 016号明細書(特許文献10)における開示と同様の、2−エチルヘキシルアクリレート44.5重量%、n−ブチルアクリレート44.5重量%、メチルアクリレート8重量%、アクリル酸3重量%からなるコモノマー組成を有するベース感圧接着剤を作製した。分子量の決定は、多分散性M/M7.0で、平均分子量M650000g/molが得られた。そのようにして得られたベース感圧接着剤を、40重量%のグラファイト(Timcal Timrex KS 6)を有する溶液中に混合し、その後、塗布棒によって、シリコーン化グラシン剥離紙(Laufenberg社)に塗布した。120℃での10分間の乾燥後、そのようにして得られた感圧接着剤層の厚さは、100μmであった。
【0171】
その後、この感圧接着剤を、電子照射によって架橋させた。電子照射は、Electron Crosslinking AB社(スウェーデン、ハルムスタット)製の装置を用いて行った。その際、被覆された感圧接着テープを、加速器のレナード窓の下にある標準装備の低温ロールに通した。照射区域内の大気酸素を、純粋な窒素で掃気することによって除去した。ベルト速度は、10m/分であった。電子線照射量は、この場合、実施例1では180kVの加速電圧で50kGyであった。
【0172】
自己加熱可能なホットメルト接着剤について、ベース・ホットメルト接着剤として、酢酸ビニル含有量が28重量%のEscorene Ultra FL 00728(ExxonMobil社)タイプのエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)を使用した。このベース・ホットメルト接着剤中に、Haake Rheomixタイプの測定押出機を用いて、温度140℃、回転速度120回/分で、45分間にわたって28重量%の導電性カーボンブラック(Ensaco 260G;Timecal社)を混練した。このようにして得られたポリマー化合物から、真空プレスを用いて、厚さ200μmを有する平面要素を作製した。
【0173】
接触層の変形可能なポリマー材料について、ベース・ホットメルト接着剤として、酢酸ビニル含有量が28重量%のEscorene Ultra FL 00728(ExxonMobil)タイプのエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)を使用した。このベース・ホットメルト接着剤中に、Haake Rheomixタイプの測定押出機を用いて、温度140℃、回転速度120回/分で、45分間にわたって28重量%の導電性カーボンブラック(Printex XE2;Degussa社)を混練した。このようにして得られたポリマー化合物から、真空プレスを用いて、厚さ200μmを有する平面要素を作製した。このようにして得られたフィルムから、電極距離1.5mmおよび電極幅5.0mmを有する櫛形の導電路構造を、接触層として切り出した。
【0174】
接触層の第1の変形不能なポリマー材料について、PEDOT/PSS(Clevios F、H.C.Starck社)をベースとする導電性ポリマー材料の市販の分散液を用いて、電極距離が1.5mmで電極幅が5.0mmの櫛形の導電路構造を、厚さ5μmでインプロセス・ライナに付着した。
【0175】
接触層の第2の変形不能なポリマー材料について、市販の導電性銀塗料(Conrad Electronic社)を、25μmの層厚で、厚さ200μmの非充填エチレン酢酸ビニル・フィルムに塗布した。
【0176】
実施例1では、図3に示す構成を使用し、加熱層10として、厚さ100μmの上述の自己加熱可能な感圧接着剤を使用し、自己接着剤層30として、自己加熱可能な感圧接着剤と同じ条件で、さらなる架橋のために電子線にさらした厚さ75μmの上述のベース感圧接着剤を使用し、接触層20として、二重櫛型構造を有する上述の変形可能なポリマー材料層を用いた。加熱可能な平面は、180cmの大きさを有していた。
【0177】
実施例2では、図3に示される構成を使用し、加熱層10として、厚さ200μmの上述の自己加熱可能なホットメルト接着剤を使用し、自己接着剤層30として、厚さ75μmの上述のベース感圧接着剤を使用し、接触層20として、二重櫛型構造を有する上述の変形可能なポリマー材料層を使用した。加熱可能な平面は、180cmの大きさを有していた。
【0178】
比較例1では、Porsche社製のサイドミラーからの従来技術による市販の低温導体加熱要素を使用した。
【0179】
試験Aに従って、上述のベース感圧接着剤および上述の加熱可能な感圧接着剤について、接着力を以下のように測定した。
ベース感圧接着剤: 7.4N/cm
加熱可能な感圧接着剤:6.3N/cm
【0180】
この試験の結果は、ベース感圧接着剤に導電性フィラーを混和することによって、その感圧接着特性がほぼ保たれたままであることを示している。
【0181】
試験Bに従って、上述のベース・ホットメルト接着剤および上述の加熱可能なホットメルト接着剤について、引き剥がし力(剥離力)を以下のように測定した。
ベース・ホットメルト接着剤 4.5N/cm
加熱可能なホットメルト接着剤 2.9N/cm
【0182】
この試験の結果は、ベース・ホットメルト接着剤に導電性フィラーを混和することによって、そのホットメルト接着特性がほぼ保たれたままであることを示している。
【0183】
試験Cに従って、実施例1および実施例2と、比較例1について、加熱可能性およびPTC効果を測定した。その際、平面要素は、以下の温度に達した。
実施例1:53℃
実施例2:54℃
比較例1:54℃
【0184】
この試験の結果は、本発明による平面要素が、市場で現在市販されている従来技術による自動車ミラー加熱システムの加熱性能に匹敵する加熱性能を達成することを示している。
【0185】
図7、図8、および図9に、試験Cからの瞬時電流と当該の瞬時電圧とから計算した平面要素の総抵抗を、温度の関数として示す。ここから得られる曲線形状は、加熱層のPTC効果についての示唆を与える。図7は、実施例1に関する結果を示し、図8は、実施例2に関する結果を示し、図9は、比較例1に関する結果を示す。
【0186】
図7において、抵抗が、約40℃の温度まで急激に増加し、さらに高い温度に向かうにつれて緩やかに減少することが分かる。すなわち、実施例1は、約40℃未満の温度では、顕著なPTC挙動を示し、40℃よりも高い温度では、弱いNTC効果を有する。例2(図8)は、試験した温度範囲全体にわたって顕著なPTC挙動を示す。比較例1(図9)も、試験した温度範囲全体にわたってPTC挙動を示す。ここで得られた測定データ曲線を比較すると、本発明による平面要素(図7および図8)では、PTC効果が、部分的に、市販の比較例(図9)よりも顕著であることが分かる。
【0187】
試験Dに従って、実施例1(上述の加熱可能な感圧接着剤を使用)および実施例2(上述の加熱可能なホットメルト接着剤を使用)と、比較例1について、平面要素の変形特性を測定した。この場合、以下の撓みが測定された。
実施例1:75mm
実施例2:60mm
比較例1:15mm
【0188】
この試験の結果は、本発明による平面要素が、従来技術から知られている平面要素よりもかなり高い可撓性を有することを示している。
【0189】
試験Eに従って、自己加熱可能な感圧接着剤(ベース感圧接着剤)と、自己加熱可能なホットメルト接着剤(ベース・ホットメルト接着剤)と、変形可能なポリマー材料と、第1の変形不能なポリマー材料(PEDOT/PSSをベースとするポリマー材料)と、第2の変形不能なポリマー材料(導電性銀塗料)とについて、引張弾性率と破断伸びに基づいて、平面要素の変形特性を測定した。これらの試験において、各試料について、以下の引張弾性率および破断伸びが求められた。
【0190】
【表1】

【0191】
この試験の結果は、本発明によるポリマー材料が、従来技術から知られているポリマー材料よりもかなり低い弾性率と、かなり高い破断伸びとを有することを示している。
【0192】
その際、従来の接着剤(第1および第2の変形不能なポリマー材料)で、自由支持層のクランプでさえ試験片が既に破壊されるほどそれらが脆弱であったので、引張弾性率を求めることすらできなかった。したがって、これらの試料(第1および第2の変形不能なポリマー材料)については、破断伸びを正確に求めることもできなかった。しかし、これは、変形不能なポリマー材料を、弾性で非導電性の補助支持体に塗布し、変形不能なポリマー材料の電気抵抗の変化を補助支持体の伸長の下で求めることによって、近似的に評価することができた。
【0193】
脆性材料では、それぞれ、特定の伸長で電気抵抗の大幅な増加が生じた。この増加を、変形不能なポリマー材料からなる層の引裂け(破断)と解釈し、それに基づいて、対応する理論的な破断伸びを評価した。このようにして、第1の変形不能なポリマー材料について、破断伸びを10%未満と決定し、一方、第2の変形不能なポリマー材料の破断伸びは、約25%であった。
【0194】
したがって、第2の変形不能なポリマー材料は、本発明による所要の範囲内にある20%よりも大きい破断伸びを有するが、1000MPa未満という引張弾性率の要件は、この系によっては満たされない。この結果は、ポリマー材料が2つの特徴(破断伸びと引張弾性率)の一方しか有さないとき、本発明による効果を達成するのに十分でないことを示しており、両方のポリマー材料が、それぞれ両方の特徴を同時に実現することが必須である。
【0195】
異なる伸びにおける、引張弾性係数および破断伸びを測定する過程で測定された試験片の抵抗を、図10、図11、および図12に示す。この場合、伸長の前(すなわち、伸びがゼロの場合)に、電気抵抗について以下の初期値を得た。
自己加熱可能な感圧接着剤 1.15MΩ
自己加熱可能なホットメルト接着剤 118kΩ
変形可能なポリマー材料 2.6kΩ
第1の変形不能なポリマー材料 90Ω
第2の変形不能なポリマー材料 50Ω
【0196】
図10に、本発明に従って加熱層を形成することができる2つの自己加熱可能な接着剤について、試験片の伸長時の電気抵抗の変化を示す。実用的な用途で通常生じる(初期寸法に対する)約50%までの小さい伸びで、抵抗の低減が観察される。50%よりも大きい非常に強い伸びで、初めて抵抗の増加が生じ、これは、極端な伸びの際に断面が低減することに帰することができる(しかし、この種の強い伸びは、平面要素がそのように強く伸ばされることは実用上ないので、基本的に、一様でない基盤への接着時には重要でない)。伸びが90%(感圧接着剤)さらには150%(ホットメルト接着剤)になったときに初めて、最初に測定された抵抗を超える。しかし、100%の伸びでは、どちらの試料も、最初に測定された抵抗の2分の1よりも明らかに低い抵抗を依然として有する。
【0197】
図11に、本発明に従って接触層を形成することができる変形可能なポリマー材料(「弾性電極」)、および第2の変形不能なポリマー材料(導電性銀塗料)について、試験片の伸長時の電気抵抗の変化を示す。変形可能なポリマー材料は、約25%の伸びまで、電気抵抗のわずかな減少を示し、それよりも大きい伸びでは、電気抵抗の増加が観察される。接触層としてのこのポリマー材料の使用に対応して、抵抗の絶対値は、図10に示される加熱層用のポリマー材料のデータ曲線の場合よりも1桁以上小さい。対照的に、導電性銀塗料は、25%よりも大きい伸びで電気抵抗の大幅な増加を示し、これは、塗料・フィルムの引裂けと解釈した。
【0198】
図12に、図10および11に示した測定データ曲線を、当該の初期抵抗に関係付けたデータ曲線としてまとめて示す。したがって、これらのデータ曲線はすなわち、電気抵抗の相対変化を示す。本発明による平面要素で使用可能なポリマー材料の全てにおいて、導電性銀塗料とは対照的に、100%の伸びでも、抵抗が元の初期値の2倍を超えず、したがって、これらのポリマー材料は全て、ポリマー材料中の電流導通(場合によっては加熱効果を伴う)を可能にすることが分かる。
【0199】
この試験の結果は、本発明による平面要素が、この層の構造およびそれに関連する機能(導電性)の崩壊をもたらさずに、従来技術から知られている平面要素よりもかなり高い変形特性を有することを示している。
【0200】
したがって、上述の例示的な実験は、安定な加熱可能な接着を達成するために本発明による可撓性平面要素が良く適していることを証明する。
【符号の説明】
【0201】
9 加熱層
10 加熱層
11 加熱層
16 永久支持体
20 接触層
21 金属ミラー層
22 感圧接着剤層
23 さらなる自己接着剤層
30 追加の自己接着剤層
40 ガラス板
50 第1の加熱層
60 積層接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱層と接触層とを含む自己接着性平面要素であって、
前記加熱層が、
前記接触層の2つの面の一方と接触し、前記接触層と導電接続されており、かつ
電流が導通するときに加熱される導体として構成された自己加熱可能な第1のポリマー材料からなる、
自己接着性平面要素において、
前記接触層が、導電性の第2のポリマー材料からなり、
前記第1のポリマー材料および前記第2のポリマー材料が、
それぞれ、エラストマーおよび/またはプラスチックポリマーをベースとするポリマー材料であり、
それぞれ、300mm/分の伸長速度および23℃の温度で、20%よりも大きい、特に50%よりも大きい、さらには100%よりも大きい破断伸びを有し、さらに、1000MPa未満、さらには最大で100MPaの引張弾性率を有する
ことを特徴とする自己接着性平面要素。
【請求項2】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が、自己接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の平面要素。
【請求項3】
前記自己接着剤が、アクリレートおよび/またはメタクリレート、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、および/またはシリコーンをベースとする感圧接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の平面要素。
【請求項4】
前記自己接着剤が、ポリオレフィンおよびポリオレフィンのコポリマー、および/またはそれらの酸修飾誘導体、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミドおよびそれらのコポリマー、および/またはスチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマーをベースとするホットメルト接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の平面要素。
【請求項5】
前記平面要素が、さらに、自己接着剤を含む接着剤層を含み、前記接着剤層が、前記接触層の2つの面の他方と接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項6】
前記第1のポリマー材料が、低温導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項7】
前記第2のポリマー材料が、低温導体でないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項8】
前記接触層の電気抵抗が、前記加熱層の電気抵抗の10分の1未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項9】
20%よりも大きく、特に50%よりも大きく、さらには100%よりも大きく前記接触層が伸長した際に、前記接触層の電気抵抗が、最大で3倍にしか、特に、全く増加しないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項10】
前記接触層が、分岐した櫛型構造または指型構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項11】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が、少なくとも1種の導電性フィラーを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項12】
前記導電性フィラーが、金属粒子、グラファイト、カーボンナノ粒子、およびカーボンブラック、特に導電性カーボンブラックを含む群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の平面要素。
【請求項13】
支持体なしで構成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項14】
支持体を含み、前記支持体が、300mm/分の伸長速度および23℃の温度で、20%よりも大きい、特に50%よりも大きい、さらには100%よりも大きい破断伸びを有し、さらに、1000MPa未満、さらには最大で100MPaの引張弾性率を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項15】
特に、接着基板として透明板またはミラー板を備える、接着基板と、請求項1〜14のいずれか一つに記載の平面要素とからなる接着複合体。
【請求項16】
自動車産業における、特に接着基板上にある請求項15に記載の接着複合体を加熱するための請求項1〜14のいずれか一つに記載の平面要素の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−199071(P2010−199071A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40689(P2010−40689)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】