説明

包装容器の製造法

【課題】樹脂を必要箇所に充分に充填し、余剰樹脂の流出がないように注入樹脂量を調整するのが容易であり、余剰樹脂が流出すること無く、ヒケの発生、容器の変形が発生することがない包装容器の製造法を提供する。
【解決手段】包装材料を所定形状に裁断し、縦シールしてスリーブ2を得、スリーブ上端部2aに容器頂部3をインジェクション成形によって形成し、容器底部から食品を充填し、底部をシールして得る包装容器の製造法であって、スリーブ上端部2a内面に接する外周面に、三角錐状刻み目14が連続的に形成された内金型11及び外金型12を準備し、スリーブ上端部2aを包むキャビティ12を形成し、キャビティ12内に、キャビティ12に射出されるプラスチックを、キャビティ12の体積から刻み目14の体積を除いた体積より多いが、刻み目14の体積を含むキャビティ12の全体体積より少ない量に調整して容器頂部を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュースや牛乳などの液体食品などを充填する包装容器の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、ジュース、ミネラルウォーターなどの飲料、流動食品などの紙包装容器は、例えば、繊維質基材(例えば、紙など)/ポリエチレン等の熱可塑性材料層の積層体の包装材料から得られる。
【0003】
液体食品用包装容器には、包装容器本体と、液体食品を注ぎ出すための蓋部分とからなる複合包装容器がある。通常、蓋部分はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチックから成形されている。
図6に複合包装容器の一例を示す。この包装容器1は紙容器本体(容器スリーブ)2と、スリーブの上端部2aに設けられたプラスチック容器頂部3とからなる。容器頂部3の頂部中央には、注ぎ口(注出口)4用の蓋部5が一体成形されている。使用(開封)時には、カバー外縁を周回する脆弱な弱め線(肉薄部)6を引き裂いて蓋部5を引き上げ、注ぎ口4を開口する。また、容器頂部3には、別の飲み方として、飲用ストローの差し込みに破断容易なったストロー孔用第1肉薄線(図示せず)が設けられている。
【0004】
図4に、図6に図示する複合包装容器を製造する装置の一例を示す。
装置例に示すように、ウェブ状の積層紙包装材料を巻き上げたリール7を準備する。リール7からウェブ状の紙包装材料を引き出して、所定の形状に切断し、紙製容器用のスリーブ2を得る。ついで、そのスリーブ上端部2aにインジェクション成形装置9によってプラスチックで容器頂部3が形成される。容器を逆さにしてスリーブ下端部の容器底部の開口から充填装置8によって食品を充填する。その後、底部をシール装置(図示せず)でシールして包装容器1を得る。(特許文献1参照)
【0005】
例えば、図5のスリーブ上端部付近の拡大断面図に示すように、インジェクション成形装置9において、スリーブ2に内金型11を挿入し、スリーブ2を頂部側から外金型10で覆い、スリーブ上端部2aを包むキャビティ12を形成し、このキャビティ12内にインジェクション成形によってプラスチックを射出して、スリーブ上端部2aをプラスチックで包み且つスリーブ上端部2aと接合した容器頂部12を成形する。
【0006】
インジェクション成形法では、通常、成形後の充填不良を防ぐために、型が締め切られたときのキャビティ容量より多い樹脂量を充填する。逆に、余った樹脂がオーバーフローしないように、樹脂注入量が制限される。従って、キャビティ容量よりわずかに多い樹脂量を充填する。
縦シールして筒状スリーブにインジェクション成形する場合、このスリーブの縦シール部は包材が二重に重なっているため、その近傍に隙間/通路が形成され、そこから余剰樹脂が流れ出ることがある。従って、樹脂を必要箇所に充分に充填し、かつ、余剰樹脂の流出がないように注入樹脂量を調整するのが非常に困難である。しかも、比較的体膨張率の高いポリエチレン樹脂を使用しているとき、この調整がより難しくなる。
もし、余剰樹脂が特定箇所に流出すると、樹脂温の冷却に伴いヒケが発生し、更に容器に変形が生じることがある。
【0007】
【特許文献1】特開2007−153381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂を必要箇所に充分に充填し、かつ、余剰樹脂の流出がないように注入樹脂量を調整するのが容易であり、比較的体膨張率の高いポリエチレン樹脂を使用しているときでも、調整が容易であり、余剰樹脂が流出すること無く、ヒケの発生、容器の変形が発生することがない包装容器の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決する本発明の包装容器の製造法は、ウェブ状の積層紙包装材料を所定形状に裁断し、容器縦方向に縦シールして筒状スリーブを得、スリーブ上端部に容器頂部をインジェクション成形によってプラスチックで形成し、スリーブ下端部である容器底部の開口から食品を充填し、底部をシールして得る包装容器の製造法であって、
スリーブ上端部内面に接する外周面に、スリーブ上端部の上縁対応部分から下方に徐々に横断面積が減少する刻み目が連続的又は間欠的に形成された内金型及び外金型を準備し、
筒状スリーブに底部側から内金型を挿入し、筒状スリーブを頂部側から外金型で覆い、スリーブ上端部を包むキャビティを形成し、
キャビティ内にインジェクション成形によって下記条件(A)を満たす射出量Mのプラスチックを射出して、スリーブ上端部をプラスチックで包み且つスリーブ上端部と接合した容器頂部を成形することを特徴とする。
P<M<P+Q (A)
(式中、Pは、キャビティの体積から刻み目の体積を除いた体積、Qは刻み目の体積、Mはキャビティに射出されるプラスチック量)
【0010】
この発明の好まし態様において、刻み目が三角錐形状の刻み目である。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、以下のように、動作作用を奏して有利な効果が得られる。
本発明の包装容器の製造法は、ウェブ状の積層紙包装材料を所定形状に裁断し、容器縦方向に縦シールして筒状スリーブを得、スリーブ上端部に薄い器壁厚の容器頂部をインジェクション成形によってプラスチックで形成し、スリーブ下端部である容器底部の開口から食品を充填し、底部をシールして得る。
【0012】
ウェブ状の積層紙包装材料を、例えば容器1個分の展開形状に裁断する。切断包装材料の両端部を重ねて縦方向に縦シールして筒状スリーブを得る。この縦シール部分は包装材料2枚重なった厚い部分となる。
そのスリーブ上端部にインジェクション成形装置によってプラスチックで容器頂部を形成する。次いで、容器を逆さにしてスリーブ下端部の容器底部の開口から充填装置によって食品を充填する。底部開口をシール装置でシールして包装容器を得る。
得られた包装容器は容器本体(スリーブ)と、スリーブの上端部に接合したプラスチック容器頂部とからなる。
【0013】
本発明の特徴において、スリーブ上端部内面に接する外周面に、スリーブ上端部の上縁対応部分から下方に徐々に横断面積が減少する刻み目が連続的又は間欠的に形成された内金型及び外金型を準備する。
この内金型は、スリーブ上端部内面に接する外周面に連続的又は間欠的に形成された、スリーブ上端部の上縁対応部分から下方に徐々に横断面積が減少する刻み目を有する。スリーブ上端部内周面に連続的又は間欠的な刻み目対応キャビティが形成され、その対応するプラスチックが成形される。
【0014】
本発明の特徴において、筒状スリーブに底部側から内金型を挿入し、筒状スリーブを頂部側から外金型で覆い、スリーブ上端部を包むキャビティを形成する。
形成されたキャビティ内部にスリーブ上端部が突入した形態となる。
【0015】
本発明の特徴において、キャビティ内にインジェクション成形によって下記条件(A)を満たす射出量Mのプラスチックを射出して、スリーブ上端部をプラスチックで包み且つスリーブ上端部と接合した容器頂部を成形する。
P<M<P+Q (A)
(式中、Pは、キャビティの体積から刻み目の体積を除いた体積、Qは刻み目の体積、Mはキャビティに射出されるプラスチック量)
【0016】
上記の条件(A)に示されているように、キャビティに射出されるプラスチック量は、キャビティの体積から刻み目の体積を除いた体積より多いが、刻み目の体積を含むキャビティの全体体積より少ない。
換言すれば、刻み目が充分充填されない状態に調整とする。スリーブ端部を覆うプラスチック部分、好ましくはビード部分は確実に成形される。更に、頂部成形に必要な樹脂量を超える余剰樹脂は周囲に刻まれた刻み目キャビティに分散される。
形成される刻み目プラスチックの形状は、容器ごとに多少のばらつきはある恐れがあるが、全内周に分散されるため、局所的なポリダマリの発生はなく、部分的なヒケ、凹みは解消される。
【0017】
好まし態様において、刻み目が三角錐形状の刻み目である。
三角錐形状の刻み目を設けられるので、内金型はスリーブ内面との接触が面的から線的に変わるため、内金型の縦シール部分対応凹み量を少なく出来るため、この部の余剰樹脂のハミダシを減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施例のインジェクション成形装置例の概略図である。
図2は、実施例のスリーブ上端部付近の拡大断面図である。
図3は、実施例の内金型の三角錐状刻み目を示す一部省略斜視部分図である。
図4は、複合包装容器を製造する装置の一例を示す概要図である。
図5は、スリーブ上端部付近の拡大断面図である。
図6は、複合包装容器の一例の外観を示す斜視図である。
【0019】
図4に示すように、ウェブ状の積層紙包装材料を巻き上げたリール7を準備する。リール7からウェブ状の紙包装材料を引き出して、ウェブ状の積層紙包装材料を、例えば容器1個分の展開形状に裁断する。切断包装材料の両端部を重ねて縦方向に縦シールして筒状スリーブ2を得る。この縦シール部分は包装材料2枚重なった厚い部分となる。
【0020】
この実施形態において、スリーブ上端部内面に接する外周面に、スリーブ上端部の上縁対応部分から下方に徐々に横断面積が減少する刻み目が連続的又は間欠的に形成された内金型及び外金型を準備する。
実施例の部分的内金型の三角錐状刻み目を示す斜視図である図3に示すように、この内金型11は、スリーブ上端部内面に接する外周面13に連続的形成された、スリーブ上端部の上縁対応部分から下方に徐々に横断面積が減少する三角錐状刻み目14を有する。
刻み目は、間欠的に外周面13に設けてもよい。また、断面U字状であってもよい。
【0021】
この実施形態において、筒状スリーブ2に底部側から内金型11を挿入し、筒状スリーブ2を頂部側から外金型10で覆い、スリーブ上端部2aを包むキャビティ12を形成する。
形成されたキャビティ12内部にスリーブ上端部2aが突入した形態となる。
インジェクション成形装置例の概略図である図1に示すように、スリーブ2のスリーブ上端部2aにインジェクション成形装置9によってプラスチックで容器頂部3を形成する。
図1に示すインジェクション成形装置例は、内金型11と外金型10とからなり、内金型11はマンドレル15の先端に取り付けられている。筒状スリーブ2は底部側からマンドレル15及びその先端の内金型11に嵌め入れられる。
【0022】
スリーブ2、マンドレル15及び内金型11が、外金型10の上方に移動して、インジェクション成形の準備が整う。外金型10はキャビティ12用の凹型及び溶融プラスチックを射出するゲート16を有する。次いで、外金型10が上方に移動し、筒状スリーブ2を頂部側から覆い、スリーブ上端部2aを包むキャビティ12を形成する。キャビティにプラスチックが射出され容器頂部3が成形される。
容器頂部3の成形後、外金型10が下方に移動し、容器頂部がスリーブ2と共に次のステップに移行する。
【0023】
図2に、プラスチック射出直後のスリーブ上端部付近の拡大断面図を示す。
スリーブ2に内金型11が挿入され、スリーブ2を頂部側から外金型10が覆い、スリーブ上端部2aを包むキャビティ12が形成され、このキャビティ12内にインジェクション成形によってプラスチックが射出されている。スリーブ上端部2aをプラスチックで包み且つスリーブ上端部2aと接合した容器頂部12を成形している。
【0024】
この形態において、キャビティ12内に、キャビティに射出されるプラスチック量が、キャビティの体積から刻み目の体積を除いた体積より多いが、刻み目の体積を含むキャビティの全体体積より少ないように調整される。その結果、刻み目14が充分充填されない状態に調整され、スリーブ端部2aをビード部分17が確実に覆い、余剰プラスチックが刻み目14分散されてそこを一部充填し、刻み目14の下方部分に空隙16を形成する。
上述のように、この発明に於いて、余剰な樹脂を注入しながらその余剰分を制御して、望ましくない樹脂ダマリを発生させないように、金型に樹脂のバッファ機構を持たせるものである。
【0025】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明の包装容器は、ジュースや牛乳などの液体食品などを充填した包装容器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、実施例のインジェクション成形装置例の概略図である。
【図2】図2は、実施例のスリーブ上端部付近の拡大断面図である。
【図3】図3は、実施例の内金型の三角錐状刻み目を示す斜視図である。
【図4】図4は、複合包装容器を製造する装置の一例を示す概要図である。
【図5】図5は、スリーブ上端部付近の拡大断面図である。
【図6】図6は、複合包装容器の一例の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ・・・包装容器
2 ・・・容器本体(スリーブ)
3 ・・・容器頂部
10・・・外金型
11・・・内金型
12・・キャビティ
14・・刻み目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状の積層包装材料を所定形状に裁断し、容器縦方向に縦シールして筒状スリーブを得、該スリーブ上端部に容器頂部をインジェクション成形によってプラスチックで形成し、該スリーブ下端部である容器底部の開口から食品を充填し、該底部をシールして得る包装容器の製造法であって、
該スリーブ上端部内面に接する外周面に、該スリーブ上端部の上縁対応部分から下方に徐々に横断面積が減少する刻み目が連続的又は間欠的に形成された内金型及び外金型を準備し、
該筒状スリーブに該底部側から該内金型を挿入し、該筒状スリーブを該頂部側から該外金型で覆い、該スリーブ上端部を包むキャビティを形成し、
該キャビティ内にインジェクション成形によって下記条件(A)を満たす射出量Mのプラスチックを射出して、該スリーブ上端部をプラスチックで包み且つ該スリーブ上端部と接合した該容器頂部を成形する、
P<M<P+Q (A)
(式中、Pは、該キャビティの体積から刻み目の体積を除いた体積、Qは該刻み目の体積、Mはキャビティに射出されるプラスチック量)
ことを特徴とする包装容器の製造法。
【請求項2】
該刻み目が三角錐形状の刻み目である、請求項1記載の包装容器の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119608(P2009−119608A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292662(P2007−292662)
【出願日】平成19年11月11日(2007.11.11)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】