説明

医用画像データセットの取得、解析および表示方法

【課題】比較調査の信頼性のある評価を可能にする取得、解析および表示方法を提供する。
【解決手段】検査の範囲内で作成すべき少なくとも1つの医用画像データセットの取得、解析および表示方法において、
画像化医療検査装置により検査対象の検査領域の画像データセットを取得するステップ、
データ処理装置内に格納され、かつ取得された画像データセットの画像表示の際に守るべき方位に関連した少なくとも1つの表示基準を呼出すステップ、
データ処理装置により表示基準に関して画像データセットをチェックするステップ、
チェック結果に依存して表示基準にしたがって画像データセットの少なくとも一部を調整および表示するステップ
が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査の範囲内で作成すべき少なくとも1つの医用画像データセットの取得、解析および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像化においては一般に画像方位および画像位置が画像の撮影方式によって決定され、つまり幾何学的な測定パラメータによって決定され、もしくは患者位置によって決定され、あるいは画像再構成に利用されるパラメータによっても決定される。画像再構成の範囲内においては、最終的に抜粋が決定され、抜粋がデータバンク、例えば中央の画像アーカイブ内に格納される。
【0003】
引続いて画像が観察される場合に、これは一般に、画像がデータバンク内に記憶されているようにして行なわれる。これは、コンピュータまたはモニタのような画像表示手段への画像シリーズの取込み後に、先ず、最初の画像が表示されることを意味するか、もしくは相当数のケースにおいて、先ず平均的な画像が表示されることをも意味する。すなわち、例えば脊柱のサジタル撮影シリーズの画像化表示の場合、第1カットが脊柱孔左側を示すのに対して、第2シリーズでは例えば後続検査の範囲において第1画像が右側の孔を示す。この場合にも、或る検査装置において、特定の検査領域の画像撮影の所見調査のための標準化された作業経過が存在する場合にも、標準開始点を見つけ出すために所見調査者が先ず画像撮影シリーズをくまなく探索することが必要である。後続検査の実施時もしくは一般には比較評価時に、問題が次のことによって更に深刻化する。すなわち、画像アーカイブから同じ器官を示す2つの画像シリーズを取込む際に、一般にこの器官の異なる眺めが表示されるので、例えば一方の脊柱撮影では左側孔が示され、他のシリーズでは右側孔が示される。このことは、比較調査および後続検査の評価を非常に難しくしかつ実施を煩わしくすると共に、更に効率を悪くし、場合によっては診断上の評価の品質を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、これに関して改善されていると共に、特に比較調査の信頼性のある評価を可能にする医用画像データセットの取得、解析および表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題の解決のために、本発明による医用画像データセットの取得、解析および表示方法は、
画像化医療検査装置により検査対象の検査領域の画像データセットを取得するステップ、
データ処理装置内に格納され、かつ取得された画像データセットの画像表示の際に守るべき方位に関連した少なくとも1つの表示基準を呼出すステップ、
データ処理装置により表示基準に関して画像データセットをチェックするステップ、
チェック結果に依存して表示基準にしたがって画像データセットの少なくとも一部を調整および表示するステップ
を有する。
【0006】
したがって、本発明によれば、まず画像データセットが、例えば磁気共鳴装置、コンピュータ断層撮影装置またはX線装置もしくは超音波装置のような画像化医療検査装置により取得される。更に、データ処理装置内に格納されている表示基準(つまり設定表示)がアクセスされ、このアクセスは画像表示が要望される際に行なうことができるが、しかし特に画像撮影中に、あるいは画像撮影の前段階において行なうこともできる。表示基準は、例えば検査装置を制御するために検査装置に直接的に接続されているデータ処理装置内に格納されるとよい。更に、データ処理装置は、例えば、ネットワークを介して接続されている1つ又は複数のサーバおよびクライアントからなるコンピュータシステムであるとよい。この場合、画像処理に使用するために中央のまたは個別の検査装置に付設されたサーバに他のデータのほかに表示基準が格納されている。
【0007】
データ処理装置によって呼出される表示基準は、例えば1つの画像または複数の画像の列または部分画像シリーズにおける特定の解剖学的構造の位置が予め設定される意味で、守るべき方位に関連付けられる。したがって、表示基準は画像方位に関連した標準図であってよい。
【0008】
取得された画像データセットは、1つの画像を含む画像データセットであってよいし、あるいは1連の画像を含む画像データセットであってもよく、または画像シリーズを含む画像データセットであってさえもよい。この画像データセットは表示基準に関してデータ処理装置によってチェックされる。この場合に、画像データセットが表示基準の守るべき方位を既に有するかどうか、もしくは、例えば個々の画像内に示された領域もしくは所望の方位に対する移動または回転に関して表示基準からどの程度の違いが存在するのかが決定される。更に、チェックの際に、個々の画像の具体的な内容がチェックのために考慮されることなしに、例えばデータセットの個々の画像に対応する幾つかのデータ、例えば撮影シリーズの最初の画像または撮影シリーズの最後の画像が直接に表示のために除外される。
【0009】
チェックステップ後に、表示基準に応じた画像データセットの少なくとも一部の調整および表示が、モニタまたはディスプレイのような画像表示手段上でチェック結果に依存して行なわれる。調整は、元の画像データが表示基準にしたがって置き換えられるようにして行なうとよい。それゆえ、本発明による方法では標準化された表示が可能にされる。
【0010】
しかしながら、例えば、事情によっては他の表示基準が考慮されるべきであろう他の撮影シリーズと比較する継続処理のために、元の撮影データが保持されると望ましい。更に、場合によって評価および診断の個々のステップを追体験することができ、誤りを後になっても認識することができるように元の画像データを格納することは有意義である。画像データセットの一部または全部が表示基準の内容に応じて表示される。この表示基準は、例えば、患者の体躯全体をカバーする画像シリーズから脊柱のサジタル表示のために身体中心の左右の数センチメートルのみがサジタル表示されるべきことにもある。
【0011】
したがって、画像表示のための従来の試みと違って、特に比較調査における画像データの標準化された所見調査および標準化された評価を可能にすることができる。解剖学的に関係する開始画像を探し出したりもしくは定めることはもはや必要ではなく、したがってこれは一般に画像撮影の異なる方位において可能であり、もしくはこのような相応の開始画像を探し出すための複雑なアルゴリズムが回避される。それによって、画像表示手段を注視するための時間が低減されもしくは開始画像を手動で探索する時間が節約される。
【0012】
本発明によれば、表示基準として、検査領域に特有の表示基準、特に撮影された器官に特有の表示基準が使用されるとよい。これは、一般的な医療検査装置もしくは特別な検査装置による画像撮影の範囲内で最も重要な器官のために標準化された方位図を呼出すべく前もって保持することを意味する。この場合に、例えば脳、個別部分を有する脊柱、心臓、膝および他の骨構造、ならびに肺または血管系のような器官を挙げることができる。これらは、最終的なものとして理解すべきではなく、病院におけるような特定の医療装置においてどの検査が主としてもしくはとりわけ実施されるのかに応じて理解すべきである。
【0013】
表示基準(つまり設定表示)として、複数の表示パラメータ、特に基礎的な表示パラメータおよび他の補足的な表示パラメータが予め設定されるとよい。例えば、腰部脊柱のための簡単な表示基準は、原則的に脊椎もしくは脊柱の長手軸線に対して平行なサジタル画像撮影が表示されることを決定することができる。他の基礎的な表示パラメータは、脊柱が原則的に画像中央に表示されることを意図することができる。
【0014】
補足的な表示パラメータは、脊柱の長手軸線が画像において上下方向に、したがって画像境界に対して平行に表示されるべきであることを指定することができる。この場合に、最初に表示すべき画像は脊柱の左右方向の中心を通るサジタル画像であるべきである。更に、特定の脊椎が、もしくは他の器官の場合であれば特定の解剖学的構造が画像内においてどこに現れるべきかを指定する表示パラメータ、もしくは検査領域に関して体軸に合わせられた向きをどのように解釈すべきかを指定する表示パラメータが予め設定されるとよい。
【0015】
本発明にしたがって、データ処理装置内に、複数の表示基準、特に検査領域に特有の複数の表示基準が格納されるとよい。したがって、データ処理装置内には、多数の検査領域のための多数の表示基準もしくは多数の通常の画像撮影シリーズのための多数の表示基準を格納することができ、場合によってはそのうちから複数の表示基準を呼出すことができる。これらの検査領域のために、画像撮影の目標設定もしくは撮影技術に応じて複数の表示基準が呼出しのために準備されるとよい。それによって、例えば、種々の検査装置の使用時に、撮影技術に応じて、場合によって異なる表示を評価するために必要な種々の画像データセットが取得されるという観点を考慮することができる。しかし、例えば医療装置の個々の区分または個々の医師によって好まれる画像表示に関する種々の要望が前もって考えに入れられるように、表示基準が使用者特有であってもよい。検査の目標設定に応じてもしくは基本的な病気に応じて、例えば脊柱の画像に関しては、標準方位として、サジタル画像が有意義であり、そして椎間板を通る平面に平行に延びるアキシャル画像も、更にコロナル画像も有意義である。心臓の撮影のための表示基準としては、例えば短軸画像、2室画像ならびに4室画像が予め設定されるとよい。
【0016】
表示基準にしたがって、解剖学的な関心領域の表示が、画像表示手段側に設けられた表示範囲の中央で行なわれるとよい。この中央表示は、他の表示が明確に定められていない限りデフォルト設定とみなされる。このデフォルト設定は、例えば医療技術助手もしくは医師による後続の表示すべき他の画像撮影または処理を顧慮して、先ず、例えば特定の器官のような解剖学的な関心領域の表示のためのアクセスを提供する。
【0017】
データ処理装置により、取得された画像データセットの座標と表示基準に応じて調整された画像データセットの座標との間の関係を指定する表示指令が決定されるとよい。データ処理装置のコンピュータのネットワークによって算出されるこの表示指令は、画像データセットの元の座標から表示の基礎をなしている座標セットに到達するために行なうべき座標変換を記述する。この座標変換が行なわれると、座標変換は、元の画像データセットから、撮影された検査領域の表示のための表示基準に設けられているような方位標準図に導く。例えば、最大で3つの直線移動変換および3つの回転移動変換を設定することができる。これは、例えば検査領域もしくは器官の表示中心の座標および3つの角度もしくは4×4の変換マトリックスの指定によって行なうことができる。選択的に、実施すべき変換のための表示指令として、より少ないパラメータ、例えば1つまたは2つのパラメータのみを決定もしくは記憶してもよく、この場合に1つのパラメータはどの断面が先ず示されるべきかを指定するだけでよい。したがって、表示指令は全般的に取得された画像データセットと調整された画像データセットとの間の関係を記述する任意の指定として理解すべきである。
【0018】
本発明にしたがって、表示基準および/または表示指令は、検査領域特有の規則、器官特有の規則、検査装置特有の規則、一般的な画像処理技術の規則、予め設定された規則の内の少なくとも1つの規則を使用して、少なくとも部分的に自動的にデータ処理装置によって決定されるとよい。例えば、人体における解剖学的または機能的な関係に対する統計学的な指定に基づき、かつ特定の検査領域に特有である図解に基づく方法を利用することができる。磁気共鳴断層撮影に関しては、例えば表示指令の決定のために、最大信号強度に合わせられた投影による器官輪郭の抽出が考えられ得る。コンピュータ断層撮影においては強度標準のための値を利用することができ、陽電子放出断層撮影の場合には特定の放射値を利用することができる。更に、新しい表示基準を作成することができ、もしくは元の画像データと調整された画像データの表示視野との間の変換のための表示指令を、特別な構造を探し出すための一般的な画像処理技術により決定することができる。この場合に、例えば適応型フィルタと検出およびマスクのための特定モデルとを挙げることができる。それゆえ、表示基準自体も変換も特定の画像データセットの存在時に少なくとも部分的に医療技術助手もしくは医師の介入なしに算出もしくは指定することができる。
【0019】
画像データセットが少なくとも部分的に、画像撮影中におよび/または画像撮影終了後の後処理ステップにおいて、表示基準に応じて必ず調整または表示されるとよく、その場合勿論調整および表示されてもよい(なお、調整および表示が行なわれることは必ず調整または表示も行なわれていることになる)。例えば磁気共鳴画像を作成する際、進行する画像撮影中に、手動でも自動でも予め設定し得る切断位置決めの使用のもとに、該当の画像データが既に存在すれば、相応の画像の標準方位を達成することができる。代替として、先ず完全な画像データセット取得を待ち、その後初めて調整もしくは表示を行ない、あるいは、画像データの一部分のために調整もしくは表示を、これらが例えば直接に計画された関連検査もしくは他の検査経過について決定するために利用されなくてもよい場合には後で行なわせることも可能である。
【0020】
表示基準がデータバンク、特に拡張可能なデータバンク内に格納されるとよい。データバンクの使用は、簡単な探索を可能にし、あるいは複数の表示基準が呼出しのために予め保持されるべきである場合のための構造化を可能にする。領域およびリストのようなデータバンク機能性を介して拡張可能性を保証することができるので、従来検出されていない検査領域または器官のための表示基準を付け加え、あるいは既に表示基準がデータバンク内に格納されている器官のための新しい表示基準も付け加えることができる。
【0021】
表示基準および/または表示指令は使用者によって手動で少なくとも部分的に設定または変更されると望ましく、その場合勿論設定および変更されてもよい(なお、設定および変更が行なわれることは必ず設定または変更も行なわれていることになる)。したがって、使用者あるいは使用者グループが、例えば、特定の病院または他の医療装置において広く行なわれあるいは一般に守られるべき画像診断のために選択された標準眺め(標準ビュー)に応じて表示基準を定めることが可能である。これらの表示基準は、例えば病院の科ごとに変わり得るし、又は特定の医師によって個別的に予め設定され得る。変換のための表示指令は、同様に手動で決定しあるいは予め設定することができ、またはデータ処理装置による最初の自動的な処理後に場合によって使用者により変更することも好ましいことである。自動的な決定の修正が行なわれてもよいし、あるいは特殊なケースにおいて診断もしくは評価にとって適切と思える調整が行なわれてもよい。
【0022】
手動の設定または変更がデータ処理装置により評価されるかまたは表示基準の改善に使用されるとよい。したがって、自動的に決定された表示基準を改善するために、あるいは手動の設定を更に最適化するために、行なわれた変更もしくは設定に基づいて使用者側の特別な好みを抽出することができる。それによって、特定の医療装置において使用時間の経過にともなって段階的に使用者要望の考慮のもとに最適化していく知的システムが生じる。
【0023】
使用される表示基準および/または表示指令が画像データセットと共に保存され、特に標準ヘッダーの範囲内で保存されるとよい。現在、このような画像撮影に割付けられた標準ヘッダーは、例えば医療分野における画像撮影の格納を容易にするために、どの器官もしくはどの検査領域が画像撮影において表示されているかを指定する。例えばサジタル脊柱表示のための表示基準が、例えば回転角および直線移動を指定する表示指令と並んで、同様にヘッダー内に記憶されるならば、それによって、新しい機能性を有する既設の格納システムが本発明の枠内において利用される。一度選択された表示基準もしくは表示指令はいつでも再度アクセス可能であるので、元の画像データセットは表示基準もしくは表示指令の新たな割付けなしに直接に表示することができる。
【0024】
1つの画像データセットのために複数の表示基準および/または表示指令が使用または保存されるとよく、その場合勿論使用および保存されてもよい(なお、使用および保存が行なわれることは必ず使用または保存も行なわれていることになる)。例えば等方性の3次元データセットにおいては、表示基準と表示指令との複数の対を例えば標準ヘッダー内に記憶させることができる。同様に、複数の表示基準がアクセス可能であり、場合によってはそれらのうちの1つの表示基準が主要な表示基準もしくはデフォルト表示基準として定められている。これは、他の指定が存在しないならば、画像表示のために標準的に使用される。
【0025】
更に、直接に複数の表示基準を、画像データセットのチェックと後での調整および表示とに取入れることができるので、例えば医療技術助手に対して、画像シリーズのための複数の表示基準にしたがって複数の画像列が同時にモニタで表示される。3次元データセットは、相応の検査領域にとって重要である全ての方位において、角度設定またはズーム等による手動調整の必要なしに自動的に表示されるとよい。表示基準もしくは表示指令を指定するために標準ヘッダーを使用することによって、これらの情報は更に異なるコンピュータシステムまたはソフトウェアシステムにとってアクセス可能である。
【0026】
画像データが複数の器官および解剖学的領域の内の少なくとも一方を含む場合、表示基準および/または表示指令が複数の器官および解剖学的領域の内の少なくとも一方のために使用されるか又は画像データセットと共に保存されるとよい。それにより、後で行なわれる画像観察時における診断を容易にするために、領域ごとに最適な表示が行なわれることが保証される。各個別器官もしくは各検査領域が適切な標準方位で表示されるので、評価する医師は画像の標準的な出現形式を再認識し、それによって効率的な評価が可能にされる。したがって、この場合にも、画像撮影の範囲内において同じ複数の解剖学的領域が撮影され、後続調査との比較または異なる患者撮影間における迅速な比較が保証される。表示基準もしくは表示指令のそれぞれの対を1つの標準ヘッダーに記憶させることが有意義である。
【0027】
表示基準に依存して、表示座標系、特に少なくとも1つの解剖学的構造によって決定される原点および/または軸経過を有する表示座標系が定められるとよい。例えば、膝の画像データセットの場合、脛骨水平域が表示座標系の原点として定められるとよい。この場合にアキシャル面は半月によって決定され、サジタル面は顆の後ろの境界に対して垂直に延びかつ脛骨および大腿骨の頭−足方向に対して平行に延びる。コロナル面はこの場合には顆の後ろの境界に対して平行に延び、かつ脛骨および大腿骨の頭−足方向に沿って延びる。これらの面の交差線がベクトルとして付属の座標系を形成する。
【0028】
表示基準、特に一般的な全身座標系を決定するための表示基準が、検査対象の全身に対する方位図に組み込まれるとよい。したがって、全身に関する座標系が決定され、この座標系は、人体の特定の方位図に合わせられ、画像処理および画像評価に携わる医師もしくは医療技術助手のために容易に把握もしく習得可能である。
【0029】
本発明による方法により、医療分野における画像撮影の観察が、異なる調査の比較および異なる患者の撮影の比較を問題なく可能にするために、標準化されて行なわれる。表示基準および表示指令が画像データセットと共に記憶されるならば、これらは、更なる遅れなしに1つ又は複数の標準化された方位で表示される。例えばデフォルト表示を指示することができ、あるいは表示基準にしたがって複数の標準方位を画像表示のために使用することができる。更に、例えば相応のプロトコルに格納されている使用者設定に基づいて適切な方位図を定めることができる。使用者は、最適な評価を行なうために、相応の画像観察ソフトウェアを介して異なる表示基準による画像データセットの表示の間において要求に応じて表示を切り換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の他の利点、特徴および詳細を以下の実施例からならびに図面に基づいて明らかにする。図面において、
図1は本発明による方法の経過概略図を示し、
図2A〜2Eは本発明による方法の範囲内における脊柱の画像データセットの場合の表示基準および表示指令に対する概略図を示し、
図3A,3Bは膝領域の表示座標系を定めるための概略図を示す。
【0031】
図1は本発明による方法の経過概略図を示す。まずステップS1において、検査対象の検査領域の画像データセットが画像化医療検査装置、この場合には磁気共鳴断層撮影装置により取得される。更に画像撮影を主導する医療技術助手によって、取得された画像データセットの引続いて行なわれる画像表示に使用されるべき表示基準(つまり設定表示)がデータ処理装置から呼出される。これはステップS2において既に画像データセットの取得中に行なわれる。データバンク内に種々の器官もしくは検査領域のための他の表示基準とともに格納されている表示基準は守るべき方位を指定する。このために関心領域を画像中央に表示すべきであることを決定する基礎的パラメータのほかに、画像撮影の表示のために重要なパラメータが予め設定される。
【0032】
ステップS3において、画像データセットは、これが存在する限りは、データ処理装置内に記憶されている表示基準に関してチェックされる。そのためにデータ処理装置は、画像内容、選択された撮影シリーズならびに撮影すべき器官に基づいて、エッジ認識等の画像処理技術にアクセスして表示指令を決定する。この表示指令は、取得された画像データから所望の表示に達するために、行なわれるべき座標変換を指定する。このために、行なわれるべき直線移動および回転移動のための値が決定される。
【0033】
最後にステップS4において、画像データセットの少なくとも一部が、チェック結果、すなわち算出された表示指令に依存して調整され、表示基準にしたがって表示される。この場合に、表示はディスプレイ上で、場合によっては検査中に既に最初の画像データが評価され得るように行なわれる。使用者が表示指令を相応に手直しすることによって、表示指令の誤りの後調整もしくはより良い所見調査および評価を顧慮した後調整が、使用者により手動で行なわれるとよい。
【0034】
表示ソフトウェアによって準備されているオプションの相応の選択に基づいて、他の標準方位による画像データセットの別の表示が指示されるので、使用者はこれらの個々の表示の間で行きつ戻りつ切り換えることができる。
【0035】
したがって、本発明による方法においては、取得された画像データセットが標準的に予め設定された方位図にしたがって表示される。方位図は使用者によって簡単に習得可能であり、当該患者もしくは他の患者の後続検査のための比較可能性を保証することができる。
【0036】
図2A〜2Eには脊柱の画像データセットの場合における表示基準および表示指令のための概略図が示されている。
【0037】
図2Aは標準方位に関連づけられた表示基準にしたがった人間の脊柱の表示を示し、それによれば脊柱が画像中央に配置され、しかも脊柱が頭−足の方向に示されている。この標準化された表示は、他のモダリティによりもしくは長い時間後に作成された後の撮影との簡単な比較を可能にする。これに対して、図2Bにはこの表示基準を満たしていない画像データセットが示されている。しかしこの場合には脊柱が画像に関して中央からずれて偏ってかつ傾斜して配置されている。表示基準を満たさずただ撮影方式によって決定されるこの種の画像データセットは質的に価値の高い診断を難しくする。なぜならば、表示が、評価する医療技術助手もしくは医師にとっていつもと違うからである。したがって、場合によっては誤診断を生じることがあり、一般には、後続して行なわれる画像撮影シリーズまたは基準シリーズとの比較可能性がもたらされない。図2Bに示された脊柱のように表示基準なしに表示される撮影のシリーズが比較されるべきである場合、評価を任された助手または医師はまず苦労して対応する撮影を見つけ出さなければならない。
【0038】
図2Cおよび2Dには脊柱の対応するサジタル画像もしくはコロナル画像が示されている。ここでは椎間板の個々の切断が平行線で示されている。例えば、図2Eに示されているような表示をもたらす腰部脊柱のための表示基準に基づいて、データ処理装置によって、元の画像データセットから図2Eの所望の表示をもたらす変換を指定する表示指令が決定される。したがって、図2Cもしくは2Dについては、切断によって示されているように、横断面画像が望まれ、しかも表示平面が椎間板に平行に、したがって二重傾斜して延びることを意味する脊柱の表示基準が予め設定される。図に参照符号1で示されかつ椎間板2を有する脊柱が、切断を予め設定する線3に応じて、図2Eの横断面画像で表示される。この場合に、椎体1aが認識され、表示は椎間板に平行に延びる。切断中心は円4によって示され、これは最適な画像評価および所見調査が可能にされるように画像中央に位置決めされている。図2Eが由来する元の画像データセットは、使用された表示基準および算出された表示指令と共に記憶されるので、表示は例えば後続検査の撮影との比較のためにいつでも速やかに呼出し可能である。
【0039】
図3Aおよび3Bは膝領域の表示座標系を定めるための概略図を示す。
【0040】
図3Aには脛骨の関節面5を上から見た画像が表示されている。図3Aの表示は、取得された画像データセットの守るべき方位に関する表示基準に従う。脛骨の外側顆6ならびに内側顆7を認識することができる。両顆の間に隆起8いわゆる顆間隆起が存在する。脛骨の関節面5の標準化された表示は、図3Aに示されているように、膝領域の表示座標系を定めるために利用される。この座標系はこの座標系における座標が解剖学的意義を有することによって優れている。
【0041】
表示座標系の原点9として脛骨水平域の幾何学的中心が決められる。サジタル面10は、座標系の原点9を通って顆の後ろの境界に対して垂直にかつ脛骨および大腿骨の頭−足方向に対して平行に延びる。同様に記入されているコロナル面11は顆の後ろの境界に対して平行にかつ脛骨および大腿骨の頭−足方向に沿って延びる。
【0042】
したがって、表示基準に依存して、表示すべき膝領域に関して原点9ならびにサジタル面10およびコロナル面11の延びによって解剖学的関連付けを可能にする表示座標系が定められる。
【0043】
補足するに、図3Bにおいて、膝12が前方からの眺めに相当する表示基準で示されている。ここでも再び座標系の解剖学的に意義深い原点9が認識できる。大腿骨13と脛骨14との間には半月、すなわち外側半月15および内側半月16が配置されている。更にここではサジタル面10のほかに、まだ説明していなかったアキシャル面17が示されている。アキシャル面17は半月15,16によって定められる。同様に腓骨18が示されている。
【0044】
したがって、本発明による方法においては標準化された方位が表示座標系を定めるための表示基準として利用され、この表示座標系は座標の比較的簡単な指定を可能にする。なぜならば、座標がその都度撮影される検査領域の重要な解剖学的構造によって決定されるからである。したがって、例えば座標40,0および3を含むこの表示座標系での座標指定は、膝の前後方向中心において膝の中心線の横方向40mmにあり、かつ脛骨水平域の上方3mmにある1つの点が表しているように解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による方法の経過概略図
【図2】本発明による方法の範囲内における脊柱の画像データセットの場合の表示基準および表示指令に対する概略図
【図3】膝領域の表示座標系を定めるための概略図
【符号の説明】
【0046】
1 脊柱
2 椎間板
3 線
4 円
5 脛骨の関節面
6 脛骨の外側顆
7 脛骨の内側顆
8 顆間隆起
9 座標系原点
10 サジタル面
11 コロナル面
12 膝
13 大腿骨
14 脛骨
15 外側半月
16 内側半月
17 アキシャル面
18 腓骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査の範囲内で作成すべき少なくとも1つの医用画像データセットの取得、解析および表示方法において、
画像化医療検査装置により検査対象の検査領域の画像データセットを取得するステップ、
データ処理装置内に格納され、かつ取得された画像データセットの画像表示の際に守るべき方位に関連した少なくとも1つの表示基準を呼出すステップ、
データ処理装置により表示基準に関して画像データセットをチェックするステップ、
チェック結果に依存して表示基準にしたがって画像データセットの少なくとも一部を調整および表示するステップ
を有することを特徴とする医用画像データセットの取得、解析および表示方法。
【請求項2】
表示基準として、検査領域に特有の表示基準が使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
表示基準として複数のパラメータが予め設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
データ処理装置内に複数の表示基準が格納されることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項5】
表示基準にしたがって解剖学的な関心領域の表示が、画像表示手段側に設けられた表示範囲の中央で行なわれることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の方法。
【請求項6】
データ処理装置により、取得された画像データセットの座標と表示基準に応じて調整された画像データセットの座標との間の関係を指定する表示指令が決定されることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の方法。
【請求項7】
表示基準および/または表示指令は、検査領域特有の規則、器官特有の規則、検査装置特有の規則、一般的な画像処理技術の規則、予め設定された規則の内の少なくとも1つの規則を使用して、少なくとも部分的に自動的にデータ処理装置によって決定されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項8】
画像データセットが少なくとも部分的に、画像撮影中におよび/または画像撮影終了後の後処理ステップにおいて、表示基準に応じて調整または表示されることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の方法。
【請求項9】
表示基準がデータバンク内に格納されることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の方法。
【請求項10】
表示基準および/または表示指令は使用者によって手動で少なくとも部分的に設定または変更されることを特徴とする請求項1乃至9の1つに記載の方法。
【請求項11】
手動の設定または変更はデータ処理装置により評価されるかまたは表示基準の改善に使用されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
使用される表示基準および/または表示指令は画像データセットと共に保存されることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載の方法。
【請求項13】
1つの画像データセットのために複数の表示基準および/または表示指令が使用または保存されることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の方法。
【請求項14】
画像データセットが複数の器官および複数の解剖学的領域の内の少なくとも一方を含む場合、表示基準および/または表示指令が複数の器官および複数の解剖学的領域の内の少なくとも一方のために使用されるか又は画像データセットと共に保存されることを特徴とする請求項1乃至13の1つに記載の方法。
【請求項15】
表示基準に依存して、少なくとも1つの解剖学的構造によって決定される原点および/または軸経過を有する表示座標系が定められることを特徴とする請求項1乃至14の1つに記載の方法。
【請求項16】
表示基準が検査対象の全身に対する方位図に組み込まれることを特徴とする請求項1乃至15の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−341092(P2006−341092A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156762(P2006−156762)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】