説明

医用画像処理システム

【課題】 画像生成装置、画像品質検査用端末、読影用端末を含む医用画像処理システムにおいて、読影用端末での医師による診断前に、追加撮影等の必要性とその種類に対する判断を客観的かつ高速に行うことを可能とし、読影・診断の効率をより向上させる。
【解決手段】 QA−WS(画像品質検査用端末)20に、画像生成装置10で生成された画像データPに対して所定の画像解析を行い、追加撮影等の必要性およびその種類を客観的に判断する追加撮影判断部22を組み込む。検査技師はQA−WS20において画像品質をチェックすると同時に、上記判断結果を参照して追加撮影等の指示を出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用画像処理システムに関し、詳しくは、デジタル医用画像を生成し、当該画像の画像品質を検査し、検査済の医用画像を読影用に表示する医用画像処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、医用画像の読影作業を支援するために、デジタル医用画像を生成する医用画像生成装置と、医用画像生成装置により生成された医用画像を入力され、当該医用画像を出力するか否かの判断を自動または手動により受け付ける機能を有する画像品質検査用端末と、画像品質検査用端末から出力された医用画像を入力され、当該医用画像を表示する読影用端末とを備えた医用画像処理システムが利用されている。
【0003】
このシステムは、例えば、以下のような運用がなされている。まず、撮影技師が医用画像生成装置の一部である撮影装置により患者の所定の部位を撮影すると、医用画像生成装置において当該部位を表すデジタル医用画像が生成され、画像品質検査用端末に出力される。画像品質検査用端末においては、入力された医用画像が画面に表示され、検査技師はその画像を見ることにより、医用画像における撮影された部位の位置(フレーミング)やフォーカス、コントラスト等が適正であるかを確認し、必要に応じて補正を加えて画像調整を行い、読影に適した画像品質を有する医用画像が得られた場合には、その医用画像を画像データベースに出力して保存し、補正を行ってもなお適正な画像品質にならない場合には、その医用画像は出力せず撮影技師等に再撮影を指示する。そして、医師が、読影を行う際に、読影用端末において、画像データベースに保存されている読影対象の医用画像を呼び出し、さらに必要に応じて画像処理等を施して画面に表示させ、その医用画像を読影して診断を行う。
【0004】
このような医用画像処理システムによれば、医用画像生成装置により生成された医用画像が読影に供される前に、画像品質検査用端末においてその画像品質のチェックがなされるので、読影時に画像調整や再撮影を余儀なくされるケースを低減することができ、読影・診断の効率を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、このような医用画像処理システムにおいても、なお読影・診断の効率を落とす原因が存在しており、その原因を解消するための手段が求められている。
【0006】
例えば、画像品質検査用端末における画像品質のチェックが検査技師によりなされる場合には、チェックの精度や所要時間が検査技師の能力に左右されたり、また、検査技師の長時間の作業による疲労等によりチェック精度が悪くなったりする場合があり、これらが読影・診断の効率を落とす原因の一つとなっている。
【0007】
この問題を解消するための一手段として、本出願人により提案されている、医用画像において撮影した部位が適正な位置にあるか否かをその画像データを解析して自動判定し、適正な位置にない場合には警告を発する撮影支援装置を適用することが可能である(特許文献1)。この撮影支援装置を上記画像品質検査用端末に組み込むことにより、撮影した部位が適正な位置にない医用画像を、検査技師が誤って出力してしまうケースを低減することができる。
【0008】
ところで、医師が医用画像を読影して診断する際に、読影に供された所定の医用画像だけでは診断が難しく、異なる種類の医用画像による読影や他の検査が必要であると判断されるケースがある。
【0009】
例えば、人体胸部の診断においては、通常、単純放射線撮影によって取得される胸部単純放射線画像が診断に供されるが、この胸部単純放射線画像において結節とみられる陰影が確認された場合、さらにその空間的な位置や内部構造、輪郭等を調べるために、その胸部をCT撮影し、当該撮影によって得られた胸部の断層画像による読影を必要とする場合がある。また、例えば、人体乳房の診断においては、通常、圧迫板で挟んだ乳房を放射線撮影して得られるマンモグラム(乳房放射線画像)が診断に供されるが、このマンモグラムにおける乳房が「高密度乳腺」に分類されるときには、乳腺が観察の障害となるため、超音波エコー撮影による検査が必要とされる場合がある。
【0010】
このような場合には、一旦、診断を止め、診断に必要な患者の別の医用画像を取得したり、患者に他の検査を受けてもらい、その検査結果を受け取ったりした後、診断を再開することが行われる。
【0011】
しかしながら、このような別の医用画像の取得や他の検査が追加的に発生し、診断が先送りになると、患者は再度医療施設へ出向く手間が増えたり、医師も再度、読影・診断をする手間が増えたりして、患者や医師の負担が増大するとともに診断の効率が悪くなる。
【0012】
そこで、上記医用画像処理システムにおいては、画像品質検査用端末にて、検査技師が医用画像の画像品質を確認するとともにその医用画像を観察して、その後の診断で必要になると思われる別の医用画像や他の検査がないかをチェックし、あると判断された場合にはそれら別の医用画像の取得もしくは他の検査の実施を予め済ませるように手配して、診断の二度手間を防止し、患者や医師の負担を軽減するとともに読影・診断の効率を向上させることが行われている。
【特許文献1】特開平4−435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、画像品質検査用端末において検査技師が医用画像をチェックし、追加的に発生する別の医用画像の生成(追加撮影)や他の検査(追加検査)を予め済ませる方法では、やはり、上述の画像品質のチェックのときと同様、チェックの精度や所要時間が検査技師の能力に左右されたり、また、検査技師の長時間の作業による疲労等によりチェック精度が悪くなったり所要時間が長くなったりする場合があり、これらが読影・診断の効率を落とす原因の一つとなっている。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、医用画像処理システムにおいて、医師による読影前に、追加撮影または追加検査が必要であるか否かの判断、および追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにその種類が何であるかの判断を、客観的かつ高速に行うことを可能とし、これにより、読影・診断の効率をより向上させることが可能な医用画像処理システムを提供することを目的とするものである。
【0015】
なお、特開2001−187044公報には、収集した画像について異常の種類と程度を検出し、その異常の種類が特定の種類であってその異常の程度が所定の範囲に存在するときに追加検査が必要である旨およびその撮影条件を出力する画像収集装置が開示されているが、当該装置は、画像品質を検査するための上記画像品質検査用端末に組み込まれたものではなく、また、異常の程度を用いて追加検査の必要性を判断するものであり、さらに、当該公報の記載内容から、当該装置は同一モダリティの再撮影を行う場合に限定されるものと解され、したがって、当該装置は本願発明とは異なるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の医用画像処理システムは、被検体を表す医用画像を生成する画像生成装置と、該画像生成装置により生成された医用画像を入力され、該医用画像を出力するか否かの判断を受け付ける出力判断受付部を有する画像品質検査用端末と、該画像品質検査用端末から出力された医用画像を入力され、該医用画像を表示する読影用端末とを含む医用画像処理システムにおいて、前記画像品質検査用端末が、該端末に入力された医用画像に基づいて、追加撮影または追加検査が必要であるか否かを判断し、該判断により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにさらに必要な追加撮影または追加検査の種類を判断する判断部と、該判断部により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときに追加撮影または追加検査が必要である旨およびその追加撮影または追加検査の種類を出力する出力部とを備えたものであることを特徴とするシステムである。
【0017】
本発明の医用画像処理システムにおいて、前記医用画像は、胸部の単純放射線画像であり、前記判断部は、前記胸部の単純放射線画像における結節陰影候補の検出処理を行う結節陰影検出処理部を備え、該結節陰影検出処理部により前記結節陰影候補が検出されたときに、追加撮影が必要であると判断するとともに必要な追加撮影を前記胸部の断層撮影にと判断するものとすることができる。
【0018】
また、本発明の医用画像処理システムにおいて、前記医用画像は、乳房の放射線画像であり、前記判断部は、前記乳房の放射線画像における腫瘤陰影候補の検出処理を行う腫瘤陰影検出処理部を備え、該腫瘤陰影検出処理部により前記腫瘤陰影候補が検出されたときに、追加撮影が必要であると判断するとともに必要な追加撮影を前記乳房の前記腫瘤陰影候補部分の拡大撮影と判断するものとすることができる。
【0019】
また、本発明の医用画像処理システムにおいて、前記医用画像は、乳房の放射線画像であり、前記判断部は、前記乳房を乳腺の分布に基づく複数の種類のいずれかに分類する乳腺分類処理部を備え、該乳腺分類処理部により前記乳房が前記複数の種類のうち乳腺濃度が比較的高い特定の前記種類に分類されたときに、追加検査が必要であると判断するとともに必要な追加検査を前記乳房の超音波撮影による検査と判断するものとすることができる。
【0020】
「判断受付部」が受け付ける判断は、自動による判断であってもよいし、手動による判断であってもよい。
【0021】
「自動による判断」としては、例えば、上記特許文献1の撮影支援装置による、医用画像における撮影部位の位置の適性判断とすることができる。
【0022】
「追加撮影」とは、当初生成された医用画像による読影だけでは診断が難しい場合に、その診断において、追加的に必要となる当該医用画像とは異なる種類の読影用の画像を得るための撮影を意味し、「追加検査」とは、当初生成された医用画像による読影だけでは診断が難しい場合に、その診断において、追加的に必要となる検査のことをいう。
【0023】
「異なる種類の画像」とは、モダリティの異なる画像や撮影手法が異なる画像のことをいう。
【0024】
「医用画像」は、診断に供されるデジタル画像であればいかなるものであってもよく、例えば、放射線画像、CT断層像画像、MRI画像等が考えられる。
【0025】
「断層撮影」とは、いわゆるCTスキャンによる撮影をいう。
【0026】
「拡大撮影」とは、取得された画像の解像度または鮮鋭度が高くなるように、被検体の部分的な領域を拡大して撮影することである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の医用画像処理システムによれば、画像品質検査用端末が、当該端末に入力された医用画像に基づいて、追加撮影または追加検査が必要であるか否かを判断し、当該判断により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにさらに必要な追加撮影または追加検査の種類を判断する判断部と、該判断部により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときに追加撮影または追加検査が必要である旨およびその追加撮影または追加検査の種類を出力する出力部とを備えているので、検査技師は、上記出力部からの出力を参照して、追加的に必要となる撮影や検査の実行を前もって指示することができ、医師による読影前に、追加撮影または追加検査が必要であるか否かの判断、および追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにその種類が何であるかの判断を、客観的かつ高速に行うことを可能とし、これにより、読影・診断の効率をより向上させることが可能となる。
【0028】
また、上記追加撮影や追加検査の必要性の判断は、医用画像処理システムにおいて既存の画像品質検査用端末において行われ、検査技師が、撮影によって得られた医用画像の画像品質の検査と同時に上記判断を行うことができるので、他に上記判断用の端末を設けたり、そのために人員を割いたりする必要がなく、コストや設置スペースを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態となる医用画像処理システムの概要を示す図である。
【0031】
図1に示す医用画像処理システム100は、X線撮影装置1とCR装置2からなるX線画像生成装置(画像生成装置)10と、X線画像生成装置10から出力された各画像を入力され、当該各画像を出力するか否かの判断を受け付けるQA−WS(画像品質検査用端末)20と、QA−WS20から出力された各画像を入力され、当該各画像を表示する画像ビューワー(読影用端末)30と、各種画像を保管する画像保管装置40とがネットワーク90に接続されてなる。
【0032】
X線撮影装置1は、被検体にX線を照射し、その被検体を透過したX線をシート状の蓄積性蛍光体層を備えた蓄積性蛍光体シートIPで受光することにより、被検体のX線画像情報を蓄積性蛍光体シートIPに記録するものである。
【0033】
CR装置2は、X線撮影装置1によってX線画像情報が記録された蓄積性蛍光体シートIPにレーザ光等の励起光を走査して輝尽発光光を生じさせ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取ってアナログ画像信号を取得し、このアナログ画像信号をデジタル変換して画像データを生成するものである。
【0034】
図2は、QA−WS20の構成を示すブロック図である。QA−WS20は、CR装置2から送信されてくる画像データPに対して規格化処理(EDR処理)や、画像の品質を調整するための処理を行う画像処理部21と、処理済の画像データP′を読影用として適正な画像の品質が得られた品質合格画像として出力するか否かの判断を受け付ける出力判断受付部(判断受付部)22と、とを備えたワークステーションである。また、QA−WS20は、入力された画像データP(処理済の画像データP′であってもよい)に対して所定の画像解析処理を行い、その結果に基づいて追加撮影または追加検査が必要であるか否かを判断し、この判断により追加撮影等が必要であると判断されたときには必要な追加撮影等の種類を判断する追加撮影判断部(判断部)23と、追加撮影判断部23により追加撮影等が必要であると判断されたときには追加撮影等が必要である旨およびその追加撮影等の種類を表す追加撮影情報Tを出力する追加撮影情報出力部(出力部)24とを備えている。
【0035】
追加撮影判断部23は、図に示すように、画像データPに付帯する部位情報Vに基づいて、画像データPにおける撮影部位の種類を認識する撮影部位認識部23aと、撮影部位が胸部であると認識された場合に、入力画像データPに基づいて、この画像データPが表す胸部X線画像(胸部の単純放射線画像)P(以下簡便のため、画像データとその画像データが表す画像とを同符号で示す)における結節陰影候補Qbの検出処理を行い、結節陰影候補Qbが検出されたときにはその候補の位置情報Lbを含む検出結果Wbを出力する結節陰影候補検出部23bと、撮影部位が乳房であると認識された場合に、入力画像データPに基づいて、この画像データPが表す乳房X線画像(乳房の放射線画像、マンモグラムともいう)Pにおける腫瘤陰影候補Qcの検出処理を行い、腫瘤陰影候補Qcが検出されたときにはその候補の位置情報Lcを含む検出結果Wcを出力する腫瘤陰影候補検出部23cと、撮影部位が乳房であると認識された場合に、入力画像データPに基づいて、この画像データPが表す乳房X線画像Pにおける乳房を乳腺の分布に基づく複数の種類のいずれかに分類し、その分類結果Wdを出力する乳腺分類処理部23dと、そしてさらに、結節陰影候補検出部23bから出力された検出結果Wbに基づいて、結節陰影候補Qbが検出されたか否かを判定し、検出されたと判定されたときには、追加撮影情報Tとして結節陰影候補Qbの位置情報Lbと「胸部の断層撮影が必要である」旨の情報を設定し、腫瘤陰影候補検出部23cから出力された検出結果Wcに基づいて、腫瘤陰影候補Qcが検出されたか否かを判定し、検出されたと判定されたときには、追加撮影情報Tとして腫瘤陰影候補Qcの位置情報Lcと「乳房の腫瘤陰影候補部分の拡大撮影が必要である」旨の情報を設定し、乳腺分類処理部23dから出力された分類結果Wdに基づいて、乳房が上記複数の種類のうち乳腺濃度が比較的高い特定の種類に分類されたか否かを判定し、特定の種類に分類されたと判定されたときには、追加撮影情報Tとしてその分類された種類と「乳房の超音波撮影による検査が必要である」旨の情報を設定する追加撮影情報設定部23eとを備えている。
【0036】
なお、QA−WS20は、画像データを格納するメモリ、操作者からの入力を受け付けるキーボードやマウス等の入力装置、画像等を表示するディスプレイ装置等を備えている。
【0037】
画像ビューワー30は、QA−WS40から出力された画像データに基づいて当該画像データが表す画像をディスプレイに表示するコンピュータである。医師は、このディスプレイに表示された画像を読影して診断を行うことになる。
【0038】
画像保管装置40は、画像データやその他のデータを保存・管理するコンピュータであり、画像データ等を保存するための大容量記憶装置を備えている。
【0039】
次に、医用画像処理システム100の処理の流れについて説明する。図3は、QA−WS20における処理フローを概略的に示した図である。
【0040】
まず、X線撮影装置1において患者の所定の部位がX線撮影され、CR装置2においてその所定の部位のX線画像を表す画像データPが生成される。CR装置2において画像データPを生成する際には、生成された画像データPがどの患者のものであるか、また、患者のどの部位を撮影したものであるかが特定できるように、画像データPに個々の患者を識別する患者IDを含む患者情報Qと、撮影部位を表す部位情報Vを付帯させる。
【0041】
その後、QA−WS20は、CR装置2にて生成された画像データPを受信し、自身のメモリ(不図示)に格納する(#1)。撮影部位認識部22aは、メモリから画像データPが付帯する部位情報Vを取得し、この部位情報Vに基づいて画像データPにおける撮影部位を認識する(#2)。そして、認識された撮影部位が「胸部」「乳房」「その他」のいずれに該当するか判定を行う(#3)。ここで、撮影部位が、それぞれ、「胸部」である場合、「乳房」である場合、「その他」である場合に分けてその後の処理について説明する。
【0042】
撮影部位が「胸部」である場合には、結節陰影候補検出部22bが画像データPに基づいて画像データPが表す胸部X線画像Pにおける結節陰影候補Qbを検出する処理を行う(#4)。この処理は、例えば、特願2004−9398にて提案されているような、強調処理した医用画像に異なる閾値による2値化処理を施して複数の2値化画像を生成し、各2値化画像に現れる領域の形状、大きさおよび領域内の画素値の統計量に基づいて異常(結節)陰影候補を検出し、同位置で異常陰影候補が検出された回数等の特徴的な値に基づいて、偽陽性であるか否かを判定する方法を用いて検出する処理とすることができる。結節陰影候補検出部22bは、その検出処理によって候補が検出されたか否かの結果を表す検出結果情報Wbを出力するが、結節陰影候補Qbが検出された場合には、その候補が胸部X線画像Pにおいてどの位置に存在するかを表す位置情報Lbとともに出力する。
【0043】
追加撮影情報設定部22eは、結節陰影候補検出部22bから出力された検出結果情報Wbに基づいて、結節陰影候補Qbが検出されたか否かを判定し(#5)、検出されたと判定されたときには、追加撮影情報Tとして結節陰影候補の位置情報Lbと「胸部の断層撮影が必要である」旨の情報を設定する(#6)。
【0044】
一方、撮影部位が「乳房」である場合には、腫瘤陰影候補検出部22cが画像データPに基づいて画像データPが表す乳房X線画像Pにおける腫瘤陰影候補Qcを検出する処理を行う(#7)。この処理は、例えば、特開2002−74325公報にて開示されているような、アイリスフィルタ処理により乳房画像において濃度勾配が集中する領域を抽出する方法を用いて検出する処理とすることができる。腫瘤陰影候補検出部22cは、その検出処理によって候補が検出されたか否かの結果を表す検出結果情報Wcを出力するが、腫瘤陰影候補Qcが検出された場合には、その候補が乳房X線画像においてどの位置に存在するかを表す位置情報Lcとともに出力する。
【0045】
追加撮影情報設定部22eは、腫瘤陰影候補検出部22cから出力された検出結果情報Wcに基づいて、腫瘤陰影候補Qbが検出されたか否かを判定し(#8)、検出されたと判定されたときには、追加撮影情報Tとして腫瘤陰影候補の位置情報Lcと「腫瘤陰影候補部分の拡大撮影が必要である」旨の情報を設定する(#9)。
【0046】
次に乳腺分類処理部22dが画像データPに基づいて画像データPが表す乳房X線画像Pにおける乳房を乳腺の分布に基づく複数の種類のいずれかに分類する処理を行う(#10)。この処理は、例えば、特願2003−297670等にて提案されているような、乳房画像において所定の濃度範囲にある領域を乳腺領域として抽出し、乳房内の乳腺の分布状態(乳腺の量や位置)に基づいて乳房を分類する方法を用いて、被写体である乳房を、マンモグラフィガイドラインで提唱されているような「高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」の4つの種類に分類する処理とすることができる。
【0047】
追加撮影情報設定部22eは、乳腺分類処理部22dから出力された分類結果情報Wdに基づいて、乳房が比較的乳腺濃度の高い「高濃度」か「不均一高濃度」に分類されたか否かを判定し(#11)、当該種類に分類されたと判定されたときには、腫瘤陰影候補の検出結果に基づいて設定された追加撮影情報Tの内容に加える形態で、「乳房の超音波撮影による検査が必要である」旨の情報を設定する(#12)。
【0048】
撮影部位が「その他」である場合には、追加撮影情報Tには何も設定しない。
【0049】
このように、撮影部位の種類や検出結果あるいは分類結果に応じた内容が追加撮影情報Tとして設定されると、追加撮影情報出力部23は、設定された追加撮影情報Tに基づいて、検出結果または分類結果とともに、追加撮影や追加検査が必要であるか否かおよび必要である場合にはその種類を表すメッセージを、ディスプレイに表示する(#11)。例えば、胸部X線画像において結節陰影候補が検出された場合には、図4に示すように、画像データPと位置情報Lbに基づいて、画像データPが表す胸部X線画像Pとともに、その胸部X線画像Pにおいて検出された結節陰影候補Qbを指し示すマークJをディスプレイの画面に表示する。そして、さらに、「結節陰影候補が検出されました。断層撮影を行ってください。」というメッセージMbを画面に表示する。また、例えば、乳房X線画像において腫瘤陰影候補が検出された場合には、図5に示すように、画像データPと位置情報Lcに基づいて、画像データPが表す乳房X線画像Pとともに、その乳房X線画像において検出された腫瘤陰影候補Qcを指し示すマークJをディスプレイの画面に表示する。そして、さらに、「腫瘤陰影候補が検出されました。候補部分の拡大撮影を行ってください。」というメッセージMcを画面に表示する。また、例えば、乳房X線画像における乳房が「高濃度乳腺」または「不均一高濃度」に分類された場合には、図6に示すように、「分類結果:○○○○、超音波撮影による検査を行ってください。」というメッセージMdを画面に表示する。追加撮影や追加検査が必要でない場合、すなわち、追加撮影情報Tとして何も設定されていない場合には、ディスプレイに何も表示しないとしてもよいし、検出結果Wb、Wcや分類結果Wdのみ表示する、あるいはそれに加えて「追加撮影または追加検査の必要はありません。」等のメッセージを画面に表示するようにしてもよい。
【0050】
検査技師は、QA−WS20のディスプレイ画面に表示された放射線画像や追加撮影等の必要性に関するメッセージ等を見て、撮影によって得られた放射線画像の品質に問題がないかを確認するとともに、再撮影、追加撮影、追加検査の必要があるかどうかを判断し、必要に応じて、画像データPに画像品質の調整をする処理を施したり、再撮影により新たな画像データを取得したりして、読影用として適正な画像品質を有する画像を得、当該画像を表す画像データを画像保管装置40に出力するとともに、追加撮影や追加検査が必要であると判断した場合にはその指示を行う。追加撮影や追加検査が指示された場合には、患者はその撮影や検査を行う施設に案内され、そこで、必要な追加撮影や追加検査が行われることになる。なお、これらの追加撮影や追加検査は、ネットワーク90に接続された撮影装置や検査装置(不図示)を用いて行われ、新たに生成された画像データや検査結果レポートがこれらの装置を通して、患者IDと関連付けて画像保管装置40に送られ保管される。
【0051】
画像ビューワー30は、医師等の操作者による要求により、診断の対象となる患者の患者IDに基づいて、画像保管装置40から目的の画像データP(P′)やその他関連のあるデータを取得し、これらのデータに基づいてディスプレイに放射線画像やその他の画像、検査結果レポート等を表示する。医師は、このディスプレイに表示された画像等を見て、読影・診断を行うことになる。
【0052】
このように、本実施形態に係る医用画像処理システム100によれば、QA−WS(画像品質検査用端末)20が、当該ワークステーションに入力された画像データ(医用画像)に基づいて、追加撮影または追加検査が必要であるか否かを判断し、当該判断により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにさらに必要な追加撮影または追加検査の種類を判断する追加撮影判断部23(判断部)と、当該追加撮影判断部23により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときに追加撮影または追加検査が必要である旨およびその追加撮影または追加検査の種類を出力する追加撮影情報出力部24(出力部)とを備えているので、検査技師は、上記追加撮影情報出力部24からの出力を参照して、追加的に必要となる撮影や検査の実行を前もって指示することができ、医師による読影前に、追加撮影または追加検査が必要であるか否かの判断、および追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにその種類が何であるかの判断を、客観的かつ高速に行うことを可能とし、これにより、読影・診断の効率をより向上させることが可能となる。
【0053】
また、上記追加撮影や追加検査の必要性の判断は、医用画像処理システム100において既存のQA−WS20において行われ、検査技師が、撮影によって得られた医用画像の画像品質の検査と同時に上記判断を行うことができるので、他に上記判断用の端末を設けたり、そのために人員を割いたりする必要がなく、コストや設置スペースを抑えることができる。
【0054】
なお、QA−WS20において出力された追加撮影情報Tは、画像データP等に添付し、あるいは、当該情報Tを外部の記憶装置(不図示)に保存するとともにその保存場所を特定するリンクデータを画像データP等に添付しておき、画像ビューワー30にて、画像データP等に添付された追加撮影情報Tやリンクデータによりその追加撮影等に関する情報を呼び出して再度確認できるようにしてもよい。
【0055】
なお、当然のことではあるが、乳房画像における、腫瘤陰影候補の検出処理と乳腺分類の処理とは、どちらを先に実行しても構わないし、また、両処理の結果、腫瘤陰影候補が検出され、さらに、乳房も「高濃度乳腺」または「不均一高濃度」のいずれかに分類された場合には、「腫瘤陰影候補部分の拡大撮影」の必要性と「超音波撮影による検査」の必要性の両方を出力するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】医用画像処理システム100の構成を示した図
【図2】追加撮影判断部22の構成を示した図
【図3】QA−WS20の処理フローを示した図
【図4】入力画像データが表す画像が胸部X線画像である場合の、QA−WS20のディスプレイ画面のレイアウト例を示した図
【図5】入力画像データが表す画像が乳房X線画像である場合の、QA−WS20のディスプレイ画面のレイアウト例(その1)を示した図
【図6】入力画像データが表す画像が乳房X線画像である場合の、QA−WS20のディスプレイ画面のレイアウト例(その2)を示した図
【符号の説明】
【0057】
1 X線撮影装置
2 CR装置
10 X線画像生成装置(画像生成装置)
20 QA−WS(画像品質検査用端末)
21 出力判断受付部(判断受付部)
22 追加撮影判断部(判断部)
23 追加撮影情報出力部(出力部)
30 画像ビューワー(読影用端末)
40 画像保管装置
90 ネットワーク
100 医用画像処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を表す医用画像を生成する画像生成装置と、
該画像生成装置により生成された医用画像を入力され、該医用画像を出力するか否かの判断を受け付ける出力判断受付部を有する画像品質検査用端末と、
該画像品質検査用端末から出力された医用画像を入力され、該医用画像を表示する読影用端末とを含む医用画像処理システムにおいて、
前記画像品質検査用端末が、該端末に入力された医用画像に基づいて、追加撮影または追加検査が必要であるか否かを判断し、該判断により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときにさらに必要な追加撮影または追加検査の種類を判断する判断部と、該判断部により追加撮影または追加検査が必要であると判断されたときに追加撮影または追加検査が必要である旨およびその追加撮影または追加検査の種類を出力する出力部とを備えたものであることを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項2】
前記医用画像が、胸部の単純放射線画像であり、
前記判断部が、前記胸部の単純放射線画像における結節陰影候補の検出処理を行う結節陰影検出処理部を備え、該結節陰影検出処理部により前記結節陰影候補が検出されたときに、追加撮影が必要であると判断するとともに必要な追加撮影を前記胸部の断層撮影と判断するものであることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項3】
前記医用画像が、乳房の放射線画像であり、
前記判断部が、前記乳房の放射線画像における腫瘤陰影候補の検出処理を行う腫瘤陰影検出処理部を備え、該腫瘤陰影検出処理部により前記腫瘤陰影候補が検出されたときに、追加撮影が必要であると判断するとともに必要な追加撮影を前記乳房の前記腫瘤陰影候補部分の拡大撮影と判断するものであることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項4】
前記医用画像が、乳房の放射線画像であり、
前記判断部が、前記乳房を乳腺の分布に基づく複数の種類のいずれかに分類する乳腺分類処理部を備え、該乳腺分類処理部により前記乳房が前記複数の種類のうち乳腺濃度が比較的高い特定の前記種類に分類されたときに、追加検査が必要であると判断するとともに必要な追加検査を前記乳房の超音波撮影による検査と判断するものであることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−51198(P2006−51198A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235292(P2004−235292)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】