説明

包装体

【課題】 包装体が切断し易い材料で形成されていたとしても、所定の力をかけなければ、切断されることのない包装体の提供。
【解決手段】 溶着層を有する熱溶着性シートどうしを向い合わせてその縁端から位置ずれさせた位置でヒートシールをしてヒートシール部を設けることで該ヒートシール部の内側に収納部を形成し、包装体の縁端からヒートシール部に向けて、該ヒートシール部に至らない長さを有して包装体の切断を補助する補助スリットが複数形成されるとともに、これら補助スリットを設けた領域に、補助スリットが切断開始部として残存するようにヒートシールされた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤等を包装する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や薬剤等の内容物を包装する包装体として、例えば特許文献1に示すものがある。近年、プラスチックフィルムと紙等の素材とを積層したフィルムは軽量であって且つ気密性に優れるといったことから、汎用されている。しかしながら、上記フィルムからなる包装体では、素材の有する長所が、包装体を開封するにあたって逆に引き裂き抵抗となり、開封しにくいという問題を提起している。そこで、上記特許文献1では、包装体の端縁部にフィルムを貫通しない傷痕と貫通孔とを形成しうるような粒度分布をもった砥粒で砥面を形成したロールを押付けて粗面加工を施し、フィルムに貫通しない傷痕と貫通孔とが混在する易カット性部分を形成し、次いでフィルムをラミネート加工するようにしている。これによって包装体の端縁部に切断開始部を形成し、包装体を開封し易いようにしている。
【特許文献1】特許第3056842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、包装体を形成するフィルムの材料によっては、切断開始部から容易に包装体が切断されてしまう場合がある。このような場合、包装体に収納(封入)されている収納物によっては、その収納物が飛び散ってしまうことになる。特に、収納物が散剤等の粉状のものであると、その薬剤を正しい処方量だけ服用できなくなることもあった。
【0004】
そこで本発明は、包装体が切断し易い材料で形成されていたとしても、所定の力をかけなければ、切断されることのない包装体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の包装体は、基材と該基材に積層された溶着層を有する熱溶着性シートどうしの該溶着層を向い合わせてヒートシールをしたヒートシール部を設けることで該ヒートシール部の内側に収納部を形成し、包装体の縁端からヒートシール部に向けて、該ヒートシール部に至らない長さを有して包装体の切断を補助する補助スリットが複数形成されるとともに、これら補助スリットを設けた領域に、補助スリットが切断開始部として残存するようにヒートシールされていることを特徴としている。
【0006】
ここで、切断開始部として残存するとは、ヒートシールによって、ひとつのスリットにおいてその一部が繋がった状態、ヒートシールによって、ひとつのスリットにおいて全部が繋がった状態の双方を含むものとする。しかしながら、ヒートシールによってスリットの全部が繋がるよう復帰した状態となったとしても、それは、一般的には熱溶着性シートが切断前の状態に完全に復帰することにはならず、脆弱な部分として残ることになる。
【0007】
上記構成のように、補助スリットがヒートシールされていることにより、手指では極めて容易には切断しにくい切断開始部として残存するようになり、仮に熱溶着性シート(切断開始部)に切断され易い材料を用いていたとしても、補助スリットがヒートシールによる加工分だけ強くなっているから、完全な切れ目である補助スリットのみを形成した場合に比べてせん断強度が増加しており、その分だけ切断しにくくなる。よって、包装体が不測に切断されてしまうという状態を回避することが可能になる。もって、収納部に収納されている収納物が不測にこぼれてしまうという状態を回避することが可能となる。
【0008】
本発明の包装体は、基材と該基材に積層された溶着層を有する熱溶着性シートどうしの該溶着層を向い合わせてその縁端から位置ずれさせた位置でヒートシールをしたヒートシール部を設けることで該ヒートシール部の内側に収納部を形成し、包装体の縁端からヒートシール部に向けて、該ヒートシール部に至らない長さを有して包装体の切断を補助する補助スリットが複数形成されるとともに、これら補助スリットを設けた領域に、補助スリットが切断開始部として残存するようにヒートシールされていることを特徴としている。
【0009】
上記構成のように、補助スリットがヒートシールされていることにより、手指では極めて容易には切断しにくい切断開始部として残存するようになり、仮に熱溶着性シート(切断開始部)に切断され易い材料を用いていたとしても、補助スリットがヒートシールによる加工分だけ強くなっているから、完全な切れ目である補助スリットのみを形成した場合に比べてせん断強度が増加しており、その分だけ切断しにくくなる。そして、ヒートシール部を縁端から位置ずれさせていることで、縁端からヒートシール部まで容易に切断が可能で、その後切断部がヒートシール部に至るようになる。したがって、包装体が不測に切断されてしまうという状態を回避することが可能になる。もって、収納部に収納されている収納物が不測にこぼれてしまうという状態を回避することが可能となる。
【0010】
本発明の包装体は、補助スリットの少なくとも縁端部が残存するようにヒートシールが施されていることを特徴としている。
【0011】
補助スリットの少なくとも縁端部が完全な切れ目として残存していれば、そこを目安として切断し易くなる。しかしながら、切断開始部にヒートシールが施されていることで、手指では極めて容易には切断しにくいせん断強さも保持することになって、不測に切断される状態を回避することが可能となる。
【0012】
本発明の包装体では、補助スリットは、縁端の全域に亙って配置されていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、包装体の縁端の任意の位置から切断を開始することが可能となる。
【0014】
本発明の包装体は、上記何れかの包装体を分包袋として、この分包袋が連続して形成されていることを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、包装体を分包袋として、連続した包装体となって、多くの包装体を確保することができる。
【0016】
本発明の包装体は、熱溶着性シートの基材として、グラシン紙またはセロファンが用いられており、溶着層としてポリエチレンが用いられていることを特徴としている。
【0017】
グラシン紙やセロファンは、あるいはポリエチレンは一般的にせん断抵抗が小さい。しかしながら、ヒートシールを施すことによりその分だけせん断抵抗が高くなっているから、その分だけ手指の力では開封しにくくなる。
【0018】
本発明の包装体では、収納部には、薬剤が収納されることを特徴としている。
【0019】
収納部に散薬等の薬剤を収納しているような場合に、不測に開封されることがないから、収納物が不測にこぼれてしまうといった状態を回避することができる。もって、薬剤の服用者は、正しい処方量の薬剤を服用することができる。
【0020】
本発明の包装体の製造方法では、上記何れかの包装体が、補助スリットを形成した後に、補助スリットが形成されている領域をヒートシールすることを特徴としている。
【0021】
このようにすることにより、極めて容易には切断されないせん断力、すなわち適度な手指のせん断力で切断が可能となる切断開始部を有する包装体を製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の包装体によれば、補助スリットがヒートシールされていることにより、手指のせん断力では極めて容易には切断しにくい切断開始部として残存するようになり、熱溶着性シートに切断され易い材料を用いていたとしても、ヒートシールによる加工分だけ強くなっているから、補助スリットのみを形成した場合に比べてせん断強度が増加し、その分だけ切断しにくくなる。よって、包装体が不測に切断されてしまうという状態を回避することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る包装体を、薬剤包装体を例に図面に基づいて説明する。図1は薬剤包装体を製造するための薬剤分包装置の構造を示す概略斜視図、図2は薬剤包装体の正面図および要部拡大図、図3は薬剤包装体の構造を示す縦断面図、図4は薬剤包装体を製造する際の薬剤分包装置の要部拡大斜視図、図5はヒートシール装置の概略平面図である。
【0024】
本発明の実施形態に係る薬剤包装体2は、熱溶着性シートである矩形長尺の分包紙3を二つ折りして巻回することでロール体4とし、このロール体4から繰出されて製造されるものである。
【0025】
薬剤包装体2を構成する分包紙3は、基材3aとこの基材3aの片面に積層された熱融着層3bからなっている。分包紙3は、熱融着層3bどうしが対向するよう熱溶着性シートを長さ方向に沿って折られているものである。分包紙3の対向するシート片部10,11の外側縁部10a,11aの外端辺10b,11bどうしが一致するよう中心で二つ折りされて重なっている状態で、ロール体4となっている。
【0026】
例えば前記基材3aとして、気密性や強度に優れるグラシン紙、セロファン等が用いられ、熱融着層3bとしてポリエチレン等が用いられている。
【0027】
薬剤包装体2は、多数の薬剤包装体2の連続体として構成される。ここでは、便宜上、二つの連続する薬剤包装体2どうしについて説明する。二つの連続する薬剤包装体2は、ミシン目51を介して一包ずつに分断されるようになっている。すなわちこのミシン目51は、二つの薬剤包装体2の長さ方向(繰出し方向)中心位置に、長さ方向に直交する方向に、薬剤包装体2の外側縁部10a,11aの外端辺(縁端)10b,11bを除く全幅に亙って形成されている。
【0028】
ミシン目51と外端辺10b,11bとで囲まれる領域内に下側解放コ字形のヒートシール部47が形成されている。これによって分包紙3の三方向がヒートシールされてヒートシール部47で囲まれる薬剤収納部(収納部)3cが形成される。このヒートシール部47は、第一ヒートシール部分45と、一対の第二ヒートシール部分46とを有する。第一ヒートシール部分45は、外端辺10b,11bに沿い、且つ外端辺10b,11bから分包紙3の折目側に位置ずれして形成されている。第二ヒートシール部分46は第一ヒートシール部分45の長さ方向両端部から下方に向かって(ミシン目51と平行に)分包紙3の折目まで亙るよう形成されている。
【0029】
分包紙3には、ロール体4の状態で予め切断目(補助スリット)40aが形成されている。切断目40aは外端辺10b,11bから第一ヒートシール部分45に向けて形成されるものである。切断目40aは外端辺10b,11bの長さ方向全域に亙って、且つ隣合う切断目40aどうしは、長さ方向に短い間隔を置いて配置されることで、外端辺10b,11bに多数形成されている。
【0030】
薬剤包装体2の外側縁部10a,11aに、外端辺10b,11bの縁からヒートシール部47の第一ヒートシール部分45の上端縁45aに至るまで、上下方向に沿う切断目(切断用スリット)40が形成されている。この切断目40は、薬剤包装体2の長さ方向一方寄りにひとつ形成されている。
【0031】
なお、前記切断目40aは、切断目40に平行に形成されて、切断目40に比べて極端に短く設定されていることで、第一ヒートシール部分45には至らないものである。
【0032】
これら切断目40aが形成されている外端辺10b,11bには、該切断目40aを含む領域に、帯状のヒートシールHが施されている。このヒートシールHは、切断目40aの熱融着層3bにおけるスリットを完全に復帰させて溶着させてしまうものではない。
【0033】
すなわち、切断目40aを設けた領域がヒートシールHされていることにより、手指では極めて容易には切断しにくい切断開始部として残存するようになっており、仮に熱溶着性シートに切断され易い材料を用いていたとしても、切断目40aがヒートシールHによる加工分だけ強くなっているから、切断目40aとして完全な切れ目であるスリットのみを形成した場合に比べてせん断強度が増加していて、その分だけ切断しにくくなっている。
【0034】
このような分包紙3を連続した薬剤包装体2とするために、薬剤分包装置1が用いられる。薬剤分包装置1は、ロール体4を支持する支持部5と、ロール体4から分包紙3を繰り出す駆動部7と、薬剤8を所定量毎に分配し且つ所定量毎の薬剤8を下方に供給する薬剤分配装置9と、薬剤分配装置9から供給された薬剤8をロール体4から繰り出された分包紙3が折り畳まれた後に該分包紙3のシート片部10,11間に薬剤8を投入するための投入部(薬剤供給装置)12と、折り畳まれた分包紙3に対してヒートシールを行うヒートシール装置13とを備えている。図中の符号15は、ヒートシール装置13を覆う保護カバーを示す。
【0035】
ここで、薬剤分包装置1における各部材の概略構成について説明する。支持部5は、ロール体4を軸線回り回転自在に支持するもので、好ましくは、支持部5は中空筒状の紙管19を有する。ロール体4は、紙管19の外周面に巻き回されてなる。支持部5は、紙管19を軸線回り相対回転自在に支持し得るように構成される。
【0036】
支持部5を、軸線回りに回転自在とされた支持軸とし、該支持軸回りに直接に長尺の熱溶着性シートを巻き回すことも可能である。支持部5には、ブレーキ機構等の分包紙搬送制御機構を備えることができ、必要及び/又は所望により、分包紙の搬送停止又は搬送速度制御を行えるように構成し得る。
【0037】
駆動部7は、ロール体4から分包紙3を繰り出し得る限り種々の構成を採用し得る。本実施の形態においては、駆動部7は、図4に示すように、ヒートシール装置13の分包紙3搬送方向後流側に配設された一対の駆動ローラ20,21を備えている。
【0038】
案内部8は、ロール体4から繰り出される分包紙3を投入部12等の後続する各部材へ向けて案内するように構成されている。具体的には、該案内部8は、分包紙3の搬送方向に沿って配設された複数のガイドバー22を備えている。
【0039】
投入部12は、上端開口及び下端開口を有する中空状のホッパー7a,7bを備えている(図4においては、ホッパー7bのみを図示している)。ホッパー7bの上端開口は、処方箋に基づき、自動又は手動で分配され且つ供給される薬剤8を受け入れ得るようになっている。ホッパー7bの下端開口は、分包紙3のシート片部10,11の間に挿入される。薬剤8は、処方箋に基づき自動又は手動で供給される。
【0040】
ヒートシール装置13は、分包紙3に対し投入部12によって収納された薬剤8を薬剤収納部3cに密封して薬剤包装体2とするように分包紙3を熱融着するヒートシール部材23を備えている。本実施の形態においては、該ヒートシール部材23は、2つ折りにされた分包紙3のシート片部10,11どうしを熱融着すべく三叉状に形成されたヒータ台25と、分包紙3を挟んでヒータ台25に対向配置されたヒータ受け台26とを備えている。ヒータ台25およびヒータ受け台26は、分包紙3の紙面に直交する方向へ移動可能に構成されている。
【0041】
ヒートシールを行う際には、ヒータ台25およびヒータ受け台26が互いに近接する方向へ移動し、ヒータ台25およびヒータ受け台26によって挟圧される分包紙3の熱溶着面(熱融着層3b)どうしをヒートシールするものである。
【0042】
ヒータ台25は、分包紙3の流れ方向に延び、且つ分包紙3を個々に仕切るための幅シール部27と、この幅シール部27の上端から分包紙3の流れ方向下流側に沿って延び、分包紙3の外側縁部10a,11a間である上方開口部3cを閉塞するための第一シール部28と、幅シール部27の上端から下流側に、分包紙3の流れ方向下流側に沿って延び、分包紙3の上方開口部3cを閉塞するための第二シール部30とからなり、正面視略T字形(三叉状)に形成されている。
【0043】
第一シール部28と第二シール部30とはその長さが異なっており、第一シール部28は第二シール部30よりも長く形成されている。なお、ヒータ受け台26は、ヒータ台25に鏡像的に重なるように、ヒータ台25と略同一形状に形成して配置されている。
【0044】
ヒータ台25は、両端がリード線を介して不図示の電源に接続された発熱体31(例えば電熱線等)を有し、この発熱体31はヒータ台25に埋設されている。すなわち発熱体31は、ヒータ台25の形状に沿ってT字状(三叉状)に形成されており、この発熱体31は、ヒータ台25の第一シール部28、幅シール部27、第二シール部30に亙るように配置されている。すなわち発熱体31は、ヒータ台25の第一シール部28に埋設される第一発熱部35と、この第一発熱部35から幅シール部27に延び幅シール部27で反転するU字形の湾曲発熱部36と、この湾曲発熱部36から第二シール部30に延びる第二発熱部37とを有する。
【0045】
第一シール部28の下流側に、上方に向けて折曲げ延長された立上げ部38が一体に設けられ、該立上げ部38を切断目40を形成する切断目形成部材としている。第一発熱部35および第二発熱部37は同一平面内にあり、ヒータ台25の上面25bから分包紙3の薬剤収納部3c側に相当する方向である方向、すなわち下方に位置ずれして配置されているとともに上面25bに沿って配置されている。
【0046】
さらに発熱体31は、前記切断目40aが形成されている外端辺10b,11bに、該切断目40aを含む領域に対して帯状のヒートシールHをするための第三発熱部Haを備える。この第三発熱体Haは、第一シール部28、第二シール部30に亙って埋設されるものである。その配置位置は、切断目40aが形成されている位置に対応して、切断目40aを上下方向に含むように加熱可能なものである。
【0047】
前記立上げ部28は角柱状に形成されており、その前面25aに、薬剤包装体2に前記切断目40を形成するための押圧片41が形成されている。
【0048】
押圧片41は、立上げ部38の前面に配置されている。押圧片41は、その先端に縦方向の刃部41aを有し、全体として例えば先端ほど薄くなる平面視三角形に形成されている。
【0049】
図4に示すように、ヒータ受け台26は、立上げ部38に対向する位置に突出部26Aを有し、突出部26Aの押圧片41に対応する個所に、押圧片41とともに切断目40を形成するための受け凹部43を有する。ヒータ台25とヒータ受け台26とは、押圧片41、受け凹部43以外の部分は、挟圧用の平面25d,26dとされ、これら平面25d,26dでもって分包紙3を挟圧する。なお、押圧片41の先端の刃部41aは挟圧用の平面25dに対してヒータ受け台26側へ突出している。また挿入隙間43は、平面26dに対して凹となっている。
【0050】
上記構成の薬剤分包装置1において、駆動部7の駆動力によってロール体4から繰り出された分包紙3は、ヒートシール装置13に至る前に、予め熱融着層3bどうしが対向するよう長さ方向に沿って幅方向中心で折られている。したがって、分包紙3をロール体4から繰り出している途中で折り曲げる必要がなく、例えば折り畳みガイド等の部材を必要とせず、折り畳みガイド等を必要としない分だけ薬剤分包装置1の構成は簡素化されている。
【0051】
分包紙3はその繰出し途中位置に配置した投入部12のホッパー7bから薬剤8が投入される。その後、ヒートシール装置13によってヒートシールされることで繰出し方向に沿う第一ヒートシール部分45と、第一ヒートシール部分45の両側から下方に向かう上下方向の第二ヒートシール部分46とからなる下側開放コ字形のヒートシール部47が形成される。加熱された発熱体31の熱によって、分包紙3のシート片部10,11の熱融着層3bどうしが上下流方向(長さ方向)に所定間隔置きに熱融着され、薬剤8を薬剤収納部3cに内包して連続した薬剤包装体2が製造されるものである。
【0052】
さらに、駆動部7の駆動力によってロール体4から繰り出された分包紙3は、ヒートシール装置13の上記動作とともに、発熱体31の第三発熱部Haによって、切断目40aが形成されている外端辺10b,11bが順次ヒートシールHされることになる。但し、第三発熱部Haによる分包紙3の加熱は、ヒートシール部47の熱量に比べて小さいものが好ましく、熱融着層3bのスリットを完全に復帰させてしまうものではない程度が好ましい。
【0053】
分包紙3はヒータ台25とヒータ受け台26との挟圧用の平面25d,26dで挟圧されるとき、第一シール部28に押圧片41が配置され、ヒータ受け台26の押圧片41に対応する個所に、受け凹部43が形成されているから、分包紙3のシート片部10,11の外側縁部10a,11aに、縦方向の切断目40が切り込むように形成される。このような切断目40は、第一ヒートシール部分45の上端縁45aに至る。
【0054】
第一シール部28は第二シール部30よりも短く形成されているから、切断目40は、薬剤包装体2の長さ方向中心から一方側(この場合、下流側)に偏心した位置に形成される。なお、上記のような連続した薬剤包装体2において隣合う第二ヒートシール部分46,46の間には、ミシン目51が上下方向(幅方向)全域に亙って形成されており、ミシン目51は、薬剤包装体2を製造する途中で形成される。
【0055】
上記のようにして製造された薬剤包装体2はミシン目51を例えば手指で切断してひとつひとつの薬剤包装体2に容易に分割することができる。
【0056】
ひとつの薬剤包装体2に収納された薬剤8は、薬剤包装体2を切断(開封)して服用される。このとき、薬剤包装体2には上記のような切断目40があるから、この切断目40から薬剤包装体2の切断を開始することで、薬剤包装体2を容易に切断して薬剤収納部3c内の薬剤8を服用することができる。
【0057】
しかしながら、薬剤8の服用者としては、必ずしも切断目40から開封を開始するとは限らない。それは、例えば、この種の薬剤包装体2を製造するための熱溶着性シートは、薬剤8が見てとれるよう透明である(透光性を有する)ことが一般的である。このような透明なシートに切断目40を形成してもその切断目40を見つけにくい場合があるからである。
【0058】
このため、薬剤包装体2には切断目40とは別に、切断目40aを多数形成している。すなわち服用者は、切断目40aから薬剤包装体2の開封を開始することがある。しかしながら、切断目40aは第一ヒートシール部分45には至っていない。このとき、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等を基材3aとした分包紙3では切断目40aがあっても切断しにくい。
【0059】
一方、セロファンやグラシン紙を基材3aとし、ポリエチレンを熱融着層3bとした熱溶着性シートで製造した分包紙3は、手指で切断するのには、容易になる。したがって、このような小さなせん断力で切断されてしまう材料を用いて分包紙3が形成されている場合、スリットである切断目40や切断目40aのみを形成していたなら、薬剤包装体2がその部分から容易に切断されてしまう不測の事態が生じ、このような場合は、薬剤8がこぼれてしまうことがある。
【0060】
しかしながら、この薬剤包装体2では、切断目40a(切断目40)が形成されている外端辺10b,11bがヒートシールHされているから、分包紙3が小さなせん断力で切断されてしまうような材料で形成されていても、手指の力で極めて容易に切断するのが可能な状態は抑えている。このように、ある程度の手指の力でないと切断できないようになっているから、特に熱融着層3bがポリエチレンのような、小さなせん断力で切断されてしまうような材料で形成されていても、不測に薬剤包装体2が切断されてしまうという状態を回避している。したがってそのために薬剤8が不用意にこぼれてしまうという事態を回避することができる。
【0061】
そして、分包紙3の外側縁部10a,11aを切断目40から、あるいは切断目40aから切断すれば、薬剤包装体2の切断を所望の位置で開封するこができるようになる。したがって、薬剤包装体2が不測の位置で切断されるのを防止し、薬剤8がこぼれるようなこともなく、薬剤収納部3c内の薬剤8を確実に、決められた量だけ服用することができる。
【0062】
図6および図7に別の実施形態を示す。図6は薬剤包装体の正面図、図7は同じく薬剤包装体の構造を示す縦断面図である。上記実施形態では、ヒートシール部47(第一ヒートシール部分45)は、外端辺10b,11bから分包紙3の折目側に位置ずれして形成しているものであるが、この実施形態では当該位置ずれはさせていない。すなわち、ヒートシール部47として、第一ヒートシール部分45と、第二ヒートシール部分46とを有する点については上記実施形態と同様である。しかしながら、第一ヒートシール部分45は、外端辺10b,11bに沿い、且つシート片部10,11の外側縁部10a,11aに帯状に形成されている。
【0063】
第二ヒートシール部分46は、第一ヒートシール部分45の途中から分包紙3の折目に向けて、且つ折目まで一体に延長されている。第二ヒートシール部分46の薬剤包装体2の長さ方向(繰出し方向)中心位置に、且つ長さ方向に直交する方向に、薬剤包装体2の外側縁部10a,11aの外端辺(縁端)10b,11bを除く全幅に亙ってミシン目51が形成されている。この構成により熱溶着性シートである矩形長尺の分包紙3を薬剤包装体2として、ヒートシール部47で囲まれる薬剤収納部(収納部)3cが形成される。
【0064】
上記のように、分包紙3には、ロール体4の状態で予め切断目40aが外端辺10b,11bに形成されている。これら切断目40aは、第一ヒートシール部分45を施すことでヒートシールされている。しかしながら、第一ヒートシール部分45は切断目40aの熱融着層3bにおける切断目(スリット)40aを完全に復帰させて溶着させてしまうものではない。
【0065】
上記構成の分包紙3では、切断目40aを設けた領域がヒートシールされていることにより、手指では極めて容易には切断しにくい切断開始部として残存するようになっている。したがって、仮に熱溶着性シートに切断され易い材料を用いていたとしても、切断目40aがヒートシールによる加工分だけ強くなっているから、切断目40aとして完全な切れ目であるスリットのみを形成した場合に比べてせん断強度が増加していて、その分だけ切断しにくくなっている。
【0066】
また、この実施形態における分包紙3では、ヒートシール部47(第一ヒートシール部分45)は、外端辺10b,11bから分包紙3の折目側に位置ずれさせていない。したがって分包紙3の製造の際には、上記実施形態に示したような、特別に第三発熱部Haを設けたヒートシール装置13の構成とする必要がない。
【0067】
なお、上記実施形態では切断目40を形成している例を示したが、これは必ずしも必要としない。あるいは、ヒートシールHはヒートシール部47と同時に形成したが、これに限定されるものではなく、特別にヒートシールHを行うためのヒートシール装着を別に設けて行うことも可能である。
【0068】
さらに、上記実施形態における包装体は、薬剤包装体2を例に説明したが、本発明の包装体は、収納部(薬剤収納部3c)に、薬剤ではなく、食品、小物類、粉末、ペースト等を封入した包装体としても適用できる。これらの場合でも、上記実施形態と同様、手指の力で極めて容易に切断するのが可能な状態は抑え、ある程度の手指の力でないと切断できないようになっているから、包装体が不測に切断されてしまうのを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態を示す薬剤包装体を製造するための薬剤分包装置の構造を示す概略斜視図
【図2】同じく薬剤包装体の正面図および要部拡大図
【図3】同じく薬剤包装体の構造を示す縦断面図
【図4】同じく薬剤包装体を製造する際の薬剤分包装置の要部拡大斜視図
【図5】同じくヒートシール装置の概略平面図
【図6】別の実施形態を示す薬剤包装体の正面図
【図7】同じく薬剤包装体の構造を示す縦断面図
【符号の説明】
【0070】
1…薬剤分包装置、2…薬剤包装体、3…分包紙、3b…熱融着層、3c…薬剤収納部、4…ロール体、7…駆動部、7b…ホッパー、8…薬剤、10,11…シート片部、10a,11a…外側縁部、10b,11b…外端辺、12…投入部、13…ヒートシール装置、31…発熱体、40…切断目、40a…切断目、45…第一ヒートシール部分、45a…上端縁、47…ヒートシール部、Ha…第三発熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材に積層された溶着層を有する熱溶着性シートどうしの該溶着層を向い合わせてヒートシールをしたヒートシール部を設けることで該ヒートシール部の内側に収納部を形成した包装体であって、
包装体の縁端からヒートシール部に向けて、該ヒートシール部に至らない長さを有して包装体の切断を補助する補助スリットが複数形成されるとともに、これら補助スリットを設けた領域に、補助スリットが切断開始部として残存するようにヒートシールされていることを特徴と包装体。
【請求項2】
基材と該基材に積層された溶着層を有する熱溶着性シートどうしの該溶着層を向い合わせてその縁端から位置ずれさせた位置でヒートシールをしたヒートシール部を設けることで該ヒートシール部の内側に収納部を形成した包装体であって、
包装体の縁端からヒートシール部に向けて、該ヒートシール部に至らない長さを有して包装体の切断を補助する補助スリットが複数形成されるとともに、これら補助スリットを設けた領域に、補助スリットが切断開始部として残存するようにヒートシールされていることを特徴と包装体。
【請求項3】
補助スリットの少なくとも縁端部が残存するようにヒートシールが施されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の包装体。
【請求項4】
補助スリットは、縁端の全域に亙って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の包装体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の包装体を分包袋として、この分包袋が連続して形成されていることを特徴とする包装体。
【請求項6】
熱溶着性シートの基材として、グラシン紙またはセロファンが用いられており、溶着層としてポリエチレンが用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の包装体。
【請求項7】
収納部には、薬剤が収納されることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の包装体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかに記載の包装体を製造するための包装体の製造方法であって、補助スリットを形成した後に補助スリットが形成されている領域をヒートシールすることを特徴とする包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−290771(P2007−290771A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123553(P2006−123553)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】