説明

化学化合物

本発明は、肝臓X受容体(LXR)のモジュレーターである化合物に関し、さらにそのような化合物の生成方法および使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓X受容体(LXR)のモジュレーターである化合物に関し、さらにそのような化合物の生成方法および使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓X受容体(LXR)であるLXRαおよびLXRβは、核内ホルモン受容体スーパーファミリーに属するリガンド活性化転写因子である(非特許文献1)。LXRの天然のリガンドとしてコレステロールの代謝産物が特定されたことにより、この受容体の生物学的な役割はコレステロールのホメオスタシスを調節することであることが示唆された。LXRβはあるがLXRαを欠くマウスでの研究で、LXRα(−/−)マウスは有効にコレステロールを胆汁酸に変換することができないことが示された。LXRα(−/−)マウスはまた、野生型の動物に比べた場合、肝臓におけるコレステロールの蓄積と同時に高レベルの血清低密度リポ蛋白も示した。これらおよび他のデータは、LXRが哺乳動物におけるコレステロールの代謝調節で重要な役割を果たしているという仮説を強力に支持している。例えば、(非特許文献2)を参照されたい。
【0003】
有効且つ選択的なLXRα/βデュアルアゴニストの特定により、LXRの生物学的動態をさらに解読するための非ステロイド性の化学的手段が提供された。例えば、(非特許文献3)および(非特許文献4)を参照されたい。厖大なインビボおよびインビトロの研究から得られたデータの蓄積は、LXRアゴニストが、心血管疾患を治療するための候補薬であることを示唆している。例えば、(非特許文献5)を参照されたい。より最近の開発は、LXRのリガンドが、炎症、糖尿病、および神経変性疾患の治療にも治療機会を提供し得ることを示唆している。例えば、(非特許文献6)、(非特許文献7)、および(非特許文献8)を参照されたい。
【非特許文献1】Peet, DJ et al., Curr. Opin. Genet. Dev., 1998, 8(5)571-575
【非特許文献2】Peet, DJ et al., Cell, 1998, 93(5):693-704
【非特許文献3】Schultz, JR et al., Gene Dev., 2000, 14(22):2831-2838
【非特許文献4】Collins, JL et al., J. Med. Chem., 2002, 45(10):1963-1966
【非特許文献5】Tontonoz, P. et al., Mol. Endocrinol., 2003, 17(6):985-993
【非特許文献6】Joseph, SB et al., Nat. Med., 2003, 9(2):213-219
【非特許文献7】Stulnig, TM et al., Mol. Pharmacol., 2002, 62(6):1299-1305
【非特許文献8】Wang, L et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002, 99(21):13878-13883
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LXRは、コレステロールのホメオスタシスに関与している多くの遺伝子の発現のみならず、マクロファージの先天免疫応答、グルコースの代謝、および脂肪酸の代謝も調節しており、またLXRは多くの異なる組織で発現しているので、LXRのモジュレーターが、多くの疾患や障害に対して最良の治療機会を提供し得ると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔には、一つの態様で、本発明は、式(I)
【化1】

【0006】
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物[式中、
は、C〜Cアルキルであり;
は、フェニルであるか、またはピリジニルであり、この場合該フェニルは、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、および−O(CHOHからそれぞれ独立に選択される1個または複数個の置換基で置換されていてもよい。]
を提供する。
【0007】
本発明のもう一つの態様により、本発明の化合物を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明のもう一つの態様により、有効な治療物質として使用するための本発明の化合物が提供される。
【0009】
本発明のもう一つの態様により、LXRモジュレーター活性に反応する病態または障害の治療で使用するための本発明の化合物が提供される。
【0010】
本発明のもう一つの態様により、2型糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、アテローム性動脈硬化病変、末梢血管疾患、炎症、癌、および中枢神経系の疾患の治療で使用するための本発明の化合物が提供される。
【0011】
本発明のもう一つの態様により、LXRモジュレーター活性に反応する病態または障害の治療で使用するための医薬の製造における本発明化合物の使用が提供される。
【0012】
本発明のもう一つの態様により、2型糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、アテローム性動脈硬化病変、末梢血管疾患、炎症、癌、および中枢神経系の疾患の治療で使用するための医薬の製造における本発明の化合物の使用が提供される。
【0013】
本発明のもう一つの態様により、本発明の化合物を投与することを含んでなる、LXRモジュレーター活性に反応する病態または障害の治療方法が提供される。
【0014】
本発明のもう一つの態様により、本発明の化合物を投与することを含んでなる、2型糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、アテローム性動脈硬化病変、末梢血管疾患、炎症、癌、および中枢神経系の疾患の治療方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
用語は、一般に認められているその意味内で使用されている。以下にある定義は、定義する用語を限定するのではなく、明確にするためのものである。
【0016】
一つの実施形態で、本発明は、Rがメチルまたはブチルであり、Rがフェニルであるか、またはピリジニルであり、この場合該フェニルは、ヒドロキシル、メトキシ、Cl、F、−OCF、および−O(CHOHからそれぞれ独立に選択される1個〜3個の置換基で置換されていてもよい、式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0017】
本発明のもう一つの実施形態により、Rがブチルであり、Rが、ヒドロキシル、メトキシ、およびClからそれぞれ独立に選択される3個の置換基で置換されたフェニルである、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0018】
もう一つの実施形態で、本発明は、以下:
【化2】



【0019】
からなる群から選択される化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0020】
もう一つの実施形態で、本発明は、式(I−A)の化合物:
【化3】

【0021】
またはその塩もしくは溶媒和物[式中、
は、Clまたはメトキシであり;
は、ヒドロキシルまたはメトキシであり;
は、Clまたはメトキシである。]
を提供する。
【0022】
本発明のもう一つの実施形態により、RがClであり、Rがヒドロキシルであり、Rがメトキシである、式I−Aの化合物が提供される。
【0023】
本発明のもう一つの実施形態により、RがClであり、Rがヒドロキシルであり、RがClである、式I−Aの化合物が提供される。
【0024】
本発明のもう一つの実施形態により、Rがメトキシであり、Rがメトキシであり、RがClである、式I−Aの化合物が提供される。
【0025】
本発明のさらなる実施形態により、以下:
【化4】


【0026】
からなる群から選択される化合物またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0027】
実施形態つまり各可変部についての好ましい基を、各可変部に対して別々に上記で一般的に掲載したが、本発明の化合物には、式(I)中の各可変部のいくつかが、実施形態から、つまり各可変部についての好ましい基から選択されるものも含まれる。したがって、本発明には、実施形態および好ましい基のすべての組み合わせが含まれるものとする。
【0028】
本発明の化合物は、1つまたは複数の核内受容体の機能をモジュレートする。特に、本発明の化合物は、肝臓X受容体(LXR)をモジュレートする。本発明には、LXRαおよびLXRβの部分アゴニスト、選択的アゴニスト、アンタゴニスト、または部分アンタゴニストである化合物も含まれる。本発明の化合物は、LXRが関連する疾患および病態の治療で有用である。例えば、LXRの機能または活性のモジュレーションによって予防、軽減、または治癒される疾患または病態に有用である。そのようなモジュレーションは、ある特定の組織内に孤立したものであってもよいし、あるいは治療されている被験者の身体全体に及ぶものであってもよい。
【0029】
本明細書で使用する用語「治療」とは、特定の病態の緩和、病態の症状の解消または低減、病態の進行の減速または解消、および被験者における病態の初回発病もしくは以前に冒されたことのある被験者における病態の再発の防止または遅延を意味する。
【0030】
本発明の一つの実施形態は、各種の障害、例えば、限定するものではないが、心血管疾患、アテローム性動脈硬化病変、脂質異常症、末梢血管疾患、2型糖尿病、炎症、キャッスルマン病、喘息、リューマチ性関節炎、若年性特発関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、胆汁うっ滞、乾癬、全身性紅斑性狼瘡、骨髄腫や悪液質のような癌、およびアルツハイマー病や双極性障害のような中枢神経系の疾患を治療するための、本発明化合物の使用である。
【0031】
本発明の化合物は二つ以上の形態に結晶化することがあり、これは多形現象と呼ばれるもので、そのような多形形態(多形体)は、本発明の範囲内にある。多形現象は、一般に、温度、圧、またはその両方における変化への応答として起こり得るものである。多形現象は、結晶化プロセスにおける変動から生じることもある。多形体は、当技術分野で知られているいくつかの物理的特性、例えばX線回折パターン、溶解度、および融点によって識別することができる。
【0032】
本明細書に記載する化合物のいくつかは1個以上のキラル中心を含むが、そうでない場合は複数種の立体異性体として存在することができる。本発明の範囲には、立体異性体の混合物のみならず精製されたエナンチオマーまたはエナンチオマー/ジアステレオマーリッチな混合物も包含される。本発明の範囲にはまた、式(I)で表される化合物の個々の異性体とならんでその任意の完全または部分的平衡混合物も包含される。本発明にはまた、上記式で表される化合物の個々の異性体が、1個以上のキラル中心が反転しているその個々の異性体の異性体との混合物としても包含されている。
【0033】
本発明の塩は、典型的には、医薬的に許容される塩である。用語「医薬的に許容される塩」に包含される塩とは、毒性のない本発明化合物の塩を意味する。本発明化合物の塩は、本発明化合物中の置換基上にある窒素から誘導される酸付加塩を包含し得る。代表的な塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、ジヒドロ塩化塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グルコリルアラサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、モノカリウムマレイン酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、ステアリン酸塩、スバセチン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド塩、トリメチルアンモニウム塩、および吉草酸塩が挙げられる。本発明化合物の調製には、医薬的に許容されていない他の塩も有用であり得、これらは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0034】
本明細書で使用する用語「溶媒和物」とは、溶質(本発明では、本発明の化合物)と溶媒とによって形成されるさまざまな化学量論量の錯体を意味する。そのような溶媒は、本発明の目的のためには、溶質の生物学的活性を妨害するものであってはならない。好適な溶媒の非限定的な例としては、限定するものではないが、水、メタノール、エタノール、および酢酸が挙げられる。好ましくは、用いる溶媒は、医薬的に許容される溶媒とする。好適な医薬的に許容される溶媒の非限定的な例としては、水、エタノール、および酢酸が挙げられる。最も好ましくは、用いる溶媒は水とする。
【0035】
本明細書で使用する用語「生理学的に機能する誘導体」とは、哺乳動物に投与した場合、本発明の化合物またはその活性代謝産物を(直接的または間接的に)提供することができる、本発明の化合物の医薬的に許容されるあらゆる誘導体を意味する。そのような誘導体、例えば、エステルやアミドは、当業者には、過度の実験を行うこともなく明らかなものである。Burger's Medicinal Chemistry And Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1: Principles and Practiceの教示は参考になると思われる(この文献は、生理学的に機能する誘導体を教示しているという点で、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0036】
本明細書で使用する用語「有効量」は、組織、系、動物、あるいはヒトから、例えば研究者または臨床医が求めている生物学的または医学的反応を引き出すであろう薬物または医薬の量を意味する。生物学的または医学的反応には、予防的反応または治療的反応が考えられ得る。用語「治療的に有効な量」は、そのような量を与えられていない対応の被験体と比較した場合、疾患、障害、あるいは副作用の治療、治癒、予防、または回復の改善、あるいは疾患や障害の進行速度の低下をもたらす任意の量を意味する。この用語の範囲内には、正常時の生理学的な機能を向上させるのに有効な量も含まれる。治療で使用するには、本発明の化合物の治療的に有効な量は、その化学物質のまま投与することができる。さらには、本活性成分は、医薬組成物として提供することができる。
【0037】
したがって、本発明はさらに、本発明の化合物の有効量と、1種以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含んでいる医薬組成物を提供する。本発明の化合物は、本明細書に記載されているとおりである。担体、希釈剤、または賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり且つその医薬組成物の受用者には有害でないという意味において、許容されるものでなければならない。
【0038】
本発明のもう一つの態様により、本発明の化合物と1種以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを混合することを含んでなる医薬製剤の調製方法も提供される。
【0039】
本発明の化合物の治療的に有効な量は、さまざまな要因によって決まるものである。例えば、受用者の種、年齢および体重、治療を必要とするその正確な病態とその重症度、その製剤の特質、および投与の経路は、すべて考慮されるべき要因である。治療的に有効な量は、最終的には、担当の医師または獣医の判断によるべきである。通常、有効量は、1日あたり0.1〜10mg/kg体重の範囲にあるべきである。つまり、70kgの成体哺乳動物に対しては1日あたりの実際の量は、通常、7〜700mgとなるであろう。この量は、1日あたり1回の用量で与えてもよいし、あるいは1日あたりの全体用量が同じとなるような、1日あたりいくつかの(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上の)小分け用量で与えてもよい。本発明化合物の塩または溶媒和物の有効量は、本発明化合物自体の有効量との比例で決定することができる。本明細書で言及されている他の病態の治療には、同じような投薬量が適切であるはずである。
【0040】
医薬製剤は、単位用量あたり所定量の活性成分が入っている単位用量形態で提供することができる。そのような単位には、非限定的な例として、治療されている病態、投与の経路、ならびに患者の年齢、体重および健康状態に応じて0.5mg〜1gの本発明の化合物が入っていてもよい。好ましい単位投薬量製剤は、本明細書中上記に記載した1日あたりの用量または小分け用量、もしくはその適切な分割量の活性成分が入っているものである。そのような医薬製剤は、製薬の技術分野で周知のいずれの方法によっても調製することができる。
【0041】
医薬製剤は、適切ないずれの経路による投与にも、例えば経口(経頬や舌下を含む)、経直腸、経鼻、局所(経頬、舌下または経皮を含む)、経膣あるいは非経口(皮下、筋内、静内または皮内を含む)経路による投与にも適合化させることができる。そのような製剤は、製薬の技術分野で知られているいずれの方法によっても、例えば活性成分と担体または賦形剤とを組み合わせることによって調製することができる。
【0042】
経口投与用に適合化される医薬製剤は、カプセル剤やタブレット剤のような個別の単位;粉末剤や顆粒剤;溶液剤や懸濁液剤(それぞれ水性もしくは非水性液体で);可食フォーム剤やホイップ剤;あるいは水中油型液体エマルジョン剤や油中水型液体エマルジョン剤;として提供することができる。例えば、タブレットやカプセルの形態での経口投与には、活性薬物成分を、経口用非毒性の医薬的に許容される不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合せることができる。粉末剤は、一般に、本化合物を好適な微細サイズに粉砕し、適当な医薬用担体、例えば可食炭水化物(例えば、デンプンまたはマンニトール)と一緒に混合することで調製される。矯味矯臭剤、安定化剤、分散化剤、および着色剤が入っていてもよい。
【0043】
カプセル剤は、粉末、液体、または懸濁液の混合物を調製して、ゼラチンまたは他のなんらかの適当なシェル材でカプセル化することによって製造することができる。カプセル化する前に、混合物には、滑剤や潤滑剤、例えばコロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムや固体状ポリエチレングリコールを加えることができる。カプセル剤が摂取されたときのその医薬のアベイラビリティを良くするために、崩壊剤や可溶化剤、例えばカンテン、炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムを加えることもできる。さらに、望ましいまたは必要な場合は、混合物には、適切なバインダー、潤滑剤、崩壊剤、および着色剤を組み込むこともできる。適切なバインダーの例としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖類例えばグルコースやβ−ラクトース、コーンスウィートナー、天然および合成のガム、例えばアカシア、トラガカントやアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投薬形態で有用な潤滑剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、カンテン、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0044】
タブレット剤は、例えば、粉末混合物を調製し、顆粒化またはスラグ化し、潤滑剤と崩壊剤を加えて、タブレットにプレス加工することで製剤化することができる。粉末混合物は、適切に粉砕された本化合物と、上記に記載した希釈剤つまり基剤とを混合することで調製することができる。任意付加的な成分としては、バインダー例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンあるいはポリビニルピロリドン;パラフィンのような溶液遅延剤;四級塩のような吸収促進剤;および/または吸収剤、例えばベントナイト、カオリンあるいはリン酸二カルシウム;が挙げられる。粉末混合物は、バインダー、例えばシロップ、デンプンペースト、アカディア粘液あるいはセルロースまたは高分子材料の溶液で湿式顆粒化して、スクリーンを通過させてもよい。顆粒化に代わるものとして、粉末混合物を、タブレット成形機に流してもよく、結果として不完全に形成されたスラグが顆粒に砕かれる。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたはミネラルオイルを加えることで潤滑化して、タブレット成形ダイスに付着するのを防いでもよい。潤滑化された混合物は、次に、タブレットに圧縮成形される。本発明の化合物はまた、顆粒化またはスラグ化工程を経ることなしに、易流動性不活性担体と組み合せて、直接タブレットに圧縮成形してもよい。シェラックシールコーティング、砂糖または高分子材料のコーティング、およびワックスの光沢コーティングからなる透明または不透明の保護用コーティングを設けてもよい。これらのコーティングには、異なる単位投薬剤を区別するために、染料を加えてもよい。
【0045】
溶液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤などの経口用液剤は、所与の量が本化合物の所定量を含むような、投薬剤単位形態に調製してもよい。例えばシロップ剤は、本化合物を、適切に矯味矯臭化された水性溶液に溶解させることで調製することができ、エリキシル剤は、無毒のアルコール性ビヒクルを用いることで調製することができる。懸濁液剤は、一般には、本化合物を、無毒のビヒクル中に分散させることで製剤化することができる。可溶化剤や乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコールやポリオキシエチレンソルビトールエーテル;安定化剤;矯味矯臭付加剤、例えばペパーミントオイルや天然の甘味料、サッカリン、または他の人工甘味料;なども加えることができる。
【0046】
適切であれば、経口投与用の投薬剤単位製剤は、マイクロカプセル化することができる。放出を遅延または持続させるためには、製剤は、例えばコーティングすることによって、あるいは粒子状物質をポリマーやワックスなどの中に包埋することによっても調製することができる。
【0047】
本発明の化合物は、リポソーム送達システムの形態、例えば小さなユニラメラベシクル、大きなユニラメラベシクル、およびマルチラメラベシクルの形態で投与することができる。リポソームは、各種のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成させることができる。
【0048】
本発明の化合物は、本化合物分子がカップリングされているモノクローナル抗体を個々の担体として用いることによっても送達することができる。
【0049】
本化合物は、標的化可能薬物担体としての可溶性ポリマーとカップリングさせてもよい。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミドフェノールやパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキサイドポリリシンを挙げることができる。さらには、本化合物は、薬物の制御放出を達成するうえで有用な生分解性のポリマー類、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーにカップリングさせることができる。
【0050】
経皮投与用に適合化される医薬製剤は、長期間に亘って受用者の表皮と緊密に接触したままであることが意図された個々のパッチとして提供することができる。本活性成分は、例えば、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般的に記載されているイオン浸透により、パッチから送達することができる(該文献は、そのような送達システムに関して参照により本明細書に組み込まれる)。
【0051】
局所投与用に適合化される医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、粉末剤、溶液剤、ペースト剤、ジェル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、またはオイル剤として製剤化することができる。
【0052】
眼やその他の外部の組織(例えば、口や皮膚)の治療には、製剤は、局所用軟膏剤またはクリーム剤として適用することができる。軟膏剤に製剤化する場合は、本活性成分は、パラフィン系炭化水素か、または水混和性軟膏基剤と一緒に用いることができる。別の形態として、本活性成分は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤で、クリーム剤に製剤化することができる。
【0053】
眼への局所投与用に適合化される医薬製剤としては点眼剤が挙げられる。この場合は、本活性成分は、適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁される。
【0054】
口の中での局所投与用に適合化される医薬製剤としては、ロゼンジ剤、トローチ剤、およびマウスウォッシュ剤が挙げられる。
【0055】
経鼻投与用に適合化される医薬製剤としては、担体が固体である場合、粒子径が例えば20〜500ミクロンの粗末剤が挙げられる。この粉末剤は、鼻から吸い込む方式で、すなわち鼻の下近くに保持された粉末の容器から鼻道の中に急に吸い込むことで投与される。鼻内スプレー剤として、あるいは点鼻剤として投与するための、担体が液体である好適な製剤としては、本活性成分の水性もしくは油性溶液剤が挙げられる。
【0056】
吸入による投与用に適合化される医薬製剤としては、微細粒子のダスト剤やミスト剤が挙げられる。これらは、各種タイプの投薬量計量式の加圧エアロゾル器、ネブライザー器、または吹き入れ器により発生させることができる。
【0057】
直腸投与用に適合化される医薬製剤は、坐薬剤や浣腸剤として提供することができる。
【0058】
膣内投与用に適合化される医薬製剤は、膣座薬剤、タンポン剤、クリーム剤、ジェル剤、ペースト剤、フォーム剤、またはスプレー製剤として提供することができる。
【0059】
非経口投与用に適合化される医薬製剤としては、水性および非水性の滅菌注射溶液剤(これには、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤や、製剤を対象の受容者の血液と等張にする溶質が入っていてもよい)、および水性および非水性の滅菌懸濁液剤(これには、懸濁化剤や増粘剤が入っていてもよい)が挙げられる。この製剤は、1回用量または複数回用量の容器、例えば密封されたアンプルやバイアルに入れて提供することができ、また使用直前に滅菌液体担体(例えば注射用の水)を加えることのみを必要とする凍結乾燥(lyophilized)状態で貯蔵しておくこともできる。即席の注射用溶液剤や懸濁液剤は、滅菌の粉末剤、顆粒剤、タブレット剤から調製することができる。
【0060】
上記で詳細に述べた成分以外にも、本製剤には、当該の製剤のタイプに関係する技術分野で慣用のその他の添加剤が入っていてもよい。例えば、経口投与に適した製剤には、矯味矯臭剤や着色剤が入っていてもよい。
【0061】
本発明の化合物およびその塩またはそれらの溶媒和物は、上記した病態の治療には単独であるいは他の治療剤との組み合せで用いることができる。本発明の化合物と他の医薬的に活性な薬剤とは一緒にまたは別々に投与することができるので、別々に投与する場合は、投与は同時または順次(任意の順序で)に行うことができる。本発明の化合物および他の医薬的に活性な薬剤の量および投与の相対的なタイミングは、所望の組み合せの治療効果を達成するように選ばれるものである。本発明の化合物と他の治療剤との組み合せでの投与は:(1)両方の化合物を含んでいる単一の医薬組成物;または(2)それぞれが化合物のひとつを含んでいる別々の医薬組成物;での同時的な投与による組み合せであってよい。別の形態として、組み合せは、順次方式で別々に投与してもよく、この場合は一つの治療剤が先ず投与され、他の治療剤が次に投与される、あるいはこの逆で投与される。このような順次的投与は、時間的に近いものであってもよいし、時間的に離れたものであってもよい。
【0062】
本発明の化合物は様々な障害や病態の治療で用いることができるものであり、それゆえに、本発明の化合物は、そのような障害や病態の治療で有用な様々な他の好適な治療剤との組み合せで用いることができる。非限定的な例としては、抗糖尿病薬、抗骨粗しょう症薬、やせ薬、抗炎症薬、抗不安症薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗血小板剤、抗血栓薬および血栓溶解剤、強心配糖体、コレステロールまたは脂質低下薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、キナーゼ阻害薬、甲状腺模倣剤、ウイルス性治療剤、認知障害治療薬、睡眠障害治療薬、抗がん剤、放射線療法剤、抗増殖薬、および抗腫瘍薬と本発明との組み合せが挙げられる。さらには、本発明の化合物は、栄養補助食品、例えばアミノ酸、トリグリセリド、ビタミン、ミネラル、クレアチン、ピロ酸、カルニチン、あるいはコエンザイムQ10と組み合せることもできる。
【0063】
特に、本発明の化合物は、単独で、または他の薬剤との組み合わせで、心血管疾患、アテローム性動脈硬化病変、脂質異常症、末梢血管疾患、2型糖尿病、炎症、キャッスルマン病、喘息、リューマチ性関節炎、若年性特発関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、胆汁うっ滞、乾癬、全身性紅斑性狼瘡、骨髄腫や悪液質のような癌、およびアルツハイマー病や双極性障害のような中枢神経系の疾患の治療で有用であると考えられる。
【0064】
本発明のさらなる態様により、様々な障害、例えば、限定するものではないが、心血管疾患、アテローム性動脈硬化病変、脂質異常症、末梢血管疾患、2型糖尿病、炎症、キャッスルマン病、喘息、リューマチ性関節炎、若年性特発関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、胆汁うっ滞、乾癬、全身性紅斑性狼瘡、骨髄腫や悪液質のような癌、およびアルツハイマー病や双極性障害のような中枢神経系の疾患の治療を必要とする哺乳動物の治療方法が提供され、該方法は、被験者に本発明の化合物を投与することを含む。本発明の化合物による治療を必要とする哺乳動物は典型的にはヒトである。
【0065】
本発明の化合物は、周知の標準的な合成方法を含めて、様々な方法により生成させることができる。説明のための一般的な合成方法を以下に述べ、その後、本発明の具体的な化合物を実際の実施例で調製する。
【0066】
以下に記載するすべてのスキームでは、合成化学の一般原理に従って、必要な場合は、感応性または反応性の基に対する保護基を用いる。保護基は、有機合成の標準的な方法(T. W. Green and P. G. M. Wuts (1991) Protecting Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons(保護基に関して参照により組み込まれる)に従って操作する。これらの基は、当業者には容易に明らかである方法を用いて化合物合成の都合のよい段階で除去される。プロセスの選択ならびに反応条件およびその実行の順序は、本発明の化合物の調製と整合したものでなければならない。
【0067】
当業者なら、本発明の化合物に立体中心が存在するかどうかは解かるものである。したがって、本発明には、すべての考えられ得る立体異性体が含まれ、またラセミ化合物のみならず個々のエナンチオマーも同様に含まれる。単一のエナンチオマーとして化合物が望まれている場合は、そのような化合物は、立体特異的合成により、あるいは最終生成物または都合のよい任意の中間体の分割により得ることができる。最終生成物、中間体、または出発物質の分割は、当技術分野で知られている適切な任意の方法により行うことができる。例えば、Stereochemistry of Organic Compounds by E. L. Eliel, S. H. Wilen, and L. N. Mander (Wiley-Interscience, 1994)(立体化学に関して参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0068】
本発明による代表的なLXRモジュレーターとしては以下が挙げられる:
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−{4−[メチル(フェニルメチル)アミノ]フェニル}−2−プロパノール;
2−{4−[ブチル(ピリジン−2−イルメチル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール;
2−{4−[ベンジル(ブチル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール;
2−(4−{ブチル[3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジル]アミノ}フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール;
2−{4−[ブチル(ピリジン−4−イルメチル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール;
3−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]フェノール;
2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]フェノール;
4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]フェノール;
2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−6−フルオロフェノール;
2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメトキシ)フェノール;
2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−4,6−ジクロロフェノール;
2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−4−クロロフェノール;
4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−2−クロロフェノール;
4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−2−クロロ−6−メトキシフェノール;
4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−2,6−ジクロロフェノール;
2−[4−(ブチル{[3−クロロ−4,5−ビス(メチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール;
2−{4−[ブチル(3,5−ジクロロベンジル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール;
2−{4−[ブチル(3,5−ジクロロ−4−メトキシベンジル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール;
またはこれらの塩もしくは溶媒和物。
【0069】
略記号
本明細書にあるプロセス、スキームおよび実施例で使用する略記号および慣例は、本明細書で使用する場合、現代の科学文献、例えば、Journal of the American Chemical SocietyやJournal of Biological Chemistryで使用されているものと一致したものとなっている。具体的には、以下の略記号が、実施例で、また明細書全体を通しても使用され得る。
【0070】
g(グラム);
mg(ミリグラム);
L(リットル);
mL(ミリリットル);
μL(マイクロリットル);
psi(ポンド/平方インチ);
M(モル濃度);
mM(ミリモル濃度);
Hz(ヘルツ);
MHz(メガヘルツ);
mol(モル);
mmol(ミリモル);
rt(室温);
min(分);
h(時);
mp(融点);
TLC(薄層クロマトグラフィー);
CDCl(重水素化クロロホルム);
CDOD(重水素化メタノール);
SiO(シリカ);
DMSO(ジメチルスルホキシド);
EtOAc(酢酸エチル);
atm(気圧);
HCl(塩酸);
CHCl(クロロホルム);
DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);
Ac(アセチル);
Me(メチル);
Et(エチル);
MeOH(メタノール);
EtOH(エタノール);
t−Bu(t−ブチル);
EtO(ジエチルエーテル);
(窒素);
MsCl(塩化メタンスルホニル);
sat’d(飽和);
DMAP(4−(ジメチルアミノ)ピリジン);
AcHO(酢酸);
DCM(ジクロロメタン);
LAH(リチウムアルミニウムヒドリド);
IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド);
TBS(トリス緩衝生理食塩水);
DTT(ジチオトレイトール);
EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸);
BSA(ウシ血清アルブミン);
SPA(シンチレーション近接アッセイ);
ELISA(酵素免疫測定法)。
【0071】
特に断らない限り、温度はすべて℃(摂氏)で表されている。反応はすべて特に断らない限り不活性雰囲気下の室温で行った。合成の詳細なしに用いられている試薬は、市販されているか、または文献の手順に従って生成させたものである。
【0072】
H NMRスペクトルは、Varian Gemini 400MHz NMR分光計で記録した。H NMRスペクトルは、ケミカルシフトδ、プロトンの数、多重度(s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、m:マルチプレット、br s:ブロードシングレット)、およびヘルツ単位でのカップリング定数(J)として報告されている。Electron Spray(ES)またはChemical Ionization(CI)は、Hewlett Packard 5989A質量分光計で記録した。
【0073】
スキーム
【化5】

【実施例】
【0074】
中間体1:2−[4−(ブチルアミノ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール
【化6】

【0075】
触媒量のDMAPの存在下、2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール10g(0.04mol)のDCM170mL溶液に12mL(0.07mol)の無水酪酸および14mL(0.09mol)のトリエチルアミンを加えた。この混合物を40℃で18時間加熱した。この時点で、反応混合物は蒸発し、乾燥していた。残留物を酢酸エチルに溶解させて、10%炭酸カリウム溶液を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。この時点で、固形物が沈殿していた。固形物を濾過により粗酪酸アミド/エステル生成物として回収した。このアミド/エステルを95mLの1M LAH/ジエチルエーテルにより室温で4時間処理した。この時点で、20mLの水を0℃でゆっくり加え、その後、50mLの15%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。得られた混合物をセライトに通すことで濾過した。濾液を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして乾燥するまで蒸発させて、9.5gの中間体1を得た。1H-NMR (CDCl3) δ 0.98 (t, 3H), 1.45 (m, 2H), 1.63 (m, 2H), 3.15 (t, 2H), 6.63 (dd, J=1.9, 9.0 Hz, 2H), 7.45 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
【0076】
実施例1:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−{4−[メチル(フェニルメチル)アミノ]フェニル}−2−プロパノール
【化7】

【0077】
2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール101mg(0.39mmol)のMeOH/トリメチルオルトホルメート(1:1)800μL室温溶液を40μL(0.39mmol)のベンズアルデヒドで処理した。一晩攪拌した後、TLCが、中間体イミンが消尽されたことを示すまで反応を固体ナトリウムボロヒドリドで少しずつ処理した。溶離液としてEtOAcを用いて反応をシリカゲルのパッドに通すことで濾過して、濾液を真空中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(4:1/ヘキサン:EtOAc)による精製により、85mg(63%)の中間体二級アミンを得た。この中間体60mg(0.17mmol)の氷酢酸600μL溶液を過剰パラホルムアルデヒド、その後53mg(0.85μmol)のNaCNBHで処理した。室温で15時間攪拌した後、溶離液としてEtOAcを用いて反応をシリカゲルに通すことで濾過して、濾液を真空中で濃縮した。4:1/ヘキサン:EtOAcを用いた分取型TLC(シリカゲル、1000μm)により精製して、30mg(50%)の表題化合物を得た。1H-NMR (CDCl3) δ 3.07 (s, 3H), 4.56 (s, 2H), 6.76 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 7.18-7.29 (m, 3H), 7.33 (t, J=7.4 Hz , 2H), 7.49 (d, J=8.8 Hz, 2H)。マススペクトル (ES) m/e= 364 (M+1)。
【0078】
実施例2:2−{4−[ブチル(ピリジン−2−イルメチル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化8】

【0079】
2−(ブロモメチル)ピリジン0.06g(0.32mmol)のDMF0.2mL溶液に0.05g(0.16mmol)の2−[4−(ブチルアミノ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール(中間体1)および0.06g(0.48mmol)の炭酸カリウムを加えた。この混合物を140℃で15分間マイクロウェーブ加熱した。この時点で、反応混合物は蒸発し、乾燥していた。残留物を、Phenomenex Luna 5μマイクロC18(150×21mm)カラムを有する分取Agilent HPLC装置で精製し、0.1%のトリフルオロ酢酸が存在している30%〜100%のアセトニトリル/水で10分かけて溶離して、表題化合物を得た。1H-NMR (CD3OD) δ 1.01 (t, 3H), 1.45 (m, 2H), 1.71 (m, 2H), 3.61 (t, 2H), 4.98 (s, 2H), 6.79 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 7.54 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 7.86 (t, 2H), 8.42 (t, 1H), 8.72 ( d, J=5.5Hz, 1H)。マススペクトル (APCI) m/e= 407 (M+1)。
【0080】
実施例3:2−{4−[ベンジル(ブチル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化9】

【0081】
ベンズアルデヒド1.7g(15.85mmol)のDCE30mL溶液に1mLの氷酢酸、1g(3.2mmol)の2−[4−(ブチルアミノ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール(中間体1)および3.4g(16mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを加えた。混合物を室温で18時間攪拌した。この時点で、反応混合物は蒸発し、乾燥していた。残留物を、Phenomenex Luna 5μC18(150×21mm)カラムを有する分取Agilent HPLC装置で精製し、0.1%のトリフルオロ酢酸が存在している30%〜100%のアセトニトリル/水で10分かけて溶離して、表題化合物を得た。1H-NMR (CD3OD) δ 0.97 (t, 3H), 1.41 (m, 2H), 1.65 (m, 2H), 3.49 (t, 2H), 4.62 (s, 2H), 6.76 (d, J= 9.0 Hz, 2H), 7.21-7.33 (m, 5H), 7.48 (d, J=8.8 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 406 (M+1)。
【0082】
以下の化合物を同様にして調製した。
【0083】
実施例4:2−(4−{ブチル[3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジル]アミノ}フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化10】

【0084】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.42 (m, 2H), 1.66 (m, 2H), 3.48 (t, 2H), 3.84 (t, 2H), 3.98 (t, 3H), 4.58 (s, 2H), 6.72 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.81 (s, 1H), 6.82 ( d, J=6.9 Hz, 2H), 7.23 (t, 1H), 7.45 (d, J= 8.7 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 466 (M+1)。
【0085】
実施例5:2−{4−[ブチル(ピリジン−4−イルメチル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化11】

【0086】
1H-NMR (CD3OD) δ 1.01 (t, 3H), 1.46 (m, 2H), 1.70 (m, 2H), 3.59 (t, 2H), 4.94 (s, 2H), 6.72 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.50 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.90 (d, J= 4.8 Hz, 2H), 8.74 (br s, 2H), マススペクトル (APCI) m/e= 407 (M+1)。
【0087】
実施例6:3−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]フェノール
【化12】

【0088】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.41 (m, 2H), 1.67 (m, 2H), 3.45 (t, 2H), 4.54 (s, 2H), 6.65-6.73 (m, 5H), 7.14 (m, 1H), 7.45 (d, J= 8.9 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 422 (M+1)。
【0089】
実施例7:2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]フェノール
【化13】

【0090】
1H-NMR(CDCl3)δ 0.91(t、3H)、1.32(m、2H)、1.56(m、2H)、3.31(t、2H)、4.47(s、2H)、6.87(m、2H)、7.03(d、J=8.9 Hz、2H)、7.18(m、2H)、7.59(d、J=8.7 Hz、2H)。マススペクトル(APCI)m/e= 422(M+1)。
【0091】
実施例8:4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]フェノール
【化14】

【0092】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.89 (t, 3H), 1.25 (m, 2H), 1.51 (m, 2H), 3.08 (t, 2H), 3.88 (s, 2H), 6.73 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 6.84 (d, J= 8.7 Hz, 1H), 6.99 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.43 (s, 1H), 7.52(d, J=8.6 Hz, 1H)。マススペクトル (ES) m/e= 422 (M+1)。
【0093】
実施例9:2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−6−フルオロフェノール
【化15】

【0094】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.43 (m, 2H), 1.67 (m, 2H), 3.50 (t, 2H), 4.61 (s, 2H), 6.78 (m, 4H), 6.96 (m, 1H), 7.48 (d, J=8.8 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 440 (M+1)。
【0095】
実施例10:2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメトキシ)フェノール
【化16】

【0096】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.42 (m, 2H), 1.67 (m, 2H), 3.50 (t, 2H), 4.57 (s, 2H), 6.74-6.88 (m, 4H), 6.98 (dd, J=2.2, 8.6 Hz, 1H), 7.50 (d, J=8.7 Hz, 2H)。マススペクトル (ES) m/e= 506 (M+1)。
【0097】
実施例11:2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−4,6−ジクロロフェノール
【化17】

【0098】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.90 (t, 3H), 1.41 (m, 2H), 1.68 (m, 2H), 3.48 (t, 2H), 4.57 (s, 2H), 6.70 (d, J=9.0 Hz, 2H), 6.86 (d, J=2.3 Hz, 1H), 7.25 (d, J=2.5 Hz, 1H), 7.49 (d, J=8.7 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 490 (M+1)。
【0099】
実施例12:2−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−4−クロロフェノール
【化18】

【0100】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.99 (t, 3H), 1.43 (m, 2H), 1.66 (m, 2H), 3.52 (t, 2H), 4.56 (s, 2H), 6.77-6.90 (m, 4H), 7.06 (dd, J=2.6, 8.6 Hz, 1H), 7.54 (d, J=8.9 Hz, 2H)。マススペクトル (ES) m/e= 456 (M+1)。
【0101】
実施例13:4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−2−クロロフェノール
【化19】

【0102】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.96 (t, 3H), 1.39 (m, 2H), 1.61 (m, 2H), 3.50 (t, 2H), 4.53 (s, 2H), 6.83-6.99 (m, 4H), 7.13(d, J=1.9 Hz, 1H), 7.55 (d, J=8.7 Hz, 2H)。マススペクトル (ES) m/e= 456 (M+1)。
【0103】
実施例14:4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−2−クロロ−6−メトキシフェノール
【化20】

【0104】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.96 (t, 3H), 1.41 (m, 2H), 1.61 (m, 2H), 3.51 (t, 2H), 3.77 (s, 3H), 4.53 (s, 2H), 6.69 (d, J= 1.7 Hz, 1H), 6.76 (d, J= 1.6 Hz, 1H), 6.89 (d, J= 9.0 Hz, 2H), 7.56 (d, J=8.7 Hz, 2H)。マススペクトル (ES) m/e= 486 (M+1)。
【0105】
実施例15:4−[(ブチル{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}アミノ)メチル]−2,6−ジクロロフェノール
【化21】

【0106】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.41 (m, 2H), 1.64 (m, 2H), 3.46 (t, 2H), 4.50 (s, 2H), 6.75 (d, J= 9.1 Hz, 2H), 7.12 (s, 2H), 7.50 (d, J= 8.9 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 490 (M+1)。
【0107】
実施例16:2−[4−(ブチル{[3−クロロ−4,5−ビス(メチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール
【化22】

【0108】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, J=7.2 Hz, 3H), 1.30-1.50 (m, 2H), 1.55-1.75 (m, 2H), 3.50 (t, J=7.7 Hz, 2H), 3.78 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 4.56 (s, 2H), 6.82 (dd, J = 6.3, 1.7 Hz, 4H), 7.54 (d, J = 8.8 Hz, 2H); マススペクトル (ES) m/e = 500 (M+1)。
【0109】
実施例17:2−{4−[ブチル(3,5−ジクロロベンジル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化23】

【0110】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.42 (m, 2H), 1.66 (m, 2H), 2.51 (s, 3H), 3.48 (t, 2H), 4.55 (s, 2H), 6.71 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 7.17 (d, J= 1.5 Hz, 2H), 7.30 (s, 1H), 7.49 (d, J= 8.9 Hz, 2H)。マススペクトル (APCI) m/e= 474 (M+1)。
【0111】
実施例18:2−{4−[ブチル(3,5−ジクロロ−4−メトキシベンジル)アミノ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化24】

【0112】
1H-NMR (CD3OD) δ 0.98 (t, 3H), 1.41 (m, 2H), 1.64 (m, 2H), 3.48 (t, 2H), 3.85 (s, 3H), 4.55 (s, 2H), 6.74 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 7.21 (s, 2H), 7.52 (d, J= 8.8 Hz, 2H)。マススペクトル (ES) m/e= 504 (M+1)。
【0113】
生物学的セクション
本発明の化合物はLXRβのモジュレーターである。加えて、本発明の化合物は、LXRαのモジュレーターとしても有用であると思われる。LXRによって介在される活性は、以下のアッセイを用いて決定した。
【0114】
LXRα、LXRβの結合アッセイ
【0115】
LXRβ
ヒトLXRβリガンド結合ドメイン(LXRβ LBD)をE.coli株BL21(DE3)中でアミノ末端ポリヒスチジンタグ融合蛋白として発現させた。発現は、IPTG誘導性T7プロモータの調節下にあった。この組み換え蛋白をコードするDNAと修飾ポリヒスチジンタグを発現ベクターpRSETa(Invitrogen社)中にサブクローニングした。修飾ポリヒスチジンタグの配列(MKKGHHHHHHG)をフレームでLXRβの残基185〜461に融合させた。ヒトLXRβ LBDのコード配列は、Genbank登録番号U07132(BioResources #5464)から導いた。得られた全コード配列は以下のとおりである:MKKGHHHHHHGPVGPQGSSSSASGPGASPGGSEAGSQGSGEGEGVQLTAAQELMIQQLVAAQLQCNKRSFSDQPKVTPWPLGADPQSRDARQQRFAHFTELAIISVQEIVDFAKQVPGFLQLGREDQIALLKASTIEIMLLETARRYNHETECITFLKDFTYSKDDFHRAGLQVEFINPIFEFSRAMRRLGLDDAEYALLIAINIFSADRPNVQEPGRVEALQQPYVEALLSYTRIKRPQDQLRFPRMLMKLVSLRTLSSVHSEQVFALRLQDKKLPPLLSEIWDVHE。10リットルの発酵バッチを、0.1mg/mLのアンピシリンを含む25℃のRich PO培地中で12時間生育させ、9℃まで冷却し、その温度に36時間保持して、OD600=14の密度にした。この細胞密度で、0.25mM IPTGを加え、誘導を9℃で24時間進めて、最終OD600=16にした。細胞を遠心分離(20分、3500G、4℃)により収穫して、濃縮された細胞スラリーを−80℃のPBS中に貯蔵した。
【0116】
LXRβリガンド結合ドメインの精製:30〜40gの細胞ペースト(発酵バッチ2〜3リットルに相当)を300〜400mLのTBS・pH8.5(25mM Tris、150mM NaCl)に再懸濁させた。ホモジナイザー(Rannie社)に3回通すことにより細胞を溶解し、細胞破壊物破片を遠心分離(30分、20,000G、4℃)により除去した。透明になった上澄液を粗い予備フィルターに通すことで濾過し、500mMのイミダゾールを含有しているTBS・pH8.5を加えて、最終イミダゾール濃度50mMを得た。この溶解産物を、Sepharose[Ni++荷電]キレート化レジン(Pharmacia社)が充填され、TBS・pH8.5/50mMイミダゾールで前処理平衡化されたカラム(6×8cm)に投入した。ベースライン吸収まで平衡緩衝液で洗浄した後、カラムを、50〜275mMイミダゾール/TBS・pH8.5の線形勾配で展開させた。カラム画分を貯留し、5%の1,2−プロパンジオール、5mMのDTTおよび0.5mMのEDTAを含有しているTBS・pH8.5に対して透析を行った。この蛋白サンプルをCentri−prep 10K(Amicon社)を用いて濃縮し、5%の1,2−プロパンジオール、5mMのDTTおよび0.5mMのEDTAを含有しているTBS・pH8.5で前処理平衡化されたSepharose S−75レジン(Pharmacia社)が充填されたカラム(3×90cm)を用いて、サイズ排除に付した。
【0117】
LXRβのビオチニル化:精製LXRβ LBDを、PD−10ゲル濾過カラムを用いて、PBS(100mMリン酸ナトリウム、pH7.2、150mM NaCl)に脱塩/緩衝液交換した。LXRβ LBDをおよそ10mM/PBSに希釈し、5倍モル過剰のNHS−LC−Biotin(Pierce社)を最小容量のPBSで加えた。この溶液を、ゆっくり混合しながら30分間周囲室温でインキュベートした。ビオチニル化修飾反応は、2000xモル過剰のTris−HCl・pH8を加えることにより停止させた。修飾LXRβ LBDを4回の緩衝液交換(それぞれ、少なくとも50倍容量で、5mMのDTT、2mMのEDTAおよび2%のスクロースを含有しているPBS)に対して透析を行った。ビオチニル化LXRβ LBDを質量分光分析に付して、ビオチニル化試薬による修飾の程度を明らかにした。概して、およそ95%の蛋白が少なくとも1個のビオチニル化部位を有し、また全体としてのビオチニル化の程度は、1〜9個の複数部位の正規分布に従っていた。
【0118】
LXRβ SPA用アッセイ緩衝液:50mM MOPS・pH7.5、50mM NaF、0.05mM CHAPS。0.1mg/mLのFraction5脂肪酸フリーBSA。アッセイ緩衝液中での使用直前に固体DTTをアッセイ緩衝液に加える(最終濃度=10mM)。
【0119】
SPAビーズ/LXRβ/H放射線リガンド溶液の調製:10mMの新たに固体から加えられたDTTを含有している緩衝液に、適切な量の5mg/mLのSPAビーズ溶液を加えて0.25mg/mLの最終濃度にする。適切な量のLXRβ LBDを加えて、25nMの最終濃度を得、ゆっくり上下を逆にして混合する。室温で30分インキュベートし、ビーズを2500rpmで10分間遠心沈降させて、ビーズペレットを乱すことなく上澄液を気をつけて除去する。10mMの新たに加えられたDTTを含有しているアッセイ緩衝液で元の体積まで希釈する。ビーズ溶液に放射線標識リガンド(N−−メチル−N−{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}ベンゼンスルホンアミド)を10nMの最終濃度まで加える。試験化合物が入っている96ウェルプレートの各ウェルに、マルチドロップを用いて100μLを加え、室温で30分インキュベートし、Microbeta 1450 Triluxで読み取る。次の式によりデータを標準化する:(1−(被検体の値−非特異的の平均値)/(100%の平均値−非特異的の平均値))×100=%阻害。
【0120】
LXRα
ヒトLXRαリガンド結合ドメイン(LXRα LBD)をE.coli株BL21(DE3)中でアミノ末端ポリヒスチジンタグ融合蛋白として発現させた。発現は、IPTG誘導性T7プロモータの調節下にあった。この組み換え蛋白をコードするDNAをpRSETa発現ベクター(Invitrogen社)中にサブクローニングした。ヒトLXRαのアミノ酸183〜447をコードする配列を、ベクター(MRGSHHHHHHGMAS)から誘導されたポリヒスチジンタグか、または修飾ヒスチジンタグ(MKKGHHHHHHG)にフレームで融合させた。ヒトLXRα LBDのコード配列は、Genbank登録番号U22662(BioResources #18711および#13635)から導いた。得られた全コード配列は以下のとおりである:MKKGHHHHHHGEEEQAHATSLPPRASSPPQILPQLSPEQLGMIEKLVAAQQQCNRRSFSDRLRVTPWPMAPDPHSREARQQRFAHFTELAIVSVQEIVDFAKQLPGFLQLSREDQIALLKTSAIEVMLLETSRRYNPGSESITFLKDFSYNREDFAKAGLQVEFINPIFEFSRAMNELQLNDAEFALLIAISIFSADRPNVQDQLQVERLQHTYVEALHAYVSIHHPHDRLMFPRMLMKLVSLRTLSSVHSEQVFALRLQDKKLPPLLSEIWDVHE。10リットルの発酵バッチを、0.1mg/mLのアンピシリンを含む25℃のRich PO培地中で12時間生育させ、9℃まで冷却し、その温度に36時間保持して、OD600=14の密度にした。この細胞密度で、0.25mM IPTGを加え、誘導を9℃で24時間進めて、最終OD600=16にした。細胞を遠心分離(20分、3500G、4℃)により収穫して、濃縮された細胞スラリーを−80℃のPBS中に貯蔵した。
【0121】
LXRαリガンド結合ドメインの精製:典型的には、50〜100gの細胞ペーストを250〜750mLのTBS・pH8.5(25mM Tris、150mM NaCl)に再懸濁させる。APV Rannie MINIラボホモジナイザーに3回通すことにより細胞を溶解し、細胞破壊物破片を遠心分離(30分、20,000G、4℃)により除去する。透明になった上澄液を粗い予備フィルターに通すことで濾過し、500mMのイミダゾールを含有しているTBS・pH8.5を加えて、最終イミダゾール濃度50mMを得る。この溶解産物を、Sepharose[Ni++荷電]キレート化レジン(Pharmacia社)が充填され、TBS・pH8.5/50mMイミダゾールで前処理平衡化されたカラム(XK−26、10cm)に投入する。ベースライン吸収まで平衡緩衝液で洗浄した後、カラムを、90mMのイミダゾールを含有しているおよそ1カラム体積のTBS・pH−8.5で洗浄する。LXRα LBD(183〜447)を50〜500mMのイミダゾール勾配で溶離する。カラムピーク画分を直ちに貯留し、5%の1,2−プロパンジオール、0.5mMのEDTAおよび5mMのDTTを含有している25mM Tris・pH8.5で4〜5倍に希釈する。次いでこの希釈された蛋白サンプルをPoros HQレジン(陰イオン交換)が充填されたカラム(XK−16、10cm)に投入する。希釈用緩衝液でベースライン吸収まで洗浄した後、30〜500mMのNaCl勾配で溶離する。ピーク画分を貯留し、Centri−prep 10K(Amicon社)を用いて濃縮し、5%の1,2−プロパンジオール、0.5mMのEDTAおよび5mMのDTTを含有しているTBS・pH8.5で前処理平衡化されたSuperdex−75レジン(Pharmacia社)が充填されたカラム(XK−26、90cm)を用いて、サイズ排除に付した。
【0122】
LXRαのビオチニル化:精製LXRα LBDを、PD−10ゲル濾過カラムを用いて、PBS(100mMリン酸ナトリウム、pH7.2、150mM NaCl)に脱塩/緩衝液交換した。LXRα LBDをおよそ10mM/PBSに希釈し、最小容量のPBSで5倍モル過剰のNHS−LC−Biotin(Pierce社)を加えた。この溶液を、ゆっくり混合しながら30〜60分間周囲温度でインキュベートした。ビオチニル化修飾反応は、2000xモル過剰のTris−HCl・pH8を加えることにより停止させた。修飾LXRα LBDを4回の緩衝液交換(それぞれ、少なくとも50倍容量で、150mMのNaCl、5mMのDTT、2mMのEDTAおよび2%のスクロースを含有している25mMのTris・pH8.5)に対して透析を行った。ビオチニル化LXRα LBDを質量分光分析に付して、ビオチニル化試薬による修飾の程度を明らかにした。概して、およそ95%の蛋白が少なくとも1個のビオチニル化部位を有し、また全体としてのビオチニル化の程度は、1〜6個の複数部位の正規分布に従っていた。
【0123】
LXRα SPA用アッセイ緩衝液:50mM MOPS・pH7.5、50mM NaF、0.05mM CHAPS。0.1mg/mLのFraction5脂肪酸フリーBSA。アッセイ緩衝液中での使用直前に固体DTTをアッセイ緩衝液に加える(最終濃度=10mM)。
【0124】
SPAビーズ/LXRα/H放射線リガンド溶液の調製:10mMの新たに固体から加えられたDTTを含有している緩衝液に、適切な量の5mg/mLのSPAビーズ溶液を加えて0.25mg/mLの最終濃度にする。適切な量のLXRα LBDを加えて、25nMの最終濃度を得、ゆっくり上下を逆にして混合する。室温で30分インキュベートする。ビーズを2500rpmで10分間遠心沈降させて、ビーズペレットを乱すことなく上澄液を気をつけて除去する。10mMの新たに加えられたDTTを含有しているアッセイ緩衝液で元の体積まで希釈する。ビーズ溶液に放射線標識リガンド(N−−メチル−N−{4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}ベンゼンスルホンアミド)を10nMの最終濃度まで加える。試験化合物が入っている96ウェルプレートの各ウェルに、マルチドロップを用いて100μLを加え、室温で30分インキュベートし、Microbeta 1450 Triluxで読み取る。次の式によりデータを正規化する:(1−(被検体の値−非特異的の平均値)/(100%の平均値−非特異的の平均値))×100=%阻害。
【表1】

【0125】
IL−6 ELISA:ヒト単球/マクロファージ細胞株であるTHP−1(ATCC,Manassas,VA.)を40ng/mLの1α,25−ジヒドロキシ−VitaminD(EMD Biosciences,Inc.,San Diego,CA)により10×10細胞/50mL標準細胞培養培地で72時間分化させた。分化THP−1細胞を完全培地にある96ウェルプレート(1×10/mL、200μL/ウェル)に接種した。DMSO溶液中化合物(最終0.2%DMSO)を2ウェルずつに加え、最終濃度は2.3nMから5.0μMまでの範囲とした(37℃/5%CO加湿インキュベータ)。化合物またはビヒクルによる6時間の予備処理の後、リポ多糖体(Sigma,St.Louis,MO)を各ウェルに最終濃度100ng/mLまで加えた。次いでプレートをさらに18時間インキュベートした(37℃/5%CO加湿インキュベータ)。プレートを卓上遠心分離器中1200rpmで5分間遠心分離して、すべての細胞をペレット化した。培地を取り出し、別の96ウェルプレートに移し、アッセイまで4℃で貯蔵しておいた。この培地中のヒトIL−6をIL−6 ELISAキット(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いてアッセイした。本発明の化合物でTHP−1細胞を処理すると、ビヒクルで処理した細胞に比較した場合、上述のアッセイで測定される、培地中に検出されるIL−6の量が少なくなる。IC50が100nM未満の化合物が好ましい。
【0126】
トリグリセリド蓄積アッセイ:HepG2細胞を完全培地の96ウェルプレートに接種した(1×10/mL、200μL/ウェル)。24時間後、DMSO溶液中化合物を3ウェルずつに加え、最終濃度は2.3nMから5μMまでとした。5%CO加湿インキュベータ中37℃で4日の後、各ウェルにつき細胞を50μLの0.1%NP−40に溶解させた。トリグリセリド(GPO)試薬セット(ThermoDMA,Arlington,TX)を用いて細胞トリグリセリドを製造者のプロトコルに従って測定した。ビヒクルで処理した細胞に比較して、トリグリセリド蓄積をほとんどまたはまったく示さない化合物が好ましい。
【0127】
本明細書では本発明の特定の実施形態を説明しまた詳細に述べてきたが、本発明はそれらに限定されるものではない。ここまでの詳細な説明は本発明の説明として提供されているものであり、本発明の限定を構成するものと解釈すべきでない。当業者には改変は明らかであると思われるので、本発明の思想から逸脱しない改変はすべて、添付の特許請求の範囲の中に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

またはその塩もしくは溶媒和物[式中、
は、C〜Cアルキルであり;
は、フェニルであるか、またはピリジニルであり、この場合該フェニルは、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、および−O(CHOHからそれぞれ独立に選択される1個または複数個の置換基で置換されていてもよい。]。
【請求項2】
がメチルまたはブチルであり、Rがフェニルまたはピリジニルであり、この場合該フェニルは、ヒドロキシル、メトキシ、Cl、F、−OCF、および−O(CHOHからそれぞれ独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がブチルであり、Rが、ヒドロキシル、メトキシ、およびClからそれぞれ独立に選択される3個の置換基で置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
以下:
【化2】



からなる群から選択される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
式I−Aの化合物:
【化3】

またはその塩もしくは溶媒和物[式中、
は、Clまたはメトキシであり;
は、ヒドロキシルまたはメトキシであり;
は、Clまたはメトキシである。]。
【請求項6】
がClであり、Rがヒドロキシルであり、Rがメトキシである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
がClであり、Rがヒドロキシルであり、RがClである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
がメトキシであり、Rがメトキシであり、RがClである、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
以下:
【化4】


からなる群から選択される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の化合物を含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
有効な治療物質として使用するための、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
LXRモジュレーター活性に反応する病態または障害の治療で使用するための、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、アテローム性動脈硬化病変、末梢血管疾患、炎症、癌、および中枢神経系の疾患の治療で使用するための、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
LXRモジュレーター活性に反応する病態または障害の治療で使用するための医薬の製造における、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項15】
糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、アテローム性動脈硬化病変、末梢血管疾患、炎症、癌、および中枢神経系の疾患の治療で使用するための医薬の製造における、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載の化合物を投与することを含んでなる、LXRモジュレーター活性に反応する病態または障害の治療方法。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の化合物を投与することを含んでなる、糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、アテローム性動脈硬化病変、末梢血管疾患、炎症、癌、および中枢神経系の疾患の治療方法。

【公表番号】特表2009−506052(P2009−506052A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528113(P2008−528113)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/032926
【国際公開番号】WO2007/024954
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】