説明

劣化モードで動作する少なくとも1つの気筒を有する内燃機関

【課題】休止中の気筒の温度を維持しつつ、燃料消費量をさらに削減する。
【解決手段】本発明は、吸気弁22を有する吸気手段と、排気弁32を有する排気手段と、各弁の開閉を制御する制御手段40、42であって、駆動手段、ならびに制御手段と制御すべき弁との間で運動および負荷を伝達するための運動・負荷伝達手段を有する制御手段(40、42)とを含む少なくとも1つの気筒(10、12、14、16)を有する内燃機関に関する。本発明によれば、運動・負荷伝達手段は、弁の運動を制御するパッドから解放可能な少なくとも2つのロッカーを含むロッカーアームを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化モードで動作する少なくとも1つの気筒を有する内燃機関と、低負荷または中負荷動作におけるこのような機関の使用に関する。
【0002】
本発明は特に、ガソリン式の直接または間接噴射機関に関するが、それに限定されるわけではなく、ディーゼル式直接噴射機関を除外するものではない。
【背景技術】
【0003】
機関は通常、そのすべての気筒を稼働させる。しかし、この機関が低負荷または中負荷で動作する際、機関効率は、ガソリン式機関の場合には摩擦およびスロットリングコントリビューションの増大によって低下する。
【0004】
この機関の一部の気筒のみを動作させ、残りの部分を休止させておき、動作中の気筒に対する負荷を増大させることがすでに提案されている。
【0005】
したがって、燃料噴射は、休止させるべき気筒においてのみ遮断される。これによって、低負荷または部分負荷での機関動作向けのエネルギー生成に必要な気筒にのみ必要な燃料を噴射することによって好ましい燃料消費量削減が可能になる。
【0006】
したがって、一例として4気筒機関の場合、2つの気筒を休止させておくことができ、それによって、クランクシャフトが回転するたびに動作中の気筒で燃焼を行うことができる。
【0007】
この種の機関動作は満足行くものであるが、いくつかの重大な欠点を伴う。
【0008】
実際、排気弁および吸気弁のリフト規則は変化しないので、休止中の気筒の様々な吸気行程および排気行程において障害が生じる。
【0009】
したがって、休止させるべき気筒への燃料の供給を停止すると、燃焼室で燃料の混合は行われず、吸気行程の後にある体積の空気が燃焼室内に存在する。次に、この体積は、この気筒の、圧縮行程に相当する行程の間圧縮される。この圧縮行程の後く行程中、燃焼は行われず、ピストンは、燃焼ガスが膨張することによる力を受けず、圧縮されたある体積の空気を膨張させるに過ぎない。これによって、気筒に入っている空気が冷却され、この温度の低下が気筒壁に伝導される。この温度低下は、ピストンが気筒の底部から気筒の頂部まで動く休止中の気筒の排気行程の間排気配管全体に伝導される。この動きの間、膨張した低温の空気は、ピストンによって排気弁の方へ移動させられ、排気配管全体を移動し、一方、排気配管を冷却すると共に排気ガスを希釈する。このため、この配管に備えられた様々な汚染除去手段、特に触媒に関するかなりの問題が生じる虞がある。
【0010】
さらに、最初に休止していた気筒は、再始動させられる際低温であり、したがって、燃料混合物を燃焼させるのは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、シンプルで経済的な構成の機関によって上述の欠点を解消し、気筒の温度を維持しつつ燃料消費量をさらに削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、吸気弁を有する吸気手段と、排気弁を有する排気手段と、各弁の開閉を制御する制御手段であって、駆動手段、ならびに制御手段と制御すべき弁との間で運動および負荷を伝達するための運動・負荷伝達手段を有する制御手段とを含む少なくとも1つの気筒を有する内燃機関において、運動・負荷伝達手段が、弁の運動を制御するパッドから解放可能な少なくとも2つのロッカーを含むロッカーアームを有することを特徴とする内燃機関に関する。
【0013】
制御手段は、各ロッカーと協働するカムを備えているカムシャフトを有してよい。
【0014】
一方のカムは、一方のロッカーと協働し、他方のロッカーと協働する他方のカムのカム形状とは異なるカム形状を有してよい。
【0015】
ロッカーアームは、パッドと一方または他方のロッカーとの間に他の結合手段を有してよい。
【0016】
結合手段は、ロッカーにロックされることによって協働する2つのロッドを備えたピストンを含むジャッキを有してよい。
【0017】
ピストンロッドは、ロッカーに設けられた穴と協働することによってロッカーをパッドに固定することができる。
【0018】
特に有利なことに、ジャッキは、パッドによって支持することができる。
【0019】
パッドは、流体をジャッキから排出する出口を有することが好ましい。
【0020】
ロッカーアームがロッカーアームシャフトの周りを旋回するとき、ロッカーアームシャフトは、流体をジャッキへ送出する送出流路と、パッドによって支持される流体吐出通路に連結された連絡流路とを有する回転シャフトとなる。
【0021】
機関は、クランクシャフトの回転速度の3分の1の速度でシャフトを回転させる伝達比でカムシャフトと機関クランクシャフトとの間で運動を伝達するための手段と、カムシャフトの回転速度の2分の1の速度でロッカーアームシャフトを回転させる伝達比でカムシャフトとロッカーアームシャフトとの間で運動を伝達するための手段とを有してよい。
【0022】
本発明は、燃料混合物の吸気、圧縮、燃焼、および燃焼ガスの排気という従来の行程に加えて少なくとも2つの行程を有するサイクルによる、低機関負荷または中機関負荷での動作におけるこのような機関の使用にも関する。
【0023】
これらの追加的な行程は、従来の排気行程の後の、燃焼ガス膨張行程と、その後に続く膨張燃焼ガス再圧縮行程であってよい。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、非制限的な例として与えられた以下の説明を読むことによって明らかになろう。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、休止中の気筒の温度を維持しつつ、燃料消費量をさらに削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による内燃機関を示す図である。
【図2】様々な弁リフト規則(L)を本発明による機関のクランク角度の関数(°V)として示すグラフである。
【図3】様々な弁リフト規則(L)を本発明による機関のクランク角度の関数(°V)として示すグラフである。
【図4】本発明による機関の弁制御機構を示す図である。
【図5】本発明による他のピストンにおける図4の機構を示す図である。
【図6】図4の弁制御機構の変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1では、直接燃料噴射型の内燃機関、特にガソリン式機関は、少なくとも1つの気筒、ここでは4つの気筒10、12、14、16を有しており、少なくとも1つの気筒は、低負荷または中負荷用の劣化動作モードを有してよい。
【0028】
各気筒は、クランクシャフト(軸線18によって示されている)に連結された状態で往復方向に直線的に滑るピストン(不図示)を含んでいる。したがって、ピストンは、燃料混合物の燃焼を、このような燃焼の要件が満たされたときに行うことができる燃焼室を気筒と一緒に形成している。
【0029】
このピストンは、燃焼室がより少ない体積を占有する上死点(TDC)と呼ばれる上方位置と、燃焼室の体積がより多い上死点(BDC)と呼ばれる下方位置との間で変動する。これらの2つの死点間のこのピストンのストロークが動作行程に相当する。
【0030】
この図に示されているように、各気筒は、吸気管24を制御する少なくとも1つの吸気弁22を含む吸気手段20を有している。吸気管は、外気などの流体用の入口28に連結された吸気マニホールド26に連結されている。
【0031】
外気は、大気圧の空気であっても、たとえば気筒に送り込まれる前にターボ圧縮機によって圧縮された過給空気であってもよい。この空気は、大気圧であるか過給空気であるかにかかわらず、機関がEGR(排気ガス再循環)モードで動作する場合に排気ガスと混合することもできる。
【0032】
各気筒は、気筒内の燃料混合物が燃焼することによって生じる燃焼ガスを大気に排出させる排出配管38に連結された排気マニホールド36に連結された排気管34を制御する少なくとも1つの排気弁32を含む排気手段30も有している。
【0033】
もちろん、この配管は、このような排気ガスを大気に排出する前に排気ガスから汚染を除去する触媒などの手段を有してよい。
【0034】
基本的に公知のように、各気筒は、気筒内で燃料を混合する燃料噴射手段(不図示)を有している。この燃料混合物の点火は、点火プラグ(不図示)などの点火手段または自動点火によって行うことができる。
【0035】
これらの吸気弁22および排気弁32の開閉は、それぞれ制御手段40、42によって制御され、これについては以下に詳しく説明する。
【0036】
これらの制御手段は、気筒10〜16が、燃料噴射手段と、場合によってはスパーク点火機関の場合の点火手段と組み合わされて、気筒が図2および3に示されている2つの動作構成を満たすことができるように構成されている。
【0037】
図2に示されている従来の動作の場合、特に高負荷レベルの動作の場合、気筒10〜16は、クランクシャフトが2回転する間(T)、4つの行程を含む従来のサイクル(C)に従って動作する。このサイクルは、1回転の間の、吸気弁22の開閉シーケンスを含むピストンのTDCとBDCとの間の吸気行程(A)、およびこのピストンのTDCとBDCとの間の圧縮行程(CP)、その次の回転の間の、ピストンがTDCからBDCまで動く、気筒に存在する燃料混合物の燃焼行程(CB)、および排気弁32の開閉シーケンスを含むピストンがBDCからTDCまで動く、燃焼ガスの排気行程(E)を有する。従来のこの4つの行程は、クランクシャフトの2回転、すなわち、720°のクランク角度の間繰り返される。したがって、各サイクル(C)は吸気行程(A)から始まり、排気行程(E)で終わる。
【0038】
低負荷または中負荷での動作を示す図3の構成の場合、少なくとも1つの気筒、ここでは気筒10は、クランクシャフトが3回転する間(T)に6つの行程を含むサイクル(C’)を有する劣化モードで動作する。これらの行程は、前述の4つの行程(2回転中の吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程)と、その後に続く、回転中の2つの追加的な行程、すなわち、ピストンのTDCとBDCとの間に気筒に入っている残留燃焼ガスが膨張する膨張行程(D)、およびBDCからTDCに向かうピストン行程を有する膨張した燃焼ガスの再圧縮(RC)行程とを含む。後者の2つの行程は、吸気弁および排気弁を閉じた状態に維持することによって実施される。したがって、この動作サイクル(C’)は、吸気行程(A)から始まり、再圧縮行程(RC)で終わる。
【0039】
したがって、従来の動作では、機関は、より厳密には4行程おき、すなわち2回転おきに燃焼行程を有する4行程サイクルに従ってすべての気筒を用いて動作する。
【0040】
低負荷または中負荷での動作の場合、機関は、すべてまたは一部の気筒が、クランクシャフトが3回転する6行程サイクルによる単一の燃焼行程(CB)を含む劣化モードで動作させられる。一部の気筒のみが劣化モードで動作する場合、残りの部分の気筒は従来のモードで動作する。
【0041】
このため、気筒を休止させる従来の機関とは異なり、様々な気筒部材(気筒壁、ピストンなど)の温度を維持することができ、排気配管を妨害することはなく、一方、燃料消費量を著しく削減する。
【0042】
したがって、図4に示されているように、吸気弁制御手段40および排気弁制御手段42は、駆動手段と、このような駆動手段と制御すべき弁との間で運動および負荷を伝達するための手段とを有している。これらの制御手段は、対象となる気筒を劣化モードまたは従来のモードで動作させることができる。
【0043】
以下の説明は、吸気弁22に適用される制御手段40のみについて述べているが、排気弁32に対する制御手段42にも適用される。
【0044】
図4の例では、駆動手段は回転カムシャフト44を含んでいる。このカムシャフト44は、互いに異なるカム形状52、54を有し、かつ、弁を制御する第1のカム48と第2のカム50を互いに距離を置いて固定的に支持する軸46を有している。
【0045】
この説明で使用される語「第1の」および「第2の」は、使用する順序を指すものではなく、ほとんど同一の2つの部材を互いに区別するためのみに使用される。
【0046】
駆動手段(カムシャフト)44と点線の円で表されている吸気弁22との間の運動・負荷伝達手段56は、シャフト自体がその長手方向軸の周りを回転するロッカーアームシャフト60の周りを旋回するロッカーアーム58を有している。このロッカーアームシャフト60は、吸気弁22とカムシャフト44との間に配置され、カムシャフト44にほぼ平行である。
【0047】
ロッカーアーム58は、カムシャフト44に最も近いロッカーアーム58の端部66の近傍に、回転しながら滑ることによってロッカーアームシャフト60と協働するボア64を有し、ロッカーアーム58の他方の端部70の近傍に、弁22のステムとの接触ゾーン68を有する、縦長形状の平坦なパッド62を有している。
【0048】
第1のロッカー72と第2のロッカー74は、このパッド62の各側にパッド62に接触して、軸方向に棒の形に配置され、さらに、これらのロッカーの本体80、82が有するボア76、78によってロッカーアームシャフト60上にピボット運動するように取り付けられている。
【0049】
これらのロッカー72、74の長手方向寸法は、第1のロッカー72の一方の端部84が第1のカム48上に位置し、第2のロッカー74の一方の端部86が第2のカム50上に位置するような寸法である。
【0050】
ロッカー72、74の他方の端部88、90は、協働手段、ここでは、ロッカーアームシャフト60にほぼ平行な第1の穴92および第2の穴94と、パッド62によって支持された結合手段96とを有している。これらの手段は、第1のロッカー72をパッド62に結合(またはパッド62から結合解除)するか、あるいは第2のロッカー74をこのパッド62に結合(またはパッド62から結合解除)するために設けられている。
【0051】
結合手段96は、パッド62によって支持された単一作用油圧ジャッキ型のジャッキ97を有している。
【0052】
このジャッキ97は、パッド62の本体に設けられた2つの垂直側壁100、102を有する、たとえば円筒形のキャビティ98を有している。このキャビティ98は、好ましくは円筒形でキャビティ98と同軸であり、それぞれ互いに向かい合う穴92、94が設けられ、同じ半径方向寸法を有するボア104、106によって、側壁100、102からロッカー72、74の方向に延ばされている。好ましくはステップ式の並進ピストン108が、2つの密封チャンバ112、114を形成するのを可能にするピストン本体110と一緒に、このキャビティ98内に配置されており、一方の密封チャンバ112は戻りばね116などの弾性手段を有する。このピストン本体110は、ボア104、106と協働し、次にロッカー72、74の穴92、94の一方または他方と協働する第1のロッド118および第2のロッド120を各側に支持している。
【0053】
油のような圧力下の制御流体を循環させる通路122が、パッド62のキャビティ98とボア64との間に設けられており、この通路112は、ばねを有さないチャンバ114の垂直壁102上のできるだけ近くに開放している。この通路112は、この通路112をボア64と連通させる流体循環バイパス124も有している。パッド62の、送出通路から離れた位置に、流体吐出通路126も設けられている。この吐出通路126は有利なことに、パッド62のボア64とロッカーアームの端部66の縁部との間に配置されている。
【0054】
ロッカーアームシャフト60は圧力下の流体を送出する軸方向流路128であって、圧力下の流体Fを対象とする入口ボックス131とこのシャフト60の周囲から連通する半径方向流体入口130を有する軸方向流路128を内部に有している。この流路128は、このシャフト60の周囲上に半径方向に開放し、一方、連通通路122と一致する流体出口132も有している。
【0055】
流路128の入口130および出口132と、ボックス131は、図4に示されているロッカーアームシャフト60の2分の1回転全体にわたってチャンバ114への送出を行うのを可能にするように寸法付けされている。
【0056】
このシャフト60は、送出流路から離れた位置に配置されたほぼ半径方向の連絡流路134も有している。この連絡流路134は、断面が吐出通路126の断面とほぼ等しい連絡通路138が連続する半径方向ボウル136を有している。
【0057】
この流路の構成は、以下に説明するようにロッカーアームシャフト60がさらに2分の1回転したときに、ボウル136がバイパス124と連通することができ、連絡通路138が吐出通路126と連通することができるような構成である。
【0058】
もちろん、様々な可動部分と固定部分との間に密封手段が設けられ、制御流体の漏れを防止している。
【0059】
ロッカーアームシャフト60とカムシャフト44は、ロッカーアームシャフト60の回転速度がカムシャフト44の速度の2分の1になるように歯車列140のような任意の伝達手段によって交互に運動学的に連結されている。
【0060】
このカムシャフト44の回転運動は従来、このカムシャフト44の回転速度がクランクシャフト18の速度の3分の1になるようにタイミングベルト(またはチェーンまたはピニオン列)を通じてクランクシャフト18によって制御されている。
【0061】
したがって、具体的には、クランクシャフト18が3回転した場合、カムシャフト44は1回転し、一方、ロッカーアームシャフト60は2分の1回転する。
【0062】
機関気筒の従来の動作条件の下では、特に全負荷時には、制御手段は最初図4の構成を有する。
【0063】
圧力下の流体Fはボックス131を通して入口130に送られる。この流体は、流路128を循環し、出口132から出て、次に連通通路122を通ってチャンバ114に運ばれる。この圧力下の流体は、チャンバ114に充填され、一方、ピストン108を右側(この図で考えた場合)に駆動し、かつばね116を圧縮する。
【0064】
(図では点線で示されている)この位置に達すると、このピストン108の第1のロッド118が第1のロッカー72の穴92と協働し、第2のロッド120は、第2のロッカー74の穴94から離れている。
【0065】
したがって、ロッカーアームシャフト60の2分の1回転に相当する完全な1回転によるカムシャフト44の回転中に、第2のロッカー74の端部86に接触している第2のカム50によって、このロッカー74はロッカーアームシャフト60の周りを旋回する。このロッカー74は、パッド62から結合解除されているためもはやこのパッド62に機械的に連係されていないので、パッド62を通じて弁ステムに作用することはできない。
【0066】
一方、第1のカム48が回転すると吸気弁22が制御される。実際、パッド62とロッカー72との結合を有効化することにより、このカム48が回転することによって、パッド62と第1のロッカー72で構成された組立体が、このロッカー72の端部84が第1のカム48の形状52と接触しているため、ロッカーアームシャフト60の周りで傾斜することができる。この傾斜によって、パッド62の接触ゾーン68が、それによって制御される管のオリフィスを開閉することによって弁の並進変位を生じさせる。
【0067】
図2に関連して、カムシャフト44の1回転はクランクシャフト18が3回転、したがって0クランク角度から1080クランク角度まで回転する間に行われる。
【0068】
このカムシャフト44が1回転する間、ロッカーアームシャフト60は、図4に点線で示されているジャッキロッド118、120の位置で2分の1回転する。
【0069】
したがって、動作サイクル(C)中には、吸気弁22は、0クランク角度から180クランク角度の間の開閉シーケンスに従い、次いで、次のサイクル(C)中には、720クランク角度から900クランク角度の間の開閉シーケンスに従う。
【0070】
したがって、カム48は、カムシャフト44の1回転中に、このシーケンスの連続を実施するのを可能にする適切な形状を有している。
【0071】
ロッカーアームシャフト60は、カムシャフト44の作用の下でその2分の1回転を終えると、図5に示されている位置に来る。
【0072】
この位置では、流体がもはや流路128に送り込まれないだけでなく、この流路128ももはや流体連通通路112と連結されていない。
【0073】
したがって、チャンバ114はもはや圧力を受けておらず、バイパス124は連絡流路134を通じて吐出通路126と連通する。
【0074】
チャンバ112に存在する戻りばね116の作用の下で、ピストン108は左(この図で考えた場合)の方へ駆動され、チャンバ114に入っている流体はそこから排出される。
【0075】
この流体は次に、連通通路122の一部およびバイパス124を流れ、連絡流路134のボウル136に達する。流体は、このボウル136から連絡通路138および吐出通路126を通って流れ、タンクやドラムのような任意の流体受け手段に到達する。
【0076】
最後に、ピストン108およびそのロッド118、120は、第1のロッカー72がパッド62から結合解除され、一方、ロッカー74がこのパッド62に結合される構成になる。
【0077】
追加的な3回転、したがって1080クランク角度から2160クランク角度までのクランクシャフト18の回転中に、カムシャフト44は1回転し、ロッカーアームシャフト60は2分の1回転する。
【0078】
適切な形状54を有する第2のカム50の作用の下で、吸気弁22は、1440クランク角度から1620クランク角度の間の開閉シーケンスに従い、次の動作サイクル(C)を開始する。
【0079】
ロッカーアームシャフト60は、カムシャフト44の作用の下でその2分の1回転を終了すると、図4に示されている位置に来る。さらに、ピストン118は、ばね116の作用の下で、この図に示されている最初の位置に来る。
【0080】
少なくとも1つの気筒10の劣化動作中には、低機関負荷または中機関負荷の場合と同様に、図3に関連して説明するように6行程おきに燃焼行程(CB)を生じさせるサイクル(C’)を用いてこの気筒を動作させる。
【0081】
制限的でない例として、気筒10の劣化動作中には、他の気筒12〜16は従来のモードで動作する。
【0082】
したがって、図4の構成から、流路128は、ロッカーアームシャフト60が1回転する間ずっと圧力下の流体の供給を受けることはない。したがって、第1のロッカー72は、この回転の間ずっとパッド62には結合されず、第2のロッカーアームシャフト74は、このパッド62に常に結合されたままである。
【0083】
第2のカム50の形状54を考慮すると、吸気弁22は、360クランク角度から540クランク角度の間のような3回転おきの動作サイクル(C’)による開閉シーケンスに従い、次いで1440クランク角度から1620クランク角度の間の次のサイクル(C’)による開閉シーケンスに従う。
【0084】
したがって、この構成は、すでに述べたように、6行程動作サイクル(C’)を伴う単一の燃焼行程(CB)を実現する。
【0085】
排気弁32は吸気弁22の制御手段と同一の制御手段に従うため、この排気弁32は、従来の機関気筒動作条件下であるか、それとも低負荷または中負荷での劣化動作モードであるかとは無関係に、540°の角度ずれを含む開閉シーケンスに従う。
【0086】
もちろん、流路128への流体の流入は、あらゆる機関に通常備えられる制御ユニット(不図示)によって制御される油圧回路(不図示)によって制御される。このユニットは、機関変化条件に応じてすべてまたは一部の気筒を動作させるマップまたはデータチャートを含んでいる。
【0087】
同様に、このユニットは、気筒への燃料噴射に関するパラメータと、この気筒に存在する燃料混合物に関する点火パラメータを調節するのを可能にする。
【0088】
図6の変形実施形態は、結合手段96のチャンバ114から放出された流体を排出するためのレイアウトが図4の例とは異なる。
【0089】
この変形実施形態では、バイパス124、連絡流路134(連絡ボウル136、連絡通路138)、および吐出通路126は、パッド62に含まれる較正済み吐出流路142で置き換えられている。較正済み断面を有するこの流路は、チャンバ114から始まり、パッドの端部70の縁部で終わる。
【0090】
気筒が従来のモードで動作する際、流体は、すでに図4に関連して説明したように、圧力下で送出流路128および連通流路122を通してチャンバ114に送り込まれる。この流体は、ピストンを図の右側に駆動することによってピストンに圧力をかける。当業者が最初に任意の手段によって決定した吐出流路142の較正を考慮すると、チャンバ114に送り込まれた流体は、この流路を通して再びチャンバから流出させられるが、この場合の流量は連通流路122からの流量より少ない。流体の送出と流体の吐出との圧力差のために、チャンバ内で優勢の圧力は、ピストンを図5に示されている位置に維持するのに十分な圧力である。
【0091】
流体の送出を停止すると、チャンバ114で優勢な圧力はなくなる。ばね116の作用の下で、このチャンバに入っている流体が流路142を通して排出され、ピストンが図6に示されている位置に達する。
【0092】
本発明は、前述の実施形態に限定されず、すべての変形実施形態または均等実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0093】
10、12、14、16 気筒
20 吸気手段
22 吸気弁
32 排気弁
40、42 制御手段
44 回転カムシャフト
48 第1のカム
50 第2のカム
52、54 カム形状
56 運動・負荷伝達手段
58 ロッカーアーム
60 ロッカーアームシャフト
62 パッド
72 第1のロッカー
74 第2のロッカー
92 第1の穴
94 第2の穴
96 結合手段
97 ジャッキ
108 ピストン
122 連通通路
124 流体循環バイパス
126 流体吐出通路
128 軸方向流路(送出流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁(22)を有する吸気手段と、排気弁(32)を有する排気手段と、前記吸気弁及び排気弁の開閉を制御する制御手段(40、42)であって、駆動手段(44)、ならびに前記制御手段と制御すべき前記弁との間で運動および負荷を伝達するための運動・負荷伝達手段(56)を有する制御手段(40、42)とを含む少なくとも1つの気筒(10、12、14、16)を有する内燃機関において、前記運動・負荷伝達手段(56)は、前記弁の運動を制御するパッド(62)から解放可能な少なくとも2つのロッカー(72、74)を含むロッカーアーム(58)を有することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記制御手段は、各ロッカーと協働する複数のカム(48、50)を支持するカムシャフト(44)を有する、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
一方の前記カム(48)は、一方の前記ロッカー(72)と協働し、前記他方のロッカー(74)と協働する前記他方のカム(50)のカム形状(54)とは異なるカム形状(52)を有する、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記ロッカーアームは、前記パッド(62)と一方または他方の前記ロッカー(72、74)との間に結合手段(96)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記結合手段は、前記ロッカーにロックされることによって協働する2つのロッド(118、120)を備えたピストン(108)を含むジャッキ(97)を有する、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記ロッド(118、120)は、前記ロッカーに設けられた穴(92、94)と協働することによって前記ロッカー(72、74)をパッド(62)に固定する、請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記ジャッキ(97)は、前記パッド(62)によって支持される、請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記パッドは、流体をジャッキ(97)から排出する出口(126、142)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記ロッカーアームが前記ロッカーアームシャフト(60)の周りを旋回するとき、前記ロッカーアームシャフトは、前記ジャッキへ流体を運ぶ送出流路(128)と、前記パッドによって支持される流体吐出通路(126)に連結された連絡流路(134)とを有する回転軸となる、請求項1から8のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記機関は、前記クランクシャフトの回転速度の3分の1の速度で軸を回転させる伝達比で前記カムシャフト(44)と前記クランクシャフトとの間で運動を伝達するための手段と、前記カムシャフトの回転速度の2分の1の速度で前記ロッカーアームシャフトを回転させる伝達比で前記カムシャフト(44)と前記ロッカーアームシャフト(60)との間で運動を伝達するための手段(140)とを有する、請求項9に記載の内燃機関。
【請求項11】
燃料混合物の吸気(A)、圧縮(CP)、燃焼(CB)、および燃焼ガスの排気(E)という従来の行程に加えて少なくとも2つの行程(D、RC)を有するサイクル(C’)による、低機関負荷または中機関負荷での動作における、請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の使用方法。
【請求項12】
従来の排気行程(E)の後に、燃焼ガス膨張行程(D)と、その後に続く膨張燃焼ガス再圧縮行程(RC)とを有する、請求項11に記載の機関の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−71285(P2010−71285A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213022(P2009−213022)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】