説明

加速度検出装置および加速度検出装置の製造方法

【課題】小さい電圧で自己診断を行う加速度検出装置を提供する。
【解決手段】加速度検出装置1は、可撓部を有する基板5と、基板5に接続され、金属からなる導電部を有する重り部7と、を有し、可撓部の撓みに応じて加速度を検出する加速度検出素子3と、重り部7と所定の間隔を隔てて設けられた固定電極20と、を備え、
貫通導体6を介して重り部7に電圧を印加することにより、重り部7と固定電極20との間に静電引力が働くようにして自己診断をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自己診断機能を有する加速度検出装置および加速度検出装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自己診断機能を有する加速度検出装置としては、例えば特許文献1のようなものがある。特許文献1に記載された発明は、半導体からなる重り部と固定電極とに電圧を付与することにより、重り部を静電気力により変位させて加速度検出装置の動作確認、すなわち自己診断をする加速度検出装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−322925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の加速度検出装置では、重り部が半導体からなるため、電気抵抗値が高くなり、重り部を変位させて自己診断を行うためには高い電圧を付与する必要があった。そのため従来の自己診断機能を有する加速度検出装置は、重り部と固定電極とに印加する電圧が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような諸事情を鑑みて案出されたものであり、小さな電圧で自己診断をすることができる加速度検出装置および加速度検出装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加速度検出装置は、可撓部を有する基板と、前記基板に接続され、金属からなる導電部を有する重り部と、を有し、前記可撓部の撓みに応じて加速度を検出する加速度検出素子と、前記重り部と所定の間隔を隔てて設けられた固定電極と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加速度検出装置によれば、金属からなる導電部を有する重り部が基板に配置されていることから、半導体からなる重り部を介して自己診断を行う従来のものと比較した場合には、本発明の加速度検出装置の方が電気抵抗値を低くできるため、小さい印加電圧で自己診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る加速度検出装置の斜視図。
【図2】図1に示す加速度検出装置の蓋を外した状態の平面図。
【図3】図1に示す加速度検出装置の断面図であり、(a)は図2のA−A´線で切断したときの断面に相当し、(b)は図2のB−B´線で切断したときの断面に相当する。
【図4】図1に示す加速度検出装置の製造方法を説明する断面図であり、図2のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【図5】本発明の実施形態に係る加速度検出装置の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る加速度検出装置の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る加速度検出装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明にかかる加速度検出装置および加速度検出装置の製造方法について好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率は現実のものとは必ずしも一致していない。また、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。以下の実施形態ではピエゾ抵抗効果を利用した加速度検出装置を例に説明する。
<加速度検出装置>
図1は本実施形態にかかる加速度検出装置1の斜視図、図2は図1の加速度検出装置の蓋4を外した状態の平面図、図3(a)は図2に示す加速度検出装置1のA−A´線で切断したときの断面に相当する断面図であり、図3(b)は図2のB−B´線で切断したときの断面に相当する断面図である。これらの図に示すように本実施形態にかかる加速度検出装置1は、加速度検出素子3と実装基板2とから主に構成されている。
【0010】
まず、加速度検出素子3について説明する。図3に示すように加速度検出素子3は、可撓部である梁部5´を有する基板5と、基板5を貫通する貫通導体6と、基板5に設けられ、貫通導体6に接続され、金属からなる導電部を有する重り部7と、を有している。
【0011】
このような加速度検出素子3の重り部7に、加速度に応じた力や静電引力などが作用して、重り部7が動くことで基板5に設けられた梁部5´が撓み、加速度の検出または自己診断が行えるようになっている。本実施形態における基板5には、基板5を貫通する貫通導体6が形成されている。また、重り部7には、その四隅に連結された4個の付属重り部7´が設けられている。付属重り部7´は、重り部7と一体形成されるものであり、付属重り部7´を設けることによって加速度に対する梁部5´の撓みが大きくなり、加速度の検出感度を向上させることができる。なお、重り部7および付属重り部7´全体が重り部7として捉えてもよい。また、重り部7および付属重り部7´の構成、機能および形成方法は、同一又は類似することから、以下では付属重り部7´の説明を省略することがある。
【0012】
基板5は、平面視して四角形をなしており、固定部50が取り付けられる枠状の部分と重り部7が取り付けられる板状の部分とそれらを繋ぐ梁部5´が主に形成されている。また、基板5は、例えばシリコンなどから形成されている。
【0013】
このような基板5に形成される貫通導体6は、例えば円柱をなしている。また、貫通導体6には図2に示すように加速度検出素子3を平面視して、重り部7と重なるように配置されていればよいが中でも、加速度検出素子3を平面視して、重り部7の中心に配置することが好ましい。このように貫通導体6を配置することで、貫通導体6の形成によって変化する梁部5´のそれぞれにかかる力を均一にすることができる。なお、貫通導体6は、円柱の他にも三角錐や四角柱など任意の形状が可能である。
【0014】
貫通導体6で用いる導電性材料は、基板5より電気抵抗値が小さい材料が選択される。例えば基板5にシリコンを用いた場合、シリコンより電気抵抗値が小さい導電性材料である金、アルミニウム、銀、イリジウム、オスミウム、タングステン、ルテニウム、マグネシウム、リチウム、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケルなどが選択される。さらに、基板5で用いられる材料よりも比重が大きいことが好ましい。基板5の材料よりも比重の大きな材料を貫通導体6の材料に用いることにより、重り部7をより重くすることができるので、加速度検出感度を高めることができる。例えば、基板5にシリコンを用いた場合、シリコンより比重の大きい導電性材料として、イリジウム、オスミウム、金、タングステン、ルテニウム、銀、モリブデンなどが選択される。これにより、大型化することなく加速度検出素子3の検出感度を向上、あるいは検出感度を維持しつつ加速度検出素子3を小型化することができる。
【0015】
この貫通導体6は、例えば基板5の所定位置にウエットエッチングやドライエッチングなどにより基板5を貫通する貫通孔を形成した後、この貫通孔に上記の導電性材料を埋め込むことにより形成される。
【0016】
このように形成された貫通導体6を介して基板5の上面から重り部7に電気的に接続することにより、貫通導体6は電気抵抗が小さいことから、重り部7に印加する電圧を小さくすることができる。
【0017】
また、図3(a)に示すように、貫通導体6の側面には絶縁体膜21が形成されており、貫通導体6と基板5とが接しないようになっている。これにより、基板5が例えば半導体などの導電性を有する材料から成る場合、貫通導体6から基板5へ流れる電流を少なくできるので、貫通導体6における電圧降下を小さくすることができる。絶縁体膜21は、例えばSiOやSiNなどから作製される。
【0018】
このような貫通導体6は、例えば一導電型シリコンで基板5を形成した場合には、逆導電型拡散領域を用いたものも考えられる。しかし、上述の導電性材料により形成した貫通導体6は、逆導電型拡散領域を用いたもの時と比較した場合、電気抵抗が小さいため、基板5の上面から重り部7の底面に低電圧で所望の電位を付与することができる。また、逆導電型拡散領域をイオン拡散法により形成した場合、現在のイオン拡散法では、イオンを拡散する際の加速電圧から2μm以上深く逆導電型拡散領域を形成することが困難であることから梁部5´を薄くする必要性があり、梁部5´を薄くすると耐衝撃性や梁部5´の強度が弱くなるという問題がある。これに対し、本実施形態の貫通導体6はエッチング等により形成することから、梁部5´の厚みにとらわれることなく形成することができるので、梁部5´を十分厚くでき、耐衝撃性や梁部5´の強度を維持することができる。
【0019】
この貫通導体6と電気的に接続され、金属からなる重り部7が、基板5に配置されている。重り部7は、平面形状が略正方形をなし、その一辺の長さは例えば0.25mm〜0.5mmに設定される。また重り部7の厚みは例えば0.2mm〜2mmに設定される。付属重り部7´は、重り部7と同様に平面形状が略正方形をなし、その一辺の長さは例えば0.1mm〜0.4mmに設定される。また付属重り部7´の厚みは、重り部7と同じ厚みを有するように例えば0.2mm〜2mmに設定される。なお、重り部7は、少なくとも一部に金属からなる導電部を有していればよい。その場合、導電部以外の重り部7の材料は何でもよく、導電部は貫通導体6と電気的に接続されている。金属の材料としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、イリジウム、オスミウム、金、銀、クロム、コバルト、ジルコニウム、銅、スズ、セシウム、ビスマス、タリウム、タングステン、タンタル、鉄、ナトリウム、ニッケル、鉛、白金、マグネシウム、モリブデンなどが選択される。なお、基板5にシリコンを用いた場合、シリコンより電気抵抗が小さい亜鉛、アルミニウム、イリジウム、オスミウム、金、銀、コバルト、銅、タングステン、ナトリウム、ニッケル、鉛、マグネシウム、モリブデンなどが選択される。
【0020】
このような金属からなる重り部7は、基板5に導電性接着剤で取り付けたり、めっき法によって形成されたりする。重り部7および付属重り部7´の平面形状は正方形に限られず、円や長方形など任意の形状が可能である。なお、平面視して、重り部7と基板5とが重なるような位置にある基板5を重り部7と一体的に捉えることがある。
【0021】
このような重り部7を囲繞するようにして枠状の固定部50が基板5に取り付けられている。固定部50は、平面形状が略正方形をなし、中央部に重り部7および付属重り部7´より若干大きい略正方形の開口部を有している。固定部50は、その一辺の長さが例えば0.8mm〜3.0mmに設定され、固定部50を構成するアーム幅(アームの長手方向と直交する方向の幅)は例えば0.2mm〜0.625mmに設定される。なお、平面視して、固定部50と基板5とが重なるような位置にある基板5を固定部50と一体的に捉えることがある。
【0022】
固定部50の上面には、素子側電極パッド15が設けられており、この素子側電極パッド15に電気的に配線された抵抗素子8および貫通導体6に対し、外部との電気信号の入出力を行っている。
【0023】
また、図2にも示すように、固定部50と重り部7が取り付けられた基板5とを結ぶように可撓部である梁部5´が基板5に形成されている。加速度検出素子3に加速度が加わると重り部7が動き、重り部7の動きに伴って梁部5´が撓むようになっている。梁部5´は、例えば、長手方向の長さが0.3mm〜0.8mmに設定され、幅(長手方向と直交する方向の長さ)が0.04mm〜0.2mmに設定され、厚みが2μm〜100μmに設定されている。このように梁部5´を細長く且つ薄く形成することによって可撓性が発現される。
【0024】
このような梁部5´の上面には複数の抵抗素子8が形成されている。抵抗素子8は、より具体的には、n型のシリコンからなる基板5にボロンを拡散することにより形成されたピエゾ抵抗素子である。本実施形態では、3軸方向の加速度を検出できるように梁部5´の所定の位置にこれらの抵抗素子8が形成されている。例えば、X軸方向に伸びる2つの梁部5´には、X軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子8が設けられており、それぞれの梁部5´に2個ずつ配置されている。これら4個の抵抗素子8のうち、固定部50側に配された抵抗素子同士を直列に接続し、重り部7側に配された抵抗素子同士を直列に接続し、これらを並列に接続することでブリッジ回路を構成している。またY軸方向に伸びる2つの梁部5´には、Y軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子8が設けられており、これらの抵抗素子8を、X軸方向の加速度検出用の抵抗素子8と同様に配置し、抵抗素子8同士の接続を行うことによってブリッジ回路を構成している。また、図示していないがZ軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子8が、X軸方向に伸びる2つの梁部5´に、X軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子8それぞれと並ぶようにして形成されている。このZ軸方向の加速度検出用の抵抗素子8は、X軸方向の加速度検出用の抵抗素子8とは、抵抗素子8同士の接続の仕方が異なっており、本実施形態では、X軸方向に伸びる2本の梁部5´のうち一方の梁部5´に設けられた固定部50側の抵抗素子8と、他方の梁部5´に設けられた重り部7側の抵抗素子8とを直列接続してブリッジ回路を構成している。このようなブリッジ回路が組まれた加速度検出素子3に加速度が加わると、上述したように梁部5´が撓み、この撓みに応じて抵抗素子8が変形するため、ブリッジ回路で検出する出力電圧が変化する。この抵抗値の変化に基づく出力電圧の変化を電気信号として取り出し、これを外部のICで演算処理することによって印加された加速度の方向並びに大きさを検知することができる。なおZ軸方向の加速度検出用の抵抗素子8は、X軸方向に伸びる梁部5´に設けたのと同様にして、Y軸方向に伸びる2つの梁部5´に設けるようにしてもよい。
【0025】
かかる加速度検出素子3は、図3(a)に示すように実装基板2に実装されている。実装基板2は加速度検出素子3を保護する機能を有し、内部には加速度検出素子3を収容するキャビティ17が設けられている。実装基板2は、セラミック材料などからなる絶縁層を複数積層することにより形成され、本実施形態では3枚の絶縁層2a〜2cにより構成されている。
【0026】
絶縁層2aは、平板状の部材からなり、その主面2Aに加速度検出素子3が載置される。また、絶縁層2aの主面2Aには、重り部7と対向する面を有し、所定の間隔を隔てて固定電極20が形成されている。固定電極20は、平面視して重り部7と重なる部分が少なくとも1か所あればよいが、できるだけ重なる部分が大きく形成されていることが好ましい。これにより、重り部7にかかる静電引力を大きくすることができる。また、固定電極20は、重り部7とできるだけ近い方が同じ電圧で静電引力を大きくかけることができるという点では、好ましい。このように、同じ電圧でも重り部7に大きな静電引力をかけることができる。若しくは、小さい電圧で同じ静電引力を重り部7にかけることができる。
【0027】
絶縁層2bは加速度検出素子3より若干大きい開口部を有する枠状の部材であり、絶縁層2aと接合されている。絶縁層2cは、絶縁層2bの開口部より広い開口部を有する枠状の部材であり、絶縁層2bの主面の一部が露出するようにして絶縁層2bと接合されている。絶縁層2cの開口部から露出する絶縁層2bの主面には、複数の実装基板側電極パッド14が形成されている。実装基板側電極パッド14は金属細線16によって加速度検出素子3の固定部50上面に設けた素子側電極パッド15と電気的に接続されている。また実装基板2の下面には、複数の外部端子12が設けられており、外部端子12は実装基板2の内部に設けたビアホール導体13を介して実装基板側電極パッド14および固定電極20と接続されている。すなわち、加速度検出素子3の電気信号は、素子側電極パッド15、金属細線16、実装基板側電極パッド14、ビアホール導体13、外部端子12などを介して外部へ取り出されることとなる。
【0028】
このような実装基板2の主面2Aに載置される加速度検出素子3は、図3(b)に示すように、接着剤9により実装基板2に接合されている。接着剤9は、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などを使用することができる。なかでも接着時の残留応力を緩和する観点からシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
接着剤9には、重り部7の下面と実装基板2の主面2Aおよび固定電極20との間に所定の大きさのギャップが形成されるように、所定の径を有する球状のスペーサ部材18が混合されている。すなわち、重り部7の下面と固定電極20の上面との間のギャップの大きさをスペーサ部材18によって精度良く制御することができる。スペーサ部材18は、例えばシリカ、シリコン、ジビニルベンゼンなど所定の硬さを有する球状の部材であり、その直径は例えば1〜20μmである。
【0030】
本実施形態のように梁部5´が重り部7の上面四辺の中央部に連結されている場合、加速度検出素子3と実装基板2との接合は、固定部50の四隅において行うことが好ましい。これにより加速度検出素子3の実装基板2への接合箇所と梁部5´との間の距離が離れるため、接着剤9による接合に起因して発生し得る残留応力が梁部5´に与える影響を小さくすることができ、加速度検出装置の電気的な特性が劣化するのを抑えることができる。
【0031】
このようにして加速度検出素子3が接合された実装基板2のキャビティ17の開口部を塞ぐようにして蓋4が実装基板2の上面に固着されており、加速度検出素子3がキャビティ17内に気密封止されている。蓋4は、例えば42アロイやステンレスなどの金属板からなり、接合剤を介して、実装基板2に接合されている。
【0032】
上述してきたように、加速度検出素子3が実装基板2に実装された加速度検出装置1の貫通導体6と固定電極20とに電圧を印加して、重り部7の下面と固定電極20の上面とに電位差を生じさせることによって、重り部7と固定電極20との間に静電引力が働く。その静電引力によって、重り部7が下方向に変位するので、下方向に加速度が加わった場合と同様の応力を梁部5´に発生することができる。この応力により梁部5´上に形成された抵抗素子の電気抵抗値が変化し、この変化がブリッジ回路、増幅回路等を経て電圧に変換され、電気信号として取り出される。取り出された各抵抗素子の電気信号により、印加された電圧によって重り部7がどのように変位したか検出することができる。このように、電圧により重り部7を変位させることにより、加速度検出装置1に加速度がかかったのと同様の状態を作りだして、加速度検出素子3が加速度検出機能を有しているかどうかを自己診断することができる。
【0033】
なお、上述の説明では固定電極20を実装基板2に配置して自己診断する場合を述べたが、固定電極20を重り部7と向かい合う面を有する固定部50に配置して自己診断してもよい。このように固定電極20を配置した場合、自己診断の際に重り部7を横方向に動かすことができるので、例えば図2のXY平面に平行な加速度が加わった場合と同様の応力を梁部5´に発生させることができる。
【0034】
また、上述の説明では重り部7に貫通導体6を介して電圧を付与したが、加速度検出素子3の裏面から梁部5´等を介して電極を配線して、重り部7に電圧を付与してもよい。
<加速度検出装置の製造方法>
次に、加速度検出装置の製造方法を図4により説明する。
(工程A:加速度検出素子の製造方法)
本実施形態にかかる製造方法では基板としてSOI基板を用いる。図4に示すように、SOI基板54は、絶縁層52と、絶縁層52の一方側に積層された半導体層51と、絶縁層52の他方側に積層された支持層53とを有するものである。絶縁層52は、SiOにより形成されている。半導体層51および支持層53は、例えばシリコンにより形成されている。
【0035】
まず、図4(a)に示すように、従来周知の半導体微細加工技術、例えばフォトリソグラフィ法やエッチング法などにより支持層53が露出するように半導体層51側から半導体層51および絶縁層52を貫通する貫通孔55を形成する。このようなSOI基板54に逆導電型拡散領域をイオン拡散法で形成する場合、絶縁層52を含む支持層53にまでイオン拡散したとしても、絶縁層52は電気を通さないため、SOI基板54の半導体層51から支持層53に導通をとることは困難である。これに対し、上述の方法を用いることにより、半導体層51および絶縁層52を貫通する貫通孔55を容易かつ確実に形成することができ、半導体層51から支持層53に導通をとることができる。
【0036】
次に、半導体層51の抵抗素子(図示せず)を形成する所定位置にイオン注入法により不純物を注入する。その後、Oの雰囲気中でSOI基板54をアニールすることによってピエゾ抵抗からなる抵抗素子を形成するとともに、絶縁体膜62を貫通孔55の側面に形成する。不純物としては、n型のSOI基板を用いた場合にはB(ボロン)が例示でき、p型のSOI基板を用いた場合にはP(リン)、As(ヒ素)などが例示できる。このように、抵抗素子のアニールを行う際、絶縁体膜62を同時に形成することができ、工程数を増やすことがない。なお、絶縁体膜62は貫通孔55の側面に絶縁材料をスパッタ等により形成してもよい。
【0037】
次に、図4(b)に示すように、抵抗素子を形成した後、抵抗素子に連結する配線電極(図示せず)を形成すると共に、貫通孔55に貫通導体56を形成する。配線電極および貫通導体56は、金属スパッタ、CVD、蒸着などにより上述の導電性材料を成膜した後、成膜した導電性材料をドライエッチング、ウェットエッチングなどによりパターニングすることにより形成される。なお、配線電極および貫通導体56を異なる導電性材料で形成してもよい。
【0038】
さらに、図4(c)に示すように、支持層53側から半導体微細加工技術により梁部58および固定部59および重り部57が配置される溝部60を形成する。具体的には、まず、固定部59を区切る溝部60に対応する領域において、支持層53を除去する。続いて、上記の溝部60に対応する領域において、重り部57が配置される位置以外の絶縁層52を除去する。以上のようにして、絶縁層52および支持層53を貫通する溝部60が形成され、当該溝部60によりSOI基板54に固定部59が形成される。その後、除去せずに残っている絶縁層52に、上述の金属からなる重り部57が導電性接着剤やめっき法により配置される。さらに、溝部60の間欠部分(溝部60が途切れる部分)における半導体層51により梁部58が形成される。これによって、加速度検出素子3が完成する。
(工程B:加速度検出装置の製造方法)
続いて、加速度検出素子が取り付けられる主面2Aを有する実装基板2を準備する。以下、図3を用いて説明する。
【0039】
実装基板2はアルミナなどのセラミック材料からなる複数の絶縁層を積層することにより形成される。具体的には、平板状の絶縁層2a、矩形状の開口部を有する絶縁層2b、絶縁層2bの開口部より大きな開口部を有する絶縁層2cを順次積層することよりキャビティ17を有する実装基板2が作製される。なお、固定電極20は、絶縁層2a上の加速度検出素子3が搭載された際に重り部7と所定の間隔を隔てて対向する位置に、金属材料を成膜した後、フォトリソグラフィ等により形成される。
【0040】
次に実装基板2の主面2Aで、且つ加速度検出素子3を載置したときに加速度検出素子3の四隅に接着剤8を塗布する。次に加速度検出素子3を実装基板2の主面2Aに載置させ、接着剤8を硬化させることにより加速度検出素子3と実装基板2とを接合する。
【0041】
加速度検出素子3を実装基板2に接合した後、金、銅、アルミニウムなどからなる金属細線6により加速度検出素子3に設けた素子側電極パッド15と実装基板2に設けた実装基板側電極パッド14とを接続する。最後に42アロイなどからなる金属製の蓋10をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂9により実装基板2の上面(絶縁層2dの上面)に接合することより製品としての加速度検出装置1が完成する。
【0042】
以上の実施形態によれば、加速度検出素子3は、貫通孔55の側面に絶縁体膜21を形成する工程と、抵抗素子を形成する工程とを同時に作製することができる。また、貫通導体56を形成する際の貫通孔55に導電性材料を埋める工程においても、配線電極と同じ工程で作製することができる。このことから、絶縁体膜21の形成および貫通導体56において工程数の増加を必要とせず、且つ同一装置で形成することができることからコスト増加を招くこともない。
【0043】
(変形例1)
図5に加速度検出素子3の変形例を示す。基本的な構成は図3と同じであり、重複部分の説明を省略する。図5(a)に示すような貫通導体40が基板45の上面が広い台形の断面形状を有する場合、導電性材料を充填しやすく、段差被覆性を向上させることができる。このことから、貫通導体40と重り部42との接続信頼性を向上させることができる。また、図5(b)のように貫通導体40が重り部42側に広い台形の断面形状を有している場合、重り部42と接する面積が大きいため、貫通導体40と重り部42との接続がとりやすいことから歩留まりを向上させることができる。さらに、図5(c)のような貫通導体40が基板45だけでなく重り部42の途中まで連通している場合は、貫通導体40を基板45より比重の大きな材料で形成することにより、重り部42の重量を増やすことができるので、加速度の検出感度を向上させることができる。なお、この場合において貫通導体40の重り部42の中に形成された部分を導電部とする。また、図4(a)のよう実装基板2に搭載される加速度検出素子3において、図5(d)は、固定電極20と対向する面に露出部40Aを有する貫通導体40を、基板45より導電性のよい材料で形成することにより、露出部40Aと固定電極20とで大きな電位差を生じさせることができることから、重り部42により大きな静電引力を働かせることができるので、低電圧で自己診断を行うことができる。なお、この場合において貫通導体40の重り部42の中に形成された部分を導電部とする。
【0044】
(変形例2)
図7は上述した実施形態にかかる加速度検出装置の変形例を示す断面図である。基本的な構成は図3と同じであり、重複部分の説明を省略する。貫通導体6と実装基板側電極パッド14または素子側電極パッド15とをボンディングワイヤー65で配線することが好ましい。これにより梁部5´の上に電極を配線せず、貫通導体6に配線できるため、梁部5´全体の厚みが厚くならないことから加速度検出素子3の感度を低下させずに自己診断することができる。
【0045】
(変形例3)
図6は上述した実施形態にかかる加速度検出装置の製造方法の変形例を示す断面図である。なお、図6の断面図は図2におけるA−A´線における断面に相当するものである。基本的な構成は図4と同じであり、重複部分の説明を省略する。この変形例3では、半導体層51および絶縁層52を貫通する貫通孔55をエッチング等により形成し、続いて貫通孔55と連通する孔部55´を支持層53に形成する。その後、貫通孔55および孔部55´に導電性材料を埋入して貫通導体56を配置する。そして、上述の方法により重り部57および固定部59を形成する。このように貫通導体56を重り部57の中にも形成することにより、工程数の増加を伴うことなく、重り部57が重くすることができるため加速度検出素子3の感度を向上させることができる。なお、この場合において貫通導体40の重り部42の中に形成された部分を導電部とする。
【0046】
本発明は、以上の実施形態や変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0047】
加速度検出素子は、3軸方向の加速度を計測するものに限定されない。例えば、加速度検出素子は、1軸方向の加速度を計測するものであってもよい。また、重り部は付属重り部を有しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 加速度検出装置
2 実装基板
2A 実装基板主面
2a、2b、2c 絶縁層
3 加速度検出素子
4 蓋
5 基板
5´ 梁部
6 貫通導体
7 重り部
7´ 付属重り部
8 抵抗素子
9 接着剤
12 外部端子
13 ビアホール導体
14 実装基板側電極パッド
15 素子側電極パッド
16 金属細線
17 キャビティー
18 スペーサ部材
20 固定電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓部を有する基板と、前記基板の一方主面に接続され、金属からなる導電部を有する重り部と、を有し、前記可撓部の撓みに応じて加速度を検出する加速度検出素子と、
前記重り部と所定の間隔を隔てて設けられた固定電極と、を備え、
前記重り部に電圧を印加することにより、前記重り部と前記固定電極との間に静電引力が働くようにして自己診断をおこなう加速度検出装置。
【請求項2】
前記導電部に電気的に接続され、前記基板を貫通する貫通導体を有する請求項1に記載の加速度検出装置。
【請求項3】
前記貫通導体は、前記基板の材料より比重の大きな導電性材料からなり、
前記重り部は、前記一方主面上であって、前記基板を平面視して、前記貫通導体と重なる部分を有する位置に配置された請求項2に記載の加速度検出装置。
【請求項4】
前記基板は導電性を有し、前記重り部との間に絶縁層を有する請求項2または3に記載の加速度検出装置。
【請求項5】
前記貫通導体の側面が絶縁体膜で覆われている請求項4に記載の加速度検出装置。
【請求項6】
前記重り部は、前記重り部の材料より比重の大きい金属からなる請求項1〜5のいずれかに記載の加速度検出装置。
【請求項7】
前記加速度検出素子に取り付けられ、前記固定電極が形成された実装基板と、をさらに有する請求項1〜6のいずれかに記載の加速度検出装置。
【請求項8】
前記貫通導体にボンディングワイヤーを他方主面から直接接続して、前記重り部と前記固定電極との間に電位差を付与する請求項2〜7のいずれかに記載の加速度検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175393(P2010−175393A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18409(P2009−18409)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】