説明

医療撮像システム用の動作パラメータを選択する方法及び装置

医療システムで処置を行なうのに必要な複数のパラメータの夫々についての値の選択を案内するシステムが提供される。システムは、処置及び治療体制を含む第1の知識ベースと、患者情報及びセラピー履歴を含む第2の知識ベースと、臨床ガイドラインを含む第3の知識ベースを含む。ドメイン・オントロジーは、第1、第2、及び第3の知識ベース内の情報間の意味論的マッピングを与える。システム構成データベースは、医療システムに関する物理的特徴を含み、システム特徴データベースは、システム構成データベース中のデータに基づいて医療システムを較正する数式及びアルゴリズムを含む。推論エンジンもまた、第1、第2、及び第3の知識ベース、システム較正データベース、並びに、システム特徴データベース中の情報に基づいて一組のパラメータを生成するのに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医療診断撮像システムに関連し、より特定的には、医療撮像システムで処置を行なうときに個々の患者に最も適した各パラメータの値の選択を案内することにより改善された患者中心のケアを与える方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断及び撮像システムは、近年の医療施設の至る所に存在する。かかるシステムは、健康状態を確認し、診断し、治療するための貴重なツールであり、外科的診断インターベンションの必要性を大きく減少させうる。多くの場合、最終的な診断及び治療は、担当医師又は技師が、1つ又はそれ以上の撮像モダリティを介して関連ある領域及び組織の詳細な画像で従来の検査を補足した後にのみ進められる。
【0003】
現在、医療診断及び撮像システムのために多くのモダリティが存在する。これらは、コンピュータ断層撮影(CT)システム、X線システム(従来の及びディジタル又はディジタル化された撮像システムのいずれも含む)、磁気共鳴(MR)システム、ポジトロン・エミッション断層撮影(PET)システム、超音波システム、核医学システム等を含む。多くの場合、これらのモダリティは互いに補足しあい、医師に、特定の種類の組織、器官、生理系等を撮像する技術の範囲を与える。
【0004】
医療撮像システムは、一般的には、画像データを捕捉し、データを使用可能な形へ変換する回路を含み、次に当該データは患者内の関心となる特徴の再構成された画像を作成するよう処理される。画像データ捕捉及び処理回路は、しばしば、モダリティとは無関係にスキャナと称され、なぜならば撮像プロセス中である種の物理的な又は電子的なスキャンがしばしば生ずるからである。システム及び関連する回路の特定の構成要素は、もちろん、それらの異なった物理的及びデータ処理要件によりモダリティ間で大きく異なる。
【0005】
医療撮像システムでの患者の撮像は、所与の生理的状態の確認、診断、又は治療のための画像捕捉状態を向上又は最適化する様々なパラメータに対する適切な値を選択することを必要とする。かかるシステムの複雑さ及び精巧さは徐々に高まるため、選択されねばならないパラメータの数もまた増加し、いくつかの場合は100又は200を超える。例えば、X線CTシステムで処置を行うのに選択されねばならないパラメータのうちの幾つかは、スキャンの種類(シングル・スライス・スキャン/ヘリカル・スキャン(ボリューム・スキャン))、スライス厚、スライス間隔、ボリューム・サイズ、ガントリ傾斜角、管電圧、管電流、画像領域サイズ、及びスキャン速度を含みうる。
【0006】
操作者が、撮像が行われるたびに各撮像システムパラメータを手動で設定するのは非常に非効率的であり非現実的である。このために、所定のパラメータの組(「プリセット」)がしばしば用いられる。異なった状況及び異なった健康状態に対して、様々なプリセットが与えられ得る。プリセットは、一般的には、例えば製造者又は医学界によって推奨される。しかしながら、予め選択されたパラメータの組の使用は、それら自体の更なる問題を生じさせる。
【0007】
例えば、プリセットを定義するパラメータの組は、一般的には、大きな統計的に重要な母集団に対して適用可能であり、個々の患者に対して調整されていないよう、選択される。同様に、パラメータの予め選択された組は、一般的には、一般的には多くの患者に共通である画像中の特徴の検出に基づくが、個々の患者で生ずるあまり共通でない共通の特徴については考慮に入れない所与の医療条件の診断を高めるよう一般的には選択される。即ち、或る特定の患者の健康状態を最もよく識別しうる画像は、プリセットによって選択される画像ではないかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、例えばプリセットの選択が利用可能であるときは比較的簡単に動作しうるが、個々の患者に対してもより良く調整されるパラメータ設定の選択を与える医療撮像を行なう方法及び装置を提供することが望ましい。また、選択の基礎となる情報は、望ましくは、改善された医療知識及びプロトコルが利用可能となるにつれて容易に更新されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、医療システムで処置を行なうのに必要な複数のパラメータの夫々についての値の選択を案内するシステムが提供される。システムは、処置及び治療体制を含む第1の知識ベースと、患者情報及びセラピー履歴を含む第2の知識ベースと、臨床ガイドラインを含む第3の知識ベースとを含む。ドメイン・オントロジーは、第1、第2、及び第3の知識ベース内の情報間の意味論的マッピングを与える。システム構成データベースは、医療システムに関する物理的特徴を含み、システム特徴データベースは、システム構成データベース中のデータに基づいて医療システムを較正する数式及びアルゴリズムを含む。第1、第2、及び第3の知識ベース、システム較正データベース、並びに、システム特徴データベース中の情報に基づいて一組のパラメータを生成するよう、推論エンジンも設けられる。
【0010】
本発明の1つの面によれば、医療システムは、医療撮像システムである。
【0011】
本発明の他の免によれば、医療撮像システムは、コンピュータ断層撮影システム、X線システム、磁気共鳴システム、ポジトロン・エミッション断層撮影システム、超音波システム、核医学システムからなる群から選択される。
【0012】
本発明の他の面によれば、患者情報及びセラピー履歴はDICOM標準に従って格納される。
【0013】
本発明の他の面によれば、患者情報及びセラピー履歴は、HL7標準に従って伝送される。
【0014】
本発明の他の面によれば、処置及び治療体制は、DICOM標準に従って格納される。
【0015】
本発明の他の面によれば、DICOM標準は、DICOM Request Procedures Service Callである。
【0016】
本発明の他の面によれば、臨床ガイドラインは、GLIF、EON、Asbru、Prodigy、Prestige及びProFormaからなる群から選択される標準に従って表わされる。
【0017】
本発明の他の面によれば、第1、第2、及び第3の知識ベースは、少なくとも部分的には医療撮像システムから遠隔に配置される。
【0018】
本発明の他の面によれば、医療撮像システムは、コンピュータネットワークを介して第1、第2、及び第3の知識ベースと通信する。
【0019】
本発明の他の面によれば、コンピュータネットワークは、ローカル・エリア・ネットワークである。
【0020】
本発明の他の面によれば、コンピュータネットワークは、ワイド・エリア・ネットワークである。
【0021】
本発明の他の面によれば、ワイド・エリア・ネットワークは、インターネットである。
【0022】
本発明の他の面によれば、ドメイン・オントロジーは、SNOMED RT/CTに従う名称である。
【0023】
本発明の更なる他の面によれば、個々の患者に対して医療撮像システムで処置を行なうのに必要な複数のパラメータの夫々についての値の選択を案内する方法が提供される。方法は、処置及び治療体制に関する情報を与える段階と、患者情報及びセラピー履歴に関する情報を与える段階と、臨床ガイドラインに関する情報を与える段階とから始まる。意味論的マッピングは、第1、第2、及び第3の知識ベース内の情報間で行なわれる。更に、医療システムに関する物理的特徴に関する情報が与えられ、また、撮像システムの物理的特徴に関する情報に基づき撮像システムを較正する数式及びアルゴリズムを与える段階が与えられる。一組のパラメータは、処置及び治療体制に関する情報、個々の患者情報及びセラピー履歴に関する情報、臨床ガイドラインに関する情報、撮像システムの物理的特徴に関する情報、並びに、撮像システムを較正する数式及びアルゴリズムに基づいて生成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
当業者によって認められるように、本発明は、方法、データ処理方法、又はコンピュータプログラムとして実現されうる。従って、本発明は、完全にハードウエアの実施例、完全にソフトウエアの実施例、又はソフトウエアとハードウエアの面を組み合わせた実施例の形をとりうる。更に、本発明は、媒体上に具現化されたコンピュータ読み取り可能なプログラムコード手段を有するコンピュータ使用可能な記憶媒体上のコンピュータプログラムの形をとりうる。ハードディスク、CD−ROM、光記憶装置、磁気記憶装置等を含むがこれらに限られない任意の他の特定のコンピュータ読み取り可能な媒体が使用されうる。
【0025】
図1は、本発明が使用されうる医療撮像システム100の典型的なブロック図を示す。医療診断撮像システム100は、X線システム、超音波システム、磁気共鳴撮像(MRI)システム、コンピュータ・アキシアル断層撮影(CAT)システム等を含むがこれらに限られない、当業者にとって利用可能な任意の撮像装置でありうる。
【0026】
図1に示すように、本発明のこの実施例の医療撮像システム100は、信号検出回路28に結合されたスキャナ26を含み、信号検出回路28は次にシステム制御器30に結合される。システム制御器30は、以下より完全に説明するように、サービス設備22との間でサービス要求、メッセージ、及びデータを相互作用的に交換する均一なプラットフォームを含む。システム制御器30は、通信モジュール32にリンクされ、これは、単一の又はシステム制御器30とは別の物理的なパッケージ内に含まれうる。システム制御器30はまた、一般的には、コンピュータ・モニタ36、キーボード38、並びにマウス等の他の入力装置40を含むオペレータ・ステーション34にリンクされている。一般的なシステムでは、スキャナ26から収集されたデータに基づき生成された画像を生成するプリンタ又は写真システムといった、更なる構成要素が撮像システム100に含まれうる。ここでは、一般的に、診断システム内の「スキャナ」について指すが、この用語は、医療診断データ捕捉機器一般を含むものであり、医療診断の分野における、画像データ捕捉に限られず、並びに、ピクチャ・アーカイブ通信及び検索システム、画像管理システム、設備又は施設管理システム、観察システム等に限られないと理解されるべきである。より特定的には、本技術から恩恵を受ける機器は、撮像システム、臨床診断システム、生理学的監視システム等を含みうる。
【0027】
例として、医療撮像システム100がMRIシステムであれば、スキャナ26は、パルス化された磁場を生成し、関心対象内の回転磁気による放出から信号を収集する。同様に、撮像システムがX線CTシステムであれば、スキャナ26は関心対象を通じて向けられたX線放射線の一部を検出する。
【0028】
オペレータ・ステーション34は、撮像処理を制御するよう医療撮像システム100の技術者又はオペレータによって用いられる。特に、技術者は、患者が撮像処置を受けるたびに選択されねばならない様々なパラメータの値を入力するためにオペレータ・ステーション34を使用する。このタスクを簡単化し、処置によって得られる情報の値を高めるために、本発明は、パラメータ選択ユニット50を与える。図1に示すように、本発明のいくつかの実施例では、パラメータ選択ユニット50は、システム制御器30内に配置されうる。
【0029】
図2は、本発明によるパラメータ選択ユニット50の1つの実施例をより詳細に示す。パラメータ選択ユニット50は、推論エンジン224と一連の知識ベース210、212及び214とを含む。以下説明するように、知識ベースは、実行されている診断撮像処置に関連のある事実、規則、及び方法に基づく。推論エンジンは、知識ベースから新しい情報を推論する一般的な機構である。推論エンジンは、解析プロセスを案内するよう規則(メタ規則)に関する規則を使用しうる。推論エンジンは、周知であり、市販されており、従って以下では詳述しない。
【0030】
本発明で用いられる知識ベースは、処置及び治療体制の知識ベース210、患者情報及びセラピー履歴の知識ベース212、臨床ガイドライン214の知識ベースを含む。知識ベース210、212、及び214は、1又はそれ以上の電子データベース内で物理的に具現化されうる。
【0031】
患者情報及びセラピー履歴の知識ベース212は、患者の年齢、体重、性別等といった関連のある患者特定情報を含む。「患者情報」は、病院情報システム、放射線情報システム、又は心臓情報システムである、又はこれらによって記憶及び処理されうるいかなる臨床情報も広義に指すものであることが意図される。患者情報は、人口学的情報(例えば、患者の名前、患者のID等)及びスケジューリングされた処置(例えば、スケジュールされた処置に対する説明、位置、日付、時間、及び識別子)に関する情報を含みうる。患者情報は、適切な医療産業基準、例えば、多専門性DICOM基準(元は、米国放射線大学及び米国電気製造者協会の資金援助を受けているACR−NEMA委員会により、米国バージニア州ロスリンの米国電気製造者協会によりNEMA出版社PS3.1−PS3.12に「Digital Imaging Communications in Medicine(DICOM)」として米国電気製造者協会により1992年、1993年、1994年、1995年に発行されている。)DICOM標準は、コンピュータ間で画像及び関連する情報を伝達する電子メッセージの形及び流れを定義する。DICOMは、基本及び複合データタイプの標準セットをこれらのデータタイプを含む要求の標準セットと共に定義することにより、画像データの交換のフォーマットを標準化しようとする。
【0032】
患者情報が送信されうる他の典型的な標準は、ヘルスケア環境において電子データ交換用のフォーマットを定義する保健水準7(HL7)標準である。特に、HL7は、患者の入院、退院、転院、患者紹介、会計、臨床所見、及びオーダー、また、いずれは患者の臨床記録一般を含む、ヘルスケア活動の広い範囲に関する情報の交換についてのメッセージフォーマットを定義する。
【0033】
処置及び治療体制の知識ベース210は、特定の患者に対して要求されている撮像処置に関する情報を収集する。この情報は、上述のDICOM標準、特にDICOMRequest Procedures Service Callといった適切な医療産業標準に従って記憶され送信される。
【0034】
臨床ガイドラインの知識ベース214は、処置の知識に関するプロトコル及びガイドラインを含む。プロトコル及びガイドラインは、医療ケアを標準化し、不一致を減少させるための重要な方法となっている。臨床ガイドラインは、異なった専門分野からの専門家が、治療に関する同意に達し、品質フレームワークを案出し、それに対して診療が行われうることを可能とする。診療ガイドラインは、米国医学研究会により「特定の臨床状況について適切なヘルスケアに関して開業医及び患者の意思決定を支援するための体系的に開発された宣言(systematically developed statements to assist practitioner and patient decisions about appropriate healthcare )」として定義されている。これらのガイドラインは、入手可能な臨床データに基づいて医師の委員会によって作成される。従来のガイドラインの開発は、文献の詳細な検討、全ての行動についての代替策の評価、決定及び行動の最適なシーケンスの指定、並びに、推奨の基礎の文書化をしばしば含むため、困難且つ高価な手順である。ガイドラインとプロトコルの間の区別は常に明らかなわけではないが、これらは一般的には、それらの自由度に基づいて区別されうる。特に、ガイドラインは、プロバイダの自由裁量及び知識に基づいて意思決定を可能とする計画を提案する。他方で、プロトコルは、一般的には、個人的なケア及び臨床的な意思決定についてはあまり余地を与えていない。
【0035】
通常は報告形式の読み出し専用文書として一般的には広められる従来のプロトコル及びガイドラインとは異なり、臨床ガイドライン214の知識ベースで用いられるプロトコル及びガイドラインは、それらがアルゴリズム的に解釈されうるよう準備される。GLIF、EON、Asbru、Prodigy、Prestige及びProFormaといった多数のマルチステップのコンピュータ理解可能なガイドラインフォーマット(入れ子になったガイドラインタスクの階層的セットとしてモデル化される)が開発されている。全てのこれらのフォーマットは、コンポーネント式の知識エンジニアリング・アプローチをとる。例えば、スタンフォード大学で開発されたEONガイドライン・モデルは、知識ベースを5つのコンポーネント、即ち、時間制約を指定する時間モデル、医療概念モデル、患者データモデル、意思決定規準モデル、及びガイドライン・ステップ・モデルへ分割する。
【0036】
上述の知識ベース210、212及び214は、図1に示すオペレータ・ステーション34に関連付けられる電子メモリ内に永久的に存在しうるが、これらは現在利用可能な専門知識に従って定期的に更新されるべきである。従って、本発明の幾つかの実施例は、クライアント・サーバ環境におけるシステムとして実施されうる。発明者の上述の実施例は、図1に示されており、図1中、遠隔に配置されたサービス施設22はサーバであり、オペレータ・ステーション34はクライアントである。当業者によって知られているように、クライアント・アプリケーションは、クライアント・サーバ関係における要求側プログラムである。サーバ・アプリケーションは、同一又は他のコンピュータ内のクライアント・プログラムからの要求を待ち、要求を実現するプログラムである。クライアント・サーバ環境は、インターネット等の公衆網と、しばしば「イントラネット」と称される、すなわちローカルエリアネットワーク(LAN)及び広域網(WAN)、仮想プライベート・ネットワーク(VPN)、フレームリレー、又は直接電話接続を含みうる。クライアント・サーバ環境が用いられるとき、知識ベース210、212、及び214は、撮像システムと同じ場所にあってもよく、又は、その代わりに、全体として若しくは部分的に、サービス施設22に配置されうる。
【0037】
再び図2を参照するに、推論エンジン224はまた、システム構成データベース226及びシステム特徴データベース228から情報を受信する。システム構成データベース226は、システムハードウエアの物理的な特徴及びパラメータを含む(例えばX線撮像システム中のX線源の強度、又は、MRI撮像システム中の磁石の強さ)を含む。システム特徴データベース228は、システム構成データベース226中のデータに基づいてシステムを較正する数式及びアルゴリズムを提供する。
【0038】
推論エンジン224が多数の知識ベースから情報を得るときに生ずる1つの問題は、各知識ベース中の情報が異なったドメイン・オントロジーで表現されうることである。従って、パラメータ選択ユニットは、推論エンジン224への入力である情報を供給するドメイン・オントロジー220を含む。ドメイン・オントロジー220は、処置及び治療体制の知識ベース210、患者情報及びセラピー履歴の知識ベース212、並びに、臨床ガイドライン214の知識ベースの間の意味論的なマッピングを行なう。
【0039】
オントロジーは、語の間の関連を形式的に定義する文書又はファイルである。即ち、オントロジーは、ドメインに関する事実が表わされる語彙を与える。オントロジーは、例えば医療といった特定のドメイン内の知識をモデル化する。オントロジーは、概念ネットワーク、専門化された語彙、統語形式、及び推論規則を含みうる。特に、オントロジーは、オブジェクト(即ち、データモデルに従って編成され記憶されたデータ又は情報)が処理されうる特徴(即ち、ドメイン依存データ)、また、どのようにしてオブジェクトから特徴を抽出するかについて特定する。オブジェクトの各特徴は、特徴の「強さ」及びオブジェクトが特徴を有する度合いを表わす関連付けられた重みを有しうる。オブジェクト及び特徴を具体的な例で示すために、乳ガンの早期検出の方法であるマンモグラフィーの医療モダリティについて考える。マンモグラム中の非常に多くの特徴が、例えばクラスタ化された微小石灰化、星状病変、及び腫瘍といった正しい診断に必要として識別されている。これらの夫々は、複雑な構造を伴う一組の医療ドメイン・オブジェクトとして表わされる。例えば、星状病変は、針状部で囲まれた中央の塊から構成される。針状部は、続いて、複雑な星状構造を有する。これらの複雑なドメイン・オブジェクト及びそれらの互いの関係を抽出することは、乳ガンの効果的な検出に重要である。
【0040】
ドメイン・オントロジーは、サブコンポーネントを有してもよいことに留意すべきである。しばしば、ドメインの概念は幾つかのサブドメインを含むため、そのドメイン・オントロジーは、実際は幾つかの異なるサブドメイン・オントロジーを融合させたものである。例えば、医療ドメインでは、ドメイン・オントロジーは、疾病オントロジー、薬オントロジー、患者記録オントロジー、様々な機械モダリティに対するオントロジー等から構成されうる。これらのサブ・オントロジーは、医療ドメインの異なった領域の基本的な概念、及び、これらの概念がどのように互いに関連するかを説明する。
【0041】
より特定的には、医療ドメインでは、1つのサブ・オントロジーは、疾患のオントロジーでありうる。疾患は、以下のような階層、即ち、器官、心臓、心臓弁、大動脈弁、大動脈弁尖端(の疾患)として配置されうる。他のサブ・オントロジーは、様々なカテゴリの検査の階層から構成される診断処置クラスのオントロジーでありうる。最上位では、検査は、心臓検査、臨床検査、放射線検査へ分けられうる。これらの各検査は、より特定的な検査へ分けられうる。例えば、臨床検査は、血液化学、血液学、細菌学、及び尿検査を含みうる。
【0042】
本発明で使用されうるドメイン・オントロジーの1つの例は、医療用語のSNOMEDInternationalの作業である。本願に参照として組み入れられるSNOMED Internationalは、米国病理学者大学によって発行され、著作権で保護され、維持されている、人間医学及び獣医学の体系化された術語である。SNOMED Internationalは、医療用語及びコードの進んだ術語及び分類である。特に、SNOMED RT/CTと称されるSNOMEDのバージョンは、ドメイン・オントロジーとして使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明が使用されうる医療撮像システムの典型的なブロック図を示す図である。
【図2】本発明により構築されるパラメータ選択ユニットの1つの実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムで処置を行なうのに必要な複数のパラメータの夫々についての値の選択を案内するシステムであって、
処置及び治療体制を含む第1の知識ベースと、
患者情報及びセラピー履歴を含む第2の知識ベースと、
臨床ガイドラインを含む第3の知識ベースと、
前記第1、第2、及び第3の知識ベース内の情報間の意味論的マッピングを与えるドメイン・オントロジーと、
前記医療システムに関する物理的特徴を含むシステム構成データベースと、
前記システム構成データベース中のデータに基づいて前記医療システムを較正する数式及びアルゴリズムを含むシステム特徴データベースと、
前記第1、第2、及び第3の知識ベース、前記システム較正データベース、並びに、前記システム特徴データベース中の情報に基づいて一組のパラメータを生成する推論エンジンとを有する、システム。
【請求項2】
前記医療システムは、医療撮像システムである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記医療撮像システムは、コンピュータ断層撮影システム、X線システム、磁気共鳴システム、ポジトロン・エミッション断層撮影システム、超音波システム、核医学システムからなる群から選択される、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記患者情報及びセラピー履歴はDICOM標準に従って格納される、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記患者情報及びセラピー履歴は、HL7標準に従って伝送される、請求項2記載のシステム。
【請求項6】
前記処置及び治療体制は、DICOM標準に従って格納される、請求項2記載のシステム。
【請求項7】
前記DICOM標準は、DICOM Request Procedures Service Callである、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記臨床ガイドラインは、GLIF、EON、Asbru、Prodigy、Prestige及びProFormaからなる群から選択される標準に従って表わされる、請求項2記載のシステム。
【請求項9】
前記第1、第2、及び第3の知識ベースは、少なくとも部分的には前記医療撮像システムから遠隔に配置される、請求項2記載のシステム。
【請求項10】
前記医療撮像システムは、コンピュータネットワークを介して前記第1、第2、及び第3の知識ベースと通信する、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記コンピュータネットワークは、ローカル・エリア・ネットワークである、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータネットワークは、ワイド・エリア・ネットワークである、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記ワイド・エリア・ネットワークは、インターネットである、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記ドメイン・オントロジーは、SNOMED RT/CTに従う用語である、請求項2記載のシステム。
【請求項15】
個々の患者に対して医療撮像システムで処置を行なうのに必要な複数のパラメータの夫々についての値の選択を案内する方法であって、
処置及び治療体制に関する情報を与える段階と、
患者情報及びセラピー履歴に関する情報を与える段階と、
臨床ガイドラインに関する情報を与える段階と、
前記第1、第2、及び第3の知識ベース内の情報間の意味論的マッピングを行なう段階と、
前記医療システムに関する物理的特徴に関する情報を与える段階と、
前記撮像システムの物理的特徴に関する情報に基づき前記撮像システムを較正する数式及びアルゴリズムを与える段階と、
前記処置及び治療体制に関する情報、前記個々の患者情報及びセラピー履歴に関する情報、臨床ガイドラインに関する情報、前記撮像システムの物理的特徴に関する情報、並びに、前記撮像システムを較正する数式及びアルゴリズムに基づいて、一組のパラメータを生成する段階とを有する、方法。
【請求項16】
前記撮像システムは、コンピュータ断層撮影(CT)システム、X線システム、磁気共鳴(MR)システム、ポジトロン・エミッション断層撮影(PET)システム、超音波システム、核医学システムからなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記患者情報及びセラピー履歴はDICOM標準に従って格納される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記患者情報及びセラピー履歴は、HL7標準に従って伝送される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記処置及び治療体制は、DICOM標準に従って格納される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記DICOM標準は、DICOM Request Procedures Service Callである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記臨床ガイドラインは、GLIF、EON、Asbru、Prodigy、Prestige及びProFormaからなる群から選択される標準に従って表わされる、請求項15記載の方法。
【請求項22】
前記処置及び治療体制に関する情報、前記個々の患者についての患者情報及びセラピー履歴に関する情報、及び、臨床ガイドラインに関する情報は、少なくとも部分的には前記医療撮像システムから遠隔に配置される、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記医療撮像システムは、コンピュータネットワークを介して前記第1、第2、及び第3の知識ベースと通信する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記コンピュータネットワークは、ローカル・エリア・ネットワークである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記コンピュータネットワークは、ワイド・エリア・ネットワークである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記ワイド・エリア・ネットワークは、インターネットである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記意味論的マッピングは、SNOMEDRTに従うドメイン・オントロジーによって行なわれる、請求項15記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−510436(P2006−510436A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561850(P2004−561850)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005974
【国際公開番号】WO2004/057515
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】