説明

加熱調理装置

【課題】調理釜の底板部の温度ムラを防止でき、適切な加熱調理ができる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】加熱調理装置1は、調理釜3の底板部5の略全体を覆うように配設した断熱部材41と、底板部5の中央付近に配設した表面燃焼バーナ22とを備える。断熱部材41は、調理釜3の底板部5に略沿った形状で底板部5と間隙を介して近接対向する対向面部44を有する。対向面部44には、表面燃焼バーナ22からの熱気が入る凹溝45を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理釜の底板部の温度ムラを防止でき、適切な加熱調理ができる加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された炊飯釜である加熱調理装置が知られている。
【0003】
この従来の加熱調理装置は、調理釜と、調理釜を支持する釜本体と、釜本体内に向けられたバーナからの噴射炎を反転させる炎反転手段とを備えている。また、炎反転手段は、バーナからの噴射炎を受け入れる開口部と、開口部に対向して斜め上向きに配置された反転板部と、拡散孔が形成され斜め上向きに反転板部に連設された天板部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−40219号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の加熱調理装置では、調理釜の底板部下方の加熱室が比較的広いため、その加熱室でのバーナからの噴射炎による熱気の流れが不安定で、調理釜の底板部に温度ムラが生じやすく、適切な加熱調理ができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、調理釜の底板部の温度ムラを防止でき、適切な加熱調理ができる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の加熱調理装置は、調理釜と、この調理釜の底板部の略全体を覆うように配設された断熱部材と、前記底板部の中央付近に配設された加熱手段とを備え、前記断熱部材は、前記底板部に略沿った形状でこの底板部と間隙を介して近接対向する対向面部と、この対向面部に形成され、前記加熱手段からの熱気が入る凹溝とを有するものである。
【0008】
請求項2記載の加熱調理装置は、請求項1記載の加熱調理装置において、凹溝は、対向面部の中心を基準として同心状に位置する複数の環状凹溝部を有するものである。
【0009】
請求項3記載の加熱調理装置は、請求項2記載の加熱調理装置において、凹溝は、互いに隣り合う環状凹溝部同士を連通させる連通部を有するものである。
【0010】
請求項4記載の加熱調理装置は、請求項3記載の加熱調理装置において、断熱部材は、最小の環状凹溝部より小さくこの最小の環状凹溝部と同心状に位置しかつこの最小の環状凹溝部に収納連通部を介して連通された環状収納部を有し、加熱手段は、前記環状収納部に収納配設された環状の燃焼面形成部材を有する表面燃焼バーナであるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、調理釜の底板部の略全体を覆うように配設された断熱部材は底板部に略沿った形状でこの底板部と間隙を介して近接対向する対向面部とこの対向面部に形成され加熱手段からの熱気が入る凹溝とを有するため、加熱手段からの熱気で調理釜の底板部の略全体が均一に加熱され、調理釜の底板部の温度ムラを防止でき、適切な加熱調理ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、凹溝は対向面部の中心を基準として同心状に位置する複数の環状凹溝部を有するため、調理釜の底板部の温度ムラを効果的に防止でき、より適切な加熱調理ができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、凹溝は互いに隣り合う環状凹溝部同士を連通させる連通部を有するため、熱気が環状凹溝部に長時間停滞することがなく、調理釜の底板部の略全体を均一に効率的に加熱できる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、断熱部材の環状収納部に収納配設された環状の燃焼面形成部材を有する表面燃焼バーナを用いて効率よく適切な加熱調理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加熱調理装置の正面図である。
【図2】同上加熱調理装置の平面図である。
【図3】同上加熱調理装置の側面図である。
【図4】同上加熱調理装置の断熱部材の平面図である。
【図5】断熱部材のA−A断面図である。
【図6】断熱部材のB−B断面図である。
【図7】断熱部材の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の加熱調理装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図3において、1は加熱調理装置で、この加熱調理装置1は食材等の被加熱物(図示せず)を加熱調理するための業務用回転釜(高効率ガス回転釜)である。
【0018】
加熱調理装置1は、略円形状の上面開口2を有する略半球殻状の調理釜3と、調理釜3の上面開口2を開閉する蓋4とを備えている。調理釜3および蓋4は、いずれも例えば耐熱性を有する金属材料にて構成されている。
【0019】
調理釜3は、球面の一部に沿った略球冠状で略円形椀状の底板部5と、底板部5の外周端に上方に向って一体に突設され上方に向って拡径する略截頭円錐筒状の側板部6と、側板部6の上端に外側方に向って一体に突設された鍔部7とを有している。側板部6の下端側は他の部分に比べて小さな曲率半径で湾曲し、側板部6の下端と底板部5の外周端とが滑らかに連続している。
【0020】
底板部5の中央部には略円形状の排水口9が形成され、排水口9が脱着可能な排水栓10にて開閉可能に閉鎖されている。排水口9の周縁部から接続筒部11が下方に向って一体に突出し、接続筒部11の内周側には排水管12の上端部の外周側が螺合接続されている。
【0021】
加熱調理装置1は、調理釜3を脱着可能に支持する支持手段である釜支持体21と、釜支持体21に設けられ調理釜3の底板部5の中央付近にその底板部5の中央部下方近傍に位置するように配設され被加熱物を加熱するための加熱手段である表面燃焼バーナ22とを備えている。
【0022】
そして、調理釜3と釜支持体21との間には強制燃焼装置である表面燃焼バーナ22からの熱気(高温の燃焼ガス等)が充満する加熱用空間部である加熱室(燃焼室)23が位置する。また、調理釜3の一側方には加熱室23から熱気を排出するための排気口24が位置し、この排気口24から流出した熱気は支軸を兼ねた略円筒状の排気管25内および排気ダクト26内を順次流れて外部に排出される。
【0023】
釜支持体21は、互いに離間対向する一方側支持フレーム31および他方側支持フレーム32にて水平方向の軸線を中心として上下方向に回動可能に支持されている。つまり釜支持体21は一方側に支軸33を有し、この支軸33が一方側支持フレーム31の軸受部34にて回動可能に軸支され、また釜支持体21の排気管25が他方側支持フレーム32の軸受部35にて回動可能に軸支されている。
【0024】
他方側支持フレーム32には、排気管25に連通された排気ダクト26が固設されている。また、他方側支持フレーム32には操作ハンドル36が設けられ、この操作ハンドル36の回動操作により釜支持体21が支軸33および排気管25を中心として上下方向に回動する。また、釜支持体21は鍔支持部37を有し、この鍔支持部37にて調理釜3の鍔部7が載置支持されている。
【0025】
さらに、釜支持体21は、図1、図4ないし図7に示すように、調理釜3の下方近傍位置に調理釜3の底板部5の略全体を覆うように配設された略円形状の断熱手段である断熱部材41を有している。断熱部材41は、例えば断熱性を有する材料(セラミックファイバー等)にて構成された成型品で、略筒状の外ケース部材42内に収納配設されている。
【0026】
断熱部材41は、調理釜3の底板部5の下面に略沿った形状に形成され底板部5と間隙40を介して非接触状態で近接対向する対向面部44を上面部に有している。そして、この対向面部44には、表面燃焼バーナ22からの熱気が入りこの入った熱気を底板部5の略全体にわたって蛇行流動するように底板部5の中央付近から底板部5の外周端側つまり調理釜3の側方周囲に向けて誘導する凹溝45が形成されている。
【0027】
なお、図4上、右上り斜線で示した部分が凹溝45であり、この凹溝45の溝底面積は調理釜3の底板部5の面積の略半分程度である。
【0028】
そして、対向面部44の凹溝45は、調理釜3の底板部5の中心を通る上下方向の中心軸線上の対向面部44の中心Oを基準として同心状に等間隔をおいて位置する複数の断面矩形状の環状凹溝部、すなわち例えば径寸法がそれぞれ異なる円形環状の第1環状凹溝部51、第2環状凹溝部52および第3環状凹溝部53を有し、これら3つの環状凹溝部51,52,53はそれぞれ異なる高さに位置し、外周側の第3環状凹溝部53ほど高い位置にある。
【0029】
また、互いに隣り合う第1環状凹溝部51および第2環状凹溝部52同士は、複数、例えば互いに離間対向する左右1対の凹溝状の連通部である第1連通部56にて連通されている。つまり、第1環状凹溝部51および第2環状凹溝部52間に位置する対向面部44の凸部分61に2つの第1連通部56が周方向に180度間隔で切欠形成され、これら第1連通部56を介して第1環状凹溝部51と第2環状凹溝部52とが2箇所で連通されている。
【0030】
同様に、互いに隣り合う第2環状凹溝部52および第3環状凹溝部53同士は、複数、例えば互いに離間対向する前後1対の凹溝状の連通部である第2連通部57にて連通されている。つまり、第2環状凹溝部52および第3環状凹溝部53間に位置する対向面部44の凸部分62に2つの第2連通部57が周方向に180度間隔で第1連通部56に対して90度ずれて位置するように切欠形成され、これら第2連通部57を介して第2環状凹溝部52と第3環状凹溝部53とが2箇所で連通されている。
【0031】
また、断熱部材41は、径寸法が最小の第1環状凹溝部51より径寸法が小さくこの第1環状凹溝部51と同心状に位置しかつこの第1環状凹溝部51に複数、例えば互いに離間対向する前後1対の凹溝状の収納連通部58を介して連通された円形環状の環状収納部55を有している。つまり、断熱部材41の中央部近傍には環状収納部55が上下面に貫通して形成され、また環状収納部55および第1環状凹溝部51間に位置する対向面部44の凸部分63に2つの収納連通部58が周方向に180度間隔で第1連通部56に対して90度ずれて位置するように切欠形成され、これら収納連通部58を介して環状収納部55と第1環状凹溝部51とが2箇所で連通されている。
【0032】
なお、断熱部材41の中央部には貫通孔部59が上下面に貫通して形成され、この貫通孔部59に調理釜3の底板部5の接続筒部11が嵌脱可能に嵌入されている。また、調理釜3の底板部5の下面と断熱部材41の対向面部44の上面との間の間隙40の寸法Aは、例えば5〜10mmである(図7参照)。
【0033】
表面燃焼バーナ22は、例えば2次空気を必要としないメタルニットバーナ等で、上面が燃焼面となる円形環状で筒状の燃焼面形成部材66を有している。燃焼面形成部材66は、例えばニット状に編んだ耐熱金属繊維等からなり、断熱部材41の環状収納部55に収納配設されている。また、燃焼面形成部材66の一部から筒状部材67が下方に向って突出し、この筒状部材67に混合ガス供給管(図示せず)が接続されている。そして、燃料ガスと空気とが混合した混合ガスが混合ガス供給管から燃焼面形成部材66内に供給され、スパークロッド68が火花を発生すると、混合ガスが燃焼して高温の燃焼ガスである熱気が発生し、この熱気が加熱室23に供給され、この熱気で調理釜3が加熱される。
【0034】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0035】
表面燃焼バーナ22の点火により燃焼ガスである熱気が加熱室23に供給されると、加熱室23に熱気が充満し、その熱気からの熱で調理釜3が加熱され、調理釜3内の被加熱物の加熱調理が行われる。
【0036】
この加熱調理時に、表面燃焼バーナ22の燃焼面形成部材66からの熱気は、加熱室23を流れ、調理釜3との熱交換後、排気口24から加熱室23外へ流出し、その後、排気管25内および排気ダクト26内を順次流れて外部に排出される。
【0037】
この際、加熱室23内において、表面燃焼バーナ22の燃焼面形成部材66からの熱気の一部は、環状収納部55、収納連通部58、第1環状凹溝部51、第1連通部56、第2環状凹溝部52、第2連通部57および第3環状凹溝部53を順次流れることにより、底板部5の中央付近から底板部5の外周端側に向って底板部5の略全体にわたるように蛇行流動した後、排気口24から加熱室23外へ排出される。また、熱気の一部は間隙40を流れて底板部5の中央付近から底板部5の外周端側に向って流動する。つまり、各環状凹溝部51,52,53内を停滞することなく漂うように流動している熱気によって、環状凹溝部51,52,53と対向している調理釜3の底板部5への伝熱が行われ、また凸部分61,62,63に位置する間隙40では、加熱室23から排気口24に向けて早く擦り抜けようと流動する熱気によって伝熱が行われる。こうして、熱気の熱が調理釜3の底板部5の略全体に均一に伝わり、底板部5が所望温度まで加熱される。
【0038】
したがって、このような加熱調理装置1によれば、被加熱物の加熱調理時に、調理釜3の底板部5の略全体を均一に加熱できるため、調理釜3の底板部5の温度ムラを効果的に防止でき、よって適切な加熱調理ができる。
【0039】
また、表面燃焼バーナ22からの熱気をそれぞれ異なる流れ方が生じる凹溝45および間隙40を通して底板部5の中央付近から底板部5の外周端側に向けてスムーズかつ漂うように流動させることで、熱気が環状凹溝部51,52,53に長時間停滞することもなく、熱気の熱を調理釜3の底板部5に効率的に伝えることができるため、熱効率が良好で、ガス消費量を抑えることができ、しかも、安定した燃焼状態が確保され、ガスの不完全燃焼も生じない。
【0040】
なお、上記実施の形態では、凹溝45は、すべての環状凹溝部51,52,53に関して互いに隣り合う環状凹溝部51,52,53同士を連通させる連通部56,57を有する構成について説明したが、例えば連通部56,57がなく、互いに隣り合う環状凹溝部51,52,53同士が直接連通してない構成等でもよい。
【0041】
また、同心状に位置する環状凹溝部の数は、3つには限定されず、例えば2つ或いは4つ以上でもよい。
【0042】
さらに、互いに隣り合う環状凹溝部同士を連通させる連通部の数は、互いに離間対向する2つには限定されず、例えば120度間隔の3つや、90度間隔の4つ等でもよい。
【0043】
また、対向面部44の凹溝45は、熱気を蛇行流動させるものには限定されず、例えば対向面部44に形成された渦巻き状の溝で熱気を渦巻き流動させるもの等でもよい。
【0044】
さらに、対向面部44の凹溝45は、対向面部44の中心Oを基準として同心状に位置し周方向に延びる複数の環状凹溝部を有するものには限定されず、例えば対向面部44の中心Oを基準として放射状に位置し径方向に延びる複数の環状凹溝部を有するもの等でもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱調理装置
3 調理釜
5 底板部
22 加熱手段である表面燃焼バーナ
40 間隙
41 断熱部材
44 対向面部
45 凹溝
51 環状凹溝部である第1環状凹溝部
52 環状凹溝部である第2環状凹溝部
53 環状凹溝部である第3環状凹溝部
55 環状収納部
56 連通部である第1連通部
57 連通部である第2連通部
58 収納連通部
66 燃焼面形成部材
O 対向面部の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理釜と、
この調理釜の底板部の略全体を覆うように配設された断熱部材と、
前記底板部の中央付近に配設された加熱手段とを備え、
前記断熱部材は、
前記底板部に略沿った形状でこの底板部と間隙を介して近接対向する対向面部と、
この対向面部に形成され、前記加熱手段からの熱気が入る凹溝とを有する
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
凹溝は、対向面部の中心を基準として同心状に位置する複数の環状凹溝部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
凹溝は、互いに隣り合う環状凹溝部同士を連通させる連通部を有する
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理装置。
【請求項4】
断熱部材は、最小の環状凹溝部より小さくこの最小の環状凹溝部と同心状に位置しかつこの最小の環状凹溝部に収納連通部を介して連通された環状収納部を有し、
加熱手段は、前記環状収納部に収納配設された環状の燃焼面形成部材を有する表面燃焼バーナである
ことを特徴とする請求項3記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187914(P2010−187914A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35376(P2009−35376)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【出願人】(509046631)株式会社アイホークリエイツ (2)
【出願人】(000147257)株式会社正英製作所 (11)
【Fターム(参考)】