説明

包装紙及び包装紙を使用したシガレットパッケージ並びに包装紙の製造方法及び装置

【課題】 防湿性に優れ、しかも、環境負荷を増大させることなく廃棄処理が可能な包装紙、その製造装置及び製造方法、並びに、包装紙をインナパックの内包材として使用したシガレットパッケージを提供する。
【解決手段】 包装紙は、グラシン紙からなる表裏の第1及び第2紙層4,6と、これら第1及び第2紙層4,6間に介在された防湿層8とからなり、防湿層8はパラフィンワックスのみから形成され、第1及び第2紙層4,6を接着する接着剤としても機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防湿性且つ生分解性に優れた包装紙に係わり、特に湿気を嫌う物品、例えばシガレット等の喫煙物品に好適した包装紙、この包装紙を使用したシガレットパッケージ、そして、包装紙の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シガレットパッケージはその外箱内にインナパックを収容しており、このインナパックはシガレット又はフィルタシガレット等のシガレット束を内包材(包装紙)に包み込んで形成されている。
この種の内包材には一般的にアルミ蒸着紙が使用され、このアルミ蒸着紙は紙層の片面にアルミニウムを蒸着させたアルミ膜を有する。このようなアルミ膜は非常に薄く、アルミ蒸着紙は湿気や空気に対する遮蔽性に乏しい。このため、アルミ蒸着紙は、シガレット束を湿気から保護する防湿性や、また、シガレット又はフィルタシガレットの芳香を長期に亘って保持する保香性を十分に発揮することができない。
【0003】
それ故、シガレットパッケージは通常、外箱を外側から覆う開封テープ付きのフィルム包装により包み込まれており、このフィルム包装はシガレット束に対する防湿性や保香性を発揮するのみならず、シガレット束への悪戯を防止するのにも役立つ。
しかしながら、上述したシガレット束の包装形態は、アルミ蒸着紙、外箱及びフィルム包装の3重構造をなし、コストアップの要因となっていた。
【0004】
また、フィルム包装はアルミ蒸着紙や外箱とは異なり、不燃物として廃棄処理されることから、フィルム包装の存在は廃棄処理時、環境負荷を増大させる要因となる。
このため、フィルム包装を無くしたシガレットパッケージが望まれ、この場合には、シガレット束を包む込む内包材自体が上述の防湿性及び保香性を発揮しなければならない。
このような要求を満たす内包材として、2つの紙層間に防湿層を介在させた積層紙(例えば、特許文献1)の使用が考えられる。
【特許文献1】特開平10-183498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の積層紙を内包材として使用した場合、その防湿層はポリマを含むため、ポリマの臭気が紙層を通じてシガレット束のシガレットやフィルタシガレットに移り、これらの喫味を阻害する虞がある。
また、特許文献1の積層紙はそのポリマが主成分であるため、生分解性に乏しく、その廃棄処理は環境負荷を増大させることになる。
【0006】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、防湿性や保香性に優れ、且つ、廃棄処理に伴う環境負荷を軽減することができ、しかも、シガレットパッケージの内包材として好適した包装紙を提供し、また、この包装紙を使用したシガレットパッケージ、そして、包装紙の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の包装紙は、第1紙層に防湿層を介して第2紙層が重ね合わされた3重の積層構造を有し、そして、防湿層は実質的にパラフィンワックスから形成され、第1及び前記第2紙層を互いに結合する接着剤として機能する厚さを有する(請求項1)。
具体的には、第1及び第2紙層は共にグラシン紙からなり(請求項2)、そして、防湿層は、パラフィンワックスのみから形成されている(請求項3)。この場合、第1及び第2紙層はその坪量が20〜40g/m2のグラシン紙からなるとともに、第1防湿層が約6g/m2以上の塗布量にて形成されていること(請求項4)が好ましく、又は、第1防湿層は第1及び第2紙層に対して約15mN/cm以上の接着力を有すること(請求項5)が好ましい。
【0008】
上述した包装紙はその防湿層にて十分な防湿性や保香性を発揮するばかりでなく、生分解性にも優れている。また、防湿層を形成するパラフィンワックスは無臭であるから、防湿層が包装紙により包み込まれた物品に臭いの点で悪影響を及ぼすことはない。
それ故、本発明の包装紙は、シガレットパッケージ内のシガレット束をインナパックとして包装する内包材として使用できる(請求項6)、この場合、シガレットパッケージは、そのインナパックの外側に外箱のみを備え、この外箱は、開封線から分離されて初めて開閉可能となるリッドを有するのが好ましい(請求項7)。
【0009】
更に、本発明の包装紙がシガレットパッケージの内包材として使用される場合、少なくとも一方の紙層は半透明のグラシン紙からなり、そして、その内面に印刷されているのが好ましい(請求項8)。
また、本発明は上述した包装紙の製造方法を提供し、この製造方法は、第1ペーパウエブに所定の厚さ以上の防湿層を形成すべく実質的にパラフィンワックスからなる防湿材料を塗布し、この後、第1ペーパウエブに防湿層を介して第2ペーパウエブを重ね合わせることで積層ウエブを形成し、この際、積層ウエブを防湿材料の融点から所定の温度差内の高い温度に加熱するとともに所定の圧力範囲内にて加圧し、防湿層が接着剤となって第1及び第2ペーパウエブを接着する(請求項9)。
【0010】
更にまた、本発明は包装紙の製造装置を提供し、この製造装置は、第1ペーパウエブの第1供給経路と、この第1供給経路に設けられ、第1ペーパウエブに所定の厚さ以上の防湿層を形成すべく実質的にパラフィンワックスからなる防湿材料を塗布する塗布器と、この第1供給経路に向けて第2ペーパウエブを供給する第2供給経路と、この第2供給経路の終端と第1供給経路との間に設けられ、第1ペーパウエブに防湿層を介して第2ペーパウエブを重ね合わせることで積層ウエブを形成し、この際、積層ウエブを防湿材料の融点から所定の温度差内の高い温度に加熱するとともに所定の圧力範囲内にて加圧し、これにより、防湿層を接着剤として第1及び第2紙層を貼り合わせる一対の貼り合わせローラユニットとを備えている(請求項13)。
【0011】
上述の製造方法及び製造装置において、温度差の範囲はその防湿材料の融点から10〜50℃であり、そして、圧力範囲は0.20〜0.40mPAであるのが好ましい(請求項10,14)。
そして、第1及び第2ペーパウエブには共にグラシン紙が好適し(請求項11,15)、更に好適には、第1及び第2ペーパウエブはその坪量が20〜40g/m2のグラシン紙からなり、そして、第1ペーパウエブには約6g/m2以上の塗布量にてパラフィンワックスを塗布することで、防湿層が形成される(請求項12,16)。
【0012】
上述した製造方法及び製造装置は何れも、その防湿層が接着剤として機能する3重の積層構造の包装紙を製造する。
なお、上述した包装紙を得るにあたり、その防湿層の接着力をより安定して確保するにはパラフィンワックスに約10重量%以上のイソパラフィンが含まれているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜5,9〜16の発明は何れも、その防湿性や保香性のみならず、生分解性にも優れた包装紙を提供し、その廃棄処理の際の環境負荷を大きく軽減する。そして、発明の包装紙を使用したシガレット束のための内包材(請求項6)や、この内包材を備えたシガレットパッケージ(請求項7)はシガレット束を湿気から保護し、また、その芳香を長期に亘って保持するうえで頗る好適する。更に、内包材における紙層の内面が印刷面であれば(請求項8)、シガレットパッケージの外箱以外に広告や各種情報の提供領域を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.包装紙
図1を参照すると、一実施例に係る包装紙2の断面構造が示されている。
包装紙2はその両面が半透明の第1及び第2紙層4,6から形成され、これら第1及び第2紙層4,6は共に、例えばグラシン紙からなっている。グラシン紙の坪量は20〜40g/m2、より好ましくは25〜35g/m2から選択され、具体的には、第1及び第2紙層4,6の坪量は30.5g/m2である。
【0015】
第1及び第2紙層4,6間には防湿層8が介在しており、防湿層8は実質的にパラフィンワックスからなっている。ここで、実質的とは防湿層8の生分解性に悪影響を及ぼすことがない程度に、パラフィンワックス以外の材料の混入が許容されることを意味する。
しかしながら、防湿層8に高い生分解性を付与するには、防湿層8はパラフィンワックスのみから形成されているのが好ましく、より好ましくは、防湿層8を形成するパラフィンワックスは約10重量%以上のイソパラフィンを含んでいる。
【0016】
防湿層8はその本来の機能、つまり、第1及び第2紙層4,6間での空気や湿気の透過を阻止する以外に、第1及び第2紙層4,6を接着する接着剤としても機能し、これら第1及び第2紙層4,6に対して約15mN/cm以上の接着力、より好ましくは20mN/cm以上の接着力を有する。
防湿層8に上述した接着力を付与するため、防湿層8は約6g/m2以上の塗布量にてパラフィンワックスを塗布して形成されている。このようにパラフィンワックスの厚さが厚ければ、第1及び第2紙層4,6が加圧下にて、溶融状態にある低粘度のパラフィンワックスを介して貼り合わされたとき、パラフィンワックスは第1及び第2紙層4,6、即ち、グラシン紙の繊維間に含浸し、これら第1及び第2紙層4,6を接着する防湿層8を備えた包装紙2が製造される。
【0017】
上述の包装紙2はその内部に防湿層8を有するので、防湿層8は第1及び第2紙層4,6間での空気や湿気の透過を阻止する。従って、包装紙2は防湿性及び保香性に優れ、湿気を嫌う物品や、その芳香に特徴を有した物品等の包装に好適する。
また、防湿層8が実質的にパラフィンワックスからなっていると、防湿層8は無臭であるので、防湿層8から物品に臭いが移ってしまうこともない。
【0018】
更に、防湿層8がパラフィンワックスのみから形成されていれば、第1及び第2紙層4,6とともに生分解性に優れ、包装紙2の廃棄処理の際、環境負荷が増大することもない。
【0019】
2.包装紙の製造装置及び製造方法
上述した3層構造の包装紙2は図2に示す製造装置を使用して製造され、この製造装置及び製造方法について、以下に説明する。
製造装置は、第1紙層4となる第1ペーパウエブW1を巻出すための第1ウエブロールWR1を備えている。第1ウエブロールWR1からは第1供給経路10が延びており、図示しないフィードローラの回転に伴い、第1ペーパウエブW1は第1ウエブロールWR1から第1供給経路10に沿って供給される。
第1供給経路10は複数のガイドローラ12を有し、その途中には塗布器14が配置されている。塗布器14はワックス槽16を備え、ワックス槽16内にパラフィンワックスQが蓄えられている。塗布器14の底にはヒータ18が配置され、ヒータ18はパラフィンワックスQをその融点(一般的に40〜70℃)以上の90〜120℃の温度に加熱する。従って、ワックス槽16内のパラフィンワックスQは溶融状態にあり、その粘度は低い。
【0020】
ワックス槽16内には塗布ローラ20が回転可能に配置され、塗布ローラ20はその外周の一部がパラフィンワックスQ中に浸漬されている。また、ワックス槽16内には塗布ローラ20に隣接して調厚ローラ22が配置され、調厚ローラ22もまたその外周の一部がパラフィンワックスQ中に浸漬されている。調厚ローラ22は塗布ローラ20と逆向きに回転し、これらローラ20,22間の間隔により塗布ローラ20の周面に付着するパラフィンワックスQの膜厚が決定される。従って、塗布ローラ20上でのパラフィンワックスQの膜厚は、ローラ20,22間の間隔を調整することで可変可能である。
【0021】
更に、塗布ローラ20の近傍には第1供給経路10を挟んでバックローラ24が配置されており、第1ペーパウエブW1がバックローラ24と塗布ローラ20との間を通過する際、第1ペーパウエブW1の片面に塗布ローラ20からパラフィンワックスQが約6g/m2以上の塗布量にて塗布されることで、第1ペーパウエブW1に防湿層が形成される。
一方、第1供給経路10には前述した塗布器14の下流に貼り合わせローラユニット26が配置されており、貼り合わせローラユニット26は受けローラ28と、受けローラ28に隣接して配置されたプレスローラ30とからなっている。
【0022】
プレスローラ30には第1ペーパウエブW1に加えて、第2紙層6となる第2ペーパウエブW2が供給され、第2ペーパウエブW2はウエブロールWR2から第2供給経路32に沿って供給される。
プレスローラ30の周面上にて、第1及び第2ペーパウエブW1,W2は前述した防湿層を介して重ね合わされ、3層構造の積層ウエブLWが形成される。この後、積層ウエブLWが受けローラ28とプレスローラ30との間を通過する際、積層ウエブLWは0.20〜0.40mPaの圧力範囲、例えば0.30mPaにて加圧され、且つ、パラフィンワックスQの融点よりも10〜50℃の温度差だけ高い温度、例えば融点から30℃だけ高い温度に加熱される。
【0023】
このため、図2から明らかなようにプレスローラ30は回動アーム34の下端に回転自在に支持され、回動アーム34の上端はフレームにブラケット36を介して回動自在に支持されている。そして、回動アーム34とフレームとの間にはエアシリンダ38が配置されており、エアシリンダ38は受けローラ28に向けて回動アーム34を回動させ、これにより、プレスローラ30が積層ウエブLWを介して受けローラ28に押付けられる。この結果、積層ウエブLWは前記圧力範囲内にて加圧される。
【0024】
また、受けローラ28及びプレスローラ30はヒータ40,42をそれぞれ内層しており、これらヒータ40,42はローラ28,30を介して積層ウエブLWを加熱し、防湿層、即ち、パラフィンワックスQの温度をその融点から前記範囲の温度差だけ高い温度に維持する。
第1ペーパウエブW1の片面にパラフィンワックスQが塗布された後、第1ペーパウエブW1が貼り合わせローラユニット26に到達するまでの間にて、塗布されたパラフィンワックスQの溶融温度が低下しても、受けローラ28及びプレスローラ30と間を積層ウエブLWが通過するとき、積層ウエブLWはローラ28,30から熱を受けて加熱される。それ故、積層ウエブLWがローラ28,30間を通過するとき、パラフィンワックスQの温度はその融点よりも十分に高い温度に保持され、その粘度は低く維持されている。
【0025】
また、この際、プレスローラ30は積層ウエブLWを加圧することから、積層ウエブLW内の低粘度のパラフィンワックスQは第1及び第2ペーパウエブW1,W2の繊維間に含浸する。
この後、積層ウエブLWが貼り合わせローラユニット26から送出される過程で、その内部のパラフィンワックスQの温度が低下して固化すると、パラフィンワックスQ、即ち、防湿層は第1及び第2ペーパウエブW1,W2を接着する接着剤として機能し、これらペーパウエブW1,W2間に防湿層を介在させた3層構造の包装ウエブPWが製造される。この後、包装ウエブPWは所望のサイズに裁断され、前述した包装紙2となる。
【0026】
前述の製造装置により実施される製造方法を纏めれば、先ず、第1ペーパウエブW1の片面に溶融状態にあるパラフィンワックスQを塗布し、第1ペーパウエブW1に防湿層を形成する。この後、第1ペーパウエブW1に防湿層を介して第2ペーパウエブW2を重ね合わせ、積層ウエブLWを形成する。この際、積層ウエブLWを所定の圧力にて加圧すると同時に、パラフィンワックスQの融点よりも30℃だけ高い温度に加熱し、パラフィンワックスQを接着剤として機能させる。
【0027】
3.包装紙の実施例
パラフィンワックスQが種々の塗布量にて塗布された包装紙A,Bをそれぞれ製造し、これら包装紙A,B(防湿層8)の接着力及び透湿度をそれぞれ測定した結果を以下の表1に示す。包装紙Aの防湿層8はイソパラフィン濃度が10重量%以下(具体には2.1重量%)のパラフィンワックスQを使用して形成され、包装紙Bの防湿層8はイソパラフィン濃度が10重量%以上(具体的には13.5重量%)のパラフィンワックスQを使用して形成されている。
【0028】
なお、接着力はJIS K6854-3に規定の試験方法(測定温度25℃)に基づいて測定され、透湿度はJIS Z0208に規定の試験方法(測定温度40℃、湿度90%)に基づいて測定された。
【0029】
【表1】

表1から明らかなように包装紙A,Bの防湿層8がパラフィンワックスQの塗布量を約6g/m2以上にして形成されていれば、その防湿層8は接着層として機能するだけの十分な厚みを有し、約15mN/cm以上の接着力を発揮すると同時に、約45g/m2/24hr以下の透湿度を発揮することができる。
【0030】
また、イソパラフィン濃度(重量%)がそれぞれ異なるパラフィンワックスQを使用して包装紙C〜Fをそれぞれ製造し、これら包装紙における防湿層8の接着力を同様な試験方法(JIS K6854-3)にて測定した結果を以下の表2に示す。
【0031】
【表2】

表2から明らかなように、包装紙C〜Fの防湿層8は何れも、6g/m2以上にパラフィンワックスQを塗布して形成されているため、十分な接着力を発揮するが、パラフィンワックスQ中のイソパラフィンの濃度が10重量%以上であれば、防湿層8の接着強度がより強くなることが分かる。
【0032】
次に、図3は、積層ウエブLWに加えられる圧力毎のパラフィンワックスQの塗布量と第1及び第2紙層4,6の剥離強さとの関係を示す。また、図4は、パラフィンワックスQの融点に対する積層ウエブLWの加熱温度の温度差Δ(y)毎のパラフィンワックスQの塗布量と第1及び第2紙層4,6の剥離強さとの関係を示す。図3中のP(x)のxはmPaで表した数値、図4中のΔT(y)のyは℃で表して数値を示す。
【0033】
図3から明らかなように積層ウエブLWの加圧圧力Pが高くなれば、剥離強さもまた増加するが、しかしながら、0.40mPaでの場合の剥離強さは加0.35mPaの場合に比べて低下している。これは、積層ウエブLWの加圧圧力Pが高くなり過ぎると、第1及び第2紙層4,6に皺が発生し、この皺が剥離強さを低下させるものと考えられる。それ故、防湿層8に所望の剥離強さ、つまり、前述した接着力を発揮させるには、積層ウエブLWの加圧圧力Pは0.20から0.40mPaの範囲に制限されるのが好ましい。
【0034】
一方、温度差ΔTに関してみれば、図4から明らかなように温度差ΔTが大きくなればなるほど、剥離強さもまた増加するが、温度差ΔTが過度に大きいと、パラフィンワックスQが酸化変質し、臭いが着いてしまう。それ故、第1及び第2紙層4,6の剥離強さ、つまり、防止層8の接着強度を考慮すれば、温度差ΔTは10〜50℃の範囲に制限されるのが好ましい。
【0035】
4.シガレットパッケージ
図5及び図6は、上述した実施例の包装紙2を使用して製造されたシガレットパッケージを示す。
シガレットパッケージはアウタボックス44を備え、アウタボックス44はボックス部分46と、このボックス部分46に切り離し線48を介して接続されたヒンジリッド50とを有する。ヒンジリッド50は切り離し線48にてボックス部分46から分離されたとき、そのヒンジ52を中心して回動でき、これにより、図6に示すようにボックス部分46を開くことができる。
【0036】
ボックス部分46が一旦開かれると、ボックス部分46の開口縁46a及びヒンジリッド50の開口縁50aには、切り離し線48の分離により破断痕Zがそれぞれ形成される。
なお、上述したアウタボックス44は1枚のブランクを折込むことで成形可能である。
アウタボックス46内にはインナパック54がインナフレーム56とともに収容されている。インナパック54は、20本のフィルタシガレットFCからなるシガレット束を内包材58により包み込んで成形され、この内包材58には前述した包装紙が使用されている。
【0037】
インナフレーム56は断面U字形状をなし、インナパック54の前面及び両側面を部分的に囲んでいる。図6から明らかなようにヒンジリッド50が開かれたとき、インナフレーム56はボックス部分46から露出し、ボックス部分46の開口端を形成する。即ち、ヒンジリッド50が閉じた状態にあると、ヒンジリッド50はボックス部分46から露出したインナフレーム56の部分に被せられている。
【0038】
ボックス部分46の前壁から露出したインナフレーム56の部分にはU字形の切り離し線60が形成され、一方、インナパック54の内包材58にも切り取り線60に対応してU字形の切り取り線62(図9参照)が形成されている。ヒンジリッド50がその開方向に回動されて、ボックス部分46が最初に開かれたとき、インナフレーム56及び内包材58は切り取り線60,62からそれぞれ分離され、これらの分離により、インナフレーム56及び内包材58の一部が切り取り片64,66として切り離される。
【0039】
この結果、図6に示されるようにインナフレーム56にはU字形の切欠68が形成され、そして、インナパック54のシガレット束はその一部が切欠68を通じて外部に露出する。なお、切り離し片64,66はインナフレーム56及び内包材58から分離されても、ヒンジリッド50の内面に保持された状態に維持される。
上述した切り取り線60,62からの分離を可能にするため、図7に示されるように切り離し線60により囲まれたインナフレーム56の部分(切り取り片64となる部分)はヒンジリッド50の前壁内面に糊塗布域70を介して接着され、切り取り線62によ囲まれた内包材58の部分(切り取り片66となる部分)は、インナフレーム56の切り取り片64となる部分の内面に糊塗布領域72を介して接着されている。更に、切り取り片66となる部分はヒンジリッド50の頂部内面にも糊塗布領域74を介して接着されている。
【0040】
前述した包装紙2がインナパック56のための内包材58として使用された場合、内包材58内の防湿層8はシガレット束、つまり、個々のフィルタシガレットFCを外部の湿気から保護し、また、その芳香の放散を好適に防止する。それ故、内包材58はシガレット束の品質を長期に亘り安定して維持することができる。
また、アウタボックス44が一旦開かれれば、アウタボックス44の切り離し線48により形成されるボックス部分46の開口縁46aやヒンジリッド50の開口縁50aには破断痕Zがそれぞれ残されることになるので、シガレット束に対する悪戯をも効果的に防止することができる。
【0041】
この結果、シガレットパッケージは、インナパック56を包み込むアウタボックス44のみを備えていればよく、アウタボックス44のためのフィルム包装が不要となり、シガレット束の過剰包装を避けることができる。それ故、フィルム包装の廃棄処理もまた不要となるから、環境負荷の軽減に大きく貢献する。
また、内包材58はその内部の防湿層8がフィルタシガレットFCに直接に接触することがなく、しかも、防湿層8は無臭であるから、防湿層8がフィルタシガレットFCの芳香に悪影響を及ぼすこともない。
【0042】
更に、内包材58はその両面の第1及び第2紙層4,6がグラシン紙から形成されているので、第1及び第2紙層4,6は内包材として一般的に使用されているアルミ蒸着紙の紙層や、また、カートンの包材として使用されているろう紙の紙層に比べ、図8に示されるように、その静摩擦係数及び動摩擦係数は何れも小さい。また、グラシン紙は非常に薄いので、内包材58が前述した3層の積層構造をなしていても、その折込みに対する内包材58の復元力は小さい。
【0043】
それ故、シガレット束の回りに内包材58が胴巻きされる際、シガレット束との間にて内包材58が引っ掛かり、胴巻きが不能になってしまうようなこともないし、また、この後の内包材58の折込み後、その折込みが戻されることもない。この結果、内包材58の安定した折込み、つまり、インナパック56の安定した成形が可能となり、本発明は包装紙2はインナパック56の内包材として頗る好適する。
【0044】
上述したように内包材58の第1及び第2紙層4,6は何れも半透明であるが、例外的には半透明でなくてもよい。しかしながら、第1及び第2紙層4,6が半透明であれば、これら第1紙層4又は第2紙層4,6の片面を所望の文字情報や図案等を印刷した印刷面として利用することができる。
具体的には、内包材58の第1紙層4がシガレット束を直接的に包み込む内面であれば、第2紙層6の内面に印刷されているのが好ましく、この場合、その印刷は図9中のハッチングで示すように、インナパック56の前面や両側面等の任意の個所に施すことができる。
【0045】
第2紙層6の内面に印刷されれば、そのインク及びその臭気は防湿層8及び第1紙層4により遮蔽され、インクがフィルタシガレットFCに付着することもないし、そのインク臭がフィルタシガレットFCに移ってしまうようなこともない。
内包紙58の製造ライン上、つまり、図2に示した製造装置にて包装紙58に印刷する場合には、第2ペーパウエブW2の第2供給経路32の途中に印刷ユニット76を配置すればよい。なお、図2の製造装置は、印刷済の第2ペーパウエブW2をウエブローラWR2から巻出すものであってもよい。
【0046】
なお、本発明の包装紙がインナパック56の内包材58のみならず、湿気等を嫌う種々の物品の包装にも好適することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施例の包装紙を示した断面図である。
【図2】図1の包装紙を製造する製造機を示した概略構成図である。
【図3】積層ウエブの加圧圧力について、塗布量と剥離強さとの関係を示したグラフである。
【図4】パラフィンワックスの融点からの温度差について、塗布量と剥離強さとの関係を示したグラフである。
【図5】図1の包装紙を内包材として使用したシガレットパッケージの斜視図である。
【図6】図5のシガレットパッケージが開かれた状態の斜視図である。
【図7】図5のシガレットパッケージ内において、内包材、インナフレーム及びアウタボックス相互の接着状態を示した断面図である。
【図8】アルミ蒸着紙、内包材及びろう紙の摩擦係数を比較して示したグラフである。
【図9】図5のシガレットパッケージ内に収容されたインナパックの斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
2 包装紙
4 第1紙層
6 第2紙層
8 防湿層
10 第1供給経路
14 塗布器
20 塗布ローラ
26 貼り付けローラユニット
28 受けローラ
30 プレスローラ
32 第2供給経路
40,42 ヒータ
44 アウタボックス
46 ボックス部分
50 ヒンジリッド
54 インナパック
56 インナフレーム
58 内包材
1 第1ペーパウエブ
2 第2ペーパウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1紙層に防湿層を介して第2紙層が重ね合わされた3重の積層構造を有する包装紙において、
前記防湿層は実質的にパラフィンワックスから形成され、前記第1及び前記第2紙層を互いに結合する接着剤として機能する厚さを有することを特徴とする包装紙。
【請求項2】
前記第1及び第2紙層は共にグラシン紙であることを特徴とする請求項1に記載の包装紙。
【請求項3】
前記防湿層はパラフィンワックスのみからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装紙。
【請求項4】
前記第1及び第2紙層はその坪量が20〜40g/m2のグラシン紙からなり、前記防湿層は、約6g/m2以上の塗布量にて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の包装紙。
【請求項5】
前記防湿層は、前記各紙層に対して約15mN/cm以上の接着力を有することを特徴とする請求項3に記載の包装紙。
【請求項6】
シガレットパッケージ内のシガレット束を包装する内包材であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の包装紙。
【請求項7】
請求項6に記載の前記内包材にシガレット束を包み込んだインナパックが外箱のみにより包み込まれており、前記外箱は、開封線から分離されて初めて開閉可能となるリッドを有することを特徴とするシガレットパッケージ。
【請求項8】
前記内包材の少なくとも一方の前記紙層は半透明のグラシン紙からなり、その内面が印刷面として形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のシガレットパッケージ。
【請求項9】
第1ペーパウエブに所定の厚さ以上の防湿層を形成すべく実質的にパラフィンワックスからなる防湿材料を塗布し、この後、前記第1ペーパウエブに前記防湿層を介して第2ペーパウエブを重ね合わせることで積層ウエブを形成し、この際、前記積層ウエブを前記防湿材料の融点から所定の温度差内の高い温度に加熱するとともに所定の圧力範囲内にて加圧し、前記防湿層が接着剤となって前記第1及び第2ペーパウエブを接着することを特徴とする包装紙の製造方法。
【請求項10】
前記温度差の範囲は10〜50℃であり、前記圧力範囲は0.20〜0.40mPaであることを特徴とする請求項9に記載の包装紙の製造方法。
【請求項11】
前記第1及び第2ペーパウエブは共にグラシン紙であることを特徴とする請求項9又は10に記載の包装紙の製造方法。
【請求項12】
前記第1及び第2ペーパウエブにはその坪量が20〜40g/m2のグラシン紙が使用され、
前記第1ペーパウエブに約6g/m2以上の塗布量にて前記パラフィンワックスのみを塗布し、前記防湿層を形成することを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の包装紙の製造方法。
【請求項13】
第1ペーパウエブの第1供給経路と、
前記第1供給経路に設けられ、前記第1ペーパウエブに所定の厚さ以上の防湿層を形成すべく実質的にパラフィンワックスからなる防湿材料を塗布する塗布器と、
前記第1供給経路に向けて第2ペーパウエブを供給する第2供給経路と、
前記第2供給経路の終端と前記第1供給経路との間に設けられ、前記第1ペーパウエブに前記防湿層を介して前記第2ペーパウエブを重ね合わせることで積層ウエブを形成し、この際、前記積層ウエブを前記防湿材料の融点から所定の温度範囲内にて高い温度に加熱するとともに所定の圧力範囲内にて加圧し、これにより、前記防湿層を接着剤として前記第1及び第2紙層を貼り合わせる一対の貼り合わせローラユニットと
を具備したことを特徴とする包装紙の製造装置。
【請求項14】
前記貼り合わせローラユニットは、前記積層ウエブを前記パラフィンワックスの融点から10〜50℃の温度差内の高い温度に加熱し、且つ、0.20〜0.40mPaの圧力範囲内にて加圧することを特徴とする請求項13に記載の包装紙の製造装置。
【請求項15】
前記第1及び第2ペーパウエブは共にグラシン紙であることを特徴とする請求項13又は14に記載の包装紙の製造装置。
【請求項16】
前記第1及び第2ペーパウエブにはその坪量が20〜40g/m2のグラシン紙が使用され、
前記塗布器は、前記第1ペーパウエブに約6g/m2以上の塗布量にてパラフィンワックスのみを塗布し、前記防湿層を形成することを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の包装紙の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−142566(P2006−142566A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333293(P2004−333293)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【出願人】(391057144)東京加工紙株式会社 (1)
【出願人】(000231604)日本精蝋株式会社 (10)
【Fターム(参考)】