説明

加熱調理器

【課題】炒め物調理などの高温度を要する調理において料理の出来栄えを損なうことがなく、油調理などの発火の危険がある調理においては発火の危険を回避することができる加熱調理器を得る。
【解決手段】被加熱物7を加熱する加熱コイル10と、加熱指令を入力させる操作部3と、被加熱物7から放射された赤外線を検出する赤外線センサ8と、赤外線センサ8の検出値から被加熱物7の温度を求める温度検出手段11と、加熱指令に基づき加熱コイル10の火力を制御し、被加熱物7の温度が制御温度を超えたとき、加熱コイル10の駆動を停止させ、または加熱コイル10の火力を所定量低下させる制御部12とを備え、制御部12は、所定温度以上における被加熱物7の温度上昇勾配に応じて、制御温度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器においては、例えば、「加熱開始直後に赤外線センサ26の出力値である初期検出値に対する赤外線センサ26の出力値の増加量が第1の所定値以上となると加熱コイル21の出力を低減または停止し、赤外線センサ26の出力値の増加量が第1の所定値より小さな第2の所定値未満となると加熱コイル21の出力を増加させ、加熱開始直後は赤外線センサ出力値の微分値が大きくなると小さくなるように第1又は/及び第2の所定値を補正する。」ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば、「赤外線センサ3で検出された鍋底温度が所定温度以上かつ、設定火力が第1所定火力以上であれば、炒め物検知手段11によって、タイマ10の設定時間を第2所定時間に延長させる。」ものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−259619号公報(要約)
【特許文献2】特開2010−9957号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、加熱初期での温度勾配で火力を低下させたり、一定時間で火力を低下する制御を行っているため、例えば炒め物などの高温度かつ負荷量によって長時間を要する調理においては食材に加わる熱量が不足し、料理の出来栄えを損ねてしまう、という問題点があった。
一方で、例えば油調理などにおいては発火等の危険を回避することができる加熱調理器が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、炒め物調理などの高温度を要する調理において料理の出来栄えを損なうことがなく、油調理など過加熱に注意する必要がある調理においては過加熱を回避することができる加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱手段と、加熱指令を入力させる操作部と、前記被加熱物から放射された赤外線を検出する赤外線検知手段と、前記赤外線検知手段の検出値から前記被加熱物の温度を求める温度検出手段と、前記加熱指令に基づき前記加熱手段の火力を制御し、前記被加熱物の温度が制御温度を超えたとき、前記加熱手段の駆動を停止させ、または前記加熱手段の火力を所定量低下させる制御部とを備え、前記制御部は、所定温度以上における前記被加熱物の温度上昇勾配に応じて、前記制御温度を変化させるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、所定温度以上における被加熱物の温度上昇勾配に応じて、制御温度を変化させる。
このため、炒め物調理などの高温度を要する調理において料理の出来栄えを損なうことがなく、油調理などの過加熱に注意する必要がある調理においては過加熱を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る加熱調理器の上面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る加熱調理器の断面概念図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る天板の透過率特性を示す図である。
【図4】黒体放射と波長―温度の関係を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る制御温度変更テーブルである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る計時時間と制御温度上昇の関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る加熱制御を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2に係る制御温度変更テーブルである。
【図9】この発明の実施の形態2に係る制御温度変更テーブルである。
【図10】この発明の実施の形態3に係る制御温度変更テーブルである。
【図11】この発明の実施の形態4に係る鍋検知温度と投入電力との関係を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係る鍋検知温度と投入電力との関係を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態6に係る鍋検知温度と投入電力との関係を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態7に係る加熱制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
なお、各実施の形態おいては、本発明の加熱調理器の一例として、誘導加熱により加熱調理を行うIHクッキングヒータを例に説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る加熱調理器の上面図である。
図2はこの発明の実施の形態1に係る加熱調理器の断面概念図である。
図1、図2に示すように、加熱調理器は、本体1と、本体1の上面に設けられ、被加熱物7が載置される天板2と、天板2の下方に設置され、被加熱物7を誘導加熱する加熱コイル10と、加熱コイル10に高周波電流を供給し、加熱コイル10を駆動する高周波インバータ14と、高周波インバータ14の動作を制御して被加熱物7への投入電力(火力)の大きさを制御する制御部12と、天板2の下面と接触し、該天板2の温度を検出する接触式温度検知手段9と、被加熱物7から放射される赤外線を検出する赤外線センサ8と、赤外線センサ8および接触式温度検知手段9のそれぞれ検出値から被加熱物7の温度を求める温度検出手段11と、使用者からの操作を入力する操作部3と、動作状態や操作部3からの入力・操作内容等を表示する表示部4と、を備える。
また、本体1の上面後方には、本体1内部と連通し、本体1内部に外気を取り込むための吸気口6a、6bと、本体1内部に取り込んだ空気を吹き出し排出するための排気口5とが設けられている。
【0012】
なお、「赤外線センサ8」は、本発明における「赤外線検知手段」に相当する。
なお、「加熱コイル10」は、本発明における「加熱手段」に相当する。
【0013】
天板2は、例えば耐熱性のガラス等の赤外線を透過する素材により構成される。また、天板2は、裏面または表面に塗装または印刷等が施されている。なお、赤外線センサ8の上方の位置に対応する部分については、赤外線を透過させ易くするため、塗装または印刷等を施さない、または赤外線が透過できる程度の塗装または印刷を施すようにする。
【0014】
赤外線センサ8は、被加熱物7から放射され天板2を透過した赤外線量(放射エネルギー量)を検知して温度検出手段11に出力する。
接触式温度検知手段9は、例えばサーミスタなどの感熱素子により構成される。また、接触式温度検知手段9は、天板2下部に1または複数個設けられ、上方に予圧されて天板2に接触する。接触式温度検知手段9は天板2の温度を検知して温度検出手段11に出力する。
【0015】
操作部3は、例えば天板2と同一面の手前側に配置される。この操作部3は、図1に示すように各加熱コイル10ごとに操作部3a、3b、3cが設けられている。
操作部3は、使用者からの操作により、加熱調理に関する操作(加熱指令)を入力する。なお、操作部3を本体1の正面に設けるようにしても良い。
【0016】
制御部12は、操作部3からの加熱指令などに基づき、高周波インバータ14の動作を制御して、被加熱物7への投入電力(火力)の大きさを制御する。
また、制御部12は、被加熱物7の温度が制御温度を超えたとき、加熱コイル10の駆動を停止させ、または加熱コイル10の火力を所定量低下させる。
また、制御部12は、タイマ・カウンタ13を有しており、所定のタイミングより計時することが可能としている。動作の詳細は後述する。
【0017】
以上、本実施の形態1における加熱調理器の構成について説明した。
次に、本実施の形態1における加熱調理器の動作を説明する。
【0018】
まず、IHクッキングヒータである加熱調理器の加熱調理動作の概要について説明する。
使用者は被加熱物7を加熱するため、天板2上に被加熱物7を載置する。そして、操作部3より所望の火力で調理を行えるよう火力を設定し、加熱開始のスイッチを押下する(加熱指令)。
制御部12は、操作部3から入力された指定火力や加熱開始等の加熱指令に基づき、高周波インバータ14の出力を決定し、高周波電流を加熱コイル10へ流す。
加熱コイル10は、高周波インバータ14から高周波電流が供給されることで磁界を発生し、天板2上に載置された被加熱物7の底面には電磁誘導による渦電流が発生する。この渦電流と被加熱物7自身が持っている抵抗により被加熱物7自身が発熱する。該発熱により、鍋などの被加熱物7内部に装填された食品や水、油が熱伝導により加熱される。
【0019】
被加熱物7が加熱されると、被加熱物7と接触している天板2に被加熱物7の熱が熱伝導する。天板2下に設置されている接触式温度検知手段9は、天板2へ伝導した熱を検知して温度検出手段11に出力する。温度検出手段11は、接触式温度検知手段9からの入力から天板2の温度を検出する。
また、加熱コイル10の下方に設置されている赤外線センサ8は、被加熱物7の底部分から放射され、天板2を透過した赤外線を捉え、その赤外線量に応じた出力を温度検出手段11に入力する。温度検出手段11は赤外線センサ8からの入力から被加熱物7の鍋底温度を検知する。
【0020】
ここで、接触式温度検知手段9と赤外線センサ8との温度検知の特性について説明する。
接触式温度検知手段9は、天板2の下面に接触して温度を検知しており、被加熱物7と接触式温度検知手段9との間には、数ミリの厚みを有した天板2を介している。
このため、接触式温度検知手段9による検出温度には、天板2によって所定の時定数を有することになる。
つまり、被加熱物7の温度が急激に上昇した場合には、実際の被加熱物7の温度と接触式温度検知手段9の検知温度とに温度差が生じることとなる。
【0021】
一方、赤外線センサ8は、非接触であり、天板2の時定数などを考慮する必要がなく応答性が速いというメリットがある。しかし、赤外線センサ8は、天板2を透過した赤外線を検知するため、天板2の透過特性の影響を受けることとなる。
この天板2の透過特性について図3、図4により説明する。
【0022】
図3はこの発明の実施の形態1に係る天板の透過率特性を示す図である。
図4は黒体放射と波長―温度の関係を示す図である。
図3においては、赤外線の波長と天板2を透過する割合との関係を示している。図3より、約4.5μm以上の波長の赤外線は透過率が低いことがわかる。
また、図4に示すように、温度検知の対象物の温度が上昇するほどピークとなる赤外線波長は短くなり、エネルギー量も増えていくことがわかる。
このことから、被加熱物7の温度が高いほど、被加熱物7から放射される赤外線の放射エネルギー量が大きくなり、天板2の透過率が高い波長の赤外線が被加熱物7から放射される。
一方、被加熱物7の温度が低いと、被加熱物7から放射される赤外線の放射エネルギー量は小さく、また、天板2の透過率が低くなる波長の長い赤外線が、被加熱物7から放射される。例えば、調理において低温度帯である100℃以下の温度帯の赤外線波長は、ほぼ透過しないのである。
【0023】
以上より、制御部12による温度制御においては、例えば保温動作などの低温度帯の温度検知には接触式温度検知手段9を用いる。
一方、発火等の危険を回避するため制御温度の検知には、応答性が良く高温度帯で温度検知が可能となる赤外線センサ8を用いる。
つまり、制御部12は、赤外線センサ8を主に高温度帯(例えば100℃以上)に用い、特に揚げ物などの油調理などにおいては360℃付近で自己発火温度に至るため、該温度に至る事のないよう、鍋検知温度が制御温度(例えば300℃)になると加熱を停止、もしくは低下するような制御を行っている。
【0024】
ところが、従来の技術においては、揚げ物や炒め物など、どのような調理がなされているか未知の状態で使用されており、調理の内容にかかわらず被加熱物7の温度が制御温度を超えた場合には加熱停止等の制御が行われる。
しかし、炒め物調理などは、実際に鍋底温度は高温度になっており、調理の仕上げ時などに水分を飛ばす際などは制御温度(例えば300℃)近傍またはそれ以上まで上昇させて調理を行う場合がある。
このような炒め物調理などの際に、赤外線センサ8が制御温度(例えば300℃)を検知し、制御部12が火力を停止もしくは低下してしまうと料理の仕上がりに不具合が生じてしまう。
【0025】
以下、このような不具合を回避して調理性能を向上させつつ、油などの調理においては高温度に至ることを回避して安全性を確保することができる本実施の形態1の動作について説明する。
【0026】
炒め物調理時では主に食材に含まれる水分を加熱していくのに対し、揚げ物などの油調理では水の約半分の比熱である油を用いており、同熱量を与えても加熱速度が速くなる。
このため、被加熱物7の温度上昇勾配を求めることで、被加熱物7が炒め物か揚げ物などの油調理かの判定を行うことが可能となる。
そして、油調理である場合には予め設定した制御温度により加熱を制限し、炒め物調理である場合には制限温度を上昇させることで加熱不足による調理の不具合を防止する。
したがって、制御部12は、赤外線センサ8により検知した高温度帯(所定温度以上)における、被加熱物7の温度上昇勾配に応じて、制御温度を変化させるように動作する。
以下、具体例を説明する。
【0027】
図5はこの発明の実施の形態1に係る計時時間と制御温度上昇の関係を示す図である。
図5に示すように、制御部12には、制御温度と同一の温度である第一の鍋検知温度(例えば300℃)と、この第一の鍋検知温度より低い第二の鍋検知温度(例えば200℃)とが予め設定されている。
【0028】
ここで、第二の鍋検知温度は、赤外線センサ8による温度検知が可能となる所定温度以上の高温度帯(少なくとも100℃以上)に設定する。
つまり、天板2において、被加熱物7が第二の鍋検知温度未満のときに放射される赤外線の透過量より、被加熱物7が第二の鍋検知温度以上のときに放射される赤外線の透過量が多くなるように、第二の鍋検知温度を設定する。
このように、赤外線センサ8による温度検知の精度が良い高温度帯で被加熱物7の温度を検知する。
【0029】
なお、「第一の鍋検知温度」は、本発明における「第1の所定温度」に相当する。
なお、「第二の鍋検知温度」は、本発明における「第2の所定温度」、「所定温度」に相当する。
【0030】
なお、ここでは第一の鍋検知温度が制御温度と同一の温度に設定された場合を説明するが、本発明はこれに限るものではなく、制御温度より低い温度を第一の鍋検知温度として予め設定しても良い。
【0031】
上記のような設定において、制御部12は、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度まで上昇する時間を計時し、この計時時間Δtに応じて制御温度を上昇させる。
例えば、制御部12は、計時時間Δtが所定値を超えたとき、計時時間Δtに応じて予め設定した上昇値を、制御温度に加算する。一例を図6により説明する。
【0032】
図6はこの発明の実施の形態1に係る制御温度変更テーブルである。
制御部12は、第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度までに要する時間である計時時間Δtと、制御温度の上昇値(制御温度上昇分)とのテーブルを予め記憶しておく。
例えば図6のように、計時時間Δtが30秒未満の場合は制御温度上昇分がゼロ、計時時間Δtが30秒以上60秒未満の場合は制御温度上昇分が30℃、計時時間Δtが60秒以上の場合は制御温度上昇分が60℃に設定する。
そして、制御部12は、計測した計時時間Δtに対応する制御温度上昇分を制御温度に加算して、当該制御温度を上昇させる。
【0033】
このように、計時時間Δtが所定値(30秒)より短かった場合は、高温度に至る速度が速く、すなわち温度上昇勾配が大きく、比熱の小さい油調理などであると判定し、発火の危険を回避するため、制御温度を上昇させず、予め設定した制御温度により火力を停止もしくは低下させる。
一方で、計時時間Δtが長い場合は、被加熱物7の加熱速度が遅く、すなわち温度勾配が小さいため、比熱の大きい炒め物調理であると判定し、制御温度を上昇させて仕上がりまで所望の火力で調理することを可能にしている。
このように、本実施の形態1では、計時時間Δtを計ることで炒め物か揚げ物などの油調理かの判定を行うことが可能となる。
【0034】
次に、本実施の形態1における加熱制御の動作を図7により具体的に説明する。
【0035】
図7はこの発明の実施の形態1に係る加熱制御を示すフローチャートである。
以下、図7の各ステップに基づき説明する。
【0036】
(S100)
使用者は、天板2上に被加熱物7を載置した後、操作部3より所望の火力を設定する(加熱指令)。
(S101)
使用者は、操作部3より加熱開始のスイッチを押下して加熱動作を開始させる。
(S102)
赤外線センサ8は、被加熱物7からの赤外線を捉える。温度検出手段11は赤外線センサ8からの入力から被加熱物7の温度を検知して制御部12へ出力する。
制御部12は、赤外線センサ8の出力から得られた温度を、鍋検知温度Tnとする。
(S103)
制御部12は、操作部3から入力された加熱指令に基づき、加熱コイル10の火力を制御して、加熱を開始させる(指令火力投入)。
【0037】
(S104)
制御部12は、鍋検知温度Tnが第二の鍋検知温度(200℃)を超えたか否かを判断する。
鍋検知温度Tnが第二の鍋検知温度(200℃)を超えていない場合は、ステップS103に戻り、加熱を継続する。
(S105)
一方、鍋検知温度Tnが第二の鍋検知温度(200℃)を超えた場合、制御部12は、タイマ・カウンタ13を起動し、加熱時間の計時を開始する。
(S106)
制御部12は、加熱指令に基づく加熱を継続する。
【0038】
(S107)
次に、制御部12は、鍋検知温度Tnが第一の鍋検知温度(300℃)を超えたか否かを判断する。
鍋検知温度Tnが第一の鍋検知温度(300℃)を超えていない場合は、ステップS106に戻り、加熱を継続する。
(S108)
一方、鍋検知温度Tnが第一の鍋検知温度(300℃)を超えた場合、制御部12は、タイマ・カウンタ13の計時を停止させ、タイマ積算時間である計時時間Δtを取得する。
【0039】
(S109)
次に、制御部12は、計時時間Δtが30秒以上であるか否かを判断する。
(S110)
計時時間Δtが30秒以上でない場合、制御部12は、予め設定されたテーブル(図6)を参照する。図6の例では、当該時間に対応する制御温度上昇分がゼロであるため、制御温度を現状のままとする。
ここでは、第一の鍋検知温度は制御温度と同一に設定しているため、鍋検知温度Tnが制御温度を超えることになる。このため、制御部12は、加熱コイル10の火力を所定量だけ低下させる。または、制御部12は、加熱コイル10の駆動を停止させる。
(S111)
一方、計時時間Δtが30秒以上の場合、制御部12は、予め設定されたテーブル(図6)を参照する。そして、このテーブルに応じて、当該時間に対応する制御温度上昇分αを制御温度に加算する。
【0040】
(S112)
制御部12は、加熱指令に基づく加熱を継続する。
(S113)
制御部12は、鍋検知温度Tnが上記ステップS111で更新した制御温度(300℃+α)を超えたか否かを判断する。
鍋検知温度Tnが制御温度(300℃+α)を超えていない場合は、ステップS112に戻り、加熱を継続する。
(S114)
一方、鍋検知温度Tnが制御温度(300℃+α)を超えた場合、制御部12は、加熱コイル10の火力を所定量だけ低下させる。または、制御部12は、加熱コイル10の駆動を停止させる。
【0041】
なお、本実施の形態1では、計時時間Δtと制御温度上昇分とが対応するテーブルを予め設定しておく場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、所定の演算式により計時時間Δtから制御温度上昇分を導出するようにしても良い。
また、加熱コイル10への投入火力と、計時時間Δtとの関係から、制御温度上昇分を導出しても良い。
【0042】
以上のように本実施の形態においては、第二の鍋検知温度(所定温度)以上における被加熱物7の温度上昇勾配に応じて、制御温度を変化させる。
このため、炒め物調理などの高温度を要する調理において料理の出来栄えを損なうことがなく、油調理などの発火の危険がある調理においては発火の危険を回避することができる。
したがって、使用者にとって、炒め物が途中で火力低下することなく、かつ、油が高温度になりすぎることのないような調理を実現でき、利便性・調理性が向上した加熱調理器を提供できる。
【0043】
また、加熱指令に基づき加熱コイル10の火力を制御し、被加熱物7の温度が制御温度を超えたとき、加熱コイル10の駆動を停止させ、または加熱コイル10の火力を所定量低下させる。
このため、赤外線センサ8を用いて応答性よく危険温度の回避を行うことができる。
【0044】
また、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度まで上昇する時間を計時し、該計時時間Δtに応じて制御温度を上昇させる。
このため、赤外線センサ8を用いて応答性よく危険温度の回避を行い、かつ、炒め物などの実際に鍋温度が高温度帯になる調理において制御が働き調理の出来栄えを損ねてしまうという不具合を回避することができる。
また、高温度帯における温度の上昇傾きを、タイマ・カウンタを用いて炒め物調理か揚げ物などの発火の危険性のある調理であるかを判別し、炒め物と判別した場合は火力制御をかける温度を上昇させることで、十分に食材に熱量が加わり所望の仕上がりを提供できる。
【0045】
また、計時時間Δtが所定値を超えたとき、計時時間Δtに応じて予め設定した上昇値を、制御温度に加算する。
このため、制御温度の上昇値を、食材の比熱に応じて適切に設定することができる。
また、食材に応じて適切な熱量が加わり所望の仕上がりを提供できる。
よって、炒め物調理において出来栄えを損なうことなく高火力調理をすることができ、炒め物ではなく揚げ物をしていた場合でも発火の危険を回避する安全性を有する。
【0046】
また、天板2は、被加熱物7が所定温度未満のときに放射される赤外線の透過量より、被加熱物7が所定温度以上のときに放射される赤外線の透過量が多い。
このため、天板2の透過特性上、赤外線センサ8にとって検知性能の高い温度帯で制御を行うことができ、精度良く温度検知を行うことが可能となる。
【0047】
実施の形態2.
被加熱物7の温度は、加熱コイル10への投入火力が大きいほどその温度上昇は早くなる。このため、本実施の形態2では、加熱コイル10への投入火力(指定火力)と、計時時間Δtとに応じて制御温度の上昇値を設定する形態について説明する。
【0048】
本実施の形態2における制御部12は、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度まで上昇する間における加熱コイル10の火力と、計時時間Δtとに応じて設定した上昇値のテーブルを予め記憶しておく。一例を図8および図9に示す。
なお、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0049】
図8および図9はこの発明の実施の形態2に係る制御温度変更テーブルである。
例えば図8のように、投入火力が大きい場合(例えば最大火力の半分以上)の制御温度上昇分と、投入火力が小さい場合(例えば最大火力の半分未満)の制御温度上昇分とを、計時時間Δtに応じてそれぞれ設定する。
または、例えば図9のように、投入火力が大きい場合(例えば最大火力の半分以上)の計時時間Δtと、投入火力が小さい場合(例えば最大火力の半分未満)の計時時間Δtとを、制御温度上昇分に応じてそれぞれ設定する。
例えば、火力が小さい場合に、火力が大きい場合と同等の計時時間となる場合には、比熱が小さく加熱速度が速い調理であるため、火力が大きい場合より火力が小さい場合を、制御温度の上昇分が小さくなるように設定する。
【0050】
このような設定において、制御部12は、上記実施の形態1(図7)と同様の動作により、計時時間Δtを計時し(S100〜S108)、計時時間Δtと投入火力とに応じた制御温度上昇分αを制御温度に加算する(S109、S111)。以降の動作は上記実施の形態1と同様である。
【0051】
以上のように本実施の形態においては、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度まで上昇する間における加熱コイル10の火力と、計時時間とに応じて予め設定した上昇値を、制御温度に加算する。
このため、上記実施の形態1の効果に加え、加熱コイル10への投入火力と、被加熱物7の温度上昇速度との相関を考慮した制御を実現することが可能となる。
よって、制御温度の上昇値を、食材の比熱に応じて適切に設定することができる。
したがって、食材に応じて適切な熱量が加わり所望の仕上がりを提供でき、炒め物調理において出来栄えを向上することができる。
【0052】
実施の形態3.
上述したように、被加熱物7の温度上昇は投入火力と相関する。本実施の形態3では、加熱コイル10への投入火力(指定火力)の変更有無と、計時時間Δtとに応じて制御温度の上昇値を設定する形態について説明する。
【0053】
本実施の形態3における制御部12は、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度まで上昇する間における加熱コイル10の火力変更の有無と、計時時間Δtとに応じて予め設定した上昇値のテーブルを予め記憶しておく。一例を図10に示す。
なお、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0054】
図10はこの発明の実施の形態3に係る制御温度変更テーブルである。
例えば図10のように、計時時間Δtを計時中における、加熱コイル10への投入火力の変更が無いときの制御温度上昇分と、投入火力の変更が有るときの制御温度上昇分とを、計時時間Δtに応じてそれぞれ設定する。例えば、火力を低下する変更をした場合は、制御温度の上昇値が小さいテーブルを用いる。
例えば、火力を低下させた場合に、火力を変更しない場合と同等の計時時間となる場合には、比熱が小さく加熱速度が速い調理であるため、火力を変更しない場合より火力を低下させた場合を、制御温度の上昇分が小さくなるように設定する。
【0055】
このような設定において、制御部12は、上記実施の形態1(図7)と同様の動作により、計時時間Δtを計時し(S100〜S108)、この計時時間Δtと、計時中での投入火力の変更有無とに応じた制御温度上昇分αを制御温度に加算する(S109、S111)。以降の動作は上記実施の形態1と同様である。
【0056】
以上のように本実施の形態においては、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度まで上昇する間における加熱コイル10の火力変更の有無と、計時時間とに応じて予め設定した上昇値を、制御温度に加算する。
このため、上記実施の形態1の効果に加え、加熱コイル10への投入火力と、被加熱物7の温度上昇速度との相関を考慮した制御を実現することが可能となる。
よって、制御温度の上昇値を、食材の比熱に応じて適切に設定することができる。
したがって、食材に応じて適切な熱量が加わり所望の仕上がりを提供でき、炒め物調理において出来栄えを向上することができる。
【0057】
実施の形態4.
本実施の形態4では、上記実施の形態1〜3の何れかの動作に加え、被加熱物7の温度が制御温度を超えて火力低下または停止をしたあと、被加熱物7の温度が低下した場合に、調理を継続する形態について説明する。
【0058】
図11はこの発明の実施の形態4に係る鍋検知温度と投入電力との関係を示す図である。
図11の上段は、赤外線センサ8により検知された鍋検知温度と、運転時間との関係を示している。
また、図11の下段は、加熱コイル10への投入電力(指令火力)と、運転時間との関係を示している。
図11に示すように、本実施の形態4における制御部12は、制御温度(例えば300℃)より低い復帰温度(例えば230℃)が予め設定されている。
なお、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0059】
このような構成により、本実施の形態4の制御部12は、上記実施の形態1〜3の何れかと同様の動作を行い、制御温度を超えたとき、加熱コイル10の火力を低下、または駆動を停止させる。
これにより、被加熱物7の温度は低下し、これに伴い赤外線センサ8による鍋検知温度も低下する。
制御部12は、被加熱物7の温度が復帰温度を下回った場合、加熱コイル10の火力を、操作部3から入力された加熱指令に基づく火力に復帰させる。
そして、再び被加熱物7の温度が制御温度を超えたとき、加熱コイル10の火力を低下、または駆動を停止させる。
なお、再度の加熱における制御温度は、計時時間Δtにより上昇させた際の制御温度(300+α℃)とする。
【0060】
これにより、図11に示すように、被加熱物7の温度(鍋検知温度)は、復帰温度と制御温度との間の温度に維持され、調理が継続される。
【0061】
以上のように本実施の形態においては、被加熱物7の温度が制御温度を超え、加熱コイル10の駆動を停止させまたは加熱コイル10の火力を所定量低下させたあと、被加熱物7の温度が復帰温度を下回った場合、加熱コイル10の火力を、加熱指令に基づく火力に復帰させる。
このため、上記実施の形態1〜3の効果に加え、被加熱物7の温度が低下した場合でも、調理を継続することが可能となる。
【0062】
実施の形態5.
本実施の形態5では、上記実施の形態4の動作に加え、制御温度を上昇させたとき、当該上昇させた温度を復帰温度に加算する形態について説明する。
【0063】
図12はこの発明の実施の形態5に係る鍋検知温度と投入電力との関係を示す図である。
図12の上段は、赤外線センサ8により検知された鍋検知温度と、運転時間との関係を示している。
また、図12の下段は、加熱コイル10への投入電力(指令火力)と、運転時間との関係を示している。
図12に示すように、本実施の形態5における制御部12は、制御温度(例えば300℃)より低い復帰温度(例えば230℃)が予め設定されている。
なお、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0064】
このような構成により、本実施の形態5の制御部12は、上記実施の形態1〜3の何れかと同様の動作を行い、計時時間Δt等に応じて、予め設定した制御温度に制御温度上昇分を加算する。
さらに、制御部12は、制御温度を上昇させたとき、当該上昇させた温度を復帰温度に加算する。例えば、制御温度上昇分αが30℃の場合、この温度を復帰温度に加算する(例えば230℃+α)。
【0065】
そして、制御温度を超えたとき、加熱コイル10の火力を低下、または駆動を停止させる。
これにより、被加熱物7の温度は低下し、これに伴い赤外線センサ8による鍋検知温度も低下する。
制御部12は、被加熱物7の温度が、制御温度上昇分αが加算された復帰温度(例えば230℃+α)を下回った場合、加熱コイル10の火力を、操作部3から入力された加熱指令に基づく火力に復帰させる。
そして、再び被加熱物7の温度が制御温度を超えたとき、加熱コイル10の火力を低下、または駆動を停止させる。
なお、再度の加熱における制御温度は、計時時間Δtにより上昇させた際の制御温度(300+α℃)とする。
【0066】
これにより、図12に示すように、被加熱物7の温度(鍋検知温度)は、復帰温度と制御温度との間の温度に維持され、調理が継続される。
【0067】
以上のように本実施の形態においては、制御温度を上昇させたとき、当該上昇させた温度を復帰温度に加算する。
このため、炒め物などの鍋温度が高温度帯になる調理である場合には、復帰温度を上昇させることが可能となる。
したがって、食材に応じて適切な熱量が加わり所望の仕上がりを提供でき、炒め物調理において出来栄えを向上することができる。
【0068】
実施の形態6.
本実施の形態6では、上記実施の形態4または5の動作に加え、復帰温度を下回った場合に、指令の火力に復帰させるとき、加熱コイル10の火力を段階的に上昇させる形態について説明する。
【0069】
図13はこの発明の実施の形態6に係る鍋検知温度と投入電力との関係を示す図である。
図13の上段は、赤外線センサ8により検知された鍋検知温度と、運転時間との関係を示している。
また、図13の下段は、加熱コイル10への投入電力(指令火力)と、運転時間との関係を示している。
本実施の形態6の制御部12には、上記実施の形態4または5と同様に、復帰温度が予め設定されている。
なお、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0070】
本実施の形態6の制御部12は、上記実施の形態1〜3の何れかと同様の動作を行い、制御温度を超えたとき、加熱コイル10の火力を低下、または駆動を停止させる。
これにより、被加熱物7の温度は低下し、これに伴い赤外線センサ8による鍋検知温度も低下する。
制御部12は、被加熱物7の温度が復帰温度を下回った場合、加熱コイル10の火力を、操作部3から入力された加熱指令に基づく火力に復帰させる。
このとき、制御部12は、加熱コイル10の火力を段階的に上昇させる。例えば、所定時間毎に、所定電力だけ上昇させて最終的に加熱指令に基づく火力に復帰させる。
【0071】
そして、再び被加熱物7の温度が制御温度を超えたとき、加熱コイル10の火力を低下、または駆動を停止させる。
なお、再度の加熱における制御温度は、計時時間Δtにより上昇させた際の制御温度(300+α℃)とする。
【0072】
これにより、図13に示すように、被加熱物7の温度(鍋検知温度)は、復帰温度と制御温度との間の温度に維持され、調理が継続される。また、加熱の復帰時には鍋検知温度は緩やかに上昇することになる。
【0073】
以上のように本実施の形態においては、加熱コイル10の火力を、加熱指令に基づく火力に復帰させるとき、加熱コイル10の火力を段階的に上昇させる。
このため、上記実施の形態4または5の効果に加え、急激な温度上昇による焦げ付きや調理仕上がりの失敗などを抑えることが可能となる。
【0074】
実施の形態7.
本実施の形態7では、上記実施の形態1〜6の何れかの動作により、制御温度を上昇させた場合に、突発的な温度上昇により、焦げ付きなどの料理の仕上がりに不具合が生じることを防止する形態について説明する。
なお、本実施の形態7における構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0075】
本実施の形態7における制御部12は、制御温度を上昇させたあと、すなわち予め設定した制御温度(例えば300℃)を超え加熱を継続している際に、被加熱物7の単位時間当たりの温度上昇値が所定値以上となったとき、加熱コイル10の駆動を停止させ、または加熱コイル10の火力を所定量低下させる。
具体例を図14により説明する。
【0076】
図14はこの発明の実施の形態7に係る加熱制御を示すフローチャートである。
以下、図14の各ステップに基づき、上記実施の形態1(図7)との相違点を中心に説明する。
なお、上記実施の形態1(図7)と同一のステップには同一のステップ番号を付する。
【0077】
(S201)
上記実施の形態1と同様にS100〜S112を実施した後、制御部12は、被加熱物7の単位時間当たりの温度上昇値として、鍋検知温度の毎秒の差分を得る。例えば制御部12は、一秒前の鍋検知温度Tn(t−1)と、現在の鍋検知温度Tn(t)とを取得し、この差分[Tn(t)―Tn(t−1)]を温度傾きとして求める。
なお、ここでは一秒間での傾きを求める場合を説明するが、本発明はこれに限らず、任意の時間により単位時間当たりの温度上昇値を求めるようにしても良い。
【0078】
(S202)
次に、制御部12は、求めた温度傾き[Tn(t)―Tn(t−1)]が、予め設定しておいた所定値βよりも大きいか否かを判断する。
【0079】
(S203)
温度傾き[Tn(t)―Tn(t−1)]が所定値βよりも大きい場合、制御部12は、被加熱物7内の食材等が焦げ付きだしたと判断し、加熱コイル10の火力を所定量だけ低下させ、または、加熱コイル10の駆動を停止させる。
このあと、上記実施の形態4〜6と同様に、復帰温度まで温度が低下したときには、再度加熱を復帰させるようにしても良い。この場合、復帰温度を所定値だけ低下させて、予め設定された復帰温度より低い温度で加熱を復帰させるようにしても良い。これにより、焦げ付きが生じるような急激な加熱が生じた場合には、より低い温度で加熱を復帰させることができる。
【0080】
なお、ステップS203の動作に加え、またはこれに代えて、制御部12は表示部4により、焦げ付きが発生している旨の情報を報知させるようにしても良い。また、例えばスピーカーやブザーなどにより警報メッセージや警報音を発するようにしても良い。
【0081】
(S204)
一方、温度傾き[Tn(t)―Tn(t−1)]が所定値βよりも大きくない場合、制御部12は、鍋検知温度Tnが上記ステップS111で更新した制御温度(300℃+α)を超えたか否かを判断する。
鍋検知温度Tnが制御温度(300℃+α)を超えていない場合は、ステップS112に戻り、上記の動作を繰り返す。
【0082】
(S114)
ステップS204で、鍋検知温度Tnが制御温度(300℃+α)を超えた場合、制御部12は、加熱コイル10の火力を所定量だけ低下させ、または、加熱コイル10の駆動を停止させる。
【0083】
以上のように本実施の形態においては、制御温度を上昇させたあと、被加熱物7の単位時間当たりの温度上昇値が所定値以上となったとき、加熱コイル10の駆動を停止させ、または加熱コイル10の火力を所定量低下させる。
このため、上記実施の形態1〜6の効果に加え、被加熱物7の焦げ付きの発生を検知することで、制御温度を上昇させた場合に、突発的な温度上昇により焦げ付きなどの料理の仕上がりに不具合が生じることを防止することができる。
また、焦げ付き発生の検知は、第二の鍋検知温度以上の高温度帯で動作させるため、低温度帯での突発的な温度上昇を焦げ付きとして誤検知することがなく、焦げ付きの検知として有効な手段となる。
【0084】
なお、上記実施の形態1〜7では、被加熱物7の温度上昇勾配を、第二の鍋検知温度から第一の鍋検知温度に上昇するまでの計時時間Δtにより求めたが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、被加熱物7の温度が第二の鍋検知温度を超えた後、所定時間における温度上昇値を求め、高温度帯における被加熱物7の温度上昇勾配を求めるようにしても良い。この場合には、当該所定時間での温度上昇値と、制御温度上昇分との関係をテーブル等により設定する。
【符号の説明】
【0085】
1 本体、2 天板、3 操作部、4 表示部、5 排気口、6 吸気口、7 被加熱物、8 赤外線センサ、9 接触式温度検知手段、10 加熱コイル、11 温度検出手段、12 制御部、13 タイマ・カウンタ、14 高周波インバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記被加熱物から放射された赤外線を検出する赤外線検知手段と、
前記赤外線検知手段の検出値から前記被加熱物の温度を求める温度検出手段と、
加熱指令を入力させる操作部と、
前記加熱指令に基づき前記加熱手段の火力を制御し、前記被加熱物の温度が制御温度を超えたとき、前記加熱手段の駆動を停止させ、または前記加熱手段の火力を所定量低下させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
所定温度以上における前記被加熱物の温度上昇勾配に応じて、前記制御温度を変化させる
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記制御温度と同一または前記制御温度より低い第1の所定温度と、前記第1の所定温度より低く前記所定温度以上の第2の所定温度とが予め設定され、
前記被加熱物の温度が前記第2の所定温度から前記第1の所定温度まで上昇する時間を計時し、該計時時間に応じて前記制御温度を上昇させる
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記計時時間が所定値を超えたとき、
前記計時時間に応じて予め設定した上昇値を、前記制御温度に加算する
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記被加熱物の温度が前記第2の所定温度から前記第1の所定温度まで上昇する間における前記加熱手段の火力と、前記計時時間とに応じて予め設定した上昇値を、前記制御温度に加算する
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記被加熱物の温度が前記第2の所定温度から前記第1の所定温度まで上昇する間における前記加熱手段の火力変更の有無と、前記計時時間とに応じて予め設定した上昇値を、前記制御温度に加算する
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御部は、前記制御温度より低い復帰温度が予め設定され、
前記被加熱物の温度が前記制御温度を超え、前記加熱手段の駆動を停止させまたは前記加熱手段の火力を所定量低下させたあと、前記被加熱物の温度が前記復帰温度を下回った場合、前記加熱手段の火力を、前記加熱指令に基づく火力に復帰させる
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記制御部は、
前記制御温度を上昇させたとき、当該上昇させた温度を前記復帰温度に加算する
ことを特徴とする請求項6記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御部は、
前記加熱手段の火力を、前記加熱指令に基づく火力に復帰させるとき、
前記加熱手段の火力を段階的に上昇させる
ことを特徴とする請求項6または7記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記制御部は、
前記制御温度を上昇させたあと、前記被加熱物の単位時間当たりの温度上昇値が所定値以上となったとき、
前記加熱手段の駆動を停止させ、または前記加熱手段の火力を所定量低下させる
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−24205(P2012−24205A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164230(P2010−164230)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】