説明

加齢黄斑変性症(AMD)の処置方法

本発明は概して、網膜変性疾患の処置および予防の分野に関する。より詳しくは、本発明は哺乳動物および具体的にはヒトにおいて、加齢黄斑変性症(AMD)もしくは関連する網膜状態の発症の危険性を予防、低減するための方法、または別の方法で加齢黄斑変性症(AMD)もしくは関連する網膜状態の症状を処置もしくは改善するための方法を企図する。本発明はさらに、加齢黄斑変性症または関連する網膜変性状態の処置および予防において有用な薬剤の、用量依存的または用量特異的な投与を可能にする治療用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、網膜変性疾患の処置および予防の分野に関する。より詳しくは、本発明は哺乳動物および具体的にはヒトにおいて、加齢黄斑変性症(AMD)もしくは関連する網膜状態の発症の危険性を予防、低減するための方法、または別の方法で加齢黄斑変性症(AMD)もしくは関連する網膜状態の症状を処置もしくは改善するための方法を企図する。本発明はさらに、加齢黄斑変性症または関連する網膜変性状態の処置および予防において有用な薬剤の、用量依存的または用量特異的な投与を可能にする治療用組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
本明細書における任意の先行技術の参照は、その先行技術が任意の国における共通の一般知識の一部を形成することを認めるもの、または何らかの形で提案するものではなく、そのようなものと解釈されるべきではない。
【0003】
本明細書における参考文献の文献詳細は同様に、本明細書の最後に列挙されている。
【0004】
黄斑変性は、ブルッフ膜、脈絡膜、神経網膜および/または網膜色素上皮の異常に関連する、進行性の中心視力低下により全て特徴付けられる疾患のファミリーを記述するのに使用される臨床的用語である。これらの障害は、AMDのような高齢被験体に影響を与えるごく一般的な状態に加えて、いくつかの症例においては生後10年以内に検出されることがある、稀有な、早発型ジストロフィーを含む。他の黄斑変性症には、ノースカロライナ型黄斑変性、ソースビー眼底変性症、シュタルガルト病、パターンジストロフィー、ベスト病(Best disease)、およびマラチアレベンティニーズ(Malattia leventinese)が挙げられる。
【0005】
AMDは、65歳超の個体の永久的な視力低下の主な原因であり、現在、およそ1500万人のアメリカ人に影響を与えている。AMDは、眼の網膜中央の、黄斑中の色素性上皮細胞および光感性光受容細胞に影響を与える。この疾患は、全盲を引き起こす可能性はないが、中心の視野を破壊し、読書、電子モニタースクリーンの注視、および運転を不可能にする。これには裏付けのある治療法がなく、自然寛解を示すことはなく、有効な処置は非常に限られている。
【0006】
網膜は神経細胞の複雑なネットワークであり、光を脳に伝わる神経パルスに変え、脳内でそれらが視覚映像として解釈される。黄斑と呼ばれる、網膜の中央部は、読書および他のきめ細かい仕事に必要とされる視力に関与する。黄斑への損傷により視力低下が引き起こされる。黄斑に影響を与える最も一般的な疾患過程がAMDである。AMDを有する患者では、黄斑中の色素上皮細胞および網膜光受容細胞が、数年のうちに死滅する。この細胞死および漸進的な視力低下は、年齢60歳またはそれ以上の歳まで通常始まらず、それが加齢黄斑変性症という名称の由来である。
【0007】
二種類のAMD、すなわち乾性黄斑変性症および湿性黄斑変性症が存在する。乾性黄斑変性症は、より一般的であるけれども、典型的にはそれほど重症ではない、さらに漸進的な視力低下を引き起こす。乾性AMDを患う患者は、「ドルーゼン」と呼ばれる複雑なろう様アミロイド混合物が沈着して起こる、光受容細胞および近接して付随する網膜色素性上皮(RPE)細胞の死滅によって、漸進的な中心視力の低下を有する。光を実際に「見る」網膜中の細胞である光受容体は、視力に不可欠である。大食細胞のRPE細胞は光受容体の生存、機能および再生に必要である。
【0008】
湿性黄斑変性症を有する患者は、網膜下に新生血管を生ずる。光受容細胞およびRPE細胞がゆっくり変性するので、血管が脈絡膜中のその正常な位置から網膜下の異常な位置に成長する傾向が認められる。この異常な新生血管の成長は脈絡膜血管新生(CNV)と呼ばれる。この異常な血管が漏出かつ出血し、大出血、腫脹、瘢痕組織および重度の中心視力低下を引き起こす。AMDを有する患者の10%しか湿型を有していないが、AMDが原因で起こる全盲の90%に関与している。
【0009】
眼内のRPE細胞は大食細胞として作用し、これが光受容体の膜外側部の成分を貪食かつ再利用する。RPE細胞内のミトコンドリアが損傷されると、光受容体の再利用が阻害され、結果的にドルーゼンの蓄積が起こる。ドルーゼンは、その即時の血管の供給、脈絡毛細管板からRPEの物理的移動およびRPE単層の横延伸を引き起こす。この移動が、脈絡毛細管板と網膜との間の正常な代謝物および廃棄物の拡散を妨げうる物理的障壁を作り出す。
【0010】
位置にもよるが、湿性AMDにて生じた異常な血管を破壊するために、レーザー処置を施行できる場合もある。血管は黄斑中央部のあまり近くには位置しえないので、湿性AMDの症例の15%しかレーザー処置を受ける条件を満たしていない。レーザーは、血液の色素、薬物およびRPE細胞により吸収され、異常な血管を焼灼する熱エネルギーになる光線である。刺激が取り除かれないため、血管新生が再発し、重度の視力低下を引き起こすことが多い。実際に、非常に視力が弱い、AMDを有する患者の大部分が、血管新生の後遺症によって視力を失っている。現在の医学的所見から、AMDに起こる細胞死または異常な血管成長を恒久的に阻止することが可能な処置はないと言われている。
【0011】
今日まで、AMDの発症を阻止する公知の具体的な手段は存在していない。片眼または両眼がAMDと既に診断された患者の場合、現行の主要な処置の中には光線照準法(光線療法)ならびに/またはビタミンおよびミネラル補充があり、これらのいずれも議論の対象とする価値がある。光線療法では、新生の不全血管の病変を含んだ黄斑部に光線を向けて、その機能を阻害するまたは損なうことを伴う。一つのタイプの光線療法は光線力学療法(PDT)である。PDTでは、感光性薬剤を患者の血管内に投与し、次いで新生血管(黄斑)病変の標的部位で、特にこの領域だけに低エネルギーレーザー光を向けることにより、この薬剤を活性化する。活性化された薬剤が、遊離基および新生血管を不安定化かつ破壊する他の活性化化学種を生み出す。
【0012】
PDTは、AMDを有する患者にとってある程度有効であることが報告されている。例えば、ある研究(Arch. Ophthalmol. 117:1329-1345, 1999(非特許文献1))では、少なくとも片眼がAMDと診断された患者の眼402例においてPDTを評価している。処置前および処置後に、従来型の視力表(1行に約5文字を有するもの)を正確に読み取る患者の能力を比較することにより、処置の成果を評価した。PDT後12ヶ月の時点で、これらの眼では61% (246例/402例)が見損ねた文字数が15よりも少なかった(つまり、患者が見損ねた標準的な視力表は約3行未満だった)のに対し、プラセボ処置を受けた患者の眼では、46% (96例/207例)が、見損ねた文字数が15よりも少なかった(p<0.001)。PDT後24ヶ月の時点で、視力および対比感度が、PDTを受けた患者では維持されていた。プラセボ処置を受けた患者(38%)に比べ、これらの患者のうちの有意に高い割合(58%)で、見損ねた文字数は15よりも少なかった。しかしながら、プラセボを受けた患者の7%に比べ、PDTを受けた患者の16%しか視力が改善していなかった。
【0013】
別のタイプの光線療法は光凝固療法である。光凝固療法では、高エネルギーレーザー光を、特に新生血管の標的部位だけに向ける。高エネルギーレーザーから生じた熱が新生血管中および周囲の流体を凝固させる。レーザー光凝固術はPDTの一形態ではなく、これは別個の処置法である。これは焼灼様(cautery-like)の方法で適用される、熱の水平伝達を用いて、血管内および周辺の流体を凝固するのに対し、PDTでは活性化された感光性薬剤を用いて、該薬剤を含んだ新生血管を損傷または破壊する活性な化学物質をもたらす。
【0014】
PDTまたはレーザー光凝固療法のどちらもAMDを有する患者を処置するのに別々に用いられているが、どちらも欠点がないわけではない。PDTに関する問題は、その効果が一過性であるということであり、PDTを受けている患者は約3ヶ月ごとに再処置されなければならない。さらに、その状態を単に安定化させかつ何かの治療効果が現れるまでに、患者は最初の2年以内に少なくとも5回の再処置を必要とする。これらの追加的な処置が網膜を損傷し、患者の視力をさらに低下させる。
【0015】
レーザー光凝固術の欠点の一つは、これが非選択性であり、新生血管だけを標的としていないことである。したがって、病変だけが標的とされ、周辺の非罹患組織が損傷を受けないように、これを施行しなければならない。しかしながら、AMDを有する患者の約半数では、新生血管は中心窩下域に位置しており、レーザー光凝固術を用いて感覚網膜を損傷せずにこれを標的化するのは、困難または不可能である。別の欠点は、光凝固処置が恒久的ではなくて、新生血管生成の再発率が高く、通常は最初の2年以内に、39〜76%に達することである。しかしながら、反復処置は処置の部位での新たな血管および膜の成長(網膜下新生血管膜および再発性脈絡膜血管新生)を現に誘導しうる。反復処置は、感覚神経網膜およびRPEを含め、網膜の非罹患部を不可逆的に損傷することもある。このように、処置それ自体が、長年にわたり視力がさらに低下した患者をもたらす可能性がある。具体的には、光凝固療法を受けた患者の中には暗点を発症するものもいる。暗点は、低下の少ない視域または正常な視域で囲まれた、視野内の低視域である。
【0016】
したがって、AMDまたは関連する状態を処置するための代替方法を開発することが必要である。
【0017】
【非特許文献1】Arch. Ophthalmol. 117:1329-1345, 1999
【発明の開示】
【0018】
発明の概要
本発明は部分的には、「ドルーゼン」と呼ばれる、網膜の境界膜上のタンパク性沈着物も亜鉛および銅を含んでおり、それゆえアミロイド型プラークに類似していることが提唱されるという最近の判定を前提とする。それゆえ、本発明は、ドルーゼンからの過剰な金属のレベルを低減するか、または別の方法でドルーゼンからの過剰な金属を除去するかし、それによって網膜での正常な金属恒常性を回復するために金属タンパク質減弱性化合物(metal protein attenuating compound; MPAC)の使用を企図する。本発明は、加齢黄斑変性症(AMD)の発生の危険性を処置もしくは予防するか、または別の方法で低減するのに特に有用である。しかしながら、本発明は、アミロイド型凝集体、複合体、沈着もしくはプラークに関連する任意の網膜変性障害または過剰な金属を含むドルーゼンに関連する任意の状態の処置にまで及ぶ。
【0019】
本発明の方法はマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害に関係なく有用であり、かつ/またはMPACの用量特異的な量を利用することができる。単一の薬剤または二つもしくはそれ以上の薬剤の組み合わせを投与することができる。
【0020】
本発明の薬剤は、1位に少なくとも窒素原子および8位にヒドロキシまたはメルカプト基を有する、少なくとも二つの縮合6員環を含む。有用な化合物は、以下に詳述される式I〜XXVIIによって定義される。
【0021】
適当な化合物の例としては、PB-1033、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160、およびPB-1168のような表8中のもの、または薬学的に許容されるその塩もしくは誘導体もしくは機能的等価物が挙げられる。
【0022】
それゆえ、本発明の一つの局面では、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを変化させるのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法を企図する。
【0023】
本発明は同様に、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを低減するのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法を提供する。
【0024】
具体的には、本発明は、AMDの症状を改善するレベルにまで網膜ドルーゼン中の金属を低減するのに有効な、PB-1033または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物の量を被験体に投与する段階を含む、加齢黄斑変性症(AMD)を有する被験体を処置するための方法を提供する。
【0025】
「金属レベルを変化させる」および「金属を低減する」という語句は、その最も広い意味で用いられており、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属の分布の変化およびドルーゼンまたは周辺組織中の金属の量または活性の変化を指す。これらの語句は同様に、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属の量または活性の低減および特定領域中の金属の量または活性、すなわち網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属の分布の低減を指す。
【0026】
MPACの選択は一般的に、しかし排他的にではなく、メタロプロテイナーゼを阻害するその能力とは関係ない。規定のまたは特定の投与量を投与することもできる。
【0027】
したがって、本発明の別の局面では、マトリックスメタロプロテイナーゼに及ぼす効果に関係なく、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを低減するのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法を提供する。
【0028】
「関係なく(ない)」への言及は、一つもしくは複数のメタロプロテイナーゼが阻害されうるかまたはメタロプロテイナーゼが阻害されないことを意味する。
【0029】
本発明の別の局面では、網膜での金属恒常性を最適に回復するのに特異的な投与量範囲を規定する。
【0030】
それゆえ、本発明のこの局面は、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを低減するのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法であって、有効量が網膜での金属恒常性を最適に回復するのに特異的な用量範囲である前記方法に向けられる。
【0031】
本発明の別の局面では、PB-1033または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物の有効量を被験体に投与する段階を含む、加齢黄斑変性症(AMD)の症状をそれによって改善する、被験体における網膜ドルーゼンからの金属のレベルを低減するための方法を企図する。
【0032】
本発明は同様に、被験体における網膜変性障害の処置のための医薬の製造におけるMPACの使用を提供する。
【0033】
具体的には、本発明は、被験体における加齢黄斑変性症(AMD)の処置のための医薬の製造における、PB-1033または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物の使用を企図する。
【0034】
二つもしくはそれ以上のMPACが投与される、あるいはMPACならびに金属キレート剤、サイトカイン、遺伝子分子、抗菌剤もしくは抗ウイルス剤、抗酸化剤、抗生剤および/または麻酔剤のような、別の活性物質(active)が投与される、併用療法も本発明の一部を形成する。
【0035】
好ましい被験体はヒトであるが、本発明は、獣医業、競馬業および畜産業での用途を有する。
【0036】
本発明はさらに、本明細書において記述のMPACを含む、網膜変性状態または障害を発症する危険性を処置、予防または低減するための製剤を提供する。
【0037】
PB-1033は特に有用なMPACであるが、本発明は、以下に限定されるものではないが、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160、およびPB-1168を含む表8中のものなどの式I〜XXVIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは誘導体もしくは機能的等価物によって包含される任意のMPACにまで及ぶ。
【0038】
本明細書において使用する略語を表1中に定義する。
【0039】
(表1)略語

【0040】
発明の詳細な説明
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、明記した要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を意味するが、その他任意の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の除外を意味するものではないと理解される。
【0041】
以下に参照される全ての科学的引用文、特許、特許出願および製造元の技術仕様書は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0042】
本明細書における任意の先行技術の参照は、その先行技術が任意の国における共通の一般知識の一部を形成することを認めるもの、または何らかの形で提案するものではなく、そのようなものと解釈されるべきではない。
【0043】
特に指定のない限り、本発明は特定の製剤成分、製造法、生物学的材料または試薬、投与計画などに限定されるものではなく、したがって変動しうることが理解されるべきである。本明細書において用いられる専門用語は、特定の態様を記述する目的のためにすぎず、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0044】
本明細書において用いられる場合、「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈上明確に別の指示がない限り、複数の局面を含む。すなわち、例えば「製剤(a formulation)」への言及は、単一の製剤、および二つまたはそれ以上の製剤を含む。「薬剤(an agent)」または「試薬(a reagent)」への言及は、単一の薬剤または試薬、および二つまたはそれ以上の薬剤または試薬を含む、などである。
【0045】
「薬剤」、「試薬」、「化合物」、「薬理学的に活性な薬剤」、「医薬」、「治療薬(therapeutic)」、「活性物質(active)」および「薬物」という用語は、網膜変性疾患の症状の改善のような望ましい効果を誘導するかまたは示す、化学的または生物学的実体を指すよう本明細書において互換的に用いられる。これらの用語は同様に、本明細書において具体的に述べられている活性薬剤の薬学的に許容されかつ薬理学的に活性な成分を包含する。「薬剤」、「試薬」、「化合物」、「薬理学的に活性な薬剤」、「医薬」、「治療薬(therapeutic)」、「活性物質(active)」および「薬物」という用語が用いられるなら、これは活性な実体そのもの、および薬学的に許容され、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝物、類似体などを含むと理解されるべきである。
【0046】
「薬剤」、「化学剤」、「化合物」、「薬理学的に活性な薬剤」、「医薬」、「治療薬(therapeutic)」、「活性物質(active)」および「薬物」への言及は、二つまたはそれ以上の活性剤の組み合わせを含む。「組み合わせ」とは同様に、薬剤が別々に提供され、別々に付与もしくは投薬されるかまたは投薬の前に一緒に混合される、二部の組成物のような複数部を含む。例えば、複数部の薬学的包装は、別個に維持された二つまたはそれ以上の薬剤を有することができる。それゆえ、本発明のこの局面は併用療法を含む。併用療法は、金属キレート剤、ならびに化合物、サイトカイン、遺伝子分子、抗菌剤もしくは抗ウイルス剤、抗酸化剤、抗生剤および/または麻酔剤のような、別の活性物質(active)の同時投与を含む。
【0047】
本明細書において用いられる薬剤の「有効量」および「治療的有効量」という用語は、望ましい治療的または生理的な効果または結果を与えるのに十分な薬剤の量を意味する。そのような効果または結果は、金属イオンの利用能の変化もしくは低減および/またはドルーゼン中のその量の低減、アミロイドレベルの低減、黄斑変性症もしくは関連する状態の低減もしくは予防および/または視力障害の処置もしくは予防を含む。望ましくない効果、例えば、副作用は、望ましい治療効果と共に顕在化することもある。それゆえ、熟練者は、適切な「有効量」であるものを判定する上で、潜在的利益を潜在的危険性と比較検討する。必要とされる的確な量は、被験体の種、年齢および全身的状態、投与方法などに応じて、被験体ごとに変わると考えられる。すなわち、的確な「有効量」を特定することが可能でない場合もある。しかしながら、当業者は日常の実験のみを用いて、任意の個々の症例における適切な「有効量」を判定することができる。
【0048】
有効量は、AMDのような網膜変性状態の症状を予防または改善するのに必要な量と見なされる。一つの態様において、使用されるMPACの量は、金属ドルーゼンのレベルの低減に必要なまたは有効な量である。金属の例としては、亜鉛および銅が挙げられる。有効量は、1 ng/ml〜1000 mg/ml、例えば、約5 ng/ml〜約500 mg/mlもしくは約10 ng/ml〜約100 mg/ml、またはその間の量もしくは範囲を含む。
【0049】
「金属」および「金属イオン」という用語は、この文脈において互換的に用いることができる。
【0050】
「薬学的に許容される」担体、賦形剤または希釈剤とは、生物学的にまたはその他の点で望ましくないことのない材料を含む薬学的媒体を意味し、すなわち、この材料を何らまたは実質的な有害反応を引き起こすことなく選択の活性剤とともに被験体に投与してもよい。担体は、賦形剤および希釈剤、界面活性剤、着色剤、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、保存料などのような他の添加物を含んでもよい。
【0051】
同様に、本明細書において示される化合物の「薬理学的に許容される」塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは誘導体は、生物学的にまたはその他の点で望ましくないことのない塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは誘導体である。
【0052】
被験体を「処置する」とは、影響を受けやすい個体での網膜変性状態または他の有害な生理学的事象の予防、およびその状態の症状の改善による臨床的に症候性の個体の処置を含んでもよい。具体的には、本発明は網膜での正常な金属恒常性を回復するための、アミロイド型プラーク形成の低減および/またはドルーゼン中の金属含有量の低減を企図する。
【0053】
本明細書において用いられる「被験体」とは、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは下等霊長動物を含む霊長動物、さらにより好ましくは本発明の製剤および方法から恩恵を受けうるヒトを指す。被験体はヒトか非ヒト動物かを問わず、個体、患者、動物、宿主またはレシピエントということができる。本発明の化合物および方法は、ヒト医薬、獣医薬、および一般に家畜動物または野生動物の飼育での用途を有する。便宜上、「動物」とは、家禽鳥類(カモ、ニワトリ、シチメンチョウおよびガチョウを含む)、飼育鳥類(aviary bird)または狩猟鳥類のような鳥類種を含む。非ヒト動物での状態は、天然に存在するのではなく、例えば動物モデルにおいて誘導されてもよい。
【0054】
上述のように、好ましい動物は、ヒト、マーモセット、ヒヒ、オランウータンのような非ヒト霊長動物、ツピア(tupia)のような下等霊長動物、家畜動物、実験動物、伴侶動物または捕獲野生動物である。ヒトが最も好ましい標的である。しかしながら、非ヒト動物モデルを使用することができる。
【0055】
実験動物の例としては、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびハムスターが挙げられる。ウサギならびにラットおよびマウスのような齧歯動物は、簡便な試験系または動物モデルを提供し、霊長動物および下等霊長動物も同様である。家畜動物は、ヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマおよびロバを含む。鳥類種のような非哺乳動物、ゼブラフィッシュ、両生類(オオヒキガエルを含む)およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のようなショウジョウバエ(Drosophila)種も企図される。試験系は、生きている動物モデルの代わりに、組織培養系を含んでもよい。
【0056】
「網膜変性状態」は、進行性の視力低下により特徴付けられる状態である。この用語の範囲内の状態には、加齢黄斑変性症(AMD)、ノースカロライナ型黄斑変性、ソースビー眼底変性症、シュタルガルト病、パターンジストロフィー、ベスト病およびマラチアレベンティニーズが挙げられる。
【0057】
本発明の薬剤および方法が有効でありうる特定の状態はAMDである。しかしながら、本発明は、アミロイド様の凝集体、沈着物もしくはプラークに関連するかまたはそれらにより特徴付けられる任意の網膜変性疾患にまで及ぶ。
【0058】
それゆえ、本発明の一つの局面では、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを変化させるのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法を企図する。一つの態様において、金属レベルの変化は金属レベルの低減である。
【0059】
別の態様において、本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼに及ぼす効果に関係なく、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを低減するのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法を提供する。一つの態様において、金属レベルの変化は金属レベルの低減である。
【0060】
本発明のさらなる局面は、網膜ドルーゼンまたは周辺組織中の金属レベルを低減するのに有効な時間および条件の下で、MPACまたはMPACを含んだ製剤の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体における網膜変性状態または障害の処置または予防の方法であって、有効量が網膜での金属恒常性を最適に回復するのに特異的な用量範囲である前記方法に向けられる。
【0061】
本発明は同様に、被験体における網膜変性障害の処置のための医薬の製造におけるMPACの使用を提供する。
【0062】
本発明の好ましい薬剤は、1位に少なくとも窒素原子および8位にヒドロキシまたはメルカプト基を有する、少なくとも二つの縮合6員環を含む。本発明の薬剤は金属タンパク質減弱性化合物またはMPACと総称され、以下の特性の一つまたは複数を有する: イオノフォアとして作用する(すなわち、金属を捕捉し、細胞内に移す)、金属結合剤である、血液脳関門(BBB)を横断する、細胞毒性の低減を示す、アミロイド型タンパク質沈着物、凝集体またはプラークを溶解または破壊することができる、かつ水性の環境中で安定である。好ましくは、本薬剤は、上記の特性の二つもしくはそれ以上、三つもしくはそれ以上、または四つもしくはそれ以上、または五つもしくはそれ以上を有する。
【0063】
以下にさらに定義する、特に有用な化合物は、PB-1033、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160、およびPB-1168のような表8中のもの、または薬学的に許容されるその塩もしくは誘導体もしくは機能的等価物を含む。PB-1033は特に有用であるが、本発明はそのように限定されるものではない。
【0064】
この関連で、本発明はさらに、AMDの症状を改善するレベルにまで網膜ドルーゼン中の金属を低減するのに有効な、PB-1033または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物の量を被験体に投与する段階を含む、加齢黄斑変性症(AMD)を有する被験体を処置するための方法を企図する。
【0065】
本発明は同様に、PB-1033または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは等価物の有効量を被験体に投与する段階を含む、加齢黄斑変性症(AMD)の症状をそれによって改善する、被験体における網膜ドルーゼンからの金属のレベルを低減するための方法を提供する。
【0066】
PB-1033の薬学的に許容される化学的誘導体または機能的等価物の例としては、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160、およびPB-1168のような表8中のもの、または薬学的に許容されるその塩もしくは誘導体もしくは機能的等価物が挙げられる。金属の例としては、亜鉛および銅が挙げられる。
【0067】
それゆえ、それを必要とする被験体に対する本発明のある種の有用な薬剤は、下記式Iの化合物、その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体および/または異性体によって包含される:

式中
Rは、OまたはSであり;
R1は、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル; 置換されてもよいアルキニル; 置換されてもよいアリール; 置換されてもよいヘテロシクリル; 抗酸化剤; 標的化部分; CN; ハロ; CF3; SO3H;およびOR2、SR2、SOR2、SO2R2、NR2R3、(CH2)nNR2R3、HCNOR2、HCNNR2R3、CONR2R3、CSNR2R3、NCOR2、NCSR2、COR2、CO2R2、CSR2またはSO2NR2R3であり、ここでR2およびR3は、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、抗酸化剤または標的化部分より独立して選択され、かつnは1〜10の整数であり;
Xは、CH、CO、NおよびNHより独立して選択され;
Zは、CH、CO、N、NHおよびOより独立して選択され;
Yは、独立して存在しないか、あるいはそれが付着される環と一緒に5員もしくは6員の置換されてもよいアリール、または5員もしくは6員の置換されてもよいヘテロシクリルを形成し;
mは1〜3の整数であり;かつ
pは1〜4の整数であり、
但し
(i)XおよびZの少なくとも一方がCH以外であり;かつ
(ii)ファンキノンまたはその互変異性体は除外される、すなわち、RがOであり、7位のR1がOHであり、XがCHであり、Yが存在しない場合、Zは

ではない。
【0068】
好ましくは、RはOである。
【0069】
さらに、R1は好ましくは、ハロ、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、置換されてもよいアルキル、OR2、SR2、(CH2)nNR2R3、CONR2R3およびNCOR2であり、式中n、R2およびR3は上記に定義される通りである。より好ましくは、R1は、フッ素; ヨウ素; 塩素; 4-ハロフェニル、例えば、4-フルオロフェニルもしくは4-クロロフェニルのような置換されてもよいフェニル; イミダゾリルもしくはピリジニルのような、1〜4個の窒素原子を含有する置換されてもよい不飽和3員〜6員ヘテロ単環式基; イミダゾリジニルもしくはピペラジニルのような、1〜4個の窒素原子を含有する置換されてもよい飽和3員〜6員ヘテロ単環式基; モルホリニルのような、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する置換されてもよい飽和3員〜6員ヘテロ単環式基; メチルもしくはエチルのような置換されてもよいC1〜4アルキル; シクロプロピルのような置換されてもよいC2〜6シクロアルキル; 置換されてもよいC1〜6アルコキシ; 置換されてもよいチオ; R4およびR5が、HおよびC1〜4アルキルより独立して選択されるCH2NR4R5; またはR6が置換されてもよいヘテロシクリルであるCONH(CH2)2R6である。
【0070】
Yは好ましくは、置換されてもよいフェニル; イミダゾリルもしくはピリジニルのような、1〜4個の窒素原子を含有する置換されてもよい不飽和5員もしくは6員ヘテロ単環式基; またはモルホリニルのような、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する置換されてもよい飽和5員もしくは6員ヘテロ単環式基である。
【0071】
好ましいハロ基は塩素であるが、他のハロゲン原子が本発明によって包含される。
【0072】
式Iの典型的な化合物群は以下の通りであり、式中R1、m、nおよびpは上記に定義される通りであり、qは1または2の整数である。




【0073】
上記の化合物は同様に、下記式IIによって包含されるものなどの、より一般的な化合物群の一部、その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体および/または異性体を形成する:

式中
R1は、Hもしくはハロ、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアシル、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、抗酸化剤または標的化部分であり;
R2は、H; 置換されてもよいアルキル; 置換されてもよいアルケニル; 置換されてもよいアリール; 置換されてもよいヘテロシクリル; 置換されてもよいアルコキシ; 抗酸化剤; 標的化部分; COR6またはCSR6、ここでR6 が、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、ヒドロキシ、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、抗酸化剤、標的化部分、OR7、SR7もしくはNR7R8であり、ここでR7およびR8が同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択され; CN; R9およびR10が同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルより選択され、nが1〜4である(CH2)nNR9R10、HCNOR9またはHCNNR9R10; R11およびR12が同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択されるか、または置換されてもよいヘテロシクリルを一緒に形成するOR11、SR11またはNR11R12; あるいはR13およびR14が同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択されるSO2NR13R14であり;かつ
R3、R4、R5、RおよびR'は、同じかまたは異なり、かつH、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルコキシ、置換されてもよいアシル、ヒドロキシ、置換されてもよいアミノ、置換されてもよいチオ、置換されてもよいスルホニル、置換されてもよいスルフィニル、置換されてもよいスルホニルアミノ、ハロ、SO3H、アミン、CN、CF3、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、抗酸化剤または標的化部分より選択され、
但し
(a) R1〜R3、RおよびR'がHである場合、R4はClまたはIではなく、かつR5はIではなく;
(b) R1〜R3、R、R'およびR5がHである場合、R4

ではなく;
(c) R1、R5、R'およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R4は、ブロモ、メチル、フェニル、ヒドロキシメチルまたはトリフルオロメチルではなく;
(d) R1、R4、R5およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつ3がOHである場合、R'は、ブロモ、ヨード、メチル、フェニル、プロピル、フェネチル、ヘプチル、ベンジルアミノメチル、3-アミノプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-メトキシフェニル、3-メチルフェニル、4-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、ピリジン-3-イル、フロ-2-イル、4-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、2-メトキシフェニルまたはピペリジン-2-イルではなく;
(e) R1、R4、RおよびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R5は、フェニル、3-ヒドロキシプロピル、フェネチル、3-アミノプロパ-1-イルまたはヘキシ-1-イルではなく;
(f) R1、R4、R'およびR5がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、Rは、N-モルホリノメチル、ブロモまたはフェニルではなく;
(g) R1、RおよびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R4およびR5はクロロではなく;
(h) R1、R4およびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、RおよびR5はブロモではなく;
(i) R1、R、R'およびR5がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R4は、ヒドロキシメチル、フェニルまたはブロモではなく;
(j) R1、R、R4およびR5がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R'は、4-メトキシフェニル、3-メチルフェニル、ピリジン-3-イル、ベンジル、ブロモ、4-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-ヒドロキシプロピルまたは3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピルではなく;
(k) R1、R、R4およびR'がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R5はフェニルまたは3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロパ-1-イルではなく;
(l) R1、R、R4、R'およびR5がHであり、かつR2がCO2Meである場合、R3は、トルエン-4-スルホニルアミノ、ピペラジン-1-イル、モルホリン-1-イル、ピペリジン-1-イル、4-メチルピペラジン-1-イル、3-ベンゾイルアミノプロパ-1-イル、フェネチル、3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピル、3-ヒドロキシプロピル、アミノまたはヘキシ-1-イルではなく;
(m) R1、R4、R'およびR5がHであり、R2がCO2Naであり、かつR3がOHである場合、Rはフェニルではなく;
(n) R1、R、R4、R'およびR5がHであり、かつR2がCO2Hである場合、R3は、フェニル、4-クロロフェニル、フェネチル、3-ヒドロキシプロピル、アミノ、モルホリン-1-イル、ピペリジン-1-イル、4-メチルピペラジン-1-イル、トルエン-4-スルホニルアミノ、3-ベンゾイルアミノプロパ-1-イル、アミノプロパ-1-イニル、ヘキシ-1-イル、5-ヒドロキシペント-1-イル、ピペラジン-1-イルまたは2-(1-ピペラジニル)ピリミジニルではなく;
(o) R1、R'およびRがHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R4およびR5はクロロではなく;
(p) R1、R4、R'およびR5がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、Rはブロモではなく;
(q) R1、R'およびR4がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、RおよびR5はブロモではなく;
(r) R1、R、R3、R'およびR5がHであり、かつR2がCO2Hである場合、R4は、フェニル、4-クロロフェニルまたはフェニルエチルではなく;
(s) R1、R5、R'、R4、R3およびRがHである場合、R2は2H-テトラゾール-1-イルではなく;
(t) R1、R5、R4およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R'は3,5-ジクロロフェニルまたは4-フルオロフェニルではなく;かつ
(u) R1〜R5、RおよびR'の少なくとも一つがH以外である。
【0074】
式IIの有用な化合物は以下の通りである:
(i) 式III

式中
R、R1およびR3は、上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R2aは、H; 置換されてもよいC1〜6アルキル; 置換されてもよいC1〜6アルケニル; 置換されてもよいアリール; 置換されてもよいヘテロシクリル; 抗酸化剤; 標的化部分; COR6aまたはCSR6a、ここでR6aがH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、ヒドロキシ、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリルまたはOR7a、SR7aもしくはNR7aR8aであり、ここでR7aおよびR8aが同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択される; CN; R9aおよびR10aが同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択されるCH2NR9aR10a、HCNOR9aまたはHCNNR9aR10; R11aおよびR12aが同じかもしくは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択されるか、または置換されてもよいヘテロシクリルを一緒に形成するOR11a、SR11aまたはNR11aR12a; あるいはR13aおよびR14aが同じかもしくは異なり、かつHまたは置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択されるSO2NR13aR14aである。
【0075】
式IIIの好ましい化合物は以下の通りである。
【0076】
式IV

式中
R1は、上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R2'aは、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールまたは置換されてもよいヘテロシクリルである。
【0077】
式IVは、酸化促進性の環境、つまり、ヒドロキシ基が金属結合特性の増強した分子をもたらすように、抗酸化部分が8-ヒドロキシキノリンのC2位に付着される化合物を表しうる。
【0078】
典型的な例を以下に示す。

【0079】
式V

式中
R1およびR3は、上記の式IIにおいて定義される通りであり; かつ
R6'aは、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、ヒドロキシ、OR7'a、SR7'a、N2R7'aR8'a、またはNR7'aR8'aであり、ここでR7'aおよびR8'aは同じかまたは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいアリールまたは置換されてもよいヘテロシクリルから選択される。
【0080】
式Vは、膜透過性を維持しながら溶解性を概して増強するよう親水性アミド部分が8-ヒドロキシキノリンのC2位に付着される化合物を表す。
【0081】
典型的な例を以下に示す。

【0082】
式VI

式中
R1は、上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R2''aは、CN; CH2NR9'aR10'a、HCNOR9'aまたはHCNNR9'aR10'aであり、ここでR9'aおよびR10'aは同じかまたは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアリールまたは置換されてもよいヘテロシクリルから選択される。
【0083】
典型的な例を以下に示す。

【0084】
式VII

式中
R1は上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R11a'およびR12a'は、同じかまたは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールおよび置換されてもよいヘテロシクリルから選択されるか、または置換されてもよいヘテロシクリルを一緒に形成する。
【0085】
式VIII

式中
R1は上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R13a'およびR14a'は、同じかまたは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいアリールまたは置換されてもよいヘテロシクリルから選択される。
【0086】
(ii) 式IX

式中
上記に定義の但し書き(a)〜(c)、(e)、(g)、(h)、(I)、(k)、(o)、(q)、(r)および(u)を含め、
R1、R'、R、R2およびR3は上記の式IIにおいて定義される通りであり;
R4bおよびR5bは同じかまたは異なり、かつH; 置換されてもよいC1〜6アルキル; 置換されてもよいC2〜6アルケニル; ハロ; CN; CF3; 置換されてもよいアリール; 置換されてもよいヘテロシクリル; 抗酸化剤; 標的化部分; SO3H; R13aおよびR14aが上記の式IIIにおいて定義される通りのSO2NR13aR14a; またはOR15b、SR15b、SO2R15b、CONR15bR16bもしくはNR15bR16bから選択され、ここでR15bおよびR16bは同じかまたは異なり、かつH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルケニル、置換されてもよいC1〜6アシル、置換されてもよいアリールもしくは置換されてもよいヘテロシクリルから選択される。
【0087】
式IXの有用な化合物は以下の通りである。
【0088】
式X

式中
上記に定義の但し書き(a)、(c)、(g)、(h)、(i)、(o)、(q)および(u)を含め、
R1、R'、R、R2およびR3は上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
少なくとも一つがハロであるという条件で、R4b'およびR5a'は上記の式IXにおいて定義される通りである。
【0089】
式XI

式中
R1は上記の式IIにおいて定義される通りであり;
R4b''は、Hまたはハロであり;かつ
R5b''は、置換されてもよいアリールまたは置換されてもよいヘテロシクリルである。
【0090】
典型的な例を以下に示す。

【0091】
式XII

式中
R1は上記の式IIにおいて定義される通りであり;
R''は、C1〜6アルコキシ、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC1〜6ハロアルキルであり;かつ
R5b''は、Hまたはハロである。
【0092】
典型的な例を以下に示す。

【0093】
式XIII

式中
R1は上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R''は上記の式XIIIにおいて定義される通りである。
【0094】
式XIV

式中
R2〜R5、RおよびR'は上記の式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R1b''は、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいアリール、置換されてもよいアリールアシル、C1〜6アルキルアシルまたは置換されてもよいヘテロシクリルである。
【0095】
(iii) 式XV

その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体および/または異性体:
式中
R1、R2、R3、RおよびR'は式IIにおいて定義される通りであり;かつ
R4CおよびR5Cの少なくとも一方がハロであり、かつもう一方が、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルコキシ、置換されてもよいアシル、ヒドロキシ、置換されてもよいアミノ、置換されてもよいチオ、置換されてもよいスルホニル、置換されてもよいスルフィニル、置換されてもよいスルホニルアミノ、SO3H、アミン、CN、CF3、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、抗酸化剤および標的化部分から選択され、
但し
(a) R1〜R3、RおよびR'がHである場合、R4Cはクロロまたはヨードではなく、R5Cはヨードではなく;
(b) R1、R5C、R'およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R4Cはブロモではなく;
(c) R1、RおよびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R4CおよびR5Cはクロロではなく;
(d) R1、R4CおよびR'がHであり、R2がCO2HまたはCO2Meであり、かつR3がOHである場合、RおよびR5Cはブロモではなく;
(e) R1、R、R'およびR5CがHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R4Cはブロモではなく;かつ
(f) R1、RおよびR'がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R4CおよびR5Cはクロロではない。
【0096】
式XVの好ましい化合物は以下の通りである。
式XVI

式中
R2、R、R'、R4CおよびR5Cは式XVIにおいて定義される通りであり;かつ
R3'は、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルコキシ、置換されてもよいアシル、置換されてもよいアミノ、置換されてもよいチオ、置換されてもよいスルホニル、置換されてもよいスルフィニル、置換されてもよいスルホニルアミノ、ハロ、SO3H、アミン、CN、CF3、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、抗酸化剤または標的化部分であり、
但しR、R2およびR3'の少なくとも一つがH以外である。
【0097】
典型的な例を以下に示す:

式中
R1は式IIにおいて定義される通りであり、かつR4Cは式XVにおいて定義される通りであり; かつ
R5C''は置換されてもよいアリールまたは置換されてもよいヘテロシクリルであり;
式XVIII

式中
R1は式IIにおいて定義される通りであり、R5Cは式XVにおいて定義される通りであり、かつR''は式XIIにおいて定義される通りであり;および
式XIX

式中
R2、R3、RおよびR'は式IIにおいて定義される通りであり、R4CおよびR5Cは式XVにおいて定義される通りであり、かつR1bは式XIIにおいて定義される通りである。
【0098】
本明細書において企図される化合物の他の例としては、以下が挙げられる。


【0099】
本発明は同様に、以下の条件で、式IIの化合物である式XXの化合物を提供する:
(a) R1およびR3〜R5、RならびにR'がHである場合、R2はH、メチル、

CO2H、CN、CONCH2CO2H、COCH3、CH2NH2、CNOH、(ピリド-2-イル)、2-ヒドロキシフェニル、CHNNH2、NH-(ピリド-2-イル)、

またはSO3Hではなく;
(b) R1およびR4〜R7がHである場合、R3はOHではなく、かつR2はCO2Hではなく;
(c) R1〜R3、R6およびR7がHである場合、(i) R5がIであるなら、R4はCl、SO3HまたはIではなく; (ii) R5がHであるなら、R4はSO3H、NH2またはClではなく; (iii) R4およびR5は共にCl、BrまたはCH3ではなく;かつ(iv) R2〜R7がHであるなら、R1

ではなく、
(d) R1〜R3、RおよびR'がHである場合、R4はClまたはIではなく、かつR5はIではなく;
(e) R1〜R3、R、R'およびR5がHである場合、R4

ではなく;
(f) R1、R5、R'およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R4は、ブロモ、メチル、フェニル、ヒドロキシメチルまたはトリフルオロメチルではなく;
(g) R1、R4、R5およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R'は、ブロモ、ヨード、メチル、フェニル、プロピル、フェネチル、ヘプチル、ベンジルアミノメチル、3-アミノプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-メトキシフェニル、3-メチルフェニル、4-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、ピリジン-3-イル、フロ-2-イル、4-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、2-メトキシフェニルまたはピペリジン-2-イルではなく;
(h) R1、R4、RおよびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R5は、フェニル、3-ヒドロキシプロピル、フェネチル、3-アミノプロパ-1-イルまたはヘキシ-1-イルではなく;
(i) R1、R4、R'およびR5がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、Rは、N-モルホリノメチル、ブロモまたはフェニルではなく;
(j) R1、RおよびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R4およびR5はクロロではなく;
(k) R1、R4およびR'がHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、RおよびR5はブロモではなく;
(l) R1、R、R'およびR5がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R4は、ヒドロキシメチル、フェニルまたはブロモではなく;
(m) R1、R、R4およびR5がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R'は、4-メトキシフェニル、3-メチルフェニル、ピリジン-3-イル、ベンジル、ブロモ、4-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-ヒドロキシプロピルまたは3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピルではなく;
(n) R1、R、R4およびR'がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R5はフェニルまたは3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロパ-1-イルではなく;
(o) R1、R、R4、R'およびR5がHであり、かつR2がCO2Meである場合、R3はトルエン-4-スルホニルアミノ、ピペラジン-1-イル、モルホリン-1-イル、ピペリジン-1-イル、4-メチルピペラジン-1-イル、3-ベンゾイルアミノプロパ-1-イル、フェネチル、3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピル、3-ヒドロキシプロピル、アミノまたはヘキシ-1-イルではなく;
(p) R1、R4、R'およびR5がHであり、R2がCO2Naであり、かつR3がOHである場合、Rはフェニルではなく;
(q) R1、R、R4、R'およびR5がHであり、かつR2がCO2Hである場合、R3はフェニル、4-クロロフェニル、フェネチル、3-ヒドロキシプロピル、アミノ、モルホリン-1-イル、ピペリジン-1-イル、4-メチルピペラジン-1-イル、トルエン-4-スルホニルアミノ、3-ベンゾイルアミノプロパ-1-イル、アミノプロパ-1-イニル、ヘキシ-1-イル、5-ヒドロキシペント-1-イル、ピペラジン-1-イルまたは2-(1-ピペラジニル)ピリミジニルではなく;
(r) R1、R'およびRがHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、R4およびR5はクロロではなく;
(s) R1、R4、R'およびR5がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、Rはブロモではなく;
(t) R1、R'およびR4がHであり、R2がCO2Meであり、かつR3がOHである場合、RおよびR5はブロモではなく;
(u) R1、R、R3、R'およびR5がHであり、かつR2がCO2Hである場合、R4は、フェニル、4-クロロフェニルまたはフェニルエチルではなく;
(v) R1、R5、R'、R4、R3およびRがHである場合、R2は2H-テトラゾール-1-イルではなく;
(w) R1、R5、R4およびRがHであり、R2がCO2Hであり、かつR3がOHである場合、R'は3,5-ジクロロフェニルまたは4-フルオロフェニルではなく;かつ
(x) R1〜R5、RおよびR'の少なくとも一つがH以外であり;
(y) R1〜R3、R5、R'およびRがHである場合、R4はクロロ、NH2またはSO3Hではなく;かつ
(z) R1、R3〜R5、RおよびR'がHである場合、R2はCH3ではない。
【0100】
好ましくは、本発明は以下のさらなる条件で、式Icの化合物を提供する:
(g) R1〜R3、RおよびR'がHである場合、R4CおよびR5Cは共にクロロまたはブロモではなく;かつ
(h) R1〜R3、R5C、RおよびR'がHである場合、R4Cはクロロではない。
【0101】
特に好ましい化合物の中には一連のいわゆる「PB」(またはPBT)化合物があり、以下のような、そのうちの一部が前述されている。







【0102】
上述の化合物の8-ヒドロキシルまたは8-メルカプト基を遮断して、プロドラッグ、具体的にはエステルプロドラッグを形成させることができる。8-ヒドロキシまたは8-メルカプトは上述の化合物の主要な代謝部位に相当する。すなわちグルクロン酸または硫酸塩との結合により、すぐに排泄される親水性種をもたらす。
【0103】
他の有用な化合物は式XXIの化合物を含む:

式中
R、R1およびmは式Iに定義される通りであり;
Wは、CH、NまたはNHであり;
Uは、CH、COまたはNであり;かつ
Y'は、これが付着される環と一緒に、置換されてもよい6員N含有ヘテロシクリルを形成する。
【0104】
式XXIの好ましい化合物は以下の通りである:
(i) 式XXII

式中R、R1、mおよびqは式Iに同じである。
【0105】
好ましくは、R1は、2、3、5および/または7位に位置し、かつハロ、置換されてもよいアリール、置換されてもよいヘテロシクリル、置換されてもよいアルキルならびにn、R2およびR3が上記に定義される通りの(CH2)nNR2R3から選択される。より好ましくは、R1は、塩素、置換されてもよいフェニル、C2〜6シクロアルキル、CH2NR4R5であり、ここでR4およびR5はHおよびC1〜4アルキルまたは置換されてもよいピリジニルから独立して選択される。
【0106】
特定の例を以下に示す。

【0107】
(ii) 式XXIII

式中R、R1、mおよびqは式Iに定義される通りである。
【0108】
R1は、2、4、5および/または7位に位置してもよく、かつハロおよび置換されてもよいヘテロシクリルから選択される。好ましくは、R1はクロロおよび/またはモルホリニルである。
【0109】
好ましい例を以下に示す。

【0110】
(iii) 式XXIV

式中R、R1、mおよびqは式Iに定義される通りである。
【0111】
好ましくは、R1は、2、5および/または7位に位置し、かつハロおよびCH2NR4R5から選択され、ここでR4およびR5はHおよびC1〜4アルキルから独立して選択される。
【0112】
有用な例を以下に示す。

【0113】
(iv) 式XXV

式中R、R1、mおよびqは式Iに定義される通りである。
【0114】
好ましくは、R1は、2および/または7位に位置し、かつ置換されてもよいヘテロシクリル、CO2R2、(CH2)nNR2R3ならびにCONR2R3から選択され、ここでn、R2およびR3は式Iにおいて定義される通りである。
【0115】
好ましい例を以下に示す。

【0116】
(v) 式XXVI

式中R、R1、mおよびqは式Iに定義される通りである。
【0117】
好ましくは、R1は、2、3、6および/または7位に位置し、かつハロ、置換されてもよいアリールおよび(CH2)nNR2R3から選択され、ここでn、R2およびR3は式Iに定義される通りである。
【0118】
好ましい例を以下に示す。

【0119】
(vi) 式XXVII

式中R1およびmは式Iに定義される通りである。
【0120】
好ましくは、R1は2および/または7位に位置し、ハロ、およびn、R2およびR3が上記に定義される通りの(CH2)nNR2R3から選択される。
【0121】
有用な例を以下に示す。

【0122】
上記の化合物への言及は、その薬学的に許容される塩および異性体を含む。
【0123】
単独または「置換されてもよいアルキル」もしくは「アルキルアミノ」のような複合語で使用される「アルキル」という用語は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基を指す。そのようなアルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。好ましいアルキル基は、メチルまたはエチルのようなC1〜4アルキル、およびシクロプロピルのようなC2〜6シクロアルキルである。
【0124】
単独または「置換されてもよいアルケニル」のような複合語で使用される「アルケニル」という用語は、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜14個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子の少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖または単環式もしくは多環式の基を意味する。アルケニル基の例としては、アリル、エテニル、プロペニル、ブテニル、イソ-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチル-シクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニル、1,3,5,7-シクロオクタ-テトラエニルなどが挙げられる。
【0125】
単独または「置換されてもよいアルキニル」のような複合語で使用される「アルキニル」という用語は、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜14個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子の少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖の基を指す。例としては、エチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、10-ウンデシニル、4-エチル-1-オクチン-3-イル、7-ドデシニル、9-ドデシニル、10-ドデシニル、3-メチル-1-ドデシン-3-イル、2-トリデシニル、11-トリデシニル、3-テトラデシニル、7-ヘキサデシニル、3-オクタデシニルなどが挙げられる。
【0126】
単独でまたは「置換されてもよいヘテロシクリル」のような複合語で使用される「ヘテロシクリル基」という用語は、窒素、硫黄および酸素から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有する単環式または多環式の複素環基を指す。
【0127】
適当な複素環基は、N含有の複素環基、例えば、1〜4個の窒素原子を含有する3員〜6員の不飽和ヘテロ単環式基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリルまたはテトラゾリル;
ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノまたはピペラジニルのような、1〜4個の窒素原子を含有する3員〜6員の飽和ヘテロ単環式基;
インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルまたはテトラゾロピリダジニルのような、1〜5個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基;
ピラニルまたはフリルのような、酸素原子を含有する3員〜6員の不飽和ヘテロ単環式基;
チエニルのような、1〜2個の硫黄原子を含有する3員〜6員の不飽和ヘテロ単環式基;
オキサゾリル、イソオキサゾリルまたはオキサジアゾリルのような、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する3員〜6員の不飽和ヘテロ単環式基;
モルホニリルのような、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する3員〜6員の飽和ヘテロ単環式基;
ベンズオキサゾリルまたはベンズオキサジアゾリルのような、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基;
チアゾリルまたはチアジアゾリルのような、1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する3員〜6員の不飽和ヘテロ単環式基;
チアゾリジニルのような、1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する3員〜6員の飽和ヘテロ単環式基; ならびに
ベンゾチアゾリルまたはベンゾチアジアゾリルのような、1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基
を含む。
【0128】
好ましくは、ヘテロシクリルは、イミダゾリルもしくはピリジニルのような1〜3個の窒素原子を含有する5員もしくは6員の不飽和ヘテロ単環式基; イミダゾリジニルもしくはピペラジニルのような1〜4個の窒素原子を含有する5員もしくは6員の飽和ヘテロ単環式基; またはモルホリニルのような1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する5員もしくは6員の飽和ヘテロ単環式基である。
【0129】
単独でまたは「置換されてもよいアリール」のような複合語で使用される「アリール」という用語は、一つ、二つまたは三つの環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、そのような環はペンデント方式で一緒に付着されてもまたは縮合されてもよい。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダンおよびビフェニルのような芳香族基を包含する。好ましくは、アリールは4-ハロフェニル、より好ましくは4-フルオロフェニルまたは4-クロロフェニルのような、置換されてもよいフェニルである。
【0130】
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素、ヨウ素または塩素、最も好ましくは塩素を指す。
【0131】
「アルコキシ」という用語は、好ましくは各々が1個〜約6個の炭素原子のアルキル部分を有する直鎖または分枝のオキシ含有基を指す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびtert-ブトキシが挙げられる。
【0132】
「置換されてもよいチオ」という用語は、二価の硫黄原子に付着された、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の直鎖または分枝アルキルを含有する基のような任意の置換基を指す。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオおよびヘキシルチオが挙げられる。
【0133】
「置換されてもよい」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルデヒド、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロキシ、ヘテロシクルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、ベンジルチオ、アシルチオ、リン含有基などから選択される一つまたは複数の基で、さらに置換されてもまたは置換されなくてもよい基を指す。好ましくは、任意の置換基はC1〜6アルキル、より好ましくはC1〜4アルキル; CF3; フッ素; 塩素; ヨウ素; シアノ; C1〜6アルコキシ、より好ましくはC1〜4アルコキシ; アリール; ヘテロシクリル; アミノ; またはアルキルアミノである。
【0134】
「抗酸化剤」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、毒性のない産物を生成するようにヒドロキシル基のような反応性酸素種と反応する能力を有する基を指す。例としては、3,4,5-トリメトキシフェニルおよび3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルのようなフェノール、メラトニンのようなインドールアミンならびにフラボノイドが挙げられる。その他の例は、文献(Wright et al, J Am Chem Soc 123:1173-1183, 2001)に見出すことができる。
【0135】
「標的化部分」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、能動輸送機構による薬物の脳への送達を容易にする基を指す。標的化部分は、血液脳関門に不可欠な特異的輸送酵素によって認識され、次いで、これらの輸送酵素が薬物を脳内に運び込む機構を供与する。典型的には、そのような輸送体はナトリウム依存性であり、その基質はアスコルビン酸およびL-グルタミン酸塩のようなカルボン酸を含む。薬物への標的化部分の結合は、酸部分を保持するように行われる。
【0136】
本明細書において使用される「金属キレート剤」という用語は「キレート療法」の既知の概念とは区別される。「キレート療法」とは、ウィルソン病、β-サラセミアおよび血色素症におけるような大量の金属の除去と臨床的に関連付けられた用語である。
【0137】
前述の化合物の塩は薬学的に許容されることが好ましいが、薬学的に許容されない塩も同様に、これらが薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用であるので、本発明の範囲内に含まれることが理解されると考えられる。薬学的に許容される塩の例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムのような薬学的に許容される陽イオンの塩; 塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸のような薬学的に許容される無機酸の酸付加塩; または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸のような薬学的に許容される有機酸の塩が挙げられる。
【0138】
さらに、本発明の化合物のいくつかは、水または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成することができる。このような溶媒和物は本発明の範囲内に包含される。
【0139】
「プロドラッグ」という用語は、前述の化合物にインビボで変換される化合物を含むよう本明細書においてその最も広い意味で用いられる。プロドラッグ戦略の使用により、その作用部位、例えば、網膜への薬物の送達が最適化される。一つの局面において、この用語は、プロドラッグがBBBを横断するまで、加水分解に抵抗するようデザインされたC1〜6アルキル部分またはアリールエステル部分の存在を指す。第二の局面において、この用語は、抗酸化基、具体的には3,4,-5トリメトキシフェニル部分またはその誘導体の2位での付着を指す。酸化促進性の環境へ網膜を曝露することにより、3,4,5-トリメトキシフェニル基のヒドロキシル化が引き起こされて2-ヒドロキシ-3,4,5-トリメトキシフェニル置換基がもたらされ、このヒドロキシル基が前述の化合物の結合特性を促進するように作用する。
【0140】
「互変異性体」という用語は、二つの異性体間の平衡状態で存在できる前述の化合物を含むよう本明細書においてその最も広い意味で用いられる。このような化合物は、二つの原子または基を結び付ける結合、および化合物中のこれらの原子または基の位置が異なってもよい。
【0141】
「異性体」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、構造異性体、幾何異性体および立体異性体を含む。前述の化合物は、一つまたは複数の不斉中心を持ちうるので、鏡像異性の形態で存在することができる。
【0142】
本発明の組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体、および任意でその他の治療剤と共に少なくとも一つの前述の化合物を含む。各担体、希釈剤、補助剤および/または賦形剤は、組成物の他の成分と適合し被験体に有害でないという意味で、薬学的に「許容され」なければならない。組成物は、経口投与、直腸投与、鼻腔投与、局所投与(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)に適したものを含む。組成物は、都合よく単位投与剤形で与えられてもよく、製薬の技術分野において周知の方法により調製されてもよい。このような方法は、一つまたは複数の副成分を構成する担体と活性成分を結び付ける段階を含む。一般に、組成物は、液体担体、希釈剤、補助剤および/もしくは賦形剤、または微粉化された固体担体、または両者と活性成分を、均一かつ密接に結び付け、その後、必要に応じて生成物を成形することにより調製される。
【0143】
前述の化合物は、従来の毒性のない薬学的に許容される担体、補助剤および媒体を含有する投与単位剤形で、経口的に、局所的にまたは非経口的に投与されてもよい。本明細書において用いられる非経口という用語は、皮下注射、肺または鼻腔への投与用のエアロゾル、静脈内の、筋肉内の、くも膜下腔内の、頭蓋内の注射または注入の技術を含む。眼内投与が特に有用である。
【0144】
本発明は同様に、本発明の新規の処置方法で用いるのに適した、局所用、経口用および非経口用の薬学的製剤を提供する。本発明の化合物は、錠剤、水性もしくは油性の懸濁液、薬用キャンディー、トローチ剤、粉末、顆粒剤、乳濁液、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として経口的に投与されてもよい。経口用の組成物は、薬学的に上質かつ口当たりのよい調製物を作出するため、甘味剤、香料添加剤、着色剤および保存剤からなる群より選択される一つまたは複数の薬剤を含有してもよい。適当な甘味料には、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンが挙げられる。適当な崩壊剤には、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天が挙げられる。適当な香料添加剤には、ペパーミント油、冬緑油、サクランボ、オレンジまたはラズベリーの香料が挙げられる。適当な保存料には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。適当な滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクが挙げられる。適当な時間遅延剤には、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンが挙げられる。錠剤は活性成分を、錠剤の製造に適した毒性のない薬学的に許容される賦形剤との混合剤で含有する。
【0145】
これらの賦形剤は、例えば、(1) 炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような、不活性希釈剤; (2) トウモロコシデンプンまたはアルギン酸のような、顆粒剤および崩壊剤; (3) デンプン、ゼラチンまたはアカシアのような、結合剤; ならびに(4) ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような、滑沢剤であってもよい。これらの錠剤は、被覆されなくてもよく、または公知の技術により被覆されて胃腸管での分解および吸収を遅延し、それによりいっそう長い期間にわたる持続作用をもたらしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような時間遅延材料が利用されてもよい。米国特許第4,256,108号; 同第4,160,452号; および同第4,265,874号に記述されている技術を利用し、被覆を行って制御放出用の浸透性治療錠剤を成形してもよい。
【0146】
前述の化合物および本発明の方法において有用な薬学的に活性な薬剤は、インビボでの適用の場合、注射または経時的に漸次潅流により、非経口的に独立してまたは一緒に投与することができる。投与は、眼内、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮または、例えば、浸透圧ポンプによる注入であってもよい。インビトロでの研究の場合、薬剤を生物学的に許容される適切な緩衝液に添加または溶解し、細胞または組織に添加してもよい。
【0147】
非経口投与用の調製物には、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝化媒質を含めて、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。非経口媒体は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムを含み、乳酸加リンゲルの静脈内媒体は流動体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルのデキストロースに基づくものなどの)などを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、増殖因子および不活性ガスなどのような、保存料および他の添加物が存在していてもよい。
【0148】
本発明は、疾患を改善するのに有用な種々の薬学的組成物を含む。本発明の一つの態様による薬学的組成物は、前述の化合物、その類似体、誘導体もしくは塩、または前述の化合物、および一つもしくは複数の薬学的に活性な薬剤の組み合わせを、担体、賦形剤および添加物または助剤を用いて被験体への投与に適した形態にすることにより調製される。よく使われる担体または助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよびその他の糖類、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物油および植物油、ポリエチレングリコールならびに滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールのような、溶媒が挙げられる。静脈内媒体は、流動体および栄養補充剤を含む。保存料は、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスを含む。その他の薬学的に許容される担体は、例えば、参照によりその内容が本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed. Williams and Wilkins (2000)およびThe British National Formulary 43rd ed. (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net)に記述されているように、水溶液、塩、保存料、緩衝液などを含め、毒性のない賦形剤を含む。薬学的組成物の各種成分のpHおよび正確な濃度は、当技術分野における日常的な技術によって調整される。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed., 1985)を参照されたい。
【0149】
薬学的組成物は、用量単位で調製され投与されることが好ましい。固体の用量単位は、錠剤、カプセル剤および坐剤とすることができる。被験体の処置の場合、化合物の活性、投与の方法、障害の性質および重症度、被験体の年齢および体重に応じて、異なる日用量が使われてもよい。しかしながら、ある種の状況下では、より高いまたはより低い日用量が適切な場合もある。日用量の投与は、個々の用量単位またはいくつかの少用量単位の形態での単回投与によっても、および同様に、細分化された用量を特定の間隔をおいて複数回投与することによっても行うことができる。
【0150】
本発明による薬学的組成物は、治療的に有効な用量で局所的にまたは全身的に投与されてもよい。この用途に有効な量は、もちろん、疾患の重症度ならびに被験体の体重および全身的状態に依ると考えられる。典型的には、インビトロで使用される投与量は、薬学的組成物の原位置での投与に有用な量における有益な指針となることがあり、動物モデルを用いて、細胞傷害性の副作用の処置に有効な投与量を判定することができる。さまざまな検討材料が、例えば、Langer, Science, 249:1527, (1990)に記述されている。経口用の製剤は、活性成分が不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルの形態とすることができる。それらは、活性成分が水またはピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油のような、油性媒質と混合されている軟ゼラチンカプセルの形態であってもよい。
【0151】
水性懸濁液は通常、活性物質を水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物として含有する。このような賦形剤は、(1) カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムのような懸濁剤; (2) (a) レシチンのような天然に存在するリン脂質; (b) 脂肪酸、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンとのアルキレンオキシドの縮合生成物; (c) 長鎖脂肪族アルコール、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールとのエチレンオキシドの縮合生成物; (d) モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのような脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物、または(e) 脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとのエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)である分散剤または湿潤剤であってもよい。
【0152】
薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上述した適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、公知の方法によって製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物は同様に、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液などの毒性のない非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。利用可能な許容される媒体および溶媒の中には、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油が通常、溶媒または懸濁化媒質として利用される。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激性の固定油を利用することができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸には注射物質の調製での用途が見出される。
【0153】
前述の化合物は同様に、小型単層小胞体、大型単層小胞体、および多層小胞体のような、リポソーム送達系の形態で投与されてもよい。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンのような、種々のリン脂質から形成することができる。
【0154】
前述の化合物は同様に、例えば、当技術分野において慣用的な方法により、調製できる動物用組成物の形態で用いるために提供されてもよい。このような動物用組成物の例としては、
(a) 経口投与、外用、例えば水薬(例えば、水性または非水性の溶液または懸濁液); 錠剤または丸薬; 飼料との混合用の粉末、顆粒またはペレット; 舌への適用向けのペースト;
(b) 例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液としての、例えば皮下、筋肉内もしくは静脈内注射による非経口投与; または(適切な場合)懸濁液もしくは溶液が乳頭を介して乳房に導入される乳房内注射による非経口投与;
(c) 例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏もしくはスプレーとしての、局所適用; あるいは
(d) 例えば、膣坐薬、クリームもしくは泡状物質として、経膣的に適合するものが挙げられる。
【0155】
本発明を以下の非限定的な例によってさらに記述する。
【0156】
実施例1
PB化合物を介した凝集aβ1-42の溶解
Aβ1-42はKeck Laboratory, Yale University School of Medicineから入手可能である。PBS (pH 6.6): Sigma Cat# D-8662。Zn(ZnCl2): BDH Cat# 100884E. (1 mMの濃度で水に溶解) DMSO: Ajax Cat# 2225。チオフラビンT: Sigma Cat# T-3516 (1 mMの濃度で水に溶解)。
【0157】
アミロイド組成の例証として、Aβを蒸留水に溶解し、ペプチド濃度をUV分光計において214 nmで測定された吸収により評価する。凝集反応混合物(1試験化合物の1濃度あたりの)を次のように用意する: Aβ: 25 μM、ZnCl2 50 μM、ThT 50 μM、500 μlにするためのPBS。試験管を箔で覆い、24時間回転により37℃でインキュベートする。各試験化合物の連続希釈物、例えば、100 μM、500 μM、1000 μM、2500 μMおよび5000 μMをDMSO中で作出する。終濃度は1、5、10、25および50 μMである。遠心分離管にこれらの化合物のそれぞれ5 μlを入れ、陰性および陽性の両対照用試験管にDMSO 5 μlを添加する。遠心分離管に凝集体(24時間のインキュベーション後の) 495 μlを添加する。陰性対照はPBSに加えてZnCl2およびThTおよびDMSOである。陽性対照は凝集体に加えてDMSOである。試験管を回転させながらさらに2時間37℃でインキュベートする。キュベット(容量500 μl)中にてLS55 (Perkin Elmer)蛍光光度計によりThT蛍光についてサンプルを測定する。励起波長は450 nmであり、発光波長は480 nmである。グラフパッド・プリズム・プログラムを用いてデータを解析する。試験化合物の中には、いわゆる「PB」化合物を含めた。
【0158】
実施例2
死後スクリーニング
BASアッセイを死後網膜に採用する。トレフィンを用い、凍結された提供者眼球から周辺網膜の直径6 mm域を切り裂いた。解凍後、神経網膜およびRPE細胞をPBS緩衝液中で穏やかな振とうにより除去する。RPE細胞の除去後、Bruch膜の細片を眼球から切り取る。
【0159】
4サンプルを調製する。
1) 対照
2) 100 μM TPEN
3) 100 μM PB-1033
4) 250 μM PB-1033
【0160】
30分のインキュベーション後、サンプルをPBSで3回洗浄し、次いで10分間10 μM ZP1 (亜鉛蛍光センサー)に適用する。
【0161】
その後、サンプルを3回洗浄し、蛍光および共焦点顕微鏡を用いて標識化を可視化する。
【0162】
サンプルを洗浄の前に15時間にわたりインキュベートして、このさらに長い時間にわたる示差的な金属結合を測定することを除いては、この手順の繰り返しを行う。
【0163】
試験結果は、15時間のサンプルインキュベーション後の、本実施例において試験された4サンプルの共焦点顕微鏡からの蛍光画像の形態である。この結果からTPENがZP1標識化を阻害したことが明らかであり、アッセイの有効性が示唆された。PB-1033もZP1標識化を阻害した。この結果から、PB-1033は網膜ドルーゼンでの金属イオンを阻害かつ低減することが明示される。蛍光顕微鏡写真(これは色付きである)は特許権所有者からの請求に応じて入手可能である。
【0164】
実施例3
臨床試験
AMD患者を選択し、これに1ヶ月間500 mg/日の濃度で試験化合物(PB化合物を含む)を投与する。読み出しはベースライン時に、次いで1ヶ月時に取り、以下を含む:
1. 微小視野検査法(microperimetry); および
2. 多焦点網膜写真法(multifocal retinography)。
【0165】
網膜がMPAC処理後の酸化ストレスを免れるなら、これらの網膜健常の指標の安定化に反映されるはずである。
【0166】
実施例4
化合物の評価
本発明の方法で用いるのに適するかどうかの化合物の評価に、以下のアッセイを使用した。
【0167】
アッセイ1. 蛍光定量的H2O2アッセイ
蛍光定量的アッセイを用いて、ジクロロフルオロセインジアセテート(DCF; Molecular Probes, Eugene OR)に基づき銅の存在下でのAβによる過酸化水素生成を試験化合物が阻害する能力について試験した。100%のジメチルスルホキシドのDCF溶液(5 mM) (事前に20℃で2時間アルゴンを用いてパージした)を0.25 M NaOHの存在下で30分間脱アセチル化し、1 mMの終濃度までpH 7.4で中和した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)原液をpH 7.4で1 μMに調製した。反応は96ウェルプレートに入れたPBS, pH 7.4中で行った(総量 = 250 μl/ウェル)。反応溶液には、50 nM〜1 μMの範囲の濃度でのAβ1-42、CuCl2をグリシンに1:6の比率で添加することにより調製され、2 Cu-Gly:1 Aβの割合でAβに添加された銅-グリシンキレート(Cu-Gly)、ドーパミン(5 μM)またはアスコルビン酸を含む還元剤、100 μM脱アセチル化DCF、および0.1 μM HRPが含まれた。1〜10 μM EDTAまたは別のキレート剤が遊離銅に対する対照として存在してもよいが、アッセイが機能するのには必要とされなかった。この反応混合物を37℃で60分間インキュベートした。PBS pH 7.4中のカタラーゼ(4000単位/ml)およびH2O2 (1〜2.5 μM)標準物質が陽性対照として含まれてもよい。それぞれ485 nMおよび530 nMの励起および発光フィルターを備えたプレートリーダーを用いて、蛍光を記録した。蛍光をH2O2標準物質と比較することにより、H2O2濃度を定めることができる。試験ウェルの中に所与の濃度の試験化合物を含めることにより、AβによるH2O2生成の阻害をアッセイした。
【0168】
アッセイ2. 神経毒性アッセイ
皮質神経細胞の初代培養
皮質培養物を既報(White et al., J Neuroscience 18:6207-6217, 1998)のように調製した。胚齢14日のBL6Jx129sv系マウスの皮質を摘出し、髄膜を含まないように切り裂き、0.025% (wt/vol)のトリプシン中で解離させた。解離した細胞を25% (vol/vol) FCSおよび5% (vol/vol) HS入りのMEM中2×106細胞/mLの密度で48ウェル培養プレート中にプレーティングし、37℃で2時間インキュベートした。次いで、培地を神経細胞培養用基礎培地(Invitrogen Life Technologies)およびB27培地添加物(Invitrogen Life Technologies)と交換した。培養物を5% CO2中37℃で維持した。実験の前に、培地を抗酸化剤を含まないの神経細胞培養用基礎培地およびB27 (Invitrogen Life Technologies)と交換した。
【0169】
アッセイ3. 細胞生存性のMTSアッセイ
MTSアッセイを用いて、細胞生存性を判定する。培地を抗酸化剤を含まないのB27培地添加物入り新鮮神経細胞培養用基礎培地と交換する。1/10容量のMTS溶液(Cell Titre 96 Aqueous One, Promega Corporation)を添加し、37℃で2時間インキュベートする。分光光度計を用い、560 nmで200マイクロリットルの一定分量を測定する。
【0170】
アッセイ4. 試験化合物の細胞毒性アッセイ
皮質神経細胞をNB培地およびB27培地添加物中でアッセイ2のように5日間培養した。
【0171】
6日目に試験化合物を抗酸化剤を含まないのNB培地およびB27培地添加物中の神経細胞培養物に添加した。
【0172】
試験化合物を100% DMSOに溶解して、2.5 mMの濃度にした(バイアルあたりに過剰の化合物が秤量された場合には10 mM、その後2.5 mMに希釈)。2.5 mMの原液を10分の1に連続的に希釈して、250 μM、25 μM、2.5 μMの希釈標準溶液を得た。
【0173】
試験化合物を細胞に直接的には添加せず、その代わりに以下に挙げる48ウェル「薬物プレート」にそれらを添加した。
【0174】
「薬物プレート」の調製:
48ウェルプレートに、以下を添加した。
ウェル1: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 2.5 μM試験化合物24 μl
ウェル2: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 25 μM試験化合物24 μl
ウェル3: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 250 μM試験化合物24 μl
ウェル4: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 2.5 μM試験化合物24 μl
ウェル5: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 25 μM試験化合物24 μl
ウェル6: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 250 μM試験化合物24 μl
ウェル7: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 試験化合物希釈液**24 μl
ウェル8: NB+B27 (抗酸化剤なし) 600 μl
この薬物プレートを37℃で15分間インキュベートした。各ウェル200 μlを対応する細胞プレートに三つ組で添加した。細胞プレートを37℃で4日間インキュベートした。
NB培地およびB27 (抗酸化剤なし)
**PBT希釈液 NB+B27 (抗酸化剤なし)中10%のDMSO
【0175】
アッセイの完了時に、1/10容量のMTSをプレートの1ウェルあたりに添加した(すなわち、25 μl/250 μl)。プレートを37℃で2時間インキュベートし、その後、吸光度を560 nmで読み取った。
【0176】
アッセイ5. ヒト脳アミロイド可溶化アッセイ
このアッセイは死後のヒトAD脳から得られた組織抽出物の、アミロイドの一例の形態としての、Aβを不溶性相から可溶性相に移動させる試験化合物の能力を評価するために行われた。
【0177】
DIAX 900ホモジナイザー(Heudolph and Co, Kelheim, Germany)またはその他の適当な装置を用いて、髄膜のない、プラークを持った皮質を最大0.5 gまで、氷冷リン酸緩衝生理食塩水pH 7.4 2 ml中にてフルスピードで30秒間3回ホモジナイズした。リン酸緩衝生理食塩水で抽出可能な画分を得るため、ホモジネートを100,000×gで30分間遠心分離し、上清を取り除いた。または、その組織を凍結乾燥し、その後微粉砕して粉末を形成し、これを上記の抽出用に一定分量に量り分けた。凍結乾燥され再懸濁されたかまたは非濃縮形態でのいずれかの、上清を8% SDS、10% 2-メルカプトエタノール含有のトリス-トリシンドデシル硫酸ナトリウム(SDS)サンプル用緩衝液pH 8.3 200 μlに溶解した。次いで一定分量(10 μl)をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の前に10分間煮沸した。皮質サンプルの不溶性画分は、最初のペレットサンプルをリン酸緩衝生理食塩水1 mlに再懸濁することで得た。次に、この懸濁液50 μlの一定分量を上記のサンプル用緩衝液200 ml中で煮沸した。
【0178】
適切に希釈されたサンプルを10%〜20%の勾配ゲル(Novex, San Diego, CA)に負荷することでトリス-トリシンポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、その後0.2 μmニトロセルロース膜(Bio-Rad, Hercules, CA)への転写を行った。Aβは、残基番号5から8、17を検出するモノクローナル抗体W02 (または別の適当な抗体)を西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG (Dako, Denmark)と併せて用いることで検出し、高感度化学発光(例えば、ECL; Amersham Life Science, Buckinghamshire, UK)を用いることで可視化した。各ゲルには参照基準物質として0.5、1および2 ngの合成Aβ40 (Keck Laboratory, Yale University, New Haven, CT)を含んだ3レーンが含まれた。
【0179】
UVPゲルドキュメンテーションシステムなどの適当な画像処理システムを用いることでブロットフィルムをスキャンし、適当なソフトウェア、例えばUVP Labworksを用いて濃度測定を行った。フィルム/スキャナーのダイナミックレンジは、供給された公知の漸増強度のステップに対し製造元が露光した濃度目盛り付のフィルムであるステップタブレット(No. 911ST600, Kodak, Rochester NY)を用いることで測定した。単量体および二量体Aβのバンドの濃度測定分析のための定量化可能なシグナル強度域は、ステップタブレットのスキャニングと濃度測定で得られた曲線との比較を基にした。予備的なアッセイの後にシグナル強度が低いサンプルは、より低濃度または高濃度の合成標準物質を用いることで再アッセイすることができる。
【0180】
全てのサンプルを少なくとも2回分析し、ゲル負荷および希釈が定量化可能な標準曲線の領域内に収まるよう調整した。「可溶性」Aβの「不溶性」Aβとの割合は、公知の化合物の効率に比べて試験化合物の抽出効率を判定するために用いることができる。不溶性Aβは、上述の皮質サンプルから得られる不溶性アミロイドプラークに由来するペレット化可能な画分からなり、可溶性画分は単量体および/またはオリゴマーの可溶性Aβを含む。
【0181】
アッセイ6. トランスジェニック動物でのAβ沈着に及ぼす試験化合物の投与の効果
トランスジェニックマウスモデルはアルツハイマー病、パーキンソン病、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、およびクロイツフェルトヤコブ病(CJD)を含め、いくつかの神経障害に利用可能である。アルツハイマー病のトランスジェニックモデルの一つ、APP2576トランスジェニックマウスも白内障の発生率が高いと分かった。これらの動物モデルは本発明の方法の試験に適していた。
【0182】
APP2576系統のトランスジェニックマウスを使用した。8〜9ヶ月齢の雌性マウスを選別し、処置のため複数の群に分けた。
【0183】
マウスは間隔をおいて殺処理し、試験化合物を用いた処置で脳アミロイド形成が減少したかどうかを判定するため、および最も効果的な投与プロトコルの特定のためその脳を調べた。
【0184】
各群の他のマウスは標準的方法によるモリス水迷路を利用し、認識能力について最大8ヶ月までの期間にわたって試験した。自発運動量、覚醒および全般的健康状態の兆候を含め、特性の組み合わせを主観的に評価する5点の整数尺度を用いて、動物の全般的健康状態および安らぎを同様に、予備知識のない技師により毎日測定した。
【0185】
アッセイ7. 可溶性アッセイ
式IまたはII (1 mM)の化合物の原液をジメチルスルホキシド中で調製した。溶解しなかった化合物は溶解せず(N)と分類した。DMSO原液をPBS pH 7.4中で100分の1に希釈した。清澄な溶液を生じた化合物は溶解性(Y)と分類し、その一方でDMSO中での溶解後に半透明の懸濁液を生じた化合物は「クラッシュドアウト」(C)と分類した。
【0186】
アッセイ8. 生理化学的特性
極性表面積(PSA)の計算
極性表面積値は、分子特性の計算用のパッケージ「モルインスピレーション(Molinspiration)」を通して利用可能なウェブベースのプログラムを用いて計算した。
【0187】
濁度溶解性測定
溶解性の概算はpH 2.0とpH 6.5の両方で測定した。これはヒトの近位胃腸管に沿って予測できるpH範囲内である。
【0188】
化合物を適切な濃度にまでDMSOに溶解し、その後0.01 M HCl (およそpH = 2.0)またはpH 6.5の等張リン酸緩衝液のいずれかにスパイクし、DMSO終濃度を1%にした。次に、サンプルを比濁法により分析して、溶解性範囲を測定した(Bevan and Lloyd, Anal. Chem. 72:1781-1787, 2000)。
【0189】
cLog P値
ACD Log Pソフトウェアを用いて理論的なLog P値を決定した。引用の値は未成熟なデータベースから計算されており、イオン化されていない種を表す。
【0190】
E Log D
有効なLog D値は、pH 7.4のオクタノール飽和移動相を用いSUPELCOSIL LC-ABZカラムを利用して、クロマトグラフィー法により測定した。F. Lombardo et al, J. Med. Chem. 2000, 43, 2922-2928を参照されたい。
【0191】
実施例5
PBT化合物の特性
表8は、本発明の範囲内に入る特に好ましいPBT化合物の特性および構造を示す。
【0192】
AMD化合物に関する結果
























a- AβによるH2O2生成の50%を阻害するのに必要な試験化合物の濃度μM
b- 濃度1および10 μMの試験化合物の存在下での初代皮質神経培養細胞(神経細胞)またはM17ヒト神経芽腫細胞(M17細胞)の生存率
c- 自家の標準物質(100%阻害として設定)を基準とした場合のジチロシンオリゴマー化の阻害%
d- 試験化合物が死後のヒトAD脳由来組織抽出物の不溶性相から可溶性相にAβを移動させる程度。結果はベースラインのPBSを基準としており、濃度域にわたって達成される最大効果、その次に効果が認められる濃度または濃度域として引用されている。
e- Aβ:Zn (25:50 μM)合成凝集体の脱凝集; 1番目の値 = EC50 (μM); 2番目の値 = 5 μMでの凝集体減少%
f- マウスもしくはTgマウス実験での急性毒性またはラットでのPK試験の間の目視観測
g- 30 mg/kg (特別の定めのない限り)の単回または反復経口用量後の1または2時点(30分〜4時間の間)での血漿中の化合物の存在の確認
h- 13〜14ヶ月齢のトランスジェニックマウスでの9週にわたる30 mg/kg (特別の定めのない限り)の連日強制経口投与後の、不溶性/可溶性脳アミロイド負荷での対照との相違%およびアミロイドプラーク存在量での対照との相違%。統計的に有意な結果(p<0.05)だけが百分率値として引用されており、数値なしで、傾向が示されている。
【0193】
本明細書において記述されている本発明は、具体的に記述されているもの以外の変形および変更を許容できることを当業者なら理解すると考えられる。本発明はそのような全ての変形および変更を含むと理解されるべきである。本発明は同様に、本明細書の中で言及されているまたは示されている段階、特徴、組成物および化合物の全てを、個別的にまたは一括的に、ならびにその段階または特徴のいずれかの二つまたはそれ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0194】
参考文献

国際公開公報第02/055081号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMDの症状を改善するレベルにまで網膜ドルーゼン中の金属を低減するのに有効な、PB-1033:

または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物の量を被験体に投与する段階を含む、加齢黄斑変性症(AMD)を有する被験体を処置するための方法。
【請求項2】
被験体が哺乳動物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物がヒトである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
金属が亜鉛および銅からなる一覧から選択される、請求項1または2または3記載の方法。
【請求項5】
PB-1033の誘導体または機能的等価物が、表8中の一覧または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物から選択される、請求項1または2または3または4記載の方法。
【請求項6】
PB-1033の誘導体または機能的等価物が、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160、およびPB-1168からなる一覧、または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
被験体における加齢黄斑変性症(AMD)の処置のための医薬の製造における、PB-1033:

または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物の使用。
【請求項8】
被験体が哺乳動物である、請求項7記載の使用。
【請求項9】
哺乳動物がヒトである、請求項8記載の使用。
【請求項10】
PB-1033またはその等価物の誘導体の量が、網膜ドルーゼン中の金属レベルを低減する量である、請求項7または8または9記載の使用。
【請求項11】
金属が亜鉛および銅からなる一覧から選択される、請求項10記載の使用。
【請求項12】
PB-1033の誘導体または機能的等価物が、表8中の一覧または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物から選択される、請求項7または8または9または10または11記載の使用。
【請求項13】
PB-1033の誘導体または等価物が、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160、およびPB-1168からなる一覧、または薬学的に許容されるその塩から選択される、請求項12記載の使用。
【請求項14】
PB-1033:

または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは等価物の有効量を被験体に投与する段階を含む、加齢黄斑変性症(AMD)の症状をそれによって改善する、被験体における網膜ドルーゼンからの金属のレベルを低減するための方法。
【請求項15】
被験体が哺乳動物である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物がヒトである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
金属が亜鉛および銅からなる一覧から選択される、請求項14または15または16記載の方法。
【請求項18】
PB-1033の誘導体または機能的等価物が、表8中の一覧または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物から選択される、請求項14または15または16または17記載の方法。
【請求項19】
PB-1033の誘導体または等価物が、PB-1076、PB-1085、PB-1120、PB-1127、PB-1135、PB-1149、PB-1151、PB-1160およびPB-1168からなる一覧、または薬学的に許容されるその塩、誘導体もしくは機能的等価物から選択される、請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2009−533356(P2009−533356A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504530(P2009−504530)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000490
【国際公開番号】WO2007/118276
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(503004149)プラナ バイオテクノロジー リミティッド (9)
【Fターム(参考)】