化学反応装置
【課題】 コンタミネーションや気泡の発生がなく、簡素な構造で低コストに往復送液を行うことができる化学反応デバイス及び化学反応装置を提供する。
【解決手段】 回転できる基盤100の中心以外の位置に化学反応デバイス102を支持し、回転による遠心力で送液し、基盤とは独立に流路の向きを逆転させる機構を設置する。
【解決手段】 回転できる基盤100の中心以外の位置に化学反応デバイス102を支持し、回転による遠心力で送液し、基盤とは独立に流路の向きを逆転させる機構を設置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応デバイス及び化学反応装置に関し、特に送液方法に特徴を有する化学反応デバイス及び化学反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーズアレイの技術としては特開平11-243997号公報があるが、そこには基本技術のみが述べられ、ハイブリダイゼーション反応を行うための送液方法については述べられていない。ビーズアレイに対して外部から一方通行及び往復の送液を行うのにシリンジポンプを用いた例がNucleic Acids Research, Vol.30, No.16, e87 (2002)及びAnalytical Chemistry, Vol.75, No.13, 3079-3085 (2003)に記載されている。
【0003】
一般のマイクロ流体デバイスに対しても、ビーズアレイに対するのと同様に外部から送液する場合にはシリンジポンプを利用している例が多い。マイクロ流体デバイスの内部に送液機構を持たせた例としては、ダイヤフラムを使用したマイクロポンプや、水の電気分解で気体を発生させるマイクロポンプ、電気浸透流を利用するマイクロポンプなどがある。両者の間にあるものとして、マイクロ流体デバイスに対して外部から回転を行わせて遠心力によって送液を行う例が米国特許第6,653,625号明細書に記載されている。この例では、遠心力を用いて微細流路の少なくとも一部で溶液搬送を行う。また米国特許第6,717,136号明細書には、回転軸の周りに放射状に複数の微細流路を設けたディスクが記載されている。いずれの場合においても、遠心力の方向に対する流路の向きが固定であり、溶液は流路の一部分を一方向に一度のみ送液される構成になっている。つまり、流路の向きを変更することや、往復の送液は想定されていない。
【特許文献1】特開平11-243997号公報
【特許文献2】米国特許第6,653,625号明細書
【特許文献3】米国特許第6,717,136号明細書
【非特許文献1】Nucleic Acids Research, Vol.30, No.16, e87 (2002)
【非特許文献2】Analytical Chemistry, Vol.75, No.13, 3079-3085 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンジポンプのように外部から試料となる液体に接触して送液する方法では、試料が変更された場合、その成分が干渉あるいは混濁することでコンタミネーションの問題が生じ易い。ビーズアレイを含む化学反応デバイス及び化学分析デバイス(以下、総称して化学反応デバイスという)を利用して、特に生体関連物質を分析する際には、コンタミネーションは結果の精度や信頼性を損ない、大きな問題となる。また特にシリンジポンプの送液においては、複数種類の液体を送液する場合、途中にエアギャップを設定して混合を防ぐことが多いが、エアギャップ由来の気泡発生が起こり易く、化学反応の安定性の妨げになる。同様にシリンジポンプによる往復送液ではシリンジのピストンを引く工程が生じるため、溶液に大気圧以下の陰圧がかかり、溶液に溶け込んでいる気体が気泡となって発生しやすい。この気泡も化学反応の安定性及び再現性を妨げる。
【0005】
内部に送液機構を持つマイクロ流体デバイスには、特殊なバルブや弁や電極を使用しているため高価であるという問題点があり、特に往復送液を行えるようにするには複雑な構造が必要となる。回転による遠心力を利用した送液方法を使用するマイクロ流体デバイスは、遠心力がデバイスの一方向にしか働かないため、反応部分に液が一度しか通過しないという問題点がある。ビーズアレイを初めとした化学反応デバイスではデバイス中の反応部位に同じ溶液を複数回数流通させて反応効率を上げることが可能で、そのために往復送液を行うが、この遠心力を利用した送液方法を使用するマイクロ流体デバイスでは往復送液は不可能であった。
【0006】
本発明は、コンタミネーションや気泡の発生がなく、簡素な構造で低コストに往復送液を行うことができる化学反応デバイス及び化学反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ビーズアレイを含む化学反応デバイスを使用する化学反応装置及び化学分析装置(以下、総称して化学反応装置という)において、回転できる基盤の中心以外の位置にデバイスを支持し、基盤とは独立にデバイスの向きを逆転させる機構を設定する。この方式により、回転による遠心力でデバイス内部の流路に一度液体を流した後も、デバイスの向きを逆転させて同一液体を繰り返して流路に流すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同一液体を繰り返して化学反応デバイスの流路に流すことができる。送液に関して装置は直接液体に触れないのでドライ環境の装置を実現でき、液体の成分が変更されてもそれぞれの液体が干渉することは無く、デバイスを使い捨てにした場合には、コンタミネーションを完全に防ぐことが可能となる。また遠心力の加圧による往復送液を実現することで、化学反応の効率を低下させず再現性の高い送液方法を提供できる。また、特殊なバルブや弁や電極なしに往復送液を行えるため、安価に簡便に製造可能な、ビーアレイを含む化学反応デバイスを使用する化学反応装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の全体構成を示す模式図である。回転軸101を中心に回転可能な回転基盤100上のデバイス保持部103に、化学反応デバイスの一つであるビーズアレイデバイス102を着脱可能に設置する。ビーズアレイデバイス102を設置するデバイス保持部103の位置は回転軸101から離れたところにあり、回転基盤100が回転軸101を中心に回転することで生じる遠心力がビーズアレイデバイス102に働くようになっている。ビーズアレイデバイス102に入った溶液はこの遠心力によって外向きの力を受けるため、流路にそって外側に送液される。後述する機構によりこのビーズアレイデバイス102をデバイス保持部103によって回転させることにより、ビーズアレイデバイス102中の流路を実質的に反転させることができる。ビーズアレイデバイス102を反転させた状態で回転基盤100を回転させることにより、再度ビーズアレイデバイス102に遠心力を働かせることができ、内部の液体を外向きに送液することができる。この一連の過程により、ビーズアレイデバイス102内部の溶液を往復送液することができる。
【0010】
図2(1)はビーズアレイデバイスの拡大模式図であり、(a)は上面図、(b)はそのAA断面図である。ビーズアレイデバイス102は、デバイス上部110と平らなデバイス下部111で構成されている。ここではデバイス上部110の材質としてポリジメチルシロキサン樹脂(PDMS)、デバイス下部111の材質としてスライドガラスを使用した例を述べる。デバイス上部110のデバイス下部111に接する側には、ビーズ113を流路112内に配列したビーズアレイ部分を中心に、液体を保持する穴(液溜)114及び115を有する。この構造を持つビーズアレイデバイス102は、鋳型からPDMSで型取りしたデバイス上部110をスライドガラスであるチップ下部111に貼り付けて作成することができる。
【0011】
ここで使用される型取り用の鋳型は、例えばElectrophoresis, 22, 328〜333 (2001)に記載の方法のように、平らにコーティングされたレジストに対してマスクを用いた光リソグラフィーの手法で作成することができる。デバイス上部110とデバイス下部111とを張り合わせた後、流路112部分にビーズ113を配列するためには、例えばAnalytical Chemistry, 75(13), 3250〜3255 (2003)に記載のように、キャピラリー真空ピンセットを用いて行うことができる。ビーズ113にはプローブとしてDNAや抗体を固定しておき、液体が流路112に配列されたビーズ113の近傍を通過する際に、液体中の核酸や抗原を捕捉するようにしておく。捕捉された核酸や抗原は蛍光計測によって計測することができ、液体中の核酸や抗原の量を計測された蛍光強度から知ることができる。流路112内部にビーズ113を並べたビーズアレイの構造に関しては特開平11-243997号公報に詳しい記述があり、どの構造を採用してもかまわない。このビーズアレイデバイス102の特徴としては、液体を何度も往復送液をさせることにより固液界面での反応の効率が上がることがAnalytical Chemistry, 75(13), 3079-3085 (2003)に記載されている。
【0012】
本実施例ではビーズアレイデバイスを用いた例を記述しているが、もちろん他の化学反応デバイスも用いることができる。例えば図2(2)の(a)から(d)に示すような化学反応デバイスを用いることができる。図2(2)において、(a)はチップ形状を持つDNA計測デバイスの一例の全体上面図、(b)はそのBB断面図である。このデバイスは、平らなスライドガラス152の上に、化学反応部兼計測部となる流路153を持つPDMS基板151を貼り付けて構成されている。スライドガラス152にはクラウンガラス製の無蛍光なものを使用した。PDMS基板151は約2mmの厚みを持ち、スライドガラス152の長辺から内側へ約2mmの部分を残し、スライドガラス152を覆っている。溶液穴154と接続穴155が流路153の両端に構成されている。このデバイスの作製は、例えばElectrophoresis, 22, 328-33 (2001)に記載されているように、フォトリソグラフィーの技術を用いて作ったPDMS部分の型となる鋳型に対して、未反応のPDMSを流し込んで硬化させ、硬化したPDMS基板151を鋳型から外し、スライドガラス152と張り合わせることで行われる。
【0013】
図2(2)の(c)及び(d)は、図2(2)の(a)及び(b)に示した化学反応部兼計測部となる流路153の一部分を拡大した模式図であり、(c)は上面図、(d)は側面図である。流路153はPDMS基板151とスライドガラス152の間に構成されている。PDMS基板151には突起157が付いており、この突起157が流路153の上側から流路153の中に突き出している。この突起157には反応溶液の流れを乱して基質の実質的な拡散速度を向上させる効果がある。流路153のスライドガラス152側にはDNA計測のためのDNAプローブ156がスポットしてある。このDNAプローブのスライドガラス152に対するスポッティングは、PDMS基板151を貼り付ける前に行っておく。
【0014】
図3(1)及び図3(2)は、本発明の第1の実施例の送液の手順を表す模式図である。化学反応デバイスであるビーズアレイデバイス102の拡大図と全体の俯瞰図を併せて示す。
【0015】
まず図3(1)(a)に示す通り、回転基盤100及びビーズアレイデバイス102が静止した状態で、液体を保持する穴114が回転軸101側にあり、反対の液体を保持する穴115が回転基盤の外周側に位置するようにセッティングする。それから回転軸側の液体を保持する穴114に溶液を入れる。溶液を入れる方法は問わないが、ここではピペットを用いて導入した。この溶液には、ビーズ113に反応する反応物質や検出対象物質、もしくは反応後の洗浄溶液などが含まれる。次に図3(1)(b)に示す通り、回転軸101を中心に回転基盤100を回転させる。この回転によってビーズアレイデバイス102に遠心力が働き、液体を保持する穴114にあった溶液がビーズ113に接触しながら流路112を通じて流れ、液体を保持する穴115に送液される。ここで図3(1)(c)に示す通り、液体を保持する穴114から液体を保持する穴115に液体が完全に送液された後、回転基盤100の回転を止める。この段階で液体が一方向に送液される過程が終了する。
【0016】
次に往復送液を行うために、図3(2)(d)に示す通り、ビーズアレイデバイス102を反転させる。反転させる機構の例については後述する。この反転により、溶液の入った液体を保持する穴115が回転軸101側に位置し、液体の入っていない穴114が回転基盤100の外周側に位置するようになる。この状態は図3(1)(a)の状態とほぼ同じであるが、液体を保持する穴114と115の位置関係が逆転している。後は最初の送液とほぼ同じ工程を繰り返すことで流路112中を逆向きに溶液を送液する。図3(2)(e)で示す通り、回転軸101を中心に回転基盤100を回転させる。この回転によってビーズアレイデバイス102に遠心力が働き、液体を保持する穴115にあった溶液がビーズ113に接触しながら流路112を通じて流れ、液体を保持する穴114に送液される。ここで図3(2)(f)に示す通り、液体を保持する穴115から液体を保持する穴114に液体が完全に送液された後、回転基盤100の回転を止める。この段階で液体が一回往復送液される過程が終了する。往復を繰り返すためには最初の配置に戻る必要があるため、ビーズアレイデバイス102の反転を行い、図3(1)(a)に示す状態に戻す。以下、同様の工程を繰り返すことにより、液体を保持する穴114と115の間を流路112を通じて溶液を往復送液することができる。なお、ビーズアレイデバイス102の反転に際して必ずしも基盤100の回転を止める必要はない。基盤100を連続的に回転させながら、基盤100上のビーズアレイデバイス102を反転させるようにしてもよい。
【0017】
液体中の核酸や抗原はビーズ113の表面近傍を通過する際に、固定されたプローブとしてのDNAや抗体によって捕捉されるため、液体が流路112を往復することによって、液体中の核酸や抗原とビーズ113表面のプローブとが反応する効率を上げることができる。また液体により洗浄を行う際にも、同様に効率よく洗浄を行うことができる。これらの動作の最中には、外部の装置や外部の配管が直接液体に触れることはないので、コンタミネーションが起こることが全くない、化学反応デバイス又は化学反応装置の送液方法を実現することができる。
【0018】
また本実施例の送液方法では、従来のシリンジポンプを用いた場合によく使われるエアギャップが存在せず、そのためエアギャップ由来の気泡が発生することはない。また遠心力による加圧によってのみ液を送液しており、陰圧を生じる工程が存在しないため、溶液に大気圧以下の陰圧がかかり、溶液に溶け込んでいる気体が気泡となって発生することがない。従来の方法では、これらの気泡が反応に関与する分子が固定された表面、例えばビーズの表面に、付くことによって化学反応の効率が低下し、再現性へ悪い影響を及ぼしていた。本実施例の送液方法によれば気泡は発生しないため、気泡の影響がなくなり、高い化学反応効率が得られ、反応の再現性も向上する。
【0019】
この実施例及び以降の実施例において、ビーズアレイデバイス102を用いた例を取り上げているが、本発明の適用範囲はそれに限定されるものではなく、流体の移動を伴う多くの化学反応デバイスに適用可能である。特に往復送液が可能であるため、反応効率の向上、反応時間の短縮、分析感度の向上、必要なサンプル溶液量の減量が可能となる利点がある。この化学反応デバイスには、例えば流路の壁面に障害物を設けて乱流を起こさせ化学反応を短時間に行う化学反応デバイスや、流路中に磁気微粒子を配列し外部の磁石でその磁気微粒子を操作する化学反応デバイスが含まれる。
【0020】
回転基盤を回転させることによって生じる遠心力が流路内の溶液に圧力を及ぼすことによって、これらの化学反応デバイス中での溶液の送液が行われる。流路の向きが遠心力の向きと一致する場合、この圧力Pは近似的にP = (ρVrω2)/Aと表現できる。ここでρは溶液の密度、Vは溶液の体積、rは回転軸と流路の中心との距離、ωは回転基盤の角回転速度、Aは流路の断面積である。送液の流量はこの圧力と流路の流路抵抗で決まる。ビーズアレイデバイスを例とする化学反応デバイスの多くは、特に生体関連分子をこれらのデバイスで取り扱う場合においては、10μLもしくは100μL程度の容量を取り扱うことが多い。送液速度としてはそれぞれ毎分10μLもしくは毎分100μL程度の体積流量があればよい。
【0021】
例えば、図2(1)に示したビーズアレイデバイス102において流路112の幅を150μm、ビーズ113の大きさを100μm、ビーズの個数を100個とする。ビーズ10000個分並んだときの流路抵抗を実測しビーズ100個分の値に換算すると、毎分10μLの水を流した場合に必要な圧力差は0.176kgf/cm2であった。溶液の体積を10μL、溶液の体積流量を毎分10μL、回転軸と流路の中心との距離を80mm、回転速度を毎秒1回転として、先ほどの計算式から圧力を計算すると0.182kgf/cm2となり、必要な圧力差にほぼ等しい。また同様に毎分100μLの水を流した場合に必要な圧力差は0.26kgf/cm2、であった。溶液の体積を100μL、溶液の体積流量を毎分100μL、回転軸と流路の中心との距離を120mm、回転速度を毎秒1回転として、先ほどの計算式から圧力を計算すると0.27kgf/cm2となり、必要な圧力差にほぼ等しい。つまり、これらの条件で回転させることにより、ビーズアレイデバイスに必要な反応溶液の体積及び体積流量を往復送液において扱うことができる。ビーズ以外の部分よる圧力損失は十分に小さいため、これらの条件で送液操作を行える。例えば、回転軸と流路の中心との距離は先ほどの計算から化学反応デバイスの大きさを考慮しても150mm以下で十分である。
【0022】
また回転基盤の回転速度については、液溜めから液があふれないことが必要で、この際にふたが必要ないような範囲であればなお好ましい。例えば遠心力にて送液した後の溶液の液面が液だめ中で45度の角度を持つのは、遠心力と重力がつりあうところであり、この程度であれば液があふれることはない。先ほど計算したケースのうち半径80mmと半径120mmのケースで考えると、毎秒約2回転以下ならこの条件を満たすことが分かる。この方法による往復送液では、このように小さな回転装置で十分であり、また低い回転速度で十分であるため、簡便で安価な装置の構成が可能である。ここではビーズアレイデバイスについて流路抵抗を実測して検討したが、それ以外の化学反応デバイスの多くは流路抵抗が小さいものがほとんどであり、ビーズアレイの条件を満たしていれば実質上問題ない。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施例において化学反応デバイスを回転させる機構の一例を示す模式図である。図1では省略されていた、化学反応デバイスの一つであるビーズアレイ102を回転させる機構の概略を示している。
【0024】
ビーズアレイデバイス102はデバイス保持部103によって保持されており、デバイス保持部103はデバイス保持部の回転軸120で保持されている。デバイス保持部の回転軸120は回転基盤100に設置されたモーター121につながっている。モーター121を回転させることにより、デバイス保持部の回転軸120を回転し、結果的にビーズアレイデバイス102を回転させることができる。図3(d)に示したビーズアレイデバイス102の反転は図4の機構によって実現できる。
【0025】
回転基盤100はモーター161によって回転駆動される。また、モーター121及びモーター161は、装置制御部160によって制御されている。装置制御部160はモーター161を駆動して回転基盤100を回転させ、デバイス保持部103によって保持されたビーズアレイデバイス102に遠心力を作用させて一方の液溜中の反応溶液を、流路112を通して他方の液溜に向けて送液する。遠心力による送液によって、回転基盤100の回転軸101に近い側の液溜に入っていた反応溶液が回転軸101から遠い側の液溜に完全に移るまでの時間は予め計算あるいは実験で求めておき、装置制御部160のタイマーに設定しておく。装置制御部160は、タイマーから送られてくるタイミング信号に応じてモーター121を駆動してデバイス保持部103を反転させる制御を予め設定された回数繰り返すことによって、ビーズアレイデバイス102の流路112に反応溶液を往復送液する。タイマーによる時間制御に代えて、回転基盤の回転回数が予め設定した回数に達する毎に、デバイス保持部103を反転させる操作を反復するようにしてもよい。
【0026】
デバイス保持部103を回転させる機構はモーターに限定されるものではなく、歯車とねじりねじを組み合わせた方法やゼンマイと機械原点による位置出しを使う方法など、様々な方法が考えられる。またこの化学反応デバイスを回転させる機構は、回転基盤100に付属している必要は必ずしもない。例えば、一方向送液後回転基盤100の回転を静止させ、化学反応デバイスを回転基盤100上側から機械的に外し、デバイスを反転させてセットするという、外部からの操作及び操作機構によってもよい。例えば図5に示す通り、デバイスを回転させるアーム125が回転基盤100の外側に設置されており、デバイスを回転させるアーム125がビーズアレイデバイス102とデバイス保持部103を掴み、移動させて反転させ、反転した向きのまま回転基盤100に設置する、とい機構を採用することもできる。
【0027】
図6は、本発明の第1の実施例の化学反応デバイスがビーズアレイであり、そのビーズアレイでハイブリダイゼーションの検出を行った結果を従来の方法で得られた結果と比較した図である。DNAプローブとしてp53の各エクソン(但しエクソン1と3は使用せず、合計10種。プローブ1〜10とする。)のアンチセンス側の塩基配列の一部を持つ18塩基長の合成DNAを用意した。ターゲットDNAとしては、DNAプローブ5と完全に相補であり、TexasRed蛍光体で標識された18塩基長の合成DNA(DNAターゲット5)を準備した。相補的なDNAプローブとターゲットDNAの融解温度は約70℃であった。配列を以下に示す。
【0028】
DNAプローブ1の配列 :5'−TGTCACCGTCGTGGAAAG−3'
DNAプローブ2の配列 :5'−ATCTGACTGCGGCTCCTC−3'
DNAプローブ3の配列 :5'−AAGAAGCCCAGACGGAAA−3'
DNAプローブ4の配列 :5'−GCCTCACAACCTCCGTCA−3'
DNAプローブ5の配列 :5'−TCATAGGGCACCACCACA−3'
DNAプローブ6の配列 :5'−ATGATGGTGAGGATGGGC−3'
DNAプローブ7の配列 :5'−CCCTTTCTTGCGGAGCTT−3'
DNAプローブ8の配列 :5'−TTTCTTCTTTGGCTGGGG−3'
DNAプローブ9の配列 :5'−CCTGGGCATCCTTGAGTT−3'
DNAプローブ10の配列:5'−ATGGCGGGAGGTAGACTG−3'
DNAターゲット5の配列:5'−TGTGGTGGTGCCCTATGA−3'
【0029】
これらのDNAプローブをNucleic Acids Research, 30(16), e87(2002)と同様の方法で直径103μmのガラスビーズに固定し、図2(1)に示したビーズアレイデバイスに一つずつ順に配列した。このビーズアレイデバイスに対して、DNAターゲット5の1 x 10 -10 M濃度の4xSSC-0.1%SDS溶液10μLを3種類の方法でハイブリダイゼーション反応させた。一つ目は従来行われてきたシリンジポンプを使用した方法を用いて、6分間で3往復させて反応させた。二つ目は本実施例で説明した遠心方法を用い、但しデバイスの方向を反転させないで一方向の送液のみを行った。この一回の送液は10μLの溶液が30秒で流れるように操作した。三つ目は本実施例で説明した遠心方法を用い、デバイスの方向を反転させることによって6分間に3往復する条件で操作した。ハイブリダイゼーション反応後は1xSSC−0.03%SDS溶液、0.2 x SSC溶液、0.05 x SSC溶液、水の順で洗浄して、CCDカメラの付いた蛍光顕微鏡にて計測した。蛍蛍光強度として、DNAターゲット5に対応するDNAプローブ5を固定したガラスビーズの蛍光強度をCCDカメラの画像から数値化したものを使った。それぞれの条件について7回実験を行い、平均と標準偏差を計算した。
【0030】
図6に示した各棒グラフのエラーバーは標準偏差に相当する。これによると、シリンジポンプで往復送液したものは、遠心送液で片道の送液したものに比べて大きな蛍光強度が得られるが、本発明の遠心送液による往復送液での結果の方が、蛍光強度が少し大きく、またエラーバーが小さいことが分かる。これは、本発明の送液方法では、エアギャップが存在せず、また陰圧の生じる工程が無いため、エアギャップ由来の気泡と溶液に溶け込んでいる気体が陰圧により発生する気泡の双方が抑えられる。そのため本発明の送液方法によると、ビーズ表面に気泡がついて反応を疎外することがないため、均一で再現性の高い反応が実現しているためだと考えられる。
【0031】
図7は、本発明の第1の実施例の化学反応デバイスの流路の方向と化学反応デバイスと基盤の中心を結ぶ線分が一致せず、有意な角度を持つ場合の一例を示す模式図である。この例では図1に示した模式図の場合と異なり、ビーズアレイデバイス102の流路の方向とビーズアレイデバイス102と回転基盤100の回転軸101を結ぶ線分一致せず傾いており、45゜の角度を持っている。例えば図4に示したデバイスの回転機構を用いることで、この状態は実現できる。
【0032】
溶液の送液に働く遠心力は、回転基盤100の回転軸101からビーズアレイデバイス102の方向に働く。図1のように流路の方向と遠心力の働く向きが一致する場合の、この遠心力に由来する溶液にかかる圧力の大きさをP1とする。ビーズアレイデバイス102の流路とこの遠心力向きがなす角度をθとすると、この図7で表されている状況ではθが45゜である。この傾いた場合に溶液の送液に働く力P2の大きさはP2=P1×cosθと表せる。この角度をコントロールすることによって、溶液に働く力をコントロールすることができるので、結果として送液速度をコントロールできる効果がある。送液速度のコントロールは化学反応の効率に大きな影響があるので重要である。また溶液の種類や反応条件、洗浄条件に対応した送液条件の設定が可能となる。また、遠心力の向きに対して直角の方向以外であれば、溶液に力が働き送液できるので、直角をまたがって、少しの角度だけの角度変化を行えば往復させることも可能であり、化学反応デバイスの回転機構の簡略化も可能となる。
【0033】
図8は、本発明の第1の実施例において化学反応デバイスを回転させる機構の他の例を示す模式図である。図4で示した例ではモーターを直接用いてビーズアレイデバイス102を回転させているが、図8に示した例では歯車の組み合わせを用いている。
【0034】
ビーズアレイデバイス102はデバイス保持部103によって保持されており、デバイス保持部103はデバイス保持部の回転軸120で保持されている。デバイス保持部の回転軸120は、回転基盤100に設置されたデバイスを回転させる歯車130につながっている。デバイスを回転させる歯車130は順に歯車131、132につながっている。歯車130、131、132は回転基盤上に回転可能な形で設置されている。また歯車132はこの図では明示しない回転基盤外部に対して相対的に位置が固定されている。この構成においては、回転基盤100を回転軸101を中心に回転させることにより歯車132が回転基盤100相対的に回転し、その回転が歯車131を伝わってデバイスを回転させる歯車130を回転させる。結果として、回転基盤100を回転させることに伴ってビーズアレイデバイス102が同時に回転することになる。
【0035】
回転基盤100とビーズアレイデバイス102の回転数の比は歯車130、131、132のギア比の設定によって決定され、適切な設計をすることにより、ビーズアレイデバイス102中の溶液をこの機構によって往復送液させることができる。例えば、ビーズアレイデバイス102を図1のように流路の向きがが遠心力の方向と一致するように設置し、回転基盤100の回転速度を固定して回転させ、一方方向に完全に通過する時間tを測定しておく。ギア比の設定は、ビーズアレイデバイス102が180゜回転するのに必要な時間がt×円周率よりも十分に長くなるように設定すれば、溶液が完全に一方に送られてから、ビーズアレイデバイス102の流路が実質的に反転することになる。
【0036】
この歯車を使った化学反応デバイスの回転機構を使った場合には、一方向送液終了ごとに向きを反転させるという煩雑な手順の必要が無く、回転基盤100を回転するだけという単純な機構で往復送液を実現できる利点がある。また回転基盤100回転時の加減速にかかる時間が無くなり、往復送液を用いて行う化学反応や洗浄工程の実質的な時間を短縮することも可能である。
【0037】
図9は、本発明の第1の実施例において化学反応デバイスと基盤中心との距離を変更する機構の一例を表す模式図である。ビーズアレイデバイス102はデバイス保持部103によって保持されており、デバイス保持部103はデバイス保持部の回転軸120で保持されている。デバイス保持部の回転軸120はモーター141につながっている。モーター141を回転させることにより、デバイス保持部の回転軸120を回転し、結果的にビーズアレイデバイス102を回転させることができる。回転基盤100はモーター161によって回転駆動される。また、モーター141及びモーター161は、装置制御部160によって制御されている。モーター141はモーター保持台142に保持されており、モーター保持台142はレール143の上に設置されている。レール143上でモーター保持台142を動かすことができ、結果としてビーズアレイデバイス102と回転基盤100の回転軸101との距離を変更することができる。この機構によれば、化学反応デバイスの一つであるビーズアレイデバイス102と回転基盤100の回転軸101の距離を変更することと、ビーズアレイデバイス102を回転もしくは反転させることを両立させて稼動することが可能である。
【0038】
図10は、図9に示したビーズアレイデバイス102と回転軸101の距離を変更する様子を表す上面模式図である。回転基盤100上の中心である回転軸101から半径上を直線的に外周に伸びるようにレール143が設置されており、そのレール143の上をここには明示されていないモーター保持台、モーター、デバイス保持部の回転軸を介して支持されるデバイス保持部103上のビーズアレイデバイス102が移動することができる。ビーズアレイデバイス102中の溶液にかかる遠心力Fは、回転軸101からの距離rに比例して大きくなるので、この距離rを変更することによって溶液にかかる遠心力を変更し、結果として溶液の送液速度を変更できるという利点がある。送液速度のコントロールは化学反応の効率に大きな影響があるので重要である。距離rを変更することによって、溶液の種類や反応条件、洗浄条件に対応した送液条件の設定が可能となる。
【0039】
図9及び図10ではレールを用いた機構を例に取り説明したが、距離rを変更する機構はこれに限定されない。例えば、ビーズアレイデバイス102の下面に凸部を設け、回転基盤100の上面の様々な距離rに対応するところに、突起部を保持して支持する凹部を設けるなどの機構が考えられる。またその際に同時に採用される化学反応デバイスの回転機構についても、モーターを用いたものに限定されない。
【0040】
図11は、本発明の第2の実施例の全体を表す模式図である。図1で説明した第1の実施例の場合とは異なり、回転基盤上に複数の化学反応デバイスを載せて、同時に送液を行う実施例である。
【0041】
この例では、回転軸201を中心として回転する回転基盤200の上に、ビーズアレイデバイス202が12個設置されている。本発明の第1の実施例と同様の機構でそれぞれのビーズアレイデバイス202を回転させることができ、それぞれに対して溶液の往復送液を行うことができる。この機構により、複数のビーズアレイデバイス202に対して同時に操作することが可能となり、全体の操作時間の短縮や全体の操作コストの削減に対する効果がある。
【0042】
この複数のビーズアレイデバイス202を載せた機構においても、本発明の第1の実施例で説明したように、回転軸201からビーズアレイデバイス202までの距離を変更する機構を採用することやビーズアレイデバイス202の角度を変更する機構を採用することは可能であり、結果として送液条件をコントロールし、溶液の種類や反応条件、洗浄条件に対応した送液条件の設定が可能となる効果がある。
【0043】
図12は、本発明の第3の実施例の全体を表す模式図である。図1で説明した第1の実施例の場合とは異なり、計測装置を同時に組み込むことによって、送液と計測を同時に行う実施例である。
【0044】
この例では、回転軸301を中心として回転する回転基盤300の上にビーズアレイデバイス302が12個設置されている。本発明の第1の実施例と同様の機構でビーズアレイデバイス302を回転させることができ、溶液の往復送液を行うことができる。ビーズアレイデバイス302に対して、ビーズアレイデバイス302の上側から蛍光計測を行うため、レーザー303から出たレーザー光をダイクロックミラー304で反射し、ビーズアレイデバイス302を照射する。ビーズアレイデバイス302から出た蛍光はレンズ305、ダイクロックミラー304、光学フィルター306を通過して光電子増倍管307で受光され、光電子増倍管308からのシグナルを信号処理装置308によって解析することで、蛍光の計測を行うことができる。
【0045】
例えば、Nucleic Acids Research, 30(16), e87 (2002)に記載された方法でDNAプローブを固定したガラスビーズをビーズアレイ302の流路に配置し、TexasRed標識したターゲットDNAを含む溶液を往復送益して反応させた後、洗浄し計測する場合には、レーザー303としてYAGレーザーを使用し、光学フィルター306としてはTexasRedの発光波長である610nm付近を中心として半値幅が30nm程度のバンドパスフィルターを用いればよい。計測は回転基盤300の回転を止めて行うこともできるし、回転させたまま行うこともできる。ここでは蛍光計測を行う系について記述したが、化学発光計測、吸光計測、呈色反応計測などの計測を行うことも可能である。化学反応デバイスに対する往復送液と計測過程を組み合わせることにより、全体の操作時間を短縮でき、コストの削減を行うことができる。また、途中経過を計測することができるため、最適な化学反応や分析の結果が得られるところまで送液を続けることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例の全体を表す模式図。
【図2(1)】本発明の一実施例に使用される化学反応デバイスを示す模式図。
【図2(2)】本発明の一実施例に使用される化学反応デバイスを示す模式図。
【図3(1)】本発明の一実施例における送液手順を示す模式図。
【図3(2)】本発明の一実施例における送液手順を示す模式図。
【図4】化学反応デバイスを回転させる機構の一例を示す模式図。
【図5】化学反応デバイスを回転させる機構の他の例を示す模式図。
【図6】本発明の一実施例における分析結果と従来の方法での分析結果を比較した図。
【図7】化学反応デバイスの流路の方向と化学反応デバイスと基盤の中心を結ぶ線分が一致しない場合の一例を示す模式図
【図8】化学反応デバイスを回転させる機構の一例を示す模式図。
【図9】化学反応デバイスと基盤中心との距離を変更する機構の一例を示す模式図。
【図10】化学反応デバイスを移動させる機構の一例を示す模式図。
【図11】本発明の一実施例の全体を示す模式図。
【図12】本発明の一実施例の全体を示す模式図。
【符号の説明】
【0047】
100:回転基盤、101:回転軸、102:ビーズアレイデバイス、103:デバイス保持部、110:デバイス上部、111:デバイス下部、112:流路、113:ビーズ、114:液体を保持する穴、115:液体を保持する穴、120:デバイス保持部の回転軸、121:モーター、125:デバイスを回転させるアーム、126:アームの制御部、130:デバイス回転させる歯車、131:歯車、132:歯車、141:モーター、142:モーター保持台、143:レール、151:PDMS基板、152:スライドガラス、153:流路、154:溶液穴、155:接続穴、156:DNAプローブ、157:突起、200:回転基盤、201:回転軸、202:ビーズアレイデバイス、300:回転基盤、301:回転軸、302:ビーズアレイデバイス、303:レーザー、304:ダイクロックミラー、305:レンズ、306:光学フィルター、307:光増倍管、308:信号処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応デバイス及び化学反応装置に関し、特に送液方法に特徴を有する化学反応デバイス及び化学反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーズアレイの技術としては特開平11-243997号公報があるが、そこには基本技術のみが述べられ、ハイブリダイゼーション反応を行うための送液方法については述べられていない。ビーズアレイに対して外部から一方通行及び往復の送液を行うのにシリンジポンプを用いた例がNucleic Acids Research, Vol.30, No.16, e87 (2002)及びAnalytical Chemistry, Vol.75, No.13, 3079-3085 (2003)に記載されている。
【0003】
一般のマイクロ流体デバイスに対しても、ビーズアレイに対するのと同様に外部から送液する場合にはシリンジポンプを利用している例が多い。マイクロ流体デバイスの内部に送液機構を持たせた例としては、ダイヤフラムを使用したマイクロポンプや、水の電気分解で気体を発生させるマイクロポンプ、電気浸透流を利用するマイクロポンプなどがある。両者の間にあるものとして、マイクロ流体デバイスに対して外部から回転を行わせて遠心力によって送液を行う例が米国特許第6,653,625号明細書に記載されている。この例では、遠心力を用いて微細流路の少なくとも一部で溶液搬送を行う。また米国特許第6,717,136号明細書には、回転軸の周りに放射状に複数の微細流路を設けたディスクが記載されている。いずれの場合においても、遠心力の方向に対する流路の向きが固定であり、溶液は流路の一部分を一方向に一度のみ送液される構成になっている。つまり、流路の向きを変更することや、往復の送液は想定されていない。
【特許文献1】特開平11-243997号公報
【特許文献2】米国特許第6,653,625号明細書
【特許文献3】米国特許第6,717,136号明細書
【非特許文献1】Nucleic Acids Research, Vol.30, No.16, e87 (2002)
【非特許文献2】Analytical Chemistry, Vol.75, No.13, 3079-3085 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンジポンプのように外部から試料となる液体に接触して送液する方法では、試料が変更された場合、その成分が干渉あるいは混濁することでコンタミネーションの問題が生じ易い。ビーズアレイを含む化学反応デバイス及び化学分析デバイス(以下、総称して化学反応デバイスという)を利用して、特に生体関連物質を分析する際には、コンタミネーションは結果の精度や信頼性を損ない、大きな問題となる。また特にシリンジポンプの送液においては、複数種類の液体を送液する場合、途中にエアギャップを設定して混合を防ぐことが多いが、エアギャップ由来の気泡発生が起こり易く、化学反応の安定性の妨げになる。同様にシリンジポンプによる往復送液ではシリンジのピストンを引く工程が生じるため、溶液に大気圧以下の陰圧がかかり、溶液に溶け込んでいる気体が気泡となって発生しやすい。この気泡も化学反応の安定性及び再現性を妨げる。
【0005】
内部に送液機構を持つマイクロ流体デバイスには、特殊なバルブや弁や電極を使用しているため高価であるという問題点があり、特に往復送液を行えるようにするには複雑な構造が必要となる。回転による遠心力を利用した送液方法を使用するマイクロ流体デバイスは、遠心力がデバイスの一方向にしか働かないため、反応部分に液が一度しか通過しないという問題点がある。ビーズアレイを初めとした化学反応デバイスではデバイス中の反応部位に同じ溶液を複数回数流通させて反応効率を上げることが可能で、そのために往復送液を行うが、この遠心力を利用した送液方法を使用するマイクロ流体デバイスでは往復送液は不可能であった。
【0006】
本発明は、コンタミネーションや気泡の発生がなく、簡素な構造で低コストに往復送液を行うことができる化学反応デバイス及び化学反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ビーズアレイを含む化学反応デバイスを使用する化学反応装置及び化学分析装置(以下、総称して化学反応装置という)において、回転できる基盤の中心以外の位置にデバイスを支持し、基盤とは独立にデバイスの向きを逆転させる機構を設定する。この方式により、回転による遠心力でデバイス内部の流路に一度液体を流した後も、デバイスの向きを逆転させて同一液体を繰り返して流路に流すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同一液体を繰り返して化学反応デバイスの流路に流すことができる。送液に関して装置は直接液体に触れないのでドライ環境の装置を実現でき、液体の成分が変更されてもそれぞれの液体が干渉することは無く、デバイスを使い捨てにした場合には、コンタミネーションを完全に防ぐことが可能となる。また遠心力の加圧による往復送液を実現することで、化学反応の効率を低下させず再現性の高い送液方法を提供できる。また、特殊なバルブや弁や電極なしに往復送液を行えるため、安価に簡便に製造可能な、ビーアレイを含む化学反応デバイスを使用する化学反応装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の全体構成を示す模式図である。回転軸101を中心に回転可能な回転基盤100上のデバイス保持部103に、化学反応デバイスの一つであるビーズアレイデバイス102を着脱可能に設置する。ビーズアレイデバイス102を設置するデバイス保持部103の位置は回転軸101から離れたところにあり、回転基盤100が回転軸101を中心に回転することで生じる遠心力がビーズアレイデバイス102に働くようになっている。ビーズアレイデバイス102に入った溶液はこの遠心力によって外向きの力を受けるため、流路にそって外側に送液される。後述する機構によりこのビーズアレイデバイス102をデバイス保持部103によって回転させることにより、ビーズアレイデバイス102中の流路を実質的に反転させることができる。ビーズアレイデバイス102を反転させた状態で回転基盤100を回転させることにより、再度ビーズアレイデバイス102に遠心力を働かせることができ、内部の液体を外向きに送液することができる。この一連の過程により、ビーズアレイデバイス102内部の溶液を往復送液することができる。
【0010】
図2(1)はビーズアレイデバイスの拡大模式図であり、(a)は上面図、(b)はそのAA断面図である。ビーズアレイデバイス102は、デバイス上部110と平らなデバイス下部111で構成されている。ここではデバイス上部110の材質としてポリジメチルシロキサン樹脂(PDMS)、デバイス下部111の材質としてスライドガラスを使用した例を述べる。デバイス上部110のデバイス下部111に接する側には、ビーズ113を流路112内に配列したビーズアレイ部分を中心に、液体を保持する穴(液溜)114及び115を有する。この構造を持つビーズアレイデバイス102は、鋳型からPDMSで型取りしたデバイス上部110をスライドガラスであるチップ下部111に貼り付けて作成することができる。
【0011】
ここで使用される型取り用の鋳型は、例えばElectrophoresis, 22, 328〜333 (2001)に記載の方法のように、平らにコーティングされたレジストに対してマスクを用いた光リソグラフィーの手法で作成することができる。デバイス上部110とデバイス下部111とを張り合わせた後、流路112部分にビーズ113を配列するためには、例えばAnalytical Chemistry, 75(13), 3250〜3255 (2003)に記載のように、キャピラリー真空ピンセットを用いて行うことができる。ビーズ113にはプローブとしてDNAや抗体を固定しておき、液体が流路112に配列されたビーズ113の近傍を通過する際に、液体中の核酸や抗原を捕捉するようにしておく。捕捉された核酸や抗原は蛍光計測によって計測することができ、液体中の核酸や抗原の量を計測された蛍光強度から知ることができる。流路112内部にビーズ113を並べたビーズアレイの構造に関しては特開平11-243997号公報に詳しい記述があり、どの構造を採用してもかまわない。このビーズアレイデバイス102の特徴としては、液体を何度も往復送液をさせることにより固液界面での反応の効率が上がることがAnalytical Chemistry, 75(13), 3079-3085 (2003)に記載されている。
【0012】
本実施例ではビーズアレイデバイスを用いた例を記述しているが、もちろん他の化学反応デバイスも用いることができる。例えば図2(2)の(a)から(d)に示すような化学反応デバイスを用いることができる。図2(2)において、(a)はチップ形状を持つDNA計測デバイスの一例の全体上面図、(b)はそのBB断面図である。このデバイスは、平らなスライドガラス152の上に、化学反応部兼計測部となる流路153を持つPDMS基板151を貼り付けて構成されている。スライドガラス152にはクラウンガラス製の無蛍光なものを使用した。PDMS基板151は約2mmの厚みを持ち、スライドガラス152の長辺から内側へ約2mmの部分を残し、スライドガラス152を覆っている。溶液穴154と接続穴155が流路153の両端に構成されている。このデバイスの作製は、例えばElectrophoresis, 22, 328-33 (2001)に記載されているように、フォトリソグラフィーの技術を用いて作ったPDMS部分の型となる鋳型に対して、未反応のPDMSを流し込んで硬化させ、硬化したPDMS基板151を鋳型から外し、スライドガラス152と張り合わせることで行われる。
【0013】
図2(2)の(c)及び(d)は、図2(2)の(a)及び(b)に示した化学反応部兼計測部となる流路153の一部分を拡大した模式図であり、(c)は上面図、(d)は側面図である。流路153はPDMS基板151とスライドガラス152の間に構成されている。PDMS基板151には突起157が付いており、この突起157が流路153の上側から流路153の中に突き出している。この突起157には反応溶液の流れを乱して基質の実質的な拡散速度を向上させる効果がある。流路153のスライドガラス152側にはDNA計測のためのDNAプローブ156がスポットしてある。このDNAプローブのスライドガラス152に対するスポッティングは、PDMS基板151を貼り付ける前に行っておく。
【0014】
図3(1)及び図3(2)は、本発明の第1の実施例の送液の手順を表す模式図である。化学反応デバイスであるビーズアレイデバイス102の拡大図と全体の俯瞰図を併せて示す。
【0015】
まず図3(1)(a)に示す通り、回転基盤100及びビーズアレイデバイス102が静止した状態で、液体を保持する穴114が回転軸101側にあり、反対の液体を保持する穴115が回転基盤の外周側に位置するようにセッティングする。それから回転軸側の液体を保持する穴114に溶液を入れる。溶液を入れる方法は問わないが、ここではピペットを用いて導入した。この溶液には、ビーズ113に反応する反応物質や検出対象物質、もしくは反応後の洗浄溶液などが含まれる。次に図3(1)(b)に示す通り、回転軸101を中心に回転基盤100を回転させる。この回転によってビーズアレイデバイス102に遠心力が働き、液体を保持する穴114にあった溶液がビーズ113に接触しながら流路112を通じて流れ、液体を保持する穴115に送液される。ここで図3(1)(c)に示す通り、液体を保持する穴114から液体を保持する穴115に液体が完全に送液された後、回転基盤100の回転を止める。この段階で液体が一方向に送液される過程が終了する。
【0016】
次に往復送液を行うために、図3(2)(d)に示す通り、ビーズアレイデバイス102を反転させる。反転させる機構の例については後述する。この反転により、溶液の入った液体を保持する穴115が回転軸101側に位置し、液体の入っていない穴114が回転基盤100の外周側に位置するようになる。この状態は図3(1)(a)の状態とほぼ同じであるが、液体を保持する穴114と115の位置関係が逆転している。後は最初の送液とほぼ同じ工程を繰り返すことで流路112中を逆向きに溶液を送液する。図3(2)(e)で示す通り、回転軸101を中心に回転基盤100を回転させる。この回転によってビーズアレイデバイス102に遠心力が働き、液体を保持する穴115にあった溶液がビーズ113に接触しながら流路112を通じて流れ、液体を保持する穴114に送液される。ここで図3(2)(f)に示す通り、液体を保持する穴115から液体を保持する穴114に液体が完全に送液された後、回転基盤100の回転を止める。この段階で液体が一回往復送液される過程が終了する。往復を繰り返すためには最初の配置に戻る必要があるため、ビーズアレイデバイス102の反転を行い、図3(1)(a)に示す状態に戻す。以下、同様の工程を繰り返すことにより、液体を保持する穴114と115の間を流路112を通じて溶液を往復送液することができる。なお、ビーズアレイデバイス102の反転に際して必ずしも基盤100の回転を止める必要はない。基盤100を連続的に回転させながら、基盤100上のビーズアレイデバイス102を反転させるようにしてもよい。
【0017】
液体中の核酸や抗原はビーズ113の表面近傍を通過する際に、固定されたプローブとしてのDNAや抗体によって捕捉されるため、液体が流路112を往復することによって、液体中の核酸や抗原とビーズ113表面のプローブとが反応する効率を上げることができる。また液体により洗浄を行う際にも、同様に効率よく洗浄を行うことができる。これらの動作の最中には、外部の装置や外部の配管が直接液体に触れることはないので、コンタミネーションが起こることが全くない、化学反応デバイス又は化学反応装置の送液方法を実現することができる。
【0018】
また本実施例の送液方法では、従来のシリンジポンプを用いた場合によく使われるエアギャップが存在せず、そのためエアギャップ由来の気泡が発生することはない。また遠心力による加圧によってのみ液を送液しており、陰圧を生じる工程が存在しないため、溶液に大気圧以下の陰圧がかかり、溶液に溶け込んでいる気体が気泡となって発生することがない。従来の方法では、これらの気泡が反応に関与する分子が固定された表面、例えばビーズの表面に、付くことによって化学反応の効率が低下し、再現性へ悪い影響を及ぼしていた。本実施例の送液方法によれば気泡は発生しないため、気泡の影響がなくなり、高い化学反応効率が得られ、反応の再現性も向上する。
【0019】
この実施例及び以降の実施例において、ビーズアレイデバイス102を用いた例を取り上げているが、本発明の適用範囲はそれに限定されるものではなく、流体の移動を伴う多くの化学反応デバイスに適用可能である。特に往復送液が可能であるため、反応効率の向上、反応時間の短縮、分析感度の向上、必要なサンプル溶液量の減量が可能となる利点がある。この化学反応デバイスには、例えば流路の壁面に障害物を設けて乱流を起こさせ化学反応を短時間に行う化学反応デバイスや、流路中に磁気微粒子を配列し外部の磁石でその磁気微粒子を操作する化学反応デバイスが含まれる。
【0020】
回転基盤を回転させることによって生じる遠心力が流路内の溶液に圧力を及ぼすことによって、これらの化学反応デバイス中での溶液の送液が行われる。流路の向きが遠心力の向きと一致する場合、この圧力Pは近似的にP = (ρVrω2)/Aと表現できる。ここでρは溶液の密度、Vは溶液の体積、rは回転軸と流路の中心との距離、ωは回転基盤の角回転速度、Aは流路の断面積である。送液の流量はこの圧力と流路の流路抵抗で決まる。ビーズアレイデバイスを例とする化学反応デバイスの多くは、特に生体関連分子をこれらのデバイスで取り扱う場合においては、10μLもしくは100μL程度の容量を取り扱うことが多い。送液速度としてはそれぞれ毎分10μLもしくは毎分100μL程度の体積流量があればよい。
【0021】
例えば、図2(1)に示したビーズアレイデバイス102において流路112の幅を150μm、ビーズ113の大きさを100μm、ビーズの個数を100個とする。ビーズ10000個分並んだときの流路抵抗を実測しビーズ100個分の値に換算すると、毎分10μLの水を流した場合に必要な圧力差は0.176kgf/cm2であった。溶液の体積を10μL、溶液の体積流量を毎分10μL、回転軸と流路の中心との距離を80mm、回転速度を毎秒1回転として、先ほどの計算式から圧力を計算すると0.182kgf/cm2となり、必要な圧力差にほぼ等しい。また同様に毎分100μLの水を流した場合に必要な圧力差は0.26kgf/cm2、であった。溶液の体積を100μL、溶液の体積流量を毎分100μL、回転軸と流路の中心との距離を120mm、回転速度を毎秒1回転として、先ほどの計算式から圧力を計算すると0.27kgf/cm2となり、必要な圧力差にほぼ等しい。つまり、これらの条件で回転させることにより、ビーズアレイデバイスに必要な反応溶液の体積及び体積流量を往復送液において扱うことができる。ビーズ以外の部分よる圧力損失は十分に小さいため、これらの条件で送液操作を行える。例えば、回転軸と流路の中心との距離は先ほどの計算から化学反応デバイスの大きさを考慮しても150mm以下で十分である。
【0022】
また回転基盤の回転速度については、液溜めから液があふれないことが必要で、この際にふたが必要ないような範囲であればなお好ましい。例えば遠心力にて送液した後の溶液の液面が液だめ中で45度の角度を持つのは、遠心力と重力がつりあうところであり、この程度であれば液があふれることはない。先ほど計算したケースのうち半径80mmと半径120mmのケースで考えると、毎秒約2回転以下ならこの条件を満たすことが分かる。この方法による往復送液では、このように小さな回転装置で十分であり、また低い回転速度で十分であるため、簡便で安価な装置の構成が可能である。ここではビーズアレイデバイスについて流路抵抗を実測して検討したが、それ以外の化学反応デバイスの多くは流路抵抗が小さいものがほとんどであり、ビーズアレイの条件を満たしていれば実質上問題ない。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施例において化学反応デバイスを回転させる機構の一例を示す模式図である。図1では省略されていた、化学反応デバイスの一つであるビーズアレイ102を回転させる機構の概略を示している。
【0024】
ビーズアレイデバイス102はデバイス保持部103によって保持されており、デバイス保持部103はデバイス保持部の回転軸120で保持されている。デバイス保持部の回転軸120は回転基盤100に設置されたモーター121につながっている。モーター121を回転させることにより、デバイス保持部の回転軸120を回転し、結果的にビーズアレイデバイス102を回転させることができる。図3(d)に示したビーズアレイデバイス102の反転は図4の機構によって実現できる。
【0025】
回転基盤100はモーター161によって回転駆動される。また、モーター121及びモーター161は、装置制御部160によって制御されている。装置制御部160はモーター161を駆動して回転基盤100を回転させ、デバイス保持部103によって保持されたビーズアレイデバイス102に遠心力を作用させて一方の液溜中の反応溶液を、流路112を通して他方の液溜に向けて送液する。遠心力による送液によって、回転基盤100の回転軸101に近い側の液溜に入っていた反応溶液が回転軸101から遠い側の液溜に完全に移るまでの時間は予め計算あるいは実験で求めておき、装置制御部160のタイマーに設定しておく。装置制御部160は、タイマーから送られてくるタイミング信号に応じてモーター121を駆動してデバイス保持部103を反転させる制御を予め設定された回数繰り返すことによって、ビーズアレイデバイス102の流路112に反応溶液を往復送液する。タイマーによる時間制御に代えて、回転基盤の回転回数が予め設定した回数に達する毎に、デバイス保持部103を反転させる操作を反復するようにしてもよい。
【0026】
デバイス保持部103を回転させる機構はモーターに限定されるものではなく、歯車とねじりねじを組み合わせた方法やゼンマイと機械原点による位置出しを使う方法など、様々な方法が考えられる。またこの化学反応デバイスを回転させる機構は、回転基盤100に付属している必要は必ずしもない。例えば、一方向送液後回転基盤100の回転を静止させ、化学反応デバイスを回転基盤100上側から機械的に外し、デバイスを反転させてセットするという、外部からの操作及び操作機構によってもよい。例えば図5に示す通り、デバイスを回転させるアーム125が回転基盤100の外側に設置されており、デバイスを回転させるアーム125がビーズアレイデバイス102とデバイス保持部103を掴み、移動させて反転させ、反転した向きのまま回転基盤100に設置する、とい機構を採用することもできる。
【0027】
図6は、本発明の第1の実施例の化学反応デバイスがビーズアレイであり、そのビーズアレイでハイブリダイゼーションの検出を行った結果を従来の方法で得られた結果と比較した図である。DNAプローブとしてp53の各エクソン(但しエクソン1と3は使用せず、合計10種。プローブ1〜10とする。)のアンチセンス側の塩基配列の一部を持つ18塩基長の合成DNAを用意した。ターゲットDNAとしては、DNAプローブ5と完全に相補であり、TexasRed蛍光体で標識された18塩基長の合成DNA(DNAターゲット5)を準備した。相補的なDNAプローブとターゲットDNAの融解温度は約70℃であった。配列を以下に示す。
【0028】
DNAプローブ1の配列 :5'−TGTCACCGTCGTGGAAAG−3'
DNAプローブ2の配列 :5'−ATCTGACTGCGGCTCCTC−3'
DNAプローブ3の配列 :5'−AAGAAGCCCAGACGGAAA−3'
DNAプローブ4の配列 :5'−GCCTCACAACCTCCGTCA−3'
DNAプローブ5の配列 :5'−TCATAGGGCACCACCACA−3'
DNAプローブ6の配列 :5'−ATGATGGTGAGGATGGGC−3'
DNAプローブ7の配列 :5'−CCCTTTCTTGCGGAGCTT−3'
DNAプローブ8の配列 :5'−TTTCTTCTTTGGCTGGGG−3'
DNAプローブ9の配列 :5'−CCTGGGCATCCTTGAGTT−3'
DNAプローブ10の配列:5'−ATGGCGGGAGGTAGACTG−3'
DNAターゲット5の配列:5'−TGTGGTGGTGCCCTATGA−3'
【0029】
これらのDNAプローブをNucleic Acids Research, 30(16), e87(2002)と同様の方法で直径103μmのガラスビーズに固定し、図2(1)に示したビーズアレイデバイスに一つずつ順に配列した。このビーズアレイデバイスに対して、DNAターゲット5の1 x 10 -10 M濃度の4xSSC-0.1%SDS溶液10μLを3種類の方法でハイブリダイゼーション反応させた。一つ目は従来行われてきたシリンジポンプを使用した方法を用いて、6分間で3往復させて反応させた。二つ目は本実施例で説明した遠心方法を用い、但しデバイスの方向を反転させないで一方向の送液のみを行った。この一回の送液は10μLの溶液が30秒で流れるように操作した。三つ目は本実施例で説明した遠心方法を用い、デバイスの方向を反転させることによって6分間に3往復する条件で操作した。ハイブリダイゼーション反応後は1xSSC−0.03%SDS溶液、0.2 x SSC溶液、0.05 x SSC溶液、水の順で洗浄して、CCDカメラの付いた蛍光顕微鏡にて計測した。蛍蛍光強度として、DNAターゲット5に対応するDNAプローブ5を固定したガラスビーズの蛍光強度をCCDカメラの画像から数値化したものを使った。それぞれの条件について7回実験を行い、平均と標準偏差を計算した。
【0030】
図6に示した各棒グラフのエラーバーは標準偏差に相当する。これによると、シリンジポンプで往復送液したものは、遠心送液で片道の送液したものに比べて大きな蛍光強度が得られるが、本発明の遠心送液による往復送液での結果の方が、蛍光強度が少し大きく、またエラーバーが小さいことが分かる。これは、本発明の送液方法では、エアギャップが存在せず、また陰圧の生じる工程が無いため、エアギャップ由来の気泡と溶液に溶け込んでいる気体が陰圧により発生する気泡の双方が抑えられる。そのため本発明の送液方法によると、ビーズ表面に気泡がついて反応を疎外することがないため、均一で再現性の高い反応が実現しているためだと考えられる。
【0031】
図7は、本発明の第1の実施例の化学反応デバイスの流路の方向と化学反応デバイスと基盤の中心を結ぶ線分が一致せず、有意な角度を持つ場合の一例を示す模式図である。この例では図1に示した模式図の場合と異なり、ビーズアレイデバイス102の流路の方向とビーズアレイデバイス102と回転基盤100の回転軸101を結ぶ線分一致せず傾いており、45゜の角度を持っている。例えば図4に示したデバイスの回転機構を用いることで、この状態は実現できる。
【0032】
溶液の送液に働く遠心力は、回転基盤100の回転軸101からビーズアレイデバイス102の方向に働く。図1のように流路の方向と遠心力の働く向きが一致する場合の、この遠心力に由来する溶液にかかる圧力の大きさをP1とする。ビーズアレイデバイス102の流路とこの遠心力向きがなす角度をθとすると、この図7で表されている状況ではθが45゜である。この傾いた場合に溶液の送液に働く力P2の大きさはP2=P1×cosθと表せる。この角度をコントロールすることによって、溶液に働く力をコントロールすることができるので、結果として送液速度をコントロールできる効果がある。送液速度のコントロールは化学反応の効率に大きな影響があるので重要である。また溶液の種類や反応条件、洗浄条件に対応した送液条件の設定が可能となる。また、遠心力の向きに対して直角の方向以外であれば、溶液に力が働き送液できるので、直角をまたがって、少しの角度だけの角度変化を行えば往復させることも可能であり、化学反応デバイスの回転機構の簡略化も可能となる。
【0033】
図8は、本発明の第1の実施例において化学反応デバイスを回転させる機構の他の例を示す模式図である。図4で示した例ではモーターを直接用いてビーズアレイデバイス102を回転させているが、図8に示した例では歯車の組み合わせを用いている。
【0034】
ビーズアレイデバイス102はデバイス保持部103によって保持されており、デバイス保持部103はデバイス保持部の回転軸120で保持されている。デバイス保持部の回転軸120は、回転基盤100に設置されたデバイスを回転させる歯車130につながっている。デバイスを回転させる歯車130は順に歯車131、132につながっている。歯車130、131、132は回転基盤上に回転可能な形で設置されている。また歯車132はこの図では明示しない回転基盤外部に対して相対的に位置が固定されている。この構成においては、回転基盤100を回転軸101を中心に回転させることにより歯車132が回転基盤100相対的に回転し、その回転が歯車131を伝わってデバイスを回転させる歯車130を回転させる。結果として、回転基盤100を回転させることに伴ってビーズアレイデバイス102が同時に回転することになる。
【0035】
回転基盤100とビーズアレイデバイス102の回転数の比は歯車130、131、132のギア比の設定によって決定され、適切な設計をすることにより、ビーズアレイデバイス102中の溶液をこの機構によって往復送液させることができる。例えば、ビーズアレイデバイス102を図1のように流路の向きがが遠心力の方向と一致するように設置し、回転基盤100の回転速度を固定して回転させ、一方方向に完全に通過する時間tを測定しておく。ギア比の設定は、ビーズアレイデバイス102が180゜回転するのに必要な時間がt×円周率よりも十分に長くなるように設定すれば、溶液が完全に一方に送られてから、ビーズアレイデバイス102の流路が実質的に反転することになる。
【0036】
この歯車を使った化学反応デバイスの回転機構を使った場合には、一方向送液終了ごとに向きを反転させるという煩雑な手順の必要が無く、回転基盤100を回転するだけという単純な機構で往復送液を実現できる利点がある。また回転基盤100回転時の加減速にかかる時間が無くなり、往復送液を用いて行う化学反応や洗浄工程の実質的な時間を短縮することも可能である。
【0037】
図9は、本発明の第1の実施例において化学反応デバイスと基盤中心との距離を変更する機構の一例を表す模式図である。ビーズアレイデバイス102はデバイス保持部103によって保持されており、デバイス保持部103はデバイス保持部の回転軸120で保持されている。デバイス保持部の回転軸120はモーター141につながっている。モーター141を回転させることにより、デバイス保持部の回転軸120を回転し、結果的にビーズアレイデバイス102を回転させることができる。回転基盤100はモーター161によって回転駆動される。また、モーター141及びモーター161は、装置制御部160によって制御されている。モーター141はモーター保持台142に保持されており、モーター保持台142はレール143の上に設置されている。レール143上でモーター保持台142を動かすことができ、結果としてビーズアレイデバイス102と回転基盤100の回転軸101との距離を変更することができる。この機構によれば、化学反応デバイスの一つであるビーズアレイデバイス102と回転基盤100の回転軸101の距離を変更することと、ビーズアレイデバイス102を回転もしくは反転させることを両立させて稼動することが可能である。
【0038】
図10は、図9に示したビーズアレイデバイス102と回転軸101の距離を変更する様子を表す上面模式図である。回転基盤100上の中心である回転軸101から半径上を直線的に外周に伸びるようにレール143が設置されており、そのレール143の上をここには明示されていないモーター保持台、モーター、デバイス保持部の回転軸を介して支持されるデバイス保持部103上のビーズアレイデバイス102が移動することができる。ビーズアレイデバイス102中の溶液にかかる遠心力Fは、回転軸101からの距離rに比例して大きくなるので、この距離rを変更することによって溶液にかかる遠心力を変更し、結果として溶液の送液速度を変更できるという利点がある。送液速度のコントロールは化学反応の効率に大きな影響があるので重要である。距離rを変更することによって、溶液の種類や反応条件、洗浄条件に対応した送液条件の設定が可能となる。
【0039】
図9及び図10ではレールを用いた機構を例に取り説明したが、距離rを変更する機構はこれに限定されない。例えば、ビーズアレイデバイス102の下面に凸部を設け、回転基盤100の上面の様々な距離rに対応するところに、突起部を保持して支持する凹部を設けるなどの機構が考えられる。またその際に同時に採用される化学反応デバイスの回転機構についても、モーターを用いたものに限定されない。
【0040】
図11は、本発明の第2の実施例の全体を表す模式図である。図1で説明した第1の実施例の場合とは異なり、回転基盤上に複数の化学反応デバイスを載せて、同時に送液を行う実施例である。
【0041】
この例では、回転軸201を中心として回転する回転基盤200の上に、ビーズアレイデバイス202が12個設置されている。本発明の第1の実施例と同様の機構でそれぞれのビーズアレイデバイス202を回転させることができ、それぞれに対して溶液の往復送液を行うことができる。この機構により、複数のビーズアレイデバイス202に対して同時に操作することが可能となり、全体の操作時間の短縮や全体の操作コストの削減に対する効果がある。
【0042】
この複数のビーズアレイデバイス202を載せた機構においても、本発明の第1の実施例で説明したように、回転軸201からビーズアレイデバイス202までの距離を変更する機構を採用することやビーズアレイデバイス202の角度を変更する機構を採用することは可能であり、結果として送液条件をコントロールし、溶液の種類や反応条件、洗浄条件に対応した送液条件の設定が可能となる効果がある。
【0043】
図12は、本発明の第3の実施例の全体を表す模式図である。図1で説明した第1の実施例の場合とは異なり、計測装置を同時に組み込むことによって、送液と計測を同時に行う実施例である。
【0044】
この例では、回転軸301を中心として回転する回転基盤300の上にビーズアレイデバイス302が12個設置されている。本発明の第1の実施例と同様の機構でビーズアレイデバイス302を回転させることができ、溶液の往復送液を行うことができる。ビーズアレイデバイス302に対して、ビーズアレイデバイス302の上側から蛍光計測を行うため、レーザー303から出たレーザー光をダイクロックミラー304で反射し、ビーズアレイデバイス302を照射する。ビーズアレイデバイス302から出た蛍光はレンズ305、ダイクロックミラー304、光学フィルター306を通過して光電子増倍管307で受光され、光電子増倍管308からのシグナルを信号処理装置308によって解析することで、蛍光の計測を行うことができる。
【0045】
例えば、Nucleic Acids Research, 30(16), e87 (2002)に記載された方法でDNAプローブを固定したガラスビーズをビーズアレイ302の流路に配置し、TexasRed標識したターゲットDNAを含む溶液を往復送益して反応させた後、洗浄し計測する場合には、レーザー303としてYAGレーザーを使用し、光学フィルター306としてはTexasRedの発光波長である610nm付近を中心として半値幅が30nm程度のバンドパスフィルターを用いればよい。計測は回転基盤300の回転を止めて行うこともできるし、回転させたまま行うこともできる。ここでは蛍光計測を行う系について記述したが、化学発光計測、吸光計測、呈色反応計測などの計測を行うことも可能である。化学反応デバイスに対する往復送液と計測過程を組み合わせることにより、全体の操作時間を短縮でき、コストの削減を行うことができる。また、途中経過を計測することができるため、最適な化学反応や分析の結果が得られるところまで送液を続けることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例の全体を表す模式図。
【図2(1)】本発明の一実施例に使用される化学反応デバイスを示す模式図。
【図2(2)】本発明の一実施例に使用される化学反応デバイスを示す模式図。
【図3(1)】本発明の一実施例における送液手順を示す模式図。
【図3(2)】本発明の一実施例における送液手順を示す模式図。
【図4】化学反応デバイスを回転させる機構の一例を示す模式図。
【図5】化学反応デバイスを回転させる機構の他の例を示す模式図。
【図6】本発明の一実施例における分析結果と従来の方法での分析結果を比較した図。
【図7】化学反応デバイスの流路の方向と化学反応デバイスと基盤の中心を結ぶ線分が一致しない場合の一例を示す模式図
【図8】化学反応デバイスを回転させる機構の一例を示す模式図。
【図9】化学反応デバイスと基盤中心との距離を変更する機構の一例を示す模式図。
【図10】化学反応デバイスを移動させる機構の一例を示す模式図。
【図11】本発明の一実施例の全体を示す模式図。
【図12】本発明の一実施例の全体を示す模式図。
【符号の説明】
【0047】
100:回転基盤、101:回転軸、102:ビーズアレイデバイス、103:デバイス保持部、110:デバイス上部、111:デバイス下部、112:流路、113:ビーズ、114:液体を保持する穴、115:液体を保持する穴、120:デバイス保持部の回転軸、121:モーター、125:デバイスを回転させるアーム、126:アームの制御部、130:デバイス回転させる歯車、131:歯車、132:歯車、141:モーター、142:モーター保持台、143:レール、151:PDMS基板、152:スライドガラス、153:流路、154:溶液穴、155:接続穴、156:DNAプローブ、157:突起、200:回転基盤、201:回転軸、202:ビーズアレイデバイス、300:回転基盤、301:回転軸、302:ビーズアレイデバイス、303:レーザー、304:ダイクロックミラー、305:レンズ、306:光学フィルター、307:光増倍管、308:信号処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転基盤と、
前記回転基盤を回転駆動する基盤駆動部と、
前記回転基盤上の回転軸から外れた位置に設けられて、第1の液溜と第2の液溜と前記第1の液溜と第2の液溜とを結ぶ流路を有する化学反応デバイスを保持するデバイス保持部と、
前記デバイス保持部の向きを変える機構とを有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項2】
請求項1記載の化学反応装置において、前記機構は、前記デバイス保持部を回転させる回転駆動手段であることを特徴とする化学反応装置。
【請求項3】
請求項1記載の化学反応装置において、前記機構は、前記回転基盤の外部に対して相対的に固定された第1の歯車と、前記回転基盤上に固定され前記第1の歯車と噛み合って前記デバイス保持部を回転させる第2の歯車を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項4】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸に対する前記デバイス保持部の距離を可変する手段を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項5】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸と前記デバイス保持部に保持された化学反応デバイスの流路中心との距離が150mm以下であることを特徴とする化学反応装置。
【請求項6】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転速度が毎秒2回転以下であることを特徴とする化学反応装置。
【請求項7】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸と前記デバイス保持部とを結ぶ直線に対して前記デバイス保持部によって保持された化学反応デバイスの流路がなす角度を変更する手段を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項8】
請求項1記載の化学反応装置において、前記基盤駆動部と前記機構を制御する制御部を有し、前記制御部は、予め設定された時間が経過する毎に前記機構を制御して前記化学反応デバイスの向きを反転させることを特徴とする化学反応装置。
【請求項9】
請求項1記載の化学反応装置において、前記基盤駆動部と前記機構を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記回転基盤を所定回数回転させる毎に前記機構を制御して前記化学反応デバイスの向きを反転させることを特徴とする化学反応装置。
【請求項10】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤上に複数のデバイス保持部を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項11】
第1の液溜と第2の液溜と前記第1の液溜と第2の液溜とを結ぶ流路を有する化学反応デバイスの前記第1の液溜に溶液を導入する工程と、
前記化学反応デバイスを設置した回転基盤を回転させ、当該回転基盤の回転による遠心力によって前記第1の液溜中の溶液を前記流路を通して前記第2の液溜に送液する工程と、
前記化学反応デバイスを前記流路の向きが実質的に逆向きになるように再配置する工程と、
前記回転基盤の回転による遠心力によって前記第2の液溜中の溶液を前記流路を逆向きに通して送液する工程とを有することを特徴とする送液方法。
【請求項12】
請求項11記載の送液方法において、前記化学反応デバイスは、粒状ビーズを流路に配列したビーズアレイであることを特徴とする送液方法。
【請求項13】
請求項11記載の送液方法において、前記粒状ビーズは表面に核酸プローブが固定されていることを特徴とする送液方法。
【請求項14】
請求項11記載の送液方法において、前記化学反応デバイスは、流路内に特定物質と特異的に反応する物質を固定した反応部分を有することを特徴とする送液方法。
【請求項15】
請求項11記載の送液方法において、前記回転基盤の回転速度が毎秒2回転以下であることを特徴とする送液方法。
【請求項16】
請求項11記載の送液方法において、所定の時間が経過する毎に前記化学反応デバイスを再配置する工程を繰り返すことを特徴とする送液方法。
【請求項17】
請求項11記載の送液方法において、前記回転基盤が所定回数回転する毎に前記化学反応デバイスを再配置する工程を繰り返すことを特徴とする送液方法。
【請求項18】
回転基盤と、
第1の液溜と第2の液溜と前記第1の液溜と第2の液溜とを結ぶ流路とを備えた化学反応デバイスと、
前記回転基盤上の回転軸から外れた位置で前記化学反応デバイスを保持するデバイス保持部と、
前記デバイス保持部の向きを変える機構とを有することを特徴とする化学反応器。
【請求項19】
請求項18記載の化学反応装置において、前記機構は、前記デバイス保持部を回転させる回転駆動手段であることを特徴とする化学反応器。
【請求項20】
請求項18記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸に対する前記デバイス保持部の距離を可変する手段を有することを特徴とする化学反応器。
【請求項1】
回転基盤と、
前記回転基盤を回転駆動する基盤駆動部と、
前記回転基盤上の回転軸から外れた位置に設けられて、第1の液溜と第2の液溜と前記第1の液溜と第2の液溜とを結ぶ流路を有する化学反応デバイスを保持するデバイス保持部と、
前記デバイス保持部の向きを変える機構とを有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項2】
請求項1記載の化学反応装置において、前記機構は、前記デバイス保持部を回転させる回転駆動手段であることを特徴とする化学反応装置。
【請求項3】
請求項1記載の化学反応装置において、前記機構は、前記回転基盤の外部に対して相対的に固定された第1の歯車と、前記回転基盤上に固定され前記第1の歯車と噛み合って前記デバイス保持部を回転させる第2の歯車を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項4】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸に対する前記デバイス保持部の距離を可変する手段を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項5】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸と前記デバイス保持部に保持された化学反応デバイスの流路中心との距離が150mm以下であることを特徴とする化学反応装置。
【請求項6】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転速度が毎秒2回転以下であることを特徴とする化学反応装置。
【請求項7】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸と前記デバイス保持部とを結ぶ直線に対して前記デバイス保持部によって保持された化学反応デバイスの流路がなす角度を変更する手段を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項8】
請求項1記載の化学反応装置において、前記基盤駆動部と前記機構を制御する制御部を有し、前記制御部は、予め設定された時間が経過する毎に前記機構を制御して前記化学反応デバイスの向きを反転させることを特徴とする化学反応装置。
【請求項9】
請求項1記載の化学反応装置において、前記基盤駆動部と前記機構を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記回転基盤を所定回数回転させる毎に前記機構を制御して前記化学反応デバイスの向きを反転させることを特徴とする化学反応装置。
【請求項10】
請求項1記載の化学反応装置において、前記回転基盤上に複数のデバイス保持部を有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項11】
第1の液溜と第2の液溜と前記第1の液溜と第2の液溜とを結ぶ流路を有する化学反応デバイスの前記第1の液溜に溶液を導入する工程と、
前記化学反応デバイスを設置した回転基盤を回転させ、当該回転基盤の回転による遠心力によって前記第1の液溜中の溶液を前記流路を通して前記第2の液溜に送液する工程と、
前記化学反応デバイスを前記流路の向きが実質的に逆向きになるように再配置する工程と、
前記回転基盤の回転による遠心力によって前記第2の液溜中の溶液を前記流路を逆向きに通して送液する工程とを有することを特徴とする送液方法。
【請求項12】
請求項11記載の送液方法において、前記化学反応デバイスは、粒状ビーズを流路に配列したビーズアレイであることを特徴とする送液方法。
【請求項13】
請求項11記載の送液方法において、前記粒状ビーズは表面に核酸プローブが固定されていることを特徴とする送液方法。
【請求項14】
請求項11記載の送液方法において、前記化学反応デバイスは、流路内に特定物質と特異的に反応する物質を固定した反応部分を有することを特徴とする送液方法。
【請求項15】
請求項11記載の送液方法において、前記回転基盤の回転速度が毎秒2回転以下であることを特徴とする送液方法。
【請求項16】
請求項11記載の送液方法において、所定の時間が経過する毎に前記化学反応デバイスを再配置する工程を繰り返すことを特徴とする送液方法。
【請求項17】
請求項11記載の送液方法において、前記回転基盤が所定回数回転する毎に前記化学反応デバイスを再配置する工程を繰り返すことを特徴とする送液方法。
【請求項18】
回転基盤と、
第1の液溜と第2の液溜と前記第1の液溜と第2の液溜とを結ぶ流路とを備えた化学反応デバイスと、
前記回転基盤上の回転軸から外れた位置で前記化学反応デバイスを保持するデバイス保持部と、
前記デバイス保持部の向きを変える機構とを有することを特徴とする化学反応器。
【請求項19】
請求項18記載の化学反応装置において、前記機構は、前記デバイス保持部を回転させる回転駆動手段であることを特徴とする化学反応器。
【請求項20】
請求項18記載の化学反応装置において、前記回転基盤の回転軸に対する前記デバイス保持部の距離を可変する手段を有することを特徴とする化学反応器。
【図1】
【図2(1)】
【図2(2)】
【図3(1)】
【図3(2)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2(1)】
【図2(2)】
【図3(1)】
【図3(2)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−110523(P2006−110523A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303227(P2004−303227)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
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