説明

動物用耳標RFIDタグ

【課題】 アンテナ素子がダイポールアンテナのRFIDタグを二つ用いても、管理対象の動物の耳や顔などの生体による影響やアンテナ同士の干渉を低減した動物用耳標RFIDタグを提供することを目的とする。
【解決手段】 穴部を有する札部と、この札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記穴部から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記穴部から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、Radio Frequency Identification(以下、RFIDと称す)リーダライタから送信されるコマンド信号を受信し、そのコマンド信号の情報に応じてメモリに格納されているタグ情報の更新・書き込み、又はそのタグ情報をRFIDリーダライタへ読み出し信号として送信するUHF帯及びマイクロ波帯などを使用する電波方式のRFIDシステムに使用されるRFIDタグに関する。特に、動物用耳標にRFIDタグを設けて、牛、豚、羊などの家畜や馬などの動物(以下、管理対象の動物と称す)の耳に固定し、管理対象の動物の個体識別や個体管理を行なう動物用耳標RFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDシステムは、ICチップを備えたRFIDタグとRFIDリーダライタとの間で無線通信を行なうシステムである。RFIDタグには、バッテリーを搭載し、その電力で駆動するアクティブ型タグと、RFIDリーダライタからの電力を受けて、これを電源とし駆動するパッシブ型タグがある。アクティブ型はパッシブ型に比べ、バッテリーを搭載しているため、通信距離、通信の安定度などのメリットがある反面、構造の複雑化、サイズの大型化、高コストなどのデメリットもある。また、近年の半導体技術の向上により、パッシブ型タグ用ICチップの小型化、高性能化が進み、パッシブ型タグの幅広い分野での使用が期待されている。パッシブ型タグにおいて、周波数帯が長波帯、短波帯のRFIDタグで適用されている電磁誘導方式(HF帯が代表的である)では、RFIDリーダライタの送信アンテナコイルとRFIDタグのアンテナコイルとの間の電磁誘導作用でRFIDタグに電圧が誘起され、この電圧によりICチップを起動して通信を可能としている。したがって、RFIDリーダライタによる誘導電磁界内でしかRFIDタグが動作せず、通信距離は数十cm程度となってしまう。
【0003】
また、UHF帯及びマイクロ波帯などの高い周波数帯のRFIDタグでは、電波方式が適用されており、電波によりRFIDタグのICチップに電力を供給しているため、通信距離は1〜7m程度と大幅に向上している。したがって、通信距離の短い長波帯、短波帯のRFIDシステムでは実現が困難であった複数枚のRFIDタグの同時読み取りや移動しているRFIDタグの読み取りなどが可能となる。したがって、その利用範囲は大幅に広がり、動物用耳標RFIDタグへの適用も有益な利用方法の一つと考えられる。
【0004】
従来、動物用耳標には、動物の耳を貫通する雄軸部とこの雄軸部が嵌合される雌軸部とを有し、雄軸部又は雌軸部のいずれか一方に札部や雄軸部と雌軸部との両方に札部が形成されたものがあり(例えば、特許文献1〜10参照)、このような札部にRFIDタグを設け、管理対象の動物の耳に装着して、耳標が装着された動物の個体管理するものがある(例えば、特許文献11〜13参照)。なお、RFIDタグ単体としては、特許文献14〜17などに記載のものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−5820号公報(第18図)
【特許文献2】特開2007−143459号公報(第10図〜第12図)
【特許文献3】特開2005−333924号公報(第3図)
【特許文献4】特開2005−224214号公報(第16図)
【特許文献5】特開2005−58052号公報(第8図、第9図)
【特許文献6】特開2004−344085号公報(第1図、第4図)
【特許文献7】特開2003−70372号公報(第1図)
【特許文献8】特開2000−209975号公報(第3図)
【特許文献9】特開平8−322415号公報(第2図)
【特許文献10】特開平6−327370号公報(第3図)
【特許文献11】特開2003−333950号公報(第8図)
【特許文献12】特開平11−276008号公報(第5図)
【特許文献13】特開2003−189751号公報(第3図)
【特許文献14】特開2006−91964号公報(第1図)
【特許文献15】特開2008−283404号公報(第5図、第6図)
【特許文献16】特開2006−330961号公報(第4図)
【特許文献17】特開2007−221528号公報(第16図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献11や特許文献12においては、RFIDリーダライタ用アンテナ側にRFIDタグ(RFIDタグのアンテナ)が向くように、管理対象の動物にRFIDタグを取り付けていた。具体的には、特許文献11では、管理対象の動物の耳にタグをつけて、管理対象の動物の前側にRFIDリーダライタ用アンテナ側が配置されている。特許文献12では、管理対象の動物の足にタグをつけて、管理対象の動物の下側にRFIDリーダライタ用アンテナ側が配置されている。
【0007】
管理対象の動物の管理区域への入退場管理や給餌の際には、管理対象の動物の前側から個体番号を識別する必要があり、特許文献11のように、動物用耳標RFIDタグを管理対象の動物の耳に装着しておけば、RFIDリーダライタにより個体番号を読み取り識別することができる。しかし、乳の成分や発情を調べる際は、動物の耳の後側や物の耳の下側に作業者が位置し、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタにより管理対象の動物の個体番号を識別する必要な場合があるが、動物用耳標RFIDタグが管理対象の動物の耳に装着されているので、管理対象の動物の耳や顔の生体が影響して、RFIDタグの通信距離が低下してしまうという課題があった。特に、電波方式のRFIDタグは、動物、つまり、生体は水分を含むため、RFIDタグの通信距離が極端に低下してしまうという課題があった。放射パターンが前後に存在するダイポールアンテナをRFIDタグのアンテナ素子に採用しても、管理対象の動物の耳や顔の生体の影響を無視できない。
【0008】
一方、特許文献12のように、RFIDタグを管理対象の動物の足に装着しておけば、乳の成分や発情を調べる際は、動物の耳の後側や物の耳の下側に作業者が位置し、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタにより管理対象の動物の個体番号を識別することが必要な場合でも、管理対象の動物の個体番号を識別することは容易であるが、特許文献11の課題とは逆に、管理対象の動物の前側から個体番号を識別することに対しては、信頼性が低いという課題をあった。他方、特許文献13においては、管理対象の動物に対して、家畜の耳や足などに複数のタグを取り付ける旨の開示があるが、管理対象の動物の複数箇所に動物用耳標RFIDタグやRFIDタグを付けることは管理対象の動物に対するストレスや取り付け作業の増加という課題があった。このような課題を解決するためには、まず、動物の耳を貫通する雄軸部とこの雄軸部が嵌合される雌軸部とを有し、雄軸部又は雌軸部のいずれか一方にRFIDタグが設けられる札部が形成された動物用耳標において、RFIDタグ(ICチップ)を2枚張り合わせたものが有効であると考えられる。そこで、従来のRFIDタグの動物用耳標RFIDタグへの適用を検討する。
【0009】
特許文献14に記載のRFIDタグは、電磁誘導方式のものを張り合わせたもので、アンテナ間に互いの干渉をさけるための層を形成する必要があり、厚みが厚くなってしまう課題や電磁誘導方式のRFIDタグなので通信距離が短いという課題もある。特許文献15に記載のRFIDタグは、電波方式のRFIDタグであり、一般的には通信距離には電磁誘導方式のRFIDタグよりも長いが、ダイポールアンテナを交差させて張り合わせている理由が円偏波を発生させるためであり、上記の課題解決にはならない。特許文献16に記載のRFIDタグは、ICチップを複数使用してはいるが、同一平面にアンテナパターンがあるために、耳標が大型してしまうという問題がある。特許文献16に記載のRFIDタグは、アンテナパターンをICチップが設けられた平面と他の平面に折り返して小型化する手法であり、根本的な問題の解決にはならない。
【0010】
また、動物用耳標RFIDタグのアンテナにダイポールアンテナを採用すると、ダイポールアンテナが近接して2つ存在してしまうので、RFIDタグは自由空間上に他のRFIDタグが存在しない条件下で設計を実施しているため、2つのRFIDタグがお互いのアンテナが結合を起こし、RFIDタグのダイポールアンテナとICチップ(整合回路又は整合線路)とのインピーダンスが不整合を起こす課題もあった。
【0011】
そこで、動物の耳を貫通する雄軸部とこの雄軸部が嵌合される雌軸部とを有し、雄軸部と雌軸部との両方に札部が形成された動物用耳標において、両方の札部にRFIDタグを設けることも対策として挙げられる。しかし、動物用耳標RFIDタグのアンテナにダイポールアンテナを採用しても、ダイポールアンテナ間の距離が十分に取れない場合があり、前述の一つの札部に二つのRFIDタグを設ける場合と同様に、RFIDタグは自由空間上に他のRFIDタグが存在しない条件下で設計を実施しているため、2つのRFIDタグがお互いのアンテナが結合を起こし、RFIDタグのダイポールアンテナとICチップ(整合回路又は整合線路)のインピーダンスが不整合を起こす可能性があるという課題があった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解消するためになされたもので、アンテナ素子がダイポールアンテナのRFIDタグを二つ用いても、管理対象の動物の耳や顔などの生体による影響やアンテナ同士の干渉を低減した動物用耳標RFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、穴部を有する札部と、この札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記穴部から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記穴部から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、動物の耳を貫通することが可能な雄軸部と、この雄軸部が嵌合される雌軸部と、少なくとも前記雄軸部又は前記雌軸部のいずれか一方に形成された札部とを備えた動物用耳標RFIDタグにおいて、前記札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1のダイポールアンテナが、前記札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられ、前記第2のダイポールアンテナが、前記札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられた請求項1又は2に記載のものである。
【0016】
請求項4の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとの間に樹脂層を有する請求項1〜3のいずれかに記載のものである。
【0017】
請求項5の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、第1の穴部を有する第1の札部と、第2の穴部を有する第2の札部と、前記第1の札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記第2の札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと、前記第1の穴部と前記第2の穴部とを係止し、動物の耳を貫通することが可能な係止手段と備え、前記第1の穴部からから前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記第2の穴部から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、動物の耳を貫通することが可能な雄軸部と、この雄軸部が嵌合される雌軸部と、この雌軸部に形成された第1の札部と、前記雄軸部に形成された第2の札部とを備えた動物用耳標RFIDタグにおいて、前記第1の札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記第2の札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1のダイポールアンテナは、前記第1の札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられ、前記第2のダイポールアンテナは、前記第2の札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられた請求項5又は6に記載のものである。
【0020】
請求項8の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1の札部と前記第2の札部とを固定する固定手段を有する請求項5〜7のいずれかに記載のものである。
【0021】
請求項9の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、少なくとも前記第1の角度又は前記第2の角度のいずれか一方が45°又は135°である請求項1〜8のいずれかに記載のものである。
【0022】
請求項10の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、少なくとも前記第1のダイポールアンテナ又は前記第2のダイポールアンテナのいずれか一方のアンテナ素子がメアンダラインである請求項1〜9のいずれかに記載のものである。
【0023】
請求項11の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとのアンテナ素子形状が同一である請求項1〜10のいずれかに記載のものである。
【0024】
請求項12の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1の角度と前記第2の角度との差の絶対値が90°である請求項1〜11のいずれかに記載のものである。
【0025】
請求項13の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1のICチップと前記第2のICチップとが、同じ個体の個体番号が保存される請求項1〜12のいずれかに記載のものである。
【0026】
請求項14の発明に係る動物用耳標RFIDタグは、前記第1のICチップと前記第2のICチップとが、前記同じ個体の個体番号以外の情報を、それぞれ個別に記録・追記及び削除できる請求項13に記載のものである。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、この発明によれば、近接するRFIDタグのアンテナ素子であるダイポールアンテナ同士の干渉を抑え、管理対象の動物の前側と後側とのいずれの方向にRFIDリーダライタ用アンテナがあっても良好な通信が可能な動物用耳標RFIDタグを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの装着模式図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の構成図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグのICチップ拡大図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグに使用するダイポールアンテナ構成図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグによる管理対象の動物の個体識別や個体管理の実行模式図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の構成図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の構成図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグの装着模式図である。
【図14】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグの構成図である。
【図15】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の構成図である。
【図16】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の構成図である。
【図17】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグの構成図である。
【図18】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の構成図である。
【図19】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の構成図である。
【図20】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグの構成図である。
【図21】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを装着した管理対象の動物図である。
【図22】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグを装着した管理対象の動物図である。
【図23】この発明の実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグによる管理対象の動物の個体識別や個体管理の実行模式図である。
【図24】この発明の実施の形態3に係る動物用耳標RFIDタグを装着した管理対象の動物図である。
【図25】この発明の実施の形態3に係る動物用耳標RFIDタグの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図1〜10を用いて説明する。図1(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図1(b)は図1(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図1(c)は図1(a)に係る第1の札部の側面図(図1(a)の矢印方向から見た側面)、図1(d)は図1(a)に係る第1の札部におけるダイポールアンテナの傾きを示す模式図、図2(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図2(b)は図2(a)に係る第1の札部の側面図、図3(a)は動物用耳標RFIDタグの装着前の模式図、図3(b)は動物用耳標RFIDタグの装着後の模式図、図4は実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの構成図であり、図3及び図4(後述の図7)では、管理対象の動物の耳を挟み込むように、前側に第1の札部が取り付けられ、後側に第2の札部が取り付けられている。但し、図3(a)は第1の札部と第2の札部とが取り付けられる前の図である。
【0030】
図5(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図5(b)は図5(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図5(c)は図5(a)に係る第1の札部の側面図(図1(a)の矢印方向から見た側面)、図5(d)は図5(a)に係る第1の札部におけるダイポールアンテナの傾きを示す模式図、図6(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図6(b)は図6(a)に係る第1の札部の側面図、図7は実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの構成図、図8(a)〜(c)は動物用耳標RFIDタグのICチップ拡大図、図9(a)は動物用耳標RFIDタグに使用するダイポールアンテナ構成図、図9(b)は動物用耳標RFIDタグに使用するメアンダラインによるダイポールアンテナ構成図、図10(a)は動物用耳標RFIDタグによる管理対象の動物の個体識別や個体管理の実行模式図、図10(b)は動物用耳標RFIDタグに使用するICチップの構成図である。
【0031】
図1〜10において、1は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部であり、第1の札部1は上部が細くなっている。3は動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部であり、第1の札部1と同様に上部が細くなっている。3は第2の札部2の上部に形成された動物の耳を貫通することが可能な雄軸部、4は第1の札部1の上部に形成され、雄軸部3が嵌合される雌軸部、5は第1のダイポールアンテナ、6は第1のダイポールアンテナ5の給電部である第1の給電部に整合線路(整合回路)を介して、それぞれ接続された第1のICチップ、7は第1のダイポールアンテナ5と第1のICチップ6から構成されるRFIDタグを封止し、第1のダイポールアンテナ5と第1のICチップ6を保護する(耐水性を向上させる)ためのポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)などの樹脂で形成される第1の樹脂ケースである。なお、便宜上、第1のダイポールアンテナ5と第1のICチップ6とから構成されるRFIDタグを第1のRFIDタグ5aと称する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0032】
続いて、図1〜10において、8は第2のダイポールアンテナ、9は第2のダイポールアンテナ8の給電部である第2の給電部に整合線路(整合回路)を介して、それぞれ接続された第2のICチップ、10は第2のダイポールアンテナ8と第2のICチップ9から構成されるRFIDタグを封止し、第2のダイポールアンテナ8と第2のICチップ9を保護する(耐水性を向上させる)ためのポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)などの樹脂で形成される第2の樹脂ケース、11は管理対象の動物の耳、12は動物用耳標RFIDタグにおいて、耳11が配置される空間、13は第1のICチップ6と第1のダイポールアンテナ5とに接続され、第1のICチップ6と第1のダイポールアンテナ5とのインピーダンス整合を取る整合線路、14は第1のダイポールアンテナ5同士を短絡する短絡回路、15はメアンダラインで構成された第1のダイポールアンテナである。なお、便宜上、第2のダイポールアンテナ8と第2のICチップ9とから構成されるRFIDタグを第2のRFIDタグ8aと称する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0033】
さらに、図10(b)において、17はアンテナ部である第1のダイポールアンテナ5又は第2のダイポールアンテナ8が受信したRFIDリーダライタ15からの送信波を後段のディジタル回路に送るアナログ部、18は送信波をA/D変換するA/D変換部、19はアンテナ部8が受信した送信波を整流回路で平滑化し、電力を生成するRFIDタグの各回路に給電および電源制御を行なう電源制御部、20は個体番号などの固体識別情報がタグ情報として格納されたメモリ部、21は送信波を復調する復調部、22は復調部21で復調された送信波によりメモリ部20を含むICチップ(第1のICチップ6又は第2のICチップ9)内の回路を制御する制御部、23は制御部22によりメモリ部20から引き出された情報を変調する変調部、24は復調部21・制御部22・変調部23により構成されるディジタル部、25は変調部から来た信号をD/A変換し、アナログ部17に送るD/A変換部である。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0034】
図1に記載の第1の札部1と図2に記載の第2の札部2とを嵌合させることにより、実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグが構成されている。まず、第1の札部1に関して説明する。図1(a)(c)に示すように、第1の札部1の一主面(管理対象の動物の耳に対向する面)に第1の樹脂ケース7に保護された第1のRFIDタグ5aが貼り付けられている。さらに、第2の樹脂ケース10に保護された第2のRFIDタグ8aが貼り付けられている。第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとの位置関係は、第1のICチップ6と整合線路とが配置された第1の給電部と第2のICチップ9と整合線路とが配置された第2の給電部とが対向するようになっている。第1のダイポールアンテナ5は、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップ6が電気的に接続されたともいえる。同様に、第2のダイポールアンテナ8は、第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップ9が電気的に接続されたともいえる。図1(a)に関して、第2のICチップ9は、第1のICチップ6の後ろ側に配置されており、図面上では見えない。
【0035】
次に、第2の札部2に関して説明する。図2(a)に示すように、第2の札部2の一主面(管理対象の動物の耳に対向する面)にはRFIDタグが貼り付けられていない。第2の札部2には、RFIDタグを設けないので、第2の札部2は、雄軸部3の機能だけを有する構成にしてもよい。その場合は、第1の札部1と第2の札部2という関係ではなく、札部1と雄軸部3という関係になる。この場合の雄軸部3は第2の札部2が無いので、雄軸部3単体で管理対象の動物の耳11から脱落しない形状を有する必要がある。また、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよく、第2の札部2は、雌軸部4の機能だけを有する構成にしてもよい。その場合は、第1の札部1と第2の札部2という関係ではなく、札部1と雌軸部4という関係になる。この場合の雌軸部4は第2の札部2が無いので、雌軸部4単体で管理対象の動物の耳11から脱落しない形状を有する必要がある。
【0036】
第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとは、第1の札部1の一主面に対して反対側の面である他の主面や第1の札部1の内部に形成してもよい。第1の札部1の内部に第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとを形成する場合は、第1の札部1が第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aの保護層になりうるので、第1の樹脂ケース7及び第2の樹脂ケース10を設けなくてもよい。また、第1のRFIDタグ5aと第2のRFID8aとを第1の札部1の内部、一主面、他の主面のいずれかに別々に形成してもよい。例えば、第1のRFIDタグ5aを第1の札部1を一主面に形成し、第2のRFIDタグ8aを第1の札部1を他の主面に形成するなどが考えられる。
【0037】
図3(a)に示すように、第1の札部1と第2の札部2との間に耳11を配置し、雌軸部4に雄軸部3を挿入して互いを嵌合することにより、実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの耳11への装着が完了する。図3(b)及び図4が装着後を示す図面である。図4は図1(c)に第2の札部2が嵌合された状態の図面である。雌軸部4と雄軸部3との嵌合は、耳標装着器を使用することにより簡便に行なうことができる。また、第1の札部1と第2の札部2とを耳11に前後逆に取り付けてもよい。さらに、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよい。なお、雌軸部4は雄軸部3の大部分を覆うような形状をしているが、雌軸部4は、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみ若しくは先鋭部分の周辺を嵌合する形状、つまり、雄軸部3の大部分を覆うような形状でなくてもよい。
【0038】
図3(b)及び図4に示すように、雄軸部3は、耳11を貫通することが可能なものであり、雌軸部4は雄軸部3が嵌合されているものだが、雄軸部3と雌軸部4との形状によっては、雌軸部4のみが耳11を貫通している場合もある。具体的には、「雄軸部3が、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみで形成される」又は「雄軸部3の主要部分が軸部3の先端に形成された先鋭部分」である場合などが考えられる。このような場合でも、便宜上、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸が耳11を貫通しておれば、その状態も、「雄軸部3が耳11を貫通している」又は「雄軸部3は耳11を貫通することが可能」とする。
【0039】
図1(d)に示す直線Aは、平面視において、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部及び第2の給電部の中心に向かう方向を示す。直線Bは、平面視において、第1のダイポールアンテナ5の傾きを示す。直線Cは、平面視において、第2のダイポールアンテナ5の傾きを示し、直線Aと重なっている。ここで、直線Aと直線Bが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部に向かう方向と第1のダイポールアンテナ5の傾きとが成す第1の角度は、90°である。また、直線Aと直線Cが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第2の給電部に向かう方向と第2のダイポールアンテナ8の傾きとが成す第2の角度は、直線Aと直線Cが重なっているので0°である。したがって、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°となっている。これは、図1(d)の平面視において、第1の給電部(第1のICチップ6と整合線路)と第2の給電部(第2のICチップ9と整合線路)とを対向させ、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが90°の角度で交差していることを指す。
【0040】
第1のダイポールアンテナ5の寸法は、所望のアンテナ利得が得られ、第1のダイポールアンテナ5を励振するためにRFIDシステムの使用周波数と第1のICチップ6とのインピーダンスの整合がとれるように調整されている。また、調整には動物用耳標RFIDタグ(第1の札部1)の厚みや誘電率(比誘電率)が大きく関係するので、これらの条件を併せて調整することにより、所望の放射パターンやアンテナ利得を得る。上記調整は、自由空間上で使用することを前提として設計をしているため、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aを交差させると、お互いのアンテナ(第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8)が電気結合を起こし、インピーダンスの不整合が生じ、設計時の特性が出なくなる。しかし、第1の給電部(第1のICチップ6と整合線路)と第2の給電部(第2のICチップ9と整合線路)とを対向させ、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが90°の角度で交差させると、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが干渉しにくいので、それぞれの電界分布に影響が少ない。したがって、ダイポールアンテナは特性上、給電部で電界分布が対称となるが、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とのそれぞれの放射パターンの対称性に与える影響が少なく、通信距離の劣化が小さい動物用耳標RFIDタグを得ることができる。したがって、RFIDリーダライタ16との無線通信が可能となる。また、ダイポールアンテナを適用しているため、前後、上下から読取が可能となるため、管理対象の動物が上下左右に激しく動いている場合や、後側からの送信波を送信されても、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。なお、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8のICチップ及び整合線路よりの部分におけるアンテナパターン同士が平面視で一部重なっていても、大きな問題とはならない。
【0041】
以上、図1に記載の第1の札部1と図2に記載の第2の札部2とを嵌合させることにより、実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグが構成されていることを説明したが、ここで、実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグの変形例を説明する。図5に記載の第1の札部1と図6に記載の第2の札部2とを嵌合させることにより、実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグ(変形例)が構成されている。まず、第1の札部1に関して説明する。図5(a)(c)に示すように、第1の札部1の内部に第1のRFIDタグ5aが形成されている。さらに、第2のRFIDタグ8aが内部に形成されている。第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとの位置関係は、第1のICチップ6と整合線路とが配置された第1の給電部と第2のICチップ9と整合線路とが配置された第2の給電部とが対向するようになっている。第1のダイポールアンテナ5は、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップ6が電気的に接続されたともいえる。同様に、第2のダイポールアンテナ8は、第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップ9が電気的に接続されたともいえる。図5(a)に関して、第2のICチップ9は、第1のICチップ6の後ろ側に配置されており、図面上では見えない。
【0042】
次に、第2の札部2に関して説明する。図6(a)に示すように、第2の札部2の内部にはRFIDタグが形成されていない。第2の札部2には、RFIDタグを設けないので、第2の札部2は、雄軸部3の機能だけを有する構成にしてもよい。その場合は、第1の札部1と第2の札部2という関係ではなく、札部1と雄軸部3という関係になる。この場合の雄軸部3は第2の札部2が無いので、雄軸部3単体で管理対象の動物の耳11から脱落しない形状を有する必要がある。また、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよく、第2の札部2は、雌軸部4の機能だけを有する構成にしてもよい。その場合は、第1の札部1と第2の札部2という関係ではなく、札部1と雌軸部4という関係になる。この場合の雌軸部4は第2の札部2が無いので、雌軸部4単体で管理対象の動物の耳11から脱落しない形状を有する必要がある。
【0043】
第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとは、第1の札部1の一主面や一主面に対して反対側の面である他の主面に形成してもよい。第1の札部1の一主面や他の主面に第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとを形成する場合は、保護層を設けて、RFIDタグを保護して耐環境性を向上させてもよい。例えば、図1に示すような、第1の樹脂ケース7や第2の樹脂ケース10などが考えられる。また、第1のRFIDタグ5aと第2のRFID8aとを第1の札部1の内部、一主面、他の主面のいずれかに別々に形成してもよい。例えば、第1のRFIDタグ5aを第1の札部1を一主面に形成し、第2のRFIDタグ8aを第1の札部1を他の主面に形成するなどが考えられる。
【0044】
図3(a)に示すように、第1の札部1と第2の札部2との間に耳11を配置し、雌軸部4に雄軸部3を挿入して互いを嵌合することにより、実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグ(変形例)の耳11への装着が完了する。図3(b)及び図7が装着後を示す図面である。図7は図5(c)に第2の札部2が嵌合された状態の図面である。雌軸部4と雄軸部3との嵌合は、耳標装着器を使用することにより簡便に行なうことができる。また、第1の札部1と第2の札部2とを耳11に前後逆に取り付けてもよい。さらに、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよい。なお、雌軸部4は雄軸部3の大部分を覆うような形状をしているが、雌軸部4は、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみ若しくは先鋭部分の周辺を嵌合する形状、つまり、雄軸部3の大部分を覆うような形状でなくてもよい。
【0045】
図3(b)及び図7に示すように、雄軸部3は、耳11を貫通することが可能なものであり、雌軸部4は雄軸部3が嵌合されているものだが、雄軸部3と雌軸部4との形状によっては、雌軸部4のみが耳11を貫通している場合もある。具体的には、「雄軸部3が、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみで形成される」又は「雄軸部3の主要部分が軸部3の先端に形成された先鋭部分」である場合などが考えられる。このような場合でも、便宜上、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸が耳11を貫通しておれば、その状態も、「雄軸部3が耳11を貫通している」又は「雄軸部3は耳11を貫通することが可能」とする。
【0046】
図5(d)に示す直線Aは、平面視において、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部及び第2の給電部の中心に向かう方向を示す。直線Bは、平面視において、第1のダイポールアンテナ5の傾きを示す。直線Cは、平面視において、第2のダイポールアンテナ5の傾きを示す。ここで、直線Aと直線Bが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部に向かう方向と第1のダイポールアンテナ5の傾きとが成す第1の角度は、45°である。また、直線Aと直線Cが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第2の給電部に向かう方向と第2のダイポールアンテナ8の傾きとが成す第2の角度は、135°である。したがって、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°となっている。これは、図5(d)の平面視において、第1の給電部(第1のICチップ6と整合線路)と第2の給電部(第2のICチップ9と整合線路)とを対向させ、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが90°の角度で交差していることを指す。
【0047】
図4に記載の動物用耳標RFIDタグ(実施の形態1)と同様に、図7に記載の動物用耳標RFIDタグ(実施の形態1の変形例)において、第1のダイポールアンテナ5の寸法は、第1のダイポールアンテナ5を励振するためにRFIDシステムの使用周波数と第1のICチップ6とのインピーダンスの整合が取れるように調整されている。また、調整には動物用耳標RFIDタグ(第1の札部1)の厚みや誘電率(比誘電率)が大きく関係するので、これらの条件を併せて調整することにより、所望の放射パターンやアンテナ利得を得る。上記調整は、自由空間上で使用することを前提として設計をしているため、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aを単に重ねると、お互いのアンテナ(第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8)が電気結合を起こし、インピーダンスの不整合が生じ、設計時の特性が出なくなる。しかし、第1の給電部(第1のICチップ6と整合線路)と第2の給電部(第2のICチップ9と整合線路)とを対向させ、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが90°の角度で交差させると、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが干渉しにくいので、それぞれの電界分布に影響が少ない。したがって、ダイポールアンテナは特性上、給電部で電界分布が対称となるが、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とのそれぞれの放射パターンの対称性に与える影響が少なく、通信距離の劣化が小さい動物用耳標RFIDタグを得ることができる。したがって、RFIDリーダライタ16との無線通信が可能となる。また、ダイポールアンテナを適用しているため、前後、上下(ダイポールアンテナの放射パターンの許す範囲で)から読取が可能となるため、管理対象の動物が上下左右に激しく動いている場合や、後側からの送信波を送信されても、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。なお、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8のICチップ及び整合線路よりの部分におけるアンテナパターン同士が平面視で一部重なっていても、大きな問題とはならない。
【0048】
なお、実施の形態1及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグにおいて、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°のものを使用して説明したが、お互いのアンテナ(第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8)が電気結合を起こし、インピーダンスの不整合が生じ、設計時の特性が出なくなることを回避するためには、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが平面視で大部分が被らずに交差しておればよいので、第1の角度と第2の角度とが異なる角度、つまり、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が0°以外であればよい。もちろん、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°の場合が、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8との距離が一番離れるので、性能が高いことはいうまでもない。
【0049】
実施の形態1及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグにおいて、第1の札部1(札部1)に雌軸部3や雄軸部4を形成せずに穴部を形成して、その穴部に耳11を貫通することが可能な係止手段を利用して、第1の札部1(札部1)を耳11に装着してもよい。係止手段は、独立した雌軸や雄軸の使用や鋲、ピン、クリップ、紐、結束具(タイラップ)の使用などが考えられる。また、第1の札部1(札部1)の穴部は、雌軸部3や雄軸部4が形成される位置と同じ位置又はその近傍に形成され、図1(d)図5(d)により規定される第1の角度と第2の角度は、穴部から第1の給電部に向かう方向と第1のダイポールアンテナ5の傾きとが成す第1の角度と、穴部から第2の給電部に向かう方向と第2のダイポールアンテナ8の傾きとが成す第2の角度となる。
【0050】
図8〜10を用いて、実施の形態1及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグに使用されるICチップ、ダイポールアンテナのアンテナパターン、RFIDシステムに関して説明する。第1のRFIDタグ5aと第2のRFID8aとの給電部及びその近傍のパターン(アンテナや整合線路)が対向しているために、ICチップの保護、ICチップ同士、アンテナパターン同士や整合線路のパターン同士の接触による不具合の可能性があり、第1のRFIDタグ5a(第1のダイポールアンテナ5)と第2のRFID8a(第2のダイポールアンテナ8)との間に樹脂層を配置することにより、その可能性低減させることができる。第1のRFIDタグ5aと第2のRFID8aとのいずれか一方が樹脂ケース(第1の樹脂ケース7,第2の樹脂ケース11)で覆われている場合や第1のRFIDタグ5aと第2のRFID8aとのいずれか一方が札部(第1の札部1,第2の札部2)の内部に形成されている場合は、樹脂ケースや札部が樹脂層に相当するので、別途樹脂層を設ける必要はない。
【0051】
図8(a)に示すように、第1のICチップ6と第2のICチップ9とが直接対向しない場合は、第1のアンテナパターン5(整合回路)と第2のアンテナパターン8(整合回路)との間に樹脂層を設ければよい。図8(b)に示すように、第1のICチップ6と第2のICチップ9とが対向する場合は、第1のICチップ6と第2のICチップ9とのとの間に樹脂層を設ければよい。また、図8(c)に示すように、第1のICチップ6,第2のICチップ9の周囲を樹脂で封止したものを樹脂層としてもよい。これは、図示してないが、第1のICチップ6と第2のICチップ9とが直接対向しない場合(図8(a))にも適用可能である。
【0052】
図1〜8では、第1のICチップ6と第2のICチップ9とが、それぞれ第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとの中心に位置するものを説明してきたが、ICチップとアンテナとのインピーダンス整合を取るための整合線路(整合回路)の形状によっては、第1のICチップ6と第2のICチップ9とが、それぞれ第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとの中心に位置しないのがある。このようなRFIDタグでも給電部同士を対向させることにより、実施の形態1及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグに使用することが可能である。図9は、この様な場合の例として挙げたRFIDタグである。
【0053】
図9(a)に記載のRFIDタグは、整合線路13以外にアンテナパターン同士を短絡する短絡線路14を有しており、ICチップがRFIDタグの中心に位置しない。さらに、図9(b)に記載のRFIDタグは、アンテナパターンがメアンダラインで構成されているので、アンテナパターンの小型化が実現でき、札部や動物用耳標RFIDタグ自体の寸法に制約条件がある場合に有効である。なお、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとは、同一形状のものを採用した方が、製造コストや前後で得られる放射パターンの対称性で有利な面があるが、前述の札部や動物用耳標RFIDタグ自体の寸法に制約条件がある場合は、異なるRFIDタグを使用してもよい。例えば、第1のRFIDタグ5aに図9(a)に記載のもの、第2のRFIDタグ8aに図9(b)に記載のものを採用するなどが考えられる。なお、ダイポールアンテナが直線状ではないものを使用する場合では、実施の形態1及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグにおける第1の角度や第2の角度は、ダイポールが主に延びている方向を直線的に捉えて設定すればよく、その直線的に捉えたものを図1(d)や図5(d)に示す直線B,Cに当てはめればよい。但し、ダイポールアンテナが極端に蛇行しており、第1の角度と第2の角度をどのように設定しても、第1のアンテナパターン5と第2のアンテナパターン8が動物用耳標RFIDタグとしての所望の動作が得られない程度に干渉してしまうようなアンテナパターンは採用できない。
【0054】
実施の形態1やその変形例では、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが第1の札部1の垂直方向と水平方向に配置されたもの(図1)や第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが第1の札部1の雄軸部3又は雌軸部4(穴部)に対して、45°と135°とに配置されたものを説明したが、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aの配置は、第1の角度と第2の角度との関係が異なる角度であることを満たせば、これらに限るものではない。但し、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが第1の札部1の雄軸部3又は雌軸部4(穴部)に対して、45°と135°とに配置されたものは、図5を見ても分かるように、耳11が密接する第1の札部1の雄軸部3又は雌軸部4(穴部)とアンテナパターンとが遠ざかるので、性能面での優位性が高いことはいうまでもない。
【0055】
最後に、図10を用いて、動物用耳標RFIDタグによる管理対象の動物の個体識別や個体管理の実行と第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aの詳細を説明する。図10(b)において、RFIDシステムを利用する用途(個体識別や個体管理など)に合わせて、それらのタグ情報がRFIDタグ6のメモリ部20に格納されており、RFIDリーダライタ16は、自身の送受信エリア内にRFIDタグ6が(管理の対象である動物に貼り付けられて)存在又は移動しているときにタグ情報の更新・書き込み、又は読み取りを行なうことができる。RFIDリーダライタ16は、更新・書き込み、又は読み取り等をRFIDタグ6に命令するコマンド信号を送信波としてRFIDリーダライタ16のアンテナ部からRFIDタグ6へ送信する。RFIDタグ6のアンテナ部8が送信波を受信し、送信波は電源制御回路11により検波・蓄電(平滑化)され、RFIDタグ6の動作電源を生成し、RFIDタグ6の各回路に動作電源を供給する。また、送信波は復調部21によりコマンド信号が復調される。復調されたコマンド信号の命令内容から制御部22がデータ処理し、メモリ部20へタグ情報の更新・書き込みと読み取りとのいずれか一方、又は両方の指示を行い、この制御部22の指示によりメモリ部20が出力した読み取り信号が変調部23により変調された返信波がアナログ部17を経由してアンテナ部8からRFIDリーダライタ16のアンテナ部に送信され、RFIDリーダライタ16が読み取り信号を受信して、所望の情報を得る。
【0056】
ここで、図10(a)を用いて、実施の形態1及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグの基本的な動作を用いて説明すると、第1の札部1と第2の札部とが管理対象の動物の耳11を挟み込むように装着されて構成された動物用耳標RFIDタグがあり、管理対象の動物の前後に、それぞれRFIDリーダライタ16(RFIDリーダライタ用アンテナ)が設置されている。管理対象の動物の管理区域への入退場管理や給餌の際には、管理対象の動物の前側に設置されたRFIDリーダライタ16から質問波を動物用耳標RFIDタグに送信し、送信波に基づき、動物用耳標RFIDタグがRFIDリーダライタ16へ返信波を送信することにより、RFIDリーダライタにより管理対象の動物の個体番号を読み取り識別することができる。乳の成分や発情を調べる際は、動物の耳の後側や物の耳の下側に作業者が位置し、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタ(RFIDリーダライタ16)にから質問波を動物用耳標RFIDタグに送信し、送信波に基づき、動物用耳標RFIDタグがRFIDリーダライタ16へ返信波を送信することにより、RFIDリーダライタにより管理対象の動物の個体番号を読み取り識別することができる。このように、前後、上下(ダイポールアンテナの放射パターンが許す範囲で)からの読取が可能となるため、管理対象の動物やその耳11が上下左右に激しく動いている場合や、後側からの送信波が送信されても、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。
【0057】
以下、便宜上、第1のICチップ6と第2のICチップ9とには、同じ個体(管理対象の動物)の個体番号が、第1のICチップ6のメモリ部20と第2のICチップ9のメモリ部20とに保存されていることを前提に説明を行なうが、それぞれのメモリ部20に同じ個体番号を保存せずに、それぞれ別個のIDが保存されている場合でも、RFIDリーダライタ16若しくはRFIDリーダライタ16と有線又は無線で接続された管理サーバ(データベース)、つまりシステム上で、その別個のIDが同じ個体であると設定しておけば、第1のICチップ6と第2のICチップ9自体に、同じ個体の個体番号を保存する必要はない。言い換えると、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが同じ個体の識別に使用できればよい。したがって、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとに保存されているIDやデータが管理対象の動物の個体番号と一切関係が無くてもシステム上で、ある管理対象に貼り付けられているRFIDタグが、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aであることが分かればよい。また、このようにした場合は、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとの再利用や交換が容易となる。
【0058】
管理対象の動物の管理区域への入退場管理や給餌の際には、管理対象の動物の前側に設置されたRFIDリーダライタ16から質問波が動物用耳標RFIDタグに送信され、第1のICチップ6と第2のICチップ9のいずれか一方若しくは両方に保存された個体番号の情報が返信波に乗せられて、動物用耳標RFIDタグから管理対象の動物の前側に設置されたRFIDリーダライタ16に送られる。もちろん、管理対象の動物の前側に設置されたRFIDリーダライタ16に返信波を返す可能性が高いRFIDタグは、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aのうち、管理対象の動物の前側に設置されたRFIDリーダライタ16に距離が近い方であることはいうまでもない。実際は、RFIDリーダライタ16との距離が近接していない限りは、RFIDリーダライタ16に距離が近い方のRFIDタグ(第1のRFIDタグ5a又は第2のRFIDタグ8a)から返信波が返信される。したがって、RFIDリーダライタ16により管理対象の動物の個体番号を読み取り識別することができる。
【0059】
同様に、乳の成分や発情を調べる際は、動物の耳の後側や物の耳の下側に作業者が位置し、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタ(RFIDリーダライタ16)にから質問波が動物用耳標RFIDタグに送信され、第1のICチップ6と第2のICチップ9のいずれか一方若しくは両方に保存された個体番号の情報が返信波に乗せられて、動物用耳標RFIDタグから管理対象の動物の前側に設置されたRFIDリーダライタ16に送られる。もちろん、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタ(RFIDリーダライタ16)に返信波を返す可能性が高いRFIDタグは、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aのうち、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタ(RFIDリーダライタ16)に距離が近い方であることはいうまでもない。実際は、RFIDリーダライタ16との距離が近接していない限りは、RFIDリーダライタ16に距離が近い方のRFIDタグ(第1のRFIDタグ5a又は第2のRFIDタグ8a)から返信波が返信される。したがって、RFIDリーダライタ16により管理対象の動物の個体番号を読み取り識別することができる。
【0060】
また、動物用耳標タグにより、単に管理対象の動物の個体情報を得るだけでなく、入退場管理や給餌の履歴や乳の成分や発情の履歴情報(以下、単に履歴情報と称す)を管理したい場合は、RFIDリーダライタ16が得た動物用耳標タグからの固体情報と履歴情報とを紐付けて、RFIDリーダライタ16側若しくはRFIDリーダライタ16と有線又は無線で接続された管理サーバ(データベース)側で管理すればよい。しかし、このような動物用耳標タグを用いた動物管理システムのように、RFIDリーダライタ16や管理サーバ(データベース)側でなく、動物用耳標タグに履歴情報を保存する動物用耳標タグを用いた動物管理システムを構築したい場合は、動物用耳標タグが有する第1のICチップ6,第2のICチップ9のメモリ部20それぞれに個別に履歴情報を記録・追記及び削除すればよい。
【0061】
次段落以降で具体的な説明を行なう。そこでは、RFIDリーダライタ16が第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aの両方と通信可能な距離に配置させ、第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aと無線通信を行なうことを前提に話を進める。しかし、仮に、RFIDリーダライタ16が第1のRFIDタグ5aと通信可能な距離で、第2のRFIDタグ8aと通信困難な距離に配置されている場合でも、第1のRFIDタグ5aのメモリ部20に保存された履歴情報などの情報を記録・追記及び削除が完了して、RFIDリーダライタ16と第2のRFIDタグ8aとの相対的な位置が第2のRFIDタグ8aと通信可能な距離に変わり、RFIDリーダライタ16によって、第2のRFIDタグ8aのメモリ部20に保存された履歴情報などの情報を記録・追記及び削除を実行しようとする前までに、別のRFIDリーダライタによって、第2のRFIDタグ8aのメモリ部20に保存された履歴情報などの情報を記録・追記及び削除されないことが保証されておれば、RFIDリーダライタ16を第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aの両方と通信可能な距離に配置する必要はない。
【0062】
前段落の記載を前提にして、具体的に説明すると、第1のICチップ6と第2のICチップ9とのメモリ部20は、独立しており、片方のメモリ部20に履歴情報が記録・追記されたり削除されたりしても、もう片方のメモリ部20には、記録・追記も削除もされない。そこで、履歴情報をメモリ部20に記録・追記又は削除する際に、その履歴情報が得られた時間情報、つまり、入退場管理や給餌の履歴や乳の成分や発情の履歴が記録された時間情報(以下、単に時間情報と称す)を履歴情報の記録・追記又は削除に合わせて、メモリ部20に記録・追記すればよい。仮に、第1のICチップ6のメモリ部20に時間情報Aと紐付けられた履歴情報αが保存されており、第2のICチップ9とのメモリ部20に時間情報Aよりもあとの時間である時間情報Bと紐付けられた履歴情報βが保存されている場合は、RFIDリーダライタ16を第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aの両方と通信可能な距離で、第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aと無線通信を行い、時間情報Aと時間情報Bとのうち、あとの時間である方の時間情報Bと紐付けられた履歴情報βの履歴が最新であると判断できる。なお、時間情報は、時計機能を有するような構成をRFIDリーダライタ16又は管理サーバ(データベース)に形成すれば容易に得られる。また、時間情報を履歴情報に組み込んで合わせて履歴情報として運用してもよい。
【0063】
時間情報から第1のICチップ6と第2のICチップ9とのメモリ部20のうち、最新の履歴情報を有しているほうが分かるとしたが、さらに、第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aの両方と通信可能な距離にあるRFIDリーダライタ16を利用して、第1のICチップ6と第2のICチップ9とのメモリ部20に保存されている情報を統合、片方の情報に統一するようにしてもよい。具体的には、前述のように、第1のICチップ6のメモリ部20に時間情報Aと紐付けられた履歴情報αが保存されており、第2のICチップ9とのメモリ部20に時間情報Aよりもあとの時間である時間情報Bと紐付けられた履歴情報βが保存されているとき、情報を統合する場合は、第1のICチップ6のメモリ部20には、時間情報Bと履歴情報βとを追記し、第2のICチップ9のメモリ部20には、時間情報Aと履歴情報αとを追記する。その結果、第1のICチップ6と第2のICチップ9との両方のメモリ部20が時間情報A及びB,履歴情報α及びβが保存される。片方の情報に統一する場合、特に、最新の情報に統一する場合は、第1のICチップ6のメモリ部20から時間情報Aと履歴情報αとを削除し、時間情報Bと履歴情報βとを追記する。削除と追記の動作に関して順序は問わない。第2のICチップ9のメモリ部20に記録された情報は最新であるので、そのままにしておく。なお、情報を統合する場合及び最新の情報に統一する場合の両方においても、これらの処理が行われたことを「情報統一」化情報(以下、統一化情報と称す)として、第1のICチップ6のメモリ部20と第2のICチップ9のメモリ部20との両方に記録・追記すれば、さらに、管理対象の動物の個体識別や個体管理が精度の高いものとなる。
【0064】
実施の形態2.
実施の形態1では、第1の札部1又は第2の札部2のいずれかに二枚のRFIDタグを形成したものを説明してきたが、図3に示すように実施の形態1に係る動物用耳標RFIDタグが、耳11と被さる領域が比較的少ない場合は良好な性能が得られるが、耳11と被さる領域が多くなればなるほど、性能が低下してしまう可能性がある。そこで、実施の形態2では、第1の札部1及び第2の札部2の両方にRFIDタグを形成した動物用耳標RFIDタグを説明する。第1の札部1及び第2の札部2の両方にRFIDタグを形成した以外の基本的な構成や図9などのダイポールアンテナのアンテナパターンやICチップの配置などは、実施の形態1と共通なので、実施の形態2では説明を省略する。
【0065】
この発明の実施の形態2について図11〜23を用いて説明する。図11(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図11(b)は図11(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図11(c)は図11(a)に係る第1の札部におけるダイポールアンテナの傾きを示す模式図、図12(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図12(b)は図12(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図13(a)は動物用耳標RFIDタグの装着前の模式図、図13(b)は動物用耳標RFIDタグの装着後の模式図、図14(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部及び第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面から第1の札部を見た図であり、第1の札部の図示を省略している)、図14(b)は図14(a)に係る第1の札部及び第2の札部の側面図(図14(a)の矢印方向から見た側面)である。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0066】
図15(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図15(b)は図15(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図15(c)は図15(a)に係る第1の札部におけるダイポールアンテナの傾きを示す模式図、図16(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図16(b)は図16(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図17(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部及び第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面から第1の札部を見た図であり、第1の札部の図示を省略している)、図17(b)は図17(a)に係る第1の札部及び第2の札部の側面図(図17(a)の矢印方向から見た側面)である。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0067】
図18(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図18(b)は図18(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図18(c)は図18(a)に係る第1の札部におけるダイポールアンテナの傾きを示す模式図、図19(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面)、図19(b)は図19(a)に係る第1の札部の側面図(ダイポールアンテナやICチップは図示していない)、図20(a)は動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部及び第2の札部の正面図(管理対象の動物の耳に対向する面から第1の札部を見た図であり、第1の札部の図示を省略している)、図20(b)は図20(a)に係る第1の札部及び第2の札部の側面図(図20(a)の矢印方向から見た側面)、図13及び、図14,図17、図20では、管理対象の動物の耳を挟み込むように、前側に第1の札部が取り付けられ、後側に第2の札部が取り付けられている。但し、図3(a)は第1の札部と第2の札部とが取り付けられる前の図である。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0068】
図11に記載の第1の札部1と図12に記載の第2の札部2とを嵌合させることにより、実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグが構成されている。まず、第1の札部1に関して説明する。図11(a)(c)に示すように、第1の札部1の一主面(管理対象の動物の耳に対向する面)に第1の樹脂ケース7に保護された第1のRFIDタグ5aが貼り付けられている。第1のダイポールアンテナ5は、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップ6が電気的に接続されている。次に、第2の札部2に関して説明する。図12(a)に示すように、第2の札部2の一主面(管理対象の動物の耳に対向する面)に第2の樹脂ケース11に保護された第8のRFIDタグ8aが貼り付けられている。第2のダイポールアンテナ8は、第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップ9が電気的に接続されている。なお、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよい。
【0069】
第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとは、第1の札部1と第2の札部2の一主面に対して反対側の面である他の主面や第1の札部1と第2の札部2との内部のいずれかに形成してもよい。第1の札部1の内部に第1のRFIDタグ5aを形成し、第2の札部2の内部に第2のRFIDタグ8aを形成する場合は、札部が第1のRFIDタグ5a及び第2のRFIDタグ8aの保護層になりうるので、第1の樹脂ケース7及び第2の樹脂ケース10を設けなくてもよい。これは、図15〜図17に記載のものが対応する。図15が図11、図16が図12、図17が図14に対応し、RFIDタグの形成箇所や樹脂ケースの有無以外は同一の構成となる。
【0070】
図13(a)に示すように、第1の札部1と第2の札部2との間に耳11を配置し、雌軸部4に雄軸部3を挿入して互いを嵌合することにより、実施の形態12係る動物用耳標RFIDタグの耳11への装着が完了する。図13(b)及び図14(図17)が装着後を示す図面である。図14は図11(c)に第2の札部2が嵌合された状態の図面である。雌軸部4と雄軸部3との嵌合は、耳標装着器を使用することにより簡便に行なうことができる。また、第1の札部1と第2の札部2とを耳11に前後逆に取り付けてもよい。さらに、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよい。なお、雌軸部4は雄軸部3の大部分を覆うような形状をしているが、雌軸部4は、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみ若しくは先鋭部分の周辺を嵌合する形状、つまり、雄軸部3の大部分を覆うような形状でなくてもよい。第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとの位置関係は、第1のICチップ6と整合線路とが配置された第1の給電部と第2のICチップ9と整合線路とが配置された第2の給電部とが対向するようになっている。
【0071】
図13(b)及び図14(図17)に示すように、雄軸部3は、耳11を貫通することが可能なものであり、雌軸部4は雄軸部3が嵌合されているものだが、雄軸部3と雌軸部4との形状によっては、雌軸部4のみが耳11を貫通している場合もある。具体的には、「雄軸部3が、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみで形成される」又は「雄軸部3の主要部分が軸部3の先端に形成された先鋭部分」である場合などが考えられる。このような場合でも、便宜上、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸が耳11を貫通しておれば、その状態も、「雄軸部3が耳11を貫通している」又は「雄軸部3は耳11を貫通することが可能」とする。
【0072】
図11(c)及び図15(c)に示す直線Aは、平面視において、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部の中心に向かう方向を示す。直線Bは、平面視において、第1のダイポールアンテナ5の傾きを示す。直線Aと直線Bが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部に向かう方向と第1のダイポールアンテナ5の傾きとが成す第1の角度は、90°である。また、図12(a)及び図16(a)に示す第2のダイポールアンテナ8は、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第2の給電部の中心に向かう方向と傾きが一致している。つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第2の給電部に向かう方向と第2のダイポールアンテナ8の傾きとが成す第2の角度は、0°である。したがって、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°となっている。これは、図11(c)及び図12(a)の平面視において、第1の給電部(第1のICチップ6と整合線路)と第2の給電部(第2のICチップ9と整合線路)とを対向させ、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが90°の角度で交差していることを指す。図14(図17)がその状態を示した図である。したがって、RFIDリーダライタ16との無線通信が可能となる。また、平面視でダイポールアンテナ同士が交差(90°)しているため、実施の形態1と同様に、前後、上下(ダイポールアンテナの放射パターンの許す範囲で)から読取が可能となるため、管理対象の動物が上下左右に激しく動いている場合や、後側からの送信波を送信されても、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。
【0073】
以上、図11(図15)に記載の第1の札部1と図12(図16)に記載の第2の札部2とを嵌合させることにより、実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグが構成されていることを説明したが、ここで、実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグの変形例を説明する。図18に記載の第1の札部1と図19に記載の第2の札部2とを嵌合させることにより、実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグ(変形例)が構成されている。まず、第1の札部1に関して説明する。図18(a)(c)に示すように、第1の札部1の内部に第1のRFIDタグ5aが形成されておる。第1のダイポールアンテナ5は、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップ6が電気的に接続されている。次に、第2の札部2に関して説明する。図19(a)に示すように、第2の札部2の内部に第8のRFIDタグ8aが形成されている。第2のダイポールアンテナ8は、第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップ9が電気的に接続されている。なお、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよい。第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとは、第1の札部1と第2の札部2の一主面や一主面に対して反対側の面である他の主面のいずれかに形成してもよい。
【0074】
図13(a)に示すように、第1の札部1と第2の札部2との間に耳11を配置し、雌軸部4に雄軸部3を挿入して互いを嵌合することにより、実施の形態2に係る動物用耳標RFIDタグ(変形例)の耳11への装着が完了する。図13(b)及び図20が装着後を示す図面である。雌軸部4と雄軸部3との嵌合は、耳標装着器を使用することにより簡便に行なうことができる。また、第1の札部1と第2の札部2とを耳11に前後逆に取り付けてもよい。さらに、第1の札部1に雄軸部3を形成し、第2の札部2に雌軸部4を形成して第1の札部1と第2の札部2とを嵌合させてもよい。なお、雌軸部4は雄軸部3の大部分を覆うような形状をしているが、雌軸部4は、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみ若しくは先鋭部分の周辺を嵌合する形状、つまり、雄軸部3の大部分を覆うような形状でなくてもよい。
【0075】
図13(b)及び図20に示すように、雄軸部3は、耳11を貫通することが可能なものであり、雌軸部4は雄軸部3が嵌合されているものだが、雄軸部3と雌軸部4との形状によっては、雌軸部4のみが耳11を貫通している場合もある。具体的には、「雄軸部3が、雄軸部3の先端に形成された先鋭部分のみで形成される」又は「雄軸部3の主要部分が軸部3の先端に形成された先鋭部分」である場合などが考えられる。このような場合でも、便宜上、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸が耳11を貫通しておれば、その状態も、「雄軸部3が耳11を貫通している」又は「雄軸部3は耳11を貫通することが可能」とする。
【0076】
図18(c)に示す直線Aは、平面視において、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部の中心に向かう方向を示す。直線Bは、平面視において、第1のダイポールアンテナ5の傾きを示す。ここで、直線Aと直線Bが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第1の給電部に向かう方向と第1のダイポールアンテナ5の傾きとが成す第1の角度は、135°である。図19(c)に示す直線Aは、平面視において、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第2の給電部の中心に向かう方向を示す。直線Bは、平面視において、第2のダイポールアンテナ8の傾きを示す。ここで、直線Aと直線Bが成す角度、つまり、雄軸部3と雌軸部4とが嵌合して成す軸から第2の給電部に向かう方向と第2のダイポールアンテナ8の傾きとが成す第2の角度は、45°である。したがって、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°となっている。これは、図20(a)の平面視において、第1の給電部(第1のICチップ6と整合線路)と第2の給電部(第2のICチップ9と整合線路)とを対向させ、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが90°の角度で交差していることを指す。図20がその状態を示した図である。したがって、RFIDリーダライタ16との無線通信が可能となる。また、平面視でダイポールアンテナ同士が交差(90°)しているため、実施の形態1と同様に、前後、上下(ダイポールアンテナの放射パターンの許す範囲で)から読取が可能となるため、管理対象の動物が上下左右に激しく動いている場合や、後側からの送信波を送信されても、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。
【0077】
なお、実施の形態1と同様に実施の形態2及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグにおいて、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°のものを使用して説明したが、お互いのアンテナ(第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8)が電気結合を起こし、インピーダンスの不整合が生じ、設計時の特性が出なくなることを回避するためには、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8とが平面視で大部分が被らずに交差しておればよいので、第1の角度と第2の角度とが異なる角度、つまり、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が0°以外であればよい。もちろん、第1の角度と第2の角度との差の絶対値が90°の場合が、第1のダイポールアンテナ5と第2のダイポールアンテナ8との距離が一番離れるので、性能が高いことはいうまでもない。
【0078】
実施の形態2及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグにおいて、第1の札部1及び第2の札部2に雌軸部3や雄軸部4を形成せずに穴部を形成して、その穴部に耳11を貫通することが可能な係止手段を利用して、第1の札部1(札部1)を耳11に装着してもよい。具体的には、第1の札部1に第1の穴部を形成し、第2の札部2に第2の穴部を形成する。第1の札部1(第1の穴部)と第2の札部2(第2の穴部)との係止手段は、独立した雌軸や雄軸の使用や鋲、ピン、クリップ、紐、結束具(タイラップ)の使用などが考えられる。また、第1の穴部や第2の穴部は、雌軸部3や雄軸部4が形成される位置と同じ位置又はその近傍に形成され、雌軸部3や雄軸部4により規定される第1の角度と第2の角度は、穴部から第1の給電部に向かう方向と第1のダイポールアンテナ5の傾きとが成す第1の角度と、穴部から第2の給電部に向かう方向と第2のダイポールアンテナ8の傾きとが成す第2の角度となる。
【0079】
実施の形態2やその変形例では、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが第1の札部1の水平方向と第2の札部2の垂直方向とに配置されたもの(図14、図17)や第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが雄軸部3又は雌軸部4(穴部)に対して、135°(第1の札部1)と45°(第2の札部2)とに配置されたものを説明したが、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aの配置は、第1の角度と第2の角度との関係が異なる角度であることを満たせば、これらに限るものではない。但し、第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aとが第1の札部1の雄軸部3又は雌軸部4(穴部)に対して、135°と45°とに配置されたものは、図13を見ても分かるように、耳11が密接する第1の札部1の雄軸部3又は雌軸部4(第1の穴部)及び第2の札部2の雄軸部3又は雌軸部4(第2の穴部)とアンテナパターンとが遠ざかるので、性能面での優位性が高いことはいうまでもない。
【0080】
最後に、図21〜23を用いて、動物用耳標RFIDタグによる管理対象の動物の個体識別や個体管理の実行と第1のRFIDタグ5aと第2のRFIDタグ8aの詳細を説明する。図21〜23において、26は管理対象の動物であり、その耳11に実施の形態2およびその変形例に係る動物用耳標RFIDタグが装着されている。図21では管理対象の動物26の正面を示しており、動物用耳標RFIDタグの第1の札部1が耳11状に装着されている様子が分かる。図21に示す管理対象の動物26の頭部を側面から見た図が図22である。図22には、さらに点線で囲われた耳11の周辺部分を拡大した図も記載しており、どのように動物用耳標RFIDタグを構成する第1の札部1と第2の札部2とが耳11に装着されているかが分かる。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。
【0081】
ここで、図23を用いて、実施の形態2及びその変形例に係る動物用耳標RFIDタグの基本的な動作を用いて説明すると、第1の札部1と第2の札部とが管理対象の動物の耳11を挟み込むように装着されて構成された動物用耳標RFIDタグがあり、管理対象の動物26の前後に、それぞれRFIDリーダライタ16(RFIDリーダライタ用アンテナ)が設置されている。管理対象の動物26の管理区域への入退場管理や給餌の際には、管理対象の動物26の前側に設置されたRFIDリーダライタ16(図23では左側のRFIDリーダライタ16)から質問波を動物用耳標RFIDタグに送信し、送信波に基づき、動物用耳標RFIDタグがRFIDリーダライタ16へ返信波を送信することにより、RFIDリーダライタにより管理対象の動物の個体番号を読み取り識別することができる。乳の成分や発情を調べる際は、動物の耳の後側や物の耳の下側に作業者が位置し、作業者が操作するハンディタイプのリーダライタ(図23では右側のRFIDリーダライタ16)にから質問波を動物用耳標RFIDタグに送信し、送信波に基づき、動物用耳標RFIDタグがRFIDリーダライタ16へ返信波を送信することにより、RFIDリーダライタにより管理対象の動物の個体番号を読み取り識別することができる。
【0082】
このように、前後、上下(ダイポールアンテナの放射パターンが許す範囲で)からの読取が可能となるため、管理対象の動物やその耳11が上下左右に激しく動いている場合や、後側からの送信波が送信されても、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。また、実施の形態1と異なり、実施の形態2係る動物用牛耳RFIDタグは、耳11と被さる領域が多い場合でも、第1の札部1及び第2の札部2の両方にRFIDタグを形成したので、さらに、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能である。なお、第1のICチップ6と第2のICチップ9とには、同じ個体(管理対象の動物)の個体番号が、それぞれのメモリ部20に保存することにより、実施の形態1で説明した、同じ個体の個体番号を使用した「動物用耳標タグを用いた動物管理システム」と同じ個体の個体番号に以外に、さらに別の情報(履歴情報、時間情報、統一化情報など)を加えて、第1のICチップ6と第2のICチップ9にそれぞれ個別に記録・追記及び削除して行なう「動物用耳標タグを用いた動物管理システム」を実現できる。詳細は、実施の形態1で説明したので省略する。
【0083】
実施の形態3.
実施の形態2では、第1の札部1及び第2の札部2の両方にRFIDタグを形成したので、さらに、通信距離の劣化を極力少なくし、無線通信することが可能であると、説明したが、これは、第1の角度と第2の角度が設定した通りの相互関係で第1の札部1と第2の札部2とが耳11に装着されている状態が維持できた場合であり、雄軸部3と雌軸部4との固定が弱く、第1の札部1と第2の札部2とが装着した段階と異なる位置関係、つまり、第1の札部1と第2の札部2とが、ずれると所望の性能が得られない場合がある。しかし、それを避けるために、第1の札部1と第2の札部2とを強固に耳11に固定すると、管理対象の動物にストレスを与えてしまう可能性がある。実施の形態3では、この対策について説明する。もちろん、第1の札部1と第2の札部2とが多少ずれたとしても、第1のアンテナパターン5と第2のアンテナパターン8が動物用耳標RFIDタグとしての所望の動作が得られない程度に干渉しなれば問題がないことはいうまでもない。
【0084】
この発明の実施の形態3について図24及び25を用いて説明する。図24及び図25において、27は第1の札部1と第2の札部2とを固定する固定手段、27aは固定手段27の一例である固定用雌軸部、27bは固定手段27の一例である固定用紐、27cは固定手段27の一例である固定用結束具である。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。図24に示すように、固定手段27とは、第1の札部1と第2の札部2と耳11に装着する係止手段である雌軸(雌軸部4)及び雄軸(雄軸部3)、鋲、ピン、クリップ、紐、結束具(タイラップ)などとは別の部材である。図25には固定手段27の具体例を示している。
【0085】
図25(a)は、固定手段27に係止手段と同種の雌軸(雌軸部4)及び雄軸(雄軸部3)を採用したものである。図25(a)は嵌合後を示した図であるので、固定用雌軸部27aのみが見えており、固定用雄軸部は固定用雌軸部27a内に嵌合されて見えない。図25(b)は固定手段27である固定用雌軸部27a及び固定用雄軸部も耳11を貫通している場合を示している。つまり、耳11には二箇所に雌軸(雌軸部4)及び雄軸(雄軸部3)が貫通していることと同等になる。
【0086】
図25(c)(d)は、固定手段27に固定用紐27b、固定用結束具27c(タイラップ)を採用したものである。第1のアンテナパターン5と第2のアンテナパターン8が干渉して動物用耳標RFIDタグとしての所望の動作が得られない範囲にまで、第1の札部1と第2の札部2とがずれなければ多少ずれてもよいので、固定手段27は、結ぶことで固定する固定用紐27b、固定用結束具27cなどの固定用雌軸部27aよりも固定の度合いが弱いものでもよい。また、固定用紐27bや固定用結束具27cであれば、第1の札部1と第2の札部2との位置関係の再調整が容易であるという効果も奏するので、管理対象の動物26の成長に合わせた対応ができる。また、固定手段27は、鋲、ピン、クリップなどでもよい。さらに、固定手段27は、図24及び図25では、動物用耳標RFIDタグの下部に設けたものを示しているが、動物用耳標RFIDタグの動作を著しく妨げるような配置でない限り、固定手段27の設ける位置に特に制限はない。
【符号の説明】
【0087】
1・・第1の札部、2・・第2の札部、3・・雄軸部、4・・雌軸部、5・・第1のダイポールアンテナ、5a・・第1のRFIDタグ、6・・第1のICチップ、7・・第1の樹脂ケース、8・・第2のダイポールアンテナ、8a・・第2のRFIDタグ、9・・第2のICチップ、10・・第2の樹脂ケース、11・・耳、12・・空間、13・・整合線路、14・・短絡線路、15・・第1のダイポールアンテナ(メアンダライン)、16・・RFIDリーダライタ、17・・アナログ部、18・・A/D変換部、19・・電源制御部、20・・メモリ部、21・・復調部、22・・制御部、23・・変調部、25・・D/A変換部、26・・管理対象の動物、27・・固定手段、27a・・固定用雌軸部、27b・・固定用紐、27c・・固定用結束具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部を有する札部と、この札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記穴部から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記穴部から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とする動物用耳標RFIDタグ。
【請求項2】
動物の耳を貫通することが可能な雄軸部と、この雄軸部が嵌合される雌軸部と、少なくとも前記雄軸部又は前記雌軸部のいずれか一方に形成された札部とを備えた動物用耳標RFIDタグにおいて、前記札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とする動物用耳標RFIDタグ。
【請求項3】
前記第1のダイポールアンテナは、前記札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられ、前記第2のダイポールアンテナは、前記札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられた請求項1又は2に記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項4】
前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとの間に樹脂層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項5】
第1の穴部を有する第1の札部と、第2の穴部を有する第2の札部と、前記第1の札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記第2の札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと、前記第1の穴部と前記第2の穴部とを係止し、動物の耳を貫通することが可能な係止手段と備え、前記第1の穴部からから前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記第2の穴部から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とする動物用耳標RFIDタグ。
【請求項6】
動物の耳を貫通することが可能な雄軸部と、この雄軸部が嵌合される雌軸部と、この雌軸部に形成された第1の札部と、前記雄軸部に形成された第2の札部とを備えた動物用耳標RFIDタグにおいて、前記第1の札部に設けられ、第1の給電部に第1の整合線路を介して第1のICチップが電気的に接続された第1のダイポールアンテナと、前記第1の給電部に第2の給電部を対向させ、前記第2の札部に設けられ、前記第2の給電部に第2の整合線路を介して第2のICチップが電気的に接続された第2のダイポールアンテナと備え、前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第1の給電部に向かう方向と前記第1のダイポールアンテナの傾きとが成す第1の角度及び前記雄軸部と前記雌軸部とが嵌合して成す軸から前記第2の給電部に向かう方向と前記第2のダイポールアンテナの傾きとが成す第2の角度が異なる角度であることを特徴とする動物用耳標RFIDタグ。
【請求項7】
前記第1のダイポールアンテナは、前記第1の札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられ、前記第2のダイポールアンテナは、前記第2の札部の内部、一主面、他の主面のいずれかに設けられた請求項5又は6に記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項8】
前記第1の札部と前記第2の札部とを固定する固定手段を有する請求項5〜7のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項9】
少なくとも前記第1の角度又は前記第2の角度のいずれか一方が45°又は135°である請求項1〜8のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項10】
少なくとも前記第1のダイポールアンテナ又は前記第2のダイポールアンテナのいずれか一方のアンテナ素子がメアンダラインである請求項1〜9のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項11】
前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとのアンテナ素子形状が同一である請求項1〜10のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項12】
前記第1の角度と前記第2の角度との差の絶対値が90°である請求項1〜11のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項13】
前記第1のICチップと前記第2のICチップとは、同じ個体の個体番号が保存される請求項1〜12のいずれかに記載の動物用耳標RFIDタグ。
【請求項14】
前記第1のICチップと前記第2のICチップとは、前記同じ個体の個体番号以外の情報を、それぞれ個別に記録・追記及び削除できる請求項13に記載の動物用耳標RFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−161959(P2010−161959A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5674(P2009−5674)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】