説明

動作検出センサ及びアクチュエータシステム

【課題】電気的なセンサとは異なる構造によってアクチュエータの動作を検出できる動作検出センサを提供する。
【解決手段】変形動作するバルーンアクチュエータ12に検出用流路2が設けられている。検出用流路2は、動作するバルーンアクチュエータ12の動作に応じて変形することで、通過させる流体の流路抵抗が変化する。そして、流路抵抗の変化による前記検出用流路2を通る流体の流量の変化を測定手段3が測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動作検出センサ及びアクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータにおける姿勢や動作量などの動作情報や、アクチュエータが対象物に接触したことついての接触情報を知る手段として、当該アクチュエータにセンサを組み込んで観測する手段が考えられる。このようなセンサとしては、例えば特許文献1に示しているように、アクチュエータの動作に応じて生じる金属のひずみ抵抗の変化を利用したものがある。特許文献1のセンサでは、ダイアフラムにセンサチップが固定されており、作用する力に応じてダイアフラムがひずみ、このダイアフラムのひずみ量をセンサチップによって電気信号に変換し、この電気信号を処理することによってダイアフラムのひずみ量を検出し、検出したひずみ量から作用した力を検出している。
【0003】
【特許文献1】特開2006−105645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば前記アクチュエータを体内駆動型の医療機器であるマニピュレータとした場合、体内に挿入する部分に電気的なセンサを取り付けることとなる。このような体内駆動型の医療機器においては、体内に挿入する部分について電気的な構成をできるだけ少なくするのが好ましいとされている。
そこでこの発明は、従来の電気的なセンサとは異なる構造によってアクチュエータ(動作部)の動作を検出できる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するためのこの発明の動作検出センサは、変形動作する動作部に設けられ当該動作部の変形動作に応じて変形することで通過させる流体の流路抵抗が変化する検出用流路と、前記流路抵抗の変化による前記検出用流路を通る流体の状態の変化を測定する測定手段とを備えたものである。
この構成によれば、動作部の変形動作に応じて検出用流路が変形することによって当該検出用流路における流路抵抗が変化する。そして、測定手段が、この流路抵抗の変化による検出用流路を通る流体の状態の変化を測定することで動作部の動作を検出できる。このように、動作部に設けた検出用流路を通る流体に基づいて当該動作部の動作状態を検出できる。
【0006】
また、前記動作検出センサにおいて、前記動作部の変形動作により、前記検出用流路の断面積、長さ、曲がり角度の少なくとも1つが変化することで、当該検出用流路における流路抵抗が変化する構成とすることができる。
この場合、動作部が変形動作することで検出用流路の断面積、長さ、曲がり角度の少なくとも1つが変化し、検出用流路の流路抵抗が変化する。
【0007】
前記動作部は曲がり動作を行い、この曲がり動作に応じて前記検出用流路も曲がる方向に設定されて当該検出用流路は設けられている構成とすることができる。これにより、動作部の曲がり動作に応じて検出用流路も曲がり、流路抵抗が変化する。
さらに、前記検出用流路は、Uターン部と、このUターン部の流体の流れ方向の前後にそれぞれ連通している直線部とを有しているのが好ましい。これにより、検出用流路において流路抵抗が変化する部分(流路抵抗の有効長)を長くでき、検出用流路を通る流体の状態の変化量を大きくできる。
【0008】
また、前記測定手段は、前記動作部の動作量の情報と、その動作量に応じて生じる前記検出用流路を通る流体の状態の情報との関係についてのデータを記憶する記憶手段を備えているのが好ましい。
これにより、測定手段が検出用流路を通る流体の状態を測定し、その測定情報に基づいて、測定手段は、記憶手段に記憶している前記関係についてのデータから動作部の動作量を求めることができる。
【0009】
また、前記測定手段は、前記動作部が無負荷で動作した際の動作量の情報と、その動作量に応じて生じる前記検出用流路を通る流体の状態の情報との関係についての無負荷時データを記憶する記憶手段と、所定の動作量について動作させるべく前記動作部が負荷を有して動作した際の前記検出用流路を通る流体の状態を測定した情報と、前記無負荷時データにおいて前記所定の動作量に対応する前記検出用流路を通る流体の状態の情報との間の変化を求める演算手段とを備えているのが好ましい。
これにより、所定の動作量について動作させるべく動作部が負荷を有して動作した際の検出用流路を通る流体の状態を測定手段が測定し、その測定した情報と、無負荷時データにおいて前記所定の動作量に対応する検出用流路を通る流体の状態の情報との間の変化を、演算手段が求めることによって、処理手段は、前記負荷の強弱などについての接触情報を検出することができる。
【0010】
また、前記動作検出センサにおいて、前記検出用流路に通す流体の圧力、流速、流量の内の一つを一定とする調整手段をさらに備え、前記測定手段は、前記検出用流路に通す流体の圧力、流速、流量の内の他の一つを前記流体の状態として測定する構成とできる。
これにより、測定手段は、検出用流路を通る流体の状態として、流体の圧力、流速、流量の内の前記他の一つを測定することができ、これに基づいて動作部の動作状態を検出できる。
【0011】
また、この発明のアクチュエータシステムは、動力源と、この動力源の動力により動作する動作部と、この動作部の動作状態を検出する動作検出センサとを備え、前記動作検出センサが、前記動作部に設けられ当該動作部の動作に応じて変形することで通過させる流体の流路抵抗が変化する検出用流路と、この検出用流路を通る流体の状態を測定する測定手段とを有しているものである。
この構成によれば、動作部の動作に応じて検出用流路が変形することによって当該検出用流路における流路抵抗が変化する。そして、測定手段が、この流路抵抗の変化による検出用流路を通る流体の状態の変化を測定することで動作部の動作を検出できる。このように、動作部を動作させることができるとともに、この動作部に設けた検出用流路を通る流体に基づいて当該動作部の動作状態を検出できる。
【0012】
また、前記動作部は、流体の供給によって動作するエアアクチュエータとすることができる。
これにより、動作部及び動作検出センサ共に流体を利用した構成とできる。
また、この場合において、前記エアアクチュエータは内部に流体を供給することで表面の膜体が膨張するバルーンアクチュエータであり、前記検出用流路は前記膜体に形成されているのが好ましい。
これにより、バルーンアクチュエータを形成する工程において検出用流路を形成でき、製造工数を低減できる。さらに、バルーンアクチュエータを構成する膜体に検出用流路を形成していることから、検出用流路を形成するために別の部材が不要となる。また、バルーンアクチュエータと検出用流路とを一体として形成できることから、検出用流路の存在によるバルーンアクチュエータの動作の影響を小さくできる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、動作部の変形動作に応じて検出用流路が変形することによって当該検出用流路における流路抵抗が変化し、この変化による検出用流路を通る流体の状態の変化を測定することで動作部の動作を検出できる。従来のように電気的なセンサによらずに、動作部に設けた検出用流路を通る流体に基づいて当該動作部の動作状態を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の動作検出センサ1、及びこの動作検出センサ1を備えたアクチュエータシステムの実施の一形態を示す概略構成図であり、図2はこのアクチュエータシステム(マニピュレータシステム)が有するマニピュレータ11を示す平面図であり、図3はこのマニピュレータ11による動作を説明する側面断面図である。このマニピュレータ11は、人間の指に類似した構造を有し、人間の指の動作に類似した動作を行うことができる。すなわち、このマニピュレータ11は、人間の指に見立てたフィンガー部13を有しており、フィンガー部13に設けた関節部14において屈曲することができ(図3(b)参照)、例えば人間の指のように物体の把持などを行うことができる。関節部14は、供給される流体の圧力(流体圧)によって曲がり運動を行う動作部であり、この動作部をバルーンアクチュエータ12によって構成している。なお、以下において、前記流体を気体として説明する。そして、流体を気体とした場合では、その気体を空気、酸素ガス、窒素ガスなどとできる。
【0015】
図1において、この発明のアクチュエータシステムは、コンプレッサ、ポンプ又はボンベなどの動力源31と、この動力源31からマニピュレータ11へ供給する気体の圧力、流量を調整することができるレギュレータ32とを備えている。そして、この動力源31からの気体の圧力によってバルーンアクチュエータ12が動作し、マニピュレータ11は動くことができる。なお、動力源31及びレギュレータ32はマニピュレータ11の外部に設けられており、気体供給用の流路としてのパイプ40を介してこれらはマニピュレータ11(供給ポート16)と接続されている。
【0016】
マニピュレータ11は、本体部15と、本体部15から延びるフィンガー部13とを有している。本体部15は、パイプ40を取り付けるための供給ポート16を有している。この供給ポート16は、本体部15及びフィンガー部13の基端部に形成したチャネル部(供給流路)17を介してバルーンアクチュエータ12に連通しており、バルーンアクチュエータ12へ動力源31からの気体を供給することができる。
【0017】
図3(a)において、フィンガー部13及び本体部15は複数の膜体を積層して構成しており、具体的には、フィンガー部13においては、シリコーンラバーフィルムからなる第1膜体18と、同じくシリコーンラバーフィルムからなる第2膜体19とを積層して構成し、フィンガー部12における全体の厚さが1mm以下であり薄く柔軟な構造である。第1膜体18と第2膜体19との間には、前記チャネル部17の一部と、このチャネル部17よりも断面が拡大している空間部20とが形成されている。この空間部20の周囲にある第1膜体18と第2膜体19とがバルーンアクチュエータ12を構成しており、空間部20にチャネル部17を通じて気体が供給される。この空間部20により第1膜体18と第2膜体19との一部がバルーンアクチュエータ12として機能する。空間部20及びチャネル部17は、第2膜体19に凹溝を形成することによって構成できる。第1膜体18は平面状に形成されている。また、本体部15においては、さらに他のフィルムを積層し、フィンガー部13よりも剛性を高め、供給ポート16(図1、図2参照)を形成している。
【0018】
第1膜体18及び第2膜体19は、シリコーンラバーの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)薄膜によって構成されている。これによりフィンガー部13はPDMSのみで形成されているため全体が柔軟であり、(把持する)対象物の損傷を防止することができる。第1膜体18と第2膜体19はともに伸縮自在なシリコーンラバーによって形成されているため、図3(b)に示しているように、両膜体18,19のうちバルーンアクチュエータ12を構成している部分は、供給された気体の圧力によって風船のようにその表面積を拡げつつ伸びて膨張することができる。なお、図示している空間部20は閉塞空間としている。
【0019】
このバルーンアクチュエータ12では、第1膜体18が、第2膜体19よりも薄く柔らかいため、同じ圧力下でも、第1膜体18は第2膜体19よりも大きく膨張することができる。換言すると、第2膜体19は、第1膜体18よりも厚く硬度が高いため、同じ圧力下では第1膜体18よりも小さく膨張することしかできない。これにより、図3に示しているように、バルーンアクチュエータ12が膨張することによってフィンガー部13は下方への曲がり運動を行うことができる。また、バルーンアクチュエータ12の内圧の変化によって動作量(曲がり角度θ)を自由に変えることができる。
【0020】
そして、このアクチュエータシステムは、バルーンアクチュエータ12に供給される気体の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)と、この圧力センサで検出した圧力値に基づきバルーンアクチュエータ12に供給される流体の圧力を前記レギュレータ32と協同して制御する制御装置33とを備えている。この制御手段33の機能によりバルーンアクチュエータ12の動作量を自在に調整し制御することができる。この制御装置33は、図示しないがマイクロコンピュータ、メモリなどを有するコンピュータから構成することができる。
【0021】
そして図1において、このアクチュエータシステムは、前記バルーンアクチュエータ12の動作状態を検出する動作検出センサ1を更に備えている。動作検出センサ1は、マニピュレータ11に設けられている検出用流路2と、この検出用流路2を通る気体の状態を測定する測定手段3とを備えている。さらに、動作検出センサ1は、コンプレッサ、ポンプ又はボンベなどの動力源7と、この動力源7から検出用流路2へ供給する気体の圧力を調整する調整手段としてのレギュレータ8とを備えている。なお、動力源7、レギュレータ8、及び測定手段3はマニピュレータ11の外部に設けられており、パイプ41を介してこれらはマニピュレータ11と接続されている。
【0022】
検出用流路2はフィンガー部13に設けられており、このフィンガー部13における変形量が大きい関節部14となるバルーンアクチュエータ12部分に設けられている。つまり、検出用流路2は、マニピュレータ11を構成する膜体18,19のうちのバルーンアクチュエータ12部分に設けられており、例えば、第2膜体19に凹溝を形成することによって構成できる。すなわち、検出用流路2はマニピュレータ11に一体として設けられている。検出用流路2は内部に気体(流体)を通すことのできる構成である。
【0023】
図2において、検出用流路2はバルーンアクチュエータ12の空間部20の左右両側にあり、空間部20の一側方にある第1検出用流路2aと、他側方にある第2検出用流路2bとからなる。そして、マニピュレータ11の本体部15にはセンサ用の供給ポート21と排出ポート22とが形成されており、供給ポート21と第1検出用流路2aとが第1連結流路23を介して連通しており、排出ポート22と第2検出用流路2bとが第2連結流路24を介して連通している。さらに、フィンガー部13において空間部20の先端側に第1検出用流路2aと第2検出用流路2bとを連通する第3連結流路25が形成されている。これにより、供給ポート21から排出ポート22までの間に、第1検出用流路2aと第2検出用流路2bとを含む一続きの流路が形成される。したがって、動力源7からの気体は、マニピュレータ11において供給ポート21から流入し、検出用流路2a,2bを通過し排出ポート22から流出する。排出ポート22は大気開放させてもよい。また、動作検出センサ1の動力源7から排出ポート22までの流路は、バルーンアクチュエータ12を動作させるための流路と独立している。
【0024】
第1と第2検出用流路2a,2bは、フィンガー部13の基端部から先端部へ向かう方向に沿って空間部20と並行して設けられている。第1と第2検出用流路2a,2bは空間部20の両側となる位置において膜体18,19間に形成されている。また、第1連結流路23、第2連結流路24、及び第3連結流路25についても膜体18,19の間に形成されており、これら流路についても、第2膜体19に凹溝を形成することによって構成できる。
【0025】
これにより、バルーンアクチュエータ12の曲がり動作に応じて検出用流路2a,2bも曲がる方向に設定されて、当該検出用流路2a,2bは設けられた構成となり、これら検出用流路2a,2bは、バルーンアクチュエータ12の曲がり動作に応じて曲がり変形する。つまり、バルーンアクチュエータ12が膨張することによってフィンガー部13が当該バルーンアクチュエータ12において曲がり変形動作すると、検出用流路2a,2bは同じように曲がり変形し、検出用流路2a,2bの曲がり角度が変化することで、当該検出用流路2a,2bにおける流路抵抗は変化することとなる。すなわち、図3(a)のように直線状にあったバルーンアクチュエータ12が図3(b)のように曲線状となって下向きに変形するのと同じように、検出用流路2a,2bは直線状から曲線状となって下向きに変形し、フィンガー部13のバルーンアクチュエータ12における曲がり角度と、検出用流路2a,2bの曲がり角度とは同じとなる。これにより、検出用流路2a,2bは前記変形により内部を通過させる気体の流路抵抗が変化する。これは、曲がった検出用流路2a,2b内を気体が通る際にエネルギ損失が生じるためであり、このエネルギ損失の要因としては、曲がり部の流れ方向前後部において気体の流れの剥離が生じることが考えられる。このように、検出用流路2a,2bの流路抵抗が変化することで、当該検出用流路2a,2bを通る気体の状態が変化する(例えば流量が変化する)。
【0026】
また、図2において、検出用流路2a,2bのそれぞれは、Uターン部と、このUターン部の気体の流れ方向の前後にそれぞれ連通している直線部とを有している。具体的には、2つのUターン部4a,4bと、3つの直線部5a,5b,5cとを有している。これら直線部5a,5b,5cは空間部20の側方に位置しており、バルーンアクチュエータ12の動作に応じてそれぞれが変形する。このように検出用流路2a,2bのそれぞれを蛇行状とすることで、検出用流路2a,2bのそれぞれにおいて、バルーンアクチュエータ12の動作により流路抵抗が変化する部分を長くできる。これにより、検出用流路2a,2bを通る気体の状態の変化量(例えば流量の変化量)をより一層大きくできる。なお、図4に示しているように、検出用流路2a,2bの変形例として、検出用流路2a,2bにおいてUターン部を有さない構成、つまり、直線状の検出用流路2a,2bとしてもよい。
【0027】
さらに、図示しないが、検出用流路2a,2bのそれぞれにおいて、当該検出用流路2a,2bが曲がることによって内部を流れる気体の剥離が生じる部分に、その剥離を促進できる部分(例えば突起部)を設けるのが好ましい。具体的には、曲がっている検出用流路2a,2bの下流側の径方向内側部、上流側の径方向外径部に、突起部を設けるのが好ましい。これにより、検出用流路2a,2bのそれぞれが曲がることで、流量の変化量をさらに大きくできる。
【0028】
そして、検出用流路2a,2bの流路抵抗が変化することによって、測定手段3が、この流路抵抗の変化による検出用流路2a,2bを通る気体の状態の変化を測定することができ、この測定結果に基づいてバルーンアクチュエータ12の動作を検出できる。具体的には、検出用流路2a,2bの流路抵抗が変化することで、当該検出用流路2a,2bを通る気体の流速、流量、圧力が変化し、測定手段3がこれらの変化を検出することによって、バルーンアクチュエータ12の動作を検出できる。
【0029】
測定手段3について具体的に説明する。なお、この発明では、検出用流路2a,2bに通す気体の圧力、流速、流量の内の一つを一定とする調整手段を備えていればよく、また、測定手段3は、この検出用流路2a,2bに通す気体の圧力、流速、流量の内の他の一つを流体の状態として測定する。つまり測定手段3を圧力計、流速計、流量計とできる。そこで図1の形態においては、調整手段として前記のとおり圧力を一定とするレギュレータ8を備えており、検出用流路2a,2bに対して微小な流量の気体を一定の圧力で供給している。そして、測定手段3によって検出用流路2a,2bに通す気体の流量を測定している。なお、この流量を測定するために流速の測定を行ってもよい。また、測定手段3は流量計3bの他に圧力計3aも有している。さらに、測定手段3は、測定結果を演算する演算手段10と、測定結果、演算手段10のための演算式、及びその演算のための各種データを記憶する記憶手段9とを有している。なお、この検出用流路2a,2bへの気体の供給は微小であるため、バルーンアクチュエータ12の動作への影響はほとんど無い。
【0030】
これにより、検出用流路2a,2bには一定の圧力の気体が供給され、バルーンアクチュエータ12が動作する前であってフィンガー部13が直線状にある状態では、流量計3bの測定値は所定値(基準流量値Q1)で一定のままである。この状態から、バルーンアクチュエータ12が膨張動作しフィンガー部13はバルーンアクチュエータ12において曲がった状態になると、検出用流路2a,2bにおいて流路抵抗が大きくなり、動作検出センサ1全体における流路の流れが阻害され、流量計3bの測定値は基準流量値Q1から減少し、動作時流量値Q2となる。したがって、流量計3bにおいて測定値が減少(Q1からQ2へ減少)することによって、フィンガー部13はバルーンアクチュエータ12において曲がった状態になったことの検出が可能となる。なお、動作の前後において検出用流路2a,2bの断面積は一定である。
【0031】
そして、図5は、前記実施の形態のアクチュエータシステムにおいて、フィンガー部13の曲がり角度(動作量の情報)と、その曲がり角度に応じて生じる検出用流路2a,2bを通る気体の流量の変化率(1−Q2/Q1)との関係を示したものである。なお、この気体の流量は、マニピュレータ11(検出用流路2a,2b)外にある前記流量計3bにおいて測定される値である。そして、この関係についてのデータは測定手段3が備えている前記記憶手段9に記憶されている。図5において、バルーンアクチュエータ12における曲がり角度と、これに応じて生じる流量の変化率(1−Q2/Q1)とは略正比例の関係にある(線形性がある)。これにより、測定手段3の流量計3bが検出用流路2a,2bを通る気体の流量を測定し、流量計3bからの測定情報に基づいて演算手段10がこの流量の変化率を求め、記憶手段9に記憶している前記関係についてのデータ(図5)から、フィンガー部13のバルーンアクチュエータ12における曲がり角度を求めることができる。
【0032】
この図5の関係は、バルーンアクチュエータ12が無負荷で動作した際の情報である。つまり、図3(a)(b)に示しているように、フィンガー部13に対象物が接触しない状態における情報である。また、バルーンアクチュエータ12に供給される気体の圧力Pと、バルーンアクチュエータ12の動作量(膨張量)に依存するフィンガー部13の曲がり角度との間には略正比例の関係がある(線形性がある)。これにより、バルーンアクチュエータ12が無負荷で動作した場合、バルーンアクチュエータ12に供給される気体の圧力Pと、曲がり動作に応じて生じる流量の変化率(1−Q2/Q1)との間についても略正比例の関係を有することとなる。そして、この関係を図7の破線で示している。なお、この気体の圧力Pは、測定手段3の圧力計3aにおいて測定した圧力であり、この圧力Pはバルーンアクチュエータ12の圧力と同じである。
【0033】
そして、測定手段3の記憶手段9は、このバルーンアクチュエータ12が無負荷で動作した際の当該バルーンアクチュエータ12における曲がり角度の情報と、その曲がり角度に応じて生じる検出用流路2a,2bを通る気体の流量の変化率の情報との関係についてのデータを「無負荷時データ」として記憶している。
【0034】
そして、フィンガー部13を所定の曲がり角度θ(図3(b))とすべく、バルーンアクチュエータ12を動作させるための気体の圧力を所定の圧力P1(図7参照)とした場合であっても、図6(b)に示しているように、フィンガー部13が対象物Mに接触し、バルーンアクチュエータ12が負荷を有した状態で動作すると、当該バルーンアクチュエータ12及びフィンガー部13はその動作が制限され、実際の曲がり角度(変形量)が無負荷時よりも小さくなる(θがθ1となる)。これにより、このバルーンアクチュエータ12と共に変形する検出用流路2a,2bの変形量も小さくなり、検出用流路2a,2bにおける流路抵抗の増大が無負荷時よりも小さくなる。これにより、同じ圧力P1で動作させても、負荷を有している場合の気体の流量の変化率(1−Q2/Q1)は、無負荷時よりも減少する(図7の点mから点nに減少する)。
【0035】
すなわち、これを図7によりさらに説明すると、フィンガー部13を所定の曲がり角度θとすべく気体の圧力を所定の圧力P1とした場合において、無負荷時では気体の流量の変化率(1−Q2/Q1)が点mとなるところ、負荷を有することで気体の流量の変化率(1−Q2/Q1)が点nとなる。そして、これは動作検出センサ1の流路における気体の流量(動作時流量値Q2)が変化することとなって表れる。そこで、所定の動作量について動作させるべく気体の圧力を所定の圧力P1とし、バルーンアクチュエータ12が負荷を有して動作する前後の検出用流路2a,2bを通る流体の流量を、流量計3aが測定し、この測定した流体の流量の変化についての情報と、前記「無負荷時データ」において前記所定の動作量(所定の圧力P1)に対応する検出用流路2a,2bを通る流体の流量の変化についての情報との間の変化を、演算手段10が求める。なお、演算手段10が求める前記変化は、流量の変化量、変化率(時間当りの変化の割合)がある。
【0036】
これにより、演算手段10が気体の流量の変化量を求めることで、フィンガー部13(バルーンアクチュエータ12)の動作が無負荷時よりも所定の量について制限されたことを検出でき、その制限量からフィンガー部13の姿勢(バルーンアクチュエータ12における曲がり角度)を検出でき、これに基づいて対象物Mのおおよその大きさを検出できる。さらに、演算手段10が気体の流量の変化率を求めることで、フィンガー部13(バルーンアクチュエータ12)の動作の制限率、つまり、ゆっくりと動作が制限されたのか、迅速に制限されたのかについて検出でき、その制限率から対象物Mのおおまかな硬さを検出できる。つまり、フィンガー部13が同じ制限量について制限されたとしても、当該フィンガー部13の動作がゆっくりと制限されて前記制限量に達したことを検出した場合、対象物Mは変形しにくく比較的硬いものであると判断でき、動作が迅速に制限されて前記制限量に達したことを検出した場合、対象物Mは変形しやすく比較的軟らかいものであると判断できる。
【0037】
そして図8は、演算手段10が気体の流量の変化量及び変化率を求める手段を説明したグラフである。このグラフにおいて、破線は、バルーンアクチュエータ12の気体の圧力を所定の圧力P1とし無負荷状態でフィンガー部13が動作した場合であり、実線は、当該圧力P1により測定開始後5秒から25秒までの間においてフィンガー部13が対象物Mに接触した場合を示している。このグラフの縦軸はフィンガー部13の対象物への接触レベルを示しており、具体的には、検出用流路2a,2bを通る気体の流量の変化率によって表すことができる。この図において、フィンガー部13が対象物Mに接触することで、無負荷と有負荷との間で接触レベルに差が生じ、この接触レベルの大きさ、及び接触レベルの時間変化について演算手段10が検出することによって、フィンガー部13による対象物Mへの接触情報(触覚情報)を検出できる。
【0038】
このように、バルーンアクチュエータ12が負荷を有して所定の動作量について動作した際の検出用流路2a,2bを通る流体の流量を流量計3bが測定し、この測定した情報と、前記「無負荷時データ」において所定の動作量に対応する検出用流路2a,2bを通る流体の流量の情報との間の変化を、演算手段10が求めることによって、処理手段3(演算手段10)は、対象物Mの大きさや硬さなどの接触情報を検出することができる。つまり、動作検出センサ1が備えている流路の流量変化を用いて、動作部であるバルーンアクチュエータ12の動作センシングが可能となる。
【0039】
以上のアクチュエータシステムの実施の形態によれば、気体を利用した駆動源により、バルーンアクチュエータ12を関節部14としてフィンガー部13を駆動させることができる。このマニピュレータ11の大きさは、例えばフィンガー部13の幅が0.5〜1mm程度、長さが3〜10mm程度のいわゆるマイクロフィンガーとすることができ、微小な対象物を取り扱うことができる。このマニピュレータ11は、例えば、ロボットアーム機構の先端などに取り付けたり、体内駆動型の医療機器に用いたりすることができる。また、接触情報(触覚情報)を検出できることから、このマニピュレータ11を医療機器に用いることで触診が可能となる。
【0040】
さらに、この動作検出センサ1によれば、マニピュレータ11を駆動させるための気体を利用して、バルーンアクチュエータ12の動作状態を検出できる。さらに、この実施の形態では、マニピュレータ11の動作部として、内部に気体を供給することで表面の膜体が膨張するバルーンアクチュエータ12としており、そして、この膜体に検出用流路2を形成していることから、バルーンアクチュエータ12を形成する工程において検出用流路2を形成でき、製造工数を低減でき、小型化が図れる。つまり、センサを別途動作部に組み付ける(貼り付ける)必要がない。さらに、バルーンアクチュエータ12を構成する膜体に検出用流路2を形成していることから、検出用流路2を形成するために別の部材が不要となる。さらに、微小な流路のみを形成することで検知部として検出用流路2を構成でき、構造が簡単である。また、検出用流路2aを柔軟な樹脂製やゴム製の当該バルーンアクチュエータ12の膜体に形成しており、バルーンアクチュエータ12と検出用流路2とを一体としていることから、検出用流路2の存在によってバルーンアクチュエータ12の動作は影響を受けにくくできる。つまり、従来のように、動作部に歪みゲージを貼り付けた場合では、この歪みゲージの剛性によってその貼り付け部が硬くなり動作部の動作が阻害されてしまうという問題点があるが、この発明によればこの問題点を防止できる。
【0041】
また、この発明のアクチュエータシステムは、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、前記実施の形態では、動作検出センサ1において、流路を通過させる気体の圧力を一定として気体の流量の変化について測定したが、これ以外に、気体の流速の変化について測定してもよい。この場合、流量を測定する場合と同じ手段によって、マニピュレータ11の動作を検出できる。また、流路を通過させる気体の流量を一定として圧力の変化について測定してもよい。この場合、フィンガー部13の曲がり角度の増大に応じて検出用流路2における流路抵抗が大きくなり、圧力計3aにおける測定圧力が上昇する。これに基づいて、前記同様の手段によりマニピュレータ11の動作を検出できる。また利用する流体を気体以外に液体(水)としてもよい。
【0042】
さらに、前記実施の形態では、動作部としてのバルーンアクチュエータ12が関節として機能することでフィンガー部13が曲がる構成を説明したが、この発明の変形動作する動作部としては、流体又は流体以外によって伸縮動作するアクチュエータであってもよい。図示しないが、この場合であっても、前記と同様の検出用流路をこの動作部に設け、動作部が伸張動作することで検出用流路も伸張し、これにより検出用流路の断面積が縮小され流路抵抗が増加する。逆に動作部が短縮動作することで検出用流路も短縮し、これにより検出用流路の断面積が拡大され流路抵抗が減少する。これによりこの検出用流路を有した流路に一定の圧力の気体を通過させ、その流量などを測定することによって動作部の動作の状態を検出できる。このように、この発明の検出用流路は、動作部の変形動作により、当該検出用流路の断面積、長さ、曲がり角度の少なくとも1つが変化することで、流路抵抗が変化する構成とすればよい。
【0043】
また、この発明の動作検出センサ1を、流体で動作する別の動作部や流体以外で動作する別の動作部に設けてもよい。この場合、図示しないが、一対の膜体間に溝を形成することで前記形態と同様の検出用流路を有したセンサ部を形成し、この検出用流路を通る流体の状態を測定する測定手段を備えた動作検出センサを構成し、前記センサ部を別の変形動作する動作部に取り付ければよい。なお、流体以外で変形動作する別の動作部としては、例えば電動モータによって動作するアームの関節部があり、この機械的な関節部に前記センサ部を取り付ければよい。このように、動作部の変形動作は、アームなどを用いたリンク機構による機械的な関節部のように、曲げ角度が変化してその曲げの状態(姿勢)が変わる動作を含む。
【0044】
さらに、この発明のマニピュレータの他の形態としては、図1のマニピュレータ11のフィンガー部13に、関節部14として複数のバルーンアクチュエータ12を直列に繋ぎ、又は並列に配置してもよく、さらには、このフィンガー部13を複数並列に組み合わせることによって、図9に示しているように人間の手に類似した構造を有し、人間の手の動作に類似した動作を行うことができるものとしてもよい。このマニピュレータは、人の手の親指、人差し指、中指、薬指、小指に相当する5本(複数)のフィンガー部13a,13b,13c,13d,13eを備えている構成となる。フィンガー部13a,13b,13c,13d,13eのそれぞれは各関節部14において屈曲することができ、人の手のように物体の把持などを行うことができる。この場合、フィンガー部13a,13b,13c,13d,13eのそれぞれに、または、いずれかに前記実施形態の動作検出センサを設けることができ、さらには、各関節部14(バルーンアクチュエータ12)に対応させて前記動作検出センサを設けたり、これら関節部14のいずれかに前記動作検出センサ1を設けたりすることができる。また、前記のように直線状のフィンガー部13が一方向に向かって曲がる動作を行う構成以外に、他のマニピュレータとして、一方向、及びこの一方向と異なる方向に動作するものであってもよい。この場合、各方向に対応させて動作検出センサをそれぞれ設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の動作検出センサ、及びこれを備えたアクチュエータシステムの実施の一形態を示す構成図である。
【図2】このアクチュエータシステムが有するマニピュレータを示す平面図である。
【図3】このマニピュレータの動作を説明する側面断面図である。
【図4】動作検出センサが有している検出用流路の変形例を示す平面図である。
【図5】フィンガー部の曲がり角度と、その曲がり角度に応じて生じる検出用流路を通る気体の流量の変化率との関係を示したものである。
【図6】このマニピュレータが対象物に接触した場合を説明する側面断面図である。
【図7】バルーンアクチュエータに供給される気体の圧力と、フィンガー部の曲がり動作に応じて生じる流量の変化率との関係を示すグラフである。
【図8】演算手段が気体の流量の変化を求める手段を説明したグラフである。
【図9】マニピュレータの他の実施の形態を示している斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 動作検出センサ
2 検出用流路
3 測定手段
4a,4b Uターン部
5a,5b,5c 直線部
7 動力源
8 レギュレータ
9 記憶手段
10 演算手段
11 マニピュレータ
12 バルーンアクチュエータ(エアアクチュエータ、動作部)
18 第1膜体
19 第2膜体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形動作する動作部に設けられ当該動作部の変形動作に応じて変形することで通過させる流体の流路抵抗が変化する検出用流路と、
前記流路抵抗の変化による前記検出用流路を通る流体の状態の変化を測定する測定手段と、を備えたことを特徴とする動作検出センサ。
【請求項2】
前記動作部の変形動作により、前記検出用流路の断面積、長さ、曲がり角度の少なくとも1つが変化することで、当該検出用流路における流路抵抗が変化する請求項1に記載の動作検出センサ。
【請求項3】
前記動作部は曲がり動作を行い、この曲がり動作に応じて前記検出用流路も曲がる方向に設定されて当該検出用流路は設けられている請求項1又は2に記載の動作検出センサ。
【請求項4】
前記検出用流路は、Uターン部と、このUターン部の流体の流れ方向の前後にそれぞれ連通している直線部とを有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の動作検出センサ。
【請求項5】
前記測定手段は、前記動作部の動作量の情報と、その動作量に応じて生じる前記検出用流路を通る流体の状態の情報との関係についてのデータを記憶する記憶手段を備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の動作検出センサ。
【請求項6】
前記測定手段は、
前記動作部が無負荷で動作した際の動作量の情報と、その動作量に応じて生じる前記検出用流路を通る流体の状態の情報との関係についての無負荷時データを記憶する記憶手段と、
所定の動作量について動作させるべく前記動作部が負荷を有して動作した際の前記検出用流路を通る流体の状態を測定した情報と、前記無負荷時データにおいて前記所定の動作量に対応する前記検出用流路を通る流体の状態の情報との間の変化を求める演算手段と、
を備えている請求項1〜5のいずれか一項に記載の動作検出センサ。
【請求項7】
前記検出用流路に通す流体の圧力、流速、流量の内の一つを一定とする調整手段をさらに備え、
前記測定手段は、前記検出用流路に通す流体の圧力、流速、流量の内の他の一つを前記流体の状態として測定する請求項1〜6のいずれか一項に記載の動作検出センサ。
【請求項8】
動力源と、この動力源の動力により動作する動作部と、この動作部の動作状態を検出する動作検出センサと、を備え、
前記動作検出センサが、
前記動作部に設けられ当該動作部の動作に応じて変形することで通過させる流体の流路抵抗が変化する検出用流路と、
この検出用流路を通る流体の状態を測定する測定手段と、を有していることを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項9】
前記動作部は、流体の供給によって動作するエアアクチュエータである請求項8に記載のアクチュエータシステム。
【請求項10】
前記エアアクチュエータは内部に流体を供給することで表面の膜体が膨張するバルーンアクチュエータであり、
前記検出用流路は前記膜体に形成されている請求項9に記載のアクチュエータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−46092(P2008−46092A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224502(P2006−224502)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年2月24日 立命館大学主催の「立命館大学大学院総合理工学研究科修士論文公聴会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年5月26日 社団法人 日本機械学会発行の「ロボティクス・メカトロニクス 講演会2006 講演論文集」に発表
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】