説明

化学的浸透促進剤を使用して中耳内への経膜的薬物送達を促進する、中耳炎の処置および予防のための方法

プロピレングリコールなどの化学的浸透促進剤を含む、医薬含有経膜的担体組成物の経膜的投与により中耳感染症を処置および予防するための方法。この組成物は、膜を通過して中耳内に医薬を送達するために、無傷の鼓膜の外部表面に接触するように耳に適用される。本発明の方法により送達される医薬は、中耳感染症およびその後遺症の処置および/または予防法において有用な、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗炎症剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、中耳炎(中耳感染症)を処置するための非侵襲的方法に関する。より詳細には、本発明は、中耳炎の処置において有用な医薬を、鼓膜(tympanic membrane)(鼓膜(eardrum))の反対側へのその送達によって中耳に投与するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
何百万人もの子供が、中耳炎、すなわち中耳の感染症に毎年冒されている。成人も中耳感染症に対して感受性であるが、小児は、その耳道が相対的に短く比較的容易に炎症によって閉鎖され得るため、特に危険性が高い。その後、流体は鼓膜(tympanic membrane)(鼓膜(eardrum))補足され得、これが激しい痛みを引き起こす可能性があり、さらに微生物の繁殖を促す環境をもたらし得る。
【0003】
鼓膜(tympanic membrane)は中耳内への薬物導入に対する手ごわい障壁であり、そのため中耳感染症を処置するための所定の抗生物質はほとんどの場合経口的に摂取される。しかしながら、様々な細菌およびウイルスが中耳感染症の発生に関与し得、何が特定の感染症の原因であるのか、または経口抗生物質による処置に対し感受性であるのかを区別する事は、多くの場合不可能である。さらに、中耳に経口的に投与された抗生物質の影響は、薬物の全身への分散により弱められ、これはまた、患者を、全身送達に関係する副作用(例えば女性患者における酵母感染)の危険にさらす。
【0004】
たび重なる感染症に罹患した小児は、鼓膜(tympanic membrane)上への流体圧を軽減するために、手術を必要とし得る。より重症の場合、排液管が鼓膜(tympanic membrane)の内側に配置され得る。この管それ自体は感染症の再発を防ぐことはないが(それどころか、これらは、さらなる病原体が中耳内に侵入するための導管としての役割を果たし得る)、圧力を軽減し、流体が鼓膜(eardrum)の背後に補足される程度を低下させる。この管はまた、例えば抗生物質滴剤の適用により抗生物質が中耳に直接導入される潜在的な導管を提供し、これらが排液管に流れ込むことを可能にする。しかしながら、この方法は侵襲的かつ疼痛性であり、抗生物質を中耳に導入するための、代わりとなる経路に対する強い必要性を示唆している。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、中耳感染症およびその後遺症の予防法または処置において有用な医薬を経膜的担体組成物の状態で投与するによって、中耳炎を処置および予防するための方法を提供する。本発明は、一つまたは複数の化学的浸透促進剤を含む担体の状態で、医薬が、無傷の鼓膜(tympanic membrane)、すなわち裂傷(例えば圧力下での破裂に由来)または刺し穴(例えば管または注射の挿入に由来)の無い鼓膜(tympanic membrane)の反対側に送達され得るという、驚くべき発見に由来する。
【0006】
本発明によると、医薬は、組成物が無傷の鼓膜(tympanic membrane)(鼓膜(eardrum))に接触するように耳に適用される、経膜的担体組成物の活性成分として供給される。経膜的担体組成物は、プロピレングリコールまたはプロピレングリコールと他の浸透促進剤との混合物などの化学的浸透促進剤をさらに含む。浸透促進剤は、経膜的担体組成物の50% v/v未満を構成し、最も好ましくは組成物の約2%から15%を構成する。
【0007】
本発明の、中耳内への送達のための好ましい医薬は、中耳炎(中耳感染症)およびその後遺症の処置または予防に有用である医薬である。本発明は、抗生物質または抗ウイルス剤(存在する感染の感染源に応じて)、抗真菌剤、および抗炎症剤または他の鎮痛剤などの医薬送達に特に良く適している。慢性的に再発する中耳感染症の予防のために、本発明の方法は、中耳に対する、活動性感染症から予防剤送達の間にさらに利用され得る。
【0008】
本発明の上記概要は限定するものではなく、かつ本発明の他の特徴および利点が、以下の好ましい態様の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【0009】
発明の詳細な説明
A. 中耳炎の経膜的処置における使用のための浸透促進剤
耳における化学的浸透促進剤の使用は、本発明者らの知識では、鼓膜(tympanic membrane)の反対側への薬物送達への適用に成功していない。しかしながら、そのような薬剤をビヒクルとして含有する耳用組成物は、中耳腔換気用チューブを介して中耳に送達されており、局所用製剤において典型的に利用されている濃度で耳毒性であることが認められている。
【0010】
例えば50% v/vまたはこれを上回る濃度で、中耳に適用されるプロピレングリコールは、真珠腫および中耳癒着などの、炎症に関連する中耳に対する損傷を生じる(例えば、Vassalli, et al., Am J Otolaryngol., 9(4):180-8, 1988を参照)。プロピレングリコールはまた、内耳聴器毒性に関係し、例えば内耳および蝸牛の正円窓膜に関係している(例えば、Marsh and Tom, Otolaryngol Head Neck Surg., 100(2):134-6, 1989を参照)。他の一般的な浸透促進溶剤もまた、一般的な中耳製剤中に存在する濃度で聴器毒性であることが実証されている(例えば、Jinn, et al., Laryngoscope, 111(12):2105-8, 2001 [in vitro toxicity of acetic acid on cochlear outer hair cells]参照)。
【0011】
本発明は、(1)浸透促進剤が、薬物の、鼓膜(tympanic membrane)障壁を通過し中耳に入る送達を容易にする、および(2)これらは、聴器毒性以下の濃度で使用する場合に送達を容易にするという本発明者らの発見に由来する。
【0012】
局所的使用に適する化学的浸透促進剤が当技術分野において公知であり、単独でまたは組み合わせて低分子量アルコール(例えばエタノール、オレイルアルコール)、アルキルメタノールスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、脂肪性アミン(例えばオレイルアミン)、脂肪酸(例えばオレイン酸、パルミトオレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸)、アゾン(azone)、およびプロピレングリコールを含む。現在、本発明における使用のための特に好ましい浸透促進剤は、単独の、またはオレイン酸またはエタノールなどの他の促進剤との比率が最大1:1であるプロピレングリコールである。
【0013】
聴器毒性が懸念される場合、用いられる浸透促進剤は経膜的組成物50% v/v未満である。化学的浸透促進剤に対する聴器毒性反応は用量依存的であり得、約10% v/vまたはこれ未満の濃度で低減または実質的に回避される。驚くべき事に、このような比較的低い濃度の浸透促進剤は、無傷の鼓膜(tympanic membrane)を通過し中耳に入る薬物送達に効果を及ぼすのに十分である。したがって、本発明の経膜的担体組成物は、たとえ正確な処方がこれに含有される賦形剤、保存剤、水、pH調整剤等の存在および量に応じて変動するとしても、好ましくは約25% v/vまたはこれ以下の任意の一つまたは複数の化学的浸透促進剤を含み、最も好ましくは、約2%から15% v/vの化学的浸透促進剤を含む。
【0014】
浸透促進剤および医薬に加え、本発明の経膜的組成物は、従来の薬学的賦形剤および保存剤を含有し得る。この点において、「保存剤」とは、調合物において微生物が実質的に成長し増幅することを防ぐ、経膜的担体組成物に加えられた成分を指す。好ましい保存剤は、水溶性であり例えば塩化ベンゼトニウムであるベンゼトニウム塩などの抗菌薬として機能することが可能な保存剤を含む。
【0015】
一般に、保存剤成分の量は約0.005〜2.0%の範囲である。緩衝剤または酸が、組成物のpHを好ましい範囲である3〜6、最も好ましくは4.5 pHに調整するために、必要に応じて加えられると考えられる。経膜的担体組成物中に2% w/w未満または1%未満または0%でも存在し得る他の保存剤および賦形剤は、アルカノラミンクロリド、サルファート、ホスファート、安息香酸の塩、酢酸、サリチル酸、シュウ酸 フタル酸、グルコン酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、トリエタノールアンモニウムクロリド、トリエタノールアンモニウムジヒドロゲンホスファート、トリエタノールアンモニウムサルファート、安息香酸ナトリウム、ポタッシウムベンゾアート、アンモニウムベンゾアート、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、フタル酸カリウム、フタル酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム、1-ナフタレンスルホン酸アンモニウム、2-ナフタレンスルホン酸カリウム、2-ナフタレンスルホン酸アンモニウム、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸トリエタノールアンモニウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸トリエタノールアンモニウム、アスコルビン酸カリウム、ソディウムマンデラート、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、およびクエン酸トリエタノールアンモニウムを含有する。キレート剤、例えば二ナトリウム(「EDTA」);エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、またはジエチルエネアミンペンタアセタートをさらに用いてもよい。
【0016】
この組成物はまた、抗炎症剤、鎮痛剤、およびステロイド化合物(例えばヒドロコルチゾン、デキサメタゾン)などの他の活性成分を含有してもよい。当業者は、中耳炎に関連する疼痛または炎症の処置において使用するための、0.01〜0.5%のデキサメタゾン(例えばデキサメタゾンアルコール(好ましい)、酢酸デキサメタゾン、またはリン酸デキサメタゾン)などの、好適な化合物およびその用量を同定することができると考えられる。
【0017】
組成物は好ましくは、それ自身の経膜的担体組成物によって担体として投与されるが、様々な態様においては、経膜的担体は担体ゲルまたは他の好適な担体の状態で投与され得る。緩衝剤または酸;例えば水酸化ナトリウムまたは塩化水素酸を、pH調整のために加えてもよい。
【0018】
B. 中耳炎の処置および予防法において有用な医薬
「医薬」は、中耳感染症およびその後遺症、ならびに関連する疼痛および炎症の処置および/または予防において有用な、生物学的に活性な任意の化合物を意味する。この点で、したがって、特に好ましい医薬は、哺乳動物、特にヒトの中耳感染症の処置または予防に有用である抗生物質である。感染症の重症度およびその原因に応じて、このような抗生物質は、非限定的にアモキシシリン(および他のペニシリン)、シプロフロキサシン(およびオフロキサシンなど他のキノロン系抗生物質)、クラブラン酸(および他のベータラクタマーゼ阻害剤)、セファクロール(およびセフィキシムなど他のセファロスポリン)、アジスロマイシン(およびクラリスロマイシンなど他のマクロライド系抗生物質)、およびスルフィソキサゾール(およびスルファメトキサゾールなど他のサルファ薬物)を含む。本発明において有用である抗生物質の中で、シプロフロキサシンが現在好ましい。
【0019】
スルフィソキサゾールおよびアモキシシリンは、中耳感染症再発の予防法における使用が認められた主要な抗生物質である。アモキシシリンおよびシプロフロキサシンなどの広い範囲の抗生物質が、特に抗生物質耐性感染症が疑われるヒトの中耳感染症処置における使用に特に好ましい。
【0020】
同時投与または抗生物質療法と独立した使用に有用である抗炎症化合物は、経口投与において時に効果が低いまたは十分に耐性が持たれている化合物;例えば、ナプロキセン、ケトプロフェン、セレコキシブ、およびインドメタシンなどの、非ステロイド性抗炎症性化合物を含む。アシクロビルなどの抗ウイルス性化合物は、臨床上指示される場合、抗生物質化合物の代わりに、またはこれの補助剤として投与してもよく、抗真菌化合物としてでもよい。中耳感染症およびその後遺症の処置および予防における使用のための他の医薬は、鼓膜(tympanic membrane)に対する本発明の経膜的担体組成物の適用により投与してもよい。
【0021】
いくつかの態様において、本発明の経膜的担体組成物は複数の医薬を含有する。例えば、CLAMOXYL(登録商標)およびAUGMENTIN(登録商標)は共に、中耳炎処置のために一般的に処方される、経口投与用の併用薬剤組成物である。各組成物は、二つの活性抗生物質成分であるアモキシシリンおよびクラブラン酸を含有する。このような複合的な薬剤を提供する経膜的担体組成物は、適切な適応症における使用において特に好ましい。
【0022】
全体として、医薬は、示された状態を処置するために望ましいいかなる濃度でも存在する。一般に0.1〜10% w/wの濃度が有用であり、最も有用である濃度は、0.2〜0.5% w/wの範囲内にあり、すなわち0.3%〜0.4% w/wが典型的な選択であると考えられる。
【0023】
C. 本発明の経膜的担体を使用する、中耳炎処置のための方法
たとえ本発明がこのような送達のための作用機序についてのいかなる理論によっても制限されないとしても、本発明の経膜的組成物中に存在する化学的浸透促進剤が、薬物が鼓膜(tympanic membrane)に入り通過することを可能にするのに十分な程度まで透過を刺激すると現在信じられている。
【0024】
このため、本発明の経膜的組成物は、経膜的投与によって中耳内に送達される。「経膜的投与」は、医薬を含有する経膜的担体組成物を鼓膜(tympanic membrane)の外耳側へ適用し、中耳への医薬の送達をもたらす事を意味する。このようにして、本発明は、罹患した個体の鼓膜(tympanic membrane)に対する医薬の経膜的投与による、中耳感染症およびその後遺症の予防および/または処置のための方法を提供する。
【0025】
経膜的投与は、例えば、薬学的組成物を鼓膜(tympanic membrane)に適用するための任意の医学的に許容される方法を介した、鼓膜(tympanic membrane)に対する本発明の経膜的担体組成物の適用を介して達成され;例えば、耳道内への針の無いシリンジまたは点滴器の挿入によって担体組成物を膜に適用することにより達成される。無傷の鼓膜(tympanic membrane)を刺し通すまたは穴をあけることを回避するための注意が払われると考えられる。
【0026】
投与は、所与の抗生物質化合物および/または他の医薬の治療的に有効な用量レベルを達成するために必要なだけ反復される。疼痛は、本発明の経膜的担体組成物を含有する鎮痛剤および/または抗炎症剤の、同一の一般的な様式による投与により処置され得る。
【0027】
インサイチューでの鼓膜排液管を介して抗生物質を中耳に導入するために用いられる現在のプロトコールに基づいて、下記実施例1に記載される例示的な調合物(0.3% w/wの抗生物質を有する)の好適な投薬計画は、12歳未満の子供に対しては5滴/1日2回、および12歳またはそれ以上の子供に対しては10滴/1日2回であると考えられる。
【0028】
中耳感染症の再発に対する予防的処置は、予防的に効果的な抗生物質または他の医薬を含有する本発明の経膜的担体組成物を用いる同一の様式で提供され得る。
【0029】
当業者は、特定の感染症を処置するために従うことが適切な投薬計画の選択に慣れており、容易に可能である。選択される投薬計画は、本発明により提供される特定の担体および医薬の送達および使用のための確立された臨床的プロトコールに合致していると考えられる。
【0030】
本発明は十分に説明されており、その実施は以下の実施例により例示される。本発明はしかしながら、実施例により限定されるべきではなく、代わりに添付の特許請求の範囲内に規定されるべきである。
【0031】
実施例1
例示的な調合物
この節は、シプロフロキサシン、およびプロピレングリコールとエチルアルコールとの混合物を以下のように含有する本発明の経膜的担体組成物の例を提供する(この組成物は滅菌され、使用するまで薬学的に許容される容器内に置かれる)。

【0032】
実施例2
中耳炎の動物(チンチラ)モデル
チンチラ ランジャー(Chinchilla langer)は、ヒトにおける中耳炎の処置効果を研究するための動物種として理想的に適している。チンチラは小型で、ヒトに極めて類似した聴覚能力を有し、ヒトの蝸牛に類似した膜様構造を有する蝸牛を有し、長期の研究においても老人性難聴が現れず、モルモットおよびウサギにおいて一般的な天然の中耳感染症に対する感受性を欠く。例えば、この動物モデルの当技術分野における性質および承認の例示のために、その内容が参照により本明細書に含まれる、Hajek DM, Yuan Z, Quartey MK, Giebink GS., Otitis Media: The Chinchilla Model, in: Zak O, Sande M, editors, Handbook of Animal Models of Infection, San Diego, CA: Academic Press (1999), 389-403ページを参照されたい。
【0033】
動物モデルの確立および評価のために、各チンチラにインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を、体積0.2 mL中100 cfuの濃度でトランスブラー(transbullar)注射により、各耳の中耳に直接接種した。研究を行う前に、各チンチラにオトスコープ耳試験を行った。本発明の組成物または対照の経口アモキシシリンの投薬は、細菌接種の約48時間後に開始した。研究継続のための痛覚消失のために、全ての動物にブプレノルフィン0.05 mg/kgを1日2回皮下的に投与した。
【0034】
投薬期間の終わり(細菌接種の8日後)に各動物を安楽死させ、これらの耳道(ear canal)を生理食塩水で洗浄して試験した。特に、各チンチラの中耳からの試料を回収した。実験室法当たり一つの試料を一晩培養した。試料のプレーティングの約24時間後、これらを計数しコロニー形成単位(cfu)を記録した。
【0035】
実施例3
チンチラモデルにおける中耳炎処置
実施例1に記載される調合物を、3匹のチンチラに対する、約8時間あいだをあけた1日2回、6日間の胃管栄養法により経口的に投与した。2、4、または6滴の調合物を、それぞれ3匹のチンチラの二つの群に、これらの動物に対する最大の実行可能な用量として投与した。これらの動物を試験し、実施例2に説明するように、それぞれの中耳から試料を採取した。以下の結果が得られた。

【0036】
これらの結果は、関連性のある動物モデルの中耳感染症処置における、本発明の効果を実証する。
【0037】
本明細書において例示的に説明される本発明は、本明細書において具体的に開示されていない一つもしくは複数の任意の要素または一つまたは複数の限定の存在無く実施され得る。用いられてきた用語および表現は、限定ではなく説明のための用語として使用されており、かつ、このような用語および表現の使用において、示され記載された特徴のいかなる等価物またはその一部も排除する意図は無いが、請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、好ましい態様および任意の特徴によって本発明が具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の修正および改変が当業者によって採用され得ること、ならびにそのような修正および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0038】
本明細書において言及または引用される、論文、特許、および特許出願、ならびに他の全ての文献および電子的に入手可能な情報の内容は全て、それぞれの個々の出版物が具体的かつ個々に参照により組み入れられるように示されるのと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。出願人らは、本出願を、任意のこのような論文、特許、特許出願、または他の文献に由来する任意のおよび全ての材料および情報に物理的に組み入れる権利を保有する。
【0039】
本明細書において例示的に説明される本発明は、本明細書において具体的に開示されていない一つもしくは複数の任意の要素または一つまたは複数の限定の存在無く適切に実施され得る。例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する」等は、拡張的におよび限定されることなく解釈されるとする。さらに、本明細書において用いられる用語および表現は、限定ではなく説明のための用語として使用されており、かつ、このような用語および表現の使用において、示され記載された特徴のいかなる等価物またはその一部も排除する意図は無いが、請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、好ましい態様および任意の特徴によって本発明が具体的に開示されているとしても、本明細書において開示される、具体化される本発明の修正および改変が当業者によって採用され得ること、ならびにそのような修正および改変は本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0040】
本発明は、本明細書において広く包括的に説明されている。包括的な開示内にある、より狭い種および亜属の分類それぞれもまた、本発明の一部を形成する。これは、引用される物質が具体的に記載されているかいないかに関わらず、属から任意の対象を取り除く条件または負の限定を伴う本発明の包括的な説明を含む。その他の態様は添付の特許請求の範囲に記載される。
【0041】
さらに、本発明の特徴または局面がマーカッシュグループの観点で説明される場合、それにより、当業者は、本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点で説明されることを認識すると考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、医薬の経膜的投与によって中耳感染症およびその後遺症を処置または予防するための方法:
無傷の鼓膜(tympanic membrane)の外部表面に、中耳感染症およびその後遺症の処置または予防に有用な医薬を含む経膜的担体組成物を適用する段階。
【請求項2】
経膜的担体が化学的浸透促進剤である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化学的浸透促進剤が、単独のまたは組み合わされた低分子量アルコール、アルキルメタノールスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、脂肪性アミン、脂肪酸、アゾン(azone)、およびプロピレングリコールからなる化学物質の群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
化学的浸透促進剤がプロピレングリコールである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
化学的浸透促進剤がプロピレングリコールおよび少なくとも一つの他の化学的浸透促進剤である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
医薬が抗生物質である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
抗生物質が、キノロン系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、サルファ系抗生物質、およびベータラクタマーゼ阻害剤からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗生物質がシプロフロキサシンを含み、かつ中耳感染症を処置または予防するために投与される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗生物質がオフロキサシンを含み、かつ中耳感染症を処置または予防するために投与される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
抗生物質がスルフィソキサゾールを含み、かつ中耳感染症を処置または予防するために投与される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
抗生物質がアモキシシリンを含み、かつ中耳感染症を処置または予防するために投与される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
抗生物質が組成物の0.1%から10% w/wの濃度で提供される、請求項7記載の方法。
【請求項13】
抗生物質が組成物の0.3% w/wの濃度で提供される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
化学的浸透促進剤の合計濃度が約1.0から25% v/vで提供される、請求項2記載の方法。
【請求項15】
非イオン性ポリマー界面活性剤が約2%から約15% v/vの濃度で提供される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
医薬が抗ウイルス剤である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
抗ウイルス剤がアシクロビルである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
経膜的担体組成物が、中耳感染症の急性期の間に鼓膜(tympanic membrane)に適用される、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2009−509955(P2009−509955A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532239(P2008−532239)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/033346
【国際公開番号】WO2007/037874
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508089772)ピードモント ファーマシューティカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】