説明

加熱部材、定着装置、ならびに該定着装置を備える画像形成装置

【課題】 絶縁層および抵抗発熱体からなる発熱層が積層された発熱部材を有する加熱部材であって、加熱部材を構成する部材間で局部的な剥離が発生するのが防止されて、局部的な伝熱効率の低下が発生するのが防止され、表面の温度分布が設定温度に対してばらつきのない加熱部材を提供する。
【解決手段】 加熱部材20は、放熱部材201と、低硬度良熱伝導部材202と、発熱部材203と、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する押圧部材204とを含む。そして、放熱部材201は、円筒体の一部を成す筒状に形成される筒状部201aと、筒状部201aの周方向両端部から内側に屈曲する屈曲片201bとを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電によって発熱する抵抗発熱体からなる発熱層を有する加熱部材、および該加熱部材を用いてトナー像を記録媒体に定着させる定着装置、ならびに該定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなどの電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、熱ローラ定着方式の定着装置が多用されている。熱ローラ定着方式の定着装置は、互いに圧接されたローラ対(定着ローラおよび加圧ローラ)を備え、このローラ対の両方あるいはいずれか一方の内部に配置されたハロゲンヒーターなどからなる加熱手段によってローラ対を所定の温度(定着温度)に加熱した後、未定着トナー像が形成された記録紙などの記録媒体をローラ対の圧接部(定着ニップ部)に給紙し、圧接部を通過させることで、熱と圧力によって記録紙にトナー像の定着を行うようになっている。
【0003】
ところで、カラー画像形成装置に備えられる定着装置においては、定着ローラ表層にシリコンゴムなどからなる弾性層を設けた弾性ローラを用いることが一般的である。定着ローラを弾性ローラとすることで、定着ローラ表面が、未定着トナー像の凸凹に対応して弾性変形し、トナー像面を覆い包むように接触するため、モノクロに比べてトナー量の多いカラーの未定着トナー像に対して良好に加熱定着を行うことが可能となる。また、定着ローラとして弾性ローラを用いるカラー画像形成装置は、定着ニップ部での弾性層の歪開放効果によって、モノクロに比べてオフセットしやすいカラートナーに対して離型性を向上することができる。さらに、前記カラー画像形成装置は、定着ニップ部のニップ形状が上(定着ローラ側)に凸(所謂、逆ニップ形状)となることから、記録紙の剥離性能を向上させることができ、剥離爪などの剥離手段を用いずとも記録紙の剥離が可能となり(セルフストリッピング)、剥離手段に起因する画像欠陥を解消することができる。
【0004】
ところで、高速化に対応したカラー画像形成装置とするためには、カラー画像形成装置に備えられる定着装置は、ニップ幅の広い定着ニップ部が形成されるように構成される必要がある。定着ニップ部のニップ幅を広くする方法としては、定着ローラの弾性層の層厚を厚くすることや、定着ローラ径を大きくするなどの方法が挙げられる。しかしながら、定着ローラが有する弾性層は、熱伝導性が非常に低いので、定着ローラ内部に加熱手段がある場合、定着ローラの表面温度が、プロセス速度の高速化に追従しなくなる問題が発生する。一方、定着ローラ径を大きくした場合、定着ローラの表面温度が定着温度に到達するまでのウォームアップ時間が長くなったり、消費電力が増大するといった問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決するカラー画像形成装置に備えられる定着装置として、特許文献1には、ベルト定着方式の定着装置が開示されている。ベルト定着方式の定着装置は、定着ローラと加熱ローラとの間に懸架される定着ベルトと、定着ベルトを介して定着ローラに対向するように配置される加圧ローラとを含んで構成され、加熱ローラの内部に配置される熱源により定着ベルトを加熱するようになっている。ベルト定着方式の定着装置では、定着ローラが定着ベルトを介して加圧ローラと圧接する圧接部分に、定着ニップ部が形成される。このようなベルト定着方式の定着装置は、熱容量が小さい定着ベルトを加熱するように構成されているので、定着ベルトの表面温度が定着温度に到達するまでのウォームアップ時間を短くすることができる。また、ベルト定着方式の定着装置は、定着ローラの内部にハロゲンランプなどの加熱手段を配置する必要がないので、スポンジゴムなどからなる低硬度の弾性層が厚く設けられた定着ローラを使用することができ、広いニップ幅の定着ニップ部が形成可能となる。
【0006】
また特許文献2には、通電によって発熱する抵抗発熱体が全体として一定の形状の面を形成するように構成された面状発熱体を、定着ベルトを加熱する加熱部材として使用する構成である、面状発熱ベルト定着方式の定着装置が開示されている。面状発熱ベルト定着方式の定着装置は、定着ローラと面状発熱体からなる加熱部材との間に懸架される定着ベルトと、定着ベルトを介して定着ローラに対向するように配置される加圧ローラとを含んで構成され、定着ベルトと接触する加熱部材により定着ベルトを加熱するようになっている。このような面状発熱ベルト定着方式の定着装置は、定着ベルトを加熱する加熱部材の熱容量を小さく設計することができるとともに、発熱する面状発熱体自身が定着ベルトに直接接触して定着ベルトを加熱するように構成されているので、加熱ローラの内部に配置された熱源により間接的に定着ベルトを加熱するように構成された方式に比べて、熱応答速度が向上され、ウォームアップ時間のさらなる短縮や省エネ化が達成可能である。このように、面状発熱ベルト定着方式の定着装置は、加熱効率が高く、立ち上がりの速さが速いので、待機中の予備加熱の不要化、待ち時間の短縮化が可能となり、小型低速機だけでなく大型機、高速機の画像形成装置に備えられている。
【0007】
ここで、特許文献2に開示される定着装置のように、定着ベルトを介して所定の定着温度を得る定着装置では、定着不良を防止するために、定着ベルトを加熱する面状発熱体が大きな発熱容量を有する必要がある。大きな発熱容量を有する面状発熱体は、周方向に延びる長さを長くして面状発熱体自身の面積を大きくすることで達成可能である。
【0008】
半円弧状の基材の周方向に延びる長さを長くすると開口が狭くなる。このように開口が狭くなった基材の内側表面に、塗装、スクリーン印刷方法、貼り付けなどによって面状発熱体を形成するとき、狭くなった開口側から内方側に臨んで面状発熱体を形成することになるので、面状発熱体の表面全体が基材の内側表面に均一に接触した状態で、面状発熱体を保持して固定するのが困難となる。そのため、面状発熱体の局部的な異常発熱が発生し、面状発熱体表面の温度分布が設定温度に対して不均一になって定着温度がばらつき、高い印字品位を維持できなくなる。
【0009】
このような問題点を解決する方法として、特許文献3には、円筒状のローラ部材の内側表面に、面状発熱体が絶縁層を介して固定されている、定着装置に搭載可能な加熱定着ローラが開示されている。特許文献3に開示される加熱定着ローラでは、絶縁層と抵抗発熱体からなる発熱層とが積層された面状発熱体が、弾性体によって押圧力が付与された状態で、接着剤を介してローラ部材の内側表面に固定されている。引用文献3に開示される加熱定着ローラにおいて、面状発熱体は、弾性体によって押圧力が付与された状態で、接着剤を介してローラ部材の内側表面に固定されているので、面状発熱体の表面全体がローラ部材の内側表面に均一に接触した状態となり、面状発熱体表面の温度分布が設定温度に対して不均一になるのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−307496号公報
【特許文献2】特開2002−333788号公報
【特許文献3】特開平11−119575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、特許文献3に開示される加熱定着ローラが有するローラ部材、面状発熱体の絶縁層および発熱層を構成する各材料は、熱膨張係数が異なる。つまり、特許文献3に開示される加熱定着ローラは、ローラ部材を構成する材料とは異なる熱膨張係数を有する材料からなる絶縁層および発熱層を備える面状発熱体が、ローラ部材の内側表面に、接着剤を介して固定されている。このような加熱定着ローラにおいて、発熱層を構成する抵抗発熱体に電圧が印加されて発熱層が発熱し、加熱定着ローラ自身が加熱されたとき、ローラ部材、絶縁層および発熱層は、それぞれ異なった度合いで熱膨張することになる。
【0012】
特許文献3に開示される加熱定着ローラでは、面状発熱体は、弾性体によって押圧力が付与された状態で接着剤を介してローラ部材の内側表面に固定されているが、ローラ部材、絶縁層および発熱層の熱膨張差を吸収緩和することができず、弾性体の押圧力だけでは、ローラ部材と絶縁層との界面、および絶縁層と発熱層との界面が、局部的に剥離してしまい、ローラ部材の内側表面に対する伝熱効率が局部的に低下する。このように、ローラ部材の内側表面に対する伝熱効率が局部的に低下すると、加熱定着ローラの表面の温度分布が設定温度に対して不均一になり、定着温度がばらついて定着性能が悪化し、高い印字品位を維持できなくなる。また、前記局部的な伝熱効率の低下が発生すると、所望の定着温度を得るまでのウォームアップ時間を長くする必要性が生じたり、所望の定着温度を得るためにより多くの熱量が必要となって消費電力が増大するといった問題が生じる。また、前記局部的な剥離が発生すると、発熱層で発生する熱がローラ部材に伝達するのが損なわれて、面状発熱体自身が過度に加熱された状態となり、絶縁層の劣化や電気絶縁性の損失が発生し、安全性に問題が生じる。
【0013】
また、加熱定着ローラ自身が加熱されたとき、円筒状のローラ部材は、外径が大きくなるように、径方向に熱膨張する。これに対して、面状発熱体に押圧力を付与する弾性体は、ローラ部材の軸線方向に伸張するので、ローラ部材の内側表面に向けて面状発熱体に付与される押圧力が低下する。そのため、ローラ部材と絶縁層との界面、および絶縁層と発熱層との界面が局部的に剥離する現象は、より顕著なものとなる。
【0014】
したがって本発明の目的は、絶縁層および抵抗発熱体からなる発熱層が積層された発熱部材を有する加熱部材であって、加熱部材を構成する部材間で局部的な剥離が発生するのが防止されて、局部的な伝熱効率の低下が発生するのが防止され、表面の温度分布が設定温度に対してばらつきのない加熱部材を提供することである。また本発明の目的は、ベルト定着方式の定着装置であって、定着温度が設定温度に対してばらつくのを防止し、安全性を確保した上で、ウォームアップ時間が短く、消費電力の増大を防止することができる定着装置を提供することである。また本発明の目的は、定着温度が設定温度に対してばらつくのが防止されて均一な定着特性を有する定着装置を備えて、均一で高品位な画像を形成することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、円筒体の一部を成す筒状に形成される筒状部と、前記筒状部の周方向両端部の少なくとも一部分から内側に屈曲する屈曲片とを有する放熱部材と、
低い硬さおよび高い熱伝導性を有する材料からなり、前記放熱部材の内周面に接触して設けられる低硬度良熱伝導部材と、
通電によって発熱する抵抗発熱体からなる発熱層と絶縁体からなる絶縁層とを有し、前記絶縁層が前記発熱層を挟み込むようにして積層され、前記低硬度良熱伝導部材の内周面に接触して設けられる発熱部材と、
円筒体の一部を成す筒状に形成されて、外周面において前記発熱部材の内周面に接触し、前記発熱部材を前記放熱部材に近接する方向に弾発的に押圧して、前記発熱部材を保持する押圧部材とを含んで構成され、
前記放熱部材が有する前記屈曲片は、前記筒状部の周方向両端部の少なくとも一部分から前記押圧部材に近接する方向に屈曲して形成され、前記押圧部材に対して前記発熱部材に近接する方向への押圧力を付与する屈曲部を有することを特徴とする加熱部材である。
【0016】
また本発明は、前記放熱部材が有する前記屈曲片は、前記筒状部の軸線方向に間隔をあけて複数設けられることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記押圧部材は、前記放熱部材が有する前記筒状部の周方向における曲率半径R1よりも大きい周方向の曲率半径R2を有する部材を変形させて、前記筒状部の内側に配置されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記放熱部材は、アルミニウム合金、マグネシウム合金および銅合金から選ばれる合金を用いて形成され、
前記押圧部材は、金属、耐熱性樹脂およびセラミックスから選ばれる材料を用いて、弾性を有するように形成されることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記発熱部材の前記発熱層を構成する前記抵抗発熱体は、前記放熱部材の周方向に延びて、前記絶縁層の表面に形成される複数の線状部と、隣接する前記線状部の延在方向端部同士を、前記放熱部材の軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して前記絶縁層の表面に形成される接続部とを含んで構成され、
前記押圧部材は、厚み方向に貫通して開口する複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するように構成され、
前記押圧部材における、複数の前記開口部のそれぞれを規定する開口周縁部の最小幅寸法が、前記抵抗発熱体の前記線状部および前記接続部の線幅以上であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記押圧部材は、その軸線方向の長さが、前記放熱部材および前記発熱部材の軸線方向の長さよりも大きくなるように形成されて、前記放熱部材の軸線方向両端部から外方に延出する延出部を有し、
前記延出部には、外部に接続して前記押圧部材を固定可能に構成される固定アダプタが設けられることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記放熱部材が有する前記筒状部における、周方向両端部の軸線に関する仰角は、180°以上320°以下に選ばれることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記放熱部材は、前記低硬度良熱伝導部材と接触する内周面に、耐熱性および高い熱輻射性を有する材料からなる内面コート層が形成されていることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記放熱部材の外周面には、耐熱性および低摩擦係数を有する材料からなる外面コート層が形成されていることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記外面コート層は、フッ素を含有するPTFE樹脂およびPFA樹脂の少なくともいずれか1つの材料からなることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、第1定着部材と加熱部材との間に張架される回転可能な無端状ベルトと、前記無端状ベルトを介して前記第1定着部材に対向するように配置される第2定着部材とを備え、前記無端状ベルトと前記第2定着部材とが接触して形成される定着ニップ部において、記録媒体上に担持されるトナー像を加熱して記録媒体上に定着する定着装置であって、
前記加熱部材は、屈曲片を有する前記加熱部材であり、前記放熱部材の外周面において前記無端状ベルトと接触して、前記無端状ベルトを加熱することを特徴とする定着装置である。
また本発明は、前記定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、加熱部材は、放熱部材と、放熱部材の内周面に接触して配置される低硬度良熱伝導部材と、低硬度良熱伝導部材の内周面に接触して配置される発熱部材と、発熱部材を放熱部材に近接する方向に弾発的に押圧する押圧部材とを含んで構成される。そして、放熱部材は、円筒体の一部を成す筒状に形成される筒状部と、筒状部の周方向両端部から内側に屈曲する屈曲片とを含む。さらに、前記屈曲片に設けられる屈曲部は、筒状部の周方向両端部の少なくとも一部分から押圧部材に近接する方向に屈曲し、押圧部材に対して発熱部材に近接する方向への押圧力を付与するように構成されている。
【0027】
本発明の加熱部材では、発熱部材は、押圧部材によって放熱部材に近接する方向に押圧されて、放熱部材の内周面に固定される。このとき、押圧部材は、屈曲片に設けられる屈曲部によって発熱部材に近接する方向に押圧力が付与されるので、この押圧力が発熱部材を放熱部材に近接する方向に押圧する力として作用する。これによって、発熱部材は、放熱部材の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0028】
さらに、放熱部材と発熱部材との間には、低い硬さおよび高い熱伝導性を有する材料からなる低硬度良熱伝導部材が配置されているので、発熱部材から放熱部材への伝熱効率を低下させることなく、加熱部材を構成する各部材の熱膨張差を吸収緩和することができ、各部材間で局部的な剥離が発生するのを防止することができる。このように、本発明の加熱部材は、放熱部材の内周面に対する発熱部材の密着性が高い状態で維持された上で、各部材間で局部的な剥離が発生するのが防止されるので、局部的な伝熱効率の低下が発生するのが防止され、表面の温度分布が設定温度に対してばらつきのない加熱部材となる。
【0029】
また本発明によれば、放熱部材が有する屈曲片は、筒状部の軸線方向に間隔をあけて複数設けられる。筒状部の周方向両端部において、軸線方向の全領域にわたって屈曲片を設けた場合、加熱部材の熱容量が大きくなってしまう。これに対して、筒状部の軸線方向に間隔をあけて複数の屈曲片を設けることによって、加熱部材の熱容量が大きくなるのを抑制することができる。
【0030】
また本発明によれば、押圧部材は、放熱部材が有する筒状部の周方向における曲率半径R1よりも大きい周方向の曲率半径R2を有する部材を変形させて、筒状部の内側に配置されている。このように、加熱部材において放熱部材の内側に配置される押圧部材が変形された状態で配置されることによって、押圧部材には、変形を復元しようとする力が働き、この復元しようとする復元力が、発熱部材を放熱部材に近接する方向に弾発的に押圧する力となって働く。このように、押圧部材が有する復元力が、発熱部材を放熱部材の内周面に保持するように作用するので、発熱部材は、放熱部材の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0031】
また本発明によれば、放熱部材は、アルミニウム合金、マグネシウム合金および銅合金から選ばれる合金を用いて形成される。前記材料で構成される放熱部材は、高い熱伝導性を有する部材となるので、加熱対象物を効率よく加熱することができる。さらに、押圧部材は、金属、耐熱性樹脂およびセラミックスから選ばれる材料を用いて、弾性を有するように形成される。前記材料で構成される押圧部材は、高強度かつ高靭性を有する部材となるので、湾曲されても破壊することなく大きな弾力性を有し、発熱部材を放熱部材に近接する方向に弾発的に押圧する力が大きくなる。そのため、発熱部材は、放熱部材の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0032】
また本発明によれば、発熱部材の発熱層を構成する抵抗発熱体は、放熱部材の周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で絶縁層の表面に形成される複数の線状部と、隣接する線状部の延在方向端部同士を、放熱部材の軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して絶縁層の表面に形成される接続部とを含んで構成される。そして、押圧部材は、厚み方向に貫通して開口する複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するように構成される。このとき、押圧部材における、複数の開口部のそれぞれを規定する開口周縁部の最小幅寸法は、抵抗発熱体の線状部および接続部の線幅以上である。これによって、押圧部材は、抵抗発熱体が配置される領域に対応する発熱部材の内周面部分に、充分な押圧力を付与することができる。そのため、抵抗発熱体が配置される領域に対応する発熱部材の領域部分は、放熱部材の内周面に対して充分に密着し、局部的な伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0033】
また本発明によれば、押圧部材は、その軸線方向の長さが、放熱部材および発熱部材の軸線方向の長さよりも大きくなるように形成されて、放熱部材の軸線方向両端部から外方に延出する延出部を有する。そして、前記延出部には、外部に接続して押圧部材を固定可能に構成される固定アダプタが設けられる。延出部に設けられる固定アダプタを介して押圧部材を外部に固定した場合、押圧部材の発熱部材に対する配置位置が規制される。このように、押圧部材の配置位置が規制されることによって、その規制による外力を、発熱部材を放熱部材に近接する方向に弾発的に押圧する押圧力として付与することができる。そのため、押圧部材は、放熱部材の内周面における所定位置に発熱部材を安定的に保持することができる。
【0034】
また本発明によれば、放熱部材が有する筒状部における、周方向両端部の軸線に関する仰角は、180°以上320°以下に選ばれる。たとえば、筒状部の外周面に無端状ベルトを接触させて、加熱部材を該無端状ベルトを加熱する部材として用いた場合、筒状部の周方向両端部の軸線に関する仰角を180°以上に設定することによって、筒状部の周方向長さは、筒状部の周方向に対応する筒状部と無端状ベルトとの接触長さ(以下、「ニップ長さ」と呼ぶ)以上となる。このように、筒状部の周方向長さをニップ長さ以上とすることによって、加熱部材は、筒状部の外周面における無端状ベルトとの接触面積を充分に大きく確保することができ、消費電力が少ない状態で無端状ベルトを加熱することができる。また、筒状部の周方向長さをニップ長さ以上とすることによって、筒状部の周方向端部における無端状ベルトに対する接触負荷を低減することができ、無端状ベルトが摩耗するのを防止することができる。また、筒状部の周方向端部における無端状ベルトに対する接触負荷を低減可能になると、無端状ベルトを回転駆動させる駆動負荷も低減することができ、エネルギー消費量も低減することができる。また、筒状部の周方向両端部の軸線に関する仰角を320°以下に設定することによって、加熱部材における熱容量が大きくなり過ぎるのを防止することができ、加熱部材の表面温度が設定温度に到達するまでの時間が長くなり過ぎるのを防止することができる。
【0035】
また本発明によれば、放熱部材は、低硬度良熱伝導部材と接触する内周面に、耐熱性および高い熱輻射性を有する材料からなる内面コート層が形成されている。これによって、放熱部材と低硬度良熱伝導部材との界面で腐食が発生するのを防止することができ、長期間にわたって、発熱部材から放熱部材への伝熱効率の低下を防止することができる。
【0036】
また本発明によれば、放熱部材の外周面には、耐熱性および低摩擦係数を有する材料からなる外面コート層が形成されている。たとえば、放熱部材の外周面に無端状ベルトを接触させて、加熱部材を該無端状ベルトを加熱する部材として用いた場合、放熱部材と無端状ベルトとの間の摩擦力を低減することができ、無端状ベルトが摩耗するのを防止して、無端状ベルトの高い耐久性を確保することができる。また、放熱部材と無端状ベルトとの間の摩擦力が低減可能になると、無端状ベルトの回転をスムースにすることができ、加熱部材の無端状ベルトに対する伝熱効率が低下するのを防止することができる。
【0037】
また本発明によれば、フッ素を含有するPTFE樹脂およびPFA樹脂の少なくともいずれか1つからなる材料によって、放熱部材と加熱対象物との間の摩擦力が低減可能な外面コート層を実現することができる。
【0038】
また本発明によれば、定着装置は、第1定着部材と加熱部材との間に張架される無端状ベルトと、無端状ベルトを介して第1定着部材に対向するように配置される第2定着部材とを備え、無端状ベルトと第2定着部材とが接触して形成される定着ニップ部において、トナー像を加熱溶融させて記録媒体上に定着させる。そして、本発明の定着装置は、加熱部材として、表面の温度分布が設定温度に対してばらつきのない本発明の前記加熱部材を備えているので、無端状ベルトの表面における温度分布が設定温度に対して均一となり、定着温度がばらつくのが防止されて、均一な定着特性を有する定着装置となる。また、定着装置が備える本発明の前記加熱部材は、局部的な伝熱効率の低下が発生するのが防止されたものなので、定着装置は、所望の定着温度を得るまでのウォームアップ時間が短く、消費電力の増大が防止された定着装置となる。
【0039】
また本発明によれば、画像形成装置は、定着温度が設定温度に対してばらつくのが防止されて均一な定着特性を有する、本発明の前記定着装置を備えているので、均一で高品位な画像を記録媒体上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態である加熱部材20の構成を示す図である。
【図2】発熱部材203の構成を示す図である。
【図3】発熱部材203の発熱パターンを示す図である。
【図4】他の発熱パターンを有する発熱部材303の構成を示す図である。
【図5】他の発熱パターンを有する発熱部材403の構成を示す図である。
【図6】加熱部材20の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】押圧部材204の構成を示す図である。
【図8】固定アダプタ205の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態である加熱部材30の構成を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態である加熱部材30Aの構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の一形態である定着装置15の構成を示す図である。
【図12】定着ベルトが加熱部材に懸架される領域の近傍における定着装置15の構成を示す図である。
【図13】定着装置15の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の他の実施形態である定着装置40の構成を示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態である定着装置50の構成を示す図である。
【図16】本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の第1実施形態である加熱部材20の構成を示す図である。図1(a)は、加熱部材20の軸線方向に垂直な断面を示し、図1(b)は、加熱部材の軸線方向に平行な断面を示す。加熱部材20は、放熱部材201と、放熱部材201の内周面に接触して配置される低硬度良熱伝導部材202と、低硬度良熱伝導部材202の内周面に接触して配置される発熱部材203と、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する押圧部材204とを含んで構成される。加熱部材20では、発熱部材203で発生した熱が、低硬度良熱伝導部材202を介して放熱部材201に伝導し、放熱部材201の外周面に接触する対象物を加熱する。本実施形態の加熱部材20は、後述する定着装置15に、好適に搭載することができる。加熱部材20が加熱する加熱対象物として、定着装置15に設けられる定着ベルト25を例に挙げて、以下に説明する。
【0042】
放熱部材201は、円筒体の一部を成す筒状に形成される筒状部201aと、筒状部201aの周方向両端部の少なくとも一部分から内側に屈曲する屈曲片201bとを有する。筒状部201aは、外周面において定着ベルト25に接触するように配置され、発熱部材203が発生させる熱を定着ベルト25に伝導させる。筒状部201aを構成する材料は、特に制限されないが、高い熱伝導性を有する金属材料や合金材料であることが好ましく、その材料としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金などを挙げることができる。筒状部201aは、円筒体の周方向の一部を切り欠いて作製することができ、また板状部材を湾曲させて作製することもできる。
【0043】
また、筒状部201aにおける周方向両端部の軸線に関する仰角θは、180°以上320°以下に選ばれることが好ましい。筒状部201aの周方向両端部の軸線に関する仰角θを180°以上に設定することによって、筒状部201aの周方向長さは、筒状部201aの周方向に対応する筒状部201aと定着ベルト25との接触長さ(ニップ長さ)以上となる。このように、筒状部201aの周方向長さをニップ長さ以上とすることによって、加熱部材20は、筒状部201aの外周面における定着ベルト25との接触面積を充分に大きく確保することができるので、消費電力が少ない状態で定着ベルト25を加熱することができ、熱追従性に優れ高速印字においても充分な熱量を筒状部201aから加熱対象物である定着ベルト25に供給することができる。また、筒状部201aの周方向長さをニップ長さ以上とすることによって、筒状部201aの周方向端部における定着ベルト25に対する接触負荷を低減することができ、定着ベルト25が摩耗するのを防止することができる。また、筒状部201aの周方向端部における定着ベルト25に対する接触負荷を低減可能になると、定着ベルト25を回転駆動させる駆動負荷も低減することができ、エネルギー消費量も低減することができる。
【0044】
また、筒状部201aの周方向両端部の軸線に関する仰角θを320°以下に設定することによって、加熱部材20における熱容量が大きくなり過ぎるのを防止することができ、加熱部材20の表面温度が設定温度に到達するまでの時間が長くなり過ぎるのを防止することができる。
【0045】
屈曲片201bは、第1屈曲部2011と第2屈曲部2012とを有し、筒状部201aの周方向両端部の少なくとも一部分から内側に屈曲する部分である。屈曲片201bは、たとえば、筒状部201aの周方向両端部を内側に折り曲げることによって形成することができる。
【0046】
屈曲片201bの第1屈曲部2011は、筒状部201aの周方向両端部の少なくとも一部分から、後述する押圧部材204に近接する方向に屈曲する部分である。そして、第2屈曲部2012は、第1屈曲部2011の端部から、後述する発熱部材203に近接する方向に屈曲して押圧部材204の内周面に接触し、押圧部材204に対して発熱部材203に近接する方向への押圧力を付与するように形成されている。本実施形態の加熱部材20では、発熱部材203は、押圧部材204によって放熱部材201に近接する方向に押圧されて放熱部材201の内周面に固定されているが、押圧部材204は、第2屈曲部2012によって発熱部材203に近接する方向に押圧力が付与されるので、この押圧力が発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に押圧する力として作用する。これによって、発熱部材203は、放熱部材201の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0047】
また、屈曲片201bは、筒状部201aの軸線方向に間隔をあけて複数設けられるように構成するのが好ましい。筒状部201aの周方向両端部において、軸線方向の全領域にわたって屈曲片201bを設けた場合、加熱部材20の熱容量が大きくなってしまう。第2屈曲部2012の周方向に延びる長さを短くすることによって、熱容量が大きくなるのを抑制することができるが、第2屈曲部2012による押圧力付与能力が低下するばかりではなく、屈曲片201bを折り曲げ加工によって形成するときの加工精度向上に対して高コストとなる。これに対して、筒状部201aの軸線方向に間隔をあけて複数の屈曲片201bを設けることによって、第2屈曲部2012の周方向に延びる長さを極端に短くする必要がなく、加工コストが低コストの状態で、加熱部材20の熱容量が大きくなるのを抑制することができ、加熱部材20の表面温度が設定温度に到達するまでの時間が長くなり過ぎるのを防止することができる。
【0048】
複数の第2屈曲部2012のそれぞれの形状は、任意に設定することができるが、本実施の形態では矩形状である。そして、屈曲片201bの大きさは、第2屈曲部2012の押圧部材204の内周面に接触する合計面積が、放熱部材201の筒状部201aに対応する押圧部材204の内周面の面積に対して、20〜70%の範囲となるように設定されるのが好ましい。第2屈曲部2012の押圧部材204の内周面に接触する面積割合が20%未満の場合は、第2屈曲部2012による押圧力付与能力が充分に発揮されず、面積割合が70%を超える場合は、加熱部材20の熱容量が大きくなり過ぎる。また、複数の屈曲片201bにおける軸線方向に対する配置間隔および個数は、加熱部材20の熱容量、第2屈曲部2012による押圧力付与能力などを考慮して設定することができ、配置間隔は5mm〜50mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0049】
低硬度良熱伝導部材202は、放熱部材201が有する筒状部201aの内周面の全面に接触して設けられる。つまり、低硬度良熱伝導部材202は、放熱部材201と後述する発熱部材203との間に介在する。低硬度良熱伝導部材202は、低い硬さおよび高い熱伝導性を有する材料からなる部材である。ここで、本発明における「硬さ」とは、JIS K2207に規格化されている、規定重量の針を試料中に垂直に進入させ、進入した長さにより算出される硬さのことである。
【0050】
低硬度熱伝導部材202は、25℃における硬さが30以上300以下であり、かつ熱伝導率が0.5W/m・K以上30W/m・K以下の材料から形成されるのが好ましい。このような物性値を有する低硬度良熱伝導部材202を、放熱部材201と発熱部材203との間に介在させることによって、発熱部材203から放熱部材201への伝熱効率を低下させることなく、加熱部材20を構成する各部材の熱膨張差を吸収緩和することができ、各部材間で局部的な剥離が発生するのを防止することができる。
【0051】
低硬度良熱伝導部材202を構成する材料としては、さらに、高温環境下でも熱伝導性に優れ、経時変化が生じ難い材料であることが好ましく、耐熱シリコーングリス、耐熱シリコーン系ゲルシートなどを挙げることができる。また、熱伝導性をさらに向上させるために、金、銀、銅、白金、カーボン、グラファイトなどの粉末を前記材料に添加したものを用いてもよい。
【0052】
放熱部材201と発熱部材203との間に隙間が開くと、空気層が介在することになり、熱伝導性が悪くなる。これに対して、放熱部材201と発熱部材203との間に低硬度良熱伝導部材202を配置することによって、熱抵抗を増加させる空気層を除去し、熱伝導性を向上させることができる。
【0053】
次に、発熱部材203について、図2および図3を用いて説明する。図2は、発熱部材203の構成を示す図であり、図3は、発熱部材203の発熱パターンを示す図である。発熱部材203は、後述する押圧部材204が内周面に接触して、外周面が低硬度良熱伝導部材202の内周面に接触するように保持されている。発熱部材203は、第4絶縁層2035の表面上に、第3絶縁層2034、発熱層2033、第2絶縁層2032、第1絶縁層2031が、この順で積層された積層構造を有し、第1絶縁層2031が形成される側の面が低硬度良熱伝導部材202の内周面と接触する側の面となり、第4絶縁層2035が形成される側の面が押圧部材204の外周面と接触する側の面となる。
【0054】
第1絶縁層2031、第2絶縁層2032、第3絶縁層2034および第4絶縁層2035は、耐熱性と電気絶縁性とを兼ね備えた材料によって形成される層であり、各絶縁層は同一の材料によって形成されてもよく、それぞれ別の材料によって形成されてもよい。耐熱性と電気絶縁性とを兼ね備えた材料としては、特に制限されないが、ポリイミド樹脂などの耐熱性ポリマー材料、アルミナなどのセラミックス材料、マイカなどの無機材料を挙げることができる。本実施形態では、第1絶縁層2031および第4絶縁層2035は、ポリイミド樹脂からなる層であり、第2絶縁層2032および第3絶縁層2034は、マイカからなる層である。
【0055】
第1絶縁層2031および第2絶縁層2032は、発熱層2033と低硬度良熱伝導部材202との間に介在して両者間の絶縁を確保し、第3絶縁層2034および第4絶縁層2035は、発熱層2033と押圧部材204との間に介在して両者間の絶縁を確保する。このように、第1絶縁層2031、第2絶縁層2032、第3絶縁層2034および第4絶縁層2035が、通電によって発熱する発熱層2033を電気的に絶縁するので、安全な発熱部材203を有する加熱部材20とすることができる。また、発熱層2033を電気的に絶縁可能になると、たとえば、アルミニウムやステンレスなどの低熱容量の金属材料を放熱部材201の構成材料として用いても、発熱層2033との電気的絶縁を確保することができ、放熱部材201の構成する材料の選択幅を広げることができる。
【0056】
発熱層2033は、通電によってジュール発熱する抵抗発熱体からなる層であり、筒状部201aの軸線方向両端部のそれぞれに対応して、第1抵抗発熱体2033aからなる発熱領域と、第3抵抗発熱体2033gからなる発熱領域とが形成され、筒状部201aの軸線方向中央部に対応して、第2抵抗発熱体2033dからなる発熱領域が形成されている。つまり、発熱層2033においては、筒状部201aの軸線方向両端部と中央部とに対応して、発熱領域が3分割されている。なお、発熱層2033は、その発熱領域が、筒状部201aの軸線方向両端部と中央部とに対応して3分割され、かつ筒状部201aの周方向に対応して2分割された合計6分割される発熱領域を有するように構成してもよい。
【0057】
第1抵抗発熱体2033a、第2抵抗発熱体2033dおよび第3抵抗発熱体2033gは、体積抵抗率が107.3×10−8Ωcm程度のニッケルクロムを主成分とした材料などからなる。また、第1抵抗発熱体2033a、第2抵抗発熱体2033dおよび第3抵抗発熱体2033gは、正の抵抗温度特性を有することが好ましい。負の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体は、温度が上昇するにつれて抵抗発熱体自身の電気抵抗値が低下するため、抵抗発熱体に流れる電流が大きくなり、消費電力量が大きくなる。そのため、負の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体は、省エネ性の観点から好ましくない。
【0058】
第1抵抗発熱体2033aは、筒状部201aの周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部2043bと、隣接する線状部2043bの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部2043aとを含んで構成される。なお、接続部2043aと線状部2043bとは、同一の材料および同一の線幅で形成されている。そして、第1抵抗発熱体2033aの両端部は、それぞれ第1給電端子部2033b、第2給電端子部2033cに接続されている。
【0059】
また、第2抵抗発熱体2033dは、筒状部201aの周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部2043dと、隣接する線状部2043dの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部2043cとを含んで構成される。なお、接続部2043cと線状部2043dとは、同一の材料および同一の線幅で形成されている。そして、第2抵抗発熱体2033dの両端部のそれぞれは、第3給電端子部2033e、第4給電端子部2033fに接続されている。
【0060】
また、第3抵抗発熱体2033gは、筒状部201aの周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部2043fと、隣接する線状部2043fの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部2043eとを含んで構成される。なお、接続部2043eと線状部2043fとは、同一の材料および同一の線幅で形成されている。そして、第3抵抗発熱体2033gの両端部は、それぞれ第5給電端子部2033h、第6給電端子部2033iに接続されている。
【0061】
そして、第1抵抗発熱体2033aの一方端部が接続される第2給電端子部2033cと、第3抵抗発熱体2033gの一方端部が接続される第5給電端子部2033hとは、リード線2033jを介して接続されている。また、第1抵抗発熱体2033aの他方端部が接続される第1給電端子部2033b、および第3抵抗発熱体2033gの他方端部が接続される第6給電端子部2033iは、加熱制御手段206を介して電源に接続されている。また、第2抵抗発熱体2033dのそれぞれが接続される第3給電端子部2033eおよび第4給電端子部2033fは、加熱制御手段206を介して電源に接続されている。
【0062】
以上のような接続構造を有する第1抵抗発熱体2033a、第2抵抗発熱体2033dおよび第3抵抗発熱体2033gは、それぞれ区別された状態で通電可能となるように、加熱制御手段206によって通電制御され、発熱層2033の軸線方向における発熱量を、通電状態を切替えることによって調整することができるようになっている。つまり、発熱部材203は、筒状部201a表面の軸線方向に対応した温度分布が、所望の温度分布となるように調整可能である。
【0063】
たとえば、加熱部材20が加熱対象物である定着ベルト25を加熱するとき、小サイズの記録紙32に形成されるトナー像31を定着させる場合には、加熱制御手段206は、筒状部201aの軸線方向中央部に対応して配置される第2抵抗発熱体2033dにのみ通電するように、第3給電端子部2033eと第4給電端子部2033fとの間に電圧を印加して通電制御すればよい。また、大サイズの記録紙32に形成されるトナー像31を定着させる場合には、加熱制御手段206は、筒状部201aの全面に対応して、第1抵抗発熱体2033a、第2抵抗発熱体2033dおよび第3抵抗発熱体2033gに通電するように通電制御すればよい。このようにして、発熱部材203では、異なるサイズの記録紙32が通紙されても、筒状部201a表面の軸線方向に対応した温度分布が、所望の温度分布となるように調整可能である。
【0064】
図4は、他の発熱パターンを有する発熱部材303の構成を示す図である。発熱部材303は、発熱層3033の構成が異なる以外は、前述した発熱部材203と同様である。発熱層3033は、通電によってジュール発熱する抵抗発熱体からなる層であり、前述した発熱部材203が有する発熱層2033と同様に、筒状部201aの軸線方向両端部のそれぞれに対応して、第1抵抗発熱体3033aからなる発熱領域と、第3抵抗発熱体3033gからなる発熱領域とが形成され、筒状部201aの軸線方向中央部に対応して、第2抵抗発熱体3033dからなる発熱領域が形成されている。
【0065】
第1抵抗発熱体3033aは、筒状部201aの周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部3043bと、隣接する線状部3043bの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部3043aとを含んで構成される。なお、接続部3043aと線状部3043bとは、同一の材料で形成されている。そして、第1抵抗発熱体3033aの両端部のそれぞれは、第1給電端子部2033b、第2給電端子部2033cに接続されている。
【0066】
また、第2抵抗発熱体3033dは、筒状部201aの周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部3043dと、隣接する線状部3043dの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部3043cとを含んで構成される。なお、接続部3043cと線状部3043dとは、同一の材料で形成されている。そして、第2抵抗発熱体3033dの両端部のそれぞれは、第3給電端子部2033e、第4給電端子部2033fに接続されている。
【0067】
また、第3抵抗発熱体3033gは、筒状部201aの周方向に延びて、それぞれ略平行な状態で第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部3043fと、隣接する線状部3043fの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部3043eとを含んで構成される。なお、接続部3043eと線状部3043fとは、同一の材料で形成されている。そして、第3抵抗発熱体3033gの両端部は、それぞれ第5給電端子部2033h、第6給電端子部2033iに接続されている。
【0068】
そして、第1抵抗発熱体3033aの一方端部が接続される第2給電端子部2033cと、第3抵抗発熱体3033gの一方端部が接続される第5給電端子部2033hとは、リード線2033jを介して接続されている。また、第1抵抗発熱体3033aの他方端部が接続される第1給電端子部2033b、および第3抵抗発熱体3033gの他方端部が接続される第6給電端子部2033iは、加熱制御手段206を介して電源に接続されている。また、第2抵抗発熱体3033dのそれぞれが接続される第3給電端子部2033eおよび第4給電端子部2033fは、加熱制御手段206を介して電源に接続されている。
【0069】
以上のような接続構造を有する第1抵抗発熱体3033a、第2抵抗発熱体3033dおよび第3抵抗発熱体3033gにおいて特徴的な構成は、各接続部3043a,3043c,3043eの線幅が、各線状部3043b,3043d,3043fの線幅よりも幅広であり、接続部の方が線状部よりも低発熱部となるようにしていることである。各接続部3043a,3043c,3043eの線幅は、できるだけ広くすることが好ましいが、各抵抗発熱体3033a,3033d,3033gの設置面積が限定されるため、設置面積の中で最適化されることが好ましい。
【0070】
1本の線路となる各抵抗発熱体3033a,3033d,3033gにおいては、各接続部3043a,3043c,3043eが形成される領域部分が折れ曲がり部分となる。本実施形態の発熱部材303では、各抵抗発熱体3033a,3033d,3033gにおける折れ曲がり部分に、各線状部3043b,3043d,3043fよりも広幅の線幅を有する各接続部3043a,3043c,3043eが形成されているので、折れ曲がり部分において局所的に電流が集中して流れるのを防止することができ、各抵抗発熱体3033a,3033d,3033gが局所的に過度に発熱するのを防止することができる。そのため、各抵抗発熱体3033a,3033d,3033gが局所的に第3絶縁層2034から剥離したり、切断破壊するのを防止することができる。

図5は、他の発熱パターンを有する発熱部材403の構成を示す図である。発熱部材403は、発熱層4033の構成が異なる以外は、前述した発熱部材203と同様である。発熱層4033は、通電によってジュール発熱する抵抗発熱体からなる層であり、前述した発熱部材203が有する発熱層2033と同様に、筒状部201aの軸線方向両端部のそれぞれに対応して、第1抵抗発熱体4033aからなる発熱領域と、第3抵抗発熱体4033gからなる発熱領域とが形成され、筒状部201aの軸線方向中央部に対応して、第2抵抗発熱体4033dからなる発熱領域が形成されている。
【0071】
第1抵抗発熱体4033aは、谷部と頂部とが交互に形成されるようにジグザグ形状に屈曲しながら筒状部201aの周方向に延びて、第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部4043bと、隣接する線状部4043bの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部4043aとを含んで構成される。なお、接続部4043aと線状部4043bとは、同一の材料および同一の線幅で形成されている。そして、第1抵抗発熱体4033aの両端部のそれぞれは、第1給電端子部2033b、第2給電端子部2033cに接続されている。
【0072】
また、第2抵抗発熱体4033dは、谷部と頂部とが交互に形成されるようにジグザグ形状に屈曲しながら筒状部201aの周方向に延びて、第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部4043dと、隣接する線状部4043dの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部4043cとを含んで構成される。なお、接続部4043cと線状部4043dとは、同一の材料および同一の線幅で形成されている。そして、第2抵抗発熱体4033dの両端部のそれぞれは、第3給電端子部2033e、第4給電端子部2033fに接続されている。
【0073】
また、第3抵抗発熱体4033gは、谷部と頂部とが交互に形成されるようにジグザグ形状に屈曲しながら筒状部201aの周方向に延びて、第3絶縁層2034の表面上に形成される複数の線状部4043fと、隣接する線状部4043fの延在方向端部同士を、筒状部201aの軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して第3絶縁層2034の表面上に形成される接続部4043eとを含んで構成される。なお、接続部4043eと線状部4043fとは、同一の材料および同一の線幅で形成されている。そして、第3抵抗発熱体4033gの両端部は、それぞれ第5給電端子部2033h、第6給電端子部2033iに接続されている。
【0074】
そして、第1抵抗発熱体4033aの一方端部が接続される第2給電端子部2033cと、第3抵抗発熱体4033gの一方端部が接続される第5給電端子部2033hとは、リード線2033jを介して接続されている。また、第1抵抗発熱体4033aの他方端部が接続される第1給電端子部2033b、および第3抵抗発熱体4033gの他方端部が接続される第6給電端子部2033iは、加熱制御手段206を介して電源に接続されている。また、第2抵抗発熱体4033dのそれぞれが接続される第3給電端子部2033eおよび第4給電端子部2033fは、加熱制御手段206を介して電源に接続されている。
【0075】
なお、本実施の形態では、前述のように、ジグザグ形状に屈曲しながら1本の線路となるように形成される各抵抗発熱体4033a,4033d,4033gの線幅が、均一となるように構成したが、各抵抗発熱体の屈曲折れ曲がり部分が、広幅の線幅を有するように構成してもよい。
【0076】
図6は、加熱部材20の電気的構成を示すブロック図である。加熱部材20の発熱部材203,303,403に対する通電は、加熱制御手段206によって制御される。以下では、加熱部材20が発熱部材203を備えている場合について説明する。加熱制御手段206は、主制御部2061と、検出部2062と、電力算出部2063と、給電制御部2064とを含んで構成される。主制御部2061は、検出部2062と、電力算出部2063と、給電制御部2064とを統括的に制御する。なお、主制御部2061は、検出部2062と、給電制御部2064とを統括的に制御することから構成されてもよい。加熱制御手段206における発熱部材203に対する通電制御は、以下に示す2つの通電制御例を挙げることができる。
【0077】
第1の通電制御例において、加熱制御手段206の検出部2062は、筒状部201aの軸線方向に対応して分割される発熱領域を構成する各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに流れる電流値および各給電端子部に印加される電圧値を検出する。電力算出部2063は、検出部2062によって検出された電流値および電圧値に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに供給される電力値を算出する。そして、給電制御部2064は、電力算出部2063によって算出された算出電力値に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが設定温度に基づいて設定される所定の温度範囲内で発熱するように、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに対する給電を制御する。
【0078】
第2の通電制御例において、加熱制御手段206の検出部2062は、筒状部201aの軸線方向に対応して分割される発熱領域を構成する各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに対応する各給電端子部に印加される電圧値を検出する。電力算出部2063は、検出部2062によって検出された電圧値および各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gの電気抵抗値に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに供給される電力値を算出する。そして、給電制御部2064は、電力算出部2063によって算出された算出電力値に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが設定温度に基づいて設定される所定の温度範囲内で発熱するように、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに対する給電を制御する。
【0079】
また、加熱制御手段206は、検出部2062が省略されて構成することもできる。この場合、電力算出部2063は、サーミスタなどによる加熱対象物の表面温度の検出結果に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに供給される電力値を算出する。そして、給電制御部2064は、電力算出部2063によって算出された算出電力値に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが設定温度に基づいて設定される所定の温度範囲内で発熱するように、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに対する給電を制御する。
また、加熱制御手段206は、電力算出部2063が省略されて構成することもできる。検出部2062がサーミスタなどによる加熱対象物の表面温度の検出結果に基づいて、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gに電力を供給することもできる。この場合、サイクル制御、位相制御などによって電力を供給し、温度制御することもできる。
【0080】
次に、押圧部材204について、図7を用いて説明する。図7は、押圧部材204の構成を示す図である。押圧部材204は、円筒体の一部を成す筒状に形成されて、外周面において発熱部材203,303,403の内周面に接触し、発熱部材203,303,403を放熱部材201の筒状部201aに近接する方向に弾発的に押圧して、発熱部材203,303,403を保持する。以下では、加熱部材20が発熱部材203を備えている場合について説明する。
【0081】
押圧部材204は、円筒体の周方向の一部を切り欠いて作製することができ、押圧部材204における周方向両端部の軸線に関する仰角は、放熱部材201の筒状部201aの仰角θと同じにすればよく、180°以上320°以下に選ばれる。また、押圧部材204としては、たとえば、図7(a)に示すような板状部材が湾曲されて形成される押圧部材204a、図7(b)に示すようなメッシュ状に形成される押圧部材204b、図7(c)に示すような貫通孔2045が形成される押圧部材204cを挙げることができる。
【0082】
図7(a)に示すような、板状部材が湾曲されて形成される押圧部材204aは、発熱部材203の内周面に沿うように、発熱部材203の周方向に湾曲して設けられる。なお、押圧部材204aは、厚み方向に貫通して開口する開口部を有しておらず、全面べた板の板状部材が湾曲されて形成されるものである。押圧部材204aは、発熱部材203の内周面に沿うように湾曲して設けられることによって、湾曲状態から静置状態に戻ろうとする復元力が、発熱部材203を放熱部材201の筒状部201aに近接する方向に弾発的に押圧する力となって働く。このような復元力が、発熱部材203を筒状部201aの内周面に保持するように作用するので、筒状部201aの内周面における所定位置に発熱部材203を安定的に保持することができる。
【0083】
図7(b)に示すメッシュ状に形成される押圧部材204bは、弾性力を有する複数の極細い板状部材2041が軸線方向に相互に等間隔をあけて配列し、弾性力を有する複数の極細い板状部材2042が前記複数の極細い板状部材2041に直交して周方向に等間隔をあけて配列して、メッシュ状に形成されている。つまり、メッシュ状に形成される押圧部材204bは、厚み方向に貫通して開口する複数の開口部2043が間隔をあけて規則的に配列するように構成されている。以上のような、メッシュ状に形成される押圧部材204bは、発熱部材203の内周面に沿うように、発熱部材203の周方向に湾曲して設けられる。押圧部材204bは、発熱部材203の内周面に沿うように湾曲して設けられることによって、湾曲状態から静置状態に戻ろうとする復元力が、発熱部材203を放熱部材201の筒状部201aに近接する方向に弾発的に押圧する力となって働く。このような復元力が、発熱部材203を筒状部201aの内周面に保持するように作用するので、筒状部201aの内周面における所定位置に発熱部材203を安定的に保持することができる。
【0084】
また、開口部2043を有するように構成された押圧部材204bを備える加熱部材20は、熱容量が大きくなるのを抑制することができる。しかしながら、開口部2043を有する押圧部材204bは、発熱部材203の内周面の全面にわたって均一な押圧力を付与することができず、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが配置される領域に対応する発熱部材203の内周面部分に、充分な押圧力が付与されない場合が生じる。このように、発熱部材203の内周面において、充分な押圧力が付与されない領域部分では、伝熱効率が低下することになり、異常過熱による剥離・発火が発生する場合がある。
【0085】
これに対して、押圧部材204bにおける、複数の開口部2043のそれぞれを規定する開口周縁部の最小幅寸法、すなわち極細い板状部材2041,2042の幅寸法P2は、発熱部材203が有する発熱層2033を構成する各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gの各線状部2043b,2043d,2043fおよび各接続部2043a,2043c,2043eの線幅P1以上となるように設定するのが好ましい。これによって、押圧部材204bは、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが配置される領域に対応する発熱部材203の内周面部分に、充分な押圧力を付与することができる。そのため、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが配置される領域に対応する発熱部材203の領域部分は、放熱部材201の内周面に対して充分に密着し、局部的な伝熱効率の低下を抑制することができる。なお、加熱部材20が発熱部材403を備えている場合には、押圧部材204bにおける前記幅寸法P2は、ジグザグ形状に形成される各線状部4043b,4043d,4043fにおける頂部(谷部)の長手寸法P4、谷部間隔P5、谷部(頂部)の幅寸法P6、および抵抗発熱体の線幅以上となるように設定すればよい。
【0086】
図7(c)に示すような貫通孔2045が形成される押圧部材204cは、弾性力を有する単一の板状部材2044の表面に、円形状の複数の貫通孔2045が間隔をあけて規則的に形成されている。以上のような、貫通孔2045に形成される押圧部材204cは、発熱部材203の内周面に沿うように、発熱部材203の周方向に湾曲して設けられる。押圧部材204cは、発熱部材203の内周面に沿うように湾曲して設けられることによって、湾曲状態から静置状態に戻ろうとする復元力が、発熱部材203を放熱部材201の筒状部201aに近接する方向に弾発的に押圧する力となって働く。このような復元力が、発熱部材203を筒状部201aの内周面に保持するように作用するので、筒状部201aの内周面における所定位置に発熱部材203を安定的に保持することができる。
【0087】
また、前記押圧部材204bと同様に、押圧部材204cにおける、複数の貫通孔2045のそれぞれを規定する開口周縁部の最小幅寸法P3は、各線状部2043b,2043d,2043fおよび各接続部2043a,2043c,2043eの線幅P1以上となるように設定するのが好ましい。これによって、押圧部材204cは、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが配置される領域に対応する発熱部材203の内周面部分に、充分な押圧力を付与することができる。そのため、各抵抗発熱体2033a,2033d,2033gが配置される領域に対応する発熱部材203の領域部分は、放熱部材201の内周面に対して充分に密着し、局部的な伝熱効率の低下を抑制することができる。なお、加熱部材20が発熱部材403を備えている場合には、押圧部材204cにおける前記幅寸法P3は、ジグザグ形状に形成される各線状部4043b,4043d,4043fにおける頂部(谷部)の長手寸法P4、谷部間隔P5、谷部(頂部)の幅寸法P6、および抵抗発熱体の線幅以上となるように設定すればよい。
【0088】
また、押圧部材204a,204b,204c(以下、3種の押圧部材をまとめて「押圧部材204」と称す)を構成する材料は、特に制限されないが、ステンレス鋼、スプリング鋼などの金属、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの耐熱性樹脂、湾曲させても破壊されることのない曲がるセラミックスであるジルコニア薄板などを挙げることができる。このような材料で構成される押圧部材204は、高強度かつ高靭性を有する部材となるので、湾曲されても破壊されることなく大きな弾力性を有し、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する力が大きくなる。そのため、発熱部材203は、放熱部材201の筒状部201aの内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0089】
また、押圧部材204は、放熱部材201が有する筒状部201aの周方向における曲率半径R1よりも大きい周方向の曲率半径R2を有する部材を変形させて、筒状部201aの内側に配置されることが好ましい。このように、加熱部材20において放熱部材201の内側に配置される押圧部材204が変形された状態で配置されることによって、押圧部材204には、変形を復元しようとする力が働き、この復元しようとする復元力が、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する力となって働く。このように、押圧部材204が有する復元力が、発熱部材203を放熱部材201の内周面に保持するように作用するので、発熱部材203は、放熱部材201の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0090】
また、押圧部材204における周方向の長さは、放熱部材201の筒状部201aの周方向長さと略等しく設定されるが、押圧部材204における軸線方向の長さは、放熱部材201が有する筒状部201a、および発熱部材203の軸線方向の長さよりも大きくなるように設定される。そして、本実施形態では、押圧部材204は、筒状部201aの軸線方向両端部から外方に延出する延出部2040を有するように構成されている。さらに、各端部に対応する前記延出部2040のそれぞれには、外部と接続して押圧部材204を固定可能に構成される固定アダプタ205が設けられる。
【0091】
図8は、固定アダプタ205の構成を示す図である。押圧部材204の延出部2040に設けられる固定アダプタ205は、フレーム接続部205aと、接続孔205bと、押圧部材支持部205cと、アダプタ開口部205dとを含んで構成される。固定アダプタ205は、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる。また、固定アダプタ205の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、押圧部材支持部205cが略円柱状に形成されている。
【0092】
押圧部材支持部205cには、押圧部材204の延出部2040が挿通可能な大きさで厚み方向に貫通して開口するアダプタ開口部205dが形成されている。そして、フレーム接続部205aは、押圧部材支持部205cの側面の一部分から外方に突出するように形成され、そのフレーム接続部205aには、厚み方向に貫通して開口する接続孔205bが形成されている。
【0093】
固定アダプタ205は、押圧部材204の延出部2040がアダプタ開口部205dに挿通された状態で、フレーム接続部205aに形成される接続孔205bに挿通されるねじ部材などを介して外部の部材に接続されることによって、押圧部材204を外部の部材に固定する。このように、延出部2040に設けられる固定アダプタ205を介して押圧部材204を外部の部材に固定することによって、押圧部材204の発熱部材203に対する配置位置が規制される。そして、押圧部材204の配置位置が規制されることによって、その規制による外力を、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する押圧力として付与することができる。そのため、押圧部材204は、放熱部材201の内周面における所定位置に発熱部材203を安定的に保持することができる。
【0094】
以上のように、本実施形態の加熱部材20は、放熱部材201と、放熱部材201の内周面に接触して配置される低硬度良熱伝導部材202と、低硬度良熱伝導部材202の内周面に接触して配置される発熱部材203と、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する押圧部材204とを含んで構成される。そして、発熱部材203は、押圧部材204によって放熱部材201に近接する方向に押圧されて放熱部材201の内周面に固定されているが、押圧部材204には第2屈曲部2012によって発熱部材203に近接する方向に押圧力が付与されるので、発熱部材203は、放熱部材201の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。さらに、放熱部材201と発熱部材203との間には、低い硬さおよび高熱伝導性を有する材料からなる低硬度良熱伝導部材202が配置されているので、発熱部材203から放熱部材201への伝熱効率を低下させることなく、加熱部材20を構成する各部材の熱膨張差を吸収緩和することができ、各部材間で局部的な剥離が発生するのを防止することができる。
【0095】
このように、本実施形態の加熱部材20は、放熱部材201の内周面に対する発熱部材203の密着性が高い状態で維持された上で、各部材間で局部的な剥離が発生するのが防止されるので、局部的な伝熱効率の低下が発生するのが防止され、表面の温度分布が設定温度に対してばらつきのない加熱部材となる。そのため、加熱部材20は、設定温度に到達するまでのウォームアップ時間の短縮や表面の温度分布均一性を短時間のうちに確保することができ、高速印字においても充分な熱量を放熱部材201から加熱対象物である定着ベルト25に供給することができる。
【0096】
図9は、本発明の第2実施形態である加熱部材30の構成を示す図である。本実施形態の加熱部材30は、前述した加熱部材20に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。加熱部材30は、前述した加熱部材20が有する放熱部材201を放熱部材301に代えたこと以外は加熱部材20と同様である。加熱部材30において特徴的な構成は、放熱部材301の筒状部301aの内周面に内面コート層3013が形成され、外周面に外面コート層3014が形成されていることである。
【0097】
内面コート層3013は、耐熱性および高い熱輻射性を有する材料(たとえば、広い波長域において放射率が0.9〜1.0であり、かつ耐熱性を有する材料)からなる。筒状部301aの内周面に耐熱性および高い熱輻射性を有する材料からなる内面コート層3013が形成された放熱部材301は、発熱部材203で発生する熱を高効率で吸収および放熱して、加熱対象物である定着ベルト25に対して高効率で熱を伝達することができる。
【0098】
耐熱性および高い熱輻射性を有する材料としては、シリコーン系樹脂などを挙げることができる。そして、内面コート層3013は、たとえば、前記材料が溶媒に溶解または分散された液状物を、筒状部301aの内周面にスプレー塗布することによって形成することができる。具体的には、内面コート層3013は、シリコーン系樹脂からなる材料である、オキツモ株式会社製のB−600を、筒状部301aの内周面にスプレー塗布することによって形成することができる。以上のように、低硬度良熱伝導部材202と接触する筒状部301aの内周面に内面コート層3013を形成することによって、筒状部301aと低硬度良熱伝導部材202との界面で腐食が発生するのを防止することができ、長期間にわたって、発熱部材203から放熱部材301への伝熱効率の低下を防止することができる。
【0099】
外面コート層3014は、耐熱性および低摩擦係数を有する材料からなる。耐熱性および低摩擦係数を有する材料としては、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂を挙げることができ、これらのフッ素樹脂を1種で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
以上のように、加熱対象物である定着ベルト25が接触する筒状部301aの外周面に外面コート層3014を形成することによって、筒状部301aと定着ベルト25との間の摩擦力を低減することができ、定着ベルト25が摩耗するのを防止して、定着ベルト25の高い耐久性を確保することができるとともに、定着ベルト25を回転駆動させる定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bへの負荷も低減して各ローラの高い耐久性を確保し、低電力で回転駆動させることができる。また、筒状部301aと定着ベルト25との間の摩擦力が低減可能になると、定着ベルト25の回転をスムースにすることができ、加熱部材30の定着ベルト25に対する伝熱効率が低下するのを防止することができる。
図10は、本発明の第3実施形態である加熱部材30Aの構成を示す図である。本実施形態の加熱部材30Aは、前述した加熱部材20に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。加熱部材30Aは、前述した加熱部材20が有する放熱部材201を放熱部材302に代えたこと以外は加熱部材20と同様である。加熱部材30Aが有する放熱部材302は、円筒体の一部を成す筒状に形成される筒状部302aと、筒状部302aの周方向両端部の少なくとも一部分から内側に屈曲する屈曲片302bとを有する。前述した放熱部材201の屈曲片201bが2つの屈曲部2011,2012を有するのに対して、放熱部材302の屈曲片302bは、1つの第1屈曲部3021のみを有するように構成されている。
【0101】
屈曲片302bの第1屈曲部3021は、筒状部302aの周方向両端部の少なくとも一部分から押圧部材204に近接する方向に屈曲し、遊端部が押圧部材204の内周面に接触して押圧部材204に対して発熱部材203に近接する方向への押圧力を付与するように形成されている。
【0102】
本実施形態の加熱部材30Aでは、発熱部材203は、押圧部材204によって放熱部材302に近接する方向に押圧されて放熱部材302の内周面に固定されているが、押圧部材204は、第1屈曲部3021によって発熱部材203に近接する方向に押圧力が付与されるので、この押圧力が発熱部材203を放熱部材302に近接する方向に押圧する力として作用する。これによって、発熱部材203は、放熱部材302の内周面に対する密着性が向上された状態で固定される。
【0103】
図11は、本発明の実施の一形態である定着装置15の構成を示す図である。また、図12は、定着ベルトが加熱部材に懸架される領域の近傍における定着装置15の構成を示す図である。定着装置15は、後述する画像形成装置100に備えられる装置であって、記録媒体である記録紙32上に担持されるトナー像31を加熱加圧して、記録紙32上に定着する装置である。そして、定着装置15は、前述した本実施形態の加熱部材20,30,30Aのいずれかの加熱部材を備える。定着装置15が加熱部材20を備えた場合について、以下に説明する。
【0104】
定着装置15は、第1定着部材である定着ローラ15aと、第2定着部材である加圧ローラ15bと、無端状ベルトである定着ベルト25と、加熱部材20とを含んで構成される。定着装置15においては、定着ベルト25が定着ローラ15aと加熱部材20との間に張架され、加圧ローラ15bが定着ベルト25を介して定着ローラ15aに対向するように配置されている。そして、定着ローラ15aと加熱部材20とは、定着ローラ15aの軸線方向において、略平行となるように配置されている。つまり、定着ローラ15aの軸線と、加熱部材20の軸線とは、略平行である。これによって、定着ローラ15aと加熱部材20との間に張架される定着ベルト25が摺動するとき、蛇行するのを防止して、定着ベルト25の耐久性を高く維持することができる。
【0105】
定着装置15は、加熱部材20が定着ベルト25と接触して定着ベルト25を加熱し、定着ベルト25と加圧ローラ15bとで形成する定着ニップ部15cを、所定の定着速度および複写速度で記録媒体である記録紙32が通過したとき、記録紙32上に担持されている未定着のトナー像31を記録紙32上に加熱加圧して定着する装置である。
【0106】
なお、未定着のトナー像31は、たとえば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)などの現像剤(トナー)によって形成される。また、定着速度とは所謂プロセス速度であり、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。また、記録紙32が定着ニップ部15cを通過するときには、定着ベルト25は、記録紙32のトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっている。
【0107】
定着ローラ15aは、定着ベルト25を介して加圧ローラ15bに圧接することで定着ニップ部15cを形成するとともに、駆動モータ(駆動手段)113により回転軸線まわりに回転方向A方向に回転駆動することによって、定着ベルト25を搬送する。定着ローラ15aは、直径が30mmで、その内側から順に芯金、弾性層が形成された2層構造からなり、芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、本実施の形態では、定着ローラ15aが定着ベルト25を介して加圧ローラ15bに圧接するときの力は、216N程度である。
【0108】
加圧ローラ15bは、定着ベルト25を介して定着ローラ15aに対向しかつ圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられている。加圧ローラ15bは、定着ローラ15aの回転に従動して回転方向B方向に回転する。加圧ローラ15bは、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層にはPFAやPTFEなどのフッ素樹脂が適している。加圧ローラ15bは、たとえば、ローラ直径が30mmで、芯金に直径24mm(肉厚2mm)の鉄(STKM)パイプ、弾性層に厚みが3mmのシリコンソリッドゴム、離型層に厚みが30μmのPFAチューブからなるローラを用いることができる。
【0109】
また、加圧ローラ15bの内部には、加圧ローラ15bを加熱するヒータランプ26(たとえば、定格電力400W)が配置されている。後述する装置制御手段111が電源回路1111からヒータランプ26に電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ26が発光し、ヒータランプ26から赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ15bの内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ15b全体が加熱される。なお、上述したヒータランプ26は、加圧ローラ15bの内面より加熱するものであるが、これとは別に外周面加熱用のローラにて、加圧ローラ15bの表面より加熱する方法も構成可能である。
【0110】
定着ベルト25は、加熱部材20によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部15cを通過する未定着のトナー像31が形成された記録紙32を加熱する。定着ベルト25は、無端状のベルトで、加熱部材20と定着ローラ15aによって懸架され、定着ローラ15aに所定の角度で巻きかかっている。定着ベルト25は、定着ローラ15aの回転時には、定着ローラ15aに従動して回転方向A方向に回転するようになっている。定着ベルト25は、ポリイミドなどの耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケルなどの金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層として耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料(たとえばシリコンゴム)が形成され、さらにその表面に離型層として耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料(たとえばPFAやPTFEなどのフッ素樹脂)が形成された3層構造となっている。また、基材のポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、加熱部材20との摺動負荷を低減することができる。
【0111】
定着装置15に備えられる加熱部材20は、放熱部材201の筒状部201aの外周面において定着ベルト25に接触して、定着ベルト25を所定の温度に加熱する。定着装置15が備える加熱部材20は、前述したように、放熱部材201と、低硬度良熱伝導部材202と、発熱領域が放熱部材201の軸線方向両端部と中央部とに3分割された発熱部材203と、押圧部材204とを含む。
【0112】
押圧部材204の軸線方向両端部に設けられる延出部2040には、各端部に対応して2つの固定アダプタ205が設けられており、押圧部材204は、固定アダプタ205を介して定着装置15のサイドフレーム110に固定されている。このように、押圧部材204が固定アダプタ205を介してサイドフレーム110に固定されているので、加熱部材20自身が定着ベルト25との摩擦力で回転してしまうのが防止される。そのため、加熱部材20が有する発熱部材203に高電流が供給されても、安全性を充分に確保することができる。さらに、押圧部材204が固定アダプタ205を介してサイドフレーム110に固定されているので、押圧部材204の発熱部材203に対する配置位置が規制される。このように、押圧部材204の配置位置が規制されることによって、その規制による外力(定着ベルト25と押圧部材204との間に作用するベルトテンション)を、発熱部材203を放熱部材201に近接する方向に弾発的に押圧する押圧力として付与することができる。
【0113】
また、定着装置15は、定着ベルト25が回転摺動するときに蛇行するのを防止する蛇行防止用カラーが、押圧部材204の延出部2040に配設されるように構成されてもよい。蛇行防止用カラーとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなるカラーを用いることができるが、これに限定されるものではなく、押圧部材204の延出部2040と独立で回転できる構成のものであればよい。このように、蛇行防止用カラーが独自に回転自在であるので、定着ベルト25が蛇行防止用カラーに当接しても負荷がかかることなく摺動せず、定着ベルト25がわれてしまうのを防止して、定着ベルト25の耐久性を高く維持することができる。なお、定着ベルト25の回転状態によっては、延出部2040に蛇行防止用カラーを設置せず、定着ローラ15aのみに蛇行防止用カラーを設置することもできる。
【0114】
また、定着装置15においては、温度検知手段として、加熱部材20に接触する定着ベルト25の周面近傍には発熱体側サーミスタ24a、加圧ローラ15bの周面近傍には加圧ローラ側サーミスタ24bが配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。本実施の形態における発熱体側サーミスタ24aは、非接触式の温度検知手段であり、赤外線検知型の温度センサである。接触式の温度検知手段を定着ベルト25に接触して配置する構成では、定着ベルト25と接触する界面において、接触式温度検知手段が、定着ベルト25の表面離型層を摩耗させる場合がある。このようにして定着ベルト25の表面離型層が損傷、劣化した場合には、トナー像31に対する定着性に影響を及ぼし、記録紙32上に劣悪な定着画像が形成されてしまう。また、定着ベルト25の周面近傍には、定着ベルト25の異常昇温を検知して、所定の温度以上になると電源回路1111を切断するサーモスタットまたはサーマルプロテクタ24cが配設されている。
【0115】
次に、定着装置15における電気的制御を説明する。図13は、定着装置15の電気的構成を示すブロック図である。定着装置15では、発熱体側サーミスタ24aおよび加圧ローラ側サーミスタ24bによって検出された温度データ、サーマルプロテクタ24cによって検出された定着ベルト25の異常昇温データに基づいて、温度制御手段としての制御回路1112が、定着ベルト25、加圧ローラ15bの表面温度を所定の温度にするように、電源回路1111を介して、加熱部材20が有する発熱部材203およびヒータランプ26への通電を制御する。また、制御回路1112は、駆動モータ113を制御して、定着ローラ15aを回転軸線まわりに回転させて、定着ベルト25を回転させる。そして、制御回路1112および電源回路1111は、定着装置15の全動作を制御する装置制御手段111によって統括的に制御される。
【0116】
具体的には、装置制御手段111は、画像形成指示の入力を受けると、電源回路1111に電力供給を指示する制御信号を出力する。ここで、画像形成指示は、後述する画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる操作パネルまたは画像形成装置100に接続されるコンピュータなどの外部機器から入力される指示であり、この画像形成指示が入力されることによって、定着装置15は定着処理動作を開始する。
【0117】
装置制御手段111から制御信号が入力された電源回路1111は、加熱制御手段206を介して、加熱部材20の発熱部材203に電力を供給して定着ベルト25を加熱させ、ヒータランプ26に電力を供給して加圧ローラ15bを加熱させる。発熱体側サーミスタ24aが検出した定着ベルト25の表面温度データに関する信号、加圧ローラ側サーミスタ24bが検出した加圧ローラ15bの表面温度データに関する信号、サーマルプロテクタ24cが検出した定着ベルト25の異常昇温データに関する信号が制御回路1112に入力される。
【0118】
装置制御手段111に制御された制御回路1112は、入力された信号に基づいて、定着ベルト25、加圧ローラ15bの表面温度が所定の温度(定着温度)となるように、電源回路1111からの加熱部材20およびヒータランプ26に対する供給電力を制御する。具体的には、電源回路1111に制御された加熱制御手段206は、発熱体側サーミスタ24aによって検出された温度データに基づいて、または該温度データと電力算出部2063が算出した電力算出値とに基づいて、加熱部材20に対する供給電力を制御する。また、電源回路1111は、加圧ローラ側サーミスタ24bによって検出された温度データに基づいて、ヒータランプ26に対する供給電力を制御する。
【0119】
制御回路1112は、入力された信号に基づいて、定着ベルト25および加圧ローラ15bの表面温度が所定の定着温度になったと判断すると、駆動モータ113を制御して、定着ローラ15aを回転軸線まわりに回転させて、定着ベルト25を回転させる。このように定着ベルト25が回転すると、定着ベルト25と加圧ローラ15bとの間に形成される定着ニップ部15cに、未定着のトナー像31が形成される記録紙32が搬送される。このとき、記録紙32は、未定着のトナー像31を担持した面を定着ベルト25側に向けて搬送される。そして、記録紙32上の未定着のトナー像31が定着ベルト25の外周面に密着したまま挟持搬送されていくことにより、定着ベルト25から熱が付与され、また加圧力を受けて記録紙32の表面に定着される。
【0120】
以上のように構成される定着装置15は、表面の温度分布が設定温度に対してばらつきのない本実施形態の加熱部材20を備えているので、定着ベルト25の表面における温度分布が設定温度に対して均一となり、定着温度がばらつくのが防止されて、均一な定着特性を有する定着装置となる。また、定着装置15が備える本実施形態の加熱部材20は、局部的な伝熱効率の低下が発生するのが防止されたものなので、定着装置15は、所望の定着温度を得るまでのウォームアップ時間が短く、消費電力の増大が防止された定着装置となる。
【0121】
なお、本実施形態では、定着装置15は、加圧ローラ15bが定着ベルト25を介して定着ローラ15aと圧接する圧接部にて定着ニップ部15cが形成されるように構成したが、加圧ローラ15bが定着ベルト25を介して加熱部材20と圧接する圧接部にて定着ニップ部が形成されるように構成してもよい。
【0122】
図14は、本発明の他の実施形態である定着装置40の構成を示す図である。定着装置40は、未定着のトナー像31が担持される記録紙32の搬送方向上流側に配置される第1定着手段450と、搬送方向下流側に配置される第2定着手段460とが鉛直方向に並んで配置されるように構成されている。第1定着手段450と第2定着手段460との間には、搬送ガイド板または搬送ローラなどのガイド部材が設けられており、第1定着手段450の定着ニップ部で定着処理された記録紙32は、ガイド部材に沿って搬送されて、第2定着手段460の定着ニップ部で定着処理されて排出されるようになっている。定着装置40は、定着装置15に代えて後述する画像形成装置100に搭載可能である。また、定着装置40が有する第1定着手段450および第2定着手段460のそれぞれは、前述した本実施形態の加熱部材20,30,30Aのいずれかの加熱部材を備える。第1定着手段450および第2定着手段460のそれぞれが、加熱部材20を備えた場合について、以下に説明する。
【0123】
第1定着手段450は、加熱部材20と、第1定着ローラ452と、第1加圧ローラ453と、前述した定着ベルト25と同様に構成される第1定着ベルト454とを含んで構成される。第1定着手段450においては、第1定着ベルト454が第1定着ローラ452と加熱部材20との間に張架され、第1加圧ローラ453が第1定着ベルト454を介して第1定着ローラ452に対向するように配置されている。
【0124】
第1定着手段450が備える加熱部材20は、前述したように、放熱部材201と、低硬度良熱伝導部材202と、発熱領域が放熱部材201の軸線方向両端部と中央部とに3分割された発熱部材203と、押圧部材204とを含む。また、押圧部材204の延出部2040には固定アダプタ205が設けられており、押圧部材204は、固定アダプタ205を介して定着装置40のサイドフレームに固定されている。
【0125】
本実施形態では、放熱部材201の筒状部201aは、肉厚0.5mmのアルミニウムからなる円筒体の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が20mm(直径40mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが235°(狭角が125°)となるように作製されたものであり、外周面において第1定着ベルト454と接触して、発熱部材203で発生した熱を第1定着ベルト454に伝達する。
【0126】
発熱部材203は、前述したように、発熱領域が放熱部材201の軸線方向両端部と中央部とに対応して3分割されており、各発熱領域は、それぞれ区別された状態で通電可能となっている。発熱部材203は、通紙する記録紙32の通紙サイズや厚みに応じて、各発熱領域が適宜通電制御されて、発熱する。本実施の形態では、発熱部材203は1100Wの発熱量で発熱し、中央部が600W、軸線方向両端部がそれぞれ250Wである。なお、発熱部材203に代えて、前述した発熱部材303を用いてもよい。
【0127】
また、加熱部材20に巻き掛けられた第1定着ベルト454の周面近傍には、その周面温度を非接触で検出する第1発熱体側サーミスタ455が配置されている。
【0128】
第1定着ローラ452は、第1定着ベルト454を介して第1加圧ローラ453に圧接することで定着ニップ部を形成するとともに、駆動モータ113により回転軸線まわりに回転方向G方向に回転駆動することによって、第1定着ベルト454を搬送する。第1定着ローラ452は、その内側から順に芯金452a、弾性層452bが形成された2層構造からなり、芯金452aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられ、本実施の形態では芯金452aは、アルミニウムからなる外径40mmの部材である。また、弾性層452bにはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層452bは、熱伝導率が小さいシリコン発泡スポンジからなる厚さ5mmの部材である。こうして構成された第1定着ローラ452の表面硬さは68度(アスカーC硬度)である。
【0129】
また、第1定着ローラ452の第1定着ベルト454の巻き掛け部分(加熱ニップ部)の周面近傍には、第1定着ローラ452に巻き掛けられた第1定着ベルト454の周面温度を非接触で検出する第1定着ローラ側サーミスタ456が配置されている。
【0130】
第1加圧ローラ453は、第1定着ベルト454を介して第1定着ローラ452に対向しかつ圧接し、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向H方向に回転駆動するように設けられている。第1定着ベルト454および第1定着ローラ452と第1加圧ローラ453とは、互いに逆方向に回転する。第1加圧ローラ453は、その内側から順に芯金453a、弾性層453b、離型層453cが形成された3層構造からなっている。芯金453aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられ、本実施の形態では芯金453aは、アルミニウムからなる外径46mmの部材である。また、弾性層453bにはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層453bは、シリコンゴムからなる厚さ2mmの部材である。また、離型層453cにはPFAやPTFEなどのフッ素樹脂が適しており、本実施の形態では離型層453cはPFAからなる厚さ約30μmの部材である。こうして構成された第1加圧ローラ453の表面硬さは75度(アスカーC硬度)である。
【0131】
また、第1加圧ローラ453の内部には、第1加圧ローラ453を加熱する第1ヒータランプ453d(たとえば、定格電力450W)が配置されている。装置制御手段111が電源回路1111から第1ヒータランプ453dに電力を供給(通電)させることによって、第1ヒータランプ453dが発光し、第1ヒータランプ453dから赤外線が放射される。これによって、第1加圧ローラ453の内周面が赤外線を吸収して加熱され、第1加圧ローラ453全体が加熱される。また、第1加圧ローラ453の周面には、第1加圧ローラ453の周面温度を接触で検出する第1加圧ローラ側サーミスタ457が配置されている。また、第1加圧ローラ453には、第1加圧ローラ453表面を素早く加熱する外部加熱装置やクリーニングローラ、オイル塗布ローラを設けた構成としてもよい。
【0132】
第1定着ローラ452および第1加圧ローラ453は、外径が50mmであり、図示していない弾性部材(バネ部材)によって、所定の荷重(ここでは、600N)で互いに圧接される。これにより、第1定着ローラ452と第1加熱手段451とに架け渡された第1定着ベルト454の周面と第1加圧ローラ453周面との間に定着ニップ部が形成される。当該定着ニップ部は、第1定着ベルト454と第1加圧ローラ453とが互いに当接する部分であり、本実施の形態では、9mmである。第1定着ローラ452が所定の温度(ここでは、180℃)に加熱され、記録紙32は、この定着ニップ部を通過することで、未定着のトナー像31が加熱溶融し画像が定着されるようになっている。記録紙32が定着ニップ部を通過するときには、第1定着ベルト454は記録紙32のトナー画像形成面に当接する一方、第1加圧ローラ453は記録紙32におけるトナー画像形成面とは反対の面に当接するようになっている。
【0133】
第1定着ローラ452および第1加圧ローラ453の回転速度に応じて、所定の定着速度および複写速度で、定着ニップ部に記録紙32が搬送され、未定着のトナー像31が記録紙32に熱および圧力により定着される。ここで、定着速度とは、いわゆるプロセス速度のことで、たとえば、モノクロ印字を行う場合には355mm/secでありカラー印字を行う場合には220mm/secで回転し、複写速度とは、1分あたりのコピー枚数のことで、たとえば、モノクロ印字では70枚/分、カラー印字では60枚/分である。
【0134】
また、第1定着手段450には、第1定着ベルト454の表面をクリーニングする図示しないウェブクリーニング装置が配置されている。
【0135】
また、定着装置40は、前述した定着装置15と同様に、装置制御手段111を備えており、装置制御手段111の制御回路1112は、各サーミスタ455,456,457により検出された温度データに基づいて、加熱部材20が有する放熱部材201、第1定着ベルト454、第1加圧ローラ453が所定の温度になるように、電源回路1111を介して加熱制御手段206を制御して、発熱部材203および第1ヒータランプ453dへの通電を制御させる。
【0136】
次に、第2定着手段460について説明する。第2定着手段460は、加熱部材20と、第2定着ローラ462と、第2加圧ローラ463と、前述した定着ベルト25と同様に構成される第2定着ベルト464とを含んで構成される。第2定着手段460においては、第2定着ベルト464が第2定着ローラ462と加熱部材20との間に張架され、第2加圧ローラ463が第2定着ベルト464を介して第2定着ローラ462に対向するように配置されている。第2定着手段460の基本構成は、第1定着手段450と同じであるが、加熱部材20の構成と、第2定着ローラ462の構成とが異なっている。
【0137】
第2定着手段460に備えられる加熱部材20は、放熱部材201と、低硬度良熱伝導部材202と、発熱領域が放熱部材201の軸線方向両端部と中央部とに対応して3分割され、かつ放熱部材201の周方向に対応して2分割された合計6分割された発熱部材203と、押圧部材204とを含む。また、押圧部材204の延出部2040には固定アダプタ205が設けられており、押圧部材204は、固定アダプタ205を介して定着装置40のサイドフレームに固定されている。
【0138】
放熱部材201は、外周面において第2定着ベルト464と接触して発熱部材203で発生した熱を第2定着ベルト464に伝達する。
【0139】
第2定着手段460に備えられる加熱部材20においては、発熱部材203は、発熱領域が放熱部材201の軸線方向両端部と中央部とに対応して3分割され、かつ放熱部材201の周方向に対応して2分割されており、合計6分割された各発熱領域は、それぞれ区別された状態で通電可能となっている。発熱部材203は、通紙する記録紙32の通紙サイズや厚みに応じて、各発熱領域が適宜通電制御されて、発熱する。本実施の形態では、第2定着手段460に備えられる加熱部材20は900Wの発熱量で発熱し、中央部の2つの発熱領域の合計が600W、軸線方向両端部の4つの発熱領域の合計が300Wである。
【0140】
また、加熱部材20に巻き掛けられた第2定着ベルト464の周面近傍には、その周面温度を非接触で検出する第2発熱体側サーミスタ465が配置されている。
【0141】
第2定着ローラ462は、第2定着ベルト464を介して第2加圧ローラ463に圧接することで定着ニップ部を形成するとともに、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向I方向に回転駆動することによって、第2定着ベルト464を搬送する。第2定着ローラ462は、その内側から順に芯金462a、弾性層462bが形成された2層構造からなり、芯金462aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられ、本実施の形態では芯金462aは、アルミニウムからなる外径46mmの部材である。また、弾性層462bにはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層462bは、シリコンゴムからなる厚さ2mmの部材である。こうして構成された第2定着ローラ462の表面硬さは68度(アスカーC硬度)である。
【0142】
また、第2定着ローラ462の第2定着ベルト464の巻き掛け部分(加熱ニップ部)の周面近傍には、第2定着ローラ462に巻き掛けた第2定着ベルト464の周面温度を非接触で検出する第2定着ローラ側サーミスタ466が配置されている。
【0143】
第2加圧ローラ463は、第2定着ベルト464を介して第2定着ローラ462に対向しかつ圧接し、駆動モータ113により回転軸線まわりに回転方向J方向に回転駆動するように設けられている。第2定着ベルト464および第2定着ローラ462と第2加圧ローラ463とは、互いに逆方向に回転する。第2加圧ローラ463は、その内側から順に芯金463a、弾性層463b、離型層463cが形成された3層構造からなっている。芯金463aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられ、本実施の形態では芯金463aは、アルミニウムからなる外径46mmの部材である。また、弾性層463bにはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層463bは、シリコンゴムからなる厚さ2mmの部材である。また、離型層463cにはPFAやPTFEなどのフッ素樹脂が適しており、本実施の形態では離型層463cはPFAからなる厚さ約30μmの部材である。こうして構成された第2加圧ローラ463の表面硬さは75度(アスカーC硬度)である。
【0144】
また、第2加圧ローラ463の内部には、第2加圧ローラ463を加熱する第2ヒータランプ463d(たとえば、定格電力400W)が配置されている。装置制御手段111が電源回路1111から第2ヒータランプ463dに電力を供給(通電)させることによって、第2ヒータランプ463dが発光し、第2ヒータランプ463dから赤外線が放射される。これによって、第2加圧ローラ463の内周面が赤外線を吸収して加熱され、第2加圧ローラ463全体が加熱される。また、第2加圧ローラ463の周面には、第2加圧ローラ463の周面温度を接触で検出する第2加圧ローラ側サーミスタ467が配置されている。
【0145】
第2定着ローラ462および第2加圧ローラ463は、外径が50mmであり、図示していない弾性部材(バネ部材)によって、所定の荷重(ここでは、550N)で互いに圧接される。これにより、第2定着ローラ462と第2加熱手段461とに架け渡された第2定着ベルト464の周面と第2加圧ローラ463周面との間に定着ニップ部が形成される。当該定着ニップ部は、第2定着ベルト464と第2加圧ローラ463とが互いに当接する部分であり、本実施の形態では、8mmである。
【0146】
装置制御手段111の制御回路1112は、各サーミスタ465,466,467により検出された温度データに基づいて、加熱部材20が有する放熱部材201、第2定着ベルト464、第2加圧ローラ463が所定の温度になるように、電源回路1111を介して加熱制御手段206を制御して、発熱部材203および第2ヒータランプ463dへの通電を制御させる。
【0147】
以上のような第1定着手段450および第2定着手段460を含んで構成される定着装置40においては、装置制御手段111は、第1定着手段450の温度変動を補償するように第2定着手段460の温度を制御して(グロス補償モードと称する)、連続通紙(連続定着処理)における画像の光沢がほぼ均一とするように制御を行う。
【0148】
まず、出力される複数の画像の光沢がほぼ均一となるように、第1定着ベルト454と第2定着ベルト464との温度の関係式を予め求めておく。すなわち、第1定着ベルト454の温度変化に対して、上記関係式で求められる温度になるように第2定着ベルト464の温度の制御を行うことで、第1定着ローラ452の温度によらず、一定の光沢を有する画像を得るものである。
【0149】
第1定着手段450に対して装置制御手段111は、第1定着ローラ側サーミスタ456により検知された第1定着ベルト454の表面温度T1と、第1定着ベルト454の目標温度設定値T2との差分(T1−T2)を第1定着ベルト454の温度変動値αとして求め、この温度変動値αが第1定着ベルト454の非通紙時の温調における温度リップルを超えたとき、グロス補正温調モードによる制御を行う。第2定着ベルト464の状態での目標設定温度をT4とすると、グロス補正温調モードにおいては、第2定着ベルト464の目標設定温度T4に第2定着ベルト464の温度補正値βを加算した値(T4+β)で第2定着ベルト464の温度制御を行う。第2定着手段460に対して装置制御手段111は、第1定着ベルト454の表面温度(T2+α)を上記関係式に代入して第2定着ベルト464の制御温度(T4+β)を求めて温度制御を行う。グロス補正温調モードは、連続定着処理が終了するか、あるいは、第1定着ベルト454の温度変動値αが所定値以下になると終了し、通常のモードによる制御が行われる。
【0150】
図15は、本発明の他の実施形態である定着装置50の構成を示す図である。定着装置50は、定着部540と加圧部550とを含んで構成されている。定着装置50は、未定着のトナー像31が担持される記録紙32を、定着部540と加圧部550との間で形成される定着ニップ部で定着処理する。定着装置50は、定着装置15に代えて画像形成装置100に搭載可能である。また、定着装置50が有する定着部540は、前述した本実施形態の加熱部材20,30,30Aのいずれかの加熱部材を備える。定着部540が、加熱部材20を備えた場合について、以下に説明する。
【0151】
定着部540は、加熱部材20と、定着ローラ542と、無端状ベルトである定着ベルト543とを含んで構成される。定着部540においては、定着ベルト543が定着ローラ542と加熱部材20との間に張架されている。
【0152】
定着部540が備える加熱部材20は、前述したように、放熱部材201と、低硬度良熱伝導部材202と、発熱領域が放熱部材201の軸線方向両端部と中央部とに3分割された発熱部材203と、押圧部材204とを含む。また、押圧部材204の延出部2040には固定アダプタ205が設けられており、押圧部材204は、固定アダプタ205を介して定着装置50のサイドフレームに固定されている。放熱部材201の筒状部201aは、外周面において定着ベルト543と接触して、発熱部材203で発生した熱を定着ベルト543に伝達する。また、加熱部材20に巻き掛けられた定着ベルト543の周面近傍には、その周面温度を非接触で検出する発熱体側サーミスタ545が配置されている。
【0153】
定着ローラ542は、駆動モータ113により回転軸線まわりに回転方向X方向に回転駆動することによって、定着ベルト543を搬送する、外径30mmのローラ状部材である。定着ローラ542は、その内側から順に芯金542a、弾性層542b、表面層542cが形成された3層構造からなり、芯金542aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの熱伝導性の高い金属あるいはそれらの合金などが用いられる。芯金542aの形状としては、円筒状、円柱状などが挙げられるけれども、芯金542aからの放熱量が少ない円筒状の方が好ましい。また、弾性層542bにはシリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。
【0154】
表面層542cを構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、摺動性が高いものであれば特に制限されず、たとえば、PFA、PTFEなどのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴムなどを使用してもよい。また、表面層を設けないで、2層構造とすることも可能である。また、定着ローラ542の内部に、定着ローラ542を加熱する加熱手段を設けてもよい。これは、画像形成装置100の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録紙32に熱が移行することに起因する定着ローラ542の表面温度の低下などを防止するためである。
【0155】
定着ベルト543は、加熱部材20によって所定の温度に加熱され、定着ベルト543に接触して搬送される未定着のトナー像31が形成された記録紙32を加熱する。定着ベルト543は、無端状のベルトで、加熱部材20と定着ローラ542によって懸架され、定着ローラ542に所定の角度で巻きかかっている。定着ベルト543は、定着ローラ542の回転時には、定着ローラ542に従動して回転方向X方向に回転するようになっている。また、定着ベルト543は、定着ローラ542と後述する加圧ローラ552との圧接部で加圧ベルト553に接触するように設けられている。
【0156】
定着ベルト543は、基材層と弾性層と離型層とを含む3層構造よりなり、直径60mmの円筒形状に形成された厚さ270μmの無端状ベルトである。基材層を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れるものであれば特に制限されないけれども、耐熱性合成樹脂を挙げることができ、中でも、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などが好ましい。これらの樹脂は、高強度、高耐熱性の材料であるばかりでなく、低価格である。基材層の厚さは、特に制限されないけれども好ましくは、30〜200μmである。本実施の形態では、基材層はポリイミドからなり、厚さは100μmである。
【0157】
弾性層を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないけれども、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れ、耐熱性も良好なシリコンゴムが好ましい。弾性層の表面硬さは、JIS−A硬さで1〜60度であることが好ましい。このJIS−A硬さの範囲であれば、弾性層の強度の低下、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止できる。このような特性を有するシリコンゴムとしては具体的には、1成分系、2成分系または3成分系以上のシリコンゴム、LTV型、RTV型またはHTV型のシリコンゴム、縮合型または付加型のシリコンゴム等が挙げられる。また、弾性層の厚さは、30〜500μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、弾性層の弾性効果を維持しつつ、断熱性を低く抑えることができて省エネルギー効果を発揮できる。本実施の形態では、弾性層は、JIS−A硬さが5度、厚さ150μmのシリコンゴムからなる。
【0158】
離型層は、フッ素樹脂チューブからなる。定着ベルト543の外周側に形成される離型層が、フッ素樹脂チューブより構成されているので、フッ素樹脂を含有する樹脂を塗布し、これを焼成することにて形成された離型層よりも耐久性に優れている。また、塗布・焼成にて離型層を形成する場合、寸法精度の高い離型層を得ようとすると、高精度で高価な金型が必要となるが、チューブを用いることで、上述のような金型を用いずとも、寸法精度の高い離型層が得られている。離型層の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、適度な強度を持ち、弾性層の弾性を活かしながら、記録紙32の微小な凹凸に追従することが可能である。本実施の形態では、離型層は、厚さ約20μmのPTFEチューブを使用する。
【0159】
次に、加圧部550について説明する。加圧部550は、加圧ローラ551と、テンションローラ552と、無端状ベルトである加圧ベルト553とを含んで構成される。加圧部550においては、加圧ベルト553が加圧ローラ551とテンションローラ552との間に張架されている。加圧ローラ551とテンションローラ552とはそれぞれ定着装置530の不図示の左右の側板間に回転自在に軸受されて支持されている。
【0160】
加圧ベルト553は、前述した定着ベルト543と同様に構成されており、接触する定着ベルト543に従動して回転する。
【0161】
加圧ローラ551は、定着ベルト543の回転に従動して回転する加圧ベルト553の回転に伴って回転軸線まわりに回転方向Y方向に回転する、外径30mmのローラ状部材である。加圧ローラ551は、その内側から順に芯金551a、弾性層551b、表面層551cが形成された3層構造からなる。加圧ローラ551の芯金542a、弾性層551b、表面層551cを構成する材料は、前述した定着ローラ542の芯金542a、弾性層542b、表面層542cと同様のものを挙げることができる。また、加圧ローラ551の内部には、加圧ローラ551を加熱する加熱手段551dが設けられている。これは、画像形成装置100の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録紙32に熱が移行することに起因する加圧ローラ551の表面温度の急激な低下などを防止するためである。本実施の形態では、加熱手段551dにはハロゲンランプが用いられる。
【0162】
テンションローラ552は、外径が30mmで、内径が26mmである鉄合金製の芯金552aに、熱伝導率を小さくして加圧ベルト553からの熱伝導を少なくするためにシリコーンスポンジ層552bが設けられている。
【0163】
定着装置50は、定着ベルト543と加圧ベルト553とが接触する部分に定着ニップ部が形成され、該定着ニップ部にて定着処理が行われる、いわゆるツインベルト定着方式の定着装置である。定着装置530においては、定着ローラ542と加圧ローラ552とが、定着ベルト543および加圧ベルト553を介して圧接する圧接部が定着ニップ部の最下流部分となり、定着ベルト543と加圧ベルト553とが接触する部分に形成される定着ニップ部の全領域の中で、前記最下流部分が、記録紙搬送方向における圧力分布が最大となる部分である。このように、定着ニップ部の最下流部分における圧力分布が最大となるように構成することによって、定着ベルト543と加圧ベルト553とが回転時にスリップすることを防止することができる。
【0164】
また、定着装置50には、装置を大型化することなく幅広い定着ニップ領域を得るために、定着ベルト543を加圧ベルト553に向けて加圧する第1の加圧パッドとしての定着パッド544と、加圧ベルト553を定着ベルト543に向けて加圧する第2の加圧パッドとしての加圧パッド554とが設けられている。定着パッド544および加圧パッド554は、定着装置50の不図示の左右の側板間に支持させて配設している。加圧パッド554は、不図示の加圧機構により定着パッド544に近接する方向Zに所定の加圧力にて定着パッド544に向けて加圧されている。定着パッド544および加圧パッド554を構成する材料としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などを挙げることができる。
【0165】
また、回転体ではない定着パッド544と加圧パッド554とで定着ニップ部を形成すると、定着ベルト543および加圧ベルト553の内周面は各パッドに摺擦され、各ベルト543,553の内周面と各パッド544,554との摩擦係数が大きいと、摺動抵抗が大きくなる。その結果として、画像のずれ、ギア破損、駆動モータ113の消費電力アップなどの問題が発生し、特にツインベルト方式において、この問題が顕著である。そのために、定着パッド544および加圧パッド554における各ベルト543,553との接触面には、低摩擦シート層が設けられている。これにより、各ベルト543,553との摺擦による各パッド544,554の摩耗が防止され、摺動抵抗も低減できるので、良好なベルト走行性、ベルト耐久性が得られる。
【0166】
なお、本実施形態では、定着装置50は、定着部540側に配置される定着ベルト543を加熱部材20によって加熱するように構成したが、加圧部550側に配置される加圧ベルト553を加熱部材20によって加熱するように構成してもよい。
【0167】
図16は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて記録紙32に対して多色および単色の画像を形成する装置である。そして、画像形成装置100は、前述した本実施形態の定着装置15,40,50のいずれかの定着装置を備える。画像形成装置100が定着装置15を備えた場合について、以下に説明する。
【0168】
画像形成装置100は、露光ユニット10、感光体ドラム101(101a〜101d)、現像装置102(102a〜102d)、帯電ローラ103(103a〜103d)、クリーニングユニット104(104a〜104d)、中間転写ベルト11、一次転写ローラ13(13a〜13d)、二次転写ローラ14、定着装置15、用紙搬送路P1,P2,P3、給紙カセット16、手差し給紙トレイ17および排紙トレイ18を備えている。
【0169】
画像形成装置100は、ブラック(K)およびカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、各色相に対応した画像形成部Pa〜Pdにおいて画像形成を行う。各画像形成部Pa〜Pdは、同様の構成であり、たとえば、ブラック(K)の画像形成部Paは、感光体ドラム101a、現像装置102a、帯電ローラ103a、一次転写ローラ13aおよびクリーニングユニット104a等から構成される。この画像形成部Pa〜Pdは、中間転写ベルト11の移動方向(副走査方向)に一列に配列されている。
【0170】
帯電ローラ103は、感光体ドラム101の表面を所定の電位に均一に帯電させる接触方式の帯電器である。帯電ローラ103に代えて、帯電ブラシを用いた接触方式の帯電器、または、帯電ワイヤを用いた非接触方式の帯電器を用いることもできる。
【0171】
露光ユニット10は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー4、第1反射ミラー7、第2反射ミラー8等を備えており、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに照射する。各感光体ドラム101a〜101dは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによる静電潜像を形成する。
【0172】
現像装置102は、静電潜像が形成された感光体ドラム101の表面に現像剤であるトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。現像装置102a〜102dのそれぞれは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相のトナーを収納しており、感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像を、各色相のトナー像に顕像化する。クリーニングユニット104は、現像・画像転写後における感光体ドラム101上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
【0173】
中間転写ベルト11は、感光体ドラム101の上方に配置されており、駆動ローラ11aと従動ローラ11bとの間に張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト11の外周面は、感光体ドラム101d、感光体ドラム101c、感光体ドラム101bおよび感光体ドラム101aにこの順に対向する。この中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム101a〜101dに対向する位置に、一次転写ローラ13a〜13dが配置されている。中間転写ベルト11が感光体ドラム101a〜101dに対向する位置のそれぞれが一次転写位置である。また、中間転写ベルト11は、厚さ100〜150μm程度のフィルムで形成されている。
【0174】
一次転写ローラ13a〜13dには、感光体ドラム101a〜101dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム101a〜101dに形成された各色相のトナー像は、中間転写ベルト11の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト11の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0175】
ただし、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの感光体ドラム101a〜101dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体ドラム101のみにおいて静電潜像およびトナー像の形成が行われる。たとえば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム101aのみにおいて静電潜像の形成およびトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト11の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0176】
各一次転写ローラ13a〜13dは、直径8〜10mmのステンレスなどの金属を基材とする軸の表面を導電性の弾性材(たとえばEPDM、発泡ウレタン等)によって被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト11に均一に高電圧を印加する。
【0177】
各一次転写位置において中間転写ベルト11の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転によって、二次転写ローラ14との対向位置である二次転写位置に搬送される。二次転写ローラ14は、画像形成時において、内周面が駆動ローラ11aの周面に接触する中間転写ベルト11の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。給紙カセット16または手差し給紙トレイ17から給紙された記録紙32が、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間を通過する際に、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト11の外周面から記録紙32の表面にトナー像が転写される。
【0178】
なお、感光体ドラム101から中間転写ベルト11に付着したトナーのうち、記録紙32上に転写されずに中間転写ベルト11上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、転写クリーニングユニット12によって回収される。
【0179】
トナー像が転写された記録紙32は、前述した本発明の定着装置15に導かれ、定着ニップ部を通過して加熱および加圧を受ける。これによって、トナー像が、記録紙32の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した記録紙32は、排紙ローラ18aによって排紙トレイ18上に排出される。
【0180】
また、画像形成装置100には、用紙カセット16に収納されている記録紙32を、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間および定着装置15を経由して、排紙トレイ18に送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路P1が設けられている。用紙搬送路P1には、用紙カセット16内の記録紙32を一枚ずつ用紙搬送路P1内に繰り出すピックアップローラ16a、繰り出された記録紙32を上方に向けて搬送する搬送ローラ16b、搬送されてきた記録紙32を所定のタイミングで二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導くレジストローラ19、記録紙32を排紙トレイ18に排出する排紙ローラ18aが配置されている。
【0181】
また、画像形成装置100の内部には、手差し給紙トレイ17からレジストローラ19に至る間に、ピックアップローラ17aおよび搬送ローラ16bを配置した用紙搬送路P2が形成されている。さらに、排紙ローラ18aから用紙搬送路P1におけるレジストローラ19の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。
【0182】
排紙ローラ18aは、正逆両方向に回転自在にされており、記録紙32の片面に画像を形成する片面画像形成時、および、記録紙32の両面に画像を形成する両面画像形成における第2面画像形成時に正転方向に駆動されて記録紙32を排紙トレイ18に排出する。一方、両面画像形成における第1面画像形成時には、排紙ローラ18aは、用紙の後端が定着装置15を通過するまで正転方向に駆動された後、記録紙32の後端部を挟持した状態で逆転方向に駆動されて記録紙32を用紙搬送路P3内に導く。これによって、両面画像形成時に片面のみに画像が形成された記録紙32は、表裏面および前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれる。
【0183】
レジストローラ19は、用紙カセット16または手差し給紙トレイ17から給紙され、または、用紙搬送路P3を経由して搬送された記録紙32を、中間転写ベルト11の回転に同期したタイミングで二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導く。このため、レジストローラ19は、感光体ドラム101や中間転写ベルト11の動作開始時には回転を停止しており、中間転写ベルト11の回転に先立って給紙または搬送された記録紙32は、前端をレジストローラ19に当接させた状態で用紙搬送路P1内における移動を停止する。この後、レジストローラ19は、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11とが圧接する位置で、記録紙32の前端部と中間転写ベルト11上に形成されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
【0184】
なお、画像形成部Pa〜Pdの全てにおいて画像形成が行われるフルカラー画像形成時には、一次転写ローラ13a〜13dが中間転写ベルト11を感光体ドラム101a〜101dの全てに圧接させる。一方、画像形成部Paのみにおいて画像形成が行われるモノクロ画像形成時には、一次転写ローラ13aのみを中間転写ベルト11を感光体ドラム101aに圧接させる。
【0185】
以上のように構成される画像形成装置100は、定着温度が設定温度に対してばらつくのが防止されて均一な定着特性を有する定着装置15を備えているので、均一で高品位な画像を記録紙32上に形成することができる。
【0186】
(実施例)
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0187】
(実施例1)
実施例1において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。この定着装置15を複写機(商品名:MX−4500N、シャープ株式会社製)に搭載した。実施例1における詳細条件は、以下のようにした。
【0188】
<定着ローラ>
直径が30mmで、芯金が直径15mmのステンレス鋼、弾性層が厚さ5mmのシリコンスポンジゴムであるものを使用した。
【0189】
<加圧ローラ>
直径が30mmでシリコンソリッドゴムからなり、芯金直径24mm(肉厚2mm)、離型層には厚さ30μmのPFAチューブ、内部に定格電力400Wのヒータランプを配置したものを使用した。
【0190】
<定着ベルト>
ベルト基材に厚さ70μmのポリイミド、弾性層に厚さ150μmのシリコンゴム、離型層に厚さ30μmのPTFEコートが形成されたベルトを使用した。
【0191】
<蛇行防止用カラー>
内径20mm、直径32mm、幅7mmのポリフェニレンサルファイド(PPS)カラーを、定着ローラの端部に定着ベルト端部と接するように配置した。
【0192】
<加熱部材>
実施例1において使用した加熱部材は、前述した加熱部材30である。
【0193】
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体の外周面に、PTFEおよびPFAの混合材料をコーティングして、厚みが15μmの外面コート層を形成した。次に、円筒体の内周面に、シリコーン系樹脂からなる材料(商品名:B−600、オキツモ株式会社製)をスプレー塗布し、その後180℃で20分間焼き付けて、厚みが35μmの内面コート層を形成した。このようにして、外面コート層および内面コート層が形成された円筒体の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが216°(狭角が144°)となる筒状部Aを作製した。
【0194】
[押圧部材]
軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmのステンレスからなる円筒体の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R2が15.5mm(直径31mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が216°(狭角が144°)となる押圧部材Aを作製した。このとき、押圧部材の軸線方向の長さに対応して、放熱部材の軸線方向の長さよりも外方側に長い領域部分が延出部となり、各軸線方向端部における延出部の延出長さは同じである。なお、押圧部材Aは、厚み方向に貫通して開口する開口部は有しておらず、全面べた板の部材である。
【0195】
[発熱部材]
実施例1において使用した発熱部材は、前述した発熱部材203である。ニッケルクロム箔のパターンエッチング発熱体(厚み80μm、幅0.90mm〜1.06mm、体積抵抗率107.3×10−8Ωcm)である抵抗発熱体からなる発熱層の両表面に、マイカからなる厚み0.1mmのマイカシートをラミネートして、第2絶縁層および第3絶縁層を形成した。このとき、抵抗発熱体における隣接する線状部同士の間隔P1は、1.2mmである。次に、第2および第3絶縁層の表面に、ポリイミド(商品名:カプトン(登録商標)、デュポン株式会社製)からなる厚み25μmのポリイミドシートをラミネートして、第1絶縁層および第4絶縁層を形成し、発熱部材Aを作製した。
【0196】
[低硬度良熱伝導部材]
低硬度良熱伝導部材Aを構成する材料として、シリコーン系グリス放熱剤Aである、サンハヤト株式会社製の放熱性シリコンSCH−30(耐熱性300℃、熱伝導率2×10−3cal/s・cm・℃(0.84W/m・K)、25℃における硬さ300)を用いた。
【0197】
[加熱部材Aの作製]
前述のようにして作製した筒状部Aの内周面に、シリコーン系グリス放熱剤Aを塗布し、厚みが約50μm程度の低硬度良熱伝導部材Aを形成した。次に、第1絶縁層が低硬度良熱伝導部材Aの表面に接触するように発熱部材Aを配置し、さらに発熱部材Aの第4絶縁層の表面に接触するように押圧部材Aを配置した。そして、筒状部Aの周方向両端部を内側に折り曲げて複数の屈曲片を形成し、放熱部材Aとした。このとき、1つの屈曲片は、矩形状(10mm×7mm)であり、筒状部Aの各周方向端部には、軸線方向に40mmの間隔をあけて、各8個の屈曲片を形成した。そして、押圧部材Aの延出部に固定アダプタを取り付けて、実施例1の加熱部材Aを作製した。実施例1の加熱部材Aは、絶縁抵抗が100MΩ以上を示し、耐電圧がAC1500V/1分間であった。この加熱部材Aは、固定アダプタを介して複写機のサイドフレームに固定した。
【0198】
<サーミスタ>
発熱体側サーミスタとして非接触赤外線方式のセンサを、定着ベルトの幅手方向中央部および一方端部にそれぞれ1台設置し、加圧ローラ側サーミスタとして接触式サーミスタを、加圧ローラ表面に接触するように設置した。
【0199】
<装置制御手段>
装置制御手段は、発熱体側サーミスタによって検出された温度に基づいて、3分割された発熱領域に対する給電を制御するようにした。また、装置制御手段は、通紙のときに、加圧ローラ側サーミスタによって検出された温度に基づいて、加圧ローラのヒータランプに対する給電を制御するようにした。
【0200】
<安全装置>
定着ベルトの外周面の近傍にサーマルプロテクタを配置し、定着ベルト表面温度が異常高温になると電源回路を切断するようにした。
【0201】
<定着条件>
定着ニップ部長さ:8.5mm(定着ニップ部の記録紙搬送方向の長さ)
定着速度:220mm/sec
加熱ニップ部長さ:44mm(定着ベルトと加熱部材との記録紙搬送方向の接触長さ)
加熱ニップ部幅:330mm(定着ローラの軸線方向に対応する長さ)
【0202】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材Aの発熱部材Aに100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材Aの20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.33Ωであり、中央部領域が12.32Ω、各端部領域がそれぞれ12.95Ωであった。次に、複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0203】
100Vの電圧を発熱部材Aの全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、定着ベルトの幅手方向中央部および両端部ともに、21.0secであった。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0204】
発熱部材Aに対する供給電力分布は、軸線方向中央部の発熱領域が100Vで812Wに設定し、軸線方向両端部の発熱領域が50Vで193Wに設定し、中央部と両端部の通電を区別して制御することで、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、発熱部材Aの軸線方向中央部および両端部のそれぞれに対する通電時間制御および位相制御によって、発熱部材Aの軸線方向における発熱温度分布が中央部で大きくなるようにして、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材Aの軸線方向両端部における温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0205】
また、加熱部材Aは、定着ベルトと接触する放熱部材Aの外周面に外面コート層が形成されているので、放熱部材Aと定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0206】
また、加熱部材A表面の温度分布は、連続通紙中においても設定温度に対してばらつくことはなく、定着ベルトに対する伝熱効率の低下が発生することはなかった。さらに、200K枚印字後においても、加熱部材Aを構成する各部材間で局部的な剥離は発生しておらず、安全性に問題はなく、ウォームアップ時間および抵抗値も初期と同じであった。
【0207】
したがって、長期にわたって信頼性と安全性を確保し、加熱部材Aの寿命を維持するだけでなく、省エネ仕様の定着装置を備えた複写機を提供することができた。
【0208】
(実施例2)
実施例2において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例1と同様にした。
【0209】
<加熱部材>
発熱層を構成する抵抗発熱体を、ステンレス(SUS304H)箔を用いた発熱体(厚み50μm、パターン幅0.22mm〜0.33mm)として発熱部材Bを作製したこと以外は、実施例1の加熱部材Aと同様にして、実施例2の加熱部材Bを作製した。
【0210】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材Bの発熱部材Bに100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材Bの20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.34Ωであり、中央部領域の電気抵抗値が12.12Ω、各端部領域の電気抵抗値がそれぞれ13.37Ωであった。次に、複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0211】
100Vの電圧を発熱部材Bの全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、21.7secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0212】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材Bの軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0213】
また、加熱部材Bは、実施例1の加熱部材Aと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0214】
また、加熱部材B表面の温度分布は、連続通紙中においても設定温度に対してばらつくことはなく、定着ベルトに対する伝熱効率の低下が発生することはなかった。さらに、200K枚印字後においても、加熱部材Bを構成する各部材間で局部的な剥離は発生しておらず、安全性に問題はなく、ウォームアップ時間および抵抗値も初期と同じであった。
【0215】
したがって、長期にわたって信頼性と安全性を確保し、加熱部材Bの寿命を維持するだけでなく、省エネ仕様の定着装置を備えた複写機を提供することができた。
【0216】
(実施例3)
実施例3において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例1と同様にした。
【0217】
<加熱部材>
低硬度良熱伝導部材を構成する材料として、シリコーン系ゲルシート放熱材である、株式会社タイカ製のシート状熱伝導ゲルλGELCOH−4000(耐熱性250℃、熱伝導率6.5W/m・K、25℃における硬さ50)を用いて低硬度良熱伝導部材Cを作製したこと以外は、実施例1の加熱部材Aと同様にして、実施例3の加熱部材Cを作製した。
【0218】
<複写機の稼動>
複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0219】
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、22.0secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0220】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材Cの軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0221】
また、加熱部材Cは、実施例1の加熱部材Aと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0222】
また、加熱部材C表面の温度分布は、連続通紙中においても設定温度に対してばらつくことはなく、定着ベルトに対する伝熱効率の低下が発生することはなかった。さらに、200K枚印字後においても、加熱部材Cを構成する各部材間で局部的な剥離は発生しておらず、安全性に問題はなく、ウォームアップ時間および抵抗値も初期と同じであった。
【0223】
したがって、長期にわたって信頼性と安全性を確保し、加熱部材Cの寿命を維持するだけでなく、省エネ仕様の定着装置を備えた複写機を提供することができた。
【0224】
(実施例4)
実施例4において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例1と同様にした。
【0225】
<加熱部材>
実施例1の発熱部材Aと同様の抵抗発熱体からなる発熱層の両表面に、マイカからなる厚み0.1mmのマイカシートをラミネートして、第2絶縁層および第3絶縁層を形成した。次に、第2絶縁層の表面にポリイミド(商品名:カプトン(登録商標)、デュポン株式会社製)からなる厚み25μmのポリイミドシートをラミネートして第1絶縁層を形成し、第3絶縁層の表面に、厚みが1.0mmで周方向の長さが56.5mmのポリイミドシートをラミネートして第4絶縁層を形成し、発熱部材Dを作製した。そして、実施例4の加熱部材は、前述のようにして作製した発熱部材Dの第4絶縁層が押圧部材も兼ねるように構成した。このとき、押圧部材も兼ねる第4絶縁層は、曲率半径R2が15.5mmで、周方向両端部の軸線に関する仰角が216°となる。このこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の加熱部材Dを作製した。
【0226】
<複写機の稼動>
複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0227】
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、21.5secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0228】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材Dの軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0229】
また、加熱部材Dは、実施例1の加熱部材Aと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0230】
また、加熱部材D表面の温度分布は、連続通紙中においても設定温度に対してばらつくことはなく、定着ベルトに対する伝熱効率の低下が発生することはなかった。さらに、200K枚印字後においても、加熱部材Dを構成する各部材間で局部的な剥離は発生しておらず、安全性に問題はなく、ウォームアップ時間および抵抗値も初期と同じであった。
【0231】
したがって、長期にわたって信頼性と安全性を確保し、加熱部材Cの寿命を維持するだけでなく、省エネ仕様の定着装置を備えた複写機を提供することができた。
【0232】
(実施例5)
実施例5において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例1と同様にした。
【0233】
<加熱部材>
押圧部材を構成する材料として、湾曲させても破壊することのない曲がるセラミックスであるジルコニア薄板(セラフレックス−A、日本ファインセラミックス株式会社製)を用いて、厚みが0.5mmで周方向の長さが56.5mmである押圧部材Eを作製した。このとき、押圧部材Eは、曲率半径R2が15.5mmで、周方向両端部の軸線に関する仰角が216°となる。このこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の加熱部材Eを作製した。
【0234】
<複写機の稼動>
複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0235】
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、21.0secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0236】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材Eの軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0237】
また、加熱部材Eは、実施例1の加熱部材Aと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0238】
また、加熱部材E表面の温度分布は、連続通紙中においても設定温度に対してばらつくことはなく、定着ベルトに対する伝熱効率の低下が発生することはなかった。さらに、200K枚印字後においても、加熱部材Eを構成する各部材間で局部的な剥離は発生しておらず、安全性に問題はなく、ウォームアップ時間および抵抗値も初期と同じであった。
【0239】
したがって、長期にわたって信頼性と安全性を確保し、加熱部材Eの寿命を維持するだけでなく、省エネ仕様の定着装置を備えた複写機を提供することができた。
【0240】
(実施例6)
実施例6において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材の押圧部材を以下のようにしたこと以外は実施例1と同様にした。
【0241】
[押圧部材]
軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmのステンレスからなる円筒体の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R2が14.0mm(直径28mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が216°(狭角が144°)となる押圧部材Fを作製した。このとき、押圧部材の軸線方向の長さに対応して、放熱部材の軸線方向の長さよりも外方側に長い領域部分が延出部となり、各軸線方向端部における延出部の延出長さは同じである。なお、押圧部材Fは、厚み方向に貫通して開口する開口部は有しておらず、全面べた板の部材である。
【0242】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材の発熱部材に100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材の20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.33Ωであり、中央部領域が12.32Ω、各端部領域がそれぞれ12.95Ωであった。次に、複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0243】
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、定着ベルトの幅手方向中央部および両端部ともに、25.0secであった。目標である30秒以下になったが、ウォームアップ時間が少し長くなった。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0244】
(実施例7)
実施例7において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例2と同様にした。
【0245】
<加熱部材>
実施例2の発熱部材Bと同様に、発熱層を構成する抵抗発熱体を、ステンレス(SUS304H)箔を用いた発熱体(厚み50μm、パターン幅0.22mm〜0.33mm)として発熱部材を作製した。そして、押圧部材を以下に示す押圧部材Gとしたこと以外は、実施例2の加熱部材Bと同様にして、実施例7の加熱部材Gを作製した。押圧部材Gは、軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmで、開口周縁部の最小幅寸法が1.0mmとなるように複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するステンレス板の周方向端部に相当する部分を切り欠いて、曲率半径R2が15.5mm(直径31mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が216°(狭角が144°)となるよう折り曲げて作製されたものである。
【0246】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材Gの発熱部材に100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材の20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.34Ωであり、中央部領域の電気抵抗値が12.12Ω、各端部領域の電気抵抗値がそれぞれ13.37Ωであった。次に、複写機におけるウォームアップ時間、50枚の連続通紙した場合の温度ばらつき、小サイズ紙を通紙した場合の端部昇温を測定した。
【0247】
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、20.8secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0248】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材の軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0249】
また、加熱部材Gは、実施例2の加熱部材Bと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0250】
また、加熱部材G表面の温度分布は、連続通紙中においても設定温度に対してばらつくことはなく、定着ベルトに対する伝熱効率の低下が発生することはなかった。さらに、200K枚印字後においても、加熱部材Gを構成する各部材間で局部的な剥離は発生しておらず、安全性に問題はなく、ウォームアップ時間および抵抗値も初期と同じであった。
【0251】
したがって、長期にわたって信頼性と安全性を確保し、加熱部材の寿命を維持するだけでなく、省エネ仕様の定着装置を備えた複写機を提供することができた。
【0252】
(実施例8)
実施例8において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例7と同様にした。
【0253】
<加熱部材>
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体(外面コート層および内面コート層が形成されている)の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが180°(狭角が180°)となる放熱部材Hを作製した。なお、放熱部材Hは、実施例7の放熱部材と同様に、屈曲片が形成されたものである。
【0254】
[押圧部材]
軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmで、開口周縁部の最小幅寸法が1.0mmとなるように複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するステンレス板の周方向端部に相当する部分を切り欠いて、曲率半径R2が15.5mm(直径31mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が180°(狭角が180°)となるよう折り曲げて押圧部材Hを作製した。
【0255】
[発熱部材]
実施例7の発熱部材と同様に、発熱層を構成する抵抗発熱体を、ステンレス(SUS304H)箔を用いた発熱体(厚み50μm、パターン幅0.22mm〜0.33mm)として発熱部材Hを作製した。
【0256】
以上のような放熱部材H、押圧部材Hおよび発熱部材Hを用いたこと以外は、実施例7の加熱部材Gと同様にして、実施例8の加熱部材Hを作製した。
【0257】
<複写機の稼動>
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、19.3secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0258】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材の軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0259】
また、加熱部材Hは、実施例7の加熱部材Gと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0260】
(実施例9)
実施例9において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例7と同様にした。
【0261】
<加熱部材>
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体(外面コート層および内面コート層が形成されている)の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが320°(狭角が40°)となる放熱部材Iを作製した。なお、放熱部材Iは、実施例7の放熱部材と同様に、屈曲片が形成されたものである。
【0262】
[押圧部材]
軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmで、開口周縁部の最小幅寸法が1.0mmとなるように複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するステンレス板の周方向端部に相当する部分を切り欠いて、曲率半径R2が15.5mm(直径31mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が320°(狭角が40°)となるよう折り曲げて押圧部材Iを作製した。
【0263】
[発熱部材]
実施例7の発熱部材と同様に、発熱層を構成する抵抗発熱体を、ステンレス(SUS304H)箔を用いた発熱体(厚み50μm、パターン幅0.22mm〜0.33mm)として発熱部材Iを作製した。
【0264】
以上のような放熱部材I、押圧部材Iおよび発熱部材Iを用いたこと以外は、実施例7の加熱部材Gと同様にして、実施例9の加熱部材Iを作製した。
【0265】
<複写機の稼動>
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、29.9secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0266】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材の軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0267】
また、加熱部材Iは、実施例7の加熱部材Gと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。さらに、定着ベルト表面の温度検知に非接触式のサーミスタを使用したため、定着ベルトの表面の損傷もなく、ベルトライフは200K枚の印字を確保できた。
【0268】
(実施例10)
実施例10において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例7と同様にした。
【0269】
<加熱部材>
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体(外面コート層および内面コート層が形成されている)の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが179°となる放熱部材Jを作製した。なお、放熱部材Jは、実施例7の放熱部材と同様に、屈曲片が形成されたものである。
【0270】
[押圧部材]
軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmで、開口周縁部の最小幅寸法が1.0mmとなるように複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するステンレス板の周方向端部に相当する部分を切り欠いて、曲率半径R2が15.5mm(直径31mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が179°となるよう折り曲げて押圧部材Jを作製した。
【0271】
[発熱部材]
実施例7の発熱部材と同様に、発熱層を構成する抵抗発熱体を、ステンレス(SUS304H)箔を用いた発熱体(厚み50μm、パターン幅0.22mm〜0.33mm)として発熱部材Jを作製した。
【0272】
以上のような放熱部材J、押圧部材Jおよび発熱部材Jを用いたこと以外は、実施例7の加熱部材Gと同様にして、実施例10の加熱部材Jを作製した。
【0273】
<複写機の稼動>
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、20.1secであり、目標とする30sec以下のウォームアップ時間を安定に達成することができた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性に問題はなかった。
【0274】
そして、連続通紙での画像濃度むらはほとんどなく、高品質の画像が得られた。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材の軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温は観られず、消費電力の増大も効率よく抑制できた。
【0275】
また、加熱部材Jは、実施例7の加熱部材Gと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制される。ただし、定着ベルトにおいて、放熱部材Jの屈曲片のエッジ部分と接触する領域で摩擦が大きいため、ベルトの偏りが観られたが、200K枚の印字は確保できた。
【0276】
(実施例11)
実施例11において使用した定着装置は、前述した定着装置15である。そして、加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例7と同様にした。
【0277】
<加熱部材>
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体(外面コート層および内面コート層が形成されている)の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが321°(狭角が39°)となる放熱部材Kを作製した。なお、放熱部材Kは、実施例7の放熱部材と同様に、屈曲片が形成されたものである。
【0278】
[押圧部材]
軸線方向の長さが357mmで、肉厚が0.2mmで、開口周縁部の最小幅寸法が1.0mmとなるように複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するステンレス板の周方向端部に相当する部分を切り欠いて、曲率半径R2が15.5mm(直径31mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角が321°(狭角が39°)となるよう折り曲げて押圧部材Kを作製した。
【0279】
[発熱部材]
実施例7の発熱部材と同様に、発熱層を構成する抵抗発熱体を、ステンレス(SUS304H)箔を用いた発熱体(厚み50μm、パターン幅0.22mm〜0.33mm)として発熱部材Kを作製した。
【0280】
以上のような放熱部材K、押圧部材Kおよび発熱部材Kを用いたこと以外は、実施例7の加熱部材Gと同様にして、実施例11の加熱部材Kを作製した。
【0281】
<複写機の稼動>
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、29.8secであり、目標とする30sec以下を達成できた。ウォームアップ完了直後における記録紙上の定着画像の定着性には問題はなかった。
【0282】
また、加熱部材Kは、実施例7の加熱部材Gと同様に外面コート層が形成されているので、放熱部材と定着ベルトとの間の摩擦力が大きくなるのが抑制され、周方向端部のエッジも無く、定着ベルトの摺動が摩擦抵抗のないスムースなものであり、定着ベルトの蛇行もなかった。しかし放熱部材の狭角が小さいため加熱部材の作製に時間を要した。
【0283】
(比較例1)
加熱部材を以下のようにしたこと以外は実施例1と同様にした。なお、比較例1における加熱部材は、放熱部材に屈曲片が形成されておらず、また低硬度良熱伝導部材を有していない。
【0284】
<加熱部材>
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが216°となる筒状の放熱部材Lを作製した。
【0285】
[押圧部材]
各条の線径が0.5mmの螺旋状スプリング部材を、比較例1における押圧部材Lとして用意した。
【0286】
[発熱部材]
ステンレス(NCA1BA)箔のパターンエッチング発熱体(厚み50μm、パターン幅0.18〜0.27mm)である抵抗発熱体からなる発熱層の両表面に、厚み25μmのポリイミドシートをラミネートして絶縁層を形成し、発熱部材Lを作製した。
【0287】
[加熱部材Hの作製]
前述のようにして作製した放熱部材Lの内周面に、高耐熱性を有するエポキシ接着剤を塗布し、その上から発熱部材Lを貼り付けた。そして、螺旋状の押圧部材Lの各条の径方向外方の外周部分が発熱部材Lの表面に接触するように固定し、比較例1の加熱部材Lを作製した。
【0288】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材Lの発熱部材Hに100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材Lの20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.33Ωであり、中央部領域の電気抵抗値が12.32Ω、各端部領域の電気抵抗値がそれぞれ12.95Ωであった。
【0289】
100Vの電圧を発熱部材Lの全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、20.3secであった。
【0290】
しかしながら、数10枚印字したところで異常過熱が生じ、ポリイミドが炭化するにおいがした。加熱部材Lを目視観察したところ、発熱部材Lの一部が放熱部材Lから剥離しており、絶縁層のポリイミドが炭化変色していた。
【0291】
また、比較例1では、連続通紙での画像濃度むらが生じ、画像不良となった。さらに、小サイズ紙を通紙したときの加熱部材Lの軸線方向両端部の温度を、発熱体側サーミスタで測定したところ、過昇温が発生し、加熱部材Lおよび定着ベルトの損傷が発生した。
(比較例2)
加熱部材を以下のようにしたこと以外は比較例1と同様にした。なお、比較例2における加熱部材は、放熱部材に屈曲片が形成されていないが、低硬度良熱伝導部材を有している。
【0292】
<加熱部材>
[放熱部材]
軸線方向の長さが320mmで、肉厚が0.5mmのアルミニウムからなる円筒体の周方向の一部を切り欠いて、曲率半径R1が15mm(直径30mm)で、周方向両端部の軸線に関する仰角θが216°となる筒状の放熱部材Mを作製した。
【0293】
[押圧部材]
各条の線径が0.5mmの螺旋状スプリング部材を、比較例2における押圧部材Mとして用意した。
【0294】
[発熱部材]
ステンレス箔のパターンエッチング発熱体(厚み50μm、パターン幅0.18〜0.27mm)である抵抗発熱体からなる発熱層の両表面に、厚み25μmのポリイミドシートをラミネートして絶縁層を形成し、発熱部材Mを作製した。
【0295】
[加熱部材の作製]
前述のようにして作製した放熱部材Mの内周面に、実施例1で用いた低硬度良熱伝導部材Aを構成する材料として、シリコーン系グリス放熱剤Aである、サンハヤト株式会社製の放熱性シリコンSCH−30を塗布し、その上から発熱部材を貼り付けた。そして、螺旋状の押圧部材の各条の径方向外方の外周部分が発熱部材Mの表面に接触するように固定し、比較例2の加熱部材Mを作製した。
【0296】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材Mの発熱部材Mに100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材Mの20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.33Ωであり、中央部領域の電気抵抗値が12.32Ω、各端部領域の電気抵抗値がそれぞれ12.95Ωであった。
【0297】
100Vの電圧を発熱部材Mの全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、20.5secであった。
【0298】
しかしながら、数枚印字したところで異常過熱が生じ、ポリイミドが炭化するにおいがした。加熱部材Mを目視観察したところ、発熱部材Mの一部が放熱部材Mから剥離しており、絶縁層のポリイミドが炭化変色していた。比較例2では、連続通紙することができず、これ以上の評価ができなかった。
【0299】
(比較例3)
加熱部材に構成される低高度良熱伝導部材Aを構成する材料として、シリコーン系グリス放熱剤Aである、サンハヤト株式会社製の放熱性シリコンSCH−30を用いなかったこと以外は実施例1と同様にした。すなわち、比較例3における加熱部材Nは、放熱部材に屈曲片が形成されているが、低硬度良熱伝導部材を有していない。
【0300】
<複写機の稼動>
まず、前述のようにして作製した加熱部材Nの発熱部材に100V電源および装置制御手段を接続し、発熱部材の20℃における電気抵抗値を測定したところ、全体の電気抵抗値が8.33Ωであり、中央部領域の電気抵抗値が12.32Ω、各端部領域の電気抵抗値がそれぞれ12.95Ωであった。
【0301】
100Vの電圧を発熱部材の全体に印加したとき、定着ローラ上の定着ベルト表面温度全体が180℃に到達する時間(ウォームアップ時間)は、30.2secであり、目標である30秒以下にならなかった。また、比較例3では、連続通紙での画像濃度むらが生じ、画像不良となった。
【符号の説明】
【0302】
15,40,50 定着装置
15a 定着ローラ
15b 加圧ローラ
20,30,30A 加熱部材
25 定着ベルト
100 画像形成装置
201,301,302 放熱部材
201a,301a,302a 筒状部
201b,301b,302b 屈曲片
202 低硬度良熱伝導部材
203,303,403 発熱部材
204,204a,204b,204c 押圧部材
205 固定アダプタ
2011,3011,3021 第1屈曲部
2012,3012 第2屈曲部
2033,3033,4033 発熱層
2040 延出部
3013 内面コート層
3014 外面コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の一部を成す筒状に形成される筒状部と、前記筒状部の周方向両端部の少なくとも一部分から内側に屈曲する屈曲片とを有する放熱部材と、
低い硬さおよび高い熱伝導性を有する材料からなり、前記放熱部材の内周面に接触して設けられる低硬度良熱伝導部材と、
通電によって発熱する抵抗発熱体からなる発熱層と絶縁体からなる絶縁層とを有し、前記絶縁層が前記発熱層を挟み込むようにして積層され、前記低硬度良熱伝導部材の内周面に接触して設けられる発熱部材と、
円筒体の一部を成す筒状に形成されて、外周面において前記発熱部材の内周面に接触し、前記発熱部材を前記放熱部材に近接する方向に弾発的に押圧して、前記発熱部材を保持する押圧部材とを含んで構成され、
前記放熱部材が有する前記屈曲片は、前記筒状部の周方向両端部の少なくとも一部分から前記押圧部材に近接する方向に屈曲して形成され、前記押圧部材に対して前記発熱部材に近接する方向への押圧力を付与する屈曲部を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
前記放熱部材が有する前記屈曲片は、前記筒状部の軸線方向に間隔をあけて複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記放熱部材が有する前記筒状部の周方向における曲率半径R1よりも大きい周方向の曲率半径R2を有する部材を変形させて、前記筒状部の内側に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記放熱部材は、アルミニウム合金、マグネシウム合金および銅合金から選ばれる合金を用いて形成され、
前記押圧部材は、金属、耐熱性樹脂およびセラミックスから選ばれる材料を用いて、弾性を有するように形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱部材。
【請求項5】
前記発熱部材の前記発熱層を構成する前記抵抗発熱体は、前記放熱部材の周方向に延びて、前記絶縁層の表面に形成される複数の線状部と、隣接する前記線状部の延在方向端部同士を、前記放熱部材の軸線方向に延びて1本の線路となるように接続して前記絶縁層の表面に形成される接続部とを含んで構成され、
前記押圧部材は、厚み方向に貫通して開口する複数の開口部が間隔をあけて規則的に配列するように構成され、
前記押圧部材における、複数の前記開口部のそれぞれを規定する開口周縁部の最小幅寸法が、前記抵抗発熱体の前記線状部および前記接続部の線幅以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の加熱部材。
【請求項6】
前記押圧部材は、その軸線方向の長さが、前記放熱部材および前記発熱部材の軸線方向の長さよりも大きくなるように形成されて、前記放熱部材の軸線方向両端部から外方に延出する延出部を有し、
前記延出部には、外部に接続して前記押圧部材を固定可能に構成される固定アダプタが設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の加熱部材。
【請求項7】
前記放熱部材が有する前記筒状部における、周方向両端部の軸線に関する仰角は、180°以上320°以下に選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の加熱部材。
【請求項8】
前記放熱部材は、前記低硬度良熱伝導部材と接触する内周面に、耐熱性および高い熱輻射性を有する材料からなる内面コート層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱部材。
【請求項9】
前記放熱部材の外周面には、耐熱性および低摩擦係数を有する材料からなる外面コート層が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の加熱部材。
【請求項10】
前記外面コート層は、フッ素を含有するPTFE樹脂およびPFA樹脂の少なくともいずれか1つの材料からなることを特徴とする請求項9に記載の加熱部材。
【請求項11】
第1定着部材と加熱部材との間に張架される回転可能な無端状ベルトと、前記無端状ベルトを介して前記第1定着部材に対向するように配置される第2定着部材とを備え、前記無端状ベルトと前記第2定着部材とが接触して形成される定着ニップ部において、記録媒体上に担持されるトナー像を加熱して記録媒体上に定着する定着装置であって、
前記加熱部材は、請求項1〜10のいずれか1つに記載の加熱部材であり、前記放熱部材の外周面において前記無端状ベルトと接触して、前記無端状ベルトを加熱することを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項11に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−177142(P2010−177142A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20996(P2009−20996)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】