説明

化粧用積層構造体

本発明は、化粧用又は皮膚化粧用積層構造体、該積層構造体を作製する方法、積層構造体を皮膚に接着して皮膚の欠陥を隠蔽する方法に関する。本発明は、皮膚又は粘膜に貼る基材であって、該基材を貼る皮膚又は粘膜の変形に追随できるように可撓性材料製とする基材と、着色材料をその上に担持する画像形成層とを備える化粧用積層構造体を提供する。また、本発明は、着色材料をその上に担持する画像形成層と、水溶性の第1接着剤層と、透水性保護層とを備える化粧用積層構造体も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用積層構造体、該積層構造体を作製する方法、積層構造体を皮膚に接着して皮膚の欠陥を隠蔽する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美的又は医療目的で皮膚の欠陥を隠蔽する必要性がある。欠陥を隠蔽するのに欠陥の上に絆創膏を貼るものを想像するかも知れないが、そうした目的専用の又はそうした目的に適した既知の製品や方法は存在しない。問題は、絆創膏は極めて目立ち、ユーザが標準的に要求する外観ではない点である。
【0003】
米国特許第5,942,065号では、皮膚に接着するデカールについて開示している。同特許によると、皮膚接着デカールを、多孔性転写紙によって担持する水溶性剥離層を被覆する耐水性材料製の極めて薄い、可撓性で、拡張可能で均一な層に多色フレキソ印刷したデザインと、該デザインを皮膚に対して保持し、破壊から保護するよう適合させた、該デザインを被覆する均一に堆積した接着剤とを組合せたものとしている。上述したデカールの問題点は、皮膚の欠陥を隠蔽するのに使用した場合、デカールが非常に目立ち、デカールの隠蔽効果が十分でなく、皮膚が繰返し動いた後に皺が蓄積する傾向がある点である。
【0004】
米国特許第3,898,357号は、指の爪を装飾するデカールについて開示している。同特許によると、該デカールは、キャリアストリップと、一連に少しずつ変化させて5つ広げた、略卵型のデカールとを備え、該デカールは基本的には薄い非自立型の可撓性透明フィルムと、該透明フィルムに一体的に形成した中央のデザインとから成り、各デカールを、指又は足指の爪の表面を略被覆するように適合させ、上記デカールを上記キャリアストリップ上に存在させるが、各デカール裏面の水活性化接着手段により、該キャリア上にデカールを一時的に保持し、該手段を、キャリアから離れて、水活性化接着剤によって爪に粘着転写するように適合させ、耐水系溶媒セルロース系接着剤透明層を各デカール上に存在させる。このデカールの問題点は、皮膚の欠陥を隠蔽するのに使用した場合、デカールが非常に目立ち、デカールの隠蔽効果が十分ではなく、皮膚の変形にスムーズに追随せず、その結果、皮膚が繰返し動いた後には皺が蓄積される傾向がある点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,942,065号
【特許文献2】米国特許第3,898,357号
【発明の概要】
【0006】
現在利用可能な発明品や製品には、皮膚の欠陥を隠蔽する要求を満たしながら、美的及び医学的観点から求められる他の要求も満たすものがないという事実を考慮して、本発明の発明者らは、これらの課題を解決する、積層構造体、該積層構造体を作製する方法、皮膚の欠陥を隠蔽する方法を発明した。
【0007】
本発明の一態様によると、発明者らは、化粧用又は皮膚化粧用積層構造体を提案するが、該構造体は、皮膚又は粘膜に貼る基材であって、該基材を貼る皮膚又は粘膜の変形に追随できるように可撓性材料製とする基材と、着色材料をその上で担持する画像形成層とを備える。
【0008】
本明細書では、特に記載しない限り、用語「化粧用」は、所謂化粧、皮膚科学又は皮膚化粧目的の他、審美目的、外科目的の用途、及び積層構造体を皮膚又は爪の上に接着又は固定する術後治療の用途を含む。用語「皮膚化粧(dermo cosmetic)」は、化粧又は皮膚科学のどちらに属してもよい領域、或いは化粧と皮膚科学との間の境界領域を含むのに使用する。本明細書では、特に記載しない限り或いは粘膜と爪を除外することが文脈から明白でない限り、用語「皮膚」は、皮膚、粘膜、爪を意味するのに使用する。
【0009】
皮膚に貼る基材に使用する可撓性材料は、好適には有機樹脂及びエラストマー、例えばポリウレタン、ポリオレフィン、ポリシリコーン、又はこれらの単量体から成る共重合体、又はポリアクリレート、ポリイソプレン、ポリクロロプレンを備え、より好適にはポリウレタン樹脂又は合成ゴムを備える。皮膚に貼る基材により、可撓性を提供する一方で、積層構造体を貼る皮膚が、例えば、顔の表情や腕の曲げ伸ばしによって変形した場合に、皺が形成されるのを防ぐことができる。上述した可撓性材料の可撓性を、可塑剤、スティフナー、ハードナー、硬化剤の1つ又は複数を添加して、所望通りに調節してもよい。基材の厚さを、約2〜約30ミクロン、好適には約2〜約10ミクロンとしてもよい。基材を、皮膚に対向する側に付けた糊、接着剤、粘着剤又は他の接着材料等様々な手段で、皮膚に貼ってもよい。基材に接着剤を使用する場合、好適には、厚さを30ミクロン未満とする。
【0010】
画像形成層、及び色材を画像形成層上に敷設する際に使用する方法と適合する限り、任意の着色材料を使用してもよい。例えば、有機染料、有機顔料若しくは着色材料、レーキ染料又はレーキ顔料、無機顔料、カーボンブラック、天然色素、パール顔料の1つ又は複数からできた、或いはこれらの1つ又は複数を含有する色材を液剤又は乳剤の形で含有するインクを、用いてもよい。しかしながら、着色材料は上述した例に限定しない。
【0011】
画像形成層は、その上に敷設する着色材料を支持する。好適には、画像形成層は、スチレン樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を備える、或いはから構成し、任意には、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、又はオレフィン樹脂を更に備える。画像形成層は、その材料が着色材料を担持するのに適し、且つ化粧用に適する限り、任意の他の材料を含有してもよい、或いは任意の他の材料製としてもよい。画像形成層は、フッ素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、PMMA、タルク、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、及び澱粉の粒子から選択したフィラー、及び化粧目的に適合する他のフィラーを更に備えてもよい。好適には、画像形成層は、印刷工程に耐え、所定の位置で着色材料を保持するのに必要な、強度や硬度だけでなく、耐熱性も有する。
【0012】
画像形成層の厚さを、好適には、約0.1〜約5.0ミクロン、より好適には約0.5〜約3.0ミクロンとする。この厚さは、製造中に層及び積層構造体を扱うのに、また所望の色やパターンを明確に再現するのに好ましい。画像形成層は、更なる層として、画像形成層の耐性や硬度を向上させるために、熱可塑性樹脂又はUV硬化性樹脂を備えた、或いはから構成した硬化保護層を、有してもよい。画像形成層とその任意の保護層は、所望に応じて、被膜形成添加剤、層安定剤、レベリング剤、又は消泡剤の中1つ又は複数を含有してもよい。
【0013】
上述した本発明の態様によると、皮膚の欠陥を効果的に隠し、積層構造体は周囲の皮膚と同様に見え、その結果積層構造体は実際に視認できなくなる。皮膚の欠陥を、皮膚の視認できる瘢痕、できもの、そばかす(freckle)、そばかす(ephilide)、しみ、斑、打撲欠陥、痣又は皮膚の視認可能な変色としてもよい。本発明による積層構造体は、上述した実施形態に限定しない実施形態では、化粧、皮膚科学、皮膚化粧又は医療目的に効果的な、水和剤、抗炎症剤、治癒剤等の有効成分を1つ又は複数含有する層を1層又は複数層含有して、それにより該有効成分を、積層構造体から皮膚に放出してもよい。
【0014】
別の態様では、本発明は、化粧用又は皮膚化粧用積層構造体を提供し、該積層構造体は、
着色材料をその上に担持する画像形成層と、
上記画像形成層の、積層構造体の皮膚又は粘膜と接触させる側と反対の側にある第1接着剤層であって、水溶性とする上記第1接着剤層と、
上記第1接着剤層の、上記画像形成層と反対の側にある透水性保護層と、を備える。
【0015】
水溶性の第1接着剤層は、水に濡れると、結合力が低下し、透水保護層を容易にそこから除去できるようになる。好適には、水溶性の第1接着剤層には、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、ポリビニルメチルエーテル、重合体を含むポリ(メタ)アクリル酸、エーテル化澱粉、澱粉から選択した1つ又は複数の材料を含有する、或いはから構成する。第1接着剤層に、PEG、高分子吸収剤、又は多孔質粒子を含有して、保水性を向上させてもよい。水溶性の第1接着剤層の厚さを、好適には、約0.5ミクロン〜約10ミクロンとし、より好適には約1ミクロン〜約5ミクロンとする。第1接着剤層の一部を、該層を濡らし、そこから透水保護層を除去した後でも、下層上に残存させてもよい。
【0016】
透水保護層は下にある層を保護し、第1接着剤層を濡らして結合力を低下させると、容易に除去できる。透水保護層を、好適には、水に溶解せず、水又は水分に対して透過性の材料製とし、それにより水や水分が第1接着剤層に到達できるようにする。透水保護層は、紙、樹脂被覆紙又は有孔又は多孔質樹脂材料の層から作製、或いは該層を含有してもよい。
【0017】
また、本発明は、化粧用又は皮膚化粧用積層構造体を提供し、該積層構造体は、
皮膚又は粘膜に貼る基材であって、該基材を貼る皮膚又は粘膜の変形に追随できるように可撓性材料製とする基材と、
着色材料をその上に担持する画像形成層と、
上記画像形成層の、上記基材と反対の側にある第1接着剤層(32)であって、水溶性とする上記第1接着剤層と、
上記第1接着剤層の、上記画像形成層と反対の側にある透水性保護層と、を備える。
【0018】
化粧用積層構造体は、積層構造体の、透水保護層を貼らない側に固定する剥離性保護層と、積層構造体の使用中に皮膚又は粘膜と接触させるように、基材と剥離性保護層との間に敷設する第2接着剤層とを更に備えてもよい。
【0019】
積層構造体は、着色材料を担持する側と反対側に、画像形成層に貼るバックアップ層を、更に備えてもよい。バックアップ層を、画像形成層上に色材を敷設するのに用いる方法に適合する、不透明、半透明、又は透明な材料製としてもよい。そうした材料の例としては、紙及び合成樹脂材料が挙げられる。バックアップ層により、着色材料を画像形成層上に敷設する工程中や、該工程後にも、画像形成層に強度や剛性を提供してもよい。
【0020】
本発明による積層構造体は、画像形成層の着色材料を担持する側に固定するホットメルト接着剤層を更に備えてもよい。ホットメルト接着剤層を、画像形成層に固定して、画像形成層上の着色材料を被覆する。ホットメルト材料を、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等としてもよい。好適には、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、ウレタン樹脂又はポリエステル樹脂を、着色材料又は画像形成層により良好に適合させるのに使用する。ホットメルト層は、好適には、透水保護層と共に第1接着剤層を除去した後に、着色材料及び画像形成層上に残存させてもよく、着色材料を保護する機能を果たしてもよい。
【0021】
ホットメルト接着剤層は、フィラーとしての粒子を備え、該粒子は、フッ素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、タルク、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、及び澱粉から構成して、又はこれらを含有して、製造工程中、層について耐ブロッキング性や耐タック性を向上させてもよい。ホットメルト接着剤層の厚さを、好適には、約0.1ミクロン〜約10ミクロン、より好適には、約1ミクロン〜約5ミクロンとする。
【0022】
本発明による積層構造体は、画像形成層と皮膚に貼る基材との間に第3接着剤層を更に備えてもよい。水溶性の第1接着剤層は、第3接着剤層と比べて、第1接着剤層を湿らせると、分離するのに小さな力を必要とするため、第3接着剤層を分離させずに、透水保護層を容易に除去できる。
【0023】
また、本発明の目的は、化粧用積層構造体を作製する方法を提供することであり、該積層構造体は、基材と、第3接着剤層と、着色材料をその上に担持する画像形成層と、ホットメルト接着剤層と、水溶性の第1接着剤層と、透水保護層を備え、該方法は、
第3接着剤層を介して支持層で支持する画像形成層上に、着色材料を固定するステップと、
水溶性の第1接着剤層及びホットメルト接着剤層をその上にこの順序で固定して、透水保護層を調製するステップと、
ホットメルト接着剤層を第3接着剤層に接着するステップと、
支持層を除去するステップと、
剥離性保護層と第2接着剤層を第3接着剤層に接着するステップと、を備える。
【0024】
熱転写、インクジェット印刷、又は任意の他の方法によって、着色材料を画像形成層上に固定してもよい。
【0025】
また、本発明は、化粧用積層構造体を調製する方法も提供し、該積層構造体は、皮膚に貼る基材であって、該基材を貼る皮膚の変形に追随できるように可撓性材料製とする基材と、着色材料をその上に担持する画像形成層と、を備え、該方法は、
隠蔽すべき欠陥があり、積層構造体を貼る皮膚の、カラー画像データを取得するステップと、
カラー画像から欠陥を除去して、カラー画像データを修整するステップと、
皮膚の修整カラー画像を、画像形成層上に着色材料で印刷するステップと、を備える。
【0026】
皮膚のカラー画像データを、デジタルカメラを使用して取得してもよい。好適には、隠蔽すべき欠陥を含む領域のカラー画像データを、取得する。カラー画像から欠陥を除去するのに、該欠陥に対応するデータを削除し、当該データを欠陥付近領域のデータで置き換えて、これを行ってもよい。
【0027】
上述した方法は、
皮膚に関する修整カラー画像を設定するステップと、
修整カラー画像と、該修整カラー画像付近の皮膚のカラー画像データを取得するステップと、
修整カラー画像データを、変更したカラー画像が該皮膚と全く相違無く見えるように、変更するステップと、
皮膚の変更したカラー画像を、画像形成層上に着色材料で印刷するステップと、を備える。
【0028】
修整カラー画像を皮膚に割り付ける際に、カラー画像を、画像データをキャプチャするために皮膚に貼る、又は単に皮膚に合わせてもよい。修整カラー画像データを、修整カラー画像と、皮膚の欠陥以外の領域の色との相違を解消するように変更してもよい。この変更を、修整カラー画像データの色空間に関する平均、及び変更後の修整カラー画像データが、皮膚の欠陥以外の領域の画像データに対応するように、実行してもよい。色空間を、一般的な色彩モデルであるRGBコード化等のCIE、マンセル表色系、又は自然表色系の1つとしてもよい。全く相違無いとは、実際の化粧又は医療目的に対して、相違が実質的に無い、又は極僅か、或いは若干であることを意味するものとする。
【0029】
また、本発明は、皮膚又は粘膜の欠陥を隠蔽する方法も提供し、該方法は、
皮膚又は粘膜の隠蔽すべき欠陥がある領域のカラー画像データを取得するステップと、
カラー画像から欠陥を除去して、カラー画像データを修整するステップと、
着色材料で、皮膚又は粘膜の修整カラー画像を、上述した何れか1つの積層構造体の画像形成層に印刷し、それにより上述した化粧用又は皮膚化粧用積層構造体の何れかを作製するステップと、
少なくとも隠蔽すべき欠陥を被覆するために、印刷した積層構造体を皮膚に貼るステップと、を備える。
【0030】
上述した方法は、
修整カラー画像と、該修整カラー画像付近の皮膚のカラー画像データを取得するステップと、
修整カラー画像データを、変更したカラー画像が皮膚と全く相違無く見えるように、変更するステップと、
皮膚の変更したカラー画像を、画像形成層上に着色材料で印刷するステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態による積層構造体の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態による積層構造体の製造工程(前半)を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態による積層構造体の製造工程(後半)を示す図である。
【図4】本発明による積層構造体と従来技術による積層構造体との比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態について以下で説明する。実施形態及びその説明は、単に本発明を理解する助けとするために提供するのであって、以下で説明する実施形態にいかようにも限定するものと解釈されるべきではない点に、注意されたい。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態による積層構造体を製造する工程について、示しており、工程はAからCへと進行する。製造ステップAでは、一方で、第2剥離性保護層10、(追加してもよい第3接着剤層12)、第2接着剤層14、バックアップ層16、画像形成層18、着色材料20(着色材料層とも呼ばれる)の5(又は4)層の構造体を調製する。着色材料層は、画像形成層18の全表面を被覆しなくてもよい。画像形成層を、着色材料及び、溶媒を使用する場合は溶媒と適合するように選択した材料から作製する。一実施例として、スチレン樹脂とウレタン樹脂を含有する樹脂の層が挙げられる。バックアップ層16の材料と厚さは、積層構造体が、形状を維持するのに適切な強度と剛性を備えるように、選択する。他方では、3層を有する構造体で、それらの層を、透水保護層34、水溶性の第1接着剤層32、ホットメルト接着剤層30として、調製する。
【0034】
上述した5層を有する構造体と3層を有する構造体を、ホットメルト接着剤層30を画像形成層18に融合させて、着色材料20を被覆するように両構造体を加熱して、纏めて融合させる。
【0035】
積層構造体を使用する際には、第2剥離性保護層10を、上述したように、第2接着剤層14を露出させるように、8層を有する構造体から除去し、次に7層になった構造体を、第2接着剤層14を皮膚に接触させて、皮膚に貼る。積層構造体を次に、第2接着剤層14によって皮膚に貼る。
【0036】
透水保護層34を濡らして、水又は水分が透水保護層34を通り、水溶性の第1接着剤層32に到達して、第1接着剤層32を湿潤させるようにする。
【0037】
透水保護層34を積層構造体から除去して、着色材料20を外側から視認できるようにする。着色材料の量及びバランスは、積層構造体により欠陥を隠し、且つ積層構造体周りの皮膚と同様に見えるように、決定する。
【0038】
図2及び図3では、本発明の第2実施形態による化粧用積層構造体の製造ステップA〜Fを示している。一方では、製造工程Aでは、第2剥離性保護層10、第3接着剤層12、バックアップ層16、画像形成層18、着色材料20(着色材料層とも呼ばれる)の5層(又は4層)を有する構造体を、調製する。他方では、3層を有する構造体で、それら層を、透水保護層34、水溶性の第1接着剤層32、ホットメルト接着剤層30として、調製する。
【0039】
上述した5層を有する構造体と3層を有する構造体を、ホットメルト接着剤層30を画像形成層18と融合させて、着色材料20を被覆するように、加熱によって纏めて融合させる。
【0040】
皮膚に貼る基材42、第2接着剤層14、保護膜40から成る3層構造体を、調製する。
【0041】
第2剥離性保護層10を上述した8層を有する構造体から除去して、7層構造体(B)とし、別の剥離性保護層(図2で図示せず)を、上述した3層を有する構造体(C)から除去し、7層構造体と3層構造体を、第3接着剤層12を皮膚に貼る基材42上に固定するように、貼る。
【0042】
積層構造体を使用する際に、保護膜40を、第2接着剤層14を露出させるように、上述した通り、着色材料を含む10層(又は、着色材料を層と見なさない場合は、9層)を有する構造体から除去し、次に9(又は8)層を有する構造体を、皮膚に貼る。この積層構造体を、次に、第2接着剤層14及び皮膚に貼る基材42(E)を介して、皮膚に貼る。
【0043】
透水保護層34を濡らして、水又は水分が透水保護層34を通り、水溶性の第1接着剤層32に到達して、水溶性の第1接着剤層32を湿潤させるようにする。
【0044】
透水保護層34を積層構造体から除去して、着色材料20を外側から視認できるようにする。少なくとも第1接着剤層32の一部が、透水保護層34を除去後にホットメルト接着剤層30上に残存する、又は残存しないようにしてもよい。着色材料の量及びバランスは、積層構造体により欠陥を隠蔽し、且つ積層構造体周りの皮膚と同様に見えるように、決定する。
【0045】
図4は、本発明の実施形態による積層構造体(左側)と従来構造(右側)との比較を示す写真である。これらの写真は、積層構造体を前腕の皮膚表面に貼り、数回腕を曲げ伸ばしした後数時間して、撮影したものである。右側に示した従来の積層構造体では、水平方向に亀裂が入り、垂直方向に皺が入っており、その結果、積層構造体の質感が低下しており、正常な皮膚から積層構造体が目立ってしまっている。対照的に、本発明による積層構造体では、積層構造体には、亀裂も皺も無く、正常な皮膚と同様に見える。つまり、写真では、本積層構造体が理想的に、皮膚の質感を提供し、皮膚の色を再現しているのに対し、それが従来の構造体では不可能であったことを、示している。
【符号の説明】
【0046】
10 第2剥離性保護層
12 第3接着剤層
14 第2接着剤層
16 バックアップ層
18 画像形成層
20 着色材料
30 ホットメルト接着剤層
32 第1接着剤層
34 透水保護層
40 保護膜
42 基材
100 皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚又は粘膜に貼る基材(42)であって、前記基材を貼る皮膚又は粘膜の変形に追随できるように可撓性材料製とする基材(42)と、
着色材料(20)をその上に担持する画像形成層(18)と、
を備える化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項2】
着色材料(20)をその上に担持する画像形成層(18)と、
前記画像形成層の、積層構造体の皮膚又は粘膜と接触させる側と反対の側にある第1接着剤層(32)であって、水溶性である前記第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の、前記画像形成層と反対の側にある透水性保護層と、
を備える化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項3】
皮膚又は粘膜に貼る基材であって、前記基材を貼る皮膚又は粘膜の変形に追随できるように可撓性材料製とする基材と、
着色材料をその上に担持する画像形成層と、
前記画像形成層の、前記基材と反対の側にある第1接着剤層(32)であって、水溶性である前記第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の、前記画像形成層と反対の側にある透水性保護層と、
を備える化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項4】
剥離性保護層と、
基材と剥離性保護層との間にあり、積層構造体を使用中に皮膚又は粘膜と接触させる第2接着剤層(14)と、
を更に備える、請求項3に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項5】
前記画像形成層の、着色材料を担持する側と反対側に貼るバックアップ層を更に備える、請求項4に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項6】
画像形成層の、着色材料を担持する側に固定するホットメルト接着剤層を更に備える、請求項1乃至5の1項に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項7】
画像形成層と皮膚に貼る基材との間の第3接着剤層を更に備える、請求項6に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項8】
第1接着剤層が、第3接着剤層と比べて、分離するのに小さな力を必要とする、請求項7に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項9】
画像形成層は、スチレン樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含有し、任意には、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はオレフィン樹脂を更に含む、請求項1乃至8の1項に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項10】
フッ素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、PMMA、タルク、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、及び澱粉の粒子から選択されるフィラーを更に含む、請求項9に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項11】
画像形成層の厚さを、約0.1〜約5.0ミクロン、好適には約1.0〜約3.0ミクロンとする、請求項1乃至10の1項に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項12】
可撓性材料は、有機樹脂及びエラストマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリシリコーン、又はこれらの単量体から成る共重合体、又はポリアクリレート、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、より好適にはポリウレタン樹脂又は合成ゴムを含み、或いはこれから作製し、任意には可塑剤、スティフナー、ハードナー、硬化剤の1つ又は複数を含有する、請求項1又は3に従属する場合における請求項1及び3乃至10の1項に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項13】
水溶性の第1接着剤層が、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、ポリビニルメチルエーテル、重合体を含有するポリ(メタ)アクリル酸、エーテル化澱粉、澱粉から成る群から選択した1物質を含有する、請求項2又は3に従属する場合における請求項2乃至12の1項に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項14】
透水性保護層を紙又は樹脂被覆紙から作製する、請求項2又は3に従属する場合における請求項2乃至12の1項に記載の化粧用又は皮膚化粧用積層構造体。
【請求項15】
皮膚又は粘膜の欠陥を隠蔽する方法であって、
隠蔽すべき欠陥がある皮膚又は粘膜の領域のカラー画像データを取得するステップと、
カラー画像から欠陥を除去して、カラー画像データを修整するステップと、
着色材料で、皮膚又は粘膜の修整カラー画像を、請求項1乃至14の何れか1項に記載の積層構造体の画像形成層に、印刷するステップと、
少なくとも隠蔽すべき欠陥を被覆するために、印刷した積層構造体を皮膚に貼るステップと、
を備える方法。
【請求項16】
修整カラー画像と、該修整カラー画像付近の皮膚のカラー画像データを取得するステップと、
変更したカラー画像が皮膚と全く相違無く見えるように、修整カラー画像を変更するステップと、
皮膚の変更したカラー画像を着色材料で画像形成層に印刷するステップと
を更に備える、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−516284(P2012−516284A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531292(P2011−531292)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/JP2009/000373
【国際公開番号】WO2010/086901
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】