説明

加飾成型材、及びその製造方法

【課題】賦型材表面の凹凸を転写することにより得られる凹凸模様と、金属光沢、着色、印刷図柄等を同時に、しかも鮮明に生産性よくプラスチック基材に付与した加飾成型材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック基材上に、プラスチックフイルムの片面に意匠層が形成された転写材、少なくとも片表面に凹凸を有する賦型材が順次載置された積層体を得る工程(A)、加熱してプラスチック基材を溶融状態にする工程(B)、プラスチック基材が溶融状態である積層体を少なくとも賦型材側から加圧して、転写積層体を得る工程(C)、前記転写積層体を冷却後、転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離して、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に凹凸模様を形成する工程(D)からなること、及び一度使用された賦型材を再度使用しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材上に意匠層が積層されてなる加飾成型材及びその製造方法に関し、織物、編物、不織布等の賦型材表面の凹凸を転写することにより得られる凹凸模様と、金属光沢、着色、印刷図柄等とを同時に、プラスチック基材に付与することができる加飾成型材の製造方法、及び該製造方法により製造される加飾成型材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属光沢、着色、印刷図柄等を付与することができる意匠層をプラスチック基材上に形成した加飾成型材が知られている。
上記加飾成型材は、銘板やミラー等のように加飾成型材そのものが製品として使用できる場合のほか、様々な製品を製造するための材料としても使用でき、例えば、加飾成型材を使用して真空成型やプレス成型等を行なうことにより、オーディオ製品、その他家電製品の筐体など各種成型品を製造するために使用できるものである。
【0003】
上記加飾成型材及びその製造方法としては、例えば、基材となるプラスチック基材上に真空蒸着法等により直接金属薄膜層を形成することにより金属光沢を付与した加飾成型材、プラスチック基材上に着色剤を混入した樹脂薄膜(着色層)をコーティングにより形成するか、あるいは着色剤を混入した樹脂を溶融しTダイで押出してプラスチック基材そのものに着色剤を混入して着色した加飾成型材、さらには、プラスチック基材上に図柄状の印刷層を形成することにより印刷図柄を付与した加飾成型材が挙げられる。
また、プラスチックフイルムの片面に、上記金属薄膜層、着色層、印刷層等を適宜組み合わせて形成した転写材を使用して、プラスチック基材上に、上記金属薄膜層、着色層、印刷層等を形成した加飾成型材を製造する方法も例示できる。
このようにして製造された加飾成型材は、金属光沢、着色、印刷図柄等が相俟った意匠性を有するものである。
【0004】
さらに、凹凸模様と、金属光沢、着色、印刷図柄等とを同時に、プラスチック基材に付与することができる加飾成型材の製造方法、及び該製造方法により得られる加飾成型材が知られている。
上記加飾成型材は、凹凸模様と、金属光沢、着色、印刷図柄等とが相俟った独特の意匠性を有するものである。
特許文献1には、プラスチック基材などのプラスチック等の成型素材からなる基材表面に所望の刻印深さの同一若しくは相異なる網目状又は線状等の生地模様が刻設されてなる金属光沢模様素材(加飾成型材)が記載されている。
そして、特許請求の範囲や図1に記載されている通り、シリコンゴムローラ7と補助ローラ8との間に架設された生地模様を押刻可能な耐熱金属材からなるエンドレス状のベルト9を、該ベルトの張架された開放上面側に設置した複数個の加熱ヒーター6により加熱して、テーブル4に載置されたプラスチック等の成型素材からなる基材2の上方(該基材2と前記ベルトとの間)に張設された(金属光沢を有する)転写フイルム(転写材)11に該ベルト9を接触させることにより、基材2の表面に所望の刻印深さの同一若しくは相異なる網目状又は線状等の(金属光沢)生地模様を刻設して金属光沢模様素材を製造する方法が記載されている。
また、エンドレス状のベルト9の材料として、上記押刻可能な耐熱金属材に代えて、ポリアミド繊維不織布等の耐熱性繊維織物を用いることができる旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−197900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1記載の金属光沢模様素材及びその製造方法には、下記に示す欠点があった。
(1)上記特許文献1記載の金属光沢模様素材は、生地模様を形成する方法が、前記の通り、生地模様を押刻可能な耐熱金属材からなるエンドレス状のベルトを転写の際に連続して何度でも使用するものであるため、製造された各々の金属光沢模様素材は、被転写物である基材が図1に示されているような枚葉のシートや板の場合には、出来上がった各々の金属光沢模様素材の生地模様は全て全く同一となってしまう。また被転写物である基材がシート等のロール状(巻物)になっている場合には、出来上がった各々の金属光沢模様素材の生地模様は長さ方向に一定の間隔(ベルトと同じ長さ)で全く同一の模様が繰り返された変化のない単調な生地模様になってしまうという問題があった。
このことは、ベルトの生地模様を単調な柄の織物や編物と同じ柄にして、そもそも同一の模様が繰り返された変化のない単調な生地模様の金属光沢模様素材を製造することを目的とする場合には問題とならないが、一品毎に異なる生地模様を有する金属光沢模様素材を製造しようとしてもできないという問題があった。
例えば、ランダムな生地模様を特徴とする、すなわち繊維が絡み合った様々な模様であって幅方向や長さ方向において二つと同じ模様がないことを特徴とする不織布の生地模様を活かして、一品毎に異なる生地模様の金属光沢模様素材を製造することを目的として、不織布の生地模様のベルトを使用して金属光沢模様素材を製造したとしても、やはり全く同一の模様が単調に繰り返される変化のない生地模様となってしまい、上記目的を達成できないものであった。
(2)前記の通り、エンドレス状のベルト9の材料として、ポリアミド繊維不織布等の耐熱性繊維織物を用いた場合、耐熱性繊維織物をベルト状にする際にどうしても継目ができてしまい、その結果金属光沢模様素材の生地模様にも継目が発生し、意匠性が損なわれるという問題があった。また、意匠性を重視すると金属光沢模様素材の継目部分を除去(廃棄)することとなり、そうすると生産性が悪くなるという問題があった。
(3)さらに、ベルトの材料に耐熱性織物を使用した場合には、転写を何度も繰り返すと、転写時の熱と圧力で織物の生地が変形し、所望の生地模様を基材に付与することが困難になる問題があった。そのため、頻繁に新しいベルトに交換する必要があり、この点からも生産性が悪くなるという問題があった。
(4)被転写物である基材そのものを加熱するのではなく、該基材に生地模様を付与するためのベルトを加熱する方法であったため、該ベルトを均一に加熱することが難しく、その結果、得られた金属光沢模様素材は部分的に生地模様が不鮮明であったり、場合によっては生地模様が全く転写されないなど、所望の生地模様が転写されない現象により、金属光沢模様素材が鮮明な所望の生地模様とならない場合があった。
特に、ベルトを耐熱性繊維織物とした場合には、耐熱金属材からなるベルトと比較して、上記現象は顕著であった。
【0007】
本発明は、上記全ての欠点を除去したものであり、賦型材表面の凹凸を転写することにより得られる凹凸模様と、金属光沢、着色、印刷図柄等を同時に、しかも鮮明に生産性よくプラスチック基材に付与することができる、加飾成型材の製造方法、及び該製造方法により製造される加飾成型材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、プラスチック基材上に意匠層が積層されてなる加飾成型材の製造方法において、プラスチック基材上に、プラスチックフイルムの片面に意匠層が形成された転写材を意匠層がプラスチック基材側になるように載置し、さらに該転写材のプラスチックフイルム上に、少なくとも片表面に凹凸を有する賦型材を該凹凸面がプラスチックフイルム側になるように載置して、プラスチック基材、転写材、及び賦型材が順次載置された積層体を得る工程(A)、加熱してプラスチック基材を溶融状態にする工程(B)、プラスチック基材が溶融状態である積層体を少なくとも賦型材側から加圧して、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に前記凹凸を転写して転写積層体を得る工程(C)、前記転写積層体を冷却後、転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離して、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に賦型材の前記凹凸が転写された凹凸模様を形成する工程(D)からなること、及び前記工程(A)〜(D)で使用された賦型材を再度工程(A)〜(D)で使用しないことを特徴とする加飾成型材の製造方法である。
[2]本発明は、工程順序が、工程(A)、工程(B)、工程(C)、及び工程(D)の順序である上記[1]記載の製造方法である。
[3]本発明は、工程順序が、工程(B)及び工程(C)が同時である上記[1]記載の製造方法である。
[4]本発明は、工程順序が、工程(B)、工程(A)、工程(C)、及び工程(D)の順序である上記[1]記載の製造方法である。
[5]本発明は、上記[1]〜[4]何れかに記載の製造方法により製造された、プラスチック基材上に意匠層が積層されてなる加飾成型材であって、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に、賦型材の前記凹凸が転写された凹凸模様が形成されていることを特徴とする加飾成型材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加飾成型材、及びその製造方法は、上記の特徴を有するので下記の優れた効果を有するものとなる。
本発明の加飾成型材の製造方法においては、工程(A)〜(D)で使用された織物、編物、不織布等の賦型材を再度工程(A)〜(D)で使用せず1度きりの使用に留めるため、すなわち賦型材を特許文献1記載の製造方法のようにエンドレス状のベルトにするなどして再度使用(使い回し)しないため、
1.賦型材として、不織布のようにランダムな凹凸を有する賦型材を使用して製造した本発明の加飾成型材は、被転写物であるプラスチック基材が枚葉のシートや板の場合には、出来上がった各々の加飾成型材の凹凸模様は加飾成型材一品毎に異なるランダムな模様となり、全ての加飾成型材の凹凸模様が全く同一となることがない。また被転写物であるプラスチック基材がシート等がロール状(巻物)になっている場合には、出来上がった各々の加飾成型材の凹凸模様は幅方向や長さ方向において二つと同じ凹凸模様がないランダムな凹凸模様となり、一定の間隔(ベルトと同じ長さ)で全く同一の模様が繰り返された変化のない単調な凹凸模様とはならない。
2.賦型材の使用方法については後述するが、本発明の製造方法においては、一度使用した賦型材を再度使用することがない。従って、賦型材を再度使用する目的でエンドレス状のベルトにすることはないので、本発明の製造方法で製造した加飾成型材は、凹凸模様に継目ができることがないので、意匠性が損なわれることがなく、また継目部分を除去する必要もないので生産性が悪くなることもない。
さらに、新しいベルトに交換する必要もないため、この点からも生産性が悪くなることがない。
3.本発明の製造方法においては、賦型材を1度きりの使用に留めるので、転写時の熱や圧力で凹凸が一度変形した賦型材を再度使用することがない。従って、賦型材表面の凹凸は転写時の熱や圧力で変形していないため、本発明の製造方法で製造した加飾成型材は凹凸模様が不鮮明になったりすることがないので、賦型材の凹凸が鮮明に転写された所望の凹凸模様を常に本発明の加飾成型材に形成することができる。
また、本発明の加飾成型材の製造方法においては、被転写物であるプラスチック基材そのものを直接加熱するので、
4. 賦型材のみを加熱する場合よりも、プラスチック基材が均一に加熱されるので、部分的に所望の凹凸模様が転写されないなどの不具合が生じることがなく、本発明の製造方法で製造した本発明の加飾成型材は鮮明な凹凸模様が確実に形成される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後で述べる本発明の加飾成型材の製造方法で製造される本発明の加飾成型材は、プラスチック基材上に意匠層が積層されてなるものである。
そして、本発明の加飾成型材は、後で述べる賦型材の表面の凹凸が転写された凹凸模様が、上記意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に形成されていることを特徴とする。
ここで賦型材表面の凹凸とは、賦型材である織物、編物、不織布等の表面形状、すなわち賦型材である織物、編物、不織布等を構成する繊維が、該織物、編物、不織布等の表面に露出することにより形成された表面形状をいう。
そして、賦型材を使用して製造した本発明の加飾成型材の意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面には、上記賦型材の表面形状が反転して転写された凹凸模様が形成されることとなる。
従って、本発明でいう凹凸模様とは、賦型材表面の凹凸がちょうど反転して転写された状態の模様をいう。
すなわち、賦型材表面の凸部が転写されることにより本発明の加飾成型材に形成される凹模様になり、賦型材表面の凹部が転写されることにより本発明の加飾成型材に形成される凸模様になる。
【0011】
まず、本発明の加飾成型材の製造方法において使用する、プラスチック基材、転写材、及び賦型材が順次載置された積層体について説明する。
上記積層体は、プラスチック基材上に、プラスチックフイルムの片面に意匠層が形成された転写材を意匠層がプラスチック基材側になるように載置し、さらに該転写材のプラスチックフイルム上に、少なくとも片表面に凹凸を有する賦型材を該凹凸面がプラスチックフイルム側になるように載置して得られる。
【0012】
本発明の加飾成型材に使用するプラスチック基材は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PVC(塩化ビニル)樹脂、AS(アクリロニトリル)樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂等のアクリル樹脂などの樹脂が使用でき、中でも熱可塑性樹脂が好ましい。
プラスチック基材の形状は、シート状や板状のものが使用できる。
また、プラスチック基材は、枚葉、あるいは連続生産が可能な長尺の何れでもよい。
厚さ、幅、長さは、本発明の加飾成型材の所望の大きさにより適宜決定すればよい。
【0013】
本発明の加飾成型材を製造するために使用する転写材は、プラスチックフイルムの片面に、意匠層が形成されたものである。
ここで意匠層とは、本発明の加飾成型材に金属光沢、着色、印刷図柄等を付与するための加飾層、すなわち金属光沢を付与するための金属薄膜層、着色するための着色層、印刷図柄を付与するための印刷層などはもちろん、該加飾層をプラスチック基材と密着させるための接着層、意匠層をプラスチック基材に転写した後、意匠層表面をキズや腐食等から保護する保護層等、プラスチック基材に形成して所望の加飾成型材を得るために必要なあらゆる層の総称である。
【0014】
加飾層を構成する上記の金属薄膜層、着色層、印刷層は単層でもよく、所望の意匠を得るため、これらの層を適宜組み合わせて複数の層としても構わない。
例えば、金属薄膜層と着色層を組み合わせた意匠層を形成した転写材、あるいは金属光沢層と印刷層を組み合わせた意匠層を形成した転写材とすることにより、本発明の加飾成型材にそれぞれ着色された金属光沢、あるいは印刷図柄及び金属光沢をそれぞれ付与することができる。
また、意匠層は転写材の全面に形成されていてもよく、部分的に形成されていてもよい。
さらに、加飾層を構成する上記の金属薄膜層、着色層、印刷層、その他保護層や接着層など、意匠層を構成する各層も、転写材の全面に形成されていてもよく、部分的に形成されていてもよい。
どの層を全面に形成するか、部分的に形成するかは、本発明の加飾成型材の所望の意匠性により適宜組み合わせて決定すればよい。
このように、意匠層を構成する各層を、転写材の全面あるいは部分的に形成することにより、本発明の製造方法により製造した加飾成型材も、意匠層自体や意匠層を構成する各層が該加飾成型材の全面あるいは部分的に形成されることとなり、本発明の加飾成型材がバリエーションに富んだ意匠性を有するものとなる。
【0015】
上記金属薄膜層としては、本発明の加飾成型材に金属光沢を付与できるものであれば特に制限はなく、アルミニウム薄膜層、銀薄膜層、銅薄膜層、クロム薄膜層、ニッケル薄膜層、スズ薄膜層等が使用できる。
金属薄膜層の厚さは、所望の金属光沢により適宜決定すればよい。
また、金属薄膜層の形成方法は、真空蒸着法等公知の方法が使用できる。
【0016】
上記着色層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂に、染料や顔料等の着色剤を混入した薄膜で、グラビアコート法、リバースコート法等の公知の方法で形成できる。
着色剤の量や着色層の厚さは、所望の着色度合いにより適宜決定すればよい。
【0017】
印刷層は、印刷インキをスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の公知の方法により、図柄状に形成した薄膜である。
印刷層の図柄は、所望の印刷図柄により適宜決定すればよい。
【0018】
接着層は、樹脂からなる薄膜であり、加飾層をプラスチック基材と密着させるための層である。
接着層に使用する樹脂は、プラスチック基材に密着可能な樹脂であれば特に制限はなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂等の樹脂が使用でき、被転写物であるプラスチック基材の種類により適宜決定すればよい。
【0019】
保護層は、樹脂からなる薄膜であり、意匠層表面をキズや腐食等から保護するものである。
保護層を特にキズがつきにくいハードコート性を有する層としてもよい。
また、保護層をプラスチックフイルムと剥離し易い層としておいても構わない。
このようにした場合には、プラスチックフイルムに後で述べる離型層を形成した離型性プラスチックフイルムを使用する必要がない。
保護層に使用する樹脂は、意匠層表面をキズや腐食等から保護可能な樹脂であれば特に制限はなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂等の樹脂が使用できる。
【0020】
プラスチックフイルムは、転写後には意匠層が形成されたプラスチック基材から剥離されるものであり、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリアミドフイルム等、従来公知のプラスチックフイルムが使用できる。
プラスチックフイルムの厚さは、3〜50μmが好ましい。
厚さが3μmより薄いと、本発明の加飾成型材を製造する際に、プラスチックフイルムにしわが入ったりするので好ましくなく、厚さが50μmより厚いと、賦型材表面の凹凸を、プラスチック基材や意匠層に鮮明に転写できず、結果的に本発明の加飾成型材に所望の凹凸模様を形成することができない場合があるので好ましくない。
【0021】
前記意匠層がプラスチックフイルムから容易に剥離できるように、プラスチックフイルム上に(プラスチックフイルムと意匠層との間に)樹脂からなる離型層を形成しておくことが好ましい。
このように離型層を形成した離型性プラスチックフイルムも、本発明のプラスチックフイルムに含まれる。
プラスチックフイルムに離型層を形成した転写材の場合、離型層は、転写後にはプラスチックフイルムとともに、意匠層が形成されたプラスチック基材から剥離される。
【0022】
転写材の構成としては、例えば、プラスチックフイルム/離型層/保護層/加飾層/接着層、プラスチックフイルム/離型層/加飾層/接着層等の構成が挙げられる。
【0023】
また、転写材は、枚葉、あるいは本発明の加飾成型材の連続生産が可能となる長尺の何れでもよい。
厚さ、幅、長さは、本発明の加飾成型材の所望の大きさにより適宜決定すればよい。
【0024】
本発明の加飾成型材を製造するために使用する賦型材は、本発明の加飾成型材の意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に、賦型材表面の凹凸が転写された凹凸模様を形成するために使用するものである。
上記賦型材は、織物、編物、不織布等であって、少なくとも片表面に凹凸を有するものである。
従って、賦型材表面の両面に凹凸があってももちろん構わない。
【0025】
織物や編物の素材としては、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、又はポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂等からなる化学繊維の何れでもよい。
また、織り組織としては、平織、綾織、朱子織等があり、編み組織としては、緯編、平編、ゴム編、パール編等がある。
不織布の素材としては、織物や編物と同様の天然繊維や化学繊維が使用できる。
【0026】
賦型材が例えば織物や編物の場合、織り組織や編み組織、使用する繊維の太さ等を種々組み合わせることによって、不織布の場合には目付け量などによって、賦型材の表面形状(凹凸)を、容易にしかも多種多様なものとすることができ、その結果、該賦型材を使用して製造した本発明の加飾成型材の凹凸模様を、容易に多種多様なものとすることができる。
織物や編物の織り組織や編み組織を単純な平織や平編にするなど、織物や編物表面の凹凸を、全く同一の模様が繰り返された変化のない単調な凹凸とした場合には、該織物や編物を使用して製造した本発明の加飾成型材は全く同一の模様が繰り返された変化のない単調な凹凸模様が形成される。
また、織物や編物の表面の一部に、例えば花柄、水玉模様などの様々な織り図柄や編み図柄、あるいは刺繍等による立体図柄(織り図柄や編み図柄より、より立体的な図柄)を形成した賦型材としておいても構わない。
このような賦型材を使用して製造した本発明の加飾成型材は、織物や編物を構成する繊維による表面形状と、上記織り図柄、編み図柄、立体図柄が転写された図柄模様とが相俟った趣きのあるものとなる。
さらに、本発明の加飾成型材を、織物や編物を構成する繊維による表面形状と、平坦な図柄が転写された図柄模様とが相俟った趣きのあるものとしてもよい。
平坦な図柄が転写された上記図柄模様を形成するためには、織物や編物の表面の一部に樹脂等をコーティングするなどして織物や編物の表面の一部を平坦にした図柄を形成するか、織物や編物自体の一部を図柄状に切り抜いておく方法が挙げられる。
賦型材表面の凹凸の状態(凹部の深さ、凸部の高さ、凹部や凸部の形状等)は、本発明の加飾成型材の所望の凹凸模様により、織り組織や編み組織、使用する繊維の太さ等を種々組み合わせることにより適宜決定すればよい。
【0027】
上記の通り、賦型材の素材は、天然繊維又は化学繊維であるため、賦型材が、後で述べる本発明の加飾成型材の製造方法における工程(A)〜(D)において、一度熱や圧力を受けると、賦型材表面の凹凸が変形してしまう場合がある。
このため、仮に表面の凹凸が変形した賦型材を再度使用して、本発明の加飾成型材を本発明の製造方法により製造すると、本発明の加飾成型材が所望の凹凸模様を得ることが困難となる場合がある。
従って、本発明の加飾成型材が確実に所望の凹凸模様を得るためには、賦型材は、本発明の加飾成型材の製造方法における工程(A)〜(D)で再度使用しないことが好ましい。
尚、本発明の加飾成型材の製造方法における工程(A)〜(D)で使用された賦型材を再度工程(A)〜(D)で使用しないとは、一度使用した賦型材をそのままの状態で再度工程(A)〜(D)で使用しない意味である。
従って、工程(A)〜(D)で一度使用することにより熱や圧力で凹凸が変形してしまった賦型材を、例えばスチーム(高温の水蒸気)等により加熱と加湿を行い、変形してしまった凹凸を元通りの凹凸に再現した賦型材を、再度本発明の加飾成型材の製造方法における工程(A)〜(D)で使用する場合など、一度使用した賦型材をそのままの状態で使用しない場合は、工程(A)〜(D)で再度使用することにはならない。
よって、一度使用することにより熱や圧力で変形してしまった凹凸を元通りの凹凸に再現した賦型材を本発明の加飾成型材の製造方法における工程(A)〜(D)で再度使用する場合も、本発明の製造方法に含まれる。
【0028】
また、賦型材は、枚葉、あるいは本発明の加飾成型材の連続生産が可能となる長尺の何れでもよい。
厚さ、幅、長さは、本発明の加飾成型材の所望の大きさにより適宜決定すればよい。
【0029】
次に、本発明の加飾成型材の製造方法について説明する。
前記の通り、本発明の加飾成材の製造方法は、プラスチック基材上に意匠層が積層されてなる加飾成型材の製造方法において、プラスチック基材上に、プラスチックフイルムの片面に意匠層が形成された転写材を意匠層がプラスチック基材側になるように載置し、さらに該転写材のプラスチックフイルム上に、少なくとも片表面に凹凸を有する賦型材を該凹凸面がプラスチックフイルム側になるように載置して、プラスチック基材、転写材、及び賦型材が順次載置された積層体を得る工程(A)、加熱してプラスチック基材を溶融状態にする工程(B)、プラスチック基材が溶融状態である積層体を少なくとも賦型材側から加圧して、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に前記凹凸を転写して転写積層体を得る工程(C)、前記転写積層体を冷却後、転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離して、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に賦型材の前記凹凸が転写された凹凸模様を形成する工程(D)からなること、及び前記工程(A)〜(D)で使用された賦型材を再度工程(A)〜(D)で使用しないことを特徴とする。
上記工程(A)〜(D)の順序は、
(1)工程(A)、工程(B)、工程(C)、及び工程(D)の順序
(2)工程(B)、工程(A)、工程(C)、及び工程(D)の順序
(3)最初に工程(A)、次に工程(B)及び工程(C)を同時に行い、最後に工程(D)を行なう順序が挙げられる。
【0030】
最初に、各工程について説明する。
<工程(A)>
まず、プラスチック基材上に、プラスチックフイルムの片面に意匠層が形成された転写材を意匠層がプラスチック基材側になるように載置する。
次に、上記転写材のプラスチックフイルム上に、少なくとも片表面に凹凸を有する賦型材を該凹凸面がプラスチックフイルム側になるように載置する。
このようにして、プラスチック基材、転写材、及び賦型材が順次載置された積層体を得る工程である。
プラスチック基材、転写材、及び賦型材は枚葉、あるいは長尺の何れでもよい。長尺の場合はシートを巻いたロール状としておくのが取扱い上好ましい。
【0031】
<工程(B)>
加熱することにより、プラスチック基材を溶融状態にする工程である。
プラスチック基材を溶融状態にする目的は、プラスチック基材を軟らかくすることで、後で述べる工程(C)及び工程(D)において、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に所望の凹凸模様を鮮明に形成するためである。
従って、プラスチック基材の溶融状態は、プラスチック基材の形状を保持しつつ、上記目的を達成できる程度に軟らかくなっている状態であれば足りる。
また、必ずしもプラスチック基材全体が溶融状態となっている必要はなく、上記目的を達成できる範囲で、少なくともプラスチック基材の意匠層側表面が溶融状態となっていれば構わない。
加熱温度は、プラスチック基材が溶融状態となる温度であればよく、プラスチック基材の種類や溶融状態の程度(溶融状態をプラスチック基材全体か表面のみか)により適宜決定すればよい。
工程(B)としては、下記の方法が例示できる。
(B−1)赤外線等のヒータで積層体を加熱してプラスチック基材を溶融状態にする方法
(B−2)赤外線等のヒータでプラスチック基材を加熱して溶融状態にする方法
(B−3)加熱したゴムや金属のロール等に、積層体(好ましくは積層体のプラスチック基材側)を沿わせて加熱してプラスチック基材を溶融状態にする方法
(B−4)加熱したゴムや金属のロール等に、プラスチック基材を沿わせて加熱して溶融状態にする方法
(B−5)押出成型機等で、プラスチック基材の材料となる樹脂を溶融し、Tダイから押出して溶融状態のプラスチック基材を得る方法
【0032】
<工程(C)>
プラスチック基材が溶融状態である積層体を少なくとも賦型材側から加圧して、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に前記凹凸を転写して転写積層体を得る工程である。
ここで、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に前記賦型材表面の凹凸を転写するとは、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に賦型材表面の凹凸がちょうど反転してできる凹凸を形成すること、言い換えれば転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面を、賦型材表面の凹凸がちょうど反転してできる凹凸状に成型することをいう。
従って、工程(C)における転写積層体は、転写材(プラスチックフイルムと意匠層)及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面には、賦型材表面の凹凸がちょうど反転してできる凹凸模様が形成されている構造となっている。
賦型材表面の凹凸を、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に転写するには、少なくとも賦型材側から加圧することが必要となる。
工程(C)としては、下記の方法が例示できる。
(C−1)ゴムや金属のロールで、積層体の賦型材側から加圧する方法
(C−2)ゴムや金属のロール2本で積層体を挟み、表裏両面側から加圧する方法
(C−3)積層体と金属板を重ね合わせたものを1組の重合体とし、別の金属板上に、該重合体を複数組重ねて、これを表裏両面から加圧する方法
尚、工程(C)において、プラスチック基材が冷えて溶融状態を維持できていないと、賦型材表面の凹凸を転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に確実に転写することができない。
従って、賦型材表面の凹凸を転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に確実に転写するためには、加圧時にプラスチック基材が溶融状態を維持している必要がある。
加圧時にプラスチック基材の溶融状態を維持しておく方法として、例えば、上記(C−1)や(C−2)において、ゴムや金属のロールを加温するなどの方法が例示できる。
このように、プラスチック基材の溶融状態を維持する目的で、加圧時に加圧する装置を加温する場合も本発明でいう加圧に含まれる。
【0033】
<工程(D)>
加圧後に、前記転写積層体を冷却後、転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離して、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に賦型材の前記凹凸が転写された凹凸模様を形成する工程である。
すなわち、工程(C)で、転写材(プラスチックフイルムと意匠層)及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面には、賦型材表面の凹凸がちょうど反転してできる凹凸模様が形成されている構造となった転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離する工程である。
こうすることで、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に賦型材表面の凹凸が転写された凹凸模様が形成された本発明の加飾成型材を得ることができる。
尚、転写積層体から転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離する場合、プラスチックフイルムと賦型材を一時に剥離してももちろんよいが、賦型材のみ先に剥離してプラスチックフイルムを残したままにしておき、例えば本発明の加飾成型材を使用して真空成型等の加工をする際の直前に、残りのプラスチックフイルムを剥離するなど、プラスチックフイルムと賦型材を剥離するタイミングをずらしても構わない。
上記のように、賦型材のみ先に剥離してプラスチックフイルムを残したままにしておくことで、プラスチックフイルムが、いわば本発明の加飾成型材の意匠層側表面をキズやゴミなどから保護する保護フイルムの役割を果たすことができる。
【0034】
前記の通り、賦型材は工程(A)〜(D)において一度熱や圧力を受けると、賦型材表面の凹凸が変形してしまう場合があるため、仮に表面の凹凸が変形した賦型材を再度使用して、本発明の加飾成型材を本発明の製造方法により製造すると、本発明の加飾成型材が所望の凹凸模様を得ることが困難となる場合がある。
従って、工程(A)〜(D)で使用した賦型材は、再度工程(A)〜(D)で使用しないことが好ましい。
【0035】
前記の通り、上記工程(A)〜(D)の順序は、
(1)工程(A)、工程(B)、工程(C)、及び工程(D)の順序
(2)工程(B)、工程(A)、工程(C)、及び工程(D)の順序
(3)最初に工程(A)、次に工程(B)及び工程(C)を同時に行い、最後に工程(D)を行なう順序が挙げられる。
上記(1)の場合は、前記工程(A)、工程(B)、工程(C)、及び工程(D)をこの順序で行なう製造方法である。
上記(2)は、上記(1)の工程(A)と工程(B)の順序が入れ替わる製造方法、すなわち、加熱することによりプラスチック基材を溶融状態にする工程(B)を、積層体を得る工程(A)より先に行なう製造方法である。
具体的には、工程(B)で説明した、(B−2)、(B−4)、(B−5)の方法のように、まずプラスチック基材を溶融状態とした後(工程(B))、溶融状態のままのプラスチック基材を使用して積層体を得る(工程(A))ものである。
その後は、工程(C)、工程(D)の順に行い、本発明の加飾成型材を製造する。
【0036】
上記(3)は、上記(1)の工程(B)と工程(C)を同時に行なう製造方法である。
具体的には、積層体を得た(工程(A))後、例えば、加熱したゴムや金属のロールで積層体の表裏両面側からを加圧する方法、あるいは積層体を金属板で挟み、これを複数枚重ねて表裏両面から加熱しながら同時に加圧する方法(多段プレス)が挙げられる。
その後は、工程(D)を行い、本発明の加飾成型材を製造する。
【0037】
以上述べた本発明の加飾成型材の製造方法で製造した本発明の加飾成型材は、プラスチック基材上に意匠層が積層されているとともに、該意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に、賦型材表面の凹凸が転写された凹凸模様が形成されたものとなる。
本発明の加飾成型材は上記の特徴ある構成を有するので、凹凸模様と、金属光沢、着色、印刷図柄等が相俟った独特の意匠性を有するものとなるとともに、前記した優れた効果を発揮するものである。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
工程(A)、工程(B)、工程(C)、及び工程(D)の順序による製造方法
実施例1に係る本発明の加飾成型材の製造は、それぞれ長尺でロール状のプラスチック基材、転写材、及び賦型材を巻出装置にセットし、該巻出装置からそれぞれ巻き出されたプラスチック基材、転写材、及び賦型材を載置して得た積層体を、赤外線ヒータ部、加圧ロール、冷却ロールへと順に送り出し、加熱、加圧を行なって転写積層体を得、冷却した後、該転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を剥離するとともに、本発明の加飾成型材、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を各々巻取装置により別々に巻き取る一連の加工を連続してできる機械により製造した。
<工程(A)>
長尺でロール状の厚さ0.25mmのABS樹脂シート(プラスチック基材)を巻出装置1に、長尺でロール状の転写材[厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフイルム/離型層/意匠層(保護層/アルミニウム薄膜層/接着層)]を巻出装置2に、太さ250デニールのポリエステル糸を縦/横=32本/30本の糸密度で平織することにより表裏両面に平織による凹凸を有する長尺でロール状の平織物(賦型材)を巻出装置3にそれぞれセットした。
次に、ABS樹脂シート、転写材、及び平織物を、それぞれ巻出装置1、巻出装置2、及び巻出装置3から赤外線ヒート部側へ送り出し、ABS樹脂シート上に、転写材の意匠層がABS樹脂シート側になるように載置し、さらに該転写材のポリエチレンテレフタレートフイルム上に、平織物を載置して、ABS樹脂シート、転写材、及び織物が順次載置された積層体を得た。
<工程(B)>
赤外線ヒータ部へ送り出された上記積層体を、赤外線ヒータにて220℃に加熱してABS樹脂シートを溶融状態にした。
<工程(C)>
ABS樹脂シートが溶融状態となった上記積層体を加圧ロール側へ送り出し、何れも200℃に加温した2本の金属製加圧ロールの間に挟んで、ABS樹脂シートの溶融状態を維持するとともに、積層体の表裏両面から該加圧ロールにより加圧して、転写材及びABS樹脂シートの意匠層側表面に前記平織物の凹凸を転写して転写積層体を得た。
<工程(D)>
前記転写積層体を冷却ロール側へ送り出し、金属製の冷却ロールに沿わせて冷却した後、さらに巻取装置側へ送り出し、転写積層体から、転写材のポリエチレンテレフタレートフイルム及び平織物を剥離して、意匠層及びABS樹脂シートの意匠層側表面に平織物の前記凹凸が転写された凹凸模様が形成された長尺でロール状の本発明の加飾成型材を製造し、巻取装置1により巻き取った。
また、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材も各々巻取装置2、及び巻取装置3により別々に巻き取った。
製造した実施例1に係る本発明の加飾成型材は、平織物の凹凸がそのまま転写された凹凸模様とアルミニウムの金属光沢が相俟った独特の意匠性を有するものであった。
また、実施例1に係る本発明の加飾成型材は、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良は生じておらず、加飾成型材全体に鮮明な凹凸模様が形成されていた。
【0039】
[実施例2]
最初に工程(A)、次に工程(B)及び工程(C)を同時に行い、最後に工程(D)を行なう順序よる製造方法
実施例2に係る本発明の加飾成型材の製造は、長尺でロール状のプラスチック基材、転写材、及び賦型材を巻出装置にセットし、該巻出装置からそれぞれ巻き出されたプラスチック基材、転写材、及び賦型材を載置して得た積層体を、加熱と加圧を同時にする加熱・加圧ロール、冷却ロールへと順に送り出し、加熱と加圧を同時に行なって転写積層体を得、冷却した後、該転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を剥離するとともに、本発明の加飾成型材、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を各々巻取装置により別々に巻き取る一連の加工を連続してできる機械により製造した。
<工程(A)>
実施例1と同様にして、ABS樹脂シート、転写材、及び織物が順次載置された積層体を得た。
<工程(B)・工程(C)>
上記積層体を加熱・加圧ロール側へ送り出し、何れも220℃に加熱した2本の金属製ロールの間に挟んで、積層体を表裏両面から加熱と加圧を同時に行うことで、ABS樹脂シートを溶融状態にするとともに、転写材及びABS樹脂シートの意匠層側表面に前記凹凸を転写して転写積層体を得た。
<工程(D)>
前記転写積層体を冷却ロール側へ送り出した後は、実施例1と同様にして、意匠層及びABS樹脂シートの意匠層側表面に平織物の前記凹凸が転写された凹凸模様が形成された長尺でロール状の本発明の加飾成型材を製造した。
製造した実施例2に係る本発明の加飾成型材は、平織物の凹凸がそのまま転写された凹凸模様とアルミニウムの金属光沢が相俟った独特の意匠性を有するものであった。
また、実施例2に係る本発明の加飾成型材は、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良は生じておらず、加飾成型材全体に鮮明な凹凸模様が形成されていた。
【0040】
[実施例3]
最初に工程(A)、次に工程(B)及び工程(C)を同時に行い、最後に工程(D)を行なう順序よる製造方法
実施例3に係る本発明の加飾成型材の製造は、枚葉のプラスチック基材、転写材、及び賦型材を載置して得た積層体と金属板を重ね合わせたものを1組の重合体とし、別の金属板上に、該重合体を複数組重ねたものを、多段プレス機にセットして、積層体の表裏両面から加熱と加圧を同時に行なって転写積層体を得、冷却した後、該転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を剥離して、本発明の加飾成型材を製造した。
<工程(A)>
枚葉の厚さ1mmの塩化ビニル樹脂シート上に、枚葉の転写材[厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフイルム/離型層/意匠層(保護層/アルミニウム薄膜層/接着層)]を意匠層が塩化ビニル樹脂シート側になるように載置し、さらに該転写材のポリエチレンテレフタレートフイルム上に、太さ250デニールのポリエステル糸を縦/横=32本/30本の糸密度で平織することにより表裏両面に平織による凹凸を有する枚葉の平織物(賦型材)が順次載置された積層体を得た。
<工程(B)・工程(C)>
上記積層体と金属板を重ね合わせたものを1組の重合体とし、別の金属板上に、該重合体を複数組重ねたものを、多段プレス機にセットして、積層体の表裏両面から160℃で加熱するとともに加圧を同時に行い、塩化ビニル樹脂シートを溶融状態にするとともに、転写材及び塩化ビニル樹脂シートの意匠層側表面に前記凹凸を転写して転写積層体を得た。
<工程(D)>
前記転写積層体を冷却し、プレス機から取り出した後、転写積層体から、転写材のポリエチレンテレフタレートフイルム及び平織物を剥離して、意匠層及び塩化ビニル樹脂シートの意匠層側表面に平織物の前記凹凸が転写された凹凸模様が形成された枚葉の本発明の加飾成型材を製造した。
製造した実施例3に係る本発明の加飾成型材は、平織物の凹凸がそのまま転写された凹凸模様とアルミニウムの金属光沢が相俟った独特の意匠性を有するものであった。
また、実施例3に係る本発明の加飾成型材は、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良は生じておらず、加飾成型材全体に鮮明な凹凸模様が形成されていた。
【0041】
[実施例4]
工程(B)、工程(A)、工程(C)、及び工程(D)の順序による製造方法
実施例4に係る本発明の加飾成型材の製造は、Tダイから押出し成型した溶融状態のプラスチック基材上に、巻出装置にセットした長尺でロール状の転写材、及び賦型材を、該巻出装置からそれぞれ巻き出して載置して得た積層体を、加圧ロール、冷却ロールへと順に送り出し、加圧を行なって転写積層体を得、冷却した後、該転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を剥離するとともに、本発明の加飾成型材、転写材のプラスチックフイルム、及び賦型材を各々巻取装置により別々に巻き取る一連の加工を連続してできる機械により製造した。
<工程(B)>
ABS樹脂を加熱し溶融状態にして、Tダイから押出し成型することにより、厚さ0.5mmで溶融状態のABS樹脂シートを得た。
<工程(A)>
実施例1で使用したのと同じ長尺でロール状の転写材を巻出装置1に、実施例1で使用したのと同じ長尺でロール状の平織物(賦型材)を巻出装置2にそれぞれセットした。
次に、転写材、及び平織物を、それぞれ巻出装置1、及び巻出装置2から送り出し、上記Tダイから押出し成型した溶融状態のABS樹脂シート上に、転写材の意匠層がABS樹脂シート側になるように載置し、さらに該転写材のポリエチレンテレフタレートフイルム上に、平織物を載置して、ABS樹脂シート、転写材、及び織物が順次載置された積層体を得た。
<工程(C)>
上記積層体を加圧ロール側へ送り出し、実施例1と同様にして転写積層体を得た。
<工程(D)>
前記転写積層体を冷却ロール側へ送り出した後は、実施例1と同様にして、意匠層及びABS樹脂シートの意匠層側表面に平織物の前記凹凸が転写された凹凸模様が形成された長尺でロール状の本発明の加飾成型材を製造した。
製造した実施例4に係る本発明の加飾成型材は、平織物の凹凸がそのまま転写された凹凸模様とアルミニウムの金属光沢が相俟った独特の意匠性を有するものであった。
また、実施例4に係る本発明の加飾成型材は、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良は生じておらず、加飾成型材全体に鮮明な凹凸模様が形成されていた。
【0042】
[実施例5〜8]
実施例1〜4で使用した平織物に替えて、目付け量25g/mで、ポリエステル 樹脂からなる不織布を使用したこと以外は実施例1〜4と同様にして、それぞれ実施例5〜8に係る本発明の加飾成型材を製造した。
製造した実施例5〜8に係る本発明の加飾成型材は何れも、不織布の凹凸がそのまま転写された凹凸模様とアルミニウムの金属光沢が相俟った独特の意匠性を有するものであった。
また、実施例5〜8に係る本発明の加飾成型材は何れも、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良は生じておらず、加飾成型材全体に不織布特有のランダムな、しかも鮮明な凹凸模様が形成されていた。
中でも、実施例7における本発明の加飾成型材は、一品毎に凹凸模様が全く異なるものであった。
【0043】
[実施例9〜12]
実施例1〜4で使用した転写材に替えて、長尺でロール状の転写材[厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフイルム/離型層/意匠層(保護層/樹脂に黒色顔料を混入することにより黒色に着色された着色層/接着層)]を使用したこと以外は実施例1〜4と同様にして、それぞれ実施例9〜12に係る本発明の加飾成型材を製造した。
製造した実施例9〜12に係る本発明の加飾成型材は何れも、平織物の凹凸がそのまま転写された凹凸模様と黒色が相俟った独特の意匠性を有するものであった。
また、実施例9〜12に係る本発明の加飾成型材は何れも、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良は生じておらず、加飾成型材全体に鮮明な凹凸模様が形成されていた。
【0044】
[比較例1]
特許文献1の図1記載の製造機と同様の製造機を使用して、加飾成型材を製造した。
尚、ベルトには実施例1の平織物の凹凸と同様の凹凸を形成したステンレス製ベルトを使用した。
まず、実施例3で使用したものと同じ枚葉の厚さ1mmの塩化ビニル樹脂シートを移動可能なテーブル上に載置した。
次に、実施例1で使用した転写材と同じ長尺でロール状の転写材を、意匠層が塩化ビニル樹脂シート側になるように、上記テーブルの端に設置した巻出装置にセットした。
尚、巻出装置にセットした転写材は、上記テーブル上に載置した塩化ビニル樹脂シートに相対するように塩化ビニル樹脂シート上を通って、巻出装置と反対側のテーブルの端に設置した巻取装置に巻き取られる。
塩化ビニル樹脂シート上の転写材の上方には、赤外線ヒータにて200℃に加熱されたステンレス製ベルトが、駆動可能なシリコンゴムロールと補助ロール間に張架されている。
次に、上記転写材を巻出装置から巻取装置へ送り出すとともに、塩化ビニル樹脂シートが載置されたテーブルを移動しながら、200℃に加熱されたステンレス製ベルトをシリコンゴムロールにより転写材のポリエチレンテレフタレートフイルム側から加圧して、転写材及び塩化ビニル樹脂シートの意匠層側表面に前記凹凸を転写した。
さらに、冷却後、転写材のポリエチレンテレフタレートフイルムを剥離して、意匠層及び塩化ビニル樹脂シートの意匠層側表面にステンレス製ベルトの凹凸が転写された凹凸模様が形成された加飾成型材を製造した。
尚、転写材のプラスチックフイルムは巻取装置により巻き取った。
製造した比較例1に係る加飾成型材は、平織物の凹凸が転写された凹凸模様を呈するものであった。
しかし、ステンレス製ベルトが均一に加熱されていなかったため、比較例1に係る加飾成型材は、上記凹凸模様が、加飾成型材の長さ方向や幅方向において、凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良が生じていた。
【0045】
[比較例2]
比較例1で使用したステンレス製ベルトに替えて、実施例1で使用した平織物で作製したベルトを使用したこと以外は、比較例1と同様にして加飾成型材を製造した。
尚、平織物で作製したベルトには継目が生じていた。
製造した比較例2に係る加飾成型材は、平織物で作製したベルトが充分に加熱されにくいこと、及び平織物に何度も熱と圧力がかかることにより平織物の凹凸が変形した結果、凹凸模様が、加飾成型材全体で不鮮明であり、また全く凹凸模様が形成されていない部分もあった。
さらに、比較例2の加飾成型材は、長さ方向に一定の間隔(ベルトと同じ長さ)でベルトの継目模様が形成されており、継目模様を除去せざるを得なかった。
【0046】
[比較例3]
実施例3で使用した平織物に替えて、実施例3で一度使用した平織物をそのまま再び使用したこと以外は、実施例3と同様にして加飾成型材を製造した。
製造した比較例3に係る加飾成型材は、平織物の凹凸が転写された凹凸模様を呈するものであった。
しかし、比較例3に係る加飾成型材は、一度使用することにより熱や圧力で凹凸が変形してしまった平織物を再度使用して製造したため、変形した凹凸の部分が転写された位置の凹凸模様は、当然に変形した該凹凸がそのまま転写された凹凸模様となった。
従って、本来平織物が有していた凹凸をそのまま転写した凹凸模様にはならず、結果的に加飾成型材の長さ方向や幅方向において、上記凹凸模様が部分的に不鮮明になるなどの不良が生じていた。
さらに、比較例3の加飾成型材も、比較例1の加飾成型材と同様、長さ方向に一定の間隔(ベルトと同じ長さ)でベルトの継目模様が形成されており、継目模様を除去せざるを得なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材上に意匠層が積層されてなる加飾成型材の製造方法において、プラスチック基材上に、プラスチックフイルムの片面に意匠層が形成された転写材を意匠層がプラスチック基材側になるように載置し、さらに該転写材のプラスチックフイルム上に、少なくとも片表面に凹凸を有する賦型材を該凹凸面がプラスチックフイルム側になるように載置して、プラスチック基材、転写材、及び賦型材が順次載置された積層体を得る工程(A)、加熱してプラスチック基材を溶融状態にする工程(B)、プラスチック基材が溶融状態である積層体を少なくとも賦型材側から加圧して、転写材及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に前記凹凸を転写して転写積層体を得る工程(C)、前記転写積層体を冷却後、転写積層体から、転写材のプラスチックフイルム及び賦型材を剥離して、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に賦型材の前記凹凸が転写された凹凸模様を形成する工程(D)からなること、及び前記工程(A)〜(D)で使用された賦型材を再度工程(A)〜(D)で使用しないことを特徴とする加飾成型材の製造方法。
【請求項2】
工程順序が、工程(A)、工程(B)、工程(C)、及び工程(D)の順序である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程順序が、工程(B)及び工程(C)が同時である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
工程順序が、工程(B)、工程(A)、工程(C)、及び工程(D)の順序である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4何れかに記載の製造方法により製造された、プラスチック基材上に意匠層が積層されてなる加飾成型材であって、意匠層及び少なくともプラスチック基材の意匠層側表面に、賦型材の前記凹凸が転写された凹凸模様が形成されていることを特徴とする加飾成型材。

【公開番号】特開2011−110738(P2011−110738A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267234(P2009−267234)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000156042)株式会社麗光 (33)
【Fターム(参考)】