説明

医用画像表示装置

【課題】 被検体の所望の複数領域の組織を容易に識別可能な医用画像表示装置を提供すること。
【解決手段】 被検体の測定画像値データの第1の測定範囲内の測定画像値に対して第1のウィンドウ変換を行い第1の表示範囲内の表示画像値に対応させる第1ウィンドウ変換手段と、前記第1の範囲以外の第2の測定範囲内の測定画像値に対して第2のウィンドウ変換を行い、前記第1の表示範囲以外の第2の表示範囲内の表示画像値に対応させる第2ウィンドウ変換手段と、前記第1ウィンドウ変換により得られた第1の表示画像と前記第2ウィンドウ変換により得られた第2の表示画像を合成して表示する合成画像表示手段と、
を備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内の所定範囲の画像値をウィンドウ変換して表示する医用画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線、CT、MRI、核医学などの医用画像を表示する場合、元画像の画像値の範囲を指定して、その間の値を例えば256段階に分け、これらの値に対する表示用の値を決め、これらの関係を定めたルックアップテーブル(LUT)により表示画像に変換している。この元の画像の所定範囲を指定して表示画像値に変換する処理をウィンドウ変換という(例えば特許文献1参照)。このウィンドウ変換された画像はグレースケールで表示されることもカラースケールで表示される場合もある。
【0003】
通常のウィンドウ変換では、画像値の、或る連続した範囲を表示画像値に変換するが、画像値の異なる複数の範囲を指定して、表示画像値に変換する技術も実現されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平4−125862号公報
【特許文献2】特開2003−299631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような、画像値の複数の範囲を指定するウィンドウ変換によれば、例えばCTにおいて臓器と骨、あるいは軟部組織と石灰化部分といった値の異なる範囲に別々にウィンドウを設定することにより各々の領域を最適なコントラストで表示することが可能である。
【0005】
しかし、従来の技術では、複数の領域の、被検体の組織により測定された画像値(ここでは、測定画像値という)を同一の表示画像値で表示するので、複数の領域、例えば臓器と骨は同じグレースケール又はカラースケールでしか表示することができず、画面上において各々の領域を容易に識別することが困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述のような問題点にかんがみてなされたもので、被検体の所望の複数領域の組織を容易に識別可能な医用画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1によれば、被検体の測定画像値データの第1の測定範囲内の測定画像値に対して第1のウィンドウ変換を行い第1の表示範囲内の表示画像値に対応させる第1ウィンドウ変換手段と、前記第1の範囲以外の第2の測定範囲内の測定画像値に対して第2のウィンドウ変換を行い、前記第1の表示範囲以外の第2の表示範囲内の表示画像値に対応させる第2ウィンドウ変換手段と、前記第1ウィンドウ変換により得られた第1の表示画像と前記第2ウィンドウ変換により得られた第2の表示画像を合成して表示する合成画像表示手段と、を備えて成ることを特徴とする医用画像表示装置を提供する。
【0008】
本発明の請求項2によれば、請求項1記載の医用画像表示装置において、前記第1ウィンドウ変換手段及び前記第2のウィンドウ変換手段各々は、ルックアップテーブルを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3によれば、被検体の測定画像値データの第1の測定範囲内の測定画像値を第1の変換特性により所定の画像値に変換する第1特性変換手段と、前記第1の測定範囲以外の第2の測定範囲内の測定画像値を第2の変換特性により所定の画像値に変換する第2特性変換手段と、前記第1特性変換手段により変換された画像値を、第1の表示画像範囲内の表示画像値に変換する第1ルックアップテーブルと、前記第2特性変換手段により変換された画像値を前記第1の表示画像範囲以外の第2の表示画像値範囲内の画像値に変換する第2ルックアップテーブルと、前記第1ルックアップテーブルに基づいて変換された第1の表示画像と前記第2ルックアップテーブルに基づいて変換された第2の表示画像を合成して表示する画像表示手段と、を備えて成ることを特徴とする医用画像表示装置を提供する。
【0010】
本発明の請求項4によれば、請求項3記載の医用画像表示装置において、前記第1の変換特性又は前記第2の変換特性は、変更可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5によれば、請求項3又は4記載の医用画像表示装置において、前記第1の測定画像範囲は、前記被検体の内臓の測定画像値の範囲内にあり、前記第2の測定画像値範囲は、前記被検体の骨の測定画像値の範囲内にあることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6によれば、請求項5記載の医用画像表示装置において、前記第1の表示画像範囲はカラースケールであり、前記第2の表示画像範囲はグレースケールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検体の所望の複数領域の組織を容易に区別可能で良好な画像が得られる医用画像表示装置を得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に本発明一実施形態の構成例を示す。
【0015】
この医用画像表示装置10は、CT装置やMRI装置のような装置で得られた被検体内の測定データをCT値などの測定画像値データとして記憶する測定画像値記憶部11と、この測定画像値記憶部11に記憶されている測定画像値をウィンドウ変換するウィンドウ変換部12と、このウィンドウ変換部12により変換された値から表示画像値を得るルックアップテーブル部13と、このルックアップテーブル部13により得られた値を表示画像値として記憶する表示画像値記憶部14と、この表示画像値を画面上に表示する画像表示部15と、ウィンドウ変換部12及びルックアップテーブル部13に接続され、測定画像値から表示画像値へのウィンドウ変換の特性を決めるための特性表示制御部16とから成る。
【0016】
ルックアップテーブル部13は図3に示すような、第1、第2の2つのルックアップテーブルLUT1,LUT2を有する。これらのルックアップテーブルは、0から255までの256ステップの値に対して、R,G,Bの成分比を有しており、この値によって、表示する表示画像値が一意に定まる。
【0017】
図1に示した特性表示制御部16は、第1の測定画像値を決める第1測定画像値範囲21a、と第2の測定画像値の範囲を決める第2測定画像値範囲21bとが選択可能となっている。操作者は、その一方を選択してから、そのウィンドウ変換のルックアップテーブル(LUT)22、ガンマ特性(γ)23、ウィンドウレベル(WL)24及びウィンドウ幅(WW)25を決める。
【0018】
測定画像値から表示画像値へのウィンドウ変換の具体的な方法を図2及び図4、図5に基づいて説明する。
【0019】
図4に示すグラフにおいて、x軸は測定画像値を示し、y軸は表示画像値を示す。x軸操作者は図2のステップ201においてまず、第1ウィンドウ変換の測定画像値範囲すなわち第1測定画像値範囲MIR1を例えば見たい臓器が明確に表示できる範囲に設定する。
【0020】
次のステップS202では、図1の特性表示制御部16のガンマ特性23を変化させることにより、第1の変換の変換特性、すなわちガンマ特性を、例えば1に決定する。図4では、このようにガンマ特性γ=1.0とした場合、すなわち直線の特性を表わしている。
【0021】
なお、上記ウィンドウレベル(WL)24は、例えば上記第1ウィンドウ変換特性の中間の測定画像値WL1であり、ウィンドウ幅(WW)25は、測定画像値の変化する範囲WW1を意味する。
【0022】
そして、図2のステップS203において、第1のウィンドウ変換の表示画像値を設定する。これは、図4のy軸の表示画像値に対して第1のルックアップテーブルの値の範囲をどのように決めるかを意味し、図1に示した特性表示制御部16の22にどのようなルックアップテーブルを持ってくるかによって決まる。例えば第1の測定画像値範囲としてみたい臓器の範囲を選んでこれに対してレインボーカラーを割り当てる。
【0023】
次に図2のステップ204において、例えば被検体の骨の部分を見易くするために第2ウィンドウ変換の測定画像範囲を設定する。この設定は、図1の特性表示制御部16の第2測定画像値範囲21bを選択してなされる。例えば図4において、第2測定画像値範囲MIR2が設定される。
【0024】
次に、ステップS205において第2のウィンドウ変換の変換特性が図1の特性表示制御部16のガンマ特性の値を選ぶことによりなされる。この第2変換の変換特性もγ=1.0とすれば、直線特性となる。
【0025】
第2ウィンドウ変換のウィンドウレベル(WL)24は、例えば上記第2ウィンドウ変換特性の中間の測定画像値WL2であり、ウィンドウ幅(WW)25は、測定画像値の変化する範囲WW2を意味する。
【0026】
ステップS206では、第2ウィンドウ変換の表示画像値を設定する。この場合には、第2ルックアップテーブルLUP2の範囲と256ステップの値を決めることになり、例えばグレースケールが当てはめられる。
【0027】
したがって、例えば第1測定画像値MI1iは表示画像値DI1iにウィンドウ変換され、第2測定画像値MI2iは表示画像値DI2iに変換される。
【0028】
次のステップS207では、上述のように第1及び第2ウィンドウ変換を行って得られ表示画像値記憶部14に記憶された表示画像データが合成され読み出され、画像表示部15の画面上に表示される。上記の場合画像表示部15の画面上には、具体的には被検体の第1測定画像値範囲内の内臓部分がカラースケールで、また第2測定画像値範囲内の骨部分はグレースケールに、合成された画像が表示されることになる。
【0029】
ステップS208では、上述のようにして表示された合成画像が操作者の望み通りに第1画像と第2画像が区別され、しかも各々の画像も良好に表示されていればそれで表示は完了する。操作者の意図と異なっている場合には再びステップS201に戻り、第1のウィンドウ変換の各種設定、第2のウィンドウ変換の各種設定を行い合成画像を見ることになる。
【0030】
ところで、上記実施形態では、第1のウィンドウ変換の特性と第2のウィンドウ変換の特性が同じくγ=1.0 の場合について述べた。しかし本発明では、必ずしもこれらの特性が1.0である必要はなく、また同じである必要もない。
【0031】
第1、第2のウィンドウ変換の特性が異なる場合には、図5に示すようになる。すなわち、第1の測定画像値範囲MIR1と第2の測定値画像値範囲MIR2が上記実施形態の場合と同じに設定されても、上記ガンマ特性が異なるので、第1測定画像範囲内の測定画像値MI1i及び第2測定画像値範囲内の画像値MI2iに対応する表示画像値は、上記DI1i,DI2iとは異なるDI1i´,DI2i´となる。
【0032】
このようにして、2つの測定画像値範囲内の値に対して異なる表示画像値を当てることが可能となり、例えば被検体の内臓と骨部分の2つの画像を明りょうに区別して表示することが可能となり、正確な画像診断が可能となる。
【0033】
ところで、上記実施形態では、一方の表示画像値をカラースケールとし、他の表示画像値をグレースケールとした場合について説明した。しかし本発明はこのような場合に限られず、異なる範囲のカラースケールとしたり異なる範囲の明度の画像とすることも可能である。
【0034】
上記実施形態においては、2つのルックアップテーブルを用いて、2つの測定画像値範囲内の画像を区別して表示した。しかし、本発明は2つの場合に限られず、3以上の領域に測定画像値を分ける場合にも本発明は適用可能である。
【0035】
上記図1に示した本発明の一実施形態では、ウィンドウ変換部とは別にルックアップテーブル部を設けていたが、当然ウィンドウ変換部内にルックアップテーブルを有するようにしてもよい。
【0036】
上記実施形態では、ガンマ変換特性とルックアップテーブルによりウィンドウ変換を行う場合について説明した。しかし、ガンマ変換特性を考慮してルックアップテーブルに値を予め設定して置くことも可能であり、ガンマ変換特性の変更をルックアップテーブルを替えることによって行うことも可能である。
【0037】
また上記実施形態では、変換特性が右上がりの非対称の特性の場合について説明した。しかし、本発明は測定画像値に対し左右において表示画像値が変化する特性の場合についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明一実施形態の構成例を示す図。
【図2】本発明一実施形態の動作を説明するための図。
【図3】本発明一実施形態に用いるルックアップテーブルの構造を説明するための図。
【図4】本発明一実施形態においてウィンドウ変換の例を説明するための図。
【図5】本発明一実施形態においてウィンドウ変換の他の例を説明するための図。
【符号の説明】
【0039】
10・・・医用画像表示装置、
11・・・測定画像値記憶部、
12・・・ウィンドウ変換部、
13・・・ルックアップテーブル部、
14・・・表示画像値記憶部、
15・・・画像表示部、
16・・・特性表示制御部、
21a・・・第1測定画像値範囲、
21b・・・第2測定画像値範囲、
22・・・ルックアップテーブル(LUT)、
23・・・ガンマ特性、
24・・・ウィンドウレベル(WL)、
25・・・ウィンドウ幅(WW)、
LUT1・・・第1のルックアップテーブル、
LUT2・・・第2のルックアップテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の測定画像値データの第1の測定範囲内の測定画像値に対して第1のウィンドウ変換を行い第1の表示範囲内の表示画像値に対応させる第1ウィンドウ変換手段と、
前記第1の範囲以外の第2の測定範囲内の測定画像値に対して第2のウィンドウ変換を行い、前記第1の表示範囲以外の第2の表示範囲内の表示画像値に対応させる第2ウィンドウ変換手段と、
前記第1ウィンドウ変換により得られた第1の表示画像と前記第2ウィンドウ変換により得られた第2の表示画像を合成して表示する合成画像表示手段と、
を備えて成ることを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
前記第1ウィンドウ変換手段及び前記第2のウィンドウ変換手段各々は、ルックアップテーブルを含むことを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
被検体の測定画像値データの第1の測定範囲内の測定画像値を第1の変換特性により所定の画像値に変換する第1特性変換手段と、
前記第1の測定範囲以外の第2の測定範囲内の測定画像値を第2の変換特性により所定の画像値に変換する第2特性変換手段と、
前記第1特性変換手段により変換された画像値を、第1の表示画像範囲内の表示画像値に変換する第1ルックアップテーブルと、
前記第2特性変換手段により変換された画像値を前記第1の表示画像範囲以外の第2の表示画像値範囲内の画像値に変換する第2ルックアップテーブルと、
前記第1ルックアップテーブルに基づいて変換された第1の表示画像と前記第2ルックアップテーブルに基づいて変換された第2の表示画像を合成して表示する画像表示手段と、
を備えて成ることを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項4】
前記第1の変換特性又は前記第2の変換特性は、変更可能であることを特徴とする請求項3記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記第1の測定画像範囲は、前記被検体の内臓の測定画像値の範囲内にあり、前記第2の測定画像値範囲は、前記被検体の骨の測定画像値の範囲内にあることを特徴とする請求項3又は4記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記第1の表示画像範囲はカラースケールであり、前記第2の表示画像範囲はグレースケールであることを特徴とする請求項5記載の医用画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−61277(P2006−61277A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245349(P2004−245349)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】