説明

化学療法剤、化学予防剤、および抗脈管形成剤としての新規なフラバノイドおよびカルコン

【課題】癌および他の過剰増殖疾患の予防および処置において有用な化合物を提供すること。
【解決手段】化学治療剤、化学予防剤、および抗脈管形成剤として有用な新規化合物が、提供される。これらの化合物は、フラバノン、フラバノール、およびカルコンを含むフラバノイドである。これらの化合物は、式(I)の構造を有し、ここでR〜RおよびR〜R11は、本明細書中で定義され、そしてα、βおよびγは、任意の結合であり、αが存在しないとき、βが存在し、そしてβが存在しないとき、αが存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、治療剤としてのフラバノイド化合物(特に、フラバノン、フラバノール、およびカルコン)に関連する。より具体的には、本発明は、癌および他の過剰増殖疾患の予防および処置において有用である、新規なフラバノン、フラバノール、およびそのカルコンアナログに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、米国における第2位の死亡原因であり、心疾患にだけ超えられている。癌を処置するために現在使用される薬物は、その治療用量レベルでは毒性である傾向があり、これは、一般に、重篤な副作用および生命を脅かす副作用さえ引き起こす。これらの副作用としては、血液、胃腸管、肝臓、腎臓、および他の器官の深刻な障害が挙げられる。従って、ほとんどの現在の抗癌剤は、狭い治療範囲を有する。その治療用量と、最大寛容レベルとの間の範囲は、非常に小さい。この毒性、およびほとんどの抗癌薬物が静脈内投与される事実に起因して、ほぼすべての癌化学療法は、病院または診療所において投与されなければならない。ほとんどの現在の癌化学療法に関するさらなる問題は、癌が、それらの薬物に対する抵抗性を頻繁に発生し、その結果、疾患の再発が、一般的であることである。
【0003】
従って、薬物抵抗性癌を処置する際に有効であり、低い毒性を示し、広い治療範囲を有し、その結果、薬剤が、罹患組織を標的としつつ、健常組織を助ける、新規な抗癌剤を開発することが、最も重要である。理想的な抗癌剤はまた、臨床的設定以外で容易に投与可能である。経口的に活性な化合物は、この点において特に魅力的である。理想的な薬剤はまた、治療方法におけるその有用性に加えて、癌を発症する危険がある患者において、予防上有用である。新脈管形成(新規な血管が形成されるプロセス)は、多くの正常な生理学的機能(増殖、胎盤の確立、および創傷治癒を含む)にとって必須である。新脈管形成はまた、直径が約2mmを超える癌性腫瘍の増殖のために必須である(Weidnerら(1991)New England J.Med.324:1〜8)。充分な栄養分および酸素を得るために、腫瘍は、その腫瘍を周囲の組織に連結する新規な血管の発生を含む因子を分泌する。一旦、腫瘍が、宿主生物に連結された血管の系を確立すると、腫瘍細胞が循環に入り得、遠位部位(例えば、肝臓、肺、または骨)に転移する手段が、提供される。この新生血管形成が予防または破壊される場合、この腫瘍は、最終的に収縮して死滅する。開発中の最も有望な抗癌化合物のいくつかは、抗脈管形成性である。これらの化合物としては、アンジオスタチン(血餅の溶解に関与する血漿タンパク質であるプラスミノーゲンの切断によって生成される、約200アミノ酸のポリペプチド);エンドスタチン(血管において見出されるコラーゲンである18型コラーゲンのC末端において見出される球状ドメインである、184アミノ酸のポリペプチド);およびトロポニンI(筋肉において見出されるタンパク質)が挙げられる。開発中の別の抗脈管形成化合物は、脈管インテグリンanb3に対するモノクローナル抗体である。他の実験的化合物は、VEGFに対して標的化される。開発中のこれらの化合物のすべてがタンパク質であるので、それらの化合物は、経口投与され得ず、それらの化合物は、アレルギー反応を誘導し得る。さらなる実験的抗脈管形成化合物であるスラミンは、高い全身毒性を有するので、その有用性が厳しく制限される。
【0004】
癌以外のほとんどの疾患はまた、病理学的新脈管形成に関連する。眼の新生血管形成は、失明の最も一般的な原因として関係付けられている。糖尿病性網膜症において、網膜において形成される毛細血管は、硝子体に侵入し、出血し、そして徐々に視界を喪失させて、失明をもたらす。関節炎において、新規に形成される毛細血管および他の血管は、関節に侵入し、軟骨を破壊する。乾癬において、新脈管形成は、皮膚細胞の迅速な増殖および代謝を維持するために必要である。炎症障害および新脈管形成に関係する他の疾患の他の多くの例は、当該分野で公知である。
【0005】
いくつかの抗脈管形成剤は、非常に有効であるが、現在公知の薬剤の多くは、多数の問題に関係する。例えば、公知の抗脈管形成剤の多くは、乏しいバイオアベイラビリティしか示さず、多数の副作用をもたらし、安定性に関する問題を有し、そして効率的な様式で合成することが困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
以下の式(I):
【化1】


を有する化合物であって、
α、β、γが、任意の結合であり、但しαが存在しない場合、βが存在し、そしてβが存在しない場合、αが存在し;
、RおよびRが、ヒドロキシル、ハロ、スルフヒドリル、アルコキシ、アリールオキシ、およびアラルキルオキシからなる群から独立して選択され、さらに、RおよびRまたはRおよびRのいずれかが、結合されて環式基を形成し得;
αが存在する場合、Rは、O、S、NR、およびCRから選択され、そしてαが存在しない場合、Rは、OH、SH、NHRおよびCRHから選択され、R、RおよびRが、水素またはアルキルであり;
γが存在する場合、Rは、O、SまたはNRであり;
γが存在しない場合、Rは、OH、SH、アシルオキシおよびN(R)からなる群から選択され、Rは、同じでも異なっていても良く、以前に定義されるようであり;
、R、RおよびRは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、およびアラルキルオキシからなる群から独立して選択され、RおよびR、RおよびR、またはRおよびRが、一緒に結合されて五員環、六員環ならびに縮合した五員環および/または六員環から選択される環式構造を形成し得、該環式構造は、芳香族化合物、脂環式化合物、複素環式芳香族化合物、または複素環式脂環式化合物であり、そして0個〜4個の非水素置換基および0個〜3個のヘテロ原子を有し;そして
10およびR11が、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシおよびハロからなる群から独立して選択される、化合物。
(項目2)
項目1に記載の化合物であって、R、RおよびRが、ヒドロキシル、ハロ、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、さらにRおよびRまたはRおよびRのいずれかが結合されてアルキレン、置換アルキレン、およびヘテロアルキレンから選択される2原子結合または3原子結合を形成し得、
αが存在する場合、Rは、O、S、NHおよびCHから選択され、そしてαが存在しない場合、Rは、OH、SH、NHおよびCHから選択され;
γが存在する場合、Rは、OまたはNHであり;
γが存在しない場合、Rは、OH、C−C32アシルオキシおよびNHからなる群から選択され;
、R、RおよびRは、水素、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが、水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが水素であり;そして
10およびR11が、水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシおよびハロからなる群から独立して選択される、化合物。
(項目3)
項目2に記載の化合物であって、αおよびγが存在し、βが存在せず、RがOであり、そしてRがOであり、その結果該化合物が、以下の式(II)の化合物:
【化2】


を有する、化合物。
(項目4)
項目3に記載の化合物であって、R10およびR11が、水素である、化合物。
(項目5)
項目2に記載の化合物であって、αが存在しており、βおよびγが存在せず、RがOであり、そしてRがOHであり、その結果該化合物が、以下の式(III):
【化3】


の構造を有する、化合物。
(項目6)
2β,4β−シス、2α,4α−シス、2α,4β−トランスまたは2β,4α−トランス立体配置においてエナンチオマーとして純粋な形態である、項目5に記載の化合物。
(項目7)
項目5に記載の化合物であって、該化合物が、2α,4β−トランスエナンチオンマーおよび2β,4α−トランスエナンチオマーのラセミ混合物を含む、化合物。
(項目8)
項目5に記載の化合物であって、該化合物が、2α,4α−シスエナンチオンマーおよび2β,4β−シスエナンチオマーのラセミ混合物を含む、化合物。
(項目9)
項目5に記載の化合物であって、R10およびR11が、水素である、化合物。
(項目10)
項目2に記載の化合物であって、βおよびγが存在し、αが存在せず、RがOHであり、そしてRがOであり、その結果該化合物が、以下の式(IV)の化合物:
【化4】


を有する、化合物。
(項目11)
項目2に記載の化合物であって、
、RおよびRが、同一であり、C−CアルコキシおよびC−C12アラルキルオキシからなる群から選択され;
αが存在する場合、Rは、Oであり、そしてαが存在しない場合、Rは、OHであり;
γが存在する場合、Rは、Oであり、そしてγが存在しない場合、Rは、ヒドロキシルおよび以下の構造:
【化5】


を有するアシルオキシ置換基からなる群から選択され、R12、R13およびR14は、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され;そして
(a)RおよびRは、一緒に結合されてフェニル環を形成し得、そしてRおよびRは水素であり、(b)RおよびRは、一緒に結合されてフェニル環を結合し、そしてRおよびRは、水素であり、(c)RおよびRは、一緒に結合されてシクロヘキシル環を形成し、そしてRおよびRは水素であり、または(d)RおよびRは、C−Cアルコキシ、またはC−C12アラルキルオキシであり、そしてRおよびRは、水素であり;そして
10およびR11は、水素である、化合物。
(項目12)
項目11に記載の化合物であって、
、RおよびRが、メトキシおよびベンジルオキシからなる群から選択され;
γが存在しない場合、Rが、ヒドロキシルおよび以下の構造:
【化6】


を有するアシルオキシ置換基からなる群から選択され、R12、R13およびR14が、メトキシおよびベンジルオキシからなる群から独立して選択され、そして
およびRが、共に結合されてフェニル環を形成する、化合物。
(項目13)
以下の式(V):
【化7】


に記載の構造を有する、項目12に記載の化合物。
(項目14)
項目13に記載の化合物であって、該化合物が、2α,4β−トランスエナンチオマーおよび2β,4α−トランスエナンチオマーのラセミ混合物を含む、化合物。
(項目15)
項目12に記載の化合物であって、R、RおよびRが、メトキシである、化合物。
(項目16)
項目13に記載の化合物であって、R、RおよびRが、メトキシである、化合物。
(項目17)
項目14に記載の化合物であって、R、RおよびRが、メトキシである、化合物。
(項目18)
項目12に記載の化合物であって、R、RおよびRが、ベンジルオキシである、化合物。
(項目19)
項目13に記載の化合物であって、R、RおよびRが、ベンジルオキシである、化合物。
(項目20)
項目14に記載の化合物であって、R、RおよびRが、ベンジルオキシである、化合物。
(項目21)
項目12に記載の化合物であって、以下の式(VIII):
【化8】


の構造を有する、化合物。
(項目22)
項目21に記載の化合物であって、R、RおよびRが、メトキシである、化合物。
(項目23)
項目21に記載の化合物であって、R、RおよびRが、ベンジルオキシである、化合物。
(項目24)
項目12に記載の化合物であって、以下の式(IX):
【化9】


の構造を有する、化合物。
(項目25)
項目24に記載の化合物であって、R、RおよびRが、メトキシである、化合物。
(項目26)
項目24に記載の化合物であって、R、RおよびRが、ベンジルオキシである、化合物。
(項目27)
以下の式(II):
【化10】


の構造を有するフラバノンを合成するための方法であって、
、RおよびRが、ヒドロキシル、ハロ、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、さらにRおよびRまたはRおよびRのいずれかが結合されてアルキレン、置換アルキレン、およびヘテロアルキレンから選択される2原子結合または3原子結合を形成し得、
、R、RおよびRは、水素、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが、水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、もしくはフェニル環を形成し、そして
10およびR11が、水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシおよびハロからなる群から独立して選択され、
該方法が、以下のケトン(X):
【化11】


を窒素含有有機塩基の存在下で以下の芳香族アルデヒド(XI):
【化12】


と縮合する工程を包含する、方法。
(項目28)
項目27に記載の方法であって、前記縮合が、還流条件下で実行される、方法。
(項目29)
以下の式(III):
【化13】


の構造を有するフラバノールを合成するための方法であって、
、RおよびRが、ヒドロキシル、ハロ、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、さらにRおよびRまたはRおよびRのいずれかが結合されてアルキレン、置換アルキレン、およびヘテロアルキレンから選択される2原子結合または3原子結合を形成し得、
、R、RおよびRは、水素、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、もしくはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが、水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、もしくはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、もしくはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが、水素であり、そして
10およびR11が、水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシおよびハロからなる群から独立して選択され、
該方法が、以下の構造(II):
【化14】


を有するフラバノンを4−オキソ部分をヒドロキシル基に効果的に変える反応条件下で還元剤と接触させる工程を包含する、方法。
(項目30)
項目29に記載の方法であって、前記還元剤が、水素化ホウ素ナトリウムである、方法。
(項目31)
以下の式(IV):
【化15】


の構造を有するカルコンを合成するための方法であって、
、RおよびRが、ヒドロキシル、ハロ、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、さらにRおよびRまたはRおよびRのいずれかが結合されてアルキレン、置換アルキレン、およびヘテロアルキレンから選択される2原子結合または3原子結合を形成し得、
、R、RおよびRは、水素、C−Cアルコキシ、C−C12アリールオキシ、およびC−C12アラルキルオキシからなる群から独立して選択され、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、もしくはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが、水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、もしくはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが水素であり、またはRおよびRが、一緒に結合されてシクロヘキシル、シクロペンチル、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRが、水素であり、そして
10およびR11が、水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシおよびハロからなる群から独立して選択され、
該方法が、以下のケトン(X):
【化16】


を水性無機塩基の存在下で以下の芳香族アルデヒド(XI):
【化17】


と反応させる工程を包含する、方法。
(項目32)
項目31に記載の方法であって、前記無機塩基が、アルカリ金属水酸化物である、方法。
(項目33)
項目32に記載の方法であって、前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化カリウムである、方法。
(項目34)
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせている項目1に記載の治療有効量の化合物を含む薬学的組成物。
(項目35)
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせている項目3に記載の治療有効量の化合物を含む薬学的組成物。
(項目36)
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせている項目5に記載の治療有効量の化合物を含む薬学的組成物。
(項目37)
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせている項目7に記載の治療有効量の化合物を含む薬学的組成物。
(項目38)
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせている項目10に記載の治療有効量の化合物を含む薬学的組成物。
(項目39)
項目34〜38のいずれか1項に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能なキャリアが、経口投与のために適切であり、そして該組成物が、経口投薬形態を含む、組成物。
(項目40)
項目39に記載の組成物であって、前記経口投薬形態が、錠剤である、組成物。
(項目41)
項目39に記載の組成物であって、前記経口投薬形態が、カプセルである、組成物。
(項目42)
項目34〜38のいずれか1項に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能なキャリアが、非経口投与のために適切であり、そして該組成物が、非経口的に投薬可能な処方物を含む、組成物。
(項目43)
項目1に記載の治療有効量の化合物を個体に投与する工程を包含する、癌を患う患者を処置するための方法。
(項目44)
項目3に記載の治療有効量の化合物を個体に投与する工程を包含する、癌を患う患者を処置するための方法。
(項目45)
項目5に記載の治療有効量の化合物を個体に投与する工程を包含する、癌を患う患者を処置するための方法。
(項目46)
項目7に記載の治療有効量の化合物を個体に投与する工程を包含する、癌を患う患者を処置するための方法。
(項目47)
項目10に記載の治療有効量の化合物を個体に投与する工程を包含する、癌を患う患者を処置するための方法。
(項目48)
項目43〜47のいずれか1項に記載の方法であって、前記癌が、前立腺癌、子宮癌または乳癌である、方法。
(項目49)
項目48に記載の方法であって、前記癌が、乳癌である、方法。
(項目50)
項目1に記載の有効な抗脈管形成量を個体に投与する工程を包含する、新脈管形成に関連する症状、疾患または障害を患う個体を処置するための方法。
(項目51)
項目3に記載の有効な抗脈管形成量を個体に投与する工程を包含する、新脈管形成に関連する症状、疾患または障害に患う個体を処置するための方法。
(項目52)
項目5に記載の有効な抗脈管形成量を個体に投与する工程を包含する、新脈管形成に関連する症状、疾患または障害に患う個体を処置するための方法。
(項目53)
項目7に記載の有効な抗脈管形成量を個体に投与する工程を包含する、新脈管形成に関連する症状、疾患または障害に患う個体を処置するための方法。
(項目54)
項目10に記載の有効な抗脈管形成量を個体に投与する工程を包含する、新脈管形成に関連する症状、疾患または障害に患う個体を処置するための方法。
(項目55)
項目11に記載の有効な抗脈管形成量を個体に投与する工程を包含する、新脈管形成に関連する症状、疾患または障害に患う個体を処置するための方法。
(項目56)
発達中の癌を受けやすい患者に項目1に記載の予防有効量の化合物を投与する工程を包含する、化学予防的方法。
(項目57)
発達中の癌を受けやすい患者に項目3に記載の予防有効量の化合物を投与する工程を包含する、化学予防的方法。
(項目58)
発達中の癌を受けやすい患者に項目5に記載の予防有効量の化合物を投与する工程を包含する、化学予防的方法。
(項目59)
発達中の癌を受けやすい患者に項目7に記載の予防有効量の化合物を投与する工程を包含する、化学予防的方法。
(項目60)
発達中の癌を受けやすい患者に項目10に記載の予防有効量の化合物を投与する工程を包含する、化学予防的方法。
【0007】
本発明は、当該分野における上記の必要性に関し、新脈管形成の強力なインヒビターである新規なフラバノイドを提供し、従って、進行性癌を有する患者を処置するために有用である。この新規な化合物は、抗脈管形成剤として公知であるかまたは現在検討中である化合物と比較して、多数の利点を提供する。例えば、この化合物は、非常に広い治療範囲を有し、これは、今度は、かなり高い用量でされ毒性が観察されないことを意味する。さらに、この化合物は、多くの薬物に関連する身体を弱らせる多数の副作用を生じない。それから、安全性の検知から、その新規な化合物は、最適である。さらに、この化合物は、かなり単純な分子構造を有し、簡単な合成技術を使用して容易に合成され得る。この新規な化合物を用いて処方された薬学的組成物は、安定であり、容易に送達され、すぐれたバイオアベイラビリティーを提供する。このことは、現在のペプチジル抗脈管形成剤および糖質抗脈管形成剤とは際立って対照的である。これらの現在のペプチジル抗脈管形成剤および糖質抗脈管形成剤は、一般的には、かなりの量で合成して得ることが困難であり、頻繁に低バイオアベイラビリティーに関連し、そして薬物送達および安定性の問題を示す。
【0008】
本発明は、化学療法剤、化学予防剤、および抗脈管形成剤として有用な新規な化合物を提供する。この新規な治療剤は、フラバノイド(下記のようなフラバノン、フラバノール、およびカルコンを包含する)である。
【0009】
1つの実施形態において、構造(I):
【0010】
【化18】

【0011】
を有する治療化合物が、提供され、この構造において、
α、β、γは、任意の結合であり、αが存在しない場合、βが存在し、そしてβが存在しない場合、αが存在し;
、RおよびRは、ヒドロキシ、ハロ、スルフヒドリル、アルコキシ、アリールオキシ、およびアラルキルオキシからなる群から独立して選択され、RおよびR、またはRおよびRのいずれかが、結合されて環式基を形成し得;
αが存在する場合、Rは、O、S、NR、およびCRから選択され、そしてαが存在しない場合、Rは、OH、SH、NHRおよびCRHから選択され、R、RおよびRは、水素またはアルキルであり;
γが存在する場合、Rは、O、SまたはNRであり;
γが存在しない場合、Rは、ヒドロキシル、アシルオキシ、スルフヒドリルおよびN(R)からなる群から選択され、Rは、同じでも異なっていても良く、かつRは、上記で定義された通りであり、「アシルオキシ」とは、エステル置換基−O−(CO)−Rを指し、ここでRは、置換または非置換の脂肪族、芳香族、または脂環式であり;
、R、RおよびRは、水素であり得、その結果、示される環は、非置換であるか、あるいはR、R、RおよびRのうちの1つ以上は、非水素環置換基(例えば、置換ヒドロカルビルおよび/またはヘテロ原子含有ヒドロカルビル、または官能基)であり得るが、一般的に、R、R、RおよびRは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、およびアラルキルオキシからなる群から独立して選択され、但し、RおよびR、またはRおよびR、またはRおよびRが、一緒に結合されて五員環、六員環ならびに縮合五員環および/または縮合六員環から選択される環式構造を形成し得、この環式構造は、芳香族、脂環式、複素環式芳香族、または複素環式脂環式であり、かつ0個〜4個の非水素置換基および0個〜3個のヘテロ原子を有し;そして
10およびR11は、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシおよびハロからなる群から独立して選択される。
【0012】
以下の化合物(II)、(III)および(IV)は、それぞれ、式(I)により包含されるフラバノン化合物、フラバノール化合物、およびカルコン化合物を示す:
【0013】
【化19】

【0014】
さらなる実施形態において、本発明の化合物を合成するための方法が、提供される。この方法は、簡単であり、極端な反応条件および毒性溶媒の使用を回避し、そして所望される生成物を高収量で提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、本明細書中に提供される新規な化合物を薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、薬学的組成物を包含する。好ましくは、必ずというわけではないが、そのような組成合物は、経口投与形態であり、従って、経口薬物投与のために適したキャリアを含む。
【0016】
さらなる実施形態において、本発明は、癌に罹患している個体を処置するための方法に関し、この方法は、この個体に、治療上有効な量の、本明細書中に提供される新規な化合物を投与する工程を包含する。化学療法剤としての一般的な有用性に加えて、これらの化合物はまた、化学予防および抗脈管形成処置においても有用である。従って、本発明はさらに、癌を予防するための方法、および新脈管形成に関連する状態、疾患もしくは障害(例えば、癌)を処置するための方法に関し、これらの方法は、治療上有効な量の本発明の化合物を患者に投与することによる。一般に、化学予防において、その患者は、癌を発症する危険が高いものとして同定されている。そのような患者としては、例えば、癌または特定の型の癌の家族病歴を有する患者、ならびに遺伝子分析を受けることによって癌または特定の型の癌を発症する遺伝的素因があると決定されている患者が、挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例18に記載されるような、MTTアッセイを使用した、本発明の化合物(2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[h]クロメン−4−オール(「SR 13179」))によるヒト臍静脈内皮細胞の増殖阻害を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例22に記載されるような、雌ヌードマウスにおけるMCF−7乳癌増殖に対する、本発明の化合物(SR 13179)の効果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例23に記載されるような、雌ヌードマウスにおけるSKOV−3シスプラチン耐性およびアドリアマイシン耐性のヒト卵巣腫瘍細胞増殖に対する、SR 13179の効果を示すグラフである。図3は、上記化合物の腹腔内注射を用いて得られた結果を提供する。
【図4】図4は、実施例23に記載されるような、雌ヌードマウスにおけるSKOV−3シスプラチン耐性およびアドリアマイシン耐性のヒト卵巣腫瘍細胞増殖に対する、SR 13179の効果を示すグラフである。図4は、上記化合物の卵巣投与を用いて得られた結果を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(I.定義および命名法)
他のように示されない限り、本発明は、特定の合成方法、アナログ、置換基、薬学的処方物、処方成分、投与様式などに限定されない。なぜなら、これらは変化し得るからである。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのだけのものであり、限定することを意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明示的に他のように示さない限り、複数の言及物を包含する。従って、例えば、「置換基(a substituent)」に対する言及は、単一の置換基、ならびに同じであっても異なっていてもよい2つ以上の置換基を包含し、「化合物(a compound)」に対する言及は、異なる化合物の組合せもしくは混合物、ならびに単一の化合物を包含し、「薬学的に受容可能なキャリア(a pharmaceutically acceptable carrier)」に対する言及は、2つ以上のそのようなキャリア、ならびに単一のキャリアを包含する、などである。
【0020】
本明細書中および特許請求の範囲において、多数の用語に対する言及がなされる。これらの用語は、以下の意味を有すると定義される。
【0021】
本明細書中で使用される場合、句「式を有する」または「構造を有する」とは、限定することを意図されず、用語「含む、包含する(comprising)」が一般的に使用されるのと同じ様式で使用される。
【0022】
用語「アルキル」とは、本明細書中で使用される場合、代表的には1個〜約24個の炭素原子を含むが必ずしもそうではない、分枝または非分枝の飽和炭化水素基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなど、ならびにシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなど))を指す。一般に、これもまた必ずしもそうではないが、本明細書中のアルキル基は、1個〜約18個の炭素原子、好ましくは1個〜約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキル」とは、1個〜6個の炭素原子のアルキル基を意図する。「C〜Cアルキル」または「低級アルキル」として同定される好ましい置換基は、1個〜3個の炭素原子を含み、特に好ましいこのような置換基は、1個または2個の炭素原子(すなわち、メチルおよびエチル)を含む。「置換アルキル」とは、1つ以上の置換基で置換されたアルキルを指し、用語「ヘテロ原子含有アルキル」および「ヘテロアルキル」とは、少なくとも1つの炭素原子が、下記にさらに詳細に記載されるようなヘテロ原子で置換されている、アルキルを指す。他のように示されない場合、用語「アルキル」および「低級アルキル」は、直鎖状、分枝状、環状、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有の、アルキルまたは低級アルキルを、それぞれ包含する。
【0023】
用語「アルケニル」とは、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの二重結合を含む2個〜約24個の炭素原子の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基(例えば、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなど)を指す。一般に、これもまた必ずしもそうではないが、本明細書中のアルケニル基は、2個〜約18個の炭素原子、好ましくは、2個〜12個の炭素原子を含む。用語「低級アルケニル」とは、2個〜6個の炭素原子のアルケニル基を意図し、特定の用語「シクロアルケニル」とは、5個〜8個の炭素原子を好ましくは有する、環状アルケニル基を意図する。用語「置換アルケニル」とは、1つ以上の置換基で置換されているアルケニル基を指す。用語「ヘテロ原子含有アルケニル」および「ヘテロアルケニル」とは、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されている、アルケニルを指す。他のように示されない限り、用語「アルケニル」および「低級アルケニル」は、直鎖状、分枝状、環状、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有の、アルケニルまたは低級アルケニルを、それぞれ包含する。
【0024】
用語「アルキニル」とは、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの三重結合を含む、2〜24個の炭素原子の直鎖状または分枝状の炭化水素基(例えば、エチニル、n−プロピニルなど)をいう。一般に、しかし必ずしも逆らわないのではなく、本明細書中のアルキニル基は、2〜約18個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子を含む。用語「低級」アルキニルは、2〜6個の炭素原子のアルキニル基を意図する。用語「置換アルキニル」は、1以上の置換基で置換されたアルキニルをいい、用語「ヘテロ原子含有アルキニル」および「ヘテロアルキニル」とは、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキニルをいう。別段示されなければ、用語「アルキニル」および「低級アルキニル」は、それぞれ、直鎖状、分枝状、非置換、置換、および/またはヘテロ原子を含む、アルキニルおよび低級アルキニルを含む。
【0025】
用語「アルキレン」とは、二官能性の直鎖状、分枝状、または環式のアルキル基をいい、ここで「アルキル」は、上記に規定されるとおりである。従って、アルキレン結合は、−CH−CH−および−CH−CH−CH−、ならびにこれらの置換されたバージョンを含む。ここで1以上の水素原子が、非水素置換基で置換される。「ヘテロアルキレン」結合とは、1以上のメチレン単位がヘテロ原子で置換されているアルキレン部分をいう。
【0026】
用語「アルコキシ」とは、本明細書中で使用される場合、単一の末端エーテル結合を介して結合されたアルキル基を意図する;すなわち、「アルコキシ」基とは、−O−アルキルとして表され得る。ここでアルキルは、上記で規定されるとおりである。「低級アルコキシ」基とは、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基を意図し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブチルオキシなどを含む。本明細書中で「C〜Cアルコキシ」または「低級アルコキシ」として同定される好ましい置換基は、1〜3個の炭素原子を含み、特に好ましくは、このような置換基は、1または2個の炭素原子(すなわち、メトキシおよびエトキシ)を含む。
【0027】
同様に、「アルケニルオキシ」および「低級アルケニルオキシ」とは、それぞれ、単一の末端エーテル結合を介して結合されたアルケニルおよび低級アルケニル基をいい、「アルキニルオキシ」および「低級アルキニルオキシ」とは、それぞれ、単一の末端エーテル結合を介して結合したアルキニル基および低級アルキニル基をいう。
【0028】
用語「アリール」とは、本明細書中で使用される場合および別段示されなければ、単一の芳香族環または一緒に縮合されているか、直接結合されているか、または間接的に結合されている(その結果、異なる芳香族環がメチレン部分またはエチレン部分のような共通部分に結合される)複数の芳香族環を含む芳香族置換基をいう。好ましいアリール基は、5〜20個の炭素原子を含み、特に好ましいアリール基は、5〜12個の炭素原子を含む。例示的なアリール基は、1つの芳香族環または2つの縮合したもしくは結合した芳香族環(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなど)を含む。「置換されたアリール」とは、1以上の置換基で置換されたアリール部分をいい、用語「ヘテロ原子含有アリール」および「ヘテロアリール」とは、以下でさらに詳細に記載されるように、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されているアリール置換基をいう。別段記載されなければ、用語「アリール」は、置換されていない、置換された、および/またはヘテロ原子含有芳香族置換基を含む。
【0029】
用語「アリールオキシ」とは、本明細書中で使用される場合、単一の末端エーテル結合を介して結合されるアリール基をいい、ここで「アリール」は、上記で規定されるとおりである。「アリールオキシ」基は、−O−アリールとして表され得、ここでアリールは、上記で規定されるとおりである。好ましいアリールオキシ基は、5〜20個の炭素原子を含み、特に好ましいアリールオキシ基は、5〜12個の炭素原子を含む。アリールオキシ基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェノキシ、o−ハロ−フェノキシ、m−ハロ−フェノキシ、p−ハロ−フェノキシ、o−メトキシ−フェノキシ、m−メトキシ−フェノキシ、p−メトキシ−フェノキシ、2,4−ジメトキシ−フェノキシ、3,4,5−トリメトキシ−フェノキシなど。
【0030】
用語「アラルキル」とは、アリール置換基を有するアルキル基をいい、ここで「アリール」および「アルキル」は、上記で規定されるとおりである。好ましいアラルキル基は、5〜20個の炭素原子を含み、特に好ましいアラルキル基は、5〜12個の炭素原子を含む。アラルキル基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチルなど。
【0031】
用語「アラルキルオキシ」とは、単一の末端エーテル結合を介して結合されたアラルキル基をいう。上記のように、「アラルキルオキシ」基は、−O−Alk(Ar)として表され得、ここで「Alk」は、アルキル基であり、「Ar」はアリール置換基である。好ましいアラルキルオキシ基は、5〜20個の炭素原子を含み、特に好ましいアラルキルオキシ基は、5〜12個の炭素原子を含む。アラルキルオキシ置換基としては、例えば、以下が挙げられる:ベンジルオキシ、2−フェノキシ−エチル、3−フェノキシ−プロピル、2−フェノキシ−プロピル、2−メチル−3−フェノキシプロピル、2−エチル−3−フェノキシプロピル、4−フェノキシ−ブチル、3−フェノキシ−ブチル、2−メチル−4−フェノキシブチル、4−フェノキシシクロヘキシル、4−ベンジルオキシシクロヘキシル、4−フェノキシ−シクロヘキシルメチル、2−(4−フェノキシ−シクロヘキシル)−エチルなど。
【0032】
用語「環式」とは、脂環式置換基または芳香族置換基をいい、置換されていても、そして/またはヘテロ原子含有であっても、そうでなくてもよく、単環式、二環式または多環式であり得る。用語「脂環式」は、芳香族環式部分とは対照的に、脂肪族環式部分をいうために従来の意味で使用され、単環式、二環式または多環式であり得る。
【0033】
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨード置換基をいうために従来の意味で使用される。
【0034】
「ヘテロ原子含有アルキル基」(「ヘテロアルキル」基ともいわれる)または「ヘテロ原子含有アリール基」(「ヘテロアリール」基ともいわれる)におけるような用語「ヘテロ原子含有」とは、1以上の炭素原子が炭素以外の原子(例えば、窒素、酸素、硫黄、リンまたはケイ素、代表的には、窒素、酸素または硫黄)で置換されている分子、結合または置換基をいう。同様に、用語「ヘテロアルキル」とは、ヘテロ原子含有アルキル置換基をいう。用語「複素環式」とは、ヘテロ原子含有環式置換基をいい、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロ芳香族」は、それぞれ、ヘテロ原子含有である「アリール」および「芳香族」置換基などをいう。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシアリール、アルキルスルファニル−置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキルなどが挙げられる。ヘテロアリール置換基の例としては、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリルなどが挙げられ、ヘテロ原子含有脂環式基の例は、ピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノなどである。
【0035】
「置換されたアルキル」、「置換されたアリール」などにおけるような「置換された」は、前述の定義のいくつかにおいて言及されているように、アルキル、アリール、または他の部分において、炭素(または他の)に結合している少なくとも1つの水素原子が、1以上の非水素置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例としては、以下のような官能基が挙げられるが、これらに限定されない:ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アシル(アルキルカルボニル(−CO−アルキル)およびアリールカルボニル(−CO−アリール)を含む)、アシルオキシ(−O−(CO)−R、R=アルキル、アリール、アルカリールなど)、アルコキシカルボニル(−(CO)−O−アルキル)、アリールオキシカルボニル(−(CO)−O−アリール)、ハロカルボニル(−CO)−X(ここでXはハロである)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシラト(−COO)、カルバモイル(−(CO)−NH)、アルキルカルバモイル(−(CO)−NH−アルキル)、アリールカルバモイル(−(CO)−NH−アリール)、チオカルバモイル(−(CS)−NH)、カルバミド(−NH−(CO)−NH)、シアノ(−C≡N)、イソシアノ(−N≡C)、シアナト(−O−C≡N)、イソシアナト(−O−N≡C)、イソチオシアナト(−S−C≡N)、アジド(−N=N=N)、ホルミル(−(CO)−H)、チオホルミル(−(CS)−H)、1級アミノ(−NH)、モノ−(アルキル)−置換アミノ、ジ−(アルキル)−置換アミノ、モノ−(アリール)−置換アミノ、ジ−(アリール)−置換アミノ、アルキルアミド(−NH−(CO)−アルキル)、アリールアミド(−NH−(CO)−アリール)、イミノ(−CR=NH(ここでR=水素、アルキル、アリール、アルカリルなど))、アルキルイミノ(−CR=N(アルキル)(ここでR=水素、アルキル、アリール、アルカリルなど)、アリールイミノ(−CR=N(アリール)(ここでR=水素、アルキル、アリール、アルカリルなど))、ニトロ(−NO)、ニトロソ(−NO)、スルホ(−SO−OH)、スルホナト(−SO−O)、アルキルスルファニル(−S−アルキル;「アルキルチオ」ともいわれる)、アリールスルフィニル(−S−アリール;「アリールチオ」ともいわれる)、アルキルスルフィニル(−(SO)−O−アルキル)、アリールスルファニル(−(SO)−O−アリール)、ボリル(−BH)、ボロノ(−B(OH))、ホスホノ(−P(O)(OH))、ホスホナト(−P(O)(O)、ホスフィナト(−P(O)(O))、ホスホ(PO)、およびホスフィノ(−PH);ならびにヒドロカルビル部分、C〜C24アルキル(好ましくはC〜C18アルキル、より好ましくは、C〜C12アルキル、最も好ましくはC〜Cアルキル)、C〜C24アルケニル(好ましくはC〜C18アルケニル、より好ましくはC〜C12アルケニル、最も好ましくはC〜Cアルケニル)、C−C24アルキニル(好ましくはC〜C18アルキニル、より好ましくはC〜C12アルキニル、最も好ましくはC〜Cアルキニル)、C〜C20アリール(好ましくは、C〜C12アリール)、およびC〜C20アラルキル(好ましくは、C〜C12アラルキル)。
【0036】
さらに、前述の官能基は、特定の基が許容される場合、1以上のさらなる官能基または1以上のヒドロカルビル部分(例えば、上記で特に挙げたもの)でさらに置換され得る。同様に、上記のヒドロカルビル部分は、1以上の官能基またはさらにヒドロカルビル部分(例えば、上記で特に挙げたもの)でさらに置換され得る。
【0037】
用語「置換された」が、あり得る置換された基の列挙の前に出現する場合、この用語は、その基のあらゆるメンバーに適用することを意図する。例えば、語句「置換されたアルキルおよびアリール」は、「置換されたアルキルおよび置換されたアリール」と解釈されるべきである。
【0038】
「任意の」または「必要に応じて」とは、その後に記載される状況があってもなくてもよいことを意味し、その結果、この記載は、その状況が生じる場合およびそれが生じない場合を含む。例えば、語句「必要に応じて置換される」とは、非水素置換基が所定の原子上にあってもなくてもよいことを意味し、従って、この記載は、非水素置換基が存在する構造および非水素置換基が存在しない構造を含む。同様に、本明細書中の化学式中で破線
【0039】
【化20】

【0040】
によって示されるような、語句「必要に応じて存在する」結合とは、結合が存在してもしなくてもよいことを意味する。
【0041】
本明細書中の分子構造において、基の特定の立体配置を示すために太線および破線を使うことは、IUPACの規約に従っている。破線で示される結合は、問題の基が、描かれた分子の一般面より下にあること(「β」立体配置)を示し、太線で示される結合は、問題の位置にある基が、描かれた分子の共通面より上にあること(「α」立体配置)を示す。破線または太線で示されない単結合は、いずれかの立体配置にあり得;このような結合はまた、慣習的な記号
【0042】
【化21】

【0043】
によって示され得る。
【0044】
本発明の化合物をいう場合、出願人らは、用語「化合物」が具体的に示された分子実体だけでなく、その薬学的に受容可能な、薬理学的に活性なアナログもまた含むことを意図する。これらのアナログとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:塩、エステル、アミド、プロドラッグ、結合体、活性代謝産物、および他のこのような誘導体、アナログおよび関連化合物。
【0045】
用語「処置する」および「処置」とは、本明細書中で使用される場合、症状の重篤度および/または頻度の低減、症状および/または根底にある原因の排除、症状および/または根底にある原因の予防、ならびに損傷の改善または矯正をいう。従って、本発明の化合物での患者の「処置」は、障害または疾患の軽減を阻害するかまたは引き起こすことによる、感受性の個体における特定の障害または有害な生理学的事象の予防、および臨床的に症状を示す個体の処置を含む。例えば、本発明の抗癌剤の投与による患者の処置は、化学的予防ならびに化学療法および抗新脈管形成を含む。
【0046】
本発明の化合物の、用語「有効量」または「治療的有効量」は、非毒性であるが、十分量の薬物または薬剤が所望の効果を提供することを意味する。
【0047】
「薬学的に受容可能な」は、生物学的に所望されるまたは他の場合で所望される物質を意味する。すなわち、その物質は、所望されない生物学的効果を生じるでもなく、その物質が含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用するでもなく、患者に投与される薬学的組成物中に組み込まれ得る。用語「薬学的に受容可能な」は、薬学的キャリアまたは賦形剤をいうために使用される場合、そのキャリアまたは賦形剤が、毒物学および製造試験の必要な基準を満たしているか、または米国食品医薬品局により作成されたInactive Ingredient Guideに含まれることが示される。「薬理学的に活性な」誘導体またはアナログにおけるような「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)とは、親化合物と同じ型の薬理学的活性を有し、程度がほぼ同じである誘導体またはアナログをいう。
【0048】
(II.新規フラバノイド)
本発明の化合物は、式(I)の構造を有するフラバノイドおよびそのアナログである:
【0049】
【化22】

【0050】
ここでα、βおよびγは、任意の結合であり、ただし、αが存在しない場合、βが存在し、そしてβが存在しない場合、αが存在する。そして種々の置換基が以下のように規定される。
【0051】
、RおよびRは、以下からなる群より独立して選択される:ヒドロキシル;スルフヒドリル;ハロ;アルコキシ、好ましくはC〜Cアルコキシ(例えば、メトキシおよびエトキシであり、メトキシが好ましい;アリールオキシ、好ましくはC〜C12アリールオキシ(フェノキシが好ましい);およびアラルキルオキシ、好ましくはC〜C12アラルキルオキシ(ベンジルオキシが好ましい)。アルコキシ、アリールオキシおよびアラルキルオキシ置換基は、必要に応じて、ヘテロ原子含有であるか、そして/または1以上の、代表的には、1つまたは2つの置換基で置換され得る。当然のことながら、任意の置換基が化合物の治療効力に有害であるべきではなく、さもなければ、化合物が含まれる薬学的組成物の他の成分と有害に反応も、さもなければ相互作用もしないことが理解される。置換基としては、この節のパートIで記載されるような官能基、ヒドロカルビル基、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
さらに、RおよびR、またはRおよびRのいずれかが、結合されて環式構造を形成し得る。代表的には(しかし必ずというのではない)、五員環、六員環、ならびに縮合五員環および/または六員環から選択される。ここでこの環式構造は、芳香族であるか、脂環式であるか、ヘテロ芳香族であるか、またはヘテロ脂環式であり、0〜4個の非水素置換基(例えば、上記で挙げられたものおよび0〜3個のヘテロ原子)を有する。例えば、RおよびR、またはRおよびRのいずれか、結合されて、低級アルキレン結合を形成し得る(例えば、−(CH−または−(CH−、上記の置換基で置換された低級アルキレン結合、低級ヘテロアルキレン結合(例えば、−O−CH−O−、−CH−O−CH、または−CH−NH−CH(この場合、残りのR基(すなわちRまたはR)は、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、アリールオキシまたはアラルキルオキシである)。
【0053】
αが存在する場合、Rは、O、S、NRおよびCRから選択され、αが存在しない場合、Rは、OH、SH、NHR、およびCRHから選択され、ここでR、RおよびRは水素またはアルキルである。好ましくは、R、RおよびRは、水素であり、その結果、αが存在する場合、RはO、S、NHまたはCHであり、αが存在しない場合、RがOH、SH、NHおよびCHから選択される。最も好ましい実施形態において、αが存在する場合はRがOであり、αが存在しない場合はRがOHである。
【0054】
γが存在する場合、RはO、SまたはNRであり、ここでRは、上記に規定される通りである。好ましくは、Rは水素であり、より好ましくはRはOである。γが存在しない場合、Rは、OH、SH、N(Rからなる群より選択され、ここでRは、同じであっても異なってもよく、水素、アルキル、アリール、およびアラルキルならびに構造−O−(CO)−R(すなわち、アシルオキシ基)(ここでRはアルキル、アリール、またはアラルキルで置換されているか、または置換されていない)のエステルから選択される。好ましいこのようなエステルにおいて、Rはアルキル、特にC〜Cアルキル、または置換フェニルである。一般に、このようなアシルオキシ置換基は、2〜32個の炭素原子、好ましくは6〜32個の炭素原子を有する。好ましいアシルオキシ置換基は、構造:
【0055】
【化23】

【0056】
を有し、
ここでR12、R13およびR14は、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびアラルキルオキシからなる群より独立して選択される。この基のうち、最も好ましい置換基は、R12、R13およびR14が、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ(好ましくはメトキシ)、およびC〜C12アラルキルオキシ(好ましくはベンジルオキシ)からなる群より独立して選択される場合である。
【0057】
、R、RおよびRは、独立して、水素(フェニル環が非置換であるように)、および非水素環置換基からなる群より選択され、後者としては、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および官能基が挙げられる。一般に、R、R、RおよびRは、独立して、水素;アルキル(好ましくは、C〜Cアルキルであり、例えば、メチルおよびエチル);アルケニル(好ましくは、C〜Cアルケニル(例えば、ビニルおよびアリル);アリール(ヘテロアリールおよび置換アリールが挙げられ、好ましくは、C〜C12アリールであり、例えば、フェニルおよび置換フェニル);アラルキル(好ましくは、C〜C12アラルキルであり、例えば、ベンジル);アルコキシ(好ましくは、C〜Cアルコキシであり、例えば、メトキシおよびエトキシであり、メトキシが好ましい);アリールオキシ(好ましくは、C〜C12アリールオキシであり、フェノキシが好ましい);ならびにアラルキルオキシ(好ましくは、C〜C12アラルキルオキシであり、ベンジルオキシが好ましい)からなる群より選択される。さらに、(a)RおよびR、(b)RおよびR、または(c)RおよびRは、一緒に結合されて、5員環、6員環、ならびに縮合5員環および/または縮合6員環からなる群より選択される環式構造を形成し得、ここで、この環式構造は、芳香族、脂環式、ヘテロ芳香族、またはヘテロ脂環式であり、そして0〜4個の非水素置換基および0〜3個のヘテロ原子を有する。好ましいこのような化合物において、RおよびR、またはRおよびRが結合して、最初のものに「縮合」したフェニルまたはヘテロ芳香族環(例えば、ピリジニル、ピリミジニルなど)を形成する。この型の他の好ましい化合物において、RおよびRが結合されて、この構造中に示されるフェニル環に縮合した脂環式環(例えば、シクロヘキシル)または複素脂環式環を形成する。RおよびRの結合、RおよびRの結合、またはRおよびRの結合によって形成される環は、類似の様式でさらに置換されて、縮合した三環式構造(例えば、アントラセン系、フェナントレン系、またはベンゾ[h]キノリン系)を形成し得る。特に好ましいこのような化合物は、α−ナフサフラバノイド(ここで、RおよびRは、水素であり、そしてRおよびRは、結合して、フェニル環を形成する)、および1,2,3,4−テトラヒドロ−β−ナフサフラバノイド(ここで、RおよびRは水素であり、そしてRおよびRは、結合して、シクロヘキシル環を形成する)である。
【0058】
10およびR11は、独立して、水素、ヒドロキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、およびハロからなる群より選択される。好ましくは、R10およびR11は、水素である。
【0059】
構造式(I)によって包含される化合物の1つの型は、フラバノンであり、ここで、式(I)のαおよびγが存在し、βが存在せず、RがOであり、そしてRがOである。このような化合物は、式(II)の構造を有する:
【0060】
【化24】

【0061】
ここで、R〜RおよびR〜R11は、式(I)について上で定義される通りである。
【0062】
構造式(I)によって包含される化合物の別の型は、フラバノールであり、ここで、式(I)のαが存在し、βおよびγが存在せず、RがOHであり、そしてRがOHである。このようなフラバノールは、式(III)の構造を有する:
【0063】
【化25】

【0064】
上記と同様に、R〜RおよびR〜R11は、式(I)について上で定義される通りである。これらのフラバノールは、式(II)のフラバノンから、単純な還元反応を使用して調製され得る。式(III)の化合物に関して、2つの不斉中心に起因して、4つの異なるエナンチオマーが可能であり、そしてこの化合物は、個々のエナンチオマーの形態で、またはエナンチオマーのラセミ混合物として存在し得ることが理解される。以下の例示において、不斉中心は、*で表され、そして代替の立体配置を有する結合は、
【0065】
【化26】

【0066】
によって示される:
【0067】
【化27】

【0068】
従って、4つの可能なエナンチオマーは、以下の通りである:
【0069】
【化28】

【0070】
一般に、必須ではないが、本発明のフラバノール化合物は、2つのトランスエナンチオマーのラセミ混合物である。このような混合物は、本明細書中で、以下のような分子構造で示される:
【0071】
【化29】

【0072】
2つのシスエナンチオマーのラセミ混合物の形態のフラバノール化合物は、以下の構造によって表される:
【0073】
【化30】

【0074】
構造(I)によって包含される化合物の別の型は、カルコンであり、ここで、式(I)のβおよびγが存在し、αが存在せず、RがOHであり、そしてRがOであり、その結果、この化合物は、式(IV)の構造を有する:
【0075】
【化31】

【0076】
ここで、R〜R、およびR〜R11は、上で定義されたとおりである。
【0077】
好ましい式(I)の化合物は、以下のものである:
、R、Rは、同一であり、そしてC〜Cアルコキシおよびベンジルオキシからなる群より選択される;
αが存在する場合、RはOであり、そしてαが存在しない場合、RはOHである;
γが存在しない場合、Rは、以下の構造を有するヒドロキシル置換基およびアシルオキシ置換基からなる群より選択され:
【0078】
【化32】

【0079】
ここで、R12、R13、およびR14は、独立して、水素、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、およびベンジルオキシからなる群より選択される;
(a)RおよびRは、一緒に結合されて、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRは、水素またはC〜Cアルコキシである、(b)RおよびRは、一緒に結合されて、シクロヘキシル環、シクロシクロペンチル環、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRは、水素またはC〜Cアルコキシである、(c)RおよびRは、結合されて、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、またはフェニル環を形成し、そしてRおよびRは、水素である、あるいは(d)RおよびRは、C〜Cアルコキシまたはベンジルオキシであり、そしてRおよびRは、水素である;そして
10およびR11は、水素である。
【0080】
特に好ましい式(I)の化合物は、以下である:
、RおよびRは、同一であり、そしてメトキシおよびベンジルオキシからなる群より選択される;
αが存在する場合、RはOであり、そしてαが存在しない場合、RはOHである;
γが存在しない場合、RはOHである;
γが存在する場合、RはOである;
およびRは、水素である;
およびRは、一緒に結合されて、フェニル環を形成する;
10およびR11は、水素である;そして
12、R13およびR14は、独立して、ヒドロキシル、メトキシおよびベンジルオキシからなる群より選択される。
【0081】
従って、本発明の特に好ましいフラバノールは、構造(V)を有する:
【0082】
【化33】

【0083】
必要に応じて、トランス構造(VI)を有する:
【0084】
【化34】

【0085】
ここで、最も好ましい実施形態において、R、R、およびRは、メトキシまたはベンジルオキシである。
【0086】
本発明の特に好ましいフラバノンは、構造(VIII)を有し:
【0087】
【化35】

【0088】
、そして特に好ましいカルコンは、式(IX)の構造を有する:
【0089】
【化36】

【0090】
ここでまた、最も好ましい実施形態において、R、R、およびRは、メトキシまたはベンジルオキシである。
【0091】
本発明の化合物の特定の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0092】
【化37】

【0093】
【化38】

【0094】
【化39】

【0095】
【化40】

【0096】
【化41】

【0097】
【化42】

【0098】
【化43】

【0099】
【化44】

【0100】
本発明の化合物は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、アナログなどの形態で投与され得、但し、この塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、またはアナログは、本発明の文脈において、薬学的に受容可能であり、かつ薬理学的に活性である。活性薬剤の塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、アナログ、および他の誘導体は、合成有機化学の当業者に公知である標準的な手順を使用して調製され得、そして例えば、J.March,Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure,第4版(New York:Wiley−Interscience,1992)によって記載されている。
【0101】
例えば、酸付加塩は、遊離塩基(例えば、第一級アミノ基を含む化合物)から、遊離塩基と酸との反応を含む従来の方法論を使用して調製され得る。酸付加塩を調製するために適切な酸としては、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)との両方が挙げられる。酸付加塩は、適切な塩基での処理によって、遊離塩基に再転換され得る。逆に、存在し得る任意の酸性部分の塩基性塩の調製が、類似の様式で、薬学的に受容可能な塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミンなど)を使用して、実施され得る。エステルの調製は、ヒドロキシル基と、エステル化試薬(例えば、酸塩化物)との反応を包含する。アミドは、エステルから、適切なアミン反応物を使用して調製され得るか、または無水物もしくは酸塩化物から、アンモニアもしくは低級アルキルアミンとの反応によって調製され得る。プロドラッグ、結合体、および活性代謝産物はまた、当業者に公知であるかまたは特許文献に記載されている技術を使用して、調製され得る。プロドラッグおよび結合体は、代表的に、個体の代謝系によって修飾されるまで治療的に不活性である化合物を生じる部分の共有結合によって、調製される。
【0102】
さらに、キラル中心を含むこれらの新規化合物は、単一のエナンチオマーの形態でか、またはエナンチオマーのラセミ混合物として、存在し得る。いくつかの場合において、すなわち、本明細書中に示されるある特定の化合物に関して、キラリティー(すなわち、相対立体化学)が示される。他の場合において、キラリティーは同定されず、そしてこのような構造は、示される化合物のエナンチオマー的に純粋な形態と、エナンチオマーのラセミ混合物との両方を包含することが意図される。エナンチオマー的な形態での化合物の調製は、エナンチオ選択的合成を使用して実施され得る;あるいは、ラセミ体の形態で得られるキラル化合物のエナンチオマーが、合成後に、慣用的な方法論を使用して分離され得る。
【0103】
活性薬剤の他の誘導体およびアナログは、合成有機化学の当業者に公知の標準的技術を使用して調製され得るか、または特許文献を参照することによって推定され得る。
【0104】
本発明の化合物は、簡単な技術を使用して容易に合成され得る。例えば、式(II)の化合物は、ケトン(X)を芳香族アルデヒド(XI)と、窒素性有機塩基の存在下で(例えば、アミン溶媒(例えば、ピリジンとピペリジンとの混合物)中で)、以下のスキームに従って縮合させることによって、調製され得る:
【0105】
【化45】

【0106】
好ましくは、この反応は、還流状態で実施される。特定のこのような反応は、実施例2、5、7、10、および12に記載されている。
【0107】
カルコン(IV)を合成するために、ケトン(X)、および芳香族アルデヒド(XI)が、上記のように、出発物質として使用されるが、この場合には、この反応は、水性無機塩基(好ましくは、強塩基(例えば、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム))の存在下で実施され、引き続いて、酸性化される:
【0108】
【化46】

【0109】
この反応は、周囲温度で実施され得る。特定のこのような反応は、実施例1、4、および10に記載されている。
【0110】
式(III)の構造を有するフラバノールは、式(II)の化合物から、簡単な還元反応(例えば、フラバノン(II)の、還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)での処理)を使用して、以下のように容易に誘導され得る:
【0111】
【化47】

【0112】
ほとんどの場合において、この還元は、2α,4βトランスエナンチオマーおよび2β,4α−シスエナンチオマーのラセミ混合物の調製に関して、エナンチオ選択的であり、少なくとも60〜80%の収率で、生成物を与える。特定のこのような反応は、実施例3、6、8、11、13、および14に記載されている。
【0113】
γが存在せず、そしてRがアシルオキシである、式(I)の化合物は、実施例9に記載されるように、以下のスキームに従って、式(III)のフラバノールをハロゲン化アシルと反応させて、4−ヒドロキシ基を所望の4−アシルオキシ基に転換することによって、調製され得る:
【0114】
【化48】

【0115】
このスキームにおいて、Rは、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、以下の構造を有する置換フェニル基である:
【0116】
【化49】

【0117】
ここで、R12、R13、およびR14は、独立して、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびアラルキルオキシからなる群より選択される。フラバノール反応物(III)が純粋なエナンチオマーの形態である場合、アシル化の間、立体化学が維持され、その結果、生成物(XII)は、出発物質と同じ立体配置を有する。例えば、(IIIA)のアシル化は、以下のように、構造(XIIA)を有するアシル化生成物を生じる:
【0118】
【化50】

【0119】
(III.薬学的処方物および投与の様式)
新規フラバノイドは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられた、一種以上の化合物からなる、薬学的処方物に好都合に処方され得る。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第19版(Easton,PA:Mack Publishing Co.,1995)を参照のこと。これは、代表的なキャリア、および薬学的処方物を調製する従来の方法を開示する。
【0120】
本発明の化合物は、経口的にか、非経口的にか、直腸的にか、膣的にか、頬的にか、舌下的にか、経鼻的にか、吸入によってか、局所的にか、経皮的にか、または移植されたレザバを介して、従来の非毒性の薬学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤を含有する投薬形態で、投与され得る。用語「非経口」とは、本明細書中において使用される場合、皮下注射、静脈内注射、および筋肉内注射を包含することが意図される。投与される化合物の量は、もちろん、特定の活性薬剤、処置される状態または障害、状態または障害の重篤度、患者の体重、投与様式、および処方する医師に既知である他の患者の要因に依存する。しかし、一般に、投薬量は、約0.001mg/kg/日〜100mg/kg/日の範囲、より好ましくは、約0.1mg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲である。
【0121】
意図される投与様式に依存して、薬学的処方物は、固体、半固体、または液体であり得、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、顆粒剤、ペレット、ビーズ、散剤などであり、好ましくは、適切な投薬量の単開投与のために適した、単位投薬形態である。適切な薬学的組成物および投薬形態は、薬学的処方物の分野の当業者に公知の従来の方法を使用して調製され得、そして直接関係のある教科書および文献(例えば、Remington:The Science and Practice of
Pharmacy,第19版(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1995))に記載されている。
【0122】
本発明の組成物は、経口で活性であるので、経口投薬形態が一般に好ましく、そして錠剤、カプセル剤、カプレット、および非水性の液剤、懸濁剤および/またはシロップが挙げられ、そしてまた、カプセル化されてもカプセル化されなくてもよい、複数の顆粒剤、ビーズ、散剤、またはペレットを包含し得る。好ましい経口投薬形態は、錠剤およびカプセル剤である。
【0123】
錠剤は、標準的な錠剤加工手順および設備を使用して、製造され得る。直切の圧縮および顆粒化の技術が好ましい。活性薬剤に加えて、錠剤は、一般に、不活性な、薬学的に受容可能なキャリア材料(例えば、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤など)を含有する。結合剤は、錠剤に対して結合性質を与え、従って、錠剤がインタクトなままであることを確実にする。適切な結合剤材料としては、デンプン(コーンスターチおよび予めゼラチン化されたデンプンが挙げられる)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、ブドウ糖およびラクトースが挙げられる)、ポリエチレングリコール、蝋、ならびに天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム)、ポリビニルピロリドン、セルロース性ポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる)、およびビーゴム(Veegum)が挙げられるが、これらに限定されない。滑沢剤は、錠剤の製造を容易にするために使用され、圧力が除かれる場合に、粉末の流れを促進し、そして粒子のキャッピング(すなわち、粒子の破壊)を防ぐ。有用な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の分解を容易にするために使用され、そして一般に、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ゴム、または架橋ポリマーである。充填剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶セルロースのような材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、ブドウ糖、塩化ナトリウム、およびソルビトールのような可溶性物質が挙げられる。安定剤は、当該分野において周知であるように、薬物分解反応(これには、例えば、酸化的反応が挙げられる)を抑止または遅延させるために使用される。
【0124】
カプセル剤もまた、好ましい経口投薬形態であり、この場合には、活性薬剤含有組成物は、液体または固体(顆粒、ビーズ、散剤またはペレットのような粒子が挙げられる)の形態でカプセル化され得る。適切なカプセル剤は、硬質であっても軟質であってもいずれでもよく、そして一般に、ゼラチン、デンプン、またはセルロースの材料から作製され得、ゼラチンカプセルが好ましい。ツーピースの硬質ゼラチンカプセルは、好ましくは、ゼラチンバンドなどで密封される。例えば、Remington:The Science
and Practice of Pharmacy,第19版(1995)(前出で引用)を参照のこと。これは、カプセル化された医薬を調製するための材料および方法を記載する。
【0125】
経口投薬形態は、錠剤であっても、カプセル剤であっても、カプレットであっても、粒子であっても、所望であれば、活性剤の延長された期間にわたる次第の持続された放出を提供するように処方され得る。一般に、当業者によって理解されるように、徐放投薬形態は、活性薬剤を、次第に加水分解可能な材料(例えば、不溶性プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニルもしくはポリエチレン)、または親水性ポリマー)のマトリックス内に分散させることによって、あるいは固体の薬物含有投薬形態をこのような材料でコーティングすることによって、処方される。徐放コーティングまたはマトリックスを提供するために有用な親水性ポリマーとしては、例えば、セルロース性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム);アクリル酸のポリマーおよびコポリマーであって、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルなどから形成されるもの(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、および/またはメタクリル酸エチルのコポリマー);ならびにビニルのポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー)が挙げられる。
【0126】
非経口投与のための、本発明に従う調製物としては、滅菌非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水性の溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油およびコーン油)、ゼラチン、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。非経口処方物はまた、アジュバント(例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤)を含有し得る。処方物は、滅菌剤の組み込み、細菌保持フィルタに通しての濾過、照射、または熱によって、滅菌される。これらはまた、滅菌注射可能媒体を使用して製造され得る。
【0127】
本発明の化合物はまた、皮膚組織または粘膜組織を通して、従来の経皮薬物送達システムを使用して投与され得、ここで、活性薬剤は、層状構造体内に収容され、この構造体は、皮膚に固定される、薬物送達デバイスとして働く。このような構造体において、薬物組成物は、上方のバッキング層の下にある層(すなわち、「レザバ」)内に収容される。積層された構造体は、単一のレザバを備え得るか、またはこの構造体は、複数のレザバを備え得る。1つの実施形態において、このレザバは、薬学的に受容可能な接触接着材料のポリマーマトリックスを備え、これは、薬物送達の間、このシステムを皮膚に固定するために働く。あるいは、薬物を収容するレザバおよび皮膚接触接着剤は、別個の異なる層として存在し、接着剤がレザバの下側にあり、この場合、このレザバは、上記のようなポリマーマトリックスであり得るか、または液体もしくはヒドロゲルのレザバであり得るか、または何らかの他の形態を採り得る。経皮薬物送達システムは、さらに、皮膚浸透増強剤を含有し得る。
【0128】
本発明の組成物は、一般に、経口的、非経口的、または経皮的に投与されるが、他の投与様式もまた同様に適切である。例えば、投与は、好ましくは、活性薬剤に加えてココアバターまたは坐剤蝋のような賦形剤を含有する坐剤を使用して、直腸または膣であり得る。経鼻投与または舌下投与のための処方物もまた、当該分野において周知の標準的な賦形剤を用いて調製される。本発明の薬学的組成物はまた、吸入のために、例えば、生理食塩水中の溶液として、乾燥散剤として、またはエアロゾルとして、処方され得る。経皮投与もまた、本発明の化合物のために適切な送達経路である。
【0129】
(IV.有用性)
本発明の化合物は、種々の障害を処置するために使用され得、そして主として、癌および他の過剰増殖疾患(特に、血管の過剰増殖(病理学的新脈管形成)によって特徴付けられるかまたはそれに依存する疾患)の処置において有用である。これらの化合物は、原発性と転移性との両方の固形腫瘍、および癌腫(限定されないが、心臓;結腸;直腸;肺;口腔咽頭;下咽頭;食道;胃;膵臓;肝臓;胆嚢;胆管;小腸;尿道(腎臓、膀胱、および尿路上皮を含む)、女性生殖管(子宮頸部、子宮、生殖細胞、および卵巣を含む);胎芽および胎児、男性生殖管(前立腺、精嚢、精巣、および生殖細胞を含む);内分泌腺(甲状腺、副腎、および下垂体が挙げられる);皮膚(血管腫、黒色腫、骨または軟部組織から生じる肉腫、およびカポージ肉腫が挙げられる);ならびに脳、神経、眼、および髄膜(神経膠星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫(glioblastoma)、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫、および髄膜腫が挙げられる)のもの)の処置において有用である。これらの化合物はまた、造血性悪性腫瘍(例えば、白血病)(緑色腫、プラスマ細胞腫、菌状息肉腫の斑および腫瘍、ならびに皮膚T細胞リンパ腫/白血病が挙げられる);ならびにリンパ腫(ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫との両方が挙げられる)から生じる固形腫瘍を処置する際に、有用である。これらの化合物は、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、肺、および膵臓の癌(これらの癌の薬物耐性形態を含む)を処置する際に特に有用である。薬物耐性癌に対する効力は、当該分野において重要な利点を代表する。なぜなら、化学療法レジメンの効力に影響を与える主要な問題は、化学療法薬物に曝露される際に、構造的に関連しない多数の薬物および治療剤に対して耐性になる、癌細胞の進化である。
【0130】
本発明の化合物はまた、癌以外の新脈管形成関連疾患の処置および予防において有用である。このような疾患としては、慢性関節リウマチ、免疫関節炎、および変形性関節症;眼疾患(糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植片拒絶、水晶体後線維増殖症、新脈管形成緑内障、ルベオーシス、黄斑変性および低酸素症に起因する網膜新脈管形成、ならびに他の異常な眼の新脈管形成状態が挙げられる);皮膚病(乾癬が挙げられる);血管疾患(アテローム性動脈硬化症斑血管腫および毛細管増殖が挙げられる);Osler−Webber症候群;心筋層の新脈管形成;斑の新生血管形成;毛細血管拡張症;血友病関節;血管線維腫;創傷の顆粒化;過剰または異常な内皮細胞刺激(腸癒着、クローン病、アテローム性動脈硬化症、強皮症および過形成性瘢痕(すなわち、ケロイド)が挙げられる);ならびに病理学的結果として新脈管形成を有する疾患(ネコ引っ掻き病および潰瘍(Helicobacter pylori感染)が挙げられる))によって特徴付けられる疾患が挙げられる。別の用途は、産児制限剤としてであり、これは、排卵および胎盤の確立を阻害する。本発明の化合物の多数の他の用途が、同様に可能であることが、当業者によって理解される。
【実施例】
【0131】
(V.実験)
以下の実施例は、当業者に、本明細書中に開示され、そして特許請求される化合物をどのように調製および使用するかの、完全な開示および記載を提供する。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実にするための努力がなされたが、ある程度の誤差および偏差が、考慮されるべきである。他に示されない限り、部は、重量部であり、温度は、℃においてであり、そして圧力は、大気圧またはその付近である。
【0132】
1−ヒドロキシ−2−アセトナフトン、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−アセトナフトン、ナリンゲニン、および4−メトキシ−1−ナフトールを、Aldrich Chemical Co.から購入した。他の全ての試薬もまた、他に示されない限り、商業的供給者から得たままで使用した。
【0133】
H NMRスペクトルおよび13C NMRスペクトルを、Varian Gemini 300 MHz分光計(それぞれ300MHzおよび75MHz)で記録し、そしてδ7.27において、クロロホルムを内部標準とした。H NMRについてのデータを、以下のように報告する:化学シフト(δppm)、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線)、結合定数(Hz)、積分、および帰属。13Cについてのデータを、化学シフトの観点で報告する。IRスペクトルを、Perkin−Elmer 1610分光計で記録し、そして吸収の周波数(cm−1)の観点で報告する。質量分析を、ThermoFinnigan LCQ Duo LC/MS/MS機器および電子スプレーイオン化プローブを使用して獲得した。薄層クロマトグラフィーを、Analtech UniplateシリカゲルTLCプレートで流した。
【0134】
これらの実施例および本特許全体において、他に言及されない限り、使用される略号は、以下のような、それらの一般的に認容される意味を有する:
Bn=ベンジル
CAM=雛鳥の漿尿膜
CHCl=塩化メチレン
DBU=1,3−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン
DMAP=ジメチルアミノピリジン
DMF=ジメチルホルムアミド
EGM=内皮細胞増殖培地
eq.=当量
EtOAc=酢酸エチル
EtOH=エタノール
g=グラム
HUVEC:ヒト臍静脈内皮細胞
KOH=水酸化カリウム
Me=メチル
mL=ミリリットル
MTT=3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド
MVD=微細脈管密度
PCNA=増殖性細胞核抗原
Ph=フェニル
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー。
【0135】
(実施例1)
(1−(1−ヒドロキシ−ナフタレン−2−イル)−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−プロペノン(SR 13176)の合成)
【0136】
【化51】

【0137】
(スキーム1)
1−(1−ヒドロキシ−ナフタレン−2−イル)−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−プロペノン(SR 13176)を以下のようにスキーム1に従って合成した:200mLの10%KOH/EtOH中の1−ヒドロキシ−2−アセトナフトン1(10g,54mmol)および3,4,5−トリメトキシ−ベンズアルデヒド2(15.79g,80mmol)の混合物を、室温で48時間攪拌した。次いで、暗色溶液を400mLの水に注ぎ、6N 塩酸によりpH4まで酸性化した。粘着性の固体が沈殿し、上清をデカントした。粘着性の残渣を沸騰メタノール(200mL)中に溶解し、一晩4℃で冷却した。形成された赤みがかった橙色の結晶を濾取し、冷メタノールで洗浄し、乾燥ピストル(還流アセトン下)中で16時間乾燥し、赤色結晶性固体として9.58g(49%)の純粋なSR 13176を得た。未反応のアセトナフトンおよび生成物を含む上清をヘキサンおよび酢酸エチル(95:5〜85:15)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに1.25gのカルコンSR 13176を得た。合計収率:55%。
【0138】
【化52】

【0139】
スキーム2は、それぞれ実施例2および3に記載されるように、SR 13177およびSR 13179の合成を示す。
【0140】
【化53】

【0141】
(スキーム2)
(実施例2)
(2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[H]クロメン−4−オン(SR 13177)の合成)
600mL エタノール中の1−ヒドロキシ−2−アセトナフトン1(15g,81mmol)および3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド2(17.66g,88mmol)の混合物を、ピペリジン(40mL)およびピリジン(45mL)で処理し、暗色溶液を18時間還流した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、暗色残渣を塩化メチレン(600mL)に溶解した。溶液を2×300mLの水および2×300mLのブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥し、その後、これを濾過して、蒸発させて、60gの粗物質を得た。これを塩化メチレン(1L)、続いて、CHCl:EtOAc(95:5)の溶媒混合物で溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を含む画分を得た。これらを蒸発させて、黄色固体として11.4g(39%収率)の純粋なSR 13177を得た。
【0142】
【化54】

【0143】
(実施例3)
(2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[H]クロメン−4−オール(SR 13179)の合成)
水素化ホウ素ナトリウム(0.55mmol,21.2mg)を、THF(5mL)および95%エタノール(10mL)中のフラバノンSR13177(1.1mmol,0.4g)の溶液に加えた。この反応物を温めて、2.5時間穏やかに還流した。冷却した反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解し、有機溶液を水およびブラインで洗浄し、乾燥した(MgSO)。酢酸エチル溶液の蒸発によって得られる粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な生成物をヘキサン/酢酸エチル(8:2)で溶出した。純粋な生成物を含む画分を蒸発させて、明るい黄色の発泡性結晶性固体のSR 13179(0.325g,81%収率)を得た。
【0144】
【化55】

【0145】
スキーム3は、それぞれ実施例4、5および6に記載のように、SR 13178,SR 13180およびSR13183の合成を示す。
【0146】
【化56】

【0147】
(実施例4)
(1−(2,4−ビス−ベンジルオキシ−6−ヒドロキシ−フェニル−3−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−プロペノン(SR13178)の合成)
1−(2,4−ビス−ベンジルオキシ−6−ヒドロキシフェニル)−3−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−プロペノン(SR 13178)を以下のようにスキーム3に従って合成した。
【0148】
(a)没食子酸メチル3からの3,4,5−トリベンジルオキシベンズアルデヒド6の調製
DMF(120mL)中の没食子酸メチル3(10g,53mmol)および炭酸カリウム(45g,320mmol)の混合物を、臭化ベンジル(210mmol,25.7mL)で処理し、40℃のアルゴン雰囲気下で24時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣を最小量の塩化メチレンに溶解し、等量のヘキサンで希釈し、焼結ガラス漏斗中の短いシリカゲルパッド上に充填した。シリカをヘキサン(300mL)で溶出させて、過剰の臭化ベンジルを除去し、溶出液を廃棄した。次いで、生成物をCHCl:ヘキサン(1:1,300mL)、続いて、塩化メチレン(500mL)で溶出させ、溶出液を合わせ、蒸発させて、灰白色固体として純粋なベンジル生成物4を得た(100%収率)。H NMR(300 MHz,CDC1):δ3.88(s,3H,CH),5.11および5.13(2s,6H,OCH),7.35−7.41(m,17H,Ar−H)。
【0149】
没食子酸3,4,5−トリベンジル−メチル4(10g,22mmol)の乾燥THF(75mL)溶液に、少量に分けて固体の水素化リチウムアルミニウム(1.25g,33mmol)を加えた。懸濁液を加熱してアルゴン下、2時間還流した。反応物を0℃まで冷却して、水を滴下することで注意深くクエンチした。次いで、スラリーをCHClで抽出した。有機溶液を飽和ブライン、続いて無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、白色固体として純粋な生成物5を得た(8.9g,95%収率)。
NMR(300 MHz,CDC1):δ4.6(d,2H,CH),5.04および5.11(2s,6H,OCH),6.67(s,2H,2,6−Ar−H),7.25−7.43(m,15H,Ar−H)。
【0150】
0℃の3,4,5−トリベンジルオキシ−ベンジルアルコール 5(8.9g,21mmol)の塩化メチレン(200mL)溶液に、激しく攪拌しながら少量に分けて、ピリジニウムクロロクロメート(5.43g,25mmol)を加えた。冷却を中断し、反応物を室温で4時間攪拌した。暗褐色の懸濁液を焼結ガラス漏斗中の長いシリカゲルパッド上で濾過し、全ての純粋な生成物が溶出されるまでCHClで溶出した。有機濾液を蒸発させて、軟らかい白色固体として純粋な生成物6を得た(8.1g,91.5%収率)。H NMR(300 MHz,CDCl):δ5.16(s,6H,OCH),7.18(s,2H,2,6−Ar−H),7.26−7.41(m,15H,Ar−H),9.80(s,1H,CHO)。
【0151】
(b)2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン7からの4’,6’−ビスベンジルオキシ−2’−ヒドロキシアセトフェノン(8)の調製:
ヘキサメチルホスホラミド(160mL)中の2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン(20g,0.12mol,オーブン中140℃で乾燥した)および無水炭酸カリウム(50g,0.36mol)の混合物を、塩化ベンジル(30mL,0.26mol)で処理し、懸濁液を90〜93℃のアルゴン雰囲気下1.5時間加熱した。次いで、混合物を冷却し、濾過した。濾液を300mL 氷冷水に加え、6N 塩酸によりpH4まで酸性化した。得られた懸濁液を70℃まで1時間加熱し、次いで、4℃で16時間冷却した。沈着した粘着性固体を濾過し、水で洗浄した。この固体を風乾し、沸騰メタノール/アセトン(2:1)から再結晶した。溶液を冷却することで、灰白色結晶として生成物8が得られた(27.55g,66.5%収率)。H NMR(300 MHz,CDCl):δ2.56(s,3H,CH),5.06(s,4H,CH),6.10および6.16(2s,2H,3’,5’−Ar−H),7.40(m,10H,Ar−H),14.01(s,1H,OH)。
【0152】
(c)(6)および(8)からのSR 13178の調製
エタノール(60mL)中の3,4,5−トリベンジルオキシベンズアルデヒド6(2.66g,6.3mmol)および4’,6’−ビスベンジルオキシ−2’−ヒドロキシアセトフェノン(3.12g,6.3mmol)の混合物を、ピペリジン(9mL)で処理し、16時間還流した。まず、黄色溶液が形成され、その後、黄色沈殿物が堆積した。16時間後、反応物を冷却し、濾過によって固体を回収し、冷エタノールにより十分に洗浄した。この固体を室温で16時間エタノールでさらに粉砕し、再度濾過して、ふわふわした結晶性の黄色固体として純粋な生成物SR 13178を得た(3.48g,74%)。
【0153】
【化57】

【0154】
(実施例5)
(5,7−ビス−ベンジルオキシ−2−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−クロマン−4−オン(SR 13180)の合成)
カルコン SR 13178(100mg,0.15mmol)の塩化メチレン(10mL)溶液に、1,3−ジアザビシクロウンデセン(DBU)(0.3mL,2mmol)を加え、赤色の溶液を室温で16時間攪拌した。1N 塩酸(50mL)を反応混合物に加え、有機層を分離し、水およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSOにより)、そして蒸発させて、粗生成物を得た。これを塩化メチレンで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を含む画分を得た。これらを蒸発させて、明るい黄色固体としてSR 13180を得た(75mg,75%収率)。
【0155】
【化58】

【0156】
(実施例6)
(5,7−ビス−ベンジルオキシ−2−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−クロマン−4−オール(SR 13183)の合成)
この化合物をスキーム3に示されるように、実施例3(SR 13179の合成)と同じ反応条件を使用して、SR 13180の還元によって合成した。
【0157】
THF(50mL)およびエタノール(20mL)中のフラバノン SR 13180(2.24g,2.97mmol)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(0.113g,2.97mmol)により処理し、2時間穏やかに攪拌した。冷却した反応混合物を乾燥するまで蒸発させて、酢酸エチルに溶解させた。この溶液を1N 塩酸および水で洗浄し、乾燥し(無水NaSO)、濾過し、蒸発させて、粗生成物を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物をCHCl/ヘキサン(9:1)により溶出させた。純粋な生成物を含む画分をプールし、蒸発させて、黄色固体として1.35g(60%)の純粋なSR 13183を得た。
【0158】
【化59】

【0159】
(スキーム4は、それぞれ、実施例7および8に記載される、SR13181およびSR13187の合成を示す:
【0160】
【化60】

【0161】
(実施例7)
(3’,4’,5’−トリメトキシ−B−ナフタフラバン−4−オン(SR13181)の合成)
EtOH(50mL)中の2−ヒドロキシ−1−アセトナフトン9(1g、5.37mmol)および3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド2(1.06g、5.37mmol)の溶液を、ピペリジン(2mL)およびピリジン(3mL)で処理して、20時間還流した。この冷却反応混合物を乾固するまでエバポレートし、そして残渣を塩化メチレン(200mL)に溶解した。この有機溶液を、1Nの塩酸、水およびブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、そしてエバポレートして、粗生成物を得た。これを、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、ヘキサン/酢酸エチル(8:2)でフラバノンSR13181を溶出した。この純粋な生成物を含む画分をプールし、そしてエバポレートして、SR13181をオフホワイトの固体として得た(1.71g、収率81%)。TLC:ヘキサン:EtOAc(7:3)Rf=0.38.
【0162】
【化61】

【0163】
(実施例8)
(3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[F]クロメン−1−オール(SR13187)の合成)
この化合物を、実施例3と同じ反応条件を使用して、スキーム4に示されるようにしてSR13181を還元することによって合成した。
【0164】
エタノール(25mL)中のフラバノンSR13181(1.4g、3.85mmol)の溶液を、NaBH(110mg、2.88mmol)で処理し、室温で3時間攪拌した。この反応混合物を水で希釈し、1Nの塩酸でpH4に酸性化し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を水およびブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、そしてエバポレートして、粗物質を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、そして純粋な生成物をヘキサン/EtOAc(75:25)で溶出した。純粋な生成物を含む画分をプールし、そしてエバポレートして、SR13181をオフホワイトの泡状固体として得た(1.11g、収率78%)。
【0165】
【化62】

【0166】
(実施例9)
(3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[F]クロメン−1−オン(SR13182)の合成)
【0167】
【化63】

【0168】
3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)」−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[F]クロメン−1−オン(SR13182)を、以下のようにして、スキーム5に従って合成した。塩化メチレン(10mL)中のアルコールSR13179(100mg、0.27mmol)の溶液を、トリエチルアミン(0.07mL、0.54mmol)およびN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(33mg、0.27mmol)で処理し、その後3,4,5−トリメトキシ−ベンゾイルクロリド(0.088g、0.38mmol)で処理し、そして室温で6時間攪拌した。この反応混合物を塩化メチレンで希釈し、そして分液漏斗中で、1Nの塩酸および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水およびブラインを用いて洗浄した。有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして0.233gの粗物質を得、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物をヘキサン/酢酸エチル(8:2)で溶出した。純粋な生成物を含む画分をプールし、そしてエバポレートして、0.138g(90%)のSR13182を白色固体として得た。
【0169】
【化64】

【0170】
スキーム6は、実施例10および11に記載されるように、SR13185、SR13186、およびSE13191の合成を示す。
【0171】
【化65】

【0172】
(実施例10)
(1−(1−ヒドロキシ−ナフタレン−2−イル)−3−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−プロペノン(SR13185)および2−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[H]クロメン−4−オン(SR13186)の合成)
以下のようにして、スキーム6に示されるように、1と6とを縮合して、カルコンSR13185およびフラバノンSR13186を1つの反応で得た:
エタノール(20mL)中の1’−ヒドロキシ−2’−アセトナフトン1(300mg、1.61mmol)および3,4,5−トリベンジルオキシベンズアルデヒド6(0.68g、1.61mmol)の溶液を、ピペリジン(1mL)およびピリジン(2mL)で処理し、そして42時間還流した。この冷却反応混合物を乾固するまでエバポレートし、そしてCHClに溶解した。この有機溶液を、1Nの塩酸、水およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、そしてエバポレートして、両方の生成物の粗混合物を得た。これらをフラッシュカラムクロマトグラフィーによって段階的に分離し、ヘキサン/CHCl(1:1〜2:8)で溶出して、両方の生成物を純粋な画分として得た。カルコンSR13185を、黄色の固体(80mg、収率9%)として得、そしてフラバノンを単黄色の固体(225mg、収率24%)として得た。
【0173】
【化66】

【0174】
(実施例11)
(2−(3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−フェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[H]クロメン−4−オール(SR13191)の合成)
この化合物を、実施例3と同じ反応条件を使用して、スキーム6(SR13179の合成)に示されるようにして、SR19186を還元することによって合成した。
【0175】
エタノール(3mL)およびTHF(3mL)中のSR13186(100mg、0.17mmol)の溶液を、NABH(6.4mg、0.17mmol)で処理し、そして室温で2.5時間攪拌した。この反応混合物を乾固するまでエバポレートし、そして酢酸エチルに再溶解した。この有機溶液をブラインで洗浄し、そして乾燥し(MgSO)、そして乾固するまでエバポレートして、粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製した。純粋な生成物を、CHCl/ヘキサン(97:3)で溶出して、画分をプールし、そしてエバポレートして、SR13191を白色固体として得た(92mg、収率90%)。
【0176】
【化67】

【0177】
スキーム7は、実施例12および13に記載されるように、SR13188およびSR13189の合成を示す:
【0178】
【化68】

【0179】
(実施例12)
(5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシ−フェニル)−クロマン−4−オン(SR13188)の合成)
SR13188を、以下のようにして、スキーム7に示されるようにして、市販のフラバノンナリンゲニン(naringenin)(10)のメチル化により合成した。
【0180】
ジメチルスルフェート(1.39mL、14.7mmol)を、アセトン(20mL)中のマリンゲニン10(1g、3.67mmol)およびKCO(2.03g、14.7mmol)の混合物に添加し、この懸濁液を16時間還流した。この冷却反応混合物を濾過し、そして乾固するまでエバポレートし、酢酸エチルに再溶解し、そしてこの有機溶液を1Nの塩酸、水およびブラインで洗浄した。この酢酸エチル溶液を乾燥し(MgSO)、そしてエバポレートして、粗メチル化生成物を絵、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製した。この純粋な生成物を塩化メチレンで溶出し、そしてプールした画分をエバポレートして、SR13188を白色固体として得た(0.453g、収率20%)。
【0181】
【化69】

【0182】
(実施例13)
(5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシ−フェニル)−クロマン−4-オール(S
R13189)の合成)
SR13189を、実施例3(SR13179の合成)と同じ反応条件を使用して、スキーム7に示されるようにして、SR13188を還元することによって合成した。
【0183】
エタノール(5mL)およびTHF(2.5mL)中のフラバノンSR13188(151mg、0.48mmol)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(18.2mg、0.48mmol)で処理し、室温で5時間攪拌した。この反応混合物を乾固するまでエバポレートし、そして酢酸エチルに再溶解した。この有機溶液を飽和NaHCO水溶液およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、そしてエバポレートして、粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製した。この純粋な生成物をCHCl/ヘキサン(98:2)で溶出し、そしてこの画分をエバポレートして、白色固体を得、これをヘキサン−エーテル(1:1)で粉砕し、そして2回、共エバポレート(co−evaporate)して、SR13189を軟らかい白色固体として得た(35mg、25%)。
【0184】
【化70】

【0185】
(実施例14)
(6−メトキシ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[H]クロメン−4−オン(SR13801)の合成)
【0186】
【化71】

【0187】
SRI13801を、実施例3と同じ反応条件を使用してフラバノン13を還元することによって、スキーム8に示されるように合成した。フラバノン13を、アセトナフトン12から合成し、このアセトナフトン12を、SR13177の合成と同じ手順を使用して、トリメトキシベンズアルデヒド2と縮合した。アセトナフトン12を、4−メトキシ−1−ナフトール11のマイクロ波補助Friesアシル化によって得た。
【0188】
2−アセチル−4−ナフトール12の合成。トルエン(5mL)およびニトロメタン(0.75mL)中の4−メトキシ−1−ナフトール11(435mg、2.5mmol)の溶液を、スカンジウムトリフレート(61.52mg、0.125mmol)およびアセチルクロリド(0.195mL、2.75mmol)で処理し、そして170℃の温度で5時間、マイクロ波反応器(Personal Chemistry,Inc)中で照射した。この冷却反応物を塩化メチレンで希釈し、シリカゲルの小パッドを通して濾過した。そのろ液を乾固するまでエバポレートし、そしてフラッシュクロマトグラフィーで精製し、純粋なCアシル化生成物12をCHCl/ヘキサン(1:1)で溶出した。プールした画分をエバポレートして、12を緑黄色固体として得た(0.388g、収率72%)。
【0189】
【化72】

【0190】
フラバノン13の合成。エタノール(25mL)中のアセトナフトン12(1.08g、5mmol)およびトリメトキシベンズアルデヒド(2)(1.08g、5.5mmol)の溶液を、ピリジン(3mL)およびピペリジン(3mL)で処理し、24時間還流した。冷却すると、生成物13が溶液から沈殿し、これを濾過によって回収し、そしてエタノールで洗浄して、収量488mgの13を第1生成物として得た。このろ液をフラッシュクロマトグラフィーでさらに精製し、生成物をヘキサン/CHCl/EtOAc(6:3:1)で溶出して、淡橙色固体を得、これをエタノールから再結晶して、さらに399mgの第2生成物を得た。合計収率45%。
【0191】
【化73】

【0192】
SR13801の合成。メタノール(15mL)中の13(394mg、0.76mmol)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(30.27mg、0.80mmol)を添加し、この溶液を1時間攪拌した。この反応混合物を水に注ぎいれ、そしてCHClで抽出した。この有機溶液を水およびブラインで洗浄し、乾燥した(MgSO)。この有機溶液を濾過し、そしてエバポレートして、粗物質を得、これをメタノールから再結晶して精製し、184mgの純粋なSR13801を白色固体として得た(収率61%)。
【0193】
【化74】

【0194】
(実施例15)
(SR13817の合成)
【0195】
【化75】

【0196】
(a)1−(3−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)エタノン(15)
室温のアルゴンでフラッシュしたフラスコ中に入れられた5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフトール14(10mmol、1.48g)に、TiCl(11mmol、1.2mL)をゆっくりと添加した。得られたダークチェリー色の混合物を室温で攪拌し、ガスの発生が生じた時、15mmol(1.07mL)の酢酸をこの固体に添加した。得られた濁った溶液を室温で15分間攪拌し、次いで120℃にし、そしてこの温度でさらに1時間攪拌した。次いで、この反応混合物を室温まで冷却し、CHCl(30mL)で希釈し、そしてHO(30mL)でクエンチした。濁った溶液が得られ、この溶液を、CHClで容易に抽出した。この有機層をHO(2×30mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして減圧下で濃縮した。この粗物質を、ヘキサン/EtOAc(95/5)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、15を黄色の固体として得た(1.14g、収率59%)。
【0197】
【化76】

【0198】
(b)16および17の合成:50mLの丸底フラスコに、アセトテトラヒドロナフトール2(10.9mmol、2g)、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド(12mmol、2.37g)、ピペリジン(4mL)、ピペリジン(4mL)およびエタノール(25mL)を入れた。この反応混合物を還流し、そして18時間攪拌し続け、その後この反応物は非常に粘性になった。カルコン(3)およびフラバノン(4)の両方が、いくらかの残留している出発物質と共にTLCによって示された。次いで、この混合物を室温まで冷却し、50mLの酢酸エチルおよび60mLの5% 塩酸で希釈した。この有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。このようにして得られた粗物質を、ヘキサン/DCM/EtOAc(6/3/1)の混合物を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、362mg(収率10%)のカルコン(16)を橙色固体として得、1.03g(収率26%)のフラバノン(17)を淡黄色として得た。
【0199】
(2E)−1−(3−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)−3−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)プロプ−2−エン−1−オン(16):
【0200】
【化77】

【0201】
2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2,3,6,7,8,9,−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]クロメン−4−オン(17):
【0202】
【化78】

【0203】
(c)5−(4−ヒドロキシ−3,4,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]クロメン−2−イル)ベンゼン−1,2,3−トリメトキシ(SR 13817):水素化ホウ素ナトリウム(3mmol、114mg)を、メタノール(15ml)中のフラバノン17(2.63mmol、970mg)の懸濁液に添加した。反応物を室温で15分間攪拌し、その後、全てのフラバノンを還元した。この混合物を、酢酸エチル/水中で希釈し、そして有機溶液を水およびブラインで洗浄し、そして乾燥した(MgSO)。酢酸エチル溶液のエバポレーションによって得られた粗生成物を、フラッシュから無クロマトグラフィーで精製し、そして純粋な生成物をヘキサン/酢酸エチル(7:3)で溶出して、846mg(7%収率)のSR 13817を白色固体として得た。
【0204】
【化79】

【0205】
(実施例16)
(増殖阻害活性のインビトロ決定)
本発明の化合物を、2つの乳癌細胞株、MCF−7(ER+)およびMDA−MB−231(ER−)において増殖を阻害するそれらの能力について試験した。
【0206】
増殖阻害アッセイを、慣用的な方法を使用して行った。簡単に述べると、細胞を、24ウェルプレートに、増殖培地を含む200μLの水中、ウェル当たり2000細胞の密度で播種した。各ウェルに、溶解された試験化合物を含む10μLのDMSOを添加した。各試験化合物を、0.4、2、10、および50μMの濃度でアッセイした。各ウェル中の最終DMSO濃度は、0.5%以下であった。プレートを培地とともに8日間インキュベートし、そして試験溶液を3日毎に置き換えた。8日目に、生存可能な細胞を、Mosmannら(1983)”Rapid Colorimetric Assay for
Cellular Growth and Survival:Application to Proliferation and Cyototoxicity、”J.Immunol.Method.65:55−63に記載されるように、MTTアッセイによって測定された。各試験ウェルの575nmの光学密度を測定し、そしてコントロールウェルについての光学密度と比較し、そしてこのデータを、異なる濃度での増殖阻害の割合を計算するために使用した。IC50値(いかなる増殖阻害剤にも曝露されていないコントロール細胞に対する培養物中の細胞の50%増殖阻害を生じる増殖阻害剤の濃度)を、用量−応答曲線をプロットすることによって決定した。
【0207】
計算されたIC50値を、表1に記載し、この結果は、4つの濃度の各々における各化合物について行われた少なくとも2つの実験の平均を表す。見られ得るように、多くの実験化合物が、乳癌細胞株の両方に対する増殖阻害活性を実証した。
【0208】
【表1】

【0209】
(実施例17)
(癌細胞株におけるSR13179の増殖阻害活性のインビトロ決定)
新規化合物SR13179を、いくつかの癌細胞株における増殖を阻害するその能力についてアッセイした。研究された細胞株は、乳癌細胞株MCF−7(ER+);前立腺癌細胞株LNCaP、PC3、およびDU145;肺癌細胞株A427;卵巣癌細胞株IGROV1、OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、およびSK−OV−3;ならびに結腸癌細胞株COLO 205、HCC−2998、HCT−116、HCT−15、HT29、KM12、およびSW−620を含んだ。
【0210】
乳癌細胞株についての増殖アッセイを、実施例16の方法に従って実施した。他の細胞株について、各アッセイを、増殖阻害を測定するためのスルホローダミンベースのタンパク質決定を使用して、6日間、4つの対数濃度で試験化合物への連続曝露を行った。結果を表2に示す。
【0211】
【表2】

【0212】
表において見られ得るように、研究された全ての癌細胞株について、強力な増殖阻害を実証した。
【0213】
(実施例18)
(ヒト脈管内皮細胞における増殖の阻害およびアポトーシスの誘導におけるSR13179の活性)
新脈管形成は、脈管内皮細胞の増殖に依存する。SR13179の潜在的な新脈管形成活性を決定するために、これらの細胞の増殖を阻害する化合物の能力をアッセイした。次いで、アポトーシスを、抗増殖活性についての可能な機構として調査した。
【0214】
臍帯静脈から採取されたヒト脈管内皮細胞(HUVEC)を、Clonetics Corporation(San Diego,California)から得た。先の実施例に記載される、Mosmannらによって記載されるMTTアッセイを使用して、増殖阻害を定量的に測定した。
【0215】
図1に示されるように、SR13179は、用量依存様式で、HUVECの増殖を阻害した。50%増殖を阻害する濃度は、0.37μMであった。SR13179による脈管内皮細胞のこの潜在的な阻害は、その抗腫瘍活性に対する抗新脈管形成成分を示唆する。
【0216】
抗増殖機構を、Promega(Madison,Wisconsin)アポトーシス検出キット(Gavrieliら、(1992)J Cell.Biol.119:493−501)を使用して、Gavrieliらの方法を使用してアポトーシスについてアッセイすることによって調査した。簡単に述べると、HUVEC細胞を、4つの対数濃度のSR13179(1nM、10nM、100nM、および1μM)で処理し、そして3時間および6時間に末端デオキシリボヌクレオチドトラスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイのために固定した。アポトーシス細胞を、DNA標準ブレーク(break)で蛍光dUTPを標識し、そして核の形態を可視化するために、Hoechst33258で対比染色した。3時間での10nMという低い濃度でさも、アポトーシスは、核濃縮核として明確に明らかであった。表3において示されるように、SR13179に対する曝露の3時間後に、検出されるアポトーシス細胞の割合における2〜3倍の増加であった。6時間後、SR13179のより高い濃度における大量のアポトーシスが存在するようであり、その結果、この細胞は脱着され、そして洗浄工程の間に失われた。従って、脈管内皮細胞に対するSR13179の抗増殖効果がアポトーシスによって媒介されることが明らかである。
【0217】
【表3】

【0218】
(実施例19)
(ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイにおけるSR13179の抗新脈管形成活性)
いくつかの化合物が脈管内皮細胞の増殖を阻害するインビトロ細胞傷害活性を示し得るが、インビボ抗新脈管形成活性を有さないので、抗新脈管形成活性についてのインビボアッセイを、SR13179に適用した。CAMアッセイ(インビボ抗新脈管形成活性を評価するために幅広く適用される)を、SR13179を用いて使用した。
【0219】
使用される方法は、いくつかの改変を伴う、Folkman(Auerbachら(1974)Dev.Biol.41:391−394)の方法であった。試験化合物を、生理食塩水およびメチルセルロース中に溶解し、そして胚を12〜14日間、毎日1回投薬した。各胚の血管密度を、定量的終点として測定した。公知の抗新脈管形成化合物メドロキシプロゲステロンアセテート(MPA)を、ポジティブコントロールとして使用した。
【0220】
表4に示され得るように、SR13179は、MPAと等しいインビボ抗新脈管形成活性を有することが見出された。
【0221】
【表4】

【0222】
(実施例20)
(LNCaPヒト前立腺癌細胞における細胞周期停止の誘導)
SR13179が、細胞周期を乱すことによって、その抗増殖活性を及ぼすか否かを決定するために、LNCaPヒト細胞の核形態を、SR13179での処理後に可視化した。細胞を、化合物に、28時間、0.5μMまたは1μMのいずれかの濃度で曝露し、次いで、核色素Hoechst33258で染色した。LNCaP細胞は、明らかに、前中期停止のクロマチン凝集特性を示した。
【0223】
有糸分裂停止をより詳細に調査するために、フローサイトメトリーを使用して、LNCaP細胞についての細胞周期進行に対するSR13179の効果を研究した。24時間の2μM以上の濃度での処理は、コントロールと比較して、G/M部分における2倍の増加およびG部分の対応する減少を引き起こし、これは、G/Mにおける細胞周期停止を示す。MCF−7ヒト乳癌細胞での別の実験において、24時間の1μM SR13179での処理は、G/M停止と同時に、低二倍体(サブG1)部分におけるほぼ3倍の増加(未処理のコントロールと比較する)を引き起こし、これは、G/Mチェックポイントに続く、アポトーシスを示す。
【0224】
これらの実験は、SR13179が、有糸分裂が開始されるので、細胞周期のG/M期で癌細胞の増殖を停止させることを示す。
【0225】
(実施例21)
(LNCaPヒト前立腺癌細胞における増殖阻害活性のインビトロ決定)
実施例20の手順を使用して、LNCaP細胞に対する本発明の種々の化合物の増殖阻害効果を評価した。結果を表5に示す:
【0226】
【表5】

【0227】
(実施例22)
(ヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片に対する腹腔内投与されたSR13179の抗腫瘍形成活性)
乳癌に対する新規化合物SR13179のインビボ活性を評価するために、乳癌細胞を移植された、雌性BALB/cヌードマウスにこの化合物を投与した。この実験において、MCF−7ヒト乳癌細胞(2.5×10細胞)を、各マウスの両脇に皮下的に移植した。細胞接種の2日後、1つのエストラジオールペレット(10μg/ペレット)を、皮下移植によって各マウスに移植した。腫瘍容積が100mmに達した場合(0日目)、SR13179を、0.5%ヒドロキシプロピルセルロース中の懸濁液として、1日1回、12.5mg/kg、25mg/kg、および50mg/kgの用量で、腹腔内的(i.p.)に投与した。体重および腫瘍容積を、14日間、週に2回測定した。腫瘍容積を、0日目に100%として指定された初期腫瘍サイズの%として表現した。
【0228】
図2に示されるように、最も低い用量(12.5mg/kg、日)のSR13179を受容したマウスは、腫瘍増殖の完全な抑制を示した。最も高い用量(50mg/kg/日)において、0日目のサイズと比較して、わずかな腫瘍サイズの後退が存在した。処置されたマウスの体重は、全ての用量において影響を受けず、過剰な毒性は観察されず、これは、SR13179が低い全身毒性を有することを示す。
【0229】
(実施例23)
(ヌードマウスにおけるアドリアマイシンおよびシスプラチン耐性ヒト卵巣癌異種移植片に対する、SR13179の経口およびI.P.投与の抗腫瘍活性)
高い攻撃性のアドリアマイシンおよびシスプラチン耐性ヒト卵巣癌細胞株SKOV−3に対するSR13179のインビボ抗腫瘍活性を、ヌードマウス異種移植片において評価した。実験を以下のように実施した:雌性BALB/cマウスに、両脇においてヒト卵巣癌SKOV−3細胞を皮下的に接種した。SR13179を、腫瘍細胞接種と同じ日に、2つの投与経路(経口および腹腔内)を介して、10mg/kg、30mg/kgおよび100mg/kgの3つの用量で、0.5%ヒドロキシプロピルセルロール中の懸濁液として1日に1回で、マウスに投与した。体重および腫瘍容積を、週に2回測定した。結果。図3および4において見られるように、腫瘍接種の10日後に、コントロール群(未処置)の腫瘍が、100mmに達したが、SR13179処置群の腫瘍は、10日目の未処置のコントロールの約50%小さく、処置群の腫瘍増殖は、4週間の研究の期間の間、未処置のコントロールと比較して、有意に阻害され続けた。従って、SR13179は、移植された腫瘍細胞からの腫瘍質量の形成を有意に阻害し、そしてコントロールと比較して、腫瘍増殖を阻害し続けた。処置マウスの対順は、研究された全ての用量において影響されなかった。
【0230】
従って、この新規化合物は、多くの細胞株に対して抗増殖活性を示し、特にSR13179が、乳癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、結腸癌細胞、肝臓癌細胞、および肺癌細胞の強力な増殖阻害を示した。この化合物はまた、エストロゲンレセプターを発現しエストロゲンによって刺激される乳癌細胞株(ER+)に対して、ならびにエストロゲンレセプターを発現しない乳癌細胞株(ER−)に対して、有効であるとして確立された。マウスにおけるインビボ研究は、非毒性用量での乳癌異種移植片の完全な増殖抑制を示した。
【0231】
この化合物の抗新脈管形成活性は、ヒト脈管内皮細胞に対するそれらの効果を研究することによって調査された。これらの細胞の増殖は、例えば、SR13179によって強力に阻害され;さらなる調査は、この阻害が、アポトーシスの誘導から生じ、これは、この化合物の曝露の3時間後にすぐに有意に生じた。抗脈管形成活性についてのインビボアッセイ、ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイは、SR13179の抗新脈管形成活性が、生きた生物において明らかにし、そして細胞傷害性に起因して単純ではないことを実証した。従って、本発明の新規化合物は、強力な抗癌活性を示し、そして既存の化学療法に対して、かなり利点を有する。これらの利点としては、非毒性用量における幅広い範囲の癌に対する効力が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−138192(P2010−138192A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51084(P2010−51084)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2003−586144(P2003−586144)の分割
【原出願日】平成15年4月18日(2003.4.18)
【出願人】(501228071)エスアールアイ インターナショナル (66)
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
【Fターム(参考)】